説明

医薬用途の新規なスルファメート化合物

本発明は、炭酸脱水酵素阻害活性を有する、式(I)(式中、R1〜R3及びnは請求項に規定される)のスルファメート、これらの化合物を含む薬剤、これらの化合物を含む医薬組成物、及びこれらの化合物の製造法に関する。本発明はまた、かかる化合物、薬剤及び組成物の使用、特に治療効果を得るための患者への投与におけるそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は製薬化学及び有機化学の分野に関し、且つ新規なスルファメート化合物、これらの化合物を含む薬剤、これらの化合物を含む医薬組成物、及びこれらの化合物の製造方法に関する。本発明はかかる化合物及び組成物の使用、特に治療効果を得るための患者への投与におけるそれらの使用に関する。
【0002】
背景技術
スルファメートの薬剤における薬学的活性成分としての使用は長年公知である。EP0138441号は以下の式
【化1】

(式中、XはO又はCH2であり、R1は水素又はアルキルであり、R2〜R5は水素又はアルキルであり、且つXがCH2である場合、R4及びR5は結合してベンゼン環を形成してよく、且つXがOである場合、R2及びR3及び/又はR4及びR5は一緒にメチレンジオキシ基であってよい)
のスルファメート誘導体を開示している。記載された種類の化合物は抗痙攣特性を示すことが報告されている。EP0138441号は更に、てんかん及び緑内障などの疾患治療におけるこれらの化合物の使用を記載する。
【0003】
Maryanoffらは、J. Med. Chem. 1998, 41, 第1315〜1343頁で医化学用の追加のスルファメート誘導体を開示している。ベータ−D−フルクトピラノーススルファメートがフェニトインのものに類似した抗痙攣活性を示すことが報告されている。以下の式のトピラメートは公知の典型であり、これは種々の病状、例えば、子供と大人の両方におけるてんかん治療のために研究されている。
【0004】
【化2】

【0005】
子供の場合、トピラメートはレノックス・ガストー症候群(発作及び発育遅滞を引き起こす疾患)の治療にも適応される。トピラメートは片頭痛の予防のために認可された食品医薬品局(FDA)でもあり、且つ目下最も頻繁に処方されている。トピラメートは、この目的のために認可されたFDAではないが、双極性障害の治療のために精神科医によって使用されてきた。この薬剤は、特に食欲異常亢進の軽減に役立つ肥満症の治療での使用について研究され、アルコール中毒症の可能な処置としても研究されてきた。この薬剤はまた心的外傷後ストレス性障害を治療するための臨床試験にも使用される。パイロット試験は、トピラメートが小児痙攣に対して場合により有効であることを示唆する。2006年5月の米国立衛生研究所ウェブサイトhttp://www.clinicaltrials.govには、Ortho-McNeil主催の複数の研究が列記されており、これらは様々な人口統計内で片頭痛、クラスター及び重度の頭痛でのトピラメートの使用を試験することを提案している。トピラメートの他の適応外使用及び治験使用は以下のものを含む:神経性食欲亢進、強迫神経障害、禁煙の治療、及び神経因性疼痛の治療。
【0006】
Maryanoffらは更に、J. Med. Chem. 1987, 41, 第880〜887頁において2種の二環式スルファメートを開示している。
【0007】
【化3】

【0008】
しかしながら、それらの抗痙攣剤としての活性は低いと報告されている。
【0009】
種々の病状の治療及び/又は予防のための、非常に有効であり且つ単純な方法で得られる、新規なスルファメートを提供することが本発明の目的であった。
【0010】
ここで驚くことに、ある新規なスルファメート及びそれらの薬剤学的に許容される塩、水和物及び溶媒和化合物が、種々の疾患又は症状、例えば、肥満症、糖尿病I型、糖尿病II型、メタボリック・シンドローム、シンドロームX、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎障害、糖尿病性細小血管症、糖尿病性大血管障害(diabetic macroangiopathy)、インスリノーマ、家族性高インスリン性低血糖症(familial hyperinsulemic hypoglycemia)、男性型禿頭症、排尿筋機能高進(detrusor hyperreactivity)、高血圧、特に動脈高血圧、異常βリポタンパク血、特に低HDLコレステロールが生じる/生じない異常βリポタンパク血を伴う高トリグリセリド血症;高尿酸血症;ぜん息、グルコース代謝、特にインスリン抵抗性、高血糖症(hyperglycaemea)及び/又はグルコース不耐性、神経保護、パーキンソン病、アルツハイマー病、無痛覚症、アンギナ、不整脈、冠動脈攣縮、末梢血管疾患、脳血管攣縮、食欲調節、神経変性、疼通、例えば、神経因性疼痛及び慢性的疼痛、インポテンス、緑内障、双極性障害、片頭痛、アルコール依存症、癌及び心臓血管性疾患(これらは特に心筋保護、心臓麻痺、虚血性心疾患、脳血管疾患及び末梢動脈閉塞性疾患及びそれらの随伴性及び/又は二次疾患もしくは二次条件を含む)の治療及び/又は予防に好適であることが見出された。
【0011】
発明の概要
式Iの化合物が新規であり且つ種々の病状の治療に好適であることが見出された。本発明は式I
【化4】

(式中、R1及びR2は独立して:水素、C〜Cアルキル、C〜C10シクロアルキル、アリール及びヘテロアリールからなる群から選択され、そのアルキル及びシクロアルキルは場合により少なくとも1つの置換基Yで置換され且つそのアリール及びヘテロアリールは場合により少なくとも1つの置換基Zで置換されるか、あるいはR1及びR2は一緒に5又は6員環を形成し、該環は窒素、酸素及び硫黄からなる群から独立して選択された1〜2個のヘテロ原子を追加的に含有してよく且つその5又は6員環は場合により少なくとも1つの置換基Yで置換される;
R3は(1S,2S,5S)−6,6−ジメチル−ビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−イル;(1R,2R,5R)−6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−イル;(1S,2R,5S)−6,6−ジメチル−ビシクロ−[3.1.1]ヘプト−2−イル;(1R,4S)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル;(1S,4R)−3−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル;ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−イル;(4S)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イル;(1S,2R,4S)−1,7,7−トリメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル;(1R,2S,4R)−1,7,7−トリメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル;及び(1R,2R,4R)−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルからなる群から選択される;
nは0〜3である;
Yはアルキル、アルコキシ、チオアルキル、アリール、CO−アリール、ヘテロアリール、アミノ及びカルボキシルアルキルからなる群から選択される;
Zはアルキル、アルコキシ、チオアルキル、ハロゲン、アリール、CO−アリール、CN、ヘテロアリール及びカルボキシルアルキルからなる群から選択される)の化合物、
並びにその薬剤学的に許容される塩、水和物及び溶媒和化合物に関する。
【0012】
本発明は更に式Iの化合物を含む薬剤、式Iの化合物を含む医薬組成物、及び式Iの化合物の製造方法に関する。本発明は式Iの化合物の使用及び式Iの化合物を含む組成物の使用、特に治療効果を得るための患者への投与におけるそれらの使用に関する。
【0013】
発明の詳細な説明
本発明は特に式I(式中、R1及びR2は独立して水素及びC〜Cアルキルからなる群から選択され、その際、C〜CアルキルはC〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cチオアルキル、C〜C12アリール、CO−C〜C12アリール、C〜C12ヘテロアリール、アミノ、及びカルボキシル−C〜C−アルキルからなる群から選択される少なくとも1つの置換基Yで場合により置換される)の化合物に関する。
【0014】
式I(R1及びR2は両方とも水素である)の化合物が有利である。
【0015】
本発明の別の実施態様において、nが1又は2、更に有利にはnが1である化合物が有利である。
【0016】
本発明の別の実施態様において、化合物は[(1S,2S,5S)−6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−イル]メチルスルファメート、[(1R,2R,5R)−6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−イル]メチルスルファメート、[(1S,2S,5S)−6,6−ジ−メチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−イル]エチルスルファメート、[(1S,2R,5S)−6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−イル]メチルスルファメート、及び(1R,4S)−ビシクロ−[2.2.1]ヘプト−2−イル−メチルスルファメート、及び(4S)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イルメチルスルファメートからなる群から選択される。本発明の最も有利な化合物は[(1S,2S,5S)−6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−イル]メチルスルファメートである。
【0017】
別の実施態様において、本発明は、式Iの化合物、又はそれらの薬剤学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和化合物を含む、薬剤に関する。
【0018】
別の実施態様において、本発明は、
A)活性成分として、医学上有効量の式Iの化合物又はそれらの薬剤学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和化合物;及び
B)場合により少なくとも1種の薬剤学的に許容されるキャリア及び/又は少なくとも1種の薬剤学的に許容される補助物質
を含む医薬組成物に関する。
【0019】
別の実施態様において、本発明は、肥満症、糖尿病I型、糖尿病II型、メタボリック・シンドローム、シンドロームX、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎障害、糖尿病性細小血管症、糖尿病性大血管障害(diabetic macroangiopathy)、インスリノーマ、家族性高インスリン性低血糖症(familial hyperinsulemic hypoglycemia)、男性型禿頭症、排尿筋機能高進(detrusor hyperreactivity)、高血圧、特に動脈高血圧、異常窿潟タンパク血、特に低HDLコレステロールが生じる/生じない異常βリポタンパク血を伴う高トリグリセリド血症;高尿酸血症;ぜん息、グルコース代謝、特にインスリン抵抗性、高血糖症(hyperglycaemea)及び/又はグルコース不耐性、神経保護、パーキンソン病、アルツハイマー病、無痛覚症、アンギナ、不整脈、冠動脈攣縮、末梢血管疾患、脳血管攣縮、食欲調節、神経変性、疼通、例えば、神経因性疼痛及び慢性的疼痛、インポテンス、緑内障、双極性障害、片頭痛、アルコール依存症、癌及び心臓血管性疾患(これらは特に心筋保護、心臓麻痺、虚血性心疾患、脳血管疾患及び末梢動脈閉塞性疾患及びそれらの随伴性及び/又は二次疾患もしくは二次条件を含む)を治療するために
A)活性成分として、医学上有効量の式Iの化合物又はそれらの薬剤学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和化合物;及び
B)場合により少なくとも1種の薬剤学的に許容されるキャリア及び/又は少なくとも1種の薬剤学的に許容される補助物質
を含む医薬組成物に関する。
【0020】
式Iの本発明の化合物、並びにそれらの薬剤学的に許容される塩、水和物及び溶媒和化合物は、炭酸脱水素酵素阻害活性を有する。それらは炭酸脱水素酵素が関与する疾患の治療に有用であるか、又はそれらの酵素の処置によって治療できる。例えば、種々の疾患又は症状、例えば、肥満症、糖尿病I型、糖尿病II型、メタボリック・シンドローム、シンドロームX、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎障害、糖尿病性細小血管症、糖尿病性大血管障害(diabetic macroangiopathy)、インスリノーマ、家族性高インスリン性低血糖症(familial hyperinsulemic hypoglycemia)、男性型禿頭症、排尿筋機能高進(detrusor hyperreactivity)、高血圧、特に動脈高血圧、異常窿潟タンパク血、特に低HDLコレステロールが生じる/生じない異常βリポタンパク血を伴う高トリグリセリド血症;高尿酸血症;ぜん息、グルコース代謝、特にインスリン抵抗性、高血糖症(hyperglycaemea)及び/又はグルコース不耐性、神経保護、パーキンソン病、アルツハイマー病、無痛覚症、アンギナ、不整脈、冠動脈攣縮、末梢血管疾患、脳血管攣縮、食欲調節、神経変性、疼通、例えば、神経因性疼痛及び慢性的疼痛、インポテンス、緑内障、双極性障害、片頭痛、アルコール依存症、癌及び心臓血管性疾患(これらは特に心筋保護、心臓麻痺、虚血性心疾患、脳血管疾患及び末梢動脈閉塞性疾患及びそれらの随伴性及び/又は二次疾患もしくは二次条件を含む)の治療及び/又は予防に有用である。
【0021】
本発明の化合物は炭酸脱水素酵素阻害活性を有する。本発明の化合物の阻害活性は、例えば、本明細書に記載された又は当該技術分野で公知の1つ以上のアッセイを使用して、容易に実証される。
【0022】
本明細書に記載された化合物の単離及び精製は、所望の場合には、適切な分離又は精製手順、例えば、濾過、抽出、結晶化、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、厚層クロマトグラフィー、分取低圧もしくは高圧液体クロマトグラフィー、又はこれらの手順の組み合わせによって、影響を受ける。適切な分離及び精製手順の特別の例示は製法及び実施例から得られる。しかしながら、他の同等の分離又は単離手順も、もちろん使用され得る。
【0023】
本発明の化合物は1つ以上の不斉中心を含有し、従って単一のエナンチオマー、ジアステレオマー混合物及び個々のジアステレオマーを生じる。
【0024】
種々の置換基の性質に応じて、分子は追加の不斉中心を有することができる。かかる不斉中心はそれぞれ独立して2つの光学異性体をもたらす。これらのジアステレオマーの独立した合成、又はそれらのクロマトグラフ分離は、当該技術分野で公知のように本明細書に開示された方法論の適切な改変によって達成され得る。それらの絶対立体化学は結晶生成物又は結晶中間体のX線結晶構造解析によって決定してよく、これらは必要であれば、公知の絶対配置の不斉中心を含有する試薬を用いて誘導される。この化合物のラセミ混合物は、当該技術分野で公知の方法、例えば、化合物のラセミ混合物を鏡像異性体的に純粋な化合物へカップリングさせてジアステレオマー混合物を形成し、その後、標準的な方法、例えば、分別結晶化又はクロマトグラフィーを用いて個々のジアステレオマーを分離することによって個々のエナンチオマーに分離することができる。カップリングはしばしば鏡像異性体的に純粋な酸又は塩基を用いた塩の形成からなる。次にジアステレオマー誘導体を、付加されたキラル残基の切断によって純粋なエナンチオマーに変換してよい。化合物のラセミ混合物を、キラル固定相を利用するクロマトグラフィー法:当該技術分野で公知の方法によって直接分離することもできる。あるいは、化合物のエナンチオマーを、当該技術分野で公知の方法を用いて公知の立体配置の光学的に純粋な出発材料又は試薬を使用する立体選択合成によって得てもよい。
【0025】
化合物の結晶形態の一部は、本発明に属することが意図された同質異像として存在し得る。更に、化合物の一部は水と一緒に溶媒和化合物(即ち、水和物)、又は一般的な有機溶媒を形成し得る。かかる溶媒和化合物も本発明の範囲内に入る。
【0026】
式Iの同位元素によりラベルされた化合物又はその薬剤学的に許容される塩、例えば、PET又はSPECTによって検出可能である式Iの同位元素によりラベルされた化合物もまた本発明の範囲内に入る。同じことが、受容体結合又は代謝の研究に適した、[13C]−、[14C]−、[H]−、[18F]−、[125I]−又は他の同位体的に強化された原子でラベルされた式(I)の化合物にも当てはまる。
【0027】
定義
本明細書で開示された化合物の説明に使用される一般的な用語は通常の意味を有する。
【0028】
本明細書において使用されるアルキルという用語は、一価の飽和分枝鎖状又は直鎖状炭化水素鎖を指す。特に記載のない限り、かかる鎖は1〜18個の炭素原子を含有することができる。かかるアルキル基の代表は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル等である。本発明の有利な実施態様において、アルキル基は1〜18個の炭素原子を含有する。同じ炭素の内容は、元の用語「アルカン」に当てはまり、また派生した用語、例えば、「アルコキシ」及び「チオアルキル」にも当てはまる。
【0029】
用語「アリール」は単環式又は縮合二環式及び多環式芳香族基を包含し、例えば、フェニル、1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフチル、ナフチル、及びアズレニルを含むがこれらに限定されない。
【0030】
用語「ヘテロアリール」は単環式又は縮合二環式及び多環式芳香族環系を包含し、その際、1つ以上の炭素原子がヘテロ原子によって置換された。用語「ヘテロアリール」は、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、イミダゾ[2,1−b][1,3]チアゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、1,3,5−トリアジニル、インダゾリル、インドリル、インドリジニル、イソインドリル、ベンゾ[b]フラニル、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリニル、インダニル、インデニル、ベンゾ[b]チエニル、2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾジオキシン−5−イル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾ[1,2,5]チア−ジアゾリル、プリニル、キノリニル、イソキノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、1,8−ナフチリジニル、ナフチル、プテリジニル、アズレニル等を含むが、これらに限定されない。
【0031】
「ハロゲン」はクロロ、フルオロ、ブロモ又はヨードを意味し;「ヘテロアルキル、ヘテロ芳香族の」などの「ヘテロ」はN、O又はS原子のうち1つ以上を含有することを意味する。
【0032】
用語「置換された」は、特定の基又は部分が1つ以上の置換基を有することを意味する。任意の基が複数の置換基を有し、且つ様々な可能な置換が提供される場合、置換基は独立して選択され、且つ同じである必要がない。用語「非置換の」は、特定の基が置換基を有していないことを意味する。
【0033】
「場合により置換された」は、アルキル又はシクロアルキル基が1つ以上の基Yによって更に置換されてよい又は置換されなくてよいこと、又は、アリール基が1つ以上の基Zによって更に置換されてよい又は置換されなくてよいことを意味する。
【0034】
「結晶形態」とは、同じ化合物の種々の固体形態、例えば、同質異像、溶媒和化合物及び非晶形を指す。「同質異像」は、化合物が異なる結晶充填配置に結晶することができる結晶構造であり、その全てが同じ元素組成を有する。同質異像は頻繁に生じる現象であり、これは複数の結晶条件、例えば、温度、懸濁液の濃度、不純物の存在、溶媒の極性、冷却速度によって影響を受ける。異なる同質異像は、通常、異なるX線回折パターン、固相NMRスペクトル、赤外又はRamanスペクトル、融点、密度、硬度、結晶形状、光学的及び電気的特性、安定性及び溶解性を有する。再結晶溶媒、結晶速度、貯蔵温度、及び他の要因が1つの結晶形態を優位にする。「溶媒和化合物」は一般的に結晶形態であり、これは化学量論的量の溶媒又は非化学量論的量の溶媒のいずれかを含有する結晶形態である。しばしば、結晶化のプロセスの間に、化合物の一部は、固定されたモル比の結晶固体状態の溶媒分子を捕捉しやすく、従って溶媒和化合物を形成する。溶媒和化合物が水の時、「水和物」が形成され得る。式Iの化合物及びその薬剤学的に許容される塩は水和物又は溶媒和化合物の形態で存在してよく、且つかかる水和物及び溶媒和化合物も本発明に包含される。それらの例は1/10水和物、1/4水和物、1/2水和物、一水化物、二塩化水素化物1/2水和物、二塩化水素化物二水化物、二塩化水素化物3/2水和物等を含む。「非晶の」形態は長範囲規則度がない非結晶性材料であり、一般的に特有の粉末X線回折パターンを与えない。結晶形は一般にByrn(1995年)及びMartin(1995年)によって記載された。
【0035】
置換基について、用語「独立して」は、2つ以上のかかる置換基が可能である時、それらが同じか又は互いに異なってよいことを意味する。
【0036】
より簡潔な説明を提供するため、本明細書に与えられた幾つかの量的表現は用語「約」によって制限されない。用語「約」が明確に又は明確でなく使用されたのであろうとなかろうと、本明細書に与えられた全ての数量は特定の実際値を表すことを意味し、且つそれはかかる特定の値への近似を表すことをも意味し、これは当技術分野の通常の技能に基づいて合理的に推論され、実験及び/又は測定条件のためにかかる特定の値の近似を含むことが理解される。
【0037】
本明細書の詳細な説明及び特許請求の範囲の全体を通して、単語「含む(comprise)」及びこの語の変形、例えば、「含む(comprising)」及び「含む(comprises)」は他の添加剤、成分、整数又は工程を除外することを意図しない。
【0038】
これは化学原料として投与された式Iの化合物について可能であるが、該化合物を「医薬組成物」として表すことが好ましい。更なる態様によれば、本発明は、場合により1種又は複数種の薬剤学的に許容されるキャリア及び/又は少なくとも1種の薬剤学的に許容される補助物質と一緒に、式Iの化合物、又はそれらの薬剤学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和化合物を含む医薬組成物を提供する。キャリア及び補助物質は、製剤の他の成分に相容性であるという意味で「許容され」なければならず、またその受容者に対して有害であってはならない。
【0039】
本明細書で使用される用語「組成物」は、あらかじめ決められた量又は割合で特定の成分を含む生成物、並びに特定の量で特定の成分を組み合わせて直接的又は間接的に得られた生成物を包含する。医薬組成物に関連して、この用語は1種又は複数種の活性成分を含む生成物、及び不活性成分を含む任意のキャリア及び/又は補助物質、並びに2種以上の成分の組み合わせ、錯化又は凝集から、又は1種又は複数種の成分の分離から、又は1種又は複数種の成分の他の型の反応もしくは相互作用から、直接的又は間接的に得られた生成物を包含する。一般的に、医薬組成物は、活性成分を均一に且つ密接に液体キャリア又は微粉固体キャリア又はその両方と組み合わせて、次いで必要であれば、生成物を所望の製剤に成形することによって製造される。医薬組成物は病気の進行又は容態に対して所望の効果を与えるために十分な活性目的化合物を含む。従って、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物と任意の薬剤学的に許容されるキャリア及び/又は補助物質とを混合することによって製造された任意の組成物を包含する。「薬剤学的に許容される」とは、キャリア、希釈剤又は賦形剤は製剤の他の成分に相容性であり且つその受容者に対して有害であってはならないことを意味する。
【0040】
炭酸脱水酵素の阻害剤としての本発明の化合物の親和性は以下に記載されるように決定された。式Iの所定の化合物について測定された効力から、理論的な最小有効量を推定することができる。測定された阻害定数の2倍に等しい化合物の濃度で、恐らくほぼ100%の炭酸脱水酵素が該化合物によって占められる。患者のkg当たりの化合物のmgに対する濃度を変換することによって、理論的な最小有効量が得られて、理想的な生物学的利用率が仮定される。薬動力学の、薬力薬理学的な、及び他の理由によって、実際の投薬量を高い値又は低い値に変えてよい。活性成分の典型的な日用量は、広い範囲内で変わり且つ種々の要因、例えば、欠陥磁粉模様、投与経路、患者の年齢、体重及び性別に依存し、医師によって決定される。一般的に、単回投与又は個別投与で患者に投与される全日用量は、例えば、式Iの全活性成分の、0.001〜10mg/体重kg/日の量であってよい。かかる投与量は、1日に1回〜3回の処置を必要としている患者に、又は効能が求められるたびに、及び少なくとも2か月の期間、更に典型的には少なくとも6ヶ月、又は長期にわたり投与される。
【0041】
本明細書に使用される用語「治療上の有効量」は、本発明の組成物を投与することによって処置可能な症状を治療するための治療薬の量を指す。その量は、組織系、動物又はヒトにおいて検知可能な治療反応又は改善反応を示すのに十分な量である。その効果は、例えば、本明細書に挙げられた症状の治療を含む。被験体に対する正確な有効量は、被験体の大きさ及び健康、性質及び治療された症状の程度、治療する医師(研究者、獣医師、医学博士又は他の臨床医)の助言、及び投与のために選択された治療、又は治療の組み合わせによって変わる。従って、予め正確な有効量を規定することは有用ではない。
【0042】
用語「薬剤学的に許容される塩」は、正常な医学的判断の範囲内であり、ヒトの組織及び下等動物に接触させる使用に適した過度の毒性、刺激、アレルギー応答等がない、それらの塩を指し、これは妥当な利益/リスク比率に見合っている。薬剤学的に許容される塩は当該技術分野で公知である。それらの塩は最終的に本発明の化合物を単離且つ精製する時にインサイチュで製造できるか、又はそれらの塩と、無機塩基又は有機塩基及び無機酸又は有機酸を含む薬剤学的に許容される非毒性塩基又は酸とを別々に反応させることによって製造できる(Berge,1977)。「遊離塩基」形態は、この塩を塩基又は酸と接触させ、且つ従来の方法で親化合物を単離することによって再生成されてよい。この化合物の親形態は、極性溶媒での溶解性などの、ある物理特性において種々の塩の形態と異なるが、それ以外は、塩は本発明の目的のための化合物の親形態に相当する。
【0043】
本明細書において使用される用語「処置」は、ほ乳類、例えば、ヒトの症状又は疾患の治療を指し、且つ以下のものが挙げられる:(1)疾患又は症状の抑制、即ち、その進行を阻止すること、(2)疾患又は症状の軽減、即ち、症状を抑えること、又は(3)疾患の症状を止めること。
【0044】
用語「阻害する」は、一般に受け入れられている意味を含み、これは、進行、重症度、又は結果として生じた症状を防止、予防、抑制、緩和、回復、及び徐脈化、阻止又は逆転することを含む。このように、本方法は必要に応じて、医学的な治療及び/又は予防的投与の両方を含む。
【0045】
本明細書で使用される、用語「薬物療法」は、ヒト又は他のほ乳類のインビボ又は半ビボで実施される、予防、診断及び治療方式を含むことを意図している。
【0046】
「ほ乳類」は、ウシ、ヒツジ、及びブタなどの経済的に重要な動物、特に肉を生産する動物、並びに家畜、スポーツ用動物、動物園動物、及びヒトを含み、ヒトが好ましい。
【0047】
本明細書で使用される用語「被験体」は、動物、有利にはほ乳類、最も有利には治療、観察又は試験の対象である、ヒトを指す。
【0048】
本明細書で使用される「肥満症」は、ヒトが少なくとも30の、身長の二乗当たりの重量(kg/m)として計算された、肥満指数(BMI)を有する状態を指す。従来、少なくとも25.9〜30未満のBMIを有するヒトは太りすぎと考えられた。従来、正常体重を有するヒトは19.9〜25.9未満のBMIを有する。本明細書の肥満症は、環境上の遺伝的な要因に起因し得る。肥満症を引き起こす又は肥満症の原因である疾患の例として、過食及び食欲異常亢進、多嚢胞性卵巣、頭蓋咽頭腫 、プラーダー-ビリ症候群、フレーリッヒ症候群、II型糖尿病、GH欠乏被験者(GH-deficient subjects)、正常変異小人症、ターナー症候群、及び他の病的症状が挙げられ、これは例えば、急性リンパ芽球性白血病の子供の全除脂肪体重のパーセンテージとして代謝活性の低減又はエネルギー消費の休止の減少を示す。
【0049】
実施例:
分析法
核磁気共鳴スペクトル(H NMR及び13C NMR,APT)を、特に指示がなければ、300KでBruker Avance 500(H: 500MHz,13C:125MHz)を使用して指定した溶媒中で測定した。スペクトルをCambridge Isotope Laboratories Ltd.社製の重水素化ジメチルスルホキシド中で測定した。化学シフト(δ)はテトラメチルシランからダウンフィールドされたppmで表される(1H、13C)。結合定数JはHzで表される。NMRスペクトル中のピークの形は、記号「q」(4重線)、「dq」(2重線の4重線)、「t」(3重線)、「df」(2重線の3重線)、「d」(2重線)、「dd」(2重線の2重線)、「s」(1重線)、「bs」(広幅1重線)及び「m」(多重線)で表示される。
【0050】
融点をBuechi B−545融点測定装置で記録した。
【0051】
質量スペクトルを、MassLynxソフトフェアを備えたMicromass QTOF−2装置で記録し、データを得てこれを再構成した。正確な質量を分子状イオン[M+H]として測定した。
【0052】
感湿化合物に関する全ての反応又は条件を無水窒素雰囲気下で実施した。
【0053】
反応を、指示された溶離剤と共にシリカ被覆プラスチックシート(Merckプレコートシリカゲル60F254)で薄層クロマトグラフィー(TLC)を使用してモニタした。スポットを紫外線(254nm)又はIによって視覚化した。
【0054】
全ての溶剤を使用前に新たに蒸留した。更なる精製をしないで他の全ての市販の化学物質を使用した。
【0055】
合成の一般的な要件
合成が以下に記載されている特定の化合物は、本発明を更に詳細に説明することを意図しており、本発明の範囲を決して制限しないことを意味する。本発明の他の実施態様は、本明細書に開示された本発明の詳細な説明及び実施の検討により当業者に明らかである。詳細な説明及び実施例は例示としてのみ考慮されなければならない。
【0056】
スキーム1は式Iの化合物の一合成例を概説する:
【化5】

【0057】
有利な実施態様において、スキーム1の方法を式II(式中、R1及びR2は共に水素であり且つHalはクロロである)の化合物で行う。
【0058】
別の有利な実施態様において、スキームIの方法を、以下のものからなる群から選択された式IIIの化合物で実施する:
[(1S,2S,5S)−6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−イル]メタノール;[(1R,2R,5R)−6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]−ヘプト−2−イル]メタノール;[(1S,2S,5S)−6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−イル]エタノール、[(1S,2R,5S)−6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−イル]メタノール、(1R,4S)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−メタノール、及び(4S)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2イルメタノール、有利には[(1S,2S,5S)−6,6−ジメチルビシクロ−[3.1.1]ヘプト−2−イル]メタノール。
【0059】
特定の合成法の選択は、当業者に公知の要因、例えば、官能基と使用された試薬との相溶性、保護基、触媒、活性化及びカップリング剤の使用の可能性、及び製造される最終化合物中に存在する最終的な構造上の特徴によって変わる。
【0060】
薬剤学的に許容される塩を、当該技術分野で公知の手順を用いて、例えば、本発明の化合物と好適な酸、例えば、無機酸又は有機酸とを混合することによって得てよい。
【0061】
実施例1:[(1S,2S,5S)−6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−イル]メチル−スルファメート−化合物1の合成
【化6】

【0062】
スルファモイルクロリド(1.67g、14.45ミリモル)を一部、0℃で無水DMA(12ml)中の[(1S,2S,5S)−6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−イル]メタノール[(−)−トランス−ミルタノール](1.115g,7.23ミリモル)の撹拌溶液に添加した。混合液を室温で3時間撹拌し、次いで50mlの冷却した飽和塩化ナトリウム水溶液(塩水)中に注入した。得られた溶液を酢酸エチル(3×25ml)で抽出し、一緒にした有機層を冷却した飽和塩化ナトリウム水溶液(塩水、2×25ml)で洗い且つMgSOで乾燥させた。減圧下で濃縮させた後、粗生成物をシリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィーによって精製(約45g、溶離剤ヘキサン:酢酸エチル=2:1)し、白色固体として1.558g(6.68ミリモル)の純粋なスルファメートが得られた;融点67〜68℃;収率92%。
【0063】

【0064】
実施例2:[(1R,2R,5R)−6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−イル]メチル−スルファメート−化合物2の合成
【化7】

【0065】
スルファモイルクロリド(1.67g、14.45ミリモル)を一部、0℃で無水DMA(12ml)中の[(1R,2R,5R)−6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−イル]メタノール[(+)−トランス−ミルタノール](1.115g,7.23ミリモル)の撹拌溶液に添加した。混合液を室温で3時間撹拌し、次いで50mlの冷塩化ナトリウム飽和水溶液(塩水)中に注入した。得られた溶液を酢酸エチル(3×25ml)で抽出し、一緒にした有機層を冷却した飽和塩化ナトリウム水溶液(塩水、2×25ml)で洗い且つMgSOで乾燥させた。減圧下で濃縮させた後、粗生成物をシリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィーによって精製(約45g、溶離剤ヘキサン:酢酸エチル=2:1)し、白色固体として1.507g(6.46ミリモル)の純粋なスルファメートが得られた;融点67〜68℃;収率89%。
【0066】

【0067】
実施例3:[(1S,2S,5S)−6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−イル]エチル−スルファメート−化合物3の合成
【化8】

【0068】
スルファモイルクロリド(0.1156g、1ミリモル)を、0℃で無水DMA(0.75ml)中の[(1S,2S,5S)−6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−イル]エタノール(0.084g,0.5ミリモル)の撹拌溶液に添加した。混合液を室温で3時間撹拌し、次いで10mlの冷却した飽和塩化ナトリウム水溶液(塩水)中に注入した。得られた溶液を酢酸エチル(3×10ml)で抽出し、一緒にした有機層を冷却した飽和塩化ナトリウム水溶液(塩水、10ml)で洗い且つMgSOで乾燥させた。減圧下で濃縮させた後、粗生成物をシリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィーによって精製(約3g、溶離剤ヘキサン:酢酸エチル=2:1)し、白色固体として0.221g(0.445ミリモル)の純粋なスルファメートが得られた;融点49.5〜51.5℃;収率89%。
【0069】

【0070】
実施例4〜6[(1S,2R,5S)−6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−イル]メチルスルファメート(化合物4)、(1R,4S)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−メチルスルファメート(化合物5)及び(4S)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2イルメチルスルファメート(化合物6)の合成
化合物4〜6は、化合物4の合成のための[(1S,2R,5S)−6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−イル]メタノール、化合物5の合成のための(1R,4S)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−メタノール及び化合物6の合成のための(4S)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2イル−メタノールのいずれかによってそれぞれ出発材料としてのアルコールを置換する類似の方法で製造できる。
【0071】
実施例7:動物試験で使用される化合物1の配合
経口投与(p.o.)のために化合物を、水中に1%のメチルヒドロキシエチルセルロース(m/m)及び0.1%の湿潤剤ポロキサマー188(非イオン性ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー)を含有するビヒクルに懸濁剤として投与した。製造は乳棒を用いて乳鉢中で行われ、pHを中性条件に調整した。
【0072】
腹腔内の投与(i.p.)のために:ガラス管中の所望の量の固体化合物1に、幾つかのガラスのビーズを添加し、その固体を2分間渦撹拌することによって微粉砕する。1%メチルセルロース及び5%のマンニトールの水溶液1mlを添加した後、化合物を10分間渦撹拌することによって懸濁する。最終的にpHを7に調整する。
【0073】
静脈内投与(i.v)のために:化合物を生理食塩水(0.9%NaCl)中に溶かしpHを7に調整した。
【0074】
7.1薬理実験方法
薬理実験方法に引用された実験数は、以下に記載された製造例に関係している。
【0075】
7.2ヒトの炭酸脱水酵素イソ酵素のインビトロにおける阻害
一般式Iの試験化合物を、自動分注器(CyBiWell(登録商標))を使用して96穴マイクロプレート中で蒸留水(aqua bidest)により希釈した。異なる平板希釈から、20μlのアリコートを、ピペッティングステーション(Tecan Genesis(登録商標))を備えた96ウェルブラックアッセイプレートに移した。第2工程で、148μlのリン酸カリウム緩衝液(20mM、pH7.4)を添加し、第3工程として、20μlの酵素溶液(リン酸カリウム緩衝液に溶解した、赤血球からの1μMのヒトの炭酸脱水酵素イソ酵素I(Sigma-Aldrich)もしくは赤血球からのヒトの炭酸脱水酵素II(Sigma Aldrich)、又は組換えヒト炭酸脱水酵素イソ酵素VB(R&D Systems))を室温で60分間インキュベートし、そして蛍光シグナル(Tecan Ultra(登録商標)蛍光リーダー;励起波長:280nm;発光波長:465nm)を前培養日数の最後に読んだ(FLU−1)。前培養時間の後、20μlのダンシルアミド水溶液(塩酸中に溶解した1mMのダンシルアミド(Sigma-Aldrich))を添加し且つ37℃で60分間の間に10分毎に蛍光シグナルを読んだ。計算のために、60分の時点の蛍光データ(FLU2)を使用した。アッセイ混合物の全体積は208μlに達した。炭酸脱水酵素Iの最終濃度は10−7M/Lであり、炭酸脱水酵素IIの最終濃度は10−7M/Lであり、炭酸脱水酵素VBの最終濃度は5×10−6M/Lであり、ダンシルアミドの最終濃度はそれぞれ10−7又は2.5×10−6又は5×10−6であり、そして化合物の最終濃度は10−7M/L及び10−6M/Lであった。DMSOの化合物溶剤としての最終濃度は0.1%であった。それぞれのマイクロプレートはさらに、化合物及び酵素のないブランク、化合物のない対照及びバリデーション標準化合物としてエトキスゾラミド(最終濃度5×10−8M/L)を収容した。全てのデータは単一測定値を反映する。データを以下の式による計算後に阻害%として表す:
阻害%=100((1−(FLU−2cpd−FLU−2blank−FLU−1cpd+FLU−1blank)/(FLU−2control−FLU−2blank−FLU−1control−FLU−1blank))
【0076】
各化合物の阻害%データ及びそれぞれの最終濃度は、IC50計算のためにPrism4ソフトウェアを用いることによって使用できる。濃度作用の数値を、非線形回帰(曲線フィッティング)に対してプリズムアルゴリズムを適用することによって計算した:勾配変化のある法面を有するS字状用量反応及びその制約条件:トップ:100及びボトム0。
【0077】
この試験モデルの場合、以下の表1に列記された一般式Iの試験物質は、以下に与えられた阻害%データを示した:
【表1】

【0078】
7.3マウスにおける急性のインビボ食餌摂取試験
試験を雄のC57BI/6マウス(群当たりn=12)で実施した。マウスを反転した12/12時間の明/暗周期(22:00での光)で維持した。それらのマウスに食餌(高カロリー食)と水を自由に摂取させた。食餌と水の摂取量を毎日測定した。一般式Iの試験化合物を1%のメチルヒドロキシエチルセルロース水及び0.1%(v/v)のポロキサマー188に懸濁させて、3日間にわたり一日に2回の50mg/kg/日の用量で経口強制給飼によって投与した。2分の1の用量を8.00〜10.00時間で投与し;残りの半分の用量を14.00〜15.00時間の間に投与した。
【0079】
上述の試験モデルにおいて、以下の表2に示した対照と比較した場合、試験物質は動物の72時間の食餌摂取量の減少を引き起こした。
【0080】
【表2】

【0081】
7.4海馬神経からの神経突起伸長への影響
神経突起伸長は化合物の神経栄養効果を評価するための重要なパラメータである。神経突起伸長を増加させる化合物1の能力を胎芽海馬神経の培養物中で試験した。妊娠中の雌ウィスターラットからの海馬神経を、DNAseI(Roche, Meylan)の存在下で、37℃で30分間トリプシン処理(trypsin-EDTA, Gibco)することによって分離した。反応は10%のウシ胎児血清(Gibco)を有するダルベッコ(DMEM;Gibco)によって改質されたイーグル培養液の添加によって停止させた。懸濁液を10mlのピペット及び21G注射針付きシリンジを使用して完全に粉砕し、室温で10分間350×gで遠心分離した。得られたペレットを、2%のB27サプリメント(Gibco)及び2mMのグルタミン(Gibco)を有するNeurobasal培地(Gibco)を含有する培養培地中に再懸濁させた。生存細胞を、トリパンブルー排除試験法(Sigma)を用いてノイバウエル血球計算器で計数し且つポリ−L−リシン(Sigma)でプレコートされたペトリ皿(Nunc)につき30000個の細胞に基づいて接種した。細胞を2時間付着させ且つこれを5%CO−95%空気雰囲気中で37℃に加湿したインキュベーター中で維持した。
【0082】
付着後、ビヒクル及び試験化合物を異なる濃度(1μM、3μM、10μM及び30μM)で培地に添加した。BDNF(50ng/ml、3.7nM)は神経突起成長の正の対照として含まれた。試験化合物を、対照及びBNDF培養物と同時に2つの非依存性培養物中で試験した。
【0083】
3日間の神経の試験化合物への暴露後に、培養物をリン酸緩衝食塩水(PBS,Gibco)中で洗い且つPBS中で2.5%のグルタルアルデヒドを使用して固定した。分枝のない神経突起を有する細胞の複数の画像(−80)を、マイクロスコープ(Nikon、対物レンズ40×)に固定されたディジタルカメラ(Coolpix995;Nikon)を使用する条件に従って撮った。神経突起は、長さを自動的に計算するイメージングソフトウェア(Image-Pro Plus, France)を使用してコンピュータのスクリーン上に描かれた。
【0084】
予想通りに50ng/mlのBDNF処理は海馬神経から萌芽する神経突起に関連した。最初の培養物において、BNDFは105.7±3.2μm(平均±SEM;n=83)から131.6±3.1μm(n=79)までの24.5μmの神経突起長さの平均増加を促進した;第2の培養物において、BNDFは109.3±3.1μm(平均±SEM;n=86)から118.7±2.8μm(n=82)までの8.6μmの神経突起長さの平均増加を促進した。両方の培養物をそれぞれの平均対照神経突起長さによって正規化した時、BNDFによって16.4%増加した。
【0085】
化合物1の効果
表3に示されるように、全ての試験された化合物1の濃度は神経突起長さの有意な増加に関係する。神経突起の成長への影響は、全ての試験された濃度について比較可能であり、対照濃度と比較して9%〜15%の増加を有する。最も有効な濃度は30μMであり、これはBDNF応答と比較可能であった。
【0086】
【表3】

【0087】
結論として、本試験は、化合物1が海馬神経の神経突起伸長を促進することに効果的であったことを示す。
【0088】
7.5試験化合物の抗痙攣性を測定するためのマウスでの電気痙攣衝撃閾値試験(ECSTT)
プロ痙攣性又は抗痙攣性を検知する方法は、Swinyardら(J. Pharmacol. Exp. Ther. 1952, 106, 319-330)によって記載されたものに従う。マウスに、定電流ショック発電機(Ugo Basile:Type7801)に接続された隔膜電極を通じてECS(直交電流、0.4s、50Hz)を施した。
【0089】
化合物1は、ECSの60分前に経口投与された10、30及び100mg/kgの用量で試験した。ビヒクルがECSの60分前に経口投与された群は対照の働きをする。同じ試験条件下で投与されたジアゼパム(8mg/kg、経口)は正の抗痙攣標準物質として働いた。
【0090】
23匹のマウスの処理群を次のようにECSに曝した:動物n°1を30mAのECSに曝した。動物n°1が最大5秒以内に痙攣(強直性痙攣)しない場合、動物n°2をより高い40mAの電流に曝した。動物n°2でも痙攣が全くない場合、最初の強直性痙攣が観察されるまで以下の動物において電流を更に増加させた(10mAの増加)。最初の強直性痙攣が観察されたら、次の動物に対するECSの強度を5mA減少させ、次いでその強度を、上記動物が痙攣したか又は痙攣していないかに応じて動物から動物へ5mA減少又は増加させた。得られた最小強度は25mAであり、得られた最大強度は95mAであった。電気痙攣衝撃閾値を最後の20匹のマウスに投与された平均電流として測定した。
【0091】
結果を対照からのパーセント変化として表す。死亡数もまた動物の痙攣について試験した約30分後に記録する。盲検試験を行った。正のパーセント変化は抗痙攣効果を示す。負のパーセント変化はプロ痙攣効果を示す。
【0092】
定量データは、片側Studentのt検定を使用してビヒクル対照で処理された群を比較することによって分析した。定量データは、Fisherの正確確率検定を使用してビヒクル対照で処理された群を比較することによって分析した。
【0093】
【表4】

【0094】
試験の60分前に経口投与された化合物1(10、30及び100mg/kg)は、全ての3つの用量(それぞれ、+10%,p<0.05;+19%,p<0.001及び+141%,p<0.001)において強直性痙攣を誘発する電流閾値を用量依存的に且つ有意に増加させた。100mg/kgの経口で得られた最大効果は抗痙攣性基準化合物ジアゼパムの効果に類似した。これらのデータは化合物1が抗てんかん性を有することを示唆する。
【0095】
7.6糖尿病誘発性の神経因性疼痛試験
雄のSprague Dawleyラット(−200g)の糖尿病を、55mg/kgの用量でストレプトゾトシン(STZ; Sigma, L'lsle d'Abeau Chesnes, France)の緩衝溶液を静脈内(尾静脈)注射することによって誘発させた。STZをpH4.5のクエン酸塩緩衝液0.1モル/lで調製した。対照群は同量のクエン酸塩緩衝液を受けた。STZ注射の日は0日目として考えられた。1週間後、血中グルコース濃度を、尾部切開及びglucosimeter(Glucotrend, Roche Diagnostic GmbH、独国)を使用してモニタした。血糖≧260mg/dlのラットは糖尿病であると考えられた。
【0096】
STZラットを、血糖値を糖尿病のグループ間で比較できるように6つの群に分けた(それぞれn=10動物)。群は以下のものであった:
1.)ビヒクルで処理した非糖尿病の対照群、
2.)ビヒクルで処理したSTZ処理の糖尿病の群、
3.)〜5.)10、30又は50mg/kgの化合物1で経口処理したSTZ処理の糖尿病の群、
6)正の基準化合物モルフィン(3mg/kg sc)で処理したSTZ処理の糖尿病の群。
【0097】
化合物1及びビヒクル(1%のチロース懸濁液)を行動アッセイの1時間前に経口的に与えた。モルフィンを行動アッセイの0.75時間前に皮下注射した。
【0098】
2つの疼通行動試験を10日目に行った。
【0099】
10日目の冷浴試験:それぞれの動物を冷たいプラットホーム(1〜4℃)に置いた。最初の反応(リッキング、足を動かす、わずかに跳ねる)までの待ち時間を最大30秒間で記録した。対照動物は最初の反応までの20〜30秒をサポートすることができ、一方、STZラットは最初の反応までの時間の短縮(〜10秒)を示す。この試験は寒冷異痛症の測定の役割を果たす。
【0100】
10日目の加温プレート(38℃)試験:通常、動物を冷浴試験の約2〜3分後に試験した。動物をそれぞれ38℃に調整した加温プレート(Slide warmer MH6616; Euromedex;フランス)のガラスシリンダー内に置いた。最初の反応(リッキング、足を動かす、熱から逃れるためにわずかに跳ねる又は跳ぶ)の待ち時間を記録した。カットオフタイムを30秒に設定した。この試験は温暖異痛症の測定の役割を果たす。
【0101】
分散の分析(ANOVA)を各パラメータからのデータで行った。Fisherの保護された最小有意差を対比較のために使用した:p値≦0.05は有意であると考えられた。STZ−糖尿病−誘発性の異痛症及び痛覚過敏の薬剤誘発性阻害を、100%としてのビヒクル/対照群及び0%阻害としてのSTZ/ビヒクル群のそれぞれの応答を設定することによって計算した。
【0102】
【表5】

【0103】
試験の1時間前に経口投与された化合物1(10、30及び50mg/kg)は、10日目の冷浴試験においてSTZ−糖尿病−誘発性寒冷異痛症を用量依存的に且つ有意に抑制した。試験の1時間前に経口投与された化合物1(30及び50mg/kg)は、10日目の加温プレート試験においてSTZ−糖尿病−誘発性温暖異痛症を用量依存的に且つ有意に抑制した。これらのデータは化合物1が神経因性疼痛、特に糖尿病の神経因性疼痛において可能性があることを示唆する。
【0104】
実施例8:医薬製剤
臨床用途に、式Iの化合物は医薬組成物に製剤化され、これらは化合物、更に詳細には本明細書で開示された特定の化合物を含有するため重要であり且つ本発明の新規な実施態様である。使用してよい医薬組成物の種類は、錠剤、丸剤、舐剤、糖剤、トローチ剤、ハード又はソフトカプセル、粉末、カシェ剤、顆粒、坐剤、溶液、水性もしくは油性懸濁液、乳剤、ローション剤、シロップ剤、軟膏剤、ゲル、ペースト、クリーム、泡沫、吸入剤、スプレー、エーロゾル剤又は貼付剤、及び本明細書に開示された他の種類のものを含むがこれらに限定されないか、又は明細書及び当該技術分野での一般的な知識から当業者に明らかである。活性成分は例えば、シクロデキストリン、そのエーテル又はそのエステルの包接錯体の形でも存在してよい。この組成物は、経口、静脈内、皮下、気管、気管支、鼻腔内、肺内、経皮、口腔内、直腸内、非経口的又は他の方法での投与のために使用される。医薬製剤は、薬剤学的に許容されるアジュバント、希釈剤及び/又はキャリアとの混合剤中に少なくとも1種の式Iの化合物を含有する。全量の活性成分は、好適には約0.1%(w/w)〜約100%(w/w)、好適には0.5%〜50%(w/w)、有利には1%〜25%(w/w)の範囲内の配合である。
【0105】
本発明の化合物は、液体又は固体などの補助物質、薬剤学的に慣用の液体又は固体充填剤及び増量剤などの粉体状成分、溶剤、乳化剤、滑剤、着香剤、着色剤及び/又は緩衝剤物質を使用する通常の方法による投与に好適な形にできる。利用頻度が高い補助物質として、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、ラクトース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール及び他の糖又は糖アルコール、タルク、乳たんぱく、ゼラチン、デンプン、アミロペクチン、セルロース及びその誘導体、動物及び植物油、例えば、魚肝油、ヒマワリ、落花生又はゴマ油、ポリエチレングリコール及び溶剤、例えば、滅菌水及びモノ−又は多価アルコール、例えば、グリセロール、並びに崩壊剤及び潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム及びポリエチレングリコール蝋が挙げられる。次に混合物を顆粒に加工又は錠剤に圧縮してよい。錠剤を以下の成分を使用して製造する:
【表6】

【0106】
成分をブレンドし且つ圧縮してそれぞれ230mgの重量の錠剤に形成する。
【0107】
活性成分を、混合して製剤を形成する前に、他の非活性成分と別々に予備混合してよい。活性成分を、非活性成分と混合して製剤を形成する前に、互いに混合してもよい。
【0108】
軟質ゼラチンカプセル剤を、本発明の活性成分、植物油、脂肪、又は軟質ゼラチンカプセル剤に適した他のビヒクルの混合物を含有するカプセル剤で製造してよい。硬質ゼラチンカプセル剤は活性成分の顆粒を含有してよい。硬質ゼラチンカプセル剤はまた、固体の粉体状成分、例えば、ラクトース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、アミロペクチン、セルロース誘導体又はゼラチンと一緒に活性成分を含有してもよい。硬質ゼラチンカプセル剤は以下の成分を使用して製造できる:
【表7】

【0109】
上述の成分を混合し且つ120mgの量で硬質ゼラチンカプセル剤中に充填する。
【0110】
直腸投与の単位剤形を、(i)中性脂肪基剤と混合された活性物質を含有する坐剤の形で;(ii)植物性油、パラフィン油又はゼラチン直腸カプセル剤に適した他のビヒクルとの混合物中に活性物質を含有するゼラチン直腸カプセル剤の形で;(iii)既製のマイクロ浣腸の形で;又は(iv)投与の直前に適した溶剤に戻されるべき乾燥マイクロ浣腸製剤の形で製造してよい。それぞれ1mgの活性成分を含有する坐剤は、以下のように製造してよい:
【表8】

【0111】
活性成分を適切なサイズのメッシュ篩に通し且つ必要最低限の熱を使用して予め融解させた飽和脂肪酸グリセリド中に懸濁させる。次に混合物を通常2gの容量の坐剤型内に注ぎ込み且つ冷却させる。
【0112】
液体製剤を、シロップ剤、エリキシル剤、濃縮ドロップ又は懸濁液、例えば、活性成分を含有する液剤又は懸濁液の形で製造してよく、残りは例えば、糖又は糖アルコール並びにエタノール、水、グリセロール、プロピレングリコール及びポリエチレングリコールの混合物からなる。静脈内用の製剤を次のように製造してよい:
【表9】

【0113】
化合物をArlatone G(商標)、EtOH及び水中に溶かし、次いで該液剤を追加の水でゆっくり希釈する。
【0114】
所望の場合には、かかる液体製剤は着色剤、着香剤、防腐剤、サッカリン及びカルボキシメチルセルロース又は他の増粘剤を含有してよい。液体製剤は乾燥粉末の形で製造してもよく、使用前に好適な溶剤で戻される。経口的投与用の液剤は、薬剤学的に許容される溶剤中で本発明の製剤の液剤として調製してよい。これらの液剤は安定化成分、防腐剤及び/又は緩衝剤成分も含有してよい。経口的投与用の液剤は乾燥製剤として調製してもよく、使用前に適した溶剤で戻される。
【0115】
実施例として且つ限定しないで、全身的な使用又は局所適用のための有利な活性化合物を含む、複数の医薬組成物が与えられる。本発明の他の化合物又はそれらの組み合わせを、上記化合物の代わりに(又はそれに加えて)使用してよい。活性成分の濃度は本明細書に記載された広い範囲にわたり変化し得る。含まれてよい成分の量及び種類は当該技術分野で公知である。
【0116】
参考文献一覧
Maryanoffら, J. Med. Chem. 1998, 41, 1315-1343.
Maryanoffら, J. Med. Chem 1987, 41, 880-887.
Berge, S. M.:"Pharmaceutical salts", J. Pharmaceutical Science, 66, 1-19 (1977).
Byrnら, Pharmaceutical Research, 12(7), 945-954, 1995.
Martin, E. W. (Editor), "Remington: The Science and Practice of Pharmacy", Mack Publishing Company, 19th Edition, Easton, Pa, Vol 2, Chapter83, 1447-1462, 1995.
引用特許及び特許出願
EP0138441号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

(式中、R1及びR2は独立して:水素、アルキル、シクロアルキル、アリール及びヘテロアリールからなる群から選択され、そのアルキル及びシクロアルキルは場合により少なくとも1つの置換基Yで置換され且つそのアリール及びヘテロアリールは場合により少なくとも1つの置換基Zで置換されるか、あるいはR1及びR2は一緒に5又は6員環を形成し、該環は窒素、酸素及び硫黄からなる群から独立して選択された1〜2個のヘテロ原子を追加的に含有してよく且つその5又は6員環は場合により少なくとも1つの置換基Yで置換される;
R3は(1S,2S,5S)−6,6−ジメチル−ビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−イル;(1R,2R,5R)−6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−イル;(1S,2R,5S)−6,6−ジメチル−ビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−イル;(1R,4S)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル;(1S,4R)−3−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル;ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−イル;(4S)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イル;(1S,2R,4S)−1,7,7−トリメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル;(1R,2S,4R)−1,7,7−トリメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル;及び(1R,2R,4R)−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルからなる群から選択される;
nは0〜3である;
Yはアルキル、アルコキシ、チオアルキル、アリール、CO−アリール、ヘテロアリール、アミノ及びカルボキシルアルキルからなる群から選択される;
Zはアルキル、アルコキシ、チオアルキル、ハロゲン、アリール、CO−アリール、CN、ヘテロアリール及びカルボキシルアルキルからなる群から選択される)の化合物、
並びにその薬剤学的に許容される塩、水和物及び溶媒和化合物。
【請求項2】
R1及びR2が独立して水素及びC〜Cアルキルからなる群から選択され、C〜Cアルキルは場合によりC〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cチオアルキル、C〜C12アリール、CO−C〜C12アリール、C〜C12ヘテロアリール、アミノ、及びカルボキシル−C〜C−アルキルからなる群から選択される少なくとも1つの置換基Yで置換される、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R1及びR2が両方とも水素である、請求項1及び2のいずれか1項記載の化合物。
【請求項4】
nが1又は2、有利にはnが1である、請求項1から3までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項5】
化合物が[(1S,2S,5S)−6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−イル]メチル−スルファメート、[(1R,2R,5R)−6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]−ヘプト−2−イル]メチルスルファメート、[(1S,2S,5S)−6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−イル]エチルスルファメート、[(1S,2R,5S)−6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−イル]メチルスルファメート、(1R,4S)−ビシクロ−[2.2.1]ヘプト−2−イル−メチルスルファメート、及び(4S)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イルメチルスルファメート、有利には[(1S,2S,5S)−6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−イル]メチルスルファメートからなる群から選択される、請求項1から4までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項記載の化合物、又はその薬剤学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和化合物を含む、薬剤。
【請求項7】
医薬組成物であって、
A)活性成分として、医学上有効量の請求項1から5までのいずれか1項記載の式Iの化合物又はその薬剤学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和化合物;及び
B)場合により少なくとも1種の薬剤学的に許容されるキャリア及び/又は少なくとも1種の薬剤学的に許容される補助物質
を含む、医薬組成物。
【請求項8】
組成物が、錠剤、丸剤、舐剤、糖剤、トローチ剤、ハード又はソフトカプセル、粉末、カシェ剤、顆粒、坐剤、溶液、水性もしくは油性懸濁液、乳剤、ローション剤、シロップ剤、軟膏剤、ゲル、ペースト、クリーム、泡沫、吸入剤、スプレー、エーロゾル剤又は貼付剤の形である、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
肥満症、糖尿病I型、糖尿病II型、メタボリック・シンドローム、シンドロームX、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎障害、糖尿病性細小血管症、糖尿病性大血管障害、インスリノーマ、家族性高インスリン性低血糖症、男性型禿頭症、排尿筋機能高進、高血圧、特に動脈高血圧、異常窿潟タンパク血、特に低HDLコレステロールが生じる/生じない異常βリポタンパク血を伴う高トリグリセリド血症;高尿酸血症;ぜん息、グルコース代謝、特にインスリン抵抗性、高血糖症及び/又はグルコース不耐性、神経保護、パーキンソン病、アルツハイマー病、無痛覚症、アンギナ、不整脈、冠動脈攣縮、末梢血管疾患、脳血管攣縮、食欲調節、神経変性、疼通、例えば、神経因性疼痛及び慢性的疼痛、インポテンス、緑内障、双極性障害、片頭痛、アルコール依存症、癌及び心臓血管性疾患(これらは特に心筋保護、心臓麻痺、虚血性心疾患、脳血管疾患及び末梢動脈閉塞性疾患及びそれらの随伴性及び/又は二次疾患もしくは二次条件を含む)を治療するための請求項7記載の組成物。
【請求項10】
式II
【化2】

(式中、Halは、クロロ、及びブロモ、有利にはクロロからなる群から選択されるハロゲンを表す)の化合物と、
式III
【化3】

のアルコールと、を反応させて式Iの化合物を得ることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の式Iの化合物の製造方法。
【請求項11】
R1及びR2が両方とも水素であり且つHalがクロロである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
式IIIの化合物が[(1S,2S,5S)−6,6−ジメチル−ビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−イル]メタノール;[(1R,2R,5R)−6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]−ヘプト−2−イル]メタノール;[(1S,2S,5S)−6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−イル]エタノール、[(1S,2R,5S)−6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−イル]メタノール、(1R,4S)−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−イル−メタノール、及び(4S)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2イルメタノール、有利には[(1S,2S,5S)−6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−イル]メタノールからなる群から選択される、請求項10及び11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
肥満症、糖尿病I型、糖尿病II型、メタボリック・シンドローム、シンドロームX、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎障害、糖尿病性細小血管症、糖尿病性大血管障害、インスリノーマ、家族性高インスリン性低血糖症、男性型禿頭症、排尿筋機能高進、高血圧、特に動脈高血圧、異常窿潟タンパク血、特に低HDLコレステロールと共に/なしで生じる異常βリポタンパク血を伴う高トリグリセリド血症;高尿酸血症;ぜん息、グルコース代謝、特にインスリン抵抗性、高血糖症及び/又はグルコース不耐性、神経保護、パーキンソン病、アルツハイマー病、無痛覚症、アンギナ、不整脈、冠動脈攣縮、末梢血管疾患、脳血管攣縮、食欲調節、神経変性、疼通、例えば、神経因性疼痛及び慢性的疼痛、インポテンス、緑内障、双極性障害、片頭痛、アルコール依存症、癌及び心臓血管性疾患(これらは特に心筋保護、心臓麻痺、虚血性心疾患、脳血管疾患及び末梢動脈閉塞性疾患及びそれらの随伴性及び/又は二次疾患もしくは二次条件を含む)の治療及び/又は予防のための薬剤の製造のための請求項1から5までのいずれか1項記載の化合物又はその薬剤学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物の使用。
【請求項14】
肥満症、糖尿病I型、糖尿病II型、メタボリック・シンドローム、シンドロームX、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎障害、糖尿病性細小血管症、糖尿病性大血管障害、インスリノーマ、家族性高インスリン性低血糖症、男性型禿頭症、排尿筋機能高進、高血圧、特に動脈高血圧、異常窿潟タンパク血、特に低HDLコレステロールと共に/なしで生じる異常βリポタンパク血を伴う高トリグリセリド血症;高尿酸血症;ぜん息、グルコース代謝、特にインスリン抵抗性、高血糖症及び/又はグルコース不耐性、神経保護、パーキンソン病、アルツハイマー病、無痛覚症、アンギナ、不整脈、冠動脈攣縮、末梢血管疾患、脳血管攣縮、食欲調節、神経変性、疼通、例えば、神経因性疼痛及び慢性的疼痛、インポテンス、緑内障、双極性障害、片頭痛、アルコール依存症、癌及び心臓血管性疾患(これらは特に心筋保護、心臓麻痺、虚血性心疾患、脳血管疾患及び末梢動脈閉塞性疾患及びそれらの随伴性及び/又は二次疾患もしくは二次条件を含む)の治療に使用するための、請求項1から5までのいずれか1項記載の化合物並びにその薬剤学的に許容される塩、水和物及び溶媒和化合物。
【請求項15】
哺乳類及びヒトにおける肥満症、糖尿病I型、糖尿病II型、メタボリック・シンドローム、シンドロームX、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎障害、糖尿病性細小血管症、糖尿病性大血管障害、インスリノーマ、家族性高インスリン性低血糖症、男性型禿頭症、排尿筋機能高進、高血圧、特に動脈高血圧、異常窿潟タンパク血、特に低HDLコレステロールと共に/なしで生じる異常βリポタンパク血を伴う高トリグリセリド血症;高尿酸血症;ぜん息、グルコース代謝、特にインスリン抵抗性、高血糖症及び/又はグルコース不耐性、神経保護、パーキンソン病、アルツハイマー病、無痛覚症、アンギナ、不整脈、冠動脈攣縮、末梢血管疾患、脳血管攣縮、食欲調節、神経変性、疼通、例えば、神経因性疼痛及び慢性的疼痛、インポテンス、緑内障、双極性障害、片頭痛、アルコール依存症、癌及び心臓血管性疾患(これらは特に心筋保護、心臓麻痺、虚血性心疾患、脳血管疾患及び末梢動脈閉塞性疾患及びそれらの随伴性及び/又は二次疾患もしくは二次条件を含む)の治療又は予防法において、請求項1から5までのいずれか1項記載の治療上有効量の式Iの化合物を、場合により薬剤学的に許容される補助物質及び/又はキャリアと一緒に、それを必要としている対象に投与することを含む、治療又は予防法。
【請求項16】
哺乳類、有利にはヒトにおける、肥満症、糖尿病I型、糖尿病II型、メタボリック・シンドローム、シンドロームX、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎障害、糖尿病性細小血管症、糖尿病性大血管障害、インスリノーマ、家族性高インスリン性低血糖症、男性型禿頭症、排尿筋機能高進、高血圧、特に動脈高血圧、異常窿潟タンパク血、特に低HDLコレステロールと共に/なしで生じる異常βリポタンパク血を伴う高トリグリセリド血症;高尿酸血症;ぜん息、グルコース代謝、特にインスリン抵抗性、高血糖症及び/又はグルコース不耐性、神経保護、パーキンソン病、アルツハイマー病、無痛覚症、アンギナ、不整脈、冠動脈攣縮、末梢血管疾患、脳血管攣縮、食欲調節、神経変性、疼通、例えば、神経因性疼痛及び慢性的疼痛、インポテンス、緑内障、双極性障害、片頭痛、アルコール依存症、癌及び心臓血管性疾患(これらは特に心筋保護、心臓麻痺、虚血性心疾患、脳血管疾患及び末梢動脈閉塞性疾患及びそれらの随伴性及び/又は二次疾患もしくは二次条件を含む)の治療及び/又は予防のための請求項1から5までのいずれか1項記載の化合物又はその薬剤学的に許容される塩、水和物及び溶媒和化合物の使用。

【公表番号】特表2011−500641(P2011−500641A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529391(P2010−529391)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【国際出願番号】PCT/EP2008/064007
【国際公開番号】WO2009/050252
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(391027619)ゾルファイ ファーマスーティカルズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (46)
【氏名又は名称原語表記】Solvay Pharmaceuticals GmbH
【住所又は居所原語表記】Hans−Boeckler−Allee 20, D−30173 Hannover,Germany
【Fターム(参考)】