説明

半導体装置

【課題】より簡易な構造でありながら、半導体素子を含む構造体とその支持体との間に生じる熱応力の緩和はもとより、熱抵抗についてもその好適な抑制を図ることのできる半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体素子310を含む構造体300がこれを支持する冷却器100に、それら構造体300及び冷却器100間に生じる応力を緩和する応力緩和層200を介して一体に接合されて構成される。この応力緩和層200は、結合体からなって、その結合面として互いに対向する面が冷却器100及び構造体300の面方向への移動指向性を緩和可能な形状からなる多数の凹部及び凸部の凹凸嵌合構造として形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特に電力の変換や各種電力制御等に用いられる半導体素子を含む構造体とこれを支持する支持体との間に設けられてこれら構造体及び支持体間の応力を緩和する応力緩和層を備える半導体装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
こうした半導体装置としては、例えば電気自動車やハイブリッド車などにあって、車載バッテリから供給される直流電力をモータ駆動用の三相交流等に変換するなどの電力変換を行うインバータ装置が知られている。そして、このような半導体装置は通常、半導体素子(電力用半導体素子)を含んで構成される構造体が冷却器に一体に接合されていることが多い。すなわち、半導体素子が絶縁基板や放熱板に半田付け等によって実装されている上記構造体を、熱交換機能を有する冷却器にロウ付けや半田付けなどにより接合、固定することで、半導体素子動作時の発熱を緩和するようにしている。
【0003】
ただし、冷却器とのこのような接合構造を採用する場合、上記構造体を構成する絶縁基板や放熱板に用いられる材料と冷却器に用いられる材料とでは一般にその線膨張係数が異なるために、こうした線膨張係数の相違に起因する応力が発生する。そして、このような応力に起因して上記構造体と冷却器とを接合する接合層にクラックや反り等が生じてしまう不都合がある。
【0004】
そこで従来は、こうした線膨張係数の相違に起因する上記クラックや反り等の発生を抑制すべく、例えば特許文献1に記載の装置あっては、上記構造体を構成する絶縁基板や放熱板とその支持体である冷却器との間に、複数の貫通孔あるいは溝状の凹所が形成された応力緩和部材を応力緩和層として介在させることとしている。また、特許文献2に記載の装置あっては、上記構造体を構成する絶縁基板や放熱板とその支持体である冷却器との間に、三軸方向に移動可能な複数のマイクロフィンが噛み合わされてなる応力緩和層を介在させることとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−294699号公報
【特許文献2】特開平6−5750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、特許文献1や特許文献2に記載の装置によれば、それぞれ応力緩和層を通じて、確かに半導体素子を含む構造体とこれを支持する冷却器等の支持体との間に生じる応力の緩和が図られるようにはなる。
【0007】
しかし、特許文献1に記載の装置の場合、応力緩和層としての上記構造では、応力緩和部材に設けられた複数の貫通孔あるいは溝状の凹所等の応力吸収空間が空気層からなるために、この空気層が熱抵抗として作用することとなり、上記冷却器による半導体素子との間での熱交換が妨げられることにもなる。ここで、上記応力緩和層を構成する応力緩和部材の体積をVal、空気層の体積をVsとしたとき、応力緩和層中に応力緩和部材が占める割合(占有率)Ralは、

Ral=Val/Val(Val+Vs)

なる関係となる。そして、これら占有率Ralと上記応力緩和層による応力緩和効果及び放熱性能との関係は、図15に示されるように、応力緩和効果と放熱性能とが相反する関係となるため、上記応力緩和層によって応力緩和効果と放熱性能との両立を図ることは難しい。
【0008】
一方、上記特許文献2に記載の装置のように、応力緩和層として上記複数のマイクロフィンを噛み合わされてなる積層体を用いる場合には、一つのマイクロフィンによって応力緩和が可能な方向は、一軸方向でしかなく応力緩和に対する自由度が極めて低い。このため、複数方向に対する応力を緩和するためには上記マイクロフィンを複数積層する必要があり、応力緩和層としての構造が複雑とならざるを得ない。
【0009】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、より簡易な構造でありながら、半導体素子を含む構造体とその支持体との間に生じる熱応力の緩和はもとより、熱抵抗についてもその好適な抑制を図ることのできる半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、半導体素子を含む構造体がこれを支持する支持体に、それら構造体及び支持体間に生じる応力を緩和する応力緩和層を介して一体に接合されて構成される半導体装置において、前記応力緩和層は、結合体からなって、その結合面として互いに対向する面が前記構造体及び支持体の面方向への移動指向性を緩和可能な形状からなる多数の凹部及び凸部の凹凸嵌合構造として形成されてなることを要旨とする。
【0011】
上記構成によるように、応力緩和層としてこれを、結合面の互いに対向する面が構造体及び支持体への移動指向性を緩和可能な形状からなる多数の凹部及び凸部の凹凸嵌合構造からなる結合体にて構成することとすれば、移動指向性が緩和された凹部及び凸部が構造体及び支持体間に生じる応力に応じて変形する、あるいは凹部と凸部との間で滑りが生じることによって、半導体装置に内在する応力が吸収されるようになる。しかも同構成の場合、応力緩和層を多数の凹部及び凸部の凹凸嵌合構造からなる結合体として構成したことにより、同結合体としての嵌合面積が拡大されることから、応力緩和層としての熱抵抗についてもその好適な抑制を図ることができるようになる。また、移動指向性が緩和可能とされた形状からなる多数の凹部及び凸部の凹凸嵌合構造からなる結合体として応力緩和層を構成することにより、応力緩和層としての構造上の簡略化が図られるようにもなる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の半導体装置において、前記応力緩和層は、前記凹凸嵌合構造として形成される面を積層面とする積層体からなることを要旨とする。
上記構成によるように、凹凸嵌合構造として形成される面が積層面とされる積層体として応力緩和層を構成することとすれば、この積層面によって構造体と支持体との間に生じる応力が面方向に分散する態様で緩和されるようになる。これにより、上記応力緩和層による応力緩和効果が効率的に高められるようになる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の半導体装置において、前記凸部が円錐状もしくは角錐状に形成されてなり、前記凹部が前記円錐状もしくは角錐状の凸部に嵌合される逆円錐状もしくは逆角錐状に形成されてなることを要旨とする。
【0014】
上記構成によるように、応力緩和層を構成する凸部を円錐状もしくは角錐状とするとともに、この凸部に勘合される凹部を逆円錐状もしくは逆角錐状に形成することとすれば、これら凸部と凹部との嵌合面が応力緩和層の厚み方向に対して傾斜することとなる。この
ため、凸部と凹部との滑り度合いが高められるようになり、ひいては、応力緩和層としての応力緩和能力が高められるようになる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の半導体装置において、前記凸部が一柱面を底とする三角柱状に形成されてなり、前記凹部が前記三角柱状の凸部に嵌合される逆三角柱状に形成されてなることを要旨とする。
【0016】
上記構成によるように、三角柱状の一柱面を底とする凸部とこの凸部に嵌合される逆三角柱状の凹部とによる凹凸嵌合構造を構成することとすれば、これら凸部及び凹部の変形と、三角柱状の凸部の傾斜面と逆三角柱状の凹部の傾斜面との滑り効果によって半導体装置内に内在した応力が好適に緩和されるようになる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜4のいずれか一項に記載の半導体装置において、前記凹部及び凸部が、前記半導体素子の幾何中心を基点とする点対称に形成されてなることを要旨とする。
【0018】
上記半導体装置では、構造体や支持体の外縁から熱源となる半導体素子の中心に向けて応力が生じることとなる。この点、上記構成によれば、応力緩和層を構成する凹部及び凸部が半導体素子の幾何中心を基点とする点対称に形成されることによって、構造体や支持体の外縁から熱源となる半導体素子の中心に向けて生じた応力に対しての上記凸部及び凹部の移動指向性が高められるようになり、ひいては、応力緩和層としての応力緩和効果も的確に高められるようになる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項2〜4のいずれか一項に記載の半導体装置において、前記凹部及び前記凸部が、前記半導体素子の幾何中心を基点とする放射状に形成されてなることを要旨とする。
【0020】
上記構成によれば、応力緩和層を構成する凹部及び凸部が半導体素子の幾何中心を基点とする放射状に形成されたことによって、構造体や支持体の外縁から熱源となる半導体素子の中心に向けて生じた応力に対応するかたちで上記凸部及び凹部の移動指向性が高められるようになることから、この場合も応力緩和層としての応力緩和効果が的確に高められるようになる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項2〜6のいずれか一項に記載の半導体装置において、前記凹部及び前記凸部が、前記半導体素子の幾何中心を中点とする円形状に形成されてなることを要旨とする。
【0022】
上記構成によるように、応力緩和層を構成する凹部及び凸部を半導体素子の幾何中心を中心とする円形状に形成することとすれば、これら凹部及び凸部の移動指向性が応力緩和層の全方位に対して高められるようになり、この場合も、応力緩和層としての応力緩和効果が的確に高められるようになる。
【0023】
請求項8に記載の発明は、請求項2〜7のいずれか一項に記載の半導体装置において、前記凹部及び前記凸部の数が、前記半導体素子の幾何中心から前記応力緩和層の角部にかけて漸次多くなる態様で形成されてなることを要旨とする。
【0024】
上記半導体装置では、温度変動幅が大きくなる構造体あるいは支持体の角部における応力が集中することとなる。この点、上記構成によれば、これら応力が集中する構造体あるいは支持体の角部に対応するかたちで半導体素子の幾何中心から応力緩和層の角部にかけて上記凹部及び凸部の数が漸次多くなる態様で形成されたことによって、応力の度合いに
応じた応力緩和が図られるようになり、半導体装置に内在する応力を好適に緩和することが可能となる。
【0025】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の半導体装置において、前記支持体は、前記半導体素子を含む構造体を冷却する冷却器であることを要旨とする。
この発明は、上記構成によるように、支持体として半導体素子を含む構造体を冷却する冷却器を有する半導体装置に適用して特に有効であり、これら構造体と冷却器との線膨張係数の相違に起因する応力を好適に緩和することができるようになるとともに、半導体装置としての放熱性能も高められるようになる。
【0026】
請求項10に記載の発明は、請求項1〜9のいずれか一項に記載の半導体装置において、前記応力緩和層を構成すべく結合される板材が金属製の板材からなることを要旨とする。
【0027】
上記構成によれば、応力緩和層を金属製の板材により構成することによって、この応力緩和層によって半導体装置に内在する応力を緩和する上で、応力緩和層としての熱抵抗の抑制が図られるようになり、ひいては、半導体装置としての放熱性能がより高められるようになる。
【0028】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の半導体装置において、前記金属製の板材が、アルミニウムまたは銅からなることを要旨とする。
上記構成によるように、上記板材をアルミニウムによって構成することとすれば、アルミニウムの剛性が低いことから、応力緩和層による応力吸収時において上記凹部及び凸部が変形しやすくなる。これにより、これら凹部及び凸部の応力緩和効果が高められるようになる。また上記構成によるように、上記板材を銅によって構成することとすれば、銅の熱伝導率が高いことから、上記応力緩和層によって半導体装置に内在する応力を緩和する上で、半導体装置としての熱抵抗をより好適に抑制することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明にかかる半導体装置の第1の実施の形態について、同半導体装置の断面構造を示す断面図。
【図2】同実施の形態の半導体装置の応力緩和層の構造を模式的に示す分解斜視図。
【図3】同実施の形態の半導体装置の応力緩和層の平面構造をその拡大断面構造とともに示す平面図及び断面図。
【図4】本発明にかかる半導体装置の第2の実施の形態について、同半導体装置を構成する応力緩和層の構造を模式的に示す分解斜視図。
【図5】同実施の形態の半導体装置の応力緩和層の平面構造をその拡大断面構造とともに示す平面図及び断面図。
【図6】本発明にかかる半導体装置の第3の実施の形態について、同半導体装置を構成する応力緩和層の構造を模式的に示す分解斜視図。
【図7】同実施の形態の半導体装置の応力緩和層の平面構造をその拡大断面構造とともに示す平面図及び断面図。
【図8】本発明にかかる半導体装置の第4の実施の形態について、同半導体装置を構成する応力緩和層の構造を模式的に示す分解斜視図。
【図9】同実施の形態の半導体装置の応力緩和層の平面構造をその拡大断面構造とともに示す平面図及び断面図。
【図10】本発明にかかる半導体装置の第5の実施の形態について、同半導体装置を構成する応力緩和層の構造を模式的に示す分解斜視図。
【図11】同実施の形態の半導体装置の応力緩和層の平面構造をその拡大断面構造とともに示す平面図及び断面図。
【図12】本発明にかかる半導体装置の第6の実施の形態について、同半導体装置を構成する応力緩和層の構造を模式的に示す分解斜視図。
【図13】同実施の形態の半導体装置の応力緩和層の平面構造をその拡大断面構造とともに示す平面図及び断面図。
【図14】本発明にかかる半導体装置の他の実施の形態について、同半導体装置を構成する応力緩和層の平面構造をその断面構造とともに示す平面図及び断面図。
【図15】従来の半導体装置を構成する応力緩和層の応力緩和効果と放熱性能との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(第1の実施の形態)
図1は、この実施の形態にかかる半導体装置について、その概略断面構造を示したものである。同図1に示されるように、この半導体装置は、支持体としての冷却器100上に応力緩和層200を介して実装される構造体300を有している。
【0031】
ここで、冷却器100は、構造体300を構成する半導体素子310の動作に伴って発せられる熱を熱交換することでその冷却を図るためのものであり、本実施の形態では、例えばアルミニウム製からなる水冷式の冷却器が用いられている。
【0032】
こうした冷却器100に支持される構造体300は、半導体素子310とこの半導体素子310が実装された絶縁基板320とによって構成されている。このうち、半導体素子310は、例えばIGBT(絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ)などの動作時に高温の熱が発せられる電力用半導体素子であり、また絶縁基板320は、DBA(ダイレクト・ブレイジング・アルミニウム)と称される基板であって、セラミック基板321の両面にアルミニウム板322及び323がロウ付け等によって接着固定されている。なお、アルミニウム板323は半田311のぬれ性が得られるように表面処理されており、この上面に上記半導体素子310が半田付けによって実装されている。
【0033】
また、これら構造体300と冷却器100との間に介在する応力緩和層200は、これら構造体300と冷却器100との線膨張係数が異なることに起因する熱応力を緩和、吸収する部分であり、ロウ付けやその他の方法によって構造体300及び冷却器100に一体に接合されている。
【0034】
このようにして構成される半導体装置は、上述のように、構造体300と冷却器100との材質の違いにより、それぞれの線膨張係数が異なるものとなっている。このため、上記半導体素子310の動作に伴って高温の熱が発せられることにより、半導体素子310と冷却器100との熱交換によって冷却器100は高温となり熱膨張する一方、半導体素子310の動作が停止すると、冷却器100は次第に低温となり熱収縮する。そして、こうした冷却器100の熱膨張や熱収縮の際に、冷却器100とこの冷却器100上に接合される絶縁基板320との線膨張係数が異なることに起因して応力の内在を招き、それら冷却器100や絶縁基板320に反りやクラックを生じる虞がある。
【0035】
そこで本実施の形態では、こうした冷却器100や絶縁基板320に反りやクラックの要因となる応力を緩和すべく、冷却器100と構造体300との間に上記応力緩和層200を介在させることとしている。図2に、本実施の形態で採用する応力緩和層200について、その分解斜視構造を模式的に示す。
【0036】
図2に示すように、この応力緩和層200は、例えばアルミニウム製の下板210と上板220とが結合された結合体として構成されている。なおここでは、この結合体が下板210と上板220との積層による積層体となっている。こうした結合体(積層体)を構
成する下板210には、上板220に対向する面に冷却器100及び構造体300の面方向への移動指向性が緩和可能、特に無指向性とされた形状からなる多数の円錐状の複数の凸部211が、半導体素子310の幾何中心にあたる中心線Oを基点として点対称かつマトリクス状に形成されている。また、上板220には、上記下板210に対向する面に冷却器100及び構造体300の面方向への移動指向性が無指向性とされた形状からなって上記凸部211が嵌合される逆円錐状の複数の凹部221が、これも半導体素子310の幾何中心にあたる中心線Oを基点として点対称かつマトリクス状に形成されている。そしてこれにより、これら下板210と上板220とは、その結合面(積層面)が互いに対向する凹凸嵌合構造をなしている。なお、これら凸部211及び凹部221の数は、応力緩和層200の応力緩和能力に比例するものであり、これら凸部211及び凹部221は製造上可能な限り多く形成されるものとする。
【0037】
そして、図3に平面図と併せてそのA−A線及びB−B線に沿った拡大断面構造をそれぞれ示すように、下板210に形成された凸部211と上板220に形成された凹部221とが互いに嵌合されることによって、上記凹凸嵌合構造として形成される面を積層面とする積層体としての応力緩和層200が構成される。なお、本実施の形態では、凸部211及び凹部221に関する移動指向性の緩和化を維持すべく、下板210と上板220との四隅をねじSCによりねじ止めすることによって応力緩和層200を構成するそれら下板210及び上板220間の締結を図っている。
【0038】
次に、本実施の形態の半導体装置による上記応力緩和層200の作用について説明する。
すなわちいま、冷却器100や構造体300に対して応力が発生したとすると、凸部211及び凹部221の移動指向性が無指向性とされたことにより、これら凸部211及び凹部221が応力に応じる態様で変形するようになるとともに、凸部211と凹部221との間で滑りが生じるようになる。こうして、冷却器100や構造体300に対して発生した応力が次第に分散される態様で緩和されるようになる。
【0039】
以上説明したように、本実施の形態にかかる半導体装置によれば、以下に列記するような効果が得られるようになる。
(1)冷却器100と構造体300との間に介在する応力緩和層200を、移動指向性が緩和可能、特に無指向性とされた円錐状の凸部211及び逆円錐状の凹部221からなる凹凸嵌合構造を備えた結合体として構成することとした。これにより、これら凸部211及び凹部221の応力に応じた変形や凸部211と凹部221との間での滑りを通じて、半導体装置に内在した応力が緩和されるようになる。
【0040】
(2)応力緩和層200を、多数の凸部211及び凹部221の凹凸嵌合構造として構成した。これにより、結合体としての嵌合面積が拡大されるようになり、応力緩和層200としての熱抵抗についてもその好適な抑制を図ることができるようになる。
【0041】
(3)応力緩和層200を、上下一対の下板210と上板220とによって構成することとした。これにより、上記応力緩和層200としての構造上の簡略化が図られるようになる。
【0042】
(4)凸部211と凹部221とによる嵌合構造として形成される面を、下板210と上板220との積層面とした。これにより、応力緩和層200による面方向に対する応力緩和効果が高められるようになる。
【0043】
(5)応力緩和層200を、アルミニウムによって形成することとした。これにより、下板210及び上板220の移動指向性が緩和されるようになり、ひいては、応力緩和層
200としての応力緩和効果がより高められるようになる。
【0044】
(6)凸部211を円錐状に形成するとともに、凹部221を逆円錐状に形成することとした。これにより、これら凸部211と凹部221との滑り度合い、並びに移動指向性の緩和化の度合いが高められるようになり、ひいては、応力緩和層200としての応力緩和効果が高められるようになる。
【0045】
(第2の実施の形態)
以下、本発明にかかる半導体装置を具体化した第2の実施の形態を図4及び図5を参照して説明する。なお、この第2の実施の形態は、下板210及び上板220に形成する凸部及び凹部を一柱面を底とする三角柱状及び逆三角柱状に形成したものであり、その他の基本的な構成は先の第1の実施の形態と共通になっている。
【0046】
図4及び図5は、先の図2及び図3に対応する図として、この第2の実施の形態にかかる半導体装置を構成する応力緩和層200の構造を示したものである。なお、これら図4及び図5において、先の図2及び図3に示した各要素と同一の要素についてはそれぞれ同一の符号を付して示しており、それら要素についての重複する説明は割愛する。
【0047】
すなわち図4に示すように、本実施の形態では、応力緩和層200を構成する下板210に、移動指向性を緩和可能な形状の凸部、すなわち一柱面を底とする三角柱状の凸部212が形成されている。また、こうした下板210と結合される上板220には、上記凸部212が嵌合される態様で、移動指向性を緩和可能な形状の凹部、すなわち一柱面を底とする逆三角柱状の凹部222が形成されている。なお、本実施の形態では、冷却器100や構造体300に対して発生する応力がそれらの四隅を基点として上記半導体素子310の中心に向かって推移することに鑑み、上記凸部212及び凹部222を上記半導体素子310の幾何中心にあたる中心線Oを基点とする放射状に形成することとする。
【0048】
そして、図5に示すように、下板210に形成された凸部212と上板220に形成された凹部222とが互いに嵌合されることによって、上記凹凸嵌合構造として形成される面を積層面とする積層体としての応力緩和層200が構成される。
【0049】
このような応力緩和層200の存在により、冷却器100や構造体300に対して応力が発生したとすると、移動指向性が緩和された三角柱状の凸部212及び逆三角柱状の凹部222が応力に応じる態様で変形するようになるとともに、凸部212と凹部222との間で滑りが生じるようになる。また本実施の形態では、これら凸部212及び凹部222が半導体素子310の幾何中心に対応する中心線Oを基点として放射状に形成されたことによって、冷却器100及び構造体300の四隅や周辺端部を起点として上記中心線Oに向かって推移する応力の分布に応じる態様で凸部212及び凹部222に変形や滑りが生じるようになる。こうして、冷却器100や構造体300に対して発生した応力が次第に分散される態様で緩和されるようになる。
【0050】
以上説明したように、本実施の形態にかかる半導体装置によれば、第1の実施の形態による前記(1)〜(5)の効果に準じた効果が得られるとともに、前記(6)の効果に代えて以下のような効果が得られるようになる。
【0051】
(7)凸部212を一柱面を底とする三角柱状に形成するとともに、この凸部212が嵌合される凹部222を逆三角柱状に形成することとした。これにより、これら凸部212と凹部222の各傾斜面の嵌合によって下板210と上板220とが結合されるようになることから、凸部212と凹部222との間での滑り効果が高められるようになり、ひいては、応力緩和層200としての応力緩和効果が高められるようになる。
【0052】
(8)凸部212及び凹部222を、上記中心線Oを基点とした放射状に形成することとした。これにより、これら凸部212及び凹部222の移動指向性が冷却器100や構造体300に対して発生する応力の推移に対応する態様で緩和されるようになり、ひいては、応力緩和層200としての応力緩和能力が高められるようになる。なお、ここでは、下板210及び上板220に形成される凸部及び凹部として、先の第1の実施の形態の円錐状の凸部211及び逆円錐状の凹部221に代えて三角柱状の凸部212及び逆三角柱状の凹部222を採用することとしたが、先の第1の実施の形態の円錐状の凸部211及び逆円錐状の凹部221を上記中心線Oを基点として放射状に形成することも勿論有効である。
【0053】
(第3の実施の形態)
以下、本発明にかかる半導体装置を具体化した第3の実施の形態を図6及び図7を参照して説明する。なお、この第3の実施の形態は、先の第2の実施の形態と同じく下板210及び上板220に形成する凸部及び凹部を、一柱面を底とする三角柱状及び逆三角柱状に形成したものであり、その他の基本的な構成は先の第1の実施の形態と共通になっている。
【0054】
図6及び図7は、先の図2及び図3に対応する図として、この第3の実施の形態にかかる半導体装置を構成する応力緩和層200の構成を示したものである。なお、これら図6及び図7において、先の図2及び図3に示した各要素と同一の要素についてはそれぞれ同一の符号を付して示しており、それら要素についての重複する説明は割愛する。
【0055】
すなわち図6に示すように、本実施の形態では、応力緩和層200を構成する下板210に、移動指向性を緩和可能な形状の凸部、すなわち一柱面を底とする三角柱状の凸部213が形成されている。また、こうした下板210と結合される上板220には、上記凸部213が嵌合される態様で、移動指向性を緩和可能な形状の凹部、すなわち一柱面を底とする逆三角柱状の凹部223が形成されている。なお、本実施の形態では、冷却器100や構造体300に対して発生する応力が、これらの四隅を基点として上記半導体素子310の中心に向かって推移することに鑑み、凸部213及び凹部223を上記半導体素子310の幾何中心に対応する中心線Oを中心とした円形状に形成することとする。
【0056】
そして、図7に示すように、下板210に形成された凸部213と上板220に形成された凹部223とが互いに嵌合されることによって、上記凹凸嵌合構造として形成される面を積層面とする積層体としての応力緩和層200が構成される。
【0057】
このような応力緩和層200の存在により、冷却器100や構造体300に対して応力が発生したとすると、移動指向性が緩和された三角柱状の凸部213及び逆三角柱状の凹部223が応力に応じる態様で変形するようになるとともに、凸部213と凹部223との間で滑りが生じるようになる。また本実施の形態では、これら凸部213及び凹部223が上記中心線Oを中心として円形状に形成されたことによって、凸部213及び凹部223の移動指向性の緩和化の度合いが中心線Oを中心とした全方位に対して高められ、これら凸部213及び凹部223の変形や滑りが生じやすくなる。こうして、冷却器100や構造体300に対して発生した応力が次第に分散される態様で緩和されるようになる。
【0058】
以上説明したように、本実施の形態にかかる半導体装置によれば、第1の実施の形態による前記(1)〜(5)の効果、及び第2の実施の形態による前記(7)の効果に準じた効果が得られるとともに、第2の実施の形態による前記(8)の効果に代えて以下のような効果が得られるようになる。
【0059】
(9)凸部213及び凹部223を、上記中心線Oを中心とした円形状に形成することとした。これにより、これら凸部213及び凹部223による応力緩和能力が応力緩和層200の全方位に対して高められるようになる。なお、ここでは、下板210及び上板220に形成される凸部及び凹部として、先の第1の実施の形態の円錐状の凸部211及び逆円錐状の凹部221に代えて三角柱状の凸部213及び逆三角柱状の凹部223を採用することとしたが、先の第1の実施の形態の円錐状の凸部211及び逆円錐状の凹部221を上記中心線Oを中心として円形状に形成することも勿論有効である。
【0060】
(第4の実施の形態)
以下、本発明にかかる半導体装置を具体化した第4の実施の形態を図8及び図9を参照して説明する。なお、この第4の実施の形態は、下板210及び上板220に形成する凸部及び凹部の数を、半導体素子310の幾何中心から応力緩和層200の角部にかけて漸次多くなる態様で形成したものであり、その他の基本的な構成は先の第1の実施の形態と共通になっている。
【0061】
図8及び図9は、先の図2及び図3に対応する図として、この第2の実施の形態にかかる半導体装置を構成する応力緩和層200の構成を示したものである。なお、これら図8及び図9において、先の図2及び図3に示した各要素と同一の要素についてはそれぞれ同一の符号を付して示しており、それら要素についての重複する説明は割愛する。
【0062】
すなわち図8に示すように、本実施の形態では、冷却器100や構造体300に対して発生する応力がそれらの四隅を基点として上記半導体素子310の中心に向かって推移することに鑑み、下板210には、半導体素子310の幾何中心にあたる中心線Oから同下板210の四隅210A〜210Dにかけて漸次多くなる態様で凸部214が形成されている。また、こうした下板210と結合される上板220には、同じく上記中心線Oから同上板220の四隅220A〜220Dにかけて漸次多くなる態様で、上記凸部214と嵌合される凹部224が形成されている。なお、これら凸部214、凹部224としては、先の第1の実施の形態と同様、円錐状、逆円錐状のものをそれぞれ採用している。
【0063】
そして、図9に示すように、下板210に形成された凸部214と上板220に形成された凹部224とが互いに嵌合されることによって、上記凹凸嵌合構造として形成される面を積層面とする積層体としての応力緩和層200が構成される。これにより、同図9にA−A線に沿った拡大断面構造を示すように、下板210と上板220との結合面では、応力緩和層200の四隅200A〜200Dから中心に向けて凸部214及び凹部224の形成密度が高められた凹凸嵌合構造が形成されるようになる。
【0064】
このような応力緩和層200の存在により、冷却器100や構造体300に対して応力が発生したとすると、移動指向性が緩和された凸部214及び凹部224が応力に応じる態様で変形するようになるとともに、凸部214と凹部224との間で滑りが生じるようになる。また、本実施の形態では、凸部214及び凹部224の数が上記中心線Oから応力緩和層200の四隅200A〜200Dから上記中心線Oにかけて漸次多くなる態様で形成されたことによって、冷却器100や構造体300の四隅を基点として発生した応力がその初期段階で応力緩和層200の四隅200A〜200Dにおいて緩和されたのちに応力緩和層200の中心部に向かうにつれて次第に緩和されるようになる。こうして、本実施の形態による応力緩和層200によっても、冷却器100や構造体300に対して発生した応力が次第に分散される態様で緩和されるようになる。
【0065】
以上説明したように、本実施の形態にかかる半導体装置によれば、第1の実施の形態による前記(1)〜(6)の効果に準じた効果が得られるとともに、更に以下のような効果が併せて得られるようになる。
【0066】
(10)下板210及び上板220に形成される凸部214及び凹部224を、上記中心線Oから下板210及び上板220の四隅210A〜210D及び220A〜220Dにかけて漸次多くなる態様で形成することとした。これにより、冷却器100や構造体300の四隅を基点として発生する応力を初期段階で好適に緩和することができるようになる。
【0067】
(第5の実施の形態)
以下、本発明にかかる半導体装置を具体化した第5の実施の形態を図10及び図11を参照して説明する。なお、この第5の実施の形態は、下板210及び上板220に形成する凸部及び凹部を、円錐状の凸部215及び逆円錐状の凹部225と一柱面を底とする三角柱状の凸部216と一柱面を底とする逆三角柱状の凹部226とによって構成したものであり、その他の基本的な構成は先の第1の実施の形態と共通になっている。
【0068】
図10及び図11は、先の図2及び図3に対応する図として、この第5の実施の形態にかかる半導体装置を構成する応力緩和層200の構成を示したものである。なお、これら図10及び図11において、先の図2及び図3に示した各要素と同一の要素についてはそれぞれ同一の符号を付して示しており、それら要素についての重複する説明は割愛する。
【0069】
すなわち図10に示すように、本実施の形態では、冷却器100や構造体300に対して発生する応力がそれらの四隅を基点として上記半導体素子310の中心に向かって推移することに鑑み、下板210の四隅210A〜210Dには円錐状の凸部215を高い密度で形成することとするとともに、これら四隅210A〜210D間の四辺には一柱面を底とする三角柱状の凸部216を形成することとする。そして、こうした下板210と結合される上板220には、その四隅220A〜220Dに上記凸部215と嵌合される逆円錐状の凹部225が形成されている。また、上板220の四隅220A〜220Dの間の四辺には、上記凸部216と嵌合される一柱面を底とする逆三角柱状の凹部226が形成されている。
【0070】
そして図11に示すように、下板210に形成された円錐状の凸部215と上板220に形成された逆円錐状の凹部225とが互いに嵌合されるとともに、同じく下板210に形成された三角柱状の凸部216と上板220に形成された逆三角柱状の凹部226とが互いに嵌合されることによって、凹凸嵌合構造として形成される面を積層面とする積層体としての応力緩和層200が構成される。これにより、同図11にB1−B1線に沿った拡大断面構造を示すように、下板210と上板220との結合面のうち、応力緩和層200の外縁側では、応力緩和層200の四隅200A〜200Dにおいて高密度の凹凸嵌合構造が形成されるとともに各四隅200A〜200Dの間で低密度の凹凸嵌合構造が形成される。また、同図11にB2−B2線に沿った拡大断面構造を示すように、下板210と上板220との結合面のうち応力緩和層200の内側では、凹凸嵌合構造が形成されないこととなる。
【0071】
このような応力緩和層200の存在により、冷却器100や構造体300に対して応力が発生したとすると、まず、応力緩和層200の四隅200A〜200Dに高密度に形成された円錐状の凸部215及び逆円錐状の凹部225によって、冷却器100や構造体300の四隅を基点として発生した応力がその初期段階で緩和されるようになる。そして、応力緩和層200の周辺においても、上記三角柱状の凸部216及び逆三角柱状の凹部226によって、冷却器100や構造体300に対して発生した応力が緩和されるようになる。こうして、冷却器100や構造体300の四隅を基点として発生した応力は、応力緩和層200の200A〜200Dからその中心に推移するにつれて次第に緩和されるようになる。
【0072】
以上説明したように、本実施の形態にかかる半導体装置によれば、第1の実施の形態による前記(1)〜(6)の効果や先の第2の実施の形態による前記(7)の効果に準じた効果が得られるとともに、以下の効果が得られるようになる。
【0073】
(11)応力緩和層200の四隅200A〜200Dにおいて円錐状の凸部215及び逆円錐状の凹部225による凹凸嵌合構造を形成するとともに、応力緩和層200の周辺において三角柱状の凸部216及び逆三角柱状の凹部226による凹凸嵌合構造を形成することとした。これにより、応力の発生の基点となるとともにその影響が大きい冷却器100や構造体300の周辺部に対する応力緩和能力が高められるようになる。また、このように半導体装置に内在する応力を緩和する上で必要最小限の凹凸嵌合構造を採用したことにより、応力緩和層200としての構造上の簡略化が図られるようにもなる。
【0074】
(12)下板210及び上板220の四隅210A〜210D及び220A〜220Dに形成される凸部215及び凹部225を高密度に形成することとした。これにより、応力発生の基点となる冷却器100や構造体300の四隅に対する応力緩和能力が高められるようになり、冷却器100や構造体300に対して発生した応力をその初期段階で緩和することができるようになる。
【0075】
(第6の実施の形態)
以下、本発明にかかる半導体装置を具体化した第6の実施の形態を図12及び図13を参照して説明する。なお、この第6の実施の形態は、三層の積層体によって応力緩和層200を構成したものであり、その他の基本的な構成は先の第1の実施の形態と共通になっている。
【0076】
図12及び図13は、先の図2及び図3に対応する図として、この第6の実施の形態にかかる半導体装置を構成する応力緩和層200の構成を示したものである。なお、これら図12及び図13において、先の図2及び図3に示した各要素と同一の要素についてはそれぞれ同一の符号を付して示しており、それら要素についての重複する説明は割愛する。
【0077】
すなわち図12に示すように、本実施の形態では、上記応力緩和層200が上記下板210と上板220との間に中板230が介在された積層体として構成されている。こうした積層体を構成する中板230には、下板210に対向する面に冷却器100及び構造体300の面方向への移動指向性が緩和、特に無指向性とされた形状からなるとともに上記凸部211と嵌合される逆円錐状の凹部231がマトリクス状に形成されている。また、この中板230の上板220の対向する面には、冷却器100及び構造体300の面方向への移動指向性が緩和、特に無指向性とされた形状からなる多数の円錐状の凸部232がマトリクス状に形成されている。これにより、下板210と中板230との結合面並びに中板230と上板220との結合面が、互いに対向する凹凸嵌合構造として形成されるとともに応力緩和層200の積層面として形成されている。
【0078】
そして、図13に示すように、下板210に形成された凸部211と中板230に形成された凹部231とが互いに嵌合されるとともに、同中板230に形成された凸部232と上板220に形成された凹部221とが互いに嵌合されることによって、上記凹凸嵌合構造として形成される面を積層面とする積層体としての応力緩和層200が構成される。
【0079】
こうして、応力緩和層200では、同図13にA−A線及びB−B線に沿った拡大断面構造を示すように、応力緩和層200の面方向全域に亘って上記凸部211及び凹部231、並びに凸部232及び凹部221による凹凸嵌合構造が形成されるようになる。
【0080】
このような応力緩和層200の存在により、冷却器100や構造体300に対して応力が発生したとすると、凸部211及び凹部231、並びに凸部232及び凹部221の移動指向性が無指向性とされたことにより、これら各凸部211、232及び各凹部221、231が応力に応じる態様で変形するようになるとともに、凸部211と凹部231との間、凸部232と凹部221との間で滑りが生じるようになる。そしてさらに、これら各凸部211、232及び各凹部231、221による凹凸嵌合構造が複数層形成されたことによって、冷却器100や構造体300に対して発生した応力が段階的に緩和されるようになる。こうして、冷却器100や構造体300に対して発生した応力は、応力緩和層200によって次第に分散される態様で緩和されるようになる。
【0081】
以上説明したように、本実施の形態にかかる半導体装置によれば、第1の実施の形態による前記(1)〜(6)の効果に準じた効果が得られるとともに、更に以下のような効果が併せて得られるようになる。
【0082】
(13)応力緩和層200を、上記下板210及び中板230及び上板220からなる三層の積層体によって構成することとした。これにより、各結合面における凹凸嵌合構造によって冷却器100や構造体300に対して発生した応力が段階的に緩和されるようになり、ひいては、応力緩和層200による応力緩和効果が更に高められるようになる。
【0083】
(他の実施の形態)
なお、上記実施の形態は、以下のような形態をもって実施することもできる。
・上記各実施の形態では、下板210と上板220とをねじSCによって結合することとした。これに限らず、上記凸部211〜216、232と凹部221〜226、231との移動指向性の緩和化を確保可能な場合には、例えば、接合剤によって下板210と上板220とを結合するようにしてもよい。またこの他、下板210と上板220との結合面にシリコングリース等の潤滑剤を介在させるようにしてもよい。
【0084】
・上記各実施の形態では、上記応力緩和層200を上記凹凸嵌合構造として形成される面を積層面とする積層体として構成することとした。これに限らず、先の図2に対応する図として例えば図14に示すように、凹凸嵌合構造として形成される面を縦断層面とする横方向に結合された層として、すなわち横方向への結合体として上記応力緩和層200を構成するようにしてもよい。
【0085】
・上記各実施の形態では、下板210に凸部211〜216を形成するとともに上板220に凹部221〜226を形成することとしたが、これら凸部211〜216と凹部221〜226とによる凹凸嵌合構造を形成する上では、下板210に凹部221〜226を形成するとともに上板220に凸部211〜216を形成するようにしてもよい。また、上記第6の実施の形態では、中板230の下面に凹部231を形成するとともに同中板230の上面に凸部232を形成することとした。これに限らず、この中板230と上記下板210及び上板220による凹凸嵌合構造を形成可能なものであればよく、中板230の下面に凸部232を形成するとともに同中板230の上面に凹部231を形成するようにしてもよい。また同様に、中板230の上下両面に凹部を形成するとともに、この凹部に嵌合される凸部を下板210の上面と上板220の下面とに形成するようにしてもよい。同じく、中板230の上下両面に凸部を形成するとともに、この凸部が嵌合される凹部を下板210の上面と上板220の下面とに形成するようにしてもよい。
【0086】
・上記第1の実施の形態では、凸部211及び凹部221を半導体素子310の幾何中心にあたる中心線Oを基点とする点対称かつマトリクス状に形成することとしたが、凸部211及び凹部221による凹凸嵌合構造によって冷却器100や構造体300に対する応力を緩和可能なものであればよく、中心線Oを基点とする点対称のみに、あるいはマト
リクス状のみに凸部211及び凹部221を形成するようにしてもよい。また、上記第2の実施の形態では、上記凸部212及び凹部222を上記中心線Oを基点とする放射状に形成することとし、上記第3の実施の形態では、上記凸部213及び凹部223を上記中心線Oを中心とする円形状に形成することとした。これに限らず、移動指向性が緩和可能とされた複数の凸部及び凹部によって上記半導体装置に内在する応力を緩和可能なものであればよく、上記凹凸嵌合構造を構成する凸部及び凹部の形成態様は任意である。
【0087】
・上記第1、第4、第6の各実施の形態では、上記凹凸嵌合構造を円錐状の凸部211、214、232と逆円錐状の凹部221、224、231とによって構成することとした。これに限らず、例えば、凸部211、214、232を角錐状あるいは一柱面を底とする三角柱状に形成するとともに、凹部221、224、231を逆角錐状あるいは一柱面を底とする逆三角柱状に形成するようにしてもよい。また、この他、柱状の凸部及び凹部によって上記嵌合構造を形成するようにしてもよい。一方、上記第2、第3の各実施の形態では、上記凹凸嵌合構造を、一柱面を底とする三角柱状の凸部212、213と一柱面を底とする逆三角柱状の凹部222、223とによって構成することとした。これに限らず、例えば凸部212、213を円錐状あるいは角錐状に形成するとともに凹部222、223を逆円錐状あるいは逆角錐状に形成するようにしてもよい。他方、上記第5の実施の形態では、応力緩和層200の四隅200A〜200Dの凹凸嵌合構造を円錐状の凸部215及び逆円錐状の凹部225によって構成するとともに、応力緩和層200の四辺の凹凸嵌合構造を一柱面を底とする三角柱状の凸部216及び逆三角柱状の凹部226とによって構成することとした。これに限らず、応力緩和層200の四隅200A〜200Dの凹凸嵌合構造を一柱面を底とする三角柱状の凸部及び逆三角柱状の凹部によって構成するとともに、応力緩和層200の四辺の凹凸嵌合構造を円錐状の凸部及び逆円錐状の凹部によって構成するようにしてもよい。また、応力緩和層200の四隅及び四辺の凹凸嵌合構造を円錐状の凸部及び逆円錐状の凹部のみ、あるいは一柱面を底とする三角柱状の凸部及び逆三角柱状の凹部のみによって構成するようにしてもよい。
【0088】
要は、凸部及び凹部の移動指向性が緩和可能とされることによって、冷却器100や構造体300に対して発生した応力を緩和可能なものであればよく、上記各実施の形態における上記凸部及び凹部の形状はそれら実施の形態で例示した形状に限定されるものではない。
【0089】
・上記各実施の形態では、応力緩和層200を構成すべく結合される板材として、アルミニウム製の板材210、220、230を用いることとした。応力緩和層200を構成する板材としては、銅製であってもよく、この場合には、銅の熱伝導率が高いことから、上記応力緩和層200によって半導体装置に内在する応力を緩和する上で、半導体装置としての熱抵抗をより好適に抑制することができるようになる。
【0090】
・上記各実施の形態では、支持体として水冷式の冷却器を用いることとしたが、これに限定されるものではなく、空冷式の冷却器あるいはヒートシンク等を構造体300の支持体として用いる構成であってもよい。
【符号の説明】
【0091】
100…冷却器、200…応力緩和層、200A〜200D…応力緩和層の四隅、210…下板(板材)、210A〜210D…下板の四隅、211〜216…凸部、220…上板(板材)、220A〜220D…上板の四隅、221〜226…凹部、230…中板(板材)、231…凹部、232…凸部、300…構造体、310…半導体素子、311…半田、320…絶縁基板、321…セラミック基板、322…アルミニウム板、SC…ねじ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子を含む構造体がこれを支持する支持体に、それら構造体及び支持体間に生じる応力を緩和する応力緩和層を介して一体に接合されて構成される半導体装置において、
前記応力緩和層は、結合体からなって、その結合面として互いに対向する面が前記構造体及び支持体の面方向への移動指向性を緩和可能な形状からなる多数の凹部及び凸部の凹凸嵌合構造として形成されてなる
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記応力緩和層は、前記凹凸嵌合構造として形成される面を積層面とする積層体からなる
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記凸部が円錐状もしくは角錐状に形成されてなり、前記凹部が前記円錐状もしくは角錐状の凸部に嵌合される逆円錐状もしくは逆角錐状に形成されてなる
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記凸部が一柱面を底とする三角柱状に形成されてなり、前記凹部が前記三角柱状の凸部に嵌合される逆三角柱状に形成されてなる
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記凹部及び凸部が、前記半導体素子の幾何中心を基点とする点対称に形成されてなる
請求項2〜4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記凹部及び前記凸部が、前記半導体素子の幾何中心を基点とする放射状に形成されてなる
請求項2〜5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記凹部及び前記凸部が、前記半導体素子の幾何中心を中点とする円形状に形成されてなる
請求項2〜6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記凹部及び前記凸部の数が、前記半導体素子の幾何中心から前記応力緩和層の角部にかけて漸次多くなる態様で形成されてなる
請求項2〜7のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記支持体は、前記半導体素子を含む構造体を冷却する冷却器である
請求項1〜8のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記応力緩和層を構成すべく結合される板材が金属製の板材からなる
請求項1〜9のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記金属製の板材が、アルミニウムまたは銅からなる
請求項10に記載の半導体装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図4】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−9367(P2011−9367A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149966(P2009−149966)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】