説明

半導体基板、半導体装置及びその製造方法

【課題】異種材料の基板上に形成した平坦かつ薄い半導体基板であって、異種材料の基板からの剥離が容易な半導体基板、半導体装置及びそれらの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明によると、第1の面に所定の間隔で配置した複数の半球状の凸部を有する基板と、前記基板の第1の面に形成した第1の半導体層と、を有することを特徴とする半導体基板が提供される。また、前記複数の半球状の凸部の表面積の合計と前記第1の面との比は1以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板、半導体装置及びそれらの製造方法に関する。特に、サファイア基板からの窒化ガリウム層のリフトオフ方法に関し、そのリフトオフ方法を適用する半導体基板、半導体装置及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム(GaN)系半導体を用いた発光ダイオード(以下、LEDという)は、信号機や液晶パネルのバックライト等の様々な機器に利用されている。
【0003】
窒化ガリウム(GaN)基板の製造は非常に困難でありコストも高いため、LEDやレーザダイオード等の半導体デバイスは、サファイア等の異種基板上でGaN層を成長させて製造される場合が多い。非特許文献1では、石英基板上、W、Mo、Ta、及びNbの高融点金属基板上、及びSi基板上のそれぞれに、プラズマ分子線エピタキシ(plasma assisted molecular beam epitaxy)を用いてGaNを結晶成長させる例を示している。
【0004】
しかし、GaN層と基板との間の格子不整合及び熱膨張係数のミスマッチが発生し、高転位密度や欠陥の増大をもたらし、LEDの発光性能の向上を妨げている。GaN基板用に成長させたGaNバルク結晶をGaN基板として剥離するため、機械研磨やレーザ剥離等が用いられているが、実用的なサイズのGaN基板を再現良く得ることは非常に困難であった。さらに、サファイア基板は、GaN基板に比べて熱伝導率が低く、デバイスの熱放熱性を低下させる。さらに、サファイア基板に薄いGaN層を形成した場合、サファイア基板からGaN層を剥離するのは極めて困難であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】“Polycrystalline GaN for light emitter and field electron emitter applications” S. Hasegawa, S. Nishida, T. Yamashita, H. Asahi, Thin Solid Films 487 (2005) 260-267.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述の問題を解決するもので、異種材料の基板上に形成した平坦かつ薄い半導体基板であって、異種材料の基板からの剥離が容易な半導体基板、半導体装置及びそれらの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によると、第1の面に所定の間隔で配置した複数の半球状の凸部を有する基板と、前記基板の第1の面に形成した第1の半導体層と、を有することを特徴とする半導体基板が提供される。
【0008】
前記半導体基板において、前記複数の半球状の凸部の表面積の合計と前記第1の面との比が1以上であってもよい。
【0009】
前記半導体基板において、前記半球状の凸部の底面の幅が5μm以下であってもよい。
【0010】
前記半導体基板において、前記基板がサファイア基板であり、前記第1の半導体層が窒化ガリウム層であってもよい。
【0011】
前記半導体基板において、前記第1の半導体層の前記第1の面とは反対側の第2の面に形成した第2の半導体層と、前記第1の半導体層と前記第2の半導体層の一部に形成された所定形状のパターンを有する空洞部と、を有してもよい。
【0012】
前記半導体基板において、前記所定形状のパターンは前記所定の間隔の幅を有し、前記複数の半球状の凸部の間隔に相当する前記第1の半導体層の第2の面の位置に前記空洞部が配置されてもよい。
【0013】
前記半導体基板において、前記所定形状のパターンは第1の方向を長辺とする矩形形状を有し、前記第1の方向と直交する第2の方向に複数配置されて前記金属材料層を形成してもよい。
【0014】


【0015】
また、本発明の一実施形態によると、第1の面に所定の間隔で配置した複数の曲面形状の凹部を有する基板と、前記基板の第1の面に形成した第1の半導体層と、を有することを特徴とする半導体基板が提供される。
【0016】
前記半導体基板において、前記曲面形状の凹部の底面の幅が5μm以下であってもよい。
【0017】
前記半導体基板において、前記基板がサファイア基板であり、前記第1の半導体層が窒化ガリウム層であってもよい。
【0018】
また、本発明の一実施形態によると、基板の第1の面に所定の間隔で複数の半球状の凸部を形成し、前記基板の第1の面に第1の半導体層を形成することを特徴とする半導体基板の製造方法が提供される。
【0019】
前記半導体基板の製造方法において、前記複数の半球状の凸部を形成することは、前記基板の第1の面をエッチングすることにより行ってもよい。
【0020】
前記半導体基板の製造方法において、前記複数の半球状の凸部の表面積の合計と前記第1の面との比が1以上となるように、前記基板の第1の面に前記半球状の凸部を形成してもよい。
【0021】
前記半導体基板の製造方法において、前記半球状の凸部の底面の幅が5μm以下となるように、前記基板の第1の面に前記半球状の凸部を形成してもよい。
【0022】
前記半導体基板の製造方法において、前記第1の半導体層は、有機金属気相成長法を用いて形成してもよい。
【0023】
前記半導体基板の製造方法において、前記基板がサファイア基板であり、前記第1の半導体層が窒化ガリウム層であってもよい。
【0024】
前記半導体基板の製造方法において、形成した前記第1の半導体層を前記基板から剥離してもよい。
【0025】
前記半導体基板の製造方法において、前記第1の半導体層の前記第1の面とは反対側の第2の面に、所定形状のパターンを有する金属材料層を形成し、有機金属気相成長法を用いて前記第2の面に第2の半導体層を形成して、前記金属材料層と接する前記第1の半導体層に空洞部を形成してもよい。
【0026】
前記半導体基板の製造方法において、前記金属材料層は、タンタル、チタンまたはクロムで形成されてもよい。
【0027】
前記半導体基板の製造方法において、前記複数の半球状の凸部の間隔に相当する前記第1の半導体層の第2の面の位置に、前記所定の間隔の幅を有する前記所定形状のパターンで前記金属材料層を形成してもよい。
【0028】
前記半導体基板の製造方法において、前記所定形状のパターンは第1の方向を長辺とする矩形形状を有し、前記第1の方向と直交する第2の方向に複数配置されて前記金属材料層を形成してもよい。
【0029】


【0030】
前記半導体基板の製造方法において、前記第1の半導体層に形成された前記空洞部を利用して前記基板を剥離して、前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層から形成された半導体基板を製造してもよい。
【0031】
また、本発明の一実施形態によると、基板の第1の面に所定の間隔で複数の曲面形状の凹部を形成し、前記基板の第1の面に第1の半導体層を形成することを特徴とする半導体基板の製造方法が提供される。
【0032】
前記半導体基板の製造方法において、前記曲面形状の凹部の底面の幅が5μm以下となるように、前記基板の第1の面に前記曲面形状の凹部を形成してもよい。
【0033】
前記半導体基板の製造方法において、前記基板がサファイア基板であり、前記第1の半導体層が窒化ガリウム層であってもよい。
【0034】
前記半導体基板の製造方法において、形成した前記第1の半導体層を前記基板から剥離してもよい。
【0035】
前記半導体基板の製造方法において、レーザ・リフトオフ法を用いて、前記第1の半導体層を前記基板から剥離してもよい。
【0036】
前記半導体基板の製造方法において、機械剥離法を用いて、前記第1の半導体層を前記基板から剥離してもよい。
【0037】
また、本発明の一実施形態によると、前記の何れかの半導体基板から剥離した前記第1の半導体層と、前記第1の半導体層上に形成された第1の化合物半導体層と、前記第1の化合物半導体層上に形成された活性層と、前記第活性層上に形成された第2の化合物半導体層と、を有することを特徴とする半導体装置が提供される。
【0038】
また、本発明の一実施形態によると、前記の何れかの半導体基板から剥離した前記第2の半導体層と、前記第2の半導体層上に形成された第1の化合物半導体層と、前記第1の化合物半導体層上に形成された活性層と、前記第活性層上に形成された第2の化合物半導体層と、を有することを特徴とする半導体装置が提供される。
【0039】
また、本発明の一実施形態によると、前記の何れかの半導体基板の前記第1の半導体層から前記基板を剥離し、前記第1の半導体層上に第1の化合物半導体層を形成し、前記第1の化合物半導体層上に活性層を形成し、前記第活性層上に第2の化合物半導体層を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0040】
また、本発明の一実施形態によると、半導体基板の前記第2の半導体層から前記基板を剥離し、前記第2の半導体層上に第1の化合物半導体層を形成し、前記第1の化合物半導体層上に活性層を形成し、前記第活性層上に第2の化合物半導体層を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0041】
本発明によると、異種材料の基板上に形成した平坦かつ薄い半導体基板であって、異種材料の基板からの剥離が容易な半導体基板、半導体装置及びそれらの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態に係る積層基板100を示す模式図であり、(a)は積層基板100の上面図であり、(b)は(a)の丸で囲んだ一部分の断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る半球状の凸部11の配置パターンを説明する模式図である。
【図3A】本発明の一実施形態に係る半導体基板100の製造工程を示す模式図である。
【図3B】本発明の一実施形態に係る半導体基板100の製造工程を示す模式図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る半導体基板200の模式図であり、(a)は半導体基板200の上面図であり、(b)は(a)の破線部における半導体基板200の断面図である。
【図5A】本発明の一実施形態に係る半導体基板200の製造工程を示す模式図である。
【図5B】本発明の一実施形態に係る半導体基板200の製造工程を示す模式図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る半導体基板300の模式図であり、(a)は半導体基板300の上面図であり、(b)は(a)の破線部における半導体基板300の断面図である。
【図7A】本発明の一実施形態に係る半導体基板300の製造工程を示す模式図である。
【図7B】本発明の一実施形態に係る半導体基板300の製造工程を示す模式図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る半導体基板400の模式図であり、(a)は半導体基板400の上面図であり、(b)は(a)の破線部における半導体基板400の断面図である。
【図9A】本発明の一実施形態に係る半導体基板400の製造工程を示す模式図である。
【図9B】本発明の一実施形態に係る半導体基板400の製造工程を示す模式図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る半導体基板半導体基板500の模式図であり、(a)は半導体基板500の上面図であり、(b)は(a)の破線部における半導体基板500の断面図である。
【図11A】本発明の一実施形態に係る半導体基板500の製造工程を示す模式図である。
【図11B】本発明の一実施形態に係る半導体基板500の製造工程を示す模式図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る半導体装置1000の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下に本発明の半導体基板、半導体装置及びそれらの製造方法について、添付の図面を参照して詳細に説明する。本発明の半導体基板、半導体装置及びそれらの製造方法は、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態及び後述する実施例で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0044】
上述したように、従来は異種材料の基板上に形成した薄い半導体基板を基板上から剥離するのは困難であった。例えば、10μm程度のGaN層をサファイア基板上に形成した場合、応力のみでGaN層をサファイア基板から剥離するのは困難であり、従来は100μm程度のGaN層を形成する必要があった。本発明者らは、特定のパターンを有するサファイア基板であるPSS(Processed Sapphire Substrate)基板を用いて、有機金属気相成長法(以下、MOCVDという)によりGaN層を形成することにより、10μm程度のGaN層を形成した場合にも基板からの隔離が可能となることを見出した。
【0045】
(実施形態1)
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体基板100の模式図である。図1(a)は半導体基板100の上面図であり、図1(b)は図1(a)の破線部における半導体基板100の断面図である。半導体基板100は、PSS基板110(以下、基板110という)と第1の半導体層20とを有する。本実施形態において基板110と第1の半導体層20とは組成が異なり、第1の半導体層20としてはGaNを用いるが、本発明はこれに限定されず、LEDに適用可能な組成であれば何れであってもよい。第1の半導体層20を形成するための基板110の第1の面10aであるc面には、底面の幅wを有する複数の半球状の凸部11が所定の間隔iで配置される。ここで、間隔iは、2つの半球状の凸部11の間の最短距離を意味する。
【0046】
図2は、本実施形態に係る半球状の凸部11の配置パターンを説明する模式図である。半球状の凸部11の底面を半径がw/2の円形状としたときに、1辺の長さがw+iの正三角形の頂点に、半球状の凸部11の中心が配置される。すなわち、本実施形態に係る半球状の凸部11の配置パターンは、この3つの半球状の凸部11の配置を基板110の第1の面10aの第1の方向と、第1の方向と直交する第2の方向とに繰り返すことのより構成される。
【0047】
基板110のc面では基板110と第1の半導体層20とは結合力が大きく、剥離しにくい。一方、半球状の凸部11の曲面では、第1の半導体層20は基板110にただ載っている程度であり、基板110と第1の半導体層20との結合力は極めて小さく、剥離しやすい。したがって、本実施形態は、基板110のc面10aに、半球状の凸部11を所定の間隔iで配置することにより、基板110から第1の半導体層20を剥離しやすくするものである。ここで、半球状の凸部11の表面積と基板110のc面の面積について着目すると、本実施形態に係る基板110は、基板110のc面の面積に対する半球状の凸部11の表面積の合計の比が、1以上であることが好ましい。このような半球状の凸部11の表面積の合計と基板110のc面との比を有する基板110は、形成した第1の半導体層20を容易に剥離することができる。
【0048】
本実施形態においては、上述の比となるように、基板110のc面の面積、半球状の凸部11の底面の幅w、間隔iを任意に設定することができる。ここで、本実施形態に係る半球状の凸部11の底面の幅は、5μm以下が好ましい。半球状の凸部11の底面の幅を5μm以下にすると、基板110から第1の半導体層20が剥離しやすくなる。このような半球状の凸部11のパターンは、基材をエッチングすることにより形成することができ、例えばフォトリソグラフィを適用できる。フォトリソグラフィはパターン形成に汎用される技術であるが、精度良くパターン形成する限界は、一般に1μmであるとされている。したがって、本実施形態に係る半球状の凸部11のパターンを基板110に形成する場合、間隔iは1μm以上とすることが好ましい。例えば、図1に示した基板110において、2つの半球状の凸部11の間の間隔iを1μmとすると、半球状の凸部11の底面の幅wを3μmにすることにより、上述の比のパターンを形成することができる。
【0049】
以下に、本実施形態に係る半導体基板100の製造方法について説明する。図3A及び図3Bは、半導体基板100の製造工程を示す模式図である。基材10を準備し(図3A(a))、基材10をエッチングして、上述した半球状の凸部11のパターンを基板110のc面に形成する(図A3(b))。上述したように、本実施形態に係る基板110のパターン形成には、フォトリソグラフィを用いることができる。本実施形態に係る基板110は、基板110のc面の面積に対する半球状の凸部11の表面積の合計の比が、1以上となるように、基板110のc面10aに、半球状の凸部11を所定の間隔iで配置する。このようなパターンを配置することにより、後述する剥離工程において基板110から第1の半導体層20を剥離しやすくすることができる。
【0050】
エッチングして半球状の凸部11のパターンを形成した基板110の上面(c面)に第1の半導体層20を形成する(図3A(c))。第1の半導体層20の形成には、有機金属気相成長法(以下、MOCVDという)を適用することができる。第1の半導体層20を形成する条件は、用いる材料や形成する層の厚さにより任意に設定可能である。第1の半導体層20の形成は、第1の半導体層20の上面(第1の面である基板110のc面とは反対側の第2の面)が平坦になるまで行う。例えば、先に例示したような間隔iを1μm、半球状の凸部11の底面の幅wを3μmとして半球状の凸部11のパターンを基板110に形成する場合、第1の半導体層20は10μm程度の厚みにすると平坦化することができる。このようにして、本実施形態に係る半導体基板100を製造することができる。
【0051】
得られた半導体基板100は、基板110を容易に剥離することができる。半導体基板100の第1の半導体層20の上面に接着層180を介して、第2の基板170を貼り合わせる(図3B(d))。第2の基板170としては、例えば、シリコン(Si)基板や炭化シリコン(SiC)基板及び金属等が挙げられる。また、接着層180としては、例えば、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、金(Au)及び金と錫(Sn)の合金、及び半導体製造分野で公知の接着剤等が挙げられる。
【0052】
第2の基板170を貼り合わせた半導体基板100から、基板110を剥離する(図3B(e))。基板110から第1の半導体層20を剥離する方法としては、例えば、レーザ・リフトオフ法を用いることができる。このように製造された半導体基板101は、半球状の凸部11と接した部位で、第1の半導体層20が凹部を有する。このような凹部を第1の半導体層20に有する半導体基板101を用いて、LEDのような半導体装置を製造すると、光の取り出し効率が2倍程度となる優れた半導体装置を得ることができる。
【0053】
また、半導体基板101は、研磨法を用いて第1の半導体層20を平坦化することもできる(図3B(f))。本実施形態においては、レーザ・リフトオフ法を用いずに、機械剥離法を用いて基板110から第1の半導体層20を剥離してもよい。このようにして、平坦かつ薄い半導体基板105を得ることもできる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態によると、第1の面に所定の間隔で配置した複数の半球状の凸部を有する基板に、第1の半導体層を形成することにより、平坦かつ薄い半導体基板でありながら、基板からの剥離が容易な半導体基板を提供することができる。
【0055】
(実施形態2)
実施形態1においては、半球状の凸部を有する基板に第1の半導体層を形成する例を説明したが、本実施形態においては、第1の半導体層の上面(第1の面である基板110のc面とは反対側の第2の面)に所定形状のパターンを有する金属材料層を形成し、MOCVDを用いて第2の半導体層を形成することにより、第1の半導体層に空洞部を形成する例について説明する。本実施形態において説明する半導体基板は、第1の半導体層を10μmよりも薄く形成した場合に、基板から第1の半導体層を容易に剥離することができる。
【0056】
図4は、本発明の一実施形態に係る半導体基板200の模式図である。図4(a)は半導体基板200の上面図であり、図4(b)は図4(a)の破線部における半導体基板200の断面図である。半導体基板200は、基板210、第1の半導体層220、第2の半導体層240及び空洞部250を有する。本実施形態において基板210と第1の半導体層220とは組成が異なり、第1の半導体層220としてはGaNを用いるが、本発明はこれに限定されず、LEDに適用可能な組成であれば何れであってもよい。また、第2の半導体層240は第1の半導体層220と同じ組成であるが、異なる組成であってもよい。半導体基板100において説明したように、半導体基板200においても、第1の半導体層220を形成するための基板210の第1の面であるc面には、底面の幅wを有する複数の半球状の凸部21が所定の間隔iで配置される。
【0057】
第1の半導体層220と第2の半導体層240との半球状の凸部21を取り囲む位置に空洞部250が形成される。本実施形態において、空洞部250は、2つの半球状の凸部21の間隔iに相当する位置に形成される。図4(a)に示したように、本実施形態に係る空洞部250は、中心が半球状の凸部21の中心と一致し、ハニカム構造の断面と同様に、基板210の第1の面であるc面を充填するように配置される六角形のパターンの頂点に配置したパターンを有する。その他の構成は、半導体基板100と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0058】
以下に、本実施形態に係る半導体基板200の製造方法について説明する。図5A及び図5Bは、半導体基板200の製造工程を示す模式図である。図5A(a)〜図5A(c)の工程は半導体基板100と同様であるため、詳細な説明は省略する。形成した第1の半導体層220の上面に所定形状のパターンを有する金属材料層230を形成する(図5A(d))。金属材料層230において、円柱状の金属材料は所定の間隔iと等しい幅(底面の幅)を有する。金属材料層230には、第1の半導体層220を構成する元素と反応する金属を用いる。例えば、第1の半導体層220がGaNである場合は、タンタル、チタンまたはクロムを金属材料層230として好適に用いることができる。金属材料層230の形成には、電子ビーム蒸着(以下、EB蒸着という)及びリフトオフ法を好適に用いることができる。本実施形態において、間隔iと等しい幅(底面の幅)を有する円柱状の金属材料層230を、半球状の凸部21を取り囲むように、半球状の凸部21の間隔に相当する位置に配置する。また、金属材料層230において、底面の円の中心が六角形の頂点に配置するパターンを形成するように金属材料を配置する。
【0059】
次に、第2の半導体層240を形成する。第2の半導体層240の形成にはMOCVDを用いる。第2の半導体層240を形成する条件は、用いる材料や形成する層の厚さにより任意に設定可能である。第2の半導体層240を形成するときに、第1の半導体層220を構成する元素と金属材料層230とが反応し、金属材料層230の底面と接する第1の半導体層220の一部が分解して、空洞部250が形成される(図5A(e))。例えば、第1の半導体層220がGaNで、金属材料層230がタンタルである場合、第1の半導体層220を構成する窒素がタンタルと反応して窒化タンタル(TaN)となることによりGaNが分解して、金属材料層230の底面と接する第1の半導体層220の一部に空洞部250が形成される。このとき、第1の半導体層220の上面及び金属材料層230の側面には、第2の半導体層240が形成される。
【0060】
空洞部250が形成された後に金属材料層230を除去する。金属材料層230は、例えば、Taで形成された場合は、フッ化水素(以下、HFという)を用いたエッチングにより除去することができる。HFによるエッチングは、例えば、50%のHF水溶液に空洞部250が形成された半導体基板を浸漬することにより行うことができる。半導体基板を浸漬する時間は、例えば、24時間程度である。本実施形態においては、一例としてHFを用いたエッチングについて説明したが、金属材料層230がエッチングされ、且つ第1の半導体層220及び第2の半導体層240が溶けない溶液を用いることができる。金属材料層230を除去した後に第2の半導体層240を更に成長させて、本実施形態に係る半導体基板200を製造することができる(図5B(f))。
【0061】
得られた半導体基板200は、基板210を容易に剥離することができる。半導体基板200の第1の半導体層220の上面に接着層180を介して、第2の基板170を貼り合わせる(図5B(g))。第2の基板170及び接着層180は、実施形態1と同様であるため、詳細な説明は省略する。半導体基板200は、半球状の凸部21からは容易に外れ、空洞部250の底部付近で断裂して、基板210を容易に剥離することができる(図5B(h))。基板210から第1の半導体層220及び第2の半導体層240を剥離する方法としては、例えば、レーザ・リフトオフ法を用いることができる。このように製造された半導体基板201は、半球状の凸部21と接した部位で、第1の半導体層220が凹部を有する。このような凹部を第1の半導体層220に有する半導体基板201を用いて、LEDのような半導体装置を製造すると、光の取り出し効率が2倍程度となる優れた半導体装置を得ることができる。
【0062】
また、半導体基板201は、研磨法を用いて第1の半導体層220を平坦化することもできる(図5B(i))。本実施形態においては、レーザ・リフトオフ法を用いずに、機械剥離法を用いて基板210から第1の半導体層220を剥離してもよい。このようにして、平坦かつ薄い半導体基板205を得ることもできる。
【0063】
本実施形態において、第1の半導体層を10μmよりも薄く形成する場合には、例えば、図4に示した基板210において、底面の幅が1μmの半球状の凸部21を基板210に形成すればよい。第1の半導体層220を2μm成長させた後に、1μmの幅を有する金属材料を配置した金属材料層230を形成し、合計で第2の半導体層240を3μm成長させることにより、表面が平坦な半導体基板200を形成することができる。
【0064】
以上説明したように、本実施形態によると、第1の面に所定の間隔で配置した複数の半球状の凸部を有する基板に第1の半導体層を形成し、第1の半導体層の第2の面に配置された所定形状のパターンを有する金属材料層を形成し、第2の面に第2の半導体層を形成することにより、金属材料層と接する第1の半導体層に空洞部が形成される。基板に形成した半球状の凸部と、第1の半導体層に形成された空洞部とを利用して、平坦かつ薄い半導体基板でありながら、基板からの剥離が容易な半導体基板を提供することができる。第1の半導体層を10μmよりも薄く形成した場合にも、基板から第1の半導体層を容易に剥離することができる。
【0065】
(実施形態3)
実施形態2においては、円柱状の金属材料を半球状の凸部を取り囲むように、半球状の凸部の間隔に相当する位置に配置することにより空洞部を形成した例を説明したが、本実施形態においては、所定形状のパターンが第1の方向を長辺とする矩形形状を有し、第1の方向と直交する第2の方向に複数配置されて金属材料層を形成する例について説明する。本実施形態において説明する半導体基板は、第1の半導体層を10μmよりも薄く形成した場合に、基板から第1の半導体層を容易に剥離することができる。
【0066】
図6は、本発明の一実施形態に係る半導体基板300の模式図である。図6(a)は半導体基板300の上面図であり、図6(b)は図6(a)の破線部における半導体基板300の断面図である。半導体基板300は、基板210、第1の半導体層320、第2の半導体層340及び空洞部350を有する。本実施形態において基板210と第1の半導体層320とは組成が異なり、第1の半導体層320としてはGaNを用いるが、本発明はこれに限定されず、LEDに適用可能な組成であれば何れであってもよい。また、第2の半導体層340は第1の半導体層320と同じ組成であるが、異なる組成であってもよい。半導体基板100において説明したように、半導体基板300においても、第1の半導体層320を形成するための基板210の第1の面であるc面には、底面の幅wを有する複数の半球状の凸部21が所定の間隔iで配置される。
【0067】
第1の半導体層320と第2の半導体層340とには、第1の方向を長辺とする矩形形状を有し、第1の方向と直交する第2の方向に複数配置された空洞部350が形成される。半導体基板300において、その他の構成は、半導体基板100又は半導体基板200と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0068】

【0069】
次に、MOCVDを用いて、第2の半導体層340を形成する。第2の半導体層340を形成する条件は、用いる材料や形成する層の厚さにより任意に設定可能である。第2の半導体層340を形成するときに、第1の半導体層320を構成する元素と金属材料層330とが反応し、金属材料層330の底面と接する第1の半導体層320の一部が分解して、空洞部350が形成される(図7A(e))。
【0070】

【0071】
空洞部350が形成された後に金属材料層330を除去する。金属材料層330は、実施形態2で説明した金属材料層230と同様に除去することができるため、詳細な説明は省略する。金属材料層330を除去した後に第2の半導体層340を更に成長させて、本実施形態に係る半導体基板300を製造することができる(図7B(f))。
【0072】
得られた半導体基板300は、基板210を容易に剥離することができる。半導体基板300の第2の半導体層340の上面に接着層180を介して、第2の基板170を貼り合わせる(図7B(g))。第2の基板170及び接着層180は、実施形態1と同様であるため、詳細な説明は省略する。半導体基板300は、半球状の凸部21からは容易に外れ、空洞部350の底部付近で断裂して、基板210を容易に剥離することができる(図7B(h))。基板210から第1の半導体層320及び第2の半導体層340を剥離する方法としては、例えば、レーザ・リフトオフ法を用いることができる。このように製造された半導体基板301は、半球状の凸部21と接した部位で、第1の半導体層320が凹部を有する。このような凹部を第1の半導体層320に有する半導体基板301を用いて、LEDのような半導体装置を製造すると、光の取り出し効率が2倍程度となる優れた半導体装置を得ることができる。
【0073】
また、半導体基板301は、機械剥離法を用いて第1の半導体層320を平坦化することもできる(図7B(i))。本実施形態においては、レーザ・リフトオフ法を用いずに、研磨法を用いて基板210から第1の半導体層320を剥離してもよい。このようにして、平坦かつ薄い半導体基板305を得ることもできる。
【0074】
本実施形態において、第1の半導体層を10μmよりも薄く形成する場合には、例えば、図6に示した基板210において、底面の幅が1μmの半球状の凸部21を基板210に形成すればよい。第1の半導体層320を2μm成長させた後に、1μmの幅を有する金属材料を配置した金属材料層330を形成し、第2の半導体層340を3μm成長させることにより、表面が平坦な半導体基板300を形成することができる。
【0075】

【0076】
(実施形態4)
上述の実施形態1〜3においては、半球状の凸部を有する基板に第1の半導体層を形成する例を説明したが、本実施形態においては、第1の面に所定の間隔で配置した複数の曲面形状の凹部を有する基板に第1の半導体層を形成する例について説明する。
【0077】
図8は、本発明の一実施形態に係る半導体基板400の模式図である。図8(a)は半導体基板400の上面図であり、図8(b)は図8(a)の破線部における半導体基板400の断面図である。半導体基板400は、PSS基板410(以下、基板410という)と第1の半導体層420とを有する。本実施形態において基板410と第1の半導体層420とは組成が異なり、第1の半導体層420としてはGaNを用いるが、本発明はこれに限定されず、LEDに適用可能な組成であれば何れであってもよい。第1の半導体層420を形成するための基板410の第1の面10aであるc面には、複数の曲面形状の凹部460が所定の間隔iで配置される。ここで、間隔iは、2つの曲面形状の凹部460の間の最短距離を意味する。本実施形態においては、基板410のc面に曲面形状の凹部460の配置パターンを基板の第1の面に所定の間隔で形成することにより、基板410から第1の半導体層420を剥離しやすくする。
【0078】
基板410のc面では基板410と第1の半導体層420とは結合力が大きく、剥離しにくい。一方、曲面形状の凹部460の曲面では、第1の半導体層420は基板410にただ載っている程度であり、基板410と第1の半導体層420との結合力は極めて小さく、剥離しやすい。したがって、本実施形態においては、基板410のc面10aに、曲面形状の凹部460を所定の間隔iで配置することにより、基板410から第1の半導体層420を剥離しやすくなる。図8においては、曲面形状の凹部460を半球形状の凹部として示したが、本実施形態に係る曲面形状の凹部460は平坦な底面を有しなければよく、任意の形状を適用可能である。例えば、すり鉢状の形状や円錐形状であってもよい。
【0079】
例えば、図8のように、曲面形状の凹部460を半球形状の凹部とした場合には、本実施形態に係る基板410は、基板410のc面の面積に対する曲面形状の凹部460の表面積の合計の比が、1以上であることが好ましい。このような曲面形状の凹部460の表面積の合計と基板410のc面との比を有する基板410は、形成した第1の半導体層420を容易に剥離することができる。曲面形状の凹部460の底面を半径がw/2のとしたときに、1辺の長さがw+iの正三角形の頂点に、曲面形状の凹部460の中心が配置される。すなわち、本実施形態に係る曲面形状の凹部460の配置パターンは、この3つの曲面形状の凹部460の配置を基板410の第1の面10aの第1の方向と、第1の方向と直交する第2の方向とに繰り返すことのより構成される。本実施形態においては、上述の比となるように、基板410のc面の面積、曲面形状の凹部460の底面の幅w、間隔iを任意に設定することができる。
【0080】
ここで、本実施形態に係る曲面形状の凹部460の底面の幅は、5μm以下が好ましい。曲面形状の凹部460の底面の幅を5μm以下にすると、基板410から第1の半導体層420が剥離しやすくなる。このような曲面形状の凹部460のパターンは、基材10をエッチングすることにより形成することができ、例えばフォトリソグラフィを適用できる。フォトリソグラフィはパターン形成に汎用される技術であるが、精度良くパターン形成する限界は、一般に1μmであるとされている。したがって、本実施形態に係る曲面形状の凹部460のパターンを基板410に形成する場合、間隔iは1μm以上とすることが好ましい。例えば、図8に示した基板410において、間隔iを1μmとすると、曲面形状の凹部460の底面の幅wを3μmにすることにより、上述の比のパターンを形成することができる。
【0081】
以下に、本実施形態に係る半導体基板400の製造方法について説明する。図9A及び図9Bは、半導体基板400の製造工程を示す模式図である。基材10を準備し(図9A(a))、基材10をエッチングして、上述した曲面形状の凹部460のパターンを基板410のc面に形成する(図9A(b))。上述したように、本実施形態に係る基板410のパターン形成には、フォトリソグラフィを用いることができる。本実施形態に係る基板410は、基板410のc面の面積に対する曲面形状の凹部460の表面積の合計の比が、1以上となるように、基板410のc面10aに、曲面形状の凹部460を所定の間隔iで配置する。このようなパターンを配置することにより、後述する剥離工程において基板410から第1の半導体層420を剥離しやすくすることができる。
【0082】
エッチングして曲面形状の凹部460のパターンを形成した基板410の上面(c面)に第1の半導体層420を形成する(図9A(c))。第1の半導体層420の形成には、MOCVDを適用することができる。第1の半導体層420を形成する条件は、用いる材料や形成する層の厚さにより任意に設定可能である。第1の半導体層420の形成は、第1の半導体層420の上面(第1の面である基板410のc面とは反対側の第2の面)が平坦になるまで行う。例えば、先に例示したような間隔iを1μm、曲面形状の凹部460の底面の幅wを3μmとして曲面形状の凹部460のパターンを基板410に形成する場合、第1の半導体層420は10μm程度の厚みにすると平坦化することができる。このようにして、本実施形態に係る半導体基板400を製造することができる。
【0083】
得られた半導体基板400は、基板410を容易に剥離することができる。半導体基板400の第1の半導体層420の上面に接着層180を介して、第2の基板170を貼り合わせる(図9B(d))。第2の基板170及び接着層180は、実施形態1と同様であるため、詳細な説明は省略する。このように準備した半導体基板400は、基板410を容易に剥離することができる(図9B(e))。基板410から第1の半導体層420を剥離する方法としては、例えば、レーザ・リフトオフ法を用いることができる。このように製造された半導体基板401は、曲面形状の凹部460と接した部位で、第1の半導体層420が凸部を有する。このような凸部を第1の半導体層420に有する半導体基板401を用いて、LEDのような半導体装置を製造すると、光の取り出し効率が2倍程度となる優れた半導体装置を得ることができる。
【0084】
また、半導体基板401は、研磨法を用いて平坦化することもできる(図9B(f))。本実施形態においては、レーザ・リフトオフ法を用いずに、機械剥離法を用いて基板410から第1の半導体層420を剥離してもよい。このようにして、平坦かつ薄い半導体基板405を得ることもできる。
【0085】
以上説明したように、本実施形態によると、第1の面に所定の間隔で配置した複数の曲面形状の凹部を有する基板に、第1の半導体層を形成することにより、平坦かつ薄い半導体基板でありながら、基板からの剥離が容易な半導体基板を提供することができる。
【0086】
(実施形態5)
上述の実施形態4においては、曲面形状の凹部を有する基板に第1の半導体層を形成する例を説明したが、本実施形態においては、第1の面に所定の間隔で配置した複数の溝部を有する基板に第1の半導体層を形成する例について説明する。
【0087】
図10は、本発明の一実施形態に係る半導体基板500の模式図である。図10(a)は半導体基板500の上面図であり、図10(b)は図10(a)の破線部における半導体基板500の断面図である。半導体基板500は、PSS基板510(以下、基板510という)と第1の半導体層520とを有する。本実施形態において基板510と第1の半導体層520とは組成が異なり、第1の半導体層520としてはGaNを用いるが、本発明はこれに限定されず、LEDに適用可能な組成であれば何れであってもよい。第1の半導体層520を形成するための基板510の第1の面10aであるc面には、所定の幅wの溝部560が所定の間隔iで複数配置される。本実施形態においては、基板510のc面に溝部560の配置パターンを基板の第1の面に所定の間隔で形成することにより、基板510から第1の半導体層520を剥離しやすくする。
【0088】
本実施形態に係る溝部560は、幅wを十分に狭くすることにより、溝部560の底面(c面)に第1の半導体層520が成長しないようにする。また、図10に示したように、本実施形態に係る溝部560の上部において、空洞部555は、基板510のc面と接する第1の半導体層520の第1の面とは反対側の第2の面方向に凹む。この空洞部555の凹みは、基板510のc面上に成長した第1の半導体層が徐々にc面と平行な方向へ成長することにより生じる。
【0089】
ここで、本実施形態に係る溝部560の幅wは、5μm以下が好ましい。溝部560の幅wを5μm以下にすると、溝部560の底面に第1の半導体層520が成長することなく空洞部555が形成され、基板510から第1の半導体層520が剥離しやすくなる。溝部560の幅wが5μm以上であると、溝部560の底面に第1の半導体層520が成長し、基板510から第1の半導体層520が剥離しにくくなる。また、このような溝部560のパターンは、基材10をエッチングすることにより形成することができ、例えばフォトリソグラフィを適用できる。フォトリソグラフィはパターン形成に汎用される技術であるが、精度良くパターン形成する限界は、一般に1μmであるとされている。したがって、本実施形態に係る溝部560のパターンを基板510に形成する場合、幅wは1μm以上とすることが好ましい。
【0090】
以下に、本実施形態に係る半導体基板500の製造方法について説明する。図11A及び図11Bは、半導体基板500の製造工程を示す模式図である。基材10を準備し(図11A(a))、基材10をエッチングして、上述した溝部560のパターンを基板510のc面に形成する(図11A(b))。上述したように、本実施形態に係る基板510のパターン形成には、フォトリソグラフィを用いることができる。本実施形態に係る基板510は、幅wの溝部560を所定の間隔iで配置する。上述したように、本実施形態に係る溝部560の幅wは、5μm以下が好ましい。次の工程のMOCVDを500TORR以上で実施する場合には、幅wを2mm以下にすることが好ましい。このようなパターンを配置することにより、後述する剥離工程において基板510から第1の半導体層520を剥離しやすくすることができる。
【0091】
エッチングして溝部560のパターンを形成した基板510の上面(c面)に第1の半導体層520を形成する(図11A(c))。第1の半導体層420の形成には、MOCVDを適用することができる。第1の半導体層520を形成する条件は、用いる材料や形成する層の厚さにより任意に設定可能である。第1の半導体層520の形成は、第1の半導体層520の上面(第1の面である基板510のc面とは反対側の第2の面)が平坦になるまで行う。このようにして、本実施形態に係る半導体基板500を製造することができる。
【0092】
得られた半導体基板500は、基板510を容易に剥離することができる。半導体基板500の第1の半導体層520の上面に接着層180を介して、第2の基板170を貼り合わせる(図5B(d))。第2の基板170及び接着層180は、実施形態1と同様であるため、詳細な説明は省略する。半導体基板500は、基板510を容易に剥離することができる(図11B(d))。基板510から第1の半導体層520を剥離する方法としては、例えば、レーザ・リフトオフ法を用いることができる。このように製造された半導体基板501は、溝部560と接した部位で、第1の半導体層520が凹部を有する。このような凹部を第1の半導体層520に有する半導体基板501を用いて、LEDのような半導体装置を製造すると、光の取り出し効率が2倍程度となる優れた半導体装置を得ることができる。
【0093】
また、半導体基板501は、研磨法を用いて平坦化することもできる(図11B(f))。本実施形態においては、レーザ・リフトオフ法を用いずに、機械剥離法を用いて基板510から第1の半導体層520を剥離してもよい。このようにして、平坦かつ薄い半導体基板505を得ることもできる。
【0094】
以上説明したように、本実施形態によると、所定の幅を有する溝部560を第1の面に所定の間隔で配置した基板に、第1の半導体層を形成することにより、平坦かつ薄い半導体基板でありながら、基板からの剥離が容易な半導体基板を提供することができる。
【0095】
(半導体装置)
上述した実施形態に係る半導体基板100〜500を用いて半導体装置、特にLEDを製造することができる。以下では、一例として、半導体基板105を用いた半導体装置1000について説明する。図12は、本実施形態に係る半導体装置1000の断面図である。半導体装置1000は、半導体基板105の第1の半導体層20の面にオーミックコンタクト層1110を配置、第2の基板の面にオーミックコンタクト層1130を配置する。
【0096】
オーミックコンタクト層1110は、例えば、10nmのチタン(Ti)層、10nmのAl層、10μmのAl層を積層することにより形成することができる。また、オーミックコンタクト層1130は、例えば、第2の基板170がSi基板であるとき、50nmのAu層と50nmのアンチモン(Sb)層で形成することができる。接着層180は、例えば、3μmのAu層で形成する。ここで、第1の半導体層20と接着層180の間には、図示しないが、10nmのAu層と10nmのニッケル(Ni)層によりオーミックコンタクト層が形成される。第1の半導体層20のオーミックコンタクト層1110はN型半導体であり、第1の半導体層20の接着層180側はP型半導体である。
【0097】
以上のように、半導体基板105を利用して半導体装置1000を製造することにより、LEDの製造コストを低減することが可能になる。なお、本実施形態においては、半導体基板100から形成した半導体基板105に半導体装置1000を製造する例を説明したが、半導体装置1000は、半導体基板200〜500及びそれらから隔離した基板、平坦化した基板の何れも好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0098】
10:基材、10a:c面、11:半球状の凸部、20:第1の半導体層、21:半球状の凸部、100:半導体基板、101:半導体基板、105:半導体基板、110:基板、170:第2の基板、180:接着層、200:半導体基板、201:半導体基板、205:半導体基板、210:基板、220:第1の半導体層、230:金属材料層、240:第2の半導体層、250:空洞部、300:半導体基板、301:半導体基板、305:半導体基板、320:第1の半導体層、330:金属材料層、340:第2の半導体層、350:空洞部、400:半導体基板、401:半導体基板、405:半導体基板、410:基板、420:第1の半導体層、460:曲面形状の凹部、500:半導体基板、501:半導体基板、505:半導体基板、510:基板、520:第1の半導体層、555:空洞部、560:溝部、1000:半導体装置、1110:、1130:オーミックコンタクト層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面に所定の間隔で配置した複数の半球状の凸部を有する基板と、
前記基板の第1の面に形成した第1の半導体層と、を有することを特徴とする半導体基板。
【請求項2】
前記複数の半球状の凸部の表面積の合計と前記第1の面との比が1以上であることを特徴とする請求項1に記載の半導体基板。
【請求項3】
前記半球状の凸部の底面の幅が5μm以下であることを特徴とする請求項2に記載の半導体基板。
【請求項4】
前記基板がサファイア基板であり、前記第1の半導体層が窒化ガリウム層であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一に記載の半導体基板。
【請求項5】
前記第1の半導体層の前記第1の面とは反対側の第2の面に形成した第2の半導体層と、前記第1の半導体層と前記第2の半導体層の一部に形成された所定形状のパターンを有する空洞部と、
を有することを特徴とする請求項4に記載の半導体基板。
【請求項6】
前記所定形状のパターンは前記所定の間隔の幅を有し、
前記複数の半球状の凸部の間隔に相当する前記第1の半導体層の第2の面の位置に前記空洞部が配置されることを特徴とする請求項5に記載の半導体基板。
【請求項7】
前記所定形状のパターンは第1の方向を長辺とする矩形形状を有し、前記第1の方向と直交する第2の方向に複数配置されて前記金属材料層を形成することを特徴とする請求項5に記載の半導体基板。
【請求項8】

【請求項9】
第1の面に所定の間隔で配置した複数の曲面形状の凹部を有する基板と、
前記基板の第1の面に形成した第1の半導体層と、を有することを特徴とする半導体基板。
【請求項10】
前記曲面形状の凹部の底面の幅が5μm以下であることを特徴とする請求項9に記載の半導体基板。
【請求項11】
前記基板がサファイア基板であり、前記第1の半導体層が窒化ガリウム層であることを特徴とする請求項9又は10に記載の半導体基板。
【請求項12】
基板の第1の面に所定の間隔で複数の半球状の凸部を形成し、
前記基板の第1の面に第1の半導体層を形成することを特徴とする半導体基板の製造方法。
【請求項13】
前記複数の半球状の凸部を形成することは、前記基板の第1の面をエッチングすることにより行うことを特徴とする請求項12に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項14】
前記複数の半球状の凸部の表面積の合計と前記第1の面との比が1以上となるように、前記基板の第1の面に前記半球状の凸部を形成することを特徴とする請求項13に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項15】
前記半球状の凸部の底面の幅が5μm以下となるように、前記基板の第1の面に前記半球状の凸部を形成することを特徴とする請求項14に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項16】
前記第1の半導体層は、有機金属気相成長法を用いて形成することを特徴とする請求項15に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項17】
前記基板がサファイア基板であり、前記第1の半導体層が窒化ガリウム層であることを特徴とする請求項16に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項18】
形成した前記第1の半導体層を前記基板から剥離することを特徴とする請求項12乃至17の何れか一に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項19】
前記第1の半導体層の前記第1の面とは反対側の第2の面に、所定形状のパターンを有する金属材料層を形成し、
有機金属気相成長法を用いて前記第2の面に第2の半導体層を形成して、前記金属材料層と接する前記第1の半導体層に空洞部を形成することを特徴とする請求項17に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項20】
前記金属材料層は、タンタル、チタンまたはクロムで形成されることを特徴とする請求項19に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項21】
前記複数の半球状の凸部の間隔に相当する前記第1の半導体層の第2の面の位置に、前記所定の間隔の幅を有する前記所定形状のパターンで前記金属材料層を形成することを特徴とする請求項20に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項22】
前記所定形状のパターンは第1の方向を長辺とする矩形形状を有し、前記第1の方向と直交する第2の方向に複数配置されて前記金属材料層を形成することを特徴とする請求項20に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項23】

【請求項24】
前記第1の半導体層に形成された前記空洞部を利用して前記基板を剥離して、前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層から形成された半導体基板を製造することを特徴とする請求項19乃至23の何れか一に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項25】
基板の第1の面に所定の間隔で複数の曲面形状の凹部を形成し、
前記基板の第1の面に第1の半導体層を形成することを特徴とする半導体基板の製造方法。
【請求項26】
前記曲面形状の凹部の底面の幅が5μm以下となるように、前記基板の第1の面に前記曲面形状の凹部を形成することを特徴とする請求項25に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項27】
前記基板がサファイア基板であり、前記第1の半導体層が窒化ガリウム層であることを特徴とする請求項25又は26記載の半導体基板の製造方法。
【請求項28】
形成した前記第1の半導体層を前記基板から剥離することを特徴とする請求項25乃至27の何れか一に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項29】
レーザ・リフトオフ法を用いて、前記第1の半導体層を前記基板から剥離することを特徴とする請求項18、24又は28に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項30】
機械剥離法を用いて、前記第1の半導体層を前記基板から剥離することを特徴とする請求項18、24又は28に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項31】
請求項1乃至4又は請求項9乃至11の何れか一に記載の半導体基板から剥離した前記第1の半導体層と、
前記第1の半導体層上に形成された第1の化合物半導体層と、
前記第1の化合物半導体層上に形成された活性層と、
前記第活性層上に形成された第2の化合物半導体層と、を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項32】
請求項5乃至8の何れか一に記載の半導体基板から剥離した前記第2の半導体層と、
前記第2の半導体層上に形成された第1の化合物半導体層と、
前記第1の化合物半導体層上に形成された活性層と、
前記第活性層上に形成された第2の化合物半導体層と、を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項33】
請求項1乃至4又は請求項9乃至11の何れか一に記載の半導体基板の前記第1の半導体層から前記基板を剥離し、
前記第1の半導体層上に第1の化合物半導体層を形成し、
前記第1の化合物半導体層上に活性層を形成し、
前記第活性層上に第2の化合物半導体層を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項34】
請求項5乃至8の何れか一に記載の半導体基板の前記第2の半導体層から前記基板を剥離し、
前記第2の半導体層上に第1の化合物半導体層を形成し、
前記第1の化合物半導体層上に活性層を形成し、
前記第活性層上に第2の化合物半導体層を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−234853(P2012−234853A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100321(P2011−100321)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(506029004)ソウル オプト デバイス カンパニー リミテッド (101)
【Fターム(参考)】