説明

半導体ウェーハの酸化膜除去方法

【課題】ウェーハ端面に形成された余分な酸化膜を気相エッチングにより除去する際に、エッチングガスの使用量を最小限に抑え、かつ均一な除去を行うことができる半導体ウェーハの酸化膜除去方法を提供する。
【解決手段】気相エッチング装置10のステージ13上に、酸化膜32が形成された半導体ウェーハ31の裏面を下にして水平に載置した後、半導体ウェーハ31にエッチングガス14を供給することにより、半導体ウェーハ31の端面に形成された余分な酸化膜32を気相エッチングにより除去する半導体ウェーハの酸化膜除去方法であって、ステージ13上に載置された半導体ウェーハ31の表面からチャンバ11の天井までの高さをhとするとき、半導体ウェーハ31の端面における、ウェーハ表面からh/2高さまでの間のエッチングガス14の平均流速を制御して気相エッチングすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハの裏面に、例えばエピタキシャル層成長時のオートドープ防止のための保護膜として酸化膜を形成する際、ウェーハ端面に形成された余分な酸化膜を気相エッチングにより除去する半導体ウェーハの酸化膜除去方法に関する。更に詳しくは、エッチングガスの使用量を最小限に抑え、かつウェーハ端面における酸化膜の均一な除去を行う酸化膜除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
先端のLSI(Large Scale Integration)には、ボロン等のドーパントを添加して所定の抵抗率に調整されたp、p+、p++型シリコンウェーハ等の低抵抗の半導体ウェーハを基板とし、このウェーハ基板の表面に、ウェーハ基板の抵抗率よりも高抵抗のエピタキシャル層が形成されたエピタキシャルウェーハ、例えばp/p+エピタキシャルウェーハ等が使用されている。
【0003】
エピタキシャル層の形成は、高温状態に設定された反応装置内で行われるが、エピタキシャルウェーハの製造における問題点の一つは、このウェーハ基板上にエピタキシャル層を形成する高温プロセス時に、ウェーハ基板に添加されたボロン等のドーパントがウェーハ基板から外部に拡散してデバイス形成領域となるエピタキシャル層を汚染する、いわゆるオートドープ現象である。
【0004】
こういったオートドープの問題を解消するため、従来から、エピタキシャル層形成前の半導体ウェーハ裏面に、ドーパントの外部拡散を防止するための保護膜として、酸化膜を形成しておくことが一般的に行われている。酸化膜は、通常、CVD(Chemical Vapor Deposition;化学蒸着)法等により形成されるが、このとき、図3に示すように酸化膜32が半導体ウェーハ31の裏面のみならず、ウェーハ端面、更にはエピタキシャル層の形成領域であるウェーハ表面の縁にも一部形成されてしまうことがある。ウェーハ端面に余分な酸化膜が形成された状態でエピタキシャル層を形成すると、ウェーハ端面(ウェーハ裏面の面取り面)においてエピタキシャル層と酸化膜が接触し、この部位にノジュールと呼ばれる粒状のSi粒子が発生するという問題が生じる。
【0005】
ノジュールはデバイス工程におけるパーティクル発生の要因になるため、ウェーハ端面におけるエピタキシャル層と酸化膜の接触を避ける必要がある。そのため、ウェーハ裏面に酸化膜を形成後、エピタキシャル層を形成する前に、図4に示すように所望のエッチング量(エッチング幅)wで半導体ウェーハ31の端面に形成された余分な酸化膜32を除去するエッジレリーフ等の対策がなされている。
【0006】
余分な酸化膜の除去は、機械的方法又は化学的方法により行われる。機械的方法を利用したウェーハ端面における酸化膜除去方法としては、半導体ウェーハとバフとを回転させつつ、半導体ウェーハの周縁部をバフに押し付け、研磨部分にコロイダルシリカを含む研磨液を供給しつつ面取り部を鏡面研磨する面取り部の研磨方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、化学的方法には、エッチング液を用いた湿式エッチング、エッチングガスを用いる気相エッチングがあり、湿式エッチングを利用したウェーハ端面における酸化膜除去方法としては、半導体ウェーハを支持しつつ回転させながら、この半導体ウェーハの酸化膜が形成されていない鏡面側よりエッチング液を吐出するとともに、ウェーハ裏面側からシールガスをエッジ部に向けて吐出することにより、半導体ウェーハのエッジ部の酸化膜を除去することを特徴とする酸化膜除去方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。この方法によれば、上記特許文献1に示された機械的方法を用いた場合に生じるオーバーポリッシュの問題や、湿式エッチングの際に酸化膜を残す部分に保護テープを貼着してエッチングするテープ保護方式を採用した場合の作業効率の問題等が解消するとされている。
【0007】
一方、気相エッチングによる酸化膜の除去は、例えば、後述する図1及び図2に示す気相エッチング装置10を用いて行うことができる。具体的には、先ず、上述のようにCVD法によってウェーハ裏面に酸化膜32を形成する処理を施した半導体ウェーハ31を、気相エッチング装置10のチャンバ11内に搬送し、チャンバ11内に水平に設けられたステージ13上に、酸化膜32が形成されたウェーハ裏面を下にして水平に載置する。そして、チャンバ11外部に設けられたガス供給源から供給されたエッチングガス14を、ガス供給管16を経てガス供給口16aからチャンバ11内へ導入することで、半導体ウェーハ31の端面にエッチングガス14が供給される。これにより、チャンバ11内においてエッチングガス14がウェーハ端面の酸化膜32と接触し除去される。半導体ウェーハ31を通過したエッチングガス14は、ガス排気管17からチャンバ11外へ排出される。気相エッチングによる酸化膜の除去では、チャンバ11内へ導入するエッチングガス14流量の調整等によって、酸化膜32のエッチング量の調整を行っている。即ち、エッチングガス14の流量を上げればエッチング量を大きくすることができ、逆にエッチングガス14の流量を下げればエッチング量を小さくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−85051号公報(請求項1、図1)
【特許文献2】特開2003−273063号公報(請求項5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、目標とするエッチング量で均一な酸化膜除去を行うのに最適なガス流量は、装置が備えるチャンバの高さや容積、ウェーハの径や厚み、或いはその他の条件によっても変動する。そのため、装置やウェーハごとに最適なガス流量を設定するのは困難であり、必要以上の過剰なエッチングガスを無駄に流してしまうことで生産コストが上がったり、或いはエッチングガスの流量が十分でなく、目標とするエッチング量で均一な除去が行われないといった不具合が生じる。特に、過剰なガス供給の問題については、必要最低限以上にエッチングガスを流した場合であっても酸化膜の除去は均一に行われるため、処理後のウェーハからはその事実が認識できず、解消するのが非常に困難であった。
【0010】
本発明の目的は、ウェーハ端面に形成された余分な酸化膜を気相エッチングにより除去する際に、エッチングガスの使用量を最小限に抑え、かつ均一な酸化膜の除去を行うことができる半導体ウェーハの酸化膜除去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の観点は、半導体ウェーハの裏面に酸化膜を形成した後、天井が水平に形成されたチャンバを備える気相エッチング装置の上記チャンバ内へ半導体ウェーハを搬送し、チャンバ内に水平に設けられたステージ上に、酸化膜が形成されたウェーハ裏面を下にして水平に載置して半導体ウェーハにエッチングガスを供給し、半導体ウェーハの端面に形成された余分な酸化膜を気相エッチングにより除去する酸化膜の除去方法であって、ステージ上に載置されたウェーハ表面からチャンバの天井までの高さをhとするとき、半導体ウェーハ端面における、ウェーハ表面からh/2高さの間のエッチングガスの平均流速を制御して気相エッチングすることを特徴とする。
【0012】
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に上記エッチングガスの平均流速の制御を、半導体ウェーハの全端面のうち、平均流速が最も遅い箇所において少なくとも0.04m/sを満たすように行うことを特徴とする。
【0013】
本発明の第3の観点は、第1又は第2の観点に基づく発明であって、更にエッチングガスがチャンバの天井に向けて供給され、エッチングガスがチャンバの底部から排出されることを特徴とする。
【0014】
本発明の第4の観点は、第1ないし第3の観点に基づく発明であって、更に半導体ウェーハがシリコンウェーハであって、エッチングガスがHF含有ガスであり、エッチングガスのHF濃度が0.05〜0.5質量%であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の観点の酸化膜除去方法は、半導体ウェーハの裏面に酸化膜を形成した後、天井が水平に形成されたチャンバを備える気相エッチング装置の上記チャンバ内へ半導体ウェーハを搬送し、チャンバ内に水平に設けられたステージ上に、酸化膜が形成されたウェーハ裏面を下にして水平に載置して半導体ウェーハにエッチングガスを供給し、半導体ウェーハの端面に形成された余分な酸化膜を気相エッチングにより除去する酸化膜の除去方法であって、ステージ上に載置されたウェーハ表面からチャンバの天井までの高さをhとするとき、半導体ウェーハ端面における、ウェーハ表面からh/2高さまでの間のエッチングガスの平均流速を制御して気相エッチングする。これにより、装置、その他の条件に依存することなく、ガス流量を必要最低限の流量に設定でき、エッチングガスの使用量を最小限に抑え、かつ均一な酸化膜の除去を行うことができる。
【0016】
本発明の第2の観点の酸化膜除去方法は、上記エッチングガスの平均流速の制御を、半導体ウェーハの全端面のうち、上記平均流速が最も遅い箇所において少なくとも0.04m/sを満たすように行うものである。このように、ウェーハ端面において、平均流速が最も遅い箇所で0.04m/sになるように制御して酸化膜の除去を行えば、確実にウェーハ端面の全箇所において所望のエッチング量とすることができ、しかもエッチングガスの使用量を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明実施形態の酸化膜除去方法で使用する気相エッチング装置の概略断面模式図である。
【図2】図1の上蓋を外した状態の気相エッチング装置を示す平面図である。
【図3】ウェーハ端面における酸化膜除去前の半導体ウェーハを示す拡大断面模式図である。
【図4】ウェーハ端面における酸化膜除去後の半導体ウェーハを示す拡大断面模式図である。
【図5】ウェーハ表面から天井までの高さhが50mmの気相エッチング装置を用いて所定のガス流量でエッチングを行ったときのh/2高さにおけるガス流速とエッチング量の関係を示すグラフである。
【図6】ウェーハ表面から天井までの高さhが70mmの気相エッチング装置を用いてエッチングを行ったときのh/2高さにおけるガス流速とエッチング量の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
本発明の酸化膜除去方法に使用される気相エッチング装置の一例を、図1及び図2を用いて説明する。この気相エッチング装置10は、図1に示すように、その内部に半導体ウェーハ31を収容してエッチングガス14が供給されるチャンバ11を備える。チャンバ11は、上蓋12によって密閉され、内部の温度及び圧力を一定に保ち、供給されたエッチングガス14を内部に滞留させることができるようになっている。また、チャンバ11内には、気相エッチング中、チャンバ11内において半導体ウェーハ31を水平に保持するための2つのステージ13が設けられている。また、エッチングガス14をチャンバ11内に供給するガス供給管16が設けられ、チャンバ11外に設けられたガス供給源によって発生させたエッチングガス14は、ガス供給管16を経て、ガス供給口16aからチャンバ11内へ供給される。更に、図2に示すように、チャンバ11内には、エッチングガス14をチャンバ11内の底部から排気するガス排気管17が、上面から見て2つのステージ13の間に対向して設けられる。ガス供給管16は、図1に示すようにガス供給口16aを天井に向けて設置されており、ガス供給口16aから導入されたエッチングガス14が、一旦天井に衝突してチャンバ11全体に広がるようになっている。また、チャンバ11の外部には、フッ化水素酸水溶液等の水溶液18を貯留する容器19がガス供給源として設けられており、容器19内の水溶液18中にN2等のキャリアガス20吹き込み、バブリングすることでエッチングガス14を発生させる。発生したエッチングガス14は、容器19とチャンバ11に連通するガス供給管16を経て、ガス供給口16aからチャンバ11内に導入される。また、ガス供給管16には、チャンバ11内へ導入されるエッチングガス14の流量を計測するマスフローメータ21が設けられる。
【0020】
続いて、上述した図1及び図2に示す気相エッチング装置10を用いて半導体ウェーハ31の端面における酸化膜32を除去する方法について説明する。なお、本発明の酸化膜除去方法は、この装置を用いた方法に限定されるものではない。また、ウェーハ端面とは、ウェーハ表裏面の面取り面の傾斜部及び端部を指す。先ず、CVD法によってウェーハ裏面に酸化膜32を形成する処理を施した半導体ウェーハ31を用意する。半導体ウェーハ31としては、チョクラルスキー法(以下、CZ法という。)等によって育成されたシリコン単結晶インゴットから切出し、スライスして得られたウェーハに、面取り、機械研磨(ラッピング)、エッチング、鏡面研磨(ポリッシング)等の一般的な加工処理を施し、洗浄工程を経て得られたシリコンウェーハ等が挙げられる。ここで、例えば、抵抗率が0.01Ω・cm〜0.1Ω・cm程度のp型シリコンウェーハを得るには、CZ法によってシリコン単結晶を引上げる際に、引上げ装置内においてシリコン原料として高純度シリコン多結晶が充填されたルツボ内に、抵抗率が上記範囲になる量のボロン等をドーパントとして添加しておく。p+型シリコンウェーハでは、抵抗率が10mΩ・cm〜20mΩ・cm程度、p++型シリコンウェーハでは、抵抗率が1mΩ・cm〜10mΩ・cm程度となる量のボロンが添加される。
【0021】
CVD法による酸化膜の形成は、気相エッチング装置を用いて成膜することにより行われ、ウェーハの直径が300mmであれば、2000〜9000オングストローム程度の膜厚に形成される。
【0022】
そして、図4に示すように、上記CVD法によってウェーハ裏面に酸化膜32が形成された後の半導体ウェーハ31について、その端面に形成された余分な酸化膜32を所定のエッチング量wで気相エッチングにより除去する。このとき、所望のエッチング量wは、ウェーハの抵抗率に応じて設定される。p++型シリコンウェーハのような抵抗率が非常に低いシリコンウェーハでは、ボロン等のドーパントが多量に添加されていることから、エピタキシャル成長等の高温プロセスにおいてドーパントの外部拡散量が多くなるため、エッチング量wは比較的少なめに設定される。
【0023】
気相エッチングによる酸化膜の除去は、先ず、図1に示すように、上述した気相エッチング装置10のチャンバ11内に、上記CVD法等によって酸化膜32が形成された半導体ウェーハ31を搬送する。チャンバ11内に搬送された半導体ウェーハ31は、チャンバ11内に水平に設けられたステージ13上に、酸化膜32が形成されたウェーハ裏面を下に、即ちステージ13表面と酸化膜32が接するように水平に載置する。半導体ウェーハ31を搬送したチャンバ11内は上蓋12で封止することにより密閉し、好ましくは温度を25°C、気圧を1atmの状態に設定する。
【0024】
そして、チャンバ11外部に設けられたガス供給源にてエッチングガス14を生成させる。半導体ウェーハ31がシリコンウェーハの場合、酸化膜32はSiO2膜であり、エッチングガス14としては、好ましくはHF含有ガスが用いられる。このHF含有ガスは、例えばフッ化水素酸水溶液等の水溶液18を容器19に貯留し、容器19内の水溶液18中にN2等のキャリアガス20を吹き込んで、飽和状態になるまで十分にバブリングすることで発生させることができる。エッチングガス14中のHF濃度は0.05質量%以上が好ましく、0.05〜0.5質量%の範囲が特に好ましい。下限値未満では、エッチングが十分に行われにくくなるため好ましくない。また、HF濃度が高すぎるとエッチングむらが生じる場合があるため好ましくない。発生させたエッチングガス14は、容器19とチャンバ11を連通するガス供給管16を経て、ガス供給口16aからチャンバ11内に導入される。ウェーハ端面の酸化膜32は、チャンバ11内に導入されたエッチングガス14と接触することにより除去される。
【0025】
そして、本発明の酸化膜除去方法では、上記気相エッチングの際に、チャンバ11内における所定箇所のエッチングガス14の流速を制御して行うことを特徴とする。本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、半導体ウェーハ31の端面における表面近傍のエッチングガス14の流速が、特にウェーハ端面における均一な酸化膜除去を行う重要な因子の一つであることが確認されている。本発明の酸化膜除去方法は、この研究結果に基づいて成されたものであり、具体的には、ステージ13上に載置された半導体ウェーハ31の表面からチャンバ11の天井、即ち上蓋12の内壁までの高さをhとするとき、半導体ウェーハ31の端面における、ウェーハ表面からh/2高さまでの間のエッチングガス14の平均流速を制御して気相エッチングを行う。エッチングガスの平均流速の制御を、ウェーハ端面における、ウェーハ表面からh/2高さまでの間としたのは、ウェーハ端面近傍でのエッチングガスのガス流れがエッチング速度に影響を与えるものと推察されるからである。エッチングガスの流量等も均一な酸化膜の除去を行うための条件の一つとなり得るが、ガス流量は、使用する気相エッチング装置によってチャンバの容積やガス供給口の径等が変動した場合には、最適なガス流量も変動する。例えば、ガス供給口の径等が変動した場合、同じガス流量であっても、チャンバ内のエッチングガスの流速が変動する。このように、最適なガス流量は装置の違い等の他の条件に依存しやすいパラメータであることから、所望なエッチング条件として画一的に設定しておくのは困難である。そこで、本発明は、半導体ウェーハの端面における、ウェーハ表面からh/2高さまでの間のエッチングガスの平均流速を制御することによって、装置の違い等の他の条件に依存することなく、均一な酸化膜の除去を行うのに必要最低限のガス流量に設定できるようにしたものである。
【0026】
半導体ウェーハの端面における、ウェーハ表面からh/2高さまでの間のエッチングガスの平均流速は、少なくとも0.04m/sに制御するのが好ましい。即ち、半導体ウェーハの全端面のうち、上記平均流速が最も遅い箇所における当該平均流速の値を0.04m/s以上に制御して行うのが好ましい。下限値未満では、他の条件によっては、ウェーハ端面において所望のエッチング量でエッチングされない箇所が一部に生じる場合がある。半導体ウェーハの全端面のうち、上記平均流速が最も遅い箇所において少なくとも0.04m/sを満たすように制御すれば、確実にウェーハ端面の全箇所において所望のエッチング量とすることができ、しかもエッチングガスの使用量を最小限に抑えることができる。このうち、上記エッチングガスの平均流速は、少なくとも0.05m/sに制御するのが特に好ましい。また、hは10〜100mmの範囲であることが好ましい。
【0027】
本発明において、上記平均流速の制御はどのような手段であっても良く、ガス流量の調整のみであっても良いし、その他、ガス供給口やガス排気管の排気口の径を調整する手段によっても平均流速の制御を行うことができる。これらを併用すれば、所望の平均流速に制御するために必要なガス流量を更に低減させることができ、コストの低減が更に図れる。
【0028】
以上、本発明の酸化膜の除去方法により、ガス流量を必要最低限の流量に設定でき、エッチングガスの使用量を最小限に抑え、かつ均一な酸化膜の除去を行うことができる。
【実施例】
【0029】
次に本発明の実施例について詳しく説明する。
【0030】
<実施例1>
先ず、直径300mm、厚さ0.775mm、抵抗率15Ω・cmのp+型シリコンウェーハを用意し、このシリコンウェーハの裏面に膜厚5000オングストロームの酸化膜をCVD法により成膜した。次に、シリコンウェーハ裏面に酸化膜を成膜する際に形成されたウェーハ端面の余分な酸化膜を気相エッチングにより除去するため、気相エッチング装置を用いて気相エッチングを行った。
【0031】
具体的には、先ず、図1に示すように、上記酸化膜32が形成されたシリコンウェーハを気相エッチング装置10のチャンバ11内に搬送し、チャンバ11内に水平に設けられたステージ13上に、酸化膜32が形成されたウェーハ裏面を下にして水平に載置した。このとき、ステージ13上に載置したウェーハ表面から天井(上蓋12の内壁)までの高さhは50mmであった。次いで、チャンバ11内を上蓋12で密閉して、温度25°C、気圧を1atmに設定した。次いで、フッ化水素酸水溶液を貯留する容器19にキャリアガスとしてN2を吹き込み、フッ化水素酸水溶液をバブリングすることでHFガスを発生させた。このHF含有のエッチングガス14を、ガス供給管16のガス供給口16aからチャンバ11内へ導入し、チャンバ11内でエッチングガス14とシリコンウェーハを接触させ、ウェーハ端面の余分な酸化膜32を気相エッチングにより除去した。
【0032】
上記気相エッチングの際のエッチングガス14のHF濃度は0.14質量%とし、処理時間は60秒とした。また、マスフローメータ21により計測されるエッチングガス14の流量を0°C、1atmの状態で45L/分に相当する流量に調整することにより、ウェーハ端面における、ウェーハ表面からh/2高さまでの間の平均流速を少なくとも0.07m/sとした。具体的には、図2に示すシリコンウェーハのa点〜h点の8箇所について、ウェーハ端面(図3に示す、面取り面の傾斜開始点)における、ウェーハ表面からh/2高さまでの間の平均流速をシミュレーションモデルによる数値解析にて計測し、a点〜h点のうち、平均流速が最も遅い箇所で0.07m/sとした。
【0033】
<実施例2>
実施例1で用意したものと同じ寸法と品質のシリコンウェーハを用意し、このシリコンウェーハの裏面に同じ膜厚の酸化膜をCVD法により形成した。この酸化膜形成後のシリコンウェーハについて、エッチングガスの流量を28L/分に調整することにより、ウェーハ端面における、ウェーハ表面からh/2高さまでの間の平均流速を少なくとも0.04m/sとしたこと以外は、実施例1と同様に気相エッチングを行い、ウェーハ端面の余分な酸化膜の除去を行った。
【0034】
<実施例3>
実施例1で用意したものと同じ寸法と品質のシリコンウェーハを用意し、このシリコンウェーハの裏面に同じ膜厚の酸化膜をCVD法により形成した。この酸化膜形成後のシリコンウェーハについて、エッチングガスの流量を21L/分に調整することにより、ウェーハ端面における、ウェーハ表面からh/2高さまでの間の平均流速を少なくとも0.02m/sとしたこと以外は、実施例1と同様に気相エッチングを行い、ウェーハ端面の余分な酸化膜の除去を行った。
【0035】
<実施例4>
実施例1で用意したものと同じ寸法と品質のシリコンウェーハを用意し、このシリコンウェーハの裏面に同じ膜厚の酸化膜をCVD法により形成した。この酸化膜形成後のシリコンウェーハについて、エッチングガスの流量を17L/分に調整することにより、ウェーハ端面における、ウェーハ表面からh/2高さまでの間の平均流速を少なくとも0.01m/sとしたこと以外は、実施例1と同様に気相エッチングを行い、ウェーハ端面の余分な酸化膜の除去を行った。
【0036】
<実施例5>
実施例1で用意したものと同じ寸法と品質のシリコンウェーハを用意し、このシリコンウェーハの裏面に同じ膜厚の酸化膜をCVD法により形成した。この酸化膜形成後のシリコンウェーハについて、ステージ上に載置したウェーハ表面から天井までの高さhが70mmの装置を用いたこと、及びエッチングガスの流量を45L/分に調整することにより、ウェーハ端面における、ウェーハ表面からh/2高さまでの間の平均流速を少なくとも0.09m/sとしたこと以外は、実施例1と同様に気相エッチングを行い、ウェーハ端面の余分な酸化膜の除去を行った。
【0037】
<実施例6>
実施例1で用意したものと同じ寸法と品質のシリコンウェーハを用意し、このシリコンウェーハの裏面に同じ膜厚の酸化膜をCVD法により形成した。この酸化膜形成後のシリコンウェーハについて、ステージ上に載置したウェーハ表面から天井までの高さhが70mmの装置を用いたこと、及びエッチングガスの流量を28L/分に調整することにより、ウェーハ端面における、ウェーハ表面からh/2高さまでの間の平均流速を少なくとも0.05m/sとしたこと以外は、実施例1と同様に気相エッチングを行い、ウェーハ端面の余分な酸化膜の除去を行った。
【0038】
<実施例7>
実施例1で用意したものと同じ寸法と品質のシリコンウェーハを用意し、このシリコンウェーハの裏面に同じ膜厚の酸化膜をCVD法により形成した。この酸化膜形成後のシリコンウェーハについて、ステージ上に載置したウェーハ表面から天井までの高さhが70mmの装置を用いたこと、及びエッチングガスの流量を21L/分に調整することにより、ウェーハ端面における、ウェーハ表面からh/2高さまでの間の平均流速を少なくとも0.03m/sとしたこと以外は、実施例1と同様に気相エッチングを行い、ウェーハ端面の余分な酸化膜の除去を行った。
【0039】
<実施例8>
実施例1で用意したものと同じ寸法と品質のシリコンウェーハを用意し、このシリコンウェーハの裏面に同じ膜厚の酸化膜をCVD法により形成した。この酸化膜形成後のシリコンウェーハについて、ステージ上に載置したウェーハ表面から天井までの高さhが70mmの装置を用いたこと、及びエッチングガスの流量を45L/分に調整することにより、ウェーハ端面における、ウェーハ表面からh/2高さまでの間の平均流速を少なくとも0.02m/sとしたこと以外は、実施例1と同様に気相エッチングを行い、ウェーハ端面の余分な酸化膜の除去を行った。
【0040】
<評価>
図5及び図6から明らかなように、実施例1〜8を比較すると、ウェーハ端面に形成された酸化膜のエッチング量は、ウェーハ端面における、ウェーハ表面からh/2高さまでの間のエッチングガスの平均流速に影響して変動することが確認された。このことから、ウェーハ端面における、ウェーハ表面からh/2高さまでの間のエッチングガスの平均流速を制御することによって、酸化膜のエッチング量を調整できることが判る。
【0041】
特に、ウェーハ端面a点〜h点の8箇所のうち、上記平均流速が最も遅い箇所の当該平均流速を0.04m/s未満に制御した実施例3,4,7,8では、所望のエッチング量で酸化膜が除去されていない箇所が数カ所確認された。これに対し、ウェーハ端面におけるa点〜h点の8箇所のうち、上記平均流速が最も遅い箇所において少なくとも0.04m/sとし、8箇所すべてにおける上記平均流速を0.04m/s以上に制御した実施例1,2,5,6では、a点〜h点の8箇所すべてにおいてエッチング量が所望の範囲となり、均一なエッチング量にて酸化膜を除去することができた。
【符号の説明】
【0042】
10 気相エッチング装置
11 チャンバ
12 上蓋
13 ステージ
14 エッチングガス
16 ガス供給管
17 ガス排気管
31 半導体ウェーハ
32 酸化膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェーハの裏面に酸化膜を形成した後、天井が水平なチャンバを備えた気相エッチング装置の前記チャンバ内へ前記半導体ウェーハを搬送し、前記チャンバ内に水平に設けられたステージ上に、前記酸化膜が形成されたウェーハ裏面を下にして水平に載置した後、前記半導体ウェーハにエッチングガスを供給し、前記半導体ウェーハの端面に形成された余分な酸化膜を気相エッチングにより除去する酸化膜の除去方法であって、
前記ステージ上に載置されたウェーハ表面から前記チャンバの天井までの高さをhとするとき、前記半導体ウェーハの端面における、ウェーハ表面からh/2高さまでの間のエッチングガスの平均流速を制御して気相エッチングすること
を特徴とする半導体ウェーハの酸化膜除去方法。
【請求項2】
前記エッチングガスの平均流速の制御を、前記半導体ウェーハの全端面のうち、前記平均流速が最も遅い箇所において少なくとも0.04m/sを満たすように行う請求項1記載の酸化膜の除去方法。
【請求項3】
前記エッチングガスが前記チャンバの天井に向けて供給され、前記エッチングガスが前記チャンバの底部から排出される請求項1又は2記載の酸化膜の除去方法。
【請求項4】
前記半導体ウェーハがシリコンウェーハであって、前記エッチングガスがHF含有ガスであり、前記エッチングガスのHF濃度が0.05〜0.5質量%である請求項1又は2記載の酸化膜の除去方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−222014(P2012−222014A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83351(P2011−83351)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】