説明

医薬として使用するための組合せ製剤

A2A アデノシン受容体アゴニストおよびカルシウムチャンネルブロッカーを含む組合せ製剤を記述する。A2A アデノシン受容体アゴニストの効果は、カルシウムチャンネルブロッカーの存在下で増強される。組合せ製剤を用いて病理学的症状を処置する方法を説明する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象に共投与または連続投与するための組合せ製剤、および該組合せ製剤を用いて病理学的症状、特に疼痛または炎症を処置するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アデノシンは、4つの既知の受容体、A1、A2A、A2BおよびA3アデノシン受容体として機能する偏在性の局所ホルモン/神経伝達物質である。A2A アデノシン受容体のアゴニズムは鎮痛および抗炎症効果を示すことが知られている。
【発明の概要】
【発明の効果】
【0003】
驚くべきことに、A2Aアデノシン受容体アゴニストの効果が、カルシウムチャンネルブロッカーの存在下において増強されることがわかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に従って、A2A アデノシン受容体アゴニストおよびカルシウムチャンネルブロッカーを含む組合せ製剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0005】
好ましくは、該製剤は、該A2A アデノシン受容体アゴニストおよび該カルシウムチャンネルブロッカーを対象、より好ましくはヒト対象に共投与または連続投与するためのものである。同時投与のために、A2A アデノシン受容体アゴニストおよび該カルシウムチャンネルブロッカーを、混合物として提供してもよく、またはそれらを互いに分離して同時投与することもできる。
【0006】
好ましくは、組合せ製剤は、薬学的に許容し得る担体、賦形剤、または希釈剤を含む。該A2A アデノシン受容体アゴニストおよび該カルシウムチャンネルブロッカーを、製剤中で互いに分離する場合、それらは、各々、薬学的に許容し得る担体、賦形剤、または希釈剤と共に存在してもよく、これは同一または異なる薬学的に許容し得る担体、賦形剤、または希釈剤であってもよい。
【0007】
また、本発明に従って提供されるものは、医薬として使用するための本発明の組合せ製剤である。
【0008】
また、本発明に従って提供されるものは、A2A アデノシン受容体のアゴニズム(agonism)により予防、処置、または緩和され得る病理学的症状を予防、処置、または緩和するための本発明の組合せ製剤である。
【0009】
また、本発明に従って提供されるものは、A2A アデノシン受容体のアゴニズムにより予防、処置、または緩和され得る病理学的症状を予防、処置、または緩和するための医薬における本発明の組合せ製剤の使用である。
【0010】
A2A アデノシン受容体のアゴニズムにより予防、処置、または緩和され得る病理学的症状の例は、疼痛、炎症、癌、自己免疫疾患、虚血再灌流損傷、てんかん、敗血症、敗血症性ショック、神経変性、または糖尿病の血管合併症、特に糖尿病性神経障害、糖尿病性神経因性疼痛、糖尿病性皮膚潰瘍および皮膚症、糖尿病性腎臓疾患、または糖尿病性網膜症を含む糖尿病の微小血管合併症、あるいは心臓脈管疾患(心臓脈管疾患に関連したアテロ−ム性動脈硬化症および跛行を含む)および心疾患(心疾患に関連するアテロ−ム性動脈硬化症を含む)を含む糖尿病の大血管合併症である。
【0011】
A2A アデノシン受容体アゴニストは、当業者にはよく知られている。その例示は、米国特許第5,877,180号、WO 2003/086408に記述される。スポンゴシン(spongosine)(2-メトキシアデノシン)が、アデノシン受容体に対してこの化合物の既知の親和性を基準にして必要とされると予想されるよりも100倍程度低い用量にて有効な鎮痛剤であるということは以前より見出されている。これらの用量にて、スポンゴシンは、この化合物または他のアデノシン受容体アゴニストのより高い用量と関連する有意な副作用をもたらさない。即ち、スポンゴシンの治療効果は、その副作用とは無関係であり得る。鎮痛剤としてのスポンゴシンの活性は国際特許出願番号PCT/GB03/05379の主題であり、および鎮痛剤としてスポンゴシンに関連した化合物の活性は、国際特許出願番号PCT/GB04/00935の主題である。炎症および他の疾患を処置するためのスポンゴシンおよび関連化合物の使用は、国際特許出願番号PCT/GB04/000952の主題である:
【化1】

(I)
(式中、Rは、C1-4 アルコキシであり、XはOHまたはHである)。
【0012】
PCT/GB04/00935およびPCT/GB04/000952に記載されたスポンゴシンおよび関連化合物が、pH7.4以下のpHにて、アデノシン受容体に対する親和性を増強したことは以前に報告された。この性質は、低い用量にてこれらの化合物の驚くべき活性を説明すると考えられる。出願人は、低下したpHにてアデノシン受容体に対する親和性も増強するその他のある化合物を同定している。これらの化合物は、重篤な副作用をもたらさずに医薬として使用され得るということが考えられる。これらの化合物は、PCT/GB2005/000800に記載されており、以下の式あるいはその薬学的に許容し得る塩に包含される:
【化2】


(II)
[式中、
X = OHである場合に、R1は、C1またはC4-C6 アルコキシ(好ましくは、C5-C6 アルコキシ)、OCH2シクロプロピル、OCH2シクロペンチル、O-(2,2,3,3-テトラフルオロ-シクロブチル)、フェノキシ、置換フェノキシ(好ましくは、ニトリル(好ましくは、4-ニトリル)、4-メチル、フェニル(好ましくは、3-フェニル)、3-ブロモ、3-イソプロピル、2-メチル、2,4-ジフルオロ、2,5-ジフルオロ、3,4-ジフルオロ、2,3,5-トリフルオロ、または(3-メチル, 4-フルオロ)により置換される)、OCH2CH2OH、OCH2CHF2、(5-インダニル)オキシ、C1、C2、C5、またはC6アルキルアミノ、(R)または(S)-sec-ブチルアミノ、C5またはC6 シクロアルキルアミノ、エクソ−ノルボルナンアミノ、(N-メチル、N-イソアミルアミノ)、フェニルアミノ、メトキシまたはフルオロ置換基、C2スルホン基、C7アルキル基、シアノ基、CONH2基のいずれかに置換されたフェニルアミノ、または3,5-ジメチルフェニル;あるいは、
X = Hである場合に、R1はn-ヘキシルオキシである];
【化3】

(III)
[式中、
R2は、NMe2、N-(2-イソペンテニル)、ピペラジニル、(N-Me、N-ベンジル)、(N-Me、N-CH2Ph(3-Br))、(N-Me、N-CH2Ph(3-CF3))、または(N-Me、N-(2-メトキシエチル))、またはOCH2シクロペンチルである];
【化4】

(IV)
[式中、
R1 = Hである場合、R3はイソプロピル基であり、R2はNH2、メチルアミノ基(NHMe)またはイソアミル基(CH2CH2CHMe2)である;
R1 = Hである場合、R3はHであり、R2はNH2である;
R1がOMeである場合、R3はPhであり、R2はNH2である;または
R1がNHCH2CH2CH2CH2CH2Meである場合、R3はCH2CH2CH2Meであり、R2はNH2である];
【化5】

(V)
(式中、R4は、n-プロピルまたはNHCH2CH3である);
【化6】

(VI)
(式中、
R2がNMe2である場合、R1はNHシクロヘキシルである;または
R2がNHベンジルである場合、R1はOMeである);
【化7】

(VII)
(式中、R1はNHシクロヘキシル、NHシクロペンチル、またはNH-n-ヘキシルである)。
【0013】
本明細書において使用された用語「アルキル」は、非置換直鎖または分岐鎖炭化水素基を意味する。好ましくは、該アルキルは直鎖である。
【0014】
本明細書において使用された用語「アルコキシ」は、非置換直鎖または分岐鎖アルキル-オキシ基を意味する。好ましくは、該アルコキシは、直鎖アルキル-オキシ基である。
【0015】
本明細書において使用された用語「C1、C2、C5、またはC6アルキルアミノ」は、基-NRxRyを意味し、式中Rxは水素であり、RyはC1、C2、C5,またはC6アルキルであるか、または式中RxおよびRyは、各々独立してC1、C2、C5,またはC6 アルキルである。好ましくは、RxおよびRyは、各C1アルキルである。
【0016】
式(I)-(VII)の化合物は、pH7.4以下のpHにて全てアデノシン受容体に対する親和性を増加すると考えられる。正常な哺乳類組織において、血漿pHは、pH7.35から7.45の間に厳密に制御されている。いくつかの組織は、より低いpH値を経験する、特に胃の内腔(pH2から3の間)およびいくつかの上皮表面(例えば、肺表面のpHがおおよそ6.8である)。病理組織において、例えば、炎症、虚血およびその他の損傷中に、pHの低下が起こる。
【0017】
低下したpHにてアデノシン受容体に対する式(I)-(VII)の化合物の増強した親和性を理由に、これらの化合物の作用は低いpH、例えば病理組織の領域を標的とし得ると考えられる。結果として、治療効果を提供するために必要とされるこれら化合物の用量は、正常な細胞外の生理学的pHでアデノシン受容体に対する親和性を基準にして予測されるよりも非常に低い。低用量でしか化合物を必要としないので、アデノシン受容体アゴニストの投与に関連する重篤な副作用が回避されるか、または最小となる。このことは、生理学的pHにて低い親和性および/または非選択的アゴニストであるいくつかのアデノシン受容体アゴニスト(例えば、スポンゴシン)は、重篤な副作用をもたらさずに治療上有効であり得るという驚くべき結果を示す(先行技術に反する、例えば米国特許第5,877,180号)。
【0018】
カルシウムチャンネルブロッカーの存在下においてA2a アデノシン受容体アゴニストの増強された効果により、pH 7.4以下のpHのアデノシン受容体に対する親和性を増強しないA2a アデノシン受容体アゴニストを、別途必要とされるよりもより低い用量にて投与することができ、こうしてかかる従来のA2a アデノシン受容体アゴニストの副作用を低下させることができると考えられる。
【0019】
しかし、A2A アデノシン受容体アゴニストは、上記式(I)-(VII) のいずれかのA2A アデノシン受容体アゴニストまたはその薬学的に許容し得る塩であるのが好ましい。特に好ましい A2A アデノシン受容体アゴニストは、式 (I)の化合物、最も好ましくはスポンゴシン(2-メトキシアデノシン、9H-プリン-6-アミン、9-α-D-アラビノフラノシル-2-メトキシとしても知られる)である。
【0020】
薬学的に許容し得る塩の例示は、生理学的に許容し得るアニオン、例えば、トシレート、メタンスルホネート、リンゴ酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、酒石酸塩(tartarate)、コハク酸塩、安息香酸塩、アスコルベート、α-ケトグルタレート、およびα-グリセロホスフェートを形成する酸と形成された有機付加塩である。例えば塩酸塩、スルフェート、ニトレート、重炭酸塩、および炭酸塩などの好適な無機塩もまた形成され得る。
【0021】
薬学的に許容し得る塩は、当業者にはよく知られている標準的手法を用いて、例えば、十分な塩基性化合物、例えばアミンを、生理学的に許容し得るアニオンを提供する好適な酸と反応させることにより得られる。カルボン酸のアルカリ金属 (例えば、ナトリウム、カリウム、またはリチウム)またはアルカリ土類金属(例えば、カルシウム)塩もまた形成し得る。
【0022】
カルシウムチャンネルブロッカーは、高血圧の個体における血圧を低下させるために従来的に使用される。カルシウムチャンネルブロッカーは、心筋および血管中の電位依存性のカルシウムチャンネル(VGCCs)を遮断することにより働く。これは、筋肉収縮の低下をもたらす細胞内カルシウムを低下させる。心臓においては、脈拍に利用可能なカルシウムの低下は、心臓収縮の低下もたらす。血管内において、カルシウムの低下は、血管平滑筋の収縮低下をもたらし、動脈の直径増加 (CCB'sは、静脈平滑筋に対して働かない)、即ち血管拡張と呼ばれる現象をもたらす。血管拡張は、全体的に末梢抵抗を低下させ、心臓収縮性における低下により心拍出量が低下する。血圧は心拍出量および末梢抵抗により決定されるので、血圧は低下する。
【0023】
L-タイプの電位依存性のカルシウムチャンネルに関する数種のブロッカーは当業者にはよく知られており、ジヒドロピリジン、フェニルアルキルアミン、およびベンゾチアゼピンを含む。
【0024】
ジヒドロピリジンカルシウムチャンネルブロッカーは、全身性の血管抵抗および動脈圧を減少させるために使用されることが多いが、狭心症(慢性の安定狭心症ならびに血管攣縮性の狭心症を処置するための適応を担持する、アムロジピンおよびニフェジピンを除いて)を処置するために使用されない。なぜなら、この血管拡張および低血圧は反射性頻脈を引き起こす可能性があるためである。例示には、アムロジピン(Norvasc, Azor)、アラニジピン(Sapresta)、アゼルニジピン(Calblock)、バルニジピン(HypoCa)、ベニジピン(Coniel)、クリニジピン(Atelec, Cinalong, Siscard)、クレビジピン(Cleviprex)、エフォニジピン(Landel)、フェロジピン(Plendil)、ラシジピン(Motens, Lacipil)、ラルカニジピン(Zanidip)、マニジピン(Calslot, Madipine)、ニカルジピン(Cardene, Carden SR)、ニフェジピン (Procardia, Adalat)、ニルバジピン(Nivadil)、ニモジピン(Nimotop)、ニソリジピン(Baymycard, Sular, Syscor)、ニトレンジピン(Cardif, Nitrepin, Baylotensin)、パラニジピン(Acalas)が挙げられる。
【0025】
フェニルアルキルアミンカルシウムチャンネルブロッカーは、心筋について比較的選択的であり、心筋酸素の供給を減少させて、冠攣縮性狭心症を回復させ、狭心症を処置するために使用されることが多い。それらは、ジヒドロピリジンと比較して血管拡張効果を最小とする。その作用は細胞内である。例示には、ベラパミル (Calan, Isoptin)、ガロパミル (Procorum, D600)が挙げられる。
【0026】
ベンゾチアゼピンカルシウムチャンネルブロッカーは、血管カルシウムチャンネルに対するその選択性において、フェニルアルキルアミンおよびジヒドロピリジンの中間体類である。心臓抑制剤および血管拡張剤双方の作用を有することにより、ベンゾチアゼピンは、ジヒドロピリジンによりもたらされる同程度の反射性の心臓刺激を生じさせずに動脈圧を減少させることができる。例は、ジルチアゼム(Cardizem)である。
【0027】
上記に列挙した大部分のカルシウムチャンネルブロッカーは比較的選択的である一方、で、非選択的と見なされる薬剤もまた存在する。これらには、ミベフラジル、ベプリジル、フルスピリレン、およびフェンジリンが挙げられる。
【0028】
上記いずれのカルシウムチャンネルブロッカーも、本発明における使用に好適である。
【0029】
また、本発明に従って提供されるものは、A2A アデノシン受容体のアゴニズムにより予防、処置、または緩和され得る病理学的症状を予防、処置、または緩和する方法であって、これは、A2A アデノシン受容体アゴニストおよびカルシウムチャンネルブロッカーをかかる予防、処置、または緩和が必要な対象に投与することを含む。
【0030】
特に、本発明に従うA2A アデノシン受容体アゴニストおよびカルシウムチャンネルブロッカーの投与は、疼痛、癌、炎症、自己免疫疾患、虚血再灌流損傷、てんかん、敗血症、敗血症性ショック、神経変性(アルツハイマー疾患を含む)、筋肉疲労、筋肉痙攣、および糖尿病の血管合併症、特に、糖尿病性神経障害、糖尿病性神経因性疼痛、糖尿病性皮膚潰瘍および皮膚症、糖尿病性腎臓疾患、または糖尿病性網膜症を含む糖尿病の微小血管合併症、または心臓脈管疾患(アテロ−ム性動脈硬化症および心臓脈管疾患に関連した跛行を含む)および心疾患(心疾患に関連するアテロ−ム性動脈硬化症を含む)を含む糖尿病性大血管合併症の予防、処置、または緩和に使用し得る。
【0031】
本発明の特定の態様は、疼痛の処置と関連する。疼痛は、知覚神経の活性化に関与する各々2種の要素を有する。第一の要素は、例えば皮膚上の熱または圧力の結果として知覚神経が刺激された場合の初期または即時段階である。第二の要素は、過去に損傷を受けた組織を刺激する知覚メカニズムの増加された感受性の結果である。この第二の要素は、痛覚過敏と言われており、組織損傷から生じる全ての慢性疼痛の形態に関与するが、疼痛知覚の初期または即時段階には関与しない。
【0032】
このように、痛覚過敏とは、組織損傷により生じた疼痛知覚が亢進した状態である。この状態は、神経系の自然な応答であり、この応答は負傷した個体による損傷組織の保護作用を促進し、組織修復が起こる時間を与えるよう明確に設計されている。この状態に関する2つの根源的な原因が知られており、これは知覚神経活性の上昇および脊髄で生じる侵害受容情報のニューロンのプロセッシングにおける変化である。痛覚過敏は、慢性炎症の症状(例えば、リューマチ様関節炎)において、および知覚神経障害が生じる場合(即ち、神経因性疼痛)を減弱することができる。
【0033】
本発明の製造および方法は、糖尿病性神経障害、多発性神経障害、癌疼痛、線維筋痛、筋膜疼痛症候群、骨関節炎、膵臓の疼痛、骨盤/陰部疼痛、ヘルペス後の神経痛、リューマチ様関節炎、坐骨神経痛/腰椎神経根障害、脊髄狭窄、側頭下顎骨の関節障害、HIV疼痛、三叉神経痛、慢性神経因性疼痛、腰部疼痛、脊椎手術の失敗による疼痛、背部の疼痛、術後の疼痛、外傷後の疼痛(銃弾、交通事故、火傷起因の疼痛を含む)、心臓疼痛、胸部疼痛、骨盤の疼痛/PID、関節疼痛(腱炎、滑液包炎、急性関節炎)、首の疼痛、腸疼痛、幻肢疼痛、産科疼痛(分娩/帝王切開)、腎疝痛、急性ヘルペス帯状疱疹の疼痛、急性膵炎の強烈な疼痛(癌)、月経困難症/子宮内膜症を含む神経障害の結果として引き起こされる疼痛(特に痛覚過敏)の予防、処置、または緩和に使用され得る。
【0034】
本発明の製造および方法は、糖尿病性神経障害、糖尿病性神経因性疼痛、糖尿病性皮膚潰瘍および皮膚症、糖尿病性腎臓疾患、または糖尿病性網膜症を含む糖尿病の微小血管合併症の結果として引き起こされる疼痛(特に痛覚過敏)の予防、処置、または緩和に使用され得る。
【0035】
本発明の製造および方法は、例えば、リューマチ様関節炎、骨関節炎、リューマチ様脊椎炎、痛風性関節炎、および他の関節炎の症状、癌、HIV、慢性肺疾患の炎症性疾患、珪肺、肺のサルコーシス(sarcosis)、骨吸収疾患、再灌流損傷(再灌流後の虚血事象の結果として臓器に生じる障害、例えば、心筋性梗塞、卒中を含む)、自己免疫障害(多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、重症筋無力症を含む)移植対宿主拒絶反応、同種移植の拒絶反応、感染による熱および筋肉痛、AIDS関連合併症(ARC)、ケロイド形成、瘢痕組織形成、クローン疾患、潰瘍性大腸炎および発熱(pyresis)、過敏性腸症候群、骨粗しょう症、脳マラリアおよび細菌性髄膜炎、腸疼痛、癌疼痛、背部の疼痛、線維筋痛、術後の疼痛、膀胱炎を含む、炎症性疾患の結果または組合せた炎症性自己免疫および神経組織損傷の結果として引き起こされる疼痛(特に痛覚過敏)の予防、処置、または緩和に使用され得る。
【0036】
本発明の製造および方法は、虚血痛の予防、処置、または緩和に使用され得る。本明細書に使用される用語「虚血痛」は、身体の一部の血液供給における低下と関連する疼痛を意味する。低下した血液供給は、身体の一部への酸素(低酸素症)およびエネルギーの供給を制限する。虚血は、組織の低い血液灌流から生じ、ひどい虚血痛は、冠状動脈疾患、末梢動脈疾患、および不十分な血流を特徴とする症状、アテローム性動脈硬化症への二次的な事象を生じる。その他の血管障害は虚血痛をもたらす。これらは次のものを含む:左(心)室肥大、冠(状)動脈疾患、本態性高血圧、急性高血圧性緊急症、心筋症、心不全、運動負荷試験、慢性心不全、不整脈、心臓律動不整、失神、動脈硬化、軽度の慢性心不全、狭心症、プリンツメタル狭心症(variant)、安定狭心症、および運動誘発性狭心症、心臓のバイパス再閉塞、間欠的な跛行(動脈硬化閉塞(oblitterens))、動脈炎、心臓拡張の機能不全および収縮期機能不全、アテロ−ム性動脈硬化症、虚血後/再灌流損傷、糖尿病(IおよびII型の双方)、血栓塞栓症。出血事象もまた虚血痛をもたらし得る。さらに、灌流不良は、低酸素誘導因子神経細胞損傷(例えば、心臓拘束またはバイパス手術、糖尿病または新生児呼吸困難(neonatal distress))から生じる神経病および炎症性疼痛をもたらし得る。
【0037】
本発明の製造および方法は、炎症の予防、処置、または緩和に使用され得る。特に、炎症は、次のものを原因とするか、または次のものと関連する:癌(例えば、白血病、リンパ腫、癌腫、結腸癌、乳癌、肺癌、膵臓癌、肝細胞癌腫、腎臓癌、黒色腫、肝臓、肺、乳、および前立腺の転移など);自己免疫疾患(例えば、臓器移植拒絶反応、エリテマトーデス、移植対宿主拒絶反応、同種移植の拒絶反応、多発性硬化症、リューマチ様関節炎、タイプI真性糖尿病、例えば糖尿病を導く膵島の破壊および糖尿病の炎症性結果を含む);網膜症;腎症;神経障害;糖尿病、特に糖尿病の血管合併症、糖尿病の微小血管合併症、および糖尿病の大血管合併症、皮膚障害;自己免疫障害(多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、重症筋無力症を含む);肥満;低組織灌流および炎症と関連のある心臓脈管症状(例えば、粉瘤、アテロ−ム性動脈硬化症、卒中、虚血-再かん流損傷、跛行、脊髄損傷、うっ血性心不全、血管炎、出血性ショック、くも膜下出血後の血管痙攣、大脳皮質の血管アクシデント後の血管痙攣、胸膜炎、心膜炎、糖尿病の心臓脈管合併症);虚血-再かん流損傷、虚血および関連炎症、血管形成後の再狭窄および炎症性動脈瘤;てんかん、神経変性(アルツハイマー疾患を含む)、筋肉疲労または筋肉痙攣(特に、アスリートの痙攣)、関節炎(例えば、リューマチ様関節炎、骨関節炎、リューマチ様脊椎炎、痛風性関節炎)、線維症(例えば、肺、皮膚および肝臓の)、多発性硬化症、敗血症、敗血症性ショック、脳炎、感染性関節炎、ヤーリッシュ・ヘルクスハイマー反応、帯状疱疹、毒性ショック、脳マラリア、ライム疾患、エンドトキシンショック、グラム陰性ショック、出血性ショック、肝炎(組織損傷またはウィルス感染の双方から生じる)、深部静脈血栓症、痛風;呼吸困難に関連する症状(例えば、慢性閉塞性肺疾患、妨害かつ遮断された気道、気管支収縮、肺の血管収縮、呼吸妨害、慢性肺疾患炎症性疾患、珪肺、肺のサルコーシス、嚢胞性線維症、肺の高血圧、肺の血管収縮、気腫、気管支喘息アレルギーおよび/または炎症、喘息、枯草熱、鼻炎、春季結膜炎および急性呼吸不全症候群);皮膚の炎症と関連した症状(乾癬、湿疹、潰瘍、接触性皮膚炎を含む);腸炎症と関連する症状(クローン疾患、潰瘍性大腸炎および発熱、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患を含む); HIV (特に、HIV感染)、脳マラリア、細菌性髄膜炎、TNF増強性 HIV 複製、AZTおよびDDI活性のTNF阻害、骨粗しょう症および他の骨吸収疾患、骨関節炎、リューマチ様関節炎、子宮内膜症による不妊、感染による熱および筋肉痛、癌に対する二次的悪液質、感染または悪性腫瘍に対する二次的な悪液質、獲得免疫欠損症(AIDS)対する二次的な悪液質、AIDS関連合併症(ARC)、ケロイド形成、瘢痕組織形成、アンホテリシン B 処置による副作用効果、インターロイキン-2の処置から生じる副作用効果、OKT3 処置から生じる副作用効果、またはGM-CSF 処置から生じる副作用効果、および過剰な抗炎症性細胞(好中球、好酸球、マクロファージおよびT細胞を含む)活性により媒介される他の症状である。
【0038】
連続的な軽度の炎症は、肥満に関連すると知られる(インスリン耐性およびタイプII糖尿病の存在および非存在において)(Browning et al (2004) Metabolism 53、899-903, Inflammatory markers elevated in blood of obese women; Mangge et al (2004) Exp Clin Endocrinol Diabates 112, 378-382, Juvenile obesity correlates with serum inflammatory maker C-reactive protein; Maachi et al Int J Obes Relat Metab Disord. 2004 28, 993-997, Systemic low grade inflammation in obese people)。これについての起こり得る理由は、脂肪細胞が、炎症性促進性であるTNFαおよびインターロイキン1および6を分泌する。
【0039】
本発明の製造および方法は、糖尿病の血管合併症の予防、処置、または緩和に使用され得る、特に、糖尿病性神経障害、糖尿病性神経因性疼痛、糖尿病性皮膚潰瘍および皮膚症、糖尿病性腎臓疾患、または糖尿病性網膜症を含む糖尿病の微小血管合併症、あるいは心臓脈管疾患または心疾患を含む糖尿病の大血管合併症である。理論に拘束されずに、アデノシンA2A 受容体のアゴニズムは、拡張をもたらすことにより、ならびに関連する炎症を処置することにより糖尿病の微小血管合併症を処置できると考えられている。アデノシンA2A 受容体のアゴニズムは、糖尿病の大血管合併症、特に、この関連する炎症およびアテローム形成を処置することにより心臓脈管疾患(アテロ−ム性動脈硬化症および心臓脈管疾患に関連した跛行を含む)、ならびに拡張をもたらすこと、関連のある炎症を処置すること、および虚血再かん流損傷を阻害することにより心疾患(心疾患に関連するアテロ−ム性動脈硬化症を含む)を処置できると考えられる。
【0040】
選択的なA2A アデノシン受容体アゴニストであるA2A アデノシン受容体アゴニストは、かかる化合物が強力な抗炎症性活性を有すると考えられるので特に好ましい。選択的な A2A アデノシン受容体アゴニストとは、A1 アデノシン受容体を活性化するのに必要とされるよりもより低い濃度でA2A アデノシン受容体を活性化するアゴニストを意味する(好ましくは、1000分の1から5分の1)。さらに、A1 アデノシン受容体は炎症促進活性を有するので、かかる効果は、A2A アデノシン受容体に選択的である化合物に対して最小となると考えられる。
【0041】
当業者は、式 (I)-(VII)の化合物により予防、処置、または緩和される病理学的症状がA2A アデノシン受容体により作用するかどうかを容易に試験できる。例えば、これは、A2A アデノシン受容体の選択的アンタゴニストの存在および非存在において病理学的症状の動物モデルにおける化合物の効果を比較することにより行い得る。アンタゴニストの存在下におけるこの化合物の効果は、アンタゴニストの非存在における該化合物の効果と比較して、低減されるか、または非存在であるならば、該化合物は、A2A アデノシン受容体を介してその効果を発揮していると結論づける。A2A アデノシン受容体のアンタゴニストは、当業者には知られている(例えば、Ongini et al., Farmaco. 2001 Jan-Feb;56(1-2):87-90; Muller, Curr Top Med Chem. 2003;3(4):445-62を参照されたい)。
【0042】
あるいは、A2A アデノシン受容体ノックアウトマウスを用いることもできる(Ohta A and Sitkovsky M, Nature 2001;414:916-20)。例えば、病理学的症状の兆候を有するマウスに対する化合物の効果を、対応する兆候を有するA2A アデノシン受容体ノックアウトマウスに対するその効果と比較する。該化合物は、A2A アデノシン受容体を有するマウスにおいて有効であれば、この化合物がA2A アデノシン受容体によりその効果を発揮すると結論づけられる。
【0043】
A2A アデノシン受容体アゴニストおよび該カルシウムチャンネルブロッカーは、同時に、または混合物として対象に共投与されてもよく、またはそれらを対象に連続投与されてもよい。
【0044】
該A2A アデノシン受容体アゴニストおよび該カルシウムチャンネルブロッカーは、共投与のために一緒に個装されても(例えば、混合物として)、または共投与または連続投与のために、互いに別々に分離して同じ個装内で梱包されてもよい。該A2A アデノシン受容体アゴニストおよび該カルシウムチャンネルブロッカーは、組合せ製剤の投与のための一組の指示書と共に個装されてもよい。該A2A アデノシン受容体アゴニストおよび該カルシウムチャンネルブロッカーを同時投与のために一緒に個装される場合、一組の指示書を同時投与のために提供されてもよい。あるいは、該A2A アデノシン受容体アゴニストおよび該カルシウムチャンネルブロッカーを、共投与または連続投与のために互いに別々に梱包される場合、一組の指示書が共投与または連続投与のために提供されてもよい。
【0045】
連続投与のために、該A2A アデノシン受容体アゴニストを、カルシウムチャンネルブロッカーの投与の前または後に対象に投与してもよい。該A2A アデノシン受容体アゴニストは、該カルシウムチャンネルブロッカーを投与した場合に対象において依然として活性形態にあるべきであり、また逆の場合も同じであると理解される。好ましくは、A2A アデノシン受容体アゴニストを、カルシウムチャンネルブロッカーの投与後の対象に投与する。
【0046】
A2A アデノシン受容体アゴニストおよび該カルシウムチャンネルブロッカーを、各々を数分以内または各々を48時間以内に対象に投与し得る。好ましくは、該A2A アデノシン受容体アゴニストおよび該カルシウムチャンネルブロッカーを、互いに24時間以内、好ましくは12時間以内に対象に投与し得る。
【0047】
該A2A アデノシン受容体アゴニストおよび該カルシウムチャンネルブロッカーを、薬学的に許容し得る担体、賦形剤、または希釈剤と組み合わせて該A2A アデノシン受容体アゴニストおよび該カルシウムチャンネルブロッカーを含有する医薬製剤にて好適に投与する。製剤中で、該A2A アデノシン受容体アゴニストおよび該カルシウムチャンネルブロッカーを互いに分離する場合、それらをそれぞれ薬学的に許容し得る担体、賦形剤、または希釈剤と組合せてもよく、それらは同一のまたは異なる薬学的に許容し得る担体、賦形剤、または希釈剤であってもよい。
【0048】
医薬組成物は、当業者には既知の方法により製造され、また当業者には既知の担体、賦形剤、または希釈剤を含有できる。かかる方法および成分について広く認識される抄録は、Remington's Pharmaceutical Sciences by E.W. Martin (Mark Publ. Co., 15th Ed., 1975)である。本発明の化合物および組成物を、非経口(例えば、静脈内、腹腔内または筋肉内注射)、局所、経口、または直腸投与できる。
【0049】
経口的治療投与のために、該活性化合物は、1または1以上の賦形剤と組合せて、摂取可能な錠剤、舌下錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハなどの形態で使用することができる。かかる組成物および製剤は少なくとも0.1%の活性化合物を含有すべきである。組成物および製剤の%は、もちろん変更されてもよく、好適には所定の単位用量形態の約2〜約60重量%の間であってよい。かかる治療上有用な組成物中の活性化合物の量は、有効な用量レベルが得られるような量である。
【0050】
錠剤、トローチ、丸剤、カプセルなどは、以下を含み得る:結合剤、例えばガムトラガカント、アカシア、コーンスターチまたはゼラチン;賦形剤、例えばカルシウムニリン酸;崩壊剤、例えばコーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸など;潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム;および甘味剤、例えばスクロース、フルクトース、ラクトースまたはアスパルテームまたは風味剤、例えばペパーミント、冬緑油、またはチェリーフレーバーも添加し得る。該単位用量形態がカプセル剤である場合、上記タイプの物質に加えて、植物油またはポリエチレングリコールなどの液体担体を含有してもよい。様々な他の物質は、被覆材としてあるいは固体の単位用量形態の物理形態を別途改変するために存在してもよい。例えば、錠剤、丸剤、またはカプセルは、ゼラチン、ワックス、シェラック(shellac)または糖などで被覆されてもよい。シロップまたはエリキシルは、活性化合物、甘味剤としてスクロースまたはフルクトース、保存剤としてメチルおよびプロピルパラベン、着色料および香味剤、例えばチェリーまたはオレンジフレーバーを含有してもよい。もちろん、任意の単位用量形態を製造する際に使用される任意の物質は、使用する量にて薬学上許容でき、かつ実質的に非毒性であるべきである。さらに、活性化合物を、徐放製剤および装置に導入してもよい。
【0051】
製剤の活性化合物は、点滴または注射により静脈内または腹腔内投与されてもよい。活性化合物またはその塩の溶液を水で調製することができ、所望により非毒性界面活性剤と混合されてもよい。また分散剤は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、トリアセチンおよびその混合物中ならびに油中で調製され得る。貯蔵および使用の通常の条件下で、これらの製剤は、微生物の成長を防止するための保存料を含有する。
【0052】
注射または点滴に好適な医薬投薬形態は、滅菌性の注射可能または点滴可能な溶液または分散剤の即時調製のために適合される活性成分(所望によりリポソームに封入される)を含有する滅菌水溶液または分散剤または滅菌粉末を包含できる。全ての場合において、最終的な投薬形態は、製造および貯蔵条件下において滅菌性、流動的および安定であるべきである。液体担体またはビヒクルは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、植物油、非毒性グリセリルエステルおよび好適なその混合物を含む溶媒または液体分散媒体であってよい。適切な流動性を、例えばリポソームの形成により、分散剤の場合には所望の粒子サイズの保持により、または界面活性剤の使用により維持できる。微生物の作用の予防は、様々な抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどを使用することによりもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば糖、緩衝液または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射可能な組成物の持続吸収は、吸収遅延剤、例えば、ステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物に使用することにより得られる。
【0053】
滅菌した注射可能な溶液は、フィルター滅菌を行った上記に挙げた様々な他の成分と共に適切な溶媒に必要とされる量の活性化合物を導入することにより製造される。滅菌した注射可能な溶液の調製のための滅菌粉末の場合には、好ましい調製方法は真空乾燥および凍結乾燥技術であって、前記の滅菌した濾過溶液中に存在する任意の付加的な所望の成分に加えて活性成分の粉末を提供する。
【0054】
局所投与のために、該活性化合物は、純粋な形態で適用され得る、即ちそれらが液体である場合。しかし、一般的には、それらを皮膚科的に許容できる担体と組合せて、組成物または製剤として皮膚に投与することが望ましく、これらは固体または液体であってもよい。
【0055】
有用な固体担体は、例えばタルク、クレイ、微晶質セルロース、シリカ、アルミナなどの微細に分割された固体を含む。有用な液体担体は、水、アルコールまたはグリコールまたは水-アルコール/グリコールの混成物を包含し、ここで本化合物は、所望により非毒性の界面活性剤の助力を得て、有効なレベルにて溶解されるかまたは分散され得る。フレグランスおよび追加の殺菌剤などのアジュバンドを添加して、所定の用途のためにこの特性を最適化できる。得られる液体組成物は、吸収パッドから適用され、包帯およびその他の包帯を含浸させるために使用され、またはポンプ型またはエアロゾールスプレーを用いて罹患領域に噴霧され得る。増粘剤、例えば合成ポリマー、脂肪酸、脂肪酸塩およびエステル、脂肪アルコール、修飾セルロースまたは修飾無機物質を、使用者の皮膚に直接適用するために液体担体と共に用いて、塗布用ペースト、ゲル、軟膏、石鹸などに成型することができる。
【0056】
有用な用量のA2A アデノシン受容体アゴニストおよびカルシウムチャンネルブロッカーを、動物モデルにおけるそのインビトロ活性およびインビボ活性を比較することにより決定できる。マウスおよび他の動物において有効な投薬方法のヒトへの外挿方法は、当分野では良く知られている;例えば、米国特許第4,938,949号を参照されたい。
【0057】
A2A アデノシン受容体アゴニストおよびカルシウムチャンネルブロッカーを、単位用量形態にて好適に投与する;例えば、約0.05 mg〜約500 mg、好適には約0.1 mg〜約250 mg、最も好適には約1 mg〜約150 mg の活性成分/単位用量形態を含有する。A2A アデノシン受容体アゴニストおよびカルシウムチャンネルブロッカーを、単回の単位用量にて組合せてもよいか、またはA2A アデノシン受容体アゴニストおよびカルシウムチャンネルブロッカーを、別々の単位用量として各々提供されてもよい。
【0058】
所望の用量は、便宜上、単回用量において、または適切な時間間隔にて、例えば、2、3、4つまたはそれ以上の分割用量/日にて投与される分割用量において存在し得る。分割用量それ自体をさらに分割してもよい、例えば投与を大まかに分けた多数の分割物に分割してもよい。
【0059】
活性化合物を、哺乳動物の体重の約0.01から約150 μg/kg、好ましくは、約0.1から約50 μg/kg、より好ましくは約0.1から約10 μg/kgの用量レベルにて、好適には、経口、舌下、経皮、または経腸的に投与することができる。
【0060】
非経口投与のためには、化合物は、約0.1から約10%、より好ましくは約0.1から約7%の濃度にて水溶液中に存在する。該溶液は、他の成分、例えば乳化剤、抗酸化剤または緩衝液を含有してもよい。
【0061】
対象に投与される式 (I)-(VII) の化合物 (または、pH7.4以下のpHにてA2A アデノシン受容体に対する親和性が増強した他のA2A アデノシン受容体アゴニスト)の量は、A2A アデノシン受容体における化合物のEC50 値未満であるピーク血漿濃度(好ましくは、pH 7.4)をもたらす量であるのが好ましい。
【0062】
好ましくは、化合物のピーク血漿濃度は、EC50値の10000分の1から2分の1 (または10000分の1から5分の1、または10000分の1から20分の1、または10000分の1から100分の1、または10000分の1から1000分の1まで、または1000分の1から2分の1まで、または1000分の1から5分の1まで、または1000分の1から20分の1まで、または50分の1から10分の1まで、または100分の1から2分の1まで、または100分の1から5分の1まで、または50分の1から3分の1まで、または50分の1から2分の1まで、または50分の1から5分の1まで、または10分の1から2分の1まで、または10分の1から5分の1まで)である。
【0063】
好ましくは、投与される化合物の量は、A2A アデノシン受容体における該化合物のEC50 値の10000分の1から2分の1(または10000分の1から5分の1まで、または10000分の1から20分の1まで、または10000分の1から100分の1まで、または10000分の1から1000分の1まで、または1000分の1から2分の1まで、または1000分の1から5分の1まで、または1000分の1から20分の1まで、または50分の1から10分の1まで、または100分の1から2分の1まで、または100分の1から5分の1まで、または50分の1から2分の1まで、または50分の1から5分の1まで、または10分の1から2分の1まで、または10分の1から5分の1まで)にて、1時間以上維持する血漿濃度をもたらす。
【0064】
好ましくは、投与される量は、pH 7.4にてA2A アデノシン受容体における化合物のEC50 値の1000分の1から2分の1、または1000分の1から5分の1、または1000分の1から20分の1、または100分の1から2分の1、または100分の1から5分の1、または50分の1から2分の1、または50分の1から5分の1の間、1時間以上維持される血漿濃度をもたらす。
【0065】
誤解を避けるために、本明細書では「化合物のEC50値」は、ベースラインの受容体応答と最大受容体応答の中間の受容体応答(例えば投与量−反応曲線を用いて決定されるような)を引き起こす化合物濃度として定義される。
【0066】
EC50 値は、標準的な条件下(pH 7.4に緩衝された平衡塩類溶液)で決定されるべきである。単離した膜、細胞および組織を用いてEC50 を決定するには、この条件は、例えば Dalyら(Pharmacol. (1993) 46、91-100))または好ましくはTilburgら(J. Med. Chem. (2002) 45, 91-100) のように、緩衝塩類溶液(pH 7.4)(例えば細胞培養培地)中であろう。EC50は、健康な正常動物中か、またはさらには正常条件下(すなわち酸素添加血液または酸素添加した等張媒体(pH 7.4に緩衝))で灌流させた健康な正常動物中の組織中のA2A アデノシン受容体媒介性の応答を測定することにより、インビボで決定することもできる。
【0067】
あるいは、投与される化合物の量は、A2A アデノシン受容体における化合物のKd 値よりも低いピーク血漿濃をもたらす量であってよい。好ましくは、化合物のピーク血漿濃度は、Kd 値の10000分の1から2分の1(または、10000分の1から5分の1、または10000分の1から20分の1、または10000分の1から100分の1、または10000分の1から1000分の1、または1000分の1から2分の1、または1000分の1から3分の1、または1000分の1から5分の1まで、または1000分の1から20分の1、または50分の1から10分の1、または100分の1から2分の1、または100分の1から5分の1、または50分の1から2分の1、または50分の1から5分の1、または10分の1から2分の1、または10分の1から5分の1)である。
【0068】
好ましくは、投与される化合物の量は、A2A アデノシン受容体における化合物のKd 値の1000分の1から2分の1、または1000分の1から5分の1、より好ましくは1000分の1から20分の1、または100分の1から2分の1、または100分の1から5分の1、または50分の1から2分の1、または50分の1から5分の1にて少なくとも1時間維持される血漿濃度をもたらす量である。
【0069】
好ましくは、投与される化合物の量は、A2A アデノシン受容体において化合物のKd 値の10000分の1から2分の1(または、10000分の1から5分の1、または10000分の1から20分の1、または10000分の1から100分の1、または10000分の1から1000分の1、または1000分の1から2分の1、または1000分の1から5分の1、または1000分の1から20分の1、または50分の1から10分の1、または100分の1から2分の1、または100分の1から5分の1、または50分の1から2分の1、または50分の1から5分の1、または50分の1から3分の1、または10分の1から2分の1、または10分の1から5分の1)にて1時間以上維持される血漿濃度をもたらす量である。
【0070】
各受容体の化合物のKd値は、標準条件下で、これらの受容体を内性的に発現する組織または細胞あるいはアデノシン受容体遺伝子をコードするDNAベクターによりトラスフェクトされた細胞のいずれかから得られたA2A アデノシン受容体の起源として原形質膜を用いて決定されるべきである。あるいは、A2A アデノシン受容体を発現する細胞を用いる全ての細胞調製物を使用できる。異なる受容体に選択的である標識されたリガンド(例えば、放射性標識された)を、緩衝された塩溶液(pH 7.4)において使用して(例えば、Tilburg et al, J. Med. Chem. (2002) 45, 420-429を参照されたい)、結合親和性、即ちA2A アデノシン受容体における化合物のKd を決定するべきである。
【0071】
あるいは、投与される化合物の量とは、該化合物を投与されるべき対象と同種の動物において徐脈、低血圧または頻脈の副作用を起こす化合物の最小量(または、投与量)の10000分の1から2分の1 (または、10000分の1から5分の1、または10000分の1から20分の1、または10000分の1から100分の1、または10000分の1から1000分の1、または1000分の1から2分の1、または1000分の1から5分の1、または1000分の1から20分の1、または50分の1から10分の1、または100分の1から2分の1、または100分の1から5分の1、または50分の1から2分の1、または50分の1から3分の1、または50分の1から5分の1、または10分の1から2分の1、または10分の1から5分の1)である量であってよい。好ましくは、投与される量は、副作用を引き起こす化合物の最小量の10000分の1から2分の1 (または10000分の1から5分の1、または10000分の1から20分の1、または10000分の1から100分の1、または10000分の1から1000分の1、または1000分の1から2分の1、または1000分の1から5分の1、または1000分の1から20分の1、または50分の1から10分の1、または100分の1から2分の1、または100分の1から5分の1、または50分の1から2分の1、または50分の1から5分の1、または10分の1から2分の1、または10分の1から5分の1)で1時間以上維持される血漿濃度をもたらす量である。
【0072】
好ましくは、投与される量は、副作用を引き起こす最小用量の1000分の1から2分の1、または1000分の1から20分の1、または100分の1または50分の1から2分の1、または100分の1または50分の1から5分の1の間に、1時間以上維持される血漿濃度をもたらす。
【0073】
あるいは、投与される化合物の量は、該化合物を投与されるべき対象と同種の動物において徐脈、低血圧または頻脈の副作用を起こす化合物の最小血漿濃度の10000分の1から2分の1 (または、10000分の1から5分の1、または10000分の1から20分の1、または10000分の1から100分の1、または10000分の1から1000分の1、または1000分の1から2分の1、または1000分の1から5分の1、または1000分の1から20分の1、または50分の1から10分の1、または100分の1から2分の1、または100分の1から5分の1、または50分の1から2分の1、または50分の1から3分の1、または50分の1から5分の1、または10分の1から2分の1、または10分の1から5分の1)である血漿濃度をもたらす量であってもよい。好ましい投与される量は、副作用を引き起こす化合物の最小血漿濃度の10000分の1から2分の1(または、10000分の1から5分の1、または10000分の1から20分の1、または10000分の1から100分の1、または10000分の1から1000分の1、または1000分の1から2分の1、または1000分の1から5分の1、または1000分の1から20分の1、または50分の1から10分の1、または100分の1から2分の1、または100分の1から5分の1、または50分の1から2分の1、または50分の1から5分の1、または10分の1から2分の1、または10分の1から5分の1)にて1時間以上維持される血漿濃度をもたらす。
【0074】
好ましくは、投与される量は、副作用を引き起こす最小血漿濃度の1000分の1から2分の1、または1000分の1から20分の1、または100分の1または50分の1から2分の1、または100分の1または50分の1から5分の1に、1時間以上維持される血漿濃度をもたらす。
【0075】
化合物の適切な投薬は、治療される対象の年齢、性別、体重および状態、化合物の力価(例えば、A2A アデノシン受容体に対するそのEC50 値)、その半減期、身体によるその吸収、および投与経路などにより変化するであろう。しかしながら、適切な投薬は、当業者により容易に決定できる。
【0076】
適切な投薬を決定するための好適な方法とは、A2A アデノシン受容体に対する化合物のEC50 値にまたは該EC50 値付近で心臓脈管の変化(例えば、ecg および 血圧のモニタリングにより)を評価して、最大の耐性用量を決定することである。その結果、この治療上有効用量は、最大耐性用量の10000分の1から2分の1(または、10000分の1から5分の1、または10000分の1から20分の1、または10000分の1から100分の1、または10000分の1から1000分の1、または1000分の1から2分の1、または1000分の1から5分の1、または1000分の1から20分の1、または50分の1から10分の1、または100分の1から2分の1、または100分の1から5分の1、または50分の1から2分の1、または50分の1から3分の1、または50分の1から5分の1、または10分の1から2分の1、または10分の1から5分の1)であると考えられる。
【0077】
スポンゴシンについて、該用量はヒトにおいて28 mg未満である。この用量は、0.5から0.9μMの間の血漿濃度をもたらす(pH 7.4にてアデノシンA2A 受容体のKdに近い、以下を参照されたい)。この結果に基づいて、スポンゴシンについての好ましい投薬範囲は0.03から0.3 mg/kgである。
【0078】
関節炎ラットアジュバントモデルにおいて最大の鎮痛緩和を提供するスポンゴシンの最小血漿濃度は、おおよそ1μMであるアデノシンA2A 受容体におけるスポンゴシンのEC50よりも十分低い0.06μMであった。ヒトにおける好ましい投薬レベルは、0.005から0.5μMの間の最大の血漿濃度を提供し、これはこの受容体に対する作用により鎮痛または抗炎症性効果を提供すると考えられる濃度よりも有意に低い。
【0079】
あるいは、化合物の好適な治療濃度は、pH 5.5でのA2Aアデノシン受容体に対して、おおよそ10-20倍のKiであると考えられる。即ち、スポンゴシンに対しては、15から30 nMを必要とするが、一方でpH7.4でのKiを用いると、必要と考えられる濃度は20から30μMである。
【0080】
投与される化合物の量は0.001-15 mg/kgであるべきであると考えられる。この量は6 mg/kg未満であってもよい。この量は、少なくとも 0.001、0.01、0.1、または0.2 mg/kgであってもよい。この量は、0.1、または0.01 mg/kg未満であってもよい。好ましい範囲は、0.001-10、0.001-5、0.001-2、0.001-1、0.001-0.1、0.001-0.01、0.01-15、0.01-10、0.01-5、0.01-2、0.01-1、0.1-10、0.1-5、0.1-2、0.1-1、0.1-0.5、0.1-0.4、0.2-15、0.2-10、0.2-5、0.2-2、0.2-1.2、0.2-1、0.6-1.2mg/kgである。
【0081】
ヒト対象(例えば、70kg 対象)にとって好ましい用量は、420mg未満、好ましくは28mg未満、より好ましくは21mg未満、好ましくは少なくとも 0.07、0.1、0.7、または0.8 mg未満、より好ましくは少なくとも3.5または7mgである。より好ましくは、7-70mg、14-70mg、または3.5-21mgである。
【0082】
上記に特定された投薬量は、アデノシンA2A 受容体における該化合物のEC50 値に基づいて鎮痛または抗炎症性効果のために必要であると予測されるよりも有意に低い(おおよそ1000倍低い)と考えられる。
【0083】
上記に特定した好ましい投薬量は、A2A アデノシン受容体における化合物のおおよそEC50 値の100分の1から2分の1の血漿濃度をもたらすことを意図する。
【0084】
A2A アデノシン受容体アゴニストの好適な投薬は、カルシウムチャンネルブロッカーの存在下におけるA2A アデノシン受容体アゴニストの増強された効果のために、該カルシウムチャンネルブロッカーの非存在にて必要とされる投薬量未満であってもよいことが理解されよう。A2A アデノシン受容体アゴニストの低い用量は、特に有利であろう、例えば、もし存在すればアゴニストの副作用はこの低用量にて低減される。
【0085】
本発明の組合せ製剤は、他の治療薬、例えば鎮痛剤または抗炎症剤(例えば、オピエート、ステロイド、NSAID、カンナビノイド、タキキニンモジュレーター、またはブラジキニンモジュレーター)または抗痛覚過敏(例えば、ガバペンチン、プレガバリン、カンナビノイド、ナトリウムまたはカルシウムチャンネルモジュデーター、抗てんかん薬または抗鬱剤)、またはDMARDと共に、またはこれらを併用せずに投与され得る。
【0086】
本明細書に開示された組み合せ製剤を投与するための正確な治療方法は、当然、処置される個々の対象の必要性、処置の種類、当然担当医の判断により変化する。
【0087】
該カルシウムチャンネルブロッカーの好適な用量は、好ましくは高血圧を有する個体において血圧を低下させるために通常使用される化合物の用量である。かかる用量は、当業者には知られる。例えば、アムロジピンは、ヒト対象に、2.5-10mg/日投与されてもよく、ベニジピンは2-4mgにて1日に1回、クリニジピンは5-10mgにて1日に1回、クレビジピンは、平均21mg/時間/24 時間を超えずに1-32mg/時間(IV 点滴)にて、ラシジピンは2-6mg 1日1回、ニモジピンは60mgにて4時間毎に(経口)または1-2mg/時間(IV 点滴)投与されてもよい。
【0088】
発明の実施態様は、添付の図面を参照すると共に実施例のみにより説明さるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】図1は、糖尿病性神経障害罹患患者に2-メトキシアデノシン(2-MeOAd)またはプラセボ投与後に1週間に1回、患者の疼痛強度の割合を(rate)を問診したフェーズ2Aの臨床試験の結果を示す。図1Aは、全患者集団に対して、4週間にわたる、24時間の疼痛強度におけるベースラインからの中央値の変化を示す。図1Bは、カルシウムチャンネルブロッカーならびに2-メトキシアデノシンまたはプラセボを投与した患者集団の下位群に対する中央値の変化を示す。
【図2】図2Aは、カルシウムチャンネルブロッカーを投与されていなかった患者についてのフェーズ2Aの臨床試験の結果を示し、図2Bは、カルシウムチャンネルブロッカーを投与されていた患者の結果を示す。
【図3】図3は、2-メトキシアデノシン(2-MeOAd))またはプラセボを投与した患者についてのフェーズ2Aの臨床試験における患者に対する応答割合を示す。図3Aは、2-メトキシアデノシンまたはプラセボにより投与した全ての患者に対する結果を示し、図3Bは、2-メトキシアデノシンまたはプラセボを投与したカルシウムチャンネルブロッカーを投与されている患者についての結果を示す。各々の場合、左側の色の濃い棒は、>50% 緩和を示す患者を示し、右側の薄い色の棒は>30% 緩和を示す患者を表す。
【実施例】
【0090】
実施例
カルシウムチャンネルブロッカーを受容する患者における糖尿病性神経因性疼痛に対する2-メトキシアデノシンの効果
フェーズ2Aの臨床試験において、糖尿病性神経障害罹患患者に、2-メトキシアデノシン(2-MeOAd)) (7mg、3回/日)またはプラセボを4週間投与し、11点のリッカート尺度(0-10)に基づいて、かれらの疼痛強度(糖尿病性神経因性疼痛)の割合を1週間に1回問診した。この患者には、従来の治療用量にてカルシウムチャンネルブロッカーを既に投与されていた数人の患者が含まれる。投与されたカルシウムチャンネルブロッカーは、アムロジピン(5-10mg、1日1回)、ベラパミル、またはフェロジピンを含む。
【0091】
患者集団(即ち、カルシウムチャンネルブロッカーを投与されている患者集団およびカルシウムチャンネルブロッカーを投与されていない患者集団)に対して、24時間の疼痛強度においてベースラインからの中央値の変化を図1Aに示す。この結果は、週4までに、2-メトキシアデノシンを投与した患者に対する中央値の変化が、プラセボを投与した患者よりも低い0.7であったことを示す。カルシウムチャンネルブロッカー、ならびに2-メトキシアデノシンまたはプラセボを投与したそれらの患者集団に特異的な結果が、図1Bに示された。この結果から、プラセボを投与した患者集団と比較して、2-メトキシアデノシンを投与したカルシウムチャンネルブロッカーを既に投与されていたそれらの患者集団との間に、中央値の変化における有意差(P=0.02)が示された。2-メトキシアデノシンを投与した患者に対して、4週間後のベースラインからの中央値の変化は、プラセボを投与したそれらの患者集団に対する-0.5と比べて、-2.5 (P<0.01)以上であった。
【0092】
図2は、2-メトキシアデノシン(2-MeOAd)またはプラセボを投与した患者に対する、24時間の疼痛強度におけるベースラインからの中央値の変化を示す。図2Aは、カルシウムチャンネルブロッカーもまた投与しなかった患者についての結果を示し、図2Bは、カルシウムチャンネルブロッカーもまた投与した患者についての結果を示す。この結果は、カルシウムチャンネルブロッカーもまた投与しなかった患者集団において、2-メトキシアデノシンの効果がないことを示すが、しかし、プラセボと比較するとカルシウムチャンネルブロッカーもまた投与された患者集団において疼痛強度に対する2-メトキシアデノシンの有意な効果が観察された。
【0093】
図3は、臨床試験においてそれら患者集団からの応答の%を示す。図3Aは、臨床試験中の全ての患者の応答割合を示し、図3Bは、2-メトキシアデノシンまたはプラセボを投与し、カルシウムチャンネルブロッカーもまた投与した患者のみに対する応答割合を示す。該結果は、プラセボを投与した場合に32%の患者が>30% 疼痛緩和を経験し、そして16%の患者が>50% 疼痛緩和を経験したことと比較して、2-メトキシアデノシンを投与した場合、カルシウムチャンネルブロッカーも投与された74%の患者は>30% 疼痛緩和を経験し、43%の患者は>50% 疼痛緩和を経験したことを示す。
【0094】
臨床試験において、患者は、簡易型のMcGill疼痛質問表(SF-MPQ) (Melzack, Pain, 1987, Aug;30(2):191-7)も完成させた。SF-MPQの主要な構成要素は、0 = なし、1 = 軽度の、2 =中程度、または3 = 重度として強度スケールに対して評価される15の記述子(discriptors)(11 知覚;4 情動(affective))から構成される。3つの疼痛スコアは、知覚、情動および全体的な記述子から選択された用語に関する強度ランクの値の合計から得られる。SF-MPQは、標準的MPQの現疼痛強度(PPI)インデックスおよび視覚アナログスケール(visual analogue scale)(VAS)も包含する。
【0095】
2-メトキシアデノシンおよびカルシウムチャンネルブロッカーを投与された患者集団は、全体的な疼痛強度スコア(P<0.03)の低下、VAS (P<0.02)により評定した疼痛の低下、および現疼痛強度(P<0.04)の低下を経験した。
【0096】
また、全体的な印象変化の低下もあった:全体的な臨床的印象の変化(CGIC)−7ポイントの尺度(P<0.02)、および患者の全体的な印象の変化(PGIC)−7ポイントの尺度(好ましい効果)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A2A アデノシン受容体アゴニストおよびカルシウムチャンネルブロッカーを含む、組合せ製剤。
【請求項2】
該A2A アデノシン受容体アゴニストおよび該カルシウムチャンネルブロッカーを、対象に共投与または連続投与するための、請求項1記載の組合せ製剤。
【請求項3】
薬学的に許容し得る担体、賦形剤、または希釈剤を含む、請求項1または2記載の組合せ製剤。
【請求項4】
医薬として使用するための、請求項1-3いずれか一項記載の組合せ製剤。
【請求項5】
A2A アデノシン受容体のアゴニズムにより、予防、処置、または緩和され得る病理学的症状を予防、処置、または緩和するための、請求項1-3いずれか一項記載の組合せ製剤。
【請求項6】
疼痛、炎症、癌、自己免疫疾患、虚血再灌流損傷、てんかん、敗血症、敗血症性ショック、または神経変性を予防、処置、または緩和するための、請求項1-3いずれか一項記載の組合せ製剤。
【請求項7】
糖尿病性神経障害、糖尿病性神経因性疼痛、糖尿病性皮膚潰瘍および皮膚症、糖尿病性腎臓疾患、または糖尿病性網膜症を含む糖尿病の微小血管合併症を予防、処置、または緩和するための、請求項1-3いずれか一項記載の組合せ製剤。
【請求項8】
A2A アデノシン受容体のアゴニズムにより予防、処置、または緩和され得る病理学的症状を予防、処置、または緩和するための医薬の製造における、請求項1-3いずれか一項記載の組合せ製剤の使用。
【請求項9】
疼痛、炎症、癌、自己免疫疾患、虚血再灌流損傷、てんかん、敗血症、敗血症性ショック、または神経変性を予防、処置、または緩和するための医薬の製造における、請求項1-3いずれか一項記載の組合せ製剤の使用。
【請求項10】
糖尿病の血管合併症、特に、糖尿病性神経障害、糖尿病性神経因性疼痛、糖尿病性皮膚潰瘍および皮膚症、糖尿病性腎臓疾患、または糖尿病性網膜症を含む糖尿病の微小血管合併症、あるいは心臓脈管疾患または心疾患を含む糖尿病の大血管合併症を予防、処置、または緩和するための医薬の製造における、請求項1-3いずれか一項記載の組合せ製剤の使用。
【請求項11】
該A2A アデノシン受容体アゴニストが、式 (I):
【化1】

(式中、RはC1-4アルコキシであり、XはOHまたはHである)
の化合物またはその薬学的に許容し得る塩を含む、
請求項1-10いずれか一項記載の組合せ製剤または使用。
【請求項12】
該A2A アデノシン受容体アゴニストがスポンゴシンを含む、請求項11に記載の組合せ製剤または使用。
【請求項13】
該A2A アデノシン受容体アゴニストが、以下の式(II)-(VII):
【化2】

(II)
[式中、
X = OHである場合、R1は、C1またはC4-C6 アルコキシ(好ましくは、C5-C6 アルコキシ)、OCH2シクロプロピル、OCH2シクロペンチル、O-(2,2,3,3-テトラフルオロ-シクロブチル)、フェノキシ、置換されたフェノキシ(好ましくは、ニトリル(好ましくは、4-ニトリル)、4-メチル、フェニル(好ましくは、3-フェニル)、3-ブロモ、3-イソプロピル、2-メチル、2,4-ジフルオロ、2,5-ジフルオロ、3,4-ジフルオロ、2,3,5-トリフルオロ、または(3-メチル, 4-フルオロ)により置換される)、OCH2CH2OH、OCH2CHF2、(5-インダニル)オキシ、C1、C2、C5、またはC6アルキルアミノ、(R)または(S)-sec-ブチルアミノ、C5またはC6 シクロアルキルアミノ、エクソ−ノルボルナンアミノ、(N-メチル、N-イソアミルアミノ)、フェニルアミノ、メトキシまたはフルオロ置換基を有するフェニルアミノ、C2スルホン基、C7アルキル基、シアノ基、CONH2基、または3,5-ジメチルフェニルである; または、
X = Hである場合、R1はn-ヘキシルオキシである];
【化3】

(III)
[式中、
R2はNMe2、N-(2-イソペンテニル)、ピペラジニル、(N-Me、N-ベンジル)、(N-Me、N-CH2Ph(3-Br))、(N-Me、N-CH2Ph(3-CF3))、または(N-Me、N-(2-メトキシエチル))、またはOCH2シクロペンチルである];
【化4】


(IV)
[式中、
R1 = Hである場合、R3はイソプロピル基であり、R2は、NH2、メチルアミノ基(NHMe)またはイソアミル基(CH2CH2CHMe2)のいずれかである;または
R1 = Hである場合、R3はHであり、R2はNH2である;または
R1がOMeである場合、R3はPhであり、R2はNH2である;または
R1がNHCH2CH2CH2CH2CH2Meである場合、R3はCH2CH2CH2Meであり、R2はNH2である];
【化5】


(V)
(式中、R4は、n-プロピルまたはNHCH2CH3である);
【化6】


(VI)
(式中、
R2がNMe2である場合、R1はNHシクロヘキシルである;または
R2がNHベンジルである場合、R1はOMeである;
【化7】


(VII)
(式中、R1 は、NHシクロヘキシル、NHシクロペンチル、またはNH-n-ヘキシルである)、
のいずれかの化合物、またはその薬学的に許容し得る塩を含む、請求項1から10いずれか一項記載の組合せ製剤または使用。
【請求項14】
該カルシウムチャンネルブロッカーが、ジヒドロピリジン、フェニルアルキルアミン、またはベンゾチアゼピンを含む、請求項1-13いずれか一項記載の組合せ製剤または使用。
【請求項15】
A2A アデノシン受容体のアゴニズムにより予防、処置、または緩和され得る病理学的症状を予防、処置、または緩和する方法であって、A2A アデノシン受容体アゴニストおよびカルシウムチャンネルブロッカーをかかる予防、処置、または緩和を必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項16】
疼痛、炎症、癌、自己免疫疾患、虚血再灌流損傷、てんかん、敗血症、敗血症性ショック、または神経変性を予防、処置、または緩和する方法であって、A2A アデノシン受容体アゴニストおよびカルシウムチャンネルブロッカーをかかる予防、処置、または緩和を必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項17】
糖尿病の血管合併症、特に、糖尿病性神経障害、糖尿病性神経因性疼痛、糖尿病性皮膚潰瘍および皮膚症、糖尿病性腎臓疾患、または糖尿病性網膜症を含む糖尿病の微小血管合併症、あるいは心臓脈管疾患または心疾患を含む糖尿病の大血管合併症の予防、処置、または緩和する方法であって、A2A アデノシン受容体アゴニストおよびカルシウムチャンネルブロッカーをかかる予防、処置、または緩和を必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項18】
該A2A アデノシン受容体アゴニストおよび該カルシウムチャンネルブロッカーが、対象に共投与される、請求項15−17いずれか一項記載の方法。
【請求項19】
該A2A アデノシン受容体アゴニストおよび該カルシウムチャンネルブロッカーが、対象に連続投与される、請求項15−17いずれか一項記載の方法。
【請求項20】
該A2A アデノシン受容体アゴニストおよび該カルシウムチャンネルブロッカーが、各々24時間以内に対象に投与される、請求項19記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−532855(P2012−532855A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519057(P2012−519057)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001324
【国際公開番号】WO2011/004166
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(510299260)シービーティ・デベロップメント・リミテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】CBT DEVELOPMENT LIMITED
【Fターム(参考)】