説明

半導体用接着組成物およびこれを用いた半導体装置の製造方法

【課題】低温速硬化性の半導体用接着組成物を提供すること。
【解決手段】(a)ポリエーテルエステルアミド、(b)エポキシ化合物および(c)アニオン性硬化促進剤を含有し、(b)エポキシ化合物を100重量部に対し、(a)ポリエーテルエステルアミドが5〜100重量部、(c)アニオン性硬化促進剤が20〜55重量部であり、(b)エポキシ化合物の液状エポキシ化合物の含有量が全エポキシ化合物に対し50重量%以上である半導体用接着組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体用接着組成物に関する。より詳しくは、IC、LSI等半導体チップをフレキシブル基板、ガラスエポキシ基板、ガラス基板、セラミックス基板などの回路基板に直接電気的接合する際に用いられる半導体用接着組成物、これを用いた半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の小型化と高密度化に伴い、半導体チップを回路基板に実装する方法としてフリップチップ実装が注目され、急速に広まってきている。フリップチップ実装においては、接合部分の接続信頼性を確保するための方法として、半導体チップ上に形成されたバンプ電極と回路基板のパッド電極の間にエポキシ樹脂系接着剤を介在させることが一般的な方法として採られている。エポキシ樹脂系接着剤は、高い接着強さが得られ、耐水性や耐熱性に優れることなどから、電気・電子・建築・自動車・航空機等の各種用途に多用されている。中でも一液型エポキシ樹脂系接着剤は、主剤と硬化剤との混合が不必要であり使用が簡便なことから、フィルム状、ペースト状、粉体状の形態で使用されている。この場合、特許文献1〜5のようにエポキシ樹脂と硬化剤及び変性剤との多様な組み合わせにより、特定の性能を得ることが一般に行われている。
【0003】
しかし、前記した特許文献1〜5で用いられている半導体用接着組成物は、30秒程度の接続時間で180〜200℃程度の加熱が必要であった。この理由は、短時間硬化性(速硬化性)と貯蔵安定性(保存性)の両立により良好な安定性を得ることを目的として、常温で不活性な触媒型硬化剤あるいはマイクロカプセル型潜在性硬化触媒を用いているために、硬化に際して十分な反応が得られないためである。また、生産効率向上のために10秒以下への接続時間の短縮化が求められてきており、例えば180℃程度で5秒という低温速硬化性が必要不可欠となっている。
【0004】
これに対し、特許文献6では不飽和基を有する化合物を熱ラジカル重合反応させることにより低温短時間硬化を図った半導体用接着組成物が提案されている。しかし、空気中の酸素や接着剤中の溶存酸素による重合の阻害が起こりやすいため、硬化が不十分となりやすく、接着性、耐熱性、信頼性に問題が生じる。特に半導体用接着組成物を回路基板上に搭載する際に半導体用接着組成物内部や回路基板との界面に巻き込んだ気泡の周辺部における半導体用接着組成物や実装した半導体チップ外周付近など外気に曝された部分の半導体用接着組成物の硬化が進行しにくい。このため半導体用接着組成物全体を硬化させるようとすると高温長時間の加熱が必要となる。
【0005】
一方、特許文献7、8で用いられている半導体用接着組成物は硬化物の低反り化や耐衝撃性向上を目的として、樹脂成分にポリエーテルエステルアミドまたはその変性体を含んでいるが、これらの半導体用接着組成物では180℃で10秒程度の加熱で硬化させることはできなかった。
【特許文献1】特開平3−16147号公報(特許請求の範囲、実施例部分)
【特許文献2】特開2004−315688号公報(特許請求の範囲、実施例部分)
【特許文献3】特開2004−319823号公報(特許請求の範囲、実施例部分)
【特許文献4】国際公開WO2006/132165号パンフレット(請求の範囲、実施例部分)
【特許文献5】特開2007−211246号公報(特許請求の範囲、実施例部分)
【特許文献6】特開平11−284025号公報(特許請求の範囲)
【特許文献7】特開2001−354938号公報(特許請求の範囲、実施例部分)
【特許文献8】特開2007−169312号公報(特許請求の範囲、実施例部分)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決すべく、低温速硬化性に優れる半導体用接着組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、(a)ポリエーテルエステルアミド、(b)エポキシ化合物および(c)アニオン性硬化促進剤を含有し、(b)エポキシ化合物を100重量部に対し、(a)ポリエーテルエステルアミドが5〜100重量部、(c)アニオン性硬化促進剤が20〜55重量部であり、(b)エポキシ化合物の液状エポキシ化合物の含有量が全エポキシ化合物に対し50重量%以上である半導体用接着組成物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低温速硬化性に優れる半導体用接着組成物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、(a)ポリエーテルエステルアミド、(b)エポキシ化合物および(c)アニオン性硬化促進剤を含有し、(b)エポキシ化合物を100重量部に対し、(a)ポリエーテルエステルアミドが5〜100重量部、(c)アニオン性硬化促進剤が20〜55重量部であり、(b)エポキシ化合物の液状エポキシ化合物の含有量が全エポキシ化合物に対し50重量%以上である半導体用接着組成物である。この構成にすることにより低温短時間硬化を実現することができる。これはアニオン性硬化促進剤によって開始された(b)エポキシ化合物の重合アニオン活性種がポリエーテルエステルアミドを用いることにより失活せずに安定な状態で存在し、アニオン重合が進行するために低温速硬化を実現できたと考えている。
【0010】
本発明に用いられる(a)ポリエーテルエステルアミドは、ポリアミド成分と、ポリオキシアルキレングリコールおよびジカルボン酸からなるポリエーテルエステル成分との反応で得られ、分子鎖中にアミド結合とエーテル結合とエステル結合とを有する重合体であって、ポリアミド成分は重合脂肪酸とジアミン成分との反応で得られる重合体である。このようなポリエーテルエステルアミドとしては、市販品を用いることもできる。ポリエーテルエステルアミドの市販品としては、富士化成工業(株)製TPAEシリーズ(TPAE12、TPAE31、TPAE32、TPAE38、TPAE8、TPAE10、TPAE100、TPAE23、TPAE63、TPAE200、TPAE201、TPAE260、TPAE260、TPAE826)を例示できる。
【0011】
(a)ポリエーテルエステルアミドの含有量は、(b)エポキシ化合物100重量部に対し、5〜100重量部である。この範囲でポリエーテルエステルアミドを使用することで180℃、5〜10秒程度の低温速硬化性の半導体用接着組成物を得ることができる。このほかに適度な凝集力や可撓性を付与することもできる。またポリエーテルエステルアミドを含むことにより、サーマルサイクル試験のような半導体装置の過酷な環境試験下においても安定した接着性や電気導通信頼性を得ることができる。さらに好ましい含有量は10〜50重量部である。これにより180℃、5秒程度の低温速硬化が可能となる。(a)ポリエーテルエステルアミドの含有量が5重量部未満であると、低温速硬化性の効果がなくなり、高温長時間の加熱が必要となる。このほか半導体用接着組成物の可撓性が損なわれ、スリット加工時の上刃と下刃の剪断応力により半導体用接着組成物が割れたり、剥離性基材から剥離しやすくなる。このほかにフリップチップ実装後の半導体チップと回路基板との接着性や電気導通信頼性が低下する。また(a)ポリエーテルエステルアミドの含有量が100重量部を越えた場合は、重合アニオン活性種のエポキシ化合物が相対的に希薄な状態となり、低温速硬化性の効果が少なくなる。また、低い架橋密度の半導体用接着組成物になり、耐熱性や接着性が低下する。
【0012】
本発明の半導体用接着組成物は(b)エポキシ化合物を含有し、液状エポキシ化合物の含有量が全エポキシ化合物に対し50重量%以上であることが必要である。本発明でいう液状エポキシ化合物とは、25℃、1.013×10N/mで150Pa・s以下の粘度を示すものである。
【0013】
この範囲で液状エポキシ化合物を使用することで半導体用接着組成物中における重合アニオン活性種の迅速なる拡散を付与することができ、低温速硬化が可能となる。さらに好ましくは60重量%以上である。これにより180℃、5秒程度の低温速硬化性の半導体用接着組成物を得ることができる。液状のエポキシ化合物が50重量%未満であると、半導体用接着組成物中における重合アニオン活性種の拡散が遅くなるため、高温長時間の加熱が必要となる。さらにフリップチップ実装後の半導体チップと回路基板との接着性や電気導通信頼性が低下する。
【0014】
液状エポキシ化合物としては、エピコート828、エピコート1002、エピコート1750、エピコート152、エピコート630(以上商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製)、エピクロンEXA−830LVP、エピクロンHP−7200、エピクロンHP4032(以上商品名、大日本インキ化学工業(株)製)などが挙げられる。一方、固形エポキシ化合物としては、エピコート1001、エピコート1002、エピコート1003、エピコート1010、YX4000H、エピコート5050、エピコート154、エピコート157S70、エピコート180S70(以上商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製)、テピックS、テピックG、テピックP(以上商品名、日産化学工業(株)製)、エポトートYH−434L(以上商品名、東都化成(株)製)、EPPN502H、NC3000(以上商品名、日本化薬(株)製)、エピクロンN695、エピクロンHP−7200、エピクロンHP−4700、エピクロンEXA−4701(以上商品名、大日本インキ化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0015】
本発明の半導体用接着組成物は、(c)アニオン性硬化促進剤を含有する。アニオン性硬化促進剤を使用することにより、半導体用接着組成物中において重合アニオン活性種が生成されるためにアニオン重合を行うことができる。本発明の効果を得る上では、(c)アニオン性硬化促進剤の含有量が(b)エポキシ化合物100重量部に対し20重量部以上55重量部以下であることが必要である。この範囲でアニオン性硬化促進剤を使用することで、180℃、5〜10秒程度の低温速硬化が可能となる。さらに(c)アニオン性硬化促進剤の含有量を(b)エポキシ化合物100重量部に対し30重量部以上55重量部以下にすることで、180℃、5秒程度の低温速硬化性の半導体用接着組成物を得ることができる。(b)エポキシ化合物100重量部に対して、(c)アニオン性硬化促進剤が20重量部未満であると、高温長時間の加熱が必要となる。また、半導体用接着組成物の硬化が不十分となり、半導体チップと回路基板との接着性や電気導通信頼性が低下する。一方、(b)エポキシ化合物100重量部に対して、(c)アニオン性硬化促進剤が55重量部を超えると、硬化後の半導体用接着組成物が脆くなり、接着性や電気導通信頼性が低下する。さらに、半導体用接着組成物が保管中に反応が進行し接着性が低下や電機導通信頼性が低下する。
【0016】
アニオン性硬化促進剤としては、エポキシ樹脂のアニオン重合を開始する能力のある化合物を指す。例として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、4級アンモニウムヒドロキシド等の水酸化物、ナトリウムアルコキシド等のアルコキシド類、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、4級アンモニウムヨウ化物等のヨウ化物、3級アミン等が挙げられる。
【0017】
中でも、アニオン重合開始剤としての能力が高いことから、3級アミンが好適に用いられる。3級アミンの具体例としては、トリエチルアミンジメチルベンジルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、3−ジメチルアミノプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、3−ジブチルアミノプロピルアミン、2−ジエチルアミノエチルアミン、1−ジエチルアミノ−4−アミノペンタン、N−(3−アミノプロピル)−N−メチルプロパンジアミン、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、1,4−ビス(2−アミノエチル)ピペラジン、3−(3−ジメチルアミノプロピル)プロピルアミン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、4−(2−アミノエチル)モルホリン、4−(3−アミノプロピル)モルホリン、イミダゾール誘導体等が挙げられる。中でも、アニオン重合開始剤としての能力が高く、エポキシ樹脂組成物を短時間で硬化できるという理由から、イミダゾール誘導体が好適に用いられる。
【0018】
イミダゾール誘導体としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−アミノエチル−2−メチルイミダゾール等が挙げられる。
【0019】
さらに本発明の半導体用接着組成物に使用する(c)アニオン性硬化促進剤はマイクロカプセル型アニオン性硬化促進剤であることが好ましい。マイクロカプセル型アニオン性硬化促進剤を使用することにより、高濃度に混合することができ、硬化時の半導体用接着組成物中において多量の重合アニオン活性種が生成されるために低温速硬化性が可能となる。さらに半導体用接着組成物の保管において半導体用接着組成物の反応が進行しにくいため、信頼性の高い半導体用接着組成物および半導体装置を得ることができる。
【0020】
マイクロカプセル型アニオン性硬化促進剤としては、イミダゾール誘導体をイソシアネートでアミンアダクト処理させたマイクロカプセル型アニオン性硬化促進剤であるノバキュアHX−3941HP、ノバキュアHXA3922HP、ノバキュアHXA3932HP、ノバキュアHXA3042HP(以上商品名、旭化成ケミカルズ(株)製)などが好ましく用いられる。
【0021】
これらマイクロカプセル型アニオン性硬化促進剤は液状エポキシ樹脂に分散されていることが好ましい。マイクロカプセル型アニオン性硬化促進剤と液状エポキシ樹脂との重量比は、マイクロカプセル型アニオン性硬化促進剤100重量部に対して、100重量部以上500重量部である。例えば、ノバキュア(商品名、旭化成ケミカルズ(株)製)を使用した場合は、マイクロカプセル型硬化促進剤100重量部に対して、液状エポキシが200重量部である。したがって、(c)マイクロカプセル型アニオン性硬化促進剤にノバキュア(商品名、旭化成ケミカルズ(株)製)を用いる場合には、(c)マイクロカプセル型アニオン性硬化促進剤と(b)エポキシ化合物の液状エポキシ樹脂を含むことになるが、本発明でいう(c)マイクロカプセル型アニオン性硬化促進剤の量とはこの液状エポキシ樹脂を除いた量のことをいう。また(c)マイクロカプセル型アニオン性硬化促進剤由来の液状エポキシ樹脂は、本発明における各成分の好ましい含有量の計算において、前記した(b)エポキシ化合物の量に含まれる。また、(c)マイクロカプセル型アニオン性硬化促進剤に他の硬化促進剤を併用して用いても良い。
【0022】
本発明の半導体用接着組成物は、熱可塑性樹脂として、例えば、フェノキシ樹脂、ポリイミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリプロピレン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)、スチレン−ブタジエン共重合体、(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン−メタクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−アクリル酸共重合体などを(a)ポリエーテルエステルアミドが100重量部に対し1000重量部以下の量を含有することができる。好ましくは500重量部以下であり、本発明の低温速硬化性の実現には100重量部以下の量まで含有することができる。これらの熱可塑性樹脂のうち耐熱性向上の点からポリイミドを用いることが好ましい。また、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン、フェノール樹脂など公知のエポキシ化合物用硬化剤を90モル%のエポキシ当量比まで含有することができる。また、シリカ、アルミナなどのフィラーを添加することができる。フィラーは半導体用接着組成物中で80体積%未満となるようにして含有させることで吸水性を少なくすることができ、かつ良好な接着性を得ることができる。さらに本発明の半導体用接着組成物には不純物イオンである、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ハロゲンイオン、特に塩素イオンや加水分解性塩素等を300ppm以下に低減することによりエレクトロマイグレーション防止や金属導体回路の腐食防止のために好ましい。
【0023】
本発明の半導体用接着組成物は前記した(a)ポリエーテルエステルアミドと(b)エポキシ化合物および(c)アニオン性硬化促進剤を含む組成物であれば、その形状は問わず、例えばペースト状でもフィルム状でも構わない。以下にフィルム状の半導体用接着組成物の製造例を以下に示す。
【0024】
本発明の半導体用接着組成物は、半導体用接着組成物を溶媒中で混合してワニス状としたものを剥離性基材α上に塗布、脱溶媒させてフィルム状の半導体用接着組成物を作製することができる。剥離性基材αとしては、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム等のフッ素樹脂フィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム等が挙げられる。また、剥離性基材αはシリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、脂肪族アミド系等で離型処理が施されていてもよい。剥離性基材αの厚みは200μm以下のものを使用することができるが、通常5〜75μmのものが好ましい。半導体用接着組成物への残留応力を少なくできる点から剥離性基材αの厚みは半導体用接着組成物の厚み以上とすることが好ましい。また、半導体用接着組成物の離型性基材αを有する面とは反対側の面にさらに別の剥離性基材βをラミネートして、剥離性基材で上下を挟まれた半導体用接着組成物にすることが好ましい。剥離性基材βの材質および厚みとしては、剥離性基材αと同様のものを用いることができる。剥離性基材βと剥離性基材αが同一のものであっても構わない。
【0025】
さらに、剥離性基材βと半導体用接着組成物間の接着力および剥離性基材αと半導体用接着組成物間の接着力は、「剥離性基材αと半導体用接着組成物との接着力>剥離性基材βと半導体用接着組成物との接着力」の関係であることが好ましい。特に接着力の差が5N/m以上であることが好ましく、47N/m以下であることが好ましい。接着力の差を5N/m以上とすることで、剥離性基材βを剥離する際に、半導体用接着組成物の剥離性基材αから剥がれや浮きを発生させないようにすることができ、接着力の差を47N/m以下とすることで、フィルムを剥離した際に剥離性基材α表面に半導体用接着組成物が残存しにくくなる。
【0026】
本発明の半導体用接着組成物は、半導体チップとチップ搭載基板との接着や電気回路接続のための接着剤として好適に使用することができる。本発明の半導体用接着組成物は、例えばフェイスダウン方式により半導体チップを回路基板と半導体用接着組成物で接着固定すると共に両者の電極どうしを電気的に接続する場合にも使用できる。すなわち、第一の接続端子を有する第一の回路部材と、第二の接続端子を有する第二の回路部材とを、第一の接続端子と第二の接続端子を対向して配置し、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子の間に本発明の半導体用接着組成物を介在させ、加熱加圧して前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子を電気的に接続させ半導体装置を製造する。このような回路部材としては半導体チップ、抵抗体チップ、コンデンサチップ等のチップ部品、プリント基板等の基板等が用いられる。この他に、リードフレーム固定テープ、LOC固定テープ、ダイボンディング材、ヒートスプレッダ、補強板、シールド材の接着剤、ソルダーレジスト等を作製するための接着剤として使用することができる。
【実施例】
【0027】
以下実施例等をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、実施例中の半導体用接着組成物の評価は以下の方法により行った。
【0028】
(a)ポリエーテルエステルアミド
TPAE−12、TPAE−32(以上商品名、富士化成工業(株)製)
(b)エポキシ化合物
固形エポキシ化合物
エピコート157S70(商品名、エポキシ当量:210g/eq、ジャパンエポキシレジン(株)製)
液状エポキシ化合物
エピコート828US(商品名、エポキシ当量:189g/eq、ジャパンエポキシレジン(株)製)
(c)アニオン性硬化促進剤
1−ベンジル−2−メチルイミダゾール(イミダゾール系硬化促進剤、商品名1B2MZ、四国化成工業(株)製)
マイクロカプセル型アニオン性硬化促進剤
ノバキュアHX−3792(商品名、旭化成ケミカルズ(株)製)中に含まれる液状エポキシ化合物。ノバキュアHX−3792は、マイクロカプセル型アニオン性硬化促進剤/液状エポキシ化合物が1/2であり、含まれる液状エポキシ化合物は、ビスフェノールビスフェノールA型エポキシ化合物である。表中のノバキュアHX−3792記載の重量部において、括弧内に記載した量がマイクロカプセルとしての重量部を示す。
【0029】
(d)溶剤:メチルエチルケトン/トルエン=3/1(重量比)。
【0030】
実施例1〜21および比較例1〜5
実施例1〜21および比較例1〜5の各成分について表1〜2に示す配合比になるように調合した。
【0031】
(1)半導体用接着組成物の作製方法
表1〜2の組成比で作製した半導体用接着組成物ワニスを、スリットダイコーター(塗工機)を用いて、剥離性基材αである厚さ60μmのポリプロピレンフィルム(商品名、トレファンBO型番2570A、片面コロナ放電処理品)の未処理面に塗布し、80℃で10分間乾燥を行った。乾燥後の厚みが25μmの半導体用接着フィルム上に剥離性基材βとして厚さ10μmのポリプロピレンフィルム(商品名、トレファンBO型番YK57、片面コロナ放電処理品)の未処理面をラミネートし、外径9.6cmの紙管上に剥離性基材αが内側になるようロール状に巻き取り、半導体用接着フィルムの両面に剥離性基材を有する原反(剥離性基材α、半導体用接着フィルム、剥離性基材βの3層構造)を得た。次に原反をフィルムスリッターを用いて2mm幅にスリットし、外径5.0cmのリール上に剥離性基材αが内側になるようロール状に巻き取り半導体用接着組成物の両面に剥離性基材を有する巻重体を得た。次に得られた巻重体は即時に(2)以降の工程への評価を行ったものと得られた巻重体を23℃・55%RHの環境下で1ヶ月間経過してから(2)以降の評価を行ったものの保存条件の異なる巻き重体について評価した。
【0032】
(2)テープ貼り付け工程
前記(1)の半導体用接着組成物の両面に剥離性基材を有する巻重体の半導体用接着組成物の回路基板への貼り付けは、テープ貼り合わせ装置(東レエンジニアリング(株)製、DA2000)を用いた。まず、半導体用接着組成物の両面に剥離性基材を有する巻重体から剥離性基材βを除去し、半導体用接着組成物面を露出させた。次いで、ステージ上に固定されたガラス回路基板に、剥離性基材βを剥離した後の半導体用接着組成物面を温度80℃、1秒間の条件で貼りあわせた後、剥離性基材αを除去した。
【0033】
(3)フリップチップボンディングおよび作製した液晶パネルの表示テスト
前記(2)で作製した半導体用接着組成物付きカラス回路基板上に半導体チップのフリップチップボンディングを行った。半導体チップの半導体用接着組成物付きガラス回路基板への接続は、フリップチップボンディング装置(東レエンジニアリング(株)製、FC−2000)を用いた。フリップチップボンディングは、温度100℃、圧力15N/チップ(870バンプ/チップ、17mN/バンプ)、時間1秒の条件で仮圧着したのち、温度180℃、圧力109N/バンプ(870バンプ/チップ、130mN/バンプ)の条件で時間を4秒、9秒、20秒と変更して本圧着を行った。ボンディング終了後、半導体付き回路基板を液晶基板に組み込み半導体装置を作製し、表示テストを行った。表示されたものは○、表示されないもの、またはノイズが発生しているものは×とした。結果を表1〜2に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
実施例22〜42および比較例6〜10
実施例22〜42および比較例6〜10の各成分について表3〜4に示す配合比になるように調合した以外は実施例1と同様に半導体用接着組成物を作製し評価を行った。
【0037】
【表3】

【0038】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の半導体用接着組成物は、IC、LSIなど半導体チップをフレキシブル基板、ガラスエポキシ基板、ガラス基板、セラミックス基板などの回路基板に直接電気的接合する接着剤として好適に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリエーテルエステルアミド、(b)エポキシ化合物および(c)アニオン性硬化促進剤を含有し、(b)エポキシ化合物を100重量部に対し、(a)ポリエーテルエステルアミドが5〜100重量部、(c)アニオン性硬化促進剤が20〜55重量部であり、(b)エポキシ化合物の液状エポキシ化合物の含有量が全エポキシ化合物に対し50重量%以上である半導体用接着組成物。
【請求項2】
(c)アニオン性硬化促進剤がマイクロカプセル型アニオン性硬化促進剤である請求項1記載の半導体用接着組成物。
【請求項3】
相対向する回路電極を有する基板間に請求項1または2記載の半導体用接着組成物を介在させ、相対向する回路電極を有する基板を加圧して加圧方向の電極間を電気的に接続した半導体装置の製造方法。

【公開番号】特開2010−147042(P2010−147042A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319154(P2008−319154)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】