説明

半導体装置の製造方法

【課題】本発明は、クランプを備えたスパッタ装置により、厚さの異なる半導体基板に金属膜を形成する工程を含む半導体装置の製造方法に関し、厚さの異なる半導体基板に形成された金属膜の膜質を略均一にすることを課題とする。
【解決手段】厚さの異なる半導体基板23−1,23−2をステージ21上に固定するクランプ25を備えたスパッタ装置10により、厚さの異なる半導体基板23−1,23−2に金属膜29を形成する金属膜形成工程を含む半導体装置の製造方法であって、クランプ25を絶縁すると共に、可変抵抗26を介して、ステージ21をグラウンド電位とし、金属膜29を形成するときに、可変抵抗26に流れる電流が所定の値となるように可変抵抗26の抵抗値を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に係り、特に、クランプを備えたスパッタ装置により、厚さの異なる半導体基板に金属膜を形成する工程を含む半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスパッタ装置の中には、クランプによりスパッタ装置のステージ上に半導体基板を固定して、半導体基板に金属膜を形成するスパッタ装置がある(例えば、図7参照)。
【0003】
図7は、従来のスパッタ装置の断面図である。図7に示すEは、アース(以下、「アースE」とする)を示している。
【0004】
図7を参照するに、従来のスパッタ装置100は、カソードケース101と、マグネット103と、支持体104と、ターゲット(スパッタ材料)であるカソード電極105と、アノード電極106と、スパッタ電源である電源108と、ステージ110と、加熱手段111と、クランプ113とを有する。
【0005】
カソードケース101は、冷却水102及びマグネット103を収容するためのものである。マグネット103は、冷却水で満たされたカソードケース101内に収容されている。マグネット103は、支持体104により回転可能に支持されている。マグネット103は、カソード電極105と半導体基板112との間に存在するArプラズマ115を高密度化するためのものである。
【0006】
カソード電極105は、カソードケース101の下面101Aに設けられている。半導体基板112にAl膜を形成する場合、カソード電極105の材料としては、Alを用いる。アノード電極106は、マグネット103及びカソード電極105の周囲を囲むように設けられている。アノード電極106は、グラウンド電位とされている。電源108は、カソード電極105及びアノード電極106と接続されている。電源108は、カソード電極105に所定の電圧を印加するためのものである。
【0007】
ステージ110は、カソード電極105の下方に配置されている。ステージ110は、アースEと接続されており、グラウンド電位とされている。ステージ110の上面110Aには、半導体集積回路が形成される半導体基板112が配置されている。スパッタ装置100が処理する半導体基板112には、厚さの厚い半導体基板112−1(例えば、500μm〜700μmの厚さの半導体基板)や厚さの薄い半導体基板112−2(例えば、400μm以下の厚さの半導体基板)がある。
【0008】
加熱手段111は、ステージ110に内蔵されている。加熱手段111は、ステージ110を介して、半導体基板112を所定の温度に加熱するためのものである。加熱手段111は、必要に応じて使用される。加熱手段111としては、例えば、ヒータを用いることができる。
【0009】
クランプ113は、ステージ110の外周付近に設けられている。クランプ113は、絶縁されている。クランプ113は、半導体基板112の外周部上面と接触することで、半導体基板112をステージ110に固定するためのものである。
【0010】
上記構成とされたスパッタ装置100は、カソード電極105に所定の電圧を印加することで、厚さの異なる半導体基板112−1,112−2上に金属膜を形成する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−93438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図8は、半導体基板の表面及びクランプに付着した電子の移動経路を説明するための図である。図8において、図7に示した従来のスパッタ装置100と同一構成部分には同一符号を付す。
【0012】
ところで、スパッタ装置100を用いて半導体基板112に金属膜を形成する場合、スパッタ時に発生する電子120が半導体基板112の表面112A及びクランプ113に付着し、この付着した電子120がクランプ113及び半導体基板112の外周部を介して、アースE側に移動するという現象が発生する。
【0013】
この現象は、半導体基板112の厚さが薄くなるにつれて発生しやすくなるため、厚さの薄い半導体基板112−1に金属膜を形成した場合、クランプ113から離間した位置の半導体基板112−1に形成された金属膜と、クランプ113の近傍に位置する半導体基板112−1に形成された金属膜との間において膜質が異なってしまう。
【0014】
そのため、厚さの異なる半導体基板112−1,112−2に金属膜を形成する場合、厚さの異なる半導体基板112−1,112−2に形成された金属膜の膜質にばらつきが生じてしまうという問題があった。
【0015】
そこで、本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、厚さの異なる半導体基板に形成される金属膜の膜質を略均一にすることのできる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一観点によれば、厚さの異なる半導体基板(23−1,23−2)をステージ(21)上に固定するクランプ(25)を備えたスパッタ装置(10)により、前記厚さの異なる半導体基板(23−1,23−2)に金属膜(29)を形成する金属膜形成工程を含む半導体装置の製造方法であって、前記クランプ(25)を絶縁すると共に、可変抵抗(26)を介して、前記ステージ(21)をグラウンド電位とし、前記金属膜(29)を形成するときに、前記可変抵抗(26)に流れる電流が所定の値となるように前記可変抵抗(26)の抵抗値を調整することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0017】
本発明によれば、クランプ(25)を絶縁すると共に、可変抵抗(26)を介して、ステージ(21)をグラウンド電位とし、可変抵抗(26)に流れる電流が所定の値となるように可変抵抗(26)の抵抗値を調整することにより、厚さの薄い半導体基板(23−2)に金属膜(29)を形成する際、スパッタ時に発生する電子がクランプ(25)を介して厚さの薄い半導体基板(23−2)の外周部を通過してステージ(21)側に移動することが抑制されるので、厚さの薄い半導体基板(23−2)面内における金属膜(29)の膜質ばらつきを低減することが可能となる。これにより、厚さの異なる半導体基板(23−1,23−2)に形成される金属膜(29)の膜質を略均一にすることができる。
【0018】
本発明の他の観点によれば、厚さの異なる半導体基板(23−1,23−2)をステージ(21)上に固定するクランプ(25)を備えたスパッタ装置により、前記厚さの異なる半導体基板(23−1,23−2)に金属膜(29)を形成する金属膜形成工程を含む半導体装置の製造方法であって、第1の可変抵抗(26)を介して、前記ステージ(21)をグラウンド電位にすると共に、第2の可変抵抗(41)を介して、前記クランプ(25)をグラウンド電位とし、前記金属膜(29)を形成するときに、前記第1の可変抵抗(26)に流れる電流が所定の値となるように、前記第1及び第2の可変抵抗(26,41)の抵抗値を制御することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0019】
本発明によれば、第1の可変抵抗(26)を介して、ステージ(21)をグラウンド電位にすると共に、第2の可変抵抗(41)を介して、クランプ(25)をグラウンド電位とし、金属膜(29)を形成するときに、第1の可変抵抗(26)に流れる電流が所定の値となるように、第1及び第2の可変抵抗(26,41)の抵抗値を制御することにより、厚さの薄い半導体基板(23−2)に金属膜(29)を形成する際、スパッタ時に発生する電子がクランプ(25)を介して厚さの薄い半導体基板(23−2)の外周部を通過してステージ(21)側に移動することが抑制されるので、厚さの薄い半導体基板(23−2)面内における金属膜(29)の膜質ばらつきを低減することが可能となる。これにより、厚さの異なる半導体基板(23−1,23−2)に形成される金属膜(29)の膜質を略均一にすることができる。
【0020】
なお、上記参照符号は、あくまでも参考であり、これによって、本願発明が図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、厚さの異なる半導体基板に形成される金属膜の膜質を略均一にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0023】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るスパッタ装置の断面図である。図1において、E1,E2は、それぞれアース(以下、「アースE1,E2」とする)を示している。
【0024】
図1を参照するに、第1の実施の形態のスパッタ装置10は、カソードケース11と、マグネット13と、支持体14と、カソード電極16と、アノード電極17と、電源18と、ステージ21と、加熱手段22と、クランプ25と、可変抵抗26とを有する。
【0025】
カソードケース11は、冷却水12及びマグネット13を収容するためのものである。カソードケース11は、冷却水12を導入するための導入口(図示せず)と、冷却水12を排出するための排出口(図示せず)とを有する。
【0026】
マグネット13は、冷却水12で満たされたカソードケース11内に収容されている。マグネット13は、支持体14と接続されている。マグネット13は、カソード電極16と半導体基板23との間に存在するArプラズマ28を高密度化するためのものである。支持体14は、マグネット13と接続されている。支持体14は、マグネット13を回転可能に支持するためのものである。
【0027】
カソード電極16は、カソードケース11の下面11Aに設けられている。例えば、半導体基板23に金属膜29としてAl膜を形成する場合、カソード電極16の材料としては、Alを用いることができる。
【0028】
アノード電極17は、マグネット13及びカソード電極16の周囲を囲むように設けられている。アノード電極17は、アースE1と接続されている。これにより、アノード電極17は、グラウンド電位とされている。電源18は、スパッタ電源であり、カソード電極16及びアノード電極17と接続されている。電源18は、アノード電極17の電位(グラウンド電位)を基準として、カソード電極16に第1の電圧V1を印加するためのものである。金属膜29としてAl膜を半導体基板23に成膜する場合、第1の電圧V1は、例えば、−500V〜−700Vとすることができる。
【0029】
ステージ21は、カソード電極16の下方に配置されている。ステージ21は、可変抵抗26を介して、アースE2と接続されている。これにより、ステージ21は、グラウンド電位とされている。ステージ21の上面21Aには、半導体基板23が配置される。
【0030】
半導体基板23は、半導体装置(図示せず)の構成要素のうちの1つであり、半導体基板23上には半導体集積回路が形成される。半導体装置(図示せず)は、半導体基板23と、半導体集積回路とを有した構成とされている。スパッタ装置10は、半導体集積回路を形成するときに用いられる装置のうちの1つである。半導体基板23の中には、厚さの厚い半導体基板23−1(例えば、厚さが500μm〜700μm程度の半導体基板)や、厚さの薄い半導体基板23−2(例えば、厚さが400μm以下の半導体基板)がある。
【0031】
加熱手段22は、ステージ21に内蔵されている。加熱手段22は、金属膜29を形成する際、ステージ21を介して、必要に応じて半導体基板23を所定の温度に加熱するためのものである。加熱手段22としては、ヒータを用いることができる。
【0032】
クランプ25は、ステージ21の外周付近に設けられている。クランプ25は、絶縁されている。クランプ25は、半導体基板23の外周部上面と接触することで、半導体基板23をステージ21に固定するためのものである。
【0033】
可変抵抗26は、ステージ21及びアースE2と接続されている。可変抵抗26は、回転つまみ(図示せず)を有しており、この回転つまみを回すことで抵抗値を変えることのできる抵抗体である。金属膜29の形成時において、可変抵抗26は、可変抵抗26に流れる電流が所定の値となるように調整される。
【0034】
このように、金属膜29の形成時において、可変抵抗26に流れる電流が所定の値となるように調整することにより、常にスパッタ時の状態を略同じ状態にすることが可能となるので、厚さの異なる半導体基板23−1,23−2に形成される金属膜29の膜質を略均一にすることができる。
【0035】
上記構成とされたスパッタ装置10は、クランプ25を絶縁し、可変抵抗26を介して、ステージ21をグラウンド電位とし、アノード電極17をグラウンド電位とし、カソード電極16に所定の電圧を印加すると共に、可変抵抗26に流れる電流が所定の値となるように可変抵抗26の抵抗値を調整することで、厚さの異なる半導体基板23−1,23−2に金属膜29を形成する。
【0036】
本実施の形態の半導体装置の製造方法によれば、クランプ25を絶縁すると共に、可変抵抗26を介して、ステージ21をグラウンド電位とし、かつ可変抵抗26に流れる電流が所定の値となるように可変抵抗26の抵抗値を調整することにより、厚さの薄い半導体基板23−2に金属膜29を形成するときに、スパッタ時に発生する電子がクランプ25を介して厚さの薄い半導体基板23−2の外周部を通過してステージ21側に移動することが抑制される。これにより、厚さの薄い半導体基板23−2面内における金属膜29の膜質ばらつきが低減されるため、厚さの異なる半導体基板23−1,23−2に形成された金属膜29の膜質を略均一にすることができる。
【0037】
(第2の実施の形態)
図2は、本発明の第2の実施の形態に係るスパッタ装置の断面図である。図2において、E1,E2,E3は、それぞれアース(以下、「アースE1,E2,E3」とする)を示している。図2において、第1の実施の形態のスパッタ装置10と同一構成部分には同一符号を付す。また、図2において、d1は半導体基板23の表面23Aからカソード電極16の下面16Aまでの距離(以下、「距離d1」とする)、d2はクランプ25の上面25Aから反射板36の下面36Aまでの距離(以下、「距離d2」とする)をそれぞれ示している。
【0038】
図2を参照するに、第2の実施の形態のスパッタ装置35は、第1の実施の形態のスパッタ装置10の構成にさらに反射板36と、電源37とを設けた以外はスパッタ装置10と同様に構成される。
【0039】
反射板36は、クランプ25とカソード電極16との間に設けられている。反射板36は、電源37のマイナス端子と接続されている。反射板36は、クランプ25の上面25Aからその上方に距離d2離間した位置に配置されている。距離d1が65mmの場合、距離d2は、例えば、5mmとすることができる。反射板36の材料としては、金属材料を用いることができる。反射板36の材料に適用可能な金属材料としては、例えば、ステンレス合金(例えば、SUS304)やチタン合金(例えば、2種Ti)を用いることができる。
【0040】
電源37は、マイナス端子とプラス端子とを有する。電源37のマイナス端子は、反射板36と電気的に接続されている。電源37のプラス端子は、アースE3と電気的に接続されている。電源37は、グラウンド電位(アースE3の電位)を基準として、反射板36に第1の電圧V1(電源18がカソード電極16に印加する電圧(スパッタ電圧))よりも低い第2の電圧V2を印加する。第1の電圧V1が−500V〜−700Vの場合、第2の電圧V2は、例えば、−1000Vとすることができる。
【0041】
上記構成とされたスパッタ装置35は、アノード電極17をグラウンド電位とすると共に、カソード電極16に印加する第1の電圧V1よりも低い第2の電圧V2を反射板36に印加した状態で、厚さの異なる半導体基板23−1,23−2に金属膜29を形成する。
【0042】
本実施の形態の半導体装置の製造方法によれば、アノード電極17をグラウンド電位にすると共に、カソード電極16に印加する第1の電圧V1よりも低い第2の電圧V2を反射板36に印加して、厚さの異なる半導体基板23−1,23−2に金属膜29を形成することにより、スパッタ時に発生する電子を半導体基板23−1,23−2及びクランプ25から遠ざけて、半導体基板23−1,23−2の表面及びクランプ25に電子が付着することを抑制することが可能となる。これにより、クランプ25及び半導体基板23−1,23−2の外周部を介して、アースE2側に移動する電子の数が少なくなるため、厚さの異なる半導体基板23−1,23−2に形成された金属膜29の膜質ばらつきをさらに低減することができる。
【0043】
(第3の実施の形態)
図3は、本発明の第3の実施の形態に係るスパッタ装置の断面図である。図3において、第1の実施の形態のスパッタ装置10と同一構成部分には同一符号を付す。
【0044】
図3を参照するに、第3の実施の形態のスパッタ装置40は、第1の実施の形態のスパッタ装置10の構成に、さらに可変抵抗41を設けた以外はスパッタ装置10と同様に構成される。
【0045】
可変抵抗41は、クランプ25及びアースE2と接続されている。これにより、可変抵抗41は、グラウンド電位とされている。
【0046】
スパッタ装置40は、クランプ25及びアースE2と接続された可変抵抗26(第1の可変抵抗)と、クランプ25及びアースE2と接続された可変抵抗41(第2の可変抵抗)とを有する。
【0047】
上記構成とされたスパッタ装置40では、予め、他の厚さの異なる半導体基板23に金属膜29を形成して、可変抵抗26に流れる電流が所定の値となるような可変抵抗26の抵抗値R1及び可変抵抗41の抵抗値R2を求めておき、厚さの異なる半導体基板23−1,23−2に金属膜29を形成する際、可変抵抗26が抵抗値R1、可変抵抗41が抵抗値R2となるように、可変抵抗26,41の抵抗値をそれぞれ手動で調整する。
【0048】
本実施の形態の半導体装置の製造方法によれば、可変抵抗26を介して、ステージ21をグラウンド電位にすると共に、可変抵抗41を介して、クランプ25をグラウンド電位とし、可変抵抗26に流れる電流が所定の値となるように、可変抵抗26,41の抵抗値を調整して厚さの異なる半導体基板23−1,23−2に金属膜29を形成することにより、厚さの薄い半導体基板23−2に金属膜29を形成する際、スパッタ時に発生する電子がクランプ25を介して厚さの薄い半導体基板23−2の外周部を通過してステージ21側に移動することを抑制することが可能となる。これにより、厚さの薄い半導体基板23−2面内における金属膜29の膜質ばらつきが低減されるので、厚さの異なる半導体基板23−1,23−2に形成された金属膜29の膜質を略均一にすることができる。
【0049】
図4は、本発明の第3の実施の形態の変形例に係るスパッタ装置の断面図である。図4において、第3の実施の形態のスパッタ装置40と同一構成部分には同一符号を付す。
【0050】
図4を参照するに、第3の実施の形態の変形例に係るスパッタ装置45は、第3の実施の形態のスパッタ装置40の構成に、第2の実施の形態のスパッタ装置35に設けられた反射板36及び電源37をさらに設けた以外はスパッタ装置40と同様に構成される。
【0051】
上記構成とされたスパッタ装置40は、アノード電極17をグラウンド電位とすると共に、反射板36にカソード電極16に印加する第1の電圧V1よりも低い第2の電圧V2を印加した状態で、厚さの異なる半導体基板23−1,23−2に金属膜29を形成する。
【0052】
本実施の形態の変形例に係る半導体装置の製造方法によれば、アノード電極17をグラウンド電位にすると共に、カソード電極16に印加する第1の電圧V1よりも低い第2の電圧V2を反射板36に印加して、厚さの異なる半導体基板23−1,23−2に金属膜29を形成することにより、スパッタ時に発生する電子を半導体基板23−1,23−2及びクランプ25から遠ざけて、半導体基板23−1,23−2の表面及びクランプ25に電子が付着することを抑制することが可能となる。これにより、クランプ25及び半導体基板23−1,23−2の外周部を介して、アースE2側に移動する電子の数が少なくなるため、厚さの異なる半導体基板23−1,23−2に形成された金属膜29の膜質ばらつきをさらに低減することができる。
【0053】
(第4の実施の形態)
図5は、本発明の第4の実施の形態に係るスパッタ装置の断面図である。図5において、第3の実施の形態のスパッタ装置40と同一構成部分には同一符号を付す。
【0054】
図5を参照するに、第4の実施の形態のスパッタ装置50は、第3の実施の形態のスパッタ装置40の構成に、電流計51,52及び抵抗値制御手段53をさらに設けた以外はスパッタ装置40と同様に構成される。
【0055】
電流計51は、可変抵抗26とアースE2とを接続する配線に設けられている。電流計51は、抵抗値制御手段53と接続されている。電流計51は、可変抵抗26に流れる電流値A1を検出するためのものである。電流計51により検出された電流値A1は、抵抗値制御手段53に送信される。
【0056】
電流計52は、可変抵抗41とアースE2とを接続する配線に設けられている。電流計52は、抵抗値制御手段53と接続されている。電流計52は、可変抵抗41に流れる電流値A2を検出するためのものである。電流計52により検出された電流値A2は、抵抗値制御手段53に送信される。
【0057】
抵抗値制御手段53は、電流計51,52及び可変抵抗26,41と接続されている。抵抗値制御手段53は、電流計51,52が検出する電流値A1,A2に基づいて、可変抵抗26に流れる電流が所定の値となるように、可変抵抗26,41の抵抗値を自動調整するためのものである。
【0058】
上記構成とされたスパッタ装置50では、抵抗値制御手段53により、電流計51,52が検出する電流値A1,A2に基づいて、可変抵抗26に流れる電流が所定の値となるように可変抵抗26,41の抵抗値を自動調整しながら、異なる厚さの半導体基板23−1,23−2に金属膜29を形成する。
【0059】
本実施の形態の半導体装置の製造方法によれば、異なる厚さの半導体基板23−1,23−2に金属膜29を形成する際、抵抗値制御手段53により、電流計51,52が検出する電流値A1,A2に基づいて、可変抵抗26に流れる電流が所定の値となるように可変抵抗26,41の抵抗値を自動調整することにより、可変抵抗26,41の抵抗値の調整を容易に行うことができる。また、本実施の形態の半導体装置の製造方法は、第3の実施の形態の半導体装置の製造方法と同様な効果を得ることができる。
【0060】
図6は、本発明の第4の実施の形態の変形例に係るスパッタ装置の断面図である。図6において、第4の実施の形態のスパッタ装置50と同一構成部分には同一符号を付す。
【0061】
図6を参照するに、第4の実施の形態の変形例に係るスパッタ装置55は、第4の実施の形態のスパッタ装置50の構成に、第2の実施の形態のスパッタ装置35に設けられた反射板36及び電源37をさらに設けた以外はスパッタ装置50と同様に構成される。
【0062】
このような構成とされた第4の実施の形態の変形例に係るスパッタ装置55を用いて、厚さの異なる半導体基板23−1,23−2に金属膜29を形成した場合についても、第2の実施の形態の半導体装置の製造方法と同様な効果を得ることができる。
【0063】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、クランプを備えたスパッタ装置により、異なる厚さの半導体基板に金属膜を形成する工程を含む半導体装置の製造方法に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るスパッタ装置の断面図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係るスパッタ装置の断面図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係るスパッタ装置の断面図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態の変形例に係るスパッタ装置の断面図である。
【図5】本発明の第4の実施の形態に係るスパッタ装置の断面図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態の変形例に係るスパッタ装置の断面図である。
【図7】従来のスパッタ装置の断面図である。
【図8】半導体基板の表面及びクランプに付着した電子の移動経路を説明するための図である。
【符号の説明】
【0066】
10,35,40,45,50,55 スパッタ装置
11 カソードケース
11A,16A,36A 下面
12 冷却水
13 マグネット
14 支持体
16 カソード電極
17 アノード電極
18,37 電源
21 ステージ
21A,25A 上面
22 加熱手段
23 半導体基板
23−1 厚さの厚い半導体基板
23−2 厚さの薄い半導体基板
23A 表面
25 クランプ
26,41 可変抵抗
28 Arプラズマ
29 金属膜
36 反射板
51,52 電流計
53 抵抗値制御手段
d1,d2 距離
1,E2,E3 アース
1 第1の電圧
2 第2の電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さの異なる半導体基板をステージ上に固定するクランプを備えたスパッタ装置により、前記厚さの異なる半導体基板に金属膜を形成する金属膜形成工程を含む半導体装置の製造方法であって、
前記クランプを絶縁すると共に、可変抵抗を介して、前記ステージをグラウンド電位とし、
前記金属膜を形成するときに、前記可変抵抗に流れる電流が所定の値となるように前記可変抵抗の抵抗値を調整することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
グラウンド電位とされたアノード電極と、第1の電圧が印加されたカソード電極と、前記クランプと前記カソード電極との間に設けられた反射板とを有し、
前記反射板に、前記第1の電圧よりも低い第2の電圧を印加することを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
厚さの異なる半導体基板をステージ上に固定するクランプを備えたスパッタ装置により、前記厚さの異なる半導体基板に金属膜を形成する金属膜形成工程を含む半導体装置の製造方法であって、
第1の可変抵抗を介して、前記ステージをグラウンド電位にすると共に、第2の可変抵抗を介して、前記クランプをグラウンド電位とし、
前記金属膜を形成するときに、前記第1の可変抵抗に流れる電流が所定の値となるように、前記第1及び第2の可変抵抗の抵抗値を制御することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
グラウンド電位とされたアノード電極と、第1の電圧が印加されたカソード電極と、前記クランプと前記カソード電極との間に設けられた反射板とを有し、
前記反射板に、前記第1の電圧よりも低い第2の電圧を印加することを特徴とする請求項3記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−60365(P2008−60365A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−236024(P2006−236024)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】