説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】慣性センサと半導体電子回路とを有する半導体装置において、慣性センサの感度を向上させる。
【解決手段】第1半導体層、第1絶縁体層及び基板層の順に積層された支持部と、第1半導体層、第1絶縁体層及び基板層の順に積層された可動錘部と、第1半導体層を有し支持部によって可動錘部を支えるための梁部と、梁部に位置する第1半導体層に形成された歪み検出素子と、支持部に位置する第1半導体層及び可動錘部に位置する第1半導体層の少なくともいずれか一方に形成された半導体素子と、を具備する。このように、支持部及び可動錘部が第1半導体層、第1絶縁体層及び基板層を共通に含むので、可動錘部の質量を大きくし、感度の優れた慣性センサを形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体プロセス技術を用いて製造する慣性センサ等のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)センサは、半導体電子回路との集積化が可能で、小型化が可能であることから、高付加価値型製品を生み出すための基盤技術として幅広い産業分野において注目され、期待されている。
【0003】
従来、慣性センサと半導体電子回路とを有する半導体装置において、小型化の観点から、慣性センサと半導体電子回路とを重ね合わせることが試みられている。
【0004】
下記の特許文献1においては、可動部を有するMEMSチップと、MEMSチップからの検出信号を電気的に処理する回路を有するIC(Integrated Circuit)チップとを別々に作成している。そして、MEMSチップとICチップとを所定の間隔を置いて対向するように配置し、保護ケース内に収容することにより、慣性センサと半導体電子回路とを有する半導体装置を作成している。
しかし、特許文献1のように慣性センサのチップとICのチップとを別々に作成していては、小型化に限界がある。
【0005】
また、下記の特許文献2においては、SOI(Silicon on Insulator)基板の一方の面にICを形成し、もう一方の面に可動錘を有するMEMSセンサを形成することにより、慣性センサと半導体電子回路とを有する半導体装置を作成している。これにより、特許文献1のように慣性センサのチップとICのチップとを別々に作成する場合に比べて特許文献2は小型化を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−169541号公報
【特許文献2】特開2009−124013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2の半導体装置においては、慣性センサを構成する可動錘を十分な大きさにすることができず、可動錘の質量を大きくすることができないため、慣性センサの感度を十分に得ることができない。
【0008】
本発明は、以上のような技術的課題に鑑みてなされたものである。本発明の幾つかの態様は、慣性センサと半導体電子回路とを有する半導体装置において、慣性センサの感度を向上させることに関連している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の幾つかの態様において、半導体装置は、第1半導体層、第1絶縁体層及び基板層の順に積層された支持部と、第1半導体層、第1絶縁体層及び基板層の順に積層された可動錘部と、第1半導体層を有し支持部によって可動錘部を支えるための梁部と、梁部に位置する第1半導体層に形成された歪み検出素子と、支持部に位置する第1半導体層及び可動錘部に位置する第1半導体層の少なくともいずれか一方に形成された半導体素子と、を具備する。
この態様によれば、支持部及び可動錘部が第1半導体層、第1絶縁体層及び基板層を共通に含むので、可動錘部の質量を大きくすることができ、慣性センサの感度を向上させることができる。
【0010】
上述の態様において、梁部は、第1半導体層、第1絶縁体層及び基板層の順に積層され、梁部に位置する基板層は、その厚さが支持部に位置する基板層及び可動錘部に位置する基板層それぞれに比べて薄く形成されていることが望ましい。
これによれば、梁部が基板層の一部を含むので、梁部が厚さと強度を得ることができる。また、基板層の一部によって梁部が厚さと強度を確保できるため、第1半導体層又は第1絶縁体層又はこれらの両方を薄膜化することが可能となる。第1半導体層を薄膜化した場合には、完全空乏型若しくは部分空乏型のSOI構造をもつMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を形成することが可能となる。また、第1絶縁体層を薄膜化した場合には、基板層におけるフローティングゲートやバックゲートの形成が可能となる。
【0011】
上述の態様において、梁部は、第1半導体層、第1絶縁体層及び基板層の順に積層され、支持部に位置する基板層及び可動錘部に位置する基板層は、第1半導体層に近い方から、第2半導体層、第2絶縁体層、第3半導体層の順に積層され、梁部に位置する基板層は、第2半導体層を含むことが望ましい。
これによれば、支持部に位置する基板層及び可動錘部に位置する基板層が、第2半導体層、第2絶縁体層、第3半導体層の順に積層され、梁部に位置する基板層が、第2半導体層を含むので、第2半導体層と第2絶縁体層との境界面においてエッチングを止め、梁部を所望の厚さに正確に加工することができ、慣性センサの精度を向上することができる。
【0012】
上述の態様において、可動錘部に位置する第1半導体層に半導体素子が形成されることが望ましい。
これによれば、可動錘部に半導体素子が形成されることによって、可動錘部の面積を大きくとることにより、可動錘部の質量を大きくして慣性センサの感度を向上することができる。
【0013】
上述の態様において、歪み検出素子は、シリコン層を含むピエゾ抵抗素子であることが望ましい。
これによれば、歪み検出素子を正確かつ容易に微細加工できるので、歪み検出素子を用いた慣性センサの精度を向上することができる。
【0014】
上述の態様において、梁部の少なくとも一部が、支持部に形成された電極と可動錘部に形成された電極とを接続する配線層を有することが望ましい。
これによれば、梁部に配線層を有することにより、支持部に形成された電極と可動錘部に形成された電極とを電気的に接続することができる。
【0015】
上述の態様において、支持部に形成された電極と錘部に形成された電極とをワイヤによって接続することが望ましい。
これによれば、ワイヤによって接続することにより、支持部に形成された電極と可動錘部に形成された電極とを電気的に接続することができる。
【0016】
本発明のさらに別の態様において、半導体装置の製造方法は、第1半導体層、第1絶縁体層及び基板層の順に積層された積層板を用意する工程(a)と、第1半導体層に、歪み検出素子及び半導体素子を形成する工程(b)と、積層板を、基板層側から半導体素子の形成面に対して交差する方向にエッチングすることにより、第1半導体層、第1絶縁体層及び基板層の順に積層された支持部と、第1半導体層、第1絶縁体層及び基板層の順に積層された可動錘部と、第1半導体層及び歪み検出素子を有し支持部によって可動錘部を支えるための梁部と、を形成する工程(c)と、を具備する。
この態様によれば、半導体素子の形成面に対して交差する方向に積層板をエッチングすることにより支持部と可動錘部と梁部とを形成するので、可動錘部の質量を大きくすることができ、慣性センサの感度を向上させることができる。
【0017】
上述の態様において、工程(b)において、支持部となる領域と可動錘部となる領域とに電極を形成し、工程(c)の後に、支持部に形成された電極と可動錘部に形成された電極とをワイヤによって電気的に接続する工程(d)をさらに具備することが望ましい。
これによれば、支持部と可動錘部とは1つの積層板から形成されているので、支持部に形成された電極と可動錘部に形成された電極とを電気的に接続する場合に、第1半導体層が平坦に保たれ、高精度な加工をすることができる。
【0018】
本発明のさらに別の態様において、センサデバイスは、上述の半導体装置を含んでいる。
上述の半導体装置を含むことにより、感度の優れたセンサデバイスを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置を示す平面図
【図2】図1のA−A線及びB−B線による断面図
【図3】上記半導体装置に形成された歪み検出素子の拡大図
【図4】上記半導体装置に形成された半導体電子回路及び周辺回路のブロック図
【図5】上記半導体装置の製造工程を示す断面図
【図6】上記半導体装置の製造工程を示す断面図
【図7】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の平面図
【図8】本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の平面図
【図9】本発明の第4の実施形態に係る半導体装置の断面図
【図10】本発明の一実施形態に係るセンサデバイスの断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。また同一の構成要素には同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0021】
<1.第1の実施形態>
<1−1.全体構成>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置を示す平面図であり、図2(A)は図1のA−A線断面図、図2(B)は図1のB−B線断面図である。第1の実施形態に係る半導体装置は、加速度センサとして用いられる慣性センサを含んでいる。
図1に示すように、この半導体装置1は、支持部10と、平面視で支持部10に囲まれており且つ支持部10と互いに離間している可動錘部20と、支持部10によって可動錘部20を支持するための梁部30とを具備している。支持部10と可動錘部20との間には、梁部30を除いて隙間90が形成されている。
【0022】
一方、図2(A)に示すように、半導体装置1の支持部10及び可動錘部20は、いずれも、第1半導体層111と、第1絶縁体層112と、基板層120とを含んでいる。これらのうち、基板層120には、第2半導体層121と、第2絶縁体層122と、第3半導体層131とが含まれている。
半導体装置1の梁部30は、支持部10及び可動錘部20と共通の第1半導体層111及び第1絶縁体層112と、基板層120のうちの第2半導体層121とを含んでおり、梁部30は基板層120のうちの第2絶縁体層122及び第3半導体層131を含んでいない。
【0023】
このように、本実施形態の半導体装置1は、可動錘部20が、支持部10と共通の第1半導体層111、第1絶縁体層112及び基板層120を含んでいるので、半導体装置1における可動錘部20の大きさを大きくとることができる。従って、可動錘部20の質量を大きくし、感度の優れた慣性センサを形成することができる。
支持部10の底面(第3半導体層131の底面)には、封止板40が接着されている。
【0024】
<1−2.第1半導体層>
上記第1半導体層111は、厚さ150nm未満の単結晶シリコン層である。第1半導体層111には、不純物のドープと各種電極及び配線の付与によって、トランジスタ等の半導体素子を含む半導体電子回路50及び半導体電子回路58が形成されている。また、梁部30において第1半導体層111の位置に対応する層には、ピエゾ抵抗素子等の歪み検出素子31が形成されている。
【0025】
このように、本実施形態の半導体装置1においては、半導体電子回路50及び半導体電子回路58と歪み検出素子31とが同じ面に形成されるので、半導体電子回路50及び半導体電子回路58と同じ製造プロセスにおいて歪み検出素子31を製造することができる。これにより、歪み検出素子31を正確かつ容易に微細加工できるので、歪み検出素子31を用いた慣性センサの精度を向上することができる。
【0026】
また、本実施形態の半導体装置1においては、半導体電子回路50及び半導体電子回路58と歪み検出素子31とが同じ面に形成されるので、半導体装置の一方の面から他方の面に貫通電極を形成する必要がない。従って、製造工程数が軽減されるとともに、貫通電極の抵抗による電力の消耗をなくすことができる。
【0027】
<1−3.第1絶縁体層、第2半導体層>
第1絶縁体層112は、厚さ500nm未満のシリコン酸化膜である。図2に示すように、第1絶縁体層112の上に上記第1半導体層111を有することにより、SOI構造が形成されている。この構造により、第1半導体層111に形成される半導体素子の浮遊容量を低減し、高速度化及び低消費電力化に優れた半導体電子回路50及び半導体電子回路58を形成することができる。
【0028】
第2半導体層121は、厚さ10μm未満の単結晶シリコン層である。基板層120の一部である第2半導体層121が梁部30に含まれることによって、梁部30は十分な厚さと強度を得ることができる。
さらに、第2半導体層121によって梁部30の厚さと強度を確保できるため、第1半導体層111又は第1絶縁体層112又はこれらの両方を薄膜化することが可能である。第1半導体層111を薄膜化することにより、完全空乏型若しくは部分空乏型のSOI構造をもつMOSFETを形成することができる。また、第1絶縁体層112を薄膜化することにより、第2半導体層121におけるフローティングゲートやバックゲートの形成が可能となる。
【0029】
なお、半導体素子がSOI構造を必須としない場合には、第1絶縁体層112は必須ではない。この場合には、例えば、第1半導体層111と第2半導体層121とを一体のシリコン層とすることができる。
【0030】
<1−4.第2絶縁体層、第3半導体層>
基板層120の一部である第2絶縁体層122は厚さ10μm程度のシリコン酸化膜である。また、基板層120の一部である第3半導体層131は厚さ100μm以上の単結晶シリコン層である。
支持部10に含まれる第2絶縁体層122及び第3半導体層131は、本実施形態に係る半導体装置1の台座として機能する。可動錘部20に含まれる第2絶縁体層122及び第3半導体層131は、可動錘部20に十分な質量を与える機能を有する。
【0031】
梁部30の形成領域においては、第3半導体層131及び第2絶縁体層122がエッチングされることにより除去されている。第3半導体層131を構成する単結晶シリコン層は、例えば水酸化カリウム(KOH)を用いてエッチングされるが、第2絶縁体層122を構成するシリコン酸化膜の水酸化カリウムによるエッチングレートは低いので、第2絶縁体層122においてエッチングが止まる。その後、例えばフッ化アンモニウム(NHF)を用いて第2絶縁体層122をエッチングすれば、第2絶縁体層122と第2半導体層121との境界面においてエッチングを止めることができる。
このように、材料の異なる第2絶縁体層122及び第2半導体層121が基板層120に含まれており、このうち第2半導体層121が梁部30に含まれていることにより、梁部30を所望の厚さに正確に加工することができ、慣性センサの精度を向上することができる。
【0032】
<1−5.封止板>
封止板40は、可動錘部20側の面の中央に凹部41を形成されたガラス板である。この封止板40は、可動錘部20を囲む支持部10の底面に接着されている。封止板40は、中央の可動錘部20に対応する位置に凹部41が形成されているため、可動錘部20の底面とは接触していない。
【0033】
<1−6.梁部>
図1に示すように、基板層120の面方向に離間している支持部10と可動錘部20との間に、梁部30が4箇所形成されている。この4箇所の梁部30は、図2(A)に示すように、第1半導体層111、第1絶縁体層112、第2半導体層121を含んでおり、第2絶縁体層122及び第3半導体層131を含んでいない。従って、梁部30は、第2絶縁体層122及び第3半導体層131を含む支持部10及び可動錘部20より撓み易い。このため、梁部30には、この半導体装置1の加速度により、可動錘部20の慣性力に応じた歪みが生じる。この歪みを、歪み検出素子31によって検知することにより、この半導体装置1の加速度を検知することができる。
<1−7.歪み検出素子>
【0034】
図3は、第1の実施形態に係る半導体装置に形成された歪み検出素子の拡大図である。ここで、図3(A)は平面図であり、図1の楕円囲み部IIIの詳細を示している。図3(B)は、図3(A)のB−B線断面図である。図3(C)は、図3(A)のC−C線断面図である。図3(B)及び図3(C)において、第1絶縁体層112よりも下層の部分については図示を省略している。また、図3(B)及び図3(C)において図示した上層の絶縁層34は、図3(A)において省略し、図3(A)は絶縁層34より下層の構成を示している。
【0035】
図3(A)に示されるように、歪み検出素子31は、電極32間に単結晶シリコンの細線33を複数平行に配列したものである。図3(B)及び図3(C)に示されるように、歪み検出素子31と他の素子とは、絶縁層34によって分離されている。単結晶シリコンの細線33は、第1絶縁体層112上の第1半導体層111がパターニングされたものである。この細線33は、幅、厚みとも1μm以下(断面積1μm以下)、好ましくは約0.1μm以下(断面積0.01μm以下)である。細線33を構成する単結晶シリコンにはp型不純物がドープされ、その不純物濃度は約5×1015atoms/cmが望ましい。このように、単結晶シリコンの細線を含むピエゾ抵抗素子によって歪み検出素子を構成する場合には、歪み検出素子31を半導体電子回路50及び半導体電子回路58と同じ製造プロセスにおいて製造できるので、歪み検出素子を正確かつ容易に微細加工することができ、慣性センサの精度を向上することができる。
【0036】
可動錘部20の慣性力によって梁部30及び歪み検出素子31に歪みが生じると、電極32間の抵抗値が変化する。この抵抗値を計測することにより、梁部30の歪みが検出される。
平面方向の加速度によって梁部30に歪みが生じる場合、梁部30の幅方向における両端部分は歪みが大きく、梁部30の幅方向における中央部分は歪みが小さい。従って、図1に示されるように、歪み検出素子31は梁部30の幅方向における両端部分に形成することが望ましい。これにより、歪み検出素子31の感度を向上させることができる。逆に、梁部30において支持部10側と可動錘部20側とを結ぶ配線64は、梁部30の幅方向における中央部分に形成することが望ましい。これにより、梁部30の歪みによる配線64の電気的特性の変化を低減することができる。
<1−8.半導体電子回路>
【0037】
図4は、第1の実施形態に係る半導体装置に形成された半導体電子回路50及び周辺回路のブロック図である。この半導体電子回路50は、センサ回路51、A/D変換回路52、コントローラ53を具備している。
【0038】
センサ回路51は、歪み検出素子31の電極32に所定の電圧を印加し、その時に電極間に流れる電流値を検出することにより、単結晶シリコンの細線33の抵抗値を検出する回路である。この抵抗値が、歪み検出素子31の歪み、即ち可動錘部20の慣性による梁部30の歪みの大きさを示している。
A/D変換回路52は、センサ回路51によって得られた歪み検出素子31の歪みを、アナログ信号からデジタル信号に変換する回路である。
【0039】
コントローラ53は、A/D変換回路52から出力されたデジタル信号に基づいて、例えばアクチュエータに対する駆動信号の出力などの処理を行う演算処理回路である。図4に示すように、コントローラ53は、D/A変換回路54を介してアクチュエータ55に接続されていても良く、メモリ56に接続されていても良く、無線通信回路57に接続されていても良い。
D/A変換回路54は、コントローラ53から出力されたデジタルの駆動信号をアナログ信号に変換する回路である。アクチュエータ55は、上記アナログ信号によって駆動される素子又は装置である。
メモリ56は、コントローラ53から出力された検出データ又は駆動信号を一時格納する回路である。
無線通信回路57は、コントローラ53から出力された検出データ又は駆動信号を無線で外部に送信する回路である。
【0040】
上述の説明においては、半導体電子回路50が、センサ回路51、A/D変換回路52、コントローラ53を具備するものとして説明したが、センサ回路51、A/D変換回路52、コントローラ53のうち一部を半導体電子回路58として支持部10に形成し、残りの一部を半導体電子回路50として可動錘部20に形成するようにしても良い。
また、センサ回路51、A/D変換回路52、コントローラ53のうち一部を他の半導体チップに形成し、残りの一部を半導体電子回路50又は半導体電子回路58として本実施形態の半導体装置に実装するようにしても良い。また、半導体電子回路50又は半導体電子回路58として、D/A変換回路54、メモリ56、無線通信回路57等をさらに含むようにしても良い。
また、図1に示すように、無線通信回路57に接続されるアンテナ61を支持部10等の広い面積にわたる領域に形成しても良い。
可動錘部20に半導体電子回路50を形成せずに支持部10にのみ半導体電子回路58を形成する場合には、可動錘部20の面積は、チップ全体の面積から半導体電子回路58の形成領域の面積を除いた残りの面積に制限される。これに対し、半導体電子回路50を可動錘部20に形成することによって、このような制限はなくなり、チップ面積の範囲内で大きな可動錘部20を形成することができる。従って、可動錘部20の面積を大きくとることにより、可動錘部20の質量を十分に確保することができる。
【0041】
支持部10に形成された半導体電子回路58と歪み検出素子31との接続や、可動錘部20に形成された半導体電子回路50と歪み検出素子31との接続や、支持部10に形成された半導体電子回路58と可動錘部20に形成された半導体電子回路50との接続は、図1に示すように、梁部30に一層又は多層の配線62、63、64を形成することによって実現しても良いし、ボンディングワイヤ65によって実現しても良い。図1においては、支持部10に電極67を形成し、可動錘部20に電極66を形成し、電極67と歪み検出素子31とを配線63によって接続し、電極66と歪み検出素子31とを配線62によって接続し、電極67と電極66とを配線64及びボンディングワイヤ65によって接続した例が示されている。
【0042】
また、上述の説明においては、第1の実施形態に係る半導体装置1の慣性センサを加速度センサとして用いる場合について説明したが、角加速度センサ(ジャイロセンサ)として用いても良い。半導体装置1の慣性センサを角加速度センサとして用いる場合には、例えば、半導体装置1の可動錘部20に、予め基板面に垂直な方向の振動を与える。すると、可動錘部20の振動方向に垂直な軸周りの角速度に応じて、可動錘部20にコリオリの力が加わる。コリオリの力は、振動する可動錘部20の速度と、可動錘部20の質量と、角速度に比例する。コリオリの力によって、梁部30の歪みが変化するので、この歪みに基づいて角加速度を検出する。可動錘部20に振動を与える方法としては、例えば、梁部30に形成した図示しない圧電素子に交流電圧を印加することによって梁部30を周期的に歪ませる方法の他、クーロン力や電磁力を利用する方法も可能である。
<1−9.製造工程>
【0043】
図5及び図6は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図である。
まず、図5(A)に示すように、第1半導体層111、第1絶縁体層112、第2半導体層121、第2絶縁体層122、第3半導体層131の順で積層した積層板を用意する。このような積層板は、第1半導体層111、第1絶縁体層112、第2半導体層121をこの順で含む層構造を有するSOI基板と、第2絶縁体層122、第3半導体層131を含む層構造を有する表面酸化処理したシリコン基板とを、接着剤で貼り合わせることによって作成することができる。
【0044】
次に、図5(B)に示すように、歪み検出素子31と、MOSFET等の半導体素子や電極等を含む半導体電子回路50及び半導体電子回路58とを、半導体プロセスを用いて第1半導体層111に形成する。さらに、これらの素子及び電極等を、パシベーション膜(図示せず)で覆う。
このように、歪み検出素子31と半導体電子回路50及び半導体電子回路58とを同じ製造プロセスにおいて製造するので、歪み検出素子31を正確かつ容易に微細加工でき、歪み検出素子31の感度を向上することができる。
【0045】
次に、図5(C)に示すように、支持部10及び可動錘部20以外の領域を、第3半導体層131側から第2絶縁体層122までエッチングする。さらに、支持部10、可動錘部20及び梁部30以外の領域を、第2半導体層121から第1半導体層111までエッチングすることにより、隙間90(図1)を形成する。これにより、支持部10、可動錘部20及び梁部30が形成される。
このように、1つの積層板を半導体素子の形成面に対して交差する方向にエッチングすることによって積層板を支持部10と可動錘部20とに分離するので、可動錘部20の質量を十分に大きくとり、慣性センサの感度を向上することができる。
【0046】
次に、パシベーション膜を選択的にエッチングした後、図6(D)に示すように、支持部10に形成された半導体電子回路50と可動錘部20に形成された半導体電子回路58とをボンディングワイヤ65によって電気的に接続する。このとき、支持部10及び可動錘部20は1つの積層板から形成されているので、支持部10及び可動錘部20の底面(第3半導体層131の底面)は同一平面上にある。従って、この積層板を平らなテーブルT上に設置してワイヤボンディングをする場合にも第1半導体層111が平坦に保たれ、高精度な加工をすることができる。
【0047】
次に、封止板40の一方の面のうち、可動錘部20に対応する領域を選択的にエッチングして凹部41を形成する。
そして、図6(E)に示すように、封止板40の上記一方の面と、支持部10の底面(第3半導体層131の底面)とを真空中で封止して接合することにより、慣性センサを備えた半導体装置1が作成される。
<2.第2の実施形態>
【0048】
図7は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の平面図である。断面図については第1の実施形態において説明したものと同様とすることができる。第2の実施形態に係る半導体装置は、加速度センサとして用いられる慣性センサを含んでいる。
第2の実施形態に係る半導体装置2においては、隙間290の間に形成された梁部230の、支持部10との接続位置(a)から可動錘部20との接続位置(b)までの長さが長く、その長さ方向(矢印ab)が梁部230の途中で変わっている。このため、第2の実施形態に係る半導体装置2は、第1の実施形態に係る半導体装置1よりも平面方向の加速度に対する感度が優れている。なお、第2の実施形態に係る半導体装置2の慣性センサは、角加速度センサ(ジャイロセンサ)として用いることも原理的に可能である。但し、梁部230の長さを上述のように長くした場合には、可動錘部20に振動を与える際の固有振動数が小さくなるため、第1の実施形態に係る半導体装置1よりも角加速度センサとしての感度は劣る可能性がある。
<3.第3の実施形態>
【0049】
図8は、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の平面図である。断面図については第1の実施形態において説明したものと同様とすることができる。第3の実施形態に係る半導体装置は、加速度センサとして用いられる慣性センサを含んでいる。
第3の実施形態に係る半導体装置3においては、隙間390の間に、梁部330が1箇所のみ設けられている。このように、梁部は4箇所設ける場合に限らず、4箇所より多くても少なくても良い。第3の実施形態に係る半導体装置3の慣性センサは、角加速度センサ(ジャイロセンサ)として用いることも可能である。半導体装置3の慣性センサを角加速度センサとして用いる場合には、第1の実施形態において説明したように、可動錘部20に予め振動を与え、コリオリの力による梁部330の歪みに基づいて角加速度を検出する。
<4.第4の実施形態>
【0050】
図9は、本発明の第4の実施形態に係る半導体装置の断面図である。平面図については第1の実施形態〜第3の実施形態のいずれかにおいて説明したものと同様とすることができる。
第4の実施形態に係る半導体装置4は、第1半導体層111と、第1絶縁体層112と、基板層420とを含んでいる。第1半導体層111と、第1絶縁体層112とは、第1の実施形態において説明したものと同様である。
【0051】
基板層420は、第1の実施形態における第2半導体層121及び第3半導体層131に相当するシリコン単結晶基板である。梁部30は基板層420の一部を含んでいるが、梁部30に位置する基板層420の厚さは、支持部10に位置する基板層420及び可動錘部20に位置する基板層420それぞれの厚さに比べて薄く形成されている。従って、支持部10及び可動錘部20を形成するときに、基板層420のエッチングを途中の所定位置で止めることにより、梁部30を所望の厚さに調整する。
本実施形態によれば、第1半導体層111と、第1絶縁体層112と、基板層420とを含む簡単な層構成により、慣性センサの感度を向上させることができる。
【0052】
図10は、本発明の一実施形態に係るセンサデバイスの断面図である。図10に示すように、センサデバイス500は、上述の実施形態に係る半導体装置1(或いは半導体装置2〜4のいずれか)をパッケージ510によって封止したものである。半導体装置1は、パッケージ510内においてケース520に収容されることにより、第1半導体層111側の面に空間を形成し、可動錘部20の可動性を確保している。
半導体装置1の第1半導体層111側の面に形成された電極67(図1、図2参照)は、リードフレーム530に対してボンディングワイヤ540によって電気的に接続されている。これにより、加速度の検知信号等を半導体装置1からリードフレーム530を介して外部に出力し、或いは、外部からリードフレーム530を介して半導体装置1に対して制御信号を入力したり電力を供給したりすることができる。
本実施形態によれば、上述の実施形態に係る半導体装置1(或いは半導体装置2〜4のいずれか)をパッケージによって封止することにより、感度の優れたセンサデバイス500を構成することができる。
【符号の説明】
【0053】
1、2、3、4…半導体装置、10…支持部、20…可動錘部、30…梁部、31…歪み検出素子、32…電極、33…細線、34…絶縁層、40…封止板、41…凹部、50…半導体電子回路、51…センサ回路、52…A/D変換回路、53…コントローラ、54…D/A変換回路、55…アクチュエータ、56…メモリ、57…無線通信回路、58…半導体電子回路、61…アンテナ、62、63、64…配線、65…ボンディングワイヤ、66、67…電極、90…隙間、111…第1半導体層、112…第1絶縁体層、120…基板層、121…第2半導体層、122…第2絶縁体層、131…第3半導体層、230、330…梁部、290、390…隙間、420…基板層、500…センサデバイス、510…パッケージ、520…ケース、530…リードフレーム、540…ボンディングワイヤ、T…テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1半導体層、第1絶縁体層及び基板層の順に積層された支持部と、
前記第1半導体層、前記第1絶縁体層及び前記基板層の順に積層された可動錘部と、
前記第1半導体層を有し、前記支持部によって前記可動錘部を支えるための梁部と、
前記梁部に位置する第1半導体層に形成された歪み検出素子と、
前記支持部に位置する第1半導体層及び前記可動錘部に位置する第1半導体層の少なくともいずれか一方に形成された半導体素子と、
を具備する半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記梁部は、前記第1半導体層、前記第1絶縁体層及び前記基板層の順に積層され、
前記梁部に位置する基板層は、その厚さが前記支持部に位置する基板層及び前記可動錘部に位置する基板層それぞれに比べて薄く形成されている半導体装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記梁部は、前記第1半導体層、前記第1絶縁体層及び前記基板層の順に積層され、
前記支持部に位置する基板層及び前記可動錘部に位置する基板層は、前記第1半導体層に近い方から、第2半導体層、第2絶縁体層、第3半導体層の順に積層され、
前記梁部に位置する基板層は、前記第2半導体層を含む半導体装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項において、
前記可動錘部に位置する第1半導体層に前記半導体素子が形成された半導体装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項において、
前記歪み検出素子は、シリコン層を含むピエゾ抵抗素子である半導体装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項において、
前記梁部の少なくとも一部が、前記支持部に形成された電極と前記可動錘部に形成された電極とを接続する配線層を有する半導体装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項において、
前記支持部に形成された電極と前記可動錘部に形成された電極とをワイヤによって接続した半導体装置。
【請求項8】
第1半導体層、第1絶縁体層及び基板層の順に積層された積層板を用意する工程(a)と、
前記第1半導体層に、歪み検出素子及び半導体素子を形成する工程(b)と、
前記積層板を、前記基板層側から前記半導体素子の形成面に対して交差する方向にエッチングすることにより、前記第1半導体層、前記第1絶縁体層及び前記基板層の順に積層された支持部と、前記第1半導体層、前記第1絶縁体層及び前記基板層の順に積層された可動錘部と、前記第1半導体層及び前記歪み検出素子を有し前記支持部によって前記可動錘部を支えるための梁部と、を形成する工程(c)と、
を具備する半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項8において、
工程(b)において、前記支持部となる領域と前記可動錘部となる領域とに電極を形成し、
工程(c)の後に、前記支持部に形成された電極と前記可動錘部に形成された電極とをワイヤによって電気的に接続する工程(d)をさらに具備する半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の半導体装置を含むセンサデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−127935(P2011−127935A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284525(P2009−284525)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】