説明

半導体ウェハ容器

【課題】半導体ウェハを収納する半導体ウェハ容器において、蓋の開け閉めによる摩擦によって粉塵が発生しない半導体ウェハ容器を提供する。
【解決手段】 半導体ウェハ4を水平に収納する容器本体1と、その容器本体1を密閉する蓋体2を有する半導体ウェハ容器において、容器本体1または蓋体2に逆止弁機構3を設け、該逆止弁機構3を介して容器本体1内の空気を排出し、容器本体1内を負圧にして、容器本体1と蓋体2を摩擦することなく密閉固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハを収納する半導体ウェハ容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハの保管、搬送の際に使用する半導体ウェハ容器は、半導体ウェハを収納する容器本体と、その容器本体を密閉する蓋とからなり、蓋は容器本体にかみ合わせにより固定される構造となっている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また蓋は、容器本体にかみ合わせでない場合でも、容器本体と蓋との間に密閉性を高めるガスケットを設け、容器本体と蓋を嵌め合わせた後、留め金で固定した構造となっている(例えば特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−253481号公報
【特許文献2】特開2001−332612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、容器本体と蓋をかみ合わせ又は嵌め合わせにより固定するとき、もしくは容器本体に固定された蓋を外すときに、容器本体と蓋は互いに擦れ合うため、容器本体または蓋を形成する部材の粉塵が発生し、収納している半導体ウェハにこの粉塵が付着し、半導体ウェハを汚すという問題がある。
【0006】
そこで本発明の目的は、半導体ウェハ容器の蓋の開け閉めによって、粉塵が発生することがない半導体ウェハ容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1は、内部に半導体ウェハを水平に保持して収納すべく開口部を有する容器本体と、該容器本体の開口部に着脱自在に取り付けられると共に開口部を密閉すべく覆うと共に容器内方向に押圧することにより撓むように可とう性部材で成形された蓋体と、該蓋体に設けられ、上記蓋体が容器本体内方向に押圧されて撓むことにより容器本体内の雰囲気を外部に排気して負圧状態に維持するための逆止弁とを備えた半導体ウェハ容器である。
【0008】
請求項2は、内部に半導体ウェハを水平に保持して収納すべく開口部を有する容器本体と、該容器本体の開口部に着脱自在に取り付けられると共に開口部を密閉すべく覆うと共に容器内方向に押圧することにより撓むように可とう性部材で成形された蓋体と、該容器本体に設けられ、上記蓋体が容器本体内方向に押圧されて撓むことにより容器本体内の雰囲気を外部に排気して負圧状態に維持するための逆止弁とを備えた半導体ウェハ容器である。
【0009】
請求項3は、内部に半導体ウェハを水平に保持して収納すべく開口部を有する容器本体と、該容器本体の開口部に連続して起立して設けられた筒状体と、該筒状体の径方向外方に拡張されて容器本体に一体的に形成された水平台部と、該容器本体の開口部を密閉して覆うべく着脱自在に設けられ、上記筒状体との間に所定の間隙を形成し嵌合して上記水平台部に着座する筒状体脚部を有すると共に容器本体内方向に押圧されて撓むことにより容器本体内の雰囲気を上記間隙より容器外部に排気させるための可とう性部材から成形された蓋体と、該筒状体脚部の下端部に径方向外方に延出されて上記容器本体の水平台部に着座し、排気される雰囲気の逆流を防止する吸盤状の逆止弁とを備えた半導体ウェハ容器である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、半導体ウェハ容器の開け閉め時に容器本体と蓋が互いに擦れ合うことがなく、容器本体と蓋から粉塵が発生せず、収納している半導体ウェハに粉塵が付着して半導体ウェハが汚れることを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0012】
図1〜図3(a)、図3(b)に本発明の半導体ウェハ容器の第1の実施の形態を示す。図1は容器本体1内にウェハ4を水平に収納し、蓋体2を被せた状態の断面図であり、図2は容器本体1を蓋体2で密閉した状態を示す断面図である。また、図3(a)は図1の、図3(b)は図2の容器本体1と蓋体2の嵌合部をそれぞれ拡大した断面図である。
【0013】
図1、図2において、容器本体1は円盤状に形成され、内部に半導体ウェハ4を水平に保持して収納すべく開口部8aを有し、該容器本体1の開口部8aの外周に連続して起立する筒状体7が設けられ、さらに該筒状体7の径方向外方に拡張されて容器本体1に一体的に形成された水平台部7aが形成されて構成される。
【0014】
蓋体2は、容器本体1の開口部8aに着脱自在に取り付けられると共に開口部8aを密閉すべく覆うと共に容器本体1の内方向に押圧することにより撓むように可とう性部材で円盤状に成形される。
【0015】
また蓋体2を構成する円盤2aの下面には、容器本体1の筒状体7と嵌合すると共に、水平台部7aに着座する筒状体脚部5が設けられ、容器本体1と嵌合した際には、容器本体1の開口部8aの下方に設けられた球面状の底面10と該蓋体2で収納室8が形成される。
【0016】
円盤2aは、上記蓋体2が容器本体1の内方向に押圧されて撓むことにより容器本体1内の雰囲気(収納室8内の雰囲気)を外部に排気して負圧状態に維持するための逆止弁機構3を備えている。
【0017】
この逆止弁機構3は、気体排出穴3aと逆止弁3bとからなり、蓋体2を容器本体1に被せたとき、収納室8内の雰囲気を容器外部に排出できるよう、また、容器外部から収納室8内に侵入する外気を遮断できるように構成される。また、逆止弁3bは、外気の遮断を適宜解除できるように構成される。
【0018】
また、筒状体脚部5は、容器本体1の筒状体7に嵌合する筒部5bと、筒状体脚部5の下端部に径方向外方に延出されて水平台部7aに着座する脚部下端部5aとからなり、さらに脚部下端部5aは、外周に行くに従って先端が断面先細に形成される。
【0019】
図3(a)に示すように、筒状体脚部5の筒部5bは下方に行くに従ってやや内側に傾斜するように形成され、かつ筒部5bの内周は、筒状体7の外周より若干大きく形成され、また、筒部5bの高さh5は、容器本体1の筒状体7の水平台部7aからの高さh7に対して若干短く形成され、また、脚部下端部5aの底面の幅w5は水平台部7aの幅w7とほぼ同等の長さに形成される。
【0020】
次に第1の実施の形態の作用を説明する。
【0021】
先ず容器本体1の開口部8aを介して収納室8の底面10に半導体ウェハ4を水平に収納し、その状態から図1に示すように開口部8aに蓋体2を被せる。この際、脚部下端部5aの先端は水平台部7aに着座した状態にある。
【0022】
次に、図2、図3(b)に示すように蓋体2が容器本体1の内方向に押圧されて撓むことにより収納室8内の雰囲気を逆止弁機構3を介して容器外部に排気することで収納室8内は負圧となり、また筒状体脚部5と容器本体1の筒状体7が密着することで負圧状態が維持され、容器本体1と蓋体2は密閉される。
【0023】
この容器本体1への蓋体2の密閉固定は、蓋体2を押し下げるだけで済むので、擦れる部分がなく、粉塵が発生することがない。従って、収納室8内の半導体ウェハ4に粉塵が付着し、半導体ウェハ4が汚れることを防ぐことができる。
【0024】
なお、ウェハ4を取り出す際には逆止弁機構3の逆止弁3bを適宜解除すれば外気が逆止弁機構3を介して収納室8に侵入し、収納室8内の内圧を外気と同圧にすることで円盤2aと脚部下端部5aの弾性力により図1および図3(a)に示した状態に戻すことができ、蓋体2を取り外すことでウェハ4を取り出すことができる。このウェハ4の取り出しの際にも擦れる部分がないので、粉塵を発生することはない。
【0025】
従って、ウェハ4を取り出す際も密閉固定時と同様に、収納室8内の半導体ウェハ4に粉塵が付着して半導体ウェハ4が汚れることを防ぐことができる。
【0026】
次に、図4、図5に第2の実施の形態を示す。
【0027】
第2の実施の形態では、容器本体1の底面に逆止弁機構3が設けられる以外、容器本体1と蓋体2の構成および作用は、前述した第1の実施の形態と同様である。
【0028】
図6〜図8(a)、図8(b)に第3の実施の形態を示す。
【0029】
図6、図7において、容器本体1は円盤状に形成され、内部に半導体ウェハ4を水平に保持して収納すべく開口部8aを有し、該容器本体1の開口部8aに連続して起立して設けられた筒状体7があり、さらに該筒状体7の径方向外方に拡張されて容器本体1に一体的に形成された水平台部7aが形成されて構成される。 蓋体2は、容器本体1の開口部8aを密閉して覆うべく着脱自在に設けられ、上記筒状体7との間に所定の間隙12を形成し嵌合して上記水平台部7aに着座する筒状体脚部5を有すると共に容器本体1の内方向に押圧されて撓むことにより容器本体1内の雰囲気を上記間隙12より容器外部に排気させるための可とう性部材から円盤状に成形され、構成される。
【0030】
筒状体脚部5は、容器本体1の筒状体7に嵌合する筒部5bと、筒状体脚部5の下端部に径方向外方に延出されて上記容器本体1の水平台部7aに着座する脚部下端部5aとからなり、さらに脚部下端部5aは、外周に行くに従って先端が断面先細に形成される。
【0031】
また、図3(a)と同様に、容器本体1と蓋体2の嵌合部の構成においては、筒状体脚部5の筒部5bは下方に行くに従ってやや内側に傾斜するように形成され、かつ筒部5bの内周は、筒状体7の外周より若干大きく形成され、また、筒部5bの高さh5は、容器本体1の筒状体7の水平台部7aからの高さh7に対して若干短く形成され、また、脚部下端部5aの底面の幅w5は水平台部7aの幅w7とほぼ同等の長さに形成され、所定の間隙12を形成する。
【0032】
第3の実施の形態の作用を説明する。
【0033】
先ず容器本体1の開口部8aを介して収納室8の底面10に半導体ウェハ4を水平に収納し、その状態から図6に示すように蓋体2を被せる。
【0034】
次に図8(a)のように、脚部下端部5aの先端を容器本体1の水平台部7aに着座させた状態で蓋体2の中央部を押圧すると、容器本体1内の雰囲気は間隙12を経て容器外部に押し出され排気されるが、押圧で撓むように変形させた蓋体2は、弾性力により元の形状に回復しようとするため、脚部下端部5aは、上記嵌合部の構成により、容器本体1内から排気される雰囲気の逆流を防止する吸盤状の逆止弁として作用し、容器本体1内は図7および図8(b)に示すように負圧が維持され、密閉状態になる。このとき間隙12が容器外より負圧であれば密閉は実現され、脚部下端部5aと水平台部7aは全面的に密着しなくてもよい。
【0035】
また、密閉を解除するには、水平台部7aから脚部下端部5aを若干持ち上げる(離す)ことで、容易に外気を容器本体1内に導入し、容器本体1内を外気圧と同等にすることができ、蓋体2を容易に取り外すことができる。
【0036】
なお上述の本発明においては、脚部下端部5aの形状は断面先細に形成する例で説明したが、水平台部7aに密着できる形状であれば図示例に限らず、いかなる形状に変更してもよいことはもちろんである。
【0037】
このように本発明においては、半導体ウェハ4を収納する半導体ウェハ容器1において、容器本体1と蓋体2が互いに擦れ合うことがなく、容器本体1と蓋体2から粉塵が発生せず、収納している半導体ウェハ4に粉塵が付着して半導体ウェハ4が汚れることを防ぐという優れた効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の半導体ウェハ容器の第1の実施の形態を示す断面図である。
【図2】図1に示した蓋体2を密閉した断面図である。
【図3】(a)は図1、(b)は図2の嵌合部を拡大した断面図である。
【図4】第2の実施の形態を示す断面図である。
【図5】図4に示した蓋体2を密閉した断面図である。
【図6】第3の実施の形態を示す断面図である。
【図7】図6に示した蓋体2を密閉した断面図である。
【図8】第3の実施の形態の密閉作用を段階的に示した図である。
【符号の説明】
【0039】
1 容器本体
2 蓋体
3 逆止弁機構
4 半導体ウェハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に半導体ウェハを水平に保持して収納すべく開口部を有する容器本体と、該容器本体の開口部に着脱自在に取り付けられると共に開口部を密閉すべく覆うと共に容器内方向に押圧することにより撓むように可とう性部材で成形された蓋体と、該蓋体に設けられ、上記蓋体が容器本体内方向に押圧されて撓むことにより容器本体内の雰囲気を外部に排気して負圧状態に維持するための逆止弁とを備えた半導体ウェハ容器。
【請求項2】
内部に半導体ウェハを水平に保持して収納すべく開口部を有する容器本体と、該容器本体の開口部に着脱自在に取り付けられると共に開口部を密閉すべく覆うと共に容器内方向に押圧することにより撓むように可とう性部材で成形された蓋体と、該容器本体に設けられ、上記蓋体が容器本体内方向に押圧されて撓むことにより容器本体内の雰囲気を外部に排気して負圧状態に維持するための逆止弁とを備えた半導体ウェハ容器。
【請求項3】
内部に半導体ウェハを水平に保持して収納すべく開口部を有する容器本体と、該容器本体の開口部に連続して起立して設けられた筒状体と、該筒状体の径方向外方に拡張されて容器本体に一体的に形成された水平台部と、該容器本体の開口部を密閉して覆うべく着脱自在に設けられ、上記筒状体との間に所定の間隙を形成し嵌合して上記水平台部に着座する筒状体脚部を有すると共に容器本体内方向に押圧されて撓むことにより容器本体内の雰囲気を上記間隙より容器外部に排気させるための可とう性部材から成形された蓋体と、該筒状体脚部の下端部に径方向外方に延出されて上記容器本体の水平台部に着座し、排気される雰囲気の逆流を防止する吸盤状の逆止弁とを備えた半導体ウェハ容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−4617(P2008−4617A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−170133(P2006−170133)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】