説明

医療用粘着剤組成物

【課題】 水蒸気透過性と皮膚追従性に優れ、貼付時の皮膚刺激が少なく、さらに剥離時の糊残りや角質損傷が少ない医療用粘着剤組成物を提供すること。
【解決手段】 炭素数14〜22の分岐鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレート及び極性モノマーを含むアクリル系モノマー混合物を懸濁重合して得られ、平均粒子径が10μm〜100μmであるアクリル系粘着性微小球、及び架橋された吸水性ポリマー
を含む医療用粘着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル系粘着性微小球及び架橋された吸水性ポリマーを含有する医療用粘着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の創傷被覆や医療用具を皮膚に固定するために、各種医療用貼付剤が用いられている。通常、このような貼付剤においては、貼付時の蒸れや粘着剤成分による皮膚刺激、あるいは貼付剤を剥離する際の皮膚へののり残りや角質剥離による皮膚刺激の低減が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、皮膚への物理的刺激が少ない医療用粘着剤として、炭素数2〜15の(メタ)アクリル酸エステルと、カルボキシル基あるいはヒドロキシル基含有の極性成分を主成分とした溶液重合型ポリマー100質量%に30〜100部の有機液状成分を可塑剤として含有させ、架橋処理を行ったアクリルゲル状の医療用粘着剤が記載されている。
【0004】
特許文献2には、炭素数14〜20の分岐状アルキルアルコールの(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするビニル系モノマーと光重合開始剤とを含有する光重合性の液状組成物に、紫外線を照射することにより上記ビニル系モノマーを重合して得られるアクリル系粘着剤が記載されている。
【0005】
また、特許文献3には、平均粒子径が1〜250μmの、互いに隣接する溶媒分散型のアクリレート系ゴム弾性粘着性微小球を含む粘着剤を、透湿性のよい基材に塗布した創傷用包帯が記載されている。この粘着剤は、炭素数4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、カルボキシル基あるいはラクタム含有の極性成分を主成分とする水分散型ポリマーに、懸濁液の分散安定剤として非架橋の水溶性ポリマーを少量添加している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−319793号公報
【特許文献2】特開平9−324164号公報
【特許文献3】特表平10−508520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
水蒸気透過性と皮膚追従性に優れ、貼付時の皮膚刺激が少なく、さらに剥離時の糊残りや角質損傷が少ない医療用粘着剤組成物を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、炭素数14〜22の分岐鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレート及び極性モノマーを含むアクリル系モノマー混合物を懸濁重合して得られ、平均粒子径が10μm〜100μmであるアクリル系粘着性微小球、及び架橋された吸水性ポリマーを含む医療用粘着剤組成物を提供するものである。
【0009】
さらに本発明は、支持体層と、前記医療用粘着剤組成物からなる粘着剤層とを含む医療用貼付剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、貼付時に汗による蒸れや剥れがなく、皮膚追従性に優れ、剥離時には糊残りや角質損傷が少ない医療用粘着剤組成物、及び医療用貼付剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本明細書において、(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリルは、それぞれアクリレートまたはメタクリレート、及びアクリルまたはメタクリルを示し、アクリル系は、アクリル系及びメタクリル系を含む概念である。
【0012】
本発明は、アクリル系モノマー混合物を懸濁重合して得られ、平均粒子径が10μm〜100μmであるアクリル系粘着性微小球、及び架橋された吸水性ポリマーを含む医療用粘着剤組成物に関する。
【0013】
アクリル系モノマー混合物は、炭素数14〜22の分岐鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートを含有する。炭素数14〜22の分岐鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートを含むことにより、粘着剤組成物をやわらかくし、皮膚に対する濡れ広がりと適度な粘着性を保ち、かつ剥離時の皮膚面に与える応力を緩和するため、剥離時の角質損傷を少なくすることができる。
【0014】
炭素数14〜22の分岐鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソペンタデシル(メタ)アクリレート、イソヘプタデシル(メタ)アクリレート、イソセチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソノナデシル(メタ)アクリレート、2−デシルデシル(メタ)アクリレート、または2−デシルドデシル(メタ)アクリレートを挙げることができる。これらは単独で使用しても、2種以上を使用しても良い。
【0015】
アクリル系モノマー混合物中の、炭素数14〜22の分岐鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートの添加量は適宜選択することができ特に限定されないが、例えば約20質量%〜約99質量%とすることができる。
【0016】
アクリル系モノマー混合物中は、さらに極性モノマーを含む。少量の極性モノマーを含むことにより、粘着剤組成物の凝集力が増加し皮膚から剥離する際の糊残りを低減することができる。
【0017】
極性モノマーは従来公知のものを用いることができとくに限定されないが、具体的には例えば、アクリルアミド、またはN−ビニルピロリドン(NVP)等のアミド基含有極性モノマー;ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、またはヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有極性モノマー;またはアクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)等のカルボキシル基含有極性モノマーを挙げることができる。これらのうち、ヒドロキシル基含有極性モノマーまたはカルボキシル基含有極性モノマーを好ましいものとして用いることができる。
【0018】
アクリル系モノマー混合物中の極性モノマーの添加量は、適宜選択することができ限定されないが、例えば約1質量%以上とすることができる。ヒドロキシル基含有極性モノマーを用いる場合、その添加量は約1質量%以上約10質量%未満、約1質量%〜約8質量%、または約1質量%〜約6質量%とすることができる。かかる添加量が10質量%を超えると、皮膚接着性が悪化する傾向がある。また、カルボキシルキ含有極性モノマーを用いる場合は、得られる粘着剤組成物接着力が上がりやすくなるため、その添加量は、約0.1質量%以上約4質量%未満とするのが好ましい。
【0019】
アクリル系モノマー混合物には、さらに炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを含んでも良い。炭素数1〜12のアルキル基は、直鎖、分岐鎖、または環状のいずれでもよい。このような(メタ)アクリレートとしては例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、またはラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。中でも、2−エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、ラウリルアクリレート等の炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートを好ましいものとして挙げることができる。
【0020】
アクリル系モノマー混合物中の炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートの添加量は特に限定されないが、例えば、0〜約79質量%とすることができる。
【0021】
アクリル系モノマー混合物には、さらに架橋剤を含んでも良い。架橋剤としては、少なくとも二つ以上の(メタ)アクリレートを有する多官能性の(メタ)アクリレートを用いることができる。具体的には例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジールジ(メタ)アクレート)、トリオール(例えばグリセロールなど)の(メタ)アクリル酸エステルおよびテトロール(例えばペンタエリトリトールなど)の(メタ)アクリル酸エステルを用いることができる。
【0022】
アクリル系モノマー混合物中の架橋剤の添加量は、特に限定されないが例えば、アクリル系モノマー混合物に対して約0.01質量%〜約0.5質量%とすることができる。架橋剤配合量が少ないと、粘着剤組成物は十分な凝集力が得られず、皮膚に糊残りを生じる場合があり、反対に過剰な場合は凝集力が高すぎ、所望の皮膚粘着力が得られなくなる。
【0023】
本発明のアクリル系粘着性微小球は、アクリル系モノマー混合物を懸濁重合して得られ、光散乱法で測定した平均粒子径が10μm〜100μmである。平均粒子径は、たとえば、粒度分布測定器LS13 320(ベックマン・コールター社製)を用いて体積平均粒子径として測定することができる。アクリル系粘着性微小球は、中実であっても中空であってもよい。
【0024】
架橋剤を含むモノマー混合物を懸濁重合することにより得られる粘着性微小球は、微小球内部または微小球同士(微小球間)で架橋が起こる。これらいずれの架橋状態においても本発明の効果を発揮することができる。微小球同士が粒子間で架橋されている場合は、特に糊残りにおいて効果を発揮し、ほとんど糊残りがなくなる。
【0025】
かかるアクリル系粘着性微小球は、上述のアクリル系モノマー混合物を懸濁重合することにより得られる。例えば、リアクターに、イオン交換水と界面活性剤を加えて攪拌した後、アクリル系モノマー、重合開始剤、及び所望により架橋剤を加えて、窒素等の不活性気体下で、加熱、混合、冷却して行う。
【0026】
懸濁重合を行う際、重合条件を調節することによりアクリル系粘着性微小球の平均粒子径を調整することができる。重合条件とは一般に、攪拌速度、リアクターの容積、邪魔板、攪拌翼の形状や枚数等をいい、これらを適宜選択することにより所望の平均粒子径を有する微小球を得ることができる(「懸濁重合におけるポリマー粒子径制御」田中正人著、株式会社アイピーシーより平成5年6月20日発行)。
【0027】
本発明の医療用粘着剤組成物は、さらに、架橋された吸水性ポリマーを含む。
【0028】
本明細書において、「吸水性ポリマー」とは、JISで規定されている「高吸水性樹脂」をいうもの、すなわち「水を高度に吸水して膨潤する樹脂であり、架橋構造の親水性物質で、水と接触することによって吸水し、一度吸水すると圧力をかけても離水しにくい特徴をもつもの。」をいうものとする。あるいは、吸水性ポリマーとは、自重の10倍以上の吸水力をもつポリマーを示すものとする。ポリマーの吸水性能は、JIS K7223の吸水性樹脂の吸水量試験方法あるいはJIS K7224の吸水性樹脂の吸水速度試験方法を用いて測定することができる。
【0029】
架橋された吸水性ポリマーは、あらかじめ架橋された粒子状の吸水性ポリマーを用いても、非架橋の吸水性ポリマーを用いて後から架橋しても良い。
【0030】
あらかじめ架橋された粒子状の吸水性ポリマーは、懸濁重合後の生成物に添加して用いることができる。このような架橋された粒子状の吸水性ポリマーとしては例えば、架橋されたカルボキシメチルセルロース、架橋されたポリアクリル酸、またはこれらのナトリウム塩やカルシウム塩などの塩を用いることができる。架橋された粒子状の吸水性ポリマーを使用することにより、汗に強い粘着剤組成物を得ることができ、かかる組成物を貼付剤に用いた場合に、汗による蒸れや剥れ、あるいは皮膚刺激を低減することができる。架橋された吸水性ポリマー粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、アクリル系粘着性微小球の平均粒子径を考慮すると、約5μm〜約100μmのものを使用するのが好ましい。
【0031】
非架橋の吸水性ポリマーを使用する場合は、アクリル系モノマー混合物を懸濁重合して得られた生成物に非架橋の吸水性ポリマーを添加した後架橋する。吸水性ポリマーを架橋せずに使用した場合には、粘着剤組成物を基材に塗布、乾燥した後に吸水性ポリマーが粘着性微小球の表面に均一に付着するため粘着力が低下する傾向がある。
【0032】
非架橋の吸水性ポリマーとしては、例えばポリエチレングリコールまたはそのアルキルエステル、ポリプロピレングリコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール、CMCまたはその塩、ポリアクリル酸またはその塩、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、等のセルロースの低級アルキルエステル、またはポリグリセリンまたはそのアルキルエステル等を使用することができる。非架橋の吸水性ポリマーを架橋する際には、例えば吸水性ポリマー中のヒドロキシル基やカルボキシル基と反応性のある架橋剤を用いて、3次元的に架橋を行うことができる。このような架橋剤としては、例えばアルデヒド化合物、アセタール化合物、エポキシ化合物、ポリカルボン酸、アルカリ土類金属塩等を挙げることができる。
【0033】
架橋された吸水性ポリマーの添加量は特に限定されないが、アクリル系粘着性微小球に対して約0.1質量%以上約10質量%未満とすることができる。
【0034】
本発明の粘着剤組成物は、上述のようにしてアクリル系モノマー混合物を懸濁重合して、アクリル系粘着性微小球を形成したのち、架橋または非架橋の吸水性ポリマーを加えて混合、粘度調整し、必要に応じて添加剤を加えて基材に塗布乾燥することにより製造することができる。さらに、従来公知のエポキシ系、イソシアネート系、またはアジリジン系の架橋剤を加えて、基材に塗布乾燥した後、架橋を行うこともできる。またさらに、ベンゾフェノン等の光架橋剤を使用することによって、塗布乾燥後、紫外線等により架橋することもできる。このとき、アクリロイルベンゾフェノン等の光架橋剤を、あらかじめ粘着性微小球中に共重合しておくと光架橋が効率的に行える。その他、電子線照射、あるいはガンマ線照射等の物理的な手法を用いて、アクリル系粘着性微小球の粒子間で架橋を行うこともできる。
尚、非架橋の吸水性ポリマーを使用する場合は、アクリル系粘着性微小球と混合した後、架橋を行う必要がある。
【0035】
本発明の粘着剤組成物は、さらに、必要に応じて通常用いられる界面活性剤、分散安定剤、開始剤などの添加剤を用いることができる。
【0036】
界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステルなどの陰イオン界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの非イオン界面活性剤;アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩などの陽イオン界面活性剤;またはポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの親水性ポリマーを挙げることができる。
【0037】
分散安定剤としては、例えば、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸リチウム、ポリアクリル酸カリウムなど、分子量が約5000を超えるポリアクリル酸塩を含む中和ポリカルボン酸類;カルボキシ修飾ポリアクリルアミド類をはじめとするアクリルアミド類;アクリル酸とジメチルアミノエチルメタクリレートとのコポリマー;第四級化アミン置換セルロース誘導体などの第四級アミン類;架橋ポリビニルアルコール類;またはカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのカルボキシ修飾セルロース誘導体、親水性エーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのエステル類を挙げることができる。
【0038】
開始剤としては過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、ビス(4−ターシャリーブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートのような有機過酸化物や、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、4,4’−アゾビスー4−シアノバレリアン酸、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、アゾビス2,4−ジメチルバレロニトリル(AVN)等のアゾ系重合開始剤が用いられる。この開始剤の使用量としては、モノマー混合物100質量部あたり、0.05〜5質量部とすることができる。
【0039】
本発明の医療用粘着剤組成物は、皮膚刺激性に影響を与えない範囲で、通常用いられる種々の添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば増粘剤(レオロジーモディファイアー)、可塑剤、酸化防止剤、保湿剤、または薬効成分を有する薬剤を挙げることができる。薬剤は、創傷治療用、局所投与用、または全身投与用等いずれの薬剤を添加しても良い。
【0040】
本発明の医療用貼付剤は、支持体層と、本発明の医療用粘着剤組成物からなる粘着剤層とを含む。医療用貼付剤は、例えば、従来用いられる基材からなる支持体層に粘着剤組成物を塗布・乾燥する、あるいは支持体層に、あらかじめ別の基材上に医療用粘着剤組成物を塗布・乾燥して形成した粘着剤層をラミネートすることにより得られる。
【0041】
支持体層は、通常医療用貼付剤に用いられる柔軟な基材を使用することができ特に限定されない。具体的には例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、またはセルロースエステル等のポリマーフィルム;ポリエステル、ポリオレフィン、セルロースエステル、ポリウレタン、またはポリアミド等からなる織物・編物・不織布;または紙などを使用することができる。
【0042】
これらの中でも、高い水蒸気透過率を有する基材を好ましいものとして使用することができる。水蒸気透過率は、例えば、80%の湿度差をもって40℃においてASTM E 96−80に従って測定した24間水蒸気透過率(MVTR T24)が、約500g/m以上、または約1000g/m以上であることが好ましい。あるいは、米国特許第3645835号明細書および同第4595001号明細書に開示されている材料からなる基材や特表2003−503538号公報に挙げられるような材料からなる不織布基材を用いることができる。
【0043】
医療用貼付剤は、支持体層、粘着剤層のほかに、例えばライナーや表面保護層等、通常用いられる他の機能層を積層することができる。
【0044】
支持体層の目付けは、水蒸気透過性や皮膚追従性に影響しない範囲で適宜選択することができる。例えば、約20g/m〜約500g/mとすることができる。
粘着剤層の塗布量も、同様に水蒸気透過性や皮膚追従性に影響しない範囲で適宜選択することができる。例えば、約10g/m〜約150g/mとすることができる。
【0045】
本発明の医療用粘着剤組成物は、皮膚刺激性が小さく糊残りが少ないため、皮膚に適用して医療現場で使用することができる。本発明の医療用粘着剤組成物からなる粘着剤層を支持体層に積層して貼付剤とした場合は、創傷被覆用のテープや包帯、医療用具を皮膚に固定するためのテープ、またはサポーター等として使用することができる。さらに、粘着剤層に薬剤を含む場合は薬剤の種類に応じて創傷治療用貼付剤、局所投与用の貼付剤、または全身投与用の貼付剤として使用することができる。
【実施例】
【0046】
本明細書中の実施例、比較例で用いた粘着剤組成物の組成及び平均粒子径を表1に示す。
【0047】
表1で用いた原材料の詳細は下記に示すとおりである。
LA:ラウリルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製)
HEDA16:2−ヘキシルデシルアクリレート(東邦化学工業株式会社製)
HEMA:ヒドロキシエチルメタクリレート(三菱レイヨン株式会社製アクリエステルHISS)
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート(株式会社日本触媒製)
AA:アクリル酸(東亞合成株式会社製)
HDDA:1,6−ヘキサンジオールジアクリエート(2官能性架橋剤、共栄社化学株式会社製ライトアクリレート(TM)1.6HX−A)
AcDiSol:架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム粒子(架橋された吸水性ポリマー粒子、NCFコーポレーション社製アクジゾル(TM) SD−711)
SAP:ポリアクリル酸ナトリウム(架橋された吸水性ポリマー粒子、住友精化株式会社製アクアキープ(TM) 10SH−NF)
EMANON(TM) 3299RV:ポリエチレングリコールジステアレート(分散安定剤、花王株式会社製エマノーン(TM) 3299RV
TT615:ポリアクリル酸塩(分散安定剤、ローム・アンド・ハース社製プライマル(TM) TT−615)
Neopelex(TM) G−15:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(界面活性剤、花王株式会社製ネオペレックス(TM) G−15)
V−601:ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(開始剤、和光純薬工業株式会社製)
粘着剤組成物の製造
実施例1〜10、比較例1、3〜6
還流冷却管、温度計、窒素ガス導入装置を取り付けたセパラブルフラスコに、イオン交換水115質量部、界面活性剤(花王株式会社製ネオペレックスG−15)10質量部を加え、均一に攪拌した。表1に示すアクリルモノマー、架橋剤、開始剤(和光純薬工業株式会社製V−601)0.2質量部を加え、窒素ガスを導入しながら70℃で3時間、その後85℃でさらに2時間攪拌し、固形分比45%、平均粒子径10〜100μmの本発明の粘着剤の懸濁液を調製した。懸濁液を室温に冷却した後、表1に記載の吸水剤、安定剤を加えて塗布可能な粘度に調節し、ポリエステル・レーヨン混紡不織布(目付け50〜60g/m)に直接塗布し乾燥、あるいはシリコーン処理したフィルムに塗布、乾燥した後に上記の不織布にラミネートしてサンプルを作成した。粘着剤の塗布量は、実施例1〜4、6〜10、比較例1、3〜6は50g/m、実施例5は40g/mとした。
比較例2
イオン交換水、アクリルモノマー、架橋剤、界面活性剤(花王株式会社製ネオペレックスG−15)をホモミキサーにて乳化し、モノマーエマルションを得た。反応容器にモノマーエマルション、開始剤(和光純薬工業株式会社製V−601)を投入し、窒素ガスで置換したのち、65℃で24時間加熱攪拌し、平均粒子径2μmの粘着剤の懸濁液を得た。懸濁液を室温に冷却した後、表1に記載の吸水剤、増粘剤を加えて塗布可能な粘度に調節し、シリコーン処理したフィルムに塗布、乾燥した後に不織布にラミネートし、粘着剤塗布量が30g/mとなるサンプルを作成した。
【0048】
粘着剤の粒径分布測定
上記の方法にて重合した懸濁液について、粒度分布測定器LS13 320(ベックマン・コールター社製)を使用して粘着剤組成物の体積平均粒子径を測定した。結果は表1に示した。
【0049】
水蒸気透過性試験
上記実施例および比較例で作成したサンプルについて、JIS L1099(繊維製品の透湿度試験方法)A−2.ウォーター法に準拠し、水蒸気透過性を評価した。イオン交換水を入れたカップの上に試料をかぶせ、37℃/50%RHの環境に放置したときのカップ全体の重量変化より、試料の透湿度を算出した。透湿度が500g/m・24h以上であれば良好とみなした。結果を表2に示した。
【0050】
皮膚貼付試験
6名の健康なボランティアの背中に本発明の実施例、比較例となる粘着テープを貼りつけ、下記1)〜5)の粘着特性を評価した。結果を表2に示した。
1)皮膚粘着力
6名の健康なボランティアの背中に幅25mmにカットした各サンプル3本ずつを重さ2kgのローラを1往復させて圧着し、10分経過後(以下、T0と表記)、4時間経過後(T4と表記)、24時間経過後(T24と表記)に各1本ずつ、角度180度、速度15cm/分にて剥離し、その際の粘着力を記録し、その平均値を算出した。
2)固定力(一定時間経過後のテープの浮き)
上記の皮膚粘着力試験のサンプルについて、T0、T4、T24におけるサンプルの浮きを記録した。皮膚に接着していない部分のサンプルの面積を目視にて算出し、浮きがない場合を0、皮膚から離脱した場合を5として6段階で評価し、その平均値を算出した。
3)糊残り
上記の皮膚粘着力試験のサンプルを引き剥がした後、テープ貼付部位にティッシュペーパーを当て、皮膚への粘着剤の残留を面積にて算出した。糊残りが全くない場合を0、貼付部全体に糊が残った場合を糊残り5として6段階で評価し、その平均値を算出した。
4)皮膚刺激性(剥離時の皮膚の赤み)
上記の皮膚粘着力試験のサンプルを引き剥がした直後、および10分後の皮膚の赤みを判定した。目視にて発赤が観察された部分を赤みの濃さと面積で比較し、赤みがない場合を0、貼付部全体が濃い赤みとなった場合を赤み5として6段階で評価し、その平均値を算出した。
5)剥離時の角質損傷
上記の皮膚粘着力試験にて、4時間経過後(T4)の剥離したサンプルの粘着面の任意の点を赤外透過率測定器(ATR法)にて測定した。角質(たんぱく質)の振動数(1539cm−1、1630cm−1)における吸光度を測定し、実際の皮膚を測定したときの吸光度を100%、皮膚に貼り付けていない粘着剤単独での吸光度を0%とし、粘着面に付着した角質の吸光度を%で記録し、その平均値を算出した。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数14〜22の分岐鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレート及び極性モノマーを含むアクリル系モノマー混合物を懸濁重合して得られ、平均粒子径が10μm〜100μmであるアクリル系粘着性微小球、及び架橋された吸水性ポリマーを含む医療用粘着剤組成物。
【請求項2】
前記架橋された吸水性ポリマーが粒子状である請求項1に記載の医療用粘着剤組成物。
【請求項3】
炭素数14〜22の分岐鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートの量が、前記アクリル系粘着性微小球を構成するアクリル系モノマー混合物全体の20質量%〜99質量%である請求項1または2に記載の医療用粘着剤組成物。
【請求項4】
前記アクリル系モノマー混合物に、さらに、炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の医療用粘着剤組成物。
【請求項5】
前記極性モノマーが、ヒドロキシル基含有モノマーである請求項1〜4のいずれか一項に記載の医療用粘着剤組成物。
【請求項6】
前記ヒドロキシル基含有モノマーの量が、前記アクリル系粘着性微小球を構成するアクリル系モノマー混合物全体の1質量%〜10質量%である請求項5に記載の医療用粘着剤組成物
【請求項7】
前記極性モノマーが、カルボキシル基含有モノマーである請求項1〜4のいずれか一項に記載の医療用粘着剤組成物。
【請求項8】
前記カルボキシル基含有モノマーの量が、前記アクリル系粘着性微小球を構成するアクリル系モノマー混合物全体の0.1質量%以上4質量%未満である請求項7に記載の医療用粘着剤組成物。
【請求項9】
前記架橋された吸水性ポリマーの添加量が、前記アクリル系粘着性微小球に対して0.1質量%〜10質量%である請求項1〜8のいずれか一項に記載の医療用粘着剤組成物。
【請求項10】
支持体層と、請求項1〜9のいずれか一項に記載の医療用粘着剤組成物からなる粘着剤層とを含む医療用貼付剤。

【公開番号】特開2011−182847(P2011−182847A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48605(P2010−48605)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】