説明

半導体レーザ素子及びその製造方法

【課題】無秩序化領域を設けた構造であっても安定した発光特性とできる半導体レーザ素子及び半導体レーザ素子の製造方法を提供する。
【解決手段】一対の共振器面を有する半導体レーザ素子は、一対の共振器面に接するn型クラッド層3と、n型クラッド層3上に形成され、一対の共振器面に接するMQW活性層4と、MQW活性層4上に形成され、一対の共振器面に接する第1p型クラッド層5と、第1p型クラッド層5上に形成され、一対の共振器面に接するp型MQB層6と、p型MQB層6上に形成され、一対の共振器面に接するp型のリッジ部20とを備え、一対の共振器面それぞれにおいて、リッジ部20及びその直下のn型クラッド層3の途中に至るまでの領域のみが無秩序化領域30とされて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザ素子及びその製造方法、特に、エアリッジ構造を有する半導体レーザ素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、化合物半導体レーザを高い光出力で動作させた場合に、出射端面(レーザの端面)に光学的損傷(Catastrophic Optical Damage :COD)を生じ、レーザが破壊されることが知られている。これは、レーザ端面の活性層のバンドギャップが発熱により小さくなり、より光を吸収し、さらに発熱するということが繰り返されることによって生じる。
【0003】
この問題に対する技術としては、例えば下記の特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載された化合物半導体レーザは、静電気などから生ずるCODを防止するため、レーザ端面に設けられた光反射するミラーの内側に、窓構造と呼ばれる拡散による無秩序化領域を設けて、光吸収によるダメージを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−029621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、化合物半導体レーザとしては、エアリッジ構造を有する半導体レーザ素子が知られている。このエアリッジ構造を有する半導体レーザ素子は、共振器として凸状のエアリッジ構造を設けることによって放熱効率を高め、耐熱性を高めている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された化合物半導体レーザは、無秩序化された窓構造内ではZnの熱拡散により、エッチングストッパ層であるMQB(multi-quantum barriers:多重量子障壁)層も無秩序化されて、薬液に対するエッチング耐性が低下する。これにより、上述のエアリッジ構造を作成するときに、活性層に隣接するクラッド層にまでエッチングが達する場合がある。このように、化合物半導体レーザ素子によって製造バラツキが生じ、化合物半導体レーザによって横方向のレーザ光放射角にバラツキが生まれる。このため、発光特性の揃った化合物半導体レーザ素子を安定して生産できない問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上述した実情に鑑みて提案されたものであり、無秩序化領域を設けた構造であっても安定した発光特性とできる半導体レーザ素子及び半導体レーザ素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決する第1の発明に係る半導体レーザ素子は、一対の共振器面を有する半導体レーザ素子であって、前記一対の共振器面に接する第1導電型の第1クラッド層(3)と、前記第1クラッド層(3)上に形成され、前記一対の共振器面に接する活性層(4)と、前記活性層(4)上に形成され、前記一対の共振器面に接する第2導電型の第2クラッド層(5)と、前記第2クラッド層(5)上に形成され、前記一対の共振器面に接する第2導電型のエッチングストッパ層(6)と、前記エッチングストッパ層(6)上に形成され、前記一対の共振器面に接する第2導電型のリッジ部(20)と、を備え、前記一対の共振器面それぞれにおいて、前記リッジ部(20)及びその直下の第1クラッド層(3)の途中に至るまでの領域のみが無秩序化領域(30)とされて構成されていることを特徴とする。
【0009】
上記の課題を解決する第2の発明に係る半導体レーザ素子の製造方法は、一対の共振器面を有する半導体レーザ素子を製造する半導体レーザ素子の製造方法であって、第1導電型の半導体基板(2)上に第1導電型の第1クラッド層(3)、活性層(4)、第2導電型の第2クラッド層(5)、第2導電型のエッチングストッパ層(6)、第2導電型の第3クラッド層(9)、及び第2導電型のキャップ層(11)を順次成膜する成膜工程と、前記成膜工程の後に、前記一対の共振器面に対応する所定の領域における前記キャップ層(11)をエッチングして前記キャップ層(11)に段差部(31)を形成する段差部形成工程と、前記段差部形成工程の後に、前記段差部(31)に前記活性層(4)を無秩序化するための拡散材料を含む拡散部(12a、32)を形成する拡散部形成工程と、
前記拡散部形成工程の後に、前記キャップ層(11)上に前記一対の共振器面を連結するように短冊状のエッチングマスク(14)を形成し、前記エッチングマスク(14)が形成されていない領域の前記拡散部(12a、32)、前記キャップ層(11)、及び前記第3クラッド層(9)をエッチングしてリッジ部(20)を形成するリッジ部形成工程と、前記リッジ部形成工程の後に、前記拡散部(12a、32)中の前記拡散材料を前記リッジ部(20)及び前記リッジ部(20)の直下の前記第1クラッド層(3)の途中に至るまでの領域に拡散させて前記拡散材料が拡散した領域を無秩序化する無秩序化工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リッジ部の直下の領域のみを無秩序化しているので、無秩序化領域を設けた構造であっても素子毎の特性のばらつきが低減され、安定した発光特性を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態として示すエアリッジ型半導体レーザ素子の斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態として示すエアリッジ型半導体レーザ素子の製造工程において、n型基板上、n型クラッド層、MQW活性層、第1p型クラッド層、p型MQB層、第2p型クラッド層、p型障壁緩和層、p型キャップ層を成膜した状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態として示すエアリッジ型半導体レーザ素子の製造工程において、p型キャップ層のエッチング部分のみのZnO膜を残した状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態として示すエアリッジ型半導体レーザ素子の製造工程において、p型キャップ層のエッチング部分のみのZnO膜を残した状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態として示すエアリッジ型半導体レーザ素子の製造工程において、エアリッジ構造部となる幅方向部分のみに、SiO膜及びレジストを形成した状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態として示すエアリッジ型半導体レーザ素子の製造工程において、窓構造部となる部分以外のZnO膜を除去した状態を示す斜視図である。
【図7】本発明の一実施形態として示すエアリッジ型半導体レーザ素子の製造工程において、前端部に段差を有する残りのp型キャップ層を除去した状態を示す斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態として示すエアリッジ型半導体レーザ素子の製造工程において、エッチング部となるべき部分におけるp型障壁緩和層及び第2p型クラッド層を除去した状態を示す斜視図である。
【図9】本発明の一実施形態として示すエアリッジ型半導体レーザ素子の製造工程において、上面の全体に、SiO膜を形成した状態を示す斜視図である。
【図10】本発明の一実施形態として示すエアリッジ型半導体レーザ素子の製造工程において、ZnO膜からリッジ部の直下部分にのみ、無秩序化領域を拡散させた状態を示す斜視図である。
【図11】本発明の一実施形態として示すエアリッジ型半導体レーザ素子の製造工程において、SiO膜及びZnO膜を除去した状態を示す斜視図である。
【図12】本発明の一実施形態として示すエアリッジ型半導体レーザ素子の製造工程において、SiO膜及びエッチング部に相当する箇所の第2p型クラッド層上に残存させていた第2p型クラッド層を除去した状態を示す斜視図である。
【図13】本発明の一実施形態として示すエアリッジ型半導体レーザ素子の製造工程において、エアリッジ構造部となる相当する一部分及びエッチング部となる箇所に、SiN膜を形成した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0013】
本発明を適用した、エアリッジ構造を有する半導体レーザ素子は、例えば図1に示すように構成される。エアリッジ構造を有する半導体レーザ素子は、n型基板2の裏面にn側電極1が形成され、n型基板2上に、n型クラッド層3、MQW(multi-quantum well:多重量子井戸)活性層4、第1p型クラッド層5、及び、p型MQB(multi-quantum barriers:多重量子障壁)層6が順次積層されている。
【0014】
p型MQB層6上には、第2p型クラッド層9、p型障壁緩和層10、及び、後述するp型キャップ層11が順次積層されたリッジ部20が形成されている。リッジ部20は図1における紙面右奥方向に向かって延在する略直方体形状を有している。
【0015】
p型MQB層6の上面及びリッジ部20の側面はSiN膜7で覆われている。
【0016】
SiN膜7におけるリッジ部20の上面には開口部が形成されており、リッジ部20上に形成されているp側電極8は上記開口部を介してリッジ部20のp型キャップ層11とオーミックコンタクトしている。
【0017】
各層は例えばMO−CVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition;有機金属気相成長法)によって形成することができる。
【0018】
図1に示すエアリッジ構造を有する半導体レーザ素子は、紙面手前側の面が一方の共振器面であり、紙面奥側の面(図示せず)が他方の共振器面である。MQW活性層4で発生したレーザ光は一対の共振器面間で反射を繰り返すことによって波長が整えられて閾値以上の電流がこの半導体レーザ素子に流されたときに、少なくとも一方の共振器面(例えば図1における手前側の共振器面)からコヒーレント光であるレーザ光が出射される。
【0019】
このエアリッジ構造を有する半導体レーザ素子は、図1の網掛け部で示すように、各共振器面におけるリッジ部20及びその直下の領域のみに窓構造部30が形成されている(図1では紙面手前側の窓構造部30のみを表示している)。そのため、p型MQB層6は、リッジ部20及びその直下の領域のみ無秩序化されており、それ以外の領域であるエッチング部21は無秩序化されていないので、エッチングストッパ層として機能する。
【0020】
n型基板2は、例えば、n型のGaAs基板である。n型基板2上には、n型クラッド層3(第1クラッド層)が形成されている。n型クラッド層3は、n型(第1導電型)半導体である。n型クラッド層3は、n型基板2上にGaAsのバッファ層を形成し、AlGaInP層にSiドーピングして形成される。このn型クラッド層3は、一対の共振器面に接している。このn型クラッド層3は、例えば2800nmの膜厚で形成されている。
【0021】
n型クラッド層3上には、一対の共振器面に接するMQW活性層4が形成されている。MQW活性層4は、AlGaInP層とGaInP層とを交互に多層に形成されてなる。このMQW活性層4は、例えばトータルで100nmの膜厚で形成されている。
【0022】
MQW活性層4上には、一対の共振器面に接する第1p型クラッド層5(第2クラッド層)が形成されている。第1p型クラッド層5は、p型(第2導電型)半導体である。第1p型クラッド層5は、AlGaInP層にMgやZnをドーピングして形成される。第1p型クラッド層5は、例えば170nmの膜厚で形成されている。
【0023】
第1p型クラッド層5上には、一対の共振器面に接しエッチングストッパ層としてのp型MQB層6が形成される。p型MQB層6は、エッチング部21を形成するに際して、エッチング深度が第1p型クラッド層5にまで及ばないようエッチングストッパ層として機能する。p型MQB層6は、GaInP層とAlGaInP層とを交互に多層に形成されており、MgやZnをドーピングして形成される。p型MQB層6は、例えばトータルで34nmの膜厚で形成されている。
【0024】
リッジ部20においては、p型MQB層6上に一対の共振器面に接する第2p型クラッド層9(第3クラッド層)が形成されている。第2p型クラッド層9は、p型(第2導電型)半導体である。第2p型クラッド層9は、AlGaInP層にMgやZnをドーピングして形成される。第2p型クラッド層9は、例えば1250nmの膜厚で形成されている。
【0025】
第2p型クラッド層9上には、p型障壁緩和層10が形成されている。p型障壁緩和層10は、GaInP層にZnをドーピングして形成される。p型障壁緩和層10は、例えば40nmの膜厚で形成されている。
【0026】
エッチング部21におけるp型MQB層6の上面及びリッジ部20の側面には、SiN膜7が形成されている。
【0027】
リッジ部20上には、SiN膜7の開口部を介してp型キャップ層11にオーミックコンタクトするp側電極8が形成されている。
【0028】
この半導体レーザ素子は、一対の共振器面それぞれにおいて、リッジ部20及びその直下のn型クラッド層3の途中に至るまでの領域のみが無秩序化領域とされて構成されている。
【0029】
つぎに、上述したエアリッジ構造を有し一対の共振器面を有する半導体レーザ素子の製造方法について説明する。
【0030】
先ず、図2に示すように、n型基板2上に、n型クラッド層3、MQW活性層4、第1p型クラッド層5、p型MQB層6、第2p型クラッド層9、p型障壁緩和層10、p型キャップ層11の順で成膜する(成膜工程)。
【0031】
次に、図3に示すように、p型キャップ層11上に、図中前面(後面も同様)におけるp型キャップ層11の前端部に相当する領域(後端部に相当する領域も同様)を残してレジスト13を形成する。その後、レジスト13で覆われていない領域のp型キャップ層11を所定の深さまでエッチングして、段差部31を形成する(段差部形成工程)。
【0032】
さらに、p型キャップ層11上及びレジスト13上にZnOを成膜する。ZnOはレジスト13の段差によってp型キャップ層11の段差部31(エッチング領域)に形成されたZnO膜12aと、レジスト13上に形成されたZnO膜12bと、に分断されて成膜される。このZnO膜は、上述の窓構造部30を形成するための拡散材料である。このZnO膜12aは、例えば55nmの膜厚で形成される。
【0033】
次に、図4に示すように、ZnO膜12bをレジスト13と共に剥離(リフトオフ)する。これによって、p型キャップ層11の段差部31(エッチング領域)のみのZnO膜12a(拡散部32)が残る(拡散部形成工程)。
【0034】
次に、図5及び図6に示すように、p型キャップ層11上及びZnO膜12a上にSiO膜14を成膜する。さらに、SiO膜14上におけるリッジ部20に相当する領域にレジスト15を形成する。その後、レジスト15をエッチングマスクとして露出した領域のSiO膜14及びZnO膜12aを一度にエッチングして除去する。これにより、窓構造部30に対応する領域のみにZnO膜12aが残る。
【0035】
次に、図7に示すように、レジスト15を除去した後には、SiO膜14は、p型キャップ層11上に形成され、一対の共振器面を連結する短冊状のエッチングマスクとなり、このようなストライプパターン形状を有するSiO膜14をエッチングマスクとして、露出した領域のp型キャップ層11をエッチングして除去する。p型キャップ層11をエッチングする際、p型障壁緩和層10に対するエッチング速度よりもp型キャップ層11に対するエッチング速度が極めて速いエッチャントを用いることにより、p型障壁緩和層10がエッチングストッパ層と機能するため、p型キャップ層11内における段差の影響を吸収することができるので、p型キャップ層11の部分的なエッチング残りの発生をなくすことができる。
【0036】
次に、図8に示すように、上記SiO膜14をエッチングマスクとして、ドライエッチングによってp型障壁緩和層10を除去すると共に、第2p型クラッド層9を所定の厚さだけ残して除去する(リッジ部形成工程)。例えば、p型MQB層6上における第2p型クラッド層9aの残り厚は100nmである。
【0037】
次に、図9に示すように、上面の全体に、SiO膜16を形成する。
【0038】
次に、図10に示すように、加熱温度及び加熱時間を制御して、ZnO膜12a中のZnをリッジ部20及びその直下の領域(n型クラッド層3の途中までの領域)に拡散させ、リッジ部20直下の領域のMQW活性層4を無秩序化させる。Znが拡散した無秩序化領域17は前述の窓構造部30となる(無秩序化工程)。
【0039】
次に、図11に示すように、SiO膜16、SiO膜14及びZnO膜12aを除去する。
【0040】
次に、図12に示すように、p型キャップ層11をエッチングマスクとしてp型MQB層6上に残存している第2p型クラッド層9aを除去する。第2p型クラッド層9aをエッチングする際、p型キャップ層11に対するエッチング速度よりも第2p型クラッド層9aに対するエッチング速度が極めて速いエッチャントを用いることにより、p型キャップ層11がエッチングマスクとして機能するため、第2p型クラッド層9aのみを選択的に除去することができる。
【0041】
次に、図13に示すように、リッジ部20を覆うようにp型MQB層6上にSiN膜7を形成する。さらに、SiN膜7に、リッジ部20のp型キャップ層11において無秩序化されていない領域を露出させる開口部をエッチングにて形成する。
【0042】
なお、図13は、図12に示した状態で共振器面(各図における手前)に接する無秩序化されたp型キャップ層11がエッチングにより除去され、共振器面から奥の無秩序化されていないp型キャップ層11が残存した状態で、SiN膜7を形成し、開口部を設けた後の状態を示している。そのため、図13には、p型キャップ層11が現れていない。
【0043】
その後、リッジ部20上及びSiN膜7上にp型キャップ層11と接触するp側電極8を形成し、n型基板2の下面にn側電極1を形成する。即ち、p型キャップ層11は、無秩序化された領域がSiN膜7で覆われており、無秩序化されていない領域が上記開口部を介してp側電極8と接触している。
【0044】
さらに所定の熱処理を行うことによってp側電極8とリッジ部20のp型キャップ層11とがオーミックコンタクトし、n側電極1とn型基板2とがオーミックコンタクトする。
【0045】
上述したエアリッジ構造を有する半導体レーザ素子の製造方法によれば、リッジ部20及びその直下の領域のみが無秩序化領域である窓構造部30とされて構成することができる。
【0046】
すなわち、このエアリッジ構造を有する半導体レーザ素子によれば、p型キャップ層11を第2p型クラッド層9に至る途中まで除去し、拡散材料としてのZnO膜12を埋め込む。その後、エアリッジ構造部20となる部分のZnO膜12を残し、エッチング部21となる部分のZnO膜12を除去した後に、ZnO膜12中のZnを拡散させる。これによって、Znをリッジ部20及びその直下の領域のみ拡散させ、エッチング部21に相当する部分の直下には拡散させない。したがって、p型MQB層6を無秩序化させることなく、薬液に対してエッチング選択比が低下することがない。したがって、その後にウェットエッチングによって第2p型クラッド層9を取り除いても、MQW活性層4に隣接する第1p型クラッド層5にまでエッチングが達することを防止し、製造バラツキが生じることがない。
【0047】
以上より、このエアリッジ構造を有する半導体レーザ素子によれば、無秩序化領域を設けた構造であっても安定した発光特性を実現できる。
【0048】
以上、図1〜図13を用いて一方の共振器面(各図における手前の面)について説明してきたが、他方の共振器面(各図における奥側の面:図示せず)についても同様である。
【0049】
なお、上述の実施の形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0050】
1 n側電極
2 n型基板
3 n型クラッド層
4 MQW活性層
5 第1p型クラッド層
6 p型MQB層
7 SiN膜
8 p側電極
9 第2p型クラッド層
10 p型障壁緩和層
11 p型キャップ層
12 ZnO膜
13 レジスト
14 SiO
15 レジスト
16 SiO
17 無秩序化領域
20 リッジ部
21 エッチング部
30 窓構造部
31 段差部
32 拡散部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の共振器面を有する半導体レーザ素子であって、
前記一対の共振器面に接する第1導電型の第1クラッド層と、
前記第1クラッド層上に形成され、前記一対の共振器面に接する活性層と、
前記活性層上に形成され、前記一対の共振器面に接する第2導電型の第2クラッド層と、
前記第2クラッド層上に形成され、前記一対の共振器面に接する第2導電型のエッチングストッパ層と、
前記エッチングストッパ層上に形成され、前記一対の共振器面に接する第2導電型のリッジ部と、
を備え、
前記一対の共振器面それぞれにおいて、前記リッジ部及びその直下の第1クラッド層の途中に至るまでの領域のみが無秩序化領域とされて構成されていることを特徴とする半導体レーザ素子。
【請求項2】
一対の共振器面を有する半導体レーザ素子を製造する半導体レーザ素子の製造方法であって、
第1導電型の半導体基板上に第1導電型の第1クラッド層、活性層、第2導電型の第2クラッド層、第2導電型のエッチングストッパ層、第2導電型の第3クラッド層、及び第2導電型のキャップ層を順次成膜する成膜工程と、
前記成膜工程の後に、前記一対の共振器面に対応する所定の領域における前記キャップ層をエッチングして前記キャップ層に段差部を形成する段差部形成工程と、
前記段差部形成工程の後に、前記段差部に前記活性層を無秩序化するための拡散材料を含む拡散部を形成する拡散部形成工程と、
前記拡散部形成工程の後に、前記キャップ層上に前記一対の共振器面を連結するように短冊状のエッチングマスクを形成し、前記エッチングマスクが形成されていない領域の前記拡散部、前記キャップ層、及び前記第3クラッド層をエッチングしてリッジ部を形成するリッジ部形成工程と、
前記リッジ部形成工程の後に、前記拡散部中の前記拡散材料を前記リッジ部及び前記リッジ部の直下の前記第1クラッド層の途中に至るまでの領域に拡散させて前記拡散材料が拡散した領域を無秩序化する無秩序化工程と、
を含むことを特徴とする半導体レーザ素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−222037(P2012−222037A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83693(P2011−83693)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】