半導体装置の製造方法
【課題】製造工程の増大が抑制され、且つ振動子間の静電容量が安定した半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体基板10の上面に形成された凹部100内に自由端が延在し、半導体基板10に固定端が固定された梁型の振動子21、22を備える半導体装置1の製造方法であって、半導体基板10の上面の一部をエッチングして、振動子21、22の側面を露出させると同時に、振動子22と半導体基板10間の絶縁分離領域30が形成される分離溝を形成するステップと、分離溝の表面を熱酸化して、分離溝を酸化膜で埋め込んだ絶縁分離領域30を形成するステップと、振動子21、22の側面を熱酸化して、側面保護膜を形成するステップと、側面保護膜をマスクにした半導体基板10のエッチングにより振動子21、22の下面を露出させて、半導体基板10に形成された凹部100内に配置された振動子21、22を形成するステップとを含む。
【解決手段】半導体基板10の上面に形成された凹部100内に自由端が延在し、半導体基板10に固定端が固定された梁型の振動子21、22を備える半導体装置1の製造方法であって、半導体基板10の上面の一部をエッチングして、振動子21、22の側面を露出させると同時に、振動子22と半導体基板10間の絶縁分離領域30が形成される分離溝を形成するステップと、分離溝の表面を熱酸化して、分離溝を酸化膜で埋め込んだ絶縁分離領域30を形成するステップと、振動子21、22の側面を熱酸化して、側面保護膜を形成するステップと、側面保護膜をマスクにした半導体基板10のエッチングにより振動子21、22の下面を露出させて、半導体基板10に形成された凹部100内に配置された振動子21、22を形成するステップとを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梁型の振動子を備える半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
梁型の振動子を備えるMEMS(Micro Electro Mechanical System)素子、表面弾性波(SAW)素子、圧電材料を使用した圧電薄膜共振器(FBAR)等の半導体装置が、加速度センサやジャイロセンサ等に使用されている。例えば、2つの振動子間の静電容量の変化を検知して加速度を検出する静電容量型加速度センサ等が実用化されている。
【0003】
自由端を有する梁型の振動子を形成するために、シリコン基板上に絶縁膜層とシリコン層を積層したSOI基板が一般的に使用されている。絶縁膜層は犠牲層として使用され、シリコン層が自由端として使用される。一方、犠牲層を用いない製造方法も提案されている(例えば、特許文献1参照。)。犠牲層を用いない製造方法では、振動子の自由端とシリコン基板に固定された振動子の固定端との間に形成したアイソレーション用トレンチに絶縁性材料を充填して、振動子の自由端とシリコン基板との間に絶縁分離領域が形成される。
【特許文献1】特表2002−510139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記に提案された犠牲層を用いない製造方法においては、絶縁分離領域を形成するエッチングと振動子を形成するエッチングのために、深堀り反応性イオンエッチング(D−RIE)工程が2回必要であり、工程数や工程時間が増大する。更に、化学気相成長(CVD)法によって振動子の側面に側面絶縁膜を形成するため、振動子の下面に近いほど側面絶縁膜が薄くなり、側面絶縁膜の膜厚が均一にならないという問題があった。振動子の側面絶縁膜の膜厚が均一でないと、振動子間の静電容量の変化を検知する半導体装置の特性が不安定になる。
【0005】
上記問題点を鑑み、本発明は、製造工程の増大が抑制され、且つ振動子間の静電容量が安定した半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、半導体基板の上面に形成された凹部内に自由端が延在し、半導体基板に固定端が固定された複数の梁型の振動子を備える半導体装置の製造方法であって、(イ)半導体基板の上面の一部をエッチングして、振動子の側面を露出させると同時に、振動子と半導体基板間の絶縁分離領域が形成される分離溝を形成するステップと、(ロ)分離溝の表面を熱酸化して、分離溝を酸化膜で埋め込んだ絶縁分離領域を形成するステップと、(ハ)振動子の側面を熱酸化して、側面保護膜を形成するステップと、(ニ)側面保護膜をマスクにした半導体基板のエッチングにより振動子の下面を露出させて、半導体基板に形成された凹部内に配置された振動子を形成するステップとを含む半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、製造工程の増大が抑制され、且つ振動子間の静電容量が安定した半導体装置の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0009】
又、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
本発明の実施の形態における半導体装置の製造方法は、図1に示すような、半導体基板10の上面に形成された凹部100内に自由端が延在し、半導体基板10に固定端が固定された梁型の振動子21、22を備える半導体装置1の製造方法である。即ち、半導体基板10の上面の一部をエッチングして、振動子21、22の側面を露出させると同時に、振動子22と半導体基板10間の絶縁分離領域30が形成される分離溝を形成するステップと、分離溝の表面を熱酸化して、分離溝を酸化膜で埋め込んだ絶縁分離領域30を形成するステップと、振動子21、22の側面を熱酸化して、側面保護膜を形成するステップと、側面保護膜をマスクにした半導体基板10のエッチングにより振動子21、22の下面を露出させて、半導体基板10に形成された凹部100内に配置された振動子21、22を形成するステップとを含む。
【0011】
振動子21、22は梁型の振動子であり、半導体装置1は、振動子21と振動子22間の距離に依存する静電量容量の変動を用いて加速度を検出する静電容量型加速度センサである。半導体基板10には、例えばシリコン基板を採用可能である。
【0012】
振動子21は、両端が半導体基板10に固定されて凹部100内に配置された中心ストライプ部と、中心ストライプ部に固定された固定端側から凹部100内に自由端が延伸する複数の梁部とを有するフィッシュボーン構造の梁型振動子である。振動子22は、凹部100を囲む周辺部において半導体基板10に固定された固定端と凹部100内に延在する自由端とを有する梁型振動子である。振動子22の固定端と自由端との間に、絶縁分離領域30が形成される。図1に示すように、自由端と半導体基板10との間に絶縁分離領域30が形成された振動子22の梁部と、自由端が半導体基板10と電気的に接続する振動子21の梁部とが交互に配列され、振動子21の自由端と振動子22の自由端は凹部100内で交差指状に配置される。
【0013】
図1のIIa−IIa方向に沿った断面図を図2(a)に、IIb−IIb方向に沿った断面図を図2(b)に、図1のIIc−IIc方向に沿った断面図を図2(c)にそれぞれ示す。また、図1の領域Dの斜視図を図2(d)に示す。
【0014】
図2(a)に示すように、振動子21、22の側面上に側面絶縁膜40が形成されている。振動子21、22の上面上に上面酸化膜50が形成され、上面酸化膜50上にPSG膜52が形成されている。振動子21、22の下面は凹部100内で露出している。
【0015】
図2(b)に示すように、振動子22上の上面酸化膜50及びPSG膜52の一部を除去して開口部55が形成されている。開口部55において振動子22と電気的に接続する金属電極62が、PSG膜52上に形成されている。図1では、開口部55を破線で示している。
【0016】
図2(c)に示すように、半導体基板10上の上面酸化膜50及びPSG膜52の一部を除去して開口部55が形成され、開口部55において半導体基板10と接する金属電極61がPSG膜52上に形成されている。金属電極61は、半導体基板10を介して振動子21と電気的に接続する
振動子21、22は凹部100内に自由端が延在する梁型振動子であり、振動子21、22の自由端は外部からの衝撃等の外因に応じて位置が変化する。振動子21の自由端と振動子22の自由端は交差指状に配置されるため、振動子21、22の位置が変化すると、振動子21と振動子22間の静電容量が変化する。
【0017】
半導体装置1の動作例を以下に説明する。半導体装置1に外力が加わると、外力の影響により振動子21と振動子22間の距離が変化する。振動子21と振動子22間に電圧を印加した状態で半導体装置1に外力が加わると、振動子21と振動子22間の距離の変化は、静電容量の変化として検知される。半導体装置1は、検知された静電容量の変化を検出信号で信号処理回路(図示略)に伝達する。信号処理回路は、検出信号を処理して半導体装置1に生じた加速度を検出する。つまり、半導体装置1は、振動子21と振動子22間の静電容量の変化に基づいて加速度を検出する加速度検出装置の一部である。信号処理回路は、半導体装置1と同一チップ上に配置してもよいし、半導体装置1が配置されたチップと異なるチップ上に配置してもよい。
【0018】
振動子22と半導体基板10の間に、振動子22と半導体基板10とを電気的に分離する絶縁分離領域30が配置される。このため、振動子21と振動子22がキャパシタプレートとして機能する。振動子22からの電気信号は、金属電極62を介して半導体装置1の外部に出力される。振動子21からの電気信号は、半導体基板10と接触する金属電極61を介して半導体装置1の外部に出力される。
【0019】
図1に示した半導体装置1では、感度をよくするために、振動子21の半導体基板10との接続部分をバネ形状にして振動子21を振動しやすくしている。このため、半導体基板10を介して振動子21からの電気信号を金属電極61に伝達する構成を採用している。しかし、振動子21と半導体基板10との間にも絶縁分離領域30を設け、振動子21と金属電極61を直接接続してもよい。
【0020】
図3〜図12を参照して、本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明する。図3〜図12において、図(a)は図2(a)と同方向に沿った断面図であり、図(b)は図2(b)と同方向に沿った断面図であり、図(c)は図2(c)と同方向に沿った断面図である。また、図(d)は図1の領域Dと同領域の斜視図、図(e)は上面図である。図3〜図12の図(a)〜図(c)の切断面の方向、及び図(d)の領域Dの位置を、図(e)に示す。なお、以下に述べる半導体装置の製造方法は一例であり、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により実現可能であることは勿論である。
【0021】
(イ)図3(a)〜図3(e)に示すように、シリコン基板である半導体基板10の上面を熱酸化して上面酸化膜50を形成する。上面酸化膜50の膜厚は、例えば500nm程度である。図4(a)〜図4(e)に示すように、上面酸化膜50上にCVD法等によって膜厚1μm程度のPSG膜52を形成し、上面酸化膜50とPSG膜52とが積層された上面絶縁膜を形成する。
【0022】
(ロ)フォトリソグラフィ技術を用いて、フォトレジスト膜をマスクにした選択的エッチングにより上面絶縁膜の一部を除去し、図5(a)〜図5(e)に示すように、開口部55を形成する。
【0023】
(ハ)後述する窒化シリコン(SiN)膜54による結晶欠陥を防止するために、開口部55で露出した半導体基板10の上面を50nm程度熱酸化し、図6(a)〜図6(e)に示すように犠牲酸化膜56を形成する。
【0024】
(ニ)半導体基板10の全面に、減圧CVD法等によって膜厚150〜350nm程度のSiN膜54を形成する。次いで、フォトリソグラフィ技術等を用いてSiN膜54、PSG膜52及び上面酸化膜50をパターニングし、半導体基板10の上面の一部を露出させる。具体的には、図7(a)〜図7(e)に示すように、凹部100が形成される領域の半導体基板10の上面が露出された開口部410、及び絶縁分離領域30が形成される領域の半導体基板10の上面が露出された開口部310を形成する。振動子21、22間の距離である開口部410の幅d1は、例えば2μmである。絶縁分離領域30が延伸する方向と垂直方向の開口部310の幅d2は、例えば0.5μmである。
【0025】
(ホ)パターニングされたSiN膜54をマスクにして半導体基板10の上面をエッチングし、図8(a)〜図8(e)に示すように、側面溝420を形成し、振動子21、22の側面を露出させる。側面溝420の形成と同時に、分離溝320を形成する。側面溝420及び分離溝320の深さは例えば25μm程度である。側面溝420及び分離溝320を形成するエッチングには、深堀り反応性イオンエッチング(D−RIE)法を用いたボッシュ法等が採用可能である。
【0026】
(ヘ)図9(a)〜図9(e)に示すように、側面溝420の表面を熱酸化して、側面絶縁膜40及び底面絶縁膜42を形成する。側面絶縁膜40及び底面絶縁膜42の膜厚は、例えば1〜2μm程度である。側面溝420の表面の熱酸化と同時に分離溝320の表面を熱酸化して、分離溝320を熱酸化膜で埋め込んだ絶縁分離領域30を形成する。なお、分離溝320が酸化膜で埋め込まれると、分離溝320の表面での熱酸化プロセスは停止する。
【0027】
(ト)図10(a)〜図10(e)に示すように、SiN膜54を除去する。次いで、開口部55の底面に露出された犠牲酸化膜56を、バッファードフッ酸又は希フッ酸を用いて除去する。
【0028】
(チ)図11(a)〜図11(e)に示すように、リフトオフ法等を用いて、所望のパターンの金属電極61、62を形成する。金属電極61、62には、アルミニウム(Al)膜や銅(Cu)膜等が採用可能である。例えば、リフトオフ用のフォトレジスト膜を半導体基板10の上面全体に成膜した後、フォトリソグラフィ技術等を用いてフォトレジスト膜をパターニングする。その後、スパッタ法又は蒸着法により半導体基板10の上面全体に膜厚1〜3μm程度のAl膜を形成する。そして、フォトレジスト膜を用いたリフトオフ法によりAl膜の一部を除去し、Al膜からなる金属電極61、62を所望のパターンに形成する。具体的には、開口部55において振動子21と半導体基板10を介して電気的に接続する金属電極61、及び開口部55において振動子22と電気的に接続する金属電極62が、PSG膜52上にそれぞれ形成される。振動子21と振動子22間で検知された静電容量の変化は、金属電極61、62を介して半導体装置1の外部に出力される。
【0029】
(リ)図12(a)〜図12(e)に示すように、側面溝420の底部に露出された底面絶縁膜42をRIE法により除去する。RIE法を用いるため、側面絶縁膜40はエッチングされずに側面溝420の側面上に残る。
【0030】
(ヌ)PSG膜52、側面絶縁膜40をマスクにして半導体基板10の露出した上面をエッチング除去し、振動子21、22の下面を露出させる。半導体基板10のエッチングには、二フッ化キセノン(XeF2)を使用した等方性エッチャー等が使用可能である。上記の半導体基板10のエッチングによって、半導体基板10の上面に凹部100が形成され、振動子21、22が凹部100内に配置される。以上により、図1に示した半導体装置1が完成する。
【0031】
上記では、PSG膜52を形成する工程の直後に、図5(a)〜図5(e)に示したように開口部55を形成する方法を示した。しかし、例えば 図9(a)〜図9(e)に示した側面絶縁膜40及び絶縁分離領域30を形成する工程の後で、開口部55を形成してもよい。
【0032】
以上に説明したように、振動子21、22の側面上に配置される側面絶縁膜40、及び分離溝320を酸化膜で埋め込んだ絶縁分離領域30が、熱酸化によって形成される。このため、分離溝320の溝の幅d2は1μm以下であることが好ましい。例えば幅d2が1μmの場合は、熱酸化により半導体基板10の側面上に形成される側面絶縁膜40の膜厚は2μm程度に設定される。また、幅d2が0.5μmの場合は、側面絶縁膜40の膜厚は1.5μm程度でもよい。絶縁分離領域30と側面絶縁膜40を同時に形成する場合は、絶縁分離領域30の上面を平坦にするために、幅d2の1.5倍程度の厚さに側面絶縁膜40を形成することが好ましい。熱酸化時間が長すぎると、絶縁分離領域30の上面が粗くなるためである。
【0033】
上記のように幅d2を微細にすることにより、熱酸化工程のみで分離溝320を酸化膜で埋め込むことができる。熱酸化工程によって側面溝420及び分離溝320を同時に形成することにより、側面絶縁膜40と絶縁分離領域30の位置合わせ精度が向上すると共に、製造工程数を削減できる。
【0034】
また、半導体装置1では、振動子21、22の側面が側面絶縁膜40で覆われているため、側面絶縁膜40より深い位置の半導体基板10が基板厚さ方向に水平な方向にもエッチングされて、振動子21、22の下面が露出される。したがって、振動子21、22の厚みは側面溝420の深さによって決まる。つまり、振動子21、22の厚みはD−RIE装置の性能に依存する。例えばアスペクト比が60〜100のD−RIE装置を使用すれば、幅d2が1μmの場合に振動子21、22の厚みは60〜100μmまで可能である。一方、側面絶縁膜40をCVD法で形成する場合は、側面絶縁膜40を安定して形成できる深さは20〜25μm程度である。
【0035】
なお、振動子21、22の下面は絶縁膜で覆われていないため、凹部100を形成する際に振動子21、22の下面が若干エッチングされる。しかし、凹部100に露出した絶縁分離領域30の下面と振動子21、22の下面はほぼ同一平面レベルにある。
【0036】
以上のように、図3〜図12を参照して説明した半導体装置1の製造法では、振動子21、22の側面を露出させるための側面溝420の形成と、分離溝320の形成とが同時に行われる。このため、D−RIE装置を使用する工程は1回である。また、振動子21、22の側面上の側面絶縁膜40と分離溝320を埋め込む絶縁分離領域30が、熱酸化によって形成される。このため、CVD法によって側面絶縁膜40を形成する方法等と異なり、側面絶縁膜40の膜厚が均一になり、且つ膜質が安定する。したがって、本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造法によれば、製造工程の増大が抑制され、且つ振動子間の静電容量が安定した半導体装置の製造方法を提供できる。
【0037】
<変形例>
図10(a)〜図10(e)では、振動子21、22上のSiN膜54をすべて除去する例を示した。ただし、縦方向の加速度を検出する場合には、振動子21、22のいずれか一方について、振動子上にSiN膜54の一部を残してもよい。ここで「縦方向」とは、半導体基板10の厚さ方向である。図13は振動子22上のSiN膜54を除去しない例を示す。図13は、図10(b)と同じ領域の断面図である。
【0038】
振動子21と振動子22のいずれかの上面にSiN膜54を残した場合、応力の差によって梁の反り方が振動子21と振動子22とで異なる。図14に示したように振動子22上にSiN膜54を残した場合は、図15に示すように、振動子22の自由端の上面が振動子21の自由端の上面より高くなる。これにより、縦方向の加速度を検出することができる。
【0039】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0040】
既に述べた実施の形態の説明においては、半導体装置1が振動子21、22からなる一組の振動子組を有する例を示した。しかし、二組の振動子組を用いて、X方向とY方向の加速度を検出する加速度センサを構成してもよい。X方向の加速度を検出する加速度センサとY方向の加速度を検出する加速度センサとでは、振動子の自由端が延伸する方向が互いに垂直になるように配置する。或いは、図13〜図15で説明した縦方向(基板厚さ方向)の加速度を検出する振動子組を更に追加し、3次元の加速度を検出する加速度センサを構成してもよい。
【0041】
また、半導体装置1が加速度センサである例を示したが、半導体装置1がMEMS素子以外の、例えばSAW素子或いはFBARであってもよい。また、振動子を有する半導体装置であれば、加速度センサ以外の、例えばジャイロセンサ等の製造方法にも本発明は適用可能である。
【0042】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法で製造される半導体装置の構成を示す模式図である。
【図2】図1に示した半導体装置の断面図であり、図2(a)は図1のIIa−IIa方向に沿った断面図、図2(b)は図1のIIb−IIb方向に沿った断面図、図2(c)は図1のIIc−IIc方向に沿った断面図、図2(d)は図1の領域Dの斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程図である(その1)。
【図4】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程図である(その2)。
【図5】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程図である(その3)。
【図6】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程図である(その4)。
【図7】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程図である(その5)。
【図8】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程図である(その6)。
【図9】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程図である(その7)。
【図10】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程図である(その8)。
【図11】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程図である(その9)。
【図12】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程図である(その10)。
【図13】本発明の実施の形態の変形例に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である。
【図14】本発明の実施の形態の変形例に係る半導体装置の振動子を示す模式図である。
【図15】本発明の実施の形態の変形例に係る半導体装置の振動子の自由端を示す模式図である。
【符号の説明】
【0044】
1…半導体装置
10…半導体基板
21、22…振動子
30…絶縁分離領域
40…側面絶縁膜
42…底面絶縁膜
50…上面酸化膜
52…PSG膜
54…SiN膜
55…開口部
56…犠牲酸化膜
61、62…金属電極
100…凹部
310…開口部
320…分離溝
410…開口部
420…側面溝
【技術分野】
【0001】
本発明は、梁型の振動子を備える半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
梁型の振動子を備えるMEMS(Micro Electro Mechanical System)素子、表面弾性波(SAW)素子、圧電材料を使用した圧電薄膜共振器(FBAR)等の半導体装置が、加速度センサやジャイロセンサ等に使用されている。例えば、2つの振動子間の静電容量の変化を検知して加速度を検出する静電容量型加速度センサ等が実用化されている。
【0003】
自由端を有する梁型の振動子を形成するために、シリコン基板上に絶縁膜層とシリコン層を積層したSOI基板が一般的に使用されている。絶縁膜層は犠牲層として使用され、シリコン層が自由端として使用される。一方、犠牲層を用いない製造方法も提案されている(例えば、特許文献1参照。)。犠牲層を用いない製造方法では、振動子の自由端とシリコン基板に固定された振動子の固定端との間に形成したアイソレーション用トレンチに絶縁性材料を充填して、振動子の自由端とシリコン基板との間に絶縁分離領域が形成される。
【特許文献1】特表2002−510139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記に提案された犠牲層を用いない製造方法においては、絶縁分離領域を形成するエッチングと振動子を形成するエッチングのために、深堀り反応性イオンエッチング(D−RIE)工程が2回必要であり、工程数や工程時間が増大する。更に、化学気相成長(CVD)法によって振動子の側面に側面絶縁膜を形成するため、振動子の下面に近いほど側面絶縁膜が薄くなり、側面絶縁膜の膜厚が均一にならないという問題があった。振動子の側面絶縁膜の膜厚が均一でないと、振動子間の静電容量の変化を検知する半導体装置の特性が不安定になる。
【0005】
上記問題点を鑑み、本発明は、製造工程の増大が抑制され、且つ振動子間の静電容量が安定した半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、半導体基板の上面に形成された凹部内に自由端が延在し、半導体基板に固定端が固定された複数の梁型の振動子を備える半導体装置の製造方法であって、(イ)半導体基板の上面の一部をエッチングして、振動子の側面を露出させると同時に、振動子と半導体基板間の絶縁分離領域が形成される分離溝を形成するステップと、(ロ)分離溝の表面を熱酸化して、分離溝を酸化膜で埋め込んだ絶縁分離領域を形成するステップと、(ハ)振動子の側面を熱酸化して、側面保護膜を形成するステップと、(ニ)側面保護膜をマスクにした半導体基板のエッチングにより振動子の下面を露出させて、半導体基板に形成された凹部内に配置された振動子を形成するステップとを含む半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、製造工程の増大が抑制され、且つ振動子間の静電容量が安定した半導体装置の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0009】
又、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
本発明の実施の形態における半導体装置の製造方法は、図1に示すような、半導体基板10の上面に形成された凹部100内に自由端が延在し、半導体基板10に固定端が固定された梁型の振動子21、22を備える半導体装置1の製造方法である。即ち、半導体基板10の上面の一部をエッチングして、振動子21、22の側面を露出させると同時に、振動子22と半導体基板10間の絶縁分離領域30が形成される分離溝を形成するステップと、分離溝の表面を熱酸化して、分離溝を酸化膜で埋め込んだ絶縁分離領域30を形成するステップと、振動子21、22の側面を熱酸化して、側面保護膜を形成するステップと、側面保護膜をマスクにした半導体基板10のエッチングにより振動子21、22の下面を露出させて、半導体基板10に形成された凹部100内に配置された振動子21、22を形成するステップとを含む。
【0011】
振動子21、22は梁型の振動子であり、半導体装置1は、振動子21と振動子22間の距離に依存する静電量容量の変動を用いて加速度を検出する静電容量型加速度センサである。半導体基板10には、例えばシリコン基板を採用可能である。
【0012】
振動子21は、両端が半導体基板10に固定されて凹部100内に配置された中心ストライプ部と、中心ストライプ部に固定された固定端側から凹部100内に自由端が延伸する複数の梁部とを有するフィッシュボーン構造の梁型振動子である。振動子22は、凹部100を囲む周辺部において半導体基板10に固定された固定端と凹部100内に延在する自由端とを有する梁型振動子である。振動子22の固定端と自由端との間に、絶縁分離領域30が形成される。図1に示すように、自由端と半導体基板10との間に絶縁分離領域30が形成された振動子22の梁部と、自由端が半導体基板10と電気的に接続する振動子21の梁部とが交互に配列され、振動子21の自由端と振動子22の自由端は凹部100内で交差指状に配置される。
【0013】
図1のIIa−IIa方向に沿った断面図を図2(a)に、IIb−IIb方向に沿った断面図を図2(b)に、図1のIIc−IIc方向に沿った断面図を図2(c)にそれぞれ示す。また、図1の領域Dの斜視図を図2(d)に示す。
【0014】
図2(a)に示すように、振動子21、22の側面上に側面絶縁膜40が形成されている。振動子21、22の上面上に上面酸化膜50が形成され、上面酸化膜50上にPSG膜52が形成されている。振動子21、22の下面は凹部100内で露出している。
【0015】
図2(b)に示すように、振動子22上の上面酸化膜50及びPSG膜52の一部を除去して開口部55が形成されている。開口部55において振動子22と電気的に接続する金属電極62が、PSG膜52上に形成されている。図1では、開口部55を破線で示している。
【0016】
図2(c)に示すように、半導体基板10上の上面酸化膜50及びPSG膜52の一部を除去して開口部55が形成され、開口部55において半導体基板10と接する金属電極61がPSG膜52上に形成されている。金属電極61は、半導体基板10を介して振動子21と電気的に接続する
振動子21、22は凹部100内に自由端が延在する梁型振動子であり、振動子21、22の自由端は外部からの衝撃等の外因に応じて位置が変化する。振動子21の自由端と振動子22の自由端は交差指状に配置されるため、振動子21、22の位置が変化すると、振動子21と振動子22間の静電容量が変化する。
【0017】
半導体装置1の動作例を以下に説明する。半導体装置1に外力が加わると、外力の影響により振動子21と振動子22間の距離が変化する。振動子21と振動子22間に電圧を印加した状態で半導体装置1に外力が加わると、振動子21と振動子22間の距離の変化は、静電容量の変化として検知される。半導体装置1は、検知された静電容量の変化を検出信号で信号処理回路(図示略)に伝達する。信号処理回路は、検出信号を処理して半導体装置1に生じた加速度を検出する。つまり、半導体装置1は、振動子21と振動子22間の静電容量の変化に基づいて加速度を検出する加速度検出装置の一部である。信号処理回路は、半導体装置1と同一チップ上に配置してもよいし、半導体装置1が配置されたチップと異なるチップ上に配置してもよい。
【0018】
振動子22と半導体基板10の間に、振動子22と半導体基板10とを電気的に分離する絶縁分離領域30が配置される。このため、振動子21と振動子22がキャパシタプレートとして機能する。振動子22からの電気信号は、金属電極62を介して半導体装置1の外部に出力される。振動子21からの電気信号は、半導体基板10と接触する金属電極61を介して半導体装置1の外部に出力される。
【0019】
図1に示した半導体装置1では、感度をよくするために、振動子21の半導体基板10との接続部分をバネ形状にして振動子21を振動しやすくしている。このため、半導体基板10を介して振動子21からの電気信号を金属電極61に伝達する構成を採用している。しかし、振動子21と半導体基板10との間にも絶縁分離領域30を設け、振動子21と金属電極61を直接接続してもよい。
【0020】
図3〜図12を参照して、本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明する。図3〜図12において、図(a)は図2(a)と同方向に沿った断面図であり、図(b)は図2(b)と同方向に沿った断面図であり、図(c)は図2(c)と同方向に沿った断面図である。また、図(d)は図1の領域Dと同領域の斜視図、図(e)は上面図である。図3〜図12の図(a)〜図(c)の切断面の方向、及び図(d)の領域Dの位置を、図(e)に示す。なお、以下に述べる半導体装置の製造方法は一例であり、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により実現可能であることは勿論である。
【0021】
(イ)図3(a)〜図3(e)に示すように、シリコン基板である半導体基板10の上面を熱酸化して上面酸化膜50を形成する。上面酸化膜50の膜厚は、例えば500nm程度である。図4(a)〜図4(e)に示すように、上面酸化膜50上にCVD法等によって膜厚1μm程度のPSG膜52を形成し、上面酸化膜50とPSG膜52とが積層された上面絶縁膜を形成する。
【0022】
(ロ)フォトリソグラフィ技術を用いて、フォトレジスト膜をマスクにした選択的エッチングにより上面絶縁膜の一部を除去し、図5(a)〜図5(e)に示すように、開口部55を形成する。
【0023】
(ハ)後述する窒化シリコン(SiN)膜54による結晶欠陥を防止するために、開口部55で露出した半導体基板10の上面を50nm程度熱酸化し、図6(a)〜図6(e)に示すように犠牲酸化膜56を形成する。
【0024】
(ニ)半導体基板10の全面に、減圧CVD法等によって膜厚150〜350nm程度のSiN膜54を形成する。次いで、フォトリソグラフィ技術等を用いてSiN膜54、PSG膜52及び上面酸化膜50をパターニングし、半導体基板10の上面の一部を露出させる。具体的には、図7(a)〜図7(e)に示すように、凹部100が形成される領域の半導体基板10の上面が露出された開口部410、及び絶縁分離領域30が形成される領域の半導体基板10の上面が露出された開口部310を形成する。振動子21、22間の距離である開口部410の幅d1は、例えば2μmである。絶縁分離領域30が延伸する方向と垂直方向の開口部310の幅d2は、例えば0.5μmである。
【0025】
(ホ)パターニングされたSiN膜54をマスクにして半導体基板10の上面をエッチングし、図8(a)〜図8(e)に示すように、側面溝420を形成し、振動子21、22の側面を露出させる。側面溝420の形成と同時に、分離溝320を形成する。側面溝420及び分離溝320の深さは例えば25μm程度である。側面溝420及び分離溝320を形成するエッチングには、深堀り反応性イオンエッチング(D−RIE)法を用いたボッシュ法等が採用可能である。
【0026】
(ヘ)図9(a)〜図9(e)に示すように、側面溝420の表面を熱酸化して、側面絶縁膜40及び底面絶縁膜42を形成する。側面絶縁膜40及び底面絶縁膜42の膜厚は、例えば1〜2μm程度である。側面溝420の表面の熱酸化と同時に分離溝320の表面を熱酸化して、分離溝320を熱酸化膜で埋め込んだ絶縁分離領域30を形成する。なお、分離溝320が酸化膜で埋め込まれると、分離溝320の表面での熱酸化プロセスは停止する。
【0027】
(ト)図10(a)〜図10(e)に示すように、SiN膜54を除去する。次いで、開口部55の底面に露出された犠牲酸化膜56を、バッファードフッ酸又は希フッ酸を用いて除去する。
【0028】
(チ)図11(a)〜図11(e)に示すように、リフトオフ法等を用いて、所望のパターンの金属電極61、62を形成する。金属電極61、62には、アルミニウム(Al)膜や銅(Cu)膜等が採用可能である。例えば、リフトオフ用のフォトレジスト膜を半導体基板10の上面全体に成膜した後、フォトリソグラフィ技術等を用いてフォトレジスト膜をパターニングする。その後、スパッタ法又は蒸着法により半導体基板10の上面全体に膜厚1〜3μm程度のAl膜を形成する。そして、フォトレジスト膜を用いたリフトオフ法によりAl膜の一部を除去し、Al膜からなる金属電極61、62を所望のパターンに形成する。具体的には、開口部55において振動子21と半導体基板10を介して電気的に接続する金属電極61、及び開口部55において振動子22と電気的に接続する金属電極62が、PSG膜52上にそれぞれ形成される。振動子21と振動子22間で検知された静電容量の変化は、金属電極61、62を介して半導体装置1の外部に出力される。
【0029】
(リ)図12(a)〜図12(e)に示すように、側面溝420の底部に露出された底面絶縁膜42をRIE法により除去する。RIE法を用いるため、側面絶縁膜40はエッチングされずに側面溝420の側面上に残る。
【0030】
(ヌ)PSG膜52、側面絶縁膜40をマスクにして半導体基板10の露出した上面をエッチング除去し、振動子21、22の下面を露出させる。半導体基板10のエッチングには、二フッ化キセノン(XeF2)を使用した等方性エッチャー等が使用可能である。上記の半導体基板10のエッチングによって、半導体基板10の上面に凹部100が形成され、振動子21、22が凹部100内に配置される。以上により、図1に示した半導体装置1が完成する。
【0031】
上記では、PSG膜52を形成する工程の直後に、図5(a)〜図5(e)に示したように開口部55を形成する方法を示した。しかし、例えば 図9(a)〜図9(e)に示した側面絶縁膜40及び絶縁分離領域30を形成する工程の後で、開口部55を形成してもよい。
【0032】
以上に説明したように、振動子21、22の側面上に配置される側面絶縁膜40、及び分離溝320を酸化膜で埋め込んだ絶縁分離領域30が、熱酸化によって形成される。このため、分離溝320の溝の幅d2は1μm以下であることが好ましい。例えば幅d2が1μmの場合は、熱酸化により半導体基板10の側面上に形成される側面絶縁膜40の膜厚は2μm程度に設定される。また、幅d2が0.5μmの場合は、側面絶縁膜40の膜厚は1.5μm程度でもよい。絶縁分離領域30と側面絶縁膜40を同時に形成する場合は、絶縁分離領域30の上面を平坦にするために、幅d2の1.5倍程度の厚さに側面絶縁膜40を形成することが好ましい。熱酸化時間が長すぎると、絶縁分離領域30の上面が粗くなるためである。
【0033】
上記のように幅d2を微細にすることにより、熱酸化工程のみで分離溝320を酸化膜で埋め込むことができる。熱酸化工程によって側面溝420及び分離溝320を同時に形成することにより、側面絶縁膜40と絶縁分離領域30の位置合わせ精度が向上すると共に、製造工程数を削減できる。
【0034】
また、半導体装置1では、振動子21、22の側面が側面絶縁膜40で覆われているため、側面絶縁膜40より深い位置の半導体基板10が基板厚さ方向に水平な方向にもエッチングされて、振動子21、22の下面が露出される。したがって、振動子21、22の厚みは側面溝420の深さによって決まる。つまり、振動子21、22の厚みはD−RIE装置の性能に依存する。例えばアスペクト比が60〜100のD−RIE装置を使用すれば、幅d2が1μmの場合に振動子21、22の厚みは60〜100μmまで可能である。一方、側面絶縁膜40をCVD法で形成する場合は、側面絶縁膜40を安定して形成できる深さは20〜25μm程度である。
【0035】
なお、振動子21、22の下面は絶縁膜で覆われていないため、凹部100を形成する際に振動子21、22の下面が若干エッチングされる。しかし、凹部100に露出した絶縁分離領域30の下面と振動子21、22の下面はほぼ同一平面レベルにある。
【0036】
以上のように、図3〜図12を参照して説明した半導体装置1の製造法では、振動子21、22の側面を露出させるための側面溝420の形成と、分離溝320の形成とが同時に行われる。このため、D−RIE装置を使用する工程は1回である。また、振動子21、22の側面上の側面絶縁膜40と分離溝320を埋め込む絶縁分離領域30が、熱酸化によって形成される。このため、CVD法によって側面絶縁膜40を形成する方法等と異なり、側面絶縁膜40の膜厚が均一になり、且つ膜質が安定する。したがって、本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造法によれば、製造工程の増大が抑制され、且つ振動子間の静電容量が安定した半導体装置の製造方法を提供できる。
【0037】
<変形例>
図10(a)〜図10(e)では、振動子21、22上のSiN膜54をすべて除去する例を示した。ただし、縦方向の加速度を検出する場合には、振動子21、22のいずれか一方について、振動子上にSiN膜54の一部を残してもよい。ここで「縦方向」とは、半導体基板10の厚さ方向である。図13は振動子22上のSiN膜54を除去しない例を示す。図13は、図10(b)と同じ領域の断面図である。
【0038】
振動子21と振動子22のいずれかの上面にSiN膜54を残した場合、応力の差によって梁の反り方が振動子21と振動子22とで異なる。図14に示したように振動子22上にSiN膜54を残した場合は、図15に示すように、振動子22の自由端の上面が振動子21の自由端の上面より高くなる。これにより、縦方向の加速度を検出することができる。
【0039】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0040】
既に述べた実施の形態の説明においては、半導体装置1が振動子21、22からなる一組の振動子組を有する例を示した。しかし、二組の振動子組を用いて、X方向とY方向の加速度を検出する加速度センサを構成してもよい。X方向の加速度を検出する加速度センサとY方向の加速度を検出する加速度センサとでは、振動子の自由端が延伸する方向が互いに垂直になるように配置する。或いは、図13〜図15で説明した縦方向(基板厚さ方向)の加速度を検出する振動子組を更に追加し、3次元の加速度を検出する加速度センサを構成してもよい。
【0041】
また、半導体装置1が加速度センサである例を示したが、半導体装置1がMEMS素子以外の、例えばSAW素子或いはFBARであってもよい。また、振動子を有する半導体装置であれば、加速度センサ以外の、例えばジャイロセンサ等の製造方法にも本発明は適用可能である。
【0042】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法で製造される半導体装置の構成を示す模式図である。
【図2】図1に示した半導体装置の断面図であり、図2(a)は図1のIIa−IIa方向に沿った断面図、図2(b)は図1のIIb−IIb方向に沿った断面図、図2(c)は図1のIIc−IIc方向に沿った断面図、図2(d)は図1の領域Dの斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程図である(その1)。
【図4】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程図である(その2)。
【図5】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程図である(その3)。
【図6】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程図である(その4)。
【図7】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程図である(その5)。
【図8】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程図である(その6)。
【図9】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程図である(その7)。
【図10】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程図である(その8)。
【図11】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程図である(その9)。
【図12】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程図である(その10)。
【図13】本発明の実施の形態の変形例に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である。
【図14】本発明の実施の形態の変形例に係る半導体装置の振動子を示す模式図である。
【図15】本発明の実施の形態の変形例に係る半導体装置の振動子の自由端を示す模式図である。
【符号の説明】
【0044】
1…半導体装置
10…半導体基板
21、22…振動子
30…絶縁分離領域
40…側面絶縁膜
42…底面絶縁膜
50…上面酸化膜
52…PSG膜
54…SiN膜
55…開口部
56…犠牲酸化膜
61、62…金属電極
100…凹部
310…開口部
320…分離溝
410…開口部
420…側面溝
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の上面に形成された凹部内に自由端が延在し、前記半導体基板に固定端が固定された複数の梁型の振動子を備える半導体装置の製造方法であって、
前記半導体基板の上面の一部をエッチングして、前記振動子の側面を露出させると同時に、前記振動子と前記半導体基板間の絶縁分離領域が形成される分離溝を形成するステップと、
前記分離溝の表面を熱酸化して、前記分離溝を酸化膜で埋め込んだ前記絶縁分離領域を形成するステップと、
前記振動子の前記側面を熱酸化して、側面保護膜を形成するステップと、
前記側面保護膜をマスクにした前記半導体基板のエッチングにより前記振動子の下面を露出させて、前記半導体基板に形成された前記凹部内に配置された前記振動子を形成するステップと
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記分離溝の表面の熱酸化と、前記振動子の前記側面の熱酸化を同時に行うことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記複数の振動子が、前記自由端と前記半導体基板との間に前記絶縁分離領域が形成された振動子と、前記自由端が前記半導体基板と電気的に接続する振動子とが、交互に配列されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記振動子上に上面絶縁膜を形成するステップと、
前記上面絶縁膜の一部を除去して開口部を形成するステップと、
前記開口部で前記振動子と電気的に接続する金属電極を前記上面絶縁膜上に形成するステップと
を更に含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記上面絶縁膜が、前記半導体基板を熱酸化して形成された熱酸化膜を含むことを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記分離溝の幅が1μm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記半導体基板がシリコン基板であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項1】
半導体基板の上面に形成された凹部内に自由端が延在し、前記半導体基板に固定端が固定された複数の梁型の振動子を備える半導体装置の製造方法であって、
前記半導体基板の上面の一部をエッチングして、前記振動子の側面を露出させると同時に、前記振動子と前記半導体基板間の絶縁分離領域が形成される分離溝を形成するステップと、
前記分離溝の表面を熱酸化して、前記分離溝を酸化膜で埋め込んだ前記絶縁分離領域を形成するステップと、
前記振動子の前記側面を熱酸化して、側面保護膜を形成するステップと、
前記側面保護膜をマスクにした前記半導体基板のエッチングにより前記振動子の下面を露出させて、前記半導体基板に形成された前記凹部内に配置された前記振動子を形成するステップと
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記分離溝の表面の熱酸化と、前記振動子の前記側面の熱酸化を同時に行うことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記複数の振動子が、前記自由端と前記半導体基板との間に前記絶縁分離領域が形成された振動子と、前記自由端が前記半導体基板と電気的に接続する振動子とが、交互に配列されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記振動子上に上面絶縁膜を形成するステップと、
前記上面絶縁膜の一部を除去して開口部を形成するステップと、
前記開口部で前記振動子と電気的に接続する金属電極を前記上面絶縁膜上に形成するステップと
を更に含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記上面絶縁膜が、前記半導体基板を熱酸化して形成された熱酸化膜を含むことを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記分離溝の幅が1μm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記半導体基板がシリコン基板であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−147150(P2010−147150A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321014(P2008−321014)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】
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