説明

半導体基板の表面エッチング装置、およびそれを用いて表面に凹凸形状が形成された半導体基板を製造する方法

【課題】ClF3,XeF2,BrF3およびBrF5のガスを用いつつ、量産化に対応可能な半導体基板表面をエッチングする装置を提供すること。
【解決手段】大気圧以下に減圧可能な反応室と;反応室内を移動可能であり、半導体基板を載置するための移動ステージと;半導体基板表面に向けて、ClF3,XeF2,BrF3およびBrF5からなる群から選ばれる一以上のガスを含むエッチングガスを噴射するノズルと;半導体基板に向けて、窒素ガスまたは不活性ガスを含む冷却ガスを噴射するノズルと、大気圧以下に減圧可能な洗浄室と;洗浄室内を移動可能であり、半導体基板を載置するための移動ステージと;半導体基板表面に向けて、純水、フッ化水素水からなる一以上のガスを含むエッチングガスを噴射するノズルと;半導体基板に向けて、窒素ガスまたは不活性ガスを含む乾燥ガスを噴射するノズルとを有する、半導体基板の表面エッチング装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板の表面エッチング装置、および表面に凹凸形状が形成された半導体基板を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン太陽電池(光電変換素子)などにおいて、シリコン基板の受光面にテクスチャと称される凹凸形状を設けて、入射光の反射を抑え、かつシリコン基板に取り込んだ光を外部に漏らさないようにしている。シリコン基板の表面へのテクスチャ形成は、一般的にアルカリ(KOH)水溶液をエッチャントとするウェットプロセスにより行われている。ウェットプロセスによるテクスチャ形成は、後処理としてフッ化水素による洗浄工程や、熱処理工程などが必要とされる。そのため、シリコン基板表面を汚染する恐れがあるばかりか、コスト面からも不利な点があった。
【0003】
一方で、シリコン基板の表面へのテクスチャ形成をドライプロセスにて行う方法も提案されている。例えば、1)プラズマによる反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching)と呼ばれる手法を用いる方法、2)シリコン基板のある大気圧雰囲気下の反応室に、ClF3,XeF2,BrF3およびBrF5の何れかのガスを導入することで、シリコン基板表面をエッチングする方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−313128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、プラズマによる反応性イオンエッチングを用いると、シリコン基板の表面がプラズマによってダメージを受けやすく、デバイス(例えば太陽電池)としての性能に悪影響を及ぼすことがあった。また、プラズマ発生装置などが必要なため、装置コストが高くなるという問題もあった。
【0006】
一方で、上記特許文献1に記載のように、ClF3,XeF2,BrF3およびBrF5のガスを用いることでシリコン基板表面をエッチングすることができるが、そのエッチング反応は発熱反応であり、シリコン基板の温度が上昇すると所望のエッチングができない。そのため、エッチング工程と冷却工程とを繰り返しながらシリコン基板表面をエッチングしなければならず、量産化に適した方法ではない面があった。そこで本発明は、半導体基板と発熱反応を起こすガスをエッチングガスとして用いつつ、量産化に対応可能な半導体基板表面をエッチングする装置を提供することを課題とする。
【0007】
また、ClF3,XeF2,BrF3およびBrF5のガスをエッチングガスとすると、一定のエッチング形状は得られるものの、例えば、フッ素や塩素成分が基板表面に残留することで必ずしも太陽電池のシリコン基板にとって適切なテクスチャ構造を得ることはできない場合があった。
【0008】
そこで本発明は、ClF3,XeF2,BrF3およびBrF5を含むエッチングガス組成を好適化した後に、連続的に同一装置で後処理を施すことによってシリコン基板にダメージを与えることなく、太陽電池のシリコン基板にとって適切なテクスチャ構造を形成した装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明の第一は、以下に示す半導体基板の表面エッチング装置に関する。
【0010】
大気圧以下に減圧可能な反応室と、上記反応室内において半導体基板を搬送可能な移動ステージAと、上記反応室内に配置される上記半導体基板の表面に向けてエッチングガスを噴射するノズルAと、上記反応室内に配置される上記半導体基板に向けて冷却ガスを噴射するノズルBと、大気圧以下に減圧可能であり、かつ上記反応室よりも下流側に設けられる洗浄室と、上記洗浄室内において上記半導体基板を搬送可能とする移動ステージBと、上記洗浄室内に配置される上記半導体基板の表面に向けて洗浄用液体材料を噴射するノズルaと、上記洗浄室内に配置される上記半導体基板に向けて乾燥用ガスを噴射するノズルbと、を有する半導体基板の表面エッチング装置。
【0011】
また、本発明の第二は、以下に示す表面に凹凸形状が形成された半導体基板表面の製造方法に関する。
【0012】
減圧された反応室内に半導体基板を準備し、上記反応室内に配置された移動ステージを移動させながら、上記移動ステージ上に載置された上記半導体基板の表面にエッチングガスを吹き付け、次いで、上記移動ステージを移動させながら上記半導体基板の表面に冷却ガスを吹き付けた後、上記半導体基板を大気圧以下に減圧された洗浄室に移動させ、上記半導体基板の表面に洗浄用液体材料を吹き付けた後、上記半導体基板を移動させ、次いで、
上記半導体基板の表面に乾燥用ガスを噴射する方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の半導体基板の表面エッチング装置によれば、半導体基板の表面を効率的にドライエッチングすることができる。しかも、プロセス中の半導体基板の温度上昇を抑制することができるので量産化にも対応できる。更に、エッチングガスの組成を好適化することで、これまで実現されなかった微細凹凸のテクスチャ構造を半導体基板表面に形成することができる。
【0014】
更に、エッチング終了後に基板表面に洗浄用液体材料を噴射することで表面に付着した不純物成分を除去することができる。更に好適には、太陽電池として適切な半導体基板を提供することができ、太陽電池の光電変換率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の半導体基板の表面エッチング装置の概要を示す図であり、図1(a)は、装置を側面から見たときの透視図、図1(b)は、装置を上面から見たときの透視図
【図2】図2(A)〜(C)は、本発明の表面エッチング装置でエッチングした後に純水で洗浄後に窒素ガスで乾燥した後の基板方位面(100)のシリコン基板表面の状態を示す光学顕微鏡写真を示す図であり、図2(D)は、本発明の表面エッチング装置でエッチングした後に純水で洗浄後に窒素ガスで乾燥した後の基板方位面(111)のシリコン基板表面の状態を示す光学顕微鏡写真を示す図
【図3】実施例1および比較例1のシリコン基板のライフタイム値を示すグラフを示す図
【図4】ライフタイムの測定結果を図
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.半導体基板の表面エッチング装置について
本発明の半導体基板の表面エッチング装置(以下、単に「表面エッチング装置」と言う場合もある。)は、反応室と、上記反応室内の半導体基板を搬送可能な移動ステージAと、エッチングガスを噴射するノズルAと、冷却ガスを噴射するノズルBと、上記反応室に連結する洗浄室と、洗浄室内の半導体基板を搬送可能な移動ステージBと、洗浄用液体材料を噴射するノズルaと、乾燥用ガスを噴射するノズルbとを有する。
【0017】
本発明の表面エッチング装置の反応室の内部は減圧状態にすることができ、減圧条件下にてエッチングプロセスを行う。エッチングプロセス中の反応室の内部圧力は、1KPa〜100KPaの範囲に調整され、通常10KPa〜90KPaに制御され、好ましくは30KPa〜60KPaに制御される。
【0018】
反応室内には、半導体基板を搬送するための移動ステージAが配置される。移動ステージAは反応室内において、半導体基板を搬送することができ、後述のノズル(エッチングガスを噴射するノズルAと冷却ガスを噴射するノズルB)と半導体基板との相対位置関係を調整することができることが好ましい。それにより、半導体基板表面の所望の位置に、ノズルからのガスが吹き付けられる。
【0019】
本発明の表面エッチング装置は、エッチングガスを噴射するノズルAを有する。エッチングガスは、半導体基板の材質などによって適宜選択されるが;典型的には、ClF3,XeF2,BrF3およびBrF5のうちの少なくとも一つのガスを含む。これらのガス分子は、半導体基板の表面に物理吸着して、エッチングサイトに移動する。エッチングサイトに到達したガス分子は分解し、半導体材料(典型的にはシリコン)と反応して揮発性のフッ素化合物を生成する。それにより、半導体基板表面がエッチングされ、凹凸形状が形成される。
【0020】
エッチングガスには、その分子内に酸素原子を含有するガスが含まれていることが好ましい。酸素原子を含有するガスとは、典型的には酸素ガス(O2)であるが、二酸化炭素(CO2)などであっても良い。エッチングガスにおける酸素原子含有ガスの濃度(体積濃度)は、ClF3,XeF2,BrF3およびBrF5のガスの合計濃度の2倍以上であることが好ましい。エッチングガスに酸素原子含有ガスを含ませることで、太陽電池のテクスチャ構造として適切な凹凸形状を、半導体基板表面に形成することができる。
【0021】
その理由は、必ずしも明らかではないが、例えばClF3ガスがシリコン表面に物理吸着すると、シリコンと反応してSiF4となってガス化する。このとき、シリコンネットワーク構造のダングリングボンドに酸素原子がターミネートすることで、Si−O結合が部分的に構成される。それにより、エッチングされやすい領域(Si−Si)と、エッチングされにくい領域(Si−O)とができる。そのエッチングレートの差でケミカルな反応が促進され、形状制御が可能となると考えられる。
【0022】
更に、エッチングガスには窒素ガスまたは不活性ガスが含まれていても良い。エッチングガスにおけるClF3,XeF2,BrF3およびBrF5の濃度が高すぎると、等方的にエッチングが進行しやすい場合があり、半導体基板表面に所望の凹凸形状が得られないことがある。そのため、窒素ガスまたは不活性ガスを希釈ガスとして混合させる場合がある。
【0023】
また、本発明の表面エッチング装置は、冷却ガスを噴射するノズルBを有する。冷却ガスとは、半導体基板の材質と発熱反応しないガスであればよく、窒素ガスや不活性ガス(ヘリウムガスやアルゴンガスなど)などが例示される。前述の通り、ClF3,XeF2,BrF3およびBrF5は半導体と反応するが、その反応は発熱反応であるため、半導体基板温度が上昇する。半導体基板温度が上昇すると、等方的にエッチングが進行しやすくなり、半導体基板表面に所望の凹凸形状が得られない。そのため、エッチング反応によって発熱した半導体基板に冷却ガスを吹き付けることで、半導体基板を冷却する。
【0024】
半導体基板の温度は、130℃以下に保持されることが好ましく、100℃以下に保持されることがより好ましく、80℃以下に保持されることが更に好ましい。一方、半導体基板の温度は、噴射されるエッチングガスの沸点以上に保持されていれば良い。例えばClF3の沸点は約12℃であるので、ClF3を用いる場合には、半導体基板の温度を12℃以上に保持する。
【0025】
更に、本発明の表面エッチング装置は、エッチングガスを噴射するノズルAを2つ以上有していても良いし、冷却ガスを噴射するノズルBを2つ以上有していても良い。各ノズルの配列は、特に限定されないものの、搬送方向(半導体基板の相対移動方向、より具体的には、移動ステージの移動方向)に沿って配列されていることが好ましい。
【0026】
このとき、エッチングガスを噴射するノズルAと冷却ガスを噴射するノズルBとは、規則的に配列していることが好ましい。例えば、搬送方向に沿って、エッチングガスを噴射するノズルAと冷却ガスを噴射するノズルBとが交互に配列していても良い。或いは、搬送方向に沿って、エッチングガスを噴射するノズルAと複数の冷却ガスを噴射するノズルBとが、繰り返して配置されていても良い。
【0027】
但し、通常は、2つのエッチングガスを噴射するノズルが連続して配列されないことが好ましい。
【0028】
また、各ノズルの形状は特に制限されないが、半導体基板表面の広面積にガスを吹き付けることができるように、ノズルの吐出口にむかって末広がりになっていると好ましい場合がある。
【0029】
また、本発明の表面エッチング装置は、マスク形成用ガスを噴射するノズルを有していても良い。マスク形成用ガスはフッ化炭素ガスであることが好ましく、フッ化炭素ガスの例には4フッ化メタン(CF4)や、6フッ化エタン(C26)などが含まれる。マスク形成用ガスの分子が半導体基板表面に吸着すると、その吸着部分はエッチングされにくくなる。そのため、選択的に半導体基板表面をエッチングすることができ、所望の凹凸形状を得られやすくなることがある。
【0030】
また、処理後の基板表面にはエッチングガスの成分や雰囲気中の不純物成分が吸着したままの状態が部分的に残留するため、エッチング処理後には、速やかに表面を純水で表面を洗浄し乾燥することが望ましい。洗浄用純水が噴射するノズルaと乾燥用ノズルbが交互に配置されていても良い。或いは、搬送方向に沿って、洗浄用純水を噴射するノズルaと複数の乾燥用ガスを噴射するノズルbとが、繰り返して配置されていても良い。但し、通常は、2つの洗浄用ノズルが連続して配列されないことが好ましい。
【0031】
エッチングで加工された基板表面には、例えば、ClF3の場合、シリコン基板表面に接触することで、2Si+4ClF3→3SiF4↑+2Cl2↑のように、シリコンと発熱反応が発生する。このようにして、シリコンのフッ化化合物と塩素のように揮発性ガスがエッチングを進行させるが、エッチングガスの供給を停止した場合でも、基板表面に到達し、未反応のClF3ガスが応物理的に吸着したフッ素や塩素成分がエッチング反応を進行させ、液化することでエッチング形状を制御できない。
【0032】
連続的に例えば、純水で表面を洗浄することでこの残留成分を除去することで、表面のフッ素を除去することがエッチング形状の制御性に効果的である。
【0033】
本発明の表面エッチング装置によって、表面に凹凸形状を形成される半導体基板とは、典型的にはシリコン基板であるが、ゲルマニウム基板、シリコンカーバイドなどであっても良い。更に、表面エッチングされる基板は、半導体基板以外のサファイア基板などであっても良い。また、シリコン基板は、通常は単結晶シリコンであるが、多結晶シリコンであっても、アモルファスシリコンであっても良い。
【0034】
単結晶シリコン基板は、基板面方位(100)のシリコン基板であっても良いし、基板面方位(111)のシリコン基板であっても良いし、他の基板面方位のシリコン基板であっても良い。基板面方位(111)のシリコン基板を、従来のアルカリ水溶液を用いたウェットプロセスによるエッチングを行うと、基板表面に凹凸形状を形成できず、単に表面が等方的にエッチングされる。ところが、本発明の表面エッチング装置によれば、基板面方位(111)のシリコン基板にも、基板表面に凹凸形状を形成することができるという特徴がある。
【0035】
半導体基板は、半導体ウェハであっても良いし、他の基板に成膜された半導体薄膜であっても良い。
【0036】
2.エッチング方法について
本発明の表面エッチング装置を用いて、表面に凹凸形状が形成された半導体基板を製造することができる。
【0037】
具体的には、本発明の表面エッチング装置に半導体基板を準備して、反応室内を減圧する。その後、移動ステージにセットした半導体基板を、ノズルに対して相対移動させる。半導体基板を相対移動させながら、半導体基板の表面に、エッチングガスを噴射するノズルAからエッチングガスを吹き付け、かつ、冷却ガスを噴射するノズルBから冷却ガスを吹き付ける。
【0038】
冷却ガスを吹き付けることで、半導体基板の温度を130℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下に保持する。
【0039】
このとき、移動ステージで半導体基板を移動させながら、半導体基板を振動させても良いし、或いはノズルを振動させても良い。それにより、より微細な凹凸形状が半導体基板の表面に形成されうる。また、半導体基板の相対移動は、一方向である必要はなく、2次元方向に移動しても良いし、3次元方向に移動しても良い。更に、移動ステージは往復移動をしても良い。
【0040】
図1には、本発明の表面エッチング装置の概要が示される。同図において、図1(a)は、装置を側面から見たときの透視図であり、図1(b)は、装置を上面から見たときの透視図である。
【0041】
図1(a)及び図1(b)に示される表面エッチング装置は、ロードロック室10と、反応室20と、洗浄室30と、アンロードロック室40とを有する。ロードロック室10と、反応室20と、アンロードロック室40の内部は、何れも減圧されることができる。つまり、ロードロック室10には、ドライポンプ12と、バルブ13と、ゲートバルブ14が設けられ、アンロードロック室には、ドライポンプ12と、バルブ13と、ゲートバルブ14が設けられている。洗浄室30内部は大気圧を維持する。
【0042】
ロードロック室10には、基板供給部5から半導体基板1が供給される。半導体基板1は、移動ステージに載置されてロードロック室10に供給される。例えば、トレイなどの容器などに収容されてロードロック室10に供給されても良い。1つの容器に、100枚程度の半導体基板1が収容されていても良い。
【0043】
ロードロック室10から反応室20、洗浄室30を経てアンロードロック室40にまで、搬送機構となるローラ搬送機50が設けられている。ローラ搬送機50に載置された半導体基板1は、ロードロック室10から反応室20及び洗浄室30を経てアンロードロック室40にまで搬送させることができる。
【0044】
反応室20には、エッチングガス供給ノズル60と、冷却ガス供給ノズル70とが設けられており、反応室20の内部で搬送される半導体基板1の表面に、ガスを吹き付けることができる。エッチングガス供給ノズル60と冷却ガス供給ノズル70とは、搬送方向に沿って、交互に設けられている。また、反応室20にはドライポンプ22と、バルブ13とが設けられており、エッチング反応で発生したガスなどを排気することができる。
【0045】
ローラ搬送機50は、ロードロック室10からアンロードロック室40にまで一方向に半導体基板1を搬送しても良いが、往復移動させながら(図において左右に移動させながら)搬送しても良い。
【0046】
アンロードロック室40にまで搬送された半導体基板1は、基板排出部35に排出されて回収される。半導体基板1のノズル(エッチングガス供給ノズル60と冷却ガス供給ノズル70)と対向する表面には、所望の凹凸形状が形成されている。その後、半導体基板1は、純水洗浄下で残留したフッ素成分を除去するための処理を施す。また、この純水の代わりに高温アニールを施されたり、プラズマ処理を施されたりしても良い。
【0047】
[実施例1]
本発明の表面エッチング装置を用いて、基板方位面(100)のシリコン基板表面に凹凸形状を形成した。まず、反応室内にシリコン基板をセットして、反応室の内圧を90Kpaに維持した。反応室内にセットされたシリコン基板の表面に、ClF3ガス773cc、N2ガス23000ccを含むエッチングガスを3分間かけて吹き付けた。このエッチング前に希HF溶液でのウエット処理のある場合とない場合、更にエッチング後に純水洗浄をする場合としない場合での処理を実施し表面のXPS分析を実施し残留の組成分析を実施した。その結果、得られたシリコン基板表面の光学顕微鏡写真を図2に示す。図2(B)に示されるように、基板表面に四角錘状の孔が形成されていることがわかる。
【0048】
次に、図3に示されるシリコン基板のライフタイムを測定した。測定は、半導体基板1の表面をヨウ素パッシベーション(ヨウ素/エタノール法)をした後に行った。ライフタイムとは、半導体基板の表面及び内部で発生した過剰キャリア(電子又は正孔)が、再結合により消滅し所定値まで減少するまでの時間を言う。ライフタイムの測定は、μ−PCD法(マイクロ波光導電率減衰法)によって行った。測定装置は、LTA−1510(KOBELCO科研)を用いた。具体的な測定条件は、マイクロ波プローブの周波数10GHz,レーザー波長904nmとした。照射したレーザー光は2種であり、レベル2(注入量:1E14/cm2)と、レベル3(注入量::1E15/cm2)とした。ライフタイムの測定結果を図4に示す。
【0049】
図3に実施例1のシリコン基板のライフタイム値が示される。図3に示されるように、実施例1のシリコン基板のライフタイム値は、従来のウエット処理によるライフタイム値とほぼ匹敵していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の表面エッチング装置によれば、半導体基板の表面を効率的にドライエッチングすることができる。しかも、プロセス中の半導体基板の温度上昇を抑制することができるので量産化にも対応できる。また、ドライエッチング後に連続的に洗浄処理を施すことによって残留のエッチング成分を除去することができエッチング形状の制御性を向上させることができる。
【0051】
更に、エッチングガスの組成を好適化することで、これまで実現されなかった微細凹凸のテクスチャ構造を半導体基板表面に形成することができ;光反射率を低減し、ライフタイムを向上させることができる。よって、太陽電池の製造プロセスに、特に好適に応用されうる。
【符号の説明】
【0052】
1 半導体基板
5 基板供給部
10 ロードロック室
12 ドライポンプ
13 バルブ
14 ゲートバルブ
20 反応室
22 ドライポンプ
30 洗浄室
40 アンロードロック室
32 ドライポンプ
35 基板排出部
50 ローラ搬送機
60 エッチングガス供給ノズル
70 冷却ガス供給ノズル
80 洗浄用液体供給ノズル
90 乾燥用ガスノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧以下に減圧可能な反応室と、
上記反応室内において半導体基板を搬送可能な移動ステージAと、
上記反応室内に配置される上記半導体基板の表面に向けてエッチングガスを噴射するノズルAと、
上記反応室内に配置される上記半導体基板に向けて冷却ガスを噴射するノズルBと、
大気圧以下に減圧可能であり、かつ上記反応室よりも下流側に設けられる洗浄室と、
上記洗浄室内において上記半導体基板を搬送可能とする移動ステージBと、
上記洗浄室内に配置される上記半導体基板の表面に向けて洗浄用液体材料を噴射するノズルaと、
上記洗浄室内に配置される上記半導体基板に向けて乾燥用ガスを噴射するノズルbと を有すること、
を特徴とする半導体基板の表面エッチング装置。
【請求項2】
上記エッチングガスは、ClF3,XeF2,BrF3およびBrF5からなる群から選ばれる一以上のガスを含む、
請求項1に記載の表面エッチング装置。
【請求項3】
上記エッチングガスは、分子中に酸素原子を含有するガスをさらに含む、請求項2に記載の表面エッチング装置。
【請求項4】
上記冷却ガスは、窒素ガスまたは不活性ガスを含む、請求項1〜3の何れか一項に記載の表面エッチング装置。
【請求項5】
上記移動ステージに載置される半導体基板表面に向けて、フッ化炭素ガスを含むマスク形成用ガスを噴射するノズルをさらに有する、
請求項1〜4の何れか一項に記載の表面エッチング装置。
【請求項6】
上記反応室内の圧力は、1KPa〜100KPaの範囲に調整可能である、請求項1〜5の何れか一項に記載の表面エッチング装置。
【請求項7】
上記エッチングガスを噴射するノズル及び上記冷却ガスを噴射するノズルを、それぞれ複数有する、請求項1〜6の何れか一項に記載の表面エッチング装置。
【請求項8】
上記複数のエッチングガスを噴射するノズル及び冷却ガスを噴射するノズルは、上記移動ステージの移動方向に沿って配列されている、請求項7に記載の表面エッチング装置。
【請求項9】
上記洗浄用液体材料を噴射するノズル及び上記乾燥用ガスを噴射するノズルを、それぞれ複数有する、請求項1に記載の表面エッチング装置。
【請求項10】
上記複数の洗浄用ガスを噴射するノズル及び乾燥用ガスを噴射するノズルは、上記移動ステージの移動方向に沿って配列されている、請求項9に記載の表面エッチング装置。
【請求項11】
上記半導体基板は、基板面方位(100)のシリコン基板である、請求項1に記載の表面エッチング装置。
【請求項12】
上記半導体基板は、基板面方位(111)のシリコン基板である、請求項1に記載の表面エッチング装置。
【請求項13】
減圧された反応室内に半導体基板を準備し、
上記反応室内に配置された移動ステージを移動させながら、上記移動ステージ上に載置された上記半導体基板の表面にエッチングガスを吹き付け、次いで、
上記移動ステージを移動させながら上記半導体基板の表面に冷却ガスを吹き付けた後、
上記半導体基板を大気圧以下に減圧された洗浄室に移動させ、
上記半導体基板の表面に洗浄用液体材料を吹き付けた後、上記半導体基板を移動させ、次いで、
上記半導体基板の表面に乾燥用ガスを噴射すること、
を特徴とする凹凸形状が形成された半導体基板を製造する方法。
【請求項14】
上記半導体基板の温度を130℃以下に保持する、請求項13記載の凹凸形状が形成された半導体基板を製造する方法。
【請求項15】
上記移動ステージを移動させながら上記半導体基板を振動させる、請求項13または14に記載の凹凸形状が形成された半導体基板を製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−4710(P2013−4710A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133972(P2011−133972)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】