説明

半導体ウエハ急速加熱装置

【課題】この発明は、フラッシュランプを用いて急速加熱する半導体ウエハが割れることなく、且つ、該半導体ウエハが飛び跳ねることが無い半導体ウエハ急速加熱装置を提供することにある。
【解決手段】発明の半導体ウエハ急速加熱装置は、複数本配列されたフラッシュランプと、該フラッシュランプから放射される光を被加熱物側に反射する反射板と、からなる光源部、半導体ウエハを支持する支持用台を配置した加熱処理チャンバー、を具備し、該フラッシュランプの光によって半導体ウエハを急速加熱処理する半導体ウエハ急速加熱装置において、前記支持用台は、該支持用台上に凹部が設けられ、該凹部の形状が、該半導体ウエハの直径よりやや小さな略円形であって、該半導体ウエハの直径に対する該凹部の直径の比が、40%乃至90%で、且つ、その断面は略長方形であって該凹部を覆うように該半導体ウエハを配置した場合に、該支持用台と該半導体ウエハとの間に空間が形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハの急速加熱装置に関する。特に、フラッシュランプを用いた半導体ウエハ急速加熱装置であって、該ウエハの保持部の形状に特徴を持つ半導体ウエハ急速加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路の高集積化や微細化が進められており、該半導体ウエハの厚み方向にも複数層の回路を形成する等が成されている。このような半導体集積回路を形成する場合、該半導体ウエハの表層部分に、例えば薄い不純物拡散層を形成する等の方法が知られている。この方法は、該半導体ウエハの表層部分におけるSi結晶に、例えばイオン注入等により不純物を導入し、該半導体ウエハに熱処理を施すことにより、該表層部分に不純物拡散層を形成させるものである。該不純物拡散層を形成する場合、不純物が導入された該半導体ウエハをできるだけ短時間の間に加熱処理をすることが重要となる。不純物が導入された該半導体ウエハが長時間の間高温に曝されると、該不純物が熱拡散する距離が長くなり、不純物拡散層の厚みが大きくなってしまい、薄い不純物拡散層が形成できなくなってしまうためである。
【0003】
該不純物拡散層を形成するためには、該半導体ウエハを例えば1000℃以上に昇温することが必要であり、且つ、該不純物拡散層の厚みを薄くするためには、極力短い時間で1000℃以上の温度の昇降温処理が必要になる。このように、短時間で急速な昇降温を実現する装置として、RTP(Rapid Thermal Process)装置が知られている。該RTP装置の加熱源としては、ハロゲンランプが広く用いられており、該ハロゲンランプから放射される光を点灯点滅することにより、該半導体ウエハの急速な昇降温を実現している。
【0004】
しかし、近年の半導体集積回路の更なる高集積化や微細化、また回路駆動時の消費電力の低減や回路自身の高速化に伴って、該不純物拡散層の厚みを極めて薄く形成することが必要になってきた。例えば、20nm以下の不純物拡散層を形成する場合に、ハロゲンランプによる急速加熱では、熱的な拡散距離が長くなり、薄い層が形成できないといった問題が出てきた。そこで、RTP装置の加熱源として、フラッシュランプを用い、フラッシュ点灯することにより、非常に高いエネルギーを短時間で該半導体ウエハに投入し、瞬時に昇降温する装置が提案されている。このような技術としては、例えば特開平2004−31557号公報がある。
【0005】
図5に、従来のフラッシュランプを用いた光加熱装置の概要を示す。光加熱装置41は、シリコン等からなる半導体ウエハWを被処理物とするものであって、雰囲気ガス導入口42Aと、排出口42Bとを有する石英ガラス製のチャンバー44と、このチャンバー44内に配置された半導体ウエハを支持するための支持用台45とを備えている。チャンバー44の天井面(図5において上面)には、石英の平板46が気密な透光部材として設けられる。
【0006】
該平板46の上方には、フラッシュランプ48が加熱源として設けられ、チャンバー44の下方には予備加熱手段としてのハロゲンヒータランプ49が設けられている。このハロゲンヒータランプ49は、支持用台45に埋設されて、チャンバー制御回路50により温度制御される。このチャンバー制御回路50では、支持用台45の昇降機能や雰囲気ガス導入口42A、排出口42Bの開閉制御なども行なわれる。
【0007】
この光加熱装置41によれば、不純物が導入されたシリコンからなる半導体ウエハWがチャンバー44内に搬入されると、ハロゲンヒータランプ49により半導体ウエハWを不純物の熱拡散が問題にならない所定温度まで予備加熱した後、フラッシュランプ48を発光させることで半導体ウエハWへの閃光放射による熱処理が行なわれる。このような熱処理により、半導体ウエハWはその表層部分が急速に高温になるよう加熱され、その後、急速に冷却されてチャンバー44から搬出される。なお、予備加熱は、ウエハの厚み方向の温度勾配を小さくすることと照射面の温度を必要な程度まで上昇させるために必要なランプに注入するエネルギーを最小に留めるという理由で行なうことが好ましく、加熱温度は、300〜500℃の範囲から選択され、例えば、350℃である。また、ハロゲンヒータランプ49とフラッシュランプ48による熱処理中における半導体ウエハWの表面温度は1000℃以上になり、具体的には1000℃〜1300℃の範囲で熱処理される。このように、半導体ウエハWにおける最大温度を1000℃以上にまで加熱することにより、ウエハ表層部分に確実に不純物拡散層を形成することができる。
【0008】
フラッシュランプ48は、平板46に沿って等間隔で並行に配列されており、これらフラッシュランプ48に対して共通の反射鏡51が覆い被さり、この反射鏡51をケーシング52が収納する。また、各フラッシュランプ48の点灯動作は給電装置53により制御される。
【特許文献1】特開平2004−31557号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記のようなフラッシュランプを用いた光加熱装置で半導体ウエハを急速加熱する場合、該フラッシュランプを点灯させるパルス電流のピーク値に対する半値半幅の時間であるパルス幅を短くするにつれて、該半導体ウエハが光照射により飛び跳ねるといった問題が発生した。この飛び跳ねる理由は、次のように考えられる。該半導体ウエハの光照射される面が光照射に伴って急激な熱膨張を発生する。この時、該半導体ウエハの光照射された面と、支持用台側の面との間での温度差によって生じる熱膨張の差によって、該半導体ウエハが瞬時に該フラッシュランプ側(以下、上方と称する)に凸状に変形を起こす。この変形は、非常に短時間で発生するため、該半導体ウエハの端面で該支持用台を叩き付ける様な力が発生し、結果として該半導体ウエハ自身が飛び跳ねることになると考えられる。また、該フラッシュランプから放射される光のエネルギーが30J/cm2以上であって、パルス点灯される一回のパルス幅が0.8msで照射した場合、該半導体ウエハが光照射によって割れるといった新たな問題が生じた。
【0010】
この発明が解決しようとする課題は、半導体ウエハをフラッシュランプを用いて急速加熱する場合に、該半導体ウエハが割れることなく、且つ、該半導体ウエハが飛び跳ねたりすることが無い該半導体ウエハの保持構造を持つ半導体ウエハ急速加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の半導体ウエハ急速加熱装置は、複数本配列されたフラッシュランプと該フラッシュランプから放射される光を被加熱物側に反射する反射板と、からなる光源部、半導体ウエハを支持する支持用台を配置した加熱処理チャンバー、を具備し、該フラッシュランプの光によって半導体ウエハを急速加熱処理する半導体ウエハ急速加熱装置において、前記支持用台は、該支持用台上に凹部が設けられ、該凹部の形状が、該半導体ウエハの直径よりやや小さな略円形であって、該半導体ウエハの直径に対する該凹部の直径の比が、40%乃至90%で、且つ、その断面は略長方形であって該凹部を覆うように該半導体ウエハを配置した場合に、該支持用台と該半導体ウエハとの間に空間が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の半導体ウエハ加熱装置によれば、該半導体ウエハと該支持用台との間に、該支持用台に設けられた凹部と該半導体ウエハとで囲まれることで、密閉された空間が形成されており、該半導体ウエハを急速加熱しても、該空間によって該半導体ウエハが飛び跳ねたり割れるといったことがない、という効果が発生する。この効果は、以下の様な現象によるものと考えられる。該半導体ウエハにフラッシュランプからの光が照射されると、該半導体ウエハの光を照射した面が急激に昇温し、この昇温に伴う急速な熱膨張を起こす。これに対し、該半導体ウエハの支持用台側の面は光による加熱が無いので、急激な温度上昇をすることが無く、熱膨張も少ない。このような温度差にともない、該半導体ウエハの表裏面での熱膨張による伸びに差が生じる。この熱膨張による伸びの差によって、該半導体ウエハの光照射側の面には引っ張り方向の力が加わり、該支持用台側の面には圧縮方向の力が発生する。このため、該半導体ウエハは、該フラッシュランプ側(上方)に凸状に変形する。この変形は、非常に短時間で発生するため、該半導体ウエハの端面で該支持用台を叩き付ける様な力が発生し、該半導体ウエハ自身を飛び跳ねさせようとする。一方、該支持用台に設けられた凹部と該半導体ウエハとで覆われた密閉された該空間の体積は、該半導体ウエハの変形に伴って増加する。該空間には、該加熱処理チャンバー内と同じ圧力の気体が、該半導体ウエハを該支持用台に配置することで閉じ込められ気密に保たれており、該半導体ウエハの変形に伴う該空間の体積の増加により、該空間内の圧力は急激に低下する。この圧力低下によって、該半導体ウエハを下方に引っ張る力が発生する。これにより、該半導体ウエハが上方に飛び跳ねようとする力が抑制される、と考えられる。
【0013】
更には、該支持用台に直接形成された該凹部の形状は、該凹部内には隙間が無く、該半導体ウエハの直径よりやや小さな略円形であり、且つ断面は略長方形であるので、該凹部の周辺と該半導体ウエハの周縁とが精度良く密着することにより、隙間無く該凹部と該半導体ウエハで取り囲まれて形成される空間の体積の設定が容易であり、該半導体ウエハが飛び跳ねたり割れたりすることが無い、といった効果がある。
【0014】
また、該支持用台上に配置する該半導体ウエハの直径に対する該凹部の直径の比が、40%乃至90%であるので、該半導体ウエハの直径に係らず、該半導体ウエハに割れが生じることが無い。更には、該半導体ウエハを予備加熱する場合であっても、該半導体ウエハ全体に亘って均一な熱処理が可能となる、といった効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の半導体ウエハ加熱装置は、複数本のフラッシュランプを並列配置した光源部を持ち、半導体ウエハを予備加熱する予備加熱機構部とを備え、該半導体ウエハを加熱処理する際に保持する支持用台を具備した半導体ウエハ加熱装置であって、該支持用台と処理する半導体ウエハとの間に、薄いガス層を設けることで、該半導体ウエハの急速加熱時に発生する割れを抑制するものである。
【実施例1】
【0016】
本発明の第1の実施例として半導体ウエハ急速加熱装置1の概略断面図を図1に示す。該半導体ウエハ急速加熱装置1は、光源部2と、加熱処理チャンバー部3と、予備加熱機構部4と、から構成されている。該光源部2には、管状のフラッシュランプ5と反射ミラー6が配置され、例えば石英ガラスから成る光透過性窓部7が設けられている。該加熱チャンバー部3には、半導体ウエハ出入口8、雰囲気ガス導入口9、支持用台10が具備され、該支持用台10の上に加熱処理される半導体ウエハWが搬送される。該支持用台10には、凹部20が形成されており、該支持用台10に該半導体ウエハWを置いた場合に、該半導体ウエハWの該支持用台側に一定の体積分の空間を設けている。また、該加熱チャンバー部3には、該光源部2から放射される光を取り込む窓部11が設けられ、該光透過性窓部7と接続されている。本実施例では該光透過性窓部7に用いられる石英ガラスから成る板材等によって該光源部2と該加熱チャンバー部3の各々が仕切られているが、該加熱チャンバー部3の窓部11にも、例えば石英ガラスから成る光透過性部材を配置しても良い。また、該支持用台10と該予備加熱機構部4とは、伝熱部12によって仕切られ、該加熱チャンバー部3と該予備加熱機構部4とを分けている。本実施例においては、該伝熱部12は、例えば石英ガラス等からなる光透過性の板状部材を用いている。該予備加熱機構部4は、棒状のハロゲンランプ13が複数本設けられ、該伝熱部12側に光を反射する反射板14が設けられている。本実施例では、該予備加熱機構部4が、該ハロゲンランプ13を配置した光加熱タイプを示したが、シーズヒータ等の伝熱タイプのヒータであっても良い。該伝熱タイプの場合、該伝熱部12は、金属等の伝熱部材であれば良く、光透過性部材を用いなくても良い。
【0017】
該半導体ウエハ急速加熱装置の該加熱処理チャンバー部3には、該半導体ウエハWが搬送用ロボットアーム等によって、該半導体ウエハ出入口8から搬送され、支持用台10上に配置される。その後、該加熱処理チャンバー部3内は、内部のガスを排気し、処理に必要なガス、例えばアルゴン等の不活性ガスで希釈されたシランガス等、が該雰囲気ガス導入口9より規定量だけ導入される。一方、該半導体ウエハWは、予備加熱機構部4に具備されたハロゲンランプ14によって150℃から600℃程度に予備加熱される。次に、該フラッシュランプ5を、例えば、投入電力28J/cm、点灯時間であるパルス幅は0.8ms、でパルス点灯させる。この時、該半導体ウエハWの表面温度の最高値(以下、ピーク温度と記す)は、1000℃以上、好ましくは1000℃から1300℃と成るよう熱処理される。
【0018】
次に、図2として、該支持用台10に設けられた凹部20の形状について示す。図2−a)は、該支持用台10に該半導体ウエハWを置く面側から見た正面図である。該凹部20の形状が、該半導体ウエハWの直径より、やや小さい円形となっている。図2−b)は、図2−a)における該支持用台10の中心を通る一点鎖線で切断したA−A断面を示したのもである。該A−A断面における該凹部20の形状は略長方形となっている。該凹部20には、該半導体ウエハWを加熱処理する時に、周辺雰囲気と同程度の圧力のガスが該半導体ウエハWを設置することにより閉じ込められる。該半導体ウエハWは、急速加熱処理に伴って表面が裏面より高温になり表裏の熱膨張差が生じるため、瞬時に上方へ凸状に変形する。該半導体ウエハの凸状の変形に伴い、該凹部20と該半導体ウエハWによって形成された空間の体積は実質的に増加する。この時、該凹部20に閉じ込められたガスの圧力は、該半導体ウエハの凸状の変形量に伴って減少し、該凹部20のガス圧が低下することによって、該半導体ウエハWを下方に引き下げる力が働く。該凹部20の体積を適宜設計しておくことにより、瞬時に該半導体ウエハが凸状に変形することに伴うガス圧の低下による下方へ引き下げる力が一定範囲に制御され、該半導体ウエハWが該支持用台20から飛び跳ねる事が無い。また、該凹部20内の体積を適宜設計することにより、瞬時に該半導体ウエハが凸状に変形することに伴うガス圧の低下による該半導体ウエハを下方へ引き下げる力を過度に強くすることがなく、該半導体ウエハW自身を破壊してしまう事が無い。尚、本実施例では該凹部20の形状を該半導体ウエハWの直径より、やや小さい円形であって、断面方向では長方形としたが、該断面方向の形状はこれに限定されるものではなく楕円やR形状等であっても良い。
【0019】
図3には、図1で示した本発明の第1の実施例を用いて、該支持用台10に設けられた該凹部20の深さを変えた場合に、各種条件で該半導体ウエハWが割れるか否かの比較実験の結果を示す。本比較実験は、サイズの異なる半導体ウエハWとして、3インチ、8インチ、12インチの3種類のウエハを用いた。また、フラッシュランプ5から放射する光としては、パルス幅5ms、0.8msの2種類について照射エネルギーを10〜65J/cm^2の間で照射エネルギーを変えた場合について検証した。ここで、パルス幅5msより長いパルス幅では、電流の振動が発生し、充電器を破壊してしまうため、実質的に5msが最長のパルス幅である。また、パルス幅0.8msよりも短いパルス幅で30J/cm^2以上のエネルギーを投入すると該フラッシュランプにかかる瞬間的な電流密度が高くなり、短時間でランプ管壁の白濁が発生する。このため、パルス幅0.8ms以下で該フラッシュランプを駆動することは実用的ではない。該半導体ウエハWと支持用台10との間に形成される空間の大きさを表す指標としては、該凹部20の深さ方向の距離を用い、0mm、0.05mm、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mmの各々の場合について比較した。尚、本比較実験において、予備加熱温度は400℃、該凹部20の直径は、該半導体ウエハWの直径に対して80%の大きさで行った。
【0020】
該凹部20の深さが、0mm、つまり平坦な面に該半導体ウエハWを配置する従来の構造においては、該半導体ウエハWの各サイズにおいて、パルス幅5msでは照射エネルギーが60J/cm^2で、パルス幅0.8msでは照射エネルギーが30J/cm^2で割れが発生した。一方、該半導体ウエハWのサイズやパルス幅や照射エネルギーといった光の照射条件に係らず、該凹部20の深さが、0.05mm〜0.3mmの間では割れは発生しなかった。しかし、該凹部20の深さが、0.4mmになると、該半導体ウエハWのサイズや、光の照射条件に係らず、光照射に伴い該半導体ウエハWが瞬時に上方へ凸状に変形し、該半導体ウエハW自身が飛び跳ねるといった現象が発生した。更に、照射エネルギーが60J/cm^2を越えると飛び跳ねる距離が増し、該加熱処理チャンバー部3内の壁等と衝突することによる割れが発生した。このように、本比較実験においては、該凹部20の深さが、0.05〜0.3であれば該半導体ウエハWの割れが発生しなかった。
【0021】
このように、前記支持用台に設けられた該凹部の深さは0.05mm乃至0.3mmの範囲であることが望ましく、該凹部の深さをこの範囲にすることで、光照射時に一定の範囲のパルス幅や照射エネルギーにおいては、該半導体ウエハが該支持用台から飛び跳ねたり、割れることが無いといった特別の効果を生じる。
【0022】
次に、図4として前記比較実験についての捕捉実験の結果を示す。図4−1は、予備加熱温度を変えた場合について行った捕捉実験結果である。従来の形状では、該半導体ウエハWの割れが発生し、本発明の形態では割れが発生しなかった条件を用いて、予備加熱温度を変え加熱処理を行った。具体的には、該半導体ウエハWとして、3インチのサイズを用い、光照射条件は、パルス幅5ms、照射エネルギー60J/cm^2、該凹部20の深さとして0mm、0.1mmとした。図4−1に示すように、予備加熱温度が150℃〜550℃において、該凹部20の深さが0mmの場合は予備加熱温度350℃で割れが発生している。一方、該凹部20の深さが0.1mmの場合は、各予備加熱温度で割れは発生しなかった。この結果より、割れの発生と予備加熱温度との間には関係が無いと考えられる。
【0023】
また、図4−2として、該半導体ウエハWの直径に対する該凹部20の直径の占める割合を変えた場合の実験結果を示す。該半導体ウエハWのサイズは3インチ、光の照射条件はパルス幅5ms、照射エネルギー60J/cm^2、予備加熱温度400℃とし、該凹部20の深さを0mm、0.05mm、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mmの各場合について、該半導体ウエハWの直径に対する該凹部20の直径の割合を変えて実験した。該凹部20の深さが0mmと0.4mmの場合、該凹部の直径に係らず該半導体ウエハWは割れが発生した。一方、該凹部20の深さが0.05mm〜0.3mmの間においては、該凹部20の直径が占める割合が30%以下ではいずれの場合も割れが発生したが、40%以上では割れは発生しなかった。つまり、該凹部20の直径は該半導体ウエハWの直径に対して40%以上あれば割れが発生しないことになる。尚、この割合が95%以上になると、該半導体ウエハWの加熱処理が均一にできなくなる場合が発生しており、実用的にはこの割合が90%以下が望ましい。また、該半導体ウエハWのサイズを12インチにした場合についても確認実験を行ったが、該半導体ウエハWの直径に対する該凹部20の直径の占める割合が40%以上は割れの発生は無かった。尚、12インチでの実験条件は、該凹部20の深さを0.2mmとし、予備加熱温度を400℃、光の照射条件をパルス幅5ms、照射エネルギー60J/cm^2で行った。尚、3インチの場合と同様に、該半導体ウエハWの直径に対する該凹部20の直径の占める割合が95%以上では該半導体ウエハWの加熱処理が均一にできなくなる場合が発生しており、12インチの場合でも実用的にはこの割合が90%以下が望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明における半導体ウエハ急速加熱装置の概略断面図。
【図2】この発明における半導体ウエハ急速加熱装置の支持用台形状を示す図。
【図3】この発明の構成における実験結果を示す図
【図4】この発明の構成における実験結果を示す図
【図5】従来の半導体ウエハ急速加熱装置の概略断面図。
【符号の説明】
【0025】
1 半導体ウエハ急速加熱装置
2 光源部
3 加熱処理チャンバー部
4 予備加熱機構部
5 フラッシュランプ
6 反射ミラー
7 光透過性窓部
8 半導体ウエハ出入口
9 雰囲気ガス導入口
10 支持用台
W 半導体ウエハ
11 窓部
12 伝熱部
13 ハロゲンランプ
14 反射板
20 凹部
41 光加熱装置
42A 雰囲気ガス導入口
42B 排出口
44 チャンバー
45 支持用台
46 平板
47 透光部材
48 フラッシュランプ
49 ハロゲンヒータランプ
50 チャンバー制御回路
51 反射鏡
52 ケーシング
53 給電装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本配列されたフラッシュランプと、該フラッシュランプから放射される光を
被加熱物側に反射する反射板と、からなる光源部、
半導体ウエハを支持する支持用台を配置した加熱処理チャンバー、
を具備し、
該フラッシュランプの光によって半導体ウエハを急速加熱処理する半導体ウエハ急速加熱装置において、
前記支持用台は、該支持用台上に凹部が設けられ、該凹部の形状が、該半導体ウエハの直径よりやや小さな略円形であって、該半導体ウエハの直径に対する該凹部の直径の比が、40%乃至90%で、且つ、その断面は略長方形であって該凹部を覆うように該半導体ウエハを配置した場合に、該支持用台と該半導体ウエハとの間に空間が形成されていることを特徴とする半導体ウエハ急速加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−199295(P2011−199295A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99040(P2011−99040)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【分割の表示】特願2005−145200(P2005−145200)の分割
【原出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】