説明

半導体製造装置、コンピュータプログラム及び記憶媒体

【課題】 半導体製造装置において、装置の異常を確実に検出すると共に装置に異常が起こったときにその異常の原因を容易に推定できるようにすること。
【解決手段】 一の監視対象とこれに関連する他の監視対象との相関データに基づいて2軸座標系に正常領域と異常領域との境界を定めた境界データを作成し、両者の値で決まる相関データの位置が異常領域に入っていれば異常と判断する。また装置が異常になったときにその異常に関連する少なくとも2つの監視対象の監視結果の組み合わせパターンのモデルを用意しておくと共に各モデルと異常の原因とを対応付けて記憶部に記憶させておき、装置の異常が検出されたときに、その異常に関連する少なくとも2つの監視対象の監視結果の組み合わせパターンに対し、前記記憶部内のパターンのモデルの中で一致しているモデルが存在したときにはそのモデルに対応する異常原因を読み出して知らせるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常を検出したときにその異常の原因を推定することのできる半導体製造装置の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路などの半導体装置を製造する半導体製造装置としては例えば半導体ウエハに成膜を行う熱処理装置、プラズマエッチング装置、レジスト塗布や現像を行う液処理装置などがある。半導体装置は例えばシリコンウエハ上に多数の処理が行われて形成されるものであるため、半導体製造装置に異常が起こっている状態で処理を行うと、それまで行った処理が無駄になる場合があるし、あるいは最終製品の段階で特性が不合格になると、一連の処理が無駄になってしまう。しかもシリコンウエハの場合にはウエハ自体のコストが高いことから、できるだけ歩留まりを高くする必要があり、こうした事情から半導体製造装置では、わずかな異常についても速やかに検出する必要がある。このため温度、圧力、ガス流量、電力といったパラメータの値を監視し、例えば数秒間隔で各検出値をコンピュータに取り込んで速やかに異常を検出できる体勢をとっている。
【0003】
ところで装置に異常が発生した場合には、異常を示した監視対象の時系列データの他にその監視対象に関連する他の監視対象の時系列データをコンピュータから読み出し、それらデータを参照することにより、例えば装置メーカ側の経験に基づいて原因を把握するようにしていた。しかしながらユーザは装置の異常が起こるたびに装置メーカに連絡していたのでは煩わしいしまた時間がかかる場合もある。更にまた異常の状態によっては装置メーカ側にて速やかに回答できないこともあり、結局装置に異常が発生してから原因究明に至るまでに長い時間がかかることもある。
【0004】
具体的な異常の例としてバッチ式の縦型減圧CVD(chemical vapor deposition)装置の場合を挙げると、この装置は、多数枚の基板を保持具に棚状に保持して反応管内に搬入し、処理ガスを反応管内に供給しながら排気管を通じて真空排気を行い、反応管の周囲のヒータにより反応管内を均一加熱雰囲気とするものである。この装置において、例えば排気管に設けられた圧力調整バルブの開度が異常に大きくなった場合、反応管内の圧力検出値についてもデータを取りだして、それらのデータに基づいて、バルブの不具合なのか反応管の搬入口における気密性の劣化なのか排気管内の付着物の膜厚肥大による排気コンダクタンスの低下なのか、といった検討を行うことになるが、経験が浅いと異常の原因の把握は容易ではない。そして異常について原因究明に長い時間がかかると、その分装置のダウンタイムが長くなって稼働効率が低下し、半導体装置のコストアップの要因になる。
【0005】
更にまた半導体製造装置においては、次のような課題もある。例えば縦型の減圧CVD(chemical vapor deposition)装置は、基板を保持具に棚状に保持して反応管内に搬入し、処理ガスを反応管内に供給しながら排気管を通じて真空排気を行い、反応管の周囲のヒータにより反応管内を均一加熱雰囲気とするものであるが、例えば反応管内の気密性が悪くなると反応管内に外気が入り込むことから予定とする圧力制御ができなくなるばかりか、基板に対する成膜処理に対して悪影響がでることから、速やかにその異常を検出してメンテナンスを行う必要がある。このように気密性が悪くなる要因の一つとしては例えば反応管内の蓋体に設けられたOリングと呼ばれる樹脂シール部材の劣化や蓋体を貫通する回転軸の軸部分のシール機構の不具合などが考えられる。
【0006】
一方、反応管内の圧力制御は、排気管に設けられた圧力調整バルブ例えばバタフライバルブの開度を調整することにより行われており、反応管内の気密性が悪くなると反応管内に外気が入り込む分だけ排気しなければならないことから圧力調整バルブの開度が大きくなってしまう。そこで圧力調整バルブの開度を監視し、その開度が閾値を越えたときに気密性が低下したと判断して異常を検出するようにしている。
【0007】
しかしながら基板に対する成膜を行うと排気管の内壁にも反応生成物が付着するため、排気管のコンダクタンスが小さくなり、同じ圧力を得るのに圧力調整バルブの開度が大きくなる。従って累積膜厚が大きくなってくると、コンピュータ側では、前記開度が閾値をこえるので装置の異常と判断してしまう。そこでこのような誤判断を避けるために開度の閾値を大きめに設定すると、今度は累積膜厚が小さいうちに異常が発生し、そのために前記開度が大きくなっても閾値を越えないため、異常を見落としてしまう。更に累積膜厚がかなり大きくなると、排気管のコンダクタンスが小さくなりすぎて所定の真空度まで引き切れなくなることからクリーニングを行うようにしており、クリーニングのタイミングの目安として前記開度がある大きさになったときにクリーニングの報知をするようにしている。しかしこの場合においても、累積膜厚が小さいうちに異常が発生して前記開度がクリーニングの目安となる開度を越えたときにもクリーニングの報知がなされるので、異常を見落とす結果になる。
【0008】
こうした異常検出の不具合は、他の部分においても起こりうる。例えば反応管の周囲に配置された加熱手段として抵抗発熱体からなるヒータが用いられるが、ヒータは予め定められた使用時間に基づいて交換するようにしていた。しかし予め定められた使用時間が到来する前にヒータに不良が発生した場合には、熱処理を行ったウエハが不良品になってしまい、例えば12インチサイズのウエハは極めて高価であることから、大きな損失を被ることになる。更にまたバッチ炉のヒータは、耐久性が大きくかつ汚染の少ない材料で構成されていること、及び基板サイズの大口径化に伴って大型化してきたことなどから、高価であり、一方ヒータの仕様で決められる耐久時間はある程度余裕を見て決められていることから、既述のように不良が発生しない場合には、実際には未だ使用できるにも拘わらず交換しており、結果として運転コストアップの一因になっている。
【0009】
このように半導体製造装置においては、装置の異常を検出するにあたって、従来の手法では異常を確実に検出することができないし、またいまだ装置が正常な状態であっても部品の交換やメンテナンスをしており、無駄があるという課題がある。
【0010】
なお半導体製造装置の異常検出を行う技術として、ウエハ検出センサによる検出情報とメモリ内のウエハ情報とを照合してウエハが所定の向きで回収されることを確認する装置(特許文献1)が知られているが、この文献は本発明の課題を解決できるものではない。また半導体製造装置である縦型熱処理装置における異常監視に関しては、ヒータの寿命を予測した特許文献2があるが、電力値を長期に渡って監視してその値の変化の傾向に基づいて異常を判定しているため、装置の異常をリアルタイムで検出することはできない。
【0011】
【特許文献1】特開2003−7670号公報
【特許文献2】特開2002−352938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、装置の異常を確実に検出することができると共に装置に異常が起こったときにその異常の原因を容易に推定することのできる半導体製造装置を提供することにある。本発明の更なる目的は、推定した異常の原因に対する対策を容易に立てることのできる半導体製造装置を提供することにある。本発明の他の目的は、装置の異常を確実に検出することができると共に半導体製造装置の異常の原因を容易に推定することができ、あるいは更に推定した異常の原因に対する対策を容易に立てることのできるコンピュータプログラムを提供することにあり、更にまたこのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、半導体装置を製造するために基板に対して処理を行うように構成され、装置の状態に影響を与える因子である監視対象の監視結果に基づいて装置または処理の異常を検出する半導体製造装置において、
複数の監視対象を夫々監視する複数の監視手段と、
前記複数の監視対象の中の一の監視対象と、この一の監視対象の大きさに関連する他の監視対象と、の値を夫々2軸に割り当てて2軸座標系に作成され、正常領域と異常領域との境界を定めた境界データを記憶する境界データ記憶部と、
一の監視手段及び他の監視手段により夫々得られた一の監視対象の値と他の監視対象の値とで決まる前記2軸座標系における位置が前記正常領域に含まれているか異常領域に含まれているかを判断し、前記位置が異常領域に含まれているときには装置の異常を知らせる第1の異常検出手段と、
複数の監視対象の監視結果の演算結果に基づいて装置の異常を検出する第2の異常検出手段と、
複数の監視対象の監視結果の組み合わせに基づいたデータのモデルと異常原因とを対応付けた異常判別データを記憶する記憶部と、
装置の異常が検出されたときに、前記複数の監視対象の中から選択された、その異常に関連する少なくとも2つの監視対象の監視結果の組み合わせに基づいた異常データを作成するための異常データ作成手段と、
この異常データ作成手段で作成された異常データに対し、対応する監視対象について前記記憶部内の前記異常判別データのモデルの中で一致しているモデルの有無を検索し、一致しているモデルが存在したときにはそのモデルに対応する異常原因を読み出して知らせる検索手段と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明において、異常を検出したときに異常データを作成するとは、異常を検出したときにオペレータによる指示がなされて異常データを作成する場合、及び異常を検出したときに自動で異常データを作成する場合の双方を含む。異常を検出したときとは、第1の異常検出手段により異常が検出されたときであってもよいし、第2の異常検出手段により異常が検出されたときであってもよい。また第1の異常検出手段による異常検出のときだけ異常データを作成するようにしてもよい。またこの発明は、前記複数の監視対象のいずれか一つの値に基づいて装置の異常を検出する第3の異常検出手段を備えた構成としてもよい。この場合には、第1の異常検出手段、第2の異常検出手段及び第3の異常検出手段のいずれか一つが異常を検出したときに異常データを作成してよいし、第2の異常検出手段及び第3の異常検出手段の少なくとも一方が異常を検出したときだけ異常データを作成するようにしてもよいし、第3の異常検出手段による異常検出のときだけ異常データを作成するようにしてもよい。
【0015】
「複数の監視対象の中の一の監視対象と、この一の監視対象の大きさに関連する他の監視対象」とは、一の監視対象の値が他の監視対象の値に影響を与える場合を挙げることができ、例えば減圧CVD装置の真空排気路に設けた圧力調整バルブ25の開度と排気路内の累積膜厚との関係、あるいはヒータの温度検出値とそのヒータの電力との関係などを挙げることができる。また一の監視対象の値が他の監視対象の値に影響を与えない場合であってもよく、例えば互いに異なる部位の温度検出値などであってもよい。
【0016】
この発明において、前記一致しているモデルは、例えば異常に関連する少なくとも2つの監視対象の監視結果の組み合わせに基づいたデータに対し、予め定められた度合いよりも類似しているデータのモデルである。より具体例を挙げると、予め定められた度合いよりも類似しているデータのモデルは、予め数値化された類似度合いよりも類似しているデータのモデルである。また監視対象の監視結果の組み合わせに基づいたデータは、例えば監視結果の組み合わせパターンである。また前記異常検出手段により装置の異常が検出されたときに、その異常に関連する少なくとも2つの監視対象の監視結果である検出値の各々を標準化し、標準化された値に基づいて当該監視結果の組み合わせに基づくデータを作成する異常データ作成手段を備えた構成としてもよい。
【0017】
また少なくとも2つの監視対象の監視結果の組み合わせに基づくデータは、各監視対象の監視結果である検出値を標準化した値の組み合わせに基づくデータであってもよいし、あるいは各監視対象の監視結果である検出値を標準化した値を更に閾値により評価し、その評価結果の組み合わせであってもよい。更に本発明は、前記異常検出手段により装置の異常が検出されたときに、前記複数の監視対象の中からその異常に関連する少なくとも2つの監視対象を選択するための選択手段を備えた構成としてもよい。選択手段は、例えば表示画面を用いてオペレータが監視対象を選択できるように構成されている。
【0018】
また前記記憶部は、複数の監視対象の監視結果の組み合わせパターンに基づくデータのモデルと異常原因とその異常に関連するデータ例えばその異常に対する対策とを対応付けた異常判別データを記憶する。異常判別データの中に異常に対する対策データが含まれる場合には、前記検索手段は、一致しているモデルが存在したときにはそのモデルに対応する異常原因に加えて対策を読み出して知らせることが好ましい。更にまた、装置の異常が検出されたときに一致しているモデルが存在しないときには、異常データを新たなパターンに基づくデータのモデルとして異常原因と対応付けて記憶部に登録するための登録手段を備えた構成とすることが好ましい。
【0019】
そして前記境界データの作成に関して述べておくと、一の監視対象の値と他の監視対象の値との多数の組に基づいて2軸座標系に一の監視対象と他の監視対象との相関データを作成する相関データ作成手段と、この相関データ作成手段により作成された相関データに基づいて2軸座標系に正常領域と異常領域との境界を定めた境界データを作成する境界データ作成手段と、を備えた構成とすることが好ましい。また前記一の監視対象の値と他の監視対象の値とを記憶する装置データ記憶部を備え、相関データ作成手段は、前記装置データ記憶部に記憶されているデータに基づいて前記相関データを作成する構成とすることができる。相関データ表示手段に表示できるようにすることが望ましく、表示手段は、相関データと境界データとを共通の2軸座標系に表示するものであることが好ましい。そしてまた境界データ作成手段は、近似式の種類を選択する手段と、選択された種類の近似式と前記相関データとに基づいて前記境界に対応する近似式を求める手段と、を備えた構成とすることができる。
【0020】
他の発明に係るコンピュータプログラムは、半導体装置を製造するために基板に対して処理を行うように構成された半導体製造装置に用いられるコンピュータプログラムであって、
複数の監視手段により夫々監視され、装置の状態に影響を与える因子である複数の監視対象の中の一の監視対象と、この一の監視対象の大きさに関連する他の監視対象と、の値を夫々2軸に割り当てて2軸座標系に作成され、正常領域と異常領域との境界を定めた境界データを作成するステップと、
一の監視手段及び他の監視手段により夫々得られた一の監視対象の値と他の監視対象の値とで決まる前記2軸座標系における位置が前記正常領域に含まれているか異常領域に含まれているかを判断し、前記位置が異常領域に含まれているときには装置の異常を知らせる第1の異常検出ステップと、
前記複数の監視対象のうち互いに関連する複数の監視対象の値の演算結果に基づいて装置の異常を検出する第2の異常検出ステップと、
装置の異常が検出されたときに、前記複数の監視対象の中から選択された、その異常に関連する少なくとも2つの監視対象の監視結果の組み合わせに基づく異常データを作成するステップと、
このステップで作成された異常データに対して、複数の監視対象の監視結果の組み合わせに基づくデータのモデルと異常原因とを対応付けた異常判別データを記憶する記憶部を参照し、対応する監視対象について監視結果の組み合わせに基づくデータのモデルの中で一致しているモデルの有無を検索するステップと、
一致しているモデルが存在したときにはそのモデルに対応する異常原因を読み出して知らせるステップと、
を実行するように構成されたことを特徴とする。また本発明は、このコンピュータプログラムを格納した記憶媒体としても成り立つものである。
【0021】
コンピュータプログラムにより実行されるステップ群は、前記複数の監視対象のいずれか一つの値に基づいて装置の異常を検出する第3の異常検出ステップを備えるものとすることができる。更にまたコンピュータプログラムにより実行されるステップ群は、他の監視対象の値を種々変えることにより取得した一の監視対象の値と他の監視対象の値との組により2軸座標系に一の監視対象と他の監視対象との相関データを作成するステップと、
この相関データに基づいて2軸座標系に正常領域と異常領域との境界を定めた境界データを作成するステップと、を更に備えたものとすることができる。またコンピュータプログラムにより実行されるステップ群は、装置の異常が検出されたときに一致しているモデルが存在しないときには、検索の対象となった組み合わせに基づく異常データを新たな異常判別データにおけるモデルとして異常原因と対応付けて記憶部に登録するステップを含むものとすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、装置の異常に関連する少なくとも2つの監視対象の監視結果の組み合わせに基づいたデータ例えばその組み合わせのパターンのモデルを用意しておくと共にそのモデルと異常の原因とを対応付けておき、装置の異常が検出されたときに、その異常に関連する少なくとも2つの監視対象の監視結果の組み合わせに基づいたデータに対し、前記データのモデルの中で一致しているモデルが存在したときにはそのモデルに対応する異常原因を読み出して知らせるようにしているので、異常の原因を容易に推定することができる。
【0023】
また前記データ例えば組み合わせのパターンのモデルと異常原因とその異常に対する対策とを対応付けたデータを記憶しておき、一致しているモデルが存在したときにはそのモデルに対応する異常原因に加えて対策を読み出して知らせるようにすることで、異常の原因に対する対策を容易に立てることができ、的確かつ速やかな対応をとることができる。
【0024】
更にまた、一の監視対象と、当該一の監視対象の大きさに影響を与える他の監視対象と、の値を夫々2軸に割り当てて2軸座標系により管理し、この座標系において正常領域と異常領域との境界を定めているので、一の監視対象の値と他の監視対象の値とに見合った異常領域を設定することができる。一の監視対象の値だけを考慮して閾値を設定すると、片手落ちで正確な異常検出ができなかったが、このように2つの監視対象の値を考慮しているので、半導体製造装置の異常を確実に検出することができる。
【0025】
また一の監視対象の値と他の監視対象の値との種々の組により2軸座標系に相関データを作成する相関データ作成手段を設け、作成された相関データに基づいて境界データを作成するようにすれば、過去のデータの傾向に応じて適切な境界を作成することができ、より一層確実な異常検出を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
先ず本発明に係る半導体製造装置をバッチ式の熱処理装置である縦型減圧CVD装置(成膜装置)に適用した実施の形態について説明する。
【0027】
[装置構成について]
図1中1は例えば石英により縦型の円筒状に形成された反応容器である。この反応容器1の下端は、炉口として開口され、その開口部11の周縁部にはフランジ12が一体に形成されている。前記反応容器1の下方には、フランジ12の下面に当接して開口部11を気密に閉塞する、例えば石英製の蓋体13が図示しない昇降機構であるボートエレベータにより上下方向に開閉可能に設けられている。前記蓋体13の中央部には回転軸14が貫通して設けられ、その上端部には、基板保持具であるウエハボート2が搭載されている。従ってウエハボート2はボートエレベータにより、反応容器1内と、反応容器1の下方側に設けられた、ウエハWの搬出エリアであるローディングエリアとの間で昇降できることになる。
【0028】
このウエハボート2は、3本以上例えば4本の支柱21を備えており、複数枚例えば100枚の被処理基板であるウエハWを棚状に保持できるように、前記支柱21に溝(スロット)が形成されている。但し、100枚のウエハWの保持領域の内、上下両端部については複数枚のダミーウエハが保持され、その間の領域に被処理ウエハが保持されることになる。前記回転軸14の下部には、当該回転軸14を回転させる駆動部をなすモータMが設けられており、従ってウエハボート2はモータMにより回転することになる。また蓋体13の上には前記回転軸21を囲むように保温ユニット15が設けられている。
【0029】
前記反応容器1の下部のフランジ12には、反応容器1内のウエハWにガスを供給するためのガス供給部であるL字型のインジェクタ16が挿入して設けられている。インジェクタ16の基端側には、ガス供給路を介して成膜ガス供給源などが接続されている。
【0030】
また反応容器1の上方には、反応容器1内を排気するための排気ポート22が形成されており、この排気ポート22には真空排気路である排気管23の一端側が接続されているこの排気管23の他端側には真空排気手段をなす真空ポンプ24が接続されていると共に排気ポート22の近傍には反応容器1内の圧力を調整するための圧力調整部である圧力調整バルブ25が設けられている。圧力調整バルブ25は例えばバタフライバルブにより圧力を調整するように構成され、バルブ本体20の開度を調整するための駆動部26が設けられると共に、バルブ本体20の開度を検出する開度検出部である角度検出部27が設けられている。更にまた排気管23内には、圧力検出部28が設けられ、この部位の圧力と反応容器1内の圧力とは対応するため、この圧力検出部28により反応容器1内の圧力を監視している。なおバタフライバルブの場合にはバルブ本体の開度はバルブ本体の角度に相当することから、以後の説明では「開度」の代わりに「角度」を表現として用いる。
【0031】
図中3は例えばコンピュータからなる制御部であり、この制御部3は、例えば排気管23に設けた圧力検出部28の圧力検出値が、予め設定された設定圧力になるように駆動部26に制御信号を送って前記圧力調整バルブ25の角度を制御する機能と、装置データの一つである、角度検出部27からの圧力調整バルブ25の角度の値を取り込んで記憶するなどの機能を備えている。
【0032】
反応容器1の周囲には、反応容器1内を加熱するための加熱手段である抵抗発熱体からなるヒータ17を備えた加熱炉18が設けられている。前記ヒータ17としては、コンタミネーションがなく昇降温特性が優れたカーボンワイヤー等を用いることが好ましい。ヒータ17は例えばウエハWの並列方向に複数(図の例では3個)に分割されていて、分割された各ヒータ17毎に電力制御部19により電力制御される。また反応容器1の外には例えば各ヒータ17の近傍には、熱電対などからなる温度検出部(外部温度検出部)10aが設けられると共に、反応容器1内における例えば保温ユニット15に温度検出部(内部温度検出部)10bが設けられる。これら温度検出部10a及び10bの温度検出値は制御部3に取り込まれ、ヒータ17の電力制御のための指令値の演算に用いられる。また温度検出部10a及び10b、角度検出部27は監視手段に相当し、各検出値は監視結果に相当する。
【0033】
[制御部について]
A.制御部におけるプログラムを除いた構成について:
次に制御部3に関して図2を参照しながら詳述する。図2において半導体製造装置本体100とは、図1に示した成膜装置における制御部3以外の部分に相当する。即ち制御部3に対して検出信号やデータを送り、制御部3によりコントロールされる部位全体に相当する。30はバスであり、このバス30に通信部、記憶部、各プログラム格納部、CPUなどが接続されているが、図2では、これらを機能的に表現しブロック化して表している。通信部31は、半導体製造装置本体100との間で通信をおこなう部位であり、角度検出部27からの圧力調整バルブ25の角度、温度検出部10a、10bからの各温度検出値などの装置データが取り込まれると共に、圧力調整バルブ25の駆動部26、電力制御部19などに制御信号を送信する機能を有する。
【0034】
装置データ記憶部32は、通信部31から取り込まれた装置データ、例えばバルブ20の角度、内部温度、外部温度などを記憶すると共に、例えば制御指令値に基づいて演算されたヒータ17の供給電力なども記憶される。この場合には、この演算を行う部分が供給電力の監視手段に相当する。なおヒータ17の供給電力は、電力計からの電力検出値に基づいて求めるようにしてもよい。入力操作部33は、種々の指示例えば後述の相関データの作成や境界データの作成の指示、あるいは異常発生時における後述のデータの検索指示などを入力する部位であり、例えばキーボード及びマウスと、表示部34である例えば液晶画面またはCRT画面などのソフトスイッチとの組み合わせからなる。異常報知手段である異常報知部35は、装置の異常と判断されたときに異常をオペレータに知らせるための警告灯、警報音出力部、画面への異常発生表示などを行う部位などが相当する。
【0035】
累積膜厚管理部36は、例えば既に成膜処理が行われたウエハの目標膜厚の合計値を、それまでに行われた成膜処理の処理レシピ(図2では処理レシピは省略してある)に基づいて計算しておく部位である。目標膜厚の合計値である累積膜厚とは、この例では2つある。その一つは、新品の反応容器1の使用開始時点あるいは反応容器1内をクリーニングして壁面の付着物を除去した後に行われる成膜処理の各々の目標膜厚の合計値であり、その時点の反応容器1の壁面に付着している付着物の膜厚に対応する。他の一つは、新品の排気管23の使用開始時点あるいは排気管23内をクリーニングして壁面の付着物を除去した後に行われる成膜処理の各々の目標膜厚の合計値である。この合計値はその時点の排気管23の壁面に付着している付着物(反応生成物)の膜厚の数値自体とは等しくないが、概略的には対応関係(比例関係)にあるので、目標膜厚の合計値を排気管23の累積膜厚として評価することに問題はない。
【0036】
B.第1のプログラム格納部内のプログラム及び相関データについて:
第1のプログラム格納部200は、相関データ作成プログラム37、境界データ作成プログラム38、判断(異常検出)プログラム39を備えている。相関データとは、第1の監視対象(一の監視対象)と、この第1の監視対象に関連する第2の監視対象(他の監視対象)、例えば第1の大きさに影響を与える第2の監視対象と、の値を夫々2軸に割り当てて2軸座標系に作成されたデータであり、第2の監視対象の値を種々変えて第1の監視対象の値と第2の監視対象の値との組を2軸座標系にプロットしたものである。互いに関連する第1の監視対象と第2の監視対象の組としては、例えば次の例を挙げることができる。
【0037】
第1の監視対象: 第2の監視対象
圧力調整バルブ25の開度 累積膜厚
外部温度検出値 ヒータ17の電力
ヒータ17の電力 累積膜厚
外部温度検出値 内部温度検出値
なお第1の監視対象及び第2の監視対象が夫々圧力調整バルブ25の開度及び累積膜厚である場合、第1の監視手段及び第2の監視手段は、夫々角度検出部27及び累積膜厚管理部36であり、第1の監視対象及び第2の監視対象が夫々外部温度検出値及びヒータ電力である場合、第1の監視手段は温度検出部30aに相当し、第2の監視手段は例えば図示しない電力計あるいは制御部3内の電力指令値に基づいて電力値を計算するプログラムなどに相当する。
【0038】
第1の監視対象の値と第2の監視対象の値は、半導体製造装置本体100から通信部31を介して例えば1秒間隔で装置データ記憶部32に取り込まれ、このためウエハWに対して成膜処理を行っている間の監視対象の時々刻々のデータが記憶されると共に、各成膜処理毎の監視対象の評価値も作成できる。1回の成膜処理を「RUN」という言い方をすると、各RUNの評価値は、例えばプロセスを開始してから予め設定した時間帯、例えばプロセスを行っている間の監視対象の平均値、あるいは標準偏差などのデータとして取り扱うことができる。
【0039】
相関データ作成プログラム37は、例えば各RUNの評価値である第1の監視対象の値と第2の監視対象の値とに基づいて相関データを作成するものである。例えば第1の監視対象が累積膜厚であり、第2の監視対象が圧力調整バルブ25の開度であるとすると、各RUNにおける累積膜厚と圧力調整バルブ25の開度(例えばそのRUNにおける開度の平均値)との値の組を取り出して、X座標及びY座標に夫々累積膜厚及び開度をとった2軸座標系にプロットしていくことになる。例えば10回目のRUNであれば、9回目のRUNまでの累積膜厚と10回目のRUNにおけるバルブ開度との組ということになる。ここでいう10回目とは、排気管23が新品あるいはクリーニングした状態から始めた処理回数に相当する。
【0040】
図3(a)は、このようにして作成した圧力調整バルブ25の開度と累積膜厚とを2軸、例えばX軸−Y軸に夫々割り当てて、これらの値の関係をX−Y座標系に示した相関データである。なお各データは同じ圧力設定値下における値であり、例えば同じ成膜処理の設定圧力下においてとったデータである。この相関データから分かるように累積膜厚が増えるにつれて圧力調整バルブ25の開度は大きくなっていくが、累積膜厚が大きい領域に入ると、累積膜厚の増加に対するバルブの開度の増加率が急激に大きくなっていることが伺える。このようにバルブの開度が累積膜厚に応じて大きくなるのは、既述したように排気管23に付着した付着物によりコンダクタンスが小さくなるため、同じ圧力を得ようとすると、バルブの開度をより大きくする必要があることに基づく。
【0041】
このような相関データを予め作成しておけば、圧力調整バルブ25の開度と累積膜厚との組できまるプロットがこのデータ群から外れた場合には、実際にはこのデータ群よりも上方側に位置した場合には、異常であると判断できる。境界データ作成プログラム38は、境界データ作成手段に相当するものであり、図3(a)の相関データに基づいて正常領域と異常領域との間の境界を作成するためのプログラムである。この境界とは、例えば図3(b)に示すようにデータ群の上限ラインと下限ラインとを規定する2つの線図L1、L2であってもよいが、この場合には下限ラインを割ることはないので、上限ラインのみを規定する線図であってもよい。またこの例では、累積膜厚が大きい領域において、線図L1、L2の上部同士を結んで水平な線を形成し、この線を越えると異常領域として取り扱っている。圧力調整バルブ25の開度が大きくなると、つまり排気管3を完全に塞いだ位置から90度回転する位置に近くなると、圧力制御を正確に行えなくなることから、クリーニングを行うようにしており、このクリーニングポイントも異常領域として取り扱っている。
【0042】
境界の設定の手法について図4を参照しながら具体例を挙げると、例えば入力操作部を兼用する画面において、相関データを表示させ、オペレータがそのデータ群に相応しいと思われる近似式を選択し、境界データ作成プログラム38に組み込まれた演算ステップによりその近似式における係数を求めて境界(管理値)線が作成される。近似式としては、例えば1〜7次式、対数式、指数関数、楕円を挙げることができるが、これに限られるものではない。図3(b)は相関データと境界とを同時に表示したものであるが、相関データと境界データは境界データ記憶部を兼ねた第1の記憶部300内に記憶される。なお記載の煩雑さを避けるために各データに符号は割り当てていない。なお上述の相関データは、相関データが適用される当該装置における過去の実績データであってもよいし、当該装置の同種の他の装置の実績データを利用してもよい。またこの例の相関データは、設定圧力毎に作成される。
【0043】
第1のプログラム格納部200内に格納されている第1の異常検出手段に相当する判断プログラム39は、装置データ記憶部32に取り込まれるバルブの開度と累積膜厚管理部36で管理される累積膜厚とに基づいて、それらの値の組が例えば図3(b)に示されている境界データと対応させて正常領域に入っているのか、異常領域に入っているのかの判断を行うプログラムである。またこの判断プログラム39は、異常であると判断したときには、異常報知部35に異常報知を行うように指示すると共に、異常データを第1の記憶部300に記憶する。
【0044】
また相関データ作成プログラム37は、バルブの開度と累積膜厚との相関データだけでなく、装置データ記憶部32に記憶された過去のデータに基づいて、温度検出部10aの温度検出値である外部温度検出値とヒータ17の電力値との相関データや累積膜厚とヒータ17の電力値との相関データを同様にして作成する。図5(a)は外部温度検出値とヒータ17の電力値との相関データを示しており、これらはヒータ17の供給電力を変えれば温度が変わる関係にあり、境界を決める近似式としては例えば楕円を選択することができる。図5(b)はこの場合の相関データと境界とを示す図である。
【0045】
更に図6(a)はヒータ17の電力値と累積膜厚との相関データを示しておりいる。ヒータ17の電力制御は温度検出部10bによる反応容器1内の内部温度検出値も考慮してコントロールされていることから、ヒータ17の発熱量と内部温度との対応関係は、反応容器1の内壁に付着する薄膜の膜厚により変わってくる。即ちヒータ17からの輻射熱は反応容器1の内壁に付着する薄膜に遮られるので、累積膜厚が大きくなると、反応容器1内を同じ温度に加熱しようとすると、発熱量を大きく(供給電力を大きく)しなければならない。この場合、境界を決める近似式としては例えば二次曲線を選択することができる。図6(b)はこの場合の相関データと境界とを示す図である。以上の説明では、単にヒータ17という記載で済ませているが、実際には反応容器1内は温度制御されるべきゾーンが複数に分割されていて、各ゾーンに対応するヒータ17(図1の例では上段、中段、下段のヒータ)毎に図5及び図6の相関データが作成される。
【0046】
C.第2のプログラム格納部内のプログラム及び異常検出時の検索について:
第2のプログラム格納部4は、異常検出プログラム41、経時変化作成プログラム40、異常データ作成プログラム42、検索(原因推定)プログラム43及びパターン登録プログラム44を備えている。異常検出プログラム41は、装置データ記憶部32内に取り込まれた監視結果(内部温度、バルブ角度など)に基づいて装置の異常を検出するプログラムであり、この例では、第2の異常検出手段であるプログラムと、第3の異常検出手段であるプログラムと、を含んでいる。
【0047】
第2の異常検出手段に相当するプログラムは、予め決められた複数の監視手段により監視された各監視結果の演算結果、即ち検出値を演算した結果に基づいて異常を検出するためのプログラムである。より具体的には、互いに関連する(相関関係がある)複数の監視対象を夫々監視する監視手段において、各監視結果に基づく検出値、例えば温度系、圧力系などの各系に含まれる検出値の群毎に予め組み合わせを決めておき、その組み合わせに含まれる各検出値に対して所定のアルゴリズムによる演算を行い、例えば多変量解析の手法の一つであるマハラノビスの距離を求め、その値が管理値を越えたときに異常検出であると判定する。
【0048】
第3の異常検出手段に相当するプログラムは、複数の監視手段による各監視結果の少なくとも一つ、つまり各検出値少なくとも一つが閾値を越えているか否かを判定し、閾値をこえているときに異常と判断するように構成される。
【0049】
経時変化作成プログラム40は、各監視結果である検出値の経時変化データ、例えば外部温度検出値、内部温度検出値などの経時変化データを装置データ記憶部32内のデータに基づいて作成して第2の記憶部51内に記憶するプログラムである。、
異常データ作成プログラム42は、異常データ作成手段に相当し、この例では、異常検出プログラム41及び39の少なくとも一方により異常が検出されたときに、異常に関連する少なくとも2つの監視対象の検出値の各々を標準化し、標準化された値に基づいて当該監視結果の組み合わせに基づく異常データを作成するプログラムである。結局この例では、既述のように相関データに基づいてい作成された境界データに基づく異常、複数の検出値の演算結果に基づく異常及び各検出値毎の異常、の少なくとも一つが検出されたときに後述のように例えばオペレータの介在により異常データの作成が行われる。なお本発明は、オペレータが境界データに基づく異常が知らされたときに、異常データを作成しない場合も含まれる。以後の説明では、異常と検出された後、異常データの作成の指示はオペレータにより行われるが、異常と判断されたときに自動で監視結果の組み合わせを選択して異常データを作成するようにしてもよい。即ち、本発明において、異常を検出したときに異常データを作成するとは、オペレータによる手動操作及び自動操作の双方を含む意味である。
【0050】
またここで異常検出の他の例について触れておくと、本発明では、各検出値毎に異常を検出するステップについては行わないようにしてもよい。即ち、相関データに基づいて作成された境界データに基づく異常及び複数の検出値の演算結果に基づく異常の少なくとも一つが検出されたときに例えばオペレータの介在により異常データの作成を行うようにしてもよい。
【0051】
そして異常に関連する少なくとも2つの監視対象は、例えばオペレータが入力操作部33により選択したものである。即ち、異常が検出されたときにはどの監視結果が異常であるか、あるいはどの監視対象のグループの監視結果が異常であるかが表示部34に表示されるため、オペレータが異常原因の検索にあたって、その異常である監視結果を含む組み合わせを選択する。
【0052】
より具体的には、例えば温度系について異常が検出されれば、外部温度検出値、内部温度検出値及びヒータの供給電力値(ヒータパワー)の組み合わせを選択する。あるいは圧力系について異常が検出されれば、圧力検出値、圧力調整バルブ25の角度の検出値及び大気雰囲気から予め設定された真空度まで真空引きする時間の検出値の組み合わせを選択する。なおこの真空引きに要する時間の監視は、図示していない監視手段に相当するプログラムにより行われる。
【0053】
また監視対象の検出値を標準化するとは、例えば後述の作用説明で述べる図11を参照すると、各検出値の生データを設定値あるいは予定している値を基準として規格化した値である。なお検出値の生データとは、例えば装置データ記憶部32に取り込まれた検出値の平均値などを指している。更に、既述の標準化された値に基づいて当該監視結果の組み合わせに基づくデータを作成するとは、例えば先の図11に示したように、各検出値を標準化した値の組み合わせのパターン、例えば外部温度が「54」、内部温度が「10」、ヒータパワーが「11」といった組み合わせのパターンである。ここで出した数字は、実際の装置で用いられる数字というものではなく、説明を分かりやすくするために示したものである。
【0054】
更にまた制御部3は、第3の記憶部5及び第4の記憶部6を備えており、異常データ作成プログラム42により既述のようにして作成されたデータ、この例では各検出値を標準化した値の組み合わせのパターンは、第3の記憶部5に記憶される。
【0055】
ここで検索(原因推定)プログラム43の説明の前に、第4の記憶部6内のデータに関して述べておく。このデータは、装置の異常を特定するためにグループ化された複数の監視対象について各監視結果の組み合わせパターンのモデルを作成し、そのモデルと異常原因とその異常に対する対策とを対応付けた異常判別用データである。監視結果の組み合わせパターンのモデルとは、温度検出値などの各検出値を標準化した値の組み合わせのパターンであり、図7に具体例を示しておく。
【0056】
図7(a)は、3つの監視結果である、バルブの角度(圧力調整バルブ25の角度)と圧力検出値と大気雰囲気から予め設定された真空度まで真空引きするのに要する時間とについて、各々既述のようにして標準化し、その標準化した値の組み合わせのパターンである。そしてこのパターンが発生する異常の状況、推定要因、その対処方法、コメントを合わせて記載し、データコードを付しておいて管理される。この例においては、異常の状況は、「真空引きに長い時間がかかる」ということであり、また推定原因としては「バルブ内に反応副生成物が付着して閉まりにくくなっている」ということである。
【0057】
更に図7(b)は、あるゾーンのヒータ17のパワー(供給電力)と、そのヒータ17の温度と、当該ヒータ17に隣接するゾーンのヒータ17のパワーと、について各々既述のようにして標準化し、その標準化した値の組み合わせのパターンである。このゾーンとは、図1に示したように反応容器1内を上下に例えば3分割して形成される各ゾーンという意味である。この例においては、異常の状況は、「ヒータ17の温度が低い」ということであり、推定原因としては「当該ヒータ17のヒータエレメントの断線」ということである。なお標準化した値はマイナスの場合もある。更にまた図7(c)は、外部温度検出値と内部温度検出値とヒータ17のパワーとについて各々既述のようにして標準化し、その標準化した値の組み合わせのパターンである。外部温度とヒータ17のパワーとの各検出値は同じゾーンのヒータに関する値である。この例においては、異常の状況は、「ヒータ17の温度検出値が高い」ということであり、推定原因としては「外部温度検出部10aである例えば熱電対の異常」ということである。
【0058】
図2のプログラムの説明に戻すと、検索(原因推定)プログラム43は、検索手段に相当し、前記異常検出プログラム41により装置の異常が検出されたときに、前記監視対象群(内部温度、外部温度、圧力など)の中から選択された、複数の監視対象の監視結果の組み合わせパターン(異常データ)に対し、対応する監視対象について後述の異常判別用データの組み合わせパターンのモデルの中で一致しているモデルの有無を検索し、一致しているモデルが存在したときにはそのモデルに対応する異常原因を読み出して知らせるためのプログラムである。ここでいう「一致している」とは、予め定められた度合いよりも類似しているということである。より具体的に言えば、予め定められた度合とは、予め数値化された類似の度合いであり、例えば後述のように監視対象の検出値を標準化した値同士を比較する場合、大きい方の値に対する小さい方の値の比率などを指す。またパターン登録プログラム44は、装置の運転の前に異常判別用データを登録するためのプログラムと、異常が起こったときにその異常データに一致する異常判別データが第4の記憶部6内になかった場合に、その異常データに異常原因や対策などの情報を付して第4の記憶部6内に記憶する(登録する)ためのステップ群を実行するように作成されている。
【0059】
以上において、上記の各プログラム37〜39及び41〜44を含むプログラムは、記憶媒体、例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク(いわゆるMO)などに格納され、制御部3にインストールされ、第1のプログラム格納部200または第2のプログラム格納部4に格納される。
【0060】
[実施の形態の作用]
次に上述の実施の形態の作用について述べると、先ず半導体装置例えば半導体集積回路を製造するための基板であるウエハWを図示しない搬送アームにより所定枚数ウエハボート2に棚状に載置して、図示しないボートエレベータを上昇させることにより反応容器1内に搬入し、フランジ22の下端開口部を蓋体13により塞いだ後、例えば予め設定されたプロセス温度に安定させる。
【0061】
そして反応容器1内を圧力調整バルブ25を全開にしていわゆる引き切りとした後、インジェクタ16から処理ガスを反応容器内2に所定の流量で供給すると共に圧力調整バルブ25により予め定められた処理圧力になるように圧力が調整される。より詳しく述べると、制御部3内は、処理をおこなうためのレシピ(図示せず)が格納されていて、そのレシピに書かれている設定圧力を読み出し、例えば排気管23に設けられている圧力検出部28の圧力検出値と設定圧力とに基づいて、圧力調整バルブ25のアクチェータに相当する駆動部26にバルブ調整信号を送ってバルブ20の角度を調整する。
【0062】
また温度制御に関しては、制御部3は外部温度検出部10a及び内部温度検出部10bから夫々温度検出値を取り込み、その温度検出値と前記レシピに書かれている設定温度とに基づいて、電力制御部19に制御信号である電力指令値を出力し、反応容器1の処理雰囲気が設定温度になるようにコントロールされる。こうして反応容器1内が予め設定された加熱雰囲気、圧力雰囲気に維持され、ウエハWに対して成膜処理が行われ、その後、反応容器1内をパージガスで置換した後、ウエハボート2が反応容器1から搬出されて一連のプロセスが終了する。
【0063】
一方各監視対象の監視結果、即ち各検出値は、半導体製造装置本体100から通信部31を介して例えば1秒間隔で装置データ記憶部32に取り込まれ、このためウエハWに対して成膜処理を行っている間の監視対象の時々刻々のデータが記憶され、この監視結果に基づいて装置または処理の異常検出が行われる。この異常検出について図8に示すフローを参照しながら説明する。先ず装置データ記憶部32内に取り込まれる監視結果に基づいて異常を検出する(ステップS1)。
【0064】
この異常検出は、この例では、既述のように相関データに基づいて作成された境界データに基づく異常、複数の検出値の演算結果に基づく異常及び各検出値毎の異常、の少なくとも一つが検出されることにより行われる。先ず境界データに基づく異常について述べる。判断プログラム39は、装置データ記憶部32に取り込まれる装置データと相関データの境界データとに基づいて装置の異常を判断する。例えば装置本体100側から装置データ記憶部32に取り込まれる圧力調整バルブ25の角度(角度検出部37からの角度検出値)の値、例えば刻々と取り込まれる角度の値の移動平均値を評価値である角度の検出値として取扱い、累積膜厚管理部36にて管理されている当該RUNの一つ前のRUNまでの累積膜厚値と角度の検出値との値で決まる図3(b)における座標位置を求め、この位置が正常領域から外れているか否か、つまり上側と下側の境界線L1、L2の間に含まれているか否かを判断する。この場合には、設定圧力毎に相関データが作成され、実施される成膜処理の設定圧力に対応する相関データに係る境界データが用いられることになる。
【0065】
そして異常領域に含まれていると判断したときには異常報知部35に指示を出して例えばアラームが発せられる。この場合、反応容器1内の気密が不十分であり、外気が反応容器1内に入り込んでいる可能性があるので、気密部分の点検を行うなどの処置がとられることになる。また2つの境界線L1、L2が立ち上がっている、累積膜厚が大きい領域では、バルブの角度が予め定めた閾値よりも大きくなったときにはクリーニングを行う時期にきていることを知らせるアラームが発せられる。これは、それ以降に成膜処理を実施すると、バルブの角度が90度に近くなって圧力制御が正確に実施できなくなるからである。
【0066】
更にまた、他の相関データに関しても境界に基づいて異常の有無の判断がなされる。例えば装置データ記憶部32に温度検出部10aから取り込まれた外部温度検出値とヒータ17の供給電力値とについても、例えばフィルタ処理である移動平均などのデータ処理により評価値を求めてそれらを夫々外部温度検出値、供給電力値として取扱い、それらの値の組で決まる、図5(b)における座標位置を求め、その位置が境界線(この例では楕円)の中にあるのか外にあるのかを判断して、外にある場合には異常報知部35を介してアラームを発生させる。この場合には、ある発熱量を得るのに異常に高い電力を必要とすることから、ヒータ17の寿命が近いなどの原因が考えられる。この例の利点としては、種々の成膜処理を行う場合に、各設定温度がRUNによって異なっていても、ヒータ17に関する異常を検出できる点が挙げられる。
【0067】
そしてまた累積膜厚とヒータ17の供給電力値とについても、同様にして図6(b)における座標位置を求め、その位置正常領域にあるのか異常領域にあるのかを判断し、異常領域に有ると判断した場合にはアラームを発生させる。この場合には、設定温度毎に相関データが作成され、実施される成膜処理の設定温度に対応する相関データに係る境界データが用いられることになる。異常の原因としては、ヒータ17の寿命が近いなどの原因が考えられる。
【0068】
次に複数の検出値の演算結果に基づく異常及び各検出値毎の異常、の少なくとも一つが検出される様子について述べる。図9は、異常検出の様子を示す図であり、外部温度検出部10aの一つの検出値(外部温度検出値)が時刻t1にて管理値を越えており、例えばこの時点で異常と判断される。この場合、図10に示すように温度系の中から選択した複数の監視対象をグループ化した監視対象群の検出値、例えば外部温度検出値、内部温度検出値及び対応するヒータ17のパワーについて、多変量解析の手法の一つであるマハラノビスの距離を求めると、時刻t1にてその値が管理値を越え、異常検出と判定する。
【0069】
以上のようにして異常が検出されると、例えばどの監視対象に異常が発生したか、あるいは多変量解析値を監視している場合には、どの変数群(図10の場合には、外部温度検出値、内部温度検出値、ヒータ17のパワー)において異常が発生したかが表示部34に表示されると共に、例えば異常報知部35により異常を報知する(ステップS2)。異常報知については、具体的には例えばアラームを鳴動したりあるいは警告灯を点灯させたりする。次いでオペレータは、この表示を見て、異常に関連する少なくとも2つの監視対象の監視結果、例えば上記の変数群である外部温度検出値、内部温度検出値、ヒータ17のパワーの組み合わせを選択する(ステップS3)。図12は、オペレータが監視対象の組み合わせ即ち変数の組み合わせを選択するための画面の表示のイメージを示している。
【0070】
こうして変数の組み合わせが選択されて、例えば画面の検索のソフトスイッチがオンになると異常データ作成プログラム42が既述のようにしてこれら検出値の各々を標準化し、例えば図9に示すように標準化された各検出値の組み合わせパターンを作成し(ステップS4)、第3の記憶部5に記憶すると共に画面にそのパターンが表示される。
【0071】
更に検索プログラム39により第3の記憶部5内の前記組み合わせパターン(異常データ)に対して、図7に示したような第4の記憶部6内の組み合わせパターンのモデル(異常判別データ)の中で一致しているモデルを検索する。つまり図9に示すように第3の記憶部5内の前記組み合わせパターンと第4の記憶部6内の組み合わせパターンのモデルの各々とを比較して一致の有無を判断する(ステップS5、ステップS6)。ここでいう一致とは、予め定めた類似の度合いよりも似ている場合を意味する。例えば図11(a)に示すように、異常データである、外部温度検出値、内部温度検出値及びヒータ17のパワーの夫々について標準化された値と、異常判別用データである、対応するパターンのモデルにおける各標準化の値(規格値)とを比較し、全てが予め設定した値よりも類似していれば「一致」として判定される。図11(a)の例では、外部温度検出値、内部温度検出値及びヒータパワーの夫々について標準化された値の類似度合い、例えば大きい方の値に対する小さい方の値の割合が90%、100%、90%であり、例えば80%を類似度合いの閾値とすれば、全て80%を越えているので、「一致」と判定される。なお類似度合いの決め方については、この手法に限定されるものではない。
【0072】
更にまた第4の記憶部6内の異常判別データである、監視結果の組み合わせに基づいたデータのモデルとしては、上述の例に限られず例えば図11(b)に示すように検出値を標準化した値が基準値よりも大きいか小さいかの「大」、「小」の組み合わせであってもよい。この場合、異常データについては、外部温度検出値、内部温度検出値及びヒータパワーの値が例えば「大」、「小」、「大」の組み合わせデータとなり、異常判別データの中に、対応する監視対象についてこの組み合わせがあれば、一致していると判断されることとなる。即ちこの例は、検出値を標準化した値を更に閾値により評価し、その評価結果の組み合わせを異常データとする例に相当する。
【0073】
こうして異常データといわばライブラリーとでもいうべき異常判別データとが比較され、一致しているデータが見つかれば、そのデータ(図7に示すようなデータ)を表示部34に表示する(ステップS7)。これによりオペレータは異常の原因を推定することができ、また対処についても表示されることから、その対処と同じ対処を行うか、あるいはその対処を参考にしてより適切な対処を行う。
【0074】
これに対して、一致しているデータが見つからなければ、オペレータが例えば装置メーカと相談するなどして、異常の原因究明を行い(ステップS8)、原因を突き止めて対処した後、今回の異常データを第4の記憶部6に異常判別データであるデータのモデルとして登録する(ステップS9)。なお今回の異常データとして図6に示したような、異常度合いの推移を併せて登録するようにしてもよい。図13はこの登録を行うための画面の表示のイメージを示し、オペレータは、今回登録すべき組み合わせパターンに対応付けて異常の状況、異常原因など、図7に示したと同様に上方を入力し、データコードを付して登録のスイッチをオンにして登録を行う。
【0075】
[実施の形態の効果]
上述実施の形態によれば、複数の監視対象の監視結果の組み合わせに基づいたデータ例えばその組み合わせのパターンのモデルを用意しておくと共にそのモデルと異常の原因とその異常に対する対策とを対応付けた異常判別データを第4の記憶部6に記憶しておき、装置の異常が検出されたときに、その異常に関連する少なくとも2つの監視対象の監視結果の組み合わせに基づいた異常データに対し、前記異常判別データのモデルの中で一致しているモデルが存在したときにはそのモデルに対応する異常原因とその異常に対する対策を含む情報を読み出して知らせるようにしているので、異常の原因を容易に推定することができ、更に異常の原因に対する対策を容易に立てることができ、的確かつ速やかな対応をとることができる。
更に上述の実施の形態によれば、一の監視対象と、一の監視対象に関連する第2の監視対象と、の各値を考慮しているので、つまり両者の値をプロットした相関データに基づいて境界を定め、その境界に基づいて正常、異常を判断しているので、半導体製造装置の異常を確実に検出することができる。例えば圧力調整バルブ25の開度と累積膜厚との相関データを利用することにより、反応容器1内のリークを確実に検出することができるし、また異常であるかクリーニングのタイミングであるかの区別ができるので、排気管23の内壁の付着物の膜厚が大きくなってクリーニングをしなければならない、そのタイミングの直前まで処理を行うことができ、メンテナンスサイクルを長くとることができ、装置のダウンタイムを抑えることができる。
【0076】
更にヒータ17の電力と累積膜厚あるいはヒータ17の温度との相関データを利用することにより、ヒータ17の不具合を確実に検出することができる。またヒータ17の使用寿命が近いことをあるいは使用寿命が到来していることを把握できることから、ヒータ17を一定時間使用したときに交換する手法に比べて、ヒータ17をいわば使い切ることができ、このためメンテナンスサイクルを長くとることができると共に、ヒータ17が高価であることから、運転コストを抑えることに寄与する。
[他の適用例]
本発明の半導体製造装置として縦型減圧CVD装置を例にとって説明したが、本発明は、枚葉の熱処理装置、ドライエッチング装置、アッシング装置、レジストの塗布、現像を行う塗布、現像装置などに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の半導体製造装置を縦型熱処理装置である減圧CVD装置に適用した実施の形態の構成と制御系とを示す構成図である。
【図2】上記の実施の形態に用いられる制御部を示すブロック図である。
【図3】圧力調整バルブの角度と累積膜厚との相関関係、及び正常領域と異常領域との境界を示す特性図である。
【図4】入力画面の一例を示す説明図である。
【図5】温度検出値とヒータ電力との相関関係、及び正常領域と異常領域との境界を示す特性図である。
【図6】累積膜厚とヒータ電力との相関関係、及び正常領域と異常領域との境界を示す特性図である。
【図7】上記の実施の形態に用いられる異常判別データ(データのモデル)を示す説明図である。
【図8】上記の実施の形態の作用を示すフロー図である。
【図9】上記の実施の形態の作用を模式的に示す説明図である。
【図10】複数の監視結果について、所定のアルゴリズムにより計算した計算値の推移を示す特性図である。
【図11】異常データと異常判別データとの比較の様子を模式的に示す説明図である。
【図12】監視結果の組み合わせを選択するための画面のイメージを示す説明図である。
【図13】異常判別データを新規に登録するための画面のイメージを示す説明図である。
【符号の説明】
【0078】
1 反応容器
10a 外部温度検出部
10b 内部温度検出部
17 ヒータ
19 電力制御部
2 ウエハボート
22 排気ポート
23 真空排気路をなす排気管
25 圧力調整バルブ
26 駆動部
27 角度検出部
28 圧力検出部
3 制御部
32 装置データ記憶部
34 異常報知部
35 異常報知部
36 累積膜厚管理部
37 相関データ作成プログラム
38 境界データ作成プログラム
39 判断プログラム
200 第1のプログラム格納部
4 第2のプログラム格納部
300 第1の記憶部
51 第2の記憶部
5 第3の記憶部
6 第4の記憶部
41 異常検出プログラム
40 経時変化作成プログラム
42 異常データ作成プログラム
43 検索プログラム
44 パターン登録プログラム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置を製造するために基板に対して処理を行うように構成され、装置の状態に影響を与える因子である監視対象の監視結果に基づいて装置または処理の異常を検出する半導体製造装置において、
複数の監視対象を夫々監視する複数の監視手段と、
前記複数の監視対象の中の一の監視対象と、この一の監視対象の大きさに関連する他の監視対象と、の値を夫々2軸に割り当てて2軸座標系に作成され、正常領域と異常領域との境界を定めた境界データを記憶する境界データ記憶部と、
一の監視手段及び他の監視手段により夫々得られた一の監視対象の値と他の監視対象の値とで決まる前記2軸座標系における位置が前記正常領域に含まれているか異常領域に含まれているかを判断し、前記位置が異常領域に含まれているときには装置の異常を知らせる第1の異常検出手段と、
複数の監視対象の監視結果の演算結果に基づいて装置の異常を検出する第2の異常検出手段と、
複数の監視対象の監視結果の組み合わせに基づいたデータのモデルと異常原因とを対応付けた異常判別データを記憶する記憶部と、
装置の異常が検出されたときに、前記複数の監視対象の中から選択された、その異常に関連する少なくとも2つの監視対象の監視結果の組み合わせに基づいた異常データを作成するための異常データ作成手段と、
この異常データ作成手段で作成された異常データに対し、対応する監視対象について前記記憶部内の前記異常判別データのモデルの中で一致しているモデルの有無を検索し、一致しているモデルが存在したときにはそのモデルに対応する異常原因を読み出して知らせる検索手段と、を備えたことを特徴とする半導体製造装置。
【請求項2】
前記複数の監視対象のいずれか一つの値に基づいて装置の異常を検出する第3の異常検出手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の半導体製造装置。
【請求項3】
前記一致しているモデルは、異常に関連する少なくとも2つの監視対象の監視結果の組み合わせに基づいたデータに対し、予め定められた度合いよりも類似しているデータのモデルであることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体製造装置。
【請求項4】
予め定められた度合いよりも類似しているデータのモデルは、、予め数値化された類似度合いよりも類似しているデータのモデルであることを特徴とする請求項3記載の半導体製造装置。
【請求項5】
監視対象の監視結果の組み合わせに基づいたデータは、監視結果の組み合わせパターンであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の半導体製造装置。
【請求項6】
前記異常データ作成手段は、異常に関連する少なくとも2つの監視対象の監視結果である検出値の各々を標準化し、標準化された値に基づいて当該監視結果の組み合わせに基づくデータを作成するものであることを特徴とする請求項1、2、3または5に記載の半導体製造装置。
【請求項7】
少なくとも2つの監視対象の監視結果の組み合わせに基づくデータは、各監視対象の監視結果である検出値を標準化した値の組み合わせに基づくデータであることを特徴とする請求項6記載の半導体製造装置。
【請求項8】
少なくとも2つの監視対象の監視結果の組み合わせに基づくデータは、各監視対象の監視結果である検出値を標準化した値を更に閾値により評価し、その評価結果の組み合わせであることを特徴とする請求項6記載の半導体製造装置。
【請求項9】
前記異常検出手段により装置の異常が検出されたときに、前記複数の監視対象の中からその異常に関連する少なくとも2つの監視対象を選択して監視結果の組み合わせを得るための選択手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一つに記載の半導体製造装置。
【請求項10】
選択手段は、表示画面を用いてオペレータが監視対象を選択できるように構成されていることを特徴とする請求項9記載の半導体製造装置。
【請求項11】
前記記憶部は、複数の監視対象の監視結果の組み合わせパターンに基づくデータのモデルと異常原因とその異常に関連するデータとを対応付けた異常判別データを記憶していることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか一つに記載の半導体製造装置。
【請求項12】
異常に関連するデータは、異常に対する対策を含み、
前記検索手段は、一致しているモデルが存在したときにはそのモデルに対応する異常原因に加えて対策を読み出して知らせることを特徴とする請求項11記載の半導体製造装置。
【請求項13】
装置の異常が検出されたときに一致しているモデルが存在しないときには、異常データを新たなパターンに基づくデータのモデルとして異常原因と対応付けて記憶部に登録するための登録手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし10のいずれか一つに記載の半導体製造装置。
【請求項14】
一の監視対象の値と他の監視対象の値との多数の組に基づいて2軸座標系に一の監視対象と他の監視対象との相関データを作成する相関データ作成手段と、
この相関データ作成手段により作成された相関データに基づいて2軸座標系に正常領域と異常領域との境界を定めた境界データを作成する境界データ作成手段と、を備えたことを特徴とする請求項1記載の半導体製造装置。
【請求項15】
前記一の監視対象の値と他の監視対象の値とを記憶する装置データ記憶部を備え、
相関データ作成手段は、前記装置データ記憶部に記憶されているデータに基づいて前記相関データを作成することを特徴とする請求項14記載の半導体製造装置。
【請求項16】
相関データを表示する表示手段を備えたことを特徴とする請求項14または15記載の半導体製造装置。
【請求項17】
表示手段は、相関データと境界データとを共通の2軸座標系に表示するものであることを特徴とする請求項16記載の半導体製造装置。
【請求項18】
境界データ作成手段は、近似式の種類を選択する手段と、選択された種類の近似式と前記相関データとに基づいて前記境界に対応する近似式を求める手段と、を備えたことを特徴とする請求項16または17記載の半導体製造装置。
【請求項19】
半導体装置を製造するために基板に対して処理を行うように構成された半導体製造装置に用いられるコンピュータプログラムであって、
複数の監視手段により夫々監視され、装置または処理の状態に影響を与える因子である複数の監視対象の中の一の監視対象と、この一の監視対象の大きさに関連する他の監視対象と、の値を夫々2軸に割り当てて2軸座標系に作成され、正常領域と異常領域との境界を定めた境界データを作成するステップと、
一の監視手段及び他の監視手段により夫々得られた一の監視対象の値と他の監視対象の値とで決まる前記2軸座標系における位置が前記正常領域に含まれているか異常領域に含まれているかを判断し、前記位置が異常領域に含まれているときには装置の異常を知らせる第1の異常検出ステップと、
前記複数の監視対象のうち互いに関連する複数の監視対象の値の演算結果に基づいて装置の異常を検出する第2の異常検出ステップと、
装置の異常が検出されたときに、前記複数の監視対象の中から選択された、その異常に関連する少なくとも2つの監視対象の監視結果の組み合わせに基づく異常データを作成するステップと、
このステップで作成された異常データに対して、複数の監視対象の監視結果の組み合わせに基づくデータのモデルと異常原因とを対応付けた異常判別データを記憶する記憶部を参照し、対応する監視対象について監視結果の組み合わせに基づくデータのモデルの中で一致しているモデルの有無を検索するステップと、
一致しているモデルが存在したときにはそのモデルに対応する異常原因を読み出して知らせるステップと、
を実行するように構成されたことを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項20】
前記複数の監視対象のいずれか一つの値に基づいて装置の異常を検出する第3の異常検出ステップを備えたことを特徴とする請求項19に記載のコンピュータプログラム。
【請求項21】
コンピュータプログラムにより実行されるステップ群は、他の監視対象の値を種々変えることにより取得した一の監視対象の値と他の監視対象の値との組により2軸座標系に一の監視対象と他の監視対象との相関データを作成するステップと、
この相関データに基づいて2軸座標系に正常領域と異常領域との境界を定めた境界データを作成するステップと、を更に備えたことを特徴とする請求項19または20記載のコンピュータプログラム。
【請求項22】
装置の異常が検出されたときに一致しているモデルが存在しないときには、検索の対象となった組み合わせに基づく異常データを新たな異常判別データにおけるモデルとして異常原因と対応付けて記憶部に登録するステップを含むことを特徴とする請求項19ないし21のいずれか一つに記載のコンピュータプログラム。
【請求項23】
請求項19ないし22のいずれか一つに記載のコンピュータプログラムを格納したことを特徴とする記憶媒体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−228911(P2006−228911A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−39869(P2005−39869)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】