半導体ウェハの光学的特性を求めるための方法およびシステム
半導体ウェハのような基板の少なくとも1つの光学特性を求めるための方法およびシステムを開示する。光学特性が求められると、処理チャンバ内の少なくとも1つのパラメータがプロセス改善のために制御される。例えば、1つの実施形態では、基板の一方の表面の反射能が雰囲気温度近傍でまず求められる。そしてこの情報から、高温処理中のウェハの反射率および/または放射率が正確に推定される。放射率はウェハ処理中に高温計を用いた温度測定を補正するために使用することができる。温度測定をより正確にするだけでなく、基板の光学特性は加熱サイクルのより良い最適化にも使用しうる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は2005年7月5日出願の米国暫定出願第60/696,608号に基づいており、その優先権を主張するものである。
【0002】
発明の背景
多くの産業的・科学的プロセスにおいて、高熱物体の表面温度の測定は関心事である。例えば、半導体デバイスの製造時には、温度は正確に測定され、制御されなければならない。特に、半導体ウェハの温度は、ウェハの急速熱処理中、ウェハの急速熱酸化処理中、または、ウェハの表面を改変したり、表面に薄い化学被膜もしくはコーティングを施す他のプロセスの間、正確に監視されなければならない。これらの半導体製造プロセスにとって、基板の温度は、400°未満から1,100°Cを超すこともある範囲にわたって、数度以内で知られていなければならない。
【0003】
過去には、高温物体の温度は(1)接触法または(2)非接触法を利用して求められた。例えば、接触法の場合、高温物体が熱電対のようなセンサと接触し、センサに接続されている温度計が物体の温度を示す。一方、従来の非接触方による温度測定は、物体が放出した熱放射を特定の光波長において感知する光高温計のような光センサを使用する。物体によって放出された熱放射が分かってしまえば、物体の温度は推定することができる。
【0004】
一般的に、エレクトロニクス産業で使用される半導体材料を加工する場合、半導体ウェハの温度測定時には非接触法を用いることが好ましい。例えば、非接触法の1つの利点は、加熱プロセス中にウェハを回転することができることであり、これによりウェハ全体にわたって一様な温度分布が促進される。また、ウェハを回転させることで、プロセスガスの流れとウェハの間のより均一な接触も促進される。ウェハを回転することができる以外に、非接触法を用いる別の利点は、温度計をウェハに取り付ける必要がないため、ウェハをより速く製造することができ、半導体製造中の貴重な時間が節約されることである。
【0005】
現在関心を持たれている、あるいは関心となることが予見される高温ウェハプロセスのすべてにとって、より重要な要件の1つは、ウェハの真の温度が高い精度、再現性、および速度をもって求められることである。ウェハの温度を正確に測定する能力は製造された半導体デバイスの品質およびサイズに直接的な見返りを有している。例えば、ある特定の半導体デバイスに必要な最小加工寸法は完成したマイクロチップの計算速度を制限してしまう。一方、加工寸法はプロセスの最中のデバイスの温度を測定および制御する能力に関係している。したがって、半導体産業の内部では、より正確な温度測定制御システムの開発を迫るプレッシャーが増大しつつある。
【0006】
この点について、従来の非接触式の光高温測定システムの主な欠点は、ウェハの真の温度ではなく、見かけの温度が測定されることである。特に、実際の表面は理想的なまたは完全な黒体よりも放射効率が低い。理論と計算によれば、黒体の放出する放射が分かれば、黒体の温度は計算することができる。しかし、ウェハのような実際の物体は同じ温度で黒体が放出するであろう放射の一部しか放出しない。この一部が実際の物体の放射率として定義される。したがって、実際の物体が放出する放射を感知する場合、高温計は一般に物体の真の温度とは異なりうる見かけの温度を示す。
【0007】
したがって、高温計を用いて実際の物体の真の温度を測定するためには、放射率を考慮して、示された温度を補正しなければならない。残念なことに、実際の物体の放射率は一般的には未知であり、正確に測定することは非常に難しい。さらに、半導体ウェハの放射率はウェハごとに異なる。放射率はウェハの特性であり、ウェハの化学的組成、ウェハの厚さ、ウェハの表面粗さ、ウェハ上にあるコーティング、および高温計の動作波長といった複数のパラメータに依存する。
【0008】
高温計の動作波長でウェハが半透過である場合には、半導体ウェハの放射率を求めることができることに加えて、ウェハの温度を正確に求めるという問題も生じうる。この問題は比較的低い温度において特によく見られる。
【0009】
過去には、ウェハのプロセス処理に先立って、またはウェハのプロセス処理中に半導体ウェハの特性を測定するために、幾つかの方法が提案された。例えば、米国特許第6,056,434号には、ウェハの放射率を求める手助けとして、半導体ウェハの反射能を測定する方法が開示されている。
【0010】
本開示は、熱処理チャンバ内で処理される半導体ウェハのような基板の光学特性を求める方法をさらに改善することを対象としている。本開示に従って求められたウェハの性質または特性は、加熱処理および/または基板を加熱する様式をより良く制御するために使用してもよい。
【0011】
発明の概要
本開示は、概して、加熱処理中にウェハをより正確に加熱するために、あるいは、加熱処理中に様々なシステム構成要素もしくは変数をより良く制御するために半導体ウェハのような基板の光学特性を求める方法を対象としてしている。開示されるシステムおよび方法によれば、高温計のような放射感知装置によって読み取られるウェハ温度の精度の改善、または、基板の熱放射特性の測定および/または予測の改善が可能である。ある実施形態では、この方法で求められた基板の光学特性を制御器に供給し、ウェハ温度制御が改善されるようにしてもよい。
【0012】
例えば、ある実施形態では、本開示は半導体ウェハの少なくとも1つの光学特性を求める方法を対象としている。本方法はある特定の厚さをもつ半導体ウェハの第1の表面に光を放射するステップを含んでいる。半導体ウェハの第1の表面に放射された光は、第1の表面から反射した光をウェハを通過した光から分離するように構成された光路を介して導かれ、ウェハの対向する第2の表面で反射する。
第1の表面から反射した光が第2の表面から反射された光から一旦分離されれば、第1の表面から反射した光は検出器を使用して検出することができる。検出器は、例えば任意の適切な光センサとしてもよいし、または、第1の表面から反射した所定の波長の、または所定の波長域の光の量を検出するように構成してもよい。
【0013】
本開示によれば、第1の表面から反射した光の量に基づいて、半導体ウェハの少なくとも1つの光学特性が求められる。この特性は、第1の表面の反射能、第1の表面の放射能、第1の表面の吸収能、または第1の表面の透過能を含むものとしてよい。代替的または付加的に、光学特性が半導体ウェハの反射能、エミッタンス、吸収能、または透過能を含むものとしてもよい。さらに、半導体ウェハの第1の表面の少なくとも1つの光学特性を求める代わりに、あるいはそれに加えて、ウェハの反対側の表面の少なくとも1つの光学特性を求めるために本発明を使用してもよい。
【0014】
第1の表面から反射した光を第2の表面から反射した光から分離するために用いられる光路は個々のアプリケーションに応じて異なっていてよい。例えば、光路は複数の光学装置を含むものとしてよい。これらの光学装置には、ミラー、レンズ、開口等が含まれる。例えば、ある特定の実施形態では、光路は半導体ウェハの第1の表面の特定の位置に光を方向付ける第1のレンズと第2のレンズを含む。第1の表面で反射した後、光は再び第2のレンズを通過する。第2のレンズ以降、光はミラーで反射され、第3のレンズを通過して光検出器へ集束する。しかし、上記の実施形態は本開示で使用しうる光路の1つの例を示しているに過ぎないことを理解されたい。
【0015】
光が光路を移動する時に第1の表面から反射した光がどのうように第2の表面から反射した光から分離されるかは、アプリケーションごとに異なるものとしてよい。例えば、システムの1つまたは複数のレンズの焦点距離を調節することによって、種々の光ビームの分離を行ってもよい。代替的または付加的に、種々の光線を分離するためにシステムは様々な開口やフィルタを含むものとしてよい。さらに別の実施形態では、入射角を分散させて半導体ウェハの第1の表面に光を放射することにより、第1の表面から反射した光を第2の表面から反射した光から分離するようにしてもよい。
【0016】
基板の第1の表面に光を放射するために使用される光源は、個々のアプリケーションに応じて異なるものとしてよい。例えば、ある実施形態では、光は広帯域光源を有するものとしてよい。択一的に、光源がレーザビームを放射するようにしてもよい。
【0017】
半導体ウェハの少なくとも1つの光学特性を上記方法に基づいて求めてしまえば、様々なシステムやプロセスにこの光学特性を取り入れ、使用することができる。例えば、ある実施形態では、求められた1つまたは複数の光学特性を用いて、半導体ウェハの加熱プロセスを制御する。この実施形態では、光学特性に基づいて、半導体ウェハを加熱するプロセスにおける少なくとも1つのシステム構成要素を制御することができる。
【0018】
例えば、ある実施形態では、システム構成要素は半導体ウェハの温度を求めるために加熱中に半導体により放出される放射の量を感知する高温計のような放射測定装置を含む温度測定システムを含むものとしてよい。第1の表面から検出された光の量は、放射測定装置により感知される放射の量と併せて、半導体ウェハの温度を求める際に使用される半導体ウェハのエミッタンスを求めるために使用されることもある。
【0019】
この実施形態では、例えば、放射感知装置は所定の波長で半導体により放出された放射を感知する。半導体ウェハの第1の表面から反射した光の量は放射感知装置の動作波長と同じ波長で検出される。半導体基板の第1の表面から検出される反射光の量の測定はおよそ100°Cよりも低い温度でも行われうる。例えば、半導体ウェハの第1の表面から検出された光の量は、放射感知装置の動作波長で半導体ウェハの透過能が0.1未満であるような温度において半導体ウェハの反射能とエミッタンスを求めるために使用してもよい。より具体的には、ある実施形態では、例えばモデルを用いて比較的高い温度における基板のエミッタンスを予測するために、およそ100°Cよりも低い温度で求められた反射能および/またはエミッタンスを使用してもよい。
【0020】
択一的な実施形態では、システム構成要素はウェハの加熱に使用される加熱装置に関係するものとしてよい。例えば、加熱プロセスの間、半導体ウェハの加熱に使用される加熱装置の電力制御器を調整してもよい。加熱装置は、例えば、光エネルギー源、加熱サセプタ、またはこれらの組合せから成るアレイを含むものとしてよい。半導体ウェハの第1の表面から検出された光の量は加熱中に半導体ウェハの吸収率を求めるために使用し、半導体ウェハの吸収率は、半導体ウェハの加熱に使用されるエネルギーの量が選択的に増大または減少させられるように電力制御器を調整するために使用してよい。このようにして、吸収能は電力またはエネルギーの設定の最適化に使用される。この実施形態では、半導体ウェハの第1の表面から反射して検出される光は、ウェハの加熱に使用される電磁放射の波長域と実質的に重なる波長域の光であるとしてよい。
【0021】
本開示のさらに別の実施形態では、求められる半導体ウェハの光学特性を、放射感知装置の動作波長で透過能が0.1を超えるような比較的低い温度において放射感知装置の示数を補正するために使用してもよい。この実施形態では、光源がウェハの第1の表面に入射する光を放射し、第1の表面から反射した光の量がウェハの反対側の表面から反射した光の量とは別個に検出される。例えば、光路を用いて、ウェハの第1の表面から反射した光をウェハの反対側の表面から反射した光から分離してもよい。その後、この情報を用いて、ウェハの両表面の反射能が求められる。これらの反射能は、その後、放射感知装置の動作波長で半導体ウェハの透過率が0.1を超えるような温度において半導体ウェハの透過率と放射率を求めるために使用される。求められた透過能とエミッタンスは放射感知装置により為される温度測定の補正に使用してよい。
【0022】
同様に、本開示の方法は比較的低い温度における加熱装置の電力またはエネルギーレベルの制御にも使用することができる。しかし、この実施形態では、半導体ウェハの第1の表面と第2の表面からの反射光は、ウェハの加熱に使用される電磁放射の波長域と実質的に重なる波長域において検出される。このようにして、吸収能を求め、それを電力またはエネルギー設定の最適に使用することができる。
【0023】
半導体ウェハの光学特性は、上で述べたように、熱処理チャンバ内で求めてもよいし、熱処理チャンバ外で求めてもよい。例えば、ある実施形態では、光学特性は任意の適切なロケーションで求められるものとしてよい。例えば、測定はロボットアーム上の測点において行ってもよいし、あるいは隔離したチャンバで行ってもよい。光学特性が求まれば、ウェハを熱処理チャンバに移動して、様々なプロセスを施すことができる。光学特性は熱処理システムの少なくとも1つのシステム構成要素を制御するために使用してもよい。
本発明の他の特徴および側面については、以下で詳細に論じる。
【0024】
図面の簡単な説明
添付図面への参照を含め、明細書の以下の部分では、最良の実施形態を含めて本発明を完全かつ当業者にとって実施可能な程度により詳しく開示する。
図1は、本発明の方法およびシステムで使用しうる熱処理チャンバの1つの実施形態を示す側面図であり、
図2は、本発明によるシステムの1つの実施形態を示す平面図であり、
図3は、半導体ウェハのような基板に放射される1つの光ビームを示す側面図であり、
図4は、半導体ウェハのような基板に放射される2つの光ビームを示す側面図であり、
図5は、半導体ウェハのような基板に放射される2つの光ビームの別の実施形態を示す側面図であり、
図6は、本発明により使用される光路の1つの実施形態を示す側面図であり、
図7は、本発明により使用される光路の別の実施形態を示す側面図であり、
図8は、本発明により使用される光路の別の実施形態を示す側面図であり、
図9は、以下で詳細に説明する位置に基づいて光の強さを示したグラフであり、
図10は、本発明により使用される光路のさらに別の実施形態を示す側面図であり、
図11は、本発明により使用される光路の別の実施形態を示す側面図であり、
図12は、本発明により使用される光路のまた別の実施形態を示す側面図であり、
図13は、本発明により使用される光路の別の実施形態を示す側面図であり、
図14は、本発明により使用される光路の別の実施形態を示す側面図であり、
図15は、ウェハの両面照明の1つの実施形態を示す側面図であり、
図16は、ウェハの両面照明の別の実施形態を示す側面図であり、
図17は、本開示に従って異なるロケーションでウェハを照明する実施形態を示す側面図であり、
図18は、半導体ウェハに放射される光ビーム
図19は、ウェハの前面に入射する光線の伝播と様々な位置における光の強さの値とを示す側面図であり、
図20は、ウェハの光学特性の温度依存性を示したグラフであり、ここで基板は温度に依存した吸収係数を有しており、
図21から26は、それぞれ本開示に従ってウェハ特性を測定する方法のフローチャートの実施形態である。
【0025】
本明細書および図面において参照記号を繰り返して使用しているのは本発明の同一または類似の特徴ないし要素を表すためである。
【0026】
詳細な説明
当業者には、以下に示す考察は実施例の説明のためにのみ為されるものであり、本発明のより広範な側面を限定するためのものではないことが理解されねばらなない。
【0027】
概して言えば、本開示は基板の少なくとも1つの光学特性を求め、この特性を基板上で実行されるプロセスの制御に使用するための方法およびシステムを対象としている。例えば、ある実施形態では、基板は半導体ウェハを含むものとしてよく、光学特性は加熱プロセス中にウェハの温度をより良く測定および制御するために使用される。あるいは、光学特性をウェハの加熱に使用される加熱装置の制御に使用してもよい。
本開示の方法は半導体ウェハとだけでなく、他の基板と組み合わせても使用しうることが理解されねばならない。例えば、本開示の方法はリボン、薄膜、ファイバ、フィラメント等のような任意の適切な基板とともに使用することができる。
【0028】
基板が半導体材料を含んでいる場合には、基板の加熱処理中、基板の酸化処理中、または基板表面を改変するまたは基板表面に薄膜を付加するプロセスの最中に、本発明の方法を使用することができる。本発明に従って使用しうる他のプロセスには、例えば化学蒸着プロセスや原子層堆積プロセスのような適切な薄膜堆積プロセスが含まれる。本発明の原理は、基板上に材料を堆積させるためのプラズムプロセスの最中にも、または基板のエッチングのためにも使用することができる。
【0029】
図1を参照すると、半導体ウェハのような基板の処理のために本発明のプロセスで使用されるシステム10の1つの実施例が大まかに示されている。システム10は、様々なプロセスを実行するために、ウェハ14のような基板を受け入れるように適合させた処理チャンバ12を有している。ウェハ14は基板ホルダ15上の処理チャンバ12内に配置するものとしてよい。なお、基板ホルダ15は、所望により、ウェハを回転するように構成してもよい。チャンバ12は、非常に高速に、かつ綿密に管理された条件の下で、ウェハ14を加熱するように設計されている。チャンバ12はある種の金属、ガラス、およびセラミックを含む様々な材料から形成することができる。例えば、チャンバ12をステンレス鋼または石英から形成してもよい。
【0030】
チャンバ12が導熱性材料から形成されている場合には、チャンバは冷却システムを有しているものとしてよい。例えば、図1に示されているように、チャンバ12はチャンバの外周を包み込む冷却管16を有している。冷却管16は水などの冷却液を循環させるように適合させてあり、この冷却液がチャンバ12の壁を一定の温度に保つ。
チャンバ12は、チャンバ内にガスを引き入れるために、および/または、チャンバを所定の圧力範囲内に維持するために、ガス入口18とガス出口20を有している。例えば、ガス入口18を通してチャンバ12内にガスを引き入れ、ウェハ14と反応させることができる。処理が済めば、ガス出口20を使ってチャンバからガスを排出することができる。あるいは、ガス入口18を通してチャンバ12内に不活性ガスを供給して、チャンバ内にいかなる不要または不所望の副反応も起きないようにしてもよい。別の実施形態では、チャンバ12の加圧にガス入口18とガス出口20を用いてもよい。また、必要ならば、チャンバ12内に真空を形成してもよい。
【0031】
処理中に、ウェハ回転機構21を用いて、ウェハを回転させるようにチャンバ12を適合させてもよい。ウェハの回転はウェハ表面上の温度の一様性を高め、ウェハ14とチャンバ内に導入された任意のガスとの間の接触を高める。ここで理解されなければならないことは、チャンバは半導体ウェハの他に光学部品、薄膜、ファイバ、リボン、および、何らかの特定の形状をもつ他の基板を処理するようにも適合されているということである。
【0032】
処理中にウェハ14を加熱するため、チャンバと連携して1つまたは複数の加熱装置を配置してもよい。この実施形態では、加熱装置22はタングステンハロゲンランプ、アークランプ、レーザ、またはこれらの組合せなどのような複数のランプ24を有している。加熱装置22は加熱装置により放射される熱エネルギーをウェハ14に向けるための1つの反射器または一揃いの反射器を有するものとしてよい。図1に示されているように、ランプ24をウェハ14の上方に配置してもよい。しかし、ランプは任意の場所に配置してよいことを理解されたい。例えば、ウェハ14の上方だけでなく、ウェハ14の下方に配置される付加的なランプをシステム10内に含めてもよい。
【0033】
複数のランプを用いる代わりに、あるいは複数のランプに加えて、処理チャンバは他の様々な加熱装置を含んでいてもよい。例えば、加熱装置は基板を加熱するように構成された任意の適切な電磁放射を放出するものであってよい。加熱装置は、例えば、高周波またはマイクロ波エネルギーを放出するものであってよい。他の実施形態では、ホットウォール環境下でまたは対流加熱を介して基板を加熱してもよい。また、基板をエネルギービームで加熱してもよい。エネルギービームは、例えば、プラズマビーム、電子ビーム、またはイオンビームを含むものとしてよい。
【0034】
ある特定の実施形態では、処理チャンバは加熱サセプタを含むものであってよい。例えば、ウェハに接触せずにウェハを加熱するため、加熱サセプタをウェハの上方または下方に配置してよい。このような加熱サセプタは当業者には周知のものである。
【0035】
図1に示されているように、ランプ24のような1つまたは複数の加熱装置は、加熱装置により放射される熱エネルギーを増大または減少させるために使用しうる逐次電力制御器25を備えているものとしてよい。
【0036】
熱処理チャンバ10はさらに複数の光ファイバまたは光パイプ28を有しており、これらの光ファイバまたは光パイプ28は複数の相応する光検出器30と通じている。光ファイバ28は特定の波長でウェハ14により放射された熱エネルギーを受け取るように構成されている。感知された放射の量は光検出器30に通信され、光検出器30はウェハの温度を求めるのに使用しうる電圧信号を発生させる。ある実施形態では、光検出器30に通じる各光ファイバ28が高温計を含んでいる。
【0037】
処理中に、光ファイバがウェハ14により放出された熱放射を検出するのみで、ランプ24により放出された放射は検出しないように、システム10を設計してもよい。これに関して、システム10は光検出器30の動作波長でランプにより放出された熱放射がチャンバ12に入るのを阻止するフィルタ32を含んでいる。フィルタ32は窓であってもよいし、ある実施形態においては、融解シリカまたは石英から構成されるものとしてよい。
【0038】
上で述べたように、処理の間、半導体ウェハ14の温度は光ファイバ28と光検出器30とにより監視される。詳しくは、光検出器30が温度を求めるために特定の波長でウェハ14により放出された放射の量を感知する。光検出器30によって感知される放射量に基づいて正確に温度を計算するには、ウェハ14の様々な特性が既知であるか、または推定されなければならない。例えば、温度算出はウェハの反射率、透過率、および/または放射率に基づいているが、これらを予測または推定することは困難なことが多い。これらの値はウェハ14の温度に基づいて変化しうるだけでなく、ウェハ14に形成される構造のゆえに、ウェハ14が処理されるにつれても変化しうる。
【0039】
過去においては、ウェハ14の特性をまたは推定することのできる非接触温度測定システムを案出するために多くの試みがなされてきた。いくつかの実施形態では、例えば、ウェハが処理されている最中に測定または算出が行われる。例えば、米国特許第6,056,434号では、反射率計を利用した原位置温度算出プロセスが論じさられている。なお、この米国特許第6,056,434号の内容は参照により本願に取り込まれている。
【0040】
他の実施形態では、基板が処理される前に基板の様々な特性を測定することが試みられてきた。しかし、上に述べたように、基板の光学特性は温度によって変化しうる。また、基板上に存在する材料のうちのあるものが変形を被ることもあれば、基板の構造と光学特性に影響を与える他の材料が基板上に形成されることもある。これらの障害が、処理を改善するための手段としてプリプロセッシング特性決定を使用する能力を制限してきた。
【0041】
主な問題の1つは、シリコンなどの半導体材料の光吸収が材料の温度とドーピングによって強く影響されるゆえに生じる。例えば、低ドープシリコンウェハは一般に室温では波長>−1.1μmに対しては半透過である。その結果として、室温でおよそ1.1μmよりも長い波長で行われる典型的な測定は、基板を透過してウェハの反対側の表面から反射した光によって影響を受けることになる。ウェハが処理システム内で加熱される場合には、シリコンの吸収係数は温度とともに急激に上昇し、ウェハはより不透過となる。この変化はウェハの反射率と放射率の大きな変化をもたらす。この場合、室温での特性の測定は温度測定または制御の改善にはあまり役立たない。
【0042】
本開示は半導体ウェハのような基板の光学特性をウェハの処理に先立って求めるための方法およびシステムを対象としている。本発明によれば、より正確な温度算出を支援するために使用しうるだけでなく、熱エネルギーの吸収が最適化されるように加熱装置を制御するためにも使用しうるウェハの様々な光学特性が測定あるいは求められる。特に有利な点は、本発明の方法を用いて得た情報によって、低温においてだけでなく高温においても温度算出が可能となることである。本発明の方法はウェハの処理に先行して処理チャンバ外で実行されるものとしてよい。代替的に、処理チャンバ自体の中で算出を行ってもよい。
【0043】
本発明の原理を論じる前に、光ビームがどのようにして基板と相互作用するかについて手短に説明しておくのが良いだろう。例えば、図3にはウェハ状構造の代表例が示されており、このウェハ状構造の表面には入射角θ0で入射する光線AOが照射されている。ウェハ状構造はその上面(WF)と底面(WB)にコーティングとデバイスフィーチャを有していてよい。入射光線のパワーの一部は上面で反射され、反射光線R1を形成する。光線の第2の部分は前面(WF)を貫通し、内部光線A1を形成する。この光線は、ウェハの屈折率と光線AOを含む入射媒体の屈折率の違いにより生じる屈折の結果、異なる角度θiで伝搬する。光線A1がウェハの厚さ方向に伝搬する際、その強さはウェハ内でのエネルギー吸収により低下することがある。一般に、この吸収は、ベールの法則と呼ばれる指数関数的な関係を通じて、ウェハを通る光路長に依存する。
【0044】
光線A1がウェハの背面に達すると、光線の一部は表面を透過して光線T1となる。第2の部分は背面WBで反射して、第2の内部光線A2を形成する。A1が達した点におけるウェハの背面WBがAOの入射したウェハの前面と平行であるならば、光線T1は元の光線AOに平行な方向に伝搬する。ただし、これはウェハの背面を過ぎた後の媒体の屈折率がAOを含む媒体の屈折率と同じであることを条件とする。光線A2もウェハの法線に対してA1と同じ角度をなす。光線A2もウェハの前面WFに向かって戻る際に吸収により減衰する。ただし、光線A2のある部分は透過して光線R2を形成し、またある部分は反射して別の内部光線A3を形成する。
【0045】
すると今度は、内部光線A3がA1と同じ振る舞いを示し、ウェハの背面WBへ戻り、第2の透過光線T2とさらに別の内部光線A4を生じる。A4はA2と同じ振る舞いを示し、ウェハ表面に戻って、外部光線R3と内部光線A5を生じる。このように、ウェハの表面に入射する単一の光線AOがR1,R2,R3,…のような反射光線の無限列と透過光線の無限列T1,T2,…を生じさせることができることが分かる。
【0046】
実際には、表面の反射能と透過能は有限であり、基板厚さ方向における内部光線の各光路に沿った吸収も有限であるから、通常は内部反射の数が増えるにつれて、光線のパワーはかなり急速に減衰する。しかし、測定機器が第1の反射R1の他にR2やR3のような光線からのエネルギーも収集するのであれば、反射率測定は光が基板を透過する度合いに強く影響されうる。同様に、透過率の測定も第1の光線T1やT2のような多重反射光線のエネルギーの収集によって影響される。
【0047】
図4は、反射率測定に対するこのような多重反射光線の影響を図示したものであり、入射光ビームを図3の理想的な単一光線としてではなく、有限サイズのコリメートされた光ビームとして示していることを除けば、図3にかなり似ている。
【0048】
2つの外部光線AおよびBはコリメートされた光ビームHOの外側限界を表している。2つのウェハ表面(例えばHR1とHR2)で反射した光ビームはOVR1で重なり合うので、反射能を測定しようとして光検出器を用いれば、検出器によって収集される光はウェハの前面で反射した光だけでなく、ウェハの背面から反射した光も含むことになる。このような測定ではウェハの前面から反射した光と背面から反射した光を区別できない。
【0049】
同様に、透過能の測定も、例えばビームHT1とビームHT2の重なり合いOVT1の結果として、基板内での光の多重反射に影響される測定となってしまう。
【0050】
本開示は、概して言えば、半導体ウェハのような基板へ光を放射し、様々な手段を通して、ウェハの前面から反射した光の量をウェハの背面から反射した光の量から区別する方法およびシステムを対象としている。光が区別されれば、各基板の反射能の正確な測定を行うことができる。本発明が発見したところによれば、以下でより詳細に説明されるように、この情報はウェハが後に処理される際に処理チャンバ内の少なくとも1つのパラメータを制御するのに役立つ。
【0051】
例えば、図5を参照すれば、多重反射の影響を除去する手法の1つの実施形態が示されている。このケースでは、入射光ビームHOのサイズと基板への入射角は異なる表面(HR1,HR2,HR3等)から反射した光ビームから区別されるように選ばれている。入射光ビームが基板の前面(HR1)から反射する場所と基板の背面(HR2)から反射した光が前面に達する場所とは重なり合わない。その結果、空間的に離れた複数の反射光ビームが存在する。これらビームの光は異なる検出器またはセンサアレイに当たることがある。入射ビームの最初の反射の際に反射する光の強さは基板の前面の反射能による影響を受けるだけであるが、第2の反射ビームの強さは基板の前面および背面の反射能と基板の吸収係数にも影響される。
【0052】
前面の反射能だけが関心対象であるケースもあるが、異なるビームの光を収集することにより、ウェハの光学特性をより完全に分析することが可能である。例えば、反射光の2つのビームを収集することにより、ウェハの両面および/またはウェハの吸収係数に関する情報を導き出すことが可能である。同様の利益は図5に示されている透過光HT1,HT2等の異なる成分の分析についても得られる。さらには、ウェハの前面または背面からの入射光で別個に測定を行うことにより、さらに多くの情報が得られる、および/または、ウェハの光学特性の推定における誤差の大きさを低減することができる。
【0053】
図5に示されているように方法を実行する場合、使用される1つまたは複数の検出器は特定の波長または波長域の光ビームの強さを測定することのできる任意の適切な装置を含むものとしてよい。
【0054】
図5の構成を利用することは有利ではあるが、実施形態によっては、この構成をすべての種類の基板に対して実施することが、特に比較的薄く、屈折率が比較的大きな基板に対して実施することが困難である場合もある。このような状況では、入射光ビームが上面に当たる位置と基板の背面から反射した光ビームが上面に当たる位置との間の距離が極めて小さい場合があるため、非常に小さな入射光ビームが必要となる。しかし、レーザ光源を用いて、狭い光ビームにもかかわらず比較的強い照明が得られるようにしてもよい。
【0055】
別の実施形態では、反射ビームが部分的に重なるような場合であっても、様々な技術を用いて、ウェハの前面から反射した光の量を求め、ウェハの背面から反射した光の量から区別する。例えば、光の重なりが部分的である限り、重なり度合いは幾何学的計算から計算される。さらに、重なりの条件は入射ビームのサイズまたは形状または入射角を変えることで変化させることができるので、前面から反射した光の量を求めることが可能となる。例えば、コリメートされた光ビームHOの入射角を変えれば、反射率とウェハを通る光路長が変化する。ある特定の実施形態では、例えば、ある条件においては、基板から反射して検出された光は例えば図3に示されているようにすべての反射成分R1,R2,R3等を含む場合がある。第2の条件では、入射角を変えることにより、反射ビームの成分に重なりがなくなる場合がある。同様の技法を透過光の分析に用いてもよい。
【0056】
他の実施形態では、異なる光成分を分離するために光源を操作する代わりに、あるいはこれに加えて、異なる光成分が分離されるように光路を工夫してもよい。一旦異なる光成分が分離されれば、どの光成分でも他の光成分を排除して検出または測定することができる。例えば、ある実施形態では、基板の上面から反射した光が基板の底面から反射した光から分離される。上面から反射した光の量および/または底面から反射した光の量は基板の様々な特性を求めるために検出される。例えば、基板の上面から反射した光と底面から反射した光はそれぞれ基板の様々な特性に関する情報を提供する。
【0057】
例えば、図6には、ウェハ状の基板の上面から反射した光と底面から反射した光を区別するための代替的手法が図解されている。図示されているように、光源Sからの光線はレンズとミラーを含む光路を通って伝搬する。光線A1はSにより放射され、レンズL1により収集される。レンズL1は光線A2で表されるコリメートされたビームを形成する。A2はミラーMを通過し、光線A3として継続する。L2は光を集束させるレンズであり、ウェハの前面WFに当たる光線A4を形成する。
【0058】
光線A4の一部はWFで反射され、光線ARF1を形成する。ARF1はレンズL2により収集され、レンズL2はARF1を再コリメートして光線ARF2を形成する。光線ARF2はミラーMで反射して、光線ARF3を形成する。ARF3はレンズL3により収集され、レンズL3はARF3を集束させ、検出器02に当たる光線ARF4を形成する。
【0059】
光線A4の第2の部分はウェハの表面WFを透過し、内部光線AT1を形成する。AT1の一部はウェハの背面を透過し、透過光線AT2を形成する。AT1の第2の部分は背面WBで反射され、内部光線ATRB1を形成する。ATRB1の一部は前面で反射され、内部光線ATRBRF1を形成する。ATRBFR1は再び背面へと伝搬し、そのうちの一部はウェハの背面WBを透過し、第2の透過光線ATRBRF2を形成する。ATRBRF1の第2の部分(図示せず)もWBで反射し、上で述べたように、内部光線の無限列を形成する。光線ATRB1の一部は前面WFを透過し、第2の反射光線ATRB2を形成する。
【0060】
両方の光線ARF1およびATRB2が反射光測定システムの光学素子によって収集され、同一の検出素子に達する場合、ウェハの背面の反射能が反射率測定に影響を及ぼす。
【0061】
ATRB2はレンズL2により収集され、収束されて光線ATRB3を形成する。光線ATRB3はミラーMにより反射され、ATRB4を形成し、ATRB4はレンズL3により集束され、ATRB5として検出器D3に当たる。
【0062】
D2およびD3が別個の検出器ならば、2つの反射光線を区別することが可能である。この場合、検出器D2からの測定はウェハの前面だけからの反射を表す。検出器D3からの測定はウェハの特性の分析にも役立つ。というのも、光の強さはウェハ内での光の吸収とWFの透過能とWBからの内部反射とに影響されるからである。
【0063】
光源Sがある角度範囲にわたって光を放射するようなシステムも存在する。入射角度範囲を開口の使用により制限することも可能であるが、これでは光の強さが低減してしまうため、測定のための信号強度が失われ兼ねない。光学系を伝搬する光線の挙動を光軸に対して様々に異なる角度で分析してもよい。図7には、光源Sから放射された2つの光線が図6で考察したのと同じ光学系を通過する際の挙動が示されている。このケースでは、光線Aと光線Bは光軸に対して同じ角度で放射されているが、両者は光軸に対してそれぞれ反対側にある。これらの光線の挙動は光軸について対称である。光線ARFとBRFはウェハの前面で反射した2つの光線を表しており、これらの光線は両方とも検出器平面内の同一の点で終わっていることが見て取れる。これは光源Sの像がウェハ表面で反射した後に検出器平面内に再現されるように光学素子が選択されているためである。この例においてこのことが意味しているのは、L1の焦点距離はSとL1の間の距離に、L2の焦点距離はL2とウェハの前面の間の距離に、レンズL3の焦点距離はL3と検出器D2の間の距離に一致するように選ばれているということである。
【0064】
光源Sがウェハの前面WFでの反射を介して検出器平面に結像されるというこの条件により、光源からのエネルギーが検出器D2の位置している検出器平面の小さな領域に効率よく伝達されることが保証される。図7に示されている実施形態では、2つの光線ARFとBRFは検出器D2上の同じ点に集束している。これはこれらの光線が光源S上の同じ点から発しているからである。この光源S上の点はこの実施形態では光軸上にあるが、Sの平面内のどの点についても同じことが当てはまる。その一方で、ウェハの背面から反射した光線BTRBとATRBは検出器D2の平面に異なる位置で到達する。必要ならば、これらの光線を検出器D1とD3で検出してもよい。上で述べたように、ウェハの背面から反射した光線BTRBとATRBは基板の光学特性に関する有用な情報を提供することもできる。したがって、基板の前面から反射した光線を検出することだけが関心事である実施形態もあれば、基板の背面から反射した光線を検出することだけが関心事である実施形態もある。もちろん、また別の実施形態では、基板の前面から反射した光線と基板の背面から反射した光線がそれぞれ個別に測定されることもある。
【0065】
図8には、本発明の方法とともに使用しうる別の光路が示されている。図8に示されている光路は図7に示されている光路と同種のものである。しかし、この実施形態では、2つの光線AおよびBは光軸に対してそれぞれ異なる角度で光源Sから放射される。ウェハの前面から反射した光線ARFとBRFはまたも検出器D2上の同じ点に達する。しかし、ウェハの背面から反射した2つの光線ATRBとBTRBはそれぞれ異なる位置に達し、BTRBのみが検出器D2に着面する。このことは、一般的な事項として、ウェハの前面またはウェハの背面から反射した光線が検出器D2によって検出される信号に与える相対的なインパクトについての例証となっている。ウェハの背面WBから反射したエネルギーはウェハの前面WFから反射したエネルギーよりも検出器平面内の広いエリアにわたって分布することとなる。その結果、検出器D2からの信号に対するウェハの背面から反射したエネルギーの相対的寄与はウェハの背面から反射したエネルギーの寄与よりも小さくなる。このようになる理由は、ウェハ表面WFの像が検出器平面に形成されるように光学素子が選定されているからである。ウェハの背面WBから反射した光線は検出器平面で結像しないので、エネルギー分布はより広い。
【0066】
図9には、検出器に着面するエネルギーの密度が最適化されるように光学的条件を選ぶことによって、ウェハの背面から反射したエネルギーとウェハの前面から反射したエネルギーとを区別するこの原理が示されている。曲線Aはウェハの前面から反射した光の検出器平面内におけるパワー密度分布を示したものである。曲線Bはウェハの背面から反射した光の相応する分布を示したものである。曲線Cは背面で1回より多くの反射をした光のパワー密度分布であり、曲線Dは曲線A,BおよびCからの強度の和である。曲線Dにより表された光のうちで軸位置−XD/2と+XD/2の間に入る部分を検出器により検出されるエネルギーであると見なせば、曲線Aからの信号の寄与は曲線BまたはCからの寄与よりも格段に大きいことが分かる。
図6−8に示されているように、異なる光成分を分離するため、および/または、あるいは前面反射または背面反射からの光信号の寄与を制御するために、様々な光路を使用し調整してもよい。さらに、異なる成分の分離を促進するために、他の技法や光学素子を光路に付加してもよい。例えば、必要ならば光を遮断するために、開口や光フィルタを光路に挿入してもよい。
【0067】
例えば図10を参照すると、遮断素子70を使用した光路の1つの実施形態が示されている。この実施形態では、遮断素子70は光線Bと軸に対して比較的小さな傾斜を有する光線とを遮断するために用いられている。このようにして、検出器D2は半導体ウェハの前面WFから反射した光線のみを受光する。
【0068】
ウェハ表面での入射角の分布を制御するこのような遮断素子は、その効果がウェハの背面から反射した光線のうちでまだ関心対象たる検出器に着面しうる光線を遮断することである限り、入射ビームまたは反射ビーム内のどこか他の場所に配置してもよい。入射角の分布の制御は、測定された反射能を特定の入射角または入射角範囲に合わせることが必要な場合にも有用である。また、ある実施形態では、入射角範囲を可調整の遮断素子によって変化させて、反射光信号の測定を異なる設定で行うことも可能である。この種の測定は、例えばウェハ内での吸収の度合いを描写することにより、サンプルの光学特性の記述を助けることができる。
【0069】
本発明に従って形成される光路は図10に示されているように単一の遮断素子70を含むものとしてもよいし、その時その時の用途に応じて複数の遮断素子を含むものとしてもよい。しかし、ここで、遮断素子は図10に示されているように個別の構成要素として光路に挿入してもよいし、他の光学素子のうちの1つに組み込んでもよいことが理解されねばならない。例えば直径の制限されたレンズ、ミラー、または他の光学素子は、これらの素子が光学系を伝搬して検出器に達する光線の固有の広がりを制限することができるならば、ここで使用される遮断素子として作用することができる。
【0070】
遮断素子70は、不所望な光線を除去することのできる適切な装置であれば、どのようなものであってもよい。例えば、ある実施形態では、遮断素子は選ばれた光線のみを通す開口を含んだ装置から成っていてよい。しかし、上で述べたように、レンズ、フィルタ、ミラー、または他の光学素子を使用してもよい。
【0071】
前面WFから反射したエネルギーと背面WBから反射したエネルギーの比を制御する別の手法は、レンズの焦点距離、特にレンズL2とL3の焦点距離の最適化を必要とする。これらのレンズの焦点距離の比はSが検出器平面D2において再結像する場合に前面WFに形成されるSの中間像の倍率を制御する。レンズL2の焦点距離をレンズL3の焦点距離に比べて小さくすることにより、倍率は上げることができる。これには前面からの反射と背面からの反射を区別する能力を増大させる効果がある。図11にはこのことの要点が図解されている。この場合、光線BTRBはもはや検出器D2に当たっていないので、BRTBが検出器に着面する図8の例に比べて、背面から反射した光と区別する能力は増大している。
【0072】
ある実施形態では、図11に示されているように、焦点深度を低下させることにより異なる光成分を分離するようにしてよい。図7および8に示された実施形態では、ウェハの前面WFはレンズL2の焦点にあり、検出器はL3の焦点にある。L2の焦点深度は焦点距離と照明角度を含む複数の要因に依存している。表面WFの周りの狭い範囲の位置から主に発する光線に関してL2とL3のみが検出器平面に像を形成するように条件を設定すれば、焦点深度はウェハの表面に近い領域に制限される。ウェハの背面WBが確実に焦点深度外となるようにすることで、ウェハの前面から反射した光線と背面から反射した光線を分離するようにしてもよい。というのも、検出器に達する放射の大部分はウェハの上面から反射したものだからである。
【0073】
いくつかの実施形態では、入射ビームに比較的大きな入射角を用いてもよい。この条件はむしろ処理チャンバ内でウェハに入射する加熱放射の入射角範囲を表すものとしてもよく、この測定手法に第2の利点をもたらす。このように、加熱放射がチャンバ内のウェハにどのように当たるかは、例えばレイトレーシングソフトウェアを用いた光学的モデリングによって評価することができる。加熱放射の入射角範囲を正しく理解すれば、測定システム内で使用される照明条件を処理設備で適用される照明条件に合わせる際に役立つ。
【0074】
場合によっては、ウェハの背面に伝搬した光が収集されて、再び表面に向かって再反射されるのを防ぐために、ウェハ表面上の比較的小さな領域から反射光を収集するようにしてよい。収集される反射光の出所であるこの領域のサイズは、使用される光学素子と、検出器、開口、フィルタ、または含まれているその他の光学素子のサイズとによって決まる。分析されるエリアの最適なサイズは部分的にはサンプルの厚さに依存する。というのも、ウェハ表面の大きなエリアから光を選択する場合、サンプルが非常に薄ければ、前面反射からの光線と背面反射からの光線を分離することはより難しくなるからである。しかし、考慮すべき他の要因もある。例えば、ウェハの表面がパターン成形されていれば、収集される反射光の出所である領域の反射能は変化しうる。これは領域の平均的な特性を得たいのであれば、有利である。
【0075】
例えば、ある実施形態では、収集される反射光の出所であるウェハ表面上の領域のサイズは比較的小さくてよく、高温計のような温度測定装置の観測エリアに一致するように設計してよい。あるいは、高温計の視野を収集される反射光の出所である領域に一致させると言ってもよい。しかし、他の実施形態では、ウェハ表面上の比較的大きな領域から光を収集してよい。反射光データを比較的広いエリアから収集することは、加熱装置と基板の間のパワー結合を最適化する場合に有益である。その一方で、基板をエネルギービームで加熱する場合には、光学的に特徴付けられるエリアをエネルギービームで照射されたエリアに一致させてよい。このような手法はレーザビームからのエネルギー結合の特性解析および最適化に特に有用である。〜1μmよりも長い波長でエネルギーを放射するレーザの場合、半導体基板は半透過であることが多いので、上記の手法はこのようなレーザにも特に有用であろう。例えば、このようなレーザには、ダイオードレーザ、YAGレーザ、ファイバレーザ、COおよびCO2レーザが含まれる。
【0076】
ある特定の実施形態では、光源は基板を横断して走査するものとしてよい。そうすれば、反射光の強さに関する情報を逐次的に収集することができる。走査は光源を移動させることによって、光路を移動させることによって、および/または基板自体を移動させることによって行われる。このようにして、基板上のどの特定の位置においても情報を収集することができる。択一的に、ウェハのエリア全域にわたる平均を収集してもよい。
【0077】
ある実施形態では、焦点距離の短いレンズを得るために、顕微鏡の対物レンズを用いてもよい。レンズは光路内の任意の位置に、例えば図11に示されているようにレンズL2の位置に配置してよい。レンズL2の位置に配置した場合、顕微鏡対物レンズはウェハ表面に放射を集束させるために使用される。このようなレンズは短い焦点距離と高い開口数を有する。それゆえ、このようなレンズは、ウェハを広い入射角範囲で照明し、浅い焦点深度で光を収集する光学系を得るための便利な手法を提供することとなる。それも特に、結果的に得られるウェハ表面の倍率が比較的大きい場合(例えば、光学系が10倍よりも高い倍率、例えば50倍のような倍率を有する場合)に、上記のような光学系を得るための便利な手法を提供する。しかし、所望の領域からのみ光が収集され、収集される放射の大部分が第1の表面で反射されただけであることが保証されるならば、ウェハ表面からより離れた、より大きな光学素子を含め、他に多くの代替的手法が考えられる。測定システムの光軸もウェハ表面に対して垂直である必要はない。
【0078】
検出器平面における光の分布の分析は、この平面内で検出器を走査することにより、または、様々なサイズの検出器または可変開口もしくは走査開口を使用することにより、または、電荷結合素子(CCD)カメラのような画像検出器や検出器アレイを使用することにより可能である。検出器平面における光の空間的分布に関する情報は測定の改善に用いることができる。例えば、基板の厚さが既知であるか、または測定される場合、ウェハの前面または背面から反射した成分に関する輝度分布の形状を解釈することが可能である。検出された分布は、アルゴリズムを使用して、基板内での多重反射に由来する他の成分にではなく、前面から反射した成分に分解することができる。したがって、図9に示されているように、背面から反射した成分を全信号から数学的に減じて、ウェハの前面から反射した信号のより正確な推定値を得ることができる。
【0079】
図5−8および10−11では、ウェハの背面から反射した光ではなく、前面から反射した光の量を区別することに主に焦点が当てられていた。上で述べたように、実際には反射光線の無限列が存在する。図12には、光源Sからの単一の光線Aがどのように上で述べた光学系を通って伝搬するかが示されている。このケースでは、図には、ウェハの前面WFから反射した光線R1と、背面WBでの1回の反射から生じる光線R2と、それぞれ背面での2回、3回、および4回の反射から生じるR3,R4およびR5の経路が示されている。原理的には、この系列には無限の光線が存在するが、上で述べたように、光線の強さはエネルギー損失のためにかなり急速に低下する。光線R1,R2,R3,R4およびR5はそれぞれ検出器D2,D3,D4,D5およびD6に達する。これら各光線の強さを測定すれば、ウェハの光学特性をより良好に決定することが可能である。例えば光線R1,R2,R3,R4およびR5を測定したいのであれば、光源Sは測定に十分な強さが得られるようにレーザ光源としてよい。
【0080】
ある入射角範囲にわたって光線を放射する光源の場合、各検出素子に多数の光線が当たるため、図9に示されているBやCのような曲線の族となる。輝度分布の分析は上に述べた成分の特定に役立ち、このような手法は、広がる角度範囲を制限し、したがってまた検出器に達しうる反射光成分の族を制限することのできる開口や他の光学素子の使用と組み合わせることができる。
【0081】
反射光の分析に関連して説明した原理は基板を透過する光の分析にも適用しうる。図13には、例えば、光源Sから光路を通って伝搬する2つの光線AおよびBの1つの実施形態が示されている。この実施形態において、レンズL1とL2は前と同じようにウェハ表面WFに光源Sの像を形成するために用いられており、レンズL4とL5はWFにおける像を検出器TD2の平面に再結像させている。設計により、ウェハの背面から反射しない透過光線TAおよびTBはTD2の平面に集束することが保証されている。ATRBRFやBTRBRFのようにウェハの平面において少なくとも1回の反射を経た光線は、検出器平面の異なる位置に着面する。したがって、反射光線の場合と同様に、TD2により検出される信号への多重反射光線の寄与を低減させることが可能である。
【0082】
図14には、光学系とウェハを透過した単一の光線Aの挙動が示されている。光線Aは、図12に示されている多重反射光線に同じように、複数の透過光線を生じさせている。このような光線も必要ならば検出器アレイにより検出し、反射光の空間分布の文脈で論じたのと同様の分析方法を用いて、透過光の空間分布を分析することができる。
【0083】
ここでは光源とウェハの間に2つのレンズを使用することが示されているものの、一般原理はより多数または少数のレンズを用いた代わりとなるより広範な光路によっても実現可能であり、実際、すべてのレンズまたはレンズのうちのいくつかを、曲面ミラーのようなミラーや他の光学素子で置き換えることによっても実現可能である。入射光または反射光の偏光状態を制御する光学素子も必要ならば機器の中に入れてよい。このような光学素子には、1/4波長板、1/2波長板または全波長板のような偏光板およびリターダー、または、平面偏光、楕円または円偏光を含む所望の偏光状態の放射を発生させる他の光学素子が含まれる。
【0084】
どのような測定の構成であれ、偏光状態を生成する際および/または入射角を生成する際には、これらの要因を考慮しなければならないことに注意しなければならない。垂直入射および準垂直入射(例えば、およそ25°未満の入射角で入射する光)に関しては、これらの効果はふつう極めて小さい。非垂直入射の場合には、s平面またはp平面のいずれかで偏光した入射放射で測定を行うのが有効である場合がよくある。両条件について測定することで、基板の光学特性を完全に算出することが可能となる。楕円偏光測定法も低温下での基板の事前特性評価のような様々な時点において実行してよい。
【0085】
測定は注目するいずれの波長で行ってもよいし、モノクロメータや他の波長選択性のフィルタリング素子のような適切な分光器を取り付けて、スペクトル上で行ってもよい。積分特性の測定も、広帯域エネルギー源を使用し、検出器で反射した広帯域波長特性をもつすべての放射を収集することによって行うことができる。
【0086】
半導体ウェハへ光を放射するために使用される光源Sは任意の適切な発光素子であってよい。光源は例えば1つの波長域においてまたは特定の波長で光を放射するものとしてよい。適切な光源には、Wハロゲン電球、Xeアークランプ、放電ランプ、発光ダイオード、レーザ、または、黒体空洞やグローバーや他の熱放射素子のような熱源が含まれる。場合によっては、処理装置で使用されるエネルギー源を表すスペクトルを放射するようにランプ放射源をセットするのが有効であろう。そのための1つの方法は、対象となる放射源の特性を評価し、それを処理設備内のエネルギー源を模倣する波長フィルタリング素子と組み合わせることである。
【0087】
ある実施形態では、光源はスーパーコンティニウム光源を含むものとしてよい。スーパーコンティニウム光源はタングステンハロゲンランプやLEDのような従来の広帯域光源よりもはるかに明るいため、ウェハ光学特性の迅速な測定に関して特別な利点をいくつも有している。このことは非常に速い測定を行うのに役立つ。というのも、所定時間内に供給されるエネルギーが格段に大きいため、より高い信号レベルで反射光、透過光、または散乱光が検出されるようになるからである。また、ウェハ特性の正確な測定を妨害しかねない比較的高レベルの迷光背景放射が存在している場合にも有効である。というのも、照明が非常に明るいため、このような迷光源からの光はスーパーコンティニウム光源からの光に比べれば取るに足らない程度となるからである。このことは処理チャンバ内でウェハの光学特性または熱特性の測定を行うときに、それも特にウェハが高温であるか、または、加熱素子、ランプ、レーザもしくはプラズマによって迷光放射が放出されている場合に、特に有利である。非常に明るい放射源の場合、大量の放射が小さな放射エリアから供給されるので、コンパクトな光学素子の使用も可能となり、光ファイバや光パイプ、処理設備やチャンバ内に容易に挿入できる他の素子と結合してもよい。スーパーコンティニウム光源は比較的平坦なスペクトルを、つまり、広波長域にわたってあまり変化することのないスペクトルを発生させることもできる。これには、光源によってカバーされる波長域を拡大し、反射スペクトルや透過スペクトルのようなスペクトルの測定の解釈を容易にするという利点がある。
【0088】
スーパーコンティニウム光は非線形媒体を高出力放射に曝すことで発生する。例えば、レーザからの高出力放射パルスを水セルに印加し、放射された光のスペクトルを収集することによって発生させることができる。効率の良い手法では、フォトニック結晶ファイバまたはテーパファイバの使用を要する。
【0089】
スーパーコンティニウム光源は半導体ウェハの特性評価に有用な波長域をカバーする光のスペクトルを発生させることができる。例えば、KOHERAS社(Birkerod,Denmark)のKOHERAS SuperKTM Whiteスーパーコンティニウム光源は、460nmから2000nmの間でパワースペクトル密度>4mW/nmをもつ放射のスペクトルを発生させる。このような光源は処理チャンバ内でのウェハ透過または反射の測定にとって特に興味深い。これらの測定はウェハの温度を導くために利用することもできる。さらには、この光源を他の様々な測定に直接または波長選択性フィルタリング素子と組み合わせて使用してもよい。このような素子は、ウェハに供給される光またはウェハからの反射、散乱、透過もしくは放射の後にウェハから収集された光の波長を選択することができる。測定は上で述べたように反射と透過を含むことができるが、ウェハに達する光を変調し、ウェハ特性の熱的または電子的変調を生じさせる方法も含むものとしてよい。このような変調は検出され、ウェハに関する情報の抽出に使用することができる。
【0090】
さらに、このような光源は熱処理にも、特にウェハ上にコーティングのパターンが形成されている場合にも有効である。この場合、広帯域スペクトルを用いて加熱を行うことにより、パターン内の異なる領域によって吸収されるパワーの偏差の程度が低下し、より一様な処理が可能となる。
【0091】
熱エネルギー源を使用する場合には、熱エネルギー源の温度を実際の処理条件の下でのウェハ温度に設定するのが有効である。必要ならば、ウェハ温度にマッチするようにそれぞれの処理に応じて実際の処理条件を設定してもよい。例えば、プロセスの主要なステップが1000°Cで行われるならば、熱源をその温度にする。広帯域放射源が使用されるこれらのケースでは、サーモパイルや焦電素子のような反射した放射を検出するための広帯域検出器を使用すると好都合である。処理チャンバ内で該当する条件と測定機機内で該当する条件の違いは校正手続きによって補償することができる。処理設備がウェハの加熱にレーザを使用する場合には、同一の波長で光学測定を行うことが必要である。レーザが特定の入射角と偏光状態でウェハに入射するならば、これらの観点も測定に取り込んでよい。
【0092】
基板の前面と背面の両方で測定を行って、基板の光学特性のより完全な記述を得るようにしてもよいことを理解されたい。上で説明したように、ある実施形態では、ウェハ表面の複数の位置で測定を行ってもよい。その場合、この情報からウェハ全域にわたる放射特性の空間分布のマップが得られる。
【0093】
ウェハ表面の複数の場所で測定を行うことは、例えば温度均一性を改善することで処理の均一性を改善する場合に特に有益である。例えば、ウェハ表面上の位置による光学的または熱的特性の違いに関した情報を測定および制御システムに供給してもよい。ある実施形態では、モデルベースのコントローラがこの情報を使用して、ウェハの異なる複数の位置における加熱条件をどのように最適化すればよいかを予測する。例えば、特性の分布をモデルベースの制御システムに与え、この制御システムが、温度均一性を最適化すべく、ランプの異なるバンクに供給されるパワーの最適設定を予測するようにしてよい。また、同様の方法を用いて、加熱時にあるいは基板を1つまたは複数のレーザビームに曝す際に、パワー結合の変動を制御してもよい。
【0094】
ウェハ表面上の位置による光学特性の違いに関した情報はウェハ上の異なる位置の温度を感知する複数のセンサの示数の補正に役立つ。同様の目的で、ウェハの厚さまたはドーピングの違いに関した情報を使用してもよい。同様に、ウェハ上のコーティングまたはパターンの違いに関する情報を同じように使用してもよい。
【0095】
場合によっては、照明された表面からのみ反射光を収集する構成と、(図3に示されている場合のように)焦点深度が深く、ウェハの両面で反射した後に光が収集されるような光学的構成の少なくとも2つの構成で測定を行うことが有益である。これら2つのケースは、例えば図10に示されているような開口を使用することで、または別個の測定ステップによって、1つの光路内で焦点深度を変えることにより融通させることができる。
【0096】
ウェハの両面からの反射能測定とウェハ透過能測定とを組み合わせれば、光学特性のかなり完全な特性評価が可能となる。透過能測定または反射能測定を室温で行うことの1つの利点は、ウェハが高濃度にドープされているのか否かを判定することができることにある。これは〜1μmを超える波長での光の吸収度を求めることで確認することができる。吸収係数が例えば0.5Ωcmを上回る比抵抗をもつシリコンのような低濃度ドープ材料の場合に予測されるよりも著しく高ければ、その材料は高濃度ドープされていると見なしてよい。この情報は特に〜800°C未満の温度でのプロセス処理における温度測定精度の改善と温度制御の改善に使用することできる。
【0097】
例えば複数の温度で事前測定を行えば、低濃度ドープされたウェハを高濃度ドープされたウェハから区別したり、一般にドーピングの性質についての情報を得ることができる。複数の温度で測定を行うことはまたウェハの他の特性を求めるのにも役に立つ。例えば、異なる温度での測定を表面の反射能のセンシングと併せて行えば、表面の反射能に温度依存性があることが示される。この情報は反射率、透過率、放射率、または吸収率の温度依存性の推定精度の改善にも有用である。例えば、注目温度(T2)における表面の反射能はT1およびT3のような他の温度で得られた温度からの外挿によって得られる。複数の温度での特性評価と第3の温度への外挿という考えは基板の吸収係数の温度依存性を推定するのにも役立つ。
【0098】
これらの測定のどれも基板の光透過を変調する手法と、例えば半導体内に余分な電子正孔対を形成することにより追加の自由キャリア吸収を誘発させる照明によって基板の光透過を変調する手法と組み合わせることができる。吸収度の変調は基板の厚さ方向に伝搬する光線に敏感な反射または透過した放射成分の相応する変調により顕になる。この手法は精度の改善に有効である。また、電子照射を含めた他の形態の放射を印加することによって光透過を変調してもよい。なお、電子照射はベータ線放射器からのベータ粒子の流束を機械的に変調することにより簡単に得られる。また、ウェハ温度を意図的に変調し、測定される特性の変化を観測することによって追加の情報を得ることも可能である。
【0099】
上で述べたように、ウェハ表面はパターン成形や表面トポロジーの変化の結果として放射を散乱させる場合がある。そのような場合、反射および透過した光のビームの強度は散乱パターンに影響されることがある。散乱光の存在と散乱の度合いを明らかにする1つの方法は、ウェハのそれぞれの表面に入射する光に関して測定した透過率が同じでるか否かを調べることである。照明された表面に応じて透過率が異なるのであれば、ウェハ表面の少なくとも一方は透過率測定のための光の収集が正しく行われない方向に光を散乱させている可能性が高い。したがって、非対称な透過率が測定されるということは光が散乱していることの徴候となりうる。ウェハの光散乱パターンを明らかにすることは光学特性の予測精度の改善に役立つ。これは高温計の波長におけるスペクトル放射率の推定を改善するのに特に有用である。光散乱の効果が特に著しい場合には、スペクトル放射率の正確な推定を行うために、ウェハの双方向反射率分布関数の測定が必要となることがある。また、反射率と透過率の測定のための照明条件を制御するために積分球を用いることも有用である。
【0100】
ウェハと何らかの加熱エネルギー源との間の相互作用を記述する場合、計算の際に、エネルギー源によって放射されたエネルギーのスペクトル分布を考慮することが必要となる場合がよくある。この方面は、エネルギー源によってエネルギーの放射が行われるスペクトル領域をカバーする波長区間にわたって、注目する光学特性を波長の関数として測定することで賄われる。そうすれば、光学特性の重み付け積分を用いて積分特性を得ることができる。例えば、注目する特性が量f(λ,T)であり、エネルギー源がスペクトルIL(λ)を放射するならば、積分特性はF(T)である。ここで、
【数1】
【0101】
積分は加熱源により放射されるエネルギーの大部分を含む波長域にわたって行われる。値f(λ,T)は反射率、吸収率、透過率などであってよいが、エネルギー源へのパワー結合を求めるには、積分吸収率が特に重要である。同様の原理は全放射率のような積分放射率を求める場合にも適用しうる。この場合、重みスペクトルは注目温度に対応する黒体放射スペクトルである。例えば、全放射率εtot(T)は下式に従ってスペクトル放射率ε(λ,T)から計算することができる。
【0102】
【数2】
ここで、Wbb(λ,T)は黒体放射体の放射スペクトルを記述するプランクの放射関数である。 積分は黒体放射体が温度Tにおいて放射するエネルギーの大部分を含む波長域にわたって行われる。積分放射率の推定値はウェハが任意の温度にあるときにウェハから放射される熱度を求めるのに役立つ。積分特性を求める代替的手法では、適切なスペクトルでウェハを照明することを、したがってまた積分測定を直接行うことを要する場合もある。後者の手法は照明スペクトルと光学検出システムのスペクトル応答の注意深い調整が必要とされることもあるが、より高速で、より簡単であるという利点を有する場合もある。
【0103】
上で述べたように、ある実施形態では、基板の光学特性のより完全な記述を得るために、基板の前面と背面の両方で測定が行われる。さらに別の実施形態では、ウェハの両面が両面測定のために両方とも照明される。
【0104】
例えば、図15に示されている配置構成では、装置はウェハの2つの表面のどちらに入射する光も供給することのできる能力を備えている。放射源SWFはウェハの前面(WF)を照明する。WFから反射した光は放射を収集および感知する装置であるDRWFによって収集される。DRWFは、必要ならば、感知される放射をWFから反射した成分のみに限定する光学素子を含んでいてよい。同様に、DTWFはウェハを透過した放射を収集する放射収集感知装置である。放射源SWBはウェハの背面(WB)を照明する。WBから反射した光は放射収集感知装置であるDRWBによって収集される。DRWBは、必要ならば、感知される放射をWBから反射した成分のみに限定する光学素子を含んでいてよい。同様に、DTWBはウェハを透過した放射を収集する放射収集感知装置である。これらのサブ測定システムを組み合わせれば、ウェハ特性のより完全な特性評価のために、ウェハのいずれの面からの照明でも測定を行うことが可能となる。
【0105】
図16には、ウェハの2つの表面のどちらに入射する光も供給することのできる能力を備えた装置を有する第2の配置構成が示されている。放射源SWFはウェハの前面(WF)を照明する。SWFからの光でWFから反射したものは放射収集感知装置であるD1により収集される。D1は、必要ならば、感知される放射をWFから反射した成分のみに限定する光学素子を含んでいてよい。同様に、D2はウェハを透過した放射を収集する放射収集感知装置である。放射源SWBはウェハの背面(WB)を照明する。この配置構成では、光学素子はSWBからの光のうちWBから反射した光がD2により収集されるように構成されている。D2は、必要ならば、感知される放射をWBから反射した成分のみに限定する光学素子を含んでいてよい。同様に、D1はウェハを透過したSWBからの放射を収集することができ、その実施形態は図15で可能な測定と同じ測定を行うことができるが、この実施形態の方が使用する光学素子と検出器の数が少ないため、より安価で簡潔となる。また、ウェハ上の同じ空間的位置で測定を行うとしても、図16の図式で行った方がより簡単である。必要ならば、SWFからの放射とSWBからの放射を使用した測定を異なる時点において実行し、SWBからの放射がセンサによって感知されるのと同じ時点にSWFからの放射がセンサに達しないようにしてもよい。あるいは、少なくとも一方の信号に特定の光源からの放射から生じたものであると識別されうるような時変特性を与えるために、SWFまたはSWBの少なくとも一方からの放射出力を変調することによって測定を分離してもよい。例えば、SWFの出力を既知の周波数で強度変調し、その周波数成分の挙動を追跡するために、D1とD2からの信号をフィルタリングすることが考えられる。信号を分離する他の方法には、SWFからの光出力とSWBからの光出力とでの差異、例えば波長や偏光状態の違いなどを利用することを含むものがある。また、SWFまたはSWBからの放射の測定により適合するように、光収集感知装置D1およびD2の特性を変化させることも可能である。例えば、D1がウェハから反射したSWFからの光を収集している間は反射光の収集が最適化されるようにD1の特性を設定し、SWBから透過した光を収集するときには透過光の収集が最適化されるようにD1の特性を設定するものとしてよい。もちろん、必要ならば、これら両方の機能が同時に実行されるように特性を最適化してもよい。
【0106】
ウェハ特性の測定のために最適化される図15および16に示された光収集感知装置の特性には、レンズ、開口、ミラー、および検出器のような光学素子の位置または形状の調整または選択が含まれうる。また、フィルタリング素子や偏光素子の調整も含まれうる。また、電子フィルタやデジタルフィルタ、増幅器の設定、信号処理回路およびアルゴリズムのようなものも含まれうる。放射源SWFおよびSWBは反射光または透過光の成分の測定の最適化を補助する光学素子と電子素子を含むものとしてよく、これらの素子は必要ならば特定のウェハ特性の測定に応じて変えてよい。図15および図16に示されている構成では、ウェハに対して垂直な入射角が示されているものの、必要ならば、垂直入射または準垂直入射で測定を行ってもよい。そのような場合、入射放射の経路を完全には阻止せずに、ウェハによって反射または透過された放射を光収集感知装置がサンプリングすることができるように、ビーム分割素子を含めると好都合である。
【0107】
多くの用途にとっては、ウェハに放射を供給する光学素子、または、ウェハから反射した放射もしくはウェハを透過した放射を収集する光学素子をアクロマートとするのが有益である。このような光学素子は集束特性が波長に伴って大きく変化することがないという特徴を持っている。このため、ウェハの同一領域からの放射をサンプリングしつつ、広い波長域にわたって(逐次または同時に)測定を行うことが可能となる。アクロマートな手法を実現するには、反射光学素子を使用することが最も簡単である。
【0108】
図17には、ウェハ上の複数の位置で測定が行われる装置の一例が示されている。この例では、光はウェハの前面に入射しているが、この手法はウェハの背面に入射する光を用いた測定に容易に拡張されるか、両面測定の可能な図16および17の手法に拡張される。複数の位置での測定またはウェハ特性のマッピングでさえも他の図式によって可能である。例えば、機械的にウェハを動かして測定装置を通過させ、異なる位置で特性が評価できるようにしてもよい。あるいは、測定装置を定置ウェハに対して動かす、または測定に使用される放射ビームをウェハ表面全体にわたって走査してもよい。別の手法は、ウェハ全体またはウェハの少なくとも一部分をより広い放射ビームで照明し、反射および透過した放射ビームを分析することを含む。ビームは、ウェハ全体から、または線状の領域のようなサブ領域から反射した光を含んでいてよい。このような分析は、放射収集感知装置を放射ビームに関して走査することによって、または、放射ビームを収集感知装置に対して走査することによって行いうる。あるいは、光学系により光ビームを収集し、カメラのような撮像デバイスに供給してもよい。
【0109】
上記方法の実際の活用
表面反射能と、必要ならば、ウェハ透過能の測定値が得られれば、この情報はウェハ処理中のウェハの熱放射特性の予測に使用することができる。プロセス処理がウェハ温度T>700°Cで行われる場合には、非常に単純な手法を適用することができる。この場合、考察されるほとんどのケースにおいて、厚さが600μmを超えるシリコンウェハはすべての注目波長において不透過と見なしうる。その場合には、任意の波長における反射能とウェハ放射能をキルヒホッフの法則により関係づけることができる。
【0110】
より洗練された手法は、放射特性の推定値を改善するために、ウェハ温度に関する情報を取り入れる。例えば、高温計の示数が利用できるならば、この示数から導出された温度を特性推定値の改善に色々と使用することができる。1つの手法は、ウェハの吸収係数をモデルから予測し、この特性をウェハの光学特性の室温での測定値と組み合わせて、ウェハの高温特性のより正確な推定値を求めることである。
【0111】
高温計の示数はウェハからの放射損失のより良い推定値を求めるためにも使用しうる。損失は放射特性と温度の両方に依存する。2つの特性の推定値を組み合わせることにより、ウェハの様々な領域からの放射熱損失のより良い推定値を得ることができ、したがってまたウェハ温度制御と温度均一性もランプパワーの適切な調節により改善することができる。
【0112】
例えば、下記は図に示されている光路から収集した情報を利用するためのより詳細な方法である。上で述べたように、ある実施形態では、本開示は基板の内部透過率が0.1未満である高い温度において高温計のような放射感知装置の示数を補正する方法を対象としている。この実施形態では、本発明の光路はウェハの一方の表面から、例えばウェハの前面から反射した光を収集するために用いられる。測定はウェハが雰囲気温度のような比較的低い温度にあるときに行われる。測定はまた高温計の動作波長域と実質的に同一の波長域でも行われる。
【0113】
本開示の方法からは、ウェハの前面の反射能が求められる。反射能は高温時のウェハの反射率を導出または求めるために用いられる。特に、高温時には、温度につれて内部透過率が低下するため、反射率は実質的に前面の反射能と同じである。ウェハの放射率は反射率から求められる。例えば、放射率は一般に1−反射率に等しい。求められた放射率は高温計の示数の補正と温度制御の精度の改善に使用される。
【0114】
択一的な実施形態では、本発明の方法を基板の内部透過率が0.1を超える比較的低い温度における高温計示数の補正のために使用してもよい。この実施形態では、図に示されているような光学装置は、ウェハが比較的低い温度にあり、かつ高温計の動作波長域にある間に、ウェハの一方の表面から反射した光を収集し、その量を求めるために使用される。
【0115】
また、この実施形態では、本開示の方法を上と同じ条件を用いてウェハの反対側の表面から、例えばウェハの背面から、反射した光を収集するために使用してもよい。この情報から、ウェハの前面の反射能とウェハの背面の反射能が求められる。ウェハの透過率は測定してもよいし、モデルまたは高温時のウェハの他の測定値から求めてもよい。
【0116】
透過率が求められれば、ウェハの放射率を求めることができる。例えば、放射率は一般に1−透過率−反射率に等しい。この放射率は高温計の示数の補正と温度制御の精度の改善に使用することができる。
【0117】
温度測定を改善することに加えて、本開示の方法はパワー吸収を最適化するために加熱装置を制御する際にも使用することができる。例えば、ウェハの内部透過率が0.1未満である比較的高い温度では、本開示の方法はウェハの前面のような一方の表面から反射した光を収集し、その量を求めるために使用することができる。これらの測定は低い温度で、例えば雰囲気温度または雰囲気温度近傍で、完了させてもよい。しかし、この実施形態では、測定の行われる波長域は処理中にウェハの加熱に使用される加熱装置の波長域と実質的に重なっていなければならない。
【0118】
ウェハの一方の表面の反射能が求められてしまえば、反射能は高温時の反射率を求めるために使用される。上で述べたように、高温時には、内部透過率の低下のため、反射率は実質的に反射能に等しい。
【0119】
反射率は一般に高温時の放射率に等しい吸収率を求めるために使用することができる。具体的には、吸収率は1−反射率に等しい。吸収率はパワー吸収の最適化および/またはチャンバ内に収容された1つもしくは複数の加熱装置のエネルギー設定の最適化に使用することができる。
【0120】
上記方法は、図1に示されているように、ウェハ14が加熱装置22によってウェハの一方の側から加熱されるようなシステムに特に適している。しかし、ウェハの両側が別個の加熱装置で加熱される場合には、上記方法をウェハの反対側表面に対して繰り返してよい。このようにして、ウェハの上部を加熱する第1の加熱装置はウェハの底部を加熱する第2の加熱装置とは独立に制御される。
【0121】
本開示の方法は基板の内部透過率が0.1を超えるような比較的低い温度のときの加熱装置の設定を最適化するためにも使用することができるこの実施形態では、光学装置は、雰囲気温度または雰囲気温度近傍で、かつウェハを加熱する加熱装置の波長域と実質的に重なる波長域においてウェハの一方の表面から反射した光を収集するために用いられる。その後、同じ測定算出が同様の条件でウェハの反対側表面において実行される。
【0122】
この情報から、ウェハの前面の反射能とウェハの背面の反射能が求められる。基板の透過率は測定または高温時のウェハのモデルから導出される。透過率が求められてしまえば、吸収率は実質的に放射率に等しいと仮定して推定してよい。したがって、ウェハの一方の面に基づけば、吸収率は1−透過率−反射率に等しい。吸収率はそのあと加熱装置上のパワー出力および/またはウェハ処理中の加熱装置のエネルギー設定を最適化するために使用される。
【0123】
再び、第1の加熱装置がウェハの一方の側を加熱し、第2の加熱装置がウェハの反対側を加熱する場合には、上記方法をウェハの反対側表面に対して繰り返し、両方の加熱装置が互いに独立して最適化されるようにしてよい。
【0124】
上記実施形態に加えて、本開示の方法により得られた情報は熱処理チャンバ内における他の様々なパラメータの制御にも使用することができる。
【0125】
上に述べた基板の光学特性は図10に示されているような熱処理チャンバ10内で求めてもよいが、ある実施形態では、光学特性は任意のプラットフォーム、ロボットアームまたは別個のチャンバといった異なる場所で求められるものとしてもよい。さらに、上記測定は処理の直前またはウェハ処理自体とは異なる時点において行われてもよい。例えば、図2を参照すると、ウェハ処理システム全体が示されている。この実施形態では、複数のウェハが熱処理チャンバ10と本発明にしたがって形成されたウェハ光学処理チャンバ200の近傍に配置されたカートリッジ100に積み重ねられる。ウェハを1つの箇所から別の箇所へ移動させるために、システムはさらにウェハ運搬装置110を有している。
【0126】
処理中、上で述べた方法にしたがってウェハの少なくとも1つの光学特性を求めるために、カートリッジ100内にあるウェハをウェハ光学処理チャンバ200へ移動させてよい。ウェハ特性が求められてしまえば、ウェハはウェハ運搬装置110を用いて再び熱処理チャンバ10に輸送される。その後、ウェハ光学処理チャンバ200内で求められたウェハの光学特性を、熱処理チャンバ10内の少なくとも1つのプロセス変数またはシステム構成要素を制御するために使用してもよい。例えば、この情報を加熱装置の電力制御器を制御するために用いてもよいし、処理中のウェハの温度を求めるために使用される高温計の校正あるいは制御に用いてもよい。
【0127】
図1に戻ると、熱処理システム10はさらにシステム制御器50を有するものとしてよい。なお、システム制御器は50は例えばマイクロプロセッサとしてよい。制御器50は様々な場所でサンプリングされた放射量を表す光検出器30からの電圧信号を受信するように構成されているものとしてよい。制御器50は、光検出器30により感知された放射の量とウェハ光学処理チャンバ200内で求められた光学特性とに基づいて、ウェハ14の温度を計算するように構成されていてもよい。
【0128】
図1に示されているようなシステム制御器50は加熱装置電力制御器25と通信するものとしてもよい。再び、チャンバの外で求められるウェハの光学特性に基づいて、制御器50は、加熱装置により放射され、ウェハ14により吸収される熱エネルギーの吸収を最適化するために、加熱装置への電力を選択的に増大または減少させることができる。しかし、電力制御器25は、放射強度の制御に加えて加熱装置22を別の仕方で制御するためにも、システム制御器50と合同で使用されうることを理解しなければならない。例えば、ウェハ表面の異なる部分が異なる放射量に曝されるように、システム制御器50はランプ24により放出される放射の量を変化させるよう構成されていてもよい。また、放射がウェハ14に接する角度である入射角と放射の波長を本発明にしたがって選択的に制御してもよい。
【0129】
本開示による特定の様々な方法をより詳細に論じる前に、先ずは、ウェハの前面または背面にコーティングが施されている場合でも光がどのようにウェハ内を伝わるか、また、光の強度がこの移動経路に基づいてどのように変化するかを論じることが役に立つだろう。
【0130】
例えば、図18を参照すると、基板またはウェハ14には前面コーティング80と背面コーティング82が施されている。図示によれば、あるパワーを有する入射光84がウェハ14の前面コーティング80に接触している。
【0131】
図18に示されているような一般的なウェハ14は様々な特性を有しているので、本開示による方法を実践する際には、これらの特性を考慮しなければならない。例えば、ウェハの2つの表面がそれぞれ異なる反射能と透過能を有していることもある。さらには、表面の反射能はウェハの外部から入射する放射とウェハの内部から入射する放射とでは異なっている場合もある。表面領域はこれらの反射能と透過能に影響を及ぼす様々なフィルムやパターンを含んでいるかもしれない。これらの表面領域(ウェハの前面および背面の両方における)はウェハのバルクを形成する基板材料をカバーしている。ウェハが半透過の場合、ウェハ内を伝搬する様々なエネルギービームの多重反射がウェハの前面反射率R*WFとウェハの外から観察した透過率S*とに影響を及ぼす。これら光学特性のすべては波長λと温度Tの関数としてよい。
以下の考察では、Ttはウェハの上面の透過能であり、Tbはウェハの底面の透過能であり、Rtvは基板の外からウェハに入射する放射に対するウェハの上面の反射能であり、Rtsは基板内からウェハに入射する放射に対するウェハの上面の反射能であり、Rbsは基板内からウェハに入射する放射に対するウェハの底面の反射能である。一般に、入射放射が垂直入射でない場合、すべての特性は入射角と放射の偏光面の関数となる。
【0132】
一般に、ウェハのバルクの材料は放射波長λと温度Tの関数である吸収係数α(λ,T)を有している。基板内を通る光線が被る強度の減衰は下記の値により表される。
【0133】
【数3】
ここで、dは基板の厚さであり、θiは内部伝搬角である。なお、内部伝搬角は光線の方向とウェハ表面の法線との間の角度である。ここで用いられているように、値"a"は内部透過率を指している。
【0134】
図19において、反射光線R1の強度はウェハの前面(WF)の反射能Rtvの影響しか受けないため、入射光線の強度がIならば、光線R1の強度はRtvIである。基板内へと透過した光線は、前面領域を通過してウェハのバルクに入るちょうどその点で、強度TtIを有する。光線A1は、基板を横断するにつれて、エネルギー吸収のために強度を失う。その結果、光線A1は背面領域(WB)に達するちょうどその点で強度TtIを有する。光線A1のうち、背面で反射して内部光線A2を形成する部分は強度aTtRbsIを有し、透過して光線T1を形成する光は強度aTtTbIを有する。反射光線A2は前面に達するときには基板での吸収の結果としてさらに強度を失っており、今や強度はa2TtRbsIである。光線A2のうち、前面で反射して光線A3を形成する部分が初め強度a2RbsRtsIを有するのに対し、前面を透過して光線R2を形成する部分は強度a2Tt2RbsIを有する。光線A3は背面に達するときには強度a3TtRbsRtsIを有する。A3のうち、反射して光線A4を形成する部分が初め強度a3TtRbs2RtsIを有するのに対し、背面を透過して光線T2を形成する部分は強度a3TtRbsRtsTbIを有する。光線A4は前面に達するときには強度a4TtRbs2RtsIを有する。光線A4のうち、前面で反射して光線A5を形成する部分が強度a4TtRbs2Rts2Iを有するのに対し、前面を透過して光線R3を形成する部分は強度a4Tt2Rbs2RtsIを有する。これ以降、さらに多くの多重反射が生じ、基板から現れる相次ぐ透過光線または反射光線の各々は先行する光線に比べてさらに減衰するということは容易に理解される。減衰は基板内での2回の移動と上面および底面からの反射の結果として生じるので、各光線は先行する光線に比べて強度がa2RtsRbs倍だけ低下する。
【0135】
ウェハが透過させる全強度は下記の形の数列をなす成分T1,T2等をすべて加算することにより得られる。
【0136】
【数4】
これは次の表現に単純化することができる。
【0137】
【数5】
同様に、ウェハから反射する全強度は下記の形の数列をなす成分R1,R2,R3等をすべて加算することにより得られる。
【0138】
【数6】
これは次の式に単純化することができる。
【0139】
【数7】
式(3)および(5)はより単純な式に還元しうる幾何級数を含んでいる。全透過エネルギーと入射強度Iとの比をとれば、ウェハの透過率は次式のように得られる。
【0140】
【数8】
同様に、ウェハの前面に関する反射率は下式により得られる。
【0141】
【数9】
【0142】
一般に、透過率と反射率も入射角と考察している偏光面とに依存する。この問題は直交する2つの偏光面であるp偏光状態とs偏光状態を別個に考察することにより対処される。それぞれのケースについて、適切な反射能と透過能を用いて、対応する反射率と透過率が求められる。ウェハ前面の放射率SWFまたは吸収率AWFは、任意の波長、入射角、および偏光状態について、下式から得られる。
【0143】
【数10】
式6,7および8を組み合わせれば、次の式を導くことができる。
【0144】
【数11】
表面の反射能、透過能、吸収係数、および基板の厚さに関する適切なデータ集合が与えられれば、この式を用いてウェハ前面の放射率または吸収率を計算することができる。
特定の光線からの選択的エネルギー収集による特定の特性の算出
従来の測定はウェハによる透過または反射の全強度に寄与する反射光または透過光の様々な光線を区別しない。その結果、ウェハ特性の評価に役立ちうる情報が失われてしまう。R*WFを測定する場合に必要となるように、量Rtvは、例えば光線R1の強度を選択的に測定することにより、a,Tt,RbsまたはRtsを知らなくても直接導き出すことができる。同様に、S*を測定する場合に必要となるように、量aTtTbは、光線T1の強度を選択的に測定することにより、RbsまたはRtsを知らなくても求めることができる。
【0145】
さらに、他の光線の強度を選択的に測定すれば、さらに多くの情報を得ることができる。例えば、内部透過率aが求められていれば、式1を用いて吸収係数を導き出すことができる。吸収係数は式1を次のように変形することにより計算される。
【0146】
【数12】
垂直入射の場合、この式はθi=0のケースに単純化される。したがって
【数13】
【0147】
放射が垂直入射で入射する場合、角度θiはスネルの法則から得られる。実際的には、ほとんどの半導体材料の屈折率はかなり高い(>3)ので、
と仮定すれば、吸収係数として得られる値の誤差は通常は7%未満となり、ウェハに当たる放射の入射角が<30°ならば、誤差は一般に2%未満となる。
【0148】
光線R2の強度を選択的に測定すれば、量a2Tt2Rbsが得られる。これは特に有用である。というのも、量a2Tt2Rbsは内部透過率に依存しているため、反射光の成分の測定値を用いて基板内での光吸収の規模を導き出すことができるからである。通常、基板内での光吸収は透過率測定を行うことで求められるが、幾何学的、機械的、または別種の制約条件のため、透過率測定を行うことが難しい状況も存在する。そのような場合には、反射の測定を利用してこの目標を達成することが有効である。R*WFも内部透過率に影響されるが、直接R*WFの測定を利用して内部透過率を導き出すことは困難である。例えば、光線R1の強度が光線R2の強度よりも著しく大きければ、R*WFの測定は内部透過率に依存しない第1の表面反射Rtvによって左右される。その結果、光線R2,R3等の反射率への寄与を非常に正確に求めることは困難となる。このため、R*WFの測定に基づいた内部透過率の算出はより誤差を受けやすい。これとは対照的に、光線R2の強度は内部透過率の大きさに直接影響されるので、その測定からは、より精確な推定値が得られる。
【0149】
反射成分R2はウェハの上面の透過能Ttと背面の反射能Rbsにも影響を受ける。したがって、R2の強度を測定することで、上記特性を求めてもよい。反射率R*WFは、光線R2,R3等の寄与の結果、上記特性にも反応する。しかし、反射率R*WFはRtvとRtsにも影響されるので、R*WFの測定を利用してTtまたはRbsを導き出すことはより困難である。
【0150】
他のいずれかの光線の個々の寄与を選択的に測定することも様々な状況において有用である。例えば、光線T2は量a,Tt,Tb,RbsおよびRtsに反応する。この光線の強度を測定すれば、透過の測定から、基板内から入射する放射に対する前面の反射能Rtsに関する情報を得ることができる。光線の強度比も有用である。例えば、光線T2のT1に対する比またはR3のR2に対する比からは、量a2RtsRbsが得られる。
ウェハの背面と前面の別個の測定
ウェハのより完全な特性評価のためには、互いに逆側からウェハに入射する光について、反射および/または透過光成分の測定を別個に行うようにすると有益である。例えば、光線A0は図19に示されているようにWFと記された側から入射してもよいし、WBの側から入射してもよい。
【0151】
光線A0が同じ角度と同じ偏光状態で入射するならば、透過光成分T1,T2等は両方の図式で同じでなければならない。このことは式2の級数の項を調べてみれば明白である。というのも、各項(それぞれ透過光線の強度に相当する)は下付き文字tを下付き文字bに変えても不変だからである。
【0152】
下付き文字の交換は照明される表面をWFからWBへ変えることと数学的に等価である。透過光測定が2つの照明条件に関して一貫していることを利用して、測定装置が正しく機能していかをチェックすることもできる。しかし、いずれのウェハ表面であっても光の散乱を生じさせる何らかのフィーチャを有していれば、反射光線または透過光線のパターンがより複雑となり、強度測定が照明される側に対して敏感になる場合がある。これはウェハのバルクが光を散乱させる場合でも同じである。
【0153】
透過光成分はどちらの表面が照明されるかには関係なく等しくなければならないが、同じことは反射光成分については成り立たない。そのため、表面WBの照明はウェハの光学特性に関して新しい情報を提供する。ウェハの前面が照明されるときのウェハの反射率R*WFは背面が照明されるときの反射率R*WBと必ずしも等しくない。R*WFは式7で与えられるが、R*WBは次の式で与えられる。
【0154】
【数14】
ここで、Rbvはウェハの外からウェハに入射する放射に対する背面の反射能である。
同様に、R1WF,R2WF,R3WF等と名付けられた前面照明の様々な反射光線は、R1WB,R2WB,R3WB等と名付けられた背面照明の対応する光線と必ずしも一致しない。この非対称性の起源は式4の級数の項を調べると明らかになる。というのも、各項(それぞれ反射光線の強度に相当する)は下付き文字tを下付き文字bに変えても不変だからである。この非対称性のおかげで、背面照明での測定から、ウェハの光学特性に関する追加情報を得ることが可能になる。特に、第1の反射光線R1WBがウェハの外から入射する放射に対する背面の反射能Rbvの測定値をもたらすことが分かる。さらに、第2の反射光線R2WBの強度の測定値からは量a2Tb2Rtsの測定値が得られる。
【0155】
この考察から、ウェハの前面と背面から照明する場合に反射光成分および/または透過光成分の測定を行えば、ウェハの光学特性に関する有用な情報が多数得られることは明らかである。また、光学特性に関する情報はウェハの片面または両面の吸収率もしくは放射率の測定から得ることも可能であることに注意されたい。これらの量は一般にウェハの両面で等しい。ウェハの前面の放射率εWFと吸収率AWFが式8あるいは式8から導かれる式9から求められるのに対して、ウェハの背面の放射率εWBと吸収率AWBは次の式で与えられる。
【0156】
【数15】
この式からは次の式が導かれる。
【0157】
【数16】
これらの量の直接の測定は特殊な計測を要するものの、可能である。例えば、任意の波長での放射率はウェハから熱的に放射される放射を測定することで導き出すことができる。ウェハからの熱放射の強度をウェハの温度と等しい温度において黒体放射体から放射される熱放射の強度と比較すれば、放射率の導出は可能である。このような測定をεWFとεWBの測定に利用してもよい。任意の波長における吸収率は、ウェハをその波長における既知の放射強度で照明し、ウェハの温度が時間とともにどのように変化するかを観察することにより測定することができる。ウェハ温度の上昇は注目する波長におけるウェハの吸収率に関係している可能性がある。このような測定をAWFとAWBの測定に利用してもよい。
【0158】
ウェハ特性に関する情報を測定から得る
本開示において説明される測定は、処理されるウェハのタイプの特定を含む様々な目的で利用することができる。例えば、最適処理アプローチでは、基板材料、ドーピング、ウェハの厚さ、所与の波長域における反射率および透過率に関する情報が必要となる場合がありうる。このような情報はスペクトル放射率もしくは吸収率または全放射率もしくは吸収率の温度依存性の予測に利用することができる。この情報はさらに熱処理の均一性と繰り返し精度の改善に利用することができ、また、最大の時間効率が、したがって最高のウェハスループットが得られるように、加熱処理の制御を最適化するためにも利用することができる。処理されているウェハのタイプに関する情報は別個に処理設備に供給してもよいが、時としてこれが不都合であったり、情報が利用できないこともある。この場合、所望の特性を、処理の直前または処理の初期段階に入ってしまっていても、原位置測定することが望ましい。
【0159】
例えば、吸収係数α(λ,T)に関連性を有する内部透過率の推定値が得られれば、処理中されているウェハのタイプを知ることができる。これは基板の吸収スペクトルが基板の材料特性に影響を受けるからであり、基板の吸収スペクトルはα(λ,T)の波長依存性によって説明されるからである。原則として、処理されているウェハのタイプはこのウェハの吸収スペクトルの測定を通して識別される。例えば、基板を形成する材料は、測定された吸収スペクトルを様々な材料の吸収スペクトルデータと比較することによって識別することができる。例えば、処理されているウェハが低濃度ドープされたシリコンで、比抵抗が1Ωcmよりも高ければ、吸収スペクトルは波長が0.8μmから1.2μmへと増大するにつれて大幅な吸収の低下を示す。ただし、波長が0.8μmのとき、室温におけるα(λ,T)は〜850cm-1であり、波長が1.2μmのとき、室温でのα(λ,T)は〜0.02cm-1である。
【0160】
この急峻な特徴はよく吸収エッジと呼ばれ、そのスペクトル位置は材料のバンド構造における最小エネルギーギャップの大きさに関連している。このような独特の特徴を吸収スペクトル中に識別することで、シリコン製ウェハ基板の識別が容易になる。
【0161】
これに対して、ウェハがゲルマニウムでできている場合には、吸収エッジ特徴は1.8μm付近の波長域に現れる。同様の手法は、GaAs,InP,InSb,GaSb,GaN,InN,SiCおよびダイアモンドのような他の材料の区別にも使用することができる。それはこれらの材料の吸収スペクトルも吸収エッジを示すからである。また、同様の手法は、シリコン・ゲルマニウム合金やGaAsとInPからなる四元合金のような半導体合金の識別にも使用することができる。吸収スペクトルの分析は、これらの合金の組成を、例えばSi含有量とGe含有量の比を求めるためにさえ使用することができる。ほとんどの材料は吸収スペクトル中に独特の特徴を示すので、原則的に、α(λ,T)の分析は種々の絶縁体と金属の区別、ならびに、半導体の区別にも使用することができる。
【0162】
例えば、多くの材料は電子がエネルギー準位間を遷移する結果として上昇する吸収特徴を示す。このような特徴は一般に電磁スペクトルの紫外(UV)部分、可視部分、近赤外部分の波長に現れる。また、多くの材料は原子種の平均位置周りの振動に関連した吸収特徴も示す。このような特徴は一般に赤外波長に現れる。処理されている材料を識別するために、測定された吸収スペクトルを、吸収エッジのスペクトル位置、電子遷移、および振動性吸収特徴に関する参照情報と比較してもよい。反射光強度と透過光強度は吸収現象の影響を受けるため、どちらか一方を測定すれば、吸収スペクトルに関する情報を導き出すことができるということを理解することは重要である。さらに、不透過表面の場合であれば、反射スペクトルの分析によっても同様の情報が得られる。
【0163】
吸収スペクトルはウェハのドープ状態の判定にも利用することができる。例えば、電気活性ドーパントが存在すれば、自由キャリア吸収の現象が生じる。自由キャリア吸収は電磁放射と半導体格子内を移動できる電荷キャリアとの相互作用から生じる。吸収の強さは自由キャリア濃度に依存する。半導体において、自由キャリアはドーピングの種類に応じて電子または正孔であってよい。n型半導体では、主な電荷キャリアが電子であるのに対し、p型半導体では、主な電荷キャリアは正孔である。自由キャリア吸収の波長および温度に対する依存性は理論的または経験的モデルから推定することができる。また、このようなモデルに、高濃度ドープされた半導体におけるバンドギャップの狭窄やバンド間遷移に関連した吸収のような、吸収スペクトルに対するドーピングの他の効果を含ませてもよい。吸収スペクトルに関する情報を収集し、スペクトルをモデルで分析することにより、キャリア(電子または正孔)のタイプと濃度を求めることが可能である。この情報はその後、半導体製造段階における挙動の予測に使用することができる。
【0164】
光学特性の測定からは、基板に関する情報だけでなく、ウェハ上の表面コーティングとパターンに関する情報も得られる。ウェハの前面と背面は両方ともコーティングされていてよい。これらのコーティングは複数のフィルムを積み重ねたものとしてよい。これらのコーティングは様々なデバイスフィーチャを形成するために横方向にパターン付けされていてもよく、また、トレンチ状のフィーチャや他の非プレーナ構造が存在していもよい。一般に、デバイスフィーチャは上ではWFと呼んだウェハ前面にある。本開示に記載された光学特性はウェハ表面の近傍にあるフィーチャやレイヤーの特性評価に役立つ。この特性評価から得られた情報はその後、半導体製造段階におけるプロセス制御の改善に使用することができる。ここで、前面反射と背面反射を区別する能力があると、ウェハのどちらの面のフィルムや構造の特性をより十全に理解するにも便利である。ウェハの2つの表面の光学特性は、以下に論じるように、反射光の測定値と透過光の測定値の両方に影響を受ける。
【0165】
様々な反射光測定値と透過光測定値を比較すれば、任意の波長においてどちらか一方の面のフィルムが透過なのか不透過なのかを識別するにも、基板が透過なのか不透過なのかを識別するにも役立つ。例えば、ウェハが金属層でコーティングされている場合にそうであるように、ウェハ表面上のフィルムが不透過ならば、すなわち、Tt=0ならば、前面反射率R*WF=R1WFと高次反射R2WF,R3WF等はすべてゼロである。この場合、透過率S*とすべての透過光成分T1,T2等の両方もまたゼロである。しかしながら、基板が不透過でない、すなわち、a≠0であり、背面の層も不透過でない、すなわち、Tb≠0ならば、背面反射率R*WB≠R1WBかつR1WB≠0である。
【0166】
したがって、前面照明と背面照明とで反射光成分を比較すれば、ウェハの一方の表面のフィルムが不透過であるか否かを識別するのに役立つ。一方の表面に関しては反射率が表面反射能に等しく、他方の表面に関してはこれが成り立たないことが分かれば、前者の表面は不透過フィルムを含んでいる可能性が高い。背面反射能RBS=0ならば、2次反射が存在しないので、前面反射率も前面反射能に等しいが、この場合、前面が完全反射体でもないかぎり、透過率はゼロにはならない。しかし、このような状況が実際に起こる可能性は低い。同様に、この手法はウェハの前面または背面のフィルムが不透過であることを調べるためにも適用しうる。他の測定された量を同じ目的で分析してもよい。例えば、透過率S*または第1の透過光成分T1はゼロであるが、背面反射率R*WB≠R1WBかたR1WB≠0ならば、前面は不透過であると結論してよい。
【0167】
ウェハ基板が不透過ならば、a=0かつウェハの各表面の反射率はその反射能に等しい、すなわち、R*WF=RtvかつR*WB=Rbv。さらに、反射光成分R2WF,R3WF等およびR2WB,R3WB等はゼロである。さらに、透過率S*=0であり、すべての透過光成分T1,T2等もすべてゼロである。したがって、これらの反射もしくは透過エネルギー成分の分析は、基板材料が所与の波長において不透過であるか否かを導くために利用することができる。しかし、同じ条件(すなわち、R*WF=Rtv,R*WB=Rbv,S*=0,T1=0,T2=0等)は、たとえ基板自体が透過であっても、すなわち、a≠0であっても、両表面のフィルムが不透過ならば、すなわち、Tt=0かつTb=0ならば起こりうるということに注意しなければならない。
【0168】
ウェハ表面が吸収フィルムを有しているか否かを調べるために利用しうる別のテストは、基板内から入射する放射に対する反射能と基板の外から入射する放射に対する反射能とが同じであるか否かをテストすることであり、例えば、Rtv≠Rtsならば、ウェハの上面は吸収フィルムを有している。さらに、Rtv≠(1−Tt)の場合も、上面は吸収フィルムを有している。同様の規則はウェハ背面の特性評価にも適用することができる。
【0169】
上面フィルムと底面フィルムがすべて透過であり、ウェハも透過ならば、ウェハのどちら側から入射する光についても反射率が等しくなる特別のケースが生じる。この場合、
【数17】
それゆえ、ウェハとそのすべてのコーティングが非吸収性であるか否かを簡単にテストするには、R*WF=R*WBであるかどうかを調べればよい。
【0170】
このような診断テストを行う波長域を選択すれば、ウェハ特性の種々の側面を調べることができる。例えば、1.55μmのような赤外領域における波長域を選択すれば、ウェハが例えば1cm-1を超えるはっきり認められるほどの吸収係数を示すことが検出された場合、ウェハは高濃度ドープされている、例えば、0.1Ωcm未満の比抵抗を有するとして間違いない。適切な吸収レベルを確定するための正確な基準は波長に依存しており、光吸収に対するドーピングの効果のモデルから求めることができる。どのようなテストの場合でも、表面反射能の異常な組み合わせや他の何らかの条件が誤った結果を生じさせる可能性を低くするには、複数の波長で測定を行う方がよい。また、テストは、必要ならば、1つの波長域にわたって光を供給する広帯域光源を使用して行ってもよい。
基板の吸収係数の算出
α(λ,T)の値を求めるには、通常は式1により与えられる内分透過率を求める必要がある。内部透過率は図19に示されているいずれかの反射もしくは透過光成分の測定により、または表面WBを照明する場合の測定から得られた同様の成分から得られる。しかし、一般には、ウェハの他の特性を知ることも必要である。例えば、式7を変形すれば、"a"は下式で与えられる。
【0171】
【数18】
したがって、aの値を得るには、R*WF、Rtv、Rts、TtおよびRbsの値が既知でなければならない。これらの量は他の測定または計算から既知であるかも知れないが、一般には未知である。本開示で説明される方法はaの推定値の改善に役立つ。というのも、第1の表面反射Rtvの値は反射光成分R1の測定により求めることができるからである。反射率R*WFも従来の手段で求めることができる。実際上重要な多くのケースにおいて、本開示の方法はさらに、内部透過率の正確な算出を含めた、したがってまた吸収係数α(λ,T)の正確な算出を含めた、注目する光学特性の完全な特性評価を提供することができる。
【0172】
内部透過率は透過光測定からも得ることができる。式6を変形すると、以下の式が得られる。
【0173】
【数19】
ここでは、aの値を得るためには、S*、Tt、Rts、TbおよびRbsが既知でなければならない。ここでも、これらの量は他の測定または計算から既知であるかも知れないが、一般には未知である。内部透過率の値は反射放射または透過放射の特性の成分の測定から導くこともできる。例えば、上に示したように、光線T1はaTtTbIで与えられる強度IT1を有している。したがって、内部透過率は次の式から導かれる。
【0174】
【数20】
内部透過率はa2Tt2RbsIの強度を有する光線R2の強度IR2の測定から得ることができる。したがって、内部透過率は次の式から導かれる。
【0175】
【数21】
内部透過率は連続して生じる反射光線または透過光線の強度の比を測定することによっても得ることができる。なぜならば、基板から連続して生じる透過光線または反射光線はそれぞれ先行する光線に比べて減衰するからである。減衰は基板内での2回の移動と上面および底面からの反射の結果として生じるので、各光線は先行する光線に比べて強度がa2RtsRbs倍だけ低下する。したがって、光線R3の強度がIR3ならば、IR3のIR2に対する比KはK=IR3/IR2=a2RtsRbsで与えられ、下式から導かれる。
【0176】
【数22】
同様の手法はT1やT2等の連続する透過光線の比についても使用することができる。
表面コーティングが放射を吸収しない場合
ウェハの上面および底面のいずれも吸収フィルムを含んでいないケースは特に重要である。この状況では、Tt=1−Rtv、Tb=1−Rbv、Rtv=Rts、Rbv=Rbsである。このため、反射率と透過率に関する式を、それぞれR1WFとR1WBから得られる第1の表面反射能RtvとRbvを含めた本開示の方法を用いて測定できる量で書き直すことができる。式は次のようになる。
【0177】
【数23】
同様に、背面から入射する光に対するウェハの反射率は次の式で得られる。
【0178】
【数24】
透過率は次の式で得られる。
【0179】
【数25】
これらの式22,22または23はいずれも測定された量から内部透過率を導き出すために使用することができるので、基板の吸収係数α(λ,T)を求めるためにも使用することができる。例えば、21を変形することにより、次の式が得られる。
【0180】
【数26】
本開示に示されている方法は式24の右辺のすべての量を導くために使用することができるので、内部透過率を正確に算出するためにも使用することができる。反射率R*WFは従来の手段で求めることができ、反射能Rtvと反射能Rbvは本開示に示されている方法で求めることができる。例えば、ウェハの前面を照明し、ウェハの前面で1回反射した光だけを収集することで、反射能Rtvは導かれる。そして、ウェハの背面を照明し、ウェハの背面で1回反射した光だけを収集することで、反射能Rbvは導かれる。R*WF、RtvおよびRbvを測定してしまえば、内部透過率は式24から計算できる。内部透過率は式22の使用と併せて背面反射率R*WBを測定する同様の手法からも導くことができる。さらに、内部透過率は透過率S*の測定からも導くことができる。後者の場合、内部透過率は式23を変形して得られる次の式から得られる。
【0181】
【数27】
ここでも、透過率S*が得られれ、反射能RtvとRbvも得られてしまえば、式25を用いて内部透過率を導くことができる。同様に、内部透過率は式18を変形して得られる次の式を用いて透過光線T1の測定から求めることもできる。
【0182】
【数28】
また、内部透過率は式19を変形して得られる次の式を用いて反射光線R2の強度の測定から求めることもできる。
【0183】
【数29】
内部透過率は、連続する反射光線または透過光線の強度の比を測定し、式20を変形して得られる次の式を用いることでも求めることができる。
【0184】
【数30】
【0185】
要約すると、ウェハの前面と背面の両方のフィルムに吸収性がない場合には、本開示の方法により、基板材料の吸収係数の正確な算出が可能である。一方、フィルムが吸収性を有する場合、十分に正確な吸収係数の算出には、さらなる測定またはモデリングが必要となる。しかし、表面フィルムが吸収性を持たないケースは実用上重要である。というのも、この条件は、デバイス製造シーケンスの初期に行われる酸化または堆積プロセスのような重要な実際上のアプリケーションや、イオン注入ダメージアニーリングのような半導体ウェハ上での焼きなましプロセスにおいても生じるからである。このようなプロセスでは、表面フィルムは比較的に透過性のある場合が多く、少なくとも赤外波長に対しては透過性がある。さらに、ウェハ上にパターン付けされたフィルムが存在する多くのケースにおいて、たとえこれらのフィルム自体が吸収性を有していても、パターン付けとは吸収フィルムが部分的にしかウェハの表面を覆っていないことを意味するのであるから、入射放射のかなりの部分が基板内へと透過することが可能である。ここで、非吸収性フィルムについての分析は、たとえ表面フィルムがある程度の吸収を示す場合であっても、内部透過率aがウェハの前面または背面の透過能TtおよびTbに比べて著しく小さいならば、十分に正確であることを理解しなければならない。この手法の成功は任意の表面層における吸収の強さおよび/または表面の被覆度に依存しうる。したがって、この手法は、金属、ケイ素化合物、または高濃度ドープされた半導体領域のような吸収フィルムが存在している場合でも、これらのフィーチャによって生じる吸収度が、基板内を反対側表面に向かって放射が伝搬することによって生じる吸収度に比べて小さいならば、使用することができる。一般に、ウェハは背面には吸収性材料の薄層を有していないため、多くの場合、背面は吸収性を持たないと仮定するのが妥当である。
【0186】
図20には、スラブ材料の波長λにおける光学特性の温度依存性の一例が示されている。この例では、スラブ(通常は基板と呼ばれる)のバルク部分を形成する材料の吸収係数α(λ,T)は温度をとともに変化する。それゆえ、内部透過率も同様に温度とともに変化する。以下の考察では、光学特性を温度の関数として予測するために本開示の方法をどのように使用しうるかを、より詳細に説明する。使用する手法は表面反射能の低温測定をシリコンの光吸収のモデルと組み合わせたものに依拠している。一般に、α(λ,T)を導くために使用するモデルは、注目する材料の吸収係数の波長と温度に対する依存性に関する任意の理論的または経験的モデルであってよい。例えば、低濃度ドープされたシリコンの場合、Appl. Phys. Lett. 69, 2190 (1996)においてRogne他により示された光吸収のモデルが、〜1μmから〜9μmまでの波長と室温から〜800°Cまでの温度に対するα(λ,T)を計算する1つの方法を提供する。Timansは、F.Roozeboom編集による書籍"Advances in Rapid Thermal and Integrated Processing"(Kluwer Academic Publishers, Dortrecht, Netherlands, 1995)p.35の"The Thermal Radiative Properties of Semiconductors"という章において、低濃度および高濃度の両方でドープされたシリコンの光吸収と屈折率に関するデータとモデルを提示している。このようなモデルはλ〜0.5μmの可視領域からλ〜30μmの遠赤外領域までの広い波長域について推定値を提供することができる。記載されたモデルはドーピング濃度のような基板ドープ条件や基板内の電子および正孔の濃度に関する他の情報をも考慮することができる。他の適切なモデルも文献には記載されている。これらのモデルにはキャリア吸収のDrudeモデルも含まれており、このモデルは赤外吸収に対する電子と正孔の影響を推定するために使用することができる。
【0187】
光学特性と熱特性の予測に必要な他の情報はウェハの厚さである。この厚さは、予測で必要とされる精度に応じて、処理中のウェハのサイズに対して適当な厚さとして推定してもよいし、ユーザによって入力パラメータとして与えてもよいし、手動または自動によりツール内で測定してもよい。
【0188】
図示の例であ、2.3μmのときのα(λ,T)は低温では非常に低く、例えば、室温では<10-6cm-1と推定される。この条件の下では、
である。対照的に、高温ではα(λ,T)は非常に大きく、例えば、730°Cでは〜100cm-1である。このケースでは、
である。温度が上昇するにつれて、内部透過率はさらにゼロへと向かい、ウェハは不透過となる。図は、どのように内部透過率が〜1に留まるかということと、基板は〜250°C未満の温度に対しては事実上不透過であること、しかし、温度が上昇するにつれて内部透過率は低下し、>750°Cの温度まではウェハは事実上不透過であることを示している。250°Cから750°Cまでの区間では、ウェハは半透過であると言ってよい。
【0189】
ウェハが透過性を有する低温時には、透過率S*=0.34であるが、透過率は温度が上昇するにつれてゼロに向かって低下し、>750°Cの温度では<10-4となる。低温時には、上の式15から予想されるように、前面に入射する光に対する反射率は背面に入射する光に対する反射率に等しい。例では、室温においてR*WF=R*WB=0.66。しかし、温度が上昇するにつれて、R*WFとR*WBは両方とも低下し、等しくなくなる。この低下は基板内での吸収の増大が(照明される面の反対側にある)第2の表面で反射する光の反射率への寄与を減少させるために生じる。基板が実質的に不透過になると、反射率は照明される面の対応する反射能に等しくなるので、R*WF=Rtv=0.3かつR*WB=Rbv=0.6。2つの対向する面から観察したスラブの放射率は、ウェハが透過性を有する低い温度では、両方ともゼロである。このことは放射を吸収できない物体は放射を放出することもできないという基本原理と整合的である。温度が上昇し、ウェハが半透過となるにつれて、放射率も増大し、ウェハが実質的に不透過になると、放射率は表面の対応する反射能に等しくなるので、εWF=1−Rtv=0.7かつεWB=1−Rbv=0.4。
【0190】
この例は、本開示がどのようにして高温時の放射率または対応する吸収率の推定値を求めるかを示している。原則的に、これらの量は例えば処理チャンバ内でR*WFとS*のリアルタイム測定を行い、その後式8からεWFを計算することにより求めることができる。しかし、状況によっては、チャンバ内で正確な測定を行うことが困難なこともある。これとは対照的に、本開示の方法によれば、任意のウェハ特性を処理チャンバ外の適当な場所で求めることが可能である。さらに、これを温度によるα(λ,T)の動向およびウェハの厚さに関する情報と組み合わせれば、ウェハの放射率または吸収率を処理中に予測することが可能である。この例では、処理チャンバ内のウェハがT>750°CであるときのεWBの妥当な値を確実に求めるには、室温でRbvを測定するだけで十分である。ウェハの温度を求めるために、放射率に関する情報を高温計の示数の補正に用いてもよい。モデリングアプローチはウェハのスペクトル吸収率の温度依存性を温度の関数として予測するためにも使用することができる。この情報を制御アルゴリズムに渡して、例えばウェハとランプ加熱エネルギー源との間のパワー結合の推定値またはウェハからの放射エネルギー熱損失の推定値を改善すれば、加熱プロセスの制御を改善することができる。
【0191】
図21のフローチャートには、本開示の方法をどのように実行するかについての1つの実施形態が示されている。第1のステップは光学測定が行われる位置にウェハを載置することである。次のステップでは、初期温度T1のウェハで光学特性が測定される。初期温度は近室温としてよい。光学特性は本開示で言及したいずれの特性であってもよい。光学特性はウェハのどちらの表面を照明する手法を用いても測定することができる。次のステップは、オプションであり、ウェハの厚さを求めることを含む。ウェハの厚さは測定によって求めてもよいし、そのデータの外部入力から情報を収集することによって求めてもよい。ここで、ウェハの厚さの測定には、光学的、電気的、または機械的測定のような様々な手段を使用しうる。通常は、表面の傷や汚れを防ぐために、特に電子デバイスを製作すべきウェハ表面上の領域に傷や汚れが付くのを防ぐために、ウェハ表面に接触しないプローブで厚さの測定を行うのが最も良い。例えば、ウェハの厚さは赤外干渉計を用いて測定することができる。また、光学プローブを用いて前面の位置と背面の位置を正確に同時に測定し、前面の位置と背面の位置の間の距離を求めることによって厚さを測定してもよい。この場合、ウェハはプローブの使用する光波長において透過性を有していなくてもよい。光学プローブは光干渉法に基づいたものであってもよいし、レーザ三角測量法に基づいたものであってもよい。ウェハの厚さは静電容量型変位プローブによって測定することもできる。また、ウェハの厚さは表面の位置がガスフローの挙動に与える影響を感知することにより寸法を求める空気圧計を用いて測定することもできる。また、ウェハの厚さはウェハを重み付けし、ウェハの面積と密度の推定値を使用して厚さを導き出すことによっても求めることができる。ウェハ表面のコーティング自体にかなりの厚みがある場合には、基板自体の厚さを求める際に、コーティングの厚さを考慮しなければならなくなる。そのような考慮はこのようなコーティングを含むウェハの厚さからコーティングの厚さを差し引くことによって行いうる。
【0192】
次のステップもオプションであり、ウェハのドーピングを求めることを含む。ウェハのドーピングは測定によって求めてもよいし、そのデータの外部入力から情報を収集することによって求めてもよい。ドーピングを求める場合、一般には光学的または電気的測定が必要となる。上で指摘したように、この測定で説明される方法を使用すれば、基板ドーピングの特性を求めるのに役立つ。ドーピングに関する情報には、ドーピングの種類、例えば、ウェハ基板がn型材料なのかまたはp型材料なのかということが含まれていてよい。また、基板の比抵抗が含まれていてもよい。また、基板のドーピングに使用される原子種と基板内のドーパント濃度が含まれていてもよい。また、基板内の電子または正孔の濃度が含まれていてもよい。ドーピングを求める他の方法には、接触型または非接触型プローブを用いた直接的な電気的測定を含むものもある。表面の傷や汚れを防ぐには、一般的には非接触型プローブが好ましい。非接触型プローブ法には、ウェハに印加された振動電場または磁場によって基板内に誘導された渦電流のセンシングを含むものもある。
【0193】
また、ウェハの性質および特性に関する他の情報を提供するようにしてもよい。例えば、提供される情報に、ウェハはシリコン、ガリウム砒素、ゲルマニウム等であるか否かといったウェハ基板の性質を含めてよい。また、ウェハのいずれかの面にある薄膜の厚さ、材料、および特性といった、ウェハ上のフィルムの性質に関する情報を含めてもよい。また、ウェハ表面上にあるパターンの性質に関する情報を含めてもよい。提供されうる他の特性には、熱伝導率、熱拡散率、または比熱容量といった熱特性も含まれうる。厚さとドーピングの測定はオプションであると述べられている。それは、光学特性の簡単な予測であれば、これらの量を高い精度で知る必要はないからである。しかしながら、ウェハの厚さの測定はプロセス制御の改善という様々な目的にも役立ちうる。例えば、ウェハの熱質量はウェハの厚さに依存する。その結果、ウェハの加熱または冷却の速度はウェハの厚さにより影響を受けるウェハの厚さを求めることはウェハの加熱または冷却の制御の改善に役立ちうる。例えば、ウェハの厚さに関する情報を加熱パワーの設定に使用される制御アルゴリズムに渡してもよい。これは加熱が開ループならば、すなわち、ウェハ温度を監視する温度センサからのフィードバック制御がないならば、プロセスの制御にも役立ちうる。この情報は利用される加熱のタイプには無関係であってよく、ウェハが電磁放射で加熱される場合でも、熱伝導またはガス対流で加熱される場合でも使用しうる。例えば、この情報はウェハを熱板やサセプタで加熱するシステムにおける制御の改善に使用することができる。ウェハの厚さを正確に知ることで、ウェハを熱板に載せた後のウェハ温度の発展を予測することがより容易になる。この場合には、ウェハの光学特性をまったく測定しなくても、制御の改善は達成される。このような改善は特に主として熱伝導によりウェハを加熱する場合に有効である。その場合、ウェハから及びウェハへの伝熱に対する光学特性の影響は小さいが、ウェハの熱質量は依然として加熱サイクルに対して強い影響を有する。
【0194】
次のステップは、モデルを使用して、少なくとも1つの第2の注目温度T2における光学特性を予測することである。実際には、このために、ある温度範囲にわたって光学特性を予測する、つまり、光学特性の温度依存性を明確にする必要がある。ここでも、光学特性は、放射率、吸収率、反射率、透過率、または、表面反射能もしくは放射能のいずれか等、本開示で考察したいずれの特性であってもよい。これらの特性は注目するいずれの波長または温度で予測してもよい。
【0195】
使用されるモデルは本開示で示された式に基づくものであってもよいし、光学特性の予測を可能にする別の式やアルゴリズムであってもよい。モデルへの入力には、第1の温度T1で行われる初期測定値のうちの少なくとも1つが含まれる。また、任意選択的に、ウェハの厚さとウェハのドーピングに関する情報を含めてもよい。ウェハのドーピングに関する情報が利用できる場合には、この情報を用いて、基板の光吸収係数および/または屈折率が波長および/または温度とともにどのように変化するかを予測することができる。
【0196】
次のステップは、光学特性に関する情報を用いて、加熱プロセスの制御に関連したパラメータを推定することである。これらのパラメータの例としては、高温計がウェハ温度のセンシングに使用する波長におけるウェハの放射率が挙げられる。この場合、放射率の推定値が改善されることで、より正確な温度示数が得られるようになる。高温計は一般にウェハが放出した熱放射の強度の感知された値に基づいてウェハ温度を求める。ウェハ放射率または反射率をアルゴリズムに与えて、このアルゴリズムにより、基板が放出した放射の強度のこの感知された値に基づいて、ウェハ温度を計算するようにしてもよい。高温計のための多くの仕組みは従来技術において説明されている。ウェハ表面の少なくとも一部に面した反射キャビティを形成することでウェハの放射率を高めるような手法が、高温計によって求められる温度に対する放射率変化の影響を低下させるのに役立つことが示されている。しかし、放射率の初期推定値が得られるならば、精度の改善は可能である。放射率の変化の影響を低下させる他の手法には、原位置光学測定を利用して処理中にウェハの放射率を測定する方法が含まれる。このような手法の1つがリプル高温計手法である。このような方法では、放射率の初期推定値を使用して測定精度を改善することができる。ここで、重要な1つの側面は測定精度への迷光の影響に関わっている。このような光はウェハから反射し、高温計により検出されることで、温度測定に誤差を生じさせる可能性がある。ウェハ反射率の正確な推定値が得られれば、反射迷光の量をより正確に推定することが可能となり、ウェハ温度を求める際に反射迷光の影響を考慮に入れることもできる。さらに、ウェハが半透過の場合、例えば式8または13からウェハの放射率を求めるには、通常、ウェハの透過率と反射率の両方を知る必要がある。本発明の方法は必要に応じ透過率と放射率を求めるために使用することもできる。透過率の測定は基板を透過する迷放射の量を推定するのに役立ち、これにより得られた推定値は感知された放射を解釈してウェハ温度を求める際に考慮される。
【0197】
場合によっては、透過率および/または反射率の測定値をウェハ温度を求めるために使用してもよい。例えば、これらの量のうち、いずれかの量の所定波長における温度依存性が知られていれば、その量の原位置測定を利用してウェハ温度を求めることができる。この手法の利点はウェハにより放出される放射をもはや測定しなくてもよいことである。また、このような手法は迷光の問題に影響を受けないようにもすることができる。温度が低いと、熱放射の強度が低いために高温測定が非常に難しくなるおそれがあるが、このような手法はこうした比較的低い温度においても適用可能である。コーティングはウェハのどちらの表面にも存在しうるが、本発明で説明した方法を用いれば、コーティングに関する事前知識がなくても、反射率または透過率の温度依存性を推定することができる。例えば、ウェハの前面および背面の反射能は説明した通りに得ることができる。シリコンの吸収係数の温度依存性は前に説明したようにモデルから得ることができるので、これを測定された反射能と組み合わせれば、必要に応じ、透過率または反射率の温度依存性の推定値を得ることができる。したがって、この例では、モデル化されるパラメータは透過率または反射率の温度依存性である。
【0198】
パラメータは加熱システムの特性設定を決定する制御アルゴリズムで使用されるパラメータであってもよい。この特性はウェハに供給されるエネルギーまたはウェハから失われるエネルギーに影響を与え、ひいてはウェハの温度、加熱速度または冷却速度にも影響を及ぼす。これらの量はウェハ全体にわたって影響を受けることもあれば、ウェハの特定の領域において影響を受けることもある。後者の場合、ウェハ温度の均一性はシステム特性の変更により影響を受ける可能性がある。システムの特性は、加熱ランプもしくはエネルギービームにより供給されるパワーもしくはエネルギー、熱放射素子の温度および位置、電気導体に印加される電流もしくは電圧、RF電力もしくはマイクロ波電力の大きさ、または、ガスフローの大きさといったプロセス変数であってよい。プロセス変数の他の例には、チャンバ内のガスの組成と圧力、フローの方向等が含まれる。特性はまた、反射体の位置、反射体の反射率、加熱エネルギービームの位置とサイズ、電磁エネルギービームの波長、入射角、または偏光状態、ウェハ位置に対する熱源の位置、ウェハと熱板の間またはウェハとヒートシンクの間の空隙の大きさ等といった、加熱システムの物理的特性であってもよい。
【0199】
制御アルゴリズムに与えられるパラメータはウェハの熱応答に影響を与えるファクタであれば何でもよい。制御アルゴリズムはモデルに基づいた制御器であってよい。例えば、アルゴリズムは、所与の加熱サイクルにおけるウェハ温度を維持するため、および/または、ウェハ内の温度均一性の望ましいレベルを維持するために、望ましいプロセス設定またはシステム変数を予測するものとしてよい。予測はプロセス処理中に生じる伝熱現象のモデルに基づくものであってよい。明らかに、ウェハ特性に関するより良い情報をモデルに提供することで、モデルの現実に対する忠実性を改善し、ひいてはプロセス変数またはシステム変数のより良い推定値を得ることが可能である。制御アルゴリズムはモデルに基づいて設定の予測が為される開ループモードで動作するものとしてよい。また、制御アルゴリズムは、少なくとも1つのセンサからアルゴリズムにウェハ状態に関するフィードバックが提供される閉ループモードで動作するものとしもよい。後者の場合、制御アルゴリズムは伝熱現象のモデルを使用して制御設定の選択を改善してもよい。実際、アルゴリズムはモデルからの予測に基づいて制御設定の近似値を予測する部分と、センサからの情報を考慮してこれらの設定を補正する第2の部分を含んでいてよい。
【0200】
上で述べたように、制御器に与えられるパラメータはウェハの厚さのような物理的特性であってよい。ウェハが光または熱放射で加熱される場合、または、ウェハが放射により熱を失う場合、ウェハの光学特性が熱応答に影響を与えることもある。したがって、パラメータは放射率、吸収率、反射率、または透過率としてよい。一般に、パラメータは、どのようにウェハが電磁放射を放射し、吸収し、反射し、透過し、または散乱させるかを示す特性であれば、どのような特性に関するものであってもよい。ウェハが高濃度ドープされているか低濃度ドープされているかを識別するために、本開示の方法を使用することについては既に論じた。このような情報は制御アルゴリズムに与えることもできれば、高濃度ドープされた材料がどのようにエネルギー源へ結合すると予測されるかを考慮する適切な制御アルゴリズムを選択するために使用することさえできる。必要ならば、制御アルゴリズムの選択が加熱レシピ構造に影響を与えるようにしてもよい。同様に、ウェハが表面に金属コーティングを有すると判定された場合、制御アルゴリズムがこの要素を考慮するようにしてもよい。どの程度の強さのエネルギーをウェハのどの位置にどの程度の長さで印加すべきかを含めて、どの位のエネルギーがウェハに印加されるかは、アルゴリズムが決定するものとしてよい。また、開ループモードの加熱で動作すべきか、または、少なくとも1つのセンサからのウェハ状態に関するフィードバックを利用してプロセスを制御する閉ループモードの加熱で動作すべきかも、アルゴリズムが決定するものとしてよい。場合によっては、閉ループモード動作と開ループモード動作との間の移行が、ウェハ特性の事前測定に基づいて選択された基準によって決定されるようにしてもよい。例えば、所定の温度においてウェハが十分に不透過であると予測された場合、ウェハの温度が所定の温度よりも高ければ、温度センサの示数は妥当であると判断するようにしてよい。この場合、初期の昇温ステップのうちにこの所定の温度に達してしまえば、制御器は閉ループ制御アプローチを選択することができる。
【0201】
次のステップはウェハのプロセス処理である。制御または測定アルゴリズムがパラメータを使用することで、より正確な、または反復可能な、または均一な処理がもたらされる、あるいは、より迅速またはより効率的なプロセス処理の方法がもたらされる。典型的なプロセスとしては、熱アニーリング、結晶化、合金化、焼結、酸化、窒化、膜形成、エッチング、ウェハ上に堆積させた材料の間の、もしくは、ウェハ上の材料とプロセスガスとの間の反応の促進が挙げられる。
ウェハを下ろす最終ステップ
図22には、本開示の別のフローチャートが示されている。このケースでは、光学特性を複数の波長と複数のウェハ温度で測定する可能性があることが図に明示されている。このような測定からの情報はプロセス処理温度におけるウェハの光学特性の予測に使用することができる。
【0202】
図23に示されている別のフローチャートでは、測定のために反射光線または透過光線から特定の成分を選択する手法を用いてウェハの光学特性を求めるステップが明示されている。選択される光線は例えば図19においてR1と呼ばれている光線のような一群の光線としてもよい。この場合、光はウェハの第1の表面で反射されただけである。その場合には、求められる光学特性は前面(WF)の反射能Rtvとしてよい。
【0203】
図24には、表面の反射能を測定する手法を用いてプロセス処理温度における放射率を予測する実施例が示されている。放射率の値はεWF=1−Rtvといった非常に単純なモデルで予測することができる。放射率は高温計示数の補正に使用することができる。放射率はまた加熱エネルギー源へのパワー結合を推定するためにも使用することができる。放射率はウェハ表面からの熱損失を推定するためにも使用することができる。反射能と放射率は単一の波長において求めてもよいし、ある波長域にわたって求めてもよい。
【0204】
図25には、事前測定を行ってウェハのドーピング特性を求める実施例を示した別のフローチャートが示されている。ドーピング特性は処理温度における光学特性の予測を行う際に考慮される。この光学特性はその後、プロセスの監視または制御に使用されるパラメータを求めるために使用される。このパラメータは高温計の温度示数が妥当か否かを判定するための温度閾基準であるとしてよい。また、このパラメータはウェハの放射率または吸収率であってもよい。また、このパラメータはどのような種類の温度測定または制御アルゴリズムを使用するべきかを制御システムに伝えるフラグであってもよい。また、どのような種類の温度センサを使用すべきかを決定するためにこのパラメータを使用してもよい。例えば、ウェハが高濃度ドープされている(例えば、比抵抗<0.1Ωcm)と判定された場合には、システムは所定の温度範囲については高温計によるウェハ温度の測定を選択するものとすることができる。一方、ウェハが低濃度ドープされている(例えば、比抵抗>0.1Ωcm)と判定された場合には、基板内への赤外光の透過に基づいたセンサによって温度を測定するようにしてよい。求めたドーピング特性は温度測定の精度の改善にも使用することができる。例えば、赤外透過測定を利用してウェハ温度を求める場合、ウェハのドーピング特性に関する情報を赤外透過に対するウェハドーピングの影響を補正するために使用することができるため、より正確なウェハ温度の推定値が得られる。
【0205】
図26に示されている別のフローチャートでは、ウェハの厚さに関する情報を利用して、測定または制御システムに供給されるパラメータを得る実施例が示されている。パラメータは厚さそのものであってよい。例えば、モデルに基づいた制御器が厚さ情報を利用してウェハの加熱または冷却の速度を予測するものとしてよい。また、モデルに基づいた制御器が厚さ情報を利用して、ウェハが所定の温度に達するのにかかる時間を予測するようにしてもよい。この手法は加熱プロセスの再現性の改善に利用できる。ウェハの厚さは処理システムへの入力として与えてもよいし、処理システム内のハードウェアによって測定されるものであってもよい。厚さ情報はウェハの光学特性の予測にも使用しうる。
【0206】
フローチャートによるアプローチと本開示に記載された方法のいずれも、必要ならば組み合わせてよい。
当業者は、上に述べた変更および変形、ならびに、その他の変更および変形も、本発明の趣旨および範囲から逸脱せずになしうる。加えて、様々な実施形態のそれぞれの側面は全体的にも部分的にも交換してよいことが理解されなければならない。さらには、当業者であれば、以上の説明は例示のためにのみなされたものであり、本発明を限定するものではないことが理解されるに違いない。
【図面の簡単な説明】
【0207】
【図1】本発明の方法およびシステムで使用しうる熱処理チャンバの1つの実施形態を示す側面図。
【図2】本発明によるシステムの1つの実施形態を示す平面図。
【図3】半導体ウェハのような基板に放射される1つの光ビームを示す側面図。
【図4】半導体ウェハのような基板に放射される2つの光ビームを示す側面図。
【図5】半導体ウェハのような基板に放射される2つの光ビームの別の実施形態を示す側面図。
【図6】本発明により使用される光路の1つの実施形態を示す側面図。
【図7】本発明により使用される光路の別の実施形態を示す側面図。
【図8】本発明により使用される光路の別の実施形態を示す側面図。
【図9】位置に基づいて光の強さを示したグラフ。
【図10】本発明により使用される光路のさらに別の実施形態を示す側面図。
【図11】本発明により使用される光路の別の実施形態を示す側面図。
【図12】本発明により使用される光路のまた別の実施形態を示す側面図。
【図13】本発明により使用される光路の別の実施形態を示す側面図。
【図14】本発明により使用される光路の別の実施形態を示す側面図。
【図15】ウェハの両面照明の1つの実施形態を示す側面図。
【図16】ウェハの両面照明の別の実施形態を示す側面図。
【図17】本開示に従って異なるロケーションでウェハを照明する実施形態を示す側面図。
【図18】半導体ウェハに放射される光ビームを示す。
【図19】ウェハの前面に入射する光線の伝播と様々な位置における光の強さの値とを示す側面図。
【図20】ウェハの光学特性の温度依存性を示したグラフ。
【図21】本開示に従ってウェハ特性を測定する方法のフローチャートの実施形態を示す。
【図22】本開示に従ってウェハ特性を測定する方法のフローチャートの実施形態を示す。
【図23】本開示に従ってウェハ特性を測定する方法のフローチャートの実施形態を示す。
【図24】本開示に従ってウェハ特性を測定する方法のフローチャートの実施形態を示す。
【図25】本開示に従ってウェハ特性を測定する方法のフローチャートの実施形態を示す。
【図26】本開示に従ってウェハ特性を測定する方法のフローチャートの実施形態を示す。
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は2005年7月5日出願の米国暫定出願第60/696,608号に基づいており、その優先権を主張するものである。
【0002】
発明の背景
多くの産業的・科学的プロセスにおいて、高熱物体の表面温度の測定は関心事である。例えば、半導体デバイスの製造時には、温度は正確に測定され、制御されなければならない。特に、半導体ウェハの温度は、ウェハの急速熱処理中、ウェハの急速熱酸化処理中、または、ウェハの表面を改変したり、表面に薄い化学被膜もしくはコーティングを施す他のプロセスの間、正確に監視されなければならない。これらの半導体製造プロセスにとって、基板の温度は、400°未満から1,100°Cを超すこともある範囲にわたって、数度以内で知られていなければならない。
【0003】
過去には、高温物体の温度は(1)接触法または(2)非接触法を利用して求められた。例えば、接触法の場合、高温物体が熱電対のようなセンサと接触し、センサに接続されている温度計が物体の温度を示す。一方、従来の非接触方による温度測定は、物体が放出した熱放射を特定の光波長において感知する光高温計のような光センサを使用する。物体によって放出された熱放射が分かってしまえば、物体の温度は推定することができる。
【0004】
一般的に、エレクトロニクス産業で使用される半導体材料を加工する場合、半導体ウェハの温度測定時には非接触法を用いることが好ましい。例えば、非接触法の1つの利点は、加熱プロセス中にウェハを回転することができることであり、これによりウェハ全体にわたって一様な温度分布が促進される。また、ウェハを回転させることで、プロセスガスの流れとウェハの間のより均一な接触も促進される。ウェハを回転することができる以外に、非接触法を用いる別の利点は、温度計をウェハに取り付ける必要がないため、ウェハをより速く製造することができ、半導体製造中の貴重な時間が節約されることである。
【0005】
現在関心を持たれている、あるいは関心となることが予見される高温ウェハプロセスのすべてにとって、より重要な要件の1つは、ウェハの真の温度が高い精度、再現性、および速度をもって求められることである。ウェハの温度を正確に測定する能力は製造された半導体デバイスの品質およびサイズに直接的な見返りを有している。例えば、ある特定の半導体デバイスに必要な最小加工寸法は完成したマイクロチップの計算速度を制限してしまう。一方、加工寸法はプロセスの最中のデバイスの温度を測定および制御する能力に関係している。したがって、半導体産業の内部では、より正確な温度測定制御システムの開発を迫るプレッシャーが増大しつつある。
【0006】
この点について、従来の非接触式の光高温測定システムの主な欠点は、ウェハの真の温度ではなく、見かけの温度が測定されることである。特に、実際の表面は理想的なまたは完全な黒体よりも放射効率が低い。理論と計算によれば、黒体の放出する放射が分かれば、黒体の温度は計算することができる。しかし、ウェハのような実際の物体は同じ温度で黒体が放出するであろう放射の一部しか放出しない。この一部が実際の物体の放射率として定義される。したがって、実際の物体が放出する放射を感知する場合、高温計は一般に物体の真の温度とは異なりうる見かけの温度を示す。
【0007】
したがって、高温計を用いて実際の物体の真の温度を測定するためには、放射率を考慮して、示された温度を補正しなければならない。残念なことに、実際の物体の放射率は一般的には未知であり、正確に測定することは非常に難しい。さらに、半導体ウェハの放射率はウェハごとに異なる。放射率はウェハの特性であり、ウェハの化学的組成、ウェハの厚さ、ウェハの表面粗さ、ウェハ上にあるコーティング、および高温計の動作波長といった複数のパラメータに依存する。
【0008】
高温計の動作波長でウェハが半透過である場合には、半導体ウェハの放射率を求めることができることに加えて、ウェハの温度を正確に求めるという問題も生じうる。この問題は比較的低い温度において特によく見られる。
【0009】
過去には、ウェハのプロセス処理に先立って、またはウェハのプロセス処理中に半導体ウェハの特性を測定するために、幾つかの方法が提案された。例えば、米国特許第6,056,434号には、ウェハの放射率を求める手助けとして、半導体ウェハの反射能を測定する方法が開示されている。
【0010】
本開示は、熱処理チャンバ内で処理される半導体ウェハのような基板の光学特性を求める方法をさらに改善することを対象としている。本開示に従って求められたウェハの性質または特性は、加熱処理および/または基板を加熱する様式をより良く制御するために使用してもよい。
【0011】
発明の概要
本開示は、概して、加熱処理中にウェハをより正確に加熱するために、あるいは、加熱処理中に様々なシステム構成要素もしくは変数をより良く制御するために半導体ウェハのような基板の光学特性を求める方法を対象としてしている。開示されるシステムおよび方法によれば、高温計のような放射感知装置によって読み取られるウェハ温度の精度の改善、または、基板の熱放射特性の測定および/または予測の改善が可能である。ある実施形態では、この方法で求められた基板の光学特性を制御器に供給し、ウェハ温度制御が改善されるようにしてもよい。
【0012】
例えば、ある実施形態では、本開示は半導体ウェハの少なくとも1つの光学特性を求める方法を対象としている。本方法はある特定の厚さをもつ半導体ウェハの第1の表面に光を放射するステップを含んでいる。半導体ウェハの第1の表面に放射された光は、第1の表面から反射した光をウェハを通過した光から分離するように構成された光路を介して導かれ、ウェハの対向する第2の表面で反射する。
第1の表面から反射した光が第2の表面から反射された光から一旦分離されれば、第1の表面から反射した光は検出器を使用して検出することができる。検出器は、例えば任意の適切な光センサとしてもよいし、または、第1の表面から反射した所定の波長の、または所定の波長域の光の量を検出するように構成してもよい。
【0013】
本開示によれば、第1の表面から反射した光の量に基づいて、半導体ウェハの少なくとも1つの光学特性が求められる。この特性は、第1の表面の反射能、第1の表面の放射能、第1の表面の吸収能、または第1の表面の透過能を含むものとしてよい。代替的または付加的に、光学特性が半導体ウェハの反射能、エミッタンス、吸収能、または透過能を含むものとしてもよい。さらに、半導体ウェハの第1の表面の少なくとも1つの光学特性を求める代わりに、あるいはそれに加えて、ウェハの反対側の表面の少なくとも1つの光学特性を求めるために本発明を使用してもよい。
【0014】
第1の表面から反射した光を第2の表面から反射した光から分離するために用いられる光路は個々のアプリケーションに応じて異なっていてよい。例えば、光路は複数の光学装置を含むものとしてよい。これらの光学装置には、ミラー、レンズ、開口等が含まれる。例えば、ある特定の実施形態では、光路は半導体ウェハの第1の表面の特定の位置に光を方向付ける第1のレンズと第2のレンズを含む。第1の表面で反射した後、光は再び第2のレンズを通過する。第2のレンズ以降、光はミラーで反射され、第3のレンズを通過して光検出器へ集束する。しかし、上記の実施形態は本開示で使用しうる光路の1つの例を示しているに過ぎないことを理解されたい。
【0015】
光が光路を移動する時に第1の表面から反射した光がどのうように第2の表面から反射した光から分離されるかは、アプリケーションごとに異なるものとしてよい。例えば、システムの1つまたは複数のレンズの焦点距離を調節することによって、種々の光ビームの分離を行ってもよい。代替的または付加的に、種々の光線を分離するためにシステムは様々な開口やフィルタを含むものとしてよい。さらに別の実施形態では、入射角を分散させて半導体ウェハの第1の表面に光を放射することにより、第1の表面から反射した光を第2の表面から反射した光から分離するようにしてもよい。
【0016】
基板の第1の表面に光を放射するために使用される光源は、個々のアプリケーションに応じて異なるものとしてよい。例えば、ある実施形態では、光は広帯域光源を有するものとしてよい。択一的に、光源がレーザビームを放射するようにしてもよい。
【0017】
半導体ウェハの少なくとも1つの光学特性を上記方法に基づいて求めてしまえば、様々なシステムやプロセスにこの光学特性を取り入れ、使用することができる。例えば、ある実施形態では、求められた1つまたは複数の光学特性を用いて、半導体ウェハの加熱プロセスを制御する。この実施形態では、光学特性に基づいて、半導体ウェハを加熱するプロセスにおける少なくとも1つのシステム構成要素を制御することができる。
【0018】
例えば、ある実施形態では、システム構成要素は半導体ウェハの温度を求めるために加熱中に半導体により放出される放射の量を感知する高温計のような放射測定装置を含む温度測定システムを含むものとしてよい。第1の表面から検出された光の量は、放射測定装置により感知される放射の量と併せて、半導体ウェハの温度を求める際に使用される半導体ウェハのエミッタンスを求めるために使用されることもある。
【0019】
この実施形態では、例えば、放射感知装置は所定の波長で半導体により放出された放射を感知する。半導体ウェハの第1の表面から反射した光の量は放射感知装置の動作波長と同じ波長で検出される。半導体基板の第1の表面から検出される反射光の量の測定はおよそ100°Cよりも低い温度でも行われうる。例えば、半導体ウェハの第1の表面から検出された光の量は、放射感知装置の動作波長で半導体ウェハの透過能が0.1未満であるような温度において半導体ウェハの反射能とエミッタンスを求めるために使用してもよい。より具体的には、ある実施形態では、例えばモデルを用いて比較的高い温度における基板のエミッタンスを予測するために、およそ100°Cよりも低い温度で求められた反射能および/またはエミッタンスを使用してもよい。
【0020】
択一的な実施形態では、システム構成要素はウェハの加熱に使用される加熱装置に関係するものとしてよい。例えば、加熱プロセスの間、半導体ウェハの加熱に使用される加熱装置の電力制御器を調整してもよい。加熱装置は、例えば、光エネルギー源、加熱サセプタ、またはこれらの組合せから成るアレイを含むものとしてよい。半導体ウェハの第1の表面から検出された光の量は加熱中に半導体ウェハの吸収率を求めるために使用し、半導体ウェハの吸収率は、半導体ウェハの加熱に使用されるエネルギーの量が選択的に増大または減少させられるように電力制御器を調整するために使用してよい。このようにして、吸収能は電力またはエネルギーの設定の最適化に使用される。この実施形態では、半導体ウェハの第1の表面から反射して検出される光は、ウェハの加熱に使用される電磁放射の波長域と実質的に重なる波長域の光であるとしてよい。
【0021】
本開示のさらに別の実施形態では、求められる半導体ウェハの光学特性を、放射感知装置の動作波長で透過能が0.1を超えるような比較的低い温度において放射感知装置の示数を補正するために使用してもよい。この実施形態では、光源がウェハの第1の表面に入射する光を放射し、第1の表面から反射した光の量がウェハの反対側の表面から反射した光の量とは別個に検出される。例えば、光路を用いて、ウェハの第1の表面から反射した光をウェハの反対側の表面から反射した光から分離してもよい。その後、この情報を用いて、ウェハの両表面の反射能が求められる。これらの反射能は、その後、放射感知装置の動作波長で半導体ウェハの透過率が0.1を超えるような温度において半導体ウェハの透過率と放射率を求めるために使用される。求められた透過能とエミッタンスは放射感知装置により為される温度測定の補正に使用してよい。
【0022】
同様に、本開示の方法は比較的低い温度における加熱装置の電力またはエネルギーレベルの制御にも使用することができる。しかし、この実施形態では、半導体ウェハの第1の表面と第2の表面からの反射光は、ウェハの加熱に使用される電磁放射の波長域と実質的に重なる波長域において検出される。このようにして、吸収能を求め、それを電力またはエネルギー設定の最適に使用することができる。
【0023】
半導体ウェハの光学特性は、上で述べたように、熱処理チャンバ内で求めてもよいし、熱処理チャンバ外で求めてもよい。例えば、ある実施形態では、光学特性は任意の適切なロケーションで求められるものとしてよい。例えば、測定はロボットアーム上の測点において行ってもよいし、あるいは隔離したチャンバで行ってもよい。光学特性が求まれば、ウェハを熱処理チャンバに移動して、様々なプロセスを施すことができる。光学特性は熱処理システムの少なくとも1つのシステム構成要素を制御するために使用してもよい。
本発明の他の特徴および側面については、以下で詳細に論じる。
【0024】
図面の簡単な説明
添付図面への参照を含め、明細書の以下の部分では、最良の実施形態を含めて本発明を完全かつ当業者にとって実施可能な程度により詳しく開示する。
図1は、本発明の方法およびシステムで使用しうる熱処理チャンバの1つの実施形態を示す側面図であり、
図2は、本発明によるシステムの1つの実施形態を示す平面図であり、
図3は、半導体ウェハのような基板に放射される1つの光ビームを示す側面図であり、
図4は、半導体ウェハのような基板に放射される2つの光ビームを示す側面図であり、
図5は、半導体ウェハのような基板に放射される2つの光ビームの別の実施形態を示す側面図であり、
図6は、本発明により使用される光路の1つの実施形態を示す側面図であり、
図7は、本発明により使用される光路の別の実施形態を示す側面図であり、
図8は、本発明により使用される光路の別の実施形態を示す側面図であり、
図9は、以下で詳細に説明する位置に基づいて光の強さを示したグラフであり、
図10は、本発明により使用される光路のさらに別の実施形態を示す側面図であり、
図11は、本発明により使用される光路の別の実施形態を示す側面図であり、
図12は、本発明により使用される光路のまた別の実施形態を示す側面図であり、
図13は、本発明により使用される光路の別の実施形態を示す側面図であり、
図14は、本発明により使用される光路の別の実施形態を示す側面図であり、
図15は、ウェハの両面照明の1つの実施形態を示す側面図であり、
図16は、ウェハの両面照明の別の実施形態を示す側面図であり、
図17は、本開示に従って異なるロケーションでウェハを照明する実施形態を示す側面図であり、
図18は、半導体ウェハに放射される光ビーム
図19は、ウェハの前面に入射する光線の伝播と様々な位置における光の強さの値とを示す側面図であり、
図20は、ウェハの光学特性の温度依存性を示したグラフであり、ここで基板は温度に依存した吸収係数を有しており、
図21から26は、それぞれ本開示に従ってウェハ特性を測定する方法のフローチャートの実施形態である。
【0025】
本明細書および図面において参照記号を繰り返して使用しているのは本発明の同一または類似の特徴ないし要素を表すためである。
【0026】
詳細な説明
当業者には、以下に示す考察は実施例の説明のためにのみ為されるものであり、本発明のより広範な側面を限定するためのものではないことが理解されねばらなない。
【0027】
概して言えば、本開示は基板の少なくとも1つの光学特性を求め、この特性を基板上で実行されるプロセスの制御に使用するための方法およびシステムを対象としている。例えば、ある実施形態では、基板は半導体ウェハを含むものとしてよく、光学特性は加熱プロセス中にウェハの温度をより良く測定および制御するために使用される。あるいは、光学特性をウェハの加熱に使用される加熱装置の制御に使用してもよい。
本開示の方法は半導体ウェハとだけでなく、他の基板と組み合わせても使用しうることが理解されねばならない。例えば、本開示の方法はリボン、薄膜、ファイバ、フィラメント等のような任意の適切な基板とともに使用することができる。
【0028】
基板が半導体材料を含んでいる場合には、基板の加熱処理中、基板の酸化処理中、または基板表面を改変するまたは基板表面に薄膜を付加するプロセスの最中に、本発明の方法を使用することができる。本発明に従って使用しうる他のプロセスには、例えば化学蒸着プロセスや原子層堆積プロセスのような適切な薄膜堆積プロセスが含まれる。本発明の原理は、基板上に材料を堆積させるためのプラズムプロセスの最中にも、または基板のエッチングのためにも使用することができる。
【0029】
図1を参照すると、半導体ウェハのような基板の処理のために本発明のプロセスで使用されるシステム10の1つの実施例が大まかに示されている。システム10は、様々なプロセスを実行するために、ウェハ14のような基板を受け入れるように適合させた処理チャンバ12を有している。ウェハ14は基板ホルダ15上の処理チャンバ12内に配置するものとしてよい。なお、基板ホルダ15は、所望により、ウェハを回転するように構成してもよい。チャンバ12は、非常に高速に、かつ綿密に管理された条件の下で、ウェハ14を加熱するように設計されている。チャンバ12はある種の金属、ガラス、およびセラミックを含む様々な材料から形成することができる。例えば、チャンバ12をステンレス鋼または石英から形成してもよい。
【0030】
チャンバ12が導熱性材料から形成されている場合には、チャンバは冷却システムを有しているものとしてよい。例えば、図1に示されているように、チャンバ12はチャンバの外周を包み込む冷却管16を有している。冷却管16は水などの冷却液を循環させるように適合させてあり、この冷却液がチャンバ12の壁を一定の温度に保つ。
チャンバ12は、チャンバ内にガスを引き入れるために、および/または、チャンバを所定の圧力範囲内に維持するために、ガス入口18とガス出口20を有している。例えば、ガス入口18を通してチャンバ12内にガスを引き入れ、ウェハ14と反応させることができる。処理が済めば、ガス出口20を使ってチャンバからガスを排出することができる。あるいは、ガス入口18を通してチャンバ12内に不活性ガスを供給して、チャンバ内にいかなる不要または不所望の副反応も起きないようにしてもよい。別の実施形態では、チャンバ12の加圧にガス入口18とガス出口20を用いてもよい。また、必要ならば、チャンバ12内に真空を形成してもよい。
【0031】
処理中に、ウェハ回転機構21を用いて、ウェハを回転させるようにチャンバ12を適合させてもよい。ウェハの回転はウェハ表面上の温度の一様性を高め、ウェハ14とチャンバ内に導入された任意のガスとの間の接触を高める。ここで理解されなければならないことは、チャンバは半導体ウェハの他に光学部品、薄膜、ファイバ、リボン、および、何らかの特定の形状をもつ他の基板を処理するようにも適合されているということである。
【0032】
処理中にウェハ14を加熱するため、チャンバと連携して1つまたは複数の加熱装置を配置してもよい。この実施形態では、加熱装置22はタングステンハロゲンランプ、アークランプ、レーザ、またはこれらの組合せなどのような複数のランプ24を有している。加熱装置22は加熱装置により放射される熱エネルギーをウェハ14に向けるための1つの反射器または一揃いの反射器を有するものとしてよい。図1に示されているように、ランプ24をウェハ14の上方に配置してもよい。しかし、ランプは任意の場所に配置してよいことを理解されたい。例えば、ウェハ14の上方だけでなく、ウェハ14の下方に配置される付加的なランプをシステム10内に含めてもよい。
【0033】
複数のランプを用いる代わりに、あるいは複数のランプに加えて、処理チャンバは他の様々な加熱装置を含んでいてもよい。例えば、加熱装置は基板を加熱するように構成された任意の適切な電磁放射を放出するものであってよい。加熱装置は、例えば、高周波またはマイクロ波エネルギーを放出するものであってよい。他の実施形態では、ホットウォール環境下でまたは対流加熱を介して基板を加熱してもよい。また、基板をエネルギービームで加熱してもよい。エネルギービームは、例えば、プラズマビーム、電子ビーム、またはイオンビームを含むものとしてよい。
【0034】
ある特定の実施形態では、処理チャンバは加熱サセプタを含むものであってよい。例えば、ウェハに接触せずにウェハを加熱するため、加熱サセプタをウェハの上方または下方に配置してよい。このような加熱サセプタは当業者には周知のものである。
【0035】
図1に示されているように、ランプ24のような1つまたは複数の加熱装置は、加熱装置により放射される熱エネルギーを増大または減少させるために使用しうる逐次電力制御器25を備えているものとしてよい。
【0036】
熱処理チャンバ10はさらに複数の光ファイバまたは光パイプ28を有しており、これらの光ファイバまたは光パイプ28は複数の相応する光検出器30と通じている。光ファイバ28は特定の波長でウェハ14により放射された熱エネルギーを受け取るように構成されている。感知された放射の量は光検出器30に通信され、光検出器30はウェハの温度を求めるのに使用しうる電圧信号を発生させる。ある実施形態では、光検出器30に通じる各光ファイバ28が高温計を含んでいる。
【0037】
処理中に、光ファイバがウェハ14により放出された熱放射を検出するのみで、ランプ24により放出された放射は検出しないように、システム10を設計してもよい。これに関して、システム10は光検出器30の動作波長でランプにより放出された熱放射がチャンバ12に入るのを阻止するフィルタ32を含んでいる。フィルタ32は窓であってもよいし、ある実施形態においては、融解シリカまたは石英から構成されるものとしてよい。
【0038】
上で述べたように、処理の間、半導体ウェハ14の温度は光ファイバ28と光検出器30とにより監視される。詳しくは、光検出器30が温度を求めるために特定の波長でウェハ14により放出された放射の量を感知する。光検出器30によって感知される放射量に基づいて正確に温度を計算するには、ウェハ14の様々な特性が既知であるか、または推定されなければならない。例えば、温度算出はウェハの反射率、透過率、および/または放射率に基づいているが、これらを予測または推定することは困難なことが多い。これらの値はウェハ14の温度に基づいて変化しうるだけでなく、ウェハ14に形成される構造のゆえに、ウェハ14が処理されるにつれても変化しうる。
【0039】
過去においては、ウェハ14の特性をまたは推定することのできる非接触温度測定システムを案出するために多くの試みがなされてきた。いくつかの実施形態では、例えば、ウェハが処理されている最中に測定または算出が行われる。例えば、米国特許第6,056,434号では、反射率計を利用した原位置温度算出プロセスが論じさられている。なお、この米国特許第6,056,434号の内容は参照により本願に取り込まれている。
【0040】
他の実施形態では、基板が処理される前に基板の様々な特性を測定することが試みられてきた。しかし、上に述べたように、基板の光学特性は温度によって変化しうる。また、基板上に存在する材料のうちのあるものが変形を被ることもあれば、基板の構造と光学特性に影響を与える他の材料が基板上に形成されることもある。これらの障害が、処理を改善するための手段としてプリプロセッシング特性決定を使用する能力を制限してきた。
【0041】
主な問題の1つは、シリコンなどの半導体材料の光吸収が材料の温度とドーピングによって強く影響されるゆえに生じる。例えば、低ドープシリコンウェハは一般に室温では波長>−1.1μmに対しては半透過である。その結果として、室温でおよそ1.1μmよりも長い波長で行われる典型的な測定は、基板を透過してウェハの反対側の表面から反射した光によって影響を受けることになる。ウェハが処理システム内で加熱される場合には、シリコンの吸収係数は温度とともに急激に上昇し、ウェハはより不透過となる。この変化はウェハの反射率と放射率の大きな変化をもたらす。この場合、室温での特性の測定は温度測定または制御の改善にはあまり役立たない。
【0042】
本開示は半導体ウェハのような基板の光学特性をウェハの処理に先立って求めるための方法およびシステムを対象としている。本発明によれば、より正確な温度算出を支援するために使用しうるだけでなく、熱エネルギーの吸収が最適化されるように加熱装置を制御するためにも使用しうるウェハの様々な光学特性が測定あるいは求められる。特に有利な点は、本発明の方法を用いて得た情報によって、低温においてだけでなく高温においても温度算出が可能となることである。本発明の方法はウェハの処理に先行して処理チャンバ外で実行されるものとしてよい。代替的に、処理チャンバ自体の中で算出を行ってもよい。
【0043】
本発明の原理を論じる前に、光ビームがどのようにして基板と相互作用するかについて手短に説明しておくのが良いだろう。例えば、図3にはウェハ状構造の代表例が示されており、このウェハ状構造の表面には入射角θ0で入射する光線AOが照射されている。ウェハ状構造はその上面(WF)と底面(WB)にコーティングとデバイスフィーチャを有していてよい。入射光線のパワーの一部は上面で反射され、反射光線R1を形成する。光線の第2の部分は前面(WF)を貫通し、内部光線A1を形成する。この光線は、ウェハの屈折率と光線AOを含む入射媒体の屈折率の違いにより生じる屈折の結果、異なる角度θiで伝搬する。光線A1がウェハの厚さ方向に伝搬する際、その強さはウェハ内でのエネルギー吸収により低下することがある。一般に、この吸収は、ベールの法則と呼ばれる指数関数的な関係を通じて、ウェハを通る光路長に依存する。
【0044】
光線A1がウェハの背面に達すると、光線の一部は表面を透過して光線T1となる。第2の部分は背面WBで反射して、第2の内部光線A2を形成する。A1が達した点におけるウェハの背面WBがAOの入射したウェハの前面と平行であるならば、光線T1は元の光線AOに平行な方向に伝搬する。ただし、これはウェハの背面を過ぎた後の媒体の屈折率がAOを含む媒体の屈折率と同じであることを条件とする。光線A2もウェハの法線に対してA1と同じ角度をなす。光線A2もウェハの前面WFに向かって戻る際に吸収により減衰する。ただし、光線A2のある部分は透過して光線R2を形成し、またある部分は反射して別の内部光線A3を形成する。
【0045】
すると今度は、内部光線A3がA1と同じ振る舞いを示し、ウェハの背面WBへ戻り、第2の透過光線T2とさらに別の内部光線A4を生じる。A4はA2と同じ振る舞いを示し、ウェハ表面に戻って、外部光線R3と内部光線A5を生じる。このように、ウェハの表面に入射する単一の光線AOがR1,R2,R3,…のような反射光線の無限列と透過光線の無限列T1,T2,…を生じさせることができることが分かる。
【0046】
実際には、表面の反射能と透過能は有限であり、基板厚さ方向における内部光線の各光路に沿った吸収も有限であるから、通常は内部反射の数が増えるにつれて、光線のパワーはかなり急速に減衰する。しかし、測定機器が第1の反射R1の他にR2やR3のような光線からのエネルギーも収集するのであれば、反射率測定は光が基板を透過する度合いに強く影響されうる。同様に、透過率の測定も第1の光線T1やT2のような多重反射光線のエネルギーの収集によって影響される。
【0047】
図4は、反射率測定に対するこのような多重反射光線の影響を図示したものであり、入射光ビームを図3の理想的な単一光線としてではなく、有限サイズのコリメートされた光ビームとして示していることを除けば、図3にかなり似ている。
【0048】
2つの外部光線AおよびBはコリメートされた光ビームHOの外側限界を表している。2つのウェハ表面(例えばHR1とHR2)で反射した光ビームはOVR1で重なり合うので、反射能を測定しようとして光検出器を用いれば、検出器によって収集される光はウェハの前面で反射した光だけでなく、ウェハの背面から反射した光も含むことになる。このような測定ではウェハの前面から反射した光と背面から反射した光を区別できない。
【0049】
同様に、透過能の測定も、例えばビームHT1とビームHT2の重なり合いOVT1の結果として、基板内での光の多重反射に影響される測定となってしまう。
【0050】
本開示は、概して言えば、半導体ウェハのような基板へ光を放射し、様々な手段を通して、ウェハの前面から反射した光の量をウェハの背面から反射した光の量から区別する方法およびシステムを対象としている。光が区別されれば、各基板の反射能の正確な測定を行うことができる。本発明が発見したところによれば、以下でより詳細に説明されるように、この情報はウェハが後に処理される際に処理チャンバ内の少なくとも1つのパラメータを制御するのに役立つ。
【0051】
例えば、図5を参照すれば、多重反射の影響を除去する手法の1つの実施形態が示されている。このケースでは、入射光ビームHOのサイズと基板への入射角は異なる表面(HR1,HR2,HR3等)から反射した光ビームから区別されるように選ばれている。入射光ビームが基板の前面(HR1)から反射する場所と基板の背面(HR2)から反射した光が前面に達する場所とは重なり合わない。その結果、空間的に離れた複数の反射光ビームが存在する。これらビームの光は異なる検出器またはセンサアレイに当たることがある。入射ビームの最初の反射の際に反射する光の強さは基板の前面の反射能による影響を受けるだけであるが、第2の反射ビームの強さは基板の前面および背面の反射能と基板の吸収係数にも影響される。
【0052】
前面の反射能だけが関心対象であるケースもあるが、異なるビームの光を収集することにより、ウェハの光学特性をより完全に分析することが可能である。例えば、反射光の2つのビームを収集することにより、ウェハの両面および/またはウェハの吸収係数に関する情報を導き出すことが可能である。同様の利益は図5に示されている透過光HT1,HT2等の異なる成分の分析についても得られる。さらには、ウェハの前面または背面からの入射光で別個に測定を行うことにより、さらに多くの情報が得られる、および/または、ウェハの光学特性の推定における誤差の大きさを低減することができる。
【0053】
図5に示されているように方法を実行する場合、使用される1つまたは複数の検出器は特定の波長または波長域の光ビームの強さを測定することのできる任意の適切な装置を含むものとしてよい。
【0054】
図5の構成を利用することは有利ではあるが、実施形態によっては、この構成をすべての種類の基板に対して実施することが、特に比較的薄く、屈折率が比較的大きな基板に対して実施することが困難である場合もある。このような状況では、入射光ビームが上面に当たる位置と基板の背面から反射した光ビームが上面に当たる位置との間の距離が極めて小さい場合があるため、非常に小さな入射光ビームが必要となる。しかし、レーザ光源を用いて、狭い光ビームにもかかわらず比較的強い照明が得られるようにしてもよい。
【0055】
別の実施形態では、反射ビームが部分的に重なるような場合であっても、様々な技術を用いて、ウェハの前面から反射した光の量を求め、ウェハの背面から反射した光の量から区別する。例えば、光の重なりが部分的である限り、重なり度合いは幾何学的計算から計算される。さらに、重なりの条件は入射ビームのサイズまたは形状または入射角を変えることで変化させることができるので、前面から反射した光の量を求めることが可能となる。例えば、コリメートされた光ビームHOの入射角を変えれば、反射率とウェハを通る光路長が変化する。ある特定の実施形態では、例えば、ある条件においては、基板から反射して検出された光は例えば図3に示されているようにすべての反射成分R1,R2,R3等を含む場合がある。第2の条件では、入射角を変えることにより、反射ビームの成分に重なりがなくなる場合がある。同様の技法を透過光の分析に用いてもよい。
【0056】
他の実施形態では、異なる光成分を分離するために光源を操作する代わりに、あるいはこれに加えて、異なる光成分が分離されるように光路を工夫してもよい。一旦異なる光成分が分離されれば、どの光成分でも他の光成分を排除して検出または測定することができる。例えば、ある実施形態では、基板の上面から反射した光が基板の底面から反射した光から分離される。上面から反射した光の量および/または底面から反射した光の量は基板の様々な特性を求めるために検出される。例えば、基板の上面から反射した光と底面から反射した光はそれぞれ基板の様々な特性に関する情報を提供する。
【0057】
例えば、図6には、ウェハ状の基板の上面から反射した光と底面から反射した光を区別するための代替的手法が図解されている。図示されているように、光源Sからの光線はレンズとミラーを含む光路を通って伝搬する。光線A1はSにより放射され、レンズL1により収集される。レンズL1は光線A2で表されるコリメートされたビームを形成する。A2はミラーMを通過し、光線A3として継続する。L2は光を集束させるレンズであり、ウェハの前面WFに当たる光線A4を形成する。
【0058】
光線A4の一部はWFで反射され、光線ARF1を形成する。ARF1はレンズL2により収集され、レンズL2はARF1を再コリメートして光線ARF2を形成する。光線ARF2はミラーMで反射して、光線ARF3を形成する。ARF3はレンズL3により収集され、レンズL3はARF3を集束させ、検出器02に当たる光線ARF4を形成する。
【0059】
光線A4の第2の部分はウェハの表面WFを透過し、内部光線AT1を形成する。AT1の一部はウェハの背面を透過し、透過光線AT2を形成する。AT1の第2の部分は背面WBで反射され、内部光線ATRB1を形成する。ATRB1の一部は前面で反射され、内部光線ATRBRF1を形成する。ATRBFR1は再び背面へと伝搬し、そのうちの一部はウェハの背面WBを透過し、第2の透過光線ATRBRF2を形成する。ATRBRF1の第2の部分(図示せず)もWBで反射し、上で述べたように、内部光線の無限列を形成する。光線ATRB1の一部は前面WFを透過し、第2の反射光線ATRB2を形成する。
【0060】
両方の光線ARF1およびATRB2が反射光測定システムの光学素子によって収集され、同一の検出素子に達する場合、ウェハの背面の反射能が反射率測定に影響を及ぼす。
【0061】
ATRB2はレンズL2により収集され、収束されて光線ATRB3を形成する。光線ATRB3はミラーMにより反射され、ATRB4を形成し、ATRB4はレンズL3により集束され、ATRB5として検出器D3に当たる。
【0062】
D2およびD3が別個の検出器ならば、2つの反射光線を区別することが可能である。この場合、検出器D2からの測定はウェハの前面だけからの反射を表す。検出器D3からの測定はウェハの特性の分析にも役立つ。というのも、光の強さはウェハ内での光の吸収とWFの透過能とWBからの内部反射とに影響されるからである。
【0063】
光源Sがある角度範囲にわたって光を放射するようなシステムも存在する。入射角度範囲を開口の使用により制限することも可能であるが、これでは光の強さが低減してしまうため、測定のための信号強度が失われ兼ねない。光学系を伝搬する光線の挙動を光軸に対して様々に異なる角度で分析してもよい。図7には、光源Sから放射された2つの光線が図6で考察したのと同じ光学系を通過する際の挙動が示されている。このケースでは、光線Aと光線Bは光軸に対して同じ角度で放射されているが、両者は光軸に対してそれぞれ反対側にある。これらの光線の挙動は光軸について対称である。光線ARFとBRFはウェハの前面で反射した2つの光線を表しており、これらの光線は両方とも検出器平面内の同一の点で終わっていることが見て取れる。これは光源Sの像がウェハ表面で反射した後に検出器平面内に再現されるように光学素子が選択されているためである。この例においてこのことが意味しているのは、L1の焦点距離はSとL1の間の距離に、L2の焦点距離はL2とウェハの前面の間の距離に、レンズL3の焦点距離はL3と検出器D2の間の距離に一致するように選ばれているということである。
【0064】
光源Sがウェハの前面WFでの反射を介して検出器平面に結像されるというこの条件により、光源からのエネルギーが検出器D2の位置している検出器平面の小さな領域に効率よく伝達されることが保証される。図7に示されている実施形態では、2つの光線ARFとBRFは検出器D2上の同じ点に集束している。これはこれらの光線が光源S上の同じ点から発しているからである。この光源S上の点はこの実施形態では光軸上にあるが、Sの平面内のどの点についても同じことが当てはまる。その一方で、ウェハの背面から反射した光線BTRBとATRBは検出器D2の平面に異なる位置で到達する。必要ならば、これらの光線を検出器D1とD3で検出してもよい。上で述べたように、ウェハの背面から反射した光線BTRBとATRBは基板の光学特性に関する有用な情報を提供することもできる。したがって、基板の前面から反射した光線を検出することだけが関心事である実施形態もあれば、基板の背面から反射した光線を検出することだけが関心事である実施形態もある。もちろん、また別の実施形態では、基板の前面から反射した光線と基板の背面から反射した光線がそれぞれ個別に測定されることもある。
【0065】
図8には、本発明の方法とともに使用しうる別の光路が示されている。図8に示されている光路は図7に示されている光路と同種のものである。しかし、この実施形態では、2つの光線AおよびBは光軸に対してそれぞれ異なる角度で光源Sから放射される。ウェハの前面から反射した光線ARFとBRFはまたも検出器D2上の同じ点に達する。しかし、ウェハの背面から反射した2つの光線ATRBとBTRBはそれぞれ異なる位置に達し、BTRBのみが検出器D2に着面する。このことは、一般的な事項として、ウェハの前面またはウェハの背面から反射した光線が検出器D2によって検出される信号に与える相対的なインパクトについての例証となっている。ウェハの背面WBから反射したエネルギーはウェハの前面WFから反射したエネルギーよりも検出器平面内の広いエリアにわたって分布することとなる。その結果、検出器D2からの信号に対するウェハの背面から反射したエネルギーの相対的寄与はウェハの背面から反射したエネルギーの寄与よりも小さくなる。このようになる理由は、ウェハ表面WFの像が検出器平面に形成されるように光学素子が選定されているからである。ウェハの背面WBから反射した光線は検出器平面で結像しないので、エネルギー分布はより広い。
【0066】
図9には、検出器に着面するエネルギーの密度が最適化されるように光学的条件を選ぶことによって、ウェハの背面から反射したエネルギーとウェハの前面から反射したエネルギーとを区別するこの原理が示されている。曲線Aはウェハの前面から反射した光の検出器平面内におけるパワー密度分布を示したものである。曲線Bはウェハの背面から反射した光の相応する分布を示したものである。曲線Cは背面で1回より多くの反射をした光のパワー密度分布であり、曲線Dは曲線A,BおよびCからの強度の和である。曲線Dにより表された光のうちで軸位置−XD/2と+XD/2の間に入る部分を検出器により検出されるエネルギーであると見なせば、曲線Aからの信号の寄与は曲線BまたはCからの寄与よりも格段に大きいことが分かる。
図6−8に示されているように、異なる光成分を分離するため、および/または、あるいは前面反射または背面反射からの光信号の寄与を制御するために、様々な光路を使用し調整してもよい。さらに、異なる成分の分離を促進するために、他の技法や光学素子を光路に付加してもよい。例えば、必要ならば光を遮断するために、開口や光フィルタを光路に挿入してもよい。
【0067】
例えば図10を参照すると、遮断素子70を使用した光路の1つの実施形態が示されている。この実施形態では、遮断素子70は光線Bと軸に対して比較的小さな傾斜を有する光線とを遮断するために用いられている。このようにして、検出器D2は半導体ウェハの前面WFから反射した光線のみを受光する。
【0068】
ウェハ表面での入射角の分布を制御するこのような遮断素子は、その効果がウェハの背面から反射した光線のうちでまだ関心対象たる検出器に着面しうる光線を遮断することである限り、入射ビームまたは反射ビーム内のどこか他の場所に配置してもよい。入射角の分布の制御は、測定された反射能を特定の入射角または入射角範囲に合わせることが必要な場合にも有用である。また、ある実施形態では、入射角範囲を可調整の遮断素子によって変化させて、反射光信号の測定を異なる設定で行うことも可能である。この種の測定は、例えばウェハ内での吸収の度合いを描写することにより、サンプルの光学特性の記述を助けることができる。
【0069】
本発明に従って形成される光路は図10に示されているように単一の遮断素子70を含むものとしてもよいし、その時その時の用途に応じて複数の遮断素子を含むものとしてもよい。しかし、ここで、遮断素子は図10に示されているように個別の構成要素として光路に挿入してもよいし、他の光学素子のうちの1つに組み込んでもよいことが理解されねばならない。例えば直径の制限されたレンズ、ミラー、または他の光学素子は、これらの素子が光学系を伝搬して検出器に達する光線の固有の広がりを制限することができるならば、ここで使用される遮断素子として作用することができる。
【0070】
遮断素子70は、不所望な光線を除去することのできる適切な装置であれば、どのようなものであってもよい。例えば、ある実施形態では、遮断素子は選ばれた光線のみを通す開口を含んだ装置から成っていてよい。しかし、上で述べたように、レンズ、フィルタ、ミラー、または他の光学素子を使用してもよい。
【0071】
前面WFから反射したエネルギーと背面WBから反射したエネルギーの比を制御する別の手法は、レンズの焦点距離、特にレンズL2とL3の焦点距離の最適化を必要とする。これらのレンズの焦点距離の比はSが検出器平面D2において再結像する場合に前面WFに形成されるSの中間像の倍率を制御する。レンズL2の焦点距離をレンズL3の焦点距離に比べて小さくすることにより、倍率は上げることができる。これには前面からの反射と背面からの反射を区別する能力を増大させる効果がある。図11にはこのことの要点が図解されている。この場合、光線BTRBはもはや検出器D2に当たっていないので、BRTBが検出器に着面する図8の例に比べて、背面から反射した光と区別する能力は増大している。
【0072】
ある実施形態では、図11に示されているように、焦点深度を低下させることにより異なる光成分を分離するようにしてよい。図7および8に示された実施形態では、ウェハの前面WFはレンズL2の焦点にあり、検出器はL3の焦点にある。L2の焦点深度は焦点距離と照明角度を含む複数の要因に依存している。表面WFの周りの狭い範囲の位置から主に発する光線に関してL2とL3のみが検出器平面に像を形成するように条件を設定すれば、焦点深度はウェハの表面に近い領域に制限される。ウェハの背面WBが確実に焦点深度外となるようにすることで、ウェハの前面から反射した光線と背面から反射した光線を分離するようにしてもよい。というのも、検出器に達する放射の大部分はウェハの上面から反射したものだからである。
【0073】
いくつかの実施形態では、入射ビームに比較的大きな入射角を用いてもよい。この条件はむしろ処理チャンバ内でウェハに入射する加熱放射の入射角範囲を表すものとしてもよく、この測定手法に第2の利点をもたらす。このように、加熱放射がチャンバ内のウェハにどのように当たるかは、例えばレイトレーシングソフトウェアを用いた光学的モデリングによって評価することができる。加熱放射の入射角範囲を正しく理解すれば、測定システム内で使用される照明条件を処理設備で適用される照明条件に合わせる際に役立つ。
【0074】
場合によっては、ウェハの背面に伝搬した光が収集されて、再び表面に向かって再反射されるのを防ぐために、ウェハ表面上の比較的小さな領域から反射光を収集するようにしてよい。収集される反射光の出所であるこの領域のサイズは、使用される光学素子と、検出器、開口、フィルタ、または含まれているその他の光学素子のサイズとによって決まる。分析されるエリアの最適なサイズは部分的にはサンプルの厚さに依存する。というのも、ウェハ表面の大きなエリアから光を選択する場合、サンプルが非常に薄ければ、前面反射からの光線と背面反射からの光線を分離することはより難しくなるからである。しかし、考慮すべき他の要因もある。例えば、ウェハの表面がパターン成形されていれば、収集される反射光の出所である領域の反射能は変化しうる。これは領域の平均的な特性を得たいのであれば、有利である。
【0075】
例えば、ある実施形態では、収集される反射光の出所であるウェハ表面上の領域のサイズは比較的小さくてよく、高温計のような温度測定装置の観測エリアに一致するように設計してよい。あるいは、高温計の視野を収集される反射光の出所である領域に一致させると言ってもよい。しかし、他の実施形態では、ウェハ表面上の比較的大きな領域から光を収集してよい。反射光データを比較的広いエリアから収集することは、加熱装置と基板の間のパワー結合を最適化する場合に有益である。その一方で、基板をエネルギービームで加熱する場合には、光学的に特徴付けられるエリアをエネルギービームで照射されたエリアに一致させてよい。このような手法はレーザビームからのエネルギー結合の特性解析および最適化に特に有用である。〜1μmよりも長い波長でエネルギーを放射するレーザの場合、半導体基板は半透過であることが多いので、上記の手法はこのようなレーザにも特に有用であろう。例えば、このようなレーザには、ダイオードレーザ、YAGレーザ、ファイバレーザ、COおよびCO2レーザが含まれる。
【0076】
ある特定の実施形態では、光源は基板を横断して走査するものとしてよい。そうすれば、反射光の強さに関する情報を逐次的に収集することができる。走査は光源を移動させることによって、光路を移動させることによって、および/または基板自体を移動させることによって行われる。このようにして、基板上のどの特定の位置においても情報を収集することができる。択一的に、ウェハのエリア全域にわたる平均を収集してもよい。
【0077】
ある実施形態では、焦点距離の短いレンズを得るために、顕微鏡の対物レンズを用いてもよい。レンズは光路内の任意の位置に、例えば図11に示されているようにレンズL2の位置に配置してよい。レンズL2の位置に配置した場合、顕微鏡対物レンズはウェハ表面に放射を集束させるために使用される。このようなレンズは短い焦点距離と高い開口数を有する。それゆえ、このようなレンズは、ウェハを広い入射角範囲で照明し、浅い焦点深度で光を収集する光学系を得るための便利な手法を提供することとなる。それも特に、結果的に得られるウェハ表面の倍率が比較的大きい場合(例えば、光学系が10倍よりも高い倍率、例えば50倍のような倍率を有する場合)に、上記のような光学系を得るための便利な手法を提供する。しかし、所望の領域からのみ光が収集され、収集される放射の大部分が第1の表面で反射されただけであることが保証されるならば、ウェハ表面からより離れた、より大きな光学素子を含め、他に多くの代替的手法が考えられる。測定システムの光軸もウェハ表面に対して垂直である必要はない。
【0078】
検出器平面における光の分布の分析は、この平面内で検出器を走査することにより、または、様々なサイズの検出器または可変開口もしくは走査開口を使用することにより、または、電荷結合素子(CCD)カメラのような画像検出器や検出器アレイを使用することにより可能である。検出器平面における光の空間的分布に関する情報は測定の改善に用いることができる。例えば、基板の厚さが既知であるか、または測定される場合、ウェハの前面または背面から反射した成分に関する輝度分布の形状を解釈することが可能である。検出された分布は、アルゴリズムを使用して、基板内での多重反射に由来する他の成分にではなく、前面から反射した成分に分解することができる。したがって、図9に示されているように、背面から反射した成分を全信号から数学的に減じて、ウェハの前面から反射した信号のより正確な推定値を得ることができる。
【0079】
図5−8および10−11では、ウェハの背面から反射した光ではなく、前面から反射した光の量を区別することに主に焦点が当てられていた。上で述べたように、実際には反射光線の無限列が存在する。図12には、光源Sからの単一の光線Aがどのように上で述べた光学系を通って伝搬するかが示されている。このケースでは、図には、ウェハの前面WFから反射した光線R1と、背面WBでの1回の反射から生じる光線R2と、それぞれ背面での2回、3回、および4回の反射から生じるR3,R4およびR5の経路が示されている。原理的には、この系列には無限の光線が存在するが、上で述べたように、光線の強さはエネルギー損失のためにかなり急速に低下する。光線R1,R2,R3,R4およびR5はそれぞれ検出器D2,D3,D4,D5およびD6に達する。これら各光線の強さを測定すれば、ウェハの光学特性をより良好に決定することが可能である。例えば光線R1,R2,R3,R4およびR5を測定したいのであれば、光源Sは測定に十分な強さが得られるようにレーザ光源としてよい。
【0080】
ある入射角範囲にわたって光線を放射する光源の場合、各検出素子に多数の光線が当たるため、図9に示されているBやCのような曲線の族となる。輝度分布の分析は上に述べた成分の特定に役立ち、このような手法は、広がる角度範囲を制限し、したがってまた検出器に達しうる反射光成分の族を制限することのできる開口や他の光学素子の使用と組み合わせることができる。
【0081】
反射光の分析に関連して説明した原理は基板を透過する光の分析にも適用しうる。図13には、例えば、光源Sから光路を通って伝搬する2つの光線AおよびBの1つの実施形態が示されている。この実施形態において、レンズL1とL2は前と同じようにウェハ表面WFに光源Sの像を形成するために用いられており、レンズL4とL5はWFにおける像を検出器TD2の平面に再結像させている。設計により、ウェハの背面から反射しない透過光線TAおよびTBはTD2の平面に集束することが保証されている。ATRBRFやBTRBRFのようにウェハの平面において少なくとも1回の反射を経た光線は、検出器平面の異なる位置に着面する。したがって、反射光線の場合と同様に、TD2により検出される信号への多重反射光線の寄与を低減させることが可能である。
【0082】
図14には、光学系とウェハを透過した単一の光線Aの挙動が示されている。光線Aは、図12に示されている多重反射光線に同じように、複数の透過光線を生じさせている。このような光線も必要ならば検出器アレイにより検出し、反射光の空間分布の文脈で論じたのと同様の分析方法を用いて、透過光の空間分布を分析することができる。
【0083】
ここでは光源とウェハの間に2つのレンズを使用することが示されているものの、一般原理はより多数または少数のレンズを用いた代わりとなるより広範な光路によっても実現可能であり、実際、すべてのレンズまたはレンズのうちのいくつかを、曲面ミラーのようなミラーや他の光学素子で置き換えることによっても実現可能である。入射光または反射光の偏光状態を制御する光学素子も必要ならば機器の中に入れてよい。このような光学素子には、1/4波長板、1/2波長板または全波長板のような偏光板およびリターダー、または、平面偏光、楕円または円偏光を含む所望の偏光状態の放射を発生させる他の光学素子が含まれる。
【0084】
どのような測定の構成であれ、偏光状態を生成する際および/または入射角を生成する際には、これらの要因を考慮しなければならないことに注意しなければならない。垂直入射および準垂直入射(例えば、およそ25°未満の入射角で入射する光)に関しては、これらの効果はふつう極めて小さい。非垂直入射の場合には、s平面またはp平面のいずれかで偏光した入射放射で測定を行うのが有効である場合がよくある。両条件について測定することで、基板の光学特性を完全に算出することが可能となる。楕円偏光測定法も低温下での基板の事前特性評価のような様々な時点において実行してよい。
【0085】
測定は注目するいずれの波長で行ってもよいし、モノクロメータや他の波長選択性のフィルタリング素子のような適切な分光器を取り付けて、スペクトル上で行ってもよい。積分特性の測定も、広帯域エネルギー源を使用し、検出器で反射した広帯域波長特性をもつすべての放射を収集することによって行うことができる。
【0086】
半導体ウェハへ光を放射するために使用される光源Sは任意の適切な発光素子であってよい。光源は例えば1つの波長域においてまたは特定の波長で光を放射するものとしてよい。適切な光源には、Wハロゲン電球、Xeアークランプ、放電ランプ、発光ダイオード、レーザ、または、黒体空洞やグローバーや他の熱放射素子のような熱源が含まれる。場合によっては、処理装置で使用されるエネルギー源を表すスペクトルを放射するようにランプ放射源をセットするのが有効であろう。そのための1つの方法は、対象となる放射源の特性を評価し、それを処理設備内のエネルギー源を模倣する波長フィルタリング素子と組み合わせることである。
【0087】
ある実施形態では、光源はスーパーコンティニウム光源を含むものとしてよい。スーパーコンティニウム光源はタングステンハロゲンランプやLEDのような従来の広帯域光源よりもはるかに明るいため、ウェハ光学特性の迅速な測定に関して特別な利点をいくつも有している。このことは非常に速い測定を行うのに役立つ。というのも、所定時間内に供給されるエネルギーが格段に大きいため、より高い信号レベルで反射光、透過光、または散乱光が検出されるようになるからである。また、ウェハ特性の正確な測定を妨害しかねない比較的高レベルの迷光背景放射が存在している場合にも有効である。というのも、照明が非常に明るいため、このような迷光源からの光はスーパーコンティニウム光源からの光に比べれば取るに足らない程度となるからである。このことは処理チャンバ内でウェハの光学特性または熱特性の測定を行うときに、それも特にウェハが高温であるか、または、加熱素子、ランプ、レーザもしくはプラズマによって迷光放射が放出されている場合に、特に有利である。非常に明るい放射源の場合、大量の放射が小さな放射エリアから供給されるので、コンパクトな光学素子の使用も可能となり、光ファイバや光パイプ、処理設備やチャンバ内に容易に挿入できる他の素子と結合してもよい。スーパーコンティニウム光源は比較的平坦なスペクトルを、つまり、広波長域にわたってあまり変化することのないスペクトルを発生させることもできる。これには、光源によってカバーされる波長域を拡大し、反射スペクトルや透過スペクトルのようなスペクトルの測定の解釈を容易にするという利点がある。
【0088】
スーパーコンティニウム光は非線形媒体を高出力放射に曝すことで発生する。例えば、レーザからの高出力放射パルスを水セルに印加し、放射された光のスペクトルを収集することによって発生させることができる。効率の良い手法では、フォトニック結晶ファイバまたはテーパファイバの使用を要する。
【0089】
スーパーコンティニウム光源は半導体ウェハの特性評価に有用な波長域をカバーする光のスペクトルを発生させることができる。例えば、KOHERAS社(Birkerod,Denmark)のKOHERAS SuperKTM Whiteスーパーコンティニウム光源は、460nmから2000nmの間でパワースペクトル密度>4mW/nmをもつ放射のスペクトルを発生させる。このような光源は処理チャンバ内でのウェハ透過または反射の測定にとって特に興味深い。これらの測定はウェハの温度を導くために利用することもできる。さらには、この光源を他の様々な測定に直接または波長選択性フィルタリング素子と組み合わせて使用してもよい。このような素子は、ウェハに供給される光またはウェハからの反射、散乱、透過もしくは放射の後にウェハから収集された光の波長を選択することができる。測定は上で述べたように反射と透過を含むことができるが、ウェハに達する光を変調し、ウェハ特性の熱的または電子的変調を生じさせる方法も含むものとしてよい。このような変調は検出され、ウェハに関する情報の抽出に使用することができる。
【0090】
さらに、このような光源は熱処理にも、特にウェハ上にコーティングのパターンが形成されている場合にも有効である。この場合、広帯域スペクトルを用いて加熱を行うことにより、パターン内の異なる領域によって吸収されるパワーの偏差の程度が低下し、より一様な処理が可能となる。
【0091】
熱エネルギー源を使用する場合には、熱エネルギー源の温度を実際の処理条件の下でのウェハ温度に設定するのが有効である。必要ならば、ウェハ温度にマッチするようにそれぞれの処理に応じて実際の処理条件を設定してもよい。例えば、プロセスの主要なステップが1000°Cで行われるならば、熱源をその温度にする。広帯域放射源が使用されるこれらのケースでは、サーモパイルや焦電素子のような反射した放射を検出するための広帯域検出器を使用すると好都合である。処理チャンバ内で該当する条件と測定機機内で該当する条件の違いは校正手続きによって補償することができる。処理設備がウェハの加熱にレーザを使用する場合には、同一の波長で光学測定を行うことが必要である。レーザが特定の入射角と偏光状態でウェハに入射するならば、これらの観点も測定に取り込んでよい。
【0092】
基板の前面と背面の両方で測定を行って、基板の光学特性のより完全な記述を得るようにしてもよいことを理解されたい。上で説明したように、ある実施形態では、ウェハ表面の複数の位置で測定を行ってもよい。その場合、この情報からウェハ全域にわたる放射特性の空間分布のマップが得られる。
【0093】
ウェハ表面の複数の場所で測定を行うことは、例えば温度均一性を改善することで処理の均一性を改善する場合に特に有益である。例えば、ウェハ表面上の位置による光学的または熱的特性の違いに関した情報を測定および制御システムに供給してもよい。ある実施形態では、モデルベースのコントローラがこの情報を使用して、ウェハの異なる複数の位置における加熱条件をどのように最適化すればよいかを予測する。例えば、特性の分布をモデルベースの制御システムに与え、この制御システムが、温度均一性を最適化すべく、ランプの異なるバンクに供給されるパワーの最適設定を予測するようにしてよい。また、同様の方法を用いて、加熱時にあるいは基板を1つまたは複数のレーザビームに曝す際に、パワー結合の変動を制御してもよい。
【0094】
ウェハ表面上の位置による光学特性の違いに関した情報はウェハ上の異なる位置の温度を感知する複数のセンサの示数の補正に役立つ。同様の目的で、ウェハの厚さまたはドーピングの違いに関した情報を使用してもよい。同様に、ウェハ上のコーティングまたはパターンの違いに関する情報を同じように使用してもよい。
【0095】
場合によっては、照明された表面からのみ反射光を収集する構成と、(図3に示されている場合のように)焦点深度が深く、ウェハの両面で反射した後に光が収集されるような光学的構成の少なくとも2つの構成で測定を行うことが有益である。これら2つのケースは、例えば図10に示されているような開口を使用することで、または別個の測定ステップによって、1つの光路内で焦点深度を変えることにより融通させることができる。
【0096】
ウェハの両面からの反射能測定とウェハ透過能測定とを組み合わせれば、光学特性のかなり完全な特性評価が可能となる。透過能測定または反射能測定を室温で行うことの1つの利点は、ウェハが高濃度にドープされているのか否かを判定することができることにある。これは〜1μmを超える波長での光の吸収度を求めることで確認することができる。吸収係数が例えば0.5Ωcmを上回る比抵抗をもつシリコンのような低濃度ドープ材料の場合に予測されるよりも著しく高ければ、その材料は高濃度ドープされていると見なしてよい。この情報は特に〜800°C未満の温度でのプロセス処理における温度測定精度の改善と温度制御の改善に使用することできる。
【0097】
例えば複数の温度で事前測定を行えば、低濃度ドープされたウェハを高濃度ドープされたウェハから区別したり、一般にドーピングの性質についての情報を得ることができる。複数の温度で測定を行うことはまたウェハの他の特性を求めるのにも役に立つ。例えば、異なる温度での測定を表面の反射能のセンシングと併せて行えば、表面の反射能に温度依存性があることが示される。この情報は反射率、透過率、放射率、または吸収率の温度依存性の推定精度の改善にも有用である。例えば、注目温度(T2)における表面の反射能はT1およびT3のような他の温度で得られた温度からの外挿によって得られる。複数の温度での特性評価と第3の温度への外挿という考えは基板の吸収係数の温度依存性を推定するのにも役立つ。
【0098】
これらの測定のどれも基板の光透過を変調する手法と、例えば半導体内に余分な電子正孔対を形成することにより追加の自由キャリア吸収を誘発させる照明によって基板の光透過を変調する手法と組み合わせることができる。吸収度の変調は基板の厚さ方向に伝搬する光線に敏感な反射または透過した放射成分の相応する変調により顕になる。この手法は精度の改善に有効である。また、電子照射を含めた他の形態の放射を印加することによって光透過を変調してもよい。なお、電子照射はベータ線放射器からのベータ粒子の流束を機械的に変調することにより簡単に得られる。また、ウェハ温度を意図的に変調し、測定される特性の変化を観測することによって追加の情報を得ることも可能である。
【0099】
上で述べたように、ウェハ表面はパターン成形や表面トポロジーの変化の結果として放射を散乱させる場合がある。そのような場合、反射および透過した光のビームの強度は散乱パターンに影響されることがある。散乱光の存在と散乱の度合いを明らかにする1つの方法は、ウェハのそれぞれの表面に入射する光に関して測定した透過率が同じでるか否かを調べることである。照明された表面に応じて透過率が異なるのであれば、ウェハ表面の少なくとも一方は透過率測定のための光の収集が正しく行われない方向に光を散乱させている可能性が高い。したがって、非対称な透過率が測定されるということは光が散乱していることの徴候となりうる。ウェハの光散乱パターンを明らかにすることは光学特性の予測精度の改善に役立つ。これは高温計の波長におけるスペクトル放射率の推定を改善するのに特に有用である。光散乱の効果が特に著しい場合には、スペクトル放射率の正確な推定を行うために、ウェハの双方向反射率分布関数の測定が必要となることがある。また、反射率と透過率の測定のための照明条件を制御するために積分球を用いることも有用である。
【0100】
ウェハと何らかの加熱エネルギー源との間の相互作用を記述する場合、計算の際に、エネルギー源によって放射されたエネルギーのスペクトル分布を考慮することが必要となる場合がよくある。この方面は、エネルギー源によってエネルギーの放射が行われるスペクトル領域をカバーする波長区間にわたって、注目する光学特性を波長の関数として測定することで賄われる。そうすれば、光学特性の重み付け積分を用いて積分特性を得ることができる。例えば、注目する特性が量f(λ,T)であり、エネルギー源がスペクトルIL(λ)を放射するならば、積分特性はF(T)である。ここで、
【数1】
【0101】
積分は加熱源により放射されるエネルギーの大部分を含む波長域にわたって行われる。値f(λ,T)は反射率、吸収率、透過率などであってよいが、エネルギー源へのパワー結合を求めるには、積分吸収率が特に重要である。同様の原理は全放射率のような積分放射率を求める場合にも適用しうる。この場合、重みスペクトルは注目温度に対応する黒体放射スペクトルである。例えば、全放射率εtot(T)は下式に従ってスペクトル放射率ε(λ,T)から計算することができる。
【0102】
【数2】
ここで、Wbb(λ,T)は黒体放射体の放射スペクトルを記述するプランクの放射関数である。 積分は黒体放射体が温度Tにおいて放射するエネルギーの大部分を含む波長域にわたって行われる。積分放射率の推定値はウェハが任意の温度にあるときにウェハから放射される熱度を求めるのに役立つ。積分特性を求める代替的手法では、適切なスペクトルでウェハを照明することを、したがってまた積分測定を直接行うことを要する場合もある。後者の手法は照明スペクトルと光学検出システムのスペクトル応答の注意深い調整が必要とされることもあるが、より高速で、より簡単であるという利点を有する場合もある。
【0103】
上で述べたように、ある実施形態では、基板の光学特性のより完全な記述を得るために、基板の前面と背面の両方で測定が行われる。さらに別の実施形態では、ウェハの両面が両面測定のために両方とも照明される。
【0104】
例えば、図15に示されている配置構成では、装置はウェハの2つの表面のどちらに入射する光も供給することのできる能力を備えている。放射源SWFはウェハの前面(WF)を照明する。WFから反射した光は放射を収集および感知する装置であるDRWFによって収集される。DRWFは、必要ならば、感知される放射をWFから反射した成分のみに限定する光学素子を含んでいてよい。同様に、DTWFはウェハを透過した放射を収集する放射収集感知装置である。放射源SWBはウェハの背面(WB)を照明する。WBから反射した光は放射収集感知装置であるDRWBによって収集される。DRWBは、必要ならば、感知される放射をWBから反射した成分のみに限定する光学素子を含んでいてよい。同様に、DTWBはウェハを透過した放射を収集する放射収集感知装置である。これらのサブ測定システムを組み合わせれば、ウェハ特性のより完全な特性評価のために、ウェハのいずれの面からの照明でも測定を行うことが可能となる。
【0105】
図16には、ウェハの2つの表面のどちらに入射する光も供給することのできる能力を備えた装置を有する第2の配置構成が示されている。放射源SWFはウェハの前面(WF)を照明する。SWFからの光でWFから反射したものは放射収集感知装置であるD1により収集される。D1は、必要ならば、感知される放射をWFから反射した成分のみに限定する光学素子を含んでいてよい。同様に、D2はウェハを透過した放射を収集する放射収集感知装置である。放射源SWBはウェハの背面(WB)を照明する。この配置構成では、光学素子はSWBからの光のうちWBから反射した光がD2により収集されるように構成されている。D2は、必要ならば、感知される放射をWBから反射した成分のみに限定する光学素子を含んでいてよい。同様に、D1はウェハを透過したSWBからの放射を収集することができ、その実施形態は図15で可能な測定と同じ測定を行うことができるが、この実施形態の方が使用する光学素子と検出器の数が少ないため、より安価で簡潔となる。また、ウェハ上の同じ空間的位置で測定を行うとしても、図16の図式で行った方がより簡単である。必要ならば、SWFからの放射とSWBからの放射を使用した測定を異なる時点において実行し、SWBからの放射がセンサによって感知されるのと同じ時点にSWFからの放射がセンサに達しないようにしてもよい。あるいは、少なくとも一方の信号に特定の光源からの放射から生じたものであると識別されうるような時変特性を与えるために、SWFまたはSWBの少なくとも一方からの放射出力を変調することによって測定を分離してもよい。例えば、SWFの出力を既知の周波数で強度変調し、その周波数成分の挙動を追跡するために、D1とD2からの信号をフィルタリングすることが考えられる。信号を分離する他の方法には、SWFからの光出力とSWBからの光出力とでの差異、例えば波長や偏光状態の違いなどを利用することを含むものがある。また、SWFまたはSWBからの放射の測定により適合するように、光収集感知装置D1およびD2の特性を変化させることも可能である。例えば、D1がウェハから反射したSWFからの光を収集している間は反射光の収集が最適化されるようにD1の特性を設定し、SWBから透過した光を収集するときには透過光の収集が最適化されるようにD1の特性を設定するものとしてよい。もちろん、必要ならば、これら両方の機能が同時に実行されるように特性を最適化してもよい。
【0106】
ウェハ特性の測定のために最適化される図15および16に示された光収集感知装置の特性には、レンズ、開口、ミラー、および検出器のような光学素子の位置または形状の調整または選択が含まれうる。また、フィルタリング素子や偏光素子の調整も含まれうる。また、電子フィルタやデジタルフィルタ、増幅器の設定、信号処理回路およびアルゴリズムのようなものも含まれうる。放射源SWFおよびSWBは反射光または透過光の成分の測定の最適化を補助する光学素子と電子素子を含むものとしてよく、これらの素子は必要ならば特定のウェハ特性の測定に応じて変えてよい。図15および図16に示されている構成では、ウェハに対して垂直な入射角が示されているものの、必要ならば、垂直入射または準垂直入射で測定を行ってもよい。そのような場合、入射放射の経路を完全には阻止せずに、ウェハによって反射または透過された放射を光収集感知装置がサンプリングすることができるように、ビーム分割素子を含めると好都合である。
【0107】
多くの用途にとっては、ウェハに放射を供給する光学素子、または、ウェハから反射した放射もしくはウェハを透過した放射を収集する光学素子をアクロマートとするのが有益である。このような光学素子は集束特性が波長に伴って大きく変化することがないという特徴を持っている。このため、ウェハの同一領域からの放射をサンプリングしつつ、広い波長域にわたって(逐次または同時に)測定を行うことが可能となる。アクロマートな手法を実現するには、反射光学素子を使用することが最も簡単である。
【0108】
図17には、ウェハ上の複数の位置で測定が行われる装置の一例が示されている。この例では、光はウェハの前面に入射しているが、この手法はウェハの背面に入射する光を用いた測定に容易に拡張されるか、両面測定の可能な図16および17の手法に拡張される。複数の位置での測定またはウェハ特性のマッピングでさえも他の図式によって可能である。例えば、機械的にウェハを動かして測定装置を通過させ、異なる位置で特性が評価できるようにしてもよい。あるいは、測定装置を定置ウェハに対して動かす、または測定に使用される放射ビームをウェハ表面全体にわたって走査してもよい。別の手法は、ウェハ全体またはウェハの少なくとも一部分をより広い放射ビームで照明し、反射および透過した放射ビームを分析することを含む。ビームは、ウェハ全体から、または線状の領域のようなサブ領域から反射した光を含んでいてよい。このような分析は、放射収集感知装置を放射ビームに関して走査することによって、または、放射ビームを収集感知装置に対して走査することによって行いうる。あるいは、光学系により光ビームを収集し、カメラのような撮像デバイスに供給してもよい。
【0109】
上記方法の実際の活用
表面反射能と、必要ならば、ウェハ透過能の測定値が得られれば、この情報はウェハ処理中のウェハの熱放射特性の予測に使用することができる。プロセス処理がウェハ温度T>700°Cで行われる場合には、非常に単純な手法を適用することができる。この場合、考察されるほとんどのケースにおいて、厚さが600μmを超えるシリコンウェハはすべての注目波長において不透過と見なしうる。その場合には、任意の波長における反射能とウェハ放射能をキルヒホッフの法則により関係づけることができる。
【0110】
より洗練された手法は、放射特性の推定値を改善するために、ウェハ温度に関する情報を取り入れる。例えば、高温計の示数が利用できるならば、この示数から導出された温度を特性推定値の改善に色々と使用することができる。1つの手法は、ウェハの吸収係数をモデルから予測し、この特性をウェハの光学特性の室温での測定値と組み合わせて、ウェハの高温特性のより正確な推定値を求めることである。
【0111】
高温計の示数はウェハからの放射損失のより良い推定値を求めるためにも使用しうる。損失は放射特性と温度の両方に依存する。2つの特性の推定値を組み合わせることにより、ウェハの様々な領域からの放射熱損失のより良い推定値を得ることができ、したがってまたウェハ温度制御と温度均一性もランプパワーの適切な調節により改善することができる。
【0112】
例えば、下記は図に示されている光路から収集した情報を利用するためのより詳細な方法である。上で述べたように、ある実施形態では、本開示は基板の内部透過率が0.1未満である高い温度において高温計のような放射感知装置の示数を補正する方法を対象としている。この実施形態では、本発明の光路はウェハの一方の表面から、例えばウェハの前面から反射した光を収集するために用いられる。測定はウェハが雰囲気温度のような比較的低い温度にあるときに行われる。測定はまた高温計の動作波長域と実質的に同一の波長域でも行われる。
【0113】
本開示の方法からは、ウェハの前面の反射能が求められる。反射能は高温時のウェハの反射率を導出または求めるために用いられる。特に、高温時には、温度につれて内部透過率が低下するため、反射率は実質的に前面の反射能と同じである。ウェハの放射率は反射率から求められる。例えば、放射率は一般に1−反射率に等しい。求められた放射率は高温計の示数の補正と温度制御の精度の改善に使用される。
【0114】
択一的な実施形態では、本発明の方法を基板の内部透過率が0.1を超える比較的低い温度における高温計示数の補正のために使用してもよい。この実施形態では、図に示されているような光学装置は、ウェハが比較的低い温度にあり、かつ高温計の動作波長域にある間に、ウェハの一方の表面から反射した光を収集し、その量を求めるために使用される。
【0115】
また、この実施形態では、本開示の方法を上と同じ条件を用いてウェハの反対側の表面から、例えばウェハの背面から、反射した光を収集するために使用してもよい。この情報から、ウェハの前面の反射能とウェハの背面の反射能が求められる。ウェハの透過率は測定してもよいし、モデルまたは高温時のウェハの他の測定値から求めてもよい。
【0116】
透過率が求められれば、ウェハの放射率を求めることができる。例えば、放射率は一般に1−透過率−反射率に等しい。この放射率は高温計の示数の補正と温度制御の精度の改善に使用することができる。
【0117】
温度測定を改善することに加えて、本開示の方法はパワー吸収を最適化するために加熱装置を制御する際にも使用することができる。例えば、ウェハの内部透過率が0.1未満である比較的高い温度では、本開示の方法はウェハの前面のような一方の表面から反射した光を収集し、その量を求めるために使用することができる。これらの測定は低い温度で、例えば雰囲気温度または雰囲気温度近傍で、完了させてもよい。しかし、この実施形態では、測定の行われる波長域は処理中にウェハの加熱に使用される加熱装置の波長域と実質的に重なっていなければならない。
【0118】
ウェハの一方の表面の反射能が求められてしまえば、反射能は高温時の反射率を求めるために使用される。上で述べたように、高温時には、内部透過率の低下のため、反射率は実質的に反射能に等しい。
【0119】
反射率は一般に高温時の放射率に等しい吸収率を求めるために使用することができる。具体的には、吸収率は1−反射率に等しい。吸収率はパワー吸収の最適化および/またはチャンバ内に収容された1つもしくは複数の加熱装置のエネルギー設定の最適化に使用することができる。
【0120】
上記方法は、図1に示されているように、ウェハ14が加熱装置22によってウェハの一方の側から加熱されるようなシステムに特に適している。しかし、ウェハの両側が別個の加熱装置で加熱される場合には、上記方法をウェハの反対側表面に対して繰り返してよい。このようにして、ウェハの上部を加熱する第1の加熱装置はウェハの底部を加熱する第2の加熱装置とは独立に制御される。
【0121】
本開示の方法は基板の内部透過率が0.1を超えるような比較的低い温度のときの加熱装置の設定を最適化するためにも使用することができるこの実施形態では、光学装置は、雰囲気温度または雰囲気温度近傍で、かつウェハを加熱する加熱装置の波長域と実質的に重なる波長域においてウェハの一方の表面から反射した光を収集するために用いられる。その後、同じ測定算出が同様の条件でウェハの反対側表面において実行される。
【0122】
この情報から、ウェハの前面の反射能とウェハの背面の反射能が求められる。基板の透過率は測定または高温時のウェハのモデルから導出される。透過率が求められてしまえば、吸収率は実質的に放射率に等しいと仮定して推定してよい。したがって、ウェハの一方の面に基づけば、吸収率は1−透過率−反射率に等しい。吸収率はそのあと加熱装置上のパワー出力および/またはウェハ処理中の加熱装置のエネルギー設定を最適化するために使用される。
【0123】
再び、第1の加熱装置がウェハの一方の側を加熱し、第2の加熱装置がウェハの反対側を加熱する場合には、上記方法をウェハの反対側表面に対して繰り返し、両方の加熱装置が互いに独立して最適化されるようにしてよい。
【0124】
上記実施形態に加えて、本開示の方法により得られた情報は熱処理チャンバ内における他の様々なパラメータの制御にも使用することができる。
【0125】
上に述べた基板の光学特性は図10に示されているような熱処理チャンバ10内で求めてもよいが、ある実施形態では、光学特性は任意のプラットフォーム、ロボットアームまたは別個のチャンバといった異なる場所で求められるものとしてもよい。さらに、上記測定は処理の直前またはウェハ処理自体とは異なる時点において行われてもよい。例えば、図2を参照すると、ウェハ処理システム全体が示されている。この実施形態では、複数のウェハが熱処理チャンバ10と本発明にしたがって形成されたウェハ光学処理チャンバ200の近傍に配置されたカートリッジ100に積み重ねられる。ウェハを1つの箇所から別の箇所へ移動させるために、システムはさらにウェハ運搬装置110を有している。
【0126】
処理中、上で述べた方法にしたがってウェハの少なくとも1つの光学特性を求めるために、カートリッジ100内にあるウェハをウェハ光学処理チャンバ200へ移動させてよい。ウェハ特性が求められてしまえば、ウェハはウェハ運搬装置110を用いて再び熱処理チャンバ10に輸送される。その後、ウェハ光学処理チャンバ200内で求められたウェハの光学特性を、熱処理チャンバ10内の少なくとも1つのプロセス変数またはシステム構成要素を制御するために使用してもよい。例えば、この情報を加熱装置の電力制御器を制御するために用いてもよいし、処理中のウェハの温度を求めるために使用される高温計の校正あるいは制御に用いてもよい。
【0127】
図1に戻ると、熱処理システム10はさらにシステム制御器50を有するものとしてよい。なお、システム制御器は50は例えばマイクロプロセッサとしてよい。制御器50は様々な場所でサンプリングされた放射量を表す光検出器30からの電圧信号を受信するように構成されているものとしてよい。制御器50は、光検出器30により感知された放射の量とウェハ光学処理チャンバ200内で求められた光学特性とに基づいて、ウェハ14の温度を計算するように構成されていてもよい。
【0128】
図1に示されているようなシステム制御器50は加熱装置電力制御器25と通信するものとしてもよい。再び、チャンバの外で求められるウェハの光学特性に基づいて、制御器50は、加熱装置により放射され、ウェハ14により吸収される熱エネルギーの吸収を最適化するために、加熱装置への電力を選択的に増大または減少させることができる。しかし、電力制御器25は、放射強度の制御に加えて加熱装置22を別の仕方で制御するためにも、システム制御器50と合同で使用されうることを理解しなければならない。例えば、ウェハ表面の異なる部分が異なる放射量に曝されるように、システム制御器50はランプ24により放出される放射の量を変化させるよう構成されていてもよい。また、放射がウェハ14に接する角度である入射角と放射の波長を本発明にしたがって選択的に制御してもよい。
【0129】
本開示による特定の様々な方法をより詳細に論じる前に、先ずは、ウェハの前面または背面にコーティングが施されている場合でも光がどのようにウェハ内を伝わるか、また、光の強度がこの移動経路に基づいてどのように変化するかを論じることが役に立つだろう。
【0130】
例えば、図18を参照すると、基板またはウェハ14には前面コーティング80と背面コーティング82が施されている。図示によれば、あるパワーを有する入射光84がウェハ14の前面コーティング80に接触している。
【0131】
図18に示されているような一般的なウェハ14は様々な特性を有しているので、本開示による方法を実践する際には、これらの特性を考慮しなければならない。例えば、ウェハの2つの表面がそれぞれ異なる反射能と透過能を有していることもある。さらには、表面の反射能はウェハの外部から入射する放射とウェハの内部から入射する放射とでは異なっている場合もある。表面領域はこれらの反射能と透過能に影響を及ぼす様々なフィルムやパターンを含んでいるかもしれない。これらの表面領域(ウェハの前面および背面の両方における)はウェハのバルクを形成する基板材料をカバーしている。ウェハが半透過の場合、ウェハ内を伝搬する様々なエネルギービームの多重反射がウェハの前面反射率R*WFとウェハの外から観察した透過率S*とに影響を及ぼす。これら光学特性のすべては波長λと温度Tの関数としてよい。
以下の考察では、Ttはウェハの上面の透過能であり、Tbはウェハの底面の透過能であり、Rtvは基板の外からウェハに入射する放射に対するウェハの上面の反射能であり、Rtsは基板内からウェハに入射する放射に対するウェハの上面の反射能であり、Rbsは基板内からウェハに入射する放射に対するウェハの底面の反射能である。一般に、入射放射が垂直入射でない場合、すべての特性は入射角と放射の偏光面の関数となる。
【0132】
一般に、ウェハのバルクの材料は放射波長λと温度Tの関数である吸収係数α(λ,T)を有している。基板内を通る光線が被る強度の減衰は下記の値により表される。
【0133】
【数3】
ここで、dは基板の厚さであり、θiは内部伝搬角である。なお、内部伝搬角は光線の方向とウェハ表面の法線との間の角度である。ここで用いられているように、値"a"は内部透過率を指している。
【0134】
図19において、反射光線R1の強度はウェハの前面(WF)の反射能Rtvの影響しか受けないため、入射光線の強度がIならば、光線R1の強度はRtvIである。基板内へと透過した光線は、前面領域を通過してウェハのバルクに入るちょうどその点で、強度TtIを有する。光線A1は、基板を横断するにつれて、エネルギー吸収のために強度を失う。その結果、光線A1は背面領域(WB)に達するちょうどその点で強度TtIを有する。光線A1のうち、背面で反射して内部光線A2を形成する部分は強度aTtRbsIを有し、透過して光線T1を形成する光は強度aTtTbIを有する。反射光線A2は前面に達するときには基板での吸収の結果としてさらに強度を失っており、今や強度はa2TtRbsIである。光線A2のうち、前面で反射して光線A3を形成する部分が初め強度a2RbsRtsIを有するのに対し、前面を透過して光線R2を形成する部分は強度a2Tt2RbsIを有する。光線A3は背面に達するときには強度a3TtRbsRtsIを有する。A3のうち、反射して光線A4を形成する部分が初め強度a3TtRbs2RtsIを有するのに対し、背面を透過して光線T2を形成する部分は強度a3TtRbsRtsTbIを有する。光線A4は前面に達するときには強度a4TtRbs2RtsIを有する。光線A4のうち、前面で反射して光線A5を形成する部分が強度a4TtRbs2Rts2Iを有するのに対し、前面を透過して光線R3を形成する部分は強度a4Tt2Rbs2RtsIを有する。これ以降、さらに多くの多重反射が生じ、基板から現れる相次ぐ透過光線または反射光線の各々は先行する光線に比べてさらに減衰するということは容易に理解される。減衰は基板内での2回の移動と上面および底面からの反射の結果として生じるので、各光線は先行する光線に比べて強度がa2RtsRbs倍だけ低下する。
【0135】
ウェハが透過させる全強度は下記の形の数列をなす成分T1,T2等をすべて加算することにより得られる。
【0136】
【数4】
これは次の表現に単純化することができる。
【0137】
【数5】
同様に、ウェハから反射する全強度は下記の形の数列をなす成分R1,R2,R3等をすべて加算することにより得られる。
【0138】
【数6】
これは次の式に単純化することができる。
【0139】
【数7】
式(3)および(5)はより単純な式に還元しうる幾何級数を含んでいる。全透過エネルギーと入射強度Iとの比をとれば、ウェハの透過率は次式のように得られる。
【0140】
【数8】
同様に、ウェハの前面に関する反射率は下式により得られる。
【0141】
【数9】
【0142】
一般に、透過率と反射率も入射角と考察している偏光面とに依存する。この問題は直交する2つの偏光面であるp偏光状態とs偏光状態を別個に考察することにより対処される。それぞれのケースについて、適切な反射能と透過能を用いて、対応する反射率と透過率が求められる。ウェハ前面の放射率SWFまたは吸収率AWFは、任意の波長、入射角、および偏光状態について、下式から得られる。
【0143】
【数10】
式6,7および8を組み合わせれば、次の式を導くことができる。
【0144】
【数11】
表面の反射能、透過能、吸収係数、および基板の厚さに関する適切なデータ集合が与えられれば、この式を用いてウェハ前面の放射率または吸収率を計算することができる。
特定の光線からの選択的エネルギー収集による特定の特性の算出
従来の測定はウェハによる透過または反射の全強度に寄与する反射光または透過光の様々な光線を区別しない。その結果、ウェハ特性の評価に役立ちうる情報が失われてしまう。R*WFを測定する場合に必要となるように、量Rtvは、例えば光線R1の強度を選択的に測定することにより、a,Tt,RbsまたはRtsを知らなくても直接導き出すことができる。同様に、S*を測定する場合に必要となるように、量aTtTbは、光線T1の強度を選択的に測定することにより、RbsまたはRtsを知らなくても求めることができる。
【0145】
さらに、他の光線の強度を選択的に測定すれば、さらに多くの情報を得ることができる。例えば、内部透過率aが求められていれば、式1を用いて吸収係数を導き出すことができる。吸収係数は式1を次のように変形することにより計算される。
【0146】
【数12】
垂直入射の場合、この式はθi=0のケースに単純化される。したがって
【数13】
【0147】
放射が垂直入射で入射する場合、角度θiはスネルの法則から得られる。実際的には、ほとんどの半導体材料の屈折率はかなり高い(>3)ので、
と仮定すれば、吸収係数として得られる値の誤差は通常は7%未満となり、ウェハに当たる放射の入射角が<30°ならば、誤差は一般に2%未満となる。
【0148】
光線R2の強度を選択的に測定すれば、量a2Tt2Rbsが得られる。これは特に有用である。というのも、量a2Tt2Rbsは内部透過率に依存しているため、反射光の成分の測定値を用いて基板内での光吸収の規模を導き出すことができるからである。通常、基板内での光吸収は透過率測定を行うことで求められるが、幾何学的、機械的、または別種の制約条件のため、透過率測定を行うことが難しい状況も存在する。そのような場合には、反射の測定を利用してこの目標を達成することが有効である。R*WFも内部透過率に影響されるが、直接R*WFの測定を利用して内部透過率を導き出すことは困難である。例えば、光線R1の強度が光線R2の強度よりも著しく大きければ、R*WFの測定は内部透過率に依存しない第1の表面反射Rtvによって左右される。その結果、光線R2,R3等の反射率への寄与を非常に正確に求めることは困難となる。このため、R*WFの測定に基づいた内部透過率の算出はより誤差を受けやすい。これとは対照的に、光線R2の強度は内部透過率の大きさに直接影響されるので、その測定からは、より精確な推定値が得られる。
【0149】
反射成分R2はウェハの上面の透過能Ttと背面の反射能Rbsにも影響を受ける。したがって、R2の強度を測定することで、上記特性を求めてもよい。反射率R*WFは、光線R2,R3等の寄与の結果、上記特性にも反応する。しかし、反射率R*WFはRtvとRtsにも影響されるので、R*WFの測定を利用してTtまたはRbsを導き出すことはより困難である。
【0150】
他のいずれかの光線の個々の寄与を選択的に測定することも様々な状況において有用である。例えば、光線T2は量a,Tt,Tb,RbsおよびRtsに反応する。この光線の強度を測定すれば、透過の測定から、基板内から入射する放射に対する前面の反射能Rtsに関する情報を得ることができる。光線の強度比も有用である。例えば、光線T2のT1に対する比またはR3のR2に対する比からは、量a2RtsRbsが得られる。
ウェハの背面と前面の別個の測定
ウェハのより完全な特性評価のためには、互いに逆側からウェハに入射する光について、反射および/または透過光成分の測定を別個に行うようにすると有益である。例えば、光線A0は図19に示されているようにWFと記された側から入射してもよいし、WBの側から入射してもよい。
【0151】
光線A0が同じ角度と同じ偏光状態で入射するならば、透過光成分T1,T2等は両方の図式で同じでなければならない。このことは式2の級数の項を調べてみれば明白である。というのも、各項(それぞれ透過光線の強度に相当する)は下付き文字tを下付き文字bに変えても不変だからである。
【0152】
下付き文字の交換は照明される表面をWFからWBへ変えることと数学的に等価である。透過光測定が2つの照明条件に関して一貫していることを利用して、測定装置が正しく機能していかをチェックすることもできる。しかし、いずれのウェハ表面であっても光の散乱を生じさせる何らかのフィーチャを有していれば、反射光線または透過光線のパターンがより複雑となり、強度測定が照明される側に対して敏感になる場合がある。これはウェハのバルクが光を散乱させる場合でも同じである。
【0153】
透過光成分はどちらの表面が照明されるかには関係なく等しくなければならないが、同じことは反射光成分については成り立たない。そのため、表面WBの照明はウェハの光学特性に関して新しい情報を提供する。ウェハの前面が照明されるときのウェハの反射率R*WFは背面が照明されるときの反射率R*WBと必ずしも等しくない。R*WFは式7で与えられるが、R*WBは次の式で与えられる。
【0154】
【数14】
ここで、Rbvはウェハの外からウェハに入射する放射に対する背面の反射能である。
同様に、R1WF,R2WF,R3WF等と名付けられた前面照明の様々な反射光線は、R1WB,R2WB,R3WB等と名付けられた背面照明の対応する光線と必ずしも一致しない。この非対称性の起源は式4の級数の項を調べると明らかになる。というのも、各項(それぞれ反射光線の強度に相当する)は下付き文字tを下付き文字bに変えても不変だからである。この非対称性のおかげで、背面照明での測定から、ウェハの光学特性に関する追加情報を得ることが可能になる。特に、第1の反射光線R1WBがウェハの外から入射する放射に対する背面の反射能Rbvの測定値をもたらすことが分かる。さらに、第2の反射光線R2WBの強度の測定値からは量a2Tb2Rtsの測定値が得られる。
【0155】
この考察から、ウェハの前面と背面から照明する場合に反射光成分および/または透過光成分の測定を行えば、ウェハの光学特性に関する有用な情報が多数得られることは明らかである。また、光学特性に関する情報はウェハの片面または両面の吸収率もしくは放射率の測定から得ることも可能であることに注意されたい。これらの量は一般にウェハの両面で等しい。ウェハの前面の放射率εWFと吸収率AWFが式8あるいは式8から導かれる式9から求められるのに対して、ウェハの背面の放射率εWBと吸収率AWBは次の式で与えられる。
【0156】
【数15】
この式からは次の式が導かれる。
【0157】
【数16】
これらの量の直接の測定は特殊な計測を要するものの、可能である。例えば、任意の波長での放射率はウェハから熱的に放射される放射を測定することで導き出すことができる。ウェハからの熱放射の強度をウェハの温度と等しい温度において黒体放射体から放射される熱放射の強度と比較すれば、放射率の導出は可能である。このような測定をεWFとεWBの測定に利用してもよい。任意の波長における吸収率は、ウェハをその波長における既知の放射強度で照明し、ウェハの温度が時間とともにどのように変化するかを観察することにより測定することができる。ウェハ温度の上昇は注目する波長におけるウェハの吸収率に関係している可能性がある。このような測定をAWFとAWBの測定に利用してもよい。
【0158】
ウェハ特性に関する情報を測定から得る
本開示において説明される測定は、処理されるウェハのタイプの特定を含む様々な目的で利用することができる。例えば、最適処理アプローチでは、基板材料、ドーピング、ウェハの厚さ、所与の波長域における反射率および透過率に関する情報が必要となる場合がありうる。このような情報はスペクトル放射率もしくは吸収率または全放射率もしくは吸収率の温度依存性の予測に利用することができる。この情報はさらに熱処理の均一性と繰り返し精度の改善に利用することができ、また、最大の時間効率が、したがって最高のウェハスループットが得られるように、加熱処理の制御を最適化するためにも利用することができる。処理されているウェハのタイプに関する情報は別個に処理設備に供給してもよいが、時としてこれが不都合であったり、情報が利用できないこともある。この場合、所望の特性を、処理の直前または処理の初期段階に入ってしまっていても、原位置測定することが望ましい。
【0159】
例えば、吸収係数α(λ,T)に関連性を有する内部透過率の推定値が得られれば、処理中されているウェハのタイプを知ることができる。これは基板の吸収スペクトルが基板の材料特性に影響を受けるからであり、基板の吸収スペクトルはα(λ,T)の波長依存性によって説明されるからである。原則として、処理されているウェハのタイプはこのウェハの吸収スペクトルの測定を通して識別される。例えば、基板を形成する材料は、測定された吸収スペクトルを様々な材料の吸収スペクトルデータと比較することによって識別することができる。例えば、処理されているウェハが低濃度ドープされたシリコンで、比抵抗が1Ωcmよりも高ければ、吸収スペクトルは波長が0.8μmから1.2μmへと増大するにつれて大幅な吸収の低下を示す。ただし、波長が0.8μmのとき、室温におけるα(λ,T)は〜850cm-1であり、波長が1.2μmのとき、室温でのα(λ,T)は〜0.02cm-1である。
【0160】
この急峻な特徴はよく吸収エッジと呼ばれ、そのスペクトル位置は材料のバンド構造における最小エネルギーギャップの大きさに関連している。このような独特の特徴を吸収スペクトル中に識別することで、シリコン製ウェハ基板の識別が容易になる。
【0161】
これに対して、ウェハがゲルマニウムでできている場合には、吸収エッジ特徴は1.8μm付近の波長域に現れる。同様の手法は、GaAs,InP,InSb,GaSb,GaN,InN,SiCおよびダイアモンドのような他の材料の区別にも使用することができる。それはこれらの材料の吸収スペクトルも吸収エッジを示すからである。また、同様の手法は、シリコン・ゲルマニウム合金やGaAsとInPからなる四元合金のような半導体合金の識別にも使用することができる。吸収スペクトルの分析は、これらの合金の組成を、例えばSi含有量とGe含有量の比を求めるためにさえ使用することができる。ほとんどの材料は吸収スペクトル中に独特の特徴を示すので、原則的に、α(λ,T)の分析は種々の絶縁体と金属の区別、ならびに、半導体の区別にも使用することができる。
【0162】
例えば、多くの材料は電子がエネルギー準位間を遷移する結果として上昇する吸収特徴を示す。このような特徴は一般に電磁スペクトルの紫外(UV)部分、可視部分、近赤外部分の波長に現れる。また、多くの材料は原子種の平均位置周りの振動に関連した吸収特徴も示す。このような特徴は一般に赤外波長に現れる。処理されている材料を識別するために、測定された吸収スペクトルを、吸収エッジのスペクトル位置、電子遷移、および振動性吸収特徴に関する参照情報と比較してもよい。反射光強度と透過光強度は吸収現象の影響を受けるため、どちらか一方を測定すれば、吸収スペクトルに関する情報を導き出すことができるということを理解することは重要である。さらに、不透過表面の場合であれば、反射スペクトルの分析によっても同様の情報が得られる。
【0163】
吸収スペクトルはウェハのドープ状態の判定にも利用することができる。例えば、電気活性ドーパントが存在すれば、自由キャリア吸収の現象が生じる。自由キャリア吸収は電磁放射と半導体格子内を移動できる電荷キャリアとの相互作用から生じる。吸収の強さは自由キャリア濃度に依存する。半導体において、自由キャリアはドーピングの種類に応じて電子または正孔であってよい。n型半導体では、主な電荷キャリアが電子であるのに対し、p型半導体では、主な電荷キャリアは正孔である。自由キャリア吸収の波長および温度に対する依存性は理論的または経験的モデルから推定することができる。また、このようなモデルに、高濃度ドープされた半導体におけるバンドギャップの狭窄やバンド間遷移に関連した吸収のような、吸収スペクトルに対するドーピングの他の効果を含ませてもよい。吸収スペクトルに関する情報を収集し、スペクトルをモデルで分析することにより、キャリア(電子または正孔)のタイプと濃度を求めることが可能である。この情報はその後、半導体製造段階における挙動の予測に使用することができる。
【0164】
光学特性の測定からは、基板に関する情報だけでなく、ウェハ上の表面コーティングとパターンに関する情報も得られる。ウェハの前面と背面は両方ともコーティングされていてよい。これらのコーティングは複数のフィルムを積み重ねたものとしてよい。これらのコーティングは様々なデバイスフィーチャを形成するために横方向にパターン付けされていてもよく、また、トレンチ状のフィーチャや他の非プレーナ構造が存在していもよい。一般に、デバイスフィーチャは上ではWFと呼んだウェハ前面にある。本開示に記載された光学特性はウェハ表面の近傍にあるフィーチャやレイヤーの特性評価に役立つ。この特性評価から得られた情報はその後、半導体製造段階におけるプロセス制御の改善に使用することができる。ここで、前面反射と背面反射を区別する能力があると、ウェハのどちらの面のフィルムや構造の特性をより十全に理解するにも便利である。ウェハの2つの表面の光学特性は、以下に論じるように、反射光の測定値と透過光の測定値の両方に影響を受ける。
【0165】
様々な反射光測定値と透過光測定値を比較すれば、任意の波長においてどちらか一方の面のフィルムが透過なのか不透過なのかを識別するにも、基板が透過なのか不透過なのかを識別するにも役立つ。例えば、ウェハが金属層でコーティングされている場合にそうであるように、ウェハ表面上のフィルムが不透過ならば、すなわち、Tt=0ならば、前面反射率R*WF=R1WFと高次反射R2WF,R3WF等はすべてゼロである。この場合、透過率S*とすべての透過光成分T1,T2等の両方もまたゼロである。しかしながら、基板が不透過でない、すなわち、a≠0であり、背面の層も不透過でない、すなわち、Tb≠0ならば、背面反射率R*WB≠R1WBかつR1WB≠0である。
【0166】
したがって、前面照明と背面照明とで反射光成分を比較すれば、ウェハの一方の表面のフィルムが不透過であるか否かを識別するのに役立つ。一方の表面に関しては反射率が表面反射能に等しく、他方の表面に関してはこれが成り立たないことが分かれば、前者の表面は不透過フィルムを含んでいる可能性が高い。背面反射能RBS=0ならば、2次反射が存在しないので、前面反射率も前面反射能に等しいが、この場合、前面が完全反射体でもないかぎり、透過率はゼロにはならない。しかし、このような状況が実際に起こる可能性は低い。同様に、この手法はウェハの前面または背面のフィルムが不透過であることを調べるためにも適用しうる。他の測定された量を同じ目的で分析してもよい。例えば、透過率S*または第1の透過光成分T1はゼロであるが、背面反射率R*WB≠R1WBかたR1WB≠0ならば、前面は不透過であると結論してよい。
【0167】
ウェハ基板が不透過ならば、a=0かつウェハの各表面の反射率はその反射能に等しい、すなわち、R*WF=RtvかつR*WB=Rbv。さらに、反射光成分R2WF,R3WF等およびR2WB,R3WB等はゼロである。さらに、透過率S*=0であり、すべての透過光成分T1,T2等もすべてゼロである。したがって、これらの反射もしくは透過エネルギー成分の分析は、基板材料が所与の波長において不透過であるか否かを導くために利用することができる。しかし、同じ条件(すなわち、R*WF=Rtv,R*WB=Rbv,S*=0,T1=0,T2=0等)は、たとえ基板自体が透過であっても、すなわち、a≠0であっても、両表面のフィルムが不透過ならば、すなわち、Tt=0かつTb=0ならば起こりうるということに注意しなければならない。
【0168】
ウェハ表面が吸収フィルムを有しているか否かを調べるために利用しうる別のテストは、基板内から入射する放射に対する反射能と基板の外から入射する放射に対する反射能とが同じであるか否かをテストすることであり、例えば、Rtv≠Rtsならば、ウェハの上面は吸収フィルムを有している。さらに、Rtv≠(1−Tt)の場合も、上面は吸収フィルムを有している。同様の規則はウェハ背面の特性評価にも適用することができる。
【0169】
上面フィルムと底面フィルムがすべて透過であり、ウェハも透過ならば、ウェハのどちら側から入射する光についても反射率が等しくなる特別のケースが生じる。この場合、
【数17】
それゆえ、ウェハとそのすべてのコーティングが非吸収性であるか否かを簡単にテストするには、R*WF=R*WBであるかどうかを調べればよい。
【0170】
このような診断テストを行う波長域を選択すれば、ウェハ特性の種々の側面を調べることができる。例えば、1.55μmのような赤外領域における波長域を選択すれば、ウェハが例えば1cm-1を超えるはっきり認められるほどの吸収係数を示すことが検出された場合、ウェハは高濃度ドープされている、例えば、0.1Ωcm未満の比抵抗を有するとして間違いない。適切な吸収レベルを確定するための正確な基準は波長に依存しており、光吸収に対するドーピングの効果のモデルから求めることができる。どのようなテストの場合でも、表面反射能の異常な組み合わせや他の何らかの条件が誤った結果を生じさせる可能性を低くするには、複数の波長で測定を行う方がよい。また、テストは、必要ならば、1つの波長域にわたって光を供給する広帯域光源を使用して行ってもよい。
基板の吸収係数の算出
α(λ,T)の値を求めるには、通常は式1により与えられる内分透過率を求める必要がある。内部透過率は図19に示されているいずれかの反射もしくは透過光成分の測定により、または表面WBを照明する場合の測定から得られた同様の成分から得られる。しかし、一般には、ウェハの他の特性を知ることも必要である。例えば、式7を変形すれば、"a"は下式で与えられる。
【0171】
【数18】
したがって、aの値を得るには、R*WF、Rtv、Rts、TtおよびRbsの値が既知でなければならない。これらの量は他の測定または計算から既知であるかも知れないが、一般には未知である。本開示で説明される方法はaの推定値の改善に役立つ。というのも、第1の表面反射Rtvの値は反射光成分R1の測定により求めることができるからである。反射率R*WFも従来の手段で求めることができる。実際上重要な多くのケースにおいて、本開示の方法はさらに、内部透過率の正確な算出を含めた、したがってまた吸収係数α(λ,T)の正確な算出を含めた、注目する光学特性の完全な特性評価を提供することができる。
【0172】
内部透過率は透過光測定からも得ることができる。式6を変形すると、以下の式が得られる。
【0173】
【数19】
ここでは、aの値を得るためには、S*、Tt、Rts、TbおよびRbsが既知でなければならない。ここでも、これらの量は他の測定または計算から既知であるかも知れないが、一般には未知である。内部透過率の値は反射放射または透過放射の特性の成分の測定から導くこともできる。例えば、上に示したように、光線T1はaTtTbIで与えられる強度IT1を有している。したがって、内部透過率は次の式から導かれる。
【0174】
【数20】
内部透過率はa2Tt2RbsIの強度を有する光線R2の強度IR2の測定から得ることができる。したがって、内部透過率は次の式から導かれる。
【0175】
【数21】
内部透過率は連続して生じる反射光線または透過光線の強度の比を測定することによっても得ることができる。なぜならば、基板から連続して生じる透過光線または反射光線はそれぞれ先行する光線に比べて減衰するからである。減衰は基板内での2回の移動と上面および底面からの反射の結果として生じるので、各光線は先行する光線に比べて強度がa2RtsRbs倍だけ低下する。したがって、光線R3の強度がIR3ならば、IR3のIR2に対する比KはK=IR3/IR2=a2RtsRbsで与えられ、下式から導かれる。
【0176】
【数22】
同様の手法はT1やT2等の連続する透過光線の比についても使用することができる。
表面コーティングが放射を吸収しない場合
ウェハの上面および底面のいずれも吸収フィルムを含んでいないケースは特に重要である。この状況では、Tt=1−Rtv、Tb=1−Rbv、Rtv=Rts、Rbv=Rbsである。このため、反射率と透過率に関する式を、それぞれR1WFとR1WBから得られる第1の表面反射能RtvとRbvを含めた本開示の方法を用いて測定できる量で書き直すことができる。式は次のようになる。
【0177】
【数23】
同様に、背面から入射する光に対するウェハの反射率は次の式で得られる。
【0178】
【数24】
透過率は次の式で得られる。
【0179】
【数25】
これらの式22,22または23はいずれも測定された量から内部透過率を導き出すために使用することができるので、基板の吸収係数α(λ,T)を求めるためにも使用することができる。例えば、21を変形することにより、次の式が得られる。
【0180】
【数26】
本開示に示されている方法は式24の右辺のすべての量を導くために使用することができるので、内部透過率を正確に算出するためにも使用することができる。反射率R*WFは従来の手段で求めることができ、反射能Rtvと反射能Rbvは本開示に示されている方法で求めることができる。例えば、ウェハの前面を照明し、ウェハの前面で1回反射した光だけを収集することで、反射能Rtvは導かれる。そして、ウェハの背面を照明し、ウェハの背面で1回反射した光だけを収集することで、反射能Rbvは導かれる。R*WF、RtvおよびRbvを測定してしまえば、内部透過率は式24から計算できる。内部透過率は式22の使用と併せて背面反射率R*WBを測定する同様の手法からも導くことができる。さらに、内部透過率は透過率S*の測定からも導くことができる。後者の場合、内部透過率は式23を変形して得られる次の式から得られる。
【0181】
【数27】
ここでも、透過率S*が得られれ、反射能RtvとRbvも得られてしまえば、式25を用いて内部透過率を導くことができる。同様に、内部透過率は式18を変形して得られる次の式を用いて透過光線T1の測定から求めることもできる。
【0182】
【数28】
また、内部透過率は式19を変形して得られる次の式を用いて反射光線R2の強度の測定から求めることもできる。
【0183】
【数29】
内部透過率は、連続する反射光線または透過光線の強度の比を測定し、式20を変形して得られる次の式を用いることでも求めることができる。
【0184】
【数30】
【0185】
要約すると、ウェハの前面と背面の両方のフィルムに吸収性がない場合には、本開示の方法により、基板材料の吸収係数の正確な算出が可能である。一方、フィルムが吸収性を有する場合、十分に正確な吸収係数の算出には、さらなる測定またはモデリングが必要となる。しかし、表面フィルムが吸収性を持たないケースは実用上重要である。というのも、この条件は、デバイス製造シーケンスの初期に行われる酸化または堆積プロセスのような重要な実際上のアプリケーションや、イオン注入ダメージアニーリングのような半導体ウェハ上での焼きなましプロセスにおいても生じるからである。このようなプロセスでは、表面フィルムは比較的に透過性のある場合が多く、少なくとも赤外波長に対しては透過性がある。さらに、ウェハ上にパターン付けされたフィルムが存在する多くのケースにおいて、たとえこれらのフィルム自体が吸収性を有していても、パターン付けとは吸収フィルムが部分的にしかウェハの表面を覆っていないことを意味するのであるから、入射放射のかなりの部分が基板内へと透過することが可能である。ここで、非吸収性フィルムについての分析は、たとえ表面フィルムがある程度の吸収を示す場合であっても、内部透過率aがウェハの前面または背面の透過能TtおよびTbに比べて著しく小さいならば、十分に正確であることを理解しなければならない。この手法の成功は任意の表面層における吸収の強さおよび/または表面の被覆度に依存しうる。したがって、この手法は、金属、ケイ素化合物、または高濃度ドープされた半導体領域のような吸収フィルムが存在している場合でも、これらのフィーチャによって生じる吸収度が、基板内を反対側表面に向かって放射が伝搬することによって生じる吸収度に比べて小さいならば、使用することができる。一般に、ウェハは背面には吸収性材料の薄層を有していないため、多くの場合、背面は吸収性を持たないと仮定するのが妥当である。
【0186】
図20には、スラブ材料の波長λにおける光学特性の温度依存性の一例が示されている。この例では、スラブ(通常は基板と呼ばれる)のバルク部分を形成する材料の吸収係数α(λ,T)は温度をとともに変化する。それゆえ、内部透過率も同様に温度とともに変化する。以下の考察では、光学特性を温度の関数として予測するために本開示の方法をどのように使用しうるかを、より詳細に説明する。使用する手法は表面反射能の低温測定をシリコンの光吸収のモデルと組み合わせたものに依拠している。一般に、α(λ,T)を導くために使用するモデルは、注目する材料の吸収係数の波長と温度に対する依存性に関する任意の理論的または経験的モデルであってよい。例えば、低濃度ドープされたシリコンの場合、Appl. Phys. Lett. 69, 2190 (1996)においてRogne他により示された光吸収のモデルが、〜1μmから〜9μmまでの波長と室温から〜800°Cまでの温度に対するα(λ,T)を計算する1つの方法を提供する。Timansは、F.Roozeboom編集による書籍"Advances in Rapid Thermal and Integrated Processing"(Kluwer Academic Publishers, Dortrecht, Netherlands, 1995)p.35の"The Thermal Radiative Properties of Semiconductors"という章において、低濃度および高濃度の両方でドープされたシリコンの光吸収と屈折率に関するデータとモデルを提示している。このようなモデルはλ〜0.5μmの可視領域からλ〜30μmの遠赤外領域までの広い波長域について推定値を提供することができる。記載されたモデルはドーピング濃度のような基板ドープ条件や基板内の電子および正孔の濃度に関する他の情報をも考慮することができる。他の適切なモデルも文献には記載されている。これらのモデルにはキャリア吸収のDrudeモデルも含まれており、このモデルは赤外吸収に対する電子と正孔の影響を推定するために使用することができる。
【0187】
光学特性と熱特性の予測に必要な他の情報はウェハの厚さである。この厚さは、予測で必要とされる精度に応じて、処理中のウェハのサイズに対して適当な厚さとして推定してもよいし、ユーザによって入力パラメータとして与えてもよいし、手動または自動によりツール内で測定してもよい。
【0188】
図示の例であ、2.3μmのときのα(λ,T)は低温では非常に低く、例えば、室温では<10-6cm-1と推定される。この条件の下では、
である。対照的に、高温ではα(λ,T)は非常に大きく、例えば、730°Cでは〜100cm-1である。このケースでは、
である。温度が上昇するにつれて、内部透過率はさらにゼロへと向かい、ウェハは不透過となる。図は、どのように内部透過率が〜1に留まるかということと、基板は〜250°C未満の温度に対しては事実上不透過であること、しかし、温度が上昇するにつれて内部透過率は低下し、>750°Cの温度まではウェハは事実上不透過であることを示している。250°Cから750°Cまでの区間では、ウェハは半透過であると言ってよい。
【0189】
ウェハが透過性を有する低温時には、透過率S*=0.34であるが、透過率は温度が上昇するにつれてゼロに向かって低下し、>750°Cの温度では<10-4となる。低温時には、上の式15から予想されるように、前面に入射する光に対する反射率は背面に入射する光に対する反射率に等しい。例では、室温においてR*WF=R*WB=0.66。しかし、温度が上昇するにつれて、R*WFとR*WBは両方とも低下し、等しくなくなる。この低下は基板内での吸収の増大が(照明される面の反対側にある)第2の表面で反射する光の反射率への寄与を減少させるために生じる。基板が実質的に不透過になると、反射率は照明される面の対応する反射能に等しくなるので、R*WF=Rtv=0.3かつR*WB=Rbv=0.6。2つの対向する面から観察したスラブの放射率は、ウェハが透過性を有する低い温度では、両方ともゼロである。このことは放射を吸収できない物体は放射を放出することもできないという基本原理と整合的である。温度が上昇し、ウェハが半透過となるにつれて、放射率も増大し、ウェハが実質的に不透過になると、放射率は表面の対応する反射能に等しくなるので、εWF=1−Rtv=0.7かつεWB=1−Rbv=0.4。
【0190】
この例は、本開示がどのようにして高温時の放射率または対応する吸収率の推定値を求めるかを示している。原則的に、これらの量は例えば処理チャンバ内でR*WFとS*のリアルタイム測定を行い、その後式8からεWFを計算することにより求めることができる。しかし、状況によっては、チャンバ内で正確な測定を行うことが困難なこともある。これとは対照的に、本開示の方法によれば、任意のウェハ特性を処理チャンバ外の適当な場所で求めることが可能である。さらに、これを温度によるα(λ,T)の動向およびウェハの厚さに関する情報と組み合わせれば、ウェハの放射率または吸収率を処理中に予測することが可能である。この例では、処理チャンバ内のウェハがT>750°CであるときのεWBの妥当な値を確実に求めるには、室温でRbvを測定するだけで十分である。ウェハの温度を求めるために、放射率に関する情報を高温計の示数の補正に用いてもよい。モデリングアプローチはウェハのスペクトル吸収率の温度依存性を温度の関数として予測するためにも使用することができる。この情報を制御アルゴリズムに渡して、例えばウェハとランプ加熱エネルギー源との間のパワー結合の推定値またはウェハからの放射エネルギー熱損失の推定値を改善すれば、加熱プロセスの制御を改善することができる。
【0191】
図21のフローチャートには、本開示の方法をどのように実行するかについての1つの実施形態が示されている。第1のステップは光学測定が行われる位置にウェハを載置することである。次のステップでは、初期温度T1のウェハで光学特性が測定される。初期温度は近室温としてよい。光学特性は本開示で言及したいずれの特性であってもよい。光学特性はウェハのどちらの表面を照明する手法を用いても測定することができる。次のステップは、オプションであり、ウェハの厚さを求めることを含む。ウェハの厚さは測定によって求めてもよいし、そのデータの外部入力から情報を収集することによって求めてもよい。ここで、ウェハの厚さの測定には、光学的、電気的、または機械的測定のような様々な手段を使用しうる。通常は、表面の傷や汚れを防ぐために、特に電子デバイスを製作すべきウェハ表面上の領域に傷や汚れが付くのを防ぐために、ウェハ表面に接触しないプローブで厚さの測定を行うのが最も良い。例えば、ウェハの厚さは赤外干渉計を用いて測定することができる。また、光学プローブを用いて前面の位置と背面の位置を正確に同時に測定し、前面の位置と背面の位置の間の距離を求めることによって厚さを測定してもよい。この場合、ウェハはプローブの使用する光波長において透過性を有していなくてもよい。光学プローブは光干渉法に基づいたものであってもよいし、レーザ三角測量法に基づいたものであってもよい。ウェハの厚さは静電容量型変位プローブによって測定することもできる。また、ウェハの厚さは表面の位置がガスフローの挙動に与える影響を感知することにより寸法を求める空気圧計を用いて測定することもできる。また、ウェハの厚さはウェハを重み付けし、ウェハの面積と密度の推定値を使用して厚さを導き出すことによっても求めることができる。ウェハ表面のコーティング自体にかなりの厚みがある場合には、基板自体の厚さを求める際に、コーティングの厚さを考慮しなければならなくなる。そのような考慮はこのようなコーティングを含むウェハの厚さからコーティングの厚さを差し引くことによって行いうる。
【0192】
次のステップもオプションであり、ウェハのドーピングを求めることを含む。ウェハのドーピングは測定によって求めてもよいし、そのデータの外部入力から情報を収集することによって求めてもよい。ドーピングを求める場合、一般には光学的または電気的測定が必要となる。上で指摘したように、この測定で説明される方法を使用すれば、基板ドーピングの特性を求めるのに役立つ。ドーピングに関する情報には、ドーピングの種類、例えば、ウェハ基板がn型材料なのかまたはp型材料なのかということが含まれていてよい。また、基板の比抵抗が含まれていてもよい。また、基板のドーピングに使用される原子種と基板内のドーパント濃度が含まれていてもよい。また、基板内の電子または正孔の濃度が含まれていてもよい。ドーピングを求める他の方法には、接触型または非接触型プローブを用いた直接的な電気的測定を含むものもある。表面の傷や汚れを防ぐには、一般的には非接触型プローブが好ましい。非接触型プローブ法には、ウェハに印加された振動電場または磁場によって基板内に誘導された渦電流のセンシングを含むものもある。
【0193】
また、ウェハの性質および特性に関する他の情報を提供するようにしてもよい。例えば、提供される情報に、ウェハはシリコン、ガリウム砒素、ゲルマニウム等であるか否かといったウェハ基板の性質を含めてよい。また、ウェハのいずれかの面にある薄膜の厚さ、材料、および特性といった、ウェハ上のフィルムの性質に関する情報を含めてもよい。また、ウェハ表面上にあるパターンの性質に関する情報を含めてもよい。提供されうる他の特性には、熱伝導率、熱拡散率、または比熱容量といった熱特性も含まれうる。厚さとドーピングの測定はオプションであると述べられている。それは、光学特性の簡単な予測であれば、これらの量を高い精度で知る必要はないからである。しかしながら、ウェハの厚さの測定はプロセス制御の改善という様々な目的にも役立ちうる。例えば、ウェハの熱質量はウェハの厚さに依存する。その結果、ウェハの加熱または冷却の速度はウェハの厚さにより影響を受けるウェハの厚さを求めることはウェハの加熱または冷却の制御の改善に役立ちうる。例えば、ウェハの厚さに関する情報を加熱パワーの設定に使用される制御アルゴリズムに渡してもよい。これは加熱が開ループならば、すなわち、ウェハ温度を監視する温度センサからのフィードバック制御がないならば、プロセスの制御にも役立ちうる。この情報は利用される加熱のタイプには無関係であってよく、ウェハが電磁放射で加熱される場合でも、熱伝導またはガス対流で加熱される場合でも使用しうる。例えば、この情報はウェハを熱板やサセプタで加熱するシステムにおける制御の改善に使用することができる。ウェハの厚さを正確に知ることで、ウェハを熱板に載せた後のウェハ温度の発展を予測することがより容易になる。この場合には、ウェハの光学特性をまったく測定しなくても、制御の改善は達成される。このような改善は特に主として熱伝導によりウェハを加熱する場合に有効である。その場合、ウェハから及びウェハへの伝熱に対する光学特性の影響は小さいが、ウェハの熱質量は依然として加熱サイクルに対して強い影響を有する。
【0194】
次のステップは、モデルを使用して、少なくとも1つの第2の注目温度T2における光学特性を予測することである。実際には、このために、ある温度範囲にわたって光学特性を予測する、つまり、光学特性の温度依存性を明確にする必要がある。ここでも、光学特性は、放射率、吸収率、反射率、透過率、または、表面反射能もしくは放射能のいずれか等、本開示で考察したいずれの特性であってもよい。これらの特性は注目するいずれの波長または温度で予測してもよい。
【0195】
使用されるモデルは本開示で示された式に基づくものであってもよいし、光学特性の予測を可能にする別の式やアルゴリズムであってもよい。モデルへの入力には、第1の温度T1で行われる初期測定値のうちの少なくとも1つが含まれる。また、任意選択的に、ウェハの厚さとウェハのドーピングに関する情報を含めてもよい。ウェハのドーピングに関する情報が利用できる場合には、この情報を用いて、基板の光吸収係数および/または屈折率が波長および/または温度とともにどのように変化するかを予測することができる。
【0196】
次のステップは、光学特性に関する情報を用いて、加熱プロセスの制御に関連したパラメータを推定することである。これらのパラメータの例としては、高温計がウェハ温度のセンシングに使用する波長におけるウェハの放射率が挙げられる。この場合、放射率の推定値が改善されることで、より正確な温度示数が得られるようになる。高温計は一般にウェハが放出した熱放射の強度の感知された値に基づいてウェハ温度を求める。ウェハ放射率または反射率をアルゴリズムに与えて、このアルゴリズムにより、基板が放出した放射の強度のこの感知された値に基づいて、ウェハ温度を計算するようにしてもよい。高温計のための多くの仕組みは従来技術において説明されている。ウェハ表面の少なくとも一部に面した反射キャビティを形成することでウェハの放射率を高めるような手法が、高温計によって求められる温度に対する放射率変化の影響を低下させるのに役立つことが示されている。しかし、放射率の初期推定値が得られるならば、精度の改善は可能である。放射率の変化の影響を低下させる他の手法には、原位置光学測定を利用して処理中にウェハの放射率を測定する方法が含まれる。このような手法の1つがリプル高温計手法である。このような方法では、放射率の初期推定値を使用して測定精度を改善することができる。ここで、重要な1つの側面は測定精度への迷光の影響に関わっている。このような光はウェハから反射し、高温計により検出されることで、温度測定に誤差を生じさせる可能性がある。ウェハ反射率の正確な推定値が得られれば、反射迷光の量をより正確に推定することが可能となり、ウェハ温度を求める際に反射迷光の影響を考慮に入れることもできる。さらに、ウェハが半透過の場合、例えば式8または13からウェハの放射率を求めるには、通常、ウェハの透過率と反射率の両方を知る必要がある。本発明の方法は必要に応じ透過率と放射率を求めるために使用することもできる。透過率の測定は基板を透過する迷放射の量を推定するのに役立ち、これにより得られた推定値は感知された放射を解釈してウェハ温度を求める際に考慮される。
【0197】
場合によっては、透過率および/または反射率の測定値をウェハ温度を求めるために使用してもよい。例えば、これらの量のうち、いずれかの量の所定波長における温度依存性が知られていれば、その量の原位置測定を利用してウェハ温度を求めることができる。この手法の利点はウェハにより放出される放射をもはや測定しなくてもよいことである。また、このような手法は迷光の問題に影響を受けないようにもすることができる。温度が低いと、熱放射の強度が低いために高温測定が非常に難しくなるおそれがあるが、このような手法はこうした比較的低い温度においても適用可能である。コーティングはウェハのどちらの表面にも存在しうるが、本発明で説明した方法を用いれば、コーティングに関する事前知識がなくても、反射率または透過率の温度依存性を推定することができる。例えば、ウェハの前面および背面の反射能は説明した通りに得ることができる。シリコンの吸収係数の温度依存性は前に説明したようにモデルから得ることができるので、これを測定された反射能と組み合わせれば、必要に応じ、透過率または反射率の温度依存性の推定値を得ることができる。したがって、この例では、モデル化されるパラメータは透過率または反射率の温度依存性である。
【0198】
パラメータは加熱システムの特性設定を決定する制御アルゴリズムで使用されるパラメータであってもよい。この特性はウェハに供給されるエネルギーまたはウェハから失われるエネルギーに影響を与え、ひいてはウェハの温度、加熱速度または冷却速度にも影響を及ぼす。これらの量はウェハ全体にわたって影響を受けることもあれば、ウェハの特定の領域において影響を受けることもある。後者の場合、ウェハ温度の均一性はシステム特性の変更により影響を受ける可能性がある。システムの特性は、加熱ランプもしくはエネルギービームにより供給されるパワーもしくはエネルギー、熱放射素子の温度および位置、電気導体に印加される電流もしくは電圧、RF電力もしくはマイクロ波電力の大きさ、または、ガスフローの大きさといったプロセス変数であってよい。プロセス変数の他の例には、チャンバ内のガスの組成と圧力、フローの方向等が含まれる。特性はまた、反射体の位置、反射体の反射率、加熱エネルギービームの位置とサイズ、電磁エネルギービームの波長、入射角、または偏光状態、ウェハ位置に対する熱源の位置、ウェハと熱板の間またはウェハとヒートシンクの間の空隙の大きさ等といった、加熱システムの物理的特性であってもよい。
【0199】
制御アルゴリズムに与えられるパラメータはウェハの熱応答に影響を与えるファクタであれば何でもよい。制御アルゴリズムはモデルに基づいた制御器であってよい。例えば、アルゴリズムは、所与の加熱サイクルにおけるウェハ温度を維持するため、および/または、ウェハ内の温度均一性の望ましいレベルを維持するために、望ましいプロセス設定またはシステム変数を予測するものとしてよい。予測はプロセス処理中に生じる伝熱現象のモデルに基づくものであってよい。明らかに、ウェハ特性に関するより良い情報をモデルに提供することで、モデルの現実に対する忠実性を改善し、ひいてはプロセス変数またはシステム変数のより良い推定値を得ることが可能である。制御アルゴリズムはモデルに基づいて設定の予測が為される開ループモードで動作するものとしてよい。また、制御アルゴリズムは、少なくとも1つのセンサからアルゴリズムにウェハ状態に関するフィードバックが提供される閉ループモードで動作するものとしもよい。後者の場合、制御アルゴリズムは伝熱現象のモデルを使用して制御設定の選択を改善してもよい。実際、アルゴリズムはモデルからの予測に基づいて制御設定の近似値を予測する部分と、センサからの情報を考慮してこれらの設定を補正する第2の部分を含んでいてよい。
【0200】
上で述べたように、制御器に与えられるパラメータはウェハの厚さのような物理的特性であってよい。ウェハが光または熱放射で加熱される場合、または、ウェハが放射により熱を失う場合、ウェハの光学特性が熱応答に影響を与えることもある。したがって、パラメータは放射率、吸収率、反射率、または透過率としてよい。一般に、パラメータは、どのようにウェハが電磁放射を放射し、吸収し、反射し、透過し、または散乱させるかを示す特性であれば、どのような特性に関するものであってもよい。ウェハが高濃度ドープされているか低濃度ドープされているかを識別するために、本開示の方法を使用することについては既に論じた。このような情報は制御アルゴリズムに与えることもできれば、高濃度ドープされた材料がどのようにエネルギー源へ結合すると予測されるかを考慮する適切な制御アルゴリズムを選択するために使用することさえできる。必要ならば、制御アルゴリズムの選択が加熱レシピ構造に影響を与えるようにしてもよい。同様に、ウェハが表面に金属コーティングを有すると判定された場合、制御アルゴリズムがこの要素を考慮するようにしてもよい。どの程度の強さのエネルギーをウェハのどの位置にどの程度の長さで印加すべきかを含めて、どの位のエネルギーがウェハに印加されるかは、アルゴリズムが決定するものとしてよい。また、開ループモードの加熱で動作すべきか、または、少なくとも1つのセンサからのウェハ状態に関するフィードバックを利用してプロセスを制御する閉ループモードの加熱で動作すべきかも、アルゴリズムが決定するものとしてよい。場合によっては、閉ループモード動作と開ループモード動作との間の移行が、ウェハ特性の事前測定に基づいて選択された基準によって決定されるようにしてもよい。例えば、所定の温度においてウェハが十分に不透過であると予測された場合、ウェハの温度が所定の温度よりも高ければ、温度センサの示数は妥当であると判断するようにしてよい。この場合、初期の昇温ステップのうちにこの所定の温度に達してしまえば、制御器は閉ループ制御アプローチを選択することができる。
【0201】
次のステップはウェハのプロセス処理である。制御または測定アルゴリズムがパラメータを使用することで、より正確な、または反復可能な、または均一な処理がもたらされる、あるいは、より迅速またはより効率的なプロセス処理の方法がもたらされる。典型的なプロセスとしては、熱アニーリング、結晶化、合金化、焼結、酸化、窒化、膜形成、エッチング、ウェハ上に堆積させた材料の間の、もしくは、ウェハ上の材料とプロセスガスとの間の反応の促進が挙げられる。
ウェハを下ろす最終ステップ
図22には、本開示の別のフローチャートが示されている。このケースでは、光学特性を複数の波長と複数のウェハ温度で測定する可能性があることが図に明示されている。このような測定からの情報はプロセス処理温度におけるウェハの光学特性の予測に使用することができる。
【0202】
図23に示されている別のフローチャートでは、測定のために反射光線または透過光線から特定の成分を選択する手法を用いてウェハの光学特性を求めるステップが明示されている。選択される光線は例えば図19においてR1と呼ばれている光線のような一群の光線としてもよい。この場合、光はウェハの第1の表面で反射されただけである。その場合には、求められる光学特性は前面(WF)の反射能Rtvとしてよい。
【0203】
図24には、表面の反射能を測定する手法を用いてプロセス処理温度における放射率を予測する実施例が示されている。放射率の値はεWF=1−Rtvといった非常に単純なモデルで予測することができる。放射率は高温計示数の補正に使用することができる。放射率はまた加熱エネルギー源へのパワー結合を推定するためにも使用することができる。放射率はウェハ表面からの熱損失を推定するためにも使用することができる。反射能と放射率は単一の波長において求めてもよいし、ある波長域にわたって求めてもよい。
【0204】
図25には、事前測定を行ってウェハのドーピング特性を求める実施例を示した別のフローチャートが示されている。ドーピング特性は処理温度における光学特性の予測を行う際に考慮される。この光学特性はその後、プロセスの監視または制御に使用されるパラメータを求めるために使用される。このパラメータは高温計の温度示数が妥当か否かを判定するための温度閾基準であるとしてよい。また、このパラメータはウェハの放射率または吸収率であってもよい。また、このパラメータはどのような種類の温度測定または制御アルゴリズムを使用するべきかを制御システムに伝えるフラグであってもよい。また、どのような種類の温度センサを使用すべきかを決定するためにこのパラメータを使用してもよい。例えば、ウェハが高濃度ドープされている(例えば、比抵抗<0.1Ωcm)と判定された場合には、システムは所定の温度範囲については高温計によるウェハ温度の測定を選択するものとすることができる。一方、ウェハが低濃度ドープされている(例えば、比抵抗>0.1Ωcm)と判定された場合には、基板内への赤外光の透過に基づいたセンサによって温度を測定するようにしてよい。求めたドーピング特性は温度測定の精度の改善にも使用することができる。例えば、赤外透過測定を利用してウェハ温度を求める場合、ウェハのドーピング特性に関する情報を赤外透過に対するウェハドーピングの影響を補正するために使用することができるため、より正確なウェハ温度の推定値が得られる。
【0205】
図26に示されている別のフローチャートでは、ウェハの厚さに関する情報を利用して、測定または制御システムに供給されるパラメータを得る実施例が示されている。パラメータは厚さそのものであってよい。例えば、モデルに基づいた制御器が厚さ情報を利用してウェハの加熱または冷却の速度を予測するものとしてよい。また、モデルに基づいた制御器が厚さ情報を利用して、ウェハが所定の温度に達するのにかかる時間を予測するようにしてもよい。この手法は加熱プロセスの再現性の改善に利用できる。ウェハの厚さは処理システムへの入力として与えてもよいし、処理システム内のハードウェアによって測定されるものであってもよい。厚さ情報はウェハの光学特性の予測にも使用しうる。
【0206】
フローチャートによるアプローチと本開示に記載された方法のいずれも、必要ならば組み合わせてよい。
当業者は、上に述べた変更および変形、ならびに、その他の変更および変形も、本発明の趣旨および範囲から逸脱せずになしうる。加えて、様々な実施形態のそれぞれの側面は全体的にも部分的にも交換してよいことが理解されなければならない。さらには、当業者であれば、以上の説明は例示のためにのみなされたものであり、本発明を限定するものではないことが理解されるに違いない。
【図面の簡単な説明】
【0207】
【図1】本発明の方法およびシステムで使用しうる熱処理チャンバの1つの実施形態を示す側面図。
【図2】本発明によるシステムの1つの実施形態を示す平面図。
【図3】半導体ウェハのような基板に放射される1つの光ビームを示す側面図。
【図4】半導体ウェハのような基板に放射される2つの光ビームを示す側面図。
【図5】半導体ウェハのような基板に放射される2つの光ビームの別の実施形態を示す側面図。
【図6】本発明により使用される光路の1つの実施形態を示す側面図。
【図7】本発明により使用される光路の別の実施形態を示す側面図。
【図8】本発明により使用される光路の別の実施形態を示す側面図。
【図9】位置に基づいて光の強さを示したグラフ。
【図10】本発明により使用される光路のさらに別の実施形態を示す側面図。
【図11】本発明により使用される光路の別の実施形態を示す側面図。
【図12】本発明により使用される光路のまた別の実施形態を示す側面図。
【図13】本発明により使用される光路の別の実施形態を示す側面図。
【図14】本発明により使用される光路の別の実施形態を示す側面図。
【図15】ウェハの両面照明の1つの実施形態を示す側面図。
【図16】ウェハの両面照明の別の実施形態を示す側面図。
【図17】本開示に従って異なるロケーションでウェハを照明する実施形態を示す側面図。
【図18】半導体ウェハに放射される光ビームを示す。
【図19】ウェハの前面に入射する光線の伝播と様々な位置における光の強さの値とを示す側面図。
【図20】ウェハの光学特性の温度依存性を示したグラフ。
【図21】本開示に従ってウェハ特性を測定する方法のフローチャートの実施形態を示す。
【図22】本開示に従ってウェハ特性を測定する方法のフローチャートの実施形態を示す。
【図23】本開示に従ってウェハ特性を測定する方法のフローチャートの実施形態を示す。
【図24】本開示に従ってウェハ特性を測定する方法のフローチャートの実施形態を示す。
【図25】本開示に従ってウェハ特性を測定する方法のフローチャートの実施形態を示す。
【図26】本開示に従ってウェハ特性を測定する方法のフローチャートの実施形態を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板加熱プロセスを制御する方法において、基板の第1表面に光を放射し、ただし、前記基板は第1表面と第1表面から或る厚さだけ離れた対向する第2表面とを有しており、第1表面から反射した光を第2表面から反射した光から分離する光路を通るように光を方向付け、第1表面から反射した光の量を検出し、検出された第1表面からの反射光の光量に基づいて、基板加熱プロセスの少なくとも1つのシステム構成要素を制御または調整することを特徴とする、基板加熱プロセスを制御する方法。
【請求項2】
前記システム構成要素は、基板の温度を求めるために加熱中に基板から放出された放射の量を感知する放射測定装置を含む温度測定システムを含んでおり、第1表面からの検出された光の量は、基板の温度を求める際に、前記放射測定装置により感知された放射量と併せて使用される基板放射率を求めるために使用される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記システム構成要素は、基板を加熱するために使用される加熱装置に対する電力制御器を含む加熱システムを含んでおり、第1表面からの検出された光の量は基板の吸収率を求めるために使用され、基板の吸収率は、基板の加熱に使用されるエネルギーの量が選択的に増大または減少させられるように、前記電力制御器を調整するために使用される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
さらに、基板の第2表面から反射した光の量を検出するステップを有し、前記システム構成要素は、基板の温度を求めるために加熱中に基板から放出された放射の量を感知する放射測定装置を含む温度測定システムを含んでおり、第1表面からの検出された光の量と第2表面からの検出された光の量は、基板の温度を求める際に、前記放射測定装置により感知された放射の量と併せて使用される基板放射率、基板透過率、基板反射率、またはこれらの組合せを求めるために使用される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
熱処理チャンバ内で基板を加熱し、熱処理チャンバ外で基板の第1表面に光を放射し、第1表面から反射した光の量を検出した後、基板を熱処理チャンバ内に移す、請求項1記載の方法。
【請求項6】
100°Cより低い温度で基板の第1表面に光を放射する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
加熱プロセス中に、光エネルギー源により、加熱したサセプタにより、高周波により、マイクロ波エネルギーにより、ホットウォール環境により、対流加熱により、伝導加熱により、プラズマビーム、電子ビーム、もしくはイオンビームのようなエネルギービームを用いた加熱により、または、これらの組合せにより、基板を加熱する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記放射測定装置は或る波長で基板により放出された放射を感知し、基板の第1表面から反射した光の量は前記放射測定装置の動作波長と同じ波長で検出され、光は約100°Cよりも低い温度で基板の第1表面に放射される、請求項2記載の方法。
【請求項9】
基板の第1表面からの検出された光の量を、前記放射測定装置の動作波長において基板透過率が0.1未満となる温度における基板反射率または基板放射率を求めるために使用する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
加熱プロセスの間、基板は或る範囲の波長の電磁放射により加熱され、基板の第1表面から反射され検出された光は、基板を加熱する前記電磁放射の波長範囲と実質的に重なる波長範囲内にある、請求項3記載の方法。
【請求項11】
前記システム構成要素は、基板の温度を求めるために加熱中に基板から放出された放射の量を感知する放射測定装置を含む温度測定システムを含んでおり、第1表面からの検出された光の量は、基板の温度を求める際に、前記放射測定装置により感知された放射量と併せて使用される基板放射率を求めるために使用され、前記放射測定装置は或る波長で基板により放出された放射を感知し、基板の第1表面から反射した光の量は前記放射測定装置の動作波長と同じ波長で検出され、光は約100°Cよりも低い温度で基板の第1表面に放射される、請求項5記載の方法。
【請求項12】
基板の第1表面から検出された反射光の量と基板の第2表面から検出された反射光の量は基板の両表面の反射能を求めるために使用され、前記反射能は前記放射測定装置の動作波長において基板透過率が0.1未満となる温度における基板透過率または基板放射率を求めるために使用される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
さらに、基板の第2の表面から反射した光の量を検出するステップを有し、基板の第1の表面から反射した光の量と基板の第2の表面から反射した光の量は各表面の反射能を求めるために使用され、各表面の反射能は基板の透過率が基板の加熱に使用される電磁放射の波長域において0.1未満となる温度における基板の吸収率を求めるために使用される、請求項10記載の方法。
【請求項14】
光路は少なくとも2つの光学装置を含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも2つの光学装置は第1のレンズと第2のレンズを含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
光路は基板の第1の表面の特定の位置に光を方向付ける第1の光学装置と第2の光学装置を含んでおり、第1の表面で反射した光は再び第2の光学装置を通過し、第2の光学装置以降、光は第3の光学装置で反射されて、第4の光学装置に達し、光検出器へと集束する、請求項14記載の方法。
【請求項17】
第1の表面から反射した光は、少なくとも部分的に第1のレンズの焦点距離と第2のレンズの焦点距離を調節することにより、第2の表面から反射した光から分離される、請求項15記載の方法。
【請求項18】
第1の表面から反射した光は、少なくとも部分的に遮断装置を使用して、第2の表面から反射した光から分離される、請求項14記載の方法。
【請求項19】
基板の第1の表面に放射される光がレーザビームからなる、請求項1記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも2つの光学装置は、レンズ、ミラー、またはこれらの組合せを含む、請求項14記載の方法。
【請求項21】
基板の第1の表面に放射される光を広帯域光源により発生させる、請求項1記載の方法。
【請求項22】
基板の少なくとも1つの光学特性を求める方法において、基板の第1の表面に光を放射し、ただし、基板は第1の表面と厚さの分だけ第1の表面から隔てられた対向する第2の表面を有しており、第1の表面から反射した光を第2の表面から反射した光から分離する光路を介して光を導き、第1の表面から反射した光の量を検出し、第1の表面からの検出された反射光の量に基づいて、基板の少なくとも1つの光学特性を求める、ただし、前記特性には、第1の表面の反射能、放射能、吸収能、もしくは透過能、または、基板の反射率、放射率、吸収率、もしくは透過率、または、これらの組合せが含まれることを特徴とする、基板の少なくとも1つの光学特性を求める方法。
【請求項23】
基板の光学特性を特定の光波長域において求める、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記した特定の光波長域には、基板温度の測定に使用される放射感知装置の動作波長が含まれている、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記光波長域は基板の加熱に使用される電磁放射の波長域と実質的に重なる、請求項23記載の方法。
【請求項26】
基板の少なくとも1つの光学特性を求めた後、基板を熱処理チャンバ内に置いて加熱し、少なくとも1つのシステム構成要素を前記少なくとも1つの光学特性に基づいて加熱処理中に制御する、請求項22記載の方法。
【請求項27】
基板の少なくとも1つの光学特性を基板の加熱を行う熱処理チャンバ内で求める、請求項22記載の方法。
【請求項28】
基板は半導体ウェハからなり、半導体ウェハ処理システムの少なくとも1つのシステム構成要素は前記少なくとも1つの光学特性に基づいて制御される、請求項22記載の方法。
【請求項29】
前記システム構成要素は、基板の温度を求めるために加熱中に基板から放出された放射の量を感知する放射測定装置を含んだ温度測定システムを含んでおり、第1の表面からの検出された光の量は、基板の温度を求める際に、前記放射測定装置により感知された放射量と併せて使用される基板放射率の値を求めるために使用される、請求項26記載の方法。
【請求項30】
前記システム構成要素は、基板を加熱するために使用される加熱装置に対する電力制御器を含む加熱システムを含んでおり、第1の表面からの検出された光の量は、基板の加熱に使用されるエネルギーの量が選択的に増大または減少させられるように前記電力制御器を調整するために使用される、請求項26記載の方法。
【請求項31】
さらに、基板の第2表面から反射した光の量を検出するステップを有し、前記システム構成要素は、基板の温度を求めるために加熱中に基板から放出された放射の量を感知する放射測定装置を含む温度測定システムを含んでおり、第1の表面からの検出された光の量と第2の表面からの検出された光の量は、基板の温度を求める際に、前記放射測定装置により感知された放射量と併せて使用される基板放射率、基板透過率、基板反射率、またはこれらの組合せを求めるために使用される、請求項26記載の方法。
【請求項32】
光路は少なくとも2つの光学装置を含む、請求項22記載の方法。
【請求項33】
前記少なくとも2つの光学装置は第1のレンズと第2のレンズを含む、請求項30記載の方法。
【請求項34】
光路は基板の第1の表面の特定の位置に光を方向付ける第1の光学装置と第2の光学装置を含んでおり、第1の表面で反射した光は再び第2の光学装置を通過し、第2の光学装置以降、光は第3の光学装置で反射されて、第4の光学装置に達し、光検出器へと集束する、請求項30記載の方法。
【請求項35】
第1の表面から反射した光は、少なくとも部分的に第1のレンズの焦点距離と第2のレンズの焦点距離を調節することにより、第2の表面から反射した光から分離される、請求項33記載の方法。
【請求項36】
第1の表面から反射した光は、少なくとも部分的に1つの遮断装置を使用して、第2の表面から反射した光から分離される、請求項32記載の方法。
【請求項37】
前記少なくとも2つの光学装置は、レンズ、ミラー、またはこれらの組合せを含む、請求項32記載の方法。
【請求項38】
前記少なくとも2つの光学装置は、レンズ、ミラー、またはこれらの組合せを含む、請求項34記載の方法。
【請求項1】
基板加熱プロセスを制御する方法において、基板の第1表面に光を放射し、ただし、前記基板は第1表面と第1表面から或る厚さだけ離れた対向する第2表面とを有しており、第1表面から反射した光を第2表面から反射した光から分離する光路を通るように光を方向付け、第1表面から反射した光の量を検出し、検出された第1表面からの反射光の光量に基づいて、基板加熱プロセスの少なくとも1つのシステム構成要素を制御または調整することを特徴とする、基板加熱プロセスを制御する方法。
【請求項2】
前記システム構成要素は、基板の温度を求めるために加熱中に基板から放出された放射の量を感知する放射測定装置を含む温度測定システムを含んでおり、第1表面からの検出された光の量は、基板の温度を求める際に、前記放射測定装置により感知された放射量と併せて使用される基板放射率を求めるために使用される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記システム構成要素は、基板を加熱するために使用される加熱装置に対する電力制御器を含む加熱システムを含んでおり、第1表面からの検出された光の量は基板の吸収率を求めるために使用され、基板の吸収率は、基板の加熱に使用されるエネルギーの量が選択的に増大または減少させられるように、前記電力制御器を調整するために使用される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
さらに、基板の第2表面から反射した光の量を検出するステップを有し、前記システム構成要素は、基板の温度を求めるために加熱中に基板から放出された放射の量を感知する放射測定装置を含む温度測定システムを含んでおり、第1表面からの検出された光の量と第2表面からの検出された光の量は、基板の温度を求める際に、前記放射測定装置により感知された放射の量と併せて使用される基板放射率、基板透過率、基板反射率、またはこれらの組合せを求めるために使用される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
熱処理チャンバ内で基板を加熱し、熱処理チャンバ外で基板の第1表面に光を放射し、第1表面から反射した光の量を検出した後、基板を熱処理チャンバ内に移す、請求項1記載の方法。
【請求項6】
100°Cより低い温度で基板の第1表面に光を放射する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
加熱プロセス中に、光エネルギー源により、加熱したサセプタにより、高周波により、マイクロ波エネルギーにより、ホットウォール環境により、対流加熱により、伝導加熱により、プラズマビーム、電子ビーム、もしくはイオンビームのようなエネルギービームを用いた加熱により、または、これらの組合せにより、基板を加熱する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記放射測定装置は或る波長で基板により放出された放射を感知し、基板の第1表面から反射した光の量は前記放射測定装置の動作波長と同じ波長で検出され、光は約100°Cよりも低い温度で基板の第1表面に放射される、請求項2記載の方法。
【請求項9】
基板の第1表面からの検出された光の量を、前記放射測定装置の動作波長において基板透過率が0.1未満となる温度における基板反射率または基板放射率を求めるために使用する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
加熱プロセスの間、基板は或る範囲の波長の電磁放射により加熱され、基板の第1表面から反射され検出された光は、基板を加熱する前記電磁放射の波長範囲と実質的に重なる波長範囲内にある、請求項3記載の方法。
【請求項11】
前記システム構成要素は、基板の温度を求めるために加熱中に基板から放出された放射の量を感知する放射測定装置を含む温度測定システムを含んでおり、第1表面からの検出された光の量は、基板の温度を求める際に、前記放射測定装置により感知された放射量と併せて使用される基板放射率を求めるために使用され、前記放射測定装置は或る波長で基板により放出された放射を感知し、基板の第1表面から反射した光の量は前記放射測定装置の動作波長と同じ波長で検出され、光は約100°Cよりも低い温度で基板の第1表面に放射される、請求項5記載の方法。
【請求項12】
基板の第1表面から検出された反射光の量と基板の第2表面から検出された反射光の量は基板の両表面の反射能を求めるために使用され、前記反射能は前記放射測定装置の動作波長において基板透過率が0.1未満となる温度における基板透過率または基板放射率を求めるために使用される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
さらに、基板の第2の表面から反射した光の量を検出するステップを有し、基板の第1の表面から反射した光の量と基板の第2の表面から反射した光の量は各表面の反射能を求めるために使用され、各表面の反射能は基板の透過率が基板の加熱に使用される電磁放射の波長域において0.1未満となる温度における基板の吸収率を求めるために使用される、請求項10記載の方法。
【請求項14】
光路は少なくとも2つの光学装置を含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも2つの光学装置は第1のレンズと第2のレンズを含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
光路は基板の第1の表面の特定の位置に光を方向付ける第1の光学装置と第2の光学装置を含んでおり、第1の表面で反射した光は再び第2の光学装置を通過し、第2の光学装置以降、光は第3の光学装置で反射されて、第4の光学装置に達し、光検出器へと集束する、請求項14記載の方法。
【請求項17】
第1の表面から反射した光は、少なくとも部分的に第1のレンズの焦点距離と第2のレンズの焦点距離を調節することにより、第2の表面から反射した光から分離される、請求項15記載の方法。
【請求項18】
第1の表面から反射した光は、少なくとも部分的に遮断装置を使用して、第2の表面から反射した光から分離される、請求項14記載の方法。
【請求項19】
基板の第1の表面に放射される光がレーザビームからなる、請求項1記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも2つの光学装置は、レンズ、ミラー、またはこれらの組合せを含む、請求項14記載の方法。
【請求項21】
基板の第1の表面に放射される光を広帯域光源により発生させる、請求項1記載の方法。
【請求項22】
基板の少なくとも1つの光学特性を求める方法において、基板の第1の表面に光を放射し、ただし、基板は第1の表面と厚さの分だけ第1の表面から隔てられた対向する第2の表面を有しており、第1の表面から反射した光を第2の表面から反射した光から分離する光路を介して光を導き、第1の表面から反射した光の量を検出し、第1の表面からの検出された反射光の量に基づいて、基板の少なくとも1つの光学特性を求める、ただし、前記特性には、第1の表面の反射能、放射能、吸収能、もしくは透過能、または、基板の反射率、放射率、吸収率、もしくは透過率、または、これらの組合せが含まれることを特徴とする、基板の少なくとも1つの光学特性を求める方法。
【請求項23】
基板の光学特性を特定の光波長域において求める、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記した特定の光波長域には、基板温度の測定に使用される放射感知装置の動作波長が含まれている、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記光波長域は基板の加熱に使用される電磁放射の波長域と実質的に重なる、請求項23記載の方法。
【請求項26】
基板の少なくとも1つの光学特性を求めた後、基板を熱処理チャンバ内に置いて加熱し、少なくとも1つのシステム構成要素を前記少なくとも1つの光学特性に基づいて加熱処理中に制御する、請求項22記載の方法。
【請求項27】
基板の少なくとも1つの光学特性を基板の加熱を行う熱処理チャンバ内で求める、請求項22記載の方法。
【請求項28】
基板は半導体ウェハからなり、半導体ウェハ処理システムの少なくとも1つのシステム構成要素は前記少なくとも1つの光学特性に基づいて制御される、請求項22記載の方法。
【請求項29】
前記システム構成要素は、基板の温度を求めるために加熱中に基板から放出された放射の量を感知する放射測定装置を含んだ温度測定システムを含んでおり、第1の表面からの検出された光の量は、基板の温度を求める際に、前記放射測定装置により感知された放射量と併せて使用される基板放射率の値を求めるために使用される、請求項26記載の方法。
【請求項30】
前記システム構成要素は、基板を加熱するために使用される加熱装置に対する電力制御器を含む加熱システムを含んでおり、第1の表面からの検出された光の量は、基板の加熱に使用されるエネルギーの量が選択的に増大または減少させられるように前記電力制御器を調整するために使用される、請求項26記載の方法。
【請求項31】
さらに、基板の第2表面から反射した光の量を検出するステップを有し、前記システム構成要素は、基板の温度を求めるために加熱中に基板から放出された放射の量を感知する放射測定装置を含む温度測定システムを含んでおり、第1の表面からの検出された光の量と第2の表面からの検出された光の量は、基板の温度を求める際に、前記放射測定装置により感知された放射量と併せて使用される基板放射率、基板透過率、基板反射率、またはこれらの組合せを求めるために使用される、請求項26記載の方法。
【請求項32】
光路は少なくとも2つの光学装置を含む、請求項22記載の方法。
【請求項33】
前記少なくとも2つの光学装置は第1のレンズと第2のレンズを含む、請求項30記載の方法。
【請求項34】
光路は基板の第1の表面の特定の位置に光を方向付ける第1の光学装置と第2の光学装置を含んでおり、第1の表面で反射した光は再び第2の光学装置を通過し、第2の光学装置以降、光は第3の光学装置で反射されて、第4の光学装置に達し、光検出器へと集束する、請求項30記載の方法。
【請求項35】
第1の表面から反射した光は、少なくとも部分的に第1のレンズの焦点距離と第2のレンズの焦点距離を調節することにより、第2の表面から反射した光から分離される、請求項33記載の方法。
【請求項36】
第1の表面から反射した光は、少なくとも部分的に1つの遮断装置を使用して、第2の表面から反射した光から分離される、請求項32記載の方法。
【請求項37】
前記少なくとも2つの光学装置は、レンズ、ミラー、またはこれらの組合せを含む、請求項32記載の方法。
【請求項38】
前記少なくとも2つの光学装置は、レンズ、ミラー、またはこれらの組合せを含む、請求項34記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公表番号】特表2009−500851(P2009−500851A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520283(P2008−520283)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際出願番号】PCT/US2006/025288
【国際公開番号】WO2007/005489
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(502278714)マットソン テクノロジー インコーポレイテッド (11)
【氏名又は名称原語表記】Mattson Technology, Inc.
【住所又は居所原語表記】47131 Bayside Parkway, Fremont, CA 94538, USA
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際出願番号】PCT/US2006/025288
【国際公開番号】WO2007/005489
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(502278714)マットソン テクノロジー インコーポレイテッド (11)
【氏名又は名称原語表記】Mattson Technology, Inc.
【住所又は居所原語表記】47131 Bayside Parkway, Fremont, CA 94538, USA
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]