説明

半導体発光素子、電極構造および発光装置

【課題】半導体に給電するための電極の接合性および電極の信頼性を向上させることを目的とする。
【解決手段】半導体発光素子1は、n型半導体層140、発光層150、p型半導体層170、透明導電層170、透明導電層170上に形成されるp電極300、n型半導体層140上に形成されるn電極400を備える。p電極300は、Auを含む金属材料で構成され、外部に露出するように設けられるp側第2金属層332と、Auを含むとともにp側第2金属層332よりも硬度が高い金属材料で構成され、p側第2金属層332よりも透明導電層170に近い側に、p側第2金属層332に沿って設けられるp側第1金属層331とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子、電極構造および発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
III−V族化合物半導体やII−IV族化合物半導体等の化合物半導体からなるn型半導体層、発光層およびp型半導体層が順に積層された積層半導体層を有する半導体発光素子が広く用いられている。
近年、短波長発光素子用の半導体材料として、GaN系化合物半導体が注目を集めている。GaN系化合物半導体は、サファイア単結晶を始めとして、種々の酸化物やIII−V族化合物などからなる基板上に、有機金属気相化学反応法(MOCVD法)や分子線エピタキシー法(MBE法)等によって形成される。
【0003】
このようなGaN系化合物半導体を用いた半導体発光素子では、通常、基板上に、n型半導体層、発光層、p型半導体層からなるLED構造を有する積層半導体層を形成し、最上部のp型半導体層に透明導電層およびボンディング用のパッド電極を形成する一方、p型半導体層および発光層の一部をエッチング等によって除去して露出させたn型半導体層にボンディング用のパッド電極を形成する。
【0004】
従来技術として、透明導電層上のパッド電極およびn型半導体層上のパッド電極の最上層を、Auで構成することが記載されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−210050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、一般に、このような半導体発光素子を組み込んだ発光装置等を製造する場合には、各パッド電極は、公知のワイヤボンダを用いてワイヤボンディングされる。ワイヤボンディングにおいては、各電極パッドに所定の圧力をかけることで、Au等からなるボンディングワイヤを電極パッドの最上層に接続する。ワイヤボンディングの際、この圧力が電極パッドの下層や電極パッドが積層される透明導電層等に伝わり、電極パッドの剥がれや透明導電層等の割れが生じることがあった。
【0007】
本発明は、半導体に給電するための電極の接合性および電極の信頼性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、下記[1]〜[14]に係る発明が提供される。
[1]第1の導電型を有する第1半導体層と、
通電により発光し、第1半導体層上に積層される発光層と、
第2の導電型を有し、発光層上に積層される第2半導体層と、
導電性を備え、第2半導体層上に積層される導電層と、
Auを含む金属材料で構成され、導電層上に積層される第1金属層と、
Auを含むとともに第1金属層よりも硬度が低い金属材料で構成され、第1金属層に接する面とは反対側の面が外部に露出するように、第1金属層上に積層される第2金属層と
を含む半導体発光素子。
[2]第1金属層および第2金属層は、構成元素が同一な金属材料から構成されることを特徴とする[1]記載の半導体発光素子。
[3]第1金属層および第2金属層は、ともにAu単体から構成されることを特徴とする[1]または[2]記載の半導体発光素子。
[4]第1金属層の厚さは、第2金属層の厚さよりも厚いことを特徴とする[1]乃至[3]のいずれか記載の半導体発光素子。
[5]第1半導体層は、電子をキャリアとするIII族窒化物半導体で構成され、
第2半導体層は、正孔をキャリアとするIII族窒化物半導体で構成されることを特徴とする[1]乃至[4]のいずれか記載の半導体発光素子。
[6]導電層は、発光層から出射される光に対する透過性を有するとともに第2半導体層上に積層される透明導電層からなることを特徴とする[5]記載の半導体発光素子。
[7]透明導電層と第1金属層との間には、第1金属層よりも硬度が高い金属材料で構成される第3金属層が積層されていることを特徴とする[6]記載の半導体発光素子。
【0009】
[8]通電により発光する発光層を含む積層半導体に対して給電するための電極構造であって、
Auを含む金属材料で構成され、外部に露出するように設けられる外側金属層と、
Auを含むとともに外側金属層よりも硬度が高い金属材料で構成され、外側金属層よりも発光層に近い側に、外側金属層に沿って設けられる内側金属層と
を備える電極構造。
[9]外側金属層と内側金属層とは、組成が等しい金属材料で構成されることを特徴とする[8]記載の電極構造。
[10]外側金属層と内側金属層とは、ともにAu単体から構成されることを特徴とする[9]記載の電極構造。
[11]外側金属層の厚さは、内側金属層の厚さよりも薄いことを特徴とする[8]乃至[10]のいずれか記載の電極構造。
【0010】
[12]第1の導電型を有する第1半導体層と、通電により発光し、第1半導体層上に積層される発光層と、第2の導電型を有し、発光層上に積層される第2半導体層と、導電性を備え、第2半導体層上に積層される導電層と、Auを含む金属材料で構成され、導電層上に積層される第1金属層と、Auを含むとともに第1金属層よりも硬度が低い金属材料で構成され、第1金属層に接する面とは反対側の面が外部に露出するように、第1金属層上に積層される第2金属層とを有する半導体発光素子と、
半導体発光素子の第2金属層にボンディングされるボンディングワイヤと、
ボンディングワイヤを介して半導体発光素子に給電する給電部材と
を備える発光装置。
[13]第1金属層および第2金属層は、ともにAu単体から構成され、第1金属層の厚さは、第2金属層の厚さよりも厚いことを特徴とする[12]記載の発光装置。
[14]半導体発光素子は、導電性を備え、第1半導体層上に積層される他の導電層と、Auを含む金属材料で構成され、他の導電層上に積層される他の第1金属層と、Auを含むとともに他の第1金属層よりも硬度が低い金属材料で構成され、他の第1金属層に接する面とは反対側の面が外部に露出するように、他の第1金属層上に積層される他の第2金属層とを有し、
半導体発光素子の他の第2金属層にボンディングされる他のボンディングワイヤと、
他のボンディングワイヤを介して半導体発光素子に給電する他の給電部材と
をさらに備えることを特徴とする[12]または[13]記載の発光装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、半導体に給電するための電極の接合性および電極の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施の形態が適用される半導体発光素子の平面模式図の一例である。
【図2】本実施の形態が適用される半導体発光素子の断面図の一例である。
【図3】半導体発光素子の製造方法の一例である。
【図4】本実施の形態の半導体発光素子を適用した発光装置の断面図の一例である。
【図5】比較例1〜3におけるp電極の断面STEM写真である。
【図6】実施例1〜9および比較例1〜4におけるp側ボンディング層の構成、p側ボンディング層の製造条件、および、p側ボンディング層の厚さを示した図である。
【図7】実施例1および比較例1〜4におけるp電極の上面の顕微鏡写真の一例である。
【図8】実施例1〜9および比較例1〜4におけるp側第1金属層とp側第2金属層の成膜条件と、表面目視検査、AFM評価およびワイヤボンディング評価との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明における実施の形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において参照する図面における各部の大きさや厚さ等は、実際の半導体発光素子等の寸法とは異なっている場合がある。
【0014】
[実施の形態1]
図1は、本実施の形態が適用される半導体発光素子(発光ダイオード)1の上面模式図の一例であり、図2は、図1に示す半導体発光素子1のII−II断面図である。
(半導体発光素子)
本実施の形態の半導体発光素子1は、基板110と、基板110上に積層される中間層120と、中間層120上に積層される下地層130とを備える。また、半導体発光素子1は、下地層130上に積層されるn型半導体層140と、n型半導体層140上に積層される発光層150と、発光層150上に積層されるp型半導体層160とをさらに備える。なお、以下の説明においては、必要に応じて、これらn型半導体層140、発光層150およびp型半導体層160を、まとめて積層半導体層100と呼ぶ。
【0015】
さらに、半導体発光素子1は、p型半導体層160上に積層される透明導電層170と、この透明導電層170の一部に積層されるp電極300とをさらに備える。
【0016】
さらにまた、半導体発光素子1は、p型半導体層160、発光層150およびn型半導体層140の一部を切り欠くことによって露出したn型半導体層140の半導体層露出面140a上の一部に積層されるn電極400をさらに有している。
【0017】
そして、半導体発光素子1は、透明導電層170のうちp電極300が取り付けられていない領域およびp電極300のうち一部(後述するp側接続面333)を除く領域と、半導体層露出面140aのうちn電極400が取り付けられていない領域およびn電極400のうち一部(後述するn側接続面433)を除く領域とを覆うように積層される保護層180をさらに備えている。なお、保護層180は、p型半導体層160、発光層150およびn型半導体層140の一部を切り欠くことによって露出したn型半導体層140、発光層150およびp型半導体層160の壁面も覆っている。
【0018】
また、p電極300は、透明導電層170に積層されるp側接合層310と、p側接合層310に積層されるp側バリア層320と、p側バリア層320に積層されるとともに、その一部が保護層180によって覆われないことにより外部に露出するp側接続面333を形成するp側ボンディング層330と、p側ボンディング層330のうちp側接続面333を除いた部位に積層されるとともに、p側ボンディング層330とは反対側の面には保護層180が積層されるp側密着層340とを備えている。そして、p側ボンディング層330は、p側バリア層320に積層されるp側第1金属層331と、p側第1金属層331に積層されるとともに、一部にp側密着層340が積層されることによってp側接続面333が形成されるp側第2金属層332とを有している。
【0019】
一方、n電極400は、n型半導体層140の半導体層露出面140aに積層されるn側接合層410と、n側接合層410に積層されるn側バリア層420と、n側バリア層420に積層されるとともに、その一部が保護層180によって覆われないことにより外部に露出するn側接続面433を形成するn側ボンディング層430と、n側ボンディング層430のうちn側接続面433を除いた部位に積層されるとともに、n側ボンディング層430とは反対側の面には保護層180が積層されるn側密着層440とを備えている。そして、n側ボンディング層430は、n側バリア層420に積層されるn側第1金属層431と、n側第1金属層431に積層されるとともに、一部にn側密着層440が積層されることによってn側接続面433が形成されるn側第2金属層432とを有している。
【0020】
この半導体発光素子1においては、p電極300におけるp側ボンディング層330を正極とし、n電極400におけるn側ボンディング層430を負極とし、p側ボンディング層330とn側ボンディング層430とを介してp電極300からn電極400に向かう電流を流すことで、発光層150を発光させるようになっている。
なお、本実施の形態の半導体発光素子1は、発光層150から発光した光をp電極300およびn電極400が形成される側から取り出す、フェイスアップ型の半導体発光素子である。
【0021】
次に、半導体発光素子1の各構成要素について、より詳細に説明する。
<基板>
基板110としては、特に限定されず、各種の基板を選択して用いることができる。例えば、サファイア、SiC、シリコン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化マンガン亜鉛鉄、酸化マグネシウムアルミニウム、ホウ化ジルコニウム、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化リチウムガリウム、酸化リチウムアルミニウム、酸化ネオジウムガリウム、酸化ランタンストロンチウムアルミニウムタンタル、酸化ストロンチウムチタン、酸化チタン、酸化ハフニウム、酸化タングステン、酸化モリブデン等からなる基板を用いることができる。
また、上記基板の中でも、特に、C面を主面とするサファイア基板を用いることが好ましい。サファイア基板を用いる場合は、サファイアのC面上に中間層120(バッファ層)を形成するとよい。
【0022】
<積層半導体層>
積層半導体層100は、例えば、III族窒化物半導体からなる層であって、図2に示すように、基板110上に、n型半導体層140、発光層150およびp型半導体層160の各層がこの順で積層されて構成されている。ここで、n型半導体層140は、電子をキャリアとするものである。これに対し、p型半導体層160は、正孔をキャリアとするものである。
また、積層半導体層100は、上述したn型半導体層140、発光層150およびp型半導体層160に加え、さらに下地層130、中間層120を含めて呼んでもよい。
なお、積層半導体層100は、MOCVD法で形成すると結晶性の良いものが得られるが、スパッタ法によっても条件を最適化することで、MOCVD法よりも優れた結晶性を有する半導体層を形成できる。以下、順次説明する。
【0023】
<中間層>
中間層120は、基板110と下地層130との格子定数の違いを緩和し、特にC面を主面とするサファイアで基板110を構成した場合には、基板110の(0001)面(C面)上にc軸配向した単結晶層の形成を容易にする働きがある。したがって、中間層120の上に単結晶の下地層130を積層すると、より一層結晶性の良い下地層130が積層できる。なお、本発明においては、中間層120の形成を行うことが好ましいが、必ずしも行わなくても良い。
【0024】
中間層120は、多結晶のAlxGa1-xN(0≦x≦1)からなるものが好ましく、単結晶のAlxGa1-xN(0≦x≦1)のものがより好ましい。
中間層120は、例えば、多結晶のAlxGa1-xN(0≦x≦1)からなる厚さ0.01μm〜0.5μmのものとすることができる。中間層120の厚みが0.01μm未満であると、中間層120により基板110と下地層130との格子定数の違いを緩和する効果が十分に得られない場合がある。また、中間層120の厚みが0.5μmを超えると、中間層120としての機能には変化が無いのにも関わらず、中間層120の成膜処理時間が長くなり、生産性が低下するおそれがある。
【0025】
<下地層>
下地層130としては、AlxGayInzN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)を用いることができるが、AlxGa1-xN(0≦x<1)を用いると結晶性の良い下地層130を形成できるため好ましい。
下地層130の厚さは0.1μm以上が好ましく、より好ましくは0.5μm以上であり、1μm以上が最も好ましい。この厚さ以上にした方が、結晶性の良好な下地層130を得やすい。
下地層130の結晶性を良くするためには、下地層130には不純物をドーピングしない方が望ましい。しかし、p型あるいはn型の導電性が必要な場合は、アクセプター不純物あるいはドナー不純物を添加することができる。
【0026】
<n型半導体層>
第1半導体層の一例としてのn型半導体層140は、nコンタクト層(図示せず)とnクラッド層(図示せず)とから構成されるのが好ましい。なお、nコンタクト層はnクラッド層を兼ねることも可能である。また、前述の下地層130をn型半導体層140に含めてもよい。
【0027】
nコンタクト層は、n電極400を設けるための層である。
nコンタクト層としては、AlGa1−xN層(0≦x<1、好ましくは0≦x≦0.5、さらに好ましくは0≦x≦0.1)から構成されることが好ましい。
また、nコンタクト層にはn型不純物がドープされていることが好ましい。n型不純物を1×1017/cm3〜1×1020/cm3、好ましくは1×1018/cm3〜1×1019/cm3の濃度で含有すると、n電極400との良好なオーミック接触を維持できる点で好ましい。n型不純物としては、例えば、Si、GeおよびSn等が挙げられ、好ましくはSiおよびGeが挙げられる。
【0028】
nコンタクト層の厚さは、0.5μm〜5μmとされることが好ましく、1μm〜3μmの範囲に設定することがより好ましい。nコンタクト層の厚さが上記範囲にあると、発光層150等の結晶性が良好に維持される。
【0029】
nコンタクト層と発光層150との間には、nクラッド層を設けることが好ましい。nクラッド層は、発光層150へのキャリアの注入とキャリアの閉じ込めとを行なう層である。
nクラッド層はAlGaN、GaN、GaInNなどで形成することが可能である。また、これらの構造のヘテロ接合や複数回積層した超格子構造としてもよい。nクラッド層をGaInNで形成する場合には、発光層150のGaInNのバンドギャップよりも大きくすることが望ましい。なお、本明細書では、AlGaN、GaN、GaInNについて、各元素の組成比を省略した形で記述する場合がある。
【0030】
nクラッド層のn型不純物濃度は1×1017/cm3〜1×1020/cm3、が好ましく、より好ましくは1×1018/cm3〜1×1019/cm3である。不純物濃度がこの範囲であると、良好な結晶性の維持および素子の動作電圧低減の点で好ましい。
nクラッド層の厚さは、特に限定されないが、好ましくは0.005μm〜0.5μmであり、より好ましくは0.005μm〜0.1μmである。
【0031】
なお、nクラッド層を、超格子構造を含む層とする場合には、10nm以下の厚さを有するIII族窒化物半導体からなるn側第1層と、n側第1層と組成が異なるとともに10nm以下の厚さを有するIII族窒化物半導体からなるn側第2層とが積層された構造を含むものであってもよい。
また、nクラッド層は、n側第1層とn側第2層とが交互に繰返し積層された構造を含んだものであってもよく、この場合には、GaInNとGaNとの交互構造又は組成の異なるGaInN同士の交互構造であることが好ましい。
【0032】
<発光層>
n型半導体層140の上に積層される発光層150としては、単一量子井戸構造あるいは多重量子井戸構造などを採用することができる。
量子井戸構造の井戸層としては、Ga1−yInN(0<y<0.4)からなるIII族窒化物半導体層が通常用いられる。また、多重量子井戸構造の発光層150を用いる場合は、上記Ga1−yInNを井戸層とし、井戸層よりバンドギャップエネルギーが大きいAlGa1−zN(0≦z<0.3)を障壁層とする。井戸層および障壁層には、設計により不純物をドープしてもしなくてもよい。
【0033】
<p型半導体層>
第2半導体層の一例としてのp型半導体層160は、pクラッド層(図示せず)とpコンタクト層(図示せず)とから構成されるのが好ましい。なお、pコンタクト層はpクラッド層を兼ねることも可能である。
pクラッド層は、発光層150へのキャリアの閉じ込めとキャリアの注入とを行なう層である。
pクラッド層としては、発光層150のバンドギャップエネルギーより大きくなる組成であり、発光層150へのキャリアの閉じ込めができるものであれば特に限定されないが、例えばAlxGa1-xN(0<x≦0.4)を用いることができる。pクラッド層が、このようなAlGaNからなると、発光層150へのキャリアの閉じ込めの点で好ましい。
【0034】
pクラッド層のp型不純物濃度は、1×1018/cm3〜1×1021/cm3が好ましく、より好ましくは1×1019/cm3〜1×1020/cm3である。p型不純物濃度が上記範囲であると、結晶性を低下させることなく良好なp型結晶が得られる。
また、pクラッド層は、上述したnクラッド層と同様に超格子構造としてもよく、この場合には、組成比が異なるAlGaNと他のAlGaNとの交互構造または組成が異なるAlGaNとGaNとの交互構造であることが好ましい。
pクラッド層の厚さは、特に限定されないが、好ましくは1nm〜400nmであり、より好ましくは5nm〜100nmである。
【0035】
pコンタクト層は、透明導電層170を介してp電極300を設けるための層である。
pコンタクト層は、AlxGa1-xN(0≦x≦0.4)であることが好ましい。Al組成が上記範囲であると、良好な結晶性の維持およびp電極300との良好なオーミック接触の維持が可能となる点で好ましい。
pコンタクト層のp型不純物濃度は、1×1018/cm3〜1×1021/cm3が好ましく、より好ましくは5×1019/cm3〜5×1020/cm3である。p型不純物濃度が上記範囲であると、良好なオーミック接触の維持、クラック発生の防止、良好な結晶性の維持が可能となる点で好ましい。p型不純物としては、特に限定されないが、例えば、好ましくはMgが挙げられる。
【0036】
pコンタクト層の厚さは、特に限定されないが、0.01μm〜0.5μmが好ましく、より好ましくは0.05μm〜0.2μmである。pコンタクト層160bの厚さが上記範囲にあると、発光出力の点で好ましい。
【0037】
<透明導電層>
図2に示すように、p型半導体層160の上には透明導電層170が積層されている。なお、本明細書中、透明導電層170を単に導電層と記述することがある。
図1に示すように、半導体発光素子1を平面視したときに、透明導電層170(図1参照)は、n電極260を形成するためにエッチング等の手段によって一部が除去されたp型半導体層160の上面のほぼ全面を覆うように形成されている。しかし、このような形状に限定されるわけでなく、透明導電層170を、隙間を開けた格子状や樹形状に形成してもよい。なお、透明導電層170の構造も、従来公知の構造を含めて如何なる構造のものも何ら制限なく用いることができる。
【0038】
透明導電層170は、p型半導体層160との接触抵抗が小さいものであることが好ましい。また、本実施の形態の半導体発光素子1では、発光層150からの光をp電極300が形成された側に取り出すことから、透明導電層170は発光層150から出射される光に対する透過性に優れたものであることが好ましい。さらにまた、p型半導体層160の全面に渡って均一に電流を拡散させるために、透明導電層170は優れた導電性を有したものであることが好ましい。
【0039】
以上のことから、透明導電層170を構成する材料としては、少なくともInを含む導電性の酸化物からなる透光性の導電性材料を用いることが好ましい。Inを含む導電性の酸化物としては、例えばITO(酸化インジウム錫(In23−SnO2))、IZO(酸化インジウム亜鉛(In23−ZnO))、IGO(酸化インジウムガリウム(In23−Ga23))、ICO(酸化インジウムセリウム(In23−CeO2))等が挙げられる。なお、これらの中に、例えばフッ素などの不純物が添加されていてもかまわない。
【0040】
これらの材料を、この技術分野でよく知られた慣用の手段で設けることによって、透明導電層170を形成できる。また、透明導電層170を形成した後に、透明導電層170の透明化を目的とした熱アニールを施す場合もある。
【0041】
本実施の形態において、透明導電層170は、結晶化された構造のものを使用してよく、特に六方晶構造又はビックスバイト構造を有するIn23結晶を含む透明材料(例えば、ITOやIZO等)を好ましく使用することができる。
例えば、六方晶構造のIn23結晶を含むIZOを透明導電層170として使用する場合、エッチング性に優れたアモルファスのIZO膜を用いて特定形状に加工することができ、さらにその後、熱処理等によりアモルファス状態から結晶を含む構造に転移させることで、アモルファスのIZO膜よりも透光性の優れた電極に加工することができる。透明導電層170の厚さは、特に制限されないが、例えば10〜500nmの範囲であればよい。
【0042】
<保護層>
保護層180は、半導体発光素子1の内部への水分等の進入を抑制するために設けられている。また、本実施の形態では、発光層150からの光を、保護層180を介して取り出すことから、保護層180は発光層150から出射される光に対する透過性に優れたものであることが望ましい。そこで、本実施の形態では、保護層180をSiO2で構成している。ただし、保護層180を構成する材料についてはこれに限られるものではなく、SiO2に代えて、TiO2 、Si34、SiO2−Al23、Al23、AlN等を用いることができる。
【0043】
<p電極>
次に、p電極300の構成について詳細に説明する。p電極300は、上述したように、p側接合層310、p側バリア層320、p側ボンディング層330(p側第1金属層331およびp側第2金属層332)、およびp側密着層340を備えている。このp電極300は、所謂ボンディングパッドを兼ねており、外部に露出するp側接続面333に図示しないボンディングワイヤが接続されるようになっている。
【0044】
図2に示す例では、透明導電層170の平坦面上にp電極300を設けているが、透明導電層170に凹部を設け、この凹部の底面上にp電極を設けるようにしてもかまわない。なお、p電極300は、透明導電層170上であれば、どこへでも形成することができる。例えば、n電極400から遠い位置に形成してもよいし、半導体発光素子1の中心となる位置に形成してもよい。しかし、あまりにもn電極400に近接した位置に形成すると、ボンディングした際にボンディングワイヤ間、ボンディングボール間でショートを生じてしまうため好ましくない。
また、この例では、図1に示すように平面視したときに、p電極300が円形状を呈するようになっているが、このような形状に限定されるわけではなく、例えば、多角形状など任意の形状を選択することができる。
【0045】
<p側接合層>
p側接合層310は、透明導電層170に対するp側バリア層320の接合強度を高め、且つ、透明導電層170とp側バリア層320とのオーミックコンタクトを確保するために、透明導電層170とp側バリア層320との間に設けられる。
【0046】
p側接合層310は、基本的に導電性を有する材料から適宜選択して差し支えないが、Al、Ti、V、Cr、Mn、Co、Zn、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Hf、Ta、W、Re、Rh、Ir、Ni、Ptからなる群より選ばれた少なくとも一種の元素からなるものが好ましい。特に、Cr、Ti、Mo、Ni、Co等の金属を用いることによって、透明導電層170に対するp側バリア層320の接合強度を格段に高めることができる。また、Ti、Nb、Ta等の弁作用金属からなる群から選ばれる少なくとも一種の元素からなるものは、外部の空気や水分に対する耐食性が高く、好ましい。
【0047】
また、図2に示すように、p側接合層310は、端面部(周辺部とも言う)が中央部より薄くなっており、当該中央部の厚さは、1nm〜100nmの範囲より選択することが望ましい。p側接合層310の厚みが1nm未満であると、透明導電層170に対するp側バリア層320の接合強度を高める効果が十分に得られない場合がある。また、p側接合層310の厚みが100nmを超えると、p側接合層310としての機能には変化が無いのにも関わらず、p側接合層310の成膜処理時間が長くなり、生産性が低下するおそれがある。
【0048】
<p側バリア層>
第3金属層の一例としてのp側バリア層320は、p側接合層310を形成する元素のマイグレーションを抑制する作用、および、p側ボンディング層330を形成する元素(この例では後述するAu)のマイグレーションを抑制する作用を有する。さらに、p側バリア層320は、p電極300全体の強度を強化する役割を有している。このため、比較的強固な金属材料を使用することが好ましく、例えばAg、Al、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Ti、W、Mo、Ni、Co、Zr、Hf、Ta、Nbのうちの何れかまたはこれら金属の何れかを含む合金からなるものから選ぶことができる。なかでも、Al、Ag、Ptおよびこれらの金属の少なくとも一種を含む合金は、電極用の材料として一般的であり、入手のし易さ、取り扱いの容易さなどの点から優れており、特にPtがよい。
また、図2に示すように、p側バリア層320は、端面部(周辺部とも言う)が中央部より薄くなっており、当該中央部の厚さは、20nm〜500nmの範囲より選択することすることが望ましい。p側バリア層320が20nmよりも薄いとマイグレーション抑制の効果が得にくくなる。一方、p側バリア層320を500nmより厚くしても特に利点は生じず、工程時間の長時間化と材料の無駄を生じるのみである。更に望ましいp側バリア層320の厚さは、50nm〜200nmである。
【0049】
さらに、p側バリア層320は、p側接合層310に密着していることが好ましい。p電極300全体が充分な強度を得るためには、p側バリア層320がp側接合層310を介して透明導電層170に強固に接合されていることが必要である。最低限、一般的な方法でボンディングパッドにボンディングワイヤを接続する工程で剥離しない程度の強度が好ましい。
【0050】
<p側ボンディング層>
p側ボンディング層330は、ボンディングワイヤを接続するために設けられる。図2に示すように、本実施の形態におけるp側ボンディング層330は、透明導電層170側から順に、p側第1金属層331とp側第2金属層332とが積層された積層体からなる。
p側第1金属層331とp側第2金属層332とは、それぞれAuまたはAuを含む合金からなる。p側第1金属層331とp側第2金属層332とが、ともにAuを含むことにより、互いに密着性よく接合することが可能になる。
p側第1金属層331とp側第2金属層332とは、Auを含み、互いに構成元素が同一な金属材料で構成されることが、密着性および生産性の観点から好ましい。さらに、p側第1金属層331とp側第2金属層332とは、Auを含み、互いに構成元素が同一、且つ、それぞれの元素の構成比率が等しいことがより好ましい。特に、p側第1金属層331とp側第2金属層332とが、ともにAu単体から構成されることがより好ましい。
【0051】
<p側第1金属層>
第1金属層または内側金属層の一例としてのp側第1金属層331は、p側バリア層320に対するp側ボンディング層330の接合強度を高めるとともに、ボンディングワイヤをp側接続面333に接続した際に生じる衝撃がp側バリア層320側へ伝わるのを抑制するために、p側バリア層320とp側第2金属層332との間に設けられる。
p側第1金属層331は、p側第2金属層332よりも高い硬度を有する。さらにp側第1金属層331は、スパッタで成膜され、柱状結晶構造を有するものがより好ましい。
p側第1金属層331は、図2に示すように、例えば、端面部(周辺部とも言う)が中央部より薄くなっており、当該中央部の厚さは、100nm〜2000nmの範囲より選択することすることが望ましい。p側第1金属層331が100nmよりも薄いとボンディング時の機械的ダメージが透明導電層170に影響を及ぼしやすくなり、好ましくない。一方、p側第1金属層331を2000nmより厚くすると、生産時間が長くなり結果的にコストアップとなる。
【0052】
<p側第2金属層>
第2金属層または外側金属層の一例としてのp側第2金属層332は、p側第1金属層331よりも低い硬度を有する。これにより、p側第2金属層332がp側第1金属層331よりも高い硬度を有する場合と比較して、p側第2金属層322に形成されるp側接続面333に対して加える力を小さくしても、p側接続面333に対して給電用の外部端子材料(例えば、ボンディングワイヤ)を接続することが可能になる。
したがって、ボンディングに伴ってp側バリア層320、p側接合層310および透明導電層170に伝わる力をより小さくすることができ、ボンディングに伴う透明導電層170の割れや、p側接合層310およびp側バリア層320等の剥がれが生じるのをより抑制することが可能になる。
ここで、p側第1金属層331およびp側第2金属層332の硬度は、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope;AFM)のナノインデンテーション測定によって得られる。ナノインデンテーション測定では、金属に対して荷重をかけて針を押し込み、針の先にかける荷重と金属への押し込み量の違いで硬さを判定する。針の形状や設置状態等によって得られる値が変化するため、硬さの評価は、絶対値ではなく相対値による評価になる。
【0053】
p側第2金属層332は、上述したように、AuまたはAuを含む合金からなり、特にAu単体からなることがより好ましい。ボンディングワイヤとしては、電気伝導性、延性および耐食性等に優れたAuが用いられることが多い。したがって、Auからなるボンディングワイヤとの密着性がよいAu単体をp側第2金属層332として用いることで、p側第2金属層332をボンディングワイヤとの密着性により優れたものとすることができる。
【0054】
なお、本実施の形態では、p側第2金属層332は、p側第1金属層331を覆うように、p側第1金属層331の上面および上面から透明導電層170に向かって傾斜する傾斜面に沿って積層されるが、これに限られない。すなわち、p側第2金属層332は、p側接続面333を形成して給電用の外部端子材料が接続できるように、少なくともp側第1金属層331の上面に沿って積層されていれば足りる。
【0055】
また、p側第2金属層332の上面であるp側接続面333の面積としては、できるだけ大きいほうがボンディング作業がしやすいものの、あまりに大きいと、フェイスアップ型の半導体発光素子1の場合には、発光の取り出しの妨げになる。例えば、p側接続面333がチップ面の面積の半分を超えるような面積を覆っては、発光の取り出しの妨げとなり、出力が著しく低下する。逆に、p側接続面333の面積が小さすぎるとボンディング作業がしにくくなり、製品の収率を低下させる恐れがある。
したがって、p側接続面333の面積は、ボンディングボールの直径よりもわずかに大きい程度が好ましく、具体的には、直径100μm程度の円形状とすることが一般的である。
【0056】
また、p側第2金属層332は、図2に示すように、端面部(周辺部とも言う)が中央部より薄くなっており、当該中央部の厚さは、p側第1金属層331の厚さよりも薄いことが好ましい。例えば、p側第2金属層332の当該中央部の厚さは、20nm〜500nmの範囲より選択することすることが望ましい。p側第2金属層332が20nmよりも薄いと、小さな荷重でp側接続面333に対してボンディングワイヤ等を接続することが困難になる。この場合、ボンディングワイヤを確実に接続する為には、大きな荷重をかける必要があるが、ボンディング時に透明導電層170に機械的ダメージを与えてしまい、好ましくない。一方、p側第2金属層332を500nmより厚くすると、生産時間が長くなりコストアップとなる。更に望ましいp側第2金属層332の厚さは、50nm〜300nmである。
なお、p側第2金属層332は、例えば、スパッタや蒸着等によって形成することができる。
【0057】
一般に、p側ボンディング層330の表面の平滑性が低下すると、ボンディング時にかける荷重を大きくしないと、ボンディングワイヤをボンディングすることが困難になる。一方、p側ボンディング層330における表面の硬度が低いほど、ボンディングの際にAu層の表面にかける荷重を小さくすることができる。
したがって、p側第1金属層331として結晶粒が規則的で表面が平滑なAu層を用い、p側第2金属層332として、結晶粒がランダム成長し、p側第1金属層331よりも硬度が低いAu層を用いるとともに、p側第2金属層332の厚さをp側第1金属層331の厚さよりも薄くすることが好ましい。これにより、p側第2金属層332としてランダムな塊状のAu層を用いた場合であっても、p側ボンディング層330の表面における平滑性が低下するのを抑えることができ、p側ボンディング層330に対して小さな荷重で確実にボンディングワイヤをボンディングすることが可能になる。
【0058】
したがって、p側第1金属層331は、スパッタ法を用いて形成され、規則的な柱状の積層構造をもち、表面が平滑なAu層であることが望ましい。
p側第2金属層332は、スパッタもしくは蒸着を用いて形成され、p側第1金属層331よりも硬度が低く、規則的でないランダムな塊状のAu層であることが望ましい。さらに、p側第2金属層332は、p側第1金属層331よりも厚さが薄いことが望ましい。
また、p側第2金属層332は、蒸着で成膜するよりもスパッタで成膜することがより望ましい。p側第2金属層332をスパッタで成膜する場合、p側第1金属層331をスパッタで形成した後に、同一のチャンバを用いてp側第2金属層332を連続成膜することができ、生産性の観点で有利である。
なお、p側第1金属層331およびp側第2金属層332を成膜する方法については、後で詳細に述べる。
【0059】
<p側密着層>
p側密着層340は、保護層180に対するp側ボンディング層330の接合強度を高めるために、p側ボンディング層330と保護層180との間に積層される。
本実施の形態のように、p側ボンディング層330がAuまたはAuを含む合金で構成されるとともに、保護層180がSiO2で構成される場合において、両者の間に形成されるp側密着層340はTaで構成することが好ましい。なお、Taに代えて、例えば、Ti、Pt、Mo、Ni、Wでp側密着層340を構成してもよい。
【0060】
以上、p側接合層310、p側バリア層320、p側ボンディング層330(p側第1金属層331、p側第2金属層332)およびp側密着層340により、p電極300が構成される。
【0061】
<n電極>
続いて、n電極400の構成について説明する。n電極400は、上述したように、n側接合層410、n側バリア層420、n側ボンディング層(n側第1金属層431およびn側第2金属層432)、およびn側密着層440を備えている。このn電極400は、所謂ボンディングパッドを兼ねており、外部に露出するn側接続面433に図示しないボンディングワイヤが接続されるようになっている。
【0062】
なお、この例では、図1に示すように平面視したときに、n電極400がかまぼこ形状を呈するようになっているが、上述したp電極300と同様、例えば、円形状や多角形状など任意の形状を選択することができる。
【0063】
本実施の形態では、n電極400は、n型半導体層140の半導体層露出面140a上に形成される点を除き、p電極300と同じ構成を有している。したがって、n側接合層410はp側接合層310と、n側バリア層420はp側バリア層320と、n側ボンディング層430を構成するn側第1金属層431はp側第1金属層331と、n側第2金属層432はp側第2金属層332と、n側密着層440はp側密着層340と、それぞれ同じ材料で構成されている。
【0064】
なお、本実施の形態では、p側第1金属層331はp側バリア層320上に積層され、n側第1金属層431はn側バリア層420上に積層されているが、例えば、p側バリア層320とp側第1金属層331との間に他の導電層が形成されていてもよく、同様に、n側バリア層420とn側第1金属層431との間に他の導電層が形成されていてもよい。
また、本実施の形態では、p電極300とn電極400とを同じ構成としたが、p電極300およびn電極400のうち一方が上述した構成を有し、他方が異なる構成を有していてもよい。
さらに、本実施の形態では、フェイスアップ型の半導体発光素子1について説明したが、これに限られず、例えば、本発明をフリップチップ型の半導体発光素子に適用することもできる。
【0065】
(半導体発光素子の製造方法)
次に、図1および図2に示す半導体発光素子1の製造方法の一例について説明する。図3は、半導体発光素子1の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図3に示すように、本実施の形態における半導体発光素子1の製造方法は、基板110上に、発光層150を含む積層半導体層100を積層するとともに、積層半導体層100の一部を切り欠いて半導体層露出面140aを形成する積層半導体層形成工程(ステップ1)と、積層半導体層100上に透明導電層を形成する透明導電層形成工程(ステップ2)と、透明導電層170上にp電極300を形成し且つ半導体層露出面140a上にn電極400を形成する電極形成工程(ステップ3)と、保護層180を形成する保護層形成工程(ステップ4)とを有している。
【0066】
上述したステップ3の電極形成工程は、透明導電層170上の一部にp側接合層310を形成するとともに半導体層露出面140a凹にn側接合層410を形成する接合層形成工程(ステップ3a)と、p側接合層310上にp側バリア層320を形成するとともにn側接合層410上にn側バリア層420を形成するバリア層形成工程(ステップ3b)と、p側バリア層320上にp側第1金属層331を形成するとともにn側バリア層420上にn側第1金属層431を形成する第1金属層形成工程(ステップ3c)と、p側第1金属層331上にp側第2金属層332を形成するとともにn側第1金属層431上にn側第2金属層432を形成する第2金属層形成工程(ステップ3d)と、p側第2金属層332上にp側接続面333を除いてp側密着層340を形成するとともにn側第2金属層432上にn側接続面433を除いてn側密着層440を形成する密着層形成工程(ステップ3e)とを有している。
【0067】
さらに、本実施の形態が適用される半導体発光素子1の製造方法は、必要に応じて、ステップ3eの密着層形成工程の後、得られた半導体発光素子1に熱処理を施すアニール工程をさらに有している場合がある。
【0068】
以下、上述した各ステップの工程について、順に説明する。
なお、以下の説明においては、p側接合層310およびn側接合層410を単に接合層と称し、p側バリア層320およびn側バリア層420を単にバリア層と称し、p側ボンディング層330およびn側ボンディング層430を単にボンディング層と称し、p側密着層340およびn側密着層440を単に密着層と称することがある。また、p側第1金属層331およびn側第1金属層431を単に第1金属層と称し、p側第2金属層332およびn側第2金属層432を単に第2金属層と称することがある。
【0069】
<積層半導体層形成工程>
ステップ1の積層半導体層形成工程について説明する。
積層半導体層形成工程では、まず、サファイア基板等の基板110を用意し、前処理を施す。前処理としては、例えば、スパッタ装置のチャンバ内に基板110を配置し、基板110の表面をスパッタするなどの方法によって行うことができる。前処理に引き続いて、基板110上にスパッタ法にて中間層120を形成する。
なお、中間層120は、上述したスパッタ法だけでなく、MOCVD法で形成することもできる。
【0070】
続いて、中間層120の形成後、中間層120が形成された基板110の上面に、単結晶の下地層130を形成する。下地層130は、スパッタ法で形成してもよく、MOCVD法で形成してもよい。
【0071】
下地層130の形成後、nコンタクト層及びnクラッド層を積層してn型半導体層140を形成する。nコンタクト層およびnクラッド層は、スパッタ法で形成してもよく、MOCVD法で形成してもよい。
【0072】
n型半導体層140の形成後、n型半導体層150の上面に、発光層150を形成する。発光層150を形成する方法としては、スパッタ法、MOCVD法のいずれ方法でもよいが、特にMOCVD法で形成するのが好ましい。具体的には、障壁層と井戸層とを交互に繰り返して積層し、且つ、n型半導体層140側およびp型半導体層160側に障壁層が配置される順番で積層すればよい。
【0073】
発光層150の形成後、pクラッド層とpコンタクト層とを順次積層してp型半導体層160を形成する。pクラッド層およびpコンタクト層は、スパッタ法で形成してもよく、MOCVD法で形成してもよい。
【0074】
続いて、透明導電層170の形成に先立ち、公知のフォトリソグラフィーの手法によってパターニングして、所定の領域の積層半導体層100の一部をエッチングしてn型半導体層140のコンタクト層の一部を露出させ、半導体層露出面140aを形成する。
【0075】
<透明導電層形成工程>
次に、ステップ2の透明導電層形成工程について説明する。
透明導電層形成工程では、マスク等で半導体層露出面140aをカバーして、エッチング除去せずに残したp型半導体層160上に、スパッタ法などの公知の方法を用いて透明導電層170を形成させる。なお、p型半導体層160上に先に透明導電層170を形成した後、所定の領域から透明導電層170の一部と共に積層半導体層100の一部もエッチングで除去し、半導体層露出面140aを形成するようにしてもかまわない。
【0076】
<電極形成工程>
続いて、ステップ3の電極形成工程について説明する。本実施の形態では、p電極300の形成とn電極400の形成とを同時に行っている。
電極形成工程は、ステップ3aの接合層形成工程と、ステップ3bのバリア層形成工程と、ステップ3cの第1金属層形成工程と、ステップ3dの第2金属層形成工程と、ステップ3eの密着層形成工程とからなる。
【0077】
<接合層形成工程>
接合層形成工程では、まず、透明導電層170においてp電極300を形成する領域に対応する部位、および、半導体層露出面140aにおいてn電極400を形成する領域に対応する部位に開口部を設けたマスクを形成する。
続いて、スパッタ法により、開口部から露出した透明導電層170上にp側接合層310を形成し、半導体層露出面140a上にn側接合層410を形成する。このとき、スパッタ条件を制御したスパッタ法を用いることにより、スパッタ材料によらず、カバレッジ性を高くしてp側接合層310およびn側接合層410を成膜することができる。本実施の形態では、スパッタターゲットとしてTaターゲットを用い、Arガス雰囲気下においてスパッタを行っている。
【0078】
<バリア層形成工程>
続いて、スパッタ法により、p側接合層310上にp側バリア層320を形成するとともに、n側接合層410上にn側バリア層420を形成する。このとき、スパッタ条件を制御したスパッタ法を用いることにより、スパッタ材料によらず、カバレッジ性を高くして、p側バリア層320およびn側バリア層420を成膜することができる。本実施の形態では、スパッタターゲットとしてPtターゲットを用い、Arガス雰囲気下においてスパッタを行っている。
【0079】
<第1金属層形成工程>
続いて、p側第1金属層331およびn側第1金属層431を形成する。
本実施の形態では、p側第1金属層331およびn側第1金属層431と、p側第2金属層332およびn側第2金属層432とをAuで形成する。したがって、第1金属層形成工程と第2金属層形成工程とで、1つのスパッタターゲットを共通して用いることができる。すなわち、第1金属層形成工程と第2金属層形成工程とでは、スパッタターゲットを切り替える必要はなく、連続的に処理することが可能になる。
【0080】
第1金属層形成工程では、p側バリア層320上にp側第1金属層331を形成するとともに、n側バリア層420上にn側第1金属層431を形成する。本実施の形態では、スパッタターゲットとしてAuターゲットを用い、Arガス雰囲気下においてスパッタを行っている。
また、第1金属層形成工程において、スパッタ装置のチャンバ内におけるガス圧は、第1圧力になるように設定される。
【0081】
<第2金属層形成工程>
続いて、p側第1金属層331上にp側第2金属層332を形成するとともに、n側第1金属層431上にn側第2金属層432を形成する。
上述したように、本実施の形態では、第2金属層形成工程において、第1金属層形成工程で用いられたAuターゲットをスパッタターゲットとして連続して用い、第1金属層形成工程と同様にArガス雰囲気下においてスパッタを行っている。
【0082】
第2金属層形成工程においては、第1金属層形成工程とはスパッタ条件を異ならせて、スパッタを行う。本実施の形態では、スパッタ装置のチャンバ内におけるガス圧が、第1圧力よりも高い第2圧力になるようにスパッタ条件を異ならせている。
これにより、p側第2金属層332は、p側第1金属層331と比較して硬度が低く形成され、n側第2金属層432は、n側第1金属層431と比較して硬度が低く形成されることになる。
【0083】
ここで、本実施の形態では、第2金属層形成工程において、p側第2金属層332をp側第1金属層331よりも薄く形成し、n側第2金属層432をn側第1金属層431よりも薄く形成する。
第2金属層形成工程では、第1金属層形成工程と比較して、スパッタ装置のチャンバ内のガス圧を高くしているため、第1金属層形成工程よりもAuを積層する速度が遅くなる。したがって、p側第2金属層332をp側第1金属層331よりも薄く形成し、n側第2金属層432をn側第1金属層431よりも薄く形成することで、p側第2金属層332をp側第1金属層331よりも厚く形成し、n側第2金属層432をn側第1金属層431よりも厚く形成する場合と比較して、生産性を高めることができる。
【0084】
なお、本実施の形態においては、第1金属層形成工程と第2金属層形成工程とで、スパッタ装置におけるチャンバ内のガス圧を異ならせたが、スパッタ条件を異ならせる方法はこれに限られない。例えば、スパッタ時における基板110の加熱温度、印加する電圧の大きさ等のスパッタ条件を、第1金属層形成工程と第2金属層形成工程とで異ならせることで、第2金属層の硬度が第1金属層の硬度よりも低くなるように、第1金属層および第2金属層を形成してもよい。
【0085】
<密着層形成工程>
続いて、スパッタ法などの公知の方法を用いて、p側第2金属層332上にp側密着層340を形成するとともに、n側第2金属層432上にn側密着層440を形成する。スパッタ法によってp側密着層340およびn側密着層440を形成する場合には、スパッタターゲットとしてTaターゲットを用い、Arガス雰囲気下においてスパッタを行うようにすればよい。
【0086】
<保護層形成工程>
続いてステップ4の保護層形成工程について説明する。
保護層形成工程では、透明導電層170の形成部、p電極300およびn電極400、および半導体層露出面140aに、SiOからなる保護層180をスパッタ法により形成する。
続いて、マスクによってp側接続面333およびn側接続面433の形成対象部位以外をカバーして、これらの部位の保護層180および密着層(p側密着層340、n側密着層440)をエッチングして、p側第2金属層332およびn側第2金属層432の一部をそれぞれ露出させる。これにより、p側接続面333を除くp側第2金属層332がp側密着層340および保護層180で覆われ、p側密着層340の中央部にp側接続面333が露出した状態になるとともに、n側接続面433を除くn側第2金属層432がn側密着層440および保護層180で覆われ、n側密着層440の中央部にn側接続面433が露出した状態となる。
【0087】
<熱アニール工程>
そして、このようにして得られた半導体発光素子1を、例えば窒素などの還元雰囲気下において、150℃以上600℃以下、より好ましくは200℃以上500℃以下でアニール処理する。この熱アニール工程は、p側接合層310を介した透明導電層170とp側バリア層320との密着性、および、n側接合層410を介した半導体層露出面140aとn側バリア層420との密着性を高めるために行われる。
また、熱アニール工程を行うことで、p側接続面333およびn側接続面433の表面粗さを小さくすることができる。これにより、熱アニール工程を実行しない場合と比較して、p側接続面333およびn側接続面433に対してボンディングワイヤを低荷重でボンディングすることが可能になる。
なお、熱アニール工程は、密着層形成工程を実行した後、保護層形成工程を実行する前に行ってもよい。
以上により、半導体発光素子1が得られる。
【0088】
図4は、本実施の形態の半導体発光素子1を適用した発光装置の断面図の一例である。図4に示すように、発光装置5は、砲弾型であり、本実施の形態の半導体発光素子1が実装されたものである。なお、発光装置5は、例えば、半導体発光素子1と蛍光体とを組み合わせて成るものであり、当業者周知の手段によって当業者周知の構成とすることができる。また、半導体発光素子1と蛍光体とを組み合わせることによって発光色を変える技術が知られているが、このような技術を発光装置5にも何ら制限なく採用することが可能である。
【0089】
図4に示すように、発光装置5は、半導体発光素子1のp電極300にp側ボンディングワイヤ51を介して接続されたp側フレーム53と、半導体発光素子1のn電極400にn側ボンディングワイヤ52を介して接続されたn側フレーム54と、半導体発光素子1の周辺を取り囲んで形成された透明な樹脂からなるモールド55とを備えている。
【0090】
発光装置5は、p側ボンディングワイヤ51との優れた密着性を有するp電極300と、n側ボンディングワイヤ52との優れた密着性を有するn電極400とを有する本実施の形態の半導体発光素子1を備えたものである。したがって、発光装置5は、耐久性に優れ、歩留まり良く製造できる優れたものとなる。
【0091】
図2および図4に示すように、本実施の形態の半導体発光素子1を発光装置5に適用するには、半導体発光素子1の基板110側を基台となるp側フレーム53にダイボンドした後、p電極300におけるp側ボンディング層330のp側第2金属層332に形成されたp側接続面333に、Auからなるボンディングボールを介してAuからなるp側ボンディングワイヤ51を接続する。このとき、p側接続面333およびp側ボンディングワイヤ51に対して熱、荷重および超音波を加えることでボンディングを行う。同様に、n電極400におけるn側ボンディング層430のn側第2金属層432に形成されたn側接続面433に、同じくAuからなるボンディングボールを介してAuからなるn側ボンディングワイヤ52を接続する。
なお、使用されるp側ボンディングワイヤ51、n側ボンディングワイヤ52の直径は10〜30μm程度である。
【0092】
図2に示すように、本実施の形態では、p側接続面333と対向する側から半導体発光素子1を見た場合に、p側第2金属層332、p側第1金属層331、p側バリア層320、p側接合層310および透明導電層170が順に重なった構造を有している。したがって、p側ボンディングワイヤ51をp側接続面333に接続する際に、p側接続面333に対して上方から加えられた力は、p側第2金属層332、p側第1金属層331、p側バリア層320およびp側接合層310を介して、透明導電層170へ伝えられる。
【0093】
本実施の形態では、p側第2金属層332がp側第1金属層331よりも低い硬度を有しているため、p側第2金属層332がp側第1金属層331よりも高い硬度を有している場合と比較して、ボンディングの際にp側接続面333に対して加える力を小さくしても、p側ボンディングワイヤ51を接続することが可能になる。したがって、ボンディングに伴ってp側バリア層320、p側接合層310および透明導電層170に伝わる力をより小さくすることができ、ボンディングに伴う透明導電層170の割れや、p側接合層310およびp側バリア層320等の剥がれが生じるのをより抑制することが可能になる。
【0094】
同様に、本実施の形態では、n側第2金属層432がn側第1金属層431よりも低い硬度を有しているため、n側第2金属層432がn側第1金属層431よりも高い硬度を有している場合と比較して、ボンディングの際にn側接続面433に対して加える力を小さくしても、n側ボンディングワイヤ52を接続することが可能になる。したがって、ボンディングに伴ってn側バリア層420、n側接合層410およびn型半導体層140の半導体層露出面140aに伝わる力を小さくすることができ、ボンディングに伴うn側接合層410およびn側バリア層420等の剥がれが生じるのを抑制することが可能になる。
【0095】
[実施の形態2]
なお、上述した実施の形態1の第1金属層形成工程および第2金属層形成工程においては、ともにスパッタ法を用い、第1金属層形成工程と第2金属層形成工程とでスパッタ条件を変えることで、第1金属層および第1金属層よりも硬度が低い第2金属層を形成した。しかし、第1金属層形成工程および第2金属層形成工程を実行する方法としては、これに限られない。
例えば、第1金属層形成工程と第2金属層形成工程とで、異なる手法を用いることにより、第1金属層および第1金属層よりも硬度が低い第2金属層を形成することができる。例として、以下の方法が挙げられる。
【0096】
<第1金属層形成工程>
第1金属層形成工程では、スパッタターゲットとしてAuターゲットを用い、Arガス雰囲気下においてスパッタを行い、p側バリア層320上にp側第1金属層331を形成するとともに、n側バリア層420上にn側第1金属層431を形成する。
【0097】
<第2金属層形成工程>
続いて、第2金属層形成工程では、Auを蒸発材料とした蒸着法を用いて、p側第1金属層331上にp側第2金属層332を形成するとともに、n側第1金属層431上にn側第2金属層432を形成する。
【0098】
一般に、スパッタ法と比較して、蒸着法では、積層される金属層の硬度が低くなる。したがって、第1金属層をスパッタで形成し、第2金属層を蒸着法で形成することにより、第2金属層の硬度を第1金属層の硬度よりも低く形成することが可能になる。
以上のように、例えば、第1金属層形成工程においてスパッタ法を用い、第2金属層形成工程において蒸着法を用いることにより、第1金属層よりも硬度が低い第2金属層を形成することができる。
【0099】
[実施の形態3]
また、実施の形態1および実施の形態2では、p電極300のp側ボンディング層330をp側第1金属層331とp側第2金属層332とからなる二層構造にし、n電極400のn側ボンディング層430をn側第1金属層431とn側第2金属層432とからなる二層構造としたが、本発明のp側ボンディング層330およびn側ボンディング層430の構成はこれに限られない。以下、本発明の実施の形態3について説明する。
【0100】
実施の形態3における半導体発光素子1は、p電極300におけるp側ボンディング層330およびn電極400におけるn側ボンディング層430の構成を除き、図1および図2に示す半導体発光素子1と同様の構成を有する。
実施の形態3の半導体発光素子1におけるp電極300のp側ボンディング層330は、AuまたはAuを含む合金からなり、連続した一層の金属層で構成される。具体的には、p側ボンディング層330は、p側バリア層320に接する側から外部に露出する上面に向かって、硬度が徐々に低くなるように形成されている。
【0101】
したがって、p側ボンディング層330における上面は、p側ボンディング層330におけるp側バリア層320に接する側よりも硬度が低くなっている。これにより、ボンディングワイヤとp側ボンディング層330との密着性を優れたものにすることが可能になる。
また、p側ボンディング層330のうちp側バリア層320に接する側は、p側ボンディング層330における上面側よりも硬度が高くなっている。これにより、p側バリア層320に対するp側ボンディング層330の接合強度を高めることが可能になる。
【0102】
次に、本実施の形態における半導体発光素子1の製造方法の一例について説明する。
本実施の形態における半導体発光素子1は、電極形成工程(ステップ3)における第1金属層形成工程(ステップ3c)および第2金属層形成工程(ステップ3d)を除いて、上述した実施の形態における半導体発光素子1の製造方法と同様の方法で製造することができる。すなわち、本実施の形態では、第1金属層形成工程(ステップ3c)と第2金属層形成工程(ステップ3d)とを一連としたボンディング層形成工程として実行することで、上記のようなp側ボンディング層330およびn側ボンディング層430を形成している。以下、本実施の形態における半導体発光素子1のボンディング層形成工程について説明する。
【0103】
本実施の形態におけるボンディング層形成工程では、スパッタ条件を徐々に変化させながらスパッタを行うことにより、p側バリア層320上にp側ボンディング層330を形成し、n側バリア層上にn側ボンディング層430を形成する。スパッタターゲットとしてはAuターゲットを用い、Arガス雰囲気下においてスパッタを行う。
本実施の形態においては、ボンディング層形成工程において、スパッタ装置におけるチャンバ内のガス圧を徐々に上昇させながらスパッタを行うことでボンディング層を形成する。これにより、p側ボンディング層330は、p側バリア層320に接する側から外部に露出する上面に向かって硬度が徐々に低くなるように形成され、n側ボンディング層430は、n側バリア層420に接する側から外部に露出する上面に向かって硬度が徐々に低くなるように形成される。
【0104】
ここで、本実施の形態においては、ボンディング層形成工程において、スパッタ条件としてスパッタ装置におけるチャンバ内のガス圧を徐々に変化させたが、スパッタ条件を変化させる方法はこれに限られない。例えば、スパッタ時における基板110の加熱温度や印加する電圧の大きさ等の条件を徐々に変化させることで、ボンディング層を、バリア層に接する側から外部に露出する上面に向かって硬度が徐々に低くなるように形成してもよい。
【0105】
なお、実施の形態1〜3においては、p側ボンディング層330をp側バリア層320上に形成したが、例えば、p側ボンディング層330とp側バリア層320との間に他の導電層等が形成されていてもよい。同様に、n側ボンディング層430をn側バリア層420上に形成したが、例えば、n側ボンディング層430とn側バリア層420との間に他の導電層等が形成されていてもよい。
また、実施の形態1〜3では、第1の導電型が電子をキャリアとするn型であり、第2の導電型が正孔をキャリアとするp型である場合を例として説明を行ったが、これに限られない。すなわち、第1の導電型が正孔をキャリアとするp型であり、第2の導電型が電子をキャリアとするn型であってもよい。
【0106】
さらに、実施の形態1〜3においては、積層半導体層100としてIII族窒化物半導体からなる層を例として挙げて説明を行ったが、本発明の適用対象はこれに限られない。本発明は、例えば、他のIII−V族化合物半導体やII−VI族化合物半導体等、あらゆる化合物半導体に対して適用することができる。
【実施例】
【0107】
次に、本発明の実施例について説明を行うが、本発明は実施例に限定されるものではない。
本発明者は、p側ボンディング層330の構成と、p側第1金属層331およびp側第2金属層332の製造条件とを異ならせて半導体発光素子1の製造を行い、p電極300の評価を行った。
【0108】
<半導体発光素子の作製>
(実施例1)
以下に示すようにして、窒化ガリウム系化合物半導体を備えた発光素子部を有するIII族窒化物半導体発光素子を作製した。
まず、図2に示すように、C面を主面としたサファイア単結晶からなる基板110上に、AlNからなる中間層120を介してアンドープGaNからなる厚さ4μmの下地層130を形成した。次に、Siドープ(濃度1×1019/cm)GaNからなる厚さ2μmのnコンタクト層、Siドープ(濃度1×1018/cm)In0.1Ga0.9Nからなる厚さ12.5nmのnクラッド層(nコンタクト層およびnクラッド層によりn型半導体層140が構成される。)を形成した後、GaNからなる厚さ16nmの障壁層とIn0.2Ga0.8Nからなる厚さ2.5nmの井戸層を交互に5回積層し、最後に障壁層を設けた多重量子井戸構造の発光層150を形成した。続いて、Mgドープ(濃度1×1020/cm)Al0.07Ga0.93Nからなる厚さ2.5nmのpクラッド層およびMgドープ(濃度8×1019/cm)GaNからなる厚さ0.15μmのpコンタクト層(pクラッド層およびpコンタクト層によりp型半導体層160が構成される。)を順次積層して、III族窒化物半導体からなるエピタキシャル層を形成した。
なお、窒化ガリウム系化合物半導体層の積層は、MOCVD法により、当該技術分野においてよく知られた通常の条件で行なった。但し、AlNからなる中間層120の積層はスパッタ法により行なった。
【0109】
次に、透明導電層170の形成に先立ち、公知のフォトリソグラフィーの手法によってパターニングして、所定の領域の積層半導体層100の一部をエッチングしてn型半導体層140のnコンタクト層の一部を露出させ、半導体層露出面140aを形成した。
次に、エピタキシャル層のpコンタクト層、nコンタクト層上の所定の位置に公知のフォトリソグラフィー法を用いて、IZOからなる透明導電層170を形成した。
【0110】
次に、公知のフォトリソグラフィー技術を用い、透明導電層170上に、Ta/Pt/Au/Ta層構造よりなるp電極300を形成するとともに、nコンタクト層が露出した半導体層露出面140aの上に、Ta/Pt/Au/Ta層構造よりなるn電極400を形成した。
具体的には、Ar雰囲気下でスパッタ法により、Ta40nmからなるp側接合層310を透明導電層170上に形成するとともに、Ta40nmからなるn側接合層410を半導体層露出面140a上に形成した。次に、Ar雰囲気下でスパッタ法により、Pt100nmからなるp側バリア層320をp側接合層310上に形成するとともに、Pt100nmからなるn側バリア層420をn側接合層410上に形成した。
【0111】
次に、ガス圧を0.3PaとしたAr雰囲気下でスパッタ法により、Au1000nmからなるp側第1金属層331をp側バリア層320上に形成するとともに、n側第1金属層431をn側バリア層420上に形成した。
続いて、Arのガス圧を 2.3Paに変更し、スパッタ法により、Au100nmからなるp側第2金属層332をp側第1金属層331上に形成するとともに、Au100nmからなるn側第2金属層432をn側第1金属層431上に形成した。
さらに続いて、Ar雰囲気下でスパッタにより、Ta10nmからなるp側密着層340をp側第2金属層332上に形成するとともに、Ta10nmからなるn側密着層440をn側第2金属層432上に形成した。
【0112】
次に、保護層180を形成した後、公知のフォトリソグラフィーの手法によってp側接続面333およびn側接続面433の形成対象部位以外をレジストでカバーして、これらの部位の保護層180および密着層(p側密着層340、n側密着層440)をエッチングして、p側第2金属層332およびn側第2金属層432の一部をそれぞれ露出させた。
【0113】
次に、基板裏面をラッピングおよびポリッシングすることで、サファイア単結晶の基板110を薄板化した後、分割しIII族窒化物半導体発光素子(半導体発光素子1)を得た。
実施例1において得られた半導体発光素子1のLED特性は、電圧Vfが3.13Vのとき、発光波長が453nmであり、発光出力が18.2mWであった。
【0114】
(実施例2〜9、比較例1〜4)
次に、p電極300を構成するp側第1金属層331およびp側第2金属層332の成膜条件を異ならせて、半導体発光素子1の製造を行った。
図6は、実施例1〜9および比較例1〜4におけるp側ボンディング層330の構成と、p側第1金属層331およびp側第2金属層332の成膜条件(金属、成膜方法、スパッタ時のArガス圧および膜厚)とを示したものである。実施例1〜9および比較例1〜4においては、p側ボンディング層330の膜厚(p側第1金属層331の膜厚とp側第2金属層332の膜厚とを合わせた厚さ)が、1100nmとなるように、p側ボンディング層330を成膜した。
【0115】
また、比較例1〜4では、p側ボンディング層330を構成するp側第1金属層331とp側第2金属層332のうち、p側第1金属層331のみを成膜し、p側第2金属層332は成膜しない条件となっている。すなわち、比較例1〜4のp側ボンディング層330はAu層が単層構成となっている。
一方、実施例1〜9のp側ボンディング層330は、比較例1と同様の成膜条件で形成したp側第1金属層331上に、比較例1とは異なる成膜条件で形成したp側第2金属層332が重なった二層構成となっている。特に、実施例1および実施例5では、比較例1と同様の成膜条件で形成したp側第1金属層331上に、比較例2と同様の成膜条件で形成したp側第2金属層332が重なった構成を有している。同様に、実施例4および実施例8では、比較例1と同様の成膜条件で形成したp側第1金属層331上に、比較例3と同様の成膜条件で形成したp側第2金属層332が重なった構成を有している。さらに、実施例9では、比較例1と同様の成膜条件で形成したp側第1金属層331上に、比較例4と同様の成膜条件で形成したp側第2金属層332が重なった構成を有している。
【0116】
図5は、比較例1〜3におけるp電極300の断面走査型透過電子顕微鏡(Scanning Transmission Electron Microscope;STEM)写真である。図5(a)は、比較例1におけるp電極300のSTEM写真であり、(b)は、比較例2におけるp電極300のSTEM写真であり、(c)は、比較例3におけるp電極300のSTEM写真である。
【0117】
図5(a)のAu層(p側第1金属層331)には、幅300〜500nm程度の柱状結晶が形成されていることが観測された。また、図5(b)および図5(c)のAu層と比較して、図5(a)のAu層表面は平坦である。
一方、図5(b)には、図5(a)のような柱状結晶は現れず、大きさが100〜300nm程度の結晶粒が形成されていることが観測された。また、この結晶粒は、規則的に形成されておらず、ランダムな塊状に形成されている。そして、図5(b)のAu層の表面は、このランダムな塊状の結晶粒の構造を反映し、図5(a)のAu層と比較して平滑性が低く、凹凸の大きな形状になっている。
【0118】
ここで、スパッタによりAu層を形成する場合、スパッタ装置のチャンバ内のガス圧が高くなるほど、Au層を形成する結晶の配向性が低下する。したがって、スパッタ装置のチャンバ内のガス圧が低い比較例1の場合には、図5(a)のAu層のように、結晶の配向がそろった柱状の構造が観察された。一方、比較例1よりもガス圧が高い比較例2の場合には、図5(b)のAu層のように、配向が異なる複数の結晶粒がランダムに積層された塊状の構造が観察された。
また、一般に、スパッタによりAu層を形成する場合、スパッタ装置のチャンバ内のガス圧が高くなるほど、Au層を形成する結晶粒の大きさが小さくなる。
したがって、スパッタによりAu層を形成する場合、スパッタ装置のチャンバ内のガス圧を高くすると、結晶の配向性が低下するのに伴い、配向が異なる結晶粒がランダムに積層され、Au層の表面の平滑性が低下する。チャンバ内のガス圧をさらに高くし、ガス圧がある一定の値よりも高くなると、Au層を形成する結晶粒の大きさが小さくなるのに伴い、Au層の表面の平滑性が向上する。なお、Au層表面の平滑性は、後述するAFMによるラフネス測定により評価することができる。
【0119】
また、図5(c)のAu層は、図5(a)および図5(b)のAu層と比較して、結晶粒の大きさが大きく形成されていることが観測された。また、この結晶粒は、規則的に形成されておらず、ランダムな塊状で表れている。そして、図5(c)のAu層の表面は、このランダムな塊状の結晶粒の構造を反映し、図5(a)のAu層と比較して凹凸の大きな形状になっている。
【0120】
以上より、実施例1〜9におけるp側ボンディング層330は、柱状結晶の積層構造からなるp側第1金属層331上に、ランダムな塊状の結晶の積層構造からなるp側第2金属層332が積層された構造を有しているといえる。
【0121】
<半導体発光素子におけるp電極の評価方法>
続いて、実施例1〜9および比較例1〜4において得られた半導体発光素子におけるp電極300の評価を行った。p電極300の評価は、表面目視検査、AFM評価およびワイヤボンディング評価により行った。初めに、それぞれの評価方法について説明する。
【0122】
まず、p電極300の表面目視検査について説明する。
表面目視検査は、p電極300の上面顕微鏡写真を基に行った。
図7は、実施例1および比較例1〜4におけるp電極300の上面の顕微鏡写真の一例である。図7(a)は、実施例1のp電極300であり、(b)は、比較例1のp電極300であり、(c)は、比較例2のp電極300であり、(d)は、比較例3のp電極300であり、(e)は、比較例4のp電極300である。
【0123】
図7において、実施例1と、比較例2、比較例3および比較例4とを比較すると、比較例2、比較例3および比較例4では、実施例1と比べて、p電極300の上面に輝点が多く生じている一方、実施例1では、比較例2、比較例3および比較例4と比べて、p電極300の上面にほとんど輝点が生じていないことが分かった。この輝点は、p電極300の上面に生じる凹凸に起因するものである。したがって、実施例においては、比較例2、比較例3および比較例4と比較して、p電極300の上面に凹凸が生じるのを抑制できることが確認された。
【0124】
一方、図7において、実施例1と比較例1とを比較すると、ともにp電極300の上面に輝点がほとんど生じていないことが分かった。したがって、実施例1においては、p側第1金属層331上にp側第1金属層よりも硬度が低いp側第2金属層332を積層した場合であっても、比較例1と同程度にp電極300上面に凹凸が生じるのを抑制できることが確認された。
【0125】
p電極300の表面目視検査は、p電極300の上面顕微鏡写真を基に、p電極300の上面に生じた輝点の程度によって評価を行った。具体的には、図7(a)に示す実施例1および図7(b)に示す比較例1を○、図7(c)に示す比較例2および図7(d)に示す比較例3を△、図7(e)に示す比較例4を×と評価した。なお、○および△は、凹凸の程度が許容できる範囲内にあると評価されるものであり、×は、凹凸の程度が許容できる範囲外であると評価されるものである。同様の方法により、実施例2〜9についても評価を行った。
【0126】
続いて、AFMによるナノインデンテーション測定および表面粗さ測定(ラフネス測定)について説明する。
ナノインデンテーション測定では、荷重60μNをかけてp電極300の上面(p側接続面333)に対して針を押し込んだ場合に形成される凹みの深さを測定した。なお、凹みの深さが大きい方ほど、硬度が低いことを示す。
ラフネス測定では、タッピングモードという探針を高周波数で強制振動させ、試料表面を走査し、振動振幅の増減によって表面の凹凸形状を三次元的に計測するモードで実施した。そして、得られた三次元画像から平均表面粗さRa(nm)をラフネス値として測定した。
【0127】
次に、ワイヤボンディング評価について説明する。
ワイヤボンディング評価では、半導体発光素子1のp電極300におけるp側接続面333に対してボンディングワイヤをボンディングし、p電極300とボンディングワイヤとの密着性およびp電極300と透明導電層170との密着性の評価を行った。
評価は、実施例1〜9および比較例1〜4のそれぞれについて、20000個の半導体発光素子1に対して、超音波出力、印加時間を一定として、荷重を30g重とした条件でワイヤボンディングを行い、p電極300が透明導電層170から剥がれる電極ハガレおよびボンディングワイヤがp電極300から剥がれる不着不良がどれだけ発生するかを調べることにより行った。なお、ワイヤボンディング条件の設定においては、超音波、印加時間を一定として荷重を60g重としたときに各条件で100個中1個以上電極ハガレが発生したので、半分の荷重の30g重に設定したところ、いずれの条件でも電極ハガレは発生しなかった。
【0128】
<半導体発光素子におけるp電極の評価結果>
続いて評価結果について述べる。
図8は、実施例1〜9および比較例1〜4におけるp側第1金属層331とp側第2金属層332の成膜条件と、表面目視検査、AFM評価およびワイヤボンディング評価との関係を示したものである。
【0129】
表面目視検査の結果より、実施例1〜8では、p電極300の表面に輝点がほとんど見られず、実施例9でもわずかに見られる程度であった。一方、比較例4では、実施例1〜9と比較してp電極300の表面に多くの輝点が見られた。
したがって、実施例1〜9では、比較例4と比較して、p電極300の凹凸が少なく外観が良好であることが分かった。
【0130】
また、ワイヤボンディング評価の結果より、実施例1〜9では、不着不良率が0%であり、良好な結果が得られた。
一方、比較例1〜3では、不着不良率が1.7〜2.5%であった。
実施例1〜9および比較例1のナノインデンテーション測定における凹み深さを比較すると、ワイヤボンディング評価で良好な結果が得られた実施例1〜9では75〜112nmであり、比較例1では37nmであった。これにより、実施例1〜9では、p側ボンディング層330の硬度が比較例1と比較して低く、比較例1と比較してワイヤと電極表面の密着性が良好であることが分かった。
【0131】
実施例1〜9と比較例2および比較例3とにおけるラフネス測定の結果を比較すると、ワイヤボンディング評価で良好な結果が得られた実施例1〜9では、ラフネスが2.6〜3.5nmであり、比較例2では7.1nm、比較例3では4.5nmであった。これにより、実施例1〜9では、比較例2および比較例3と比較してp側ボンディング層330の表面の平滑性が良好であり、比較例2および比較例3と比較してワイヤと電極表面の密着性が良好であることが分かった。
【0132】
以上より、実施例1〜9のようにp側ボンディング層330をp側第1金属層331とp側第1金属層331よりも硬度が低いp側第2金属層332との二層構造とすることにより、p側ボンディング層330の表面の凹凸が少なく外観が良好で、且つ、p側ボンディング層の表面が軟らかくボンディングワイヤとの密着性が良好なp電極300を得られることが確認された。
【符号の説明】
【0133】
1…半導体発光素子、5…発光装置、100…積層半導体層、110…基板、120…中間層、130…下地層、140…n型半導体層、150…発光層、160…p型半導体層、170…透明導電層、180…保護層、300…p電極、310…p側接合層、320…p側バリア層、330…p側ボンディング層、331…p側第1金属層、332…p側第2金属層、340…p側密着層、400…n電極、410…n側接合層、420…n側バリア層、430…n側ボンディング層、431…n側第1金属層、432…n側第2金属層、440…n側密着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電型を有する第1半導体層と、
通電により発光し、前記第1半導体層上に積層される発光層と、
第2の導電型を有し、前記発光層上に積層される第2半導体層と、
導電性を備え、前記第2半導体層上に積層される導電層と、
Auを含む金属材料で構成され、前記導電層上に積層される第1金属層と、
Auを含むとともに前記第1金属層よりも硬度が低い金属材料で構成され、当該第1金属層に接する面とは反対側の面が外部に露出するように、当該第1金属層上に積層される第2金属層と
を含む半導体発光素子。
【請求項2】
前記第1金属層および前記第2金属層は、構成元素が同一な金属材料から構成されることを特徴とする請求項1記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記第1金属層および前記第2金属層は、ともにAu単体から構成されることを特徴とする請求項1または2記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記第1金属層の厚さは、前記第2金属層の厚さよりも厚いことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記第1半導体層は、電子をキャリアとするIII族窒化物半導体で構成され、
前記第2半導体層は、正孔をキャリアとするIII族窒化物半導体で構成されること
を特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記導電層は、前記発光層から出射される光に対する透過性を有するとともに前記第2半導体層上に積層される透明導電層からなることを特徴とする請求項5記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記透明導電層と前記第1金属層との間には、当該第1金属層よりも硬度が高い金属材料で構成される第3金属層が積層されていることを特徴とする請求項6記載の半導体発光素子。
【請求項8】
通電により発光する発光層を含む積層半導体に対して給電するための電極構造であって、
Auを含む金属材料で構成され、外部に露出するように設けられる外側金属層と、
Auを含むとともに前記外側金属層よりも硬度が高い金属材料で構成され、当該外側金属層よりも前記発光層に近い側に、当該外側金属層に沿って設けられる内側金属層と
を備える電極構造。
【請求項9】
前記外側金属層と前記内側金属層とは、組成が等しい金属材料で構成されることを特徴とする請求項8記載の電極構造。
【請求項10】
前記外側金属層と前記内側金属層とは、ともにAu単体から構成されることを特徴とする請求項9記載の電極構造。
【請求項11】
前記外側金属層の厚さは、前記内側金属層の厚さよりも薄いことを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項記載の電極構造。
【請求項12】
第1の導電型を有する第1半導体層と、通電により発光し、当該第1半導体層上に積層される発光層と、第2の導電型を有し、当該発光層上に積層される第2半導体層と、導電性を備え、当該第2半導体層上に積層される導電層と、Auを含む金属材料で構成され、当該導電層上に積層される第1金属層と、Auを含むとともに当該第1金属層よりも硬度が低い金属材料で構成され、当該第1金属層に接する面とは反対側の面が外部に露出するように、当該第1金属層上に積層される第2金属層とを有する半導体発光素子と、
前記半導体発光素子の前記第2金属層にボンディングされるボンディングワイヤと、
前記ボンディングワイヤを介して前記半導体発光素子に給電する給電部材と
を備える発光装置。
【請求項13】
前記第1金属層および前記第2金属層は、ともにAu単体から構成され、当該第1金属層の厚さは、当該第2金属層の厚さよりも厚いことを特徴とする請求項12記載の発光装置。
【請求項14】
前記半導体発光素子は、導電性を備え、前記第1半導体層上に積層される他の導電層と、Auを含む金属材料で構成され、当該他の導電層上に積層される他の第1金属層と、Auを含むとともに当該他の第1金属層よりも硬度が低い金属材料で構成され、当該他の第1金属層に接する面とは反対側の面が外部に露出するように、当該他の第1金属層上に積層される他の第2金属層とを有し、
前記半導体発光素子の前記他の第2金属層にボンディングされる他のボンディングワイヤと、
前記他のボンディングワイヤを介して前記半導体発光素子に給電する他の給電部材と
をさらに備えることを特徴とする請求項12または13記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−227383(P2012−227383A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94135(P2011−94135)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】