説明

半導体リソグラフィー用共重合体の製造方法

【課題】 現像コントラストが高く、微細パターンの解像性能に優れた、化学増幅ポジ型の半導体リソグラフィー用共重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の製造方法は、少なくとも、酸解離性溶解抑制基でアルカリ可溶性基を保護した構造を有する繰り返し単位(A)、ラクトン構造を有する繰り返し単位(B)、及び、アルコール性水酸基を有する繰り返し単位(C)を含む共重合体の製造方法であって、繰り返し単位(A)、(B)及び(C)を与える単量体から選ばれる少なくとも一種類以上を、有機溶媒に溶解した状態で水と接触させ、分液する工程、或いは、有機溶媒に溶解した状態でイオン交換樹脂と接触させる工程を経た後、共重合に供することにより、得られた共重合体を溶媒に溶解した後、ブロモチモールブルーを指示薬として、水酸化アルカリ金属含有溶液で中和滴定する方法で求めた酸価を、0.01mmol/g以下とすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の製造に使用されるリソグラフィー用共重合体の製造方法に関するものであり、更に詳しくは、遠紫外線、X線、電子線等の各種放射線を用いるレジスト膜等の微細パターンの形成に用いられる半導体リソグラフィー用共重合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子や液晶表示素子の製造においては、リソグラフィー技術の進歩により急速に微細化が進んでいる。微細化の手法としては、一般に露光光源の短波長化が進められていて、具体的には、従来はi線に代表される紫外線が用いられていたが、現在では、フッ化クリプトン(KrF)エキシマレーザー(波長248nm)が量産の中心となり、更にフッ化アルゴン(ArF)エキシマレーザー(波長193nm)が量産工程で導入され始めている。又、フッ素ダイマー(F)エキシマレーザー(157nm)や極紫外線(EUV)、電子線(EB)等を光源(放射線源)として用いるリソグラフィー技術についても研究が行われている。
【0003】
これらのリソグラフィー技術においては、化学増幅ポジ型リソグラフィー用共重合体が好適に用いられている。この共重合体は、アルカリ現像液に可溶な極性基(以下、「アルカリ可溶性基」ということがある。)を、酸に対して不安定であると共にアルカリ現像液に対する溶解性を抑制する置換基(以下、「酸解離性溶解抑制基」ということがある。)で保護した構造(以下、「酸解離性構造」ということがある。)を有する繰り返し単位と、半導体基板等に対する密着性を高めたり、リソグラフィー溶剤やアルカリ現像液への溶解性を調整したりするための極性基を有する繰り返し単位を含んで構成される。
【0004】
例えば、露光源としてKrFエキシマレーザーを用いるリソグラフィーにおいては、ヒドロキシスチレン由来の繰り返し単位と、ヒドロキシスチレン由来のフェノール性水酸基をアセタール構造や4級炭化水素基等の酸解離性溶解抑制基で保護した繰り返し単位、若しくは、(α−アルキル)アクリル酸由来のカルボキシル基をアセタール構造や4級炭化水素基等の酸解離性溶解抑制基で保護した繰り返し単位等を有する共重合体(特許文献1〜4等参照)等が知られている。又、ドライエッチング耐性や、露光前後のアルカリ現像液に対する溶解速度の差を向上させるため、脂環式炭化水素基を酸解離性溶解抑制基とした繰り返し単位を有する共重合体(特許文献5〜6等参照)も知られている。
【0005】
露光源として、より短波長のArFエキシマレーザー等を用いるリソグラフィーにおいては、193nmの波長に対する吸光係数が高いヒドロキシスチレン由来の繰り返し単位を有さない共重合体が検討され、半導体基板等に対する密着性を高めたり、リソグラフィー溶剤やアルカリ現像液への溶解性を調整したりするための極性基として、ラクトン構造を繰り返し単位に有する共重合体(特許文献7〜10等参照)が知られている。
【0006】
一方、近年になって、液浸リソグラフィーという手法が提案されている。これは、対物レンズとリソグラフィー薄膜との間に、空気より屈折率が高い水などの液体を浸して露光する技術であり、従来の、対物レンズと薄膜の間に空気層が存在するリソグラフィー(以下、「ドライリソグラフィー」ということがある。)と比較して、光源の波長が同一でもレンズの開口数を大きくすることができ、又、開口数が同じでも焦点深度を深くできるため、同一波長の光源でもより微細なパターンを形成することが可能になる。このため、次世代のリソグラフィーとして、ArFエキシマレーザー光源を中心とした液浸リソグラフ
ィーが、実用化に向けて盛んに研究されており、ArF液浸リソグラフィーに用いる共重合体としては、従来のArFドライリソグラフィーで知られているものと同じ共重合体が提案されている(特許文献11〜13等参照)。
【0007】
このような化学増幅ポジ型リソグラフィー用の共重合体において、重合原料である単量体及び該単量体を重合して得られる共重合体の酸価を200mg−KOH/g(約3.6mmol/g)以下とすることにより、保存中の経時変化が無く、又、所定のパターンを精度良く形成できることが知られている(特許文献14参照)。しかし、該特許文献では10mg−KOH/g(約0.2mmol/g)まで低減した例しか開示されておらず、又、共重合体の酸価を更に一桁以上低いレベルにまで低減することにより、露光量に対する現像速度のコントラスト(以下、現像コントラストということがある。解像パターンのシャープさを表す指標である。)に優れた半導体リソグラフィー用組成物が得られることは全く知られていなかった。
【0008】
【特許文献1】特開昭59−045439号公報
【特許文献2】特開平05−113667号公報
【特許文献3】特開平10−026828号公報
【特許文献4】特開昭62−115440号公報
【特許文献5】特開平09−073173号公報
【特許文献6】特開平10−161313号公報
【特許文献7】特開平09−090637号公報
【特許文献8】特開平10−207069号公報
【特許文献9】特開2000−026446号公報
【特許文献10】特開2001−242627号公報
【特許文献11】特開2005−227332号公報
【特許文献12】特開2005−234015号公報
【特許文献13】特開2005−316259号公報
【特許文献14】特開2001−166481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上述した背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、現像コントラストが高く、微細パターンの解像性能に優れた、化学増幅ポジ型の半導体リソグラフィー用共重合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、少なくとも、酸解離性溶解抑制基でアルカリ可溶性基を保護した構造を有する繰り返し単位(A)、ラクトン構造を有する繰り返し単位(B)、及び、アルコール性水酸基を有する繰り返し単位(C)を含む共重合体について、該共重合体の酸価を正確に定量する方法で分析し、該共重合体の酸価を従来よりも低レベルに制御することにより、前記の課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、前記従来技術の課題は、以下の構成によって解決することができる。
【0012】
〔1〕少なくとも、酸解離性溶解抑制基でアルカリ可溶性基を保護した構造を有する繰り返し単位(A)、ラクトン構造を有する繰り返し単位(B)、及び、アルコール性水酸基を有する繰り返し単位(C)を含む共重合体の製造方法であって、繰り返し単位(A)を与える単量体、繰り返し単位(B)を与える単量体、及び、繰り返し単位(C)を与える単量体から選ばれる少なくとも一種類以上を、有機溶媒に溶解した状態で水と接触させ、分液する工程を経た後、共重合に供することにより、得られた共重合体を溶媒に溶解した後、ブロモチモールブルーを指示薬として、水酸化アルカリ金属含有溶液で中和滴定する方法で求めた酸価を、0.01mmol/g以下とすることを特徴とする半導体リソグラフィー用共重合体の製造方法。
【0013】
〔2〕少なくとも、酸解離性溶解抑制基でアルカリ可溶性基を保護した構造を有する繰り返し単位(A)、ラクトン構造を有する繰り返し単位(B)、及び、アルコール性水酸基を有する繰り返し単位(C)を含む共重合体の製造方法であって、繰り返し単位(A)を与える単量体、繰り返し単位(B)を与える単量体、及び、繰り返し単位(C)を与える単量体から選ばれる少なくとも一種類以上を、有機溶媒に溶解した状態でイオン交換樹脂と接触させる工程を経た後、共重合に供することにより、得られた共重合体を溶媒に溶解した後、ブロモチモールブルーを指示薬として、水酸化アルカリ金属含有溶液で中和滴定する方法で求めた酸価を、0.01mmol/g以下とすることを特徴とする半導体リソグラフィー用共重合体の製造方法。
【0014】
〔3〕繰り返し単位(A)の酸解離性溶解抑制基が、式(L1)
【化7】


{式(L1)中、oは酸解離性溶解抑制基としての結合部位を、R13及びR14はそれぞれ独立して炭素数1〜4の炭化水素基を、R15は炭素数1〜12の炭化水素基を表し、R15はR13又はR14と結合して環を形成しても良い。}
若しくは式(L2)
【化8】


{式(L2)中、oは酸解離性溶解抑制基としての結合部位を、R16及びR17はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基を、R18は炭素数1〜12の炭化水素基を表し、R16はR17又はR18と結合して環を形成しても良い。}
で表される構造から選ばれる〔1〕又は〔2〕に記載の半導体リソグラフィー用共重合体の製造方法。
【0015】
〔4〕繰り返し単位(A)が、式(A)
【化9】

{式(A)中、R10は水素原子、若しくは、フッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を、R11は酸素原子若しくは硫黄原子を含んでも良い炭素数6〜12の脂環式炭化水素基を、nは0又は1の整数を、R12は式(L1)若しくは(L2)で表される酸解離性溶解抑制基を表す。}
で表される構造である〔1〕又は〔2〕に記載の半導体リソグラフィー用共重合体の製造方法。
【0016】
〔5〕繰り返し単位(B)が、式(B)
【化10】

[式(B)中、R20は水素原子、若しくは、フッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を、R21は単結合、又は、酸素原子若しくは硫黄原子を含んでも良い炭素数5〜12の脂環式炭化水素基を、Lは式(L3)
【化11】

{式(L3)中、R22〜R29は、いずれか1つ又は2つがR21と結合する単結合であり、残りは水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基若しくはアルコキシ基を表し、mは0又は1の整数を表す。}で表されるラクトン構造を表し、LはR21と1又は2の単結合で結合している。]
で表される構造である〔1〕又は〔2〕に記載の半導体リソグラフィー用共重合体の製造方法。
【0017】
〔6〕繰り返し単位(C)が、式(C)
【化12】

{式(C)中、R33は水素原子、若しくは、フッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を、R34〜R36はそれぞれ独立して水素原子若しくは水酸基を表し、R34〜R36の内、少なくとも一つ以上が水酸基である。}
で表される構造である〔1〕又は〔2〕に記載の半導体リソグラフィー用共重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によって、現像コントラストが高く、微細パターンの解像性能に優れた化学増幅ポジ型の半導体リソグラフィー用共重合体の製造方法を提供することができ、より高集積な半導体素子の製造が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を更に詳しく説明する。
【0020】
1.共重合体の構造
本発明により製造される半導体リソグラフィー用共重合体は、少なくとも、繰り返し単位(A)、繰り返し単位(B)、及び、繰り返し単位(C)とを含む。
【0021】
(1)繰り返し単位(A)
繰り返し単位(A)は、酸解離性溶解抑制基でアルカリ可溶性基を保護した構造を有する繰り返し単位であり、アルカリ現像液に対する共重合体の溶解性を変化させる働きをする。アルカリ可溶性基としては、水中25℃でのpKaが12以下の極性基が好ましく、特に好ましくは水中25℃でのpKaが10以下の極性基である。このような例として、フェノール性水酸基、フルオロアルコール性水酸基、カルボキシル基、スルホ基等を挙げることができ、193nmの光線透過率や保存安定性等から、特に好ましくはカルボキシル基である。酸解離性溶解抑制基が、このようなアルカリ可溶性基の水素と置換して、酸素原子に結合し、アルカリ現像液に対する溶解性を抑制する。
【0022】
酸解離性溶解抑制基は、式(L1)若しくは式(L2)から選ばれる構造であることが好ましい。
【化13】

【0023】
式(L1)中、oは酸解離性溶解抑制基としての結合部位を表す。R13及びR14はそれぞれ独立して炭素数1〜4の炭化水素基を表し、具体的には、メチル基、エチル基、
n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基等を挙げることができる。R15は炭素数1〜12の炭化水素基を表し、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、アダマンチル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル基等を挙げることができる。尚
、R15はR13又はR14と結合して環、具体的にはシクロペンタン環、シクロヘキサン環、ノルボルナン環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、アダマンタン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環等を形成しても良い。
【0024】
特に、R15に、若しくは、R15がR13又はR14と結合して、環、具体的にはシクロペンタン環、シクロヘキサン環、ノルボルナン環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、アダマンタン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環等が含ま
れると、リソグラフィー前後でのアルカリ現像液に対する溶解性の差が大きく、微細パターンを描くのに好ましい。
【0025】
【化14】


式(L2)中、oは酸解離性溶解抑制基としての結合部位を表す。R16及びR17はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基を表し、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基等を挙げることができる。R18は炭素数1〜12の炭化水素基を表し、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、アダマンチル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル基等を挙げることができる。尚、R16は、R17又はR18と結合して環を形成しても良く、R16がR17と結合した環の具体例として、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、ノルボルナン環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、アダマンタン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環等を、又、
16がR18と結合した環の具体例として、ヒドロフラン環、ヒドロピラン環等をそれぞれ挙げることができる。
【0026】
繰り返し単位(A)は、式(A)で表される構造であることが好ましい。
【化15】

【0027】
式(A)中、R10は水素原子、若しくは、フッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を表し、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、トリフルオロメチル基等を挙げることができ、好ましくは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基である。
【0028】
11は、酸素原子若しくは硫黄原子を含んでも良い炭素数6〜12の脂環式炭化水素基を表し、具体的には、ノルボルナン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデ
カン環、7−oxa−ノルボルナン環、7−thia−ノルボルナン環等を有する脂環式炭化水素基を挙げることができ、好ましくはノルボルナン環、テトラシクロ[4.4.0.
2,5.17,10]ドデカン環である。尚、nは0又は1の整数である。
【0029】
以下に、繰り返し単位(A)の具体的な例を示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。尚、これらの繰り返し単位を与える単量体は、単独若しくは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
【化16】

【0031】
【化17】

【0032】
【化18】

【0033】
【化19】

【0034】
【化20】

【0035】
【化21】

【0036】
【化22】

【0037】
【化23】

【0038】
【化24】

【0039】
【化25】

【0040】
【化26】

【0041】
【化27】

【0042】
【化28】

【0043】
(2)繰り返し単位(B)
繰り返し単位(B)は、ラクトン構造を有する繰り返し単位であり、半導体基板への密着性を高めたり、リソグラフィー溶媒やアルカリ現像液への溶解性を制御したりする働きをする。繰り返し単位(B)は、式(B)で表される構造であることが好ましい。
【化29】

【0044】
式(B)中、R20は水素原子、若しくは、フッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を表し、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、トリフルオロメチル基等を挙げることができ、好ましくは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基である。R21は単結合、又は、酸素原子若しくは硫黄原子を含んでも良い炭素数5〜12の脂環式炭化水素基を表し、具体的には単結合、若しくは、シクロヘキサン環、ノルボルナン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環、7−oxa−ノルボルナン環、7−thia−ノ
ルボルナン環等を有する脂環式炭化水素基を挙げることができ、好ましくは単結合、ノルボルナン環、7−oxa−ノルボルナン環である。
【0045】
式(B)中、Lは式(L3)で表されるラクトン構造を表し、R21と1又は2の単
結合で結合している。
【化30】

【0046】
式(L3)中、R22〜R29は、いずれか1つ又は2つが式(B)におけるR21と結合する単結合であり、残りは水素原子又は上記と同様の炭素数1〜4の炭化水素基若しくはアルコキシ基である。又、mは0又は1の整数を表す。
【0047】
以下に、繰り返し単位(B)の具体的な例を示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。尚、これらの繰り返し単位を与える単量体は、単独若しくは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
【化31】

【0049】
【化32】

【0050】
【化33】

【0051】
【化34】

【0052】
【化35】

【0053】
【化36】

【0054】
【化37】

【0055】
(3)繰り返し単位(C)
繰り返し単位(C)は、アルコール性水酸基を有する繰り返し単位であり、半導体基板への密着性を高めたり、リソグラフィー溶媒やアルカリ現像液への溶解性を制御したりする働きをする。繰り返し単位(C)の構造としては、光線透過率やエッチング耐性に優れることから、式(C)で表される構造であることが特に好ましい。
【化38】

【0056】
式(C)中、R33は水素原子、若しくは、フッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を表し、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、トリフルオロメチル基等を挙げることができ、好ましくは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基である。R34〜R36はそれぞれ独立して水素原子若しくは水酸基を表し、R34〜R36の内、少なくとも一つ以上が水酸基である。
【0057】
以下、繰り返し単位(C)の具体的な例を示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。尚、これらの繰り返し単位を与える単量体は、単独若しくは2種類以上を組み合わせることができる。
【0058】
【化39】

【0059】
(4)その他の繰り返し単位
本発明により製造される半導体リソグラフィー用共重合体は、上記の繰り返し単位以外に、必要に応じて、アルカリ現像液やリソグラフィー溶媒への溶解性を制御する目的で、酸安定溶解抑制基を有する繰り返し単位(D)等も含むことができる。
【0060】
繰り返し単位(D)の例としては、式(D)で表される構造を挙げることができる。
【化40】

【0061】
式(D)中、R40は水素原子、若しくは、フッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を表し、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、トリフルオロメチル基等を挙げることができ、好ましくは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基である。R41はエステル結合している炭素が1〜3級炭素である炭素数1〜12の脂環式炭化水素基、若しくは、1−アダマンチル基を表し、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−ノルボルニル基、2−イソボルニル基、8−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、4−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
ドデカニル基等を挙げることができる。
【0062】
以下に、繰り返し単位(D)の具体的な例を示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。尚、これらの繰り返し単位を与える単量体は、単独若しくは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
【化41】

【0064】
(5)繰り返し単位組成
各繰り返し単位の組成は、半導体リソグラフィーにおける基本性能を損なわない範囲で選択することができる。例えば、繰り返し単位(A)は、通常10〜80モル%、好ましくは15〜70モル%、より好ましくは20〜60モル%の範囲を選択する。繰り返し単位(B)は、通常10〜80モル%、好ましくは15〜70モル%、より好ましくは20〜60モル%の範囲を選択する。繰り返し単位(C)は、通常1〜50モル%、好ましくは5〜40モル%、より好ましくは10〜30モル%の範囲を選択する。繰り返し単位(D)は、通常0〜30モル%、好ましくは0〜20モル%、より好ましくは0〜10モル%の範囲を選択する。
【0065】
(6)末端構造
本発明により製造される半導体リソグラフィー用共重合体は、既に公知の末端構造を含む。通常、ラジカル重合開始剤から発生するラジカル構造を重合開始末端として含み、連鎖移動剤を用いる場合は、連鎖移動剤から発生するラジカル構造を重合開始末端として含む。溶媒や単量体等に連鎖移動する場合は、溶媒や単量体から発生するラジカル構造を重合開始末端として含む。停止反応が再結合停止の場合は、両末端に重合開始末端を含むことができ、不均化停止の場合は片方に重合開始末端を、もう片方に単量体由来の末端構造を含むことができる。重合停止剤を用いる場合は、一方の末端に重合開始末端を、もう片方の末端に重合停止剤由来の末端構造を含むことができる。これらの開始反応及び停止反応は、一つの重合反応の中で複数発生する場合があり、その場合、複数の末端構造を有する共重合体の混合物となる。本発明で用いることができる重合開始剤、連鎖移動剤、溶媒については後述する。
【0066】
(7)分子量、分散度
共重合体の重量平均分子量(Mw)は、高すぎるとレジスト溶剤やアルカリ現像液への溶解性が低くなり、一方、低すぎるとレジストの塗膜性能が悪くなることから、1,00
0〜40,000の範囲内であることが好ましく、1,500〜30,000の範囲内であ
ることがより好ましく、2,000〜20,000の範囲内であることが特に好ましい。又、分子量分布(Mw/Mn)は1.0〜5.0の範囲内であることが好ましく、1.0〜3.0の範囲内であることがより好ましく、1.2〜2.5の範囲内であることが特に好ましい。
【0067】
本発明により製造される半導体リソグラフィー用共重合体は、所定の方法で求めた酸価が0.01mmol/g以下であることを特徴とする。
【0068】
2.酸価の定量方法
本発明により製造される共重合体の酸価は、測定対象の共重合体を溶媒に溶解し、ブロモチモールブルーを指示薬として、水酸化アルカリ金属含有溶液で中和滴定することにより求める。この方法は、次の理由により、特にラクトン構造を有する共重合体の酸価を定量する場合に好ましい。
【0069】
即ち、ラクトン構造はpHが8以上で加水分解しやすい。又、カルボキシル基のような弱酸を水酸化アルカリ金属のような強塩基で中和する場合、滴定量に対するpHの変化は、pHが7未満では緩やかであり、pHが7〜10の間で極大となる。このため、pHが7以上8未満で変色する指示薬を用いる必要があり、最適な指示薬はブロモチモールブルーである。該指示薬はpH=7.6で中間色の緑から塩基性色の青に変化する。
【0070】
上記以外の方法として、例えば電位差滴定や13C−NMR、H−NMRによる方法を挙げることができる。しかし、電位差滴定による方法では、終点の見極めが難しく、過剰量滴下した塩基によってラクトンが加水分解してしまうため、実質的に定量が困難である。又、13C−NMRによる方法では、S/N比が低いために微小ピークの定量が困難であること、又、カルボキシル基を定量する場合、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の主鎖カルボニルやラクトン構造のカルボニルとピークが分離しない場合が多いこと等、実質的に定量が困難である。更に、H−NMRによる方法では、酸性水素のピークはブロードになるため、微小ピーク面積の積算が難しく、実質的に定量は困難である。
【0071】
以下、ブロモチモールブルーを指示薬とし、水酸化アルカリ金属含有溶液で中和滴定する方法について説明する。
【0072】
滴定に用いる水酸化アルカリ金属として、好ましくは、通常の中和滴定に用いる水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを挙げることができる。この水酸化アルカリ金属を、水若しくは有機溶媒と水の混合液に溶解し、好ましくは0.0001〜1mol/Lの範囲の濃度、特に好ましくは0.001〜0.1mol/Lの範囲の濃度とする。調製した滴定液は、使用前に、標準溶液を使って滴定するなどの方法で、正確な濃度を求めることが好ましい。又、滴定液に使用する水は、あらかじめフィルターろ過や、イオン交換処理、蒸留、脱気等の方法で、二酸化炭素等の不純物を低減したものを使用するのが好ましい。
【0073】
滴定時に共重合体を溶解する溶媒は、共重合体と指示薬を溶解する溶媒であって、滴定液を滴下しても共重合体が析出しない溶媒を選択する。共重合体が水溶性の場合は水、水溶性の有機溶媒及びこれらの混合物を選ぶことができ、特に好ましくは水である。共重合体が非水溶性の場合は、共重合体を溶解し、且つ、水を好ましくは1%以上、特に好まし
くは10%以上溶解する有機溶媒が好ましく、単独若しくは2種以上を混合して用いることができる。
【0074】
有機溶媒の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール等のエーテルアルコール類;前記エーテルアルコール類と酢酸等とのエステル化合物であるエーテルエステル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等が挙げられる。
【0075】
3.共重合体の製造方法
以下、本発明の半導体リソグラフィー用共重合体の製造方法について説明する。本発明の製造方法は、少なくとも、単量体から酸を除去する工程(Q)、単量体を加熱した有機溶媒中でラジカル重合させる工程(P)よりなることができ、又、必要に応じ、共重合体から単量体、重合開始剤等の未反応物やオリゴマー等の低分子量成分等の不要物を除去する工程(R)や、低沸点不純物を除去したり、溶媒を次工程若しくはリソグラフィーに適した溶媒と置換したりする工程(S)、半導体の形成に好ましくない金属不純物を低減する工程(T)、マイクロゲル等のパターン欠陥の原因となる物質を低減する工程(U)を組み合わせることもできる。
【0076】
(1)工程(Q)
工程(Q)は、単量体から、その合成過程で使用した酸原料や酸触媒、副生した酸等の酸性物質を除去する工程である。酸性物質が残留すると、工程(P)において、繰り返し単位(A)を与える単量体の酸解離性溶解抑制基の一部が脱離したり、酸性物質が重合性物質の場合は酸性物質が共重合したりして、共重合体中にカルボキシル基等の酸性官能基が生成してしまう。共重合体の酸価を0.01mmol/gとするためには、単量体に含まれる酸性物質を除去し、単量体の酸価を好ましくは0.01mg/g以下、特に好ましくは0.005mg/g以下に低減することが好ましい。
【0077】
酸性物質を除去する方法としては、(Q1)水と二相に分離する有機溶媒に単量体を溶解し、水と混合して酸性分を水相に抽出し、水相を分液除去する方法、或いは、(Q2)有機溶媒に溶解した単量体をイオン交換樹脂に接触させ、酸性分をイオン交換樹脂に吸着又はイオン交換して除去する方法を挙げることができる。
【0078】
(Q1)で用いる有機溶媒は、前記した溶媒の中から、単量体を溶解し、水と分離する溶媒を選択するが、単独又は2種以上を混合しても良い。単量体の濃度は、高すぎると酸性分の抽出効率が低下し、低すぎると生産効率が低下するため、通常5〜80質量%、好ましくは10〜70質量%、特に好ましくは15〜50質量%の範囲を選択する。抽出溶媒である水の量は、少なすぎると酸性分の抽出が不十分になり、多すぎると生産効率が低下するため好ましくなく、通常、単量体溶液の0.1〜10質量倍、好ましくは0.2〜5質量倍、特に好ましくは0.3〜3質量の範囲を選択する。抽出する際の温度は、高すぎると分液性が低下したり、単量体や溶媒が変質したりして好ましくなく、又、低すぎると水が凝固したりして好ましくない。通常0〜60℃、好ましくは5〜50℃、特に好ま
しくは10〜40℃の範囲を選択する。
【0079】
(Q2)で用いる有機溶媒は、前記した溶媒の中から単量体を溶解する溶媒を選択する。イオン交換樹脂は、通常アニオン交換樹脂と呼ばれる、アニオン吸着能やアニオン交換能を有する樹脂を、単独若しくは組み合わせて使用することができる。又、アニオン交換樹脂を、通常カチオン交換樹脂と呼ばれるカチオン交換能を有する樹脂と組み合わせて用いても良い。尚、アニオン交換樹脂からは塩基成分が溶出することがあるため、カチオン交換樹脂と組み合わせて使用することが特に好ましい。
【0080】
アニオン交換樹脂の例としては、アニオン吸着能若しくはアニオン交換能を有する置換基を有するポリスチレン、(メタ)アクリル酸エステル−ジビニルベンゼン共重合体、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体や、アルキレン基で架橋したポリスチレン、(メタ)アクリル酸エステル−ジビニルベンゼン共重合体、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体等の樹脂が挙げられる。又、アニオン吸着能を有する置換基の例としては、1〜3級のアミノ基を有する置換基が挙げられ、具体的にはN,N−ジメチルアミノメチル基、N−メチルアミノメチル基、アミノメチル基、N,N−ジエチルアミノメチル基等を挙げることができ、特に好ましくはN,N−ジメチルアミノメチル基である。アニオン吸着能を有する置換基の例として、4級アンモニウムイオンを有する置換基が挙げられ、対カチオンは水酸アニオンであることが好ましく、具体的には以下に示す(E1)〜(E4)を挙げることができ、特に好ましくは(E1)若しくは(E2)である。
【化42】

【0081】
カチオン交換樹脂としては、前記したアニオン交換樹脂における、アニオン吸着能若しくはアニオン交換能を有する官能基の替わりに、カルボン酸、スルホン酸などのカチオン交換能を有する官能基を有する樹脂を挙げることができ、特に好ましくはスルホン酸基が置換した樹脂である。
【0082】
単量体が溶解した溶液をイオン交換樹脂と接触させるには、イオン交換樹脂を単量体溶液に投入して撹拌しても良いし、イオン交換樹脂を充填したイオン交換層に単量体溶液を通液しても良い。イオン交換樹脂の使用量は、少なすぎると酸性物質を除去しきれず、多すぎると生産効率が低下するため好ましくない。イオン交換容量が酸性物質に対して、通常、1.2〜100等量倍、好ましくは1.5〜50当量倍、特に好ましくは1.5〜20当量倍になる範囲を選択する。
【0083】
単量体溶液をイオン交換層に通液する場合は、LHSV(Liquid Hourly
Space Velocityの略で、流体の空間速度を表す。ここでは、単量体溶液の通液速度をイオン交換層の体積で割った値で表す。)が速すぎると酸性物質の除去効率が低下し、遅すぎると生産効率が低下するため好ましくないく、LHSVが通常、0.1〜100/hr、好ましくは0.5〜50/hr、特に好ましくは1〜20/hrの範囲を選択する。
【0084】
イオン交換層の層高は、低すぎるとショートパスによって酸性物質の除去効率が低下し
、高すぎると差圧によって通液しにくくなるため好ましくなく、通常、5〜500cm、好ましくは10〜300cm、特に好ましくは20〜200cmの範囲を選択する。温度は、高すぎるとイオン交換樹脂や単量体、溶媒が変質するため好ましくなく、低すぎるとイオン交換若しくは吸着が不十分となるため好ましくなく、通常、0〜60℃、好ましくは5〜50℃、特に好ましくは10〜40℃の範囲を選択する。
【0085】
このようにして酸性分を除去した後、そのまま工程(P)に用いても良いが、好ましくは、減圧下で加熱して、有機溶媒を留去させる等の方法で溶媒と分離した後工程(P)に供する。
【0086】
(2)工程(P)
工程(P)は、単量体を、ラジカル重合開始剤の存在下、有機溶媒中でラジカル重合させる工程であり、公知の方法にて実施できる。例えば、(P1)単量体を重合開始剤と共に溶媒に溶解し、そのまま加熱して重合させる一括昇温法、(P2)単量体を重合開始剤と共に必要に応じて溶媒に溶解し、加熱した溶媒中に滴下して重合させる混合滴下法、(P3)単量体と重合開始剤を別々に、必要に応じて溶媒に溶解し、加熱した溶媒中に別々に滴下して重合させるいわゆる独立滴下法、(P4)単量体を溶媒に溶解して加熱し、別途溶媒に溶解した重合開始剤を滴下して重合させる開始剤滴下法等が挙げられる。
【0087】
ここで、(P1)一括昇温法と(P4)開始剤滴下法は重合系内において、(P2)混合滴下法は重合系内に滴下する前の滴下液貯槽内において、未反応単量体の濃度が高い状態で低濃度のラジカルと接触する機会があるため、パターン欠陥発生原因のひとつである分子量10万以上の高分子量体(ハイポリマー)が生成しやすい傾向にある。これに比べて、(P3)独立滴下法は、滴下液貯槽で重合開始剤と共存しないこと、重合系内に滴下した際も未反応単量体濃度が低い状態を保つことから、ハイポリマーが生成しないので、本発明における重合方法としては(P3)独立滴下法が特に好ましい。尚、(P2)混合滴下法及び(P3)独立滴下法において、滴下時間と共に滴下する単量体の組成、単量体、重合開始剤及び連鎖移動剤の組成比等を変化させても良い。
【0088】
重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤として公知のものを用いることができる。好ましくは、アゾ化合物、過酸化物等のラジカル重合開始剤である。アゾ化合物の具体例としては、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1'−アゾビス(シクロヘ
キサン−1−カルボニトリル)、4,4'−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等を挙げることができる。過酸化物の具体例としては、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、コハク酸パーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等を挙げることができる。これらは単独で若しくは混合して用いることができる。重合開始剤の使用量は、目的とするMw、原料である単量体、重合開始剤、連鎖移動剤及び溶媒の種類や組成比、重合温度や滴下速度等の製造条件に応じて選択することができる。
【0089】
連鎖移動剤は、連鎖移動剤として公知のものを、必要に応じて用いることができる。中でもチオール化合物が好ましく、公知のチオール化合物の中から幅広く選択することがでる。具体的には、t−ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸等を挙げることができる。又、2−ヒドロキシ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピリデン基が飽和炭化に結合した構造を有するチオール化合物は、リソグラフィーパターンのラフネスや欠陥を抑える効果があるため特に好ましい。
【0090】
連鎖移動剤の使用量は、目的とするMw、原料である単量体、重合開始剤、連鎖移動剤及び溶媒の種類や組成比、重合温度や滴下速度等の製造条件に応じて選択することができる。又、連鎖移動剤は、(P1)一括昇温法においては、単量体、重合開始剤と共に溶媒に溶解して加熱することができ、(P2)混合滴下法、(P3)独立滴下法、(P4)開始剤滴下法においては、単量体と混合して滴下しても良く、重合開始剤と混合して滴下しても良く、予め加熱する溶媒中に溶解して使用しても良い。
【0091】
重合溶媒は、単量体、重合開始剤、連鎖移動剤、更には重合して得られた共重合体を溶解させる化合物であれば特に制限されない。溶媒の具体例としては、前記酸価の定量に用いることができる溶媒として例示した有機溶媒を挙げることができ、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0092】
工程(P)の重合温度は、溶媒、単量体、連鎖移動剤等の沸点、重合開始剤の半減期温度等に応じて適宜選択することができる。低温では重合が進みにくいため生産性に問題があり、又、必要以上に高温にすると、単量体及び共重合体の安定性の点で問題がある。従って、好ましくは40〜120℃、特に好ましくは60〜100℃の範囲で選択する。
【0093】
(P2)混合滴下法及び(P3)独立滴下法における滴下時間は、短時間であると分子量分布が広くなりやすいことや、一度に大量の溶液が滴下されるため重合液の温度低下が起こることから好ましくない。逆に、長時間であると共重合体に必要以上の熱履歴がかかることと、生産性が低下することから好ましくない。従って、通常0.5〜24時間、好ましくは1〜12時間、特に好ましくは2〜8時間の範囲から選択する。
【0094】
(P2)混合滴下法及び(P3)独立滴下法における滴下終了後、及び、(P1)一括昇温法及び(P4)開始剤滴下法における重合温度への昇温後は、一定時間温度を維持するか、若しくは更に昇温する等して熟成を行い、残存する未反応単量体を反応させることが好ましい。熟成時間は長すぎると時間当たりの生産効率が低下すること、共重合体に必要以上の熱履歴がかかることから好ましくない。従って、通常12時間以内、好ましくは6時間以内、特に好ましくは1〜4時間の範囲から選択する。
【0095】
(3)工程(R)
工程(R)は、工程(P)を経て得られた共重合体に含まれる、単量体や重合開始剤等の未反応物やオリゴマー等の低分子量成分を、溶媒に抽出して除去する工程である。その方法として、例えば、(R1):貧溶媒を加えて共重合体を沈殿させた後、溶媒相を分離する方法、(R1a):(R1)に続いて貧溶媒を加え、共重合体を洗浄した後、溶媒相を分離する方法、(R1b):(R1)に続いて良溶媒を加え、共重合体を再溶解させ、更に貧溶媒を加えて共重合体を再沈殿させた後、溶媒相を分離する方法、(R2):貧溶媒を加えて貧溶媒相と良溶媒相の二相を形成し、貧溶媒相を分離する方法、(R2a):(R2)に続いて貧溶媒を加え、良溶媒相を洗浄した後、貧溶媒相を分離する方法等が挙げられる。尚、(R1a)、(R1b)、(R2a)は繰り返しても良いし、それぞれ組み合わせても良い。
【0096】
貧溶媒は、共重合体が溶解しにくい溶媒であれば特に制限されないが、例えば、水やメタノール、イソプロパノール等のアルコール類、ヘキサン、ヘプタン等の飽和炭化水素類等を用いることができる。又、良溶媒は、共重合体が溶解しやすい溶媒であれば特に制限されず、1種又は2種以上の混合溶媒として用いることができる。製造工程の管理上、重合溶媒と同じものが好ましい。良溶媒の例としては、工程(P)の重合溶媒として例示された溶媒と同じものを挙げることができる。
【0097】
(4)工程(S)
工程(S)は、共重合体溶液に含まれる低沸点不純物を除去したり、溶媒を次工程若しくはリソグラフィー組成物に適した溶媒に置換したりする工程である。重合体溶液を減圧下で加熱しながら濃縮し、必要に応じて溶媒を追加して更に濃縮する工程(S1)、重合体溶液を、減圧下で加熱しながら、必要に応じて濃縮した後、溶媒を次工程若しくはリソグラフィー組成物として好ましい溶媒を供給しながら、初期の溶媒と供給した溶媒を留去させ、必要に応じて更に濃縮して、溶媒を次工程若しくはリソグラフィー組成物として好ましい溶媒に置換する工程(S2)等によって行うことができる。
【0098】
この工程(S)は、例えばリソグラフィー組成物が工程(P)や工程(R)を経て得られた溶媒と異なったり、リソグラフィー組成物に好ましくない不純物が存在したりする場合に実施するもので、リソグラフィー組成物を調合する工程(U)に先立ち、実施することが好ましい。
【0099】
工程(S)を経ず、減圧乾燥によって一旦固体にした後、別の溶媒に溶解することもできるが、この操作では、固体中に不純物や溶媒が残留しやすいこと、又、共重合体に対して必要以上の熱履歴を与えるため、好ましくない。
【0100】
工程(S)の温度は、共重合体が変質しない温度であれば特に制限されないが、通常100℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましく、更に好ましくは70℃以下、特に好ましくは60℃以下である。溶媒を置換する際に、後から供給する溶媒の量は、少なすぎると低沸点化合物が十分に除去できず、多すぎると置換に時間がかかり、共重合体に必要以上に熱履歴を与えるため好ましくない。通常、仕上がり溶液の溶媒として必要な量の1.05倍〜10倍、好ましくは1.1倍〜5倍、特に好ましくは1.2倍〜3倍の範囲から選択できる。
【0101】
(5)工程(T)
工程(T)は、半導体リソグラフィーとして好ましくない金属分を低減する工程である。金属は、原料や副資材、機器、その他環境からの混入することがあり、この量が半導体形成における許容値を超えることがあるので、必要に応じて実施する。この工程(T)は、工程(R)において、極性溶媒を貧溶媒とする場合、金属分を低減できる場合があり、この場合は、工程(R)と兼ねることができる。それ以外の方法として、カチオン交換樹脂と接触させる工程(T1)、カチオン交換樹脂と、アニオン交換樹脂若しくは酸吸着樹脂の混合樹脂と接触させる工程(T2)、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリンカチオン樹脂などの正のゼータ電位を有する物質を含むフィルターに通液させる工程(T3)等を選択することができる。これらの工程は組み合わせて実施することができ、工程(T3)で用いるフィルターとしては、キュノ社製ゼータプラス40QSH、ゼータプラス020GN、エレクトロポアEFII等を例示できる(これらは商標で、以下同様である。)。
【0102】
(6)工程(U)
工程(U)は、パターン欠陥の原因となるため好ましくないハイポリマー等のマイクロゲルを、有機溶媒に溶解した共重合体をフィルターに通液させて低減する工程である。フィルターの濾過精度は、0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、特に好ましくは0.05μm以下である。フィルターの材質は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリルなどの極性基含有樹脂、フッ化ポリエチレンなどのフッソ含有樹脂を挙げることができ、特に好ましくはポリアミドである。
【0103】
ポリアミド系フィルターの例としては、日本ポール製のウルチプリーツP−ナイロン6
6、ウルチポアN66、キュノ製のフォトシールド、エレクトロポアIIEFなどを挙げることができる。ポリエチレン系フィルターとしては、日本インテグリス製のマイクロガードプラスHC10、オプチマイザーD等を挙げることができる。これらのフィルターはそれぞれ単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0104】
(7)工程(V)
上記により得られた共重合体は、乾燥固体を1種又は2種以上のリソグラフィー溶媒に溶解するか、又は、リソグラフィー溶媒に溶解した共重合体溶液を必要に応じて同種又は異種のリソグラフィー溶媒で希釈すると共に、感放射線性酸発生剤(X){以下、成分(X)という}、放射線に暴露されない部分への酸の拡散を防止するための含窒素有機化合物等の酸拡散抑制剤(Y){以下、成分(Y)という}、必要に応じてその他添加剤(Z){以下、成分(Z)という}を添加することにより、化学増幅型レジスト組成物に仕上げることができる。
【0105】
リソグラフィー溶媒は、リソグラフィー組成物を構成する各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、従来化学増幅型レジストの溶剤として公知のものの中から任意のものを1種又は2種以上の混合溶媒として用いることができる。通常、工程(P)の重合溶媒、工程(R)の良溶媒として例示された溶媒の中から、共重合体以外の組成物の溶解性、粘度、沸点、リソグラフィーに用いられる放射線の吸収等を考慮して選択することができる。特に好ましいレジスト溶媒は、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、乳酸エチル(EL)、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)であり、中でも、PGMEAと他の極性溶剤との混合溶剤は特に好ましい。更に混合する極性溶媒としてはELが特に好ましい。
【0106】
リソグラフィー組成物中に含まれるリソグラフィー溶媒の量は特に制限されないが、通常、基板等に塗布可能な濃度であり、塗布膜厚に応じて適当な粘度となるように適宜設定される。一般的にはリソグラフィー組成物の固形分濃度が2〜20質量%、好ましくは5〜15質量%の範囲内となるように用いられる。
【0107】
成分(X)は、これまで化学増幅型レジスト用の感放射線性酸発生剤として提案されているものから適宜選択して用いることができる。このような例として、ヨードニウム塩やスルホニウム塩等のオニウム塩、オキシムスルホネート類、ビスアルキル又はビスアリールスルホニルジアゾメタン類等のジアゾメタン類、ニトロベンジルスルホネート類、イミノスルホネート類、ジスルホン類等を挙げることができ、中でも、フッ素化アルキルスルホン酸イオンをアニオンとするオニウム塩が特に好ましい。これらは単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。成分(X)は、共重合体100質量部に対して通常0.5〜30質量部、好ましくは1〜10質量部の範囲で用いられる。
【0108】
成分(Y)は、これまで化学増幅型レジスト用の酸拡散抑制剤として提案されているものから適宜選択することができる。このような例として、含窒素有機化合物を挙げることができ、第一級〜第三級のアルキルアミン若しくはヒドロキシアルキルアミンが好ましい。特に第三級アルキルアミン、第三級ヒドロキシアルキルアミンが好ましく、中でもトリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンが特に好ましい。これらは単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。成分(Y)は、共重合体100重量部に対して通常0.01〜5.0質量部の範囲で用いられる。
【0109】
その他の添加剤{成分(Z)}としては、酸発生剤の感度劣化防止やリソグラフィーパターンの形状、引き置き安定性等の向上を目的とした有機カルボン酸類やリンのオキソ酸類、レジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、塗布性を向上させるための界面活性剤、溶解抑止剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料等、リソグラフィ
ー用添加剤として慣用されている化合物を必要に応じて適宜添加することができる。有機カルボン酸の例としては、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸等を挙げることができ、これらは単独若しくは2種以上を混合して用いることができる。有機カルボン酸は、共重合体100質量部に対して0.01〜5.0質量部の範囲で用いられる。
【実施例】
【0110】
次に、実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、下記の例においては使用される略号は以下の意味を有する。
単量体
単量体G: γ−ブチロラクトン−2−イルメタクリレート
単量体Ma:2−メチル−2アダマンチルアクリレート
単量体Oa:3−ヒドロキシ−1−アダマンチルアクリレート
繰り返し単位
G: 単量体Gから誘導される繰り返し単位
Ma:単量体Maから誘導される繰り返し単位
Oa:単量体Oaから誘導される繰り返し単位
【化43】

【0111】
重合開始剤
MAIB:ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート
溶媒
MEK:メチルエチルケトン
THF:テトラヒドロフラン
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
EL:乳酸エチル
【0112】
(1)共重合体のMw、Mw/Mnの測定(GPC)
GPCにより測定した。分析条件は以下の通りである。
装 置: 東ソー製GPC8220
検出器: 示差屈折率(RI)検出器
カラム: 昭和電工製KF−804L(×3本)
試 料: 共重合体約0.02gを、テトラヒドロフラン約1mlに溶解した。GPCへの注入量は60μlとした。
【0113】
(2)共重合体の繰り返し単位組成及び末端組成の測定(13C−NMR)
装 置: Bruker製AV400
試 料: 共重合体の粉体約1gとCr(acac) 0.1gを、MEK0.5
g、重アセトン1.5gに溶解した。
測 定: 試料を内径10mmガラス製チューブに入れ、温度40℃、スキャン回数10000回の条件で測定した。
【0114】
(3)Eth、γ値の測定
(3−1)リソグラフィー用組成物の調製
以下の組成となるように調製した。
共重合体 :100質量部
成分(X):4−メチルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート3.5質量部
成分(Y):トリエタノールアミン0.2質量部
成分(Z):サーフロンS−381(セイミケミカル製)0.1質量部
溶媒: PGMEA 450質量部、及びEL 300質量部
【0115】
(3−2)ドライリソグラフィー
リソグラフィー用組成物を、4インチシリコンウエハー上に回転塗布し、ホットプレート上で100℃、90秒間プリベーク(PAB)して、厚さ350nmの薄膜を形成した。ArFエキシマレーザー露光装置(リソテックジャパン製VUVES−4500)を用い、露光量を変えて10mm×10mm□の18ショットを露光した。次いで120℃、90秒間ポストベーク(PEB)した後、レジスト現像アナライザー(リソテックジャパン製RDA−800)を用い、23℃にて2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で180秒間現像し、各露光量における現像中のレジスト膜厚の経時変化を測定した。
【0116】
(3−3)模擬液浸リソグラフィー
ドライリソグラフィーと同様にして、リソグラフィー用組成物を、4インチシリコンウエハー上に回転塗布し、プリベーク(PAB)して、厚さ350nmの薄膜を形成した。このウエハーを、超純水を張ったバットに30秒間漬けた後、取り出して乾燥空気を吹き付け、水滴を振り切った。次いで、ArFエキシマレーザー露光装置(リソテックジャパン製VUVES−4500)を用い、露光量を変えて10mm×10mm□の18ショットを露光した。露光後のウエハーを、超純水を張ったバットに30秒間漬け、取り出して乾燥空気を吹き付け、水滴を振り切った。以下、ドライリソグラフィーと同様にして、ポストベーク(PEB)を行い、レジスト現像アナライザー(リソテックジャパン製RDA−800)を用いて現像し、各露光量における現像中のレジスト膜厚の経時変化を測定した。
【0117】
(3−4)解析
得られたデータを基に、露光量(mJ/cm)の対数と、初期膜厚に対する60秒間現像した時点での残存膜厚率(以下、残膜率という)(%)をプロットした曲線(以下、露光量−残膜率曲線という)を作成し、Eth(残膜率0%とするための必要露光量であり、感度を表す。)とγ値(露光量−残膜率曲線の接線の傾きであり、現像コントラストを表す。)を以下の通り求めた。
Eth:露光量−残膜率曲線が残膜率0%と交わる露光量(mJ/cm
γ 値:露光量−残膜率曲線の残膜率50%における露光量をE50(mJ/cm)、露光量−残膜率曲線のE50における接線が、残膜率100%の線及び残膜率0%の線と交わる露光量をそれぞれE100及びEとして、以下の計算式で求めた。
γ=1/{log(E/E100)}
【0118】
(4)酸価の測定
単量体25質量%を含む酢酸エチル溶液4g、若しくは、共重合体25質量%を含むPGMEA溶液4gを秤量し、20gのテトラヒドロフランを加えて溶解させた。指示薬
として、ブロモチモールブルーを1質量%含むメタノール溶液を0.05g加え、更に水0.5gを加え黄色溶液とした。この溶液を撹拌しながら、あらかじめ調製した0.025mol/L濃度のNaOH水溶液で滴定し、緑からわずかに青みが出た色調をもって終点とした。酸価の計算は次の通り行った。
{酸価(mmol/g)}=(CNaOH×VNaOH)/(Wszmp×Cpoly
ここで各記号の意味は以下の通りとする。
NaOH:NaOH水溶液中のNaOH濃度(mol/L)
NaOH:NaOH水溶液の滴定量(mL)
szmp:測定試料の秤量(g)
poly:試料に含まれる共重合体の濃度(質量%)
尚、滴定は5回実施し、平均と3σを求めた。
【0119】
合成例1−1
市販の単量体G{大阪有機化学製ロット1(以下、市販単量体Gという。)}1.2kgを酢酸エチル3.6kgに溶解して得た溶液を、撹拌しながら20〜25℃に保った水4.8kgに投入し、更に15分間撹拌した後、30分間静置した。水相を除去した後、Nガスを吹き込みながら、減圧下で加熱して軽質分を留去し、精製単量体Gを得た。精製単量体の酸価は定量下限(0.002mmol/g)以下であった。
【0120】
合成例1−2
市販単量体Gの替わりに、市販単量体G(大阪有機化学製ロット2)を用いた以外は合成例1−1と同様にして、精製単量体Gを得た。精製単量体の酸価は定量下限(0.002mmol/g)以下であった。
【0121】
合成例2−1
市販単量体Gの替わりに、市販の単量体Ma{ENF製ロット1(以下、市販単量体Maという。)}を用いた以外は合成例1−1と同様にして、精製単量体Maを得た。精製単量体の酸価は定量下限(0.002mmol/g)以下であった。
【0122】
合成例2−2
市販単量体Maの替わりに、市販単量体Ma(ENF製ロット2)を用いた以外は合成例2−1と同様にして、精製単量体Maを得た。精製単量体の酸価は定量下限(0.002mmol/g)以下であった。
【0123】
合成例3−1
市販の単量体Oa{出光興産製ロット1(以下、市販単量体Oaという。)}1.0kgを酢酸エチル3.0kgに溶解して得た溶液を、撹拌しながら20〜25℃に保った水4.0kgに投入し、更に15分間撹拌した後、30分間静置した。水相を除去した後、減圧下で加熱して軽質分を留去し、溶液を濃縮した。次いでヘキサン5.0kgを加えて固形分を析出させた後、固形分をろ別して回収し、減圧下で乾燥させて、精製単量体Oaを得た。精製単量体の酸価は定量下限(0.002mmol/g)以下であった。
【0124】
合成例3−2
市販単量体Oaの替わりに、市販単量体Oa(出光興産製ロット2)を用いた以外は合成例3−1と同様にして、精製単量体Oaを得た。精製単量体の酸価は定量下限(0.002mmol/g)以下であった。
【0125】
合成例3−3
市販単量体Oa1.0kgを酢酸エチル3.0kgに溶解した。このOa溶液を、
オルガノ製イオン交換樹脂アンバーリストEG−290{本文中(E1)の置換基含有アニオン交換樹脂と、スルホン酸基含有カチオン交換樹脂の1:1混合品}470gを充填し、メタノール2.4kgを通液し、次いで酢酸エチル2.4kgを通液して洗浄した、直径5cm、層高30cmのイオン交換層に、20〜25℃に保ちながら、LHSV=5/hrで通液した。通液後の溶液を減圧下で加熱し、軽質分を留去して溶液を濃縮した。次いでヘキサン5.0kgを加えて、固形分を析出させた後、固形分をろ別して回収し、減圧下で乾燥して、精製単量体Oaを得た。精製単量体の酸価は定量下限(0.002mmol/g)以下であった。
【0126】
実施例1
容器にMEK3.1kg、合成例1で得られた精製単量体G0.7kg、合成例2で得られた精製単量体Ma1.0kg、合成例3で得られた精製単量体Oa0.5kgを溶解させ、均一な「単量体溶液」を調製した。別の容器に、MEK0.2kg、MAIB0.07kgを溶解させ、均一な「開始剤溶液」を調製した。又、攪拌機と冷却器を備え付けた重合槽にMEK1.8kgを仕込んで窒素雰囲気とした。重合槽内のMEKを79℃に加熱した後、25〜30℃に保った単量体溶液と開始剤溶液を、それぞれ別々に、定量ポンプを用い、一定速度で4時間かけて79〜81℃に保った重合槽内に滴下して重合させた。滴下終了後、更に80〜81℃に保ったまま2時間熟成させた後、室温まで冷却した。
【0127】
攪拌機を備え付けた精製槽にヘキサン22kg投入し、撹拌しながら15℃まで冷却し、その状態を維持した。ここに、重合液を滴下して共重合体を析出させ、更に30分間撹拌した後、ウエットケーキをろ過した。このウエットケーキを容器に戻して、ヘキサン12kg、MEK3kgを投入し、30分間撹拌して洗浄し、ろ過した。このウエットケーキの洗浄をもう一度繰り返した。得られたウエットケーキから数g抜き取り、60℃以下で1時間減圧乾燥して乾燥粉体とし、13C−NMRとGPCを用いて、共重合体のG、Ma、Oaの各繰り返し単位組成比、Mw、Mw/Mnを求めた。結果を表1に記した。
【0128】
残りのウエットケーキは、MEKに溶解させ、撹拌しながら減圧下で加熱して、MEK等の軽質分を一部留去させた後、PGMEAを投入しながら、更に軽質分とPGMEAの一部を留去させ、共重合体を25質量%含むPGMEA溶液を得た。得られたPGMEA溶液中の共重合体の酸価を測定した。次いで、前記した方法でリソグラフィー用組成物を調製し、Eth、γ値を測定した。結果を表1にまとめた。
【0129】
実施例2
精製単量体G、精製単量体Ma、精製単量体Oaの替わりに、それぞれ精製単量体G、精製単量体Ma、精製単量体Oaを用いた以外は、実施例1と同様にして共重合体及びリソグラフィー用組成物を得た。共重合体のG、Ma、Oaの各繰り返し単位組成比、Mw、Mw/Mn、酸価と、リソグラフィー用組成物のEth、γ値を表1にまとめた。
【0130】
実施例3
精製単量体Oaの替わりに、精製単量体Oaを用いた以外は、実施例1と同様にして共重合体及びリソグラフィー用組成物を得た。共重合体のG、Ma、Oaの各繰り返し単位組成比、Mw、Mw/Mn、酸価と、リソグラフィー用組成物のEth、γ値を表1にまとめた。
【0131】
比較例1
精製単量体G、精製単量体M、精製単量体Oaの替わりに、それぞれ市販の単量体G、市販の単量体M、市販の単量体Oaを用いた以外は、実施例1と同様にして
共重合体及びリソグラフィー用組成物を得た。共重合体のG、Ma、Oaの各繰り返し単位組成比、Mw、Mw/Mn、酸価と、リソグラフィー用組成物のEth、γ値を表1にまとめた。
【0132】
比較例2
精製単量体G、精製単量体M、精製単量体Oaの替わりに、それぞれ市販の単量体G、市販の単量体M、市販の単量体Oaを用いた以外は、実施例1と同様にして共重合体及びリソグラフィー用組成物を得た。共重合体のG、Ma、Oaの各繰り返し単位組成比、Mw、Mw/Mn、酸価と、リソグラフィー用組成物のEth、γ値を表1にまとめた。
【0133】
【表1】

【0134】
本発明により製造された共重合体を含むリソグラフィー組成物を用い、ArF露光によるドライ及び液浸条件でのリソグラフィー特性を評価したところ、いずれのリソグラフィー条件でも、ブロモチモールブルーを指示薬とし、NaOH水溶液で滴定して求めた酸価が0.01mmol/g以下である共重合体を用いることにより、解像コントラストを表すパラメータであるγ値が高い結果が得られた。この結果から、本発明により製造された共重合体を含むリソグラフィー用組成物は、微細パターンの解像性能に優れることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、酸解離性溶解抑制基でアルカリ可溶性基を保護した構造を有する繰り返し
単位(A)、ラクトン構造を有する繰り返し単位(B)、及び、アルコール性水酸基を有する繰り返し単位(C)を含む共重合体の製造方法であって、繰り返し単位(A)を与える単量体、繰り返し単位(B)を与える単量体、及び、繰り返し単位(C)を与える単量体から選ばれる少なくとも一種類以上を、有機溶媒に溶解した状態で水と接触させ、分液する工程を経た後、共重合に供することにより、得られた共重合体を溶媒に溶解した後、ブロモチモールブルーを指示薬として、水酸化アルカリ金属含有溶液で中和滴定する方法で求めた酸価を、0.01mmol/g以下とすることを特徴とする半導体リソグラフィー用共重合体の製造方法。
【請求項2】
少なくとも、酸解離性溶解抑制基でアルカリ可溶性基を保護した構造を有する繰り返し単位(A)、ラクトン構造を有する繰り返し単位(B)、及び、アルコール性水酸基を有する繰り返し単位(C)を含む共重合体の製造方法であって、繰り返し単位(A)を与える単量体、繰り返し単位(B)を与える単量体、及び、繰り返し単位(C)を与える単量体から選ばれる少なくとも一種類以上を、有機溶媒に溶解した状態でイオン交換樹脂と接触させる工程を経た後、共重合に供することにより、得られた共重合体を溶媒に溶解した後、ブロモチモールブルーを指示薬として、水酸化アルカリ金属含有溶液で中和滴定する方法で求めた酸価を、0.01mmol/g以下とすることを特徴とする半導体リソグラフィー用共重合体の製造方法。
【請求項3】
繰り返し単位(A)の酸解離性溶解抑制基が、式(L1)
【化1】

{式(L1)中、oは酸解離性溶解抑制基としての結合部位を、R13及びR14はそれぞれ独立して炭素数1〜4の炭化水素基を、R15は炭素数1〜12の炭化水素基を表し、R15はR13又はR14と結合して環を形成しても良い。}
若しくは式(L2)
【化2】


{式(L2)中、oは酸解離性溶解抑制基としての結合部位を、R16及びR17はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基を、R18は炭素数1〜12の炭化水素基を表し、R16はR17又はR18と結合して環を形成しても良い。}
で表される構造から選ばれる請求項1又は2に記載の半導体リソグラフィー用共重合体の製造方法。
【請求項4】
繰り返し単位(A)が、式(A)
【化3】

{式(A)中、R10は水素原子、若しくは、フッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を、R11は酸素原子若しくは硫黄原子を含んでも良い炭素数6〜12の脂環式炭化水素基を、nは0又は1の整数を、R12は式(L1)若しくは(L2)で表される酸解離性溶解抑制基を表す。}
で表される構造である請求項1又は2に記載の半導体リソグラフィー用共重合体の製造方法。
【請求項5】
繰り返し単位(B)が、式(B)
【化4】

[式(B)中、R20は水素原子、若しくは、フッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を、R21は単結合、又は、酸素原子若しくは硫黄原子含んでも良い炭素数5〜12の脂環式炭化水素基を、Lは式(L3)
【化5】

{式(L3)中、R22〜R29は、いずれか1つ又は2つがR21と結合する単結合であり、残りは水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基若しくはアルコキシ基を表し、mは0又は1の整数を表す。}で表されるラクトン構造を表し、LはR21と1又は2の単結合で結合している。]
で表される構造である請求項1又は2に記載の半導体リソグラフィー用共重合体の製造方法。
【請求項6】
繰り返し単位(C)が、式(C)
【化6】


{式(C)中、R33は水素原子、若しくは、フッ素原子が置換しても良い炭素数1〜4の炭化水素基を、R34〜R36はそれぞれ独立して水素原子若しくは水酸基を表し、R34〜R36の内、少なくとも一つ以上が水酸基である。}
で表される構造である請求項1又は2に記載の半導体リソグラフィー用共重合体の製造方法。

【公開番号】特開2010−209338(P2010−209338A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95217(P2010−95217)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【分割の表示】特願2006−287353(P2006−287353)の分割
【原出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【出願人】(000157603)丸善石油化学株式会社 (84)
【Fターム(参考)】