説明

半導体装置および半導体装置の製造方法

【課題】電界集中が生じにくくリーク電流を抑えることができ、PN接合領域における無効領域を小さくでき、ショットキー接合領域の面積を十分に確保でき、効率よく容易に製造できる高性能の半導体装置を提供する。
【解決手段】SiCからなる第1導電型の半導体基板1の一方の面に、PN接合領域7aと、ショットキー接合領域7bとが設けられ、PN接合領域7aには、半導体基板1上に設けられた第2導電型層2を含む断面視台形状の凸状部2aと、凸状部2aの第2導電型層2上にオーミック接触されたコンタクト層3とが備えられ、ショットキー電極4が、凸状部2aの側面とコンタクト層3とを覆い、PN接合領域7aおよびショットキー接合領域7bに連続して設けられている半導体装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置および半導体装置の製造方法に関し、特に、電力用半導体装置に好適に用いられる半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換等に使用される電力用半導体装置として、金属と半導体とのショットキー接合を利用したショットキーバリアダイオード(SBD)がある(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。SBDは、多数キャリアデバイスであるため、大きな順方向サージ電流が流れたときに、順方向電圧降下が大きくなり素子破壊を起こす場合がある。
また、SBDとして、SiC半導体基板を用いたものがある(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平6−112474号公報
【特許文献2】特開平8−236791号公報
【特許文献3】特開2000−252478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
順方向サージ電流による素子破壊の耐量を向上させる方法としては、ショットキー接合とPN接合とを複合化した半導体装置とし、PN接合からの少数キャリア注入により順方向電圧降下を下げる方法が考えられる。PN接合からの少数キャリア注入を円滑に行うためには、半導体装置のP型領域に接触する電極とP型領域とはオーミックコンタクトを形成していなければならない。
しかしながら、SiC半導体基板を用いたSBDにおいて、N型領域とショットキーコンタクトを形成するショットキー電極は、P型領域と良好なオーミックコンタクトを形成することが困難であるという不都合がある。
【0004】
SiC半導体基板を用いたSBDにおいて、N型領域とショットキーコンタクトを形成するとともに、P型領域と良好なオーミックコンタクトを形成するショットキー電極を形成するためには、P型領域とショットキー電極との間にコンタクト金属膜が配置された半導体装置とする方法が考えられる。ここで、P型領域とショットキー電極との間にコンタクト金属膜が配置された従来の半導体装置の課題について、図4を用いて説明する。図4(a)は、従来の半導体装置の一例を示した断面図である。また、図4(b)および図4(c)は、図4(a)に示す半導体装置の製造工程の一例を説明するための工程図である。
【0005】
図4(a)において、符号11はSiCからなるN型半導体基板を示している。N型半導体基板11は、N+SiC層11aからなるものであり、N+SiC層11a上にはNSiC層11bが形成されている。N型半導体基板11のNSiC層11b側の面には、N型半導体基板11にPN接合されたP型領域12の設けられているPN接合領域17aと、N型半導体基板11のNSiC層11bにショットキー電極14がショットキー接触されてなるショットキー接合領域17bとが設けられている。
【0006】
図4(a)に示すように、PN接合領域17aには、断面視矩形状の複数のP型領域12が埋め込まれるように形成されている。各P型領域12上には、P型領域12よりも平面積の小さいコンタクト金属膜13が形成されている。コンタクト金属膜13は、P型領域12と良好なオーミックコンタクトを形成するものである。また、図4(a)に示すように、ショットキー電極14が、各コンタクト金属膜13上を覆い、PN接合領域17aおよびショットキー接合領域17bに連続して設けられている。したがって、図4(a)に示す半導体装置では、PN接合領域17aにおいて、P型領域12とショットキー電極14との間にコンタクト金属膜13が配置されたものとなっている。また、N型半導体基板11のN+SiC層11a側(図4においては下側)の面には、N型半導体基板11のN+SiC層11aにオーミック接触されたオーミック電極15が設けられている。
【0007】
図4(a)に示す半導体装置を製造する方法としては、以下に示す方法などが挙げられる。まず、N+SiC層11aとN+SiC層11a上に形成されたNSiC層11bとを有するN型半導体基板11上に、ショットキー接合領域17bとなる領域を覆うマスク(図示略)を形成して、N型半導体基板11のPN接合領域17aとなる領域にP型不純物をイオン注入し、マスクを除去する。次いで、N型半導体基板11にイオン注入されたP型不純物を拡散させて活性化するために、高温で熱処理を行う。このことにより、図4(b)に示すように、N型半導体基板11に埋め込まれ、N型半導体基板11にPN接合された断面視矩形状の複数のP型領域12を形成する。
その後、図4(b)に示すように、N型半導体基板11のN+SiC層11a側にオーミック電極15を形成する。
【0008】
続いて、P型領域12上に、コンタクト金属膜13となる金属膜を形成し、P型領域12と良好なオーミックコンタクトを形成するための熱処理を行う。次に、コンタクト金属膜13となる金属膜上に、P型領域12と平面視で重なる領域を覆うマスク(図示略)を形成して、ショットキー接合領域17bとなる領域のコンタクト金属膜13となる金属膜をエッチングしてパターニングし、図4(b)に示すように、コンタクト金属膜13を形成する。
【0009】
その後、図4(c)に示すように、PN接合領域17aおよびショットキー接合領域17bに連続して設けられ、コンタクト金属膜13上を覆い、ショットキー接合領域17bにおいてN型半導体基板11にショットキー接触されたショットキー電極14を形成する。
以上のようにして、図4(a)に示す半導体装置が得られる。
【0010】
図4(a)に示す半導体装置は、イオン注入して熱処理することにより形成された断面視矩形状のP型領域12が、N型半導体基板11に埋め込まれているものであるので、図4(a)において点線で示される逆電圧印加時の空乏層の広がりが、PN接合領域17aとショットキー接合領域17bとでN型半導体基板11の深さ方向に大きく異なるものとなっており、空乏層の厚みが薄いP型領域12の側面と底面との境界である隅部(図4(a)において点線の円形で示される領域)に電界が集中し、大きなリーク電流が発生しやすいという不都合があった。リーク電流は、半導体装置の信頼性を損なうものであるので、電界集中を緩和してリーク電流を抑えることが要求されていた。
【0011】
また、図4(a)〜図4(c)に示す半導体装置の製造方法では、コンタクト金属膜13を形成するために、コンタクト金属膜13となる金属膜上にP型領域12と平面視で重なる領域を覆うマスクを形成している。コンタクト金属膜13がN型半導体基板11上に形成されると、漏れ電流が生じてしまう。したがって、コンタクト金属膜13は、図4(b)に示すように、少なくともコンタクト金属膜13を形成するためのマスクの位置合わせマージンの寸法dを考慮した面積分、P型領域12よりも平面積の小さいものとされている。位置合わせマージンの寸法dは、マスクを形成する際に用いられる露光装置の位置合せ精度などに応じて決定されるものであり、通常3μm程度の寸法とされる。
【0012】
しかしながら、P型領域12上のコンタクト金属膜13と重なり合わない領域は、PN接合領域17aにおいてショットキー電極14とオーミックコンタクトを形成することができない無効領域となるので、半導体装置に余分な電力損失を生じさせるものとなってしまう。このため、図4(a)に示す半導体装置では、P型領域12上のコンタクト金属膜13と重なり合わない領域を小さくし、半導体装置の性能を向上させることが要求されていた。
【0013】
また、図4(a)に示す半導体装置では、コンタクト金属膜13の平面積を、少なくともコンタクト金属膜13を形成するためのマスクの位置合わせマージンの寸法dを考慮した面積分、P型領域12よりも小さくしなければならないことが、コンタクト金属膜13およびP型領域12の微細加工を行う際の妨げとなり、半導体装置上におけるショットキー接合領域17bの面積を十分に確保することができない場合があった。ショットキー接合領域17bの面積が小さいと、半導体装置の順方向電圧降下を十分に小さくできない場合がある。
【0014】
また、図4(a)〜図4(c)に示す半導体装置の製造方法では、製造工程を簡略化して、効率よく製造できる生産性に優れた方法とすることが望まれていた。
【0015】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、電界集中が生じにくくリーク電流を抑えることができ、PN接合領域における無効領域を小さくでき、ショットキー接合領域の面積を十分に確保でき、効率よく容易に製造できる高性能の半導体装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、電界集中が生じにくくリーク電流を抑えることができ、PN接合領域における無効領域を小さくでき、ショットキー接合領域の面積を十分に確保できる半導体装置を、効率よく容易に製造できる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
(1)SiCからなる第1導電型の半導体基板の一方の面に、前記半導体基板に第2導電型層がPN接合されてなるPN接合領域と、前記半導体基板にショットキー電極がショットキー接触されてなるショットキー接合領域とが設けられ、前記PN接合領域には、前記半導体基板上に設けられた前記第2導電型層を含む断面視台形状の凸状部と、前記凸状部の前記第2導電型層上にオーミック接触されたコンタクト層とが備えられ、前記ショットキー電極が、前記凸状部の側面と前記コンタクト層とを覆い、前記PN接合領域および前記ショットキー接合領域に連続して設けられていることを特徴とする半導体装置。
(2)前記ショットキー接合領域の前記半導体基板の表面の延在方向と前記凸状部の側面の延在方向とのなす角度が、100°〜135°の範囲であることを特徴とする(1)に記載の半導体装置。
(3)前記ショットキー接合領域の前記半導体基板と前記凸状部の側面との接する領域が、曲面からなることを特徴とする(1)または(2)に記載の半導体装置。
(4)前記第2導電型層の上面全面に前記コンタクト層が設けられていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の半導体装置。
(5)前記半導体基板の他方の面に、前記半導体基板にオーミック接触されたオーミック電極が設けられていることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の半導体装置。
(6)前記半導体基板が、第1導電型の第1SiC層と、前記第1SiC層上に形成され、前記第1SiC層よりも低濃度の第1導電型の不純物を含む第2SiC層とからなることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の半導体装置。
【0017】
(7)SiCからなる第1導電型の半導体基板の一方の面に、前記半導体基板に第2導電型層がPN接合されてなるPN接合領域と、前記半導体基板にショットキー電極がショットキー接触されてなるショットキー接合領域とが設けられた半導体装置を製造する方法であって、前記半導体基板上に、第2導電型のPN接合層と、前記PN接合層上にオーミック接触されたオーミック接触層とをこの順で形成する工程と、前記オーミック接触層上に、前記ショットキー接合領域を露出させるとともに前記PN接合領域を覆うマスクを形成して、少なくとも前記オーミック接触層と前記PN接合層とをエッチングすることにより、前記PN接合層からなる第2導電型層を含む断面視台形状の凸状部と、前記凸状部上の前記オーミック接触層からなるコンタクト層とを前記PN接合領域に形成し、前記マスクを除去するエッチング工程と、前記PN接合領域および前記ショットキー接合領域に連続して設けられ、前記凸状部の側面と前記コンタクト層とを覆い、前記ショットキー接合領域において前記半導体基板にショットキー接触された前記ショットキー電極を形成する工程とを備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
(8)前記エッチング工程を行うことにより、前記ショットキー接合領域の前記半導体基板の表面の延在方向と前記凸状部の側面の延在方向とのなす角度が、100°〜135°の範囲である前記凸状部を形成することを特徴とする(6)に記載の半導体装置の製造方法。
(9)前記エッチング工程を行うことにより、前記ショットキー接合領域の前記半導体基板と前記凸状部の側面との接する領域が、曲面となるようにすることを特徴とする(7)または(9)に記載の半導体装置の製造方法。
【0018】
(10)前記エッチング工程が、前記オーミック接触層をエッチングして前記PN接合層を露出させた後、前記PN接合層をCFとOとの混合ガスを用いて前記半導体基板に達するまでドライエッチングすることにより前記凸状部を形成する工程を含むことを特徴とする(7)〜(9)のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
(11)前記エッチング工程が、前記PN接合層を前記半導体基板に達するまでエッチングした後、平面視で前記凸状部の頂部と重ならない領域に残存する前記オーミック接触層を、ウェットエッチングにより除去する工程を含むことを特徴とする(6)〜(9)のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
(12)前記エッチング工程において、前記第2導電型層の上面全面に前記コンタクト層を残すことを特徴とする(7)〜(11)のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【0019】
(13)前記PN接合層を、イオン注入法を用いて形成することを特徴とする(7)〜(12)のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
(14)前記PN接合層を、エピタキシャル成長法を用いて形成することを特徴とする(7)〜(13)のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
(15)前記半導体基板の他方の面に、前記半導体基板にオーミック接触されたオーミック電極を設ける工程を備えることを特徴とする(7)〜(14)のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明の半導体装置は、SiCからなる第1導電型の半導体基板の一方の面に、前記半導体基板に第2導電型層がPN接合されてなるPN接合領域と、前記半導体基板にショットキー電極がショットキー接触されてなるショットキー接合領域とが設けられ、PN接合領域には、半導体基板上に設けられた前記第2導電型層を含む断面視台形状の凸状部と、前記凸状部の前記第2導電型層上にオーミック接触されたコンタクト層とが備えられ、前記ショットキー電極が、前記凸状部の側面と前記コンタクト層とを覆い、前記PN接合領域および前記ショットキー接合領域に連続して設けられているものであるので、半導体基板と第2導電型層とのPN接合面の形状が平面状になるとともに、半導体基板とショットキー電極とのショットキー接合面とPN接合面とが、略直線状に配置されるものとなり、逆電圧印加時の空乏層に広がりは、PN接合領域とショットキー接合領域とで半導体基板の深さ方向における差がほとんどなく、空乏層の厚みが略均一なものとなる。したがって、本発明の半導体装置は、電界集中が生じにくく、リーク電流の発生を抑えることができ、信頼性の高いものとなる。
【0021】
また、本発明の半導体装置は、PN接合領域に、半導体基板上に設けられた前記第2導電型層を含む凸状部と、前記凸状部の前記第2導電型層上にオーミック接触されたコンタクト層とが備えられているものであるので、半導体基板上に、第2導電型のPN接合層と、PN接合層にオーミック接触されたオーミック接触層とをこの順で形成し、オーミック接触層上に、前記ショットキー接合領域を露出させるとともに前記PN接合領域を覆うマスクを形成して、少なくともオーミック接触層とPN接合層とをエッチングする方法により、凸状部とコンタクト層とをPN接合領域に形成できるものとなる。
【0022】
よって、本発明の半導体装置は、コンタクト層を形成するために、コンタクト層となる層上に第2導電型層と平面視で重なる領域を覆うマスクを形成する場合のように、コンタクト層を形成するためのマスクの位置合わせマージンの寸法を考慮した面積分、コンタクト層の平面積を第2導電型層よりも小さくする必要はなく、第2導電型層上のコンタクト層と重なり合わない領域を小さくすることができる。したがって、PN接合領域における無効領域を小さくすることができ、低損失で高性能な半導体装置とすることができる。
また、本発明の半導体装置では、コンタクト層を形成するためのマスクの位置合わせマージンの寸法を考慮した面積分、コンタクト層の平面積を第2導電型層よりも小さくする必要がないので、コンタクト層および第2導電型層の微細加工が容易となり、ショットキー接合領域の面積を十分に確保することが可能となり、半導体装置の順方向電圧降下を十分に小さくできる。
【0023】
また、本発明の半導体装置の製造方法は、半導体基板上に、第2導電型のPN接合層と、前記PN接合層上にオーミック接触されたオーミック接触層とをこの順で形成する工程と、前記オーミック接触層上に、前記ショットキー接合領域を露出させるとともに前記PN接合領域を覆うマスクを形成して、少なくとも前記オーミック接触層と前記PN接合層とをエッチングすることにより、前記PN接合層からなる第2導電型層を含む断面視台形状の凸状部と、前記凸状部上の前記オーミック接触層からなるコンタクト層とを前記PN接合領域に形成し、前記マスクを除去するエッチング工程と、前記PN接合領域および前記ショットキー接合領域に連続して設けられ、前記凸状部の側面と前記コンタクト層とを覆い、前記ショットキー接合領域において前記半導体基板にショットキー接触された前記ショットキー電極を形成する工程とを備える方法であるので、エッチング工程において形成されるマスクを、第2導電型層の形成時にもコンタクト層の形成時にも用いることができ、第2導電型層の形成時とコンタクト層の形成時とにおいてそれぞれマスクを形成する場合と比較して、製造工程を簡略化することができ、効率よく製造できる。
【0024】
また、本発明の半導体装置の製造方法では、オーミック接触層上に、ショットキー接合領域を露出させるとともに前記PN接合領域を覆うマスクを形成して、少なくとも前記オーミック接触層と前記PN接合層とをエッチングすることにより、前記PN接合層からなる第2導電型層を含む凸状部と、前記凸状部上の前記オーミック接触層からなるコンタクト層とを前記PN接合領域に形成するので、コンタクト層を形成するためのマスクの位置合わせマージンの寸法を考慮した面積分、コンタクト層の平面積を第2導電型層よりも小さくする必要がなく、PN接合領域における無効領域を小さくすることができ、低損失で高性能な半導体装置とすることができるとともに、コンタクト層および第2導電型層の微細加工が容易となり、ショットキー接合領域の面積を十分に確保することが可能となり、半導体装置の順方向電圧降下を十分に小さくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において参照する図面に図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の半導体装置の寸法関係とは異なっている場合がある。
「半導体装置」
図1(a)は、本発明の半導体装置の一例であるショットキーバリアダイオード(SBD)を示した断面図である。また、図1(b)〜図1(e)は、図1(a)に示す半導体装置の製造工程の一例を説明するための工程図である。
【0026】
図1(a)において、符号1はN型(第1導電型)の半導体基板を示している。
半導体基板1は、低抵抗のN+SiC層1a(第1SiC層)上に、N型エピタキシャル層を成長させることにより設けられたNSiC層1b(第2SiC層)が形成されてなるものである。NSiC層1bは、N+SiC層1aよりも低濃度のN型不純物を含むものである。
半導体基板1のNSiC層1b側の面(一方の面)には、半導体基板1にP型層2(第2導電型層)がPN接合されてなるPN接合領域7aと、半導体基板1にショットキー電極4がショットキー接触されてなるショットキー接合領域7bとが設けられている。
【0027】
図1(a)に示すように、PN接合領域7aには、断面視台形状の凸状部2aと、コンタクト層3とが備えられている。本実施形態においては、凸状部2aは、半導体基板1からなり、半導体基板1のNSiC層1b側の面から突出して形成された断面視台形状の凸部1cと、凸部1cの頂部上の全面に設けられた断面視台形状のP型層2とから形成されている。P型層2は、半導体基板1のNSiC層1bにAlやBなどのP型不純物が注入拡散されてなるものである。
【0028】
また、ショットキー接合領域7aの半導体基板1の表面の延在方向と凸状部2aの側面の延在方向とのなす角度θは、鈍角とされており、100°〜135°の範囲とされていることが好ましい。上記のなす角度θが100°〜135°の範囲内である場合、より効果的に電界集中を防止することができ、リーク電流の発生を効果的に抑えることができ、より一層信頼性の高いものとなるとともに、凸状部2aとコンタクト層3とによって形成される段差に起因するショットキー電極4の形成不良を効果的に防止でき、しかも、P型層2上のコンタクト層3と重なり合わない領域を十分に小さくできる。なお、上記のなす角度θが180°に近い程、リーク電流の発生や段差に起因する形成不良を効果的に防止できる。また、上記のなす角度θが90°に近い程、P型層2上のコンタクト層3と重なり合わない領域を小さくすることができ、PN接合領域における無効領域を小さくすることができる。
【0029】
また、図1(a)に示すように、コンタクト層3は、P型層2のコンタクト層3側の面(上面)の全面に設けられており、凸状部2aのP型層2上にオーミック接触されている。コンタクト層3は、P型層2とオーミックコンタクトを形成するものであり、TiとAlとを含む合金などの金属からなるものである。コンタクト層3が、TiとAlとを含む合金からなるものである場合、コンタクト層3の抵抗値が十分に低いものとなり、P型層2に良好にオーミック接合するものとなる。
【0030】
また、図1(a)に示すように、ショットキー電極4は、凸状部2aの側面とコンタクト層3の側面および上面とを覆い、PN接合領域7aおよびショットキー接合領域7bに連続して設けられている。そして、図1(a)に示す半導体装置では、PN接合領域7aにおいて、P型層2とショットキー電極4との間にコンタクト層3が配置されたものとなっている。ショットキー電極4は、MoやTiなどの金属からなるものであり、Moを主成分とする金属からなるものであることが好ましい。ショットキー電極4がMoを主成分とする金属からなるものである場合、半導体基板1のNSiC層1bに良好にショットキー接触するものとなる。
【0031】
さらに、コンタクト層3が、TiとAlとを含む合金からなり、ショットキー電極4が、Moを主成分とする金属からなるものである場合、コンタクト層3とショットキー電極4との電気的な接続も良好なものとなる。
また、ショットキー電極4の半導体基板1と反対側の面(図1(a)においては上側の面)には、Alを含む金属からなる表面パッド電極(図示略)が形成され、表面パッド電極上には、所定の形状で感光性ポリイミド膜などからなるパッシベーション膜(図示略)が形成されている。
【0032】
また、図1(a)に示すように、半導体基板1のN+SiC層11a側の面(他方の面)に、半導体基板1のN+SiC層11aにオーミック接触されたオーミック電極5が設けられている。オーミック電極5は、Niを主成分とする金属などの金属からなるものである。
また、オーミック電極5の半導体基板1と反対側の面(図1(a)においては下側の面)には、Ni層とAg層などの金属からなる裏面パッド電極(図示略)が形成されている。
【0033】
「半導体装置の製造方法」
図1(a)に示す半導体装置は、例えば、以下に示す方法により製造できる。
まず、N+SiC層1aからなる半導体基板上に、N型エピタキシャル層を成長させてNSiC層1bを形成し、N+SiC層1a上にNSiC層1bを備えるN型の半導体基板1とする。
次に、半導体基板1のNSiC層1b上に、イオン注入法を用いてPN接合層(図示略)を形成する。具体的には、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法で形成した酸化膜をマスクとして、半導体基板1のNSiC層1b上の所望の領域に、AlやBなどのP型不純物をイオン注入する。その後、酸化膜からなるマスクを除去する。
次いで、半導体基板1にイオン注入されたP型不純物を拡散させて活性化するために、高温で熱処理を行う。ここでの熱処理は、例えば、Arなどの不活性ガス雰囲気中または真空中で1700℃程度の温度で行う。このことにより、半導体基板1上の所望の領域に半導体基板1のNSiC層1bにPN接合されたP型のPN接合層が形成される。
【0034】
その後、半導体基板1のN+SiC層1a側の面に、例えば、スパッタ法によりNiを主成分とする金属からなる金属膜を形成する。次いで、良好なオーミックコンタクトを得るために、例えばArなどの不活性ガス雰囲気中1000℃程度の温度で熱処理を行う。このことにより、図1(b)に示すように、半導体基板1のN+SiC層1aにオーミック接触されたオーミック電極5を形成する。
【0035】
その後、PN接合層の形成されている半導体基板1のNSiC層1b側の面に、例えば、スパッタ法によりTiとAlとを含む合金からなる金属膜を形成する。次いで、良好なオーミックコンタクトを得るために、例えばArなどの不活性ガス雰囲気中900℃程度の温度で熱処理を行う。このことにより、PN接合層上にオーミック接触されたオーミック接触層3aを形成する。
【0036】
(エッチング工程)
次に、オーミック接触層3aとPN接合層と半導体基板1のNSiC層1bの一部とをエッチングするエッチング工程を行う。
エッチング工程においては、まず、オーミック接触層3a上にレジスト層を形成し、リソグラフィ技術を用いてパターニングを行い、図1(b)に示すように、ショットキー接合領域7bを露出させるとともにPN接合領域7aを覆うレジストパターンからなるマスク6を形成する。
【0037】
その後、オーミック接触層3aを、例えばClガスを用いるRIE(Reactive Ion Etching)などのドライエッチングによりエッチングして、ショットキー接合領域7bのPN接合層を露出させる。
次いで、PN接合層と半導体基板1のNSiC層1bの一部とを、例えばCFとOとの混合ガスを用いてドライエッチングする。このとき、エッチング速度などのエッチング条件を調整する方法などにより、図1(b)に示すように、半導体基板1のNSiC層1bからなる凸部1cと、PN接合層からなるP型層2とからなり、ショットキー接合領域7aの半導体基板1の表面の延在方向と凸状部2aの側面の延在方向とのなす角度θが100°〜135°の範囲である断面視台形状の凸状部2aを、PN接合領域7aに形成する。
【0038】
なお、本実施形態においては、PN接合層とともにNSiC層1bの一部をドライエッチングして除去することにより、半導体基板1のNSiC層1bの一部を含む凸状部2aを形成する場合を例に挙げて説明したが、ここでのドライエッチングは、PN接合層を除去することができればよく、少なくとも半導体基板1に達するまで行えばよい。したがって、ここでのドライエッチングにおいて、半導体基板1は除去されなくてもよいが、ショットキー接合領域7bのPN接合層を完全に除去するために、NSiC層1bの一部を除去することが好ましい。しかし、除去されるNSiC層1bの厚みが多くなると、半導体基板1とショットキー電極4とのショットキー接合面と、半導体基板1とP型層2とのPN接合面との間に段差が形成されて、電界集中が生じやすくなる恐れがある。したがって、除去されるNSiC層1bの厚みは、ショットキー接合領域7bのPN接合層を完全に除去しうる範囲で、できるだけ薄くすることが好ましい。なお、ここでのドライエッチングにおいて、半導体基板1が除去されない場合、凸状部2aは、P型層2のみからなるものとされる。
【0039】
このようにして、凸状部2aを形成した後、平面視で凸状部2aの頂部と重ならない領域に残存するオーミック接触層3aを、ウェットエッチングにより除去する。ここでのウェットエッチングでは、図1(c)に示すように、P型層2上の全面にオーミック接触層3aを残す。このことにより、PN接合領域7aにおいて、凸状部2aを構成するP型層2のコンタクト層3側の面の全面に、オーミック接触層3aからなるコンタクト層3が形成される。
その後、図1(d)に示すように、マスク6を除去する。
【0040】
続いて、コンタクト層3までの各層の形成された図1(d)に示す半導体基板1のNSiC層1b側の面に、ショットキー電極4となる金属膜として、例えばMoやTiなどの金属からなる金属膜を蒸着法またはスパッタ法により形成する。次いで、ショットキー電極4となる金属膜上にレジスト層を形成し、リソグラフィ技術を用いてパターニングを行い、レジストパターンからなるマスクを形成する。その後、ショットキー電極4となる金属膜をウェットエッチングして、PN接合領域7aおよびショットキー接合領域7bに連続して設けられ、凸状部2aの側面とコンタクト層3の側面および上面とを覆う形状にパターニングする。その後、ショットキー障壁高さ(φB)を制御するために、例えばArなどの不活性ガス雰囲気中600℃程度の温度で熱処理を行い、図1(e)に示すように、ショットキー接合領域7bにおいて半導体基板1のNSiC層1bにショットキー接触されたショットキー電極4とする。
【0041】
次に、ショットキー電極4上に、表面パッド電極となる金属膜として、例えばAlなどの金属膜をスパッタ法などにより形成し、レジストパターンからなるマスクを用いてエッチングを行い、所定の形状の表面パッド電極(図示略)を形成する。
その後、表面パッド電極上に、感光性ポリイミド膜を塗布し、所望のパターンにより露光、現像することにより、所定の形状のパッシベーション膜(図示略)を形成する。
続いて、オーミック電極5の半導体基板1と反対側の面(図1(a)においては下側の面)に、例えばNi層とAg層とからなる金属膜をスパッタ法などにより形成し、裏面パッド電極(図示略)を形成する。
以上のようにして、図1(a)に示す半導体装置が得られる。
【0042】
図1(a)に示す半導体装置は、半導体基板1のNSiC層1b側の面に、半導体基板1にP型層2がPN接合されてなるPN接合領域7aと、半導体基板1にショットキー電極4がショットキー接触されてなるショットキー接合領域7bとが設けられ、PN接合領域7aに、半導体基板1上に設けられたP型層2を含む断面視台形状の凸状部2aと、凸状部2aのP型層2上にオーミック接触されたコンタクト層3とが備えられ、ショットキー電極4が、凸状部2aの側面とコンタクト層3とを覆い、PN接合領域7aおよびショットキー接合領域7bに連続して設けられているものであるので、半導体基板1とP型層2とのPN接合面の形状が平面状になるとともに、半導体基板1とショットキー電極4とのショットキー接合面とPN接合面とが、略直線状に配置されるものとなる。したがって、本実施形態の半導体装置では、図1(a)において点線で示されるように、逆電圧印加時の空乏層の広がりは、PN接合領域7aとショットキー接合領域7bとで半導体基板1の深さ方向における差がほとんどないものとなる。よって、本実施形態の半導体装置は、電界集中が生じにくく、リーク電流の発生を抑えることができ、信頼性の高いものとなる。
【0043】
また、図1(a)に示す半導体装置は、PN接合領域7aに、半導体基板1上に設けられたP型層2を含む凸状部2aと、凸状部2aのP型層2上にオーミック接触されたコンタクト層3とが備えられているものであるので、半導体基板1上に、第2導電型のPN接合層と、PN接合層にオーミック接触されたオーミック接触層3aとをこの順で形成し、オーミック接触層3a上に、ショットキー接合領域7bを露出させるとともにPN接合領域7aを覆うマスク6を形成して、少なくともオーミック接触層3aとPN接合層とをエッチングする方法により、凸状部2aとコンタクト層3とをPN接合領域7aに形成できる。
【0044】
よって、図1(a)に示す半導体装置は、コンタクト層3を形成するためのマスクの位置合わせマージンの寸法を考慮した面積分、コンタクト層3の平面積をP型層2よりも小さくする必要はなく、P型層2上のコンタクト層3と重なり合わない領域を小さくすることができる。したがって、PN接合領域7aにおける無効領域を小さくすることができ、低損失で高性能な半導体装置とすることができる。
さらに、図1(a)に示す半導体装置では、P型層2のコンタクト層3側の面の全面にコンタクト層3が設けられているので、PN接合領域7aにおける無効領域が非常に小さく、より一層、低損失で高性能な半導体装置とすることができる。
また、図1(a)に示す半導体装置では、コンタクト層3を形成するためのマスクの位置合わせマージンの寸法を考慮した面積分、コンタクト層3の平面積をP型層2上よりも小さくする必要がないので、コンタクト層3およびP型層2の微細加工が容易となり、ショットキー接合領域7bの面積を十分に確保することが可能となり、半導体装置の順方向電圧降下を十分に小さくできる。
【0045】
また、本実施形態の半導体装置の製造方法によれば、オーミック接触層3aとPN接合層と半導体基板1のNSiC層1bの一部とをエッチングする際に形成するマスクが1つで済むので、オーミック接触層3aとPN接合層とNSiC層1bとをエッチングする際にそれぞれマスクを形成する場合と比較して、製造工程を簡略化することができ、効率よく製造できる。
【0046】
「他の例」
本発明の半導体装置は、上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、図2に示す半導体装置とすることができる。図2は、本発明の半導体装置の他の例であるショットキーバリアダイオード(SBD)を示した断面図である。
図2に示す半導体装置が、図1(a)に示す半導体装置と異なるところは、ショットキー接合領域7bの半導体基板1と凸状部2aの側面との接する領域1dが、図1(a)に示す半導体装置では略平面からなるものとされているのに対し、図2に示す半導体装置では曲面からなるものとされているところのみである。したがって、図2に示す半導体装置において、図1(a)に示す半導体装置と同じ部材については、同じ符号を付し、説明を省略する。
図2に示す半導体装置は、エッチング工程において、エッチング速度などのエッチング条件を調整する方法などにより、ショットキー接合領域7bの半導体基板1と凸状部2aの側面との接する領域1dが、曲面となるようにすること以外は、図1(a)に示す半導体装置と同様にして製造できる。
【0047】
図2に示す半導体装置においては、ショットキー接合領域7bの半導体基板1と凸状部2aの側面との接する領域1dが、曲面からなるものであるので、ショットキー接合領域7bの半導体基板1と凸状部2aの側面との接する領域1dがアーク(電弧)となり、ショットキー接合領域7bの半導体基板1と凸状部2aの側面との接する領域1dでの電界集中がさらに緩和され、図2において点線で示されるように、逆電圧印加時の空乏層に広がりは、PN接合領域7aとショットキー接合領域7bとで半導体基板1の深さ方向における差がより一層少なく、空乏層の厚みがより均一なものとなる。したがって、本実施形態の半導体装置によれば、ショットキー接合領域7bの縁部におけるリーク電流の発生を、より効果的に抑えることができ、より一層信頼性を向上させることができる。
【0048】
また、図2に示す半導体装置においても、図1(a)に示す半導体装置と同様に、コンタクト層3を形成するためのマスクの位置合わせマージンの寸法を考慮した面積分、コンタクト層3の平面積をP型層2よりも小さくする必要はないので、P型層2上のコンタクト層3と重なり合わない領域を小さくすることができ、PN接合領域7aにおける無効領域を小さくすることができ、低損失で高性能な半導体装置とすることができるとともに、コンタクト層3およびP型層2の微細加工が容易となり、ショットキー接合領域7bの面積を十分に確保することが可能となり、半導体装置の順方向電圧降下を十分に小さくできる。
【0049】
また、図2に示す半導体装置の製造方法においても、図1(a)に示す半導体装置の製造方法と同様に、オーミック接触層3aとPN接合層と半導体基板1のNSiC層1bの一部とをエッチングする際に形成するマスクが1つで済むので、容易に効率よく製造できる。
【0050】
さらに、上述した実施形態においては、P型層2となるPN接合層を、イオン注入法を用いて形成する方法を例に挙げて説明したが、P型層2となるPN接合層は、エピタキシャル成長法を用いて形成してもよい。
【0051】
「実施例」
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
(実施例1)
図1(a)に示す実施例1のショットキーバリアダイオードを次のようにして製造した。まず、不純物濃度2E18cm−3のN+SiC層1aからなる半導体基板1上に、N型エピタキシャル層を成長させて不純物濃度1E16cm−3のNSiC層1bを形成し、N+SiC層1aとNSiC層1bとを備えるN型の半導体基板1を得た。次に、半導体基板1のNSiC層1b上に、イオン注入法を用いてPN接合層(図示略)を形成した。具体的には、CVD(Chemical Vapor Deposition)法で形成した酸化膜をマスクとして、半導体基板1のNSiC層1b上に、アルミニウムからなるP型不純物を600℃の温度で不純物濃度2E19cm−3になるようにイオン注入した。その後、酸化膜からなるマスクを除去した。
【0052】
次いで、半導体基板1にイオン注入されたP型不純物を拡散させて活性化するために、熱処理を行った。ここでの熱処理は、Arガス雰囲気中で1700℃の温度で行った。このことにより、半導体基板1上の所望の領域にNSiC層1bにPN接合されたP型のPN接合層を形成した。
【0053】
その後、半導体基板1のN+SiC層1a側の面に、スパッタ法によりNiからなる金属膜を形成し、良好なオーミックコンタクトを得るために、Arガス雰囲気中1000℃の温度で熱処理を行うことにより、半導体基板1のN+SiC層1aにオーミック接触されたオーミック電極5を形成した。
その後、半導体基板1のNSiC層1b側の面に、スパッタ法によりTiとAlとを含む合金からなる金属膜を形成し、良好なオーミックコンタクトを得るために、Arガス雰囲気中900℃の温度で熱処理を行うことにより、PN接合層にオーミック接触されたオーミック接触層3aを形成した。
【0054】
(エッチング工程)
次に、オーミック接触層3a上に、ショットキー接合領域7bを露出させるとともにPN接合領域7aを覆うレジストパターンからなるマスク6を形成し、オーミック接触層3aを、Clガスを用いるRIEによりエッチングして、ショットキー接合領域7bのPN接合層を露出させた。
次いで、PN接合層と半導体基板1のNSiC層1bの一部とを、CFとOとの混合ガスを用いてドライエッチングし、NSiC層1bからなる凸部1cと、PN接合層からなるP型層2とからなり、ショットキー接合領域7aの半導体基板1の表面の延在方向と凸状部2aの側面の延在方向とのなす角度が100°である断面視台形状の凸状部2aを、PN接合領域7aに形成した。なお、ショットキー接合領域7bの半導体基板1と凸状部2aの側面との接する領域は、略平面からなるものであった。また、このようにして得られたP型層2において、隣接するP型層2間の間隔は5μmであった。
【0055】
このようにして、凸状部2aを形成した後、平面視で凸状部2aの頂部と重ならない領域に残存するオーミック接触層3aを、ウェットエッチングにより除去し、PN接合領域7aにおいて、P型層2のコンタクト層3側の面の全面に、オーミック接触層3aからなるコンタクト層3を形成した。その後、マスク6を除去した。
【0056】
続いて、半導体基板1のNSiC層1b側の面に、Moからなる金属膜を蒸着法により形成し、レジストパターンからなるマスクを用いてウェットエッチングし、PN接合領域7aおよびショットキー接合領域7bに連続して設けられ、凸状部2aの側面とコンタクト層3の側面および上面とを覆う形状にパターニングする。その後、ショットキー障壁高さ(φB)を制御するために、Arガス雰囲気中600℃の温度で熱処理を行い、ショットキー接合領域7bにおいてNSiC層1bにショットキー接触されたショットキー電極4とした。
【0057】
次に、ショットキー電極4上に、Al膜をスパッタ法により形成し、レジストパターンからなるマスクを用いてエッチングを行い、所定の形状の表面パッド電極を形成した。その後、表面パッド電極上に、感光性ポリイミド膜を塗布し、所望のパターンにより露光、現像することにより、所定の形状のパッシベーション膜を形成した。
続いて、オーミック電極5の半導体基板1と反対側の面に、Ni層とAg層とからなる金属膜をスパッタ法により形成し、裏面パッド電極を形成した。
以上のようにして、実施例1の半導体装置を得た。
【0058】
(比較例)
図4(a)に示す比較例のショットキーバリアダイオードを次のようにして製造した。まず、実施例1と同様にして、N+SiC層11aとNSiC層11bとを備えるN型の半導体基板11を得た。そして、N型半導体基板11上にマスクを形成してから、実施例1と同様に、P型不純物をイオン注入して熱処理を行うことにより、N型半導体基板11のPN接合領域17aに埋め込まれた断面視矩形状のP型領域12を形成した。なお、このようにして得られたP型領域12において、隣接するP型領域12間の間隔は5μmであった。
その後、実施例1と同様にして、オーミック電極15を形成した。
【0059】
続いて、P型領域12上に、実施例1のコンタクト層3と同様の金属膜を形成し、実施例1と同様にして、熱処理を行った。次に、金属膜上に、P型領域12と平面視で重なる領域を覆うマスクを形成し、金属膜をエッチングしてパターニングして、コンタクト金属膜13を形成した。なお、金属膜を形成するためのマスクの位置合わせマージンの寸法dは、3μmとした。
【0060】
その後、実施例1のショットキー電極4と同様にして、PN接合領域17aおよびショットキー接合領域17bに連続して設けられ、コンタクト金属膜13上を覆い、ショットキー接合領域17bにおいてN型半導体基板11にショットキー接触されたショットキー電極14を形成した。
その後、実施例1と同様にして、表面パッド電極、パッシベーション膜、裏面パッド電極を形成した。
以上のようにして、比較例の半導体装置を得た。
【0061】
このようにして得られた実施例1および比較例の隣接するコンタクト層3(コンタクト金属膜13)間の寸法を調べた。
その結果、実施例は6μmであり、比較例は11μmであった。
また、実施例1および比較例の半導体装置の順方向電流と順方向電圧降下との関係を調べた。その結果を図3(a)に示す。図3(a)は、実施例1および比較例の半導体装置の順方向電流と順方向電圧降下との関係を示したグラフである。
【0062】
図3(a)に示すように、実施例1では比較例と比較して、順方向電圧降下が小さくなっている。これは、実施例では比較例と比較して、コンタクト層3およびP型層2を微細化でき、コンタクト層3(コンタクト金属膜13)間の寸法を大きくすることができ、ショットキー接合領域7bの面積を十分に確保できたためである。
【0063】
(実施例2)
図2に示す実施例2のショットキーバリアダイオードを次のようにして製造した。
すなわち、エッチング工程において、エッチング速度などのエッチング条件を調整する方法などにより、ショットキー接合領域7bの半導体基板1と凸状部2aの側面との接する領域1dが、曲面となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の半導体装置を得た。
【0064】
このようにして得られた実施例2および実施例1、比較例の半導体装置の逆方向電流と逆方向電圧との関係を調べた。その結果を図3(b)に示す。図3(b)は、実施例2および実施例1、比較例の半導体装置の逆方向電流と逆方向電圧との関係を示したグラフである。
【0065】
図3(b)に示すように、実施例2および実施例1では比較例と比較して、逆方向電圧降下が大きくなっており、電界集中が生じにくく、リーク電流が小さいことを示している。
さらに、ショットキー接合領域7bの半導体基板1と凸状部2aの側面との接する領域1dが曲面である実施例2は、実施例1よりも逆方向電圧降下が大きくなっており、リーク電流がより小さいことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】図1(a)は、本発明の半導体装置の一例であるショットキーバリアダイオード(SBD)を示した断面図である。また、図1(b)〜図4(e)は、図4(a)に示す半導体装置の製造工程の一例を説明するための工程図である。
【図2】図2は、本発明の半導体装置の他の例であるショットキーバリアダイオード(SBD)を示した断面図である。
【図3】図3(a)は、実施例1および比較例の半導体装置の順方向電流と順方向電圧降下との関係を示したグラフであり、図3(b)は、実施例2および比較例の半導体装置の逆方向電流と逆方向電圧との関係を示したグラフである。
【図4】図4(a)は、従来の半導体装置の一例を示した断面図である。また、図4(b)および図4(c)は、図4(a)に示す半導体装置の製造工程の一例を説明するための工程図である。
【符号の説明】
【0067】
1・・・半導体基板、11・・・N型半導体基板、1a、11a・・・N+SiC層、1b、11b・・・NSiC層、1c・・・凸部、2・・・P型層(第2導電型層)、2a・・・凸状部、3・・・コンタクト層、3a・・・オーミック接触層、4、14・・・ショットキー電極、5、15・・・オーミック電極、6・・・マスク、7a、17a・・・PN接合領域、7b、17b・・・ショットキー接合領域、12・・・P型領域、13・・・コンタクト金属膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiCからなる第1導電型の半導体基板の一方の面に、前記半導体基板に第2導電型層がPN接合されてなるPN接合領域と、前記半導体基板にショットキー電極がショットキー接触されてなるショットキー接合領域とが設けられ、
前記PN接合領域には、前記半導体基板上に設けられた前記第2導電型層を含む断面視台形状の凸状部と、前記凸状部の前記第2導電型層上にオーミック接触されたコンタクト層とが備えられ、
前記ショットキー電極が、前記凸状部の側面と前記コンタクト層とを覆い、前記PN接合領域および前記ショットキー接合領域に連続して設けられていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記ショットキー接合領域の前記半導体基板の表面の延在方向と前記凸状部の側面の延在方向とのなす角度が、100°〜135°の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ショットキー接合領域の前記半導体基板と前記凸状部の側面との接する領域が、曲面からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2導電型層の上面全面に前記コンタクト層が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体基板の他方の面に、前記半導体基板にオーミック接触されたオーミック電極が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体基板が、第1導電型の第1SiC層と、前記第1SiC層上に形成され、前記第1SiC層よりも低濃度の第1導電型の不純物を含む第2SiC層とからなることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項7】
SiCからなる第1導電型の半導体基板の一方の面に、前記半導体基板に第2導電型層がPN接合されてなるPN接合領域と、前記半導体基板にショットキー電極がショットキー接触されてなるショットキー接合領域とが設けられた半導体装置を製造する方法であって、
前記半導体基板上に、第2導電型のPN接合層と、前記PN接合層上にオーミック接触されたオーミック接触層とをこの順で形成する工程と、前記オーミック接触層上に、前記ショットキー接合領域を露出させるとともに前記PN接合領域を覆うマスクを形成して、少なくとも前記オーミック接触層と前記PN接合層とをエッチングすることにより、前記PN接合層からなる第2導電型層を含む断面視台形状の凸状部と、前記凸状部上の前記オーミック接触層からなるコンタクト層とを前記PN接合領域に形成し、前記マスクを除去するエッチング工程と、
前記PN接合領域および前記ショットキー接合領域に連続して設けられ、前記凸状部の側面と前記コンタクト層とを覆い、前記ショットキー接合領域において前記半導体基板にショットキー接触された前記ショットキー電極を形成する工程とを備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記エッチング工程を行うことにより、前記ショットキー接合領域の前記半導体基板の表面の延在方向と前記凸状部の側面の延在方向とのなす角度が、100°〜135°の範囲である前記凸状部を形成することを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記エッチング工程を行うことにより、前記ショットキー接合領域の前記半導体基板と前記凸状部の側面との接する領域が、曲面となるようにすることを特徴とする請求項6または請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記エッチング工程が、前記オーミック接触層をエッチングして前記PN接合層を露出させた後、前記PN接合層をCFとOとの混合ガスを用いて前記半導体基板に達するまでドライエッチングすることにより前記凸状部を形成する工程を含むことを特徴とする請求項7〜請求項9のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記エッチング工程が、前記PN接合層を前記半導体基板に達するまでエッチングした後、平面視で前記凸状部の頂部と重ならない領域に残存する前記オーミック接触層を、ウェットエッチングにより除去する工程を含むことを特徴とする請求項7〜請求項10のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記エッチング工程において、前記第2導電型層の上面全面に前記コンタクト層を残すことを特徴とする請求項7〜請求項11のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記PN接合層を、イオン注入法を用いて形成することを特徴とする請求項7〜請求項12のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記PN接合層を、エピタキシャル成長法を用いて形成することを特徴とする請求項7〜請求項12のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記半導体基板の他方の面に、前記半導体基板にオーミック接触されたオーミック電極を設ける工程を備えることを特徴とする請求項7〜請求項14のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−123741(P2010−123741A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−295826(P2008−295826)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】