説明

半導体装置の製造方法

【課題】 耐湿性が低下し難いパシベーション膜を有する半導体装置の製造方法であって、より汎用性が高い製造方法を提供する。
【解決手段】 半導体装置の製造方法であって、基板上に第1パシベーション膜16を形成する工程と、第1パシベーション膜16にクラックを生じさせる工程と、クラックを生じさせた第1パシベーション膜16上に第2パシベーション膜18を形成する工程を備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パシベーション膜を有する半導体装置に関する。より詳細には、表面にパシベーション膜が形成されている基板を有する半導体装置に関する。なお、本明細書において、「基板」とは、半導体基板と、その表面に形成された絶縁膜や金属配線等の構造体を意味する。すなわち、半導体基板の表面に構造体が形成されていなければ、半導体基板そのものが「基板」である。半導体基板の表面に絶縁膜や金属配線等の構造体が形成されていれば、半導体基板とその表面に形成されている構造体を含んで「基板」という。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2には、表面にパシベーション膜が形成されている半導体装置が開示されている。基板の表面にパシベーション膜を形成することで、主に半導体装置の耐湿性を向上させることができる。
【0003】
【特許文献1】特開2007−115988号公報
【特許文献2】特開平5−36675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体装置は、急激な温度変化に曝される場合がある。例えば、半導体装置を電子回路基板(例えば、プリント配線基板)に実装する際には、通常は、半田リフローが用いられる。半田リフロー時には、半導体装置は急激に加熱される。また、使用時においても、使用環境によっては、半導体装置が急激な温度変化に曝される。このように、半導体装置が急激な温度変化に曝されると、パシベーション膜が温度変化に伴って膨張または収縮し、パシベーション膜にクラックが生じる場合がある。特に、半導体装置は、通常は樹脂によってパッケージングした状態で使用される。樹脂の熱膨張率とパシベーション膜の熱膨張率の間には差があるため、温度変化時にパシベーション膜に高い応力が加わり易く、パシベーション膜にクラックが生じ易い。パシベーション膜にクラックが生じると、パシベーション膜の耐湿性が低下する。すなわち、クラックから水分が浸入し、浸入した水分によって、パシベーション膜の下部の金属配線や各種の層が腐食するという問題が生じる。
パシベーション膜のクラックの発生を抑制する技術は、従来存在する。例えば、特許文献2には、パシベーション膜上に炭素原子を含有する膜を形成し、パシベーション膜とパッケージ樹脂との密着性を向上させることによって、パシベーション膜のクラックを抑制する技術が記載されている。しかしながら、この技術は、基板の表面に凹凸がある場合等に効果が小さい。また、炭素原子を含有する膜を成長させるという特殊な工程を実施する必要がある。このように、特許文献2の技術は、汎用性が低いという問題があった。
【0005】
本発明は、上述した実情に鑑みて創作されたものであり、耐湿性が低下し難いパシベーション膜を有する半導体装置の製造方法であって、より汎用性が高い製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の半導体装置の製造方法は、基板上に第1パシベーション膜を形成する工程と、第1パシベーション膜にクラックを生じさせる工程と、クラックを生じさせた第1パシベーション膜上に第2パシベーション膜を形成する工程を備えている。
第1パシベーション膜にクラックを生じさせる工程は、例えば、基板に急激な温度変化を生じさせたり、基板に力を加えること等によって実現できる。第1パシベーション膜にクラックが生じているため、第1パシベーション膜の内部に発生する応力が緩和される。このため、第2パシベーション膜に対して第1パシベーション膜が応力緩衝層として機能し、第2パシベーション膜に発生する応力を緩和する。これによって、第2パシベーション膜にクラックが発生することを抑制することができる。したがって、この製造方法によって製造した半導体装置は、耐湿性が低下し難い。また、この製造方法では、基板の表面形状に関わらず、クラックが生じ難い第2パシベーション膜を形成することができる。また、第1パシベーション膜にクラックを生じさせる工程は、温度変化を生じさせる等の簡単な設備を用いて実現することができる。すなわち、この製造方法は、汎用性が高い。
【0007】
また、以下の製造方法によっても、パシベーション膜にクラックが生じ難い半導体装置を製造することができる。この製造方法は、基板上に第1パシベーション膜を形成する工程と、第1パシベーション膜の表面に溝を形成する工程と、溝を形成した第1パシベーション膜上に第2パシベーション膜を形成する工程を備えている。
第1パシベーション膜の表面に溝を形成する工程は、例えば、第1パシベーション膜を選択的にエッチングすること等によって実現できる。第1パシベーション膜の表面に溝を形成しているため、第1パシベーション膜に発生する応力が緩和される。これによって、第2パシベーション膜に発生する応力を緩和でき、第2パシベーション膜にクラックが発生することを抑制することができる。すなわち、この製造方法により製造した半導体装置は、耐湿性が低下し難い。また、第1パシベーション膜の溝はエッチング等の一般的な半導体加工技術で形成することが可能である。すなわち、この製造方法は、汎用性が高い。
【発明の効果】
【0008】
上述した半導体装置の製造方法によれば、耐湿性が低下し難いパシベーション膜を有する半導体装置を製造することができる。また、これらの製造方法は、一般的な半導体加工技術を用いて実施することが可能であり、種々の半導体装置の製造に適用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(第1実施例)
第1実施例に係る半導体装置の製造方法について説明する。まず、主にシリコンからなるウエハ(基板)に対してイオン注入、熱処理等を行うことによって、ウエハ中に拡散層を形成する。また、CVD、熱処理等によって、ウエハの表面に必要な層(絶縁層、アルミ配線層等)を形成する。これによって、ウエハに、多数の半導体素子構造を形成する。この状態では、ウエハの表面にアルミ配線等が露出している。
【0010】
半導体素子構造を形成したら、CVD等によって、ウエハの表面に酸化シリコンからなる第1パシベーション膜を形成する。図1は、第1パシベーション膜16形成後のウエハ10を示している。なお、図1では、半導体層12の内部構造(拡散層等)の図示を省略している。また、図1は、アルミ配線14が形成されている範囲のウエハ10の断面構造を示している。図示するように、半導体層12上にアルミ配線14が形成されており、そのアルミ配線14を覆うように第1パシベーション膜16が形成されている。
【0011】
第1パシベーション膜16を形成したら、ウエハ10をダイシングする。これによって、ウエハ10を多数のチップに分割する。
【0012】
ウエハ10をダイシングしたら、図2に示すように、分割したチップ20の第1パシベーション膜16側の面を板状の基材30に貼り付ける。基材30は、後にパッケージングする際にチップ20を覆う樹脂と同じ材質の樹脂により構成されている。そして、図2の矢印101〜103に示すように、基材30を反らせる方向に力を加えた状態で基材30を固定する。これによって、チップ20が、応力が加わっている状態で固定される。次に、チップ20を基材30に固定した状態で加熱する。チップ20と基材30を加熱すると、チップ20の熱膨張率と基材30の熱膨張率の違いにより、チップ20にさらに応力が加わる。これによって、図3に示すように、第1パシベーション膜16にクラックを生じさせる。第1パシベーション膜16にクラックを生じさせることで、第1パシベーション膜16の内部応力を緩和することができる。
【0013】
第1パシベーション膜16にクラックを生じさせたら、CVD等によって、図4に示すように、第1パシベーション膜16上に酸化シリコンからなる第2パシベーション膜18を形成する。
以上のように、チップ20の表面に第2パシベーション膜18を形成することで、半導体装置が完成する。
【0014】
以上に説明したように、第1実施例の半導体装置の製造方法では、ウエハ10の表面に第1パシベーション膜16を形成し、形成した第1パシベーション膜16にクラックを生じさせる。クラックを生じさせることで、第1パシベーション膜16の内部応力が緩和される。また、クラックを生じさせた第1パシベーション膜16上に第2パシベーション膜18を形成する。これによって、第1パシベーション膜16のクラックがそれ以上拡大することが抑制される。また、内部応力が緩和された第1パシベーション膜16上に第2パシベーション膜18を形成するので、第2パシベーション膜18の内部応力も緩和される。このため、半導体装置が急激な温度変化に曝された場合にも、第2パシベーション膜18にはクラックが生じ難い。第2パシベーション膜18にクラックが生じて、半導体装置の耐湿性が低下することが抑制される。また、第1実施例の半導体装置の製造方法は、特殊な装置を必要とせず、通常の半導体製造技術で用いられる装置を用いて実施することができる。また、第1実施例の半導体装置の製造方法によれば、第1パシベーション膜16と第2パシベーション膜18の積層構造により応力緩和するので、素子構造が形成された基板の表面形状によらず高い効果を得ることができる。このように、第1実施例の製造方法は、汎用性が高い。
【0015】
なお、第1実施例では、ウエハ10をダイシングによりチップ20に分割し、チップ20に対して第1パシベーション膜16にクラックを生じさせる処理を行ったが、ウエハ10をダイシングする前に、ウエハ10に対して同様の処理を行ってもよい。この場合、ウエハ10をウエハ10と同程度の大きさの基材に貼り付けて、その基材に力を加えるとともに、ウエハ10を加熱する。
また、第1実施例では、第1パシベーション膜16にクラックを生じさせる際に、基材30に力を加えてチップ20に応力を生じさせるとともに、チップ20を加熱することによってもチップ20に応力を生じさせた。しかしながら、基材30に力を加えるだけでチップ20に応力を生じさせてもよい。また、チップ20の加熱のみによってチップ20に応力を生じさせてもよい。また、その他の種々の技術を用いて、第1パシベーション膜16にクラックを生じさせることができる。
また、第1実施例では、チップ20を単純に加熱したが、チップ20を局所的に加熱したり、加熱と冷却を繰り返す温度サイクル処理を実施する等、種々の加熱方法を採用することができる。
また、第2パシベーション膜18に対してエッチング等を行うことによって、図5に示すように、第2パシベーション膜18の表面に溝19を形成してもよい。このように溝19を形成することで、第2パシベーション膜18の内部応力をさらに緩和することができる。なお、溝19は、図5に示す以外にも種々の形状に形成することができる。
また、第1実施例では、基材30に半導体装置のパッケージングに用いる樹脂を用いたが、他の材質の樹脂を用いてもよい。
【0016】
(第2実施例)
次に、第2実施例に係る半導体装置の製造方法について説明する。まず、第1実施例と同様にして、ウエハ10に多数の半導体素子構造を形成する。この状態では、ウエハ10の表面にアルミ配線14等が露出している。その後、CVD等によって、図1に示すように、ウエハ10の表面に第1パシベーション膜16を形成する。
【0017】
第1パシベーション膜16を形成したら、第1パシベーション膜16上の所定範囲にレジストを形成し、その後、第1パシベーション膜16をエッチングする。すなわち、レジストを形成していない範囲の第1パシベーション膜16を選択的にエッチングする。エッチング後に、レジストは除去する。これによって、図6に示すように、第1パシベーション膜16の表面に複数の溝40を形成する。複数の溝40は、互いに平行に形成する。
【0018】
溝40を形成したら、図7に示すように、第1パシベーション膜16上に第2パシベーション膜18を形成する。
【0019】
第2パシベーション膜18を形成したら、ウエハ10をダイシングして複数のチップに分割する。これによって、半導体装置が製造される。
【0020】
以上に説明したように、第2実施例の半導体装置の製造方法では、ウエハ10の表面に第1パシベーション膜16を形成し、形成した第1パシベーション膜16に溝40を形成する。溝40を形成することで、第1パシベーション膜16中の内部応力が緩和される。また、溝40を形成した第1パシベーション膜16上に第2パシベーション膜18を形成する。溝40を形成した第1パシベーション膜16上に第2パシベーション膜18を形成するので、第2パシベーション膜18の内部応力も緩和される。このため、半導体装置が急激な温度変化に曝された場合にも、第2パシベーション膜18にクラックが生じ難い。第2パシベーション膜18にクラックが生じて、半導体装置の耐湿性が低下することが防止される。また、第2実施例の半導体装置の製造方法は、特殊な装置を必要とせず、通常の半導体製造技術で用いられる装置を用いて実施することができる。また、第2実施例の半導体装置の製造方法によれば、素子構造が形成された基板の表面形状によらず、高い効果を得ることができる。第2実施例の製造方法は、汎用性が高い。
【0021】
なお、第2実施例では、第1パシベーション膜16の表面に溝40を平行に形成した。しかしながら、図8に示すように、溝40を格子状に形成してもよい。また、その他の種々の形状に溝40を形成することができる。なお、溝40は、第1パシベーション膜16中の内部応力が均一に緩和されるように形成することが好ましい。
【0022】
また、上述した第1実施例及び第2実施例では、第1パシベーション膜16と第2パシベーション膜18を共に酸化シリコンにより形成した。しかしながら、第1パシベーション膜16と第2パシベーション膜18を異なる材料によって形成してもよい。
【0023】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施例におけるウエハ10の一部の断面構造を示す図。
【図2】第1パシベーション膜16にクラックを生じさせる工程の説明図。
【図3】第1実施例におけるクラック形成後のチップ20の一部の断面構造を示す図。
【図4】第1実施例における第2パシベーション膜18形成後のチップ20の一部の断面構造を示す図。
【図5】第1実施例の変形例におけるチップ20の一部の断面構造を示す図。
【図6】第2実施例における溝40形成後のウエハ10の一部の断面構造を示す図。
【図7】第2実施例における第2パシベーション膜18形成後のウエハ10の一部の断面構造を示す図。
【図8】第2実施例の変形例における溝40形成後のウエハ10の一部の断面構造を示す図。
【符号の説明】
【0025】
10:ウエハ
12:半導体層
14:アルミ配線
16:第1パシベーション膜
18:第2パシベーション膜
19:溝
20:チップ
30:基材
40:溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置の製造方法であって、
基板上に第1パシベーション膜を形成する工程と、
第1パシベーション膜にクラックを生じさせる工程と、
クラックを生じさせた第1パシベーション膜上に第2パシベーション膜を形成する工程、
を備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
半導体装置の製造方法であって、
基板上に第1パシベーション膜を形成する工程と、
第1パシベーション膜の表面に溝を形成する工程と、
溝を形成した第1パシベーション膜上に第2パシベーション膜を形成する工程、
を備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−67821(P2010−67821A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233239(P2008−233239)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】