説明

半導体製造装置用サセプタ

【課題】基板を真空チャックしている状態でも均熱性の良い半導体製造装置用サセプタを提供する。
【解決手段】半導体製造装置用サセプタ1は、基板を加熱するためのヒータ電極2が埋設された窒化アルミニウム製の支持部材3と、支持部材3の上面に形成された凹形状のウェハポケット部4と、ウェハポケット部4に形成された貫通孔5と、ウェハポケット部4の外周部において基板を支持するシールバンド部6とを備え、シールバンド部6の上面にはシールバンド部6の外周からウェハポケット部4方向に向かってチャンバー内のガスが通過可能な複数のガス流路7が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を真空チャックする半導体製造装置用サセプタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、上面に基板が載置される支持部材と、支持部材の上面に形成された凹形状のウェハポケット部と、ウェハポケット部の外周部において基板を支持するシールバンド部と、ウェハポケット部に形成された貫通孔とを有し、貫通孔を介して支持部材の上面から下面方向に向かって排気することにより基板をシールバンド部の上面に真空チャックする半導体製造装置用サセプタが知られている(特許文献1参照)。このような半導体製造装置用サセプタによれば、基板を処理している際に基板の反りやズレが発生することを防止できる。
【特許文献1】特開2002−184844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の半導体製造装置用サセプタによれば、基板の裏面とウェハポケット部間の空間が減圧されるために、ウェハポケット部分においてはサセプタから基板側へ多くの熱が伝達せず、ウェハポケット部上方の基板領域の温度は相対的に低くなる。一方シールバンド部では、基板が直接接触していることからサセプタから基板側へ多くの熱が伝達し、シールバンド部上方の基板領域の温度は相対的に高くなる。このため、従来の半導体製造装置用サセプタによれば、基板を真空チャックしている際、基板の面内方向に熱の分布状態が形成され、基板の均熱性が悪化する。
【0004】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、基板を真空チャックしている状態でも均熱性の良い半導体製造装置用サセプタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る半導体製造装置用サセプタの特徴は、上面に基板が載置される支持部材と、支持部材の上面に形成された凹形状のウェハポケット部と、ウェハポケット部の外周部において基板を支持するシールバンド部と、ウェハポケット部に形成された貫通孔とを有し、貫通孔を介して支持部材の上面から下面方向に向かって排気することにより基板をシールバンド部の上面に真空チャックする半導体製造装置用サセプタにおいて、シールバンド部の上面にシールバンド部の外周からウェハポケット部方向に向かってガスが流通可能なガス流路を有することにある。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る半導体製造装置用サセプタによれば、基板を真空チャックしている状態の基板の均熱性を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態となる半導体製造装置用サセプタの構成について説明する。
【0008】
本発明の実施形態となる半導体製造装置用サセプタ1は、図1に示すように、基板を加熱するためのヒータ電極2が埋設された窒化アルミニウム製の支持部材3と、支持部材3の上面に形成された凹形状のウェハポケット部4と、ウェハポケット部4に形成された貫通孔5と、ウェハポケット部4の外周部において基板を支持するシールバンド部6とを備え、シールバンド部6の上面にはシールバンド部6の外周からウェハポケット部4方向に向かってチャンバー内のガス(例えばHeガスやHeとNの混合ガス)が通過可能な複数のガス流路7が形成されている。
【0009】
この半導体製造装置用サセプタ1では、シールバンド部6の外周から流入したチャンバー内のガスは、シールバンド部6から供給される熱によりガス流路7内において温められた後にウェハポケット部4に流入するので、ウェハポケット部4上方の基板領域に伝達される熱量がガス流路7がない場合と比較して増加し、ウェハポケット部4上方の基板領域の温度は高くなる。一方、シールバンド部6上方の基板領域の温度は、シールバンド部6との接触面積が減少することからガス流路7がない場合と比較して低くなる。従って、このような半導体製造装置用サセプタ1によれば、ウェハポケット部4上方の基板領域とシールバンド部6上方の基板領域の温度差が小さくなり、基板の均熱性を向上させることができる。
【0010】
なお、図1に示す例では、ガス流路7はスリット形状となっており、窒化アルミニウム製の支持部材3を回転させながらサンドブラストを局所的に吹き付けることにより形成することができる。具体的には、深さ10μmのガス流路7を形成する場合には、サンドブラストのノズル径10mm,ノズルと支持部材3間の距離100mm,圧力0.15MPa,吹き付け時間5秒間としてサンドブラスト処理を行うことにより形成できる。
【0011】
但し、ガス流路7をスリット形状にした場合には、スリットの角部と基板とが接触することにより窒化アルミニウムのパーティクルが発生する可能性がある。このことから、ガス流路7は図2に示すような滑らかな波形状であることが望ましい。図2に示す例では、シールバンド部6の上面は周方向に連続的に形成された滑らかな波形状となっており、波形状の凹部部分がガス流路7として機能する。またこの波形状の最上点と最下点の高さの差は5〜20μm以下の範囲内、幅は5〜15mmの範囲内に調整されている。
【0012】
〔実施例〕
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳しく説明する。
【0013】
実施例では、以下の表1に示すガス流路の深さが異なる複数の半導体製造装置用サセプタを作製し、各半導体製造装置用サセプタをチャンバー内に個別にセットし、半導体製造装置用サセプタの上面に基板を載置した。そして、ヒータ電極に通電することによりヒータ加熱温度を500℃として、ガス流路の深さの変化に伴う基板の均熱性(基板面内方向の最高温度Maxと最低温度Minの差)の変化を測定した。なお測定では、チャンバー内の圧力を600Torr,基板の裏面とウェハポケット部間の空間内の圧力を5Torrとした。評価結果を以下の表1に合わせて示す。
【表1】

【0014】
表1から明らかなように、ガス流路の深さが0μm、すなわちガス流路を形成しなかった場合には、従来の半導体製造装置用サセプタと同様の構成になることにより、均熱性は15℃と悪い結果を示した(図3参照)。ガス流路を形成しなくても窒化アルミニウム製の半導体製造装置用サセプタは実際には約1μmほどの表面粗さや約2μmほどのうねりは含んでいる。またガス流路の深さが3μmである場合にも均熱性は12℃と悪い結果を示した。この原因は、ガス流路の深さが浅すぎると、チャンバー内のガスがガス流路内に十分に流入せず、ウェハポケット部への熱伝達の効果が低くなるためであると推察される。
【0015】
これに対してガス流路の深さが5〜20μmの範囲では均熱性は5℃以下と非常に良い結果を示した(図4参照)。但し、ガス流路の深さが25μm以上になると、均熱性は16℃以上と再び悪い結果を示した。この原因は、ガス流路の深さが深すぎると、シールバンド部上面に基板をチャックする真空チャックの機能そのもののが失われるためであると推察される。以上のことから、ガス流路の深さは5〜20μmの範囲内にあると良い均熱性が得られることが知見された。なお、図3,4に示す均熱性の評価結果は図5に示す基板の温度測定軸上の温度データをプロファイルにしたものである。
【0016】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、この実施の形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、上記実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態となる半導体製造装置用サセプタの構成を示す上面図及び断面図である。
【図2】本発明の実施形態となるガス流路の構成を示す模式図である。
【図3】従来の半導体製造装置用サセプタの均熱性の評価結果を示す図である。
【図4】本発明の実施形態となる半導体製造装置用サセプタの均熱性の評価結果を示す図である。
【図5】図3,4に示す均熱性の評価結果の測定方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0018】
1:半導体製造装置用サセプタ
2:ヒータ電極
3:支持部材
4:ウェハポケット部
5:貫通孔
6:シールバンド部
7:ガス流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に基板が載置される支持部材と、当該支持部材の上面に形成された凹形状のウェハポケット部と、ウェハポケット部の外周部において基板を支持するシールバンド部と、ウェハポケット部に形成された貫通孔とを有し、貫通孔を介して支持部材の上面から下面方向に向かって排気することにより基板をシールバンド部の上面に真空チャックする半導体製造装置用サセプタにおいて、前記シールバンド部の上面に当該シールバンド部の外周からウェハポケット部方向に向かってガスが流通可能なガス流路を有することを特徴とする半導体製造装置用サセプタ。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体製造装置用サセプタにおいて、前記シールバンド部の上面は周方向に連続的に形成された波形状を有し、当該波形状の凹部部分が前記ガス流路として機能することを特徴とする半導体製造装置用サセプタ。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体製造装置用サセプタにおいて、前記ガス流路の深さが5μm以上20μm以下の範囲内にあることを特徴とする半導体製造装置用サセプタ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のうち、いずれか1項に記載の半導体製造装置用サセプタにおいて、前記支持部材が窒化アルミニウムにより形成されていることを特徴とする半導体製造装置用サセプタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−244015(P2008−244015A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−80283(P2007−80283)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】