説明

半導体パッケージのプリント配線板への接続方法

【課題】信頼性をもって容易に操作できる半導体パッケージと配線板の電気接続方法。
【解決手段】はんだバンプ2を有するバンプアレイパッケージ1の表面に熱流動性でかつ熱硬化性の接着フィルム3を配置し、前記はんだバンプと前記接着フィルムとからなる平坦な表面を有するバンプアレイパッケージを形成すること、前記はんだバンプと接着フィルムとからなる平坦な表面を配線板5上に配置し、前記接着フィルムの硬化を完了させるのに十分な温度であってかつ前記はんだの融解温度より高い温度に加熱することで、バンプアレイパッケージを配線板に接続するバンプアレイパッケージを配線板に電気接続するための方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体パッケージのプリント配線板への接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップの入出力端子をはんだバンプとして二次元状に配列したボールグリッドアレイ(BGA)やチップスケールパッケージ(CSP)などのエリアバンプアレイパッケージは半導体装置の小型化のために極めて有効な方法であり、今日の多くの半導体パッケージに採用されている。
【0003】
エリアバンプアレイパッケージをプリント配線板に接続した場合、プリント配線板の熱膨張率とパッケージの熱膨張率が異なるために、はんだ接合部に熱応力が作用する。この熱応力によって電気接続が解除されることがあり、接続信頼性が損なわれるという問題がある。この問題を回避するために、はんだ接合部に生じる半導体パッケージとプリント配線板との間の隙間にアンダーフィル材料が用いられる。通常、はんだバンプ(はんだボール)を配線板と接合した後に、半導体パッケージと基板との間に毛細管現象を利用して流し込む液状樹脂タイプのアンダーフィル材料が使用されてきた(この方法は「後入れ」と呼ばれる)。
【0004】
半導体パッケージは、電子機器の高密度化に対応して小型化するとともに、その機能の増大に伴って入出力端子の数が増大している。その結果、バンプ間の距離を狭くする必要があり、また、これに対応してはんだボールの直径は小さくなっている。したがって、半導体パッケージと配線板との間の隙間も狭くなり、液状タイプの樹脂を流し込む工程が難しくなっている。また、高密度化の要求から、プリント配線板上に搭載した半導体パッケージの近傍に別の部品を搭載する必要があり、液状樹脂の注入をさらに困難なものとしている。
【0005】
このような背景の中で、封止用樹脂をはんだボールの接続前にいれる、先入れアンダーフィル技術も考案されている。特許文献1(米国特許第6,624,216号明細書)及び特許文献2(米国特許第5,128,746号明細書)は、フラックス成分を含むアンダーフィル接着剤を提案している。しかし、フラックスとしての特性と封止材料としての特性を両立させることが難しく、液状樹脂の後入れに比べると特性が落ちると考えられている。先入れアンダーフィル接着剤は、通常、酸無水物などの強酸を含む。酸成分の残存は硬化した材料の絶縁性を悪化させる。例えば、酸の残存によりイオンマイグレーションが生じ、絶縁性を悪化させることがある。
【0006】
一方、特許文献3(米国特許第6,297,560号明細書)及び特許文献4(米国特許第6,228,678号明細書)は、はんだボールを形成する前に封止樹脂を塗布し、半導体チップの入出力端子部分をエッチングやレーザー加工などの方法によって除去して孔を開け、この孔のあいた部分にはんだペーストを入れ、リフロー工程で溶融してはんだボールとして配線板に接合する方法が提案されている。この方法はウエハレベルでのチップへの加工には向いているが、個片化されたチップを含むパッケージに適用するのは著しく困難である。
【0007】
特許文献5(米国特許第6,265,776号明細書)は、はんだボールにフラックスを塗布し、アンダーフィル接着剤をその上からコーティングし、それを配線板に接続する方法を開示している。はんだボールの先端部分には表面エネルギーの低いフラックスがあるので、アンダーフィル接着剤ははじかれ、ボール先端部分にはアンダーフィル接着剤が存在せず、その周囲のみが接着剤樹脂で封止された構造となる。この技術では、アンダーフィル接着剤がボール先端部に付着しないようにするためには、溶剤に溶解させた樹脂溶液としてアンダーフィル接着剤を塗布し、乾燥させる必要があり、そのため、プロセスが複雑化する。また、はんだボールの先端部分が隆起した状態となっており、接続加工時の配線板とパッケージ上のはんだボール先端との接触の際に、配線板とパッケージとの間に隙間を生じ、十分な充填が行なえなくなることも懸念される。
【0008】
一方、特許文献6(特開2003−243447号公報)は、半導体素子の配線板との電気接続方法であって、熱硬化性接着シートを介して、尖った形状の突起電極を配線板に加圧し、そして加熱硬化させることによる接続方法を開示している。この方法によると加圧の際に、半導体素子側の電極と配線板側のランドとの電気接触を確実にするために、電極は尖った形状の先端部を有する突起電極であることが要求されている。この場合にも、接続加工時の配線板と半導体素子上の突起電極との接触の際に、配線板と半導体素子との間に隙間を生じ、十分な充填が行なえなくなるという懸念がある。
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,624,216号明細書
【特許文献2】米国特許第5,128,746号明細書
【特許文献3】米国特許第6,297,560号明細書
【特許文献4】米国特許第6,228,678号明細書
【特許文献5】米国特許第6,265,776号明細書
【特許文献6】特開2003−243447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明の1つの目的は、接続信頼性を確保することができ、容易に操作することができる半導体パッケージの配線板への電気接続方法を提供することである。
本発明の別の目的は、上記の電気接続方法に用いることができる熱硬化性接着フィルム付き半導体パッケージを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、1つの態様によると、はんだバンプを有するバンプアレイパッケージの表面に熱流動性でかつ熱硬化性の接着フィルムを配置すること、
前記はんだバンプと前記接着フィルムとからなる平坦な表面を有するバンプアレイパッケージを形成すること、
前記はんだバンプと接着フィルムとからなる平坦な表面を配線板上に配置し、前記接着フィルムの硬化を完了させるのに十分な温度であってかつ前記はんだの融解温度より高い温度に加熱することで、バンプアレイパッケージを配線板に接続すること、
の工程を含む、
バンプアレイパッケージを配線板に電気接続するための方法が提供される。
このような方法のより具体的な態様によると、
半導体チップの入出力端子として複数のはんだバンプを平面状に有するバンプアレイパッケージを配線板に電気接続するための方法であって、
前記バンプアレイパッケージのはんだバンプを有する面に対して、熱流動性でかつ熱硬化性の接着フィルムを配置すること、
前記接着フィルムが流動するには十分な温度であるが、前記接着フィルムの硬化を完了させるには不十分な温度であって、かつ、前記はんだの融解温度よりも低い温度において、平坦な表面を有する板状体で前記接着フィルムを加圧することで、前記はんだバンプの各々の先端が部分的に平坦化して表面に露出した状態となった、各はんだバンプと接着フィルムとからなる平坦な表面を有するバンプアレイパッケージを形成すること、
前記はんだバンプと接着フィルムとからなる平坦な表面を配線板上に配置し、前記接着フィルムの硬化を完了させるのに十分な温度であってかつ前記はんだの融解温度より高い温度に加熱することで、バンプアレイパッケージを配線板に接続すること、
の工程を含む、
上記のバンプアレイパッケージを配線板に電気接続するための方法が提供される。
【0012】
本発明の別の態様によると、はんだバンプの各々の先端が部分的に平坦化して表面に露出した状態となっており、そのため、各はんだバンプと接着フィルムとからなる平坦な表面を有する、接着フィルム付きバンプアレイパッケージが提供される。
より具体的な態様によると、半導体チップの入出力端子として複数のはんだバンプを平面状に有するバンプアレイパッケージを用意し、前記バンプアレイパッケージのはんだバンプを有する面に対して、熱流動性でかつ熱硬化性の接着フィルムを配置すること、前記接着フィルムが流動するには十分な温度であるが、前記接着フィルムの硬化を完了させるには不十分な温度であって、かつ、前記はんだの融解温度よりも低い温度において、平坦な表面を有する板状体で前記接着フィルムを加圧することにより得られる、上記の接着フィルム付きバンプアレイパッケージが提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の方法では、毛細管現象を利用した液状樹脂を用いる方法と異なり、高密度化されたバンプアレイパッケージを配線板に電気接続する際に、有効にかつ効率よく実施することができる。
また、本発明の方法では、溶剤を用いないドライプロセスであるから、溶剤除去工程を必要とせず、また、溶剤によるパッケージの汚染の問題がない。
また、接着フィルムにフラックスを含有する必要がないので、従来のフラックスを配線板側に塗布した後に接続工程を行うことができる。
また、本発明の方法では、レーザー加工などの微細加工を伴わないので、個片化されたチップからなるパッケージにおいても簡単に適用できる。
また、本発明の方法では、接続工程の前に、バンプアレイパッケージのはんだバンプ面に対して、接着フィルムを配置し、それを加熱及び加圧することで、接着フィルムを流動化させ、はんだを露出した状態で平坦な表面を得ることができる。表面が平坦であるから、配線板と隙間なく接触することができる。このため、次の接続工程時に、接着フィルムの樹脂が十分に充填した状態で硬化及びはんだ溶融を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下において、本発明を好適な実施形態に基づいて説明する。本発明の実施形態は以下の具体的な態様に限定されるものではない。
最初に、図面にそって本発明を説明する。図1は、バンプアレイパッケージを配線板に電気接続するための方法の工程図を示している。「バンプアレイパッケージ」とは、半導体チップの入出力端子として複数のはんだバンプを平面状に有する半導体パッケージである。具体的には、ボールグリッドアレイ(BGA)、チップスケールパッケージ(CSP)、ウエハーレベルCSPなどのエリアバンプアレイパッケージが挙げられる。バンプアレイパッケージ1の上には、一般に球状曲面の表面を有するはんだバンプ2を有する。パッケージ1のはんだバンプ2の側に、熱流動性でかつ熱硬化性の接着フィルム3を配置し(図1(a))、その後、平坦な表面を有する加熱板4で加熱及び加圧することで、接着フィルム3を流動化させ、はんだバンプの周囲に流れ出させ、はんだバンプ2の先端部を部分的に平坦化させた状態で露出させる。これにより、接着フィルム3と、はんだパンプ2の露出面とからなる平坦な表面を有する、接着フィルム3付きパッケージ1を得る(図1(b))。通常、バンプアレイパッケージのはんだバンプの上に接着フィルムを配置し、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルムやシリコーン処理したポリエステルフィルムなどの剥離性フィルムによって覆い、該フィルム上に温度及び圧力をかけることで上記工程を行なうことができる。また、このような加熱及び加圧工程はパルスヒートボンダーなどのサーマルボンダーを用いて行なえる。ボンダーヘッドはチップサイズより大きいものを用いるべきであり、応力はチップに対して垂直方向に加えられるべきである。加熱板4での加熱温度は接着フィルム3が流動するには十分な温度であるが、接着フィルム3の硬化を完了させるには不十分な温度であって、かつ、前記はんだの融解温度よりも低い温度である。加圧の圧力は、はんだバンプ2の各々の先端が平坦化して表面に露出した状態となるの十分な圧力である。なお、上記の温度及び圧力は、選択される接着フィルムの樹脂組成及びはんだの融点などによって決まるものであり、限定されない。一般には、本発明の方法では、60〜170℃の流動化温度を有しかつ170〜260℃の硬化温度を有する樹脂成分を含む接着フィルム及び180〜300℃の融点のはんだを用いることが好ましい。この場合には、約100〜180℃程度の加熱温度及び1〜10秒の加熱時間、5〜100N/cmの加圧圧力が好適に用いられる。
【0015】
なお、「流動化温度」はポリマー樹脂の粘度が10,000Pa・s以下になる温度であり、平行板型粘度計(プラストメータ)又は粘弾性測定機により測定でき、「硬化温度」は熱硬化性ポリマーの硬化反応が60分で50%以上進行する温度であり、粘弾性測定機又は示差走査熱量計(DSC)により測定できる。なお、用語「硬化を完了させるには不十分な温度」とは硬化温度より低い温度を一般に意味するが、硬化温度よりも高い温度であっても、短時間の加熱であれば、部分的にしか硬化が起こらず、したがって、かかる短時間加熱の場合には硬化温度より高い温度も包含することが意図される。
【0016】
次に、得られた接着フィルム3付きパッケージ1の、はんだバンプ2と接着フィルム3とからなる平坦な表面を、配線板5上に配置し(図1(c))、前記接着フィルム3の硬化を完了させるのに十分な温度であってかつ前記はんだの融解温度より高い温度に加熱することで、バンプアレイパッケージを配線板に接続する(図1(d))。配線板は一般にプリント配線板であって、通常、ガラスエポキシなどの樹脂基板上に形成された銅配線を有するものである。ビスマレイミド・トリアジン樹脂(BT−レジン)、ポリイミド、アラミドベースの樹脂板を基板として用いることもできる。バンプアレイパッケージの配線板への接続のための温度は、選択される接着フィルムの樹脂組成及びはんだの融点などによって決まるものであり、限定されない。本発明の方法では、上記の接着フィルム及びはんだを用いる場合には、約180〜280℃程度の加熱温度及び30〜300秒の加熱時間を用いることで、良好な接続が可能である。この工程において、接着フィルムの樹脂成分の膨張及びはんだの溶融により、溶融したはんだが押出され、配線板上の配線と接続が形成される。なお、接着フィルム3付きパッケージ1を配線板5の上に配置する前に、はんだによる接続を促進するために、配線板5の接続されるべき部分にフラックスを塗布することが好ましい。フラックスは、従来から当業界において一般に使用されている通常のフラックスを用いることができる。接着フィルム3付きパッケージ1を配線板5の上に配置した後、上記の加熱温度に設定されたリフローオーブンに通過させることで、この接続工程を行なうことができる。
【0017】
本発明の方法では、ある温度に加熱すると、流動性を発現し、さらに加熱することで硬化する熱流動性でかつ熱硬化性の樹脂(以下において、「熱硬化性樹脂」とも言う)を含む接着フィルム(以下において、「熱硬化接着フィルム」、「接着フィルム」とも言う)を用いる。このような熱硬化性樹脂は熱可塑性成分と熱硬化性成分との両方を含む樹脂である。熱可塑性成分と熱硬化性成分とは同一のポリマー化合物中に存在しても、又は、熱可塑性樹脂と、熱硬化性樹脂との混合物であってもよい。熱可塑性成分と熱硬化性成分とが同一のポリマー化合物中に存在する場合の例としては、ポリカプロラクトン変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂などのように、熱可塑性成分で変性されたエポキシ樹脂が挙げられる。さらに別の例としては、熱可塑性樹脂の基本構造にエポキシ基などの熱硬化性基を有するコポリマー樹脂であることができる。このようなコポリマー樹脂としては、例えば、エチレンとグリシジル(メタ)アクリレートとのコポリマーが挙げられる。熱可塑性成分と熱硬化性成分との両方を含む樹脂は、単独で使用してもよいし、又は、さらに別の熱可塑性成分及び/又は熱硬化性成分を含んでもよい。例えば、ポリカプロラクトン変性エポキシ樹脂において、ポリカプロラクトンの分子量が大きい場合には、別の熱可塑性樹脂を含む必要なく、単独で使用できる。充分な熱流動性を確保できるからである。一方、ポリカプロラクトンの分子量が低い場合には他の熱可塑性樹脂を含ませることが有利であることもあり、樹脂組成は当業者により適宜決定されるべきである。
【0018】
接着フィルムのために特に好適に使用できる接着剤組成物は、カプロラクトン変性エポキシ樹脂を含む熱硬化性接着剤組成物である。
【0019】
このような熱硬化性接着剤組成物は、通常結晶相を有している。特に、この結晶相は、カプロラクトン変性のエポキシ樹脂(以下、「変性エポキシ樹脂」とも言う。)を主成分として含んでいる。変性エポキシ樹脂は、熱硬化性接着剤組成物に適度な可とう性を付与して、熱硬化性接着剤の粘弾性的特性を改善することができるようになっている。その結果、熱硬化性接着剤が硬化前でも凝集力を備え、加熱により粘着力を発現するようになる。また、この変性エポキシ樹脂は、通常のエポキシ樹脂と同様、加温により三次元網目構造をもった硬化物になり、熱硬化性接着剤に凝集力を付与することができる。
【0020】
かかる変性エポキシ樹脂は、初期接着力の向上の観点から、通常は約100〜約9,000、好適には約200〜約5,000、より好適には約500〜約3,000のエポキシ当量を有している。このようなエポキシ当量を備えた変性エポキシ樹脂は、例えば、ダイセル化学工業(株)からプラクセルTMGシリーズの商品名で市販されている。
【0021】
熱硬化性接着剤組成物は、上述の変性エポキシ樹脂と組み合わせて、好ましくは、メラミン/イソシアヌル酸付加物(以下、「メラミン/イソシアヌル酸錯体」とも言う。)を含有する。有用なメラミン/イソシアヌル酸錯体は、例えば日産化学工業からMC-600の商品名で市販されており、熱硬化性接着剤組成物の強靭化、熱硬化前における熱硬化性接着剤組成物のタックの低減、また、熱硬化性接着剤組成物の吸湿及び流動性の抑制に効果的である。また、この成分ははんだ付け工程において接着剤の粘度を調節する、特に粘度を上げるのに有効である。もし、接着剤の粘度が低すぎると、接着剤はチップ領域からはみ出して広がってしまう。一方、接着剤の粘度が高すぎると、はんだ付け工程を阻害してしまう。それ故、接着剤の粘度は厳格に制御されるべきであり、この材料は粘度調節剤として機能する。熱硬化性接着剤組成物は、上記の効果を損なうことなく硬化後の脆性を防止するために、このメラミン/イソシアヌル酸錯体を、100重量部の変性エポキシ樹脂に対して、通常1〜200重量部の範囲、好適には2〜100重量部の範囲、より好適には3〜50重量部の範囲で含有していることができる。
【0022】
さらに、熱硬化性接着剤組成物には、上述のフェノキシ樹脂と組み合せて又はそれとは独立に、第2のエポキシ樹脂(以下、単に「エポキシ樹脂」とも言う。)がさらに含まれてもよい。この第二のエポキシ樹脂は、本発明の範囲を逸脱しない限り特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フルオレンエポキシ樹脂、グリシジルアミン樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、フッ素化エポキシ樹脂などが使用可能である。このようなエポキシ樹脂も、変性エポキシ樹脂と同様にフェノキシ樹脂と相溶し易く、熱硬化性接着剤組成物からのブリードはほとんどない。特に、熱硬化性接着剤組成物が、100重量部の変性エポキシ樹脂に対して、好適には50〜200重量部、より好適には60〜140重量部の第2のエポキシ樹脂を含有していると、耐熱性向上の点で有利である。
【0023】
本発明の実施において、特に、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂(以下、「ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂」とも言う。)を好ましい第二のエポキシ樹脂として使用することができる。このジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂は、液状であり、例えば、熱硬化性接着剤組成物の高温特性を改善することができる。例えば、このジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を使用することによって、高温での硬化による耐薬品性やガラス転移温度を改善することが可能となる。また、硬化剤の適用範囲が広がるほか、硬化条件も比較的緩やかである。このようなジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂は、例えば、ダウ・ケミカル(ジャパン)社からD.E.R.TM332の商品名で市販されている。別の好ましい第二のエポキシ樹脂は東都化成社からYD128で市販されている。 熱硬化性接着剤組成物には、硬化剤を必要に応じて添加し、変性エポキシ樹脂及び第2のエポキシ樹脂の硬化反応に供することもできる。この硬化剤は、所望とする効果を奏する限り、使用量及び種類が特に限定されるものではない。しかし、耐熱性の向上の観点からは、100重量部の変性エポキシ樹脂及び必要な第2のエポキシ樹脂に対し、通常は1〜50重量部の範囲、好適には2〜40重量部の範囲、より好適には5〜30重量部の範囲で硬化剤を含んでいる。また、硬化剤としては、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、例えばアミン硬化剤、酸無水物、ジシアンジアミド、カチオン重合触媒、イミダゾール化合物、ヒドラジン化合物、フェノール等が使用可能である。特に、ジシアンジアミドは、室温での熱的安定性を有する観点から有望な硬化剤として挙げることができる。また、ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂との関係では、脂環式ポリアミン、ポリアミド、アミドアミン又はその変性物を使用することが望ましい。
【0024】
上記熱硬化性接着剤組成物からなる接着フィルムは、接着フィルムの総質量を基準として、35〜100%の有機物粒子を加えることで以下のような効果が奏せられる。有機物粒子の添加により、樹脂は塑性流動性を示す。このような性質を有する樹脂は比較的高い圧力ではんだバンプを押し当てた場合、樹脂が流動してはんだバンプの貫通を可能ならしめ、はんだバンプを表面に露出させることができる。一方、有機物粒子が熱硬化性接着剤組成物の過度の流動性を抑制し、加熱板によるはんだバンプの露出工程において、流れ出してしまうことを防止する。また、配線板との接続工程において、加熱の際に、配線板に付着している水分が蒸発して水蒸気圧が作用する場合があるが、その場合にも樹脂が流動して気泡を閉じ込めることがない。
【0025】
また、添加される有機物粒子は、アクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、スチレン−ブタジエン−アクリル系樹脂、メラミン樹脂、メラミン−イソシアヌレート付加物、ポリイミド、シリコーン樹脂、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリベンゾイミダゾール、ポリアリレート、液晶ポリマー、オレフィン系樹脂、エチレン−アクリル共重合体などの粒子が使用され、そのサイズは、10μm以下、好ましくは5μm以下とされる。
【0026】
接着フィルムはシリカ、酸化アルミニウム、ガラスビーズなどの無機充填剤を含んでもよい。無機充填剤は硬化後の接着フィルムの熱膨張係数を低く抑制することができるので、接線部の熱応力を回避することができる。
【0027】
上記の接着フィルムの厚さは、はんだバンプの高さよりも薄いことが望ましい。この場合に、接着フィルムとバンプアレイパッケージを加熱圧着すると、はんだバンプが接着フィルムを貫通し、はんだボールの先端が平坦になって露出した状態で、接着フィルム付きパッケージを得ることができるからである。限定するわけではないが、はんだバンプの高さは通常、50〜1000μmであるから、接着フィルムの厚さはそれに対応して、25〜500μmであることが好ましい。接着フィルムの厚さ/はんだバンプの高さは好ましくは0.3〜0.8である。
【0028】
はんだバンプは、上記のとおり、通常、球形であり、50〜1000μmの高さを有する。バンプの高さは、もとの高さの50〜90%にまで押し潰されて先端部分が部分的に平坦化されること、すなわち、バンプが高さ方向に10〜50%変形されることが好ましい。このような範囲であると、接続工程時に、接着フィルムの膨張により、溶融したはんだが押出され、良好に接続工程が行われるからである。
【実施例】
【0029】
以下において、本発明の方法を実施例を用いて説明する。
バンプアレイパッケージ及び配線板
バンプアレイパッケージとして、Top Line社より購入したボールグリッドアレイ(BGA)を用いた。図2にその底面図を示す。このBGAは8×8mmのサイズであり、はんだボールは0.5mmピッチで、はんだボール高さ0.31mm(錫/鉛はんだ)で、外周に14×14個、内周に12×12個で配置されており、ポリイミド(PI)インターポーザーを含む半導体パッケージであった。
一方、配線板として、ガラスエポキシ基板(厚さ0.5mm)上に、バンプアレイパッケージのはんだボールピッチに対応するピッチで導電パターンを形成したものを用いた。
【0030】
接着フィルム
下記の表1に示す組成で接着剤樹脂溶液を形成し、それをシリコーン処理ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にナイフコーティングにより塗布し、100℃のオーブン内で20分間乾燥し、厚さ25μmのフィルムを得た。同様の作業をさらに5回行い、これらのフィルム6枚を120℃で熱ラミネートし、厚さ150μmの接着フィルムを形成した。
【表1】

【0031】
上記のバンプアレイパッケージのはんだボール面を上にし、上記接着フィルムをはんだボールの上に配置し、厚さ50μmのシリコーン処理したPETフィルムを介して、パルスヒートボンダー(TCW−215/NA−66(商品名)、日本アビオニクス社製)のサーマルヘッドを50Nの荷重でプレスして熱圧着した。サーマルヘッドの温度は室温から130℃まで2秒間で昇温し、その温度で1秒間保持した後に、160℃にまで1秒間で昇温し、3秒間保持した。この結果、はんだボールは完全に接着フィルムを貫通し、その先端が平坦化して、図1(b)に示すような断面を有する、接着フィルム付きバンプアレイパッケージを得た。
【0032】
一方、上記のボールピッチに対応した導電パターンを有する配線板の接続部分にフラックス(デルタラックス523H(商品名)、千住金属工業株式会社製)を塗布し、上記の接着フィルム付きバンプアレイパッケージを、接着フィルムが配線板の導電パターンの接続部分と一致するように重ね合わせた。これをはんだリフローオーブン(予備加熱ゾーン150℃、最大温度240℃)に、合計で180秒間かけて通して、はんだ付けを行った。
【0033】
電気接続は図3に示すように、A〜Dの4箇所の接続が行われれば、T1とT2との回路の接続が得られるようになっている。したがって、上記の例では、24個のT1とT2とを結ぶ回路が形成される。はんだリフロー後、配線板上の端子T1とT2との間の抵抗測定を行なったところ、24つ全ての回路が接続されていることが確認された。又、このサンプルを−40℃〜80℃のヒートサイクル(各温度で30分)を1000サイクル行なったところ、抵抗上昇は5%以下であった。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の方法の工程図を示す。
【図2】バンプアレイパッケージの底面図を示す。
【図3】実施例で用いた回路の説明図を示す。
【符号の説明】
【0035】
1 バンプアレイパッケージ
2 はんだバンプ
3 接着フィルム
4 加熱板
5 配線板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだバンプを有するバンプアレイパッケージの表面に熱流動性でかつ熱硬化性の接着フィルムを配置すること、
前記はんだバンプと前記接着フィルムとからなる平坦な表面を有するバンプアレイパッケージを形成すること、
前記はんだバンプと接着フィルムとからなる平坦な表面を配線板上に配置し、前記接着フィルムの硬化を完了させるのに十分な温度であってかつ前記はんだの融解温度より高い温度に加熱することで、バンプアレイパッケージを配線板に接続すること、
の工程を含む、
バンプアレイパッケージを配線板に電気接続するための方法。
【請求項2】
半導体チップの入出力端子として複数のはんだバンプを平面状に有するバンプアレイパッケージを配線板に電気接続するための方法であって、
前記バンプアレイパッケージのはんだバンプを有する面に対して、熱流動性でかつ熱硬化性の接着フィルムを配置すること、
前記接着フィルムが流動するには十分な温度であるが、前記接着フィルムの硬化を完了させるには不十分な温度であって、かつ、前記はんだの融解温度よりも低い温度において、平坦な表面を有する板状体で前記接着フィルムを加圧することで、前記はんだバンプの各々の先端が部分的に平坦化して表面に露出した状態となった、各はんだバンプと接着フィルムとからなる平坦な表面を有するバンプアレイパッケージを形成すること、
前記はんだバンプと接着フィルムとからなる平坦な表面を配線板上に配置し、前記接着フィルムの硬化を完了させるのに十分な温度であってかつ前記はんだの融解温度より高い温度に加熱することで、バンプアレイパッケージを配線板に接続すること、
の工程を含む、
請求項1記載のバンプアレイパッケージを配線板に電気接続するための方法。
【請求項3】
前記熱流動性でかつ熱硬化性の接着フィルムは、熱可塑性成分と熱硬化性成分の両方を含む、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記熱流動性でかつ熱硬化性の接着フィルムは、カプロラクトン変性エポキシ樹脂を含む熱硬化性接着剤組成物からなる、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記熱流動性でかつ熱硬化性の接着フィルムは、前記接着フィルムの総質量を基準として、35〜100%の有機物粒子を含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記はんだバンプと接着フィルムとからなる平坦な表面を配線板上に配置する前に、前記配線板の接続すべき部分にフラックスを塗布する工程を含む、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
バンプアレイパッケージを配線板に接続する工程ははんだリフローオーブン中で行なわれる、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
はんだバンプの各々の先端が部分的に平坦化して表面に露出した状態となっており、そのため、各はんだバンプと接着フィルムとからなる平坦な表面を有する、接着フィルム付きバンプアレイパッケージ。
【請求項9】
はんだボールのバンプの高さがもとの高さの50〜90%の高さにまで押し潰されて先端が部分的に平坦化されている、請求項8記載の接着フィルム付きバンプアレイパッケージ。
【請求項10】
半導体チップの入出力端子として複数のはんだバンプを平面状に有するバンプアレイパッケージを用意し、前記バンプアレイパッケージのはんだバンプを有する面に対して、熱流動性でかつ熱硬化性の接着フィルムを配置すること、前記接着フィルムが流動するには十分な温度であるが、前記接着フィルムの硬化を完了させるには不十分な温度であって、かつ、前記はんだの融解温度よりも低い温度において、平坦な表面を有する板状体で前記接着フィルムを加圧することにより得られる、請求項8又は9記載の接着フィルム付きバンプアレイパッケージ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−128567(P2006−128567A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−318225(P2004−318225)
【出願日】平成16年11月1日(2004.11.1)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】