説明

半導体装置

【課題】電気特性の信頼性を向上させることができる半導体装置を提供する。
【解決手段】LCDドライバIC14(半導体装置)は、トランジスタ素子31と、第1STI分離層32と、第2STI分離層33と、絶縁膜41と、抵抗素子34とを有する。第2STI分離層33は、第1STI分離層32と共に、トランジスタ素子31を電気的に分離するために用いられる。第2STI分離層33上には、電気抵抗を得るために用いられる抵抗素子34が、絶縁膜41を介して形成されている。絶縁膜41は、製造過程において第2STI分離層33に欠陥が生じた場合であっても、抵抗素子34に印加された電圧に対して耐圧を確保することが可能に形成されている。抵抗素子34は、例えば、ポリシリコン膜であり、層間絶縁膜42に形成されたコンタクトプラグ及び金属配線層を介して高電圧端子39(+15V)と接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗素子を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した半導体装置は、例えば、液晶表示装置の画素を制御するドライバIC(図1における「LCDドライバIC14」に相当する。)として用いられる。半導体装置には、例えば、データ線などに接続される高電圧(例えば、15V)の領域と、選択線などに接続される低電圧(例えば、−15V)の領域とを有する。図3は、従来の半導体装置の構造を示す模式断面図である。図4は、図3におけるA部を拡大して示す拡大断面図である。図3に示すように、半導体装置51は、例えば、N型の半導体基板52におけるPウエル領域53に、トランジスタ素子54を電気的に分離するためのSTI(Shallow Trench Isolation)分離層55及びSTI分離層56が形成されている。なお、Pウエル領域53は、低電圧を印加するための第1端子57と接続されている。
【0003】
STI分離層56の上には、例えば、所望の電位をつくったり静電気から保護したりするための抵抗素子58が、ゲート絶縁膜59を介して形成されている。抵抗素子58は、例えば、特許文献1に記載のようなポリシリコン抵抗素子が用いられる。また、抵抗素子58は、高電圧を印加するための第2端子60と接続されている。このような抵抗素子58をSTI分離層56上に形成することにより、印加される高電圧に対する耐圧を確保することが可能となっている。
【0004】
【特許文献1】特開平5−267587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図4に示すように、STI分離層56を形成する際、STI分離層56にピット(シリコンピット:欠陥)61が発生する場合がある。ピット61の発生により、絶縁層として機能するSTI分離層56の厚みが部分的に薄くなり、抵抗素子58と半導体基板52(Pウエル領域53)との距離が短くなることからSTI分離層56の耐圧が確保できなくなる。よって、抵抗素子58に高電圧を印加した際、抵抗素子58と半導体基板52とがショートし、その結果、抵抗素子58から半導体基板52にリーク電流が流れるという問題がある。半導体基板52にリーク電流が流れることにより、半導体装置51の電気特性(例えば、抵抗素子58の抵抗値の変動、消費電流の変動など)の信頼性が低下する。
【0006】
本発明は、電気特性の信頼性を向上させることができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る半導体装置は、半導体基板に形成されたSTI分離層と、前記STI分離層上に形成された抵抗素子と、前記STI分離層と前記抵抗素子との間に形成され、前記抵抗素子に印加される電圧に対する耐圧が確保された絶縁膜と、を有することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、抵抗素子が、抵抗素子に印加された電圧に対して絶縁耐圧が確保された絶縁膜を介してSTI分離層上に形成されているので、STI分離層を製造する過程においてSTI分離層に欠陥が生じたとしても、抵抗素子と半導体基板との間の耐圧を確保することが可能となる。よって、抵抗素子に電圧を印加した場合、抵抗素子から半導体基板にリーク電流が流れることを抑えることができ、その結果、半導体装置の電気的特性の信頼性を向上させることができる。更に、リーク電流に起因して半導体素子回路などが破壊することが抑えられるので、半導体装置の歩留りを向上させることができる。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る半導体装置は、第1電圧と、前記第1電圧より電位の低い第2電圧と、を含む電圧が印加される半導体装置であって、半導体基板に形成されたSTI分離層と、前記STI分離層上に形成されると共に前記第1電圧が印加された抵抗素子と、前記STI分離層と前記抵抗素子との間に形成され、前記抵抗素子に印加される電圧に対する耐圧が確保された絶縁膜と、を有することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、抵抗素子が、抵抗素子に印加された第1電圧に対して絶縁耐圧が確保された絶縁膜を介してSTI分離層上に形成されているので、STI分離層を製造する過程においてSTI分離層に欠陥が生じたとしても、抵抗素子と半導体基板との間の耐圧を確保することが可能となる。よって、抵抗素子に第1電圧(高電圧)を印加した場合、抵抗素子から半導体基板にリーク電流が流れることを抑えることができ、その結果、半導体装置の電気的特性の信頼性を向上させることができる。更に、リーク電流に起因して半導体素子回路などが破壊することが抑えられるので、半導体装置の歩留りを向上させることができる。
【0011】
上記した半導体装置において、前記抵抗素子は、ポリシリコン膜であることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、ポリシリコン膜を抵抗素子として用いるので、抵抗素子として大きな抵抗値を稼ぐことができる。更に、半導体装置を構成するゲート電極にポリシリコン膜を用いた場合、ゲート電極と同じ材料で抵抗素子を形成することができ、効率良く抵抗素子を形成することができる。
【0013】
上記した半導体装置において、液晶表示装置の画素を制御するLCDドライバICとして機能することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、抵抗素子と半導体基板との間の耐圧を向上させることができると共に、電気的特性の信頼性を向上させることができるLCDドライバICを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、半導体装置を有する液晶表示装置の構成を示す模式平面図である。以下、液晶表示装置の構成を、図1を参照しながら説明する。
【0017】
図1に示すように、液晶表示装置11は、ガラスなどからなる一対の基板12,13と、半導体装置14(以下、「LCD(Liquid Crystal Display)ドライバIC14」と称する。)とを有する。
【0018】
一対の基板12,13は、第1基板12と第2基板13とであり、シール材(図示せず)を挟み所定の間隔を隔てて接着固定されている。
【0019】
第1基板12は、第2基板13の外周縁から張り出した領域(以下、「張出し領域15」という)を有する。張出し領域15の面上には、出力端子群16と、入力端子群17とが形成されている。出力端子群16と入力端子群17とは、IC実装領域に実装されるLCDドライバIC14を介して、電気的に導通可能な状態に接続されている。入力端子群17は、例えば、フレキシブル配線基板(図示せず)を介して、回路基板等の外部電極(図示せず)に接続される。これにより、外部電極から電源を供給し、LCDドライバIC14を駆動させ、液晶の表示を変化させる。
【0020】
一対の基板12,13には、出力端子群16と接続された第1配線18と第2配線19とが互いに直交する方向に形成されている(図示せず)。第1配線18と第2配線19とは、透明なITO(Indium Tin Oxide)膜などによってストライプ状に形成されている。また、配線の交差部分には、表示部20を構成する画素が形成されている。
【0021】
LCDドライバIC14は、上記したように、張出し領域15に設けられている。LCDドライバIC14は、第1電圧としての高電圧(例えば、15V)が印加される高電圧領域21と、第2電圧としての低電圧(例えば、−15V)が印加される低電圧領域22とを有する。高電圧領域21は、例えば、データ線として機能する第1配線18と接続されている。一方、低電圧領域22は、例えば、選択線として機能する第2配線19と接続されている。
【0022】
図2は、LCDドライバICの構造を示す模式断面図である。以下、LCDドライバICの構造を、図2を参照しながら説明する。
【0023】
図2に示すように、LCDドライバIC14は、トランジスタ素子31と、第1STI分離層32と、第2STI分離層33と、絶縁膜41と、抵抗素子34とを有する。
【0024】
トランジスタ素子31は、例えば、N型の半導体基板35におけるPウエル領域36に形成されている。また、N型の半導体基板35上には、例えば、酸化膜からなるゲート絶縁膜37が形成されている。また、Pウエル領域36は、例えば、Pウエル領域36に形成された接合領域、及び、層間絶縁膜42に形成されたコンタクトプラグ(図示せず)を介して低電圧端子38(例えば、−15V)と接続されている。
【0025】
第1STI分離層32は、後述する第2STI分離層33と共に、トランジスタ素子31を電気的に分離するために用いられ、Pウエル領域36の一部に形成されている。第1STI分離層32は、例えば、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて溝を形成した後、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などを用いてシリコン酸化膜を埋め込み、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法によってシリコン酸化膜の上部を平坦化することにより形成される。
【0026】
第2STI分離層33は、上記した第1STI分離層32と共に、トランジスタ素子31を電気的に分離するために用いられる。第2STI分離層33は、例えば、上記した第1STI分離層32と同様の製造方法によって形成される。このような製造方法により、上記した第1STI分離層32及び第2STI分離層33は、ピット(シリコンピット)などの欠陥が生じる場合がある。
【0027】
絶縁膜41は、第2STI分離層33と抵抗素子34との間に形成されている。絶縁膜41の材料としては、例えば、窒化シリコン膜(SiN)が挙げられる。窒化シリコン膜を選定する理由として、半導体装置14を製造する過程において、半導体基板35に酸化膜を作り分ける際のマスクとして使用する材料であり、同じ材料を効率的に活用できるからである。また、絶縁膜41は、第2STI分離層33に欠陥が生じた場合であっても、抵抗素子34から半導体基板35にリーク電流が流れない(耐圧が確保された)厚み及び面積に形成されている。また、絶縁膜41の形成範囲としては、抵抗素子34の下面全面を受ける領域に形成されていることが好ましい。
【0028】
抵抗素子34は、電気抵抗を得るために用いられ、上記したように、第2STI分離層33上にゲート絶縁膜37及び絶縁膜41を介して形成されている。抵抗素子34の材料としては、例えば、抵抗値の大きいポリシリコン膜などが挙げられる。抵抗素子34は、例えば、層間絶縁膜42に形成されたコンタクトプラグ及び金属配線層(いずれも図示せず)を介して高電圧端子39(+15V)と接続されている。また、抵抗素子34は、不純物が注入されることによって、所望の抵抗値を得ることが可能となっている。
【0029】
以上のように、抵抗素子34が、抵抗素子34に印加された電圧に対する耐圧が確保された絶縁膜41を介して形成されているので、第2STI分離層33を製造する際に第2STI分離層33にピット(欠陥)などが生じた場合であっても、ピットの影響を受けることなく抵抗素子34に高電圧を印加することが可能となっている。
【0030】
以上詳述したように、本実施形態のLCDドライバIC(半導体装置)14によれば、以下に示す効果が得られる。
【0031】
(1)本実施形態のLCDドライバIC14によれば、抵抗素子34が、抵抗素子34に印加された高電圧(例えば、15V)に対する耐圧が確保された絶縁膜41を介して形成されているので、第2STI分離層33を製造する際に第2STI分離層33にピット(欠陥)などが生じた場合であっても、ピットの影響を受けることなく抵抗素子34に高電圧を印加することが可能となる。よって、抵抗素子34に高電圧を印加した場合、抵抗素子34から半導体基板35にリーク電流が流れることを抑えることができ、その結果、LCDドライバIC14の電気的特性(例えば、抵抗素子34の抵抗値の変動、消費電流の変動など)の信頼性を向上させることができる。更に、リーク電流に起因して半導体素子回路などが破壊することが抑えられるので、LCDドライバIC14の歩留りを向上させることができる。
【0032】
なお、実施形態は上記に限定されず、以下のような形態で実施することもできる。
【0033】
(変形例1)
上記した半導体装置は、液晶表示装置11に用いられるLCDドライバIC14に適用することに限定されず、例えば、アナログ回路に適用するようにしてもよい。例えば、オペアンプのゲイン設定用や分圧器などのアナログ回路に用いるようにしてもよい。これによれば、例えば、温度変化などの変動があっても、同じ分圧比を保てることから、高い安定性を得ることができる。
【0034】
(変形例2)
上記した抵抗素子34と第2STI分離層33との間に形成する絶縁膜41は、窒化シリコン膜(SiN)に限定されず、抵抗素子34に印加される電圧に対する耐圧が確保できる材料であればよく、例えば、シリコン酸化膜であってもよい。
【0035】
(変形例3)
上記した絶縁膜41の厚みや形成領域は、抵抗素子34に印加される電圧に対する耐圧が確保できると共に、不純物の注入量や第2STI分離層33の形成範囲、静電気電圧などを考慮して決定することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施形態に係る液晶表示装置の構造を示す模式平面図。
【図2】LCDドライバICの構造を示す模式断面図。
【図3】従来のLCDドライバICの構造を示す模式断面図。
【図4】従来のLCDドライバICの構造を示す拡大断面図。
【符号の説明】
【0037】
11…液晶表示装置、12…第1基板、13…第2基板、14…LCDドライバIC(半導体装置)、15…張出し領域、16…出力端子群、17…入力端子群、18…第1配線、19…第2配線、20…表示部、21…高電圧領域、22…低電圧領域、31…トランジスタ素子、32…第1STI…分離層、33…第2STI…分離層、34…抵抗素子、35…半導体基板、36…Pウエル領域、37…ゲート絶縁膜、38…低電圧端子、39…高電圧端子、41…絶縁膜、42…層間絶縁膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板に形成されたSTI分離層と、
前記STI分離層上に形成された抵抗素子と、
前記STI分離層と前記抵抗素子との間に形成され、前記抵抗素子に印加される電圧に対する耐圧が確保された絶縁膜と、
を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
第1電圧と、前記第1電圧より電位の低い第2電圧と、を含む電圧が印加される半導体装置であって、
半導体基板に形成されたSTI分離層と、
前記STI分離層上に形成されると共に前記第1電圧が印加された抵抗素子と、
前記STI分離層と前記抵抗素子との間に形成され、前記抵抗素子に印加される電圧に対する耐圧が確保された絶縁膜と、
を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の半導体装置であって、
前記抵抗素子は、ポリシリコン膜であることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の半導体装置であって、
液晶表示装置の画素を制御するLCDドライバICとして機能することを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−251818(P2008−251818A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−90967(P2007−90967)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】