説明

半導体装置の製造方法および半導体装置の製造装置

【課題】めっき槽内の結晶物の発生を抑制することを目的とする。
【解決手段】半導体装置基板6をめっき液1から引き上げた後、めっき槽内に加湿された不活性ガスを導入することにより、めっき槽に付着しためっき液1が乾燥することを抑制できるため、めっき槽内の結晶物の発生を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置基板に電解めっきにより配線材である銅を成膜する半導体装置の製造方法および半導体装置の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の高集積化、高機能化及び高速化に伴って、半導体装置の製造プロセスにおいて、配線遅延の問題から、配線材に、従来のアルミからより抵抗の低い銅を用いるプロセスが主流となってきている。この銅配線技術には、絶縁膜に予め所望の配線溝をドライエッチ法により形成し、そこにスパッタ法によりシード層と呼ばれる銅の薄膜を成膜した後、電解めっき法により銅を埋め込み、余剰な銅を化学的機械研磨法(CMP)により除去するダマシン法が用いられている。半導体装置の微細化により、ダマシン工程で発生するパーティクルも、より微少なサイズの抑制が求められており、電解めっき法においても、成膜過程で半導体装置基板に付着するパーティクルは、配線溝への銅の埋め込み不良につながり、また、成膜後に付着するパーティクルにおいては、その後のCMP処理の中でスクラッチの発生源となり半導体装置の配線ショート不良の原因となる。
【0003】
従来、電解めっき工程にて発生するパーティクルや埋め込み不良などの膜の欠陥を抑制する技術については、種々の方法が提案されている。
以下、図2を用いて、従来技術の銅の電解めっき装置について説明する。
【0004】
図2は従来の半導体装置の製造に用いる電解めっき装置の構成を示す図である。
図2に示すように、従来技術の電解めっき装置は、硫酸銅を主成分とするめっき液101を用い、このめっき液101を循環させるために、内槽102、外槽103、タンク104、及びポンプ105により構成される。また、図には記載していないが、循環中に水分の蒸発などによりめっき液101の濃度が変わらないように、自動で濃度を補正する機能を有することが一般的である。また、被めっき体である半導体装置基板106を、めっき液101に浸漬させるために、昇降と回転機構を伴った保持部107を有している。また、電解めっきを行うために、電源108を有し、内槽102のめっき液101中に半導体装置基板106(カソード)と平行にアノード電極となる銅板109を設置し、ここに通電することでめっき処理が施される。また、図2には記載していないが、外槽103内の酸などを含む雰囲気が、外槽103内から外に拡散しないように、外槽103内を排気する排気管が設けているのが一般的である。ここで、従来技術が着眼した課題は、半導体装置基板106面に銅を成膜していく過程で、表面の化学反応にて発生する気泡である。この気泡は、半導体装置基板106の配線溝への正常な銅の埋め込みの妨げとなり埋め込み不良につながる。そこで、解決手段として、保持部107に超音波を発信する圧電素子110を取付け、半導体装置基板106に超音波を伝えることで、気泡を効率的に半導体装置基板106から離脱させる方法を提案している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−259465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術にてめっき処理を行った半導体装置基板の出来栄えを調査したところ、半導体装置基板106の周辺に、微少なパーティクルが付着していることがわかった。このパーティクルは、その後の化学的機械研磨(CMP)処理でスクラッチとなり、半導体装置の配線間ショートの原因になり課題になっている。このパーティクルについて詳細に調査した結果、めっき液101に用いる硫酸銅が結晶化した五水和硫酸銅であることが分かった。この結晶物の発生源について、めっき槽内を調査したところ、特に外槽103の内壁に多く付着していることがわかった。図2に示すように、これは、浸漬処理終了後に、半導体装置基板106をめっき液101から引上げ、保持部107の回転動作により表面の残留めっき液を振切る動作が入るが、この時、飛散しためっき液101が、外槽103の内壁に付着し、一連のめっき処理終了後に時間経過とともに乾燥し結晶化した結晶物111であると推察される。半導体装置基板106への付着については、一連のめっき処理が再開される中で、同様な保持部の回転動作時に、めっき液の飛散と同時に、外槽の内壁に付着した結晶物111が脱離し、半導体装置基板表面に再付着したものと推察される。
【0006】
この結晶物111が、その後のCMP工程でスクラッチ要因となり、半導体装置の配線間ショートといった歩留低下原因につながり課題となっている。
前記に鑑み、本発明は、めっき槽内の結晶物の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明に係る半導体装置の製造方法は、半導体装置の製造方法であって、内槽と外槽を備えるめっき槽を用いて半導体装置基板に形成された配線溝に銅を埋め込む電解めっきを行う際に、前記半導体装置基板を前記内槽に貯められためっき液に浸漬してめっき処理を行う工程と、前記半導体装置基板を前記めっき液から引き上げて残留めっき液を振切る工程と、前記めっき槽内を加湿する工程とを有することを特徴とする。
【0008】
また、前記加湿する工程は、不活性ガスに純水をバブリングさせて水蒸気を含ませたガスを前記めっき槽内に送り込むことにより行うことを特徴とする。
また、前記不活性ガスが窒素ガスであることを特徴とする。
【0009】
また、前記加湿する工程後、さらに前記めっき槽の内部の前記ガスを排出する排気工程を有することを特徴とする。
また、前記加湿の際に、さらに前記外槽を冷却する工程を有することを特徴とする。
【0010】
また、前記冷却する工程にて、前記外槽を5〜10℃に冷却することを特徴とする。
さらに、本発明に係る半導体装置の製造装置は、半導体装置の製造の際に、半導体装置基板に形成された配線溝に銅を埋め込む電解めっきを行う半導体装置の製造装置であって、めっき液が循環される外槽と内槽を備えるめっき槽と、回転機構を備えて前記半導体装置基板を保持する保持部と、前記内槽の前記めっき液中に前記保持部と対向するように備えられるアノード電極と、前記保持部と前記アノード電極に電圧をかける電源と、前記めっき槽に加湿された不活性ガスを導入する加湿器とを有することを特徴とする。
【0011】
また、前記めっき槽から前記不活性ガスを排出する排気装置をさらに有することを特徴とする。
また、前記外槽を冷却する冷却装置をさらに有することを特徴とする。
【0012】
以上により、電解めっき装置のめっき槽内で飛散しためっき液の結晶化を防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、銅配線を形成するためのめっき処理において、半導体装置基板をめっき液から引き上げた後、めっき槽内に加湿された不活性ガスを導入することにより、めっき槽に付着しためっき液が乾燥することを抑制できるため、めっき槽内の結晶物の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の半導体装置の製造装置では、電解めっき装置において、電解めっき装置のめっき槽内を加湿する機能をもち、飛散しためっき液が乾燥することを防ぐ手段をとる。
具体的にめっき槽内を加湿する方法として、飽和した水蒸気を含んだ不活性ガス、例えば飽和した水蒸気を含んだ窒素ガスを、めっき槽の外槽部上方から供給する方法をとることができる。飽和した水蒸気を含んだ窒素ガスを供給する方法としては、例えば、密閉された純水槽に窒素ガスを供給し、バブリングさせながら窒素ガスを供給する方法がある。また、めっき槽内の加湿は、半導体装置基板をめっき処理していない処理待ち時に行い、処理時には、バブリングした窒素ガスの供給を一旦停止させる。この時、外槽内に満たされた水蒸気を効率的に排気するために、排気量の切替え可能な排気バルブを用い、所定の時間、排気量をあげ、その後、外槽内の酸雰囲気が外部に拡散しない所まで排気量を絞った状態でめっき処理を施す。さらに、外槽部の周囲に、螺旋状に冷却配管を取付け、外槽部を5〜10℃程度に冷やすことにより、外槽部の内壁を結露させる手段をとる。これにより、外槽部の内壁に付着しためっき液の保湿を促す機能をもたせる。
【0015】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は本発明の半導体装置の製造に用いる電解めっき装置の構成を示す図である。
まず、図1に示すように、本発明の電解めっき装置の構成では、まず、一般的な従来技術の構成として、硫酸銅を主成分とするめっき液1を用い、このめっき液1を循環させるために、内槽2、外槽3、タンク4、及びポンプ5により構成される。また、図1には記載していないが、めっき液の濃度を自動で補正する機能を有する。また、被めっき体である半導体装置基板6を、めっき液1に浸漬させるために、昇降と回転機構を伴った保持部7を有している。また、電解めっきを行うために、電源8を有し、内槽2のめっき液中に半導体装置基板6(カソード)と平行にアノード電極となる銅板9を設置し、ここに通電することでめっき処理が施される。また、外槽3内の酸雰囲気が外部に拡散しないように、めっき槽には排気配管10が設けることが有効である。ここで、本発明の特徴である構成について説明する。本発明の電解めっき装置は、密閉された純水槽11と、ここに窒素ガスを供給し、純水をバブリングする機構をもたせる。さらに、このバブリングされた窒素ガスを、純水槽11からめっき槽内に送り込むための供給配管を設ける。ここで、この水分を含んだ窒素ガスの供給は、めっき処理時には停止し、処理が停止している処理待ち時間にのみ供給できるように、ON/OFF制御が可能な方式をとる。また、外槽3内を、効率的にこのバブリングされた窒素ガスで満たすことと、外槽3内の酸雰囲気が、外槽3の外部に拡散しないようにすることを同時に可能にする上で、めっき槽の排気配管10の途中に、排気量を可変する排気バルブ12を設けてもよい。また、めっき槽の外槽3の外周に、冷却配管13を螺旋状に巻き、外槽3を冷却する構成をとることもできる。これにより、窒素ガスとともに外槽3内に送り込まれた水蒸気が、効率的に、外槽3の内壁に結露し、めっき液の保湿を促す。ことのき、冷却配管13による冷却により、めっき槽内の温度を5〜10℃にすることが望ましい。
【0017】
本実施形態によると、内装に浸漬した半導体装置基板を取り出した後、水分を含んだ窒素ガスでめっき槽を満たすことにより、外槽に飛散した硫酸銅の乾燥を抑制し結晶化の防止することが可能になる。そのため、半導体装置基板に硫酸銅の結晶物が付着せず、その後のCMP処理でスクラッチ欠陥を低減させることが可能になり、結果として配線間のショート不良を防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
以上説明したように、本発明は、めっき槽内の結晶物の発生を抑制することができ、半導体装置基板に電解めっきにより配線材である銅を成膜する半導体装置の製造方法および半導体装置の製造装置等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の半導体装置の製造に用いる電解めっき装置の構成を示す図
【図2】従来の半導体装置の製造に用いる電解めっき装置の構成を示す図
【符号の説明】
【0020】
1 めっき液
2 内槽
3 外槽
4 タンク
5 ポンプ
6 半導体装置基板
7 保持部
8 電源
9 銅板
10 排気配管
11 純水槽
12 排気バルブ
13 冷却配管
101 めっき液
102 内槽
103 外槽
104 タンク
105 ポンプ
106 半導体装置基板
107 保持部
108 電源
109 銅板
110 圧電素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置の製造方法であって、内槽と外槽を備えるめっき槽を用いて半導体装置基板に形成された配線溝に銅を埋め込む電解めっきを行う際に、
前記半導体装置基板を前記内槽に貯められためっき液に浸漬してめっき処理を行う工程と、
前記半導体装置基板を前記めっき液から引き上げて残留めっき液を振切る工程と、
前記めっき槽内を加湿する工程と
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記加湿する工程は、不活性ガスに純水をバブリングさせて水蒸気を含ませたガスを前記めっき槽内に送り込むことにより行うことを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記不活性ガスが窒素ガスであることを特徴とする請求項2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記加湿する工程後、さらに前記めっき槽の内部の前記ガスを排出する排気工程を有することを特徴とする請求項2または請求項3のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記加湿の際に、さらに前記外槽を冷却する工程を有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記冷却する工程にて、前記外槽を5〜10℃に冷却することを特徴とする請求項5記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
半導体装置の製造の際に、半導体装置基板に形成された配線溝に銅を埋め込む電解めっきを行う半導体装置の製造装置であって、
めっき液が循環される外槽と内槽を備えるめっき槽と、
回転機構を備えて前記半導体装置基板を保持する保持部と、
前記内槽の前記めっき液中に前記保持部と対向するように備えられるアノード電極と、
前記保持部と前記アノード電極に電圧をかける電源と、
前記めっき槽に加湿された不活性ガスを導入する加湿器と
を有することを特徴とする半導体装置の製造装置。
【請求項8】
前記めっき槽から前記不活性ガスを排出する排気装置をさらに有することを特徴とする請求項7記載の半導体装置の製造装置。
【請求項9】
前記外槽を冷却する冷却装置をさらに有することを特徴とする請求項7または請求項8のいずれかに記載の半導体装置の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−127103(P2009−127103A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−305154(P2007−305154)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】