説明

半導体装置の製造方法

【課題】製造歩留まり及び信頼性を向上させた、半導体素子が回路基板上にフリップチップ実装されて形成される半導体装置を提供する。
【解決手段】バンプ電極10bを主面に配設した半導体素子10と、電極端子10p・20p上に導電層20bを配設した回路基板20を準備し、バンプ電極の表面の少なくとも一部に、バンプ電極及び導電層より融点が低い接合材30を被覆する。次いで、バンプ電極と導電層とが接合材を介して対向するように、回路基板上に半導体素子を載置し、接合材を溶融し、バンプ電極、接合材、及び導電層とを一体化させる。これにより、半導体装置の製造歩留まり、信頼性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、特に半導体素子が回路基板上にフリップチップ実装されて形成される半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子を回路基板上に搭載して半導体装置を構成する際、半導体素子の実装手段の一つとして、当該半導体素子の主面を回路基板に対向させて搭載する所謂フリップチップ接続(フェイスダウン接続)構造がとられている。
【0003】
当該フリップチップ接続法にあっては、半導体素子に配設された半田バンプ等の突起状電極と、回路基板上に配設された電極端子とを直接的に接続している。
一方、環境への悪影響を回避するために、前記突起状電極を構成する半田バンプの材料として、所謂鉛フリー半田を用いることが主流となりつつある。
【0004】
また、半導体素子に於いては、多機能化、小型化との要求に伴い、より高い集積化が必要とされ、この為、配線の狭ピッチ化、高密度化と高速動作化とを満たす為に、配線層の層間絶縁膜として低誘電率絶縁材(所謂Low−k材)の適用がなされている。
【0005】
即ち、半導体素子の配線層に於いて、層間絶縁層として低誘電率絶縁層を適用し、当該低誘電率絶縁層内に配線層、ビアを配設する(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2006−324642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記鉛フリー半田の種類によっては、そのリフロー処理中に半導体素子及び回路基板が、300℃近くにも加熱される場合がある。
そのため、当該リフロー状態に於ける高温状態から室温にまで、半導体素子及び回路基板が冷却されると、半導体素子の熱膨張係数が回路基板の熱膨張係数よりも小さいことから、半導体素子側に強い応力が印加されてしまう。
【0007】
特に鉛フリー半田は、クリープ現象が生じ難いため、この様な応力は半田バンプに吸収されず、半導体素子側に応力が集中してしまう。
当該応力が半導体素子側に集中することにより、当該半導体素子に於いて、前述の如き低誘電率絶縁層を層間絶縁層として適用していた場合、当該低誘電率絶縁層の破壊、剥離が生じ、当該層間絶縁層内に配設されている配線層、層間接続部などに於いて、短絡及び/あるいは断線が生じてしまう。
【0008】
この様に、半導体素子に配設された鉛フリー半田からなる半田バンプと、回路基板に配設された電極とを接続する方法に於いては、半導体装置の製造歩留まりの低下、あるいは信頼性の低下を招く可能性が高い。
【0009】
一方、前記半田バンプの材料として、融点がより低い鉛フリー半田を使用すれば、そのリフロー温度を低く設定できることから、半導体素子及び回路基板の熱膨張が抑制されると予測される。
【0010】
しかしながら、融点が低い半田材を用いると、半導体装置の動作時に生じる熱により、半田バンプ自体が溶融する場合もあり、半導体装置としての信頼性の低下を招いてしまう。
【0011】
本発明はこの様な点に鑑みてなされたものであり、高い信頼性を有する半導体装置を、高い製造歩留まりをもって形成することができる製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一観点によれば、半導体素子に配設された第1の材料からなる電極と、回路基板に配設された電極とを、前記第1の材料より融点の低い第2の材料を介して接続することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
上記手段によれば、半導体素子が回路基板上にフリップチップ実装されて形成される半導体装置を、高い信頼性を有しつつ、且つ高い製造歩留まりをもって製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明による半導体装置の製造方法について、複数の実施の形態をもって説明する。
<第1の実施の形態>
本発明による半導体装置の製造方法の、第1の実施の形態について説明する。
【0015】
当該第1の実施の形態に於ける製造工程フローを、図1に示す。
本実施の形態にあっては、先ず、バンプ電極(半田バンプ)を半導体基板の一方の主面に配設した半導体素子と、電極パッド(電極端子)上に予備半田層(導電層)を施した回路基板を準備する。
【0016】
そして、半導体素子の一方の主面に配設されたバンプ電極の表面の少なくとも一部に、当該バンプ電極及び予備半田層よりも融点が低い半田材からなる接続用部材を被覆する(ステップS1)。
【0017】
次いで、半導体素子のバンプ電極と回路基板に於ける電極パッドの表面に配設された予備半田層とが、前記接続用部材を介して接するように、半導体素子を回路基板上にフェイスダウン状態をもって載置する(ステップS2)。
【0018】
しかる後、当該接続用部材を溶融せしめる温度をもってリフロー処理を施し、当該接続用部材を溶融して、バンプ電極、接合材、及び予備半田層を一体化する(ステップS3)。
【0019】
即ち、前記半導体素子は、回路基板上にフリップチップ接続法により実装される。
この様に、第1の実施の形態にあっては、半導体素子の一方の主面に配設された半田バンプからなるバンプ電極と、回路基板に配設された電極とを、前記半田バンプより融点が低い半田材料を介して接続する。
【0020】
この様な製造工程によれば、バンプ電極と予備半田層が配設された電極パッドとを、直接的に接続、一体化させる場合に比べ、リフロー温度を下げることができ、半導体素子の主面に配設された絶縁層の破壊、剥離が生じることなく、当該絶縁層内に配設されている配線層、層間接続部の短絡、断線などが防止される。
【0021】
これにより、高い信頼性を有する半導体装置を、高い製造歩留まりをもって製造することができる。
次に、半導体素子が、回路基板上にフリップチップ実装される工程を含む、当該第1の実施の形態に於ける半導体装置の製造方法を、図2ならびに図3を用いてより詳しく説明する。
【0022】
図2ならびに図3は、第1の実施の形態の半導体装置の製造方法を説明する要部断面模式図である。
この第1の実施の形態に於いて適用される半導体素子10を、図2(a)に示す。
【0023】
当該半導体素子10にあっては、半導体基板11の一方の主面に、所謂ウエハプロセスが適用されて、トランジスタ等の能動素子、容量素子等の受動素子、ならびにこれらの機能素子を相互に接続する配線層、層間接続部等をもって電子回路が形成されている。
【0024】
前記配線層、ならびに層間接続部は、半導体基板11の前記主面に形成された低誘電率絶縁層12内に、所謂多層配線層を構成して配置されている。
また、半導体素子10にあっては、低誘電率絶縁層12上に、直接或いは無機絶縁層を介して前記配線層に電気的に接続された複数の電極パッド10pが配設されている。そして、それぞれの電極パッド10p上には、柱状の電極10elが配設されている。更に、当該柱状の電極10el上には、外部接続用電極であるバンプ電極(半田バンプ)10bが配設されている。
【0025】
そして、前記柱状の電極10elと電極パッド10pとの間には、バンプ電極10bの半田成分が電極パッド10p内に拡散することを抑制、防止する金属層13が配設されている。
【0026】
そして、低誘電率絶縁層12上ならびに電極パッド10pの一部は無機絶縁層14により被覆され、当該無機絶縁層14は有機絶縁層15により被覆されている。
前記金属層13は、当該有機絶縁層15上にまで延在している。
【0027】
この様な半導体素子10に於いて、半導体基板11は、周知の如くシリコン(Si)あるいはガリウム砒素(GaAs)等の半導体材料が適用される。
また、前記低誘電率絶縁層12としては、多孔質(ポーラス)状の無機絶縁材料あるいは有機絶縁材料が適用される。即ち、フッ素ドープドケイ素ガラス(Fluorine-doped Silicon Glass,FSG)、酸化炭化ケイ素(SiOC)、酸化ケイ素(SiO2)、有機樹脂等の何れかが適用される。
【0028】
そして、電極パッド10pとしては、従来周知のアルミニウム(Al)または銅(Cu)を主成分とする金属が適用される。当該電極パッド10pの平面形状は、直径50μm〜150μmの円形状であり、当該電極パッド10pの配設ピッチは、100μm〜250μmとされる。
【0029】
また、前記柱状の電極10elとしては、銅(Cu)を主成分とする金属が適用される。当該柱状の電極10elに於いては、当該電極10elへの半田の拡散反応を抑制するために、そのバンプ電極10b側の表面に、下層からニッケル(Ni)/金(Au)のめっき層を配設してもよい。
【0030】
一方、前記金属層13としては、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、あるいは炭化チタン(TiC)を主成分とする金属が適用される。
また、無機絶縁層14としては、酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(Si34)等が適用される。
【0031】
更に、有機絶縁層15としては、ポリイミド(PI)、ベンゾシクロブタン(BCB)、あるいはポリパラフェニレンベンゾビスオキサザール(PBO)の何れかが適用される。
【0032】
そして、当該当該第1の実施の形態に於いては、前記柱状の電極10elの先端部に、融点が210℃〜220℃である半田材からなるバンプ電極10bが配設されている。
当該バンプ電極10bとしては、例えば、鉛(Pb)フリーである2元系半田が適用される。即ち、錫(Sn)−銅(Cu)半田、錫(Sn)−銀(Ag)半田、あるいは錫(Sn)−亜鉛(Zn)半田の何れかが適用される。
【0033】
当該バンプ電極10bとしては、鉛(Pb)フリーである3元系半田を適用してもよい。例えば、錫(Sn)−銀(Ag)−銅(Cu)半田、錫(Sn)−銀(Ag)−インジウム(In)半田、あるいは錫(Sn)−亜鉛(Zn)−ビスマス(Bi)半田の何れかが適用される。
【0034】
更に、当該バンプ電極10bとして、鉛(Pb)フリーである4元系半田を適用してもよい。例えば、錫(Sn)−銀(Ag)−銅(Cu)−ビスマス(Bi)半田、あるいは錫(Sn)−銀(Ag)−インジウム(In)−ビスマス(Bi)半田の何れかを適用してもよい。
【0035】
本第1の実施の形態に於いては、当該半導体素子10に於けるバンプ電極10bの表面に、半田ペーストを被着する。
即ち、図2(b)に示すように、表面が平坦な支持台50上に、例えばスキージを用いて、均一な厚さに塗布された半田ペースト30に対し、前記半導体素子10のバンプ電極10bの少なくとも一部を接触させる。
【0036】
この時、半導体素子10は、例えばボンディングツール(図示せず)により吸着、保持され、前記支持台50上に降下されて、バンプ電極10bが前記半田ペースト30中に浸漬されることにより、当該バンプ電極10bの表面に、半田ペースト30が被着される。
【0037】
ここで、半田ペースト30は、粒径が10μm以下の半田粒がフラックス材中に混錬されたペースト状の半田材である。
当該半田粒としては、鉛(Pb)フリーである2元系半の錫(Sn)−ビスマス(Bi)半田、或いは、鉛(Pb)フリーである3元系半田の錫(Sn)−ビスマス(Bi)−銀(Ag)半田の何れかが適用される。当該半田粒は、130℃〜150℃の融点を有する。
【0038】
従って、半田ペースト30に接触された前記バンプ電極10bは、図2(c)に示される如く、その表面の少なくとも一部に、当該バンプ電極10b自体の融点よりも低い融点を有する半田を含有した半田ペースト30が被着される。
【0039】
即ち、前記支持台50の表面に塗布されていた半田ペースト30は、半導体素子10のバンプ電極10bの先端部に転写される。
尚、図2(c)にあっては、バンプ電極10bの厚さをd1とし、半田ペースト30の厚さをd3としている。
【0040】
また、半田ペースト30の被着方法としては、前述の如き転写法に代えて、半田ペースト30をバンプ電極10bの表面に直接塗布する方法を適用することもできる。
この様に、バンプ電極10bの表面に半田ペースト30の被着がなされた半導体素子10を、所謂フリップチップ接続法をもって回路基板20上に実装、搭載する工程を説明する。
【0041】
回路基板20上に、前記半導体素子10を、所謂フリップチップ状態をもって載置した状態を、図3(a)に示す。
尚、当該回路基板20は、支持基板、配線基板、インターポーザあるいはパッケージ基板とも称される。
【0042】
当該回路基板20は、ガラス−エポキシ樹脂、ガラス−ビスマレイミドトリアジン(BT)、あるいはポリイミド等の有機絶縁性樹脂からなる絶縁性基材21が用いられ、その内部及び/あるいは主面に銅(Cu)を主体とする導電部材からなる配線層が形成されている。かかる配線層は、必要に応じて、片面配線構造、両面配線構造或いは多層配線構造とされる。
【0043】
当該回路基板20は、その一方の主面(上面)に、少なくとも前記半導体素子10の電極に対応し、且つ前記配線層に接続された電極パッド20pが、複数個配設されている。
当該電極パッド20pの上面周縁部ならびに前記絶縁性基材21の露出表面は、ソルダレジスト22により被覆されており、また当該電極パッド20pのソルダレジスト22に覆われない表面部位から当該ソルダレジスト22上に延在して予備半田(予備半田層)20bが配設されている。
【0044】
かかる構成に於いて、電極パッド20pは、例えば、銅(Cu)を主体とする金属が適用され、その表面には半田材の拡散反応を抑制するために、必要に応じて、下層からニッケル(Ni)及び金(Au)の2層めっき層(図示せず)が配設される。
【0045】
当該電極パッド20pの平面形状は、直径50μm〜150μmの円形状であり、当該電極パッド20pの配設ピッチは、100μm〜250μmとされる。
そして、かかる電極パッド20p上に配設される予備半田20bとしては、融点が210℃〜220℃の半田材が適用される。
【0046】
当該予備半田20bとしては、例えば、鉛(Pb)フリーである2元系半田が適用される。即ち、錫(Sn)−銅(Cu)半田、錫(Sn)−銀(Ag)半田、錫(Sn)−亜鉛(Zn)半田の何れかが適用される。
【0047】
当該予備半田20bとしては、鉛(Pb)フリーである3元系半田を適用してもよい。例えば、錫(Sn)−銀(Ag)−銅(Cu)半田、錫(Sn)−銀(Ag)−インジウム(In)半田、錫(Sn)−亜鉛(Zn)−ビスマス(Bi)半田の何れかが適用される。
【0048】
更に、予備半田20bとして、鉛(Pb)フリーである4元系半田を適用してもよい。例えば、錫(Sn)−銀(Ag)−銅(Cu)−ビスマス(Bi)半田、錫(Sn)−銀(Ag)−インジウム(In)−ビスマス(Bi)半田の何れかを適用してもよい。
【0049】
即ち、図3(a)に示される形態にあっては、回路基板20上の電極パッド20pに被覆された予備半田20bに対し、前記半導体素子10に於けるバンプ電極10bに被覆された半田ペースト30が接した状態をもって、当該半導体素子10が載置されている。
【0050】
かかる構成に於いて、半導体素子10の半導体基板11の主面に対して平行な方向の熱膨張係数は3ppm/℃〜4ppm/℃であり、また回路基板20の絶縁性基材21の主面に対して平行な方向の熱膨張係数は10ppm/℃〜17ppm/℃である。
【0051】
尚、図3(a)にあっては、予備半田20bの厚さをd2としている。
この様に、回路基板20上に半導体素子10を載置した状態に於いて、当該回路基板20を支持する支持テーブル(図示せず)に配設された加熱ユニットにより加熱して、前記半田ペースト30に含まれる半田粒のリフロー処理を施す。
【0052】
この時、当該半田リフロー処理に於ける加熱処理温度は、半田ペースト30に含まれる半田粒のみが溶融する温度に設定される。
即ち、加熱処理温度は、前記半田ペースト30に含まれる半田粒の融点以上であり、且つバンプ電極10b及び予備半田20bの融点より低い温度、例えば150℃〜170℃に設定される。また、当該半田リフロー処理に要する時間は、30秒〜3分とされる。
【0053】
かかる半田リフロー処理に於ける加熱により、図3(b)に示すように、半導体素子10は、半導体基板11の主面に対して平行な、矢印aの方向ならびに矢印a’の方向に伸長する。尚、かかる矢印aと矢印a’とは逆方向である。
【0054】
一方、回路基板20は、絶縁性基材21の主面に対して平行な、矢印bの方向ならびに矢印b’の方向に伸長する。かかる矢印bと矢印b’とは逆方向である。
この時、前述の如き熱膨張係数の相違に基づき、半導体素子10と回路基板20は、その伸長する量が異なる。当該伸長量の相違を、図3(b)にあっては、矢印の長さで表している。
【0055】
即ち、回路基板20は、半導体素子10の主面に対して平行な方向に半導体素子10よりも大きく伸長する。
しかしながら、この時の加熱温度は、前記バンプ電極10bならびに予備半田20bの融点より低い温度であり、半導体素子10に対して大きな応力の集中を生じない。
【0056】
上記半田リフロー処理の持続より、前記半田ペースト30に含まれる半田粒とバンプ電極10bならびに予備半田20bが相互に拡散し、図3(c)に示されるように、これらの半田はバンプ40として一体化される。
【0057】
これにより、半導体素子10の電極10elと回路基板20の電極パッド20pが、当該バンプ40を介して機械的に接続され、当該半導体素子10が回路基板20上にフリップチップ実装された状態を得る。
【0058】
即ち、半導体素子10と回路基板20との間は、電気的にも接続可能とされる。
前記半田リフロー処理の終了後、室温(例えば、25℃)にまで冷却される過程において、半導体素子10は、半導体基板11の主面に対して平行な、矢印cの方向ならびに矢印c’の方向に収縮する。尚、かかる矢印cと矢印c’とは逆方向である。
【0059】
また、回路基板20は、絶縁性基材21の主面に対して平行な、矢印dの方向ならびに矢印d’の方向に収縮する。かかる矢印dと矢印d’とは逆方向である。
この時、前述の如き熱膨張係数の相違に基づき、半導体素子10と回路基板20は、その収縮量が異なる。当該収縮量の相違を、図3(c)にあっても、矢印の長さで表している。
【0060】
即ち、回路基板20は、半導体素子10の主面に対して平行な方向に半導体素子10よりも大きく収縮する。
しかしながら、この時の温度変化は、前記半田ペースト30に含まれる半田粒の溶融温度から室温までの変化であり、半導体素子10に対して大きな応力の集中を生じない。
【0061】
即ち、本実施の形態に於ける製造方法にあっては、低融点半田材からなる接続用部材の適用によって、半導体素子10の回路基板20へのフリップチップ実装工程に於ける半田リフローの際の加熱温度を低下させることができ、もって当該半導体素子10に対する応力の印加量を低減することができる。
【0062】
これにより、当該半導体素子10に於ける低誘電率絶縁層12への応力集中が低減、抑制され、当該低誘電率絶縁層12の破壊、剥離などを防止することができる。
尚、当該第1の実施の形態に於いて、前記バンプ電極10bの厚さをd1、半田ペースト30の厚さをd3とし、予備半田20bの厚さをd2とした場合、(d1+d2)とd3との比が5:1〜3:1であることが好ましい。
【0063】
d3が(d1+d2)の1/5よりも小さくなると、半田ペースト30の厚さd3の均一性が低下し易い。
一方、d3が(d1+d2)の1/3よりも大きくなると、一体化されたバンプ40の融点が半田ペースト30の半田成分の融点(130℃〜150℃)に転化し易く、当該バンプ40の融点がバンプ電極10bならびに予備半田20bの融点よりも低下して、バンプ40としての耐熱性が低下してしまう。
【0064】
尚、前記リフロー処理は、リフロー専用装置に於いて実施することもできる。
この様な、半導体素子10の回路基板20へのフリップチップ実装後、当該半導体素子10と回路基板20との間に、アンダーフィル材と称される封止用樹脂を充填する(図示せず)。
【0065】
或いは、当該半導体素子10を被覆して樹脂封止処理を施す(図示せず)。
そして前記回路基板20の他方の主面(裏面)に、外部接続端子を構成する半田ボール(図示せず)を配設し、BGA(Ball Grid Array)構造を有する半導体装置を形成する。
【0066】
前記回路基板が大判とされ、当該回路基板に複数個の半導体素子が搭載される場合には、当該複数個の半導体素子の一括樹脂封止処理、ならびに外部接続端子の配設を行った後に、当該配線基板ならびに当該配線基板上にあって半導体素子を覆う封止用樹脂を、その厚さ方向に切断して、個片化された半導体装置を形成する。
【0067】
この様に、第1の実施の形態に於いては、主面にバンプ電極10bが配設された半導体素子10を、回路基板20上にフリップチップボンディング法により搭載する際に、前記回路基板20に於ける電極パッド20p上に予備半田20bを配設し、また前記バンプ電極10bの表面の少なくとも一部に、バンプ電極10b及び予備半田20bよりも融点が低い半田粒を含んだ半田ペースト30を被覆した後、当該バンプ電極10bと予備半田20bとを半田ペースト30を介して対向させて、回路基板20上に半導体素子10を載置する。
【0068】
そして、半田ペースト30中の半田粒を溶融して、バンプ電極10b、半田粒、及び予備半田20bを一体化させる。
これにより、半導体素子10の電極と回路基板20の電極パッドが、バンプ40を介して機械的に接続され、当該半導体素子10が回路基板20上にフリップチップ実装された状態を得る。
【0069】
この様な半導体装置の製造方法によれば、鉛(Pb)フリー半田の中で比較的低融点とされる半田ペースト30の半田粒のみを溶融させて、高融点の半田(バンプ電極10b、予備半田20b)を容易に一体化することができる。
【0070】
即ち、高融点の半田間に、低融点の半田からなる接続用部材を介在させて、低融点の半田の融点近傍でリフロー処理を施すことにより、高融点の半田同士を直接溶融接合させる場合に比べ、リフロー処理温度を低下させることができる。
【0071】
従って、半導体素子10及び回路基板20が、リフロー処理温度まで加熱される際、ならびにリフロー処理温度から室温にまで冷却される際にも、その温度変化を、高融点の半田同士を直接溶融接合させる場合に比べ小さなものとなる。
【0072】
これにより、半導体素子10に強い応力が印加されることはなく、当該半導体素子10の主面に形成された絶縁層への応力集中が防止される。
従って、当該絶縁層として、低誘電率絶縁層を適用した場合であっても、当該低誘電率絶縁層の破壊、剥離が回避され、低誘電率絶縁層内に配設された配線層、層間接続部の短絡、あるいは断線が防止される。
【0073】
また、バンプ電極10b、半田ペースト30に含まれる粒状の半田、及び予備半田20bは、リフロー処理中に相互拡散して、均一組成のバンプ40が形成される。
このため、バンプ40の融点は、高融点のバンプ電極10bの融点と、半田ペースト30に含まれる粒状の半田の融点との間の値となる。即ち、バンプ40の融点は、高融点のバンプ電極10bの存在によって、半田ペースト30に含まれる粒状の半田の融点よりも高くなる。従って、半導体装置の動作時にバンプ40が高温に晒されても、当該バンプ40は溶融せず、高い信頼性を維持することができる。
【0074】
この様に、第1の実施の形態によれば、高い信頼性を有する半導体装置を、低い製造コスト及び高い製造歩留まりをもって製造することができる。
尚、前記回路基板20として、ガラス等の無機絶縁材料を主成分とする回路基板を適用することもできる。但し、無機絶縁材料を主成分とする回路基板は、有機絶縁材料を主成分とする回路基板に比べ高価であり、無機絶縁材料を主成分とする回路基板を用いると、半導体装置としてコスト高を招来してしまう可能性がある。
【0075】
<第2の実施の形態>
本発明による半導体装置の製造方法の、第2の実施の形態について説明する。
尚、第2の実施の形態の説明に於いて、前記第1の実施の形態に於ける部位と対応する部位には、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0076】
当該第2の実施の形態に於ける半導体装置の製造方法について、図4ならびに図5を用いて説明する。
当該第2の実施の形態に於いても、半導体素子10に於けるバンプ電極10bの表面に、接続用部材として、半田部材を被着する。
【0077】
即ち、図4(a)に示すように、表面が平坦な支持台50上に、例えばスキージを用いて、均一な厚さに塗布された半田ペースト30に対し、前記半導体素子10のバンプ電極10bの少なくとも一部を接触させる。
【0078】
この時、半導体素子10は、ボンディングツール(図示せず)により吸着、保持され、前記支持台50上に降下されて、当該半導体素子10のバンプ電極10bは前記半田ペースト30中に浸漬される。
【0079】
ここで、半田ペースト30は、粒径が40μm以下の半田粒がフラックス材中に混錬させたペースト状の半田材である。
当該半田粒としては、鉛(Pb)フリーである2元系半の錫(Sn)−ビスマス(Bi)半田、あるいは、鉛(Pb)フリーである3元系半田の錫(Sn)−ビスマス(Bi)−銀(Ag)半田の何れかが適用される。当該半田粒は、130℃〜150℃の融点を有する。
【0080】
半導体素子10のバンプ電極10bを半田ペースト30中に浸漬させた状態を維持しつつ、上記ボンディングツールに於ける加熱ユニットにより、バンプ電極10bを、上記半田粒の融点以上、且つバンプ電極10bの融点未満の温度に加熱する。
【0081】
かかる加熱処理により、バンプ電極10b近傍に於いては、半田ペースト30の半田粒のみが溶融し、溶融した半田成分が当該バンプ電極10b表面の少なくとも一部に付着する。
【0082】
しかる後、半導体素子10が例えば室温まで冷却されると、上記半田成分も融点以下に冷却されることから、バンプ電極10b表面の一部に、半田成分により構成された半田部材31が被着される。
【0083】
即ち、バンプ電極10b表面の少なくとも一部が、接続用部材としての半田部材31により被覆される。
かかる状態を、図4(b)に示す。
【0084】
尚、図4(b)にあっては、バンプ電極10bの厚さをd1とし、半田部材31の厚さをd3としている。
この様に、バンプ電極10bの表面に半田ペースト30の被着がなされた半導体素子10を、所謂フリップチップ接続法をもって回路基板20上に実装、搭載する工程を説明する。
【0085】
回路基板20上に、前記半導体素子10を、所謂フリップチップ状態をもって載置した状態を、図5(a)に示す。
尚、当該回路基板20は、支持基板、配線基板、インターポーザあるいはパッケージ基板とも称される。
【0086】
当該回路基板20は、ガラス−エポキシ樹脂、ガラス−ビスマレイミドトリアジン(BT)、あるいはポリイミド等の有機絶縁性樹脂からなる絶縁性基材21が用いられ、その内部及び/あるいは主面に銅(Cu)を主体とする導電部材からなる配線層が形成されている。かかる配線層は、必要に応じて、片面配線構造、両面配線構造或いは多層配線構造とされる。
【0087】
当該回路基板20は、その一方の主面(上面)に、少なくとも前記半導体素子10の電極に対応し、且つ前記配線層に接続された電極パッド20pが、複数個配設されている。
当該電極パッド20pの上面周縁部ならびに前記絶縁性基材21の露出表面は、ソルダレジスト22により被覆されており、また当該電極パッド20pのソルダレジスト22に覆われない表面部位から当該ソルダレジスト22上に延在して予備半田20bが配設されている。当該予備半田20bは、融点210℃〜220℃の半田材から構成される。
【0088】
即ち、図5(a)に示される形態にあっては、回路基板20上の電極パッド20pに被覆された予備半田20bに対し、前記半導体素子10に於けるバンプ電極10bに被覆された半田部材31が接した状態をもって、当該半導体素子10が載置されている。
【0089】
かかる構成に於いて、半導体素子10の半導体基板11の主面に対して平行な方向の熱膨張係数は3ppm/℃〜4ppm/℃であり、また回路基板20の絶縁性基材21の主面に対して平行な方向の熱膨張係数は10ppm/℃〜17ppm/℃である。
【0090】
尚、図5(a)にあっては、当該予備半田20bの厚さをd2としている。
この様に、回路基板20上に半導体素子10を載置した状態に於いて、当該回路基板20を支持する支持テーブル(図示せず)に配設された加熱ユニットにより加熱して、前記半田部材31のリフロー処理を施す。
【0091】
この時、当該半田リフロー処理に於ける加熱処理温度は、半田部材31のみが溶融する温度に設定される。
即ち、加熱処理温度は、前記半田部材31の融点以上であり、且つバンプ電極10b及び予備半田20bの融点より低い温度、例えば150℃〜170℃に設定される。また、当該半田リフロー処理に要する時間は、30秒〜3分とされる。
【0092】
かかる半田リフロー処理に於ける加熱により、図5(b)に示すように、半導体素子10は、半導体基板11の主面に対して平行な、矢印aの方向ならびに矢印a’の方向に伸長する。かかる矢印aと矢印a’とは逆方向である。
【0093】
一方、回路基板20は、絶縁性基材21の主面に対して平行な、矢印bの方向ならびに矢印b’の方向に伸長する。かかる矢印bと矢印b’とは逆方向である。
この時、前述の如き熱膨張係数の相違に基づき、半導体素子10と回路基板20は、その伸長する量が異なる。当該伸長量の相違を、図5(b)にあっては、矢印の長さで表している。
【0094】
即ち、回路基板20は、半導体素子10の主面に対して平行な方向に半導体素子10よりも大きく伸長する。
しかしながら、この時の加熱温度は、前記バンプ電極10bならびに予備半田20bの融点より低い温度であり、半導体素子10に対して大きな応力の集中を生じない。
【0095】
上記半田リフロー処理の持続より、前記半田部材31とバンプ電極10bならびに予備半田20bが相互に拡散し、図5(c)に示されるように、これらの半田はバンプ40として一体化される。
【0096】
これにより、半導体素子10の電極10elと回路基板20の電極パッド20pが、当該バンプ40を介して機械的に接続され、当該半導体素子10が回路基板20上にフリップチップ実装された状態を得る。
【0097】
即ち、半導体素子10と回路基板20との間は、電気的にも接続可能とされる。
前記半田リフロー処理の終了後、室温(例えば、25℃)にまで冷却される過程において、半導体素子10は、半導体基板11の主面に対して平行な、矢印cの方向ならびに矢印c’の方向に収縮する。かかる矢印cと矢印c’とは逆方向である。
【0098】
また、回路基板20は、絶縁性基材21の主面に対して平行な、矢印dの方向ならびに矢印d’の方向に収縮する。かかる矢印dと矢印d’とは逆方向である。
この時、前述の如き熱膨張係数の相違に基づき、半導体素子10と回路基板20は、その収縮量が異なる。当該収縮量の相違を、図5(c)にあっても、矢印の長さで表している。
【0099】
即ち、回路基板20は、半導体素子10の主面に対して平行な方向に半導体素子10よりも大きく収縮する。
しかしながら、この時の温度変化は、前記半田部材31の溶融温度から室温までの変化であり、半導体素子10に対して大きな応力の集中を生じない。
【0100】
即ち、本実施の形態に於ける製造方法にあっても、半導体素子10の回路基板20へのフリップチップ実装工程に於ける半田リフローの際の加熱温度を低下させることができ、もって当該半導体素子10に対する応力の印加量を低減することができる。
【0101】
これにより、当該半導体素子10に於ける低誘電率絶縁層12への応力集中が低減、抑制され、当該低誘電率絶縁層12の破壊、剥離などを防止することができる。
尚、当該第2の実施の形態に於いて、前記バンプ電極10bの厚さをd1、半田部材31の厚さをd3とし、予備半田20bの厚さをd2とした場合、(d1+d2)とd3との比が5:1〜3:1であることが好ましい。
【0102】
即ち、d3が(d1+d2)の1/5よりも小さくなると、半田部材31の厚さd3の均一性が低下し易い。
一方、d3が(d1+d2)の1/3よりも大きくなると、一体化されたバンプ40の融点が半田部材31の融点(130℃〜150℃)に転化し易くなり、当該バンプ40の融点がバンプ電極10bならびに予備半田20bの融点よりも低下して、バンプ40としての耐熱性が低下してしまう。
【0103】
尚、前記リフロー処理は、リフロー専用装置に於いて実施することもできる。
この様な、半導体素子10の回路基板20へのフリップチップ実装後、当該半導体素子10と回路基板20との間に、アンダーフィル材と称される封止用樹脂を充填する(図示せず)。
【0104】
或いは、当該半導体素子10を被覆して樹脂封止処理を施す。
そして前記回路基板20の他方の主面(裏面)に、外部接続端子を構成する半田ボール(図示せず)を配設し、BGA(Ball Grid Array)構造を有する半導体装置を形成する。
【0105】
前記回路基板が大判とされ、当該回路基板に複数個の半導体素子が搭載される場合には、当該複数個の半導体素子の一括樹脂封止処理、ならびに外部接続端子の配設が行われた後に、当該配線基板ならびに当該配線基板上にあって半導体素子を覆う封止用樹脂を、その厚さ方向に切断して、個片化された半導体装置を形成する。
【0106】
この様に、第2の実施の形態に於いては、主面にバンプ電極10bが配設された半導体素子10を、回路基板20上にフリップチップボンディング法により搭載する際に、前記回路基板20に於ける電極パッド20p上に予備半田20bを配設し、また前記バンプ電極10bの表面の少なくとも一部に、バンプ電極10b及び予備半田20bよりも融点が低い半田部材31を被覆した後、当該バンプ電極10bと予備半田20bとを半田部材31を介して対向させて、回路基板20上に半導体素子10を載置する。
【0107】
そして、当該半田部材31を溶融して、バンプ電極10b、半田部材31、及び予備半田20bを一体化させる。
これにより、半導体素子10の電極と回路基板20の電極パッドが、バンプ40を介して機械的に接続され、当該半導体素子10が回路基板20上にフリップチップ実装された状態を得る。
【0108】
即ち、この様な半導体装置の製造方法によれば、高融点の半田間に低融点の半田部材31からなる接続用部材を介在させ、当該半田部材31の融点近傍でリフロー処理を施すことにより、高融点の半田同士を直接溶融接合させる場合に比べ、リフロー処理温度を低下させることができる。
【0109】
従って、半導体素子10及び回路基板20が、リフロー処理温度まで加熱される際、ならびにリフロー処理温度から室温にまで冷却される際にも、その温度変化を、高融点の半田同士を直接溶融接合させる場合に比べ小さなものとなる。
【0110】
これにより、半導体素子10に強い応力が印加されることはなく、半導体素子10の主面に形成された絶縁層への応力集中が防止される。
従って、当該絶縁層として、低誘電率絶縁層を適用した場合であっても、当該低誘電率絶縁層の破壊、剥離が回避され、低誘電率絶縁層内に配設された配線層、層間接続部の短絡、あるいは断線が防止される。
【0111】
この様に、第2の実施の形態によれば、高い信頼性を有する半導体装置を、高い製造歩留まりをもって製造することができる。
更に、当該第2の実施の形態に於いては、半田ペースト30の半田粒を溶融状態とし、溶融状態にある半田成分を半田部材31としてバンプ電極10b表面に付着させている。
【0112】
即ち、半田ペースト30の粘性によらず、低融点の半田成分を半田部材31としてバンプ電極10b表面に形成している。
従って、半田ペースト30内に含まれる半田粒の粒径にばらつきがあっても、低融点の半田成分をバンプ電極10b表面に確実に被着することができる。
【0113】
半田粒径にばらつきがある半田ペーストは、半田粒径を一定の値に揃えた半田ペーストに比べ安価であることから、第2の実施の形態に於ける半導体装置は、製造コストの低下を図ることができる。
【0114】
<第3の実施の形態>
次に、半導体装置の製造方法の第3の実施の形態について説明する。
当該第3の実施の形態の説明に於いては、第1、2の実施の形態で説明した部位と対応する部位には、同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0115】
図6ならびに図7は、本発明の第3の実施の形態に於ける半導体装置の製造方法を説明する要部断面模式図である。
当該第3の実施の形態にあっては、半導体素子10に於けるバンプ電極10bの表面に、接続用部材としての半田材と、フラックス材を重ねて被着する。
【0116】
本実施の形態にあっては、先ず、バンプ電極10b表面の少なくとも一部に、半田部材31が被着された半導体素子10を準備する。
かかる形態は、前記第2の実施の形態に於いて、図4(a)乃至図4(b)に示した工程を適用することができる。
【0117】
そして、この様に、バンプ電極10b表面の少なくとも一部に、半田部材31が被着された半導体素子10に於ける当該半田部材31を、表面が平坦な支持台50上に配置されたフラックス材30fに接触させる。かかる状態を、図6(a)に示す。
【0118】
この時、半導体素子10は、ボンディングツール(図示せず)により吸着、保持され、前記支持台50上に降下されて、少なくとも半導体素子10のバンプ電極10bに被着されている半田部材31がフラックス材30f中に浸漬される。
【0119】
しかる後、前記半導体素子10を支持台50から分離することにより、前記半田部材31表面に、フラックス材30fが転写された形態を得る。かかる状態を、図6(b)に示す。
【0120】
尚、フラックス材30fの被着方法としては、前記浸漬法に代えて、半田部材31表面にフラックス材を直接塗布する方法を適用することもできる。
この様に、バンプ電極10bの表面に、半田部材31が配設され、更に当該半田部材31上へのフラックス材30fの被覆がなされた半導体素子10を、所謂フリップチップ接続をもって回路基板20上に実装、搭載する工程を説明する。
【0121】
回路基板20上に、前記半導体素子10を、所謂フリップチップ状態をもって載置した状態を、図7(a)に示す。
尚、当該回路基板20は、支持基板、配線基板、インターポーザあるいはパッケージ基板とも称される。
【0122】
当該回路基板20は、ガラス−エポキシ樹脂、ガラス−ビスマレイミドトリアジン(BT)、あるいはポリイミド等の有機絶縁性樹脂からなる絶縁性基材21が用いられ、その内部及び/あるいは主面に銅(Cu)を主体とする導電部材からなる配線層が形成されている。かかる配線層は、必要に応じて、片面配線構造、両面配線構造或いは多層配線構造とされる。
【0123】
当該回路基板20は、その一方の主面(上面)に、少なくとも前記半導体素子10の電極に対応し、且つ前記配線層に接続された電極パッド20pが、複数個配設されている。
当該電極パッド20pの上面周縁部ならびに前記絶縁性基材21の露出表面は、ソルダレジスト22により被覆されており、また当該電極パッド20pのソルダレジスト22に覆われない表面部位から当該ソルダレジスト22上に延在して予備半田20bが配設されている。当該予備半田20bは、融点210℃〜220℃の半田材から構成される。
【0124】
即ち、図7(a)に示される形態にあっては、回路基板20上の電極パッド20pに被覆された予備半田20bに対し、前記半導体素子10に於けるバンプ電極10bに被覆された半田部材31が接した状態をもって、当該半導体素子10が載置されている。
【0125】
尚、フラックス材30fは、予備半田20bと半田部材31との接触部界面、ならびにその周囲に止まっている。
かかる構成に於いて、半導体素子10の半導体基板11の主面に対して平行な方向の熱膨張係数は3ppm/℃〜4ppm/℃であり、また回路基板20の絶縁性基材21の主面に対して平行な方向の熱膨張係数は10ppm/℃〜17ppm/℃である。
【0126】
この様に、回路基板20上に半導体素子10を載置した状態に於いて、当該回路基板20を支持する加熱ユニット(図示せず)により加熱して、前記半田部材31のリフロー処理を施す。
【0127】
この時、当該半田リフロー処理に於ける加熱処理温度は、半田部材31のみが溶融する温度に設定される。
即ち、加熱処理温度は、前記半田部材31の融点以上であり、且つバンプ電極10b及び予備半田20bの融点より低い温度、例えば150℃〜170℃に設定される。また、当該半田リフロー処理に要する時間は、30秒〜3分とされる。
【0128】
かかる半田リフロー処理に於ける加熱により、図7(b)に示すように、半導体素子10は、半導体基板11の主面に対して平行な、矢印aの方向ならびに矢印a’の方向に伸長する。かかる矢印aと矢印a’とは逆方向である。
【0129】
一方、回路基板20は、絶縁性基材21の主面に対して平行な、矢印bの方向ならびに矢印b’の方向に伸長する。かかる矢印bと矢印b’とは逆方向である。
この時、前述の如き熱膨張係数の相違に基づき、半導体素子10と回路基板20は、その伸長する量が異なる。当該伸長量の相違を、図7(b)にあっては、矢印の長さで表している。
【0130】
即ち、回路基板20は、半導体素子10の主面に対して平行な方向に半導体素子10よりも大きく伸長する。
しかしながら、この時の加熱温度は、前記バンプ電極10bならびに予備半田20bの融点より低い温度であり、半導体素子10に対して大きな応力の集中を生じない。
【0131】
上記半田リフロー処理の持続より、前記半田部材31とバンプ電極10bならびに予備半田20bが相互に拡散し、図7(c)に示されるように、これらの半田はバンプ40として一体化される。
【0132】
これにより、半導体素子10の電極10elと回路基板20の電極パッド20pが、当該バンプ40を介して機械的に接続され、当該半導体素子10が回路基板20上にフリップチップ実装された状態を得る。
【0133】
即ち、半導体素子10と回路基板20との間は、電気的にも接続可能とされる。
尚、半田はバンプ40の周囲に残留しているフラックス材30fは、必要に応じて洗浄処理により除去される。
【0134】
前記半田リフロー処理の終了後、室温(例えば、25℃)にまで冷却される過程において、半導体素子10は、半導体基板11の主面に対して平行な、矢印cの方向ならびに矢印c’の方向に収縮する。かかる矢印cと矢印c’とは逆方向である。
【0135】
また、回路基板20は、絶縁性基材21の主面に対して平行な、矢印dの方向ならびに矢印d’の方向に収縮する。かかる矢印dと矢印d’とは逆方向である。
この時、前述の如き熱膨張係数の相違に基づき、半導体素子10と回路基板20は、その収縮量が異なる。当該収縮量の相違を、図7(c)にあっても、矢印の長さで表している。
【0136】
即ち、回路基板20は、半導体素子10の主面に対して平行な方向に半導体素子10よりも大きく収縮する。
しかしながら、この時の温度変化は、前記半田部材31の溶融温度から室温までの変化であり、半導体素子10に対して大きな応力の集中を生じない。
【0137】
即ち、本実施の形態に於ける製造方法にあっても、半導体素子10の回路基板20へのフリップチップ実装工程に於ける半田リフローの際の加熱温度を低下させることにより、当該半導体素子10に対する応力の印加量を低減することができる。
【0138】
これにより、当該半導体素子10に於ける低誘電率絶縁層12への応力集中が低減、抑制され、当該低誘電率絶縁層12の破壊、剥離などを防止することができる。
尚、前記リフロー処理は、リフロー専用装置に於いて実施することもできる。
【0139】
この様な、半導体素子10の回路基板20へのフリップチップ実装後、当該半導体素子10と回路基板20との間に、アンダーフィル材と称される封止用樹脂を充填する(図示せず)。
【0140】
或いは、当該半導体素子10を被覆して樹脂封止処理を施す。
そして前記回路基板20の他方の主面(裏面)に、外部接続端子を構成する半田ボールを配設し、BGA(Ball Grid Array)構造を備えた半導体装置を形成する。
【0141】
前記回路基板が大判であって、当該回路基板に複数個の半導体素子が搭載される場合には、当該複数個の半導体素子の一括樹脂封止処理、ならびに外部接続端子の配設がなされた後に、当該配線基板ならびに当該配線基板上にあって半導体素子を覆う封止用樹脂を、その厚さ方向に切断して、個片化された半導体装置を形成する。
【0142】
この様に、第3の実施の形態に於いては、主面にバンプ電極10bが配設された半導体素子10を、回路基板20上にフリップチップボンディング法により搭載する際に、前記回路基板20に於ける電極パッド20p上に予備半田20bを配設し、また前記バンプ電極10bの表面の少なくとも一部に、バンプ電極10b及び予備半田20bよりも融点が低い半田部材31及びフラックス材30fを被覆した後、当該バンプ電極10bと予備半田20bとを半田部材31及びフラックス材30fを介して対向させて、回路基板20上に半導体素子10を載置する。
【0143】
そして、半田部材31を溶融して、バンプ電極10b、半田部材31及び予備半田20bを一体化させる。
これにより、半導体素子10の電極と回路基板20の電極パッドが、バンプ40を介して機械的に接続され、当該半導体素子10が回路基板20上にフリップチップ実装された状態を得る。
【0144】
この様な半導体装置の製造方法によれば、鉛(Pb)フリー半田の中で比較的低融点とされる半田部材31を溶融させて、高融点の半田(バンプ電極10b、予備半田20b)を容易に一体化することができる。
【0145】
即ち、高融点の半田間に、低融点の半田からなる接続用部材を介在させて、低融点の半田の融点近傍でリフロー処理を施すことにより、高融点の半田同士を直接溶融接合させる場合に比べ、リフロー処理温度を低下させることができる。
【0146】
従って、半導体素子10及び回路基板20が、リフロー処理温度まで加熱される際、ならびにリフロー処理温度から室温にまで冷却される際にも、その温度変化を、高融点の半田同士を直接溶融接合させる場合に比べ小さなものとなる。
【0147】
これにより、半導体素子10に強い応力が印加されることはなく、半導体素子10の主面に形成された絶縁層への応力集中が防止される。
従って、当該絶縁層として、低誘電率絶縁層を適用した場合であっても、当該低誘電率絶縁層の破壊、剥離が回避され、低誘電率絶縁層内に配設された配線層、層間接続部の短絡、あるいは断線が防止される。
【0148】
この様に、第3の実施の形態によれば、高い信頼性を有する半導体装置を、高い製造歩留まりをもって、製造することができる。
更に、第3の実施の形態に於いては、半田部材31の表面に、フラックス材30fを予め塗布することにより、半田部材31の表面に酸化皮膜が生成されても、リフロー処理中に除去される。従って、半田部材31表面に酸化皮膜が生じたとしても、半田部材31と予備半田20bとを確実に一体化することができる。
【0149】
<第4の実施の形態>
次に、半導体装置の製造方法の第4の実施の形態について説明する。
当該第4の実施の形態の説明では、第1乃至第3の実施の形態で説明した部位には、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0150】
本第4の実施の形態は、前記第2の実施の形態に於いて接続用部材として適用された半田部材31を、当該第2の実施の形態とは異なる手段によって、半導体素子10のバンプ電極10bの表面に配設するものである。
【0151】
図8は、第4の実施の形態の半導体装置の製造方法を説明する要部断面模式図である。
即ち、本実施の形態にあっては、半導体素子10のバンプ電極10bを、表面が平坦な支持台50上に配置されて溶融状態にある半田材32に接触させる。
【0152】
かかる状態を、図8(a)に示す。
この時、半導体素子10は、ボンディングツール(図示せず)により吸着、保持され、前記支持台50上に当該半導体素子10を降下させて、当該半導体素子10のバンプ電極10bが溶融状態にある半田材32中に浸漬される。
【0153】
当該半田材32は、支持台50に配設された加熱ユニット(図示せず)による加熱により溶融状態が維持され、所謂半田浴を形成している。
当該半田材32は、半田粒、半田片、あるいは半田板を溶融することにより適用される。また、その材質は、鉛(Pb)フリーである2元系半の錫(Sn)−ビスマス(Bi)半田、あるいは鉛(Pb)フリーである3元系半田の錫(Sn)−ビスマス(Bi)−銀(Ag)半田の何れかが適用される。そして、その融点は130℃〜150℃が選択される。
【0154】
前記浸漬の後、前記半導体素子10を支持台50から分離することにより、前記バンプ電極10b表面の一部に、半田材32が転写され、半田部材31が被着された状態を得る。
【0155】
かかる状態を、図8(b)に示す。
この様に、バンプ電極10b表面の一部に、半田部材31が被着された半導体素子10は、前記第2の実施の形態に於ける工程(図5(a)乃至図5(c)参照)を経て、回路基板20上にフリップチップ状態をもって搭載される。
【0156】
そして、当該第4の実施の形態に於いても、前記第1の実施の形態ならびに第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
更に、第4の実施の形態に於いては、溶融状態にある半田材32、即ち半田浴を形成する半田材として、半田片、半田板、あるいは半田粒を適用することができることから、製造コストをより低下させることができる。
【0157】
<第5の実施の形態>
次に、半導体装置の製造方法の第5の実施の形態について説明する。
当該第5の実施の形態の説明では、第1乃至第4の実施の形態で説明した同一の部位には、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0158】
本第5の実施の形態は、前記第2の実施の形態に於いて適用されたフラックス材30fを、当該第2の実施の形態とは異なる手段によって、半導体素子10のバンプ電極10bの表面に被着するものである。
【0159】
図9は、第5の実施の形態の半導体装置の製造方法を説明する要部断面模式図である。
即ち、半導体素子10の半田部材31を、表面が平坦な支持台50上に配置されたフラックス材30fに接触させる。かかる状態を、図9(a)に示す。
【0160】
この時、半導体素子10は、ボンディングツール(図示せず)により吸着、保持され、前記支持台50上に当該半導体素子10を降下させて、当該半導体素子10のバンプ電極10bがフラックス材30f中に浸漬される。
【0161】
そして、前記半導体素子10を支持台50上から離すことにより、前記バンプ電極10bの表面の一部に、フラックス材30fが転写された形態を得る。かかる状態を、図9(b)に示す。
【0162】
しかる後、当該半導体素子10のバンプ電極10bを、前記第4の実施の形態に示される手段に沿って、表面が平坦な支持台50上に配置されて溶融状態にある半田材32に接触させる。
【0163】
この結果、当該バンプ電極10bの表面の一部に、接続用部材としての半田部材31が被着される(第4の実施の形態にかかる図8(b)参照)。
この様に、バンプ電極10b表面の一部に、半田部材31が被着された半導体素子10は、前記第2の実施の形態に於ける工程(図5(a)乃至図5(c)参照)を経て、回路基板20上にフリップチップ状態をもって搭載される。
【0164】
本第5の実施の形態に於いても、第1の実施の形態、第2の実施の形態、ならびに第4の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
更に、本第5の実施の形態に於いては、フラックス材30fをバンプ電極10bの表面に予め被着していることから、当該バンプ電極10b表面に酸化皮膜が生成されても、半田材32への浸漬中に当該酸化皮膜は除去される。
【0165】
従って、バンプ電極10b表面に酸化皮膜が生成された場合でも、半田部材31をバンプ電極10b上に確実に被着することができる。
<第6の実施の形態>
次に、半導体装置の製造方法の第6の実施の形態について説明する。
【0166】
当該第6の実施の形態の説明では、第1乃至第5の実施の形態で説明した部位には、同一の符号を付し、その説明を省略する。
本第6の実施の形態は、前記第2の実施の形態に於いて適用されたフラックス材30fを、半導体素子10のバンプ電極10bの表面への半田部材31の被着の前後に於いて被着する。
【0167】
即ち、第6の実施の形態に於いては、第3の実施の形態乃至第5の実施の形態を複合した実施の形態が提供される。
本第6の実施の形態にあっては、先ず、半導体素子10のバンプ電極10bを、表面が平坦な支持台50上に配置されたフラックス材30fに接触させる。
【0168】
この時、半導体素子10は、ボンディングツール(図示せず)により吸着、保持され、前記支持台50上に当該半導体素子10を降下させて、当該半導体素子10のバンプ電極10bがフラックス材30f中に浸漬される。
【0169】
そして、前記半導体素子10を支持台50から離すことにより、前記バンプ電極10bの表面の一部に、フラックス材30fが転写された形態を得る。
次いで、当該半導体素子10のバンプ電極10bを、表面が平坦な支持台50上に配置されて溶融状態にある半田材32に接触させる。
【0170】
この結果、当該バンプ電極10bの表面の一部に、接続用部材としての半田部材31が被着される。
しかる後、半導体素子10のバンプ電極10bを、表面が平坦な支持台50上に配置されたフラックス材30fに再度接触させる。
【0171】
そして、前記半導体素子10を支持台50から分離することにより、前記半田部材31の表面の一部に、フラックス材30fが転写された形態を得る。
かかる工程により、バンプ電極10bの表面に半田部材31が被着され、更に当該半田部材31の表面にフラックス材30fが転写されてなる半導体素子10を、回路基板20上に所謂フリップチップ状態をもって載置する。
【0172】
そして、半田部材のリフロー処理を施し、前記バンプ電極10b、半田部材31ならびに予備半田20bを一体化する。
この様な製造工程によっても、半導体装置を製造することができる。
【0173】
当該第6の実施の形態に於いても、第1乃至第5の実施の形態と同様の効果が得られる。
<第7の実施の形態>
次に、半導体装置の製造方法の第7の実施の形態について説明する。
【0174】
当該第7の実施の形態の説明では、第1乃至第6の実施の形態で説明した同一の部位には、同一の符号を付し、その説明を省略する。
前述の各実施の態様にあっては、融点が130℃〜150℃である半田材は、半導体素子10のバンプ電極10bの表面に被覆されたが、当該半田材は、回路基板20に於ける電極パッド20pの上に配設された予備半田20b上に被覆されてもよい。
【0175】
本実施の形態にあっては、かかる回路基板20に於ける電極パッド20pの上に配設された予備半田20b(融点210℃〜220℃)上に、接続用部材として、融点が130℃〜150℃である半田材を被覆する。
【0176】
本実施の形態の半導体装置の製造方法を、図10ならびに図11を用いて説明する。
先ず、回路基板20の電極パッド20p上に、予備半田20bを被覆した後、当該回路基板20上に金属製のマスク部材52を配置する。かかる状態を、図10(a)に示す。
【0177】
当該マスク部材52は、半田ペースト30を選択的に配置するための貫通孔52hがパターン形成されている。
次いで、スクリーン印刷法を用いて、マスク部材52の貫通孔52h内に、半田ペースト30を充填する。かかる状態を、図10(b)に示す。
【0178】
しかる後、マスク部材52を回路基板20から分離して、予備半田20b表面上に半田ペースト30を配設する。かかる状態を、図10(c)に示す。
当該半田ペースト30として、粒径が10μm以下の半田粒がフラックス材中に混錬されたペースト状の半田材を用いる。
【0179】
当該半田粒の材質としては、鉛(Pb)フリーである2元系半の錫(Sn)−ビスマス(Bi)半田、或いは、鉛(Pb)フリーである3元系半田の錫(Sn)−ビスマス(Bi)−銀(Ag)半田の何れかが適用される。当該半田粒は、130℃〜150℃の融点を有する。
【0180】
この様に、各電極パッド20pの上に配設された予備半田20b上に、融点が130℃〜150℃である半田材を被覆された回路基板20に対し、半導体素子10が所謂フリップチップ接続をもって実装、搭載される。
【0181】
即ち、図11(a)に示される如く、回路基板20上に配置された電極パッド20pの上を覆う予備半田20bの上に配置された半田ペースト30に対し、前記半導体素子10に於けるバンプ電極10bが接した状態をもって、当該半導体素子10が載置される。
【0182】
この様に、回路基板20上に半導体素子10を載置した状態に於いて、当該回路基板20を支持する支持テーブル(図示せず)に配設された加熱ユニットにより加熱して、前記半田ペースト30に含まれる半田粒のリフロー処理を施す。
【0183】
この時、当該半田リフロー処理に於ける加熱処理温度は、半田ペースト30に含まれる半田粒のみが溶融する温度に設定される。
即ち、加熱処理温度は、前記半田ペースト30に含まれる半田粒の融点以上であり、且つバンプ電極10b及び予備半田20bの融点より低い温度、例えば150℃〜170℃に設定される。また、当該半田リフロー処理に要する時間は、30秒〜3分とされる。
【0184】
かかる半田リフロー処理に於ける加熱により、図11(b)に示すように、半導体素子10は、半導体基板11の主面に対して平行な、矢印aの方向ならびに矢印a’の方向に伸長する。かかる矢印aと矢印a’とは逆方向である。
【0185】
一方、回路基板20は、絶縁性基材21の主面に対して平行な、矢印bの方向ならびに矢印b’の方向に伸長する。かかる矢印bと矢印b’とは逆方向である。
この時、前述の如き熱膨張係数の相違に基づき、半導体素子10と回路基板20は、その伸長する量が異なる。当該伸長量の相違を、図11(b)にあっては、矢印の長さで表している。
【0186】
即ち、回路基板20は、半導体素子10の主面に対して平行な方向に半導体素子10よりも大きく伸長する。
しかしながら、この時の加熱温度は、前記バンプ電極10bならびに予備半田20bの融点より低い温度であり、半導体素子10に対して大きな応力の集中を生じない。
【0187】
上記半田リフロー処理の持続より、前記半田ペースト30に含まれる半田粒とバンプ電極10bならびに予備半田20bが相互に拡散し、図11(c)に示されるように、これらの半田はバンプ40として一体化される。
【0188】
これにより、半導体素子10の電極10elと回路基板20の電極パッド20pが、当該バンプ40を介して機械的に接続され、当該半導体素子10が回路基板20上にフリップチップ実装された状態を得る。
【0189】
即ち、半導体素子10と回路基板20との間は、電気的にも接続可能とされる。
前記半田リフロー処理の終了後、室温(例えば、25℃)にまで冷却される過程において、半導体素子10は、半導体基板11の主面に対して平行な、矢印cの方向ならびに矢印c’の方向に収縮する。かかる矢印cと矢印c’とは逆方向である。
【0190】
また、回路基板20は、絶縁性基材21の主面に対して平行な、矢印dの方向ならびに矢印d’の方向に収縮する。かかる矢印dと矢印d’とは逆方向である。
この時、前述の如き熱膨張係数の相違に基づき、半導体素子10と回路基板20は、その収縮量が異なる。当該収縮量の相違を、図11(c)にあっても、矢印の長さで表している。
【0191】
即ち、回路基板20は、半導体素子10の主面に対して平行な方向に半導体素子10よりも大きく収縮する。
しかしながら、この時の温度変化は、前記半田ペースト30に含まれる半田粒の溶融温度から室温までの変化であり、半導体素子10に対して大きな応力の集中を生じない。
【0192】
即ち、本実施の形態に於ける製造方法にあっても、半導体素子10の回路基板20へのフリップチップ実装工程に於ける半田リフローの際の加熱温度を低下させることにより、当該半導体素子10に対する応力の印加量を低減することができる。
【0193】
これにより、当該半導体素子10に於ける低誘電率絶縁層12への応力集中が低減、抑制され、当該低誘電率絶縁層12の破壊、剥離などを防止することができる。
尚、前記リフロー処理は、リフロー専用装置に於いて実施することもできる。
【0194】
この様な、半導体素子10の回路基板20へのフリップチップ実装後、当該半導体素子10と回路基板20との間に、アンダーフィル材と称される封止用樹脂を充填する(図示せず)。
【0195】
或いは、当該半導体素子10を被覆して樹脂封止処理を施す。
そして前記回路基板20の他方の主面(裏面)に、外部接続端子を構成する半田ボールを配設し、BGA(Ball Grid Array)構造を備えた半導体装置を形成する。
【0196】
前記回路基板が大判であって、当該回路基板に複数個の半導体素子が搭載される場合には、当該複数個の半導体素子の一括樹脂封止処理、ならびに外部接続端子の配設がなされた後に、当該配線基板ならびに当該配線基板上にあって半導体素子を覆う封止用樹脂を、その厚さ方向に切断して、個片化された半導体装置を形成する。
【0197】
この様に、第7の実施の形態に於いては、主面にバンプ電極10bが配設された半導体素子10を、回路基板20上にフリップチップボンディング法により搭載する際に、前記回路基板20に於ける電極パッド20p上に配設された予備半田20bの上に予め半田ペースト30を被着する。
【0198】
そして、半導体素子10のバンプ電極10bと予備半田20bとを半田ペースト30を介して対向させて、回路基板20上に半導体素子10を載置する。
しかる後、半田ペースト30中の半田粒を溶融して、バンプ電極10b、半田粒、及び予備半田20bを一体化させる。
【0199】
これにより、半導体素子10の電極と回路基板20の電極パッドが、バンプ40を介して機械的に接続され、当該半導体素子10が回路基板20上にフリップチップ実装された状態を得る。
【0200】
この様な半導体装置の製造方法によれば、鉛(Pb)フリー半田の中で比較的低融点とされる半田ペースト30の半田粒のみを溶融させて、高融点の半田(バンプ電極10b、予備半田20b)を容易に一体化することができる。
【0201】
即ち、高融点の半田間に、低融点の半田からなる接続用部材を介在させ、当該低融点半田の融点近傍でリフロー処理を施すことにより、高融点の半田同士を直接溶融接合させる場合に比べ、リフロー処理温度を低下させることができる。
【0202】
従って、半導体素子10及び回路基板20が、リフロー処理温度まで加熱される際、ならびにリフロー処理温度から室温にまで冷却される際にも、その温度変化を、高融点の半田同士を直接溶融接合させる場合に比べ小さなものとなる。
【0203】
これにより、半導体素子10に強い応力が印加されることはなく、半導体素子10の主面に形成された絶縁層への応力集中が防止される。
従って、当該絶縁層として、低誘電率絶縁層を適用した場合であっても、当該低誘電率絶縁層の破壊、剥離が回避され、低誘電率絶縁層内に配設された配線層、層間接続部の短絡、あるいは断線が防止される。
【0204】
この様に、第7の実施の形態によれば、高い信頼性を有する半導体装置を、高い製造歩留まりをもって製造することができる。
更に、第7の実施の形態に於いては、配線基板上の電極に予備半田20bを介して半田ペースト30を配置していることから、半導体素子10に於けるバンプ電極10bに対する半田ペースト30或いは半田部材31の被覆を省略することができ、当該半導体素子に於ける電極部の形成工程の簡略化を図ることができる。
【0205】
一方、回路基板20上の電極パッド20pへの半田ペースト30の被覆は、半導体素子10の電極部の形成工程とは別途に、例えば平行して実施することができる。
従って、半導体装置を製造に要する時間を短縮することができる。
【0206】
尚、前述の如き本発明の実施形態に於いては、回路基板20上の電極パッド20pに対し予備半田処理(予備半田20bの配設)を施しているが、当該電極パッド20pと、前記接続用部材及び/あるいはバンプ電極10bを形成する半田材との濡れ性が良好であれば、当該予備半田処理は必ずしも必要とされない。
【0207】
また、当該予備半田20bの融点は、前記接続用部材の融点よりも高い融点を有すれば、前記融点(210℃〜220℃)に限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0208】
【図1】第1の実施の形態に於ける製造工程のフロー図である。
【図2】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法を説明する要部断面模式図である(その1)。
【図3】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法を説明する要部断面模式図である(その2)。
【図4】第2の実施の形態の半導体装置の製造方法を説明する要部断面模式図である(その1)。
【図5】第2の実施の形態の半導体装置の製造方法を説明する要部断面模式図である(その2)。
【図6】第3の実施の形態の半導体装置の製造方法を説明する要部断面模式図である(その1)。
【図7】第3の実施の形態の半導体装置の製造方法を説明する要部断面模式図である(その2)。
【図8】第4の実施の形態の半導体装置の製造方法を説明する要部断面模式図である。
【図9】第5の実施の形態の半導体装置の製造方法を説明する要部断面模式図である。
【図10】第7の実施の形態の半導体装置の製造方法を説明する要部断面模式図である(その1)。
【図11】第7の実施の形態の半導体装置の製造方法を説明する要部断面模式図である(その2)。
【符号の説明】
【0209】
10 半導体素子
10b バンプ電極
10el 電極
10p,20p 電極パッド
11 半導体基板
12 低誘電率絶縁層
13 金属層
14 無機絶縁層
15 有機絶縁層
20 回路基板
20b 予備半田
21 絶縁性基材
22 ソルダレジスト
30 半田ペースト
30f フラックス材
31 半田部材
32 半田材
40 バンプ
50 支持台
51 スキージ
52 マスク部材
52h 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子に配設された第1の材料からなる電極と、回路基板に配設された電極とを、前記第1の材料より融点の低い第2の材料を介して接続することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1の材料の融点より低く、且つ、前記第2の材料の融点より高い温度で、前記半導体素子の電極と前記回路基板の電極とを接続することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第2の材料は、前記半導体素子の電極上に形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第2の材料からなる半田粒子を含むペーストに、前記半導体素子の電極を接触させることにより、前記半導体素子の電極に前記第2の材料からなる膜を形成することを特徴とする請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
溶融した前記第2の材料に前記半導体素子の電極を接触させることにより、前記半導体素子の電極に前記第2の材料からなる膜を形成することを特徴とする請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記半導体素子の電極に前記第2の材料からなる膜を形成した後に、前記第2の材料からなる膜上にフラックス材を塗布することを特徴とする請求項4又は5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記回路基板の電極に前記半導体素子の電極を接続する前に、前記回路基板の電極上に前記第2の材料より融点の高い第3の材料を塗布することを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第2の材料は、前記回路基板の電極上の第3の材料の上に形成されることを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1の材料は、Sn−Cu、Sn−Ag、Sn−Ag−Cu、Sn−Ag−Cu−Bi、Sn−Ag−In、Sn−Ag−In−Bi、Sn−Zn、及びSn−Zn−Biのいずれかを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記第2の材料は、Sn−Bi、及びSn−Bi−Agのいずれかを含むことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−109032(P2010−109032A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277854(P2008−277854)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】