説明

半導体装置の製造方法

【課題】複数の半導体素子を同一基板に搭載することによって小型パッケージに収納される半導体装置であって、ワイヤ結線のループ高さ、およびループ形状をコントロールし、かつ安定させた半導体装置の製造方法を提供するのに収納される半導体装置であって、半導体素子どうしの接着性を向上させた半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】第1のボンディング工程の後、第2のボンディング工程に進む前に、金属細線9をクランプ機構34によってクランプしながら一定のワイヤ長で結線するようにした。第1のボンディング工程が終了した後のワイヤ引き出し時に、結線用ワイヤのループ形状を安定化させるために、ウェッジボンダー30の付加機能であるアクティブクランプ機能を活用して、金属細線9の引き出し量を安定化させている。また、金属細線9が形成するループ形状の安定性を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップを半田接合によって金属製のリードフレームの所定位置にマウントされた半導体装置の製造方法に関し、とくに出力段パワートランジスタチップの上に制御用のICチップを積層して配置し、所定の配線用ワイヤによってリードフレーム、出力段パワートランジスタチップ、またはICチップの間を電気的に接続する半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、ディスクリート製品は1パッケージに1素子、あるいは同一半導体基板(同電位上)に数チップが搭載され、それらを配線用ワイヤによってパッケージの外部端子(アウタリード)とチップ電極とを結線する製品が主流であった。しかしながら、とくに自動車電装部品の分野においては、各種部品の電子化が進んでいて、近年では高電流/低抵抗のパワートランジスタのような半導体装置が多数採用されている。そのため、負荷短絡、過熱保護等の付加機能を有する半導体装置が必要とされることとなって、半導体装置の低損失化や小型パッケージ化の要求が強くなっている。
【0003】
小型パッケージ化された製品の一例として、後述する特許文献1には、車載エンジンの点火装置としてのイグナイタなどにおいて、スイッチング用のパワートランジスタとそのトランジスタを駆動するための回路素子とを備えた電子装置に関する発明が記載されている。すなわち、イグナイタは、基板としてのリードフレームと、第1のチップと、第2のチップとを備え、リードフレーム上に第1のチップが半田にて接合されるとともに、第1のチップ上には第2のチップがフリップチップ方式にて三次元実装されている。
【0004】
このように、パワートランジスタを形成した第1のチップ上に、そのトランジスタを駆動するための回路素子を形成した第2のチップを積み重ねて配置することによって、セラミック基板上にパワートランジスタと回路素子を平面配置した従来のイグナイタと比較して、投影面積(上部から見た面積)を小さくでき、製品の小型化を図ることができる。
【0005】
図2は、一般的なチップオンチップ(COC)構成の半導体装置を示す断面構造図である。
基板となる金属製のリードフレーム1上には、パワートランジスタ2を導電性の接合部材、たとえば半田層3により接合され、その後に制御用のICチップ4が絶縁性接着剤5(あるいは導電性接着剤)によって接合されている。さらに、超音波および熱圧着を併用して、アルミニウムまたは金線等の金属細線6によって、パワートランジスタ2とリードフレーム1に対して外部端子となるアウタリード7との間が結線されている。また、金属細線6よりさらに細い金属細線8によって、パワートランジスタ2とICチップ4の電極間が接続され、さらに金属細線9によってICチップ4の電極とアウタリード7との間も接続されている。
【0006】
こうしたパワートランジスタ2に、その制御用のICチップ4が積層されたチップオンチップ構成の半導体装置では、第1の半導体素子(パワートランジスタ2)が反った状態で第2の半導体素子(ICチップ4)を第1の半導体素子上に搭載すると、半導体素子どうしを全面にわたって均一に接着させることが困難となり、あるいはチップ接合面に間隙が生じることがあり、樹脂硬化後に半導体素子間で剥離が生じるおそれがあった。また、チップ接合面に間隙や剥離があると、第2の半導体素子の電極に金属細線6をボンディングする際に、ボンディング荷重や超音波振動のエネルギー等、接合エネルギーが分散されるために、安定して金属細線6を第2の半導体素子の電極に接合できなくなる。
【0007】
特許文献2には、そのような問題に対処するための新規の半導体装置の製造方法の発明が記載されている。この発明は、配線基板と第1の半導体素子とを接着する第1の樹脂を軟化させ、第1の半導体素子の反りを解消させた状態で半導体素子どうしを全面にわたって接着したものである。これによって、ワイヤボンディング時の接合エネルギーの分散を防止して、安定した金属細線の接合を確保できるとともに、半導体素子どうしの間に形成した第2の樹脂の亀裂発生を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−168271号公報(〔0012〕〜〔0022〕、図2)
【特許文献2】特開2002−252326号公報(〔0012〕〜〔0023〕)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、従来のパワートランジスタの半田接合方法には、以下の問題があった。
図2の半導体装置において、基板上に搭載されるパワートランジスタの素子面積は大型化しており、従来のダイボンディング装置によるマウント方法では、素子以外の領域に接合材がはみ出し、かつ接合材の厚みも不均一でコントロールできないという不具合が発生している。
【0010】
自動車電装部品としての半導体装置が置かれている環境は、近年になって高温化が進み、適用環境における高耐熱性が要求されるようになっている。また、半田の鉛フリー化で融点の高い半田を使用することにより、実装温度が約20℃も上昇している。
【0011】
このような状況下では、前述の半田のはみ出し、および半田厚の不均一さは、封止材との密着を大幅に妨げ、耐湿性および対熱応力性の低下の大きな要因となっている。
ICチップの接着剤による接合方法についても、以下の問題があった。
【0012】
パワートランジスタ上へのICチップの接合では、一般的に熱硬化性の有機材料が用いられている。しかし、硬化キュア時に発生するアウトガス付着によるワイヤボンディング性の低下や素子電極の腐食が進行(耐腐食性低下)し、接着剤の位置ずれや染み出しによってもワイヤボンディング性の低下や実装面積の縮小化が生じ、さらには接着剤内のボイドや接着剤の厚み不均一による絶縁性の低下などが問題となる。
【0013】
また、接着剤をチップ接合部の全面にわたって添着させて、それを確実に硬化させておかないと、ICチップ上で金属細線をワイヤボンディングして結線するときに、ボンディングツールに超音波が伝わると同時に、素子そのものが同期してしまい、素子電極面とワイヤ間での摩擦が生じず、結果として凝固現象が起こらないで、不安定な接合につながる問題がある。
【0014】
さらに、ワイヤボンディングによる結線方法についても、下記の問題があった。
大電流化(低オン抵抗化)、およびパッケージの小型化による高密度実装可能な製品ができるというCOC構造のメリットについては前述したが、このような目標を達成するには、出力側端子への結線材は太線化・多数掛け化が必要不可欠である。一方、制御用ICとの間の結線には、搭載チップサイズ等の制約があって、ワイヤボンディングの細線化が必要であり、またICチップとパワートランジスタを直接結線することも必要である。また、自動車電装部品としての半導体装置を小型パッケージ化するためには、結線のループ高さ、およびループ形状をコントロールし、そのワイヤ結線を安定させることも求められている。
【0015】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、複数の半導体素子を同一基板に搭載することによって小型パッケージに収納される半導体装置であって、ワイヤ結線のループ高さ、およびループ形状をコントロールし、かつ安定させた半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明では、上記問題を解決するために、半導体チップを半田接合によって金属製のリードフレームの所定位置にマウントし、前記半導体チップにICチップをさらに積層して配置し、前記リードフレーム、前記半導体チップ、または前記ICチップの間を電気的に接続する半導体装置の製造方法が提供される。この半導体装置の製造方法は、前記リードフレーム、前記半導体チップ、または前記ICチップのボンディング位置に配線用ワイヤを超音波接合する第1のボンディング工程と、前記配線用ワイヤをキャピラリから所定長さだけ引き出した後に、前記キャピラリをワイヤクランプ状態にして前記リードフレーム、前記半導体チップ、または前記ICチップの別のボンディング位置に移動するワイヤ引き出し工程と、前記別のボンディング位置で前記配線用ワイヤの他端を超音波接合する第2のボンディング工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、接合材の厚みを均一にコントロールして、小型パッケージ化された半導体装置において、ワイヤ結線のループ高さ、およびループ形状をコントロールし、かつ安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態に係る半導体装置のダイボンディング装置を示す図である。
【図2】一般的なチップオンチップ(COC)構成の半導体装置を示す断面構造図である。
【図3】半田形状整形用の叩き工具を示す底面図、およびその側面断面図である。
【図4】図3に示す叩き工具によって圧延された半田の形状を示す図である。
【図5】従来のダイボンディング装置、およびチップ領域以外の部分に接合材がはみ出した様子を示す図である。
【図6】本発明の半田接合方法によりリードフレーム上にマウントされたパワートランジスタの顕微鏡写真を示す図である。
【図7】半導体ウェハーの裏面に接着剤フィルムを貼り付けてマウントする工程を示す図である。
【図8】熱硬化型ポリイミドフィルムの吸発熱曲線の一例を示す図である。
【図9】パワートランジスタにポリイミドフィルムを接着した接着部の顕微鏡写真を示す図である。
【図10】本発明のワイヤボンディングによる結線方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について、半導体チップの半田接合方法、接着剤によるICチップの接合方法、およびワイヤボンディングによる結線方法のそれぞれを順次に説明する。ここでは、図2に示すチップオンチップ(COC)構成の半導体装置の一例として、出力段のパワートランジスタを構成する半導体チップの上に制御用ICチップが積層配置された半導体装置について説明する。
【0020】
(1)パワートランジスタの半田接合方法
最初に、半導体チップ(パワートランジスタ)を金属製のリードフレームの所定位置に、半田接合によってマウントする半田接合方法について説明する。
【0021】
図1は、実施の形態に係る半導体装置のダイボンディング装置を示す図である。このダイボンディング装置は、リードフレーム1をタクト搬送するための搬送機構であるヒータレール11、このヒータレール11の上流でリードフレーム1上に半田12を供給する半田供給手段13、供給された半田12aをリードフレーム1の上方から押圧整形する押圧手段14、およびリードフレーム1に還元性雰囲気中でパワートランジスタ2をマウントするマウント手段15によって構成される。
【0022】
ここで半田供給手段13は、供給部13aと半田押出しツール(図示せず)から構成されている。ここでは、接合部材の最小半田厚を30〔μm〕以上に形成するために、溶融状態で定量の半田12が半田押出しツールからリードフレーム1の所定位置に供給される。このとき、パワートランジスタ2の寸法が4.3×3.6〔mm〕の大きさであって、金属製のリードフレーム1上に平均半田厚さ75〔μm〕の半田層3を形成して、パワートランジスタ2を接合するような設定であれば、そのために必要な半田12aの体積としては、4.3×3.6×0.075=1.161〔mm3〕のように計算することができる。
【0023】
ヒータレール11の中流には押圧手段14が設けられている。この押圧手段14は、カム形式またはサーボモータ駆動により上下に駆動される加圧工具14aの下面に、叩き工具14bが取り付けられている。ここでは、叩き工具14bがリードフレーム1の表面まで上下移動して、リードフレーム1上に供給されたSn−Pb系の半田12aを押圧整形する。これによって、半田12aはパワートランジスタ2の素子形状に相似する形状であって、パワートランジスタ2の接合面積を越えない広さに圧延される。
【0024】
つぎに、叩き工具14bの形状について説明する。
図3(a)は、半田形状整形用の叩き工具を示す底面図、同図(b)はその側面断面図である。叩き工具14bは、パワートランジスタ2と同様の矩形断面をなす直方体によって構成され、その断面積はチップサイズより小さく、かつその底面部には所定面積の開口部141が形成されている。また、この叩き工具14bの上部には、加圧工具14aの底部の挿入穴に嵌合可能な突起部142が設けられている。
【0025】
ここで、叩き工具14bの開口部141は、その開口面積がパワートランジスタ2の接合面積の50%から90%の範囲内に設定されていることが好ましい。具体的には、リードフレーム1の表面、およびパワートランジスタ2のチップ裏面での半田12aの濡れ性を考慮して、接合面積の75%程度に設計されている。すなわち、図3に示すように、この叩き工具14bの底面形状は、0.1〔mm〕幅の縁部を備えた矩形凹部をなしており、その有効開口面積は3.8×3.1〔mm〕となっている。また、必要半田量が1.161〔mm3〕であることから、開口部141の矩形凹部は0.1〔mm〕の深さが必要である。
【0026】
こうした叩き工具14bを加圧工具14aの下部に取り付けて、半田12aがリードフレーム1上で繰り返し叩かれることにより、パワートランジスタ2との接合面積の75%程度の広さにまで圧延される。なお、このような叩き工具14bは、リードフレーム1と繰り返し接触するものであるから、超硬製の金属で構成されていることが好ましい。また、上述したような箱型の額縁形状のものであれば、その耐久性を考慮するとき、縁部の幅はその材質にもよるが0.1〔mm〕以上が妥当である。
【0027】
図4には、図3に示す叩き工具14bによって圧延された半田12aの形状を示している。図4(a)には半田12aの平面的な広がりを、同図(b)にはその断面高さを示す。
【0028】
ここに示すように、半田12aがSn−Pb系の半田である場合、パワートランジスタ2のマウント以前での断面形状は、表面張力の関係からなお円弧形状をなしているものの、そのピーク高さは、叩き工具14bに形成された凹部深さの約1.8倍の高さ(=0.18mm)になることが実験的に明らかにされている。この点に関しては、Sn−Sb系、あるいはSn−Ag系の半田を用いた場合であっても、ほぼ同様の形状となることが知られている。
【0029】
つぎに、リードフレーム1はマウント手段15に搬送される。このマウント手段15は、コレット16とその昇降ユニット(図示せず)から構成され、窒素ガスと水素ガスを混合した還元性雰囲気中で動作する。マウント工程では、パワートランジスタ2がコレット16により真空吸着され、その接合面が半田高さの50〜60%の位置で保持されるように、リードフレーム1の上で停止位置が設定され、リードフレーム1上の所定位置にパワートランジスタ2がマウントされる。
【0030】
このマウント工程では、パワートランジスタ2のマウント高さを適切に設定することによって、以下の不都合が生じないようにすることが必要である。すなわち、マウント高さを低めに設定すると、半田のはみ出しが起こるだけでなく、半田層3の厚みが薄く、かつ不均一になってしまう。また、反対にマウント高さを高めに設定した場合は、マウントされるパワートランジスタ2の半田層3との接触面積が減少し、矩形のチップコーナ部分で未接合が発生し、さらにはパワートランジスタ2が傾くことによって、半田層3の厚みに不均一が発生する。ここでは、半田高さが0.18〔mm〕であれば、チップ下面の停止位置をフレーム面の上方0.09〜0.11〔mm〕に設定することで、安定したマウント状態を確保できる。
【0031】
また、リードフレーム1上の半田層3は、もともとパワートランジスタ2のチップサイズよりも半田広がりが小さく、CuおよびNiメッキが施されているリードフレーム1では、半田濡れ性が劣る場合がある。そこで、パワートランジスタ2をスクラブすることによって半田濡れ性を確保する必要がある。
【0032】
パワートランジスタ2のスクラブを実施するには、様々な方法が適用できる。ここでは、コレット16に保持されたパワートランジスタ2の形状にあわせて、スクウェア仕様のスクラブが最適である。なお、パワートランジスタ2のチップ裏面には、通常AuまたはAg蒸着が施されているので、とくに問題はない。
【0033】
図5は、従来のダイボンディング装置、およびチップ領域以外の部分に接合材がはみ出した様子を示す図である。同図(a)は、半導体装置のダイボンディング装置を示す図であって、同図(b),(c)には、それぞれ半田供給後と、チップマウント後のリードフレーム1の半田付け面を示している。
【0034】
ここでは、図1のダイボンディング装置のように、供給された半田12aをリードフレーム1の上方から押圧整形する押圧手段14を備えていない。そのため、マウント工程ではコレット16で保持されたパワートランジスタ2によって半田12aが直接に押し広げられ、溶融半田がリードフレーム1の素子以外の領域にも大きく広がっている。また、接合材(半田層3)の厚みも不均一になりやすく、その厚み自体を正確にコントロールすることができない。そのために、図5(a)に示すようにパワートランジスタ2は傾斜した状態でリードフレーム1上にマウントされてしまうことがある。
【0035】
図6は、本発明の半田接合方法によりリードフレーム上にマウントされたパワートランジスタの顕微鏡写真を示す図である。
この顕微鏡写真に示すように、リードフレーム1上に配置された矩形のパワートランジスタ2の周囲には、ほぼ均等に半田フィレット3aが生じている。したがって、リードフレーム1上に均一な半田厚の接合材が形成され、安定した状態でパワートランジスタ2をマウントすることができる。
【0036】
以上、本発明の半田接合方法では、マウント前に所定の叩き工具で半田を押し広げているので、マウントされるパワートランジスタ2の高さを制御して、スクラブすることによって安定したマウント状態を確保できる。すなわち、所定量の半田をリードフレーム1に供給した後、叩き工具14bをリードフレーム1まで下降させて、その開口部面積まで半田層を押し広げるように半田形状を整形してから、パワートランジスタ2をマウントするようにしたために、半田フィレットを均一に形成して、半田はみ出しを防止して、均一な半田厚を確保することができる。
【0037】
(2)接着剤によるICチップの接合方法
つぎに、ICチップを接着剤フィルムによってパワートランジスタチップの上に積層して接合するICチップの接合方法について説明する。ここでは、接着剤フィルムの一例として、エポキシ樹脂を含有した熱硬化型ポリイミドフィルムが使用される。この接着剤フィルムは絶縁性フィルムであるが、導電性フィルムにも適用できる。
【0038】
図7は、半導体ウェハーの裏面に接着剤フィルムを貼り付けてマウントする工程を示す図である。
同図(a)には、フィルム貼り付け工程を示す。円形の半導体ウェハー21には、多数のICチップが作成されている。この半導体ウェハー21をそのままの状態で、その裏面全体に矩形のポリイミドフィルム22を貼り付ける。こうして、ポリイミドフィルム22はその硬化反応が開始する温度より約10〜30℃低い温度で、半導体ウェハー21に対して仮接着される。
【0039】
図7(b)にはダイカット(DC)工程を示す。ここでは、半導体ウェハー21の外周部の余分なポリイミドフィルム22を除去してから、ダイシングテープに半導体ウェハー21を貼り付け、ダイサーによりフルカットを施すことにより、多数のICチップ(ダイス)として切り出される。これらの一連の作業は、通常のチップ作成工程と同一工程である。通常の作業と異なっているのは、このようにして切り出されたICチップ4の裏面には、チップサイズと同等であって、均一な膜厚の接着剤フィルム層5aが形成されていることである。
【0040】
図8は、熱硬化型ポリイミドフィルムの吸発熱曲線の一例を示す図である。このチャートの横軸には温度(℃)、縦軸にはDSC(示差走査熱量計)によって測定される熱量(mW)を示す。この吸発熱曲線によれば、ポリイミドフィルム22の硬化開始温度は約180℃付近である。
【0041】
つぎに、図7(c)に示すダイ加熱(DB)工程に進んで、パワートランジスタ2上へのマウントが実施される。ここでは、リードフレーム1のマウント手段15(図1)を用いて、コレット23でICチップ4を真空吸着して、恒温槽内で加熱されたパワートランジスタ2の表面所定位置に接着させる。
【0042】
このとき恒温槽内のマウント温度は、半導体ウェハー21に貼り付けられた接着剤フィルム(ポリイミドフィルム22)の仕様に応じて最適化を図る必要がある。ここでは、ICマウント温度と接着状態との関連について説明する。
【0043】
図9(a)〜(c)は、加熱温度がそれぞれ異なるパワートランジスタにポリイミドフィルムを接着したときの、接着部の顕微鏡写真を示す図である。
図9(a)に示すように、マウント時の加熱温度が170℃であれば、ICチップ4の全面が均一に接着されることになる。しかし、図9(b)および(c)に示すように、ポリイミドフィルム22の硬化開始温度である180℃以上の、190℃や210℃の高温でマウントを行ったときには、パワートランジスタ2上でICチップ4の一部分しか接着されない不具合が生じる。これは、パワートランジスタ2が傾いていた場合に、マウント温度が硬化開始温度より高い状態であれば、接着剤フィルム層5aとパワートランジスタ2との接触箇所のみが接着され、剥離部22aを残してポリイミドフィルム22が硬化してしまうことに起因している。そして、このような剥離現象は、つぎに説明するワイヤボンディング時のワイヤ結線にも悪影響を及ぼす。
【0044】
こうした不具合を解消するために、本発明のICチップの接合方法では、マウント時の恒温槽内の温度を、当初は硬化開始温度より10から20℃低い温度、一例として約10℃低い170℃でICチップ4を仮接着するようにしている(第1のキュア工程)。仮接着では、ポリイミドフィルム22が硬化を開始する直前の状態に留めておいて、その後に恒温槽内の温度を硬化開始温度以上に高くして、接着剤フィルム層5aの硬化反応を完了させるためのキュアが施される(第2のキュア工程)。
【0045】
一般に、こうした2段階に温度を変化させるステップキュアの条件としては、まずマウント温度と同一温度(硬化開始温度より低い)状態でキュアをかけて、ポリイミドフィルム22の粘弾性によりICチップ4の全面での接着を図り、その後に温度を上げてポリイミドフィルム22を完全硬化させることが必要である。接着剤フィルム層5aの完全硬化は、ポリイミドフィルム22が熱分解を開始する温度以下であって、かつエンドユーザーでの実装条件を含む温度プロファイルの最高温度で実施することが望ましい。具体的には、エンドユーザーの基板実装時の加熱温度である260℃(Pbフリー半田の実装温度)で完全硬化させている。
【0046】
以上に説明した接着剤フィルムによるICチップ4の接合方法では、COCの半導体装置にポリイミドフィルム22のようなフィルム系接着剤を導入して、半導体ウェハー21をウェハー状態のままで、まずフィルム系接着剤がウェハー裏面に貼り付けられ、その後に従来通りのダイシングカットをするようにしたので、アウトガス量を低減させて、接着剤内のボイドをなくすとともに、その厚みを均一化できる。また、チップサイズ同等の接着剤をICチップ4のチップ裏面に設けてから、パワートランジスタ2のような半導体チップ上にマウントするようにしたので、接着剤の位置ずれや染み出しなどの不具合を解消できる。さらに、ICチップ4のマウント装置には、パワートランジスタ2の接合工程で使用したコレット23をそのまま流用でき、設備投資を大幅に抑制することができる。
【0047】
なお、フィルム系接着剤を用いるときには、その硬化特性を把握して最適キュア(ステップキュア)の条件を容易に確立できるとともに、ICチップ4の裏面全面の接着剤を確実に硬化させておくことによって、結線時のワイヤボンディング性が損なわれないという利点もある。
【0048】
(3)ワイヤボンディングによる結線方法
COCの半導体装置におけるワイヤボンディングによる結線方法では、短ループ/低ループでワイヤボンディングをいかに安定して完成させるかが最大の課題となる。上述した半導体チップの半田接合方法、および接着剤によるICチップの接合方法を適用した半導体装置においても、ボンディングツールの移動軌跡に合わせて、そこから引き出されるワイヤの長さを一定にして、かつそのワイヤ形状を安定してワイヤ結線することが必要不可欠である。
【0049】
図10は、本発明のワイヤボンディングによる結線方法を示す説明図である。ボンディングツール31は、アルミワイヤなどの金属細線9を保持するワイヤガイド32と、ボンディング後にワイヤをカットするカッター33とクランプ機構34とを備えたウェッジボンダー30として構成されている。
【0050】
同図(a)では、ウェッジボンダー30によりICチップ4のボンディング位置に配線用の金属細線9が超音波接合される(第1のボンディング工程)。同図(b)には、ワイヤガイド32から引き出された金属細線9によりツール軌跡を示す。このとき、金属細線9はワイヤガイド32から所定長さだけ引き出された後、クランプ機構34によってクランプされる(ワイヤ引き出し工程)。
【0051】
同図(c)では、ウェッジボンダー30はワイヤガイド32のクランプ機構34によってワイヤクランプ状態が保持され、リードフレーム1(図1)と一体構成のアウタリード7のボンディング位置まで移動する。そして、金属細線9の他端をウェッジボンダー30によりアウタリード7上に超音波接合している(第2のボンディング工程)。
【0052】
このように第1のボンディング工程が終了した後のワイヤ引き出し時に、結線用ワイヤのループ形状を安定化させるために、ウェッジボンダー30の付加機能であるアクティブクランプ機能を活用して、金属細線9の引き出し量を安定化させている。すなわち、第1のボンディング工程の後、第2のボンディング工程に進む前に、金属細線9をクランプ機構34によってクランプしながら一定のワイヤ長で結線するようにしたので、金属細線9が形成するループ形状の安定性を図ることができる。なお、金線ワイヤをボンディングする場合でも、同様の動作によって同等の効果を達成できる。
【0053】
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明は上述した実施形態のものに限られるわけではない。たとえばパワートランジスタの接合半田としては、Sn−Pb系に限らずSn−Ag、Sn−Sb系半田にも適用可能である。
【0054】
またICチップの接着剤についても、ポリイミドフィルム以外の熱硬化性フィルム接着剤を利用することも可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 リードフレーム
2 パワートランジスタ
3 半田層
4 制御用のICチップ
5 絶縁性接着剤
5a 接着剤フィルム層
6,8,9 金属細線
7 アウタリード
11 ヒータレール
12,12a 半田
13 半田供給手段
13a 供給部
14 押圧手段
14a 加圧工具
14b 叩き工具
15 マウント手段
16,23 コレット
21 半導体ウェハー
22 ポリイミドフィルム
30 ウェッジボンダー
31 ボンディングツール
32 ワイヤガイド
33 カッター
34 クランプ機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップを半田接合によって金属製のリードフレームの所定位置にマウントし、前記半導体チップにICチップをさらに積層して配置し、前記リードフレーム、前記半導体チップ、または前記ICチップの間を電気的に接続する半導体装置の製造方法において、
前記リードフレーム、前記半導体チップ、または前記ICチップのボンディング位置に配線用ワイヤを超音波接合する第1のボンディング工程と、
前記配線用ワイヤをキャピラリから所定長さだけ引き出した後に、前記キャピラリをワイヤクランプ状態にして前記リードフレーム、前記半導体チップ、または前記ICチップの別のボンディング位置に移動するワイヤ引き出し工程と、
前記別のボンディング位置で前記配線用ワイヤの他端を超音波接合する第2のボンディング工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記配線用ワイヤがアルミワイヤもしくは金線ワイヤであることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−23768(P2011−23768A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248251(P2010−248251)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【分割の表示】特願2004−299728(P2004−299728)の分割
【原出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】