説明

医療用診断装置

【課題】位置決め用のレーザ照射の自動化による操作者のストレス低減(作業工数低減)
および患者眼部への誤照射阻止(レーザ障害防止)を目的とする。
【解決手段】顔(または頭部)認識を備えた画像処理機能と位置決め用レーザ照射機能を備えた医療用診断装置(X線装置、X線CT装置、MRI装置、超音波装置等)と患者を医療用診断装置内部に移動するためのベッドにおいて、医療用診断装置に接続されたカメラにて顔(または頭部)を認識してレーザ照射ラインが頭部領域内に入っているか否かを特定し、レーザ照射ラインを頭部領域通過時には位置決め用レーザを消灯する機能によって構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔または頭部の認識を備えた画像処理機能と位置決め用レーザ照射機能を備えた医療用診断装置(例えば、X線装置、X線CT装置、MRI装置、超音波装置等)に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用診断装置において、患者をセットする際、目的とする部位を静磁場中心に配置するのが一般的であり、静磁場中心の位置を表示する方法は投光器による照射光を用いて指し示す方法がある。例えば、MRI装置に取り付けられたレーザを照射し、ベッド上の患者を移動しながら位置決めされる(図3を参照)。
このとき、医療用診断装置に接続されたカメラにて顔(または頭部)を認識してレーザ照射ラインが頭部領域内に入っているか否かを特定する機能が要求される。
【0003】
人物の顔を撮影した撮影画像から人物の顔の特徴点を抽出し、認識する人物に関する顔認識データと上記の特徴点との一致度に基づいて顔認識を行う技術が特許文献1に記載されており、さらに予め特定の表情の画像を登録することを不要としながら、各個人の顔の特徴量をベースとして表情を判定する技術が特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−259534号公報
【特許文献2】特開2008−310775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記医療用診断装置に付属するレーザは、撮像位置決め参照を目的として患者に照射されるが、患者眼部を誤って照射することがあった。この対策として、操作者が手で覆ったり、患者に目をつぶってもらう指示をしていたが、煩わしいだけでなく位置決めに集中できずにベッド移動を複数回繰り返すことがしばしばあった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、位置決め用のレーザ照射を、誤って患者の眼部他に照射する心配がなく、あるいは操作者が手で覆ったり、患者に目をつぶってもらう煩わしい作業を行わなくても良くすることにより、操作者のストレス低減および患者のレーザ障害防止が期待できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明に係る医療用診断装置の主たるものは、被検体の部位を認識する画像処理手段と、被検体の位置決めレーザ照射手段を備えた医療用診断装置において、医療用診断装置に設けられたカメラにて被検体の顔または頭部を含む領域像をモニタするモニタ手段と、顔または頭部を含む領域像から画像処理機能にて顔または頭部を認識する認識手段と、顔または頭部を認識しながら、前記医療用診断装置を構成するガントリ内部に被検体を搭載したベッドを移動する移動手段と、位置決めレーザ照射手段から照射されるレーザが照射するレーザ照射ラインが被検体の顔または頭部領域内に入っているか否かを特定する領域特定手段と、レーザ照射ラインが被検体の顔または頭部領域内通過時には、前記レーザを消灯する手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、位置決め用のレーザ照射を自動化することで、誤って患者の眼部他に照射する心配がなくなるだけでなく、操作者が手で覆ったり、患者に目をつぶってもらう煩わしい作業を行わなくても良くなり、操作者のストレス低減および患者のレーザ障害防止が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態を示すフローチャート図である。
【図2】本発明の基本装置構成を示す模式図である。
【図3】従来の位置決め方法を示す模式図である。
【図4】本発明の位置決め方法を示す模式図である。
【図5】本発明の位置決め方法を示す模式図である。
【図6】本発明のGUI表示例(位置決め時)である。
【図7】本発明のGUI表示例(術中)である。
【図8】従来の治療支援機器構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の機能フローを図1に、また本発明のシステム構成を図2に示す。まず、図2の装置の基本構成を述べる。本装置は、患者(被検体)24の所望の部位の診断用画像を得るためのMRI装置1と、患者24を搭載する天板と、その天板を支持するとともにMRI装置1の開口部32へ、患者を移動搬送する機能を有するベッド21と、患者の画像を撮像するために設けられた映像カメラ44,45と、患者の位置決めするために用いるレーザ照射装置43とを具備している。
【0011】
図2に示す本システム構成図は、図8に示したI−MRIの構成と類似しており、治療装置と一体化した超音波装置40がパーソナルコンピュータ19と連結され、装置間の連結情報はモニタ38上に表示される。一方、超音波プローブ36に取り付けられたポインタ27を位置検出装置9が連続追随し、情報転送することで、超音波画像とMRI(またはCT)装置と治療装置の連結が可能となる。また、位置決めを行うためのレーザ照射装置43と患者をモニタするためのカメラ44、45も座標軸を統合して装置に取り付けられている。
【0012】
ここで、図2で示すMRI装置1は、垂直磁場方式0.3T永久磁石MRI装置1であり、垂直な静磁場を発生させる上部磁石3と下部磁石5、これら磁石を連結するとともに上部磁石3を支持する支柱7、位置検出デバイス9、アーム11、モニタ13、モニタ支持部15、基準ツール17、パーソナルコンピュータ19、ベッド21、制御部23などを含んで構成されている。MRI装置1の図示しない傾斜磁場発生部は、領斜磁場をパルス的に発生させ、最大傾磁場強度15mT/mで、スルーレート20mT/m/msである。更に、MRI装置1は、静磁場中の被検体24に核磁気共鳴を生じさせるための図示しないRF送信器、被検体24からの核磁気共鳴信号を受信する図示しないRF受信器を備え、これらは12.8MHzの共振型コイルである。
【0013】
位置検出デバイス9は、2台の赤外線カメラ25と、赤外線を発光する図示しない発光ダイオードを含んで構成され、断層面指示デバイスであるポインタ27の位置及び姿勢を検出するものである。また、位置検出デバイス9は、アーム11により移動可能に上部磁石3に連結され、MRI装置1に対する配置を適宜変更することができる。
【0014】
モニタ13は、操作者29が把持するポインタ27により指示された被検体24の断層面の画像を表示するもので、モニタ支持部15により、赤外線カメラ25同様上部磁石3に連結されている。基準ツール17は、赤外線カメラ25の座標系とMRI装置1の座標系をリンクさせるもので、3つの反射球35を備え、上部磁石3の側面に設けられている。パーソナルコンピュータ19には、赤外線カメラ25が検出し算出したポインタ27の情報が、術具位置データとして、例えば、RS232Cケーブル33を介して送信される。制御部23は、ワークステーションで構成され、図示しないRF送信器、RF受信器などを制御する。
【0015】
また、制御部23は、パーソナルコンピュータ19と接続されている。パーソナルコンピュータ19では赤外線カメラ25が検出し算出したポインタ27の位置から術具36を考慮してMRI装置1で利用可能な位置データに変換し、制御部23へ送信する。位置データは、撮像シーケンスの撮像断面へ反映される。新たな撮像断面で取得された画像は液晶モニタに表示される。また、画像は映像記録装置34に同時記録される。例えば断層面指示デバイスであるポインタを穿刺針などにとりつけ、穿刺針のある位置を常に撮像断面とする様に構成した場合、モニタには針を常に含む断面が表示されることになる。その他、生体情報に同期した計測をすることも可能であり、患者24に取り付けられた同期(時相)計測装置41にて各種情報(脈波、心電、呼吸)を取得することができる。
【0016】
次に、図2の装置を用いて、図1に示す機能フローを説明する。装置接続カメラ44,45にて患者をモニタする101。得られた映像は顔認識機能にて顔(または頭部)を認識・特定する102。準備が整い次第ベッド移動を開始して患者24をガントリ内に挿入する103。ベッド移動は操作者29の修了指示があるまで継続される104。ただし、レーザ照射ラインが頭部(または眼部)領域内に入っていない場合には105、位置決めレーザ43は照射し続けるが108、レーザ照射ラインが頭部(または眼部)領域内に入っている場合には105、位置決めレーザ43を消灯し続け107、代わりにモニタ上に仮想位置決めライン表示する108。ここで、カメラ44,45で取得する頭部(または眼部)領域とベッド位置は同一座標上で定義されており、ベッドの移動座標とカメラの映像座標は統合されている。すなわち、カメラの映像はモニタ上に表示され、モニタ上で指定した位置は、装置座標に変換され、ベッドの座標位置が特定される。よって、予め設定されたレーザ照射位置およびカメラによる頭部(または眼部)領域を認識することができ、レーザ照射ON/OFFを自動的に実施することが可能となる。
【0017】
図3に、従来のレーザによる患者位置決め方法を示す。MRI装置に患者をセットする際、目的とする部位を静磁場中心に配置するのが一般的であり、静磁場中心の位置を表示する方法は投光器による照射光を用いて指し示す方法がある。照射光は3方向から照射可能であり、3軸方向からの照射光を目視しながら患者の位置を調整可能にしている。本例では、MRI装置1に取り付けられたレーザ43を照射し、ベッド21上の患者24が移動しながら位置決めされる様子を示している。ここでは、レーザが頭頂部601、眼部602、頸部603を示した例であるが、ベッド移動にも関わらずユーザが照射中止指示をしない限りレーザは照射され続けている604〜606。
【0018】
図4、5にて本システムの位置決め方法(自動レーザ消灯機能)を説明する。図3同様にMRI装置1に取り付けられたレーザ43を照射し、ベッド21上の患者24が移動しながら位置決めされる様子を示している。ここでは、レーザが頭頂部701、眼部702、頸部703を示した例であるが、頭頂部701、頸部703のみレーザは照射されている704、706。眼部領域705は予め得られていたカメラ映像と顔認識機能から照射を止めるよう指示されており、ベッド移動と連動して自動的にレーザが消灯され、眼部領域通過後に改めてレーザ照射されたことを示している703。上記レーザ照射ON/OFF機能は、予め設定した診断フェーズ(例えば患者入退出時、患者治療時、患者麻酔時、患者覚醒時等)毎に設定が可能である。
【0019】
一方、操作者801はベッド移動ボタン804を押下して前後左右のベッド移動をするが、顔認識機能をON 805とすることでカメラから入力される映像から顔領域を特定し、GUI 13、14上に表示される807、808。たとえば、レーザ照射上に眼部がある場合には、レーザが照射されない代わりにGUI 13、14上に仮想レーザ13、14が表示される802、803。もし、顔認識機能がOFF 806であれば、従来通り操作者がレーザ照射OFFと指示しない限り照射され続ける。
【0020】
図6に位置決め時のGUI表示例を示す。患者全体モニタボタン901を押下することで、接続カメラにて顔輪郭を検出し912、それらの映像がAxial 921、Sagittal 922、Coronal 923にそれぞれ表示される。また、事前に取得したボリューム画像を任意の断面(Volume Rendering)表示することもできる924。ベッド移動ボタン902を押下することで、ベッド移動が始まり913、必要に応じてレーザボタン903を押下して指標となるレーザ照射を行う。さらに自動レーザ照射ボタン904を押下することで、顔特定機能から眼部領域を特定し、レーザ照射の必要性有/無を判別する914。また、眼部領域では、レーザが自動的に未照射となるため、必要に応じて仮想レーザライン表示ボタン905にて、映像921〜923および画像924上に仮想ライン928〜930を表示することができる915。ユーザはこの情報を用いてガントリ内部においてもベッド位置の微調整を行うことができる916。また、付加機能として、診断装置絶対軸931におけるモニタ情報を表示することもでき932、患者位置を立体的に把握することも可能である。すなわち、事前に撮像した3Dボリューム画像と実画像とを位置合わせして重畳表示する機能も備えている。その他、作業状況のメッセージを表示して作業手順をナビゲーションする機能もある933。
【0021】
なお、ベッドの移動後であっても、過去の映像を用いて患者の位置を再設定して、ベッドを移動することが可能な機能もある。
【0022】
図7に臨床時のGUI表示例を示す。必要に応じてPlanningボタン1001を用いて手術経路を作成(補正)しながら、生体情報ボタン1002、超音波画像ボタン1003やナビゲーション画像ボタン1004を用いて画像誘導を行う。生体情報は、患者情報や術具(治療装置)等の情報詳細が表示されており1012、超音波画像1008は深度1011、ビームパターン1010や周波数等の各種パラメータも表示されている。ナビゲーション画像は3軸断面1013〜1015の他にVolume Rendering画像1016が表示され、超音波プローブ1031〜1033の位置を画像上に重畳表示することもでき、さらに術具に応じた治療予定領域1034〜1036も表示することができる。
【0023】
本発明は、医療用診断装置(X線装置、X線CT装置、MRI装置、超音波装置等)であれば、装置パラメータを変更することにより何れの装置であっても連動することができる。また、術具は術者自信(手技)による治療でも、ロボット/マニピュレータを用いた間接的な手術の何れにも適用可能とすることができる。
【0024】
図8に、従来の治療支援機器構成(I-MRI)を示す。図2で示す本発明によるシステム構成で用いられるMRI装置などは、同様なものを用いている。
【符号の説明】
【0025】
1…MRI装置、3…上部磁石、5…下部磁石、7…支柱、9…位置検出デバイス、11…アーム、13…モニタ、15…モニタ支持部、17…基準ツール、19…パーソナルコンピュータ、21…ベッド、23…制御部、24…被検体、25…赤外線カメラ、27…ポインタ、28…術具B、29…操作者、32…開口部、33…RSC232ケーブル、34…映像記録装置、35…反射球、36…術具(治療器具)、38…超音波診断装置モニタ・治療装置モニタ、40…超音波診断装置・治療装置、41…同期(時相)計測装置、43…レーザ照射装置、44…映像カメラ、45…映像カメラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の部位を認識する画像処理手段と、前記被検体の位置決めレーザ照射手段を備えた医療用診断装置において、
前記医療用診断装置に設けられたカメラにて前記被検体の顔または頭部を含む領域像をモニタするモニタ手段と、
前記顔または頭部を含む領域像から前記画像処理機能にて顔または頭部を認識する認識手段と、
前記顔または頭部を認識しながら、前記医療用診断装置を構成するガントリ内部に前記被検体を搭載したベッドを移動する移動手段と、
前記位置決めレーザ照射手段から照射されるレーザが照射するレーザ照射ラインが前記被検体の顔または頭部領域内に入っているか否かを特定する領域特定手段と、
前記レーザ照射ラインが前記被検体の顔または頭部領域内通過時には、前記レーザを消灯する手段とを備えることを特徴とする医療用診断装置。
【請求項2】
前記画像処理手段は、前記カメラで得られる映像により前記被検体の顔を認識する機能および眼部領域を特定する機能を有することを特徴とする請求項1記載の医療用診断装置。
【請求項3】
前記カメラの取付部は、前記ガントリ内部に挿入される前記被検体を搭載したベッドの移動に追随して、前記カメラの照準方向を変更する機能を有することを特徴とする請求項2記載の医療用診断装置。
【請求項4】
前記画像処理手段にて特定した眼部領域と前記ベッドの移動位置のそれぞれの座標位置は、同一座標上で定義されており、
前記画像処理手段は、前記カメラで得られる映像により前記被検体に対するレーザ照射位置を把握する機能を備えることを特徴とする請求項1記載の医療用診断装置。
【請求項5】
前記画像処理手段にて特定した眼部領域が、前記被検体に対するレーザ照射位置に入った場合にはレーザを消灯する機能とともに、前記眼部領域を外れた場合にはレーザを再照射する機能を備えることを特徴とする請求項1記載の医療用診断装置。
【請求項6】
前記カメラで得られた映像は前記モニタ上に表示され、モニタ上で指定した位置は、前記医療用診断装置の座標に変換され、変換された前記医療用診断装置の座標に基づいて、前記ベッドを前記医療用診断装置の所定位置に移動させる機能を備えることを特徴とする請求項1記載の医療用診断装置。
【請求項7】
前記モニタ手段は、前記モニタ像を事前に撮像した3Dボリューム画像と実画像とを位置合わせして重畳表示する機能を備えることを特徴とする請求項1記載の医療用診断装置。
【請求項8】
前記カメラで得られた映像は前記ベッドの移動後に再生することができ、過去の映像を用いて前記被検体の所定位置を再設定し前記ベッドを移動する機能を備えることを特徴とする請求項1記載の医療用診断装置。
【請求項9】
前記レーザ照射手段のON/OFF機能は、予め設定した前記被検体の診断フェーズ毎に設定できることを特徴とする請求項1記載の医療用診断装置。
【請求項10】
前記位置決めレーザ照射手段による位置決め機能は、X線装置、X線CT装置、MRI装置、超音波装置のいずれか少なくとも一つの医療用診断装置において、該装置の装置パラメータを変更することにより適用可能であることを特徴とする請求項1記載の医療用診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−50583(P2011−50583A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202668(P2009−202668)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、独立行政法人科学技術振興機構、「急性脳梗塞治療における経頭蓋超音波脳血栓溶解装置に関する新技術の開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】