説明

半導体素子接合用接着剤及び半導体素子の接合方法

【課題】応力を受けても破壊されにくく、信頼性の高い半田電極を形成することのできる半導体素子接合用接着剤を提供する。また、該半導体素子接合用接着剤を用いた半導体素子の接合方法を提供する。
【解決手段】半田からなる先端部を有するバンプが形成された半導体素子と、半田からなる電極部が形成された基板又は他の半導体素子とを接合する半導体素子接合用接着剤であって、回転式レオメーターにより測定した50〜250℃の間における最低溶融粘度η*minが35Pa・s以下である半導体素子接合用接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、応力を受けても破壊されにくく、信頼性の高い半田電極を形成することのできる半導体素子接合用接着剤に関する。また、本発明は、該半導体素子接合用接着剤を用いた半導体素子の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ますます進展する半導体装置の小型化、高集積化に対応するために、半田等からなる接続端子(バンプ)を有する半導体チップを用いたフリップチップ接続が多用されている。
【0003】
フリップチップ接続においては、一般的に、半導体チップに形成された複数のバンプと、基板又は他の半導体チップに形成された電極部とを接続した後、アンダーフィルを充填して封止する方法が用いられている。また、アンダーフィルの充填時に空気のかみ込みによるボイドが発生しやすいことから、半導体チップ又は基板、或いは、ダイシングする前の半導体ウエハに予め接着剤層を形成した後、接着剤を硬化すると同時にバンプと電極部とを接続する先塗布型の接続方法も提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、50〜250℃のいずれかの温度で最低溶融粘度が200Pa・s以下である所定のフィルム状接着剤を用いて、Ni/Auめっき処理された配線パターンを有するガラスエポキシ基板に貼り付けた後、金スタッドバンプが形成された半導体チップを超音波振動を利用したフリップチップ実装方式によって接続する方法が記載されている。
【0005】
このようなフリップチップ接続により得られた接合体においては、バンプを持たない半導体チップの接合体の場合と同様に、熱履歴等により半導体チップが応力を受けると、半導体チップの剥離が生じたり、導通部分にクラックが入ったりすることにより導通不良が発生することが問題である。
導通不良の発生を抑制するためには、従来、接着剤に無機充填材を大量に添加することにより、硬化物の線膨張率を低下させて、半導体チップにかかる応力を低減することが検討されてきた。例えば、特許文献2に記載の接着性、速硬化性、信頼性に優れた半導体用ダイアタッチペーストには、必須成分として銀粉、シリカ等の充填材が添加されている。
【0006】
しかしながら、接着剤に無機充填材を大量に添加すると、バンプが半田からなり、バンプと電極部とを溶融接合してフリップチップ接続を行う場合には、溶融したバンプ又は電極部が接着剤に押し流されて、つぶれたり、本来の位置から外れた位置に追いやられたりすることがあり、仮にバンプと電極部とを溶融接合できたとしても、接合部が一体化しにくく、くびれ状の形状となって熱履歴等による応力により破壊されやすくなることが問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−307169号公報
【特許文献2】特開2004−172443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、応力を受けても破壊されにくく、信頼性の高い半田電極を形成することのできる半導体素子接合用接着剤を提供することを目的とする。また、本発明は、該半導体素子接合用接着剤を用いた半導体素子の接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、半田からなる先端部を有するバンプが形成された半導体素子と、半田からなる電極部が形成された基板又は他の半導体素子とを接合する半導体素子接合用接着剤であって、回転式レオメーターにより測定した50〜250℃の間における最低溶融粘度η*minが35Pa・s以下である半導体素子接合用接着剤である。
以下、本発明を詳述する。
【0010】
半田からなるバンプと電極部とを溶融接合する際、溶融したバンプ又は電極部が接着剤に押し流される原因としては、通常240℃程度の半田溶融温度において、接着剤が、硬化反応が進んで硬くなってはいるものの未だ完全には流動性を失っていないことが推測される。従って、溶融したバンプ又は電極部が接着剤に押し流される現象を防止するためには、半田溶融温度での接着剤の流動性を制御することが考えられる。
【0011】
本発明者は、半田からなる先端部を有するバンプが形成された半導体素子と、半田からなる電極部が形成された基板又は他の半導体素子とを接合する半導体素子接合用接着剤において、回転式レオメーターにより測定した50〜250℃の間における最低溶融粘度η*minを一定値以下とすることにより、半田溶融温度において溶融したバンプ又は電極部が接着剤に押し流される現象を抑制できることを見出した。本発明者は、溶融したバンプ又は電極部が接着剤に押し流される現象を抑制することにより、応力を受けても破壊されにくく、信頼性の高い半田電極を形成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
本発明の半導体素子接合用接着剤は、半田からなる先端部を有するバンプが形成された半導体素子と、半田からなる電極部が形成された基板又は他の半導体素子とを接合する半導体素子接合用接着剤である。
本発明の半導体素子接合用接着剤は、基板と半導体素子とを接合する半導体素子接合用接着剤であってもよく、また、例えば、基板に接合された半導体素子等の他の半導体素子と、半導体素子とを接合する半導体素子接合用接着剤であってもよい。
【0013】
本明細書中、半導体素子は、半導体ウエハであってもよく、半導体ウエハをダイシングすることにより得られる半導体チップであってもよい。また、本明細書中、半導体素子のバンプは、半田からなる先端部を有していれば、先端部のみが半田からなっていてもよく、先端部を含む全体が半田からなっていてもよい。
【0014】
本発明の半導体素子接合用接着剤は、回転式レオメーターにより測定した50〜250℃の間における最低溶融粘度η*minが35Pa・s以下である。
上記回転式レオメーターにより測定した50〜250℃の間における最低溶融粘度η*minが上記値以下であることにより、本発明の半導体素子接合用接着剤は、半田溶融温度において溶融した上記バンプ又は上記電極部が接着剤に押し流される現象を抑制することができ、応力を受けても破壊されにくく、信頼性の高い半田電極を形成することができる。
【0015】
上記回転式レオメーターにより測定した50〜250℃の間における最低溶融粘度η*minが35Pa・sを超えると、得られる半導体素子接合用接着剤の半田溶融温度において溶融した上記バンプ又は上記電極部が接着剤に押し流される現象を充分に抑制することができない。上記回転式レオメーターにより測定した50〜250℃の間における最低溶融粘度η*minは、33Pa・s以下であることが好ましく、25Pa・s以下であることがより好ましい。
【0016】
上記回転式レオメーターにより測定した50〜250℃の間における最低溶融粘度η*minの下限は特に限定されないが、0.50Pa・s以上であることが好ましい。上記回転式レオメーターにより測定した50〜250℃の間における最低溶融粘度η*minが0.50Pa・s未満であると、接合時にかみ込んだボイドが半導体素子接合用接着剤中に残ることがある。
【0017】
本明細書中、半導体素子接合用接着剤の回転式レオメーターにより測定した50〜250℃の間における最低溶融粘度η*minとは、半導体素子接合用接着剤をフィルム化し、得られたフィルムについて回転式レオメーターにより測定した、50〜250℃、昇温速度7.5℃/min、周波数1Hzにおける最低溶融粘度η*minを意味する。
なお、回転式レオメーターにより半導体素子接合用接着剤の50〜250℃の間における最低溶融粘度η*minを測定する方法として、例えば、STRESSTECH(REOLOGICA社製)等の通常の回転式レオメーターを用いて、フィルム厚み600μm、周波数1Hz、歪量1rad、昇温速度7.5℃/min、測定温度範囲50〜350℃の条件で測定を行う方法等が挙げられる。
【0018】
本発明の半導体素子接合用接着剤において、上述した粘度特性を達成する方法は特に限定されないが、例えば、エポキシ化合物、該エポキシ化合物と反応可能な官能基を有する高分子化合物(以下、単に、反応可能な官能基を有する高分子化合物ともいう)、及び、必要に応じて他の添加成分を適宜配合することにより、粘度特性を調整する方法が好ましい。
【0019】
上記エポキシ化合物は特に限定されず、例えば、軟化点が150℃以下のエポキシ樹脂、常温で液体又は結晶性固体のエポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ化合物は、単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
上記軟化点が150℃以下のエポキシ樹脂として、例えば、フェノールノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルフェノールノボラックエポキシ樹脂等が挙げられる。なかでも、ジシクロペンタジエンフェノールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
【0020】
上記常温で液体又は結晶性固体のエポキシ樹脂として、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型、ビスフェノールS型等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。なかでも、アントラセン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0021】
上記反応可能な官能基を有する高分子化合物を含有することで、得られる半導体素子接合用接着剤の硬化物は靭性をもち、優れた耐衝撃性を発現することができる。
上記反応可能な官能基を有する高分子化合物は特に限定されず、例えば、アミノ基、ウレタン基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等を有する高分子化合物等が挙げられる。なかでも、エポキシ基を有する高分子化合物が好ましい。
上記エポキシ基を有する高分子化合物を含有することで、得られる半導体素子接合用接着剤の硬化物は優れた靭性を発現する。即ち、得られる半導体素子接合用接着剤の硬化物は、上記エポキシ化合物に由来する優れた機械的強度、耐熱性及び耐湿性と、上記エポキシ基を有する高分子化合物に由来する優れた靭性とを兼備することにより、高い接合信頼性及び接続信頼性を発現することができる。
【0022】
上記エポキシ基を有する高分子化合物は、末端及び/又は側鎖(ペンダント位)にエポキシ基を有する高分子化合物であれば特に限定されず、例えば、エポキシ基含有アクリルゴム、エポキシ基含有ブタジエンゴム、ビスフェノール型高分子量エポキシ樹脂、エポキシ基含有フェノキシ樹脂、エポキシ基含有アクリル樹脂、エポキシ基含有ウレタン樹脂、エポキシ基含有ポリエステル樹脂等が挙げられる。なかでも、エポキシ基を多く含み、得られる半導体素子接合用接着剤の硬化物が優れた機械的強度、耐熱性、靭性等を発現できることから、エポキシ基含有アクリル樹脂が好ましい。これらのエポキシ基を有する高分子化合物は、単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
【0023】
上記反応可能な官能基を有する高分子化合物として、上記エポキシ基を有する高分子化合物、特にエポキシ基含有アクリル樹脂を用いる場合、該エポキシ基を有する高分子化合物の重量平均分子量の好ましい下限は1万、好ましい上限は5万である。上記重量平均分子量が1万未満であると、得られる半導体素子接合用接着剤を用いてフィルムを製造する際の造膜性が不充分となり、フィルムとして形状を保持することができないことがある。上記重量平均分子量が5万を超えると、得られる半導体素子接合用接着剤が上述した粘度特性を達成することができないことがある。
また、上記重量平均分子量が1万未満であると、得られる半導体素子接合用接着剤には低分子量化合物が多く存在するため、接合時にボイドが発生しやすくなることがある。
【0024】
上記反応可能な官能基を有する高分子化合物として、上記エポキシ基を有する高分子化合物、特にエポキシ基含有アクリル樹脂を用いる場合、該エポキシ基を有する高分子化合物のエポキシ当量の好ましい下限は200、好ましい上限は1000である。上記エポキシ当量が200未満であると、得られる半導体素子接合用接着剤の硬化物が堅く、脆くなることがある。上記エポキシ当量が1000を超えると、得られる半導体素子接合用接着剤の硬化物の機械的強度、耐熱性等が不充分となることがある。
【0025】
上記反応可能な官能基を有する高分子化合物の含有量は特に限定されないが、上記エポキシ化合物100重量部に対する好ましい下限が1重量部、好ましい上限が500重量部である。上記反応可能な官能基を有する高分子化合物の含有量が1重量部未満であると、得られる半導体素子接合用接着剤の硬化物は、熱によるひずみが発生する際、靭性が不充分となり、接合信頼性が劣ることがある。上記反応可能な官能基を有する高分子化合物の含有量が500重量部を超えると、得られる半導体素子接合用接着剤の硬化物の耐熱性が低下することがある。
【0026】
本発明の半導体素子接合用接着剤は、硬化剤を含有することが好ましい。
上記硬化剤は特に限定されず、例えば、アミン系硬化剤、酸無水物硬化剤、フェノール系硬化剤等が挙げられる。なかでも、酸無水物硬化剤が好ましい。
上記酸無水物硬化剤は特に限定されないが、2官能の酸無水物硬化剤が好ましい。上記2官能の酸無水物硬化剤は特に限定されず、例えば、フタル酸誘導体の無水物、無水マレイン酸等が挙げられる。
【0027】
また、上記硬化剤として、3官能以上の酸無水物硬化剤粒子を用いてもよい。上記3官能以上の酸無水物硬化剤粒子は特に限定されず、例えば、無水トリメリット酸等の3官能の酸無水物からなる粒子、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物等の4官能以上の酸無水物からなる粒子等が挙げられる。
【0028】
上記3官能以上の酸無水物硬化剤粒子の平均粒子径は特に限定されないが、好ましい下限が0.1μm、好ましい上限が20μmである。上記3官能以上の酸無水物硬化剤粒子の平均粒子径が0.1μm未満であると、硬化剤粒子の凝集が生じ、得られる半導体素子接合用接着剤が上述した粘度特性を達成することができないことがある。上記3官能以上の酸無水物硬化剤粒子の平均粒子径が20μmを超えると、得られる半導体素子接合用接着剤において、硬化時に硬化剤粒子が充分に拡散することができず、硬化不良となることがある。
【0029】
本発明の半導体素子接合用接着剤が上記硬化剤を含有する場合、上記硬化剤の含有量は特に限定されないが、上記エポキシ化合物と、上記反応可能な官能基を有する高分子化合物との合計100重量部に対する好ましい下限が5重量部、好ましい上限が150重量部である。上記硬化剤の含有量が5重量部未満であると、得られる半導体素子接合用接着剤が充分に硬化しないことがある。上記硬化剤の含有量が150重量部を超えると、得られる半導体素子接合用接着剤の接続信頼性が低下することがある。上記硬化剤の含有量は、上記エポキシ化合物と、上記反応可能な官能基を有する高分子化合物との合計100重量部に対するより好ましい下限が10重量部、より好ましい上限が140重量部である。
【0030】
また、上記硬化剤が、上記2官能の酸無水物硬化剤と上記3官能以上の酸無水物硬化剤粒子とを含有する場合、これらの配合比は特に限定されないが、上記3官能以上の酸無水物硬化剤粒子の含有量(重量)を上記2官能の酸無水物硬化剤の含有量(重量)で除した値[=(3官能以上の酸無水物硬化剤粒子の含有量)/(2官能の酸無水物硬化剤の含有量)]の好ましい下限が0.1、好ましい上限が10である。上記値が0.1未満であると、上記3官能以上の酸無水物硬化剤粒子を添加する効果が充分に得られないことがある。上記値が10を超えると、得られる半導体素子接合用接着剤の硬化物が脆くなり、充分な接着信頼性が得られないことがある。上記値のより好ましい下限は0.2、より好ましい上限は8である。
【0031】
本発明の半導体素子接合用接着剤は、硬化促進剤を含有してもよい。
上記硬化促進剤は特に限定されないが、くびれ状の形状ではなく一体化した形状を有し、応力を受けても破壊されにくく、信頼性の高い半田電極を形成するためには、硬化反応が比較的緩やかに進行する硬化促進剤が好ましい。
上記硬化反応が比較的緩やかに進行する硬化促進剤として、例えば、イミダゾール化合物が挙げられる。
【0032】
上記イミダゾール化合物は特に限定されず、例えば、イミダゾールの1位をシアノエチル基で保護した1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、イソシアヌル酸で塩基性を保護したイミダゾール化合物(商品名「2MA−OK」、四国化成工業社製)、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン(商品名「2MZ−A」、四国化成工業社製)、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール(商品名「2P4MHZ」、四国化成工業社製)等が挙げられる。これらのイミダゾール化合物は、単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
【0033】
本発明の半導体素子接合用接着剤が上記硬化促進剤を含有する場合、上記硬化促進剤の含有量は特に限定されないが、上記エポキシ化合物と、上記反応可能な官能基を有する高分子化合物との合計100重量部に対する好ましい下限が0.3重量部、好ましい上限が8重量部である。上記硬化促進剤の含有量が0.3重量部未満であると、得られる半導体素子接合用接着剤が充分に硬化しないことがある。上記硬化促進剤の含有量が8重量部を超えると、得られる半導体素子接合用接着剤において、未反応の硬化促進剤が接着界面に染み出すことにより、接合信頼性が低下することがある。
【0034】
本発明の半導体素子接合用接着剤は、無機充填材を含有してもよい。
上記無機充填材の種類及び含有量を調整することで、半導体素子接合用接着剤において上述した粘度特性を達成することができる。また、上記無機充填材を含有することで、得られる半導体素子接合用接着剤の硬化物の線膨張率を低下させることができ、接合された半導体素子等への応力の発生及び半田等の導通部分のクラックの発生を良好に防止することができる。
【0035】
上記無機充填材は特に限定されず、例えば、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ等のシリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、ガラスパウダー、ガラスフリット等が挙げられる。なかでも、ガラスパウダーが好ましい。
上記無機充填材としてガラスパウダーを用いることで、ガラスパウダーの平均粒子径が比較的大きくても、得られる半導体素子接合用接着剤は透明性が高くなり、アライメント性に優れる。また、上記無機充填材としてガラスパウダーを用いることで、ガラスパウダーの含有量が比較的多くても、得られる半導体素子接合用接着剤は上述した粘度特性を達成して信頼性の高い半田電極を形成することができ、かつ、硬化物の線膨張率が低下して、冷熱サイクルに曝された場合にもクラック等の発生をより効果的に防止することができる。
【0036】
また、硬化反応が比較的緩やかに進行する低粘度の半導体素子接合用接着剤が得られることから、上記無機充填材は表面処理されていることが好ましい。
上記無機充填材を表面処理する方法として、例えば、上記無機充填材をシランカップリング剤、チタンカップリング剤等により予め処理する方法、半導体素子接合用接着剤中にシランカップリング剤、チタンカップリング剤等を添加する方法等が挙げられる。
【0037】
上記無機充填材として粒子状の無機充填材を用いる場合、平均粒子径の好ましい下限は1nm、好ましい上限は20μmである。上記粒子状の無機充填材の平均粒子径が1nm未満であると、得られる半導体素子接合用接着剤が増粘して、上述した粘度特性を達成することができないことがある。上記粒子状の無機充填材の平均粒子径が20μmを超えると、上記バンプと上記電極部との間に上記無機充填材をかみこむことがある。上記粒子状の無機充填材の平均粒子径のより好ましい上限は15μm、更に好ましい上限は5μmである。
【0038】
また、上記無機充填材としてガラスパウダー以外の粒子状の無機充填材を用いる場合、透明性の観点から、平均粒子径の好ましい上限は1μmである。
【0039】
本発明の半導体素子接合用接着剤が上記無機充填材を含有する場合、上記無機充填材の含有量は特に限定されないが、本発明の半導体素子接合用接着剤中の好ましい上限が80重量%である。上記無機充填材の含有量が80重量%を超えると、得られる半導体素子接合用接着剤が上述した粘度特性を達成することができず、半田溶融温度において溶融した上記バンプ又は上記電極部が接着剤に押し流される現象を抑制できないことがある。また、上記無機充填材の含有量が80重量%を超えると、得られる半導体素子接合用接着剤の硬化物の線膨張率は低下するものの、同時にせん断弾性率が上昇して、接合された半導体素子等への応力及び半田等の導通部分のクラックが発生しやすくなることがある。上記無機充填材の含有量は、本発明の半導体素子接合用接着剤中のより好ましい上限が60重量%である。
【0040】
なかでも、上述した粘度特性を達成する観点から、上記無機充填材として平均粒子径が0.1μm未満のシリカ粒子を用いる場合、平均粒子径が0.1μm未満のシリカ粒子の含有量は、本発明の半導体素子接合用接着剤中の好ましい上限が20重量%であり、上記無機充填材として平均粒子径が0.1μmを超えるシリカ粒子を用いる場合、平均粒子径が0.1μmを超えるシリカ粒子の含有量は、本発明の半導体素子接合用接着剤中の好ましい上限が40重量%であり、上記無機充填材としてガラスパウダーを用いる場合、ガラスパウダーの含有量は、本発明の半導体素子接合用接着剤中の好ましい上限が60重量%である。
【0041】
本発明の半導体素子接合用接着剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内で希釈剤を含有してもよい。
上記希釈剤は特に限定されないが、本発明の半導体素子接合用接着剤の加熱硬化時に硬化物に取り込まれる反応性希釈剤が好ましい。なかでも、得られる半導体素子接合用接着剤の接着信頼性を悪化させないために、1分子中に2以上の官能基を有する反応性希釈剤がより好ましい。
上記1分子中に2以上の官能基を有する反応性希釈剤として、例えば、脂肪族型エポキシ、エチレンオキサイド変性エポキシ、プロピレンオキサイド変性エポキシ、シクロヘキサン型エポキシ、ジシクロペンタジエン型エポキシ、フェノール型エポキシ等が挙げられる。
【0042】
本発明の半導体素子接合用接着剤が上記希釈剤を含有する場合、上記希釈剤の含有量は特に限定されないが、上記エポキシ化合物と、上記反応可能な官能基を有する高分子化合物との合計100重量部に対する好ましい下限は1重量部、好ましい上限は300重量部である。上記希釈剤の含有量が1重量部未満であると、上記希釈剤を添加する効果をほとんど得ることができないことがある。上記希釈剤の含有量が300重量部を超えると、得られる半導体素子接合用接着剤の硬化物が硬く脆くなるため、接着信頼性が劣ることがある。上記希釈剤の含有量は、上記エポキシ化合物と、上記反応可能な官能基を有する高分子化合物との合計100重量部に対するより好ましい下限が5重量部、より好ましい上限が200重量部である。
【0043】
本発明の半導体素子接合用接着剤は、必要に応じて、無機イオン交換体を含有してもよい。上記無機イオン交換体のうち、市販品として、例えば、IXEシリーズ(東亞合成社製)等が挙げられる。本発明の半導体素子接合用接着剤が上記無機イオン交換体を含有する場合、上記無機イオン交換体の含有量は特に限定されないが、本発明の半導体素子接合用接着剤中の好ましい下限が1重量%、好ましい上限が10重量%である。
【0044】
本発明の半導体素子接合用接着剤は、その他必要に応じて、ブリード防止剤、シランカップリング剤、イミダゾールシランカップリング剤等の接着性付与剤、増粘剤等の添加剤を含有してもよい。
【0045】
本発明の半導体素子接合用接着剤を製造する方法は特に限定されず、例えば、上記エポキシ化合物、上記反応可能な官能基を有する高分子化合物、及び、必要に応じて他の添加成分を所定量配合して混合する方法等が挙げられる。
上記混合する方法は特に限定されず、例えば、ホモディスパー、万能ミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー等を用いて混合する方法等が挙げられる。
【0046】
本発明の半導体素子接合用接着剤を用いて半導体素子を接合する方法であって、半田からなる先端部を有するバンプが形成された半導体素子と、半田からなる電極部が形成された基板又は他の半導体素子とを、本発明の半導体素子接合用接着剤を介して前記バンプと前記電極部とが対応するように位置合わせする工程(1)と、加熱及び加圧を行うことにより前記バンプと前記電極部とを溶融接合する工程(2)とを有する半導体素子の接合方法もまた、本発明の1つである。
【0047】
本発明の半導体素子の接合方法では、まず、半田からなる先端部を有するバンプが形成された半導体素子と、半田からなる電極部が形成された基板又は他の半導体素子とを、本発明の半導体素子接合用接着剤を介して前記バンプと前記電極部とが対応するように位置合わせする工程(1)を行う。
【0048】
本発明の半導体素子の接合方法では、上記工程(1)の前に、本発明の半導体素子接合用接着剤を、半田からなる先端部を有するバンプが形成された半導体素子に塗布し、フィルム化する工程を行ってもよい。
本発明の半導体素子接合用接着剤を、半田からなる先端部を有するバンプが形成された半導体素子に塗布し、フィルム化する方法として、例えば、溶剤としてプロピレングリコールメチルエーテルアセテート等の120〜250℃程度の沸点を有する中沸点溶剤又は高沸点溶剤を用いて、本発明の半導体素子接合用接着剤を溶解して接着剤溶液を調製した後、得られた接着剤溶液を、スピンコーター、スクリーン印刷等を使用して上記半導体素子に印刷し、溶剤を乾燥する方法、溶剤を含有しない本発明の半導体素子接合用接着剤を、上記半導体素子に塗布した後、Bステージ化剤又は露光によってフィルム化する方法等が挙げられる。
【0049】
また、本発明の半導体素子の接合方法では、上記工程(1)の前に、本発明の半導体素子接合用接着剤を用いて半導体素子接合用接着フィルムを作製する工程と、前記半導体素子接合用接着フィルムを、ラミネートにより、半田からなる先端部を有するバンプが形成された半導体素子に供給する工程とを行ってもよい。
本発明の半導体素子接合用接着剤を用いて半導体素子接合用接着フィルムを作製する方法は特に限定されず、例えば、溶剤としてメチルエチルケトン等の低沸点溶剤を用いて、本発明の半導体素子接合用接着剤を溶解して接着剤溶液を調製した後、得られた接着剤溶液を、ダイコーター、バーコーター、グラビアコーター、スリットコーター等を使用してセ パレーター上に塗工し、加熱等により溶剤を乾燥する方法等が挙げられる。
【0050】
また、本発明の半導体素子の接合方法では、上述のようにして得られた半導体素子接合用接着フィルムをチップサイズに合わせて裁断し、半田からなる電極部が形成された基板又は半導体チップに供給してもよい。
【0051】
本発明の半導体素子の接合方法では、次いで、加熱及び加圧を行うことにより前記バンプと前記電極部とを溶融接合する工程(2)を行う。
【0052】
上記加熱及び加圧を行うことにより上記バンプと上記電極部とを溶融接合する工程(2)を行うことにより、上記バンプと上記電極部とが溶融接合するとともに本発明の半導体素子接合用接着剤が硬化して、上記半田からなる先端部を有するバンプが形成された半導体素子と、上記半田からなる電極部が形成された基板又は他の半導体素子とを、本発明の半導体素子接合用接着剤を介して接合することができる。
本発明の半導体素子の接合方法においては、本発明の半導体素子接合用接着剤の回転式レオメーターにより測定した50〜250℃の間における最低溶融粘度η*minが上記値以下であることにより、半田溶融温度において溶融した上記バンプ又は上記電極部が接着剤に押し流される現象を抑制することができ、応力を受けても破壊されにくく、信頼性の高い半田電極を形成することができる。
【0053】
上記加熱及び加圧は、上記バンプと上記電極部とを溶融接合することができれば特に限定されないが、上記加熱する方法として、本発明の半導体素子接合用接着剤の硬化温度より5〜150℃低い温度から、半田溶融温度まで0.1〜60秒かけて昇温する方法が好ましい。このようにして昇温することにより、接合時にかみこんだボイド又は揮発成分を効率よく排出することができる。
【0054】
上記加圧する方法は特に限定されず、上記バンプの数等に応じて適宜調整されるが、例えば、5〜250N程度の荷重で加圧する方法が挙げられる。例えば、上記半導体素子が半導体チップであり、上記バンプの数が1チップ当たり500程度である場合には、5〜30N程度の荷重で加圧する方法が好ましく、上記バンプの数が多い場合には、荷重の圧力を上げることが好ましい。
【発明の効果】
【0055】
本発明によれば、応力を受けても破壊されにくく、信頼性の高い半田電極を形成することのできる半導体素子接合用接着剤を提供することができる。また、本発明によれば、該半導体素子接合用接着剤を用いた半導体素子の接合方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、実施例1で得られた接合体にX線を照射し、溶融接合した半田電極の上下方向から観察したX線写真である。
【図2】図2は、実施例2で得られた接合体にX線を照射し、溶融接合した半田電極の上下方向から観察したX線写真である。
【図3】図3は、実施例3で得られた接合体にX線を照射し、溶融接合した半田電極の上下方向から観察したX線写真である。
【図4】図4は、実施例4で得られた接合体にX線を照射し、溶融接合した半田電極の上下方向から観察したX線写真である。
【図5】図5は、比較例1で得られた接合体にX線を照射し、溶融接合した半田電極の上下方向から観察したX線写真である。
【図6】図6は、比較例2で得られた接合体にX線を照射し、溶融接合した半田電極の上下方向から観察したX線写真である。
【図7】図7は、比較例3で得られた接合体にX線を照射し、溶融接合した半田電極の上下方向から観察したX線写真である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0058】
(実施例1〜9及び比較例1〜6)
1.接着フィルムの製造
表1、2又は3の組成に従って、ホモディスパーを用いて下記に示す各材料を攪拌混合し、接着剤溶液を調製した後、アプリケーターによって接着剤溶液を離型処理されたペットフィルム上に塗工し、溶剤を乾燥して100μm厚の接着フィルムを得た。
【0059】
(1)エポキシ化合物
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(商品名「HP−7200HH」、DIC社製)
ビフェニル型エポキシ樹脂(商品名「YX−4000」、ジャパンエポキシレジン社製)
【0060】
(2)反応可能な官能基を有する高分子化合物
グリシジル基含有アクリル樹脂(重量平均分子量2万、商品名「G−0250M」、日油社製)
【0061】
(3)硬化剤
トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸(商品名「YH−306」、ジャパンエポキシレジン社製)
【0062】
(4)硬化促進剤
2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン イソシアヌル酸付加塩(商品名「2MA−OK」、四国化成工業社製)
【0063】
(5)無機充填材
ナノシリカ(商品名「SX−009−MJF」、平均粒子径50nm、アドマテックス社製)
シリカ(商品名「SE1050−SPT」、平均粒子径0.3μm、アドマテックス社製)
ガラスパウダー(商品名「G018−323」、SCHOTT社製)
【0064】
(6)その他
溶剤 メチルエチルケトン(MEK、和光純薬工業社製)
【0065】
2.最低溶融粘度η*minの測定
得られた接着フィルムについて、回転式レオメーター(STRESSTECH、REOLOGICA社製)を用いて、フィルム厚み600μm、周波数1Hz、歪量1rad、昇温速度7.5℃/min、測定温度範囲50〜350℃の条件で測定を行い、50〜250℃の間に最も複素粘度が低下した値を最低溶融粘度η*minとした。
【0066】
<評価>
実施例及び比較例で得られた接着フィルムについて、以下の評価を行った。結果を表1、2又は3に示す。
【0067】
(1)半田流れ有無
得られた接着フィルムを、半田ボール(高さ85μm)が150μm間隔でチップ全面に3136個形成されたフルアレイのTEGチップ(10mm×10mm×厚み725μm)にラミネートした後、チップサイズに合わせて接着フィルムを裁断し、接着剤付TEGチップを得た。
次いで、得られた接着剤付TEGチップを、この接着剤付TEGチップの半田ボールと1本のデイジーチェーンとなるように配線された半田プリコート付ガラスエポキシTEG基板に、接着剤付TEGチップの半田ボールと、ガラスエポキシTEG基板の電極部とが対応するように位置合わせした。その後、ステージ温度120℃、ヘッド温度140℃20秒、280℃5秒、ヘッド圧100Nでフリップチップボンディングを行うことにより、接着剤付TEGチップの半田ボールと、ガラスエポキシTEG基板の電極部とを溶融接合した。その後、190℃30分でポストキュア(後硬化)を行い、接合体を得た。
【0068】
得られた接合体に、マイクロフォーカスX線検査装置(MF100C、日立建機ファインテック社製)を用いてX線を照射し、溶融接合した半田電極の上下方向から観察することにより、半田流れ(半田ボール又は電極部が接着剤に押し流される現象)の有無を評価した。X線写真より、半田電極が黒い円を保っていた場合を半田流れ「無」、1箇所でも黒い円を保っていなかった場合を半田流れ「有」とした。
なお、実施例1、2、3及び4、並びに、比較例1、2及び3において得られたX線写真を、それぞれ、図1、2、3、4、5、6及び7に示す。図1〜4に示すX線写真は半田流れ「無」を、図5〜7に示すX線写真は半田流れ「有」を示す写真である。
【0069】
(2)リフロー試験
(2−1)冷熱サイクル試験(以下、TC試験)用接合体
得られた接着フィルムを、半田ボール(高さ85μm)が150μm間隔でチップ全面に3136個形成されたフルアレイのTEGチップ(10mm×10mm×厚み725μm)にラミネートした後、チップサイズに合わせて接着フィルムを裁断し、接着剤付TEGチップを得た。
次いで、得られた接着剤付TEGチップを、この接着剤付TEGチップの半田ボールと1本のデイジーチェーンとなるように配線された半田プリコート付ガラスエポキシTEG基板に、接着剤付TEGチップの半田ボールと、ガラスエポキシTEG基板の電極部とが対応するように位置合わせした。その後、ステージ温度120℃、ヘッド温度140℃20秒、280℃5秒、ヘッド圧100Nでフリップチップボンディングを行うことにより、接着剤付TEGチップの半田ボールと、ガラスエポキシTEG基板の電極部とを溶融接合した。その後、190℃30分でポストキュア(後硬化)を行い、TC試験用接合体を得た。
【0070】
得られたTC試験用接合体について、予め導通抵抗値(以下、初期抵抗値とする)を測定しておき、60℃、60%RHで40時間吸湿させ、ピーク温度260℃のリフローオーブンに3回通してリフロー試験を行った後、再び導通抵抗値を測定した。リフロー試験後の導通抵抗値が初期抵抗値から10%以上変化した場合を不良とし、8つのTC試験用接合体を作製して良品の個数を評価した。
【0071】
(2−2)高温高湿バイアス試験(以下、THB試験)用接合体
上記(2−1)のTC試験用接合体の場合と同様にして得られた接着剤付TEGチップを、この接着剤付TEGチップの半田ボールと2本のデイジーチェーンを形成し、その2本のデイジーチェーンが櫛歯状となるように配線された半田プリコート付ガラスエポキシTEG基板に、接着剤付TEGチップの半田ボールと、ガラスエポキシTEG基板の電極部とが対応するように位置合わせしたこと以外は、上記(2−1)のTC試験用接合体の場合と同様にして、THB試験用接合体を得た。
【0072】
得られたTHB試験用接合体について、60℃、60%RHで40時間吸湿させ、ピーク温度260℃のリフローオーブンに3回通してリフロー試験を行った後、櫛歯状に形成された2本のデイジーチェーン間で非導通であるか否かを評価した。導通つまりショートしていた場合を不良とし、8つのTHB試験用接合体を作製して良品の個数を評価した。
【0073】
なお、上記(1)の半田流れ有無の評価において半田流れ「有」となった接合体については、上記(2−1)及び上記(2−2)のリフロー試験は行わなかった。
【0074】
(3)冷熱サイクル試験1(TC試験1)
上記(2−1)にてリフロー試験を行ったTC試験用接合体について、−55〜125℃(30分/1サイクル)、1000サイクルのTC試験を行った後、導通抵抗値を測定した。TC試験後の導通抵抗値が初期抵抗値から10%以上変化した場合を不良とし、8つのTC試験用接合体のうちの良品の個数を評価した。
【0075】
(4)冷熱サイクル試験2(TC試験2)
サイクル数を1500サイクルに変更したこと以外は冷熱サイクル試験1(TC試験1)と同様にして評価を行った。
【0076】
(5)高温高湿バイアス試験(THB試験)
上記(2−2)にてリフロー試験を行ったTHB試験用接合体について、85℃/85%RH/3.7V 1000hのTHB試験を行った後、2本のデイジーチェーン間で非導通であるかを評価した。導通していた場合を不良とし、8つのTHB試験用接合体のうちの良品の個数を評価した。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
【表3】

【0080】
なお、上記の実施例においては、作製した接着フィルムを半導体チップにラミネートすることで接着剤層を形成したが、半導体ウエハ等に接着剤を塗布し、フィルム化することにより接着剤層を形成した場合にも同様の効果が得られることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明によれば、応力を受けても破壊されにくく、信頼性の高い半田電極を形成することのできる半導体素子接合用接着剤を提供することができる。また、本発明によれば、該半導体素子接合用接着剤を用いた半導体素子の接合方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半田からなる先端部を有するバンプが形成された半導体素子と、半田からなる電極部が形成された基板又は他の半導体素子とを接合する半導体素子接合用接着剤であって、
回転式レオメーターにより測定した50〜250℃の間における最低溶融粘度η*minが35Pa・s以下である
ことを特徴とする半導体素子接合用接着剤。
【請求項2】
80重量%以下の含有量で無機充填材を含有することを特徴とする請求項1記載の半導体素子接合用接着剤。
【請求項3】
無機充填材が、ガラスパウダーであることを特徴とする請求項2記載の半導体素子接合用接着剤。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の半導体素子接合用接着剤を用いて半導体素子を接合する方法であって、
半田からなる先端部を有するバンプが形成された半導体素子と、半田からなる電極部が形成された基板又は他の半導体素子とを、前記半導体素子接合用接着剤を介して前記バンプと前記電極部とが対応するように位置合わせする工程(1)と、
加熱及び加圧を行うことにより前記バンプと前記電極部とを溶融接合する工程(2)とを有する
ことを特徴とする半導体素子の接合方法。
【請求項5】
工程(1)の前に、半導体素子接合用接着剤を、半田からなる先端部を有するバンプが形成された半導体素子に塗布し、フィルム化する工程を有することを特徴とする請求項4記載の半導体素子の接合方法。
【請求項6】
工程(1)の前に、半導体素子接合用接着剤を用いて半導体素子接合用接着フィルムを作製する工程と、前記半導体素子接合用接着フィルムを、ラミネートにより、半田からなる先端部を有するバンプが形成された半導体素子に供給する工程とを有することを特徴とする請求項4記載の半導体素子の接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−64853(P2012−64853A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209216(P2010−209216)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】