説明

半導体発光素子およびその製造方法

【課題】電極からの電流リークや素子の破壊を引き起こすことがなく、また、素子特性の悪化を抑制できる半導体素子の提供。
【解決手段】第1導電型半導体層及び第2導電型半導体層を有する半導体積層部と、第1導電型半導体層に接続される第1導電側電極と、第2導電型半導体層に接続される第2導電側電極とを備える半導体素子であって、第2導電側電極と、半導体積層部を被覆する絶縁膜とが、離間領域を介して離間して配設され、絶縁膜表面に第1金属層が設けられ、第2導電側電極表面に第1金属層とは材料の異なる第2金属層が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子、特に、同一面側に電極と絶縁膜を有する半導体素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子においては、複数の半導体層で構成される多層構造の半導体積層部の上に、半導体層に電流を供給するための電極と、その電極を周囲から電気的に絶縁するための絶縁膜とを、それぞれ設ける場合がある。この場合、電極は、例えば半導体発光素子の場合、発光層からの光を反射して、光取り出し効率を高めるために、Ag、Al等で形成される。そして、この半導体発光素子は、接合用基板に貼り合わせたり、支持基板に実装したりする場合がある。
【0003】
そして、この貼合せや実装の際に、接合用基板や支持基板と接合するために、電極や絶縁膜に金属層が形成され、加熱処理が施される(例えば特許文献1参照)。また、半導体層の上に電極と絶縁膜とを有する場合、電極の一部を覆うように絶縁膜が延在するように形成したり、あるいは絶縁膜の一部まで電極が延在するように形成したりすることが行われる。特に、AgやAlは、マイグレーションを起こしやすい材料であるので、絶縁膜が電極の一部を覆うように形成されることが多い。例えば、特許文献2には、電極の上を覆うように、絶縁性薄膜を積層した構造が開示されている。また、特許文献3には、p側電極を構成するAg含有の第1金属層を被覆する保護膜を有する構造が開示されている。さらに、特許文献4には、絶縁膜の外周に電極が密着して形成された構造が開示されている。
【特許文献1】WO2003/065464
【特許文献2】特開2000−36619号公報
【特許文献3】特開2003−168823号公報
【特許文献4】特開平5−110140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
貼合せや実装に際して、高温で加熱処理することで充分な密着性が得られるが、高温であるほどSiO等からなる絶縁膜に熱膨張に起因すると思われるひび割れや欠けが発生することがある。またこれらの構造では、電極は、半導体発光素子の動作発光時の放熱経路となり、必然的に高温状態になりうる部位である。そして、ひび割れや欠けが発生すると、この部分を通って電極を構成するAgやAlのマイグレーションが発生し、素子のリークや破壊を引き起こすことがある。また、ウエハから素子を分離してチップ化する場合に、絶縁膜がひび割れすることもある。
【0005】
また、電極や絶縁膜に金属層を形成する際には、電極と絶縁膜の両方との密着性等を考慮して材料を選択する必要があり、選択できる材料が限られる。さらには、このような材料を選択したときに、絶縁膜の特性に影響はないが、電極の特性に影響を及ぼしてしまうこともある。
【0006】
そこで、本発明は、電極からの電流リークや素子の破壊を引き起こすことがなく、電極と絶縁膜とでそれぞれ適した金属材料を選択できる半導体素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するため、請求項1に係る発明は、第1導電型半導体層及び第2導電型半導体層を有する半導体積層部と、前記第1導電型半導体層に接続される第1導電側電極と、前記第2導電型半導体層に接続される第2導電側電極とを備える半導体素子であって、前記第2導電側電極と、前記半導体積層部を被覆する絶縁膜とが、離間領域を介して離間して配設され、前記絶縁膜表面に第1金属層が設けられ、前記第2導電側電極表面に前記第1金属層とは材料の異なる第2金属層が設けられていることを特徴とする。
【0008】
この半導体素子では、第2導電側電極が、半導体積層部を被覆する絶縁膜と、離間領域を介して離間して配設されていることによって、素子のリークや破壊を引き起こすことがなく、また、このように離間した電極と絶縁膜にそれぞれ異なる金属層を設けているので、材料を選択する際には、電極と絶縁膜のいずれか一方のみとの特性を考慮すればよく、幅広い材料から選択することができる。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記第1金属層は、前記第2導電側電極と離間していることを特徴とする。この半導体素子では、第1金属層が第2導電側電極に影響を与えることを防止できる。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記第1金属層は、前記絶縁膜と接する側に、Ti、Niから選ばれる1種を含むことを特徴とする。また、請求項4に係る発明は、前記第2金属層は、前記第2導電側電極と接する側に、Ru、Rh、Os、Ir、Pt、W、Moから選ばれる1種を含むことを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、前記半導体積層部の前記第2導電側電極側は、前記第2金属層を介して、支持基板に接着されていることを特徴とする。また、請求項6に係る発明は、このような半導体素子において、前記第2金属層は、前記支持基板側に、Ti、Au、Sn、Pdから選ばれる1種を含み、それよりも前記第2導電側電極側に、Ru、Rh、Os、Ir、Pt、W、Moから選ばれる1種を含むことを特徴とする。この半導体素子では、Ti、Au、Sn、Pdから選ばれる1種を含む第2金属層によって支持基板に接着することができ、さらに、このような金属材料の第2導電側電極への拡散を、Ru、Rh、Os、Ir、Pt、W、Moから選ばれる1種によって防ぐことができる。
【0012】
請求項7に係る発明は、前記第2導電側電極はAg、Alから選ばれる1種を含み、前記半導体積層部を平面視して、前記第2導電側電極は前記絶縁膜に囲まれていることを特徴とする。この半導体素子では、第2導電側電極を囲む絶縁膜によって、電極中のAgやAlのマイグレーションをさらに抑制することができる。
【0013】
請求項8に係る発明は、前記第2金属層は、前記第1金属層まで連続する連続層であり、前記離間領域には、空隙または前記連続層が設けられている。この半導体素子では、空隙または第2導電側電極に設けられた金属層からなる連続層で構成される離間領域によって、第2導電側電極が、絶縁膜と離間され、素子のリークや破壊を引き起こすことがない。
【0014】
請求項9に係る発明は、前記第1導電側電極と前記第2導電側電極は、前記半導体積層部を挟んで対向しており、前記半導体積層部は、前記第1導電型半導体層と前記第2導電型半導体層の間に介設された発光層を有する半導体発光部であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の半導体素子は、電極を構成するAgやAlのマイグレーションに起因する素子のリークや破壊の発生を抑制することができる。また、電極と絶縁膜のそれぞれに適した金属層を別個に設けることができ、金属層に起因する素子の特性悪化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の半導体素子およびその製造方法について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る半導体素子1の構造を示す模式断面図である。
【0017】
図1に示す半導体素子1は、半導体発光素子であり、第1導電型半導体層2と、第2導電型半導体層3と、第1導電型半導体層2と第2導電型半導体層3の間に介設された発光層4とを有する半導体発光部である半導体積層部5を備え、第1導電型半導体層2に接続される第1導電側電極6と、第2導電型半導体層3に接続される第2導電側電極7とを備える構造を有するものである。また、第2導電型半導体層3には、第2導電側電極7と離間して絶縁膜11bが設けられ、さらに、絶縁膜11bと第2導電側電極7の下面には、これらに接するとともに、それぞれ材料の異なる第1金属層8と第2金属層9とを備え、さらにまた、下面に基板10および裏面メタライズ層11を備えている。また、12aは、絶縁膜であり、半導体積層部5の側面で絶縁膜12bと連絡している。
【0018】
半導体積層部を構成する第1導電型半導体層2と、第2導電型半導体層3とは、半導体材料からなる層にドーパントをドープして、n型またはp型の半導体層を形成する。この第1導電型半導体層2および第2導電型半導体層3を構成する半導体材料の具体例としては、GaN、AlN、もしくはInN、又はこれらの混晶であるIII−V族窒化物半導体(InαAlβGa1−α−βN、0≦α、0≦β、α+β≦1)、III族元素として一部若しくは全部にBなどを用いたり、V族元素としてNの一部をP、As、Sbなどで置換した混晶、AlGaAs、InGaAs等のGaAs系材料、AlGaInP等のInP系材料、これらの混晶であるInGaAsP等の他のIII−V族化合物半導体などが挙げられる。また、半導体材料にドープされるドーパントとしては、n型ドーパントとして、Si、Ge、Sn、S、O、Ti、Zr等のIV族、若しくはVI族元素、p型ドーパントとして、Be、Zn、Mn、Cr、Mg、Caなどが挙げられる。第1導電型半導体層2とおよび第2導電型半導体層3を窒化物半導体材料で構成する場合には、第1導電側電極6または第2導電側電極7との接触抵抗を低くすることができる点で、Siを含むGaN、Mgを含んだGaNが最も好ましい。また、この第1導電型半導体層2および第2導電型半導体層3の膜厚は、発光層4を合わせた半導体積層部の総膜厚として、1000nm〜5000nm程度である。
【0019】
また、これらの第1導電型半導体層2および第2導電型半導体層3は、それぞれ多層構造に形成されていてもよい。例えば、第1導電型半導体層2は、第1導電側電極6の側から、コンタクト層、クラッド層の順に積層された多層構造を有していてもよい。また、第2導電型半導体層7は、第2導電側電極の側からコンタクト層、クラッド層の順に積層された多層構造を有していてもよい。また、第1導電型半導体層2および第2導電型半導体層3が多層構造を有する場合、多層構造は、アンドープの半導体材料またはドープされた半導体材料で形成された層とを交互に積層して構成されていてもよい。
【0020】
また、発光層4は、n型またはp型の半導体層である、第1導電型半導体層2と、第2導電型半導体層3とから注入される正孔および電子の再結合に生成するエネルギを光として放出するものである。
【0021】
この発光層4は、井戸層と障壁層とを含む量子井戸構造を有するものが好ましい。また、この発光層4を構成する半導体材料は、ノンドープ、n型不純物ドープ、p型不純物ドープのいずれのものでもよい。なかでも、ノンドープまたはn型不純物ドープの半導体材料で形成されることが好ましい。さらに、例えば、井戸層をアンドープとし、障壁層をn型不純物ドープとしてもよい。さらにまた、井戸層にドープするドーパントの種類およびドープ゜量を選択することによって、半導体発光素子の目的、用途等に応じて発光層4で生成する光の波長を調整することができる。例えば、窒化物半導体からなる発光層4では、60nm〜650nm付近、好ましくは380nm〜560nmの波長の光を発光することができるが、井戸層にAlを含有することによって、従来のInGaNの井戸層では困難な波長域、具体的には、GaNのバンドギャップエネルギーである波長365nm付近、もしくはそれより短い波長を得ることができる。
【0022】
また、第1金属層8及び第2金属層9は、基板10と第2導電側電極7および絶縁膜12bとを接合するとともに、基板10を介して、第2導電側電極7と裏面メタライズ層11とを電気的に接続するためのものである。図1において、第1金属層8は絶縁膜12bに設けられており、第2金属層9は第2導電側電極7および第1金属層8を覆うように連続して設けられている。特に、第2導電側電極7が面内で複数に分離されている場合は、このように第2金属層9を連続層として設けることで、分離された複数の第2導電側電極7を第2金属層9によって電気的に接続することができる。また、裏面メタライズ層11は、金属材料または合金材料からなる連続層として形成される。
【0023】
第1金属層8および第2金属層9は、基板等との貼り合わせや実装に際して、第2導電側電極7と、さらに絶縁膜12bと、を基板等に接合するための接合層を構成する。第1金属層8の材料は、絶縁膜12bに適した材料から選択することができ、絶縁膜12bとの密着性のよいものが好ましい。具体的には、Ti、Ni等の金属材料およびこれらの合金で形成され、例えば、Ti/Pt、Ti/Rh、Ti/Ir、Ni/Pt、Ni/Rh、Ni/Irの順に合計膜厚数十〜数百nm程度で成膜して構成することができる。
【0024】
第2金属層9の材料は、第2導電側電極7との密着性の他、第2導電側電極7と第2導電型半導体層3との間のオーミック特性や第2導電側電極7の抵抗への影響も考慮することが好ましい。つまり、第2金属層9の材料によっては、第2導電側電極7へ拡散するなどして、オーミック特性の悪化や抵抗の増加を招くことがある。このため、第2金属層9は、融点の高いRu、Rh、Os、Ir、Pt、W、Mo等を含むことができる。特に、これらよりも融点の低いTi、Au、Sn、Pd等を第2金属層9中に含む場合は、このような材料よりも第2導電側電極7側にRu、Rh、Os、Ir、Pt、W、Mo等を配置することで、基板等への貼合せまたは接合時や素子駆動時などの高温条件下においても、第2導電側電極7への影響を抑えることができる。これにより、第2導電側電極7と第2導電型半導体層3との間のオーミック特性悪化や抵抗増加を抑制して、素子の順電圧の上昇を抑制することができる。
【0025】
第1金属層8や第2金属層9は、図1のように基板等に貼合わせる素子の場合、接合層として機能する。図1に示す素子においては、第2金属層9が接合層として用いられている。この場合、第2金属層9は、少なくともSn、Pbなどの低融点材料を含み、Ti、Pt、Au、Sn、Au、Ag、Cu、Bi、Pb、Zn等の金属材料およびこれらの合金で形成される。例えば、第2金属層9は、Pt/Ti/Pt/Au/Sn/Au、Pt/Au/Sn/Au、W/Pt/Au/Sn/Au、Mo/Pt/Au/Sn/Au、Ru/Au/Sn/Au、Rh/Au/Sn/Au、Ir/Au/Sn/Auの順に合計膜厚3000nm〜4000nm程度、で成膜して構成することができる。また、裏面メタライズ層11は、膜厚600nm程度に形成される。
【0026】
基板10は、例えばシリコン(Si)で構成される。また、Siのほか、Ge、SiC、GaN、GaAs、GaP、InP、ZnSe、ZnS、ZnO等の半導体からなる半導体基板、金属単体基板、または、相互に非固溶あるいは半固溶限界の小さい2種以上の金属の複合体からなる金属基板を用いることができる。金属単体基板としては、例えば、Cu基板が、また、金属基板の材料としては、例えば、Ag、Cu、Au、Pt等の高導電性金属から選ばれる少なくとも1種以上の金属と、W、Mo、Cr、Ni等の高硬度の金属から選ばれる少なくとも1種以上の金属と、からなるものを用いることができる。半導体材料からなる基板を用いる場合には、素子機能、例えば、ツェナーダイオードを付加した基板とすることもできる。さらに、金属基板として、Cu−WあるいはCu−Moの複合体を用いることもできる。また、基板10の半導体積層部側の面には、上述した第1および第2金属層とは別に、基板10側の接合層を設けることもできる。
【0027】
この半導体素子1において、第1導電側電極6は、第1導電型半導体層2の外側に設けられ、第2導電側電極7は、第2導電側半導体層3の外側に設けられ、第1導電側電極5は、絶縁膜12aと空隙からなる離間領域13aを介して離間して配設されている。また、第2導電側電極7と絶縁膜12bとの間に、第2金属層9を形成する金属材料または合金材料が充填されて構成された離間領域13bを介して、第2導電側電極7と絶縁膜12bとが離間して配設されている。また、第2導電側電極7と絶縁膜12bとの間の離間領域13bは、第2導電側電極7および絶縁膜12bの外側に第2金属層(金属材料または合金材料からなる連続層)9が設けられ、離間領域13bが第2導電型半導体層3、第2導電側電極7、絶縁膜12b、および第2金属層9によって密閉されていれば、第2金属層9を形成する金属材料または合金材料が充填されていない空隙で構成されていてもよい。
【0028】
このように離間領域を充填または密閉する金属層としては、第2金属層を用いることが好ましい。一般に、絶縁膜よりも電極の方が金属層による影響を受け易く、第2導電側電極に設ける第2金属層を電極への影響を考慮して上述のような構成とした場合、それと異なる材料の第1金属層が第2導電側電極と接触してしまうと、第2導電側電極に意図しない影響が出てしまうことがあるためである。なお、第1および第2金属層とは別に、金属材料または合金材料からなる連続層をさらに設けて、これによって離間領域を充填または密閉することもできる。この連続層が第2導電側電極に接触する場合には、第2金属層と同様に、第2導電側電極への影響を考慮して材料を選択することが好ましい。
【0029】
さらに、半導体発光素子においては、第1導電側電極5と絶縁膜12aとの間、および第2導電側電極7と絶縁膜12bの間の間隔は、広すぎると、この離間領域を設けた箇所における光の取り出し効率が悪くなるため、10μm以下程度離間され、離間による効果を安定的に得ることができる点で、1μm〜10μm程度離間される。また、離間領域は、第1導電型半導体層2がn型半導体で構成され、第2導電型半導体層3がp型半導体で構成されている場合、すなわち、p側の電極(第2導電側電極7)を構成するAg等の電極材料が絶縁膜12b、および絶縁膜12bと絶縁膜12aとの間を連絡する絶縁膜12cを介してn側電極(第1導電側電極6)に移行することを防止する観点からは、p側の電極(第2導電側電極7)に囲まれて配置される絶縁膜12bとp側の電極(第2導電側電極7)との間(図1紙面中、中央の絶縁膜と第2導電側電極との間)には、必ずしも設ける必要はない。
【0030】
第2導電側電極7は、Ag、Al、Ti、Pt、Rh等で形成され、特に、発光素子においては、Ag、Al、Ag、Rh等の光を反射する金属材料で構成することが、光取り出し効率の向上に有効である。第2導電側電極7は、例えば、第2導電型半導体層3の側から、Ag層(100nm)/Ni層(100nm)/Ti層(100nm)/Pt層(100nm)の順に、合計膜厚が400nmの4層構造で形成される。このとき、第2導電型半導体層3にAg層を設けることで、発光層4で発光した光を効率よく反射することができる。
【0031】
このように第2導電側電極7がAgを含む場合、第2金属層9は、Ti、Au、Sn、Pdよりも第2導電側電極7側に、これらよりも融点が高く、安定性の高いRu、Rh、Os、Ir、Ptを含むことが好ましい。特に、第2導電側電極7がAgを含む場合に、このような電極と接する側にTiやWが含まれていると、貼合せ時などの高温負荷時に、第2導電側電極7と第2導電型半導体層3との間のオーミック特性が悪化し、素子の順電圧が上昇してしまう傾向がある。このため、第2導電側電極7と接する側にはRu、Rh、Os、Ir、Pt、Moを配置することが好ましい。また、このような材料と第2導電側電極7との間に、上述した以外の材料を含むこともできる。最も好ましくは、Ru、Rh、Os、Ir、Pt、Moで第2導電側電極7に接する第2金属層9とする。
【0032】
そして、第1導電側電極6および第2導電側電極7を、Ag、Al等で形成する場合に、前記離間領域13a,13bを介して、第2導電側電極7と絶縁膜12bの間、および第1導電側電極6と絶縁膜12aの間を離間することによって、これらの金属のマイグレーションによる素子のリークや破壊を防止することができるため、有効である。特に、第2導電側電極7を高反射率のAgで形成する場合に、マイグレーションによる素子のリークや破壊を防止することができるため、有効である。
【0033】
また、第1導電側電極6と、第2導電側電極7とは、半導体積層部5を間に挟んで、半導体積層部5を平面視して第1導電側電極と前記第2導電側電極とが相互に重なり合わないように配置されている。すなわち、半導体積層部5を平面視して第1導電側電極と前記第2導電側電極とが交互に配置されている。このように、第1導電側電極6と第2導電側電極とが配置されることによって、第1導電側電極6と第2導電側電極7との間を流れる電流は、半導体積層部5内を最短で流れることがなく、半導体積層部5において比較的均一に流れることができるので、過度の電流集中による素子破壊を防ぐことができる。また、図1のような発光素子においては、発光層4において、比較的均一に発光するようになり、光取り出し効率の点で好ましい。さらに、第1導電側電極6と、第2導電側電極7とは、半導体積層部5を平面視して、前記第2導電側電極の面積が、前記第1導電側電極の面積よりも大きく形成されている。これによって、電流注入領域の面積を大きくでき、発光素子において発光効率が向上するとともに、素子の駆動による熱の放熱性も向上し、半導体素子1の放熱性が改善される。特に、実装側に第2導電側電極を配設する場合に有効である。
【0034】
さらに、絶縁膜12a,12bは、SiO、SiN、Al、ZnO、ZrO等の絶縁性材料で形成される。また、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化チタンの絶縁膜とすることもできる。さらに、発光素子においては、絶縁膜12bは、2種以上の多層膜で構成し、この絶縁膜12bにおいても発光層4からの光を反射するように、多層膜を構成する各膜の膜厚を設定してもよい。絶縁膜12bに設けられる第1金属層8の材料は、絶縁膜12bの材料を考慮して選択することができる。例えば、絶縁膜12bがSiO、SiN、Nbであれば、第1金属層8を、絶縁膜12bと接する側にTiやNiを含む金属層とすると、密着性が高く、剥がれ難いものとすることができる。また、第1金属層8の絶縁膜12bと接する側には、絶縁膜12bと共通する元素を含むこともでき、例えば絶縁膜12bが酸化ニオブの場合にはNb、酸化タンタルの場合にはTaを絶縁膜12b側に含むことが好ましい。
【0035】
そして、この絶縁膜12a,12bは、例えば、第2導電側電極7と同じ膜厚に形成することが好ましい。特に、絶縁膜12bは、第2導電側電極7と同じ膜厚に形成することが、第2金属層9等の接合層を介して接合用基板10に接合する際に、絶縁膜12bと接合層との間、および第2導電側電極7と接合層との間にボイド(空洞)が生じるのを抑制できるため、好ましい。また、図1のように第2金属層9が第1金属層8を覆う構造においては、絶縁膜12bと第1金属層8の合計膜厚が、第2導電側電極7の膜厚と同じ程度になるように形成すると、さらに空洞の発生を抑制することができる。
【0036】
この半導体素子1は、第2導電側電極7が、絶縁膜12bと、離間領域13を介して離間して配設されている。これによって、半導体発光素子1の動作発光時に高温状態となる電極から、接合や実装時の高温での加熱処理による熱膨張に起因して形成され易い絶縁膜のひび割れや欠けを通ってAgやAlのマイグレーションが発生するのを防止し、素子のリークや破壊を防止することがある。しかも、マイグレーションによる問題を防止することができるため、マイグレーションを起こし易いAgやAl等を電極材料とすることができ、発光素子においては、これらのAgやAl等からなる電極によって、発光層4からの光を良好に反射することができるため高い光取り出し効率を得ることが可能となる。特に、第2導電型半導体層3がp型半導体で構成されている場合、p側の電極となる第2導電側電極7を構成する電極材料、例えば、Agがマイグレーションによって絶縁膜12bを介して第1導電側電極6に移行して素子のリークや破壊を引き起こすことを防止するために、有効である。また、表面積の大きい第2導電側電極7の側に、このような離間構造を設けることで、素子のリークや破壊を引き起こすことがなく、また、第2導電側電極7で好適に光を反射して光取り出し効率にも優れた半導体発光素子を得ることができるため、有効である。さらに、第2導電側電極7の面積が大きいことによって、電流注入領域の面積を大きくでき、素子の駆動による熱の放熱性が向上するとともに、発光素子においては発光効率も向上する。
【0037】
次に、この半導体素子1における電極(第1導電側電極6、第2導電側電極7)21と、絶縁膜22(11a,11b)と、第1金属層24(8)と、第2金属層25(9)の配置の実施形態について説明する。
図2(a)および(b)は、電極21と絶縁膜22の配置例を示す平面模式図、図3(a)〜(e)は、電極21、絶縁膜22、第1金属層24、第2金属層25の配置例を示す模式断面図である。
【0038】
図2(a)に示す配置例は、電極21と絶縁膜22が、図2(a)に示すように、電極21を囲んで絶縁膜22が配設され、電極21と絶縁膜22とが、離間領域23を介して離間して配設されている例である。また、図2(b)に示す配置例は、絶縁膜22aを、離間領域23aを介して、電極21が囲み、さらに、その外側を、離間領域23bを介して、絶縁膜22bが囲んで配設されている例である。この配置例において、絶縁膜22aと電極21とは、離間領域23aを介して離間して配置され、電極21と絶縁膜22bとは、離間領域23bを介して離間して配置されている。このような絶縁膜22bおよび電極21に対応して、第1および第2金属層を設けることができる。
【0039】
図3(a)に示す配置例は、半導体積層部26の上に、電極21と絶縁膜22が、離間領域23を介して離間して配設され、絶縁膜22の上には第1金属層24が設けられており、離間領域23には、電極21と第1金属層24の上に形成される第2金属層25の構成材料が充填されている例である。
【0040】
図3(b)に示す配置例は、半導体積層部26の上に、電極21と絶縁膜22が、離間領域23を介して離間して配設され、絶縁膜22の上には第1金属層24が設けられており、離間領域23に、電極21と第1金属層24の上に形成される第2金属層25の構成材料が充填されず、空隙を形成している例である。
【0041】
図3(c)および(d)に示す配置例は、半導体積層部26の上に、電極21と絶縁層22とが、交互に配置され、電極21と絶縁層22との間に、空隙からなる離間領域23が設けられている例である。また、図3(c)に示す配置例では、第1金属層24と第2金属層25とが離間しており、図3(d)に示す配置例では、第1金属層24と第2金属層25は、第3金属層27によって覆われている。このように、第1金属層24と第2金属層25とを離間して設ける場合は、第3金属層27を接合層として用いることができる。
【0042】
図3(e)に示す配置例は、半導体積層部26の上に、電極21と絶縁膜22が、離間領域23を介して離間して配設され、絶縁膜22の上には絶縁膜22の側面まで被覆するように第1金属層24が設けられており、離間領域23には、電極21と第1金属層24の上に形成される第2金属層25の構成材料が充填されている例である。このように、電極21と絶縁膜22が離間して配設されているので、第1金属層24を絶縁膜22の上面のみならず側面まで覆うように形成しても、第1金属層24を電極21から離間しておくことができる。
【0043】
さらに、図4(a)〜(c)は、半導体発光素子における電極(第1導電側電極6、第2導電側電極7)と、絶縁膜(11a,11b)との配置例の実施形態を示す平面模式図である。このような絶縁膜および電極に対応して、第1および第2金属層を設けることができる。
【0044】
図4(a)に示す配置例は、円形状の円頭部43a,43bと、円頭部43a,43bに連設された矩形部44a,44bとからなる絶縁膜42a,42bと、その絶縁膜42
a,42bを囲んで設けられた電極41とを有し、さらに、電極41を囲んで絶縁膜46が設けられている例である。2つの絶縁膜42a,42bは、円頭部43a,43bと矩形部44a,44bが、同じ側に並列されている。そして、絶縁膜42a,42bと電極
41とは、離間領域45aを介して離間して設けられ、電極41と絶縁膜46とは、離間領域45bを介して離間して設けられている。
【0045】
図4(b)に示す配置例は、円形状の円頭部43a,43bと、円頭部43a,43bに連設された矩形部44a,44bとからなる絶縁膜42a,42bが、円頭部43a,43bと矩形部44a,44bとが、相互に反対側になるように配置され、絶縁膜42a,42bを囲んで電極41が設けられ、さらに、電極41を囲んで絶縁膜46が設けられている例である。そして、絶縁膜42a,42bは、離間領域45aを介して離間して設けられ、電極41と絶縁膜46とは、離間領域45bを介して離間して設けられている。
【0046】
図4(c)に示す配置例は、円形状の円頭部43a,43bと、円頭部43a,43bに連設された矩形部44a,44bとからなる絶縁膜42a,42bと、その絶縁膜42
a,42bを囲んで設けられた電極41とを有し、さらに、電極41を囲んで絶縁膜464が設けられている例である。2つの絶縁膜42a,42bは、円頭部43a,43bと矩形部44a,44bが、同じ側に並列され、さらに、絶縁膜42aの円頭部43aと、
絶縁膜42bの円頭部43bとが、連絡部47を介して連絡されている。そして、絶縁膜42a,42bと電極41とは、離間領域45aを介して離間して設けられ、電極41と絶縁膜46とは、離間領域45bを介して離間して設けられている。
【0047】
また、図5は、本発明の半導体素子における電極と絶縁膜の配置の他の具体例を示す平面模式図である。
この半導体素子51は半導体発光素子であり、四角形状の平面の中央部を占める大面積の第2導電側電極53と、第2導電側電極53を間にして、左右に対向して配置された6個の第1導電側電極52と、第2導電側電極52と第2導電側電極の間に配設された絶縁膜54とを有する。この半導体素子51において、第2導電側電極53と絶縁膜54とは、空隙からなる離間領域55を介して離間して配設されており、このような絶縁膜54および第2導電側電極53に対応して、第1および第2金属層が設けられる。
【0048】
この半導体素子51においては、電極を実装面側に配置して実装する(フェイスダウン実装)に際して、第2導電側電極53、絶縁膜54および第1導電側電極52の上に第1および第2金属層を含むメタライズ層を積層し、このメタライズ層を介して接合用基板に接合することによって、素子構造を構成することができる。このとき、第2導電側電極53と絶縁膜54とは、空隙からなる離間領域55を介して離間して配設されているため、接合時の加熱処理等によって、第2導電側電極53を構成するAgやAlのマイグレーションを阻止することができ、絶縁膜54の電流リークや破壊を防止することができ、また、電極によって、半導体発光部からの光を良好に反射するため高い光取り出し効率を得るために有効である。第1導電側電極6と、第2導電側電極7とは、前記第2導電側電極の面積が、前記第1導電側電極の面積よりも大きく形成されている。これによって、電流注入領域の面積を大きくでき、発光効率が向上するとともに、発光による熱の放熱性も向上し、半導体発光素子1の放熱性が改善される。そして、フェイスダウン実装に際しては、この半導体発光素子51を接合用基板に接合することによって、金属材料または合金材料からなる連続層であるメタライズ層によって、第1導電側電極52、絶縁膜54および第2導電側電極の上にメタライズ層が配置され、離間領域54は、絶縁膜54および第2導電側電極と、メタライズ層の間に密閉された空間を形成する。
【0049】
次に、本発明の半導体素子の製造方法(以下、「本発明の方法」という)について説明する。
本発明の半導体素子は、下記の主要工程1〜4を含む方法によって製造することができる。
(1)第1導電型半導体層と、第2導電型半導体層とを有する半導体積層部を形成する工程1
(2)前記第1導電型半導体層に接続される第1導電側電極を形成する工程2
(3)前記第2導電型半導体層に接続される第2導電側電極を形成する工程3
(4)前記第1導電側電極および前記第2導電側電極の少なくとも1つの電極と、離間領域を介して離間し、前記半導体積層部を被覆する絶縁膜を形成する工程4
(5)前記絶縁膜に第1金属層を形成し、前記絶縁膜と離間された前記第1導電側電極および前記第2導電側電極の少なくとも1つの電極に、前記第1金属層とは異なる材料の第2金属層を形成する工程5
本発明の素子を製造する方法は、前記の工程のみに制限されず、必要に応じて、他の工程を行うことができる。例えば、これらの工程(1)〜(5)の他に、基板の洗浄工程、熱処理工程等を前記の(1)〜(5)の前工程、途中の工程または後工程として行うことができる。さらに、本発明の方法において、工程1〜4において、工程2、3および4を行う順序は、特に限定されず、製造する半導体素子の構造および実装形態等に応じて、適宜、選択される。
【0050】
図6(a)〜(f)および図7(a)〜(d)は、本発明の半導体素子の製造方法として、窒化物半導体発光素子の製造方法の主要工程1〜4を順を追って説明する断面模式図である。
第1導電型半導体層と、第2導電型半導体層と、第1導電型半導体層と第2導電型半導体層の間に介設された発光層とを有する半導体発光部を形成する工程1は、図6(a)に示すように、サファイア基板61の上に、第1導電型半導体層と、発光層および第2導電型半導体層の順に成膜して半導体発光部である半導体積層部65を形成することによって行うことができる。この半導体積層部65の形成は、洗浄されたサファイア基板61の上表面に、所要の半導体材料、ドーパントなどを含むガスを供給して、MOVPE(有機金属気相成長法)、HVPE(ハライド気相成長法)、MBE(分子線気相成長法)、MOMBE(有機金属分子線気相成長法)等の気相成長装置を用いて、気相成長させることにより行うことができる。このとき、形成する導電型半導体層の種類、例えば、n型半導体層、p型半導体層および発光層の各層の層構成および構成材料、層の膜厚等に応じて、供給するガスが含有する半導体材料およびドーパントの成分種、組成等を切り換えては、窒素ガス等の不活性ガスをキャリアガスとして用いてサファイア基板61上に供給することによって形成することができる。
【0051】
次に、半導体発光部65の第2導電型半導体層に接続される第2導電側電極66を形成する工程3および第2導電側電極と離間領域を介して離間し、半導体発光部65を被覆する絶縁膜67を形成する工程4−1を行う。この工程3および工程4−1は、図6(b)に示すように、半導体発光部65の第2導電型半導体層の上表面に、レジストを用いて第2導電側電極66に対応したフォトマスクを形成し、スパッタリング等によって、電極材料、例えば、Agを含む電極材料を積層することによって第2導電側電極66を形成する。その後、さらに、第2導電側電極66の上にレジストを用いてフォトマスクを形成し、スパッタリング等によってSiO等の絶縁膜材料を積層した後、レジストを除去する。これによって、図6(c)に示すように、第2導電側電極66と絶縁膜67との間に空隙68が配設された構造を形成する。
【0052】
また、この工程3および工程4−1は、半導体発光部65の上表面の全面にSiO等の絶縁膜材料を積層した後、その絶縁性材料の膜上に、絶縁膜67に対応したフォトマスクを形成し、第2導電側電極66に対応する部位をウェットエッチングして、エッチング部位にスパッタリング等によって電極材料を積層して第2導電側電極66を形成する方法によっても行うことができる。
【0053】
次に、図6(d)に示すように、絶縁膜67と第2導電側電極66の上部に、半導体側メタライズ層として、それぞれ第1金属層69と第2金属層70とを形成する。第2金属層70は第1金属層69まで連続して形成されており、これによって、絶縁膜67と第2導電側電極66との間の空隙68が、第2金属層70で充填され、絶縁膜67と第2導電側電極66とを離間する離間領域71が形成される。
一方、図6(e)に示すように、Si基板72を用意し、Si基板72の上表面に基板側メタライズ層73を形成する。基板側メタライズ層73は、第2金属層70と接合するための層である。
【0054】
次に、図6(f)に示すように、半導体側メタライズ層である第2金属層70と、Si基板側メタライズ層73とを貼り合わせ、150℃〜350℃程度で加熱して接合する。これにより、第2金属層70の一部とSi基板側メタライズ層73の一部が共晶を形成し、半導体積層部と支持基板とが接着される。
【0055】
次に、サファイア基板61の側からレーザ照射もしくは研磨等を行って、図6(a)に示すように、サファイア基板61を除去した後、図6(b)に示すように、露出した半導体積層部65を化学研磨(CMP)する。さらに、研磨面において、半導体積層部65を挟んで絶縁膜67と対向する部位に、半導体積層部65を平面視して第1導電側電極73と第2導電側電極66とが相互に重なり合わないように、第1導電側電極73が形成されるように、マスクを形成し、スパッタリング等によって、電極材料を積層して、半導体積層部65の上に、図6(c)に示すように、第1導電側電極74を形成する。ここでマスクを設けた部分、つまり第1導電側電極74が形成されていない領域をRIE(反応性イオンエッチング)により穿孔して第1導電側電極74が設けられていない領域を形成する。この第1導電側電極74が設けられていない領域を設けることで、光取り出しも向上し、特に、第2導電側電極66で反射した光が効率的に、この領域から取り出されるようになる。さらに、図6(d)に示すように、第1導電側電極74の半導体積層部65が露出している面に絶縁膜75を形成し、本発明の半導体素子を得ることができる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明の実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0057】
(実施例1)
実施例1として、上述の図1に示す構造の半導体発光素子を下記の仕様で作製する。
半導体積層部5:窒化ガリウム系半導体
p電極(第2導電側電極7):Ag(100nm)/Ni(100nm)/Ti(100nm)/Pt(100nm)
絶縁膜12b:SiO(300nm)膜
p電極(第2導電側電極7)と絶縁膜11bとの間隔:5μm
接合用基板10:Si基板
第1金属層8:Ti(50nm)/Pt(50nm)
第2金属層9:Pt(100nm)/Ti(100nm)/Pt(300nm)/Au(300nm)/Sn(3000nm)/Au(100nm)
裏面メタライズ層11:Pt(250nm)/Au(500nm)
【0058】
ここで、比較例1として、第2導電側電極と絶縁膜との間に離間領域を設けずに作製した半導体発光素子について、光学顕微鏡で観察すると、比較例1の半導体発光素子では第2導電側電極と接する絶縁膜にひび割れが確認できる。これに対して、本発明の実施例1で得られた半導体発光素子においては、第2導電側電極と離間領域を解して離間された絶縁膜にひび割れがない。
【0059】
また、比較例2として、第1金属層8および第2金属層9の代わりに、Ti(100nm)/Pt(300nm)/Au(300nm)/Sn(3000nm)/Au(100nm)からなるメタライズ層を、p電極と絶縁膜とに連続して設ける以外は実施例1と同様にして作製する。このような比較例2および実施例1の半導体発光素子について、半導体積層部とSi基板とを接合する際の温度を変えて、低温条件と高温条件とで順電圧を比較する。低温条件と高温条件との温度差が30℃の場合、比較例2では高温条件とすることで約0.12V上昇した。これに対して、絶縁膜とp電極とにそれぞれ異なる材料の金属層を形成した実施例1の半導体発光素子では、順電圧の上昇幅は約0.06Vであり、比較例2と比べて順電圧の上昇を半分に抑えることができた。また、素子に継続して電流を流し続け、通電前の順電圧と通電から10000時間経過後の順電圧とを比較する。この結果、実施例1で得られる半導体発光素子は、比較例2で得られる半導体発光素子よりも通電後の順電圧の上昇幅が少なく、室温で550mAの電流を流し続けた場合には、通電前と10000時間経過後とでほぼ同じ順電圧を維持していた。
【0060】
(実施例2)
実施例2の半導体発光素子として、第2金属層9を、Pt(300nm)/Au(300nm)/Sn(3000nm)/Au(100nm)とする以外は実施例1と同様にして作製する。
【0061】
(実施例3〜7)
実施例3〜7の半導体発光素子として、第1金属層8を、それぞれ、Ti(50nm)/Rh(50nm)、Ti(50nm)/Ir(50nm)、Ni(50nm)/Pt(50nm)、Ni(50nm)/Rh(50nm)、Ni(50nm)/Ir(50nm)とする以外は実施例1と同様にして作製する。
【0062】
(実施例8〜11)
実施例8〜11の半導体発光素子として、第2金属層9を、それぞれ、Rh(300nm)/Au(300nm)/Sn(3000nm)/Au(100nm)、Ru(300nm)/Au(300nm)/Sn(3000nm)/Au(100nm)、Ir(300nm)/Au(300nm)/Sn(3000nm)/Au(100nm)、Mo(30nm)/Pt(300nm)/Au(300nm)/Sn(3000nm)/Au(100nm)とする以外は実施例1と同様にして作製する。
【0063】
(実施例12)
実施例12の半導体発光素子として、p電極(第2導電側電極7)を、Alを含む電極とし、第2金属層9を、W(30nm)/Pt(300nm)/Au(300nm)/Sn(3000nm)/Au(100nm)とする以外は実施例1と同様にして作製する。
【0064】
(実施例13)
実施例13の半導体発光素子として、絶縁膜12bをSiN(300nm)膜とする以外は実施例1と同様にして作製する。
【0065】
(実施例14)
実施例14の半導体発光素子として、絶縁膜12bをNb(300nm)膜とし、第1金属層8を、Nb(50nm)/Pt(50nm)とする以外は実施例1と同様にして作製する。
【0066】
(実施例15)
実施例15の半導体発光素子として、絶縁膜12bをTa(300nm)膜とし、第1金属層8を、Ta(50nm)/Pt(50nm)とする以外は実施例1と同様にして作製する。
【0067】
このようにして得られる実施例2〜15の半導体発光素子は、絶縁膜にひび割れはなく、また、順電圧の上昇幅を比較例2よりも抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施形態に係る半導体素子の構造を示す模式断面図である。
【図2】(a)および(b)は、本発明の半導体素子における電極と絶縁膜の配置例を示す平面模式図である。
【図3】、図3(a)〜(e)は、それぞれ本発明の半導体素子における電極と絶縁膜の配置例を示す模式断面図である。
【図4】(a)〜(c)は、それぞれ本発明の半導体素子における電極と絶縁膜の配置例を示す平面模式図である。
【図5】本発明の半導体素子における電極と絶縁膜の配置の他の具体例を示す平面模式図である。
【図6】(a)〜(f)は、窒化物半導体発光素子の製造方法の主要工程を順を追って説明する模式断面図である。
【図7】(a)〜(d)は、窒化物半導体発光素子の製造方法の主要工程を順を追って説明する模式断面図である。
【符号の説明】
【0069】
1 半導体素子
2 第1導電型半導体層
3 第2導電型半導体層
4 発光層
5 半導体積層部
6 第1導電側電極
7 第2導電側電極
8 第1金属層
9 第2金属層
10 基板
11 裏面メタライズ層
12a,12b 絶縁膜
13 離間領域
21 電極
22,22a,22b 絶縁膜
23,23a,23b 離間領域
24 第1金属層
25 第2金属層
26 半導体積層部
27 第3金属層
41 電極
42a,42b,46 絶縁膜
45a,45b 離間領域
51 半導体素子
52 第1導電側電極
53 第2導電側電極
54 絶縁膜
55 離間領域
61 サファイア基板
65 半導体積層部
66 第2導電側電極
67,75 絶縁膜
68 離間領域
69 第1金属層
70 第2金属層
71 離間領域
72 Si基板
73 基板側メタライズ層
74 第1導電側電極


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型半導体層及び第2導電型半導体層を有する半導体積層部と、前記第1導電型半導体層に接続される第1導電側電極と、前記第2導電型半導体層に接続される第2導電側電極とを備える半導体素子であって、
前記第2導電側電極と、前記半導体積層部を被覆する絶縁膜とが、離間領域を介して離間して配設され、
前記絶縁膜表面に第1金属層が設けられ、前記第2導電側電極表面に前記第1金属層とは材料の異なる第2金属層が設けられていることを特徴とする半導体素子。
【請求項2】
前記第1金属層は、前記第2導電側電極と離間していることを特徴とする請求項1に記載の半導体素子。
【請求項3】
前記第1金属層は、前記絶縁膜と接する側に、Ti、Niから選ばれる1種を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体素子。
【請求項4】
前記第2金属層は、前記第2導電側電極と接する側に、Ru、Rh、Os、Ir、Pt、W、Moから選ばれる1種を含むことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の半導体素子。
【請求項5】
前記半導体積層部の前記第2導電側電極側は、前記第2金属層を介して、支持基板に接着されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の半導体素子。
【請求項6】
前記第2金属層は、前記支持基板側に、Ti、Au、Sn、Pdから選ばれる1種を含み、それよりも前記第2導電側電極側に、Ru、Rh、Os、Ir、Pt、W、Moから選ばれる1種を含むことを特徴とする請求項5に記載の半導体素子。
【請求項7】
前記第2導電側電極はAg、Alから選ばれる1種を含み、前記半導体積層部を平面視して、前記第2導電側電極は前記絶縁膜に囲まれていることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の半導体素子。
【請求項8】
前記第2金属層は、前記第1金属層まで連続する連続層であり、前記離間領域には、空隙または前記連続層が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の半導体素子。
【請求項9】
前記第1導電側電極と前記第2導電側電極は、前記半導体積層部を挟んで対向しており、前記半導体積層部は、前記第1導電型半導体層と前記第2導電型半導体層の間に介設された発光層を有する半導体発光部であることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の半導体素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−231356(P2009−231356A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71899(P2008−71899)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)
【Fターム(参考)】