説明

半導体装置

【課題】ハウジング内に配された半導体センサチップに対して太陽光や塵埃等の環境要素が影響することを低減できるようにする。
【解決手段】中空の空洞部を有するハウジング5内に圧力変動を検出する半導体センサチップ7を設けてなり、前記ハウジング5のうち前記半導体センサチップ7に対向しない位置に、前記空洞部を外方に連通させる開口部3が形成され、該開口部3が幅狭のスリット状に形成された貫通孔25を備える半導体装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空の空洞部内にマイクロフォンチップや圧力センサチップ等の半導体センサチップを設けた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体装置には、例えば特許文献1,2のように、音響等の圧力変動を検出する半導体センサチップを搭載する基板の搭載面にカバー(蓋体)を設置し、これら基板及びカバーによって画成される中空の空洞部内に半導体センサチップが収容されるように構成したものがある。このカバーには、空洞部を外方に連通させる開口部が形成されており、この開口部を通じて外部空間で生じた圧力変動を半導体センサチップに到達させるようになっている。また、開口部は、半導体センサチップに対向する位置に形成されており、主に略円形状に形成されている。
【特許文献1】米国特許第6781231号明細書
【特許文献2】特表2004―537182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の半導体装置において、開口部が半導体センサチップに対向する位置に形成されると、半導体センサチップが開口部を介して外方に露出してしまうため、太陽光や塵埃等の環境要素の影響を受けやすくなるという問題がある。
特に、この開口部は、半導体センサチップのダイヤフラムに対向する位置に平面視で円形状に1つだけ形成されているため、圧力変動を空洞部内に十分に導入するためには開口部の開口面積を十分な大きさとする必要があるが、開口部が大きくなってしまうと、前記環境要素の影響が大きくなってしまう。また、開口部は円形状に形成されていると、開口部の直径よりも小さな小片が空洞部内に容易に入り込んでしまうという問題がある。
なお、従来では、半導体センサチップを前記環境要素から保護するために、環境要素の侵入を防止する環境バリアを別途設けたものもあるが、環境バリアには半導体装置の製造工程を複雑化させたりする必要があるため面倒である。
【0004】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、別途部材を設けることなく、半導体センサチップに対する環境要素の影響を低減できる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
本発明の半導体装置は、中空の空洞部を有するハウジング内に圧力変動を検出する半導体センサチップを設けてなり、前記ハウジングのうち前記半導体センサチップに対向しない位置に、前記空洞部を外方に連通させる開口部が形成され、前記開口部が、前記ハウジングの所定領域内で複数の貫通孔に分割して形成されていることを特徴とする。
なお、複数の貫通孔を前記所定領域内に形成することは、例えば相互に隣り合う貫通孔の間隔を小さくするように複数の貫通孔を密集させることを示している。
【0006】
また、本発明の半導体装置は、中空の空洞部を有するハウジング内に圧力変動を検出する半導体センサチップを設けてなり、前記ハウジングのうち前記半導体センサチップに対向しない位置に、前記空洞部を外方に連通させる開口部が形成され、前記開口部が幅狭のスリット状に形成された貫通孔を備えることを特徴とする。
【0007】
これらの発明に係る半導体装置によれば、複数の貫通孔を形成することで、各貫通孔の開口面積を小さくしても、これらを合計した開口部の開口面積を十分に確保できるため、音響等の圧力変動が開口部から空洞部内に入って半導体センサチップに到達することができる。また、複数の貫通孔を所定領域内に集めて配置することで、1つの貫通孔のみを形成した場合とほぼ同様の状態で圧力変動が空洞部内に入ることが可能となる。
また、開口部をスリット状の貫通孔により構成することで、貫通孔の幅寸法を小さくしながらも開口部としての開口面積を十分に確保することができるため、確実に圧力変動が開口部から空洞部内に入って半導体センサチップに到達することができる。
【0008】
そして、上述のように、各貫通孔の開口面積を小さくしたり、貫通孔の幅寸法を小さくしたりすることで、塵埃が空洞部内に侵入することを容易に防止できる。また、これに加えて開口部を半導体センサチップに対向させない位置に配することで、太陽光が開口部から空洞部内に入射されても半導体センサチップに到達することも容易に防止できる。すなわち、半導体センサチップに対する塵埃や太陽光等の環境要素の影響を低減することが可能となる。
【0009】
さらに、スリット状の前記貫通孔を備える半導体装置においては、前記貫通孔がその幅方向に複数並べて配されるとしてもよい。
この場合には、スリット状に形成された複数の貫通孔を相互に近づけて配置することができるため、ハウジングを小さく形成して半導体装置の小型化を図ることができる。また、複数の貫通孔を形成することで、各貫通孔の開口面積を小さくすることができるため、半導体センサチップに対する前記環境要素の影響をさらに低減することも可能となる。
【0010】
また、本発明の半導体装置は、基板の搭載面に圧力変動を検出する半導体センサチップを搭載すると共に前記搭載面及び前記半導体センサチップの上方を蓋体により覆って、これら基板及び蓋体により前記半導体センサチップを含む中空の空洞部を形成した構成の半導体装置であって、前記蓋体の少なくとも一部が、多孔質体からなることを特徴とする。
ここで、前記多孔質体は、例えば、その内部に相互に連通された微小な空隙を多数形成してなるものであり、これら多数の空隙を介して前記空洞部を外方に連通させるものである。
【0011】
この発明に係る半導体装置において、その外方で生じた圧力変動は蓋体をなす多孔質体の空隙を介して空洞部内に入ることで半導体センサチップに到達することができる。そして、蓋体を多孔質体により構成することで、塵埃が空洞部内に侵入することを容易に防止でき、また、太陽光が空洞部内に入射されることも防止できるため、半導体センサチップに対する塵埃や太陽光等の環境要素の影響を無くすことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、別途部材を設けることなく、半導体センサチップに対する太陽光や塵埃等の環境要素の影響を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図1,2を参照して本発明の一実施形態に係る半導体装置について説明する。図1,2に示すように、この実施形態に係る半導体装置1は、中空の空洞部S及び空洞部Sを外方に連通させる開口部3を有するハウジング5と、空洞部S内に配されたマイクロフォンチップ7及びLSIチップ9とを備えており、所謂マイクロフォンパッケージを構成している。
【0014】
マイクロフォンチップ7は、例えばシリコンからなり、環状の支持部11の内孔11aを覆うようにダイヤフラム13を設けて構成されている。ダイヤフラム13は音響等の圧力変動を振動により検出するものであり、マイクロフォンチップ7はこの振動を電気信号に変換する所謂音圧センサチップを構成している。
LSIチップ9は、マイクロフォンチップ7を駆動制御する役割を果たすものであり、例えばマイクロフォンチップ7からの電気信号を増幅するための増幅回路や、前記電気信号をデジタル信号として処理するためのA/D変換器、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)等を含んで構成されている。
【0015】
ハウジング5は、略板状に形成されてマイクロフォンチップ7及びLSIチップ9を搭載する搭載面15aを有する回路基板15と、回路基板15の搭載面15aから厚さ方向に離間して配置される略板状の天板部材17と、これら回路基板15の搭載面15a及び搭載面15aに対向する天板部材17の対向面17aの周縁に固定される略環状の側壁部材19とから構成されている。なお、本実施形態において、天板部材17は、例えば洋白からなり、回路基板15の搭載面15a、マイクロフォンチップ7及びLSIチップ9の上方を覆って、回路基板15及び側壁部材19と共にマイクロフォンチップ7及びLSIチップ9を含む空洞部Sを画成する蓋体をなしている。
回路基板15は、その内部に電気的な配線部(不図示)を設けた所謂多層配線基板をなしており、前述のマイクロフォンチップ7は、そのダイヤフラム13が内孔11aを介して回路基板15の搭載面15aに対向するように、ダイボンド材D1を介して搭載面15aに搭載されている。
【0016】
また、LSIチップ9も、マイクロフォンチップ7と同様に、ダイボンド材D2を介して搭載面15aに搭載されており、マイクロフォンチップ7に隣り合う位置に配されている。
そして、これらマイクロフォンチップ7及びLSIチップ9は、ワイヤー21によって相互に電気接続されている。また、LSIチップ9は、不図示のワイヤーを介して搭載面15aに露出する回路基板15の前記配線部に電気接続されている。
【0017】
また、この回路基板15の搭載面15aには、LSIチップ9の全体及びLSIチップ9に接続されたワイヤー21の一部を封止する樹脂封止部23が形成されている。すなわち、LSIチップ9は外方に露出せず、樹脂封止部23によって保護されている。なお、樹脂封止部23には、例えばシリコン系樹脂のように弾性率が低く応力の小さい樹脂材料を使用することが好ましく、これを溶融した状態で回路基板15の搭載面15a上に流し込む(ポッティングする)ことで形成することができる。
【0018】
本実施形態において、空洞部Sを外方に連通させる開口部3は、天板部材17に形成されてその厚さ方向に貫通する1つの貫通孔25からなり、貫通孔25はLSIチップ7に対向する天板部材17の所定領域内に配されている。また、この貫通孔25は、図2に示すように、平面視で幅狭のスリット状に形成されており、その長手方向がダイヤフラム13の径方向に略直交している。ここで、径方向とは、平面視でダイヤフラム13から貫通孔25に向かう方向を示している。
なお、図示例においては、貫通孔25の長手方向がマイクロフォンチップ7及びLSIチップ9の配列方向に略直交している。また、図示例において、貫通孔25は略矩形状に形成されているが、例えば角部に丸みを帯びたスリット形状に形成されるとしても構わない。
【0019】
このような構成の半導体装置1において、音響等の圧力変動を十分に空洞部S内のマイクロフォンチップ7まで到達させるためには、開口部3の開口面積を所定面積(例えば0.785(mm)程度)以上とする必要があるが、貫通孔25を矩形状に形成することで、従来のように円形状に形成した場合と比較して、貫通孔25の幅寸法を小さくすることができる。
例えば、開口部3の開口面積を0.785(mm)に設定する場合において、貫通孔25が従来のように円形状である場合にはその径寸法が1.0(mm)となることに対し、矩形状である場合にはその長手寸法を例えば1.57(mm)とすることで幅寸法を0.5(mm)とすることができ、矩形状の幅寸法を円形状の径寸法の半分に設定することができる。
【0020】
また、例えば図3に示すように、図2の貫通孔25よりもさらに細長いスリット状の貫通孔27を形成すればその幅寸法をさらに小さくすることができる。例えば、開口部3の開口面積を上述と同様に0.785(mm)に設定する場合においては、貫通孔27の長手方向を2.6(mm)とすることで幅寸法を0.3(mm)とすることができ、矩形状の幅寸法を円形状の径寸法の半分未満に設定することができる。
なお、スリット状に形成された貫通孔25,27において開口部3の開口面積をさらに拡大する場合には、幅寸法を変更せずに長手寸法を拡大してもよい。
【0021】
以上のように構成された半導体装置1によれば、開口部3をスリット状の貫通孔25,27により構成することで、貫通孔25,27の幅寸法を小さくしながらも開口部3の開口面積を十分に確保することができるため、圧力変動が開口部3から空洞部S内に入ってマイクロフォンチップ7に到達することができる。
そして、貫通孔25,27の幅寸法を小さくしたりすることで、塵埃が空洞部S内に侵入することを容易に防止できる。また、これに加えて開口部3がマイクロフォンチップ7に対向しない位置に配されているため、太陽光が開口部3から空洞部S内に入射されてもマイクロフォンチップ7に到達することも容易に防止できる。すなわち、マイクロフォンチップ7に対する塵埃や太陽光等の環境要素の影響を低減することが可能となる。
また、スリット状の貫通孔25,27は、その長手方向がダイヤフラム13の径方向に略直交するように配されているため、ハウジング5のサイズを大きくすることなく、開口部3をダイヤフラム13から離間した位置に配置することが可能となり、半導体装置1の小型化を図ることができる。
【0022】
なお、上記実施形態において、開口部3は1つの貫通孔25,27からなるとしたが、例えば図4,5に示すように、スリット状に形成された複数の貫通孔33に分割して形成されるとしても構わない。ただし、これら複数の貫通孔33は、いずれもマイクロフォンチップ7に対向しない位置に形成されることが好ましく、また、所定領域(例えば、LSIチップ9に略対向する天板部材17の対向領域及びこの対向領域に隣り合う近傍領域)内に集めて形成されることが好ましい。
すなわち、開口部3は、例えば図4に示すように、スリット状の貫通孔33,33をその幅方向に2つ並べて形成されるとしてもよいし、例えば図5に示すように、スリット状の貫通孔33,33,33をその幅方向に3つ配列して形成されるとしても構わない。なお、これら貫通孔33の配列方向は、ダイヤフラム13の径方向と一致させる、すなわち、図示例のようにマイクロフォンチップ7及びLSIチップ9の配列方向と一致させることがより好ましい。また、相互に隣り合う貫通孔33,33同士の間隔は小さい程よい。
なお、上述した径方向とは、平面視でダイヤフラム13から貫通孔25に向かう方向を示している。
【0023】
これらの場合には、開口部3の開口面積(複数の貫通孔33の各開口面積を合計したもの)を変えることなく、各貫通孔33の幅寸法をさらに小さくすることができる。すなわち、例えば図4の構成において、開口部3の開口面積を0.785(mm)に設定する場合には、各貫通孔33の長手寸法を上記実施形態の図3の構成と同様に2.65(mm)としても、幅寸法を0.15(mm)とさらに小さくすることができる。
また、例えば図5の構成において、各貫通孔33の寸法を上述のように設定した場合には、開口部3の開口面積を1.17(mm)とさらに拡大することができる。
【0024】
これら図4,5に示す構成の半導体装置31,35においては、各貫通孔33の開口面積を小さくしても、これらを合計した開口部3の開口面積を十分に確保できるため、音響等の圧力変動が確実に開口部3から空洞部S内に入ってマイクロフォンチップ7に到達することができる。また、複数の貫通孔33を所定領域内に集めて配置することで、1つの貫通孔25,27のみを形成した場合とほぼ同様の状態で圧力変動を空洞部S内に導入することが可能となる。
【0025】
そして、これら半導体装置31,35によれば、上記実施形態と同様の効果を奏する。
また、複数の貫通孔33がその幅方向に並べて配されているため、これら複数の貫通孔33を相互に近づけて配置し、複数の貫通孔33の形成領域を最小限に抑えることができる。すなわち、ハウジング5を小さく形成して半導体装置31,35の小型化を図ることができる。また、各貫通孔33の開口面積を小さくすることができるため、マイクロフォンチップ7に対する前記環境要素の影響をさらに低減することも可能となる。
【0026】
また、開口部3は、上述のように複数のスリット状の貫通孔33に分割して形成されることに限らず、例えば図6,7に示すように、複数の略正方形状の貫通孔39,39,・・・に分割して形成されるとしてもよいし、例えば図8に示すように、複数の円形状の貫通孔43,43,・・・に分割して形成されるとしても構わない。
ここで、略正方形状に形成された複数の貫通孔39,39,・・・は、例えば図6に示すように、天板部材17においてマイクロフォンチップ7及びLSIチップ9の配列方向に直交する方向に一列に並べて配置されるとしても構わないし、例えば図7に示すように、複数列並べて配置されるとしてもよい。また、例えば図8に示すように、略円形状に形成された複数の貫通孔43,43,・・・についても、上述と同様に配列されるとして構わない。
【0027】
なお、図8のように、各貫通孔43が従来と同様に円形状に形成されていても、これを複数形成することで、各貫通孔43の径寸法を小さく設定することができる。例えば開口部3の開口面積を0.78(mm)に設定する場合において、開口部3を例えば2つの円形状の貫通孔43で構成する場合には、各貫通孔43の径寸法を約0.71(mm)とすることができ、例えば4つの円形状の貫通孔43で構成する場合には、各貫通孔43の径寸法を0.5(mm)とすることができる。
【0028】
また、開口部3は、図4〜8に示すように、同一の開口面積を有する複数の貫通孔33,39,43からなるとしてもよいが、例えば図9に示すように、相互に開口面積の異なる複数の貫通孔45,47からなるとしても構わない。なお、この図示例においては、比較的大きな径寸法を有する円形状の貫通孔45の周囲に、この貫通孔45よりも小さな径寸法を有する円形状の複数(図示例では4つ)の貫通孔47を配して開口部3が構成されている。
【0029】
さらに、開口部3は、同一形状に形成された複数の貫通孔33,39,43,45,47によって構成されることに限らず、相互に異なる形状に形成された複数の貫通孔を組み合わせて構成されるとしてもよい。すなわち、開口部3は、例えば図10に示すように、扇状の貫通孔53及び円形状の貫通孔55を複数(図示例では4つ)ずつ形成して構成されるとしてもよい。
これら図6〜10に示す構成の半導体装置においても、図4,5に示す構成の半導体装置31,35と同様の効果を奏する。
【0030】
また、開口部3は、LSIチップ7に対向する位置に形成されるとしたが、これに限ることはなく、少なくともハウジング5のうちマイクロフォンチップ7に対向しない位置に形成されていればよい。すなわち、開口部3は、例えば側壁部材19に形成されるとしてもよいし、例えば回路基板15の搭載面15aのうちマイクロフォンチップ7やLSIチップ9が搭載されていない領域に開口するように形成されるとしても構わない。
ただし、この場合でも、相互に隣り合う貫通孔の間隔が小さくなるように複数の貫通孔を密集して配置することが好ましい、すなわち、複数の貫通孔を所定領域内に形成することが好ましい。
【0031】
さらに、ハウジング5は、回路基板15、天板部材17及び側壁部材19の3つにより構成されるとしたが、これに限ることはなく、少なくとも中空の空洞部S、空洞部Sを外方に連通させる開口部3、及び、マイクロフォンチップ7やLSIチップ9を搭載する搭載面15aを有するように構成されていればよい。例えば、上記実施形態の側壁部材19は、回路基板15と共に多層配線基板をなすように上記実施形態の回路基板15と一体に形成されるとしてもよいし、天板部材17と共に回路基板15の搭載面15aを覆う蓋体をなすように、天板部材17と一体に形成されるとしても構わない。
【0032】
また、ハウジング5は開口部3を有して構成されることに限らず、少なくともマイクロフォンチップ7に対する太陽光や塵埃等の環境要素の影響を低減できる構成となっていればよく、開口部3を形成する代わりに、例えば、蓋体をなす天板部材17や側壁部材19の全体が多孔質体によって形成されるとしても構わないし、天板部材17や側壁部材19の一部のみが多孔質体によって形成されるとしてもよい。
ここで、多孔質体とは、例えばその内部に相互に連通された微小な空隙を多数形成してなるものであり、これら多数の空隙を介して前記空洞部Sを外方に連通させるものである。なお、この多孔質体の具体的な材料としては、例えば樹脂材料、セラミックス、又はこれらの複合材料等が挙げられる。
【0033】
この構成の半導体装置では、ハウジング5の外方で生じた音響等の圧力変動が蓋体をなす多孔質体の空隙を介して空洞部S内に入ることでマイクロフォンチップ7に到達することができる。なお、圧力変動を空洞部S内に導入するためには、例えば前記空隙の直径を1(μm)以上、5(μm)以下とすることがより好ましい。
このように蓋体を多孔質体により構成した場合には、塵埃が空洞部S内に侵入することを容易に防止でき、また、太陽光が空洞部S内に入射されることも防止できるため、マイクロフォンチップ7に対する環境要素の影響を無くすることができる。
【0034】
さらに、ハウジング5内にはLSIチップ9が配されるとしたが、これに限ることはなく、少なくともマイクロフォンチップ7が配されていればよく、LSIチップ9は、例えば半導体装置1を実装する不図示の実装基板上に別途搭載されるとしても構わない。
【0035】
また、上述した全ての実施形態においては、半導体センサチップとしてマイクロフォンチップ7を用いたが、本願発明はこれに限られるものではない。
本願発明で開示した開口部の実施形態は、可聴域よりも高い周波数を感知する半導体センサチップを含む半導体装置にも適用することができる。例えば半導体センサチップとして超音波センサチップを用いることも可能である。この場合には、ハウジング5に複数の貫通孔からなる開口部3を設けることで、塵埃などの侵入を防ぎつつ、ヘルムホルツ共鳴周波数を高く設定できることから、高周波数の超音波を検知できる超音波センサパッケージ(半導体装置)を提供することができる。
【0036】
ここで、ヘルムホルツ共振器について説明する。
一般に、ヘルムホルツ共振器は、閉鎖空間(本願発明における空洞部S)と短管(本願発明における開口部3)とから構成されている。例えば本願発明に係る半導体装置において、体積Vのハウジング5の空洞部Sからなる閉鎖空間と、板厚Tbの天板部材17に設けられた複数の半径rの円形状の貫通孔からなる開口部3としての短管とが形成され、また、複数の貫通孔の断面積の合計がSbとなるように構成され、開口部3がハウジング5内の空洞部Sと外部空間とを連通しているものを想定する。
【0037】
外部空間から開口部3の入口に音圧が作用すると、開口部3における媒質(空気)が一体運動をし、空洞部S内の媒質(空気)に圧力変動が生じる。この現象は、開口部3における空気を質点と仮定し、空洞部S内の空気の体積変化による圧力変動をバネと仮定すると、力学系の質点―バネモデルと等価となり、ある周波数(以下、「ヘルムホルツ共鳴周波数」と呼ぶ)で共振(共鳴)が生じる。
この場合、ヘルムホルツ共鳴周波数Fh(Hz)は、音速Cを340000(mm/s)とし、長さの単位を(mm)とすると以下の式(1)で示される。
【0038】
【数1】

【0039】
この式(1)においては、複数の貫通孔の断面積の合計Sb、各貫通孔の半径r、天板部材17の板厚Tb、ハウジング5の空洞部Sの体積Vを変化させることによりヘルムホルツ共鳴周波数Fhを変えることができる。
【0040】
一方、半導体装置のハウジング5を小型化して空洞部Sの体積Vを小さくしたり、天板部材17の板厚Tbの厚さを薄くしたりすることでヘルムホルツ共鳴周波数Fhを変えることは、技術的な限界がある。したがって、ヘルムホルツ共鳴周波数Fhをより高く設定するためには、各貫通孔の半径rを小さくしたり、複数の貫通孔の断面積の合計Sbを大きくしたりすることが有効である。
【0041】
本願発明に係るマイクロフォンパッケージでは、小さなハウジング5を用いても、複数の貫通孔を設け、複数の貫通孔の断面積の合計Sbを大きくすることでヘルムホルツ共鳴周波数Fhを可聴域よりも高く設定することができ、感度特性の均一化を図ることができる。結果として、高周波数も感知できる感度のよいマイクロフォンパッケージを提供することができる。
【0042】
一方、可聴域よりも高い周波数を感知する超音波センサチップなどの半導体センサチップを含む超音波センサパッケージの場合には、ヘルムホルツ共鳴周波数Fhを超音波センサチップの使用帯域よりもさらに高く設定する必要がある。すなわち、前述したマイクロフォンパッケージと比較してさらに大きな開口部3を形成する必要がある。しかしながら、大きな開口部を設ければ、半導体センサチップに対する塵埃や太陽光等の環境要素の影響がより問題となる。
そこで、本願発明に係る複数の貫通孔を開口部3として設けたハウジング5を超音波センサパッケージに用いることで、環境要素の影響を避けつつ、ヘルムホルツ共鳴周波数Fhを超音波センサチップの使用帯域よりも高く設定することができる。結果として、感度特性の均一化を図ることができ、高周波数の超音波を感知できる感度のよい超音波センサパッケージを提供することができる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この発明の一実施形態に係る半導体装置を示す概略断面図である。
【図2】図1の半導体装置において、貫通孔形状の一例を示す概略平面図である。
【図3】図1の半導体装置において、貫通孔形状の他の例を示す概略平面図である。
【図4】この発明の他の実施形態に係る半導体装置において、その貫通孔形状を示す概略断面図である。
【図5】この発明の他の実施形態に係る半導体装置において、その貫通孔形状を示す概略断面図である。
【図6】この発明の他の実施形態に係る半導体装置において、その貫通孔形状を示す概略断面図である。
【図7】この発明の他の実施形態に係る半導体装置において、その貫通孔形状を示す概略断面図である。
【図8】この発明の他の実施形態に係る半導体装置において、その貫通孔形状を示す概略断面図である。
【図9】この発明の他の実施形態に係る半導体装置において、その貫通孔形状を示す概略断面図である。
【図10】この発明の他の実施形態に係る半導体装置において、その貫通孔形状を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1,31,35・・・半導体装置、3・・・開口部、5・・・ハウジング、7・・・マイクロフォンチップ(半導体センサチップ)、15・・・回路基板、15a・・・搭載面、17・・・天板部材(蓋体)、19・・・側壁部材、25,27,33,39,43,45,47,53,55・・・貫通孔、S・・・空洞部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の空洞部を有するハウジング内に圧力変動を検出する半導体センサチップを設けてなり、
前記ハウジングのうち前記半導体センサチップに対向しない位置に、前記空洞部を外方に連通させる開口部が形成され、
前記開口部が、前記ハウジングの所定領域内で複数の貫通孔に分割して形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
中空の空洞部を有するハウジング内に圧力変動を検出する半導体センサチップを設けてなり、
前記ハウジングのうち前記半導体センサチップに対向しない位置に、前記空洞部を外方に連通させる開口部が形成され、
前記開口部が幅狭のスリット状に形成された貫通孔を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
前記貫通孔が、その幅方向に複数並べて配されていることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
基板の搭載面に圧力変動を検出する半導体センサチップを搭載すると共に前記搭載面及び前記半導体センサチップの上方を蓋体により覆って、これら基板及び蓋体により前記半導体センサチップを含む中空の空洞部を形成した構成の半導体装置であって、
前記蓋体の少なくとも一部が、多孔質体からなることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−227482(P2008−227482A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−34730(P2008−34730)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】