説明

半導体発光装置

【課題】本発明の実施形態は、発光効率を向上させた半導体発光装置を提供する。
【解決手段】実施形態に係る半導体発光装置は、第1導電形の第1半導体層であって、前記第1半導体層の他の部分よりも層厚が薄い複数の薄層部を有する前記第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた発光層と、を有する。そして、前記発光層とは反対側の前記第1半導体層の表面の上に設けられた透明電極と、前記透明電極の上に選択的に設けられた第1電極と、前記発光層とは反対側の前記第2半導体層の表面に接した第2電極と、前記透明電極と前記第2電極との間の電流経路の一部を遮断する電流ブロック層であって、前記第1半導体層の表面に平行な平面視において、前記薄層部に重ならない前記電流ブロック層と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体発光装置は、照明器機やディスプレイなどの分野に広く用いられ、その光出力の向上が求められている。例えば、半導体発光装置の一つである発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)では、光を放出する発光面に電流広がりと光取出しとを兼ねた透明電極を設け、発光面とは反対の主面側に反射電極を設けることにより光出力を向上させている。
【0003】
一方、半導体発光装置には、消費電力の低減についても大きな期待が寄せられている。このため、半導体発光装置の光出力を単純に向上させるだけでなく、その発光効率を向上させることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−5679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、発光効率を向上させた半導体発光装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る半導体発光装置は、第1導電形の第1半導体層であって、前記第1半導体層の他の部分よりも層厚が薄い複数の薄層部を有する前記第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた発光層と、を有する。そして、前記発光層とは反対側の前記第1半導体層の表面の上に設けられた透明電極と、前記透明電極の上に選択的に設けられた第1電極と、前記発光層とは反対側の前記第2半導体層の表面に接した第2電極と、前記透明電極と前記第2電極との間の電流経路の一部を遮断する電流ブロック層であって、前記第1半導体層の表面に対して平行な平面視において、前記薄層部に重ならない前記電流ブロック層と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態に係る半導体発光装置を示す模式図である。
【図2】第1の実施形態に係る半導体発光装置のチップ面を例示する模式図である。
【図3】第1の実施形態に係る半導体発光装置の特性を示す模式図である。
【図4】第1の実施形態に係る半導体発光装置の製造過程を示す模式断面図である。
【図5】図4に続く製造過程を示す模式断面図である。
【図6】図5に続く製造過程を示す模式断面図である。
【図7】第2の実施形態に係る半導体発光装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面中の同一部分には同一番号を付してその詳しい説明は適宜省略し、異なる部分について適宜説明する。以下の実施形態では、第1導電型をn型、第2導電型をp型として説明するが、第1導電型をp型、第2導電型をn型としても良い。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る半導体発光装置100の断面構造を示す模式図である。半導体発光装置100は、例えば、窒化物半導体を材料とする青色LEDである。
【0010】
半導体発光装置100は、第1半導体層であるn型クラッド層5と、第2半導体層であるp型クラッド層7と、n型クラッド層5とp型クラッド層7との間に設けられた発光層9と、を含む。そして、各半導体層は、支持基板25の上にp電極21を介して設けられる。
【0011】
p電極21は、発光層9とは反対側のp型クラッド層7の表面に接する。p型クラッド層7は、発光層9の側からオーバーフロー防止層7aと、p型GaN層7bと、p型コンタクト層7cを含む。オーバーフロー防止層7aは、例えば、厚さ10nmのp型Al0.15Ga0.85N層からなり、発光層9からp型GaN層7bへの電子のオーバーフローを抑制する。p型コンタクト層7cは、例えば、p型不純物であるマグネシウム(Mg)が5×1018cm−3以上の高濃度にドープされたp型GaN層であり、p電極21とp型クラッド層7との間のコンタクト抵抗を低減する。
【0012】
発光層9とn型クラッド層5との間には、超格子層6が設けられる。超格子層6は、例えば、厚さ1nmのn型In0.2Ga0.8Nと、厚さ2nmのn型GaN層を交互に積層した構造を有し、n型クラッド層5と発光層9との間の格子定数の違いによる結晶歪を緩和する。
【0013】
図1に示すように、n型クラッド層5は、n型クラッド層5の他の部分よりも層厚が薄い複数の薄層部5aを有する。n型クラッド層5の厚さが、例えば、2μmであれば、薄層部5aの厚さは、1μm以下とする。そして、発光層9とは反対側のn型クラッド層5の表面(薄層部5aの表面を含む)には、透明電極13が設けられる。透明電極13は、例えば、可視光を透過させる導電膜からなり、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)を含む。透明電極13の上には、n電極17が選択的に設けられる。
【0014】
半導体発光装置100では、第1電極であるn電極17と、第2電極であるp電極21と、の間に駆動電流を流すことにより、発光層9から青色の光が放射される。そして、発光層9から放射された光は、透明電極13を透過して外部に放出される。p電極21は、発光層9から放射された光をn型クラッド層5の方向に反射する。これにより、発光効率を向上させる。
【0015】
一方、n型クラッド層5には薄層部5aが設けられ、薄層部5aの下の発光層9へ注入されるキャリア(電子および正孔)の密度を高くするように構成される。すなわち、発光層9から薄層部5aを介して透明電極13に至る電流経路の抵抗は、発光層9から薄層部5a以外の厚いn型クラッド層5を介して透明電極13に流れる電流経路の抵抗よりも小さい。このため、p電極21から透明電極13へ流れる駆動電流の多くが、薄層部5aを介した電流経路に集中し、薄層部5aの下の発光層9におけるキャリア密度が、発光層9の他の部分よりも多くなる。
【0016】
さらに、p電極21とp型クラッド層7との間には、電流ブロック層23aおよび23bが設けられる。電流ブロック層23aは、p型クラッド層7の表面に対して平行な平面視において、n電極17と重なる位置に設けられる。そして、p電極21とn電極17との間の電流経路を遮断し、n電極21の下の発光層9に流れる電流を抑制する。
【0017】
一方、電流ブロック層23bは、p型クラッド層の表面に対して平行な平面視において、薄層部5aに重ならない位置に設けられる。電流ブロック層23bは、薄層部5a以外のn型クラッド層5を介した、p電極21から透明電極13への電流経路を遮断し、n型クラッド層5の薄層部5a以外の部分を介して流れる電流を抑制する。
【0018】
すなわち、本実施形態に係る半導体発光装置100では、n型クラッド層5に設けられた薄層部5aと、電流ブロック層23aおよび23bとにより、薄層部5aを介したp電極21から透明電極13への電流経路に駆動電流を集中させる。これにより、薄層部5aの下の発光層9に注入されるキャリアの密度を高くして発光効率を向上させる。
【0019】
図2は、半導体発光装置100のチップ面を例示する模式図である。図2(a)および図2(b)に示すように、支持基板25の上にn型クラッド層5と、p型クラッド層7と、発光層9と、を含む積層体が設けられ、n型クラッド層5の表面に透明電極13が設けられる。
【0020】
例えば、図2(a)に示すように、n型クラッド層5に設けられる複数の薄層部5aは、離間した複数の凹部として形成することができる。その形状は任意であり、同図に示すように矩形でも良いし、円形でも良い。隣り合う薄層部5aの間隔は、電子または正孔の拡散長以上で、製造過程におけるサイドエッチング等を考慮しても離間して形成できる値(2〜100μm)が好ましい。
【0021】
また、図2(b)に示すように、複数のストライプ状の薄層部5aを、n電極17を除くn型クラッド層5の表面に均等に設けても良い。さらに、p電極21とp型クラッド層7との間の電流ブロック層23は、p型クラッド層7の表面に対して平行な平面視において、薄層部5aに重ならないように設ける。
【0022】
例えば、図2(a)に示すように、n型クラッド層5に相互に離間して設けられた複数の薄層部5aを囲んだ電流ブロック層23が設けられる。同図では、n電極17の下に設けられる部分23bと、薄層部5aに重ならない部分23aと、が一体に設けられた例を示す。
【0023】
一方、図2(b)では、ストライプ状の薄層部5aの間に電流ブロック層23aが設けられている。さらに、n電極17の下に電流ブロック層23b(図1参照)を設けても良い。
【0024】
図3は、半導体発光装置100のI−L特性を示す模式図である。横軸に駆動電流Iを示し、縦軸に光出力Lを示している。図2中のAは、半導体発光装置100のI−L特性を示すグラフであり、Bは、比較例に係る半導体発光装置(図示しない)のI−L特性を示すグラフである。比較例に係る半導体発光装置は、薄層部5aが設けられずn型クラッド層5の厚さが均一である点、および、電流ブロック層23bが設けられない点で、半導体発光装置100と相違する。
【0025】
均一な厚さのn型クラッド層5の表面に透明電極13を形成すると、駆動電流Iは、n型クラッド層7の全面に広がり均一に発光層9に注入される。このため、電流ブロック層23aが設けられたn電極17の下を除く発光層9の全体が発光し、例えば、グラフBのI−L特性を示す。
【0026】
グラフBに示す光出力Lは、駆動電流Iを増やすにしたがって単調に増加する。しかしながら、駆動電流Iが小さい低注入領域Iでは、駆動電流Iに対する光出力Lの増加率が小さく発光効率が低い。そして、低注入領域Iを越えて駆動電流を流すと、光出力Lの増加率が高くなり発光効率が向上する。さらに、駆動電流Iを増加させ高注入領域Iになると、光出力Lは徐々に飽和する。
【0027】
例えば、半導体発光装置は、寿命および制御性を勘案して、光出力Lが飽和傾向を示す高注入領域Iよりも駆動電流Iが小さい実用範囲で使用される。
【0028】
これに対し、グラフAに示す半導体発光装置100のI−L特性では、低注入領域Iから光出力の増加率が向上し、実用範囲において比較例に係る半導体発光装置よりも高出力となる。この違いは、以下のように説明される。
【0029】
駆動電流Iにより発光層9に注入される電子および正孔には、光を放出して再結合するものと、光を放出しない非発光過程を介して再結合するものとがある。例えば、非発光過程として、バンドギャップ中の深い準位(Deep Level)を介して再結合するSRH過程(Shockley-Read-Hall process)が知られている。発光層9に注入される電子および正孔の数が少ない場合には、このような非発光再結合が高い割合で発生するが、非発光再結合に寄与する深い準位の数は限られており、電子および正孔の数が多くなるにつれて発光再結合の割合が高くなり発光効率が向上する。このため、グラフBに示すようなI−L特性が生じる。
【0030】
一方、半導体発光装置100では、n型クラッド層5の薄層部5aを介して流れる駆動電流Iが多くなるため、薄層部5aの下の発光層9におけるキャリア密度が、n型クラッド層5が厚い部分の下の発光層9におけるキャリア密度よりも高くなる。したがって、発光層9のうちの薄層部5aの下の部分が主体的に発光に寄与する。
【0031】
すなわち、半導体発光装置100では、実質的な発光領域が薄層部5aの下の部分に狭められるため、比較例に係る半導体発光装置よりも低注入領域Iにおける発光領域のキャリア密度が高くなる。これにより、非発光再結合の割合が低下し、実用範囲における発光効率が向上する。
【0032】
さらに、駆動電流Iが大きい高注入領域Iでも、半導体発光装置100の薄層部5aの下の発光層9におけるキャリア密度が、比較例に係る半導体発光装置の発光層におけるキャリア密度よりも高くなる。このため、発光層9からp型クラッド層に流れる電子のオーバーフロー、もしくは、オージェ効果(Auger effect)などによる電流損失が増加し、光出力Lの飽和傾向が顕著となる。この結果、高注入領域Iにおける半導体発光装置100の光出力Lは、比較例に係る半導体発光装置の光出力よりも低くなる。しかしながら、駆動電流の実用範囲において光出力が上回っていれば、半導体発光装置100は、比較例に係る半導体発光装置よりも高出力であり、発光効率が改善されると言える。
【0033】
一方、薄層部5aに過度の電流が集中すると、駆動電流の実用範囲においても光出力の飽和傾向が生ずる場合がある。そこで、図2(a)および(b)に示すように、薄層部5aは、n電極17の下の部分を除いたn型クラッド層5の表面の全面、もしくは、広い領域に均等に設けることが望ましい。
【0034】
また、半導体発光装置100では、n型クラッド層5の薄層部5aよりも厚い部分を介した電流経路にも駆動電流の一部を流し、n型クラッド層5の厚い部分の下の発光層9にもキャリアを注入することが好ましい。すなわち、キャリア密度が低い発光層9は、発光の吸収体として機能する。このため、薄層部5aよりも厚い部分の下の発光層9にキャリアを注入し、光吸収を抑制して発光効率を向上させることができる。例えば、n型クラッド層5の薄層部5aよりも厚い部分の表面にも透明電極13を設けることにより、その下の発光層9へキャリアを注入する。
【0035】
さらに、透明電極13は、n型クラッド層5の外縁の内側に設ける。すなわち、n型クラッド層5の外縁に沿った部分には、透明電極13を設けない。例えば、n型クラッド層5および発光層9の側面には、表面欠陥が高密度に存在する。このため、n型クラッド層の外縁に駆動電流を流すと非発光再結合が増加し、発光効率を低下させることになる。したがって、n型クラッド層5の外周に沿った部分に透明電極13を設けないことにより、n型クラッド層5および発光層9の側面に流れる駆動電流を抑制し、発光効率の低下を回避することができる。
【0036】
次に、図4〜図6を参照して、半導体発光装置100の製造過程を説明する。図4(a)〜図6(b)は、各工程におけるウェーハの断面を示す模式図である。
【0037】
まず、図4(a)に示すように、サファイア基板3の上に、n型クラッド層5と、超格子層6と、発光層9と、p型クラッド層7と、を順に成長したウェーハ10aを形成する。これらの層は、例えば、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法を用いて形成することができる。
【0038】
例えば、n型クラッド層5として、厚さ2.0μmのn型GaN層を形成し、その上に、厚さ1nmのn型In0.2Ga0.8N層と、厚さ2nmのn型GaN層を交互に20ペアからなる超格子層6を形成する。さらに、発光層9として、8つの量子井戸を含む多重量子井戸(Multiple Quantum Well;MQW)構造を形成する。量子井戸は、In0.2Ga0.8Nからなる厚さ2.5nmの井戸層と、In0.05Ga0.95Nからなる厚さ10nmの障壁層と、を含む。
【0039】
発光層9の上に形成されるp型クラッド層7は、例えば、発光層9の側から厚さ10nmのp型Al0.15Ga0.85N層と、厚さ40nmのp型GaN層と、p型不純物が高濃度にドープされた厚さ5nmのp型コンタクト層を含む。例えば、p型GaN層の濃度を5×1017cm−3とし、p型コンタクト層として5×1018cm−3以上の濃度のp型GaN層を形成する。
【0040】
次に、図4(b)に示すように、p型クラッド層7の上に、電流ブロック層23と、p電極21aとを形成する。電流ブロック層23には、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成されるシリコン酸化膜(SiO膜)を用いることができる。p電極21aには、p型クラッド層7の側から、例えば、ニッケル(Ni)、Ag、白金(Pt)およびAuを順に積層した多層膜を用いることができる。
【0041】
次に、図5(a)に示すように、ウェーハ10aと、ウェーハ10bと、を貼り合わせる。ウェーハ10bは、支持基板25と、その表面に形成されたp電極21bと、を含む。支持基板25には、例えば、p型シリコン基板、もしくは、p型ゲルマニウム基板を用いることができる。p電極21bには、例えば、Auを用いる。そして、同図に示すように、p電極21aの表面と、p電極21bの表面と、を接触させ、両ウェーハの裏面側から加重を加えることにより、p電極21aとp電極21bとを接合する。p電極21は、一体となったp電極21aおよびp電極21bを含む。
【0042】
続いて、ウェーハ10aの裏面側から、例えば、YAGレーザを照射し、n型クラッド層5の一部の結晶を解離させ、図5(b)に示すように、サファイア基板3をn型クラッド層5から分離する。
【0043】
次に、図6(a)に示すように、サファイア基板3を分離して露出させたn型クラッド層5の表面5bにエッチングマスク31を形成する。続いて、n型クラッド層5を、例えば、RIE(Reactive Ion Etching)法を用いてエッチングし、薄層部5aを形成する。
【0044】
次に、図6(b)に示すように、エッチングマスク31を除去し、n型クラッド層5の表面上に透明電極13を形成する。透明電極13には、例えば、スパッタ法を用いて形成したITO膜を用いる。ITO膜の厚さは、例えば、400nmとする。また、ITO膜に限らず、酸化亜鉛(ZnO)膜、もしくは、酸化錫膜(SnO)膜などを用いても良い。
【0045】
続いて、透明電極13の上にn電極17(図2参照)を形成した後、n型クラッド層5からp型クラッド層7に至る半導体層を選択的にエッチングし、発光面20を画する。さらに、支持基板25の裏面にボンディング電極29を形成し、個々のチップに切断することにより半導体発光装置100を完成する。
【0046】
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態に係る半導体発光装置200の断面を示す模式図である。
半導体発光装置200では、第1半導体層であるn型クラッド層5が、発光層9の側に設けられたn型コンタクト層15aと、n型コンタクト層15aと透明電極13との間に設けられた高抵抗層15bと、を含む点で、半導体発光装置100と相違する。
【0047】
透明電極13は、薄層部5aにおいてn型コンタクト層15aに接する。また、n型クラッド層5の薄層部5aを除く部分において、透明電極13は、高抵抗層15bに接する。
【0048】
n型コンタクト層15aは、例えば、n型不純物であるシリコン(Si)を1×1017cm−3以上の濃度にドープした低抵抗層である。高抵抗層15bは、n型コンタクト層15aよりも抵抗率の高い層であり、n型コンタクト層15aよりも低濃度のn型不純物を含む。例えば、n型不純物を意識的にドープしないアンドープGaN層であっても良い。また、高抵抗層15bにp型不純物をドープしてpn接合を形成し、駆動電流を遮断する構成としても良い。
【0049】
半導体発光装置200では、n型コンタクト層15aと高抵抗層15bとの間の抵抗差により、p電極21から透明電極13に流れる駆動電流を薄層部5aに集中させることができる。そして、薄層部5aの下の発光層9におけるキャリア密度を他の部分よりも高くし、発光効率を向上させることができる。
【0050】
また、n型コンタクト層15aの濃度を低く、且つ、厚く設ければ、駆動電流を高抵抗層15bの下の発光層9の側に広げ、その部分に注入されるキャリアを増やすことができる。一方、n型コンタクト層15aの濃度を高く、且つ、薄く設ければ、薄層部5aの下の発光層9のキャリア密度が高くなり、高抵抗層15bの下の発光層9に注入されるキャリアが減少する。
【0051】
したがって、n型コンタクト層15aの不純物濃度および厚さを好適に設けることにより、薄層部5aの下の発光層9に駆動電流を適度に集中させ、且つ、高抵抗層15bの下の発光層9にキャリアを注入して光吸収を抑制し、発光効率を向上させることができる。さらに、薄層部5aの下の発光層9における過度の電流注入を抑制し、駆動電流の実用範囲において光出力の飽和が生じないようにすることが可能である。
【0052】
例えば、GaN系の窒化物半導体では、アンドープの高抵抗層15bと、n型不純物をドープしたn型コンタクト層15aと、の間の抵抗率の差が大きい。このため、p電極21とp型クラッド層7との間の電流ブロック層23aおよび23bを設けない構造でも、薄層部5aに駆動電流を集中させることが可能であり、発光効率を向上させることができる。すなわち、高抵抗層15bを、電流ブロック層23aおよび23bに代えて機能させることも可能である。
【0053】
以上、第1および第2の実施形態では、窒化物半導体を材料とする半導体発光装置を例に説明したが、半導体材料は窒化物半導体に限られる訳ではない。例えば、GaAs系、あるいは、InP系などの化合物半導体を材料とする発光装置であっても良い。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0055】
なお、本願明細書において、「窒化物半導体」とは、BInAlGa1−x−y−zN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、0≦x+y+z≦1)のIII−V族化合物半導体を含み、さらに、V族元素としては、N(窒素)に加えてリン(P)や砒素(As)などを含有する混晶も含むものとする。またさらに、導電型などの各種の物性を制御するために添加される各種の元素をさらに含むもの、及び、意図せずに含まれる各種の元素をさらに含むものも、「窒化物半導体」に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0056】
3・・・サファイア基板、 5・・・n型クラッド層、 5a・・・薄層部、 6・・・超格子層、 7・・・p型クラッド層、 7a・・・オーバーフロー防止層、 7b・・・p型GaN層、 7c・・・p型コンタクト層、 9・・・発光層、 10a、10b・・・ウェーハ、 13・・・透明電極、 15a・・・n型コンタクト層、 15b・・・高抵抗層、 17・・・n電極、 20・・・発光面、 21、21a、21b・・・p電極、 23、23a、23b・・・電流ブロック層、 25・・・支持基板、 29・・・ボンディング電極、 31・・・エッチングマスク、 100、200・・・半導体発光装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電形の第1半導体層であって、前記第1半導体層の他の部分よりも層厚が薄い複数の薄層部を有する前記第1半導体層と、
第2導電形の第2半導体層と、
前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた発光層と、
前記発光層とは反対側の前記第1半導体層の表面の上に設けられた透明電極と、
前記透明電極の上に選択的に設けられた第1電極と、
前記発光層とは反対側の前記第2半導体層の表面に接した第2電極と、
前記透明電極と前記第2電極との間の電流経路の一部を遮断する電流ブロック層であって、前記第2半導体層の表面に対して平行な平面視において、前記薄層部に重ならない前記電流ブロック層と、
を備えたことを特徴とする半導体発光装置。
【請求項2】
前記電流ブロック層は、前記第2半導体層と前記第2電極との間に設けられたことを特徴とする請求項1記載の半導体発光装置。
【請求項3】
前記第2半導体層の表面に対して平行な平面視において、前記電流ブロック層は、前記第1電極に重なることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体発光装置。
【請求項4】
前記第1半導体層は、前記発光層側に設けられたコンタクト層と、前記コンタクト層と前記透明電極層との間に設けられた高抵抗層と、を含み、
前記透明電極は、前記薄層部において前記コンタクト層に接することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体発光装置。
【請求項5】
第1導電形の第1半導体層であって、前記第1半導体層の他の部分よりも層厚が薄い複数の薄層部を有する前記第1半導体層と、
第2導電形の第2半導体層と、
前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた発光層と、
前記第1半導体層に設けられ、前記第1半導体層の他の部分よりも層厚が薄い複数の薄層部と、
前記発光層とは反対側の前記第1半導体層の表面の上に設けられた透明電極と、
前記透明電極の上に選択的に設けられた第1電極と、
前記発光層とは反対側の前記第2半導体層の表面に接した第2電極と、
を備え、
前記第1半導体層は、前記発光層側に設けられたコンタクト層と、前記コンタクト層と前記透明電極層との間に設けられた高抵抗層と、を含み、
前記透明電極は、前記薄層部において前記コンタクト層に接したことを特徴とする半導体発光装置。
【請求項6】
前記透明電極は、前記第1半導体層の外縁よりも内側に設けられたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の半導体発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−231000(P2012−231000A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98090(P2011−98090)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】