説明

医療用X線撮像システム

【課題】少なくとも二つの撮像モードを有する医療用のX線撮像システムにおいて、該二つの撮像モードを一つの固体撮像装置によって実現し、且つ固体撮像装置の受光面に要求される面積の増加を抑える。
【解決手段】固体撮像装置1Aは、M×N個(M<N、M及びNは2以上の整数)の画素がM行N列に2次元配列されて成り、行方向を長手方向とする長方形状の受光面を有する受光部10Aとを有する。この固体撮像装置1Aは回転制御部によって回転可能に支持されており、回転制御部は、二つの撮像モードのうち一方の撮像モードの際には受光部10Aの長手方向が固体撮像装置1Aの移動方向Bと平行になるように、また、二つの撮像モードのうち他方の撮像モードの際には受光部10Aの長手方向が固体撮像装置1Aの移動方向Bと直交するように、固体撮像装置1Aの回転角を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用X線撮像システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療用のX線撮影において、近年、X線感光フィルムに代えて、X線撮像装置を使用したX線イメージングシステムが広く用いられるようになってきた。こうしたX線イメージングシステムは、X線感光フィルムのように現像の必要がなく、リアルタイムにX線画像を確認することができるなど利便性が高く、データの保存性や取扱いの容易性の面でも優位な点を有する。歯科の診断におけるX線撮影においても、パノラマ、セファロ、CTといった各種の撮像モードにおいてこのようなX線イメージングシステムが使用されつつある。
【0003】
歯科用のX線撮像システムの場合、X線撮像装置に要求される撮像領域の形状が、上記した各種の撮像モードによって異なる場合がある。すなわち、パノラマ撮影やセファロ撮影に使用される撮像領域には上下方向に十分な幅が要求される。また、CT撮影に使用される撮像領域には横方向に十分な幅が要求され、上下方向にも或る程度の幅が要求される。しかし、これらの要求を満たす複数のX線撮像装置を用意すると、X線撮像システムが大型化したり、或いは撮像モードを変更する際にX線撮像装置の交換が必要となり手間がかかるといった問題が生じる。したがって、撮像領域に関するこれらの要求を一つのX線撮像装置により解決できることが好ましい。
【0004】
例えば特許文献1には、X線発生部とX線検出部とを備えた歯科診断用のX線撮影装置が開示されている。このX線撮影装置では、X線細隙ビームとX線広域ビームとを選択的に切り替えて発生できるように、細溝状スリット又は矩形状スリットを介してX線が照射される。X線細隙ビームはパノラマ撮影やセファロ撮影等に使用され、X線広域ビームはCT撮影等に使用される。そして、この特許文献1には、細溝状スリットを通過したX線細隙ビーム、及び矩形状スリットを通過したX線広域ビームの双方を一つの固体撮像素子によって撮影することが記載されている。
【0005】
また、このような医療用のX線撮像システムに用いられる固体撮像装置としては、CMOS技術を用いたものが知られており、その中でもパッシブピクセルセンサ(PPS:Passive PixelSensor)方式のものが知られている。PPS方式の固体撮像装置は、入射光強度に応じた量の電荷を発生するフォトダイオードを含むPPS型の画素がM行N列に2次元配列された受光部を備え、各画素において光入射に応じてフォトダイオードで発生した電荷を積分回路において容量素子に蓄積し、その蓄積電荷量に応じた電圧値を出力するものである。
【0006】
一般に、各列のM個の画素それぞれの出力端は、その列に対応して設けられている読出用配線を介して、その列に対応して設けられている積分回路の入力端と接続されている。そして、各画素のフォトダイオードで発生した電荷は、第1行から第M行まで順次に行毎に、当該列に対応する読出用配線を通って積分回路に入力され、その積分回路から電荷量に応じた電圧値が出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2006/109808号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述したように、歯科用のX線撮像システムの場合、固体撮像装置に要求される撮像領域の形状がパノラマやCTといった各種の撮像モードによって異なる場合があり、これらの撮像モードを一つの固体撮像装置により実現できることが好ましい。しかしながら、特許文献1に記載された構成では、これらの撮像モードにおけるX線ビームを一つの固体撮像装置によって撮影するものの、上下方向に十分な幅を有するパノラマ用の撮像領域と、横方向に十分な幅を有するCT用の撮像領域とを一つの受光面内に収める為には、上下方向および横方向の双方において十分な幅を有する広い受光面が必要となる。しかし、固体撮像装置の受光部の材料となる半導体ウェハの大きさ等の制約により、このような広い受光面を有する固体撮像装置を生産できない場合がある。
【0009】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、少なくとも二つの撮像モードを有する医療用のX線撮像システムにおいて、該二つの撮像モードを一つの固体撮像装置によって実現し、且つ固体撮像装置の受光面に要求される面積の増加を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る医療用X線撮像システムは、固体撮像装置とX線発生装置とを備え、X線発生装置から出力されて被検者の顎部を透過したX線を固体撮像装置により撮像するための少なくとも二つの撮像モードを有する医療用X線撮像システムであって、固体撮像装置が、フォトダイオードを各々含むM×N個(M<N、M及びNは2以上の整数)の画素がM行N列に2次元配列されて成り、行方向を長手方向とする長方形状の受光面を有する受光部と、各列毎に配設され、対応する列の画素に含まれるフォトダイオードと読出用スイッチを介して接続されたN本の読出用配線と、読出用配線を経て入力された電荷の量に応じた電圧値を保持し、その保持した電圧値を順次に出力する信号読出部と、各画素の読出用スイッチの開閉動作を制御するとともに、信号読出部における電圧値の出力動作を制御して、各画素のフォトダイオードで発生した電荷の量に応じた電圧値を信号読出部から出力させる制御部と、入射したX線に応じてシンチレーション光を発生してX線像を光像へと変換し、該光像を受光部へ出力するシンチレータとを有し、固体撮像装置およびX線発生装置が対向した状態で被検者の顎部の周りに旋回が可能であり、または、固体撮像装置が被検者の顎部に対して直線変位が可能であり、固体撮像装置を受光面に垂直な軸線周りに回転可能に支持するとともに、二つの撮像モードのうち一方の撮像モードの際には受光部の長手方向が旋回または直線変位の際の固体撮像装置の移動方向と平行になるように、また、二つの撮像モードのうち他方の撮像モードの際には受光部の長手方向が旋回または直線変位の際の固体撮像装置の移動方向と直交するように、固体撮像装置の回転角を制御する回転制御部を更に備え、制御部が、他方の撮像モードの際に、受光部において連続するM行(M<M)の特定範囲に含まれる各画素のフォトダイオードで発生した電荷の量に応じた電圧値を信号読出部から出力させ、特定範囲の長手方向が旋回または直線変位の際の固体撮像装置の移動方向と直交することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る医療用X線撮像システムにおいては、固体撮像装置の受光部が長方形状の受光面を有している。また、この固体撮像装置は、回転制御部によって受光面に垂直な軸線周りに回転可能に支持されている。そして、二つの撮像モードのうち一方の撮像モード(例えばCT撮像モード)の際には受光部の長手方向が固体撮像装置の移動方向と平行になるように、また、他方の撮像モード(例えばパノラマ撮像モード)の際には受光部の長手方向が固体撮像装置の移動方向と直交するように、固体撮像装置の回転角が制御される。このような構成によって、固体撮像装置の移動方向を長手方向とする撮像領域(例えばCT用の撮像領域)を必要とする場合、及び固体撮像装置の移動方向と直交する方向を長手方向とする撮像領域(例えばパノラマ用の撮像領域)を必要とする場合のそれぞれにおいて、撮像領域の長手方向と受光部の長手方向とを互いに一致させることができる。したがって、上記した医療用X線撮像システムによれば、二つの撮像モードを一つの固体撮像装置によって実現するとともに、各撮像モードにおいて必要とされる異なる形状の撮像領域を一つの受光面内に収める為に必要な受光面の面積の増加を抑えることができる。
【0012】
また、本発明に係る医療用X線撮像システムでは、複数の画素がM行N列に2次元配列された固体撮像装置の受光面の形状が行方向を長手方向とする長方形状であり、M<N、すなわち画素の列数が行数より多くなっている。そして、前述したように、各撮像モードにおける撮像領域の長手方向と受光面の長手方向とが互いに一致する。また、この医療用X線撮像システムでは、このような構成に加え、読出用配線が各列毎に配設されているので、読出用配線の配設方向と撮像領域の短手方向とが各撮像モードにおいて常に一致することとなる。したがって、何れの撮像モードにおいても、各フレームにおいて読出用配線から電荷を読み出す対象となる画素(フォトダイオード)の数を少なくできるので、フレームレート(単位時間当たりに出力されるフレームデータの個数)をより速くすることができる。
【0013】
また、本発明に係る医療用X線撮像システムでは、制御部が、他方の撮像モードの際に、受光部において連続するM行の特定範囲に含まれる各画素のフォトダイオードで発生した電荷の量に応じた電圧値を信号読出部から出力させる。これにより、例えばパノラマ撮像モードにおける上下方向を長手方向とする細長い形状の撮像領域を好適に実現できる。
【0014】
また、医療用X線撮像システムは、固体撮像装置の回転中心が、長方形状の受光部における四つの角部のうち一つの角部に位置しており、この一つの角部が二つの撮像モードの双方において被検者に対し下顎側に位置するように固体撮像装置が回転することを特徴としてもよい。固体撮像装置が被検者の顎部の周囲を移動しつつX線像を撮像する際、被検者の下顎部を支持台の上に載せることにより被検者の頭部の位置を固定することが多く、このような場合には被検者の顎部の高さ位置の基準は顎の下端となる。この医療用X線撮像システムによれば、二つの撮像モードにおける受光面の下端の高さを、回転中心となる角部の高さで互いに一致させることができる。したがって、二つの撮像モードにおける受光面の高さと被検者の顎部の高さとを精度良く合わせることができる。
【0015】
また、医療用X線撮像システムは、制御部が、一方の撮像モードの際に、受光部におけるM×N個の画素それぞれのフォトダイオードで発生した電荷の量に応じた電圧値を信号読出部から出力させることを特徴としてもよい。これにより、例えばCT撮像モードにおける横方向にやや長い幅広の形状の撮像領域を好適に実現できる。
【0016】
また、医療用X線撮像システムは、上記特定範囲が、受光部において信号読出部寄りに位置することを特徴としてもよい。或いは、上記特定範囲が、受光部におけるM行のうち信号読出部に最も近い行から順に数えてM行の範囲であることを特徴としてもよい。これらの何れかにより、読出用配線に断線等の故障が生じた場合に特定範囲(すなわち撮像領域)が読み出し不能となる確率を低減できる。
【0017】
また、固体撮像装置は、受光部における特定範囲と、この特定範囲を除く他の範囲との間に、各読出用配線上に設けられた切離用スイッチを更に有し、制御部が、一方の撮像モードの際に切離用スイッチを閉じ、他方の撮像モードの際に切離用スイッチを開くことが好ましい。これにより、各撮像モードに応じた撮像領域の切り替えを好適に行うことができる。
【0018】
また、制御部が、他方の撮像モードの際に上記特定範囲に含まれる各画素の電荷量に応じた電圧値を信号読出部から出力させる場合、固体撮像装置は、他方の撮像モードの際に受光部における特定範囲を除く他の範囲の各画素のフォトダイオードの接合容量部を放電する放電手段を更に有することが好ましい。これにより、他方の撮像モードの際に、特定範囲を除く他の範囲に含まれる各画素のフォトダイオードに蓄積した電荷を容易に排出できる。
【0019】
また、医療用X線撮像システムは、制御部が、他方の撮像モードの際に、一方の撮像モードと比べて、信号読出部から出力される電圧値に基づくフレームデータにおける読出し画素ピッチを小さくし、単位時間当たりに出力されるフレームデータの個数であるフレームレートを速くし、信号読出部における入力電荷量に対する出力電圧値の比であるゲインを大きくすることを特徴としてもよい。これにより、CTやパノラマといった各撮像モードに適した動作を行うことができる。
【0020】
また、医療用X線撮像システムは、一方の撮像モードが歯科用X線撮影におけるCT撮影を行う撮像モードであり、他方の撮像モードが歯科用X線撮影におけるパノラマ撮影を行う撮像モードであることが好適である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、少なくとも二つの撮像モードを有する医療用のX線撮像システムにおいて、該二つの撮像モードを一つの固体撮像装置によって実現し、且つ固体撮像装置の受光面に要求される面積の増加を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態に係るX線撮像システム100の構成図である。
【図2】被写体A(被検者の顎部)の上方から見て、固体撮像装置1Aが被写体Aの周囲を旋回移動する様子を示す図である。
【図3】固体撮像装置1Aの一部を切り欠いて示す平面図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿った固体撮像装置1Aの側断面図である。
【図5】撮像モードに応じた固体撮像装置1Aの角度位置、および受光部10Aにおける撮像領域を示す図である。(a)CT撮影といった撮像モード(第1撮像モード)における、固体撮像装置1Aの角度位置と受光部10Aの撮像領域10aとを示す図である。(b)パノラマ撮影やセファロ撮影といった撮像モード(第2撮像モード)における、固体撮像装置1Aの角度位置と受光部10Aの撮像領域10bとを示す図である。
【図6】(a)シリコンウェハWにおいて受光部10Aの為に正方形の面付けを行った様子を示す図である。(b)シリコンウェハWにおいて受光部10Aの為に長方形の面付けを行った様子を示す図である。
【図7】受光部を回転させずに使用する従来の固体撮像装置における電荷読み出し方式を示す図である。(a)信号読出部120を撮像領域110aの長手方向に沿って配置した場合を示している。(b)信号読出部120を撮像領域110bの長手方向に沿って配置した場合を示している。
【図8】受光部130の短手方向に沿って信号読出部140を配置した場合における、(a)第1撮像モード及び(b)第2撮像モードそれぞれの電荷読み出し方式を示す図である。
【図9】第1実施形態に係る固体撮像装置1Aの電荷読み出し方式を示す図である。
【図10】固体撮像装置1Aの回転中心(図1に示した軸線C)の位置に応じた、受光部10Aの回転の様子を示す図である。(a)受光部10Aの中心Eを固体撮像装置1Aの回転中心とした場合を示している。(b)長方形状の受光部10Aにおける四つの角部のうち一つの角部Fを固体撮像装置1Aの回転中心とし、第1撮像モード及び第2撮像モードを通じて角部Fが他の角部に対して下方に位置するように固体撮像装置1Aを回転させた場合を示している。
【図11】第1実施形態に係る固体撮像装置1Aの内部構成を示す図である。
【図12】第1実施形態に係る固体撮像装置1Aの画素Pm,n,積分回路Sおよび保持回路Hそれぞれの回路図である。
【図13】(a),(b)第2撮像モードにおける撮像領域10bを信号読出部20寄りに配置する利点を説明するための図である。
【図14】第1実施形態に係る固体撮像装置1Aの動作を説明するタイミングチャートである。
【図15】第1実施形態に係る固体撮像装置1Aの動作を説明するタイミングチャートである。
【図16】第1実施形態に係る固体撮像装置1Aの動作を説明するタイミングチャートである。
【図17】第1実施形態に係る固体撮像装置1Aの構成の変形例を示す図である。
【図18】第2実施形態に係る固体撮像装置1Bの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態として、医療用X線撮像システム100の構成を示す図である。本実施形態のX線撮像システム100は、主に歯科医療におけるパノラマ撮影、セファロ撮影、CT撮影といった撮像モードを備えており、被検者の顎部のX線像を撮像する。X線撮像システム100は、固体撮像装置とX線発生装置とを備えており、X線発生装置から出力されて被写体A(すなわち被検者の顎部)を透過したX線を固体撮像装置により撮像する。
【0025】
この図に示されるX線撮像システム100は、固体撮像装置1Aと、X線発生装置106と、固体撮像装置1Aを回転可能に支持する回転制御部108とを備えている。
【0026】
X線発生装置106は、被写体Aに向けてX線を発生する。X線発生装置106から発生したX線の照射野は、一次スリット板106bによって制御される。X線発生装置106にはX線管が内蔵されており、そのX線管の管電圧、管電流および通電時間などの条件が調整されることによって、被写体AへのX線照射量が制御される。また、X線発生装置106は、一次スリット板106bの開口範囲が制御されることで、或る撮像モードのときに所定の拡がり角でX線を出力し、別の撮像モードではこの所定の拡がり角より狭い拡がり角でX線を出力することができる。
【0027】
固体撮像装置1Aは、2次元配列された複数の画素を有するCMOS型の固体撮像装置であり、被写体Aを通過したX線像を電気的な画像データDに変換する。固体撮像装置1Aの前方には、X線入射領域を制限する二次スリット板107が設けられる。回転制御部108は、固体撮像装置1Aを、固体撮像装置1Aの受光面11に垂直な軸線C周りに回転可能に支持し、CT撮影やパノラマ撮影、セファロ撮影といった撮像モードに応じた所定の角度位置に固体撮像装置1Aを回転させる。
【0028】
X線撮像システム100は、旋回アーム104を更に備えている。旋回アーム104は、X線発生装置106と固体撮像装置1Aとを互いに対向させるように保持して、CT撮影やパノラマ撮影、或いはセファロ撮影の際にこれらを被写体Aの周りに旋回させる。また、リニア断層撮影の際には、固体撮像装置1Aを被写体Aに対して直線変位させるためのスライド機構113が設けられる。旋回アーム104は、回転テーブルを構成するアームモータ109によって駆動され、その回転角度が角度センサ112によって検出される。また、アームモータ109は、XYテーブル114の可動部に搭載され、回転中心が水平面内で任意に調整される。
【0029】
固体撮像装置1Aから出力される画像データDは、CPU(中央処理装置)121にいったん取り込まれた後、フレームメモリ122に格納される。フレームメモリ122に格納された画像データから、所定の演算処理によって任意の断層面に沿った断層画像やパノラマ画像が再生される。再生された断層画像やパノラマ画像は、ビデオメモリ124に出力され、DA変換器125によってアナログ信号に変換された後、CRT(陰極線管)などの画像表示部126によって表示され、各種診断に供される。
【0030】
CPU121には、信号処理に必要なワークメモリ123が接続され、さらにパネルスイッチやX線照射スイッチ等を備えた操作パネル119が接続されている。また、CPU121は、アームモータ109を駆動するモータ駆動回路111、一次スリット板106b及び二次スリット板107の開口範囲を制御するスリット制御回路115及び116、並びにX線発生装置106を制御するX線制御回路118にそれぞれ接続され、さらに、固体撮像装置1Aを駆動するためのクロック信号を出力する。X線制御回路118は、固体撮像装置1Aにより撮像された信号に基づいて、被写体へのX線照射量を帰還制御する。
【0031】
図2は、被写体A(被検者の顎部)の上方から見て、固体撮像装置1Aが被写体Aの周囲を旋回移動する様子を示す図である。なお、この図では、固体撮像装置1Aの軌跡を一点鎖線で示している。固体撮像装置1Aは、旋回アーム104によって、被写体Aを中心とし水平面に沿った周方向(図中の矢印B)に移動しながら、被写体Aを通過したX線像の撮像を行う。この際、固体撮像装置1Aの受光面11が常に被写体Aと対向するように、固体撮像装置1Aの向きが設定される。
【0032】
図3及び図4は、本実施形態における固体撮像装置1Aの構成を示す図である。図3は固体撮像装置1Aの一部を切り欠いて示す平面図であり、図4は図3のIV−IV線に沿った固体撮像装置1Aの側断面図である。なお、図3及び図4には、理解を容易にするためXYZ直交座標系を併せて示している。
【0033】
図3に示すように、固体撮像装置1Aは、半導体基板3の主面に作り込まれた受光部10A、信号読出部20、A/D変換部30および走査シフトレジスタ40を備えている。なお、受光部10A、信号読出部20、A/D変換部30および走査シフトレジスタ40は、それぞれ別個の半導体基板上に形成されていても良い。また、図4に示すように、固体撮像装置1Aは、半導体基板3の他、平板状の基材2、シンチレータ4およびX線遮蔽部5を備えている。半導体基板3は基材2に貼り付けられ、シンチレータ4は半導体基板3上に配置されている。シンチレータ4は、入射したX線に応じてシンチレーション光を発生してX線像を光像へと変換し、この光像を受光部10Aへ出力する。シンチレータ4は受光部10Aを覆うように設置されるか、或いは受光部10A上に蒸着により設けられる。X線遮蔽部5は、X線の透過率が極めて低い鉛等の材料からなる。X線遮蔽部5は半導体基板3の周縁部を覆っており、信号読出部20等へのX線の入射を防止する。
【0034】
受光部10Aは、M×N個の画素PがM行N列に2次元配列されることにより構成されている。なお、図3において、列方向はX軸方向と一致し、行方向はY軸方向と一致する。M,Nそれぞれは2以上であってM<Nを満たす整数である。すなわち、受光部10Aにおける行方向の画素Pの数は、列方向の画素Pの数より多い。そして、受光部10Aの受光面は、行方向(Y軸方向)を長手方向とし、列方向(X軸方向)を短手方向とする長方形状を呈している。各画素Pは、例えば100μmピッチで配列されており、PPS方式のものであって共通の構成を有している。
【0035】
なお、半導体基板3において、受光部10Aの周囲にも画素が形成されているが、このような画素はX線遮蔽部5によって覆われていて、光が入射せず電荷が発生しないので、撮像には寄与しない。本実施形態の受光部10Aは、撮像の為の有効な画素として、M行N列に2次元配列されたM×N個の画素Pを含むものである。換言すれば、本実施形態の半導体基板3において受光部10Aとなる領域は、X線遮蔽部5の開口5aによって規定される。
【0036】
信号読出部20は、受光部10Aの各画素Pから出力された電荷の量に応じた電圧値を保持し、その保持した電圧値を順次に出力する。AD変換部30は、信号読出部20から出力された電圧値を入力し、その入力した電圧値(アナログ値)に対してA/D変換処理して、その入力電圧値に応じたデジタル値を出力する。走査シフトレジスタ40は、各画素Pに蓄積された電荷が行毎に信号読出部20へ順次出力されるように各画素Pを制御する。
【0037】
このような固体撮像装置1Aを備えるX線撮像システム100は、前述したように、CT撮影、パノラマ撮影、及びセファロ撮影といった撮像モードを備えている。そして、固体撮像装置1Aは、受光面に垂直な軸線周りに回転可能なように回転制御部108によって支持されており、撮像モードに応じた所定の角度位置に制御される。また、固体撮像装置1Aは、受光部10Aにおける撮像領域(受光部10Aのうち撮像データに寄与する領域)を撮像モードに応じて変更する機能を有する。
【0038】
ここで、図5は、撮像モードに応じた固体撮像装置1Aの角度位置、および受光部10Aにおける撮像領域を示す図である。図5(a)は、CT撮影といった撮像モード(第1撮像モード)における、固体撮像装置1Aの角度位置と受光部10Aの撮像領域10aとを示す図である。また、図5(b)は、パノラマ撮影やセファロ撮影といった撮像モード(第2撮像モード)における、固体撮像装置1Aの角度位置と受光部10Aの撮像領域10bとを示す図である。なお、図5(a),(b)において、矢印Bは旋回アーム104(図1参照)による固体撮像装置1Aの移動方向を示している。
【0039】
図5(a)に示すように、CT撮影といった第1撮像モードの際には、受光部10Aの長手方向(行方向)が移動方向Bに沿うように、更に厳密には受光部10Aの行方向が移動方向Bと平行になるように固体撮像装置1Aの回転角が制御される。また、このときの撮像領域10aは、受光部10AにおけるM行N列の全ての画素Pによって構成される。すなわち、撮像領域10aの行方向の長さ及び列方向の幅は、それぞれ受光部10Aと同じである。
【0040】
また、図5(b)に示すように、パノラマ撮影やセファロ撮影といった第2撮像モードの際には、受光部10Aの長手方向(行方向)が移動方向Bと直交するように、換言すれば、固体撮像装置1Aの旋回平面に対して垂直となるように、固体撮像装置1Aの回転角が制御される。したがって、例えばCT撮像モードからパノラマ撮像モードに移行する際には、固体撮像装置1Aは90°回転することとなる。また、このときの撮像領域10bは、M行に配列された画素Pのうち連続するM行(但し、M<M)の画素Pによって構成される。すなわち、撮像領域10bの行方向の長さは受光部10Aと同じであり、撮像領域10bの列方向の幅は受光部10Aより短い。また、このような撮像領域10bは、可能な限り信号読出部20に近いことが好ましい。例えば、受光部10AにおけるM行のうち、信号読出部20に最も近い行から順に数えてM行の範囲を撮像領域10bとするとよい。なお、このような撮像領域10bは、電荷を取り出す対象となる画素Pを、図3に示した走査シフトレジスタ40において選択することにより実現される。
【0041】
本実施形態に係るX線撮像システム100においては、このように固体撮像装置1Aの回転角が制御されることにより、以下の効果が得られる。上述したように、固体撮像装置1Aの受光部10Aは長方形状の受光面を有している。そして、固体撮像装置1Aの移動方向Bを長手方向とする撮像領域10aを必要とする第1撮像モード、及び固体撮像装置1Aの移動方向Bと直交する方向を長手方向とする撮像領域10bを必要とする第2撮像モードのそれぞれにおいて、撮像領域10a,10bの長手方向と受光部10Aの長手方向とを互いに一致させることができる。したがって、本実施形態に係るX線撮像システム100によれば、二つの撮像モードを一つの固体撮像装置1Aによって実現するとともに、各撮像モードにおいて必要とされる異なる形状の撮像領域10a,10bを一つの受光部10Aに収める為に必要な受光部10Aの面積を小さくできる。
【0042】
ここで、CT撮影を行う第1撮像モードでは、一回の撮影で歯列の幅全体を撮影する必要があるので、撮像領域10aの寸法として例えば高さ(すなわち移動方向Bと直交する方向の幅)8cm以上、横幅(移動方向Bと平行な方向の幅)12cm以上が要求される。そこで、図6(a)に示すように、略円形のシリコンウェハWにおいて受光部10Aの為に正方形の面付けを行うことにより、受光部10Aの寸法を例えば横幅12cm、高さ12cmとすれば第1撮像モードの要求寸法を満足する。しかし、パノラマ撮影を行う第2撮像モードでは、一回の撮影で顎から上下歯列までを撮影する必要があるので、撮像領域10bの寸法として例えば高さ15cm以上が要求される(なお、横幅は7mm以上あればよい)。したがって、一つの固体撮像装置を用いて双方の撮像モードを実現しようとする場合、特許文献1に記載された構成のように固体撮像装置を回転させずにこれらの撮像領域を割り付けると、高さ15cm以上、横幅12cm以上の受光部が必要となり、より大きなシリコンウェハが必要となる。
【0043】
これに対し、例えば図6(b)に示すように、シリコンウェハWにおける受光部10Aの寸法を15cm×8cmの長方形とすれば、第2撮像モードにおける撮像領域10bの要求寸法を満足する受光部10Aを実現できる。そして、本実施形態の固体撮像装置1Aのようにこの受光部10Aを90°回転させることで、第1撮像モードにおける撮像領域10aの要求寸法をも満足することができる。このように、本実施形態に係る固体撮像装置1Aによれば、第1撮像モード及び第2撮像モードにおいて必要とされる異なる形状の撮像領域10a,10bを、シリコンウェハを大面積化することなく一つの受光部10Aに収めることができる。
【0044】
また、例えば特許文献1に記載された構成のように固体撮像装置を回転させずに使用すると、図7(a),(b)に示すように、受光部110において第1撮像モードの撮像領域110aの長手方向と第2撮像モードの撮像領域110bの長手方向とが互いに直交することとなる。このような構成では、例えば図7(a)に示すように信号読出部120を撮像領域110aの長手方向に沿って配置すると、撮像領域110aにおける一列あたりの画素数は少なくなるが(図7(a)の矢印E)、撮像領域110bにおける一列あたりの画素数が多くなってしまい(図7(a)の矢印E)、第2撮像モードにおける電荷の読み出しに時間が掛かる。逆に、例えば図7(b)に示すように信号読出部120を撮像領域110bの長手方向に沿って配置すると、撮像領域110bにおける一列あたりの画素数は少なくなるが(図7(b)の矢印E)、撮像領域110aにおける一列あたりの画素数が多くなってしまい(図7(b)の矢印E)、第1撮像モードにおける電荷の読み出しに時間が掛かる。このように、固体撮像装置を回転させずに各撮像領域を割り付けると、第1撮像モード及び第2撮像モードの何れかにおいて電荷の読み出しに時間が掛かり、フレームレート(単位時間当たりに出力されるフレームデータの個数)が遅くなってしまう。
【0045】
また、図8(a),(b)に示すように、受光部130の形状を長方形とし、固体撮像装置を回転して使用した場合であっても、列数Nが行数Mより少ない場合(換言すれば、受光部130の短手方向に沿って信号読出部140を配置した場合)、第1撮像モードの撮像領域130aおよび第2撮像モードの撮像領域130bの両方において、一列あたりの画素数が多くなってしまう(図8(a)の矢印E、図8(b)の矢印E)。この場合、第1撮像モードと第2撮像モードの両方において電荷の読み出しに時間が掛かり、フレームレートが遅くなってしまう。
【0046】
これらに対し、本実施形態に係る固体撮像装置1Aにおいては、図9(a),(b)に示すように受光部10Aの受光面の形状が行方向を長手方向とする長方形状であり、M<N、すなわち画素Pの列数Nが行数Mより多くなっている。そして、前述したように、各撮像モードにおける撮像領域10a,10bの長手方向と受光部10Aの長手方向とは、互いに一致する。固体撮像装置1Aでは、各画素Pから電荷を読み出すためのN本の読出用配線(後述)が各列毎に配設されるが、これらの構成によって、読出用配線の配設方向と、撮像領域10a,10bの短手方向とが各撮像モードにおいて常に一致することとなる。したがって、何れの撮像モードにおいても、各フレームにおいて読出用配線から電荷を読み出す対象となる画素Pの数を少なくできるので(図9(a)の矢印E、図9(b)の矢印E)、電荷の読み出し時間を短縮でき、フレームレートをより速くすることができる。
【0047】
また、前述したように、固体撮像装置1Aは回転制御部108によって支持されており、撮像モードに応じた角度位置に制御される。ここで、図10は、固体撮像装置1Aの回転中心(図1に示した軸線C)の位置に応じた、受光部10Aの回転の様子を示す図である。図10(a)は、受光部10Aの中心Eを固体撮像装置1Aの回転中心とした場合を示している。また、図10(b)は、長方形状の受光部10Aにおける四つの角部のうち一つの角部Fを固体撮像装置1Aの回転中心とし、第1撮像モード及び第2撮像モードを通じて角部Fが他の角部に対して下方に位置するように(すなわち、被検者に対し角部Fが常に下顎側に位置するように)固体撮像装置1Aを回転させた場合を示している。なお、図10(a),(b)において、実線で示した図はパノラマ撮影やセファロ撮影といった第2撮像モードにおける受光部10Aの角度位置を示しており、破線で示した図はCT撮影といった第1撮像モードにおける受光部10Aの角度位置を示している。
【0048】
本実施形態の固体撮像装置1Aの回転中心は、例えば図10(a)の中心Eや図10(b)の角部Fなど様々な位置に設定可能であるが、図10(b)の角部Fに固体撮像装置1Aの回転中心が設定されることが最も好ましい。固体撮像装置1Aが被検者の顎部の周囲を移動しつつX線像を撮像する際、被検者の下顎部を支持台の上に載せることにより被検者の頭部の位置を固定することが多く、このような場合には被検者の顎部の高さ位置の基準は顎の下端となる。そこで、図10(b)の角部Fに固体撮像装置1Aの回転中心を設定すれば、第1撮像モード及び第2撮像モードにおける受光部10Aの下端の高さを、角部Fの高さで互いに一致させることができる。したがって、第1撮像モード及び第2撮像モードの双方において、受光部10Aの高さと被検者の顎部の高さとを精度良く合わせることができる。
【0049】
続いて、本実施形態に係る固体撮像装置1Aの詳細な構成について説明する。図11は、固体撮像装置1Aの内部構成を示す図である。受光部10Aは、M×N個の画素P1,1〜PM,NがM行N列に2次元配列されて成る。画素Pm,nは第m行第n列に位置する。ここで、mは1以上M以下の各整数であり、nは1以上N以下の各整数である。第m行のN個の画素Pm,1〜Pm,Nそれぞれは、第m行選択用配線LV,mにより走査シフトレジスタ40と接続されている。なお、図11において、走査シフトレジスタ40は制御部6Aに含まれている。第n列のM個の画素P1,n〜PM,nそれぞれの出力端は、第n列読出用配線LO,nにより、信号読出部20の積分回路Sと接続されている。
【0050】
信号読出部20は、N個の積分回路S〜SおよびN個の保持回路H〜Hを含む。各積分回路Sは共通の構成を有している。また、各保持回路Hは共通の構成を有している。各積分回路Sは、読出用配線LO,nと接続された入力端を有し、この入力端に入力された電荷を蓄積して、その蓄積電荷量に応じた電圧値を出力端から保持回路Hへ出力する。N個の積分回路S〜Sそれぞれは、リセット用配線Lにより制御部6Aと接続され、また、ゲイン設定用配線Lにより制御部6Aと接続されている。各保持回路Hは、積分回路Sの出力端と接続された入力端を有し、この入力端に入力される電圧値を保持し、その保持した電圧値を出力端から電圧出力用配線Loutへ出力する。N個の保持回路H〜Hそれぞれは、保持用配線Lにより制御部6Aと接続されている。また、各保持回路Hは、第n列選択用配線LH,nにより制御部6Aの読出シフトレジスタ41と接続されている。
【0051】
A/D変換部30は、N個の保持回路H〜Hそれぞれから電圧出力用配線Loutへ出力される電圧値を入力し、その入力した電圧値(アナログ値)に対してA/D変換処理を行い、その入力電圧値に応じたデジタル値を画像データDとして出力する。
【0052】
制御部6Aの走査シフトレジスタ40は、第m行選択制御信号Vsel(m)を第m行選択用配線LV,mへ出力して、この第m行選択制御信号Vsel(m)を第m行のN個の画素Pm,1〜Pm,Nそれぞれに与える。M個の行選択制御信号Vsel(1)〜Vsel(M)は順次に有意値とされる。また、制御部6Aの読出シフトレジスタ41は、第n列選択制御信号Hsel(n)を第n列選択用配線LH,nへ出力して、この第n列選択制御信号Hsel(n)を保持回路Hに与える。N個の列選択制御信号Hsel(1)〜Hsel(N)も順次に有意値とされる。
【0053】
また、制御部6Aは、リセット制御信号Resetをリセット用配線Lへ出力して、このリセット制御信号ResetをN個の積分回路S〜Sそれぞれに与える。制御部6Aは、ゲイン設定信号Gainをゲイン設定用配線Lへ出力して、このゲイン設定信号GainをN個の積分回路S〜Sそれぞれに与える。制御部6Aは、保持制御信号Holdを保持用配線Lへ出力して、この保持制御信号HoldをN個の保持回路H〜Hそれぞれに与える。さらに、制御部6Aは、図示してはいないが、A/D変換部30におけるA/D変換処理をも制御する。
【0054】
図12は、固体撮像装置1Aの画素Pm,n、積分回路Sおよび保持回路Hそれぞれの回路図である。ここでは、M×N個の画素P1,1〜PM,Nを代表して画素Pm,nの回路図を示し、N個の積分回路S〜Sを代表して積分回路Sの回路図を示し、また、N個の保持回路H〜Hを代表して保持回路Hの回路図を示す。すなわち、第m行第n列の画素Pm,nおよび第n列読出用配線LO,nに関連する回路部分を示す。
【0055】
画素Pm,nは、フォトダイオードPDおよび読出用スイッチSWを含む。フォトダイオードPDのアノード端子は接地され、フォトダイオードPDのカソード端子は読出用スイッチSWを介して第n列読出用配線LO,nと接続されている。フォトダイオードPDは、入射光強度に応じた量の電荷を発生し、その発生した電荷を接合容量部に蓄積する。読出用スイッチSWは、制御部6Aから第m行選択用配線LV,mを通った第m行選択制御信号Vsel(m)が与えられる。第m行選択制御信号Vsel(m)は、受光部10Aにおける第m行のN個の画素Pm,1〜Pm,Nそれぞれの読出用スイッチSWの開閉動作を指示するものである。
【0056】
この画素Pm,nでは、第m行選択制御信号Vsel(m)がローレベルであるときに、読出用スイッチSWが開いて、フォトダイオードPDで発生した電荷は、第n列読出用配線LO,nへ出力されることなく、接合容量部に蓄積される。一方、第m行選択制御信号Vsel(m)がハイレベルであるときに、読出用スイッチSWが閉じて、それまでフォトダイオードPDで発生して接合容量部に蓄積されていた電荷は、読出用スイッチSWを経て、第n列読出用配線LO,nへ出力される。
【0057】
第n列読出用配線LO,nは、受光部10Aにおける第n列のM個の画素P1,n〜PM,nそれぞれの読出用スイッチSWと接続されている。第n列読出用配線LO,nは、M個の画素P1,n〜PM,nのうちの何れかの画素のフォトダイオードPDで発生した電荷を、該画素の読出用スイッチSWを介して読み出して、積分回路Sへ転送する。
【0058】
積分回路Sは、アンプA,積分用容量素子C21,積分用容量素子C22,放電用スイッチSW21およびゲイン設定用スイッチSW22を含む。積分用容量素子C21および放電用スイッチSW21は、互いに並列的に接続されて、アンプAの入力端子と出力端子との間に設けられている。また、積分用容量素子C22およびゲイン設定用スイッチSW22は、互いに直列的に接続されて、ゲイン設定用スイッチSW22がアンプAの入力端子側に接続されるようにアンプAの入力端子と出力端子との間に設けられている。アンプAの入力端子は、第n列読出用配線LO,nと接続されている。
【0059】
放電用スイッチSW21には、制御部6Aからリセット用配線Lを経たリセット制御信号Resetが与えられる。リセット制御信号Resetは、N個の積分回路S〜Sそれぞれの放電用スイッチSW21の開閉動作を指示するものである。ゲイン設定用スイッチSW22は、制御部6Aからゲイン設定用配線Lを経たゲイン設定信号Gainが与えられる。ゲイン設定信号Gainは、N個の積分回路S〜Sそれぞれのゲイン設定用スイッチSW22の開閉動作を指示するものである。
【0060】
この積分回路Sでは、積分用容量素子C21,C22およびゲイン設定用スイッチSW22は、容量値が可変である帰還容量部を構成している。すなわち、ゲイン設定信号Gainがローレベルであってゲイン設定用スイッチSW22が開いているときには、帰還容量部の容量値は積分用容量素子C21の容量値と等しい。一方、ゲイン設定信号Gainがハイレベルであってゲイン設定用スイッチSW22が閉じているときには、帰還容量部の容量値は、積分用容量素子C21,C22それぞれの容量値の和と等しい。リセット制御信号Resetがハイレベルであるときに、放電用スイッチSW21が閉じて、帰還容量部が放電され、積分回路Sから出力される電圧値が初期化される。一方、リセット制御信号Resetがローレベルであるときに、放電用スイッチSW21が開いて、入力端に入力された電荷が帰還容量部に蓄積され、その蓄積電荷量に応じた電圧値が積分回路Sから出力される。
【0061】
保持回路Hは、入力用スイッチSW31,出力用スイッチSW32および保持用容量素子Cを含む。保持用容量素子Cの一端は接地されている。保持用容量素子Cの他端は、入力用スイッチSW31を介して積分回路Sの出力端と接続され、出力用スイッチSW32を介して電圧出力用配線Loutと接続されている。入力用スイッチSW31には、制御部6Aから保持用配線Lを通った保持制御信号Holdが与えられる。保持制御信号Holdは、N個の保持回路H〜Hそれぞれの入力用スイッチSW31の開閉動作を指示するものである。出力用スイッチSW32には、制御部6Aから第n列選択用配線LH,nを通った第n列選択制御信号Hsel(n)が与えられる。第n列選択制御信号Hsel(n)は、保持回路Hの出力用スイッチSW32の開閉動作を指示するものである。
【0062】
この保持回路Hでは、保持制御信号Holdがハイレベルからローレベルに転じると、入力用スイッチSW31が閉状態から開状態に転じて、そのときに入力端に入力されている電圧値が保持用容量素子Cに保持される。また、第n列選択制御信号Hsel(n)がハイレベルであるときに、出力用スイッチSW32が閉じて、保持用容量素子Cに保持されている電圧値が電圧出力用配線Loutへ出力される。
【0063】
制御部6Aは、受光部10Aにおける第m行のN個の画素Pm,1〜Pm,Nそれぞれの受光強度に応じた電圧値を出力するに際して、リセット制御信号Resetにより、N個の積分回路S〜Sそれぞれの放電用スイッチSW21を一旦閉じた後に開くよう指示した後、第m行選択制御信号Vsel(m)により、受光部10Aにおける第m行のN個の画素Pm,1〜Pm,Nそれぞれの読出用スイッチSWを所定期間に亘り閉じるよう指示する。制御部6Aは、その所定期間に、保持制御信号Holdにより、N個の保持回路H〜Hそれぞれの入力用スイッチSW31を閉状態から開状態に転じるよう指示する。そして、制御部6Aは、その所定期間の後に、列選択制御信号Hsel(1)〜Hsel(N)により、N個の保持回路H〜Hそれぞれの出力用スイッチSW32を順次に一定期間だけ閉じるよう指示する。制御部6Aは、以上のような制御を各行について順次に行う。
【0064】
このように、制御部6Aは、受光部10AにおけるM×N個の画素P1,1〜PM,Nそれぞれの読出用スイッチSWの開閉動作を制御するとともに、信号読出部20における電圧値の保持動作および出力動作を制御する。これにより、制御部6Aは、受光部10AにおけるM×N個の画素P1,1〜PM,NそれぞれのフォトダイオードPDで発生した電荷の量に応じた電圧値をフレームデータとして信号読出部20から繰り返し出力させる。
【0065】
前述したように、本実施形態に係る固体撮像装置1Aは、CT撮影といった第1撮像モードと、パノラマ撮影やセファロ撮影といった第2撮像モードとを有する。そして、図5に示したように、第1撮像モードと第2撮像モードでは、受光部10Aにおける撮像領域が互いに異なる(第1撮像モードでは図5(a)の領域10a、第2撮像モードでは図5(b)の領域10b)。そこで、制御部6Aは、第1撮像モードの際には、受光部10AにおけるM×N個の画素P1,1〜PM,NそれぞれのフォトダイオードPDで発生した電荷の量に応じた電圧値を信号読出部20から出力させる。また、制御部6Aは、第2撮像モードの際には、受光部10Aにおける連続するM行(M;M未満の整数)の特定範囲に含まれる各画素Pm,nのフォトダイオードPDで発生した電荷の量に応じた電圧値を信号読出部20から出力させる。
【0066】
この第2撮像モードの際、撮像領域10bの配置は信号読出部20に近いことが好ましい。したがって、制御部6Aは、受光部10AにおけるM行のうち信号読出部20に最も近い行から順に数えてM行の範囲を上記特定範囲とするとよい。すなわち、図9に示されるように受光部10Aにおいて信号読出部20に最も近い行が第1行となっている場合に、制御部6Aは、第2撮像モードの際に、受光部10Aにおける第1行から第M行までの範囲を上記特定範囲として、この特定範囲(第1行〜第M行)の各画素Pm,nのフォトダイオードPDで発生した電荷の量に応じた電圧値を信号読出部20から出力させるとよい。
【0067】
ここで、図13は、第2撮像モードにおける撮像領域10bを信号読出部20寄りに配置する利点を説明するための図である。いま、第n列読出用配線LO,nに断線等の故障が生じた場合を考える。例えば、図13(a)に示すように撮像領域10bを受光部10Aの中央付近に配置した場合、第n列読出用配線LO,nの断線DLが信号読出部20と撮像領域10bとの間で発生すると、当該列に配置された画素のうち信号読出部20から見て断線DLより遠い画素からの電荷を信号読出部20へ送ることができなくなり、画像の欠損(いわゆるディフェクト)が生じてしまう。そして、第2撮像モードにおいては固体撮像装置1Aの移動方向Bと受光部10Aの列方向とが互いに平行となっているので、固体撮像装置1Aを移動させながら連続して撮影することにより得られるパノラマ画像等においても、このような画像の欠損が残存することとなる。
【0068】
これに対し、図13(b)に示すように撮像領域10bを信号読出部20寄りに配置した場合、第n列読出用配線LO,nの断線DLが発生しても、その発生位置が信号読出部20と撮像領域10bとの間に存在する確率は低くなる。したがって、撮像領域10bの当該列に配置された画素からの電荷が読み出し不能となる確率を低減できるので、ディフェクトの発生を抑えることができる。
【0069】
また、制御部6Aは、第2撮像モードの際に、信号読出部20から出力される電圧値に基づくフレームデータにおける読出し画素ピッチを第1撮像モードと比べて小さくし、単位時間当たりに出力されるフレームデータの個数であるフレームレートを速くし、信号読出部20における入力電荷量に対する出力電圧値の比であるゲインを大きくする。例えば、CT撮影といった第1撮像モードのとき、画素ピッチは200μmであり、フレームレートは30F/sである。また、パノラマ撮影やセファロ撮影といった第2撮像モードのとき、画素ピッチは100μmであり、フレームレートは300F/sである。
【0070】
このように、第1撮像モードのときと比べて第2撮像モードのときには、画素ピッチが小さく、フレームレートが速い。したがって、第1撮像モードのときには、第2撮像モードのときより画素ピッチを大きくするために、ビニング読出しをする必要がある。また、第1撮像モードのときと比べて第2撮像モードのときには、フレームレートが速いので各フレームデータの各画素が受ける光の量は少ない。
【0071】
そこで、制御部6Aは、信号読出部20における入力電荷量に対する出力電圧値の比であるゲインを、第1撮像モードと第2撮像モードとで異ならせる。すなわち、図12に示されるように各積分回路Sが構成される場合に、制御部6Aは、ゲイン設定信号Gainによりゲイン設定用スイッチSW22を開閉制御することにより、各積分回路Sの帰還容量部の容量値を適宜設定して、第1撮像モードと第2撮像モードとでゲインを異ならせる。
【0072】
より具体的には、第1撮像モードのときに、ゲイン設定用スイッチSW22を閉じることにより、帰還容量部の容量値を積分用容量素子C21および積分用容量素子C22の各容量値の和に等しくする。その一方で、第2撮像モードのときに、ゲイン設定用スイッチSW22を開くことにより、帰還容量部の容量値を積分用容量素子C21の容量値に等しくする。このようにすることで、第1撮像モードのときと比べて第2撮像モードのときに、各積分回路Sの帰還容量部の容量値を小さくして、ゲインを大きくする。これにより、或る光量に対する画素データを第1撮像モードと第2撮像モードとで互いに近い値とすることができ、各撮像モードにおいて好適な動作をすることができる。
【0073】
次に、第1実施形態に係る固体撮像装置1Aの動作について詳細に説明する。本実施形態に係る固体撮像装置1Aでは、制御部6Aによる制御の下で、M個の行選択制御信号Vsel(1)〜Vsel(M),N個の列選択制御信号Hsel(1)〜Hsel(N),リセット制御信号Resetおよび保持制御信号Holdそれぞれが所定のタイミングでレベル変化することにより、受光部10Aに入射された光の像を撮像してフレームデータを得ることができる。
【0074】
第1撮像モードのときの固体撮像装置1Aの動作は以下のとおりである。図14は、第1実施形態に係る固体撮像装置1Aの動作を説明するタイミングチャートである。ここでは2行2列のビニング読出しをする第1撮像モードのときの動作について説明する。すなわち、フレームデータにおける読出し画素ピッチを画素のピッチの2倍とする。各積分回路Sにおいて、ゲイン設定用スイッチSW22が閉じていて、帰還容量部の容量値が大きい値に設定され、ゲインが小さい値に設定される。
【0075】
この図には、上から順に、(a)N個の積分回路S〜Sそれぞれの放電用スイッチSW21の開閉動作を指示するリセット制御信号Reset、(b)受光部10Aにおける第1行および第2行の画素P1,1〜P1,N,P2,1〜P2,Nそれぞれの読出用スイッチSWの開閉動作を指示する第1行選択制御信号Vsel(1)および第2行選択制御信号Vsel(2)、(c)受光部10Aにおける第3行および第4行の画素P3,1〜P3,N,P4,1〜P4,Nそれぞれの読出用スイッチSWの開閉動作を指示する第3行選択制御信号Vsel(3)および第4行選択制御信号Vsel(4)、ならびに、(d)N個の保持回路H〜Hそれぞれの入力用スイッチSW31の開閉動作を指示する保持制御信号Holdが示されている。
【0076】
また、この図には、更に続いて順に、(e)保持回路Hの出力用スイッチSW32の開閉動作を指示する第1列選択制御信号Hsel(1)、(f)保持回路Hの出力用スイッチSW32の開閉動作を指示する第2列選択制御信号Hsel(2)、(g)保持回路Hの出力用スイッチSW32の開閉動作を指示する第3列選択制御信号Hsel(3)、(h)保持回路Hの出力用スイッチSW32の開閉動作を指示する第n列選択制御信号Hsel(n)、および、(i)保持回路Hの出力用スイッチSW32の開閉動作を指示する第N列選択制御信号Hsel(N)が示されている。
【0077】
第1行および第2行の2N個の画素P1,1〜P1,N,P2,1〜P2,NそれぞれのフォトダイオードPDで発生し接合容量部に蓄積された電荷の読出しは、以下のようにして行われる。時刻t10前には、M個の行選択制御信号Vsel(1)〜Vsel(M)、N個の列選択制御信号Hsel(1)〜Hsel(N)、リセット制御信号Resetおよび保持制御信号Holdそれぞれは、ローレベルとされている。
【0078】
時刻t10から時刻t11までの期間、制御部6Aからリセット用配線Lに出力されるリセット制御信号Resetがハイレベルとなり、これにより、N個の積分回路S〜Sそれぞれにおいて、放電用スイッチSW21が閉じて、積分用容量素子C21,C22が放電される。また、時刻t11より後の時刻t12から時刻t15までの期間、制御部6Aから第1行選択用配線LV,1に出力される第1行選択制御信号Vsel(1)がハイレベルとなり、これにより、受光部10Aにおける第1行のN個の画素P1,1〜P1,Nそれぞれの読出用スイッチSWが閉じる。また、この同じ期間(t12〜t15)に、制御部6Aから第2行選択用配線LV,2に出力される第2行選択制御信号Vsel(2)がハイレベルとなって、これにより、受光部10Aにおける第2行のN個の画素P2,1〜P2,Nそれぞれの読出用スイッチSWが閉じる。
【0079】
この期間(t12〜t15)内において、時刻t13から時刻t14までの期間、制御部6Aから保持用配線Lへ出力される保持制御信号Holdがハイレベルとなり、これにより、N個の保持回路H〜Hそれぞれにおいて入力用スイッチSW31が閉じる。
【0080】
期間(t12〜t15)内では、第1行および第2行の各画素P1,n,P2,nの読出用スイッチSWが閉じており、各積分回路Sの放電用スイッチSW21が開いている。したがって、それまでに画素P1,nのフォトダイオードPDで発生して接合容量部に蓄積されていた電荷は、その画素P1,nの読出用スイッチSWおよび第n列読出用配線LO,nを通って、積分回路Sの積分用容量素子C21,C22に転送されて蓄積される。また、同時に、それまでに画素P2,nのフォトダイオードPDで発生して接合容量部に蓄積されていた電荷も、その画素P2,nの読出用スイッチSWおよび第n列読出用配線LO,nを通って、積分回路Sの積分用容量素子C21,C22に転送されて蓄積される。そして、各積分回路Sの積分用容量素子C21,C22に蓄積されている電荷の量に応じた電圧値が積分回路Sの出力端から出力される。
【0081】
その期間(t12〜t15)内の時刻t14に、保持制御信号Holdがハイレベルからローレベルに転じることにより、N個の保持回路H〜Hそれぞれにおいて、入力用スイッチSW31が閉状態から開状態に転じ、そのときに積分回路Sの出力端から出力されて保持回路Hの入力端に入力されている電圧値が保持用容量素子Cに保持される。
【0082】
そして、期間(t12〜t15)の後に、制御部6Aから列選択用配線LH,1〜LH,Nに出力される列選択制御信号Hsel(1)〜Hsel(N)が順次に一定期間だけハイレベルとなり、これにより、N個の保持回路H〜Hそれぞれの出力用スイッチSW32が順次に一定期間だけ閉じて、各保持回路Hの保持用容量素子Cに保持されている電圧値は出力用スイッチSW32を経て電圧出力用配線Loutへ順次に出力される。この電圧出力用配線Loutへ出力される電圧値Voutは、第1行および第2行の2N個の画素P1,1〜P1,N,P2,1〜P2,NそれぞれのフォトダイオードPDにおける受光強度を列方向に加算した値を表すものである。
【0083】
N個の保持回路H〜Hそれぞれから順次に出力された電圧値はA/D変換部30に入力されて、その入力電圧値に応じたデジタル値に変換される。そして、A/D変換部30から出力されたN個のデジタル値のうち、第1列および第2列それぞれに対応するデジタル値が加算され、第3列および第4列それぞれに対応するデジタル値が加算され、その後も2個ずつのデジタル値が加算されていく。
【0084】
続いて、第3行および第4行の2N個の画素P3,1〜P3,N,P4,1〜P4,NそれぞれのフォトダイオードPDで発生し接合容量部に蓄積された電荷の読出しが以下のようにして行われる。
【0085】
前述した動作において列選択制御信号Hsel(1)がハイレベルとなる時刻t20から、列選択制御信号Hsel(N)が一度ハイレベルとなってからローレベルとなる時刻より後の時刻t21までの期間、制御部6Aからリセット用配線Lに出力されるリセット制御信号Resetがハイレベルとなり、これにより、N個の積分回路S〜Sそれぞれにおいて、放電用スイッチSW21が閉じて、積分用容量素子C21,C22が放電される。また、時刻t21より後の時刻t22から時刻t25までの期間、制御部6Aから第3行選択用配線LV,3に出力される第3行選択制御信号Vsel(3)がハイレベルとなり、これにより、受光部10Aにおける第3行のN個の画素P3,1〜P3,Nそれぞれの読出用スイッチSWが閉じる。また、この同じ期間(t22〜t25)に、制御部6Aから第4行選択用配線LV,4に出力される第4行選択制御信号Vsel(4)がハイレベルとなって、これにより、受光部10Aにおける第4行のN個の画素P4,1〜P4,Nそれぞれの読出用スイッチSWが閉じる。
【0086】
この期間(t22〜t25)内において、時刻t23から時刻t24までの期間、制御部6Aから保持用配線Lへ出力される保持制御信号Holdがハイレベルとなり、これにより、N個の保持回路H〜Hそれぞれにおいて入力用スイッチSW31が閉じる。
【0087】
そして、期間(t22〜t25)の後に、制御部6Aから列選択用配線LH,1〜LH,Nに出力される列選択制御信号Hsel(1)〜Hsel(N)が順次に一定期間だけハイレベルとなり、これにより、N個の保持回路H〜Hそれぞれの出力用スイッチSW32が順次に一定期間だけ閉じる。以上のようにして、第3行および第4行の2N個の画素P3,1〜P3,N,P4,1〜P4,NそれぞれのフォトダイオードPDにおける受光強度を列方向に加算した値を表す電圧値Voutが電圧出力用配線Loutへ出力される。
【0088】
N個の保持回路H〜Hそれぞれから順次に出力された電圧値はA/D変換部30に入力されて、その入力電圧値に応じたデジタル値に変換される。そして、A/D変換部30から出力されたN個のデジタル値のうち、第1列および第2列それぞれに対応するデジタル値が加算され、第3列および第4列それぞれに対応するデジタル値が加算され、その後も2個ずつのデジタル値が加算されていく。
【0089】
第1撮像モードのときには、以上のような第1行および第2行についての動作、これに続く第3行および第4行についての動作に続いて、以降、第5行から第M行まで同様の動作が行われて、1回の撮像で得られる画像を表すフレームデータが得られる。また、第M行について動作が終了すると、再び第1行から第M行までの範囲で同様の動作が行われて、次の画像を表すフレームデータが得られる。このように、一定周期で同様の動作を繰り返すことで、受光部10Aが受光した光像の2次元強度分布を表す電圧値Voutが電圧出力用配線Loutへ出力されて、繰り返してフレームデータが得られる。また、このとき得られるフレームデータにおける読出し画素ピッチは画素のピッチの2倍となっている。
【0090】
一方、第2撮像モードのときの固体撮像装置1Aの動作は以下のとおりである。図15および図16は、第1実施形態に係る固体撮像装置1Aの動作を説明するタイミングチャートである。この第2撮像モードではビニング読出しをしない。すなわち、フレームデータにおける読出し画素ピッチを画素のピッチと等しくする。各積分回路Sにおいて、ゲイン設定用スイッチSW22が開いていて、帰還容量部の容量値が小さい値に設定され、ゲインが大きい値に設定される。
【0091】
図15は、受光部10Aにおける第1行および第2行それぞれについての動作を示す。この図には、上から順に、(a)リセット制御信号Reset、(b)第1行選択制御信号Vsel(1)、(c)第2行選択制御信号Vsel(2)、(d)保持制御信号Hold、(e)第1列選択制御信号Hsel(1)、(f)第2列選択制御信号Hsel(2)、(g)第3列選択制御信号Hsel(3)、(h)第n列選択制御信号Hsel(n)、および、(i)第N列選択制御信号Hsel(N)が示されている。
【0092】
第1行のN個の画素P1,1〜P1,NそれぞれのフォトダイオードPDで発生し接合容量部に蓄積された電荷の読出しは、以下のようにして行われる。時刻t10前には、M個の行選択制御信号Vsel(1)〜Vsel(M)、N個の列選択制御信号Hsel(1)〜Hsel(N)、リセット制御信号Resetおよび保持制御信号Holdそれぞれは、ローレベルとされている。
【0093】
時刻t10から時刻t11までの期間、制御部6Aからリセット用配線Lに出力されるリセット制御信号Resetがハイレベルとなり、これにより、N個の積分回路S〜Sそれぞれにおいて、放電用スイッチSW21が閉じて、積分用容量素子C21が放電される。また、時刻t11より後の時刻t12から時刻t15までの期間、制御部6Aから第1行選択用配線LV,1に出力される第1行選択制御信号Vsel(1)がハイレベルとなり、これにより、受光部10Aにおける第1行のN個の画素P1,1〜P1,Nそれぞれの読出用スイッチSWが閉じる。
【0094】
この期間(t12〜t15)内において、時刻t13から時刻t14までの期間、制御部6Aから保持用配線Lへ出力される保持制御信号Holdがハイレベルとなり、これにより、N個の保持回路H〜Hそれぞれにおいて入力用スイッチSW31が閉じる。
【0095】
期間(t12〜t15)内では、第1行の各画素P1,nの読出用スイッチSWが閉じており、各積分回路Sの放電用スイッチSW21が開いているので、それまでに各画素P1,nのフォトダイオードPDで発生して接合容量部に蓄積されていた電荷は、その画素P1,nの読出用スイッチSWおよび第n列読出用配線LO,nを通って、積分回路Sの積分用容量素子C21に転送されて蓄積される。そして、各積分回路Sの積分用容量素子C21に蓄積されている電荷の量に応じた電圧値が積分回路Sの出力端から出力される。
【0096】
その期間(t12〜t15)内の時刻t14に、保持制御信号Holdがハイレベルからローレベルに転じることにより、N個の保持回路H〜Hそれぞれにおいて、入力用スイッチSW31が閉状態から開状態に転じ、そのときに積分回路Sの出力端から出力されて保持回路Hの入力端に入力されている電圧値が保持用容量素子Cに保持される。
【0097】
そして、期間(t12〜t15)の後に、制御部6Aから列選択用配線LH,1〜LH,Nに出力される列選択制御信号Hsel(1)〜Hsel(N)が順次に一定期間だけハイレベルとなり、これにより、N個の保持回路H〜Hそれぞれの出力用スイッチSW32が順次に一定期間だけ閉じて、各保持回路Hの保持用容量素子Cに保持されている電圧値は出力用スイッチSW32を経て電圧出力用配線Loutへ順次に出力される。この電圧出力用配線Loutへ出力される電圧値Voutは、第1行のN個の画素P1,1〜P1,NそれぞれのフォトダイオードPDにおける受光強度を表すものである。
【0098】
続いて、第2行のN個の画素P2,1〜P2,NそれぞれのフォトダイオードPDで発生し接合容量部に蓄積された電荷の読出しが以下のようにして行われる。
【0099】
前述した動作において列選択制御信号Hsel(1)がハイレベルとなる時刻t20から、列選択制御信号Hsel(N)が一度ハイレベルとなってからローレベルとなる時刻より後の時刻t21までの期間、制御部6Aからリセット用配線Lに出力されるリセット制御信号Resetがハイレベルとなり、これにより、N個の積分回路S〜Sそれぞれにおいて、放電用スイッチSW21が閉じて、積分用容量素子C21が放電される。また、時刻t21より後の時刻t22から時刻t25までの期間、制御部6Aから第2行選択用配線LV,2に出力される第2行選択制御信号Vsel(2)がハイレベルとなり、これにより、受光部10Aにおける第2行のN個の画素P2,1〜P2,Nそれぞれの読出用スイッチSWが閉じる。
【0100】
この期間(t22〜t25)内において、時刻t23から時刻t24までの期間、制御部6Aから保持用配線Lへ出力される保持制御信号Holdがハイレベルとなり、これにより、N個の保持回路H〜Hそれぞれにおいて入力用スイッチSW31が閉じる。
【0101】
そして、期間(t22〜t25)の後に、制御部6Aから列選択用配線LH,1〜LH,Nに出力される列選択制御信号Hsel(1)〜Hsel(N)が順次に一定期間だけハイレベルとなり、これにより、N個の保持回路H〜Hそれぞれの出力用スイッチSW32が順次に一定期間だけ閉じる。以上のようにして、第2行のN個の画素P2,1〜P2,NそれぞれのフォトダイオードPDにおける受光強度を表す電圧値Voutが電圧出力用配線Loutへ出力される。
【0102】
第2撮像モードのときには、以上のような第1行および第2行についての動作に続いて、以降、第3行から第M行まで同様の動作が行われて、1回の撮像で得られる画像を表すフレームデータが得られる。また、第M行について動作が終了すると、再び第1行から第M行までの範囲で同様の動作が行われて、次の画像を表すフレームデータが得られる。このように、一定周期で同様の動作を繰り返すことで、受光部10Aが受光した光像の2次元強度分布を表す電圧値Voutが電圧出力用配線Loutへ出力されて、繰り返してフレームデータが得られる。
【0103】
第2撮像モードのときには、第(M+1)行から第M行までの範囲については、信号読出部20から電圧出力用配線Loutへの電圧値の出力は行われない。しかし、第(M+1)行から第M行までの範囲の各画素Pm,nにおいても、フォトダイオードPDへの光入射によって発生した電荷は、該フォトダイオードPDの接合容量部に蓄積されていき、やがて、接合容量部の飽和レベルを越える。フォトダイオードPDの接合容量部に蓄積される電荷の量が飽和レベルを越えると、飽和レベルを越えた分の電荷が隣の画素へ溢れ出す。隣の画素が第M行に属するとすると、隣の画素について信号読出部20から電圧出力用配線Loutへ出力される電圧値は不正確なものとなってしまう。
【0104】
そこで、第2撮像モードのときに第(M+1)行から第M行までの範囲の各画素Pm,nのフォトダイオードPDの接合容量部を放電する放電手段が設けられるのが好適である。本実施形態に係る固体撮像装置1Aは、このような放電手段として、第2撮像モードのときに図16に示されるような動作を行って、第(M+1)行から第M行までの範囲の各画素Pm,nのフォトダイオードPDの接合容量部に蓄積された電荷を積分回路Sへ転送することで、該フォトダイオードPDの接合容量部を放電する。
【0105】
図16は、受光部10Aにおける第M行および第(M+1)行それぞれについての動作を示す。この図には、上から順に、(a)リセット制御信号Reset、(b)第M行選択制御信号Vsel(M)、(c)第(M+1)行選択制御信号Vsel(M+1)、(d)保持制御信号Hold、(e)第1列選択制御信号Hsel(1)、(f)第2列選択制御信号Hsel(2)、(g)第3列選択制御信号Hsel(3)、(h)第n列選択制御信号Hsel(N)、および、(i)第N列選択制御信号Hsel(N)が示されている。
【0106】
この図16に示される時刻t40から時刻t50までの期間における第M行についての動作は、図15に示された時刻t10から時刻t20までの期間における第1行についての動作と同様である。ただし、時刻t42から時刻t45までの期間、制御部6Aから第M行選択用配線LV,M1に出力される第M行選択制御信号Vsel(M)がハイレベルとなり、これにより、受光部10Aにおける第M行のN個の画素PM1,1〜PM1,Nそれぞれの読出用スイッチSWが閉じる。
【0107】
第2撮像モードのとき、第M行についての動作が終了すると、時刻t50以降、第(M+1)行から第M行までの範囲についての動作が行われる。すなわち、時刻t50以降、制御部6Aからリセット用配線Lに出力されるリセット制御信号Resetがハイレベルとなり、これにより、N個の積分回路S〜Sそれぞれにおいて、放電用スイッチSW21が閉じる。また、時刻t50以降の放電用スイッチSW21が閉じている期間に、第(M+1)行から第M行までの行選択制御信号Vsel(M+1)〜Vsel(M)がハイレベルとなり、これにより、受光部10Aにおける第(M+1)行から第M行までの範囲の各画素Pm,nの読出用スイッチSWが閉じる。
【0108】
このように、第2撮像モードのときに、第(M+1)行から第M行までの範囲の各画素Pm,nの読出用スイッチSWが閉じることにより、当該画素のフォトダイオードPDの接合容量部に蓄積されていた電荷が積分回路Sへ転送され、また、各積分回路Sにおいて放電用スイッチSW21が閉じることにより、各積分回路Sの積分用容量素子C21は常に放電された状態となる。このようにして、第2撮像モードのときに、第(M+1)行から第M行までの範囲の各画素Pm,nのフォトダイオードPDの接合容量部が放電され得る。
【0109】
このとき、第(M+1)行から第M行までの範囲については、行選択制御信号Vsel(M+1)〜Vsel(M)が順次にハイレベルとなってもよいが、行選択制御信号Vsel(M+1)〜Vsel(M)のうちの複数の行選択制御信号が同時にハイレベルとなってもよく、また、行選択制御信号Vsel(M+1)〜Vsel(M)の全てが同時にハイレベルとなってもよい。このように、第(M+1)行から第M行までの範囲については、複数または全ての行選択制御信号が同時にハイレベルとなることにより、各画素Pm,nのフォトダイオードPDの接合容量部が更に短時間に放電され得る。
【0110】
ところで、第1撮像モードと比べて少ない個数の画素のデータを信号読出部20から出力させる他の撮像モードとして、受光部10Aにおける連続するN列に含まれる各画素Pm,nのフォトダイオードPDで発生した電荷の量に応じた電圧値を信号読出部20から出力させてもよい。ここで、NはN未満の整数である。しかし、このようにN列の各画素Pm,nのデータを信号読出部20から出力させる撮像モードでは、1フレームデータを得るために、制御部6AからM個の行選択制御信号Vsel(1)〜Vsel(M)を出力させる必要がある。これに対して、本実施形態に係る固体撮像装置1Aでは、M行の各画素Pm,nのデータを信号読出部20から出力させる第2撮像モードのときに、1フレームデータを得るために、制御部6AからM個の行選択制御信号Vsel(1)〜Vsel(M)を出力させればよいので、高速動作をすることができる。
【0111】
また、画素データを更に高速に読み出す為に、上記実施形態における信号読出部20およびA/D変換部30を複数の組に分割し、それぞれの組から画素データを並行して出力させる構成としてもよい。
【0112】
例えば、図17に示されるように、N個の積分回路S〜SおよびN個の保持回路H〜Hを4組に分けて、積分回路S〜Sおよび保持回路H〜Hからなる信号読出部21を第1組とし、積分回路Si+1〜Sおよび保持回路Hi+1〜Hからなる信号読出部22を第2組とし、積分回路Sj+1〜Sおよび保持回路Hj+1〜Hからなる信号読出部23を第3組とし、また、積分回路Sk+1〜Sおよび保持回路Hk+1〜Hからなる信号読出部24を第4組とする。ここで、「1<i<j<k<N」である。そして、信号読出部21の保持回路H〜Hそれぞれから順次に出力される電圧値をA/D変換部31によりデジタル値に変換し、信号読出部22の保持回路Hi+1〜Hそれぞれから順次に出力される電圧値をA/D変換部32によりデジタル値に変換し、信号読出部23の保持回路Hj+1〜Hそれぞれから順次に出力される電圧値をA/D変換部33によりデジタル値に変換し、また、信号読出部24の保持回路Hk+1〜Hそれぞれから順次に出力される電圧値をA/D変換部34によりデジタル値に変換する。また、4つのA/D変換部31〜34それぞれにおけるA/D変換処理を並列的に行う。このようにすることで、画素データを更に高速に読み出すことができる。
【0113】
また、例えば、2行2列のビニング読出しをすることを考慮すると、N個の保持回路H〜Hのうち奇数列に対応する保持回路を第1組とし、偶数列に対応する保持回路を第2組として、これら第1組および第2組それぞれに対して個別にA/D変換部を設けて、これら2つのA/D変換部を並列動作させるのも好ましい。この場合、奇数列に対応する保持回路と、これの隣の偶数列に対応する保持回路とから、同時に電圧値が出力され、これら2つの電圧値が同時にA/D変換処理されてデジタル値とされる。そして、ビニング処理される際には、これら2つのデジタル値が加算される。このようにすることでも、画素データを高速に読み出すことができる。
【0114】
なお、走査シフトレジスタ40による列方向の走査処理に関しては、上記のような分割はできない。列方向の走査処理では、最初の画素から最終の画素まで順次に走査する必要があるからである。本実施形態に係る固体撮像装置1Aでは列数Nが行数Mより多いので、信号読出部を上述のように分割することによる読み出しの高速化といった効果をより顕著に得ることができる。
【0115】
次に、第2実施形態に係る固体撮像装置1Bについて説明する。図18は、第2実施形態に係る固体撮像装置1Bの構成を示す図である。この図に示される固体撮像装置1Bは、受光部10B、信号読出部20、A/D変換部30および制御部6Bを備えている。また、固体撮像装置1Bの受光部10Bを覆うように図示しないシンチレータが設けられている。
【0116】
図11に示された第1実施形態に係る固体撮像装置1Aの構成と比較すると、この図18に示される第2実施形態に係る固体撮像装置1Bは、各第n列読出用配線LO,n上に切離用スイッチSW1および放電用スイッチSW2が設けられている点で相違し、また、制御部6Aに替えて制御部6Bを備える点で相違する。
【0117】
各切離用スイッチSW1は、読出用配線LO,n上であって、受光部10Bにおける第M行と第(M+1)行との間に設けられている。すなわち、切離用スイッチSW1が閉じているときには、第1行から第M行までの範囲の各画素Pm,nは読出用配線LO,nを介して信号読出部20と接続されている。一方、切離用スイッチSW1が開いているときには、第1行から第M行までの範囲の各画素Pm,nは読出用配線LO,nを介して信号読出部20と接続されているが、第(M+1)行から第M行までの範囲の各画素Pm,nは信号読出部20と切り離される。各切離用スイッチSW1は、切離用配線LD1を介して制御部6Bと接続されていて、制御部6Bから切離用配線LD1を通った切離制御信号Disconnectが与えられる。切離制御信号Disconnectは、各切離用スイッチSW1の開閉動作を指示するものである。
【0118】
各放電用スイッチSW2は、読出用配線LO,n上であって、切離用スイッチSW1が設けられている位置に対して信号読出部20より遠い側に設けられている。放電用スイッチSW2の一端は、読出用配線LO,nを介して、第(M+1)行から第M行までの範囲の各画素Pm,nに接続されている。放電用スイッチSW2の他端は接地される。各放電用スイッチSW2は、放電用配線LD2を介して制御部6Bと接続されていて、制御部6Bから放電用配線LD2を通った放電制御信号Dischargeが与えられる。放電制御信号Dischargeは、各放電用スイッチSW2の開閉動作を指示するものである。
【0119】
制御部6Bは、第1実施形態における制御部6Aと同様に、リセット制御信号Resetをリセット用配線Lへ出力し、ゲイン設定信号Gainをゲイン設定用配線Lへ出力し、また、保持制御信号Holdを保持用配線Lへ出力する。制御部6Bの走査シフトレジスタ40は、第m行選択制御信号Vsel(m)を第m行選択用配線LV,mへ出力する。制御部6Bの読出シフトレジスタ41は、第n列選択制御信号Hsel(n)を第n列選択用配線LH,nへ出力する。
【0120】
加えて、制御部6Bは、切離制御信号Disconnectを切離用配線LD1へ出力して、この切離制御信号DisconnectをN個の切離用スイッチSW1〜SW1それぞれに与える。また、制御部6Bは、放電制御信号Dischargeを放電用配線LD2へ出力して、この放電制御信号DischargeをN個の放電用スイッチSW2〜SW2それぞれに与える。
【0121】
第2実施形態に係る固体撮像装置1Bも、第1撮像モードおよび第2撮像モードを有する。第1撮像モードと第2撮像モードとでは、受光部10Bにおける撮像領域が互いに異なる。制御部6Bは、第1撮像モードのときに、受光部10BにおけるM×N個の画素P1,1〜PM,NそれぞれのフォトダイオードPDで発生した電荷の量に応じた電圧値を信号読出部20から出力させる。また、制御部6Bは、第2撮像モードのときに、受光部10Bにおける第1行から第M行までの範囲の各画素Pm,nのフォトダイオードPDで発生した電荷の量に応じた電圧値を信号読出部20から出力させる。
【0122】
また、第2撮像モードの際、制御部6Bは、第1撮像モードのときと比べて、信号読出部20から出力される電圧値に基づくフレームデータにおける読出し画素ピッチを小さくし、単位時間当たりに出力されるフレームデータの個数であるフレームレートを速くし、信号読出部20における入力電荷量に対する出力電圧値の比であるゲインを大きくする。
【0123】
第2実施形態に係る固体撮像装置1Bでは、第1撮像モードのときに、制御部6Bから切離用配線LD1を経て各切離用スイッチSW1に与えられる切離制御信号Disconnectはハイレベルとなって、各切離用スイッチSW1は閉じる。また、制御部6Bから放電用配線LD2を経て各放電用スイッチSW2に与えられる放電制御信号Dischargeはローレベルとなって、各放電用スイッチSW2は開く。この状態では、第1行から第M行までの範囲の各画素Pm,nは読出用配線LO,nを介して信号読出部20と接続されている。そして、第1実施形態の場合と同様の動作が行われて、受光部10BにおけるM×N個の画素P1,1〜PM,NそれぞれのフォトダイオードPDで発生した電荷の量に応じた電圧値が信号読出部20から出力される。
【0124】
一方、第2実施形態に係る固体撮像装置1Bでは、第2撮像モードのときに、制御部6Bから切離用配線LD1を経て各切離用スイッチSW1に与えられる切離制御信号Disconnectはローレベルとなって、各切離用スイッチSW1は開く。また、制御部6Bから放電用配線LD2を経て各放電用スイッチSW2に与えられる放電制御信号Dischargeはハイレベルとなって、各放電用スイッチSW2は閉じる。この状態では、第1行から第M行までの範囲の各画素Pm,nは読出用配線LO,nを介して信号読出部20と接続されているが、第(M+1)行から第M行までの範囲の各画素Pm,nは信号読出部20と切り離されて接地されている。
【0125】
そして、第2撮像モードのときに、第1行から第M行までの範囲については、第1実施形態の場合と同様の動作が行われて、各画素Pm,nのフォトダイオードPDで発生した電荷の量に応じた電圧値が信号読出部20から出力される。一方、第(M+1)行から第M行までの範囲については、行選択制御信号Vsel(M+1)〜Vsel(M)がハイレベルとなり、これにより、各画素Pm,nのフォトダイオードPDのカソード端子は、読出用スイッチSWおよび放電用スイッチSW2を介して接地されるので、各画素Pm,nのフォトダイオードPDの接合容量部は放電される。すなわち、この場合、各放電用スイッチSW2は、第2撮像モードのときに第(M+1)行から第M行までの範囲の各画素Pm,nのフォトダイオードPDの接合容量部を放電する放電手段として作用する。
【0126】
第2撮像モードのときに、第(M+1)行から第M行までの範囲については、行選択制御信号Vsel(M+1)〜Vsel(M)が順次にハイレベルとなってもよいが、行選択制御信号Vsel(M+1)〜Vsel(M)のうちの複数の行選択制御信号が同時にハイレベルとなってもよく、また、行選択制御信号Vsel(M+1)〜Vsel(M)の全てが同時にハイレベルとなってもよい。このように、第(M+1)行から第M行までの範囲については、複数または全ての行選択制御信号が同時にハイレベルとなることにより、各画素Pm,nのフォトダイオードPDの接合容量部が更に短時間に放電され得る。
【0127】
また、第2撮像モードのときに、第1行から第M行までの範囲について各画素Pm,nのフォトダイオードPDで発生した電荷の量に応じた電圧値が信号読出部20から出力される期間と、第(M+1)行から第M行までの範囲について各画素Pm,nのフォトダイオードPDの接合容量部が放電される期間とは、互いに一部が重なっていてもよい。このような場合には、更に高速な動作が可能となる。
【0128】
また、第2撮像モードのときに、切離用配線LD1が開くことにより、信号読出部20に接続される第n列読出用配線LO,nが短くなるので、ノイズが低減され得る。
【0129】
本発明による医療用X線撮像システムは、上記した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記第1実施形態では第2撮像モードにおける撮像領域として、M行に配列された画素のうち連続するM行(M<M)の画素によって構成される撮像領域を例示したが、第2撮像モードにおける撮像領域はこれ以外の領域であってもよく、或いは受光部の全面を撮像領域として使用してもよい。また、第1撮像モードに関しても、上記実施形態のように受光部の全面を撮像領域とする形態に限られるものではなく、必要に応じて受光部における任意の領域を撮像領域としてもよい。
【符号の説明】
【0130】
1A,1B…固体撮像装置、3…半導体基板、4…シンチレータ、5…X線遮蔽部、6A,6B…制御部、10A,10B,110,130…受光部、10a,10b…撮像領域、11…受光面、20,120,140…信号読出部、30,31〜34…A/D変換部、40…走査シフトレジスタ、41…読出シフトレジスタ、100…X線撮像システム、104…旋回アーム、106…X線発生装置、108…回転制御部、A…被写体、A…アンプ、C21,C22…積分用容量素子、C…保持用容量素子、H〜H…保持回路、L…ゲイン設定用配線、L…保持用配線、LH,n…第n列選択用配線、LO,n…第n列読出用配線、Lout…電圧出力用配線、L…リセット用配線、LV,m〜第m行選択用配線、P,Pm,n…画素、Reset…リセット制御信号、S〜S…積分回路、SW…読出用スイッチ、SW21…放電用スイッチ、SW22…ゲイン設定用スイッチ、SW31…入力用スイッチ、SW32…出力用スイッチ、SW1〜SW1…切離用スイッチ、SW2〜SW2…放電用スイッチ、W…シリコンウェハ。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体撮像装置とX線発生装置とを備え、前記X線発生装置から出力されて被検者の顎部を透過したX線を前記固体撮像装置により撮像するための少なくとも二つの撮像モードを有する医療用X線撮像システムであって、
前記固体撮像装置が、
フォトダイオードを各々含むM×N個(M<N、M及びNは2以上の整数)の画素がM行N列に2次元配列されて成り、行方向を長手方向とする長方形状の受光面を有する受光部と、
各列毎に配設され、対応する列の前記画素に含まれる前記フォトダイオードと読出用スイッチを介して接続されたN本の読出用配線と、
前記読出用配線を経て入力された電荷の量に応じた電圧値を保持し、その保持した電圧値を順次に出力する信号読出部と、
各画素の前記読出用スイッチの開閉動作を制御するとともに、前記信号読出部における電圧値の出力動作を制御して、各画素の前記フォトダイオードで発生した電荷の量に応じた電圧値を前記信号読出部から出力させる制御部と、
入射したX線に応じてシンチレーション光を発生して前記X線像を光像へと変換し、該光像を前記受光部へ出力するシンチレータと
を有し、
前記固体撮像装置および前記X線発生装置が対向した状態で前記被検者の顎部の周りに旋回が可能であり、または、前記固体撮像装置が前記被検者の顎部に対して直線変位が可能であり、
前記固体撮像装置を前記受光面に垂直な軸線周りに回転可能に支持するとともに、前記二つの撮像モードのうち一方の撮像モードの際には前記受光部の長手方向が前記旋回または前記直線変位の際の前記固体撮像装置の移動方向と平行になるように、また、前記二つの撮像モードのうち他方の撮像モードの際には前記受光部の長手方向が前記旋回または前記直線変位の際の前記固体撮像装置の移動方向と直交するように、前記固体撮像装置の回転角を制御する回転制御部を更に備え、
前記制御部が、前記他方の撮像モードの際に、前記受光部において連続するM行(M<M)の特定範囲に含まれる各画素の前記フォトダイオードで発生した電荷の量に応じた電圧値を前記信号読出部から出力させ、
前記特定範囲の長手方向が前記旋回または前記直線変位の際の前記固体撮像装置の移動方向と直交することを特徴とする、医療用X線撮像システム。
【請求項2】
前記固体撮像装置の回転中心が、長方形状の前記受光部における四つの角部のうち一つの角部に位置しており、
前記一つの角部が前記二つの撮像モードの双方において前記被検者に対し下顎側に位置するように前記固体撮像装置が回転することを特徴とする、請求項1に記載の医療用X線撮像システム。
【請求項3】
前記制御部が、前記一方の撮像モードの際に、前記受光部における前記M×N個の画素それぞれの前記フォトダイオードで発生した電荷の量に応じた電圧値を前記信号読出部から出力させることを特徴とする、請求項1または2に記載の医療用X線撮像システム。
【請求項4】
前記固体撮像装置が、前記受光部における前記特定範囲と、この特定範囲を除く他の範囲との間に、各読出用配線上に設けられた切離用スイッチを更に有し、
前記制御部が、前記一方の撮像モードの際に前記切離用スイッチを閉じ、前記他方の撮像モードの際に前記切離用スイッチを開くことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の医療用X線撮像システム。
【請求項5】
前記固体撮像装置が、前記他方の撮像モードの際に前記受光部における前記特定範囲を除く他の範囲の各画素の前記フォトダイオードの接合容量部を放電する放電手段を更に有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の医療用X線撮像システム。
【請求項6】
前記制御部が、前記他方の撮像モードの際に、前記一方の撮像モードと比べて、前記信号読出部から出力される電圧値に基づくフレームデータにおける読出し画素ピッチを小さくし、単位時間当たりに出力されるフレームデータの個数であるフレームレートを速くし、前記信号読出部における入力電荷量に対する出力電圧値の比であるゲインを大きくすることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の医療用X線撮像システム。
【請求項7】
前記一方の撮像モードは歯科用X線撮影におけるCT撮影を行う撮像モードであり、前記他方の撮像モードは歯科用X線撮影におけるパノラマ撮影を行う撮像モードである、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の医療用X線撮像システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−6033(P2013−6033A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−169828(P2012−169828)
【出願日】平成24年7月31日(2012.7.31)
【分割の表示】特願2008−114142(P2008−114142)の分割
【原出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】