説明

半導体ウェハ加工用接着フィルム

【課題】 半導体ウェハの均一・平坦なバックグラインドを可能にし、基材フィルムを接着剤層から容易に引き剥がすことができ、接着剤層の性能低下が発生しにくい半導体加工用接着フィルムを提供すること。
【解決手段】 本発明の半導体加工用接着フィルムは、キャリアテープ上に、離型層、接着剤層、分離層及び基材フィルムをこの順に有してなる、半導体ウェハの加工に用いられる接着フィルムであって、接着剤層、分離層及び基材フィルムが、加工する半導体ウェハと略同一の大きさのウェハ形状に形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハ加工用接着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造方法として、半導体素子をフェイスダウンボンディング方式で回路基板に搭載するフリップチップ実装が行われている。一般のフリップチップ実装では、半導体ウェハ上に突起電極を形成した後、半導体ウェハの裏面を所定の厚さまで研削することが行われる。この半導体ウェハのバックグラインドの際には、半導体ウェハを固定、保護するために半導体ウェハ加工用テープが用いられる。例えば、下記特許文献1には、基材フィルム上に粘着剤層と接着剤層を有してなるウェハ加工用テープを準備し、この加工用テープを半導体ウェハの突出電極が形成された面に張り合わせて半導体ウェハのバックグラインド処理を行う方法が記載されている。
【0003】
フリップチップ実装では、半導体チップと回路基板との接着にフィルム状の接着剤が用いられることがある。例えば、下記特許文献2には、合成樹脂フィルム上に熱硬化性樹脂層を設けてなる半導体チップ接着用シートを製造し、半導体チップのバンプ電極面に熱硬化性樹脂層を圧着した後、合成樹脂フィルムを引き剥がして半導体チップを回路基板に接続する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−49482号公報
【特許文献2】特開2004−186204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体ウェハのバックグラインド処理にあたって、ウェハ加工用テープはテープラミネーター等を用いてロールtoロール方式で供給され、加圧ローラによりウェハに貼り付けられる。その後、ウェハ加工用テープは、ウェハ外周に沿ってカッターナイフを挿入、移動することによりウェハ形状に切り出される。切り出しの際には、ウェハ加工用テープを構成している全ての構成材に切り込みを入れカットされるのが一般的である。
【0006】
基材フィルム上に粘着剤層と接着剤層が積層してなる積層型の半導体ウェハ加工用接着フィルムは、半導体ウェハ加工用テープおよび半導体チップ接着用シートとして用いることができる。しかし、このような半導体ウェハ加工用接着フィルムは、半導体ウェハのバックグラインド処理における電極面側の保護膜としての機能と、フリップチップ実装用接着剤としての機能といった異なる特性を有することに起因して、各層の物性が大きく異なる場合がある。特に、接着剤層がフリップチップ実装用接着剤としての機能を発現するためには、実装後の半導体装置に要求される耐はんだリフロー性や冷熱衝撃試験等への耐久性を満足する必要があるため、基材フィルムや粘着剤層に比べて接着剤層の硬度が高く、脆弱な物性を有する場合がある。このような接着剤層を含むウェハ加工用テープをカッターナイフで切り出す場合、バリの形成や切削屑等が発生しやすくなるといった問題がある。そして、これらがウェハに残存している状態でウェハのバックグラインド作業を行った場合、ウェハの均一で平坦な薄化加工が損なわれるといった問題や、場合によってはウェハの破損といった不具合を生じる。
【0007】
また、上記のカッターナイフは磨耗により、切断能力が劣化していく。実装材料としての機能を有する半導体ウェハ加工用接着フィルムでは、硬度が高い接着剤層を有するため、カッターナイフの寿命がさらに短くなるといった問題がある。
【0008】
さらに、ラミネート後の半導体ウェハ加工用接着フィルムの切り出しにあたって、従来の加工用フィルムは、カッターナイフによりウェハ外周にそってウェハと略同一に切り出されるが、その際にウェハとカッターナイフとが接触し、ウェハの欠損や割れ、カッターナイフの磨耗、破損といった不具合が発生するため、ウェハとカッターナイフが直接接触しないように、切り出しサイズをウェハサイズよりも大きくとる場合がある。しかしながら、その後のダイシング工程におけるウェハ裏面へのダイシングテープ貼付け時に、切り出した加工用フィルムのウェハ面からはみ出している部分がダイシングテープと貼りつき、バックグラインドテープの剥離が妨げられるといった問題がある。
【0009】
また、半導体ウェハのバックグラインド処理にあたっては、荷重がウェハ全面に均等にかかることが必要であり、そのためウェハ加工用テープにはエアボイド等の咬み込み無くウェハに貼り付けられることが要求される。しかしながら、凸型電極が形成された半導体ウェハにエアボイド無く貼り付けるためには、加熱してテープの粘性を下げた状態で、加圧ローラ等の機械的加圧または空気圧力による加圧によって凸型電極周囲にもエアボイドの咬み込みが発生しないように貼り付けることが必要である。しかしながら、粘着剤層と接着剤層が形成されたウェハ加工用テープを加熱、加圧する場合、粘着剤層と接着剤層の成分拡散が発生し、融着が発生することがある。このため、バックグラインド処理後に基材フィルム及び粘着剤層を接着剤層から引き剥がすことが困難となってしまう問題がある。さらに、長期保存中にも粘着剤層と接着剤層の成分移行は発生するため、引き剥がしがより困難になる。引き剥がせた場合でも、粘着剤成分の接着剤中への成分移行によって接着剤としての特性が妨げられるという問題がある。
【0010】
一般的に、接着フィルムは、フィルム状接着剤組成物を合成樹脂フィルム等の塗工用の基材フィルムに塗工して形成されるが、基材フィルムは後に引き剥がす必要があることから、基材フィルムの塗工面にはシリコーン系の離形処理剤によって離形処理層が設けられる。しかし、シリコーン系の離形処理剤付きの基材フィルムに塗工した場合、離形処理剤の離形能力が高いと、バックグラインド工程中に接着剤層と基材フィルムとの分離が発生してバックグラインドが行えなくなるという問題があり、一方、シリコーン処理剤の離形力が弱いと、シリコーン処理剤が転写し、接着剤層の接着特性を低下させるという問題がある。なお、仮に離形処理が施されない基材フィルムに接着剤組成物を塗工した場合、基材フィルムの引き剥がしが困難となる問題や、引き剥がせた場合でも接着剤層の一部をも引き剥がしてしまうという問題が生じる。
【0011】
そこで、本発明は、上記バックグラインド工程での問題を解決できると共に、基材フィルムを接着剤層から容易に引き剥がすことができ、接着剤層の性能低下が発生しにくい半導体加工用接着フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、キャリアテープ上に、離型層、接着剤層、分離層及び基材フィルムをこの順に有してなる、半導体ウェハの加工に用いられる接着フィルムであって、接着剤層、分離層及び基材フィルムが、加工する半導体ウェハと略同一の大きさのウェハ形状に形成されていることを特徴とする半導体加工用接着フィルムを提供する。
【0013】
本発明の半導体ウェハ加工用接着フィルムは、接着剤層、分離層及び基材フィルムが半導体ウェハと略同一の大きさでウェハ形状に形成されているため、半導体ウェハ加工用接着フィルムを半導体ウェハへ貼り付けた後、カッターナイフ等による半導体ウェハ形状への切り出しが不要となり切り出し工程が省略されると共に、バリや切削屑等が発生しないため半導体ウェハ裏面の薄化研削において均一・平坦な加工ができるという効果を奏する。また、接着剤層と基材フィルムとの間に分離層を設けることにより、バックグラインド時における保持性と基材フィルムのはく離性とを両立させることができる。
【0014】
本発明の半導体ウェハ加工用接着フィルムにおいて、分離層の凝集力が接着剤層の凝集力よりも小さい、すなわち、分離層の凝集力と接着剤層の凝集力が、分離層の凝集力<接着剤層の凝集力、の関係にあることが好ましい。この場合、接着剤層を被着体に貼り付けて基材フィルムを剥ぎ取る際に、分離層と接着剤層界面の界面はく離、及び/又は、分離層の凝集破壊、及び/又は、分離層と基材フィルム界面の界面はく離で分離を生じさせることができるため、基材フィルムを容易に引きはがせるという効果がより有効に得られ、被着体上に設計量通りの接着剤層をより確実に残すことができるという効果が得られる。
【0015】
本発明の半導体ウェハ加工用接着フィルムにおいて、接着剤層が、少なくとも熱硬化性樹脂と、高分子量成分と、熱硬化性樹脂の架橋反応を開始させるための化合物と、からなる樹脂組成物、及びフィラー、を含むことが好ましい。この場合、加熱硬化後に十分に信頼性の高い硬化物を得ることができ、フリップチップ実装後の半導体装置に要求される耐はんだリフロー性や冷熱衝撃試験等への耐久性を満足することができるという効果をより有効に得ることができる。
【0016】
更に、分離層が、少なくとも熱硬化性樹脂と、高分子量成分と、熱硬化性樹脂の架橋反応を促進させるための化合物と、からなる樹脂組成物、を含むことが好ましい。この場合、接着樹脂層の組成との相溶性を良くすることができ、分離層が凝集破壊して接着剤層上に残った場合でも接着剤層の接着能力を阻害しないという効果を得ることができる。
【0017】
本発明の半導体ウェハ加工用接着フィルムにおいて、上記接着剤層が、突出電極が設けられた半導体ウェハの突出電極側に、キャリアテープ及び離型層が除去された半導体ウェハ加工用接着フィルムの接着剤層をラミネートしたときの接着剤層の厚みが突出電極の高さよりも大きくなるように形成され、かつ、半導体ウェハから得られる半導体チップがフリップチップ接続される回路基板の回路電極の高さと上記突出電極の高さとの合計よりも大きくなる厚みで形成されていることが好ましい。この場合、半導体ウェハの凸型電極形成面に半導体ウェハ加工用接着フィルムを貼り付けた際に、凸型電極を埋め込んで平坦な状態とすることが出来るため、バックグラインドした際にウェハ裏面の研削ムラを発生させないという効果が得られ、さらに基材フィルムを引き剥がしてフリップチップ接続を行うにあたって、目的とする半導体装置の回路間を十分に充てんさせることができるという効果が得られる。
【0018】
本発明の半導体ウェハ加工用接着フィルムにおいて、分離層及び接着剤層が、熱硬化性を有し、且つ、加熱硬化前の20℃以上40℃未満での粘度が150000Pa・s以下であることが好ましい。この場合、半導体チップに貼り付けた加工用接着フィルムから基材フィルムを剥ぎ取り回路基板等へ仮固定する際に、回路基板の搭載面側に接着剤層又は接着剤層と分離層の一部又は分離層を十分接触させて基板表面との密着性を良好にすることができ、半導体チップを安定的に仮固定できるという効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、上述したバックグラインド工程での問題を解決できると共に、基材フィルムを接着剤層から容易に引き剥がすことができ、接着剤層の性能低下が発生しにくい半導体加工用接着フィルムを提供することができる。本発明の半導体加工用接着フィルムは、半導体ウェハの均一・平坦なバックグラインドを可能にし、半導体ウェハのバックグラインド工程、半導体ウェハのダイシング工程、半導体チップのフリップチップ実装に適する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)は、本発明の半導体ウェハ加工用接着フィルムの好適な一実施形態を示す模式断面図であり、(b)は、そのフィルムを基材フィルム側から見た上面図であり、(c)は、本発明に係る半導体ウェハ加工を説明するための模式断面図である。
【図2】半導体ウェハの回路面上に、キャリアテープ及び離型層が除去された本実施形態の半導体ウェハ加工用接着フィルムの接着剤層をラミネートした積層体を示す模式断面図である。
【図3】(a)は、図2の積層体のバックグラインド工程を示す説明図であり、(b)は、半導体ウェハの裏面が研削された積層体を示す模式断面図である。
【図4】図3の(b)に示す積層体をダイシングフレームにセットした状態を示す模式断面図である。
【図5】図3の(b)に示す積層体をダイシングするダイシング工程を示す模式断面図である。
【図6】ダイシングされた積層体から、基材フィルムと分離層の一部とを除去する工程を説明するための模式断面図である。
【図7】ダイシングされた積層体から、基材フィルムと分離層の一部とを除去する工程を説明するための模式断面図である。
【図8】ダイシングにより得られた半導体チップをピックアップする工程を示す模式断面図である。
【図9】ピックアップされた半導体チップを回路基板上にフリップチップ実装する工程を示す模式断面図である。
【図10】実施形態に係る半導体チップを回路基板上にフリップチップ実装することにより得られる半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
【図11】本発明に係る半導体ウェハ加工におけるダイシング工程の他の例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る半導体ウェハ加工用接着フィルム、それを用いて実施される本発明に係る半導体ウェハ加工(半導体ウェハのバックグラインド方法、半導体ウェハのダイシング方法)及び半導体チップの実装方法、並びに、半導体装置の製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0022】
図1の(a)は、本発明の半導体ウェハ加工用接着フィルムの好適な一実施形態を示す模式断面図であり、(b)は、そのフィルムを基材フィルム側から見た上面図であり、(c)は、本発明に係る半導体ウェハ加工を説明するための模式断面図である。
【0023】
図1の(a)に示される半導体ウェハ加工用接着フィルムF1は、片面に離型層4が形成されたキャリアフィルム5の離型層4上に、接着剤層3、分離層2及び基材フィルム1がこの順で形成されてなるものである。図1の(b)は、フィルムF1を基材フィルム1側から見た上面図であり、図1の(b)に示されるように、接着剤層3、分離層2及び基材フィルム1が、加工する半導体ウェハと略同一の大きさでウェハ形状に形成されている。なお、接着剤層3、分離層2及び基材フィルム1は、ウェハ貼付けに供する部分以外は除去された状態でキャリアフィルム上に形成されていてもよい。
【0024】
まず、本発明に係る半導体ウェハ加工について説明する。図1の(c)に示されるような半導体ウェハ10を用意する。半導体ウェハ10は、半導体プロセスにより回路が形成された回路面(主面)S1と、回路面S1の反対側の面である裏面S2とを有している。そして、半導体ウェハ10の回路面S1には、回路面S1から突出する突出電極10aが複数形成されている。なお、このときの半導体ウェハ10の厚さは、バックグラインド前の状態であり、通常約550μm〜750μmである。
【0025】
続いて、図1の(a)に示される半導体ウェハ加工用接着フィルムF1を準備し、このフィルムからキャリアフィルム5を離型層4で剥離して接着剤層3を露出させた半導体ウェハ加工用テープF1aとし、その接着剤層3側を半導体ウェハ10の回路面S1に向けた状態で、加工用テープF1aを半導体ウェハ10の回路面S1に貼り付ける。この加工用テープF1aの半導体ウェハ10への貼付けは、例えばステージ及び加圧ロールに加熱機構が施されたラミネータもしくは加熱機構と吸引機構と加圧ロール機構を備えたラミネータを用いて行うことができる。
【0026】
このとき、基材フィルム1が所定の圧力で加圧されることで、突出電極10a同士の間を埋めるように接着剤層3が充填される。こうして、半導体ウェハ10の回路面S1上に突出電極を埋め込むような接着剤層が形成される(接着剤層形成工程)。そして、図2に示すような、貼付後の接着剤層3が突出電極10aを埋め込んでおり、さらに突出電極上にも接着剤層が残った状態で貼り付けられており、さらに基材フィルムは平坦に形成されている積層体が得られる。上記基材フィルム1には、変形可能な柔らかい基材が用いられる。
【0027】
上記接着剤層形成工程において、接着フィルムの貼り付け時には、半導体ウェハと接着剤層の界面にエアボイドの巻き込みが発生しないよう加熱・加圧による埋め込みを行うことが好ましい。本実施形態においては、接着剤層形成工程の後にバックグラインドテープを貼り付けることなく研削工程を行うことができるため、バックグラインド工程を短縮化することができる。
【0028】
さらに、本実施形態の接着フィルムは、基材フィルム、分離層及び接着剤層が半導体ウェハの外形及びサイズと略同一に形成されているため、接着フィルムを貼り付け後に半導体ウェハと略同一に切り出すが必要がなく、バリや切削屑等が発生せずに半導体ウェハ裏面の薄化研削を均一・平坦に加工することができる。
【0029】
続いて、図3に示すように、基材フィルムに圧力を加えつつ、半導体ウェハを裏面S2側から裏面研削装置12(バックグラインダ)によって研削し、半導体ウェハの厚みを薄くする。バックグラインドは一般的なバックグラインド装置を用いて行われる。具体的には、半導体ウェハの厚みが50μm〜550μm程度となるように、半導体ウェハの研削を行う(研削工程)。ここでは、上記加工用テープF1aが半導体ウェハの回路面S1側に貼付けられているので、均一に圧力を加えることができる。その結果、研削により半導体ウェハの裏面S2を平坦化できる。また、加工用テープF1aにより、バックグラインド時の半導体ウェハの破損を抑制することができる。このようにして、薄化された半導体ウェハとその回路面S1に貼り付けられた加工用テープF1aとからなる積層体R1が製作される。
【0030】
続いて、図4に示されるように、半導体ウェハの回路面S1側に加工用テープF1aが貼付けられたままの状態で、この積層体R1の裏面S2側及びダイシングフレーム14の下縁14aにダイシングテープ16を貼付ける。ダイシングテープ16への固定は一般的なダイシングテープ貼付装置で行われ、ダイシングフレーム14は、円環状の金属製部材であり、半導体ウェハのダイシング時に半導体ウェハの固定治具として用いられる。ダイシングフレーム14は、その内径が半導体ウェハの外形よりも大きくなっており、半導体ウェハを囲むようにダイシングテープ上に配置される。また、ダイシングテープ16は、基材フィルム16aと、基材フィルム16aの表面に形成された粘着層16bとを有している。ダイシングテープ16は市販品のダイシングテープが使用される。
【0031】
なお、図示はしていないが、半導体ウェハの回路面S1にはダイシングブレードDBによるダイシング位置を位置決めするための位置決めパターンが形成されており、ダイシング時には加工用テープF1aを介して半導体ウェハ上の切断位置を確認するので、本発明に係る接着フィルムは、上記位置決めパターンが視認できる程度の透過率(例えば、接着フィルムF1全体としての可視光透過率が20%以上)を有するものであると好ましい。
【0032】
続いて、図5に示すように、半導体ウェハの回路面S1が上方を向いた状態で、ダイシングブレードDBによって、半導体ウェハを加工用テープF1aと共に、接着フィルム側からダイシングし(いわゆる、フェイスアップダイシング)、複数の半導体チップ30とする(ダイシング工程)。ここでは、フェイスアップダイシングを採用することにより、上記の位置決めパターンを利用して、ダイシング位置の位置決めを比較的容易に行うことができる。
【0033】
また、上記のダイシング工程では、積層体R1から基材フィルムを除去しないでダイシングを行うため、ダイシングで発生する切り屑によって、半導体ウェハが汚染されることを抑制することができる。ダイシングは一般的なダイシング装置を用いて行われる。
【0034】
続いて、図6に示されるように、個片化された基材フィルムの表面全体に、基材フィルムを引き剥がすための引き剥がし用粘着テープ26を貼り付ける。図7は、引き剥がし用粘着テープ26を引っ張り基材フィルム1を引き剥がす際に、分離層2が凝集破壊し、一部は接着剤層3a表面に残り、一部は基材フィルム1上に付いて剥がれた状態を示す。図6及び図7に示される基材フィルムのはく離は、バックグラインドテープ引き剥がし用の引き剥がし装置を用いて行われる。
【0035】
その後、詳細は省略するが、紫外線等の照射によりダイシングテープ16の粘着層16bの粘着力を低下させた後、図8に示されるように、回路面S1上に接着剤層3a及び分離層2の一部を有する半導体チップ30を一つ一つピックアップする。
【0036】
次に、接着剤層3a及び分離層2の一部を有する半導体チップ30を、回路基板上に接続する。図9には、半導体ウェハから個片化された半導体チップ30と、これに相対向する回路42を有する回路基板40を準備した状態を示す。ここで、半導体チップ上の接着剤層3aは突出電極10aと回路電極42で形成される半導体装置の隙間に対して十分な高さを備えている。さらに、個片化した半導体チップ30に相対向する回路電極42を有する回路基板40への位置合わせも接着剤層を介して半導体チップ上の位置合わせマークを認識して行われる。また、接着剤層3aには基材フィルムの剥離の際に残った分離層2が付着しているため、半導体チップ30を回路基板40へ容易に仮固定できる。
【0037】
こうして、図10に示されるような、半導体チップ30と回路基板40とが接着剤層を介して接続された半導体装置50が得られる。この接続は、フリップチップ用の接続装置を用いて、加熱及び加圧によって行われ、この半導体チップを含む半導体デバイスを得ることができる。
【0038】
なお、上記のような切り屑による汚染に対する抑制効果は得られなくなるが、図11に示すように、ダイシングテープが貼付けられた積層体の半導体ウェハから、基材フィルムと分離層の一部とを除去した後に、ダイシングを行ってもよい。
【0039】
上記基材フィルムの引き剥がし工程において分離層が凝集破壊することによって接着剤層の厚みは当初の設計どおり保持されており、さらに、接着剤層とその表面に一部が残った分離層は組成的に相溶性が良く、接着剤層の接着特性を阻害することがなく、高信頼性の半導体装置を得ることができる。
【0040】
本実施形態の半導体ウェハ加工用接着フィルムについて更に説明する。半導体ウェハ加工用接着フィルムF1は、例えば、片面に離型層4が形成されたキャリアフィルム5に接着剤層3が形成されたものと、基材フィルム1に分離層2が形成されたものを、接着剤層3と分離層2を貼り合せるように、室温ないしは加温してラミネートすることで形成することができる。また、半導体ウェハ加工用接着フィルムF1は、例えば、片面に離型層4が形成されたキャリアフィルム5に接着剤組成物を塗布した後に乾燥することによって形成された接着剤層3上に、分離層組成物を塗布した後に乾燥することによって分離層2を形成し、さらに分離層2上に基材フィルム1を室温ないしは加温してラミネートすることで形成することができる。さらに、半導体ウェハ加工用接着フィルムF1は、例えば、基材フィルム1に分離層組成物を塗布した後に乾燥することによって形成された分離層2上に、接着剤組成物を塗布した後に乾燥することによって接着剤層3を形成し、さらに接着剤層3上に、片面に離型層4が形成されたキャリアフィルム5を室温ないしは加温してラミネートすることで形成することができる。
【0041】
半導体ウェハ加工用接着フィルムF1は、接着剤層、分離層及び基材フィルムが、半導体ウェハと略同一の大きさでウェハ形状に打ち抜かれた状態で離型層4を有するキャリアフィルム5上に形成されている。接着剤層、分離層及び基材フィルムは、ウェハ貼付けに供する部分以外は除去された状態でキャリアフィルム上に形成されていてもよい。
【0042】
接着剤層は、バックグラインド工程においてウェハの平坦性を保持させる必要があるため、常温において固体である。接着剤層はウェハの突起電極が形成された面へ押圧によって貼り合わされ、バックグラインド工程中のウェハの保持、ダイシング工程中での回路面保護、フリップチップボンディングにおける回路チップと回路基板の接着および接続を行う。ウェハへの貼り合わせの際にはウェハ回路面の凹凸に追従し、エアボイドの咬み込み無く接着剤層とウェハの界面を密着させなければならない。このため、貼り合わせ時は粘度が低下して形状への追従性を向上させなければならない。貼り合わせの温度としては接着剤層の熱硬化性樹脂の反応が開始しない温度よりも低いことが望ましく、常温よりも高いことが望ましい。また、接着剤層の熱収縮によってウェハに反りを発生させることを防止する観点から、低い温度での貼り付けが望ましい。望ましい貼り付け温度としては30℃〜90℃であって、更に望ましくは40℃〜80℃であり、より望ましくは50℃〜70℃である。接着剤層は貼り付け温度で粘度が低下し、この粘度としては1000Pa・s以上10000Pa・s以下であることが望ましい。粘度が10000Pa・sを超えるとウェハの凹凸に追従して界面を密着させるために加圧等を行わなければならず、汎用性に乏しいため、好ましくない。粘度が1000P・s未満である場合、貼り付け時にウェハ側面からのはみ出しが発生し、規定の接着剤量に管理できなくあるため好ましくない。
【0043】
また、接着剤層は、バックグラインド工程中においてウェハを保持するため、高弾性であることが必要である。接着剤層は、室温状態で1GPa以上の弾性率が好ましい。室温状態の弾性率が1GPaよりも小さい場合、伸びや変形の発生によってウェハの平坦性が保持できないため、好ましくない。
【0044】
さらに、接着剤層は、ダイシング工程においてはブレードによる分割またはステルスダイシング後の分断時にウェハ表面から剥がれることなく、密着していることが必要である。また、フィルムの伸びの発生によるバリの抑制や、分断時にウェハに追従して分断されなければならないことから、高弾性でなければならない。この観点からも、室温状態の弾性率は1GPa以上であることが好ましい。また、高弾性化、バリの抑制、分断性の向上のため、接着剤層にはフィラーが含まれることが望ましい。ダイシング工程での半導体ウェハのスクライブラインの認識、もしくはフリップチップ接続工程でチップ回路面に形成された位置あわせパターンを、接着剤層を透過して観察できなければならず、このために、接着剤層の濁度測方による透過率は10%以上であることが好ましい。接着剤層の透過率の妨げにならないように、フィラーと接着剤層の屈折率は近似の値であることが好ましい。透過率の妨げにならないようにする観点から、フィラーは、接着剤層の屈折率とフィラーの屈折率の差が±0.06の範囲となるものであることが好ましい。
【0045】
接着剤層は、少なくとも熱硬化性樹脂と、高分子量成分と、熱硬化性樹脂の架橋反応を開始させるための化合物と、からなる樹脂組成物、及び、樹脂組成物との屈折率差が±0.06の範囲のフィラー、を含んでなるものが好ましい。
【0046】
熱硬化性樹脂は、熱により三次元的に架橋することによって硬化するものが好ましく用いられる。高分子量成分は、室温では固体であり、接着剤層のフィルム形成性を向上させると共に、加熱によって軟化するものが好ましく用いられる。架橋反応を開始させるための開始剤は、固体もしくは液状であり、架橋反応を起こすための加熱時に熱硬化性樹脂と反応または熱硬化性樹脂の反応を促進する一方、室温から貼付温度までの作業温度では反応しない、もしくは反応速度が遅くフリップチップ接続時の接着性が十分に発現される程度まで反応性を保持した状態を維持させることができるものが好ましく用いられる。フィラーは、樹脂組成物の未硬化時の凝集力を高くすると共に、硬化後の線膨張係数を低減させるものが好ましく用いられる。
【0047】
接着剤層の厚みは、接着剤層が半導体チップと回路基板との間を十分に充填できる厚みであることが好ましい。また、接着剤層は、半導体ウェハの突出電極を埋め込んだ状態であっても突出電極高さよりも厚みが大きいことが好ましい。通常、接着剤層の厚みが、突出電極の高さと回路基板の配線の高さとの和に相当する厚みであれば、半導体チップと回路基板との間を十分に充填できる。より好ましくは、接着剤層の厚みが、回路基板の回路電極の高さと上記突出電極の高さとの合計よりも大きくなることである。
【0048】
常温において固体である分離層としては、少なくとも熱硬化性樹脂と、高分子量成分と、熱硬化性樹脂の架橋反応を開始させるための化合物と、からなる樹脂組成物を含むものが挙げられる。
【0049】
熱硬化性樹脂は、熱により三次元的に架橋することによって硬化するものが好ましく用いられる。高分子量成分は、室温では固体であり、接着剤層のフィルム形成性を向上させると共に、加熱によって軟化するものが好ましく用いられる。架橋反応を開始させるための開始剤は、固体もしくは液状であり、架橋反応を起こすための加熱時に熱硬化性樹脂と反応または熱硬化性樹脂の反応を促進する一方、室温から貼付温度までの作業温度では反応しない、もしくは反応速度が遅くフリップチップ接続時の接着性が十分に発現される程度まで反応性を保持した状態を維持させることができるものが好ましく用いられる。
【0050】
分離層が設けられていることにより、バックグラインド工程後に基材フィルムを引き剥がす工程で、分離層と基材の界面はく離、分離層の凝集破壊、及び分離層と接着剤層の界面はく離のいずれか単独もしくは混合の破壊モードで基材フィルムが引き剥がされることができ、これにより、接着剤層がウェハから剥がれることなく基材フィルムを引き剥がすことができる。分離層の破壊を伴って接着剤層から引き剥がされた後、接着剤層を透過してウェハ回路面のスクライブラインまたはアライメントマークを認識させる必要があることから、分離層が厚すぎると破壊後の凹凸が乱反射の原因となって認識性が低下するため、好ましくない。一方、分離層が薄すぎる場合の不具合は特に無いものの、均一な塗工状態を確保することが困難となる。これらの観点から、分離層の厚みは1ミクロン以上5ミクロン以下であることが好ましく、1ミクロン以上3ミクロン以下であることがより好ましい。
【0051】
本実施形態において、分離層と接着剤層の凝集力の関係は、分離層の凝集力<接着剤層の凝集力、であることが好ましい。分離層の凝集力が接着剤層の凝集力よりも大きい場合、基材フィルムを引き剥がす際に接着剤層の凝集破壊を伴う危険性があるため、好ましくない。分離層と接着剤層の凝集力の関係は、例えば配合成分の量、種類を変更することによって分離層の凝集力<接着剤層の凝集力とすることができる。例えば、高分子量成分の分子量を分離層<接着剤層とすること、樹脂組成物中に含ませる液状成分の量を分離層>接着剤層とすること、接着剤層にフィラーを含有させることによって達成することができる。分離層と接着剤層の凝集力が、分離層=接着剤層である場合及び分離層>接着剤層である場合、基材フィルムを引き剥がす際に接着剤層の分離層側からの一部もしくは厚み方向全体が抜き取られてしまい、フリップチップ接続した際の樹脂充てんが不十分になり、半導体装置の信頼性が損なわれるため、好ましくない。
【0052】
分離層と接着剤層に凝集力の差を設けるための設計時に、分離層及び接着剤層の凝集力を比較する手法として以下の方法が挙げられる。例えば、分離層を形成させるための分離層形成用組成物と、接着剤層を形成させるための接着剤層形成用組成物をそれぞれ離形処理が施された塗工用フィルム基材に塗布後乾燥し、それぞれを単独の層で形成したフィルムを作製する。その後、テンシロンなどの引っ張り試験機で引っ張り測定を行うことで、分離層及び接着剤層の凝集力を比較することができる。他の方法としては、分離層を形成させるための分離層形成用組成物と、接着剤層を形成させるための接着剤層形成用組成物をそれぞれ離形処理が施された塗工用フィルム基材に塗布後乾燥し、作製したフィルムについて、粘弾性測定装置を用い、引っ張りモードで周波数を加えて室温の弾性率を測定する方法が挙げられる。周波数は相対評価のため、比較対象間で同一であれば良く、任意の周波数を選択することができる。更に別の方法としては、上記で作製したフィルムをずり粘弾性測定装置を用い、ずりモードで周波数を加えて室温の弾性率を測定することによっても比較することができる。周波数は相対評価のため、比較対象間で同一であれば良く、任意の周波数を選択することができる。
【0053】
更に別の方法として、基材フィルム上に分離層、接着剤層の順に積層した積層体を作製した後、この積層体の接着剤層を半導体ウェハに貼付け、基材フィルムを引き剥がす、または接着剤層を両面テープで適当な基材表面に固定した後、基材フィルムを引き剥がし、基材フィルム上に残った樹脂の厚みをマイクロメータ等の厚みを計測する装置で計測することによる方法が挙げられる。残った樹脂の厚みが、基材フィルムに塗布した際の分離層の厚みと同等もしくはこれ以下であれば、凝集力の関係が分離層<接着剤層であり、基材フィルム上に残った樹脂の厚みが当初の分離層の厚みよりも厚くなった場合は、凝集力の関係が分離層=接着剤層、または分離層>接着剤層であると判定することができる。
【0054】
基材フィルム1として選択し得るポリマーの例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、アイオノマーなどのα−オレフィンの単独重合体または共重合体あるいはこれらの混合物、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のエンジニアリングプラスチック、ポリウレタン、スチレン−エチレン−ブテンもしくはペンテン系共重合体、ポリアミド−ポリオール共重合体等の熱可塑性エラストマー、およびこれらの混合物を列挙することができる。
【0055】
キャリアフィルム5として選択し得るポリマーの例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、アイオノマーなどのα−オレフィンの単独重合体または共重合体あるいはこれらの混合物、PET、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のエンジニアリングプラスチック、ポリウレタン、スチレン−エチレン−ブテンもしくはペンテン系共重合体、ポリアミド−ポリオール共重合体等の熱可塑性エラストマー、およびこれらの混合物を列挙することができる。具体的には、例えば、シリコーン系離型処理剤によって表面に離型層4を形成したPET基材が挙げられる。なお、離型層が形成されていないキャリアフィルムに接着剤樹脂組成物を塗工した場合、キャリアフィルムの引き剥がしが困難となったり、引き剥がせた場合でも接着剤樹脂組成物の一部をも引き剥がしてしまうという問題が生じる。これに対して、キャリアフィルムに離型層が形成されている場合、接着剤層からキャリアフィルムを容易に剥離することができる。
【0056】
離型層4の厚みは特に限定されないが、50μm以下であるのが好ましく、0.5〜5μmであるのがより好ましい。厚みが0.5μmより小さい場合には、離型層の均一な分布が損なわれ離型性が低下するため、好ましくない。厚みが5μmより大きい場合には、特に不具合はない。しかし、離型処理剤が転写し接着剤層の接着特性を低下させることを防止する観点から、厚みは3μm以下であることがさらにより好ましい。
【0057】
上記分離層2及び接着剤層3に使用される熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、トリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、シアノアクリレート樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネート樹脂、フラン樹脂、レゾルシノール樹脂、キシレン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、シロキサン変性エポキシ樹脂、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂、アクリレート樹脂等が挙げられる。これらは単独又は二種以上の混合物として使用することができる。分離層2と接着剤層3に使用される熱硬化性樹脂は同種であっても、別種であっても構わないが、好ましくは反応機構、保存性、反応温度が同種の熱硬化性樹脂であることが好ましい。
【0058】
高分子量成分としては、室温で固体状態となり、加熱によって軟化するポリマーであって、重量平均分子量で1万以上のポリマーであることが好ましい。このような高分子量成分として、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリブタジエン、アクリロニトリルブタジエン共重合体(NBR)、アクリロニトリルブタジエンゴムスチレン樹脂(ABS)、スチレンブタジエン共重合体(SBR)、アクリル酸共重合体等が挙げられる。これらは単独又は二種以上を併用して使用することができる。また、これらの高分子量成分には熱硬化性樹脂と反応する官能基を側鎖もしくは末端に有することもできる。このような官能基としては、エポキシ基、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、カルボキシル基、アミン等が挙げられる。これらの官能基は反応時に解裂する保護基や立体障害で反応性を抑制したキャッピングが施されていてもよい。
【0059】
架橋反応を開始させるための化合物としては、熱硬化性樹脂の高反応性と保存安定性を両立させるための潜在性を有する化合物であることが好ましい。潜在性は、例えばマイクロカプセルによる保護、分解温度と保存温度の差を広げること、融点を有し保存時は固体で反応時には融解することにより反応性を発現するものであって保存温度と融解温度の差を広げること、反応温度で解裂する保護基を導入し保存時は安定とする、等の方法によって発現することができる。マイクロカプセル型硬化剤は、例えば、硬化剤を核としてポリウレタン、ポリスチレン、ゼラチン及びポリイソシアネート等の高分子物質や、ケイ酸カルシウム、ゼオライトなどの無機物、及びニッケルや銅などの金属薄膜などの被膜により実質的に覆われており、平均粒径が10μm以下、好ましくは5μm以下のものである。
【0060】
架橋反応を開始させるための化合物は、熱硬化性樹脂の反応機構に最適な化合物を選択することができる。例えば、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合、重合促進にイミダゾールやアミン系の化合物を選択することができる。付加反応で架橋が進行する場合にはトリフェニルフォスフィンやDBU等の重合触媒を使用することができる。この他にも、樹脂組成物は、三次元架橋性樹脂と反応する成分としてフェノール系、イミダゾール系、ヒドラジド系、チオール系、ベンゾオキサジン、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミンの塩、ジシアンジアミド、有機過酸化物系の化合物を含んでもよい。また、これらの硬化剤は、可使時間を長くするために、ポリウレタン系、ポリエステル系の高分子物質等で被覆してマイクロカプセル化してもよい。
【0061】
フィラーとしては、結晶性を有するものであっても、非結晶性を有するものであってもよい。接着剤層にフィラーを添加することによって凝集力を向上させられるため、分離層との凝集力差を設けることが容易である。また、フィラーによって接着剤層硬化後の線膨張係数を小さくすることができる。線膨張係数が小さいと、熱変形が抑制される。よって、半導体ウェハ10から製造された半導体チップが回路基板に搭載された後も、突出電極と回路基板の配線との電気的な接続を維持することができるので、半導体チップと回路基板とを接続することによって製造される半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0062】
前述のフィラーとしては、化学組成が単一の化合物として表されるものであっても、複数の組成からなる化合物として表されるフィラーであってもよい。単一の化合物として表されるフィラーの例としては、シリカ、アルミナ、チタニア、マグネシア等の酸化物フィラー、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物フィラー、硫酸バリウム、硫酸ナトリウム等の硫酸化物フィラー等が挙げられる。複数の組成からなる化合物として表されるフィラーの例としては、亜鉛、アルミニウム、アンチモン、イッテルビウム、イットリウム、インジウム、エルビウム、オスミウム、カドミウム、カルシウム、カリウム、銀、クロム、コバルト、サマリウム、ジスプロシウム、ジルコニウム、錫、セリウム、タングステン、ストロンチウム、タンタル、チタン、鉄、銅、ナトリウム、ニオブ、ニッケル、バナジウム、ハフニウム、パラジウム、バリウム、ビスマス、プラセオジム、ベリリウム、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ユウロピウム、ランタン、リン、ルテチウム、ルテニウム、ロジウム、ボロン等金属元素を含む酸化物が挙げられる。これらは混合して用いることも出来る。複合酸化物は2種類以上の金属を原料として含み、原料金属が単独で酸化物となったときの構造とは異なる構造を有する化合物であることが好ましい。特に好ましくはアルミニウム、マグネシウムまたはチタンから選ばれる少なくとも1種類の金属元素と、他の元素の2種類以上を原料に含む酸化物の化合物からなる複合酸化物粒子である。このような複合酸化物としてはホウ酸アルミニウム、コージェライト、フォルスライト、ムライト、などが挙げられる。複合酸化物粒子の線膨張係数は0℃から700℃以下の温度範囲で7×10−6/℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは3×10−6/℃以下である。熱膨張係数が大きい場合は、接着剤層の熱膨張係数を下げるために複合酸化物粒子を多量に添加する必要が発生するため、好ましくない。
【0063】
分離層及び接着剤層は、カップリング剤等の添加剤を含んでもよい。これにより、半導体チップと配線基板との接着性を向上させることができる。
【0064】
接着剤層には導電粒子を分散させてもよい。この場合、突出電極の高さのバラツキによる悪影響を低減することができる。また、配線基板がガラス基板等のように圧縮に対して変形し難い場合においても接続を維持することができる。さらに、接着剤層を異方導電性の接着剤層とすることができる。
【0065】
本発明の半導体ウェハ加工用接着フィルムが適用される半導体ウェハは、ダイシング工程の後に半導体チップを得ることができるものである。半導体チップは、突出した接続端子を有している。半導体チップの突出した接続端子は、金ワイヤを用いて形成される金スタッドバンプ、金属ボールを半導体チップの電極に熱圧着や超音波併用熱圧着機によって固定したもの、及びめっきや蒸着によって形成されたものでもよい。突出した接続端子は単一の金属で構成されている必要はなく、金、銀、銅、ニッケル、インジウム、パラジウム、スズ、ビスマス等複数の金属成分を含んでいてもよいし、これらの金属層が積層された形をしていてもよい。また、突出した接続端子を有する半導体チップは、突出した接続端子を有する半導体ウェハの状態でも構わない。
【0066】
半導体チップの突出した接続端子と配線パターンの形成された基板とを相対向して配置するために、半導体チップと回路基板は位置合わせが行われる。位置合わせのため、半導体チップは突出した接続端子と同一面に位置合わせマークを有することができる。
【0067】
配線パターンの形成された回路基板は通常の回路基板でもよく、また半導体チップでもよい。回路基板の場合、配線パターンは、エポキシ樹脂やベンゾトリアジン骨格を有する樹脂をガラスクロスや不織布に含浸して形成した基板、ビルドアップ層を有する基板、ポリイミド、ガラス、セラミックスなどの絶縁基板表面に形成された銅などの金属層の不要な部分をエッチング除去して形成することもでき、絶縁基板表面にめっきによって形成することもでき、また蒸着などによって形成することもできる。また、配線パターンは単一の金属で形成されている必要はなく、金、銀、銅、ニッケル、インジウム、パラジウム、スズ、ビスマス等複数の金属成分を含んでいてもよいし、これらの金属層が積層された形をしていてもよい。また、基板が半導体チップの場合、配線パターンは通常アルミニウムで構成されているが、その表面に、金、銀、銅、ニッケル、インジウム、パラジウム、スズ、ビスマスなどの金属層を形成してもよい。
【0068】
半導体ウェハのバックグラインドは、半導体ウェハの回路面に本発明の半導体ウェハ加工用接着フィルムを貼付けた後、市販のバックグラインディング装置を用いて行われる。半導体ウェハのダイシングは市販のダイシング装置で行われる。これは、ブレードによる切断であっても良く、レーザー加工での分割でも構わない。ダイシングテープは、基材フィルムと基材フィルムの表面に形成された粘着層とを有している。基材フィルムに粘着層が塗布されたダイシングテープは市販のダイシングテープを適用することができる。
【0069】
半導体チップと回路基板の位置合わせは、半導体チップの回路面に貼りついた半導体ウェハ加工用接着フィルムの接着剤層を透過してチップの回路面に形成された位置合わせマークを識別できることが好ましい。位置合わせマークは通常のフリップチップボンダーに搭載されたチップ認識用の装置で識別することができる。この認識装置は通常ハロゲンランプを有するハロゲン光源、ライトガイド、照射装置、CCDカメラから構成される。CCDカメラで取り込んだ画像は画像処理装置によってあらかじめ登録された位置合わせようの画像パターンとの整合性が判断され、位置合わせ作業が行われる。
【0070】
本発明の半導体ウェハ加工用接着フィルムの接着剤層と分離層の一部が使用されて、半導体チップと回路基板が接続される際、加熱加圧によって接着剤層と分離層の一部は硬化する。このときの硬化反応率が低い場合には加熱後の接続が保持されなくなるため、好ましくない。硬化反応率は80%以上となることが望ましい。180℃20秒加熱を行ったときに硬化反応率が80%以上になるような接着剤であれば、通常の加熱加圧による接続条件の範囲において接続後の電気的接続が保持できる硬化状態を得ることができるため、180℃20秒の反応率を指標として材料の反応性良否を判定することができる。本発明においては、硬化反応率が90%以上になるように加熱処理することがより好ましい。
【0071】
本発明の半導体ウェハ加工用接着フィルムにおける分離層及び接着剤層の加熱硬化前の20℃以上40℃未満での粘度は150000Pa・s以下であることが好ましい。より好ましくは上記粘度が500Pa・s〜150000Pa・sの範囲であることである。粘度が150000Pa・sより大きい場合は、半導体チップと回路基板とを位置合わせ後に半導体チップを回路基板上の搭載位置に仮固定する際に、半導体チップの固定が不安定になり位置ズレや加熱・加圧ツールとの平行性が損なわれ加圧力の均一な印加ができなくなるため好ましくない。粘度が500Pa・sを下回る場合は、半導体チップの仮固定時に樹脂が流れてしまい、目的の厚みを保持できなくなるため好ましくない。
【0072】
接着剤層の加熱硬化前の30℃での粘度が、分離層の加熱硬化前の30℃での粘度よりも大きいことが好ましい。
【0073】
加熱硬化前の分離層及び接着剤層の粘度は市販の動的粘弾性測定装置を用いて測定することが可能であり、測定は全自動で行なうことができる。具体的には、所定の温度に加熱した恒温槽内で、試料を2枚の平行プレートにはさみ、片方のプレートに微小な正弦波状のひねり歪みを付加した時、他方のプレートに発生する応力と歪から弾性率および粘度を算出する。一般に測定周波数は0.5〜10Hzであり、高分子材料は粘弾性体として挙動するため、弾性成分に由来する貯蔵弾性率G’と粘性成分に由来する損失弾性率G”が得られる。この二つの値から複素弾性率Gが下記数1に示される式で与えられる。さらに粘度をη(Pa・s)、測定周波数をf(Hz)、複素弾性率G(Pa)とすると、粘度は下記数2に示される式で与えられる。
【0074】
【数1】



【数2】



【実施例】
【0075】
以下、実施例により本発明を詳しく説明する。
【0076】
(実施例1)
フェノキシ樹脂(InChem社製、PKHC)30重量部、三次元架橋性樹脂としてエポキシ樹脂(DIC株式会社製、N−672−EXP)20重量部、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ樹脂(旭化成株式会社製、HX−3941HP)50重量部及びシランカップリング剤(東レ・ダウコーニング社製、SH6040)を用い、トルエンと酢酸エチルの混合溶媒中に溶解し、ワニスを得た。さらにこのワニスに、粉砕し、大粒径を除去するための5μmの分級処理を行った平均粒径1μmのコージェライト粒子(2MgO・2Al・5SiO、比重2.4、線膨張係数1.5×10−6/℃、屈折率1.57)100重量部を混ぜ、撹拌して分散して、接着剤層形成用樹脂組成物のワニスを得た。このワニスを、表面に離形処理が施されたセパレータフィルム(PETフィルム)上にロールコータを用いて塗布した後、70℃のオーブンで10分間乾燥させて、セパレータ上に厚み50μmの接着剤層を形成した。
【0077】
得られた接着剤層のフィルムについて、以下の方法により粘度を測定した。まず、接着剤層のフィルムをラミネートして厚み500μmのサンプルを作製した。これをレオメトリックス・サイエンティフィック・エフ・イー株式会社製粘弾性測定装置ARESを用い、直径8mmの平行プレートに挟み込み25℃〜250℃まで10℃/minで昇温する過程での周波数10Hzでの粘度挙動を測定した。この結果、30℃での粘度が120000Pa・sであった。
【0078】
一方で、フェノキシ樹脂(InChem社製、PKHC)30重量部、三次元架橋性樹脂としてエポキシ樹脂(DIC株式会社製、N−672−EXP)20重量部、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ樹脂(旭化成株式会社製、HX−3941HP)50重量部及びシランカップリング剤(東レ・ダウコーニング社製、SH6040)を、トルエンと酢酸エチルの混合溶媒中に溶解し、分離層形成用樹脂組成物のワニスを得た。このワニスを基材フィルム(PETフィルム)上にロールコータを用いて塗布した後、70℃のオーブンで10分間乾燥させて、セパレータ上に厚み3μmの分離層を形成した。得られた分離層のフィルムについて接着剤層と同様に粘弾性測定装置を用いて粘度測定を行った結果、30℃での粘度が22000Pa・sであった。
【0079】
次いで、接着剤層と分離層とをラミネータを通して貼り合わせ、半導体ウェハ(8インチ)と略同一の外形及び大きさに切り抜いた後、接着剤層側の離形処理PETを引き剥がし、片面に離型層が形成されたキャリアテープ上に接着剤層側を貼り合わせ、キャリアテープ/離型層/接着剤層/分離層/基材フィルムの積層構造を有する半導体ウェハ加工用接着フィルムを得た。
【0080】
テープラミネーターを用いて、得られた半導体ウェハ加工用接着フィルムからキャリアテープを剥離した後の接着剤層を、表面が酸化膜の半導体ウェハに80℃でラミネートすることにより、バリや異物の付着の無い加工用接着フィルム付き半導体ウェハを得た。
【0081】
さらに、上記の半導体ウェハから基材フィルムを引き剥がしたところ、分離層を凝集破壊して引き剥がすことができた。基材フィルムに残った樹脂の厚みをマイクロメータで計測した結果、最大3μmの厚みであった。
【0082】
(実施例2)
三次元架橋性樹脂としてエポキシ樹脂(DIC株式会社製、N−672−EXP)15重量部、三次元架橋性樹脂と反応する硬化剤としてフェノールアラルキル樹脂(三井化学株式会社製、XLC−LL)15重量部、アクリルゴム(ブチルアクリレート40部エチルアクリレート30部アクリロニトリル30部グリシジルメタクリレート3部の共重合体、分子量:85万)20重量部、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ樹脂(旭化成株式会社製、HX−3941HP)50重量部及びシランカップリング剤(東レ・ダウコーニング社製、SH6040)を、トルエンと酢酸エチルの混合溶媒中に溶解し、ワニスを得た。さらにこのワニスに、粉砕し、大粒径を除去するための5μmの分級処理を行った平均粒径1μmのコージェライト粒子(2MgO・2Al・5SiO、比重2.4、線膨張係数1.5×10−6/℃、屈折率1.57)100重量部を混ぜ、撹拌、分散して、接着剤層形成用樹脂組成物のワニスを得た。このワニスを、表面に離形処理が施されたセパレータフィルム(PETフィルム)上にロールコータを用いて塗布した後、70℃のオーブンで10分間乾燥させて、セパレータ上に厚み50μmの接着剤層を形成した。
【0083】
実施例1と同様にして接着剤層の粘度挙動を測定したところ、30℃での粘度が95000Pa・sであった。
【0084】
一方で、三次元架橋性樹脂としてエポキシ樹脂(DIC株式会社製、N−672−EXP)15重量部、三次元架橋性樹脂と反応する硬化剤としてフェノールアラルキル樹脂(三井化学株式会社製、XLC−LL)15重量部、アクリルゴム(ブチルアクリレート40部エチルアクリレート30部アクリロニトリル30部グリシジルメタクリレート3部の共重合体、分子量:85万)20重量部、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ樹脂(旭化成株式会社製、HX−3941HP)50重量部及びシランカップリング剤(東レ・ダウコーニング社製、SH6040)を、トルエンと酢酸エチルの混合溶媒中に溶解し、分離層形成用樹脂組成物のワニスを得た。このワニスを基材フィルム(PETフィルム)上にロールコータを用いて塗布した後、70℃のオーブンで10分間乾燥させて、セパレータ上に厚み3μmの分離層を形成した。得られた分離層のフィルムについて接着剤層と同様に粘弾性測定装置を用いて粘度測定を行った結果、30℃での粘度が18000Pa・sであった。
【0085】
次いで、接着剤層と分離層とをラミネータを通して貼り合わせ、半導体ウェハ(8インチ)と略同一の外形及び大きさに切り抜いた後、接着剤層側の離形処理PETを引き剥がし、片面に離形層が形成されたキャリアテープ上に接着層側を貼り合わせ、キャリアテープ/離型層/接着剤層/分離層/基材フィルムの積層構造を有する半導体ウェハ加工用接着フィルムを得た。
【0086】
テープラミネーターを用いて、得られた半導体ウェハ加工用接着フィルムからキャリアテープを剥離した後の接着剤層を、表面が酸化膜の半導体ウェハに80℃でラミネートすることにより、バリや異物の付着の無い加工用接着フィルム付き半導体ウェハを得た。
【0087】
さらに、上記の半導体ウェハから基材フィルムを引き剥がしたところ、分離層を凝集破壊して引き剥がすことができた。基材フィルムに残った樹脂の厚みをマイクロメータで計測した結果、最大3μmの厚みであった。
【0088】
(比較例1)
実施例1と同様にして接着剤層形成用樹脂組成物のワニスを得た。このワニスを表面に離形処理が施されたセパレータフィルム(PETフィルム)上にロールコータを用いて塗布した後、70℃のオーブンで10分間乾燥させて、セパレータ上に厚み50μmの接着剤層を形成した。
【0089】
次いで、上記と同じワニスを、基材フィルム(PETフィルム)上にロールコータを用いて塗布した後、70℃のオーブンで10分間乾燥させて、厚み3μmの分離層を形成した。
【0090】
次いで、接着剤層と分離層とを、ラミネータを用いて貼り合わせ、接着剤層側のセパレータを引き剥がし、片面に離型層が形成されたキャリアテープ上に接着剤層を貼り合わせ、キャリアテープ/離型層/接着剤層/分離層/基材フィルムの積層構造を有する半導体ウェハ加工用接着フィルムを得た。
【0091】
テープラミネーターを用いて、得られた半導体ウェハ加工用接着フィルムからキャリアテープを剥離した後の接着剤層を、表面が酸化膜の半導体ウェハに80℃でラミネートした後、カッターナイフを用いてウェハ外周にそって略同一に切り出したところバリ及び切削屑が発生した。次いで、上記の半導体ウェハから基材フィルムを引き剥がしたところ、一部は凝集破壊で一部はウェハ界面で樹脂がはく離した。基材フィルム上に残った樹脂の厚みは最大53μmであった。
【0092】
(比較例2)
実施例2と同様にして接着剤層形成用樹脂組成物のワニスを得た。このワニスを、表面に離形処理が施されたセパレータフィルム(PETフィルム)上にロールコータを用いて塗布した後、70℃のオーブンで10分間乾燥させて、セパレータ上に厚み50μmの接着剤層を形成した。
【0093】
次いで、上記と同じワニスを、基材フィルム(PETフィルム)上にロールコータを用いて塗布した後、70℃のオーブンで10分間乾燥させて、厚み3μmの分離層を形成した。
【0094】
次いで、接着剤層と分離層とを、ラミネータを用いて貼り合わせ、接着剤層側のセパレータを引き剥がし、片面に離型層が形成されたキャリアテープ上に接着剤層を貼り合わせ、キャリアテープ/離型層/接着剤層/分離層/基材フィルムの積層構造を有する半導体ウェハ加工用接着フィルムを得た。
【0095】
テープラミネーターを用いて、得られた半導体ウェハ加工用接着フィルムからキャリアテープを剥離した後の接着剤層を、表面が酸化膜の半導体ウェハに80℃でラミネートした後、カッターナイフを用いてウェハ外周にそって略同一に切り出したが、切り取られた残りの加工用接着フィルムは貼付テーブル周辺に接着剤層が貼り付き、回収できなかった。次いで、上記の半導体ウェハから基材フィルムを引き剥がしたところ、一部は凝集破壊で一部はウェハ界面で樹脂がはく離した。基材フィルム上に残った樹脂の厚みは最大53μmであった。
【0096】
実施例1及び2の半導体ウェハ加工用接着フィルムによれば、半導体ウェハに貼り付けた後に、バリや切削屑等の付着の無い状態を確保でき、さらに引き剥がした基材フィルム上の樹脂の厚みが分離層の厚みと同等であることより半導体ウェハ上にフリップチップ接続を行うのに十分な接着剤層を残せたことが確認された。したがって、実施例1及び2の半導体ウェハ加工用接着フィルムは、半導体ウェハに貼り付けた状態で均一・平坦なバックグラインド加工を可能にし、フリップチップ実装まで行える半導体ウェハ加工用接着フィルムとして有用であることが分かった。
【0097】
一方、比較例1及び2の半導体ウェハ加工用接着フィルムは、半導体ウェハ形状への切り出しの際にバリが発生したり、ラミネート装置への付着が発生したりしており、基材フィルムを引き剥がす際に半導体ウェハ表面から接着剤が引き剥がされてしまうことから、半導体ウェハ加工及びフリップチップ実装へ用いることが困難である。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明によれば、バックグラインド工程での問題を解決できると共に、基材フィルムを接着剤層から容易に引き剥がすことができ、接着剤層の性能低下が発生しにくい半導体加工用接着フィルムを提供することできる。このような半導体ウェハ加工用接着フィルムは、バックグラインド工程前に半導体ウェハに貼付、バックグラインドを行い、ダイシング後に基材フィルムを引き剥がしても半導体ウェハ表面から接着剤が剥がれることが無いため、ダイシング後に接着剤付きの半導体チップを得ることができ、フリップチップ接続に利用することができることから、チップ接続用接着フィルムの基板貼付工程を削減することができ、半導体装置の製造工程の短縮に役立つ。
【符号の説明】
【0099】
10…半導体ウェハ、10a…突出電極、1…基材フィルム、2…分離層、3…接着剤層、3a…接着剤層、4…離型層、5…キャリアフィルム、12…バックグラインダ、14…ダイシングフレーム、14a…下縁、16…ダイシングテープ、16a…基材フィルム、16b…粘着層、26…粘着テープ、30…半導体チップ、40…回路基板、42…回路電極、50…半導体装置、R1…積層体、F1…半導体ウェハ加工用接着フィルム、F1a…半導体ウェハ加工用テープ、S1…主面、S2…裏面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアテープ上に、離型層、接着剤層、分離層及び基材フィルムをこの順に有してなる、半導体ウェハの加工に用いられる接着フィルムであって、
前記接着剤層、前記分離層及び前記基材フィルムが、加工する半導体ウェハと略同一の大きさのウェハ形状に形成されていることを特徴とする半導体ウェハ加工用接着フィルム。
【請求項2】
前記分離層の凝集力が前記接着剤層の凝集力よりも小さいことを特徴とする請求項1記載の半導体ウェハ加工用接着フィルム。
【請求項3】
前記接着剤層が、少なくとも熱硬化性樹脂と、高分子量成分と、前記熱硬化性樹脂の架橋反応を開始させるための化合物と、からなる樹脂組成物、及びフィラー、を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の半導体ウェハ加工用接着フィルム。
【請求項4】
前記分離層が、少なくとも熱硬化性樹脂と、高分子量成分と、前記熱硬化性樹脂の架橋反応を促進させるための化合物と、からなる樹脂組成物、を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の半導体ウェハ加工用接着フィルム。
【請求項5】
前記接着剤層が、突出電極が設けられた半導体ウェハの前記突出電極側に、前記キャリアテープ及び前記離型層が除去された前記半導体ウェハ加工用接着フィルムの前記接着剤層をラミネートしたときの接着剤層の厚みが前記突出電極の高さよりも大きくなるように形成され、かつ、前記半導体ウェハから得られる半導体チップがフリップチップ接続される回路基板の回路電極の高さと前記突出電極の高さとの合計よりも大きくなる厚みで形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の半導体ウェハ加工用接着フィルム。
【請求項6】
前記分離層及び前記接着剤層が、熱硬化性を有し、且つ、加熱硬化前の20℃以上40℃未満での粘度が150000Pa・s以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の半導体ウェハ加工用接着フィルム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−171711(P2011−171711A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277311(P2010−277311)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】