説明

半導体用途用のダイ取付接着剤、半導体デバイスを製造する方法、およびそのような方法により製造される半導体デバイス

【課題】チップとチップ支持体の間に所定の大きさの間隔をもつ空間を創り出すことを可能にするダイ取付接着剤を提供すること。
【解決手段】ダイ取付接着剤は、硬化性高分子基材と共に、前記高分子基材中に含まれる、接着剤によって接合される基板間に平坦な接着剤層厚さを与えるのに十分な量で組成物中に存在する、平均粒径が1μm〜1000μmであり、短軸に対する長軸のアスペクト比が約1.0〜1.5である無機絶縁体粒子と、前記硬化性高分子基材の量を基準にして少なくとも50質量%を超える量であって、5℃/分の昇温速度で求めた場合に−55℃から+200℃の間で任意のガラス転移温度前後で240μm/m/℃未満の任意の線熱膨張係数を有する接着剤を得るのに十分な量で存在する少なくとも1種の低熱膨張係数充填剤とを含み、10μm〜100μmの範囲内のサイズを有する前記低熱膨張係数充填剤が0.1質量%未満の量で存在することを特徴とする硬化性接着剤組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する本発明は、ダイ取付接着剤とそれらの使用方法、ならびにその方法の使用により得られるデバイスに関する。
【0002】
一例として半導体チップを用いる場合、本発明の接着剤とそれらの使用方法は、チップ(ダイ)とチップ支持体の間の界面を提供する。この方法は、チップとチップ支持体の間に所定の大きさの間隔をもつ空間を創り出すことを伴う。
【0003】
半導体アッセンブリの構造中に硬化性エラストマー材料を用いて半導体とその支持体の間に空間を創り出せることが分かっており、このような構造は下記で考察する従来技術の米国特許中に開示されている。最も一般的なものは、回路パネルまたはチップハウジングを含むチップキャリアパッケージの一部を形成するポリイミドフィルムなどの基板上の1個またはそれよりも多くの半導体チップのアッセンブリである。
【0004】
チップキャリアは、一連の端子を有する誘電体層を含み、またリードも含む場合がある。このチップキャリアは、リードまたはワイヤボンドを介して半導体チップに固定される。エラストマー材料は、チップとチップキャリアの可撓性の誘電体層の間に配置される。このチップキャリアおよびエラストマー材料は、当業者によって「インターポーザ(interposer)」または「インターポーザ層」とも呼ばれている。チップキャリアのリードまたはワイヤボンドは、そのキャリアの端子がチップの接点に電気的に接続されるようにチップに結合される。次に、この構造物全体を、回路パネルすなわちチップハウジングなどの基板に装着することができる。チップキャリアの端子は基板の接点に電気的に接続される。エラストマー層が個々の端子に弾力を与えることによって、各端子は試験の間および最終的なアッセンブリ自体においてトレランスに適応するように必要に応じて動くことができる。
【背景技術】
【0005】
今述べた情報の詳細は、チップデバイスの製造について記載した、Sweis他に対して1995年12月26日に発行された米国特許第5,477,611号の中に見られる。
【0006】
Khandros他に対して1992年9月15日に発行された米国特許第5,148,266号、Khandros他に対して1994年9月13日に発行された米国特許第5,346,861号、およびKhandros他に対して1994年9月13日に発行された米国特許第5,347,159号は、同じ基本的な開示に基づいており、それらはまたチップアッセンブリの構成部品およびそれらの現在の製造方法を示すのに適切である。米国特許第5,477,611号には、チップと基板の間にギャップを創り出すための液状樹脂の使用が示されている。この材料は液体として注入され、次いで硬化(キュア)される。この開示は、材料がチップの形状の縁部に到達して全ての外縁部に沿ってメニスカスを生じ、それが大気にさらされ、そのメニスカスがインターポーズ層の最終硬化に先立って硬化することを示す。メニスカスを介する縁部のこの「B段階」が、最終硬化が行われるまでチップと基板の間に液体を閉じ込めるin-situ金型を創り出す。
【0007】
本発明により提供されるようなチップと基板の間にギャップを創り出すことについては、インターポーザ材料として硬化性液体を使用するこの開示を除いて前述の特許の中には何もない。
【0008】
チップと基板の間にギャップを創り出すスペーサとして粒状材料を使用することについて論じた従来技術に関しては、平均粒径が100〜1,000μmであり、短軸に対する長軸の比が1.0〜1.5である球状充填剤を含有する硬化性ポリマー組成物を基材とするダイ取付接着剤の使用について開示するIsshiki他の名で1999年7月8日に出願された特願平11−193828号を知っておかなければならない。そこで開示され強調されていることは、特定の粒度の無機の球状充填剤を組成物中でスペーサとして使用することである。
【0009】
同様に、Yamaka他の名で1999年7月8日に出願された特願平11−193829号には、半導体チップをチップマウント部品に結合するためのダイ取付接着剤であって、平均粒径が10〜100μmであり、短軸に対する長軸の比が1.0〜1.5であるスペーサ粒子としての球状充填剤を含有する硬化性ポリマー組成物を含み、これら充填剤が、それらの配合物に約1〜900ppmの範囲の量で用いられるダイ取付接着剤について論じられている。
【0010】
最後に特開平7−292343号には、半導体デバイス用の接着剤であって、(A)1分子当たりケイ素原子と結合したアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、(B)1分子当たりケイ素原子と結合した水素原子を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、(C)ケイ素原子と結合したアルコキシ基を有する有機ケイ素化合物、(D)平均粒径が10〜100μmであり、短径に対する長径の比が1.0〜1.5である有機または無機の球状充填剤、および(E)触媒量の白金または白金化合物から構成される。
【0011】
上記引用文献のどれも、スペーサビーズとしての無機絶縁性粒子に基づく優れたダイ取付接着剤に関する本発明について記載した重要なパラメーターは認識していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本明細書で本発明として開示するのは、硬化性ポリマーおよび/または樹脂と、半導体ダイと取付基板の間のすぐれた平坦性を可能にするのに十分な量の無機スペーサ充填剤と、低熱膨張係数充填剤とを含む接着剤組成物である。この組み合わせは、最適なダイの取り付けと、チップ接着性能の改善をもたらす。
【0013】
このような接着剤を用いてチップデバイスを製造する方法と、このチップデバイスそれ自体についても開示する。本明細書中で開示する方法の利点は、本発明のダイ取付接着剤の性質ゆえに従来技術の製造法を用いる場合の5ステップ以上の工程段階とは対照的に2〜3ステップの工程段階を必要とするに過ぎないということである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本明細書中で開示され、また特許請求されるのは、硬化性高分子基材と共に、この高分子基材中に含められた、平均粒度が1μm〜1000μmであり、短軸に対する長軸のアスペクト比が約1.0〜1.5である無機絶縁性粒子と、硬化性高分子基材の量を基準として少なくとも50質量%を超える量であって、5℃/分の昇温速度で求めた場合に−55℃から+200℃の間で任意のガラス転移温度前後で240μm/m/℃未満の線熱膨張係数を有する接着剤を得るのに十分な量で存在する少なくとも1種の低熱膨張係数充填剤を含み、10〜100μmの範囲内のサイズを有する低熱膨張係数充填剤が0.1質量%未満の量で存在する硬化性接着剤組成物である。
【0015】
さらに半導体デバイスである本発明の別の実施態様があり、これは上記接着剤組成物によって少なくとも2個の個別の基板を接合し結合するものである。
【0016】
本発明のさらに別の実施態様は、少なくとも2個の個別の基板を接合する方法であり、この方法は少なくとも1個の個別の基板の少なくとも1つの表面に上記接着剤組成物を適用し、次に、別の個別の基板を上記基板の接着剤処理された側に取り付けて積層体を形成することを含む。次に、その積層体に圧力および/または温度を加えて各基板が接着剤組成物の最も大きい無機絶縁体粒子と接触するまで層間に接着剤を分散させた後、接着剤組成物を硬化させる。圧力と熱を同時に加えることも本発明の範囲内と考えており、圧力を加えること及び熱を加えることはこの方法で2ステップ以上の形態をとることもできるが好ましい方式は圧力と熱を同時に加えることである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の接着剤を使用して製造することができる完全にパッケージされたデバイスの図であって、その全体側面図である。
【図2】図2は、実施例で使用した本発明の接着剤の分散を示す図である。
【図3】図3は、スペーサビーズを含有する接着剤を基板上に有した状態の、封入前のダイの概略図である。
【図4】図4は、スペーサビーズを含有する接着剤を基板上に有した状態の、ポリマーパッケージプロセスの完了後のダイの概略図である。
【図5】図5は、本発明の方法において述べたようにダイに圧力を加えた際のダイ取付接着剤の起こり得る分散を示す概略図である。
【図6】本発明の方法の一つである予備硬化高分子スペーサ印刷ダイ法の概略図である。
【図7】図7は、本発明の別の方法である予備硬化高分子スペーサ分散ダイ法の概略図である。
【図8】図8は、本発明の別の方法である印刷または分配ダイ取付パッド法の概略図である。
【図9】図9は、本発明の別の方法である印刷または分配セグメントパッド法の概略図である。
【図10】図10は、本発明の接着剤を使用することにより製造できる本発明のさらに別のデバイスを示す図であり、パッケージ中の別の半導体ダイの上に重ねられた1つの半導体ダイが全体側面図で示されている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に硬化性のベースの接着剤組成物を説明するが、その接着剤がチップを任意の所望の基板に結合できる限り、任意の硬化性高分子接着剤組成物を基材として提供することは本発明の範囲内と考えている。そのような硬化性高分子組成物は当業界で周知であり、硬化性シリコーン組成物、硬化性エポキシ組成物、硬化性ポリイミド組成物、または硬化性アクリル組成物のいずれでであってもよい。硬化性エポキシおよびシリコーン組成物が本発明には好ましく、硬化性シリコーン組成物が非常に好ましい。
【0019】
Dent他に対して1999年11月2日に発行された米国特許第5,977,226号、Lee他に対して1988年8月23日に発行された米国特許第4,766,176号、およびAtsusi他に対して1991年5月21日に発行された米国特許第5,017,654号に開示され、記述されている組成物が特に好ましく、その組成物およびそのような組成物の調製に関する教示は本明細書で援用する。
【0020】
低熱膨張係数(CTE)充填剤は、その配合されるものとの適合性があり、それに加えて低い熱膨張係数をもたらす任意の充填剤であることができる。そのようなCTE充填剤は、金属酸化物、例えば窒化ホウ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなど、高分子材料またはカップリング剤でコートされたそれらの材料、金属窒化物、ガラス、および他のそのような無機の電気的絶縁体粒子から選択される。粒子は、10μm未満の粒度を有し、約50質量%を超える量であって、5℃/分の昇温速度で求めた場合に−55℃から+200℃の間でガラス転移温度前後で240μm/m/℃未満の線熱膨張係数を有する接着剤を得るのに十分な量で存在することが好ましい。
【0021】
そのような充填剤の利点は、この開示において下記に示す実施例中で提供される情報とあいまって当業者に明らかになるであろう。
【0022】
当業者は、本発明の接着剤組成物の硬化の方式が重要ではなく、縮合反応、付加反応、紫外線開始反応、および遊離基開始反応などの硬化機構を含むことができることに注目すべきである。
【0023】
付加反応および紫外線開始反応によって硬化されるものが本発明の接着剤組成物には好ましく、付加反応に基づくものが特に好ましく、また、ある分子のケイ素原子に結合している水素が別の分子のケイ素原子上に結合している不飽和基に付加され、その反応が白金触媒により触媒されるシリコーン組成物の付加反応に基づくものが非常に好ましい。この白金触媒は、好ましくは上記の米国特許第4,766,176号中に記載され、開示されているものである。
【0024】
次に本発明のデバイスの説明に移るので、図1を参照されたい。図1には、本発明の接着剤組成物及び方法により製造された完全にパッケージされたデバイス1が示されており、この図には、ダイ2と、ポリイミド、エポキシ−ガラス繊維又は他の基板であることができる回路基板であって、可撓性であっても剛性であってもよい当該技術分野で周知の材料であることができる回路基板3と、スペーサ粒子4と、接着剤5と、中央リードボンド6と、カバーレイ7と、封入材8と、はんだボール9が示されている。スペーサ粒子4は、本発明の目的上、別個の異なる多数の層で実質的に全てが同じ粒度を有していても異なる粒度を有していてもよい。このデバイスの製造方法は後述する。
【0025】
図10には、本発明の接着剤を用いて製造することができる本発明に係るさらに別のデバイスパッケージ11が示されている。この図では、別のデバイスパッケージ11の全体側面図が示されており、1つの半導体ダイ12が半導体ダイ2の上に重ねられて前記パッケージ11を形成している。
【0026】
すなわち、可撓性でも剛性でもよい回路基板3、ダイ2と基板3の間のスペーサビーズ4を含有するダイ取付接着剤5に加えて、リードボンド6、はんだボール9、ならびにダイ取付接着剤の別の層13が示されている。ダイ取付接着剤13はスペーサビーズ14を含有し、このスペーサビーズ14は、本発明の一態様を例示するため、ダイ取付接着剤5のスペーサビーズ6よりも粒度が小さい。このスペーサビーズ(粒子)の粒度は、製造業者の必要性に応じて様々なレベル間で異なっていてもよく、また実質的に同じであってもよいことに当業者は注目されたい。
【0027】
そのようなデバイス11の組立ては、予め基板回路3を搭載した回路板15に、スペーサビーズ6を含有する接着剤5を適用することによって行われる。次に、熱いダイ2をこの接着剤5の上に置き、ダイ2の下方に接着剤5を均一に広げるのに十分な力を加える。実施例のダイ取付接着剤の粘度を検討すれば分かるように高い圧力は必要ではない。
【0028】
熱がダイ取付接着剤5を部分的に硬化し、スペーサビーズ6が基板3の表面からのダイ2の高さを制御するための機構を提供する。次に、第1のダイ2の上に接着剤13を適用することによって、予め装着されたダイ2の上に別のダイ12を加えることができる。上部のダイ12が接着剤13上に熱した状態で置かれ、ダイ12から基板に導くボンディング操作において後続のワイヤ6が備え付けられる所定の位置に部品を保持することを可能にするように接着剤を部分的に硬化する。ダイ取付接着剤5および13の完全な硬化は、パッケージ11の上でオーバーモールディングを行ったときに完了する。オーバーモールディングを適用し硬化させたら、はんだボール9を加えてパッケージ11のパッケージングが完了する。
【0029】
下記の実施例において本発明のダイ取付接着剤組成物をより詳しく例示する。特に断らない限り、全ての部数および百分率は質量に基づくものである。これらの実施例は本発明をさらに例示するためのもので、決して本発明を限定するものと見なされるべきではない。
【0030】
粘度の測定は、2つの方法を用いて行なった。1つの方法は、直径40mmのアルミニウム板を備えたRDA II平行板レオメーターを使用して、特定のせん断速度で0.05%の一定の歪を用いて25℃で未硬化の組成物の性質を求めるものである。もう一方の方法は、デラウェア州ニューカッスル(Newcastle)所在のTA Instruments, Inc.製のCP−20圧縮レオメーターにより、25℃、1500ダイン定荷重で、2cmのプレートを用いて、性質を求めるものである。
【0031】
硬化発熱ピーク温度は、Seiko示差走査熱量計モデル220C(カリフォルニア州トレンス(Torrance)所在のSeiko Instruments)を用いて、アルミニウム製試料皿中で材料20〜25mgを25〜30cc/分ヘリウムガス(高純度圧縮ヘリウムUN1046、ペンシルベニア州ラドナー(Radnor)所在のAirgas, Inc.製)でパージしながら25℃から200℃まで10℃/分で加熱することによって測定した。基準として空のアルミニウム製試料皿について測定した。
【0032】
本明細書中で用いた充填剤の全ての粒度および表面積は、その供給業者から得た。充填剤の表面積は、Quantachrome Monosorb B.E.T.法により求めた。
【0033】
本明細書中で用いた無機スペーサ粒子は、所定の目開きを有するTyler Goldシリーズのフルハイト(full height)8インチ径のワイヤメッシュふるいを用いて分離した。
【0034】
破断点モジュラス、破断点伸びおよび破断点引張強さは、次のようにして求めた。すなわち、成形したスラブから引張試験片を切り出し、1kNロードセルを備えたMonsanto Tensometer 2000を用いて引張速度20インチ/分で試験した。この手順はASTM D412に詳細に記載されており、引張試験片を切り出すのに0.25インチ幅のダイを使用する。
【0035】
体積抵抗率は、ASTM D257-99に記載の保護電極法を用いて室温で測定した。
【0036】
比重測定は、ASTM D792に従って湿潤/乾燥天秤法の大筋を用いて行った。試験試料を、成形し、硬化させ、約1インチ×1インチのスラブに切り分けた。
【0037】
ジュロメーター試験は、ショアーAジュロメーターおよび71200 Conveloader(両方ともShore Instrument Manufacturing Companyから入手)を用いてASTM D2240に従って行った。試験試料を、成形し、硬化させ、約1インチ×1インチのスラブに切り分け、次いで0.25インチを超える厚さまで重ねてからジュロメーター測定を行なった。
【0038】
誘電率および誘電正接は、1615-A型(Scheringタイプ)キャパシタンスブリッジ、722D型コンデンサ、1316型発振器、1690型固体試料ホルダ、ならびに1401型NISTエアキャパシタンス標準(これらは全てカリフォルニア州ポーウェイ(Poway)所在のGeneral Radio Co.から購入した)を用いて所定の周波数で測定した。これらの測定は、硬化した成形スラブを用いてASTM D150に従って行った。
【0039】
試料の絶縁耐力は、110kV Hypot機型番4862M2(イリノイ州レーク・フォレスト(Lake Forest)所在のAssociated Research, Inc.から購入した)を用いてASTM D149に従って測定した。硬化した成形スラブをこの試験に用いた。
【0040】
線熱膨張係数(CTE)の結果は、25℃から200℃まで5℃/分の加熱速度で、100cc/分の窒素パージを用いて、TA Instrumentsモデル2940 TMA(熱機械分析計)により集めた。この試験試料は、成形、硬化し、次いで0.25インチ(約0.64cm)径のダイを用いて切り出した。
【0041】
モジュラス、伸び、引張強さ、体積抵抗率、比重、ジュロメーター、誘電率、誘電正接、絶縁耐力、およびCTEの試験試料は全て、アルミニウム製チェースモールドを用いてDake Press中で圧力10トンで150℃で1時間硬化させた幅10インチ×長さ10インチ×厚さ0.090インチの成形スラブから取った。試料は、必要に応じてまたは各試験に関するASTM標準に従ってこれらの成形スラブから切り出した。
【0042】
ダイ実装性能試験用の接着剤の配置は、0.25インチ幅のステンレス鋼製スパチュラを用いて少量を基板上に分配、印刷または配置することによって行った。未硬化接着剤の分配を行う場合は、CAM/ALOT 1818ディスペンサ(マサチューセッツ州ヘイバリル(Haverhill)所在のCamalot Systems, Inc.製)を用いた。未硬化接着剤の印刷を行う場合は、Speedline MPMモデルSPMプリンタ(マサチューセッツ州フランクリン(Franklin)所在のSpeedline Technologies, Inc.製)を用いた。
【実施例】
【0043】
実施例1
この実施例は、本発明に係る組成物のうちの一つの調製を示すものである。
【0044】
次の成分(a)および(b)を所定の温度まで加熱し、次に、ゆっくりと冷却しながら25℃で均一になるまで1時間混合して得たブレンドAを60℃とした。
a.99.66部の、1分子当たり平均5個のHMeSiO2/2 単位と3個のMeSiO2/2 単位を含み、4.8×10-3Pa・sの粘度を有するトリメチルシロキシ末端ジメチルメチルハイドロジェンシロキサン、および
b.1.98部の2−フェニル−3−ブチン−2−オール。
この実施例の接着剤組成物は、次の成分からなる。
(c)466.39部の、{(CH32CH2=CHSiO}1/2単位、{(CH33SiO}1/2単位およびSiO4/2単位から本質的になり、SiO4/2に対する全トリオルガノシロキサン単位のモル比が約0.7:1である樹脂、
(d)88.83部の、830の平均重合度及び55Pa・sの粘度を有するジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
(e)1027.58部の、434の平均重合度及び2Pa・sの粘度を有するジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
(f)18.6部の、45nmの平均粒度を有するカーボンブラック粉末、
(g)92.4部の上記ブレンドA、
(h)180部の、ポリジメチルシロキサン流体で処理されたヒュームドシリカ、
(i)3600部の、1.0〜1.5のアスペクト比および5μmの平均粒度を有する球状溶融シリカ、
(j)450部の、125ミクロンの篩と106ミクロンの篩の間で集められた0.10mmの平均粒度及び1.0〜1.5のアスペクト比を有する球状溶融シリカ、
(k)76.2部の、1,3−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの白金錯体。
【0045】
成分(c)、(d)、(e)、(f)、(h)および(i)をせん断ミキサーに入れ、均一にブレンドした。次に、攪拌を続けながらこの混合物を150℃に加熱した。混合物をこの温度に1時間保ち、次いで混合を続けながらこの混合物を50℃未満に冷却した。次に、全成分の均質ブレンドが得られるように適切な混合を用いて25℃〜50℃で成分(g)、(j)および(k)を先の成分に加え、最終的な接着剤を得た。試験結果を表Iに示す。
【0046】
他のパッケージング基板では、信頼性試験のために、Tessera TV-62中央リードボンドμBGA(商標)デイジーチェーンシリコン試験ダイ(カリフォルニア州サンジョゼ(San Jose)所在のTessera Inc.)を回路基板3(この場合、ポリイミドTABテープ基板)と集成するのに上記接着剤を用いた。図2は、接着剤5を回路基板3(この場合、ポリイミドTABテープ)に堆積させようとする位置に位置する直径0.025インチのレーザーにより穿たれた穴を有する厚さ0.006インチのステンレス鋼ステンシルを介して印刷した場合の接着剤パターンの概略図を示すものである。ダイ取付接着剤5の印刷されたドット10は、直径が約0.030インチである。それらのドットは、ポリイミドTABテープ回路基板3の上に印刷され、次に、ダイ2は、未硬化の接着剤ドット10の上に、約200℃で500ミリ秒の滞留時間で十分な力(実施例のダイ取付接着剤の粘度から判るように高い圧力は必要ではない)を用いて配置され、ダイ2を接着剤5中のスペーサビーズ4と密着させる。ダイ2を図2において点線で示されている○の位置に配置した。ダイ2を配置している間の加熱によって、接着剤5は部分的に硬化し、後硬化が起こるまでダイ2を所定の位置に保持する。
【0047】
図3は、ポリイミドTABテープ回路基板3上に配置されたダイ2の明りょうな概略図を示すものであり、充填されたシリコーン接着剤5中のスペーサ4が、ポリイミドTABテープ回路基板3の表面から一定の高さにダイ2を保持している。
【0048】
図4に、ポリマーパッケージング法の完了後のダイ2を示す。ダイ2を取り付けた後、サーモソニック・リード・ボンディングを行なって、中央リードボンド6をダイ2に結合させた。封入材8を適用するときにその封入材が流れ出るのを防止するために、取り外し可能なテープ7(カバーレイ)をポリイミドTABテープ回路基板3の底部に貼り付けた。リードボンディングの次に、Dow Corning(商標)6820マイクロエレクトロニック封入材(50℃から150までの線熱膨張係数(CTE)が195ppm/℃であるシリコーン封入材)を25℃で分配してダイ2の下方及び周囲に流動させた。封入材8がダイ2の下方及び周囲を十分に流動したら、複合パッケージ(composite package)1全体を150℃で1時間加熱してダイ取付接着剤5を後硬化させると共に封入材8を完全に硬化させた。次に、カバーレイ7を除去した。最後に、ポリマーパッケージング材料が硬化したら、はんだボール9をポリイミドTABテープ回路基板3の底部に配置して図1に示すようなパッケージを完成した。
【0049】
図1に示すようなパッケージの環境ストレス下での試験によって、表IIに示す測定結果を得た。さらに、分配は、極わずかなテーリング(tailing)を示し、印刷は、多くの様々な印刷速度及び圧力で行なうことができ、各場合に優れた結果が得られた(方法:ウレタンスキージ、20インチ×20インチのステンシル枠、0.006厚のステンシル、0.025インチの穴、8〜30ポンドの圧力、1インチ/分〜2インチ/秒の速度)。信頼性試験のために作製したパッケージ間での変動を0.0005インチ未満に抑えてダイ2の高さを0.005インチの調節した。
【0050】
接着剤の小さなドット10を分配又は印刷し、そしてダイ下方の残りの領域に封入材8を充填することに加えて、ダイ下方の全領域にダイ取付接着剤5を充填することができ、封入段階中にダイ下方に封入材が流れるのに要する時間の大部分をなくした。1本の斜めの線16上にダイ取付接着剤5を施し、この最初の線16と交差するもう1本の斜めの線17上にダイ取付接着剤5を施すことによって図5に示すような「X」形状のパターンを作った場合に、ダイ取付接着剤5は中央部に小山を形成し、この小山は、適量の接着剤が使用された場合には、ダイ2の端部まで押し広げられる。記号「AF」の付いた矢印は、ダイ取付接着剤の2次的な流れの方向を示す。ダイの形状に応じて様々なパターンを使用できた。シリカ充填剤のレベルを調節することによって、パッケージのタイプに応じて様々なダイ適用圧力を使用することができる。
【0051】
比較例
次の実施例は、本発明の方法を用いて従来技術のデバイスパッケージング法から除去することができるけれども、パッケージされた部品に優れた信頼性を与える重要な加工ステップを示すものである。
【0052】
デバイスパッケージは、印刷されたシリコーンスペーサを用いて作られてきた。しかしながらダイ取付接着剤は、ダイを取り付けるためにスペーサ上に印刷するか、またはスペーサ間に分配しなければならない。パッド接着剤は、それに用いられるライナーを取り除くために余分のステップを必要とする。下記の「工程段階表」は、従来技術による標準デバイスパッケージング用製品の代わりに本発明の組成物を用いた場合に除去できる工程段階を示す。
【0053】
ダイ取付を行うには基本的に4つの方法がある。そのうちの1つの方法は、ここでは説明しない、なぜなら、その方法はスペーサビーズを含まないダイ取付材料を使用するからである。そのような方法を用いる従来法はすべて、リードボンドの信頼性が高いままであるように回路基板からのダイの高さを調節しなければならない。リードの形状はその信頼性と直接関係があり、基板からの高さがリードの形状を支配する。下記の方法は、本発明のダイ取付接着剤を例示するものである。
【0054】
第1の方法、すなわち予備硬化高分子スペーサ印刷ダイ取付法では、図6を参照すると、スペーサ4を印刷し、次に硬化させ、次いでその硬化したスペーサ4の上にダイ取付接着剤5を印刷する。ダイ2がダイ取付接着剤5上に装着されるようにダイ2に圧力Pを加える。また説明のための図6にはポリイミド基板3、ダイ2を示し、また最終製品18を与える組立ラインの移動方向を示すために図の右側に移動する横向きの移動を表す矢印Lも示す。
【0055】
第2の方法、すなわち予備硬化高分子スペーサ分配ダイ取付法は、印刷されたスペーサ4を用いるものであり、次いでダイ取付接着剤5がその上に分配され、硬化したスペーサを取り囲む。ダイ2、印刷されたスペーサ4、およびその印刷されたスペーサ4を取り囲む未硬化の分配されたダイ取付接着剤5を示す図7を参照されたい。最終製品は19として示されている。
【0056】
第3の方法、すなわち印刷または分配ダイ取付パッド法で、きわめて一般的な方法は、パッド接着剤を用いるものである。図8を参照するとスペーサビーズ4、接着剤のパッド5、スペーサビーズ4と平面上で整列していないスペーサ20、ポリイミドフィルム3、および完成した製品21が示される。
【0057】
図9に図示されている第4の方法、すなわち印刷または分配セグメントパッド法を見ることができ、未硬化のステンシル印刷されたダイ取付ドット22がポリイミドフィルム3上に配置される。その後、ダイ2を接着剤に押し当て、スペーサ4によりポリイミドフィルムから所定の距離で停止させる。次に、この複合体を硬化させて製品23を得る。
【0058】
これらの方法を従来のプロセスで用いる場合、より多くの工程段階が存在するか、またはその方法の重大な欠点が存在することが下記の工程段階表から認められ、これらの方法は実行するのにより多くの時間を費やす傾向がある。本発明の組成物は特別なステップも、ダイ取付物を得るのに必要なステップを実行するための長い時間も必要とせず、また、時間、温度、圧力および基材のレオロジーの調節を行うことに伴う複雑さがない。ダイ取付接着剤5は、ドットを分配または印刷することによってドットとして与えられるか、あるいは分配されてパッドを形成することができ、熱と圧力を同時に加えることができる。ここで、本発明の方法を工程段階表の中でA及びBとして示す。本発明の組成物に対して従来技術の方法も使用できることが当然に理解されよう。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性高分子基材と共に、前記高分子基材中に含まれる、
(I)接着剤によって接合される基板間に平坦な接着剤層厚さを与えるのに十分な量で組成物中に存在する、平均粒度が1μm〜1000μmであり、短軸に対する長軸の比が約1.0〜1.5である無機絶縁体粒子と、
(II)前記硬化性高分子基材の質量を基準にして少なくとも50質量%を超える量の、10μm未満の平均粒度を有する少なくとも1種の低熱膨張係数充填剤、
とを含み、10μm〜100μmの範囲内のサイズを有する前記低熱膨張係数充填剤が接着剤組成物中に存在する低熱膨張係数充填剤の全質量を基準として0.1質量%未満の量で存在することを特徴とする硬化性接着剤組成物。
【請求項2】
前記無機絶縁体粒子が溶融シリカ粒子である請求項1に記載の硬化性接着剤組成物。
【請求項3】
前記無機絶縁体粒子がアルミナ粒子である請求項1に記載の硬化性接着剤組成物。
【請求項4】
少なくとも2個の個別の基板が請求項1に記載の接着剤組成物により接合されて結合されている半導体デバイス。
【請求項5】
少なくとも2個の個別の基板を接合する方法であって、
(I)請求項1に記載の接着剤組成物を前記個別の基板のうちの少なくとも1個の少なくとも1つの表面に適用し、
(II)(I)の基板の接着剤処理された側に別の個別の基板を取り付けてそれらの積層体を形成し、
(III)前記基板のそれぞれが前記接着剤組成物の最も大きい有機絶縁体粒子と接触するまで前記積層体に圧力を加えてそれらの間に接着剤を分散させ、その後、
(IV)前記接着剤組成物を硬化させること、
を含む方法。
【請求項6】
さらにステップ(III)において熱を加える請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記2個の個別の基板が半導体ダイとその半導体ダイ用の取付基板である請求項4に記載の半導体デバイス。
【請求項8】
前記2個の個別の基板が半導体ダイとその半導体ダイ用の取付基板である請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記接着剤の基材が、
(a)硬化性シリコーン組成物、
(b)硬化性エポキシ組成物、
(c)硬化性ポリイミド組成物、および
(d)硬化性アクリル組成物、
から本質的になる群から選択される請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項10】
(ii)縮合反応、
(iii)付加反応、
(iv)紫外線開始輻射線反応、および
(v)遊離基開始反応、
から本質的になる群から選択される硬化機構を有する請求項9に記載の接着剤組成物。
【請求項11】
前記接着剤の基材がシリコーン組成物である請求項9に記載の接着剤組成物。
【請求項12】
前記シリコーン組成物が付加反応により硬化可能なシリコーン組成物である請求項11に記載の接着剤組成物。
【請求項13】
前記接着剤の基材がエポキシ組成物である請求項9に記載の接着剤組成物。
【請求項14】
絶縁性粒子が、5℃/分の昇温速度で求めた場合に−55℃から+200℃の間で任意のガラス転移温度前後で240μm/m/℃未満の任意の線熱膨張係数を有する接着剤を得るのに十分な量で存在する接着剤組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−157559(P2011−157559A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−90086(P2011−90086)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【分割の表示】特願2003−529862(P2003−529862)の分割
【原出願日】平成14年8月23日(2002.8.23)
【出願人】(590001418)ダウ コーニング コーポレーション (166)
【氏名又は名称原語表記】DOW CORNING CORPORATION
【Fターム(参考)】