半導体製造装置の管理装置、及びコンピュータプログラム
【課題】本発明は、得られたパターン画像等に基づいて、正確なプロセスモニタ可能とする半導体製造装置の管理装置、及びコンピュータプログラムの提供を目的とする。
【解決手段】上記目的を達成するための一態様として、複数の位置のパターンの形状情報と、露光装置の露光条件との関連を記憶するライブラリと、画像情報から抽出された複数の位置の形状情報と、ライブラリに記憶された形状情報を比較し、画像情報から抽出された複数のパターンの形状情報に相当する複数の露光条件の範囲の論理積に基づいて、前記露光条件を抽出する演算装置を備えた半導体製造装置の管理装置、及び上記処理を実行するコンピュータプログラムを提案する。
【解決手段】上記目的を達成するための一態様として、複数の位置のパターンの形状情報と、露光装置の露光条件との関連を記憶するライブラリと、画像情報から抽出された複数の位置の形状情報と、ライブラリに記憶された形状情報を比較し、画像情報から抽出された複数のパターンの形状情報に相当する複数の露光条件の範囲の論理積に基づいて、前記露光条件を抽出する演算装置を備えた半導体製造装置の管理装置、及び上記処理を実行するコンピュータプログラムを提案する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置の管理装置、及びその管理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムに係り、特に半導体パターンを露光する露光装置のプロセスモニタを可能とする半導体製造装置の管理装置、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、半導体デバイス製造に於ける微細化技術の進歩により、半導体ウェハ上に形成されるパターンが微細化し、このようなパターンを形成するために用いられる露光機には高NA(レンズ開口数)化が要求され、それによって形成されるパターンの変動要因も複雑化,増大化の傾向にある。
【0003】
このため、半導体の製造工程では露光装置の状態管理を常時行う必要があり、露光装置に異常があればその都度、露光装置の運用を中断し、装置の状態を調整する必要がある。露光装置には様々な変動要因があり、これらの変動要因によって、露光装置のFocus(焦点状態)及びDose(露光量の状態)が変動し、形成されるパターン形状が変化する。所望のパターン形状が転写できなくなると、半導体デバイスの歩留まりが低下するため、露光機の管理は正確に行う必要がある。
【0004】
特許文献1には、露光装置のプロセスモニタにおいて、露光量,焦点位置の変動による断面形状の変化が大きい孤立性の高いパターンを観測対象とすると共に、電子顕微鏡等によって取得した画像情報と、露光装置の露光条件を振って作成したモデルデータとを比較することにより、露光量と焦点位置の変動を推定する手法が提案されている。また、特許文献2にもパターンの断面形状に基づいて、プロセスモニタを行う手法が開示されている。更に特許文献3には、SEM像に基づいて得られた立体形状パターン画像の特徴量と推定モデルとを比較し、断面形状を正確に特定することによって、プロセスをモニタする手法が提案されている。更に特許文献4には、パターンの形状変化の大きな個所を、評価対象とするプロセスモニタが提案されている。また、特許文献5には、パターンの角部の丸まり等を評価対象とするパターン形状評価装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−064023号公報(対応米国特許USP6,929,892)
【特許文献2】特開2007−227618号公報(対応米国特許公開公報US2007/0198955)
【特許文献3】特開2007−129059号公報(対応米国特許公開公報US2007/0105243)
【特許文献4】特開2009−206453号公報(対応米国特許公開公報US2009/0231424)
【特許文献5】特開2006−126532号公報(対応米国特許USP7,449,689)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2,4には、パターンの形状変化の大きな個所や、断面形状の評価に基づいて、プロセス評価を行うこと、特許文献1,3には、更にパターンの断面形状とモデルを比較することによってプロセス評価を行うことが説明されているが、パターン評価によって特定されるフォーカス値や露光量が広がりを持つ可能性があることについての言及がない。また、特許文献5には形状評価をプロセスモニタに適用することについての開示がない。1つのモデルデータに対するフォーカス値や露光量は、広範囲に及ぶ可能性があるため、得られた形状データとモデルデータの単なる比較では、正確なフォーカス値や露光量を特定できない場合がある。
【0007】
更に、1次元的なパターン情報(寸法値)や3次元的なパターン形状(断面形状)情報によって、モデルを特定する手法では、やはり推定されるフォーカス値や露光量に幅があり、正確なフォーカス値や露光量を特定できない場合がある。
【0008】
以下に、得られたパターン画像等に基づいて、正確なプロセスモニタ可能とすることを目的とする半導体製造装置の管理装置、及びコンピュータプログラムを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための一態様として、パターンの屈曲部の曲率情報と、露光装置の露光条件、或いは露光条件を特定するために設けられたフラグとの関連を記憶するライブラリと、画像情報から抽出されたパターンの曲率情報と、ライブラリに記憶された曲率情報を比較し、当該画像情報から抽出されたパターンの曲率情報に相当する露光条件、或いはフラグを抽出する演算装置を備えた半導体製造装置の管理装置、及び上記処理を実行するコンピュータプログラムを提案する。
【0010】
また、上記目的を達成するための他の態様として、複数の位置のパターンの形状情報と、露光装置の露光条件、或いは露光条件を特定するために設けられたフラグとの関連を記憶するライブラリと、画像情報から抽出された複数の位置の形状情報と、ライブラリに記憶された形状情報を比較し、画像情報から抽出された複数のパターンの形状情報に相当する複数の露光条件の範囲、或いは露光条件の範囲を特定するために設けられた複数のフラグに基づいて得られる複数の露光条件の範囲の論理積に基づいて、前記露光条件を抽出する演算装置を備えた半導体製造装置の管理装置、及び上記処理を実行するコンピュータプログラムを提案する。
【発明の効果】
【0011】
上記構成によれば、露光装置の露光条件の正確な特定を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】半導体の製造工程における露光装置のフォーカスの変動を示す図。
【図2】露光条件のモニタを行うためのパターン形状の一例を説明する図。
【図3】モニターパターンライブラリの作成工程の概要を説明する図。
【図4】作成されたライブラリを用いて、露光量とフォーカス量を推定する工程の概要を例示する。
【図5】DF推定ライブラリに記憶された情報に基づいて形成される曲率と露光装置のフォーカス量との関係を示すグラフの一例を説明する図。
【図6】2つのパターンのライブラリと、曲率データを比較し、それぞれのパターンのフォーカス幅を算出する例を説明する図。
【図7】2つのパターンのフォーカス幅の重畳領域(AB_DWR,AB_DWL)を求める工程を説明する図。
【図8】ホワイトバンドに関する情報を用いて、露光条件の絞り込みを行う例を説明する図。
【図9】露光条件の絞り込みを行うための他のパターン情報を例示する図。
【図10】パターンの特徴量と、露光条件との関係を示す図。
【図11】パターンの特徴量と、露光条件との関係を示す図。
【図12】パターンの特徴量に基づいて、露光装置のドーズ量を推定する例を説明する図。
【図13】FDモニターパターンの概要を説明する図。
【図14】パターンの曲率を求める例を説明する図。
【図15】パターンの曲率を求める例を説明する図。
【図16】モニターパターンの一例を説明する図。
【図17】モニターパターンの一例を説明する図。
【図18】露光装置のフォーカス条件の変化によって、ホール間の間隔が変化する例を説明する図。
【図19】パターンの側壁情報を抽出する例を説明する図。
【図20】製品設計データにはないパターンを、モニターパターンとしてウェハ上に搭載する例を説明する図。
【図21】DF推定ライブラリを用いた露光条件推定工程を示すフローチャート。
【図22】露光条件を推定する演算装置の概要を説明する図。
【図23】ライブラリ記憶部に記憶されるライブラリの一例を説明する図。
【図24】複数の測定、或いは検査装置がネットワークに接続された測定,検査システムの概略説明図。
【図25】走査電子顕微鏡の概略構成図。
【図26】パターンエッジから輪郭線を抽出する工程を説明する図。
【図27】輪郭線抽出工程を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明者らは、フォーカス値や露光量の変動に基づく影響が、パターンのコーナー(異なる方向に長手方向を有する2つのパターン間の接続部等)や、パターンの角部(頂角部)に、形状の変化として大きく現れるという現象を新たに見出した。そこで、本実施例では、当該部分を形状評価の対象とすると共に、これらの個所と露光装置の露光条件との関連を記憶するライブラリを用意し、当該ライブラリを参照することによって、正確な露光条件を実現する半導体製造装置の管理装置、及びコンピュータプログラムを新たに提案する。
【0014】
また、発明者らは、設計データ上、異なる角度を有する複数の部位、角度は同じだけれども異なる位置に存在する部位等は、露光条件の変化に応じて異なる形状変化を示すことを新たに見出した。例えば設計データ上、L字型のパターンでは、パターンの屈曲部の内側部分(インナーコーナー)が270度に形成されているとすると、屈曲部の外側部分(アウターコーナー)は、90度(パターンが存在する側の角度)に形成されていることになる。このように異なる角度にて形成される部位は、露光条件の変化に応じて異なるパターン形状の変化を示す。そこで本実施例では、このような新たな知見に基づいて、複数のパターン部位を形状評価対象とすると共に、当該評価結果に基づいて得られる露光条件の論理積を求めることで、露光条件の絞り込みを行う半導体製造装置の管理装置、及びコンピュータプログラムを提案する。また、一方で、同じ形状の複数のパターンを採用することによって、平均化による再現性を高めることもできる。
【0015】
なお、本実施例では、露光状態を把握するための専用のモニターパターンを用いて露光状態を評価する手法について説明するが、半導体デバイスの回路を構成するパターンに、モニターパターンに相当するパターンが存在するのであれば、それを用いて露光条件の評価を行うようにしても良い。
【0016】
また、上記ライブラリは、ライブラリ作成用のパターンについて、異なる焦点条件及び露光量条件の組み合わせ毎に、露光を行い、当該露光によって形成されたパターンについて、走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いて画像取得を行うことによって、作成する。より具体的には、異なる焦点条件と異なる露光量条件に基づいて、フォーカスドーズマトリックス(FEM(Focus Exposure Matrix)と称することもある)ウェハを作成し、異なる露光条件にて形成されたパターンの同一個所のSEM画像から、ライブラリ形成に必要な情報を抽出するライブラリ作成工程を経て作成する。
【0017】
作成されたライブラリを用いて、実際にモニタしたい被測定パターンから種々の情報を取り込み、ライブラリ情報と被測定パターン情報を対比し、互いの情報がもっとも近い焦点,露光量条件を導出する焦点,露光量条件をモニタする。このようなモニタに基づいて、露光装置(スキャナー、或いはステッパ)の変動を、インライン(量産工程)で捉えることが可能となる。
【0018】
図1に例示するように、半導体の製造工程では、露光装置のステージチルトやウェハチャック異常,フォーカスセンサー異常等の要因により経時的に露光されるパターン形状が変化する場合がある。これらの変動要因により、フォーカスの微小なずれ(フォーカスオフセット)やチップ内での微小な形状バラつき等、変動が常時発生している(フォーカス変動許容範囲)。
【0019】
しかし、この許容範囲内であってもチップ内での形状バラつきが大きくなるとパターンのでき栄えの均一性の観点から調整が必要となってくる。また、フォーカスセンサーの異常等により、許容範囲を超えるパターンが転写される場合もある。従って、これらの変動の状態を常に監視しておくことが安定的に半導体を製造する上で極めて重要である。露光装置の管理のために、専用のウェハを用いて露光を行い、その露光された転写パターンの1次元の寸法測定を、CD−SEM(Critical Dimension-SEM)を用いて行うことで露光装置の変動を監視する手法が知られている。また、OCD(光学式CD計測手法)等を用いて露光装置の管理を行うことも可能であるが、OCDは平均化計測を行うため、比較的広い面積に大量の同一形状の1次元パターンを形成する必要があり、やはり専用のウェハが必要となる。また、OCDによる計測では、1次元のラインパターンしか扱うことができないためフォーカスやドーズの変動に対する感度が十分とは言えずまた、2次元形状を考慮したフォーカスとドーズの正確な管理には不向きとなっている。
【0020】
また、生産効率の観点から見ると、量産工程において上記の様な管理のために露光装置を停止することは生産性の観点から極力避ける必要があり、また、このための専用ウェハを用いることも避ける必要がある。
【0021】
本実施例では、主にパターンの1次元情報や3次元情報ではなく、図2に例示するように、パターンのコーナーを含む部分の形状(即ち2次元形状)をモニタの対象としている。コーナー部は、露光装置のフォーカス条件の変動に対し、敏感に反応するため、当該部分をモニタすることによって、高精度な露光条件推定が可能となる。
【0022】
図24は、複数の測定、或いは検査装置がネットワークに接続された測定,検査システムの概略説明図である。当該システムには、主に半導体ウェハのパターン寸法を測定するCD−SEM2401、フォトマスクのパターン寸法を測定するCD−SEM2402、欠陥の位置情報に基づいて欠陥を検査する欠陥レビュー用SEM(Defect Review-SEM:DR−SEM2403)が含まれている。またネットワークには、後述する露光装置の管理用制御部を内蔵する管理装置2404、半導体デバイスの設計データと、半導体製造装置の製造条件等に基づいて、パターンのでき栄えをシミュレーションするシミュレーター2405、及び半導体デバイスのレイアウトデータや製造条件が登録された設計データが記憶される記憶媒体2406が接続されている。
【0023】
設計データは例えばGDSフォーマットやOASISフォーマットなどで表現されており、所定の形式にて記憶されている。なお、設計データは、設計データを表示するソフトウェアがそのフォーマット形式を表示でき、図形データとして取り扱うことができれば、その種類は問わない。また、記憶媒体2406は測定装置,検査装置の制御装置、或いは管理装置2404,シミュレーター2405に内蔵するようにしても良い。
【0024】
なお、CD−SEM2401,2402、及びDR−SEM2403には、それぞれの制御装置が備えられ、各装置に必要な制御が行われるが、これらの制御装置に、上記シミュレーターの機能や測定条件等の設定機能を搭載するようにしても良い。
【0025】
SEMでは、電子源より放出される電子ビームが複数段のレンズにて集束されると共に、集束された電子ビームは走査偏向器によって、試料上を一次元的、或いは二次元的に走査される。
【0026】
電子ビームの走査によって試料より放出される二次電子(Secondary Electron:SE)或いは後方散乱電子(Backscattered Electron:BSE)は、検出器により検出され、前記走査偏向器の走査に同期して、フレームメモリ等の記憶媒体に記憶される。このフレームメモリに記憶されている画像信号は、制御装置内に搭載された演算装置によって積算される。また、走査偏向器による走査は任意の大きさ,位置、及び方向について可能である。
【0027】
以上のような制御等は、各SEMの制御装置にて行われ、電子ビームの走査の結果、得られた画像や信号は、通信回線ネットワークを介して管理装置2404に送られる。なお、本例では、SEMを制御する制御装置と、管理装置2404を別体のものとして、説明しているが、これに限られることはなく、管理装置2404にて装置の制御と測定処理を一括して行うようにしても良いし、各制御装置にて、SEMの制御と測定処理を併せて行うようにしても良い。
【0028】
また、上記管理装置2404或いは制御装置には、測定処理を実行するためのプログラムが記憶されており、当該プログラムに従って測定、或いは演算が行われる。
【0029】
また、管理装置2404は、SEMの動作を制御するプログラム(レシピ)を、半導体の設計データに基づいて作成する機能が備えられており、レシピ設定部として機能する。具体的には、設計データ,パターンの輪郭線データ、或いはシミュレーションが施された設計データ上で所望の測定点,オートフォーカス,オートスティグマ,アドレッシング点等のSEMにとって必要な処理を行うための位置等を設定し、当該設定に基づいて、SEMの試料ステージや偏向器等を自動制御するためのプログラムを作成する。
【0030】
図25は、走査電子顕微鏡の概略構成図である。電子源2501から引出電極2502によって引き出され、図示しない加速電極によって加速された電子ビーム2503は、集束レンズの一形態であるコンデンサレンズ2504によって、絞られた後に、走査偏向器2505により、試料2509上を一次元的、或いは二次元的に走査される。電子ビーム2503は試料台2508に内蔵された電極に印加された負電圧により減速されると共に、対物レンズ2506のレンズ作用によって集束されて試料2509上に照射される。
【0031】
電子ビーム2503が試料2509に照射されると、当該照射個所から二次電子、及び後方散乱電子のような電子2510が放出される。放出された電子2510は、試料に印加される負電圧に基づく加速作用によって、電子源方向に加速され、変換電極2512に衝突し、二次電子2511を生じさせる。変換電極2512から放出された二次電子2511は、検出器2513によって捕捉され、捕捉された二次電子量によって、検出器2513の出力が変化する。この出力に応じて図示しない表示装置の輝度が変化する。例えば二次元像を形成する場合には、走査偏向器2505への偏向信号と、検出器2513の出力との同期をとることで、走査領域の画像を形成する。なお、図25の例では試料から放出された電子を変換電極にて一端変換して検出する例について説明しているが、無論このような構成に限られることはなく、例えば加速された電子の軌道上に、電子倍像管や検出器の検出面を配置するような構成とすることも可能である。
【0032】
制御装置2515は、走査電子顕微鏡の各構成を制御すると共に、検出された電子に基づいて画像を形成する機能や、ラインプロファイルと呼ばれる検出電子の強度分布に基づいて、試料上に形成されたパターンのパターン幅を測定する機能を備えている。
【0033】
図24に例示した管理装置2404では、主に3つの作業が行われる。まず第1に異なる露光条件ごとに得られるパターンの形状情報と、露光条件との関連を記憶するライブラリを作成すること、第2にSEM等によって得られた画像に基づいて、パターンの形状情報を取得すること、第3に取得された形状情報と、予め記憶されたライブラリとの突合せを行うことによって、露光装置の露光条件(露光量(ドーズ(Dose)、或いはエクスポージャー(Exposure)とも言う)と、焦点位置(フォーカス(Focus)量とも言う))を推定することである。
【0034】
図3及び図4に、モニターパターンライブラリの作成工程の概要、及び作成されたライブラリを用いて、露光量とフォーカス量を推定する工程の概要を説明する。まず、予め露光量とフォーカス量を推定するために用いるパターン(FD Monitor(Focus Dose Monitor)パターン)を用意する。レイアウトデータ上では、同じ形状であっても、露光条件を変えることによって、パターンの形状は変化するため、露光装置の露光条件を変化させて、異なる露光条件ごとに、パターン形成を行う。一例としてFEMウェハを作成することによって、異なる露光条件のパターンを作成する。このようにして形成された露光条件ごとのパターンについて、SEM画像を取得し、ライブラリにパターンの形状情報と関連付けて、露光条件を記憶する。図3の例では、パターンの異なる部位(コーナータイプA,コーナータイプB)と、異なる露光条件(製造条件)との関連を記憶する。
【0035】
ライブラリ作成の段階ではドーズとフォーカスの推定(DF推定)を行うモニターパターンを露光しこのパターンの各種特徴量をDF推定ライブラリに登録する。本実施例では、フォーカス変化に対し高い感度を示す十字形状パターンや複数の角部を有するパターン等、角度のあるコーナーパターンを有するモニターパターンをウェハ上に転写し、それぞれのパターンのSEM画像取得に基づいて、ライブラリを作成する。
【0036】
本実施例では上記ウェハは、ライブラリ作成専用のものであり、製品デバイスのレイヤ(拡散工程,ポリシリコン工程,第一メタルと言った半導体を構成する各層)毎に、所望の光学条件(NA等)で作成するものである。
【0037】
以上のようにして形成されたモニターパターンの部位ごとの情報を、ライブラリに登録する情報として抽出する。具体的には、コーナー部を構成するパターンの曲率や、パターンの線幅を演算し、当該曲率や線幅等の情報と、露光条件とを関連付けてライブラリに登録する。曲率は図14に例示するように、SEM画像から抽出した輪郭線に基づき算出する。具体的には、図26に例示するように、SEM像上のパターンのホワイトバンド2601の輝度分布情報2603に基づいて、輪郭線を抽出する。輝度分布情報2603は、輝度分布抽出領域2602の輝度変化の抽出に基づき作成する。図27は、輪郭線の抽出工程を説明するフローチャートである。
【0038】
輪郭線抽出は、管理装置2404に搭載された演算装置にて行うようにしても良いし、SEMに接続された制御装置にて行うようにしても良い。輪郭線抽出では、図27のフローチャートに例示するように、先ず、走査電子顕微鏡を用いて、SEM画像を形成する(ステップ2701)。次にSEM画像上のホワイトバンド2601から輝度情報分布情報に基づいて、第1の輪郭線を抽出する(ステップ2702)。なお、この第1の輪郭線の抽出手法としては、SEM像からビットマップデータで構成されたパターン像を抽出し、そのパターン像をベクトルデータで構成されたパターンデータに変換する方法が考えられる。
【0039】
次に、形成された第1の輪郭線とレイアウトデータ2604とのベクトルデータ比較、或いはパターンマッチングによって、レイアウトデータ2604と第1の輪郭線との重ね合わせ(対応付け)を行う(ステップ2703)。レイアウトデータ2604は、GDSフォーマット等で記憶された設計データの線分情報である。このような重ね合わせを行った上で、輝度分布情報収集領域を、第1の輪郭線2604と垂直になるように設定し、輝度分布を検出する(ステップ2704)。このように形成された輝度分布の所定の明るさを持つ画素を抽出しその位置を第2の輪郭線位置と定義することで、より正確な輪郭線の形成が可能となる(ステップ2705)。
【0040】
なお、このような正確な輪郭線形成手法は、特開昭60−169977号公報,特開平6−325176号公報,特開平8−161508号公報,特開平9−204529号公報等に記載された既存の手法の適用が可能である。
【0041】
また、上述の例では、実際にモニターパターンを露光し、得られたパターンのSEM画像に基づいて、パターン形状の特徴量を算出しているが、これに限られることはなく、例えば、シミュレーター2405を用いた露光シミュレーション等によっても、上記ライブラリの作成が可能である。また、SEM画像によって得られた形状情報と、シミュレーターを用いて求められた形状情報の双方を用いて、ライブラリを作成することも可能である。また、両者の情報をライブラリに記憶しておき、実際の計測時に両者の情報を組み合わせることによって、露光条件の絞り込みを行うことも可能である。
【0042】
図22は、管理装置2404内部の演算装置の概要を説明する図である。演算装置2201内には、CD−SEM2401等からの画像データを取得するためのSEM画像取得部2202と、当該画像データを記憶する取得画像記憶部2209が設けられている。輪郭線抽出部2203は、得られたSEM画像から、図27に例示するような工程を経て輪郭線情報を抽出する。抽出された輪郭線に関する情報は、輪郭線データ記憶部2210に記憶される。なお、SEM画像取得部2202や輪郭線抽出部2203は、SEMに設けられた制御装置に搭載しても良く、演算装置2201は、SEMに設けられた制御装置から、必要な情報を選択的に取得するようにしても良い。
【0043】
ライブラリ作成部2204は、図3に例示したような工程を経て、ライブラリを作成する。パターンの部位ごとの形状情報と、製造情報を関連づけてライブラリを作成し、その関連情報を、ライブラリ記憶部2211に記憶する。曲率演算部2205は、ライブラリ作成に供される形状情報の1つである曲率データを、輪郭線データ記憶部2210に記憶された輪郭線データに基づいて演算する。パターンのコーナー部の曲率は、例えば得られた輪郭線に既知の曲率を持つ複数のカーブをフィッティングさせ、最も輪郭線に近いカーブの曲率を当該輪郭線の曲率として、決定するようにしても良いし、他の既知の曲率判定法を適用するようにしても良い。このようにして決定された曲率に関する情報は、製造条件に関する情報と共に、ライブラリに記憶される。比較演算部2206は、半導体の量産工程等にて形成されたパターンの輪郭線データに基づいて抽出された曲率データと、ライブラリに記憶された曲率データとを比較し、後述するように適合するドーズ量等の決定を行う。このようにして決定されたドーズ量に関する情報は、演算結果記憶部2212に記憶される。この比較工程では、ライブラリに記憶された曲率データに所定の幅を持たせておき、当該曲率データ幅に適合する曲率データが得られたときに、当該曲率データをライブラリに記憶された曲率データであると判定するようにしても良い。
【0044】
露光条件範囲特定部2207は、演算結果記憶部2212に記憶されたドーズ量に基づいて、フォーカス範囲を決定する。詳細は後述する。また、絞込み部2208では、後述するような手法に基づいて、フォーカス範囲等の絞り込みを行う。なお、本実施例では、ライブラリには露光条件がパターンの形状情報(曲率データ等)と関連付けて記憶される例について説明するが、これに限られることはなく、各露光条件を示すフラグと、形状情報を関連付けて記憶し、当該フラグを特定することによって、結果として露光条件を特定するようにしても良い。このような場合、当該フラグと露光機のコンディションとの関係を露光機コンディション記憶部2213に記憶しておき、フラグの特定に基づいて、露光機条件を読み出すようにしても良い。
【0045】
なお、図22の例では演算装置内に、記憶媒体が内蔵され、必要に応じて、演算部が記憶部にアクセス可能となるように構成されているが、記憶媒体を外部に設置し、必要に応じて演算装置がアクセスするようにしても良い。
【0046】
図23は、ライブラリ記憶部2211に記憶されるライブラリの一例を説明する図である。本例では、製造条件,パターン形状(例えばコーナータイプ),露光機の条件,曲率データ、及び他の露光機条件を絞り込むのに用いられる他のパターン形状情報等が関連付けて記憶される。パターンの形状情報の詳細については後述する。
【0047】
図4は、実際に露光装置を用いて、半導体ウェハを量産している過程において、作成されたライブラリを用いて、露光量とフォーカス量を推定する工程の概要を説明する図である。本実施例では、ウェハ上に、実際に半導体デバイスを形成するパターンと、FDモニターパターンを混在させる例について説明するが、これに限られることはなく、例えばFDモニターパターンに相当する実パターンを用いて、露光条件の評価を行うようにしても良い。
【0048】
図4の例は、FDモニタの画像を取得する画像取得条件を、レシピ作成装置によって作成する例を示している。FDモニターパターンは、設計データ(レイアウトデータ)にも記憶されているため、その座標情報に基づいて画像取得条件を決定することができる。本実施例では管理装置2404はレシピ作成装置として機能する。
【0049】
演算装置は、量産ウェハの製造工程において形成されたモニターパターンの各部位について、線幅およびコーナー部を構成するパターンの曲率を算出する。尚、この演算の対象となるチップは上記のライブラリ作成の段階で用いたFEMウェハとは異なり、製品デバイスの製造用に最適化されたドーズおよびフォーカスに調整された均一条件のウェハであるため、プロセスウインドウとして規定されている領域の範囲内のチップを対象とする。
【0050】
量産工程で製造されたウェハを用いて、当該ウェハがどの様なドーズとフォーカスで露光されたかを推定するには、上述のようにFDモニターパターンを用いて、ライブラリ作成の段階で算出された曲率との相関を求め、最も一致する曲率と関連づけて記憶された露光条件が、その推定値となる。
【0051】
この際、一致する曲率がライブラリ内に複数検出された場合は、線幅測定の際に算出されたSEM画像のホワイトバンドを推定の指標として加え、このホワイトバンドの傾きと曲率から一致するフォーカスを決定することもできる。
【0052】
次に、製品ウェハに搭載されたモニターパターンの線幅の計測値からライブラリを検索し、一致するドーズ値を算出する。この際、複数のドーズ値が算出された場合、上記で決定したフォーカス値と線幅の計測値から最も一致するドーズ値を真の値として推定を行うようにしても良い。
【0053】
この結果、推定によって得られたフォーカス値とドーズ値が、予め設定されている最適値と異なる場合、露光装置の調整等の装置管理の作業を行い、製品製造工程の状態を維持する作業を行う。
【0054】
図4に例示する調整量演算部は、導出された推定露光条件と、理想的な露光条件との差異を算出し、その値を調整量として出力する。調整量演算部は、露光装置に設けても良いし、管理装置2404に内蔵するようにしても良い。
【0055】
以上のような構成によれば、製品デバイス毎の露光装置調整のためのレシピ作成の効率化を実現することができる。製品デバイスを新規に製造する際に、予め調整されている露光装置の状態を把握するために、上述のような推定方法を用いることによって、露光装置の稼動を制御するレシピの調整作業を効率化することができる。本方式を用いてウェハの全面に及ぶモニターパターンを用いて、露光装置のドーズとフォーカスを推定しウェハ面内のパターン仕上がり均一性の評価を行い、所望のでき栄えの達成状況を把握し、レシピの検証を行いレシピの調整を行うことが可能となる。
【0056】
また、量産工程において、FDモニターパターンの評価を行うことによって、露光装置の迅速な管理を行うことができ、生産効率を下げること無く歩留まりの維持を図ることが可能となる。
【0057】
更に、パターンでき栄えが悪化している場合、推定異常結果が得られるため、この異常値を用いることで、パターン製造プロセス異常を検知することができ、プロセス改善の施策を講じることが可能となる。
【0058】
以下、より具体的に、露光装置の露光条件推定法について説明する。図5はDF推定ライブラリに記憶された情報に基づいて形成される曲率と露光装置のフォーカス量との関係を示すグラフの一例である。本例では、異なるドーズ量毎に、曲率の変化とフォーカス量の変化との関係を示すカーブを形成している。このようなDF推定ライブラリを用いた露光条件推定工程を示すフローチャートを図21に例示する。先ず、対象となるFDモニターパターンのSEM画像を取得する(ステップ2101)。次に先述した手法等を用いてパターンエッジの輪郭線化を行う(ステップ2102)。そして、FDモニターパターンの各種コーナー部位(ROI:Region Of Interest)の曲率をターゲットの曲率として算出する(ステップ2103)。この曲率を求める基準の位置として、図15に例示するように、設計データを基準として決定した任意の位置から、延びると共に、輪郭線に対して法線となる複数の直線(基準線L,M,N)と、輪郭線の交点を輪郭線判定の基準位置として設定することも可能である輪郭線判定の基準位置を複数設けることによって、輪郭線の曲率演算精度を高めることができる。
【0059】
次にこの算出されたターゲットの曲率データと、ライブラリ内に記憶された当該ターゲットと同一個所のパターン部位の曲率データを比較する(ステップ2104)。なお、ライブラリには、複数のドーズ毎の曲率データと、フォーカス値が関連付けて記憶されている。即ち、1の曲率に対し、複数のフォーカス量がライブラリに記憶されている場合がある。即ち、図5に例示するように、ある曲率に対し、複数のドーズ量がライブラリデータ上で関連し、当該複数のドーズ量に関連するフォーカス値は幅を持つことになる。また、フォーカス値がマイナス(アンダーフォーカス)のときと、プラス(オーバーフォーカス)のときの双方で、ある幅を持ったフォーカス値が検出される。本実施例では、マイナス側の或る曲率データを持つフォーカス値の幅を、X_DWR,プラス側の或る曲率データを持つフォーカス値の幅を、X_DWLと定義する。Xはパターンの種類によって変化する変数である。
【0060】
ステップ2104にて実施したライブラリとの比較を、所定のパターン数、或いは所定のパターン部位毎に実行する(ステップ2105)。このように複数の評価対象について、X_DWR,X_DWLに相当するデータを算出する。図6は、2つのパターン(パターンA,パターンB)のライブラリと、曲率データを比較し、それぞれのパターンのフォーカス幅(A_DWR,A_DRL)、及び(B_DWR,B_DRL)を算出した例を示している。
【0061】
このようにして求められた複数パターンのフォーカス幅の論理積を求めることによって、DWRとDWLの絞り込みを行う(ステップ2106)。図7は、2つのパターンのフォーカス幅の重畳領域(AB_DWR,AB_DWL)を求める工程を例示している。
【0062】
以上のように、フォーカス条件の変化に応じて異なる変化を示すパターン或いはパターン部位毎に、フォーカス幅を求め、その論理積を計算することで、フォーカス幅を絞り込むことができ、結果として、正確なフォーカスの特定(ステップ2107)を行うことができる。なお、本実施例では、2つの異なるパターン、或いはパターン部位をターゲットとした例を説明したが、これに限られることはなく、例えば3つ以上のパターン部位を用いた絞り込みを行うようにしても良い。ターゲットの数が多いほど、より狭い範囲までフォーカス幅を絞り込むことができる。
【0063】
なお、本実施例では、図21に例示する工程を経て抽出されたフォーカス幅がまだ十分に絞り込めておらず、ある幅を持っているケースを説明している。以下に、上述のような工程を経ても、まだ、露光装置条件が十分に絞り込めない場合に、更にその絞り込みを実現するための手法を説明する。図8はその概要を説明する図である。本例では、曲率データ以外のデータを用いて、更なる絞り込みを行う手法を説明する。図8は、パターンエッジのホワイトバンドの情報に基づいて、フォーカス幅の絞り込みを行う手法を例示している。この手法を採用するためには、予め、ライブラリにパターンの任意の位置のホワイトバンドの情報(ホワイトバンドの幅,輝度変化情報等のホワイトバンドに関する指標値)と、露光装置の露光条件に関する情報を関連付けて記憶しておく必要がある。実際に取得されたSEM画像から抽出したホワイトバンドに関する情報と、ライブラリを比較し、当該ホワイトバンドに関する情報と関連するフォーカスデータを抽出し、上記絞り込みに用いることによって、更に正確なフォーカス量の特定を行うことが可能となる。
【0064】
以上のように、露光条件の変化に対して敏感に反応するパターンの屈曲部に存在する曲率を用いた絞り込みを行いつつも、他のパターン情報を加味することによって、更に正確な露光条件の推定を行うことが可能となる。
【0065】
図9は、露光条件の絞り込みを行うための他のパターン情報を例示した図である。ライブラリには、図9に例示するような9つの情報の少なくとも1つを登録しておき、SEM画像から抽出された情報との比較を行うことによって、露光条件の絞り込みを行うようにしても良い。図9は、SEM画像に基づいて得られるラインプロファイルから、Bottom CD(BCD),Top CD(TCD),Peak CD(PCD),Right White Band(RWB),Right Top Rounding(RTR),Right Bottom Footing(RBF),Left White Band(LWR),Left Top Rounding(LTR),Left Bottom Footing(LBF)が抽出可能であることを示している。これらの情報は、ラインプロファイルから得られる情報であり、ライブラリ作成時、或いは実際の測定時に抽出可能な情報である。
【0066】
図10,図11に例示するように、露光装置のフォーカス値との関係において特にホワイトバンドは、リニアな変化を示すため、露光条件の絞り込みに適用するのに好適である。
【0067】
次に、先に推定した推定フォーカス値に基づいて、ドーズ量を推定する手法を、図12を用いて説明する。本例では、先に算出した推定フォーカス値と、ターゲットの寸法値(CD値)を用いて、ドーズ量を推定する。より具体的には、推定されたフォーカス値に相当する複数のドーズ量(或いはドーズ幅)の中から、CD値が合致するものを、推定ドーズ量とする。ライブラリには、ドーズ量とCD値(図9に例示する寸法値等)が関連付けて記憶されているため、SEM画像から得られるCD値を当該ライブラリに突き合わせることによって、正確なドーズ量の特定が可能となる。
【0068】
本実施例では、主に量産される試料(半導体ウェハ)上に、実際に半導体パターンを形成するパターンとは別に、モニターパターンを形成する例を説明した。このようなモニターパターンの好適な条件としては、以下のようなものが挙げられる。
【0069】
例えば、図13に例示するように、2次元情報を特定するための複数の屈曲部が存在すること、チップ内に複数配置が可能であること、デバイスチップ内に配置が可能であること、デバイスチップ内に配置が可能であること、及びスキャナ等の露光装置のショット内の情報が得られること等が、好適な条件として挙げられる。
【0070】
更に、推定のための情報量を増やすために、パターンの屈曲部の曲率等の2次元情報だけではなく、寸法値のような1次元情報や、断面形状のような3次元情報を抽出し得るものであることが挙げられる。また、走査電子顕微鏡の測定倍率に収まる大きさのパターンとすることによって、計測時間を抑制することができる。また、曲率データを得るパターンとは別に、コンタクトホールのホール間の距離も絞り込みを行うための情報として採用することによって、推定精度を向上することができる。図18に例示するように、露光装置のフォーカス条件が変化すると、ホール間間隔が変化する傾向を示すため、露光条件の絞り込みを行うための好適なパラメータであると言える。
【0071】
また、図16,図17に例示するように、パターンのコーナーの数が多く、また、コーナーの角度に多くのバリエーションが多いパターンを採用することによって、絞り込みの精度を高めることができ、更に同一形状(方向)のコーナーの情報を複数用いることによって、平均化による再現性向上をも実現することが可能となる。更にコーナー部と直線部分を評価対象とすることによって、両者は露光条件の変化によって異なる挙動を示すと考えられるため、異なる指標に基づく絞り込みを行うことが可能となる。
【0072】
また、1次元情報や2次元情報と併せて、3次元情報を絞り込みのための情報として適用するために、図19に例示するように、パターンエッジの側壁の形状情報をライブラリに記憶し、側壁の形状情報を用いて露光条件の絞り込みを行うようにしても良い。図19は、輪郭線抽出に用いたパターンの各部位のプロファイル波形に基づいて、エッジ部分に関し、各部位の高さ方向の情報を求め、当該側壁情報を、ライブラリに記憶することによって、絞り込みのための指標とする例を説明している。
【0073】
図20は、製品設計データにはないパターンを、モニターパターンとしてウェハ上に搭載する例を説明する図である。
【0074】
モニターパターンの配置場所として、レイアウト上空いた場所やCMPのためのダミーパターンの周辺等の回路的に意味を成さない領域を用いる。
【0075】
モニターパターンの測定のためのレシピ作成については、モニターパターンを配置した位置の座標を入力として設計データを解析することによりアドレッシング位置及びオートフォーカス位置と言った測定のための一連のレシピ情報を自動生成することができる。
【0076】
また、先に述べた様に十字パターン等のコーナー部等の個別の測定部位(ROI)の自動認識も設計データ上で認識することができるため、オフラインでの完全自動化されたモニタのためのレシピ生成が可能となる。
【符号の説明】
【0077】
2401,2402 CD−SEM
2403 欠陥レビュー用SEM
2404 管理装置
2405 シミュレーター
2406 記憶媒体
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置の管理装置、及びその管理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムに係り、特に半導体パターンを露光する露光装置のプロセスモニタを可能とする半導体製造装置の管理装置、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、半導体デバイス製造に於ける微細化技術の進歩により、半導体ウェハ上に形成されるパターンが微細化し、このようなパターンを形成するために用いられる露光機には高NA(レンズ開口数)化が要求され、それによって形成されるパターンの変動要因も複雑化,増大化の傾向にある。
【0003】
このため、半導体の製造工程では露光装置の状態管理を常時行う必要があり、露光装置に異常があればその都度、露光装置の運用を中断し、装置の状態を調整する必要がある。露光装置には様々な変動要因があり、これらの変動要因によって、露光装置のFocus(焦点状態)及びDose(露光量の状態)が変動し、形成されるパターン形状が変化する。所望のパターン形状が転写できなくなると、半導体デバイスの歩留まりが低下するため、露光機の管理は正確に行う必要がある。
【0004】
特許文献1には、露光装置のプロセスモニタにおいて、露光量,焦点位置の変動による断面形状の変化が大きい孤立性の高いパターンを観測対象とすると共に、電子顕微鏡等によって取得した画像情報と、露光装置の露光条件を振って作成したモデルデータとを比較することにより、露光量と焦点位置の変動を推定する手法が提案されている。また、特許文献2にもパターンの断面形状に基づいて、プロセスモニタを行う手法が開示されている。更に特許文献3には、SEM像に基づいて得られた立体形状パターン画像の特徴量と推定モデルとを比較し、断面形状を正確に特定することによって、プロセスをモニタする手法が提案されている。更に特許文献4には、パターンの形状変化の大きな個所を、評価対象とするプロセスモニタが提案されている。また、特許文献5には、パターンの角部の丸まり等を評価対象とするパターン形状評価装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−064023号公報(対応米国特許USP6,929,892)
【特許文献2】特開2007−227618号公報(対応米国特許公開公報US2007/0198955)
【特許文献3】特開2007−129059号公報(対応米国特許公開公報US2007/0105243)
【特許文献4】特開2009−206453号公報(対応米国特許公開公報US2009/0231424)
【特許文献5】特開2006−126532号公報(対応米国特許USP7,449,689)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2,4には、パターンの形状変化の大きな個所や、断面形状の評価に基づいて、プロセス評価を行うこと、特許文献1,3には、更にパターンの断面形状とモデルを比較することによってプロセス評価を行うことが説明されているが、パターン評価によって特定されるフォーカス値や露光量が広がりを持つ可能性があることについての言及がない。また、特許文献5には形状評価をプロセスモニタに適用することについての開示がない。1つのモデルデータに対するフォーカス値や露光量は、広範囲に及ぶ可能性があるため、得られた形状データとモデルデータの単なる比較では、正確なフォーカス値や露光量を特定できない場合がある。
【0007】
更に、1次元的なパターン情報(寸法値)や3次元的なパターン形状(断面形状)情報によって、モデルを特定する手法では、やはり推定されるフォーカス値や露光量に幅があり、正確なフォーカス値や露光量を特定できない場合がある。
【0008】
以下に、得られたパターン画像等に基づいて、正確なプロセスモニタ可能とすることを目的とする半導体製造装置の管理装置、及びコンピュータプログラムを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための一態様として、パターンの屈曲部の曲率情報と、露光装置の露光条件、或いは露光条件を特定するために設けられたフラグとの関連を記憶するライブラリと、画像情報から抽出されたパターンの曲率情報と、ライブラリに記憶された曲率情報を比較し、当該画像情報から抽出されたパターンの曲率情報に相当する露光条件、或いはフラグを抽出する演算装置を備えた半導体製造装置の管理装置、及び上記処理を実行するコンピュータプログラムを提案する。
【0010】
また、上記目的を達成するための他の態様として、複数の位置のパターンの形状情報と、露光装置の露光条件、或いは露光条件を特定するために設けられたフラグとの関連を記憶するライブラリと、画像情報から抽出された複数の位置の形状情報と、ライブラリに記憶された形状情報を比較し、画像情報から抽出された複数のパターンの形状情報に相当する複数の露光条件の範囲、或いは露光条件の範囲を特定するために設けられた複数のフラグに基づいて得られる複数の露光条件の範囲の論理積に基づいて、前記露光条件を抽出する演算装置を備えた半導体製造装置の管理装置、及び上記処理を実行するコンピュータプログラムを提案する。
【発明の効果】
【0011】
上記構成によれば、露光装置の露光条件の正確な特定を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】半導体の製造工程における露光装置のフォーカスの変動を示す図。
【図2】露光条件のモニタを行うためのパターン形状の一例を説明する図。
【図3】モニターパターンライブラリの作成工程の概要を説明する図。
【図4】作成されたライブラリを用いて、露光量とフォーカス量を推定する工程の概要を例示する。
【図5】DF推定ライブラリに記憶された情報に基づいて形成される曲率と露光装置のフォーカス量との関係を示すグラフの一例を説明する図。
【図6】2つのパターンのライブラリと、曲率データを比較し、それぞれのパターンのフォーカス幅を算出する例を説明する図。
【図7】2つのパターンのフォーカス幅の重畳領域(AB_DWR,AB_DWL)を求める工程を説明する図。
【図8】ホワイトバンドに関する情報を用いて、露光条件の絞り込みを行う例を説明する図。
【図9】露光条件の絞り込みを行うための他のパターン情報を例示する図。
【図10】パターンの特徴量と、露光条件との関係を示す図。
【図11】パターンの特徴量と、露光条件との関係を示す図。
【図12】パターンの特徴量に基づいて、露光装置のドーズ量を推定する例を説明する図。
【図13】FDモニターパターンの概要を説明する図。
【図14】パターンの曲率を求める例を説明する図。
【図15】パターンの曲率を求める例を説明する図。
【図16】モニターパターンの一例を説明する図。
【図17】モニターパターンの一例を説明する図。
【図18】露光装置のフォーカス条件の変化によって、ホール間の間隔が変化する例を説明する図。
【図19】パターンの側壁情報を抽出する例を説明する図。
【図20】製品設計データにはないパターンを、モニターパターンとしてウェハ上に搭載する例を説明する図。
【図21】DF推定ライブラリを用いた露光条件推定工程を示すフローチャート。
【図22】露光条件を推定する演算装置の概要を説明する図。
【図23】ライブラリ記憶部に記憶されるライブラリの一例を説明する図。
【図24】複数の測定、或いは検査装置がネットワークに接続された測定,検査システムの概略説明図。
【図25】走査電子顕微鏡の概略構成図。
【図26】パターンエッジから輪郭線を抽出する工程を説明する図。
【図27】輪郭線抽出工程を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明者らは、フォーカス値や露光量の変動に基づく影響が、パターンのコーナー(異なる方向に長手方向を有する2つのパターン間の接続部等)や、パターンの角部(頂角部)に、形状の変化として大きく現れるという現象を新たに見出した。そこで、本実施例では、当該部分を形状評価の対象とすると共に、これらの個所と露光装置の露光条件との関連を記憶するライブラリを用意し、当該ライブラリを参照することによって、正確な露光条件を実現する半導体製造装置の管理装置、及びコンピュータプログラムを新たに提案する。
【0014】
また、発明者らは、設計データ上、異なる角度を有する複数の部位、角度は同じだけれども異なる位置に存在する部位等は、露光条件の変化に応じて異なる形状変化を示すことを新たに見出した。例えば設計データ上、L字型のパターンでは、パターンの屈曲部の内側部分(インナーコーナー)が270度に形成されているとすると、屈曲部の外側部分(アウターコーナー)は、90度(パターンが存在する側の角度)に形成されていることになる。このように異なる角度にて形成される部位は、露光条件の変化に応じて異なるパターン形状の変化を示す。そこで本実施例では、このような新たな知見に基づいて、複数のパターン部位を形状評価対象とすると共に、当該評価結果に基づいて得られる露光条件の論理積を求めることで、露光条件の絞り込みを行う半導体製造装置の管理装置、及びコンピュータプログラムを提案する。また、一方で、同じ形状の複数のパターンを採用することによって、平均化による再現性を高めることもできる。
【0015】
なお、本実施例では、露光状態を把握するための専用のモニターパターンを用いて露光状態を評価する手法について説明するが、半導体デバイスの回路を構成するパターンに、モニターパターンに相当するパターンが存在するのであれば、それを用いて露光条件の評価を行うようにしても良い。
【0016】
また、上記ライブラリは、ライブラリ作成用のパターンについて、異なる焦点条件及び露光量条件の組み合わせ毎に、露光を行い、当該露光によって形成されたパターンについて、走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いて画像取得を行うことによって、作成する。より具体的には、異なる焦点条件と異なる露光量条件に基づいて、フォーカスドーズマトリックス(FEM(Focus Exposure Matrix)と称することもある)ウェハを作成し、異なる露光条件にて形成されたパターンの同一個所のSEM画像から、ライブラリ形成に必要な情報を抽出するライブラリ作成工程を経て作成する。
【0017】
作成されたライブラリを用いて、実際にモニタしたい被測定パターンから種々の情報を取り込み、ライブラリ情報と被測定パターン情報を対比し、互いの情報がもっとも近い焦点,露光量条件を導出する焦点,露光量条件をモニタする。このようなモニタに基づいて、露光装置(スキャナー、或いはステッパ)の変動を、インライン(量産工程)で捉えることが可能となる。
【0018】
図1に例示するように、半導体の製造工程では、露光装置のステージチルトやウェハチャック異常,フォーカスセンサー異常等の要因により経時的に露光されるパターン形状が変化する場合がある。これらの変動要因により、フォーカスの微小なずれ(フォーカスオフセット)やチップ内での微小な形状バラつき等、変動が常時発生している(フォーカス変動許容範囲)。
【0019】
しかし、この許容範囲内であってもチップ内での形状バラつきが大きくなるとパターンのでき栄えの均一性の観点から調整が必要となってくる。また、フォーカスセンサーの異常等により、許容範囲を超えるパターンが転写される場合もある。従って、これらの変動の状態を常に監視しておくことが安定的に半導体を製造する上で極めて重要である。露光装置の管理のために、専用のウェハを用いて露光を行い、その露光された転写パターンの1次元の寸法測定を、CD−SEM(Critical Dimension-SEM)を用いて行うことで露光装置の変動を監視する手法が知られている。また、OCD(光学式CD計測手法)等を用いて露光装置の管理を行うことも可能であるが、OCDは平均化計測を行うため、比較的広い面積に大量の同一形状の1次元パターンを形成する必要があり、やはり専用のウェハが必要となる。また、OCDによる計測では、1次元のラインパターンしか扱うことができないためフォーカスやドーズの変動に対する感度が十分とは言えずまた、2次元形状を考慮したフォーカスとドーズの正確な管理には不向きとなっている。
【0020】
また、生産効率の観点から見ると、量産工程において上記の様な管理のために露光装置を停止することは生産性の観点から極力避ける必要があり、また、このための専用ウェハを用いることも避ける必要がある。
【0021】
本実施例では、主にパターンの1次元情報や3次元情報ではなく、図2に例示するように、パターンのコーナーを含む部分の形状(即ち2次元形状)をモニタの対象としている。コーナー部は、露光装置のフォーカス条件の変動に対し、敏感に反応するため、当該部分をモニタすることによって、高精度な露光条件推定が可能となる。
【0022】
図24は、複数の測定、或いは検査装置がネットワークに接続された測定,検査システムの概略説明図である。当該システムには、主に半導体ウェハのパターン寸法を測定するCD−SEM2401、フォトマスクのパターン寸法を測定するCD−SEM2402、欠陥の位置情報に基づいて欠陥を検査する欠陥レビュー用SEM(Defect Review-SEM:DR−SEM2403)が含まれている。またネットワークには、後述する露光装置の管理用制御部を内蔵する管理装置2404、半導体デバイスの設計データと、半導体製造装置の製造条件等に基づいて、パターンのでき栄えをシミュレーションするシミュレーター2405、及び半導体デバイスのレイアウトデータや製造条件が登録された設計データが記憶される記憶媒体2406が接続されている。
【0023】
設計データは例えばGDSフォーマットやOASISフォーマットなどで表現されており、所定の形式にて記憶されている。なお、設計データは、設計データを表示するソフトウェアがそのフォーマット形式を表示でき、図形データとして取り扱うことができれば、その種類は問わない。また、記憶媒体2406は測定装置,検査装置の制御装置、或いは管理装置2404,シミュレーター2405に内蔵するようにしても良い。
【0024】
なお、CD−SEM2401,2402、及びDR−SEM2403には、それぞれの制御装置が備えられ、各装置に必要な制御が行われるが、これらの制御装置に、上記シミュレーターの機能や測定条件等の設定機能を搭載するようにしても良い。
【0025】
SEMでは、電子源より放出される電子ビームが複数段のレンズにて集束されると共に、集束された電子ビームは走査偏向器によって、試料上を一次元的、或いは二次元的に走査される。
【0026】
電子ビームの走査によって試料より放出される二次電子(Secondary Electron:SE)或いは後方散乱電子(Backscattered Electron:BSE)は、検出器により検出され、前記走査偏向器の走査に同期して、フレームメモリ等の記憶媒体に記憶される。このフレームメモリに記憶されている画像信号は、制御装置内に搭載された演算装置によって積算される。また、走査偏向器による走査は任意の大きさ,位置、及び方向について可能である。
【0027】
以上のような制御等は、各SEMの制御装置にて行われ、電子ビームの走査の結果、得られた画像や信号は、通信回線ネットワークを介して管理装置2404に送られる。なお、本例では、SEMを制御する制御装置と、管理装置2404を別体のものとして、説明しているが、これに限られることはなく、管理装置2404にて装置の制御と測定処理を一括して行うようにしても良いし、各制御装置にて、SEMの制御と測定処理を併せて行うようにしても良い。
【0028】
また、上記管理装置2404或いは制御装置には、測定処理を実行するためのプログラムが記憶されており、当該プログラムに従って測定、或いは演算が行われる。
【0029】
また、管理装置2404は、SEMの動作を制御するプログラム(レシピ)を、半導体の設計データに基づいて作成する機能が備えられており、レシピ設定部として機能する。具体的には、設計データ,パターンの輪郭線データ、或いはシミュレーションが施された設計データ上で所望の測定点,オートフォーカス,オートスティグマ,アドレッシング点等のSEMにとって必要な処理を行うための位置等を設定し、当該設定に基づいて、SEMの試料ステージや偏向器等を自動制御するためのプログラムを作成する。
【0030】
図25は、走査電子顕微鏡の概略構成図である。電子源2501から引出電極2502によって引き出され、図示しない加速電極によって加速された電子ビーム2503は、集束レンズの一形態であるコンデンサレンズ2504によって、絞られた後に、走査偏向器2505により、試料2509上を一次元的、或いは二次元的に走査される。電子ビーム2503は試料台2508に内蔵された電極に印加された負電圧により減速されると共に、対物レンズ2506のレンズ作用によって集束されて試料2509上に照射される。
【0031】
電子ビーム2503が試料2509に照射されると、当該照射個所から二次電子、及び後方散乱電子のような電子2510が放出される。放出された電子2510は、試料に印加される負電圧に基づく加速作用によって、電子源方向に加速され、変換電極2512に衝突し、二次電子2511を生じさせる。変換電極2512から放出された二次電子2511は、検出器2513によって捕捉され、捕捉された二次電子量によって、検出器2513の出力が変化する。この出力に応じて図示しない表示装置の輝度が変化する。例えば二次元像を形成する場合には、走査偏向器2505への偏向信号と、検出器2513の出力との同期をとることで、走査領域の画像を形成する。なお、図25の例では試料から放出された電子を変換電極にて一端変換して検出する例について説明しているが、無論このような構成に限られることはなく、例えば加速された電子の軌道上に、電子倍像管や検出器の検出面を配置するような構成とすることも可能である。
【0032】
制御装置2515は、走査電子顕微鏡の各構成を制御すると共に、検出された電子に基づいて画像を形成する機能や、ラインプロファイルと呼ばれる検出電子の強度分布に基づいて、試料上に形成されたパターンのパターン幅を測定する機能を備えている。
【0033】
図24に例示した管理装置2404では、主に3つの作業が行われる。まず第1に異なる露光条件ごとに得られるパターンの形状情報と、露光条件との関連を記憶するライブラリを作成すること、第2にSEM等によって得られた画像に基づいて、パターンの形状情報を取得すること、第3に取得された形状情報と、予め記憶されたライブラリとの突合せを行うことによって、露光装置の露光条件(露光量(ドーズ(Dose)、或いはエクスポージャー(Exposure)とも言う)と、焦点位置(フォーカス(Focus)量とも言う))を推定することである。
【0034】
図3及び図4に、モニターパターンライブラリの作成工程の概要、及び作成されたライブラリを用いて、露光量とフォーカス量を推定する工程の概要を説明する。まず、予め露光量とフォーカス量を推定するために用いるパターン(FD Monitor(Focus Dose Monitor)パターン)を用意する。レイアウトデータ上では、同じ形状であっても、露光条件を変えることによって、パターンの形状は変化するため、露光装置の露光条件を変化させて、異なる露光条件ごとに、パターン形成を行う。一例としてFEMウェハを作成することによって、異なる露光条件のパターンを作成する。このようにして形成された露光条件ごとのパターンについて、SEM画像を取得し、ライブラリにパターンの形状情報と関連付けて、露光条件を記憶する。図3の例では、パターンの異なる部位(コーナータイプA,コーナータイプB)と、異なる露光条件(製造条件)との関連を記憶する。
【0035】
ライブラリ作成の段階ではドーズとフォーカスの推定(DF推定)を行うモニターパターンを露光しこのパターンの各種特徴量をDF推定ライブラリに登録する。本実施例では、フォーカス変化に対し高い感度を示す十字形状パターンや複数の角部を有するパターン等、角度のあるコーナーパターンを有するモニターパターンをウェハ上に転写し、それぞれのパターンのSEM画像取得に基づいて、ライブラリを作成する。
【0036】
本実施例では上記ウェハは、ライブラリ作成専用のものであり、製品デバイスのレイヤ(拡散工程,ポリシリコン工程,第一メタルと言った半導体を構成する各層)毎に、所望の光学条件(NA等)で作成するものである。
【0037】
以上のようにして形成されたモニターパターンの部位ごとの情報を、ライブラリに登録する情報として抽出する。具体的には、コーナー部を構成するパターンの曲率や、パターンの線幅を演算し、当該曲率や線幅等の情報と、露光条件とを関連付けてライブラリに登録する。曲率は図14に例示するように、SEM画像から抽出した輪郭線に基づき算出する。具体的には、図26に例示するように、SEM像上のパターンのホワイトバンド2601の輝度分布情報2603に基づいて、輪郭線を抽出する。輝度分布情報2603は、輝度分布抽出領域2602の輝度変化の抽出に基づき作成する。図27は、輪郭線の抽出工程を説明するフローチャートである。
【0038】
輪郭線抽出は、管理装置2404に搭載された演算装置にて行うようにしても良いし、SEMに接続された制御装置にて行うようにしても良い。輪郭線抽出では、図27のフローチャートに例示するように、先ず、走査電子顕微鏡を用いて、SEM画像を形成する(ステップ2701)。次にSEM画像上のホワイトバンド2601から輝度情報分布情報に基づいて、第1の輪郭線を抽出する(ステップ2702)。なお、この第1の輪郭線の抽出手法としては、SEM像からビットマップデータで構成されたパターン像を抽出し、そのパターン像をベクトルデータで構成されたパターンデータに変換する方法が考えられる。
【0039】
次に、形成された第1の輪郭線とレイアウトデータ2604とのベクトルデータ比較、或いはパターンマッチングによって、レイアウトデータ2604と第1の輪郭線との重ね合わせ(対応付け)を行う(ステップ2703)。レイアウトデータ2604は、GDSフォーマット等で記憶された設計データの線分情報である。このような重ね合わせを行った上で、輝度分布情報収集領域を、第1の輪郭線2604と垂直になるように設定し、輝度分布を検出する(ステップ2704)。このように形成された輝度分布の所定の明るさを持つ画素を抽出しその位置を第2の輪郭線位置と定義することで、より正確な輪郭線の形成が可能となる(ステップ2705)。
【0040】
なお、このような正確な輪郭線形成手法は、特開昭60−169977号公報,特開平6−325176号公報,特開平8−161508号公報,特開平9−204529号公報等に記載された既存の手法の適用が可能である。
【0041】
また、上述の例では、実際にモニターパターンを露光し、得られたパターンのSEM画像に基づいて、パターン形状の特徴量を算出しているが、これに限られることはなく、例えば、シミュレーター2405を用いた露光シミュレーション等によっても、上記ライブラリの作成が可能である。また、SEM画像によって得られた形状情報と、シミュレーターを用いて求められた形状情報の双方を用いて、ライブラリを作成することも可能である。また、両者の情報をライブラリに記憶しておき、実際の計測時に両者の情報を組み合わせることによって、露光条件の絞り込みを行うことも可能である。
【0042】
図22は、管理装置2404内部の演算装置の概要を説明する図である。演算装置2201内には、CD−SEM2401等からの画像データを取得するためのSEM画像取得部2202と、当該画像データを記憶する取得画像記憶部2209が設けられている。輪郭線抽出部2203は、得られたSEM画像から、図27に例示するような工程を経て輪郭線情報を抽出する。抽出された輪郭線に関する情報は、輪郭線データ記憶部2210に記憶される。なお、SEM画像取得部2202や輪郭線抽出部2203は、SEMに設けられた制御装置に搭載しても良く、演算装置2201は、SEMに設けられた制御装置から、必要な情報を選択的に取得するようにしても良い。
【0043】
ライブラリ作成部2204は、図3に例示したような工程を経て、ライブラリを作成する。パターンの部位ごとの形状情報と、製造情報を関連づけてライブラリを作成し、その関連情報を、ライブラリ記憶部2211に記憶する。曲率演算部2205は、ライブラリ作成に供される形状情報の1つである曲率データを、輪郭線データ記憶部2210に記憶された輪郭線データに基づいて演算する。パターンのコーナー部の曲率は、例えば得られた輪郭線に既知の曲率を持つ複数のカーブをフィッティングさせ、最も輪郭線に近いカーブの曲率を当該輪郭線の曲率として、決定するようにしても良いし、他の既知の曲率判定法を適用するようにしても良い。このようにして決定された曲率に関する情報は、製造条件に関する情報と共に、ライブラリに記憶される。比較演算部2206は、半導体の量産工程等にて形成されたパターンの輪郭線データに基づいて抽出された曲率データと、ライブラリに記憶された曲率データとを比較し、後述するように適合するドーズ量等の決定を行う。このようにして決定されたドーズ量に関する情報は、演算結果記憶部2212に記憶される。この比較工程では、ライブラリに記憶された曲率データに所定の幅を持たせておき、当該曲率データ幅に適合する曲率データが得られたときに、当該曲率データをライブラリに記憶された曲率データであると判定するようにしても良い。
【0044】
露光条件範囲特定部2207は、演算結果記憶部2212に記憶されたドーズ量に基づいて、フォーカス範囲を決定する。詳細は後述する。また、絞込み部2208では、後述するような手法に基づいて、フォーカス範囲等の絞り込みを行う。なお、本実施例では、ライブラリには露光条件がパターンの形状情報(曲率データ等)と関連付けて記憶される例について説明するが、これに限られることはなく、各露光条件を示すフラグと、形状情報を関連付けて記憶し、当該フラグを特定することによって、結果として露光条件を特定するようにしても良い。このような場合、当該フラグと露光機のコンディションとの関係を露光機コンディション記憶部2213に記憶しておき、フラグの特定に基づいて、露光機条件を読み出すようにしても良い。
【0045】
なお、図22の例では演算装置内に、記憶媒体が内蔵され、必要に応じて、演算部が記憶部にアクセス可能となるように構成されているが、記憶媒体を外部に設置し、必要に応じて演算装置がアクセスするようにしても良い。
【0046】
図23は、ライブラリ記憶部2211に記憶されるライブラリの一例を説明する図である。本例では、製造条件,パターン形状(例えばコーナータイプ),露光機の条件,曲率データ、及び他の露光機条件を絞り込むのに用いられる他のパターン形状情報等が関連付けて記憶される。パターンの形状情報の詳細については後述する。
【0047】
図4は、実際に露光装置を用いて、半導体ウェハを量産している過程において、作成されたライブラリを用いて、露光量とフォーカス量を推定する工程の概要を説明する図である。本実施例では、ウェハ上に、実際に半導体デバイスを形成するパターンと、FDモニターパターンを混在させる例について説明するが、これに限られることはなく、例えばFDモニターパターンに相当する実パターンを用いて、露光条件の評価を行うようにしても良い。
【0048】
図4の例は、FDモニタの画像を取得する画像取得条件を、レシピ作成装置によって作成する例を示している。FDモニターパターンは、設計データ(レイアウトデータ)にも記憶されているため、その座標情報に基づいて画像取得条件を決定することができる。本実施例では管理装置2404はレシピ作成装置として機能する。
【0049】
演算装置は、量産ウェハの製造工程において形成されたモニターパターンの各部位について、線幅およびコーナー部を構成するパターンの曲率を算出する。尚、この演算の対象となるチップは上記のライブラリ作成の段階で用いたFEMウェハとは異なり、製品デバイスの製造用に最適化されたドーズおよびフォーカスに調整された均一条件のウェハであるため、プロセスウインドウとして規定されている領域の範囲内のチップを対象とする。
【0050】
量産工程で製造されたウェハを用いて、当該ウェハがどの様なドーズとフォーカスで露光されたかを推定するには、上述のようにFDモニターパターンを用いて、ライブラリ作成の段階で算出された曲率との相関を求め、最も一致する曲率と関連づけて記憶された露光条件が、その推定値となる。
【0051】
この際、一致する曲率がライブラリ内に複数検出された場合は、線幅測定の際に算出されたSEM画像のホワイトバンドを推定の指標として加え、このホワイトバンドの傾きと曲率から一致するフォーカスを決定することもできる。
【0052】
次に、製品ウェハに搭載されたモニターパターンの線幅の計測値からライブラリを検索し、一致するドーズ値を算出する。この際、複数のドーズ値が算出された場合、上記で決定したフォーカス値と線幅の計測値から最も一致するドーズ値を真の値として推定を行うようにしても良い。
【0053】
この結果、推定によって得られたフォーカス値とドーズ値が、予め設定されている最適値と異なる場合、露光装置の調整等の装置管理の作業を行い、製品製造工程の状態を維持する作業を行う。
【0054】
図4に例示する調整量演算部は、導出された推定露光条件と、理想的な露光条件との差異を算出し、その値を調整量として出力する。調整量演算部は、露光装置に設けても良いし、管理装置2404に内蔵するようにしても良い。
【0055】
以上のような構成によれば、製品デバイス毎の露光装置調整のためのレシピ作成の効率化を実現することができる。製品デバイスを新規に製造する際に、予め調整されている露光装置の状態を把握するために、上述のような推定方法を用いることによって、露光装置の稼動を制御するレシピの調整作業を効率化することができる。本方式を用いてウェハの全面に及ぶモニターパターンを用いて、露光装置のドーズとフォーカスを推定しウェハ面内のパターン仕上がり均一性の評価を行い、所望のでき栄えの達成状況を把握し、レシピの検証を行いレシピの調整を行うことが可能となる。
【0056】
また、量産工程において、FDモニターパターンの評価を行うことによって、露光装置の迅速な管理を行うことができ、生産効率を下げること無く歩留まりの維持を図ることが可能となる。
【0057】
更に、パターンでき栄えが悪化している場合、推定異常結果が得られるため、この異常値を用いることで、パターン製造プロセス異常を検知することができ、プロセス改善の施策を講じることが可能となる。
【0058】
以下、より具体的に、露光装置の露光条件推定法について説明する。図5はDF推定ライブラリに記憶された情報に基づいて形成される曲率と露光装置のフォーカス量との関係を示すグラフの一例である。本例では、異なるドーズ量毎に、曲率の変化とフォーカス量の変化との関係を示すカーブを形成している。このようなDF推定ライブラリを用いた露光条件推定工程を示すフローチャートを図21に例示する。先ず、対象となるFDモニターパターンのSEM画像を取得する(ステップ2101)。次に先述した手法等を用いてパターンエッジの輪郭線化を行う(ステップ2102)。そして、FDモニターパターンの各種コーナー部位(ROI:Region Of Interest)の曲率をターゲットの曲率として算出する(ステップ2103)。この曲率を求める基準の位置として、図15に例示するように、設計データを基準として決定した任意の位置から、延びると共に、輪郭線に対して法線となる複数の直線(基準線L,M,N)と、輪郭線の交点を輪郭線判定の基準位置として設定することも可能である輪郭線判定の基準位置を複数設けることによって、輪郭線の曲率演算精度を高めることができる。
【0059】
次にこの算出されたターゲットの曲率データと、ライブラリ内に記憶された当該ターゲットと同一個所のパターン部位の曲率データを比較する(ステップ2104)。なお、ライブラリには、複数のドーズ毎の曲率データと、フォーカス値が関連付けて記憶されている。即ち、1の曲率に対し、複数のフォーカス量がライブラリに記憶されている場合がある。即ち、図5に例示するように、ある曲率に対し、複数のドーズ量がライブラリデータ上で関連し、当該複数のドーズ量に関連するフォーカス値は幅を持つことになる。また、フォーカス値がマイナス(アンダーフォーカス)のときと、プラス(オーバーフォーカス)のときの双方で、ある幅を持ったフォーカス値が検出される。本実施例では、マイナス側の或る曲率データを持つフォーカス値の幅を、X_DWR,プラス側の或る曲率データを持つフォーカス値の幅を、X_DWLと定義する。Xはパターンの種類によって変化する変数である。
【0060】
ステップ2104にて実施したライブラリとの比較を、所定のパターン数、或いは所定のパターン部位毎に実行する(ステップ2105)。このように複数の評価対象について、X_DWR,X_DWLに相当するデータを算出する。図6は、2つのパターン(パターンA,パターンB)のライブラリと、曲率データを比較し、それぞれのパターンのフォーカス幅(A_DWR,A_DRL)、及び(B_DWR,B_DRL)を算出した例を示している。
【0061】
このようにして求められた複数パターンのフォーカス幅の論理積を求めることによって、DWRとDWLの絞り込みを行う(ステップ2106)。図7は、2つのパターンのフォーカス幅の重畳領域(AB_DWR,AB_DWL)を求める工程を例示している。
【0062】
以上のように、フォーカス条件の変化に応じて異なる変化を示すパターン或いはパターン部位毎に、フォーカス幅を求め、その論理積を計算することで、フォーカス幅を絞り込むことができ、結果として、正確なフォーカスの特定(ステップ2107)を行うことができる。なお、本実施例では、2つの異なるパターン、或いはパターン部位をターゲットとした例を説明したが、これに限られることはなく、例えば3つ以上のパターン部位を用いた絞り込みを行うようにしても良い。ターゲットの数が多いほど、より狭い範囲までフォーカス幅を絞り込むことができる。
【0063】
なお、本実施例では、図21に例示する工程を経て抽出されたフォーカス幅がまだ十分に絞り込めておらず、ある幅を持っているケースを説明している。以下に、上述のような工程を経ても、まだ、露光装置条件が十分に絞り込めない場合に、更にその絞り込みを実現するための手法を説明する。図8はその概要を説明する図である。本例では、曲率データ以外のデータを用いて、更なる絞り込みを行う手法を説明する。図8は、パターンエッジのホワイトバンドの情報に基づいて、フォーカス幅の絞り込みを行う手法を例示している。この手法を採用するためには、予め、ライブラリにパターンの任意の位置のホワイトバンドの情報(ホワイトバンドの幅,輝度変化情報等のホワイトバンドに関する指標値)と、露光装置の露光条件に関する情報を関連付けて記憶しておく必要がある。実際に取得されたSEM画像から抽出したホワイトバンドに関する情報と、ライブラリを比較し、当該ホワイトバンドに関する情報と関連するフォーカスデータを抽出し、上記絞り込みに用いることによって、更に正確なフォーカス量の特定を行うことが可能となる。
【0064】
以上のように、露光条件の変化に対して敏感に反応するパターンの屈曲部に存在する曲率を用いた絞り込みを行いつつも、他のパターン情報を加味することによって、更に正確な露光条件の推定を行うことが可能となる。
【0065】
図9は、露光条件の絞り込みを行うための他のパターン情報を例示した図である。ライブラリには、図9に例示するような9つの情報の少なくとも1つを登録しておき、SEM画像から抽出された情報との比較を行うことによって、露光条件の絞り込みを行うようにしても良い。図9は、SEM画像に基づいて得られるラインプロファイルから、Bottom CD(BCD),Top CD(TCD),Peak CD(PCD),Right White Band(RWB),Right Top Rounding(RTR),Right Bottom Footing(RBF),Left White Band(LWR),Left Top Rounding(LTR),Left Bottom Footing(LBF)が抽出可能であることを示している。これらの情報は、ラインプロファイルから得られる情報であり、ライブラリ作成時、或いは実際の測定時に抽出可能な情報である。
【0066】
図10,図11に例示するように、露光装置のフォーカス値との関係において特にホワイトバンドは、リニアな変化を示すため、露光条件の絞り込みに適用するのに好適である。
【0067】
次に、先に推定した推定フォーカス値に基づいて、ドーズ量を推定する手法を、図12を用いて説明する。本例では、先に算出した推定フォーカス値と、ターゲットの寸法値(CD値)を用いて、ドーズ量を推定する。より具体的には、推定されたフォーカス値に相当する複数のドーズ量(或いはドーズ幅)の中から、CD値が合致するものを、推定ドーズ量とする。ライブラリには、ドーズ量とCD値(図9に例示する寸法値等)が関連付けて記憶されているため、SEM画像から得られるCD値を当該ライブラリに突き合わせることによって、正確なドーズ量の特定が可能となる。
【0068】
本実施例では、主に量産される試料(半導体ウェハ)上に、実際に半導体パターンを形成するパターンとは別に、モニターパターンを形成する例を説明した。このようなモニターパターンの好適な条件としては、以下のようなものが挙げられる。
【0069】
例えば、図13に例示するように、2次元情報を特定するための複数の屈曲部が存在すること、チップ内に複数配置が可能であること、デバイスチップ内に配置が可能であること、デバイスチップ内に配置が可能であること、及びスキャナ等の露光装置のショット内の情報が得られること等が、好適な条件として挙げられる。
【0070】
更に、推定のための情報量を増やすために、パターンの屈曲部の曲率等の2次元情報だけではなく、寸法値のような1次元情報や、断面形状のような3次元情報を抽出し得るものであることが挙げられる。また、走査電子顕微鏡の測定倍率に収まる大きさのパターンとすることによって、計測時間を抑制することができる。また、曲率データを得るパターンとは別に、コンタクトホールのホール間の距離も絞り込みを行うための情報として採用することによって、推定精度を向上することができる。図18に例示するように、露光装置のフォーカス条件が変化すると、ホール間間隔が変化する傾向を示すため、露光条件の絞り込みを行うための好適なパラメータであると言える。
【0071】
また、図16,図17に例示するように、パターンのコーナーの数が多く、また、コーナーの角度に多くのバリエーションが多いパターンを採用することによって、絞り込みの精度を高めることができ、更に同一形状(方向)のコーナーの情報を複数用いることによって、平均化による再現性向上をも実現することが可能となる。更にコーナー部と直線部分を評価対象とすることによって、両者は露光条件の変化によって異なる挙動を示すと考えられるため、異なる指標に基づく絞り込みを行うことが可能となる。
【0072】
また、1次元情報や2次元情報と併せて、3次元情報を絞り込みのための情報として適用するために、図19に例示するように、パターンエッジの側壁の形状情報をライブラリに記憶し、側壁の形状情報を用いて露光条件の絞り込みを行うようにしても良い。図19は、輪郭線抽出に用いたパターンの各部位のプロファイル波形に基づいて、エッジ部分に関し、各部位の高さ方向の情報を求め、当該側壁情報を、ライブラリに記憶することによって、絞り込みのための指標とする例を説明している。
【0073】
図20は、製品設計データにはないパターンを、モニターパターンとしてウェハ上に搭載する例を説明する図である。
【0074】
モニターパターンの配置場所として、レイアウト上空いた場所やCMPのためのダミーパターンの周辺等の回路的に意味を成さない領域を用いる。
【0075】
モニターパターンの測定のためのレシピ作成については、モニターパターンを配置した位置の座標を入力として設計データを解析することによりアドレッシング位置及びオートフォーカス位置と言った測定のための一連のレシピ情報を自動生成することができる。
【0076】
また、先に述べた様に十字パターン等のコーナー部等の個別の測定部位(ROI)の自動認識も設計データ上で認識することができるため、オフラインでの完全自動化されたモニタのためのレシピ生成が可能となる。
【符号の説明】
【0077】
2401,2402 CD−SEM
2403 欠陥レビュー用SEM
2404 管理装置
2405 シミュレーター
2406 記憶媒体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンの屈曲部の曲率情報と、露光装置の露光条件、或いは露光条件を特定するために設けられたフラグとの関連を記憶するライブラリと、画像情報から抽出されたパターンの曲率情報と、ライブラリに記憶された曲率情報を比較し、当該画像情報から抽出されたパターンの曲率情報に相当する露光条件、或いはフラグを抽出する演算装置とを備えたことを特徴とする半導体製造装置の管理装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記ライブラリには、前記露光装置の露光条件と、パターンの寸法情報、及び/又はパターンの断面形状情報が関連付けて記憶されていることを特徴とする半導体製造装置の管理装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記演算装置は、走査電子顕微鏡によって取得された画像のエッジ部の輪郭を抽出する輪郭線抽出部を有することを特徴とする半導体製造装置の管理装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記ライブラリは、前記パターンの複数部位の曲率情報と、複数の露光条件を関連付けて記憶し、前記演算装置は、前記画像情報から抽出された複数の曲率情報と、ライブラリに記憶された複数の曲率情報を比較し、当該画像情報から抽出されたパターンの曲率情報に相当する露光条件を抽出することを特徴とする半導体製造装置の管理装置。
【請求項5】
演算装置に、画像情報から抽出されたパターンデータに基づいて、当該パターンを形成した露光装置の露光条件を推定させるコンピュータプログラムにおいて、
当該プログラムは、前記演算装置に、パターンの屈曲部の曲率情報と、露光装置の露光条件、或いは露光条件を特定するために設けられたフラグとの関連を記憶するライブラリへのアクセスを実行させ、画像情報から抽出されたパターンの曲率情報と、ライブラリに記憶された曲率情報を比較し、当該画像情報から抽出されたパターンの曲率情報に相当する露光条件を抽出させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項6】
複数の位置のパターンの形状情報と、露光装置の露光条件、或いは露光条件を特定するために設けられたフラグとの関連を記憶するライブラリと、
画像情報から抽出された複数の位置の形状情報と、ライブラリに記憶された形状情報を比較し、画像情報から抽出された複数のパターンの形状情報に相当する複数の露光条件の範囲、或いは露光条件の範囲を特定するために設けられた複数のフラグに基づいて得られる複数の露光条件の範囲の論理積に基づいて、前記露光条件を抽出する演算装置を備えたことを特徴とする半導体製造装置の管理装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記パターンの形状情報は、前記パターンの曲率情報を含むことを特徴とする半導体製造装置の管理装置。
【請求項8】
請求項6において、
前記ライブラリには、前記パターンの形状情報として、前記パターンの曲率情報と、前記パターンの他の特徴量に関する情報が併せて記憶され、前記演算装置は、前記抽出された露光条件を、前記パターンの他の特徴量に基づいて、絞り込みを行うことを特徴とする半導体製造装置の管理装置。
【請求項9】
請求項6において、
前記パターンの他の特徴量は、前記パターンの寸法情報、及び/又は前記パターンのエッジの断面情報であることを特徴とする半導体製造装置の管理装置。
【請求項10】
請求項6において、
前記演算装置は、前記ライブラリに記憶された前記複数の位置の形状情報と、前記露光装置のフォーカス条件との関連に基づいて、前記複数の位置の形状情報ごとのフォーカス範囲を抽出し、当該抽出されたフォーカス情報の論理積に基づいて、前記露光装置のフォーカス範囲の絞り込みを行うことを特徴とする半導体製造装置の管理装置。
【請求項11】
請求項10において、
前記演算装置は、前記絞り込まれたフォーカス範囲を、当該パターンの他の特徴量を用いて更に絞り込むことを特徴とする半導体製造装置の管理装置。
【請求項12】
請求項6において、前記演算装置は、前記論理積に基づいて、前記露光装置のフォーカス条件を特定し、当該特定されたフォーカス条件と、前記パターンの他の特徴量に基づいて、前記露光装置のドーズ条件を特定することを特徴とする半導体製造装置の管理装置。
【請求項13】
請求項6において、
前記ライブラリには、前記パターンの角度の異なる複数の部位の曲率情報が記憶されていることを特徴とする半導体製造装置の管理装置。
【請求項14】
演算装置に、画像情報から抽出されたパターンデータに基づいて、当該パターンを形成した露光装置の露光条件を推定させるコンピュータプログラムにおいて、
当該プログラムは、前記演算装置に、複数の位置のパターンの形状情報と、露光装置の露光条件、或いは露光条件を特定するために設けられたフラグとの関連を記憶するライブラリへのアクセスを実行させ、画像情報から抽出された複数の位置の形状情報と、ライブラリに記憶された形状情報を比較させ、画像情報から抽出された複数のパターンの形状情報に相当する複数の露光条件の範囲、或いは露光条件の範囲を特定するために設けられた複数のフラグに基づいて得られる複数の露光条件の範囲の論理積に基づいて、前記露光条件を抽出させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項1】
パターンの屈曲部の曲率情報と、露光装置の露光条件、或いは露光条件を特定するために設けられたフラグとの関連を記憶するライブラリと、画像情報から抽出されたパターンの曲率情報と、ライブラリに記憶された曲率情報を比較し、当該画像情報から抽出されたパターンの曲率情報に相当する露光条件、或いはフラグを抽出する演算装置とを備えたことを特徴とする半導体製造装置の管理装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記ライブラリには、前記露光装置の露光条件と、パターンの寸法情報、及び/又はパターンの断面形状情報が関連付けて記憶されていることを特徴とする半導体製造装置の管理装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記演算装置は、走査電子顕微鏡によって取得された画像のエッジ部の輪郭を抽出する輪郭線抽出部を有することを特徴とする半導体製造装置の管理装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記ライブラリは、前記パターンの複数部位の曲率情報と、複数の露光条件を関連付けて記憶し、前記演算装置は、前記画像情報から抽出された複数の曲率情報と、ライブラリに記憶された複数の曲率情報を比較し、当該画像情報から抽出されたパターンの曲率情報に相当する露光条件を抽出することを特徴とする半導体製造装置の管理装置。
【請求項5】
演算装置に、画像情報から抽出されたパターンデータに基づいて、当該パターンを形成した露光装置の露光条件を推定させるコンピュータプログラムにおいて、
当該プログラムは、前記演算装置に、パターンの屈曲部の曲率情報と、露光装置の露光条件、或いは露光条件を特定するために設けられたフラグとの関連を記憶するライブラリへのアクセスを実行させ、画像情報から抽出されたパターンの曲率情報と、ライブラリに記憶された曲率情報を比較し、当該画像情報から抽出されたパターンの曲率情報に相当する露光条件を抽出させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項6】
複数の位置のパターンの形状情報と、露光装置の露光条件、或いは露光条件を特定するために設けられたフラグとの関連を記憶するライブラリと、
画像情報から抽出された複数の位置の形状情報と、ライブラリに記憶された形状情報を比較し、画像情報から抽出された複数のパターンの形状情報に相当する複数の露光条件の範囲、或いは露光条件の範囲を特定するために設けられた複数のフラグに基づいて得られる複数の露光条件の範囲の論理積に基づいて、前記露光条件を抽出する演算装置を備えたことを特徴とする半導体製造装置の管理装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記パターンの形状情報は、前記パターンの曲率情報を含むことを特徴とする半導体製造装置の管理装置。
【請求項8】
請求項6において、
前記ライブラリには、前記パターンの形状情報として、前記パターンの曲率情報と、前記パターンの他の特徴量に関する情報が併せて記憶され、前記演算装置は、前記抽出された露光条件を、前記パターンの他の特徴量に基づいて、絞り込みを行うことを特徴とする半導体製造装置の管理装置。
【請求項9】
請求項6において、
前記パターンの他の特徴量は、前記パターンの寸法情報、及び/又は前記パターンのエッジの断面情報であることを特徴とする半導体製造装置の管理装置。
【請求項10】
請求項6において、
前記演算装置は、前記ライブラリに記憶された前記複数の位置の形状情報と、前記露光装置のフォーカス条件との関連に基づいて、前記複数の位置の形状情報ごとのフォーカス範囲を抽出し、当該抽出されたフォーカス情報の論理積に基づいて、前記露光装置のフォーカス範囲の絞り込みを行うことを特徴とする半導体製造装置の管理装置。
【請求項11】
請求項10において、
前記演算装置は、前記絞り込まれたフォーカス範囲を、当該パターンの他の特徴量を用いて更に絞り込むことを特徴とする半導体製造装置の管理装置。
【請求項12】
請求項6において、前記演算装置は、前記論理積に基づいて、前記露光装置のフォーカス条件を特定し、当該特定されたフォーカス条件と、前記パターンの他の特徴量に基づいて、前記露光装置のドーズ条件を特定することを特徴とする半導体製造装置の管理装置。
【請求項13】
請求項6において、
前記ライブラリには、前記パターンの角度の異なる複数の部位の曲率情報が記憶されていることを特徴とする半導体製造装置の管理装置。
【請求項14】
演算装置に、画像情報から抽出されたパターンデータに基づいて、当該パターンを形成した露光装置の露光条件を推定させるコンピュータプログラムにおいて、
当該プログラムは、前記演算装置に、複数の位置のパターンの形状情報と、露光装置の露光条件、或いは露光条件を特定するために設けられたフラグとの関連を記憶するライブラリへのアクセスを実行させ、画像情報から抽出された複数の位置の形状情報と、ライブラリに記憶された形状情報を比較させ、画像情報から抽出された複数のパターンの形状情報に相当する複数の露光条件の範囲、或いは露光条件の範囲を特定するために設けられた複数のフラグに基づいて得られる複数の露光条件の範囲の論理積に基づいて、前記露光条件を抽出させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
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【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2012−49411(P2012−49411A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191648(P2010−191648)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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