説明

半導体装置の製造方法

【課題】低濃度の不純物層を濃度のバラつき少なく形成することができるようにした半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】抵抗領域のシリコン基板1に抵抗体6を形成する際に、抵抗領域の上方を部分的に開口するレジストパターン10をシリコン基板1上に形成する工程と、レジストパターン10をマスクに抵抗領域のシリコン基板1に不純物をイオン注入する工程と、不純物がイオン注入されたシリコン基板1に熱処理を施して、不純物を抵抗領域全体で濃度が均一となるように拡散させる工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図5(a)及び(b)は、従来例に係る半導体装置の製造方法を示す図である。図5(a)において、シリコン基板91に抵抗体を形成する場合は、抵抗体となる領域の上方全体を露出し、それ以外の領域を覆うレジストパターン92を形成する。次に、このレジストパターン92をマスクに、シリコン基板91にリン又はボロン等の不純物93をイオン注入する。イオン注入後、シリコン基板91上からレジストパターン92を取り除く。そして、シリコン基板91に熱処理を施して不純物93を熱拡散させる。これにより、図5(b)に示すように、シリコン基板91に抵抗体94を形成する。このような方法は例えば特許文献1にも開示されている。
【特許文献1】特開昭60−213050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、抵抗体94における不純物濃度はドーズ(dose)量によって調整される。抵抗体94の抵抗値を高めるためにはドーズ量を少なくし、抵抗値を低くするためにはドーズ量を多くする。しかしながら、イオン注入装置においてドーズ量を制御できる範囲はおよそ1×1010cm-2以上であり、これよりも小さい値にドーズ量を設定した場合は、実際に注入される不純物量に大きなバラつきが生じてしまう。このため、抵抗体(以下、不純物層ともいう。)の低濃度化には一定の限界があった。
そこで、この発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、低濃度の不純物層を濃度のバラつき少なく形成することができるようにした半導体装置の製造方法の提供を目的とする
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、発明1の半導体装置の製造方法は、第1領域の半導体に不純物層を形成する半導体装置の製造方法であって、第1領域の上方を部分的に開口する保護パターンを前記半導体上に形成する工程と、前記保護パターンをマスクに前記第1領域の前記半導体に不純物をイオン注入する工程と、前記不純物がイオン注入された前記半導体に熱処理を施して、前記不純物を前記第1領域全体で濃度が均一となるように拡散させる工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0005】
ここで、本発明の「半導体」とは例えば半導体基板又は半導体層のことである。また、「保護パターン」とはレジストパターン、又は、SiO2若しくはSiN膜等からなるハードパターンのことである。
発明1の半導体装置の製造方法によれば、保護パターンの開口率を調整することによって、第1領域に注入される不純物の総量を制御することができる。従って、イオン注入装置が制御できる下限値以下のドーズ量で実質的に第1領域全体に不純物を導入することができる。これにより、低濃度の不純物層を濃度のバラつき少なく形成することができる。
【0006】
発明2の半導体装置の製造方法は、第1領域の半導体に低濃度の第1不純物層を形成すると共に、第2領域の前記半導体に高濃度の第2不純物層を形成する半導体装置の製造方法であって、少なくとも前記第1領域の上方を部分的に開口すると共に、前記第2領域の上方を開口する保護パターンを前記半導体上に形成する工程と、前記保護パターンをマスクに前記第1領域及び前記第2領域の前記半導体にそれぞれ不純物をイオン注入する工程と、前記不純物がイオン注入された前記半導体に熱処理を施して、前記不純物を前記第1領域全体及び前記第2領域全体でそれぞれ濃度が均一となるように拡散させる工程と、を含み、前記保護パターンの開口率は前記第1領域よりも前記第2領域の方が大きいことを特徴とするものである。
【0007】
発明2の半導体装置の製造方法によれば、第1領域における保護パターンの開口率を調整することによって、第1領域に注入される不純物の総量を制御することができる。従って、イオン注入装置が制御できる下限値以下のドーズ量で実質的に第1領域全体に不純物を導入することができる。これにより、低濃度の不純物層を濃度のバラつき少なく形成することができる。また、第2領域における保護パターンの開口率を調整することによって、第2領域に注入される不純物の総量も制御することができる。従って、濃度の異なる第1不純物層と第2不純物層とを同一工程で同時に形成することができる。
【0008】
発明3の半導体装置の製造方法は、発明1又は発明2の半導体装置の製造方法において、前記保護パターンは前記第1領域の上方に複数の開口部を有し、前記複数の開口部は平面視で縦方向及び横方向にそれぞれ一定の間隔で配置されていることを特徴とするものである。
発明4の半導体装置の製造方法は、発明3の半導体装置の製造方法において、前記複数の開口部は、隣り合う一の前記開口部と他の前記開口部との間が0.6μm以下となるように配置されていることを特徴とするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1及び図2は、本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程図であり、図1(a)は平面図、図1(b)は図1(a)をX−X´線で切断した断面図、図2(a)及び(c)は図1(b)以降の工程を示す断面図、図2(b)は拡大断面図である。
図1(a)では、まず始めに、シリコン基板1上に図示しない絶縁膜を介してレジストパターン10を形成する。レジストパターン10は、例えば、抵抗体が形成される領域(以下、抵抗領域)の上方を部分的に覆うと共に、抵抗体の両端でコンタクト電極が形成される領域(以下、コンタクト領域)の上方を完全に露出するような形状を有する。また、図1(a)に示すように、抵抗領域を覆うレジストパターン10には複数の開口部12が形成されている。これらの開口部12は平面視で例えば矩形であり、平面視で縦方向及び横方向にそれぞれ一定の間隔で配置されている。レジストパターン10のうちのレジスト11の寸法をL、開口部12の寸法をSとすると、例えば、L=0.6μm、S=0.6μmである。
【0010】
次に、図2(a)に示すように、レジストパターン10をマスクにシリコン基板1に不純物3をイオン注入する。不純物3は例えばリン、ヒ素等のN型不純物、又は、ボロン等のP型不純物である。また、不純物3のドーズ量はイオン注入装置が制御できる範囲内であり、例えば(イオン注入装置が制御可能な範囲の下限値である)1×1010cm-2である。レジストパターン10をマスクにイオン注入することにより、コンタクト領域のシリコン基板1にはドーズ量と等量の不純物3が全体的に注入される。また、抵抗領域のシリコン基板1には開口部12底面の露出している部分にのみドーズ量と等量の不純物3が注入される。レジスト11で覆われている部分には不純物3は注入されない。
【0011】
次に、レジストパターン10を例えばアッシングして除去する。そして、シリコン基板1に熱処理を施して、シリコン基板1に注入された不純物3を拡散させる。ここでは、コンタクト領域と抵抗領域とにおいて、不純物濃度がそれぞれ均一となるように熱処理を施す。例えば図2(b)に示すように、レジスト11の寸法がL=0.6μmであった場合、このレジストの両側にある開口部12の位置から水平方向に不純物をそれぞれ0.3μmずつ拡散させることによって、レジスト11直下のシリコン基板1に不純物3を均一に導入することができる。不純物の種類(即ち、拡散係数)によって熱処理条件の詳細は異なるが、およそ1000℃で数〜十数時間の熱処理を施すことによって不純物を0.3μm程度水平方向に拡散させることが可能である。
このような熱処理によって、図2(c)に示すように、抵抗領域のシリコン基板1に低濃度の不純物層(即ち、抵抗体)6を形成すると同時に、コンタクト領域のシリコン基板1に高濃度の不純物層(即ち、コンタクト部)7を形成することができる。
【0012】
図3は、レジストパターンの開口率と実質的ドーズ量との関係を示す図である。図3の横軸は開口率[%]を示し、縦軸は実質的ドーズ量[cm-2]を示す。また、実質的ドーズ量とは、マスク無しでイオン注入した場合に相当するドーズ量のことである。さらに、開口率とはレジストパターンにおいて開口部が占める面積の割合のことである。例えば、図1に示したレジストパターン10において、抵抗領域における開口率α1は(1)式で表され、コンタクト領域における開口率α2は(2)式で表される。なお、図1(a)に示したレジストパターン10では、抵抗領域における開口率α1は約25%、コンタクト領域における開口率α2は100%である。
【0013】
α1=(抵抗領域における開口部12の全面積÷抵抗領域の全面積)×100[%]…(1)
【0014】
α2=(コンタクト領域における開口部12の全面積÷コンタクト領域の全面積)×100[%]…(2)
【0015】
図3に示すように、レジストパターンの開口率と実質的ドーズ量との間には相関があり、開口率が小さくなるほど実質的ドーズ量が小さくなる。即ち、開口率が100%のとき、実質的ドーズ量はイオン注入装置側のドーズ量の設定(一例として、1.0×1010cm-2)と同じである。また、開口率が50%のとき、実質的ドーズ量はイオン注入装置側のドーズ量設定の1/2である5.0×109cm-2程度である。開口率が25%のとき、実質的ドーズ量はイオン注入装置側のドーズ量設定の1/4である2.5×109cm-2程度である。
【0016】
図3に示すように、レジストパターン10の開口率を調整することで実質的ドーズ量を制御することができる。従って、レジストパターン10の開口率、及び、イオン注入装置側のドーズ量設定の両方をそれぞれ調整することによって、不純物層6、7の濃度(即ち、抵抗値)をそれぞれ制御することができる。
このように、本発明の実施形態によれば、レジストパターン10の開口率を調整することによって、抵抗領域に注入される不純物3の総量を制御することができる。従って、イオン注入装置が制御できる下限値以下のドーズ量で実質的に抵抗領域全体に不純物を導入することができる。例えば、イオン注入装置側のドーズ量を1.0×1010cm-2に設定すると共に、レジストパターン10の開口率を25%に設定する。これにより、実質的に、ドーズ量2.5×109cm-2程度で抵抗領域全体に不純物を導入することができ、低濃度の不純物層6を濃度のバラつき少なく形成することができる。
【0017】
また、コンタクト領域におけるレジストパターン10の開口率を調整することによって、コンタクト領域に注入される不純物の総量も制御することができる。例えば、コンタクト領域におけるレジストパターン10の開口率を100%に設定することによって、ドーズ量1.0×1010cm-2でコンタクト領域全体に不純物を導入することができる。従って、濃度の異なる不純物層6、7を同一工程で同時に形成することができる。
【0018】
この実施形態では、抵抗領域が本発明の「第1領域」に対応し、コンタクト領域が本発明の「第2領域」に対応している。また、低濃度の不純物層(即ち、抵抗体)6が本発明の「第1不純物層」に対応し、高濃度の不純物層(即ち、コンタクト部)7が本発明の「第2不純物層」に対応している。さらに、レジストパターン10が本発明の「マスクパターン」に対応している。
【0019】
なお、上記の実施形態では、本発明の「半導体」の一例としてシリコン基板1を用い、シリコン基板1に拡散層抵抗を形成する場合について説明した。しかしながら、本発明の「半導体」はこれに限られることはなく、例えばポリシリコン膜であっても良い。本発明の「半導体」としてポリシリコン膜を用い、ポリシリコン膜に抵抗体を形成する場合であっても、上記の実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、上記の実施形態では、本発明の「保護パターン」の一例としてレジストパターン10を用いる場合について説明したが、本発明の「保護パターン」はこれに限られることはなく、例えば、SiO2若しくはSiN膜等からなるハードパターンであっても良い。このような場合であっても、上記の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0020】
さらに、上記の実施形態では、図1(a)及び(b)に示したように、レジストパターン10が平面視で格子状となるように、開口部12が縦方向及び横方向にそれぞれ配置されている場合について説明した。しかしながら、レジストパターン10はこれに限られることはない。例えば図4(a)に示すように、複数の開口部12が平面視でスリット状を成し、これらが一定間隔で配置されていても良い。また、図4(b)に示すように、複数の開口部12が平面視で矩形を成し、これが千鳥足状に配置されていても良い。このような場合であっても、上記の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す図(その1)。
【図2】実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す図(その2)。
【図3】レジストパターンの開口率と実質的ドーズ量との関係を示す図。
【図4】レジストパターン10の他の形状の一例を示す図。
【図5】従来例に係る半導体装置の製造方法を示す図。
【符号の説明】
【0022】
1 シリコン基板、3 不純物、6 低濃度の不純物層(抵抗体)、7 高濃度の不純物層(コンタクト部)、10 レジストパターン、11 レジスト、12 開口部、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1領域の半導体に不純物層を形成する半導体装置の製造方法であって、
第1領域の上方を部分的に開口する保護パターンを前記半導体上に形成する工程と、
前記保護パターンをマスクに前記第1領域の前記半導体に不純物をイオン注入する工程と、
前記不純物がイオン注入された前記半導体に熱処理を施して、前記不純物を前記第1領域全体で濃度が均一となるように拡散させる工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
第1領域の半導体に低濃度の第1不純物層を形成すると共に、第2領域の前記半導体に高濃度の第2不純物層を形成する半導体装置の製造方法であって、
少なくとも前記第1領域の上方を部分的に開口すると共に、前記第2領域の上方を開口する保護パターンを前記半導体上に形成する工程と、
前記保護パターンをマスクに前記第1領域及び前記第2領域の前記半導体にそれぞれ不純物をイオン注入する工程と、
前記不純物がイオン注入された前記半導体に熱処理を施して、前記不純物を前記第1領域全体及び前記第2領域全体でそれぞれ濃度が均一となるように拡散させる工程と、を含み、
前記保護パターンの開口率は前記第1領域よりも前記第2領域の方が大きいことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記保護パターンは前記第1領域の上方に複数の開口部を有し、
前記複数の開口部は平面視で縦方向及び横方向にそれぞれ一定の間隔で配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記複数の開口部は、隣り合う一の前記開口部と他の前記開口部との間が0.6μm以下となるように配置されていることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−71092(P2009−71092A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238838(P2007−238838)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】