説明

半導体集積回路の解析装置及び解析方法

【課題】組立工程前の半導体集積回路におけるレーザ光照射対象箇所に対する明瞭な画像を取得できるようにする手段を提供する。
【解決手段】半導体集積回路解析装置10は、半導体集積回路90へレーザ光を照射して発生した光誘起電流による場を場検出器によって検出するレーザ顕微鏡22を備え、レーザ21の波長は、半導体集積回路を構成する半導体を1光子励起するには不十分であって2光子励起するには十分である範囲の1.2μm以上であって、2.3μm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路の解析装置及び解析方法に関し、特に、非破壊で半導体集積回路を検査する解析装置及び解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路(LSI)検査装置及び検査方法は、LSIチップの良否を判定するため、すなわち、異常のあるLSIチップを識別するために用いられる。一方、LSI解析装置及び解析方法は、異常があるものと判定されたLSIチップを対象として、LSIチップ上の故障箇所を特定し、故障の原因を解析するために用いられる。
【0003】
LSIの故障解析の手順は、大きく2つの手順に分けられる。まず、LSIチップ上の故障被疑箇所を非破壊でミクロンオーダーまで絞り込む。次に、絞り込まれた箇所を物理化学的に破壊解析する。本発明は、前者の故障被疑箇所の絞込みに用いられる技術に関する。
【0004】
図9は、非特許文献1に記載のレーザSQUID顕微鏡の構成を示すブロック図である。図9を参照すると、非特許文献1に記載のレーザSQUID顕微鏡120は、パルス発生器163、変調用信号171、参照信号172、レーザ161、ロックインアンプ167、光ファイバ164、光学系165、変調光173、X−Y走査可能な試料台(試料ステージ)166、SQUID(SQUID磁気センサ)162、磁場信号177、制御部168、PC(Personal Computer)180を備える。
【0005】
半導体集積回路90は、解析対象とされる試料であり、総誘導磁場176はSQUID162により検出される磁場を示す。PC180は画面上に、検出された磁場の強度像178及び位相像179を表示する。
【0006】
レーザ171は波長1064nm付近のレーザであって、単一光子で電子正孔対の励起(1光子励起)が可能な波長のレーザである。
【0007】
図11は、非特許文献1に記載の走査レーザSQUID顕微鏡120の動作を示すフローチャートである。図9及び図11を参照して、非特許文献1に記載のレーザSQUID顕微鏡120の動作について説明する。
【0008】
まず、レーザ161は、光学系165を介して半導体集積回路90へ変調光173を照射する(ステップS11)。SQUID162は、変調光172の照射の結果として発生した(ステップS12、S13)総誘導磁場176を検出する(ステップS14)。ロックインアンプ167は、SQUID162から磁場信号を受信し、制御部21へ強度信号及び位相信号を出力する。試料台166を走査しつつ以上の動作を行うことによって、PC180において磁場の強度像178及び位相像179が得られる(ステップS14)。
【0009】
また、特許文献1において、2光子吸収により電子を励起するのには十分であり、1光子吸収により電子を励起するのには不十分な波長のレーザによる半導体デバイスの画像化方法が記載されている。
【0010】
特許文献1の図2は、特許文献1に記載の画像化方法において用いられる装置の構成を示すブロック図である。特許文献1の図2を参照すると、この装置は、半導体デバイス20に照射されるビーム23、および、ビーム23を発生するためのポンプレーザ210を備える。半導体デバイス20は画像化の対象とされる試料であり、導電性リード204、205は半導体デバイス20の電極を外部に取り出すために用いられる。
【0011】
特許文献1の図1は、特許文献1に記載の半導体デバイスの画像化のステップを示す。特許文献1の図1を参照すると、まず、半導体デバイス20に2光子励起のための光ビーム23を集光する(ステップAないしC)。次に、導電性リード204、205を介して、走査領域の電流を測定し(ステップD)、測定された電流値に対応した走査領域の画像を形成する(ステップE)。
【0012】
さらに、特許文献2において、固浸レンズを用いた半導体デバイスの観察方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平10−332794号公報
【特許文献2】特開2004−020404号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】二川 清ら「走査レーザSQUID顕微鏡のLSI故障解析への新しい適用法」、第28回LSIテスティングシンポジウム会議録、pp.321−326(2008)
【非特許文献2】山下将嗣ら「レーザ-テラヘルツエミッション顕微鏡によるMOSトランジスタの非接触評価」、第24回LSIテスティングシンポジウム会議録、pp.347−351(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
以下の分析は、本発明者によってなされたものである。図9〜図11を参照して、非特許文献1に記載の技術の問題点とその問題が発生するメカニズムを説明する。
【0016】
図10は、非特許文献1に記載のレーザSQUID顕微鏡120の動作を説明するための図であり、図9の半導体集積回路90を中心に拡大した図である。半導体集積回路90は、P基板(P型基板)91、Nウェル(N型ウェル)92、及びP+領域(P型高濃度拡散層)93を備える。
【0017】
図10において細い破線で示した光誘起電流174は、変調光173の照射によって、Nウェル92とP+領域93との界面(pn接合面)において発生した電流である。細い点線で示した誘導磁場175は、光誘起電流174によって生じた誘導磁場である。
【0018】
一方、太い破線で示した光誘起電流144は、変調光173の照射によって、P基板91とNウェル92との界面(pn接合面)において発生した電流である。太い点線で示した誘導磁場145は、光誘起電流144によって生じた誘導磁場である。なお、光誘起電流174及び144の経路は、図10においては、簡単のために単純化して示しているものの、実際は、半導体集積回路90の基板や配線を介した複雑な経路となる。
【0019】
非特許文献1に記載の技術の問題点は、Nウェル92とP+領域93との界面にのみ、変調光173を集光して光誘起電流174を発生させようとしても、P基板91とNウェル92と界面にも変調光173が照射され光誘起電流144を生じさせてしまうことにある(ステップS12)。
【0020】
このとき、レーザ照射の目標とされた箇所において生じた光誘起電流174に起因する誘導磁場175のみならず、目標としていない箇所において生じた光誘起電流144に起因する誘導磁場145も生じさせる結果となる(ステップS13)。したがって、SQUID162によって総誘導磁場176を検出して、PC180において検出された磁場を表示した(ステップS14)場合に、レーザ照射の目標とされた箇所からの誘導磁場と、それ以外の箇所からの誘導磁場とが干渉して、強度像178や位相像179を不鮮明となる。
【0021】
また、特許文献1に記載の技術は、次のような問題がある。すなわち、特許文献の図1及び図2を参照すると、レーザビーム照射により発生した電流の測定(特許文献1の図1のステップD)は、導電性リード204、205(特許文献1の図2)を介して行なわれる。導電性リード204、205が必要とされるため、半導体デバイス20の観測は半導体デバイス製造の組立工程の終了後にしか実施できないという問題がある。
【0022】
そこで、組立工程前の半導体集積回路におけるレーザ光照射対象箇所に対する明瞭な画像を取得できるようにすることが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0023】
第1の視点に係る半導体集積回路解析装置は、半導体集積回路へレーザ光を照射して発生した光誘起電流による場を場検出器によって検出するレーザ顕微鏡を備え、レーザ光の波長は、半導体集積回路を構成する半導体を1光子励起するには不十分であって2光子励起するには十分である。
【0024】
第2の視点に係る半導体集積回路解析方法は、半導体集積回路へレーザ光を照射する工程と、半導体集積回路において発生した光誘起電流による場を場検出器によって検出する工程と、を含み、レーザ光の波長は、半導体集積回路を構成する半導体を1光子励起するには不十分であって2光子励起するには十分である。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る半導体集積回路解析装置及び解析方法によると、組立工程前の半導体集積回路におけるレーザ光照射対象箇所に対する明瞭な画像を取得するこができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る半導体集積回路解析装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係る半導体集積回路解析装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施例に係る半導体集積回路解析装置の動作を説明するための図である。
【図4】本発明の第1の実施例に係る半導体集積回路解析装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】2光子励起を選択的に生じさせる方法について説明するための図である。
【図6】固浸レンズによるレーザ光の開き角の調整について説明するための図である。
【図7】固浸レンズの効果について説明するための図である。
【図8】固浸レンズの効果について説明するための図である。
【図9】非特許文献1に記載のレーザSQUID顕微鏡の構成を示すブロック図である。
【図10】非特許文献1に記載のレーザSQUID顕微鏡の動作を説明するための図である。
【図11】非特許文献1に記載の走査レーザSQUID顕微鏡の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態に係る半導体集積回路解析装置について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る半導体集積回路解析装置の構成を示すブロック図である。
【0028】
図1を参照すると、半導体集積回路解析装置10は、レーザ顕微鏡20を備える。レーザ顕微鏡20は、半導体集積回路90へレーザ光を照射して発生した光誘起電流による場を場検出器22によって検出する。ここで、レーザ光の波長は、半導体集積回路90を構成する半導体を1光子励起するには不十分であって2光子励起するには十分である。
【0029】
このとき、半導体集積回路90の検査対象箇所以外に起因する場を低減し、検査対象箇所に起因する場を明瞭に観察することができる。2光子励起の発生確率は光子密度の2乗に比例するため、検査対象箇所においてのみ、2光子励起を高い確率で発生させることができる。したがって、検査対象箇所において発生した光誘起電流によって生じた場のみを明瞭に観察することができるからである。すなわち、本実施形態に係る半導体集積回路解析装置10によると、半導体集積回路90におけるレーザ光照射対象箇所に対する明瞭な画像を取得するこができる。
【0030】
また、半導体集積回路解析装置10は、上記特許文献1のように電流を検出する代わりに、光誘起電流によって生じた場を検出して場の画像を取得する。したがって、本実施形態に係る半導体集積回路解析装置10によると、組立工程前の半導体集積回路に対する画像を取得するこができる。
【0031】
なお、レーザ光の波長は、1.2μm以上であって2.3μm以下であることが好ましい。半導体集積回路90がシリコンからなる場合において、シリコンを1光子励起するには不十分であって2光子励起するには十分な波長だからである。
【0032】
また、レーザ顕微鏡20は、レーザ光の開き角を調整する開き角調整部23を備えることが好ましい。半導体集積回路90の検査対象箇所における2光子励起の発生確率を、検査対象箇所以外における2光子励起の発生確率と比較して、さらに高くすることができるからである。
【0033】
さらに、開き角調整部23は、半導体集積回路90のレーザ光が照射される面上に配置された固浸レンズ24を有することが好ましい。レーザ光の開き角の調整が容易となるからである。
【0034】
また、レーザ顕微鏡20は、レーザ光の強度を調整する強度調整部25を備えることが好ましい。半導体集積回路90の検査対象箇所以外に起因する場を場検出器22の感度以下とし、検査対象箇所に起因する場を場検出器22の感度以上とすることにより、明瞭な場の画像を得ることができるからである。
【0035】
さらに、半導体集積回路解析装置10は、場検出器22により検出された場を表示する表示部30をさらに備えるようにしてもよい。表示部30は、場の強度像及び位相像を表示するようにしてもよい。
【0036】
また、場は誘導磁場であって、場検出器はSQUIDであってもよい。さらに、場はテラヘルツ波(THz波)であって、場検出器はテラヘルツ波検出器であってもよい。なお、レーザ顕微鏡20は、前者の場合にはレーザSQUID顕微鏡に相当し、後者の場合にはレーザーテラヘルツエミッション顕微鏡(Laser THz Emission Microscope、LTEM)に相当する。
【実施例】
【0037】
本発明の一実施例に係る半導体集積回路解析装置について、図面を参照して説明する。図2は、本実施例に係る半導体集積回路解析装置の構成を示すブロック図である。
【0038】
(構成)
図2を参照すると、半導体集積回路解析装置50は、パルス発生器63、変調用信号71、参照信号72、レーザ61、ロックインアンプ67、光ファイバ64、光学系65、変調光73、X−Y走査可能な試料台(試料ステージ)66、SQUID62、磁場信号77、制御部68、PC(Personal Computer)80を備える。
【0039】
半導体集積回路90は、解析対象とされる試料であり、総誘導磁場76はSQUID62により検出される磁場を示す。PC80は画面上に、検出された磁場の強度像78及び位相像79を表示する。
【0040】
レーザ61のレーザ光の波長は、半導体集積回路90を構成する半導体の1光子励起には不十分であって、2光子励起には十分な波長である。レーザ61のレーザ光は、一例として、1.2μm程度以上かつ2.3μm程度以下の波長としてもよい。2光子励起を起こすためには光子密度を大きくする必要がある。しかし、半導体集積回路90の熱損傷を防ぐために、レーザ61のレーザ光は短時間パルスかつ長周期であることが好ましい。一例として、レーザ61のレーザ光は、パルス幅100ps、周波数が数十MHzのフェムト秒レーザとしてもよい。
【0041】
(動作)
次に、本実施例に係る半導体集積回路解析装置50の動作について図面を参照して説明する。図4は、本実施例に係る半導体集積回路解析装置50の動作を示すフローチャートである。
【0042】
半導体集積回路90に含まれる界面(pn接合面)であって構造が既知である箇所に対してレーザ61のレーザ光を照射し(ステップS1)、総誘導磁場76を検出するとともに強度像78及び位相像79を得る(ステップS2)。得られた磁場像にレーザ光照射目標としたpn接合以外のpn接合又は濃度勾配に起因する誘導磁場が混入しているか否かを判定し(ステップS3)、混入している場合には(ステップS3のYes)、レーザ光の開き角、及び/又は、パワーを調整し(ステップS4)、再度、ステップS1〜S3の工程を繰り返す。レーザ光照射目標以外の誘導磁場が混入していないものと判定された場合には(ステップS3のNo)、最終的な磁場像を表示する(ステップS5)。
【0043】
なお、ステップS4におけるレーザ光の開き角の調整は、一例として、開き角がより大きい(すなわち、NA[開口数]のより大きい)対物レンズへ交換することによって実現するようにしてもよい。また、レーザ光の開き角を調整する代わりに、または、レーザの開き角を調整するとともに、レーザ光のパワーを増加又は減少させてもよい。なお、固浸レンズを用いると、レーザ光の開き角の調整が容易となる。
【0044】
このように、レーザ光の開き角及び/又はパワーを調整した後、半導体集積回路90の観測を行なうことによって、半導体集積回路90の任意の箇所において、レーザ光の照射目標としたpn接合のみに起因する誘導磁場の磁場像(例えば、強度像及び位相像)が得られる。
【0045】
図5は、2光子励起を選択的に生じさせる方法について説明するための図である。図5を参照すると、ビーム断面積Aはレーザ光照射目標としたpn接合におけるレーザ光の断面積であり、ビーム断面積Aはレーザ光照射目標以外のpn接合におけるレーザ光のビーム断面積である。2光子励起の発生確率は光子密度の2乗に比例する。したがって、パラメータX=(A/A(以下「調整容易度」という。)は、レーザ光照射目標としたpn接合において2光子励起を選択的に生じさせるための調整の容易さを表すパラメータとなる。調整容易度Xの値が大きいほど、2光子励起を選択的に生じさせるための調整は容易となる。
【0046】
はじめに、レーザ光のパワーと磁場像との関係について検討する。レーザ光のパワーを増加(ないし減少)させることによって、レーザ光照射目標とするpn接合に起因する誘導磁場をSQUID62の感度以上とし、目標以外のpn接合に起因する誘導磁場をSQUID62の感度以下とすることができる。このように、レーザ光のパワーを調整することによって、レーザ光の照射目標とするpn接合に起因する誘導磁場のみを計測することができる。
【0047】
次に、対物レンズのNAと、調整容易度Xとの関係について検討する。ここで、NA=nsinθであり、nは屈折率、θは開き角(開き半角)である。ビーム断面積Aの最小値は回折限界によって決定される。Rayleighの定義式によると、回折限界から決まるビーム径は0.61λ/NAである。ここで、λはレーザ光の波長である。したがって、対物レンズのNAを大きくするとビーム断面積Aは小さくなる。また、NAを大きくすると、θが大きくなり、ビーム断面積Aも大きくなる。ゆえに、NAを大きくすると、調整容易度Xは大きくなる。
【0048】
また、固浸レンズを用いることによって、調整容易度Xをさらに大きくし、2光子励起を選択的に生じさせるための調整をさらに容易とすることができる。このことについて、図6〜図8を参照しつつ説明する。
【0049】
図6は、固浸レンズによるレーザ光の開き角の調整について説明するための図である。図6(A)は、固浸レンズ(Solid Immersion Lens、SIL)を用いない場合、図6(B)は、固浸レンズ54を用いる場合である。なお、図6においては、半導体集積回路90の裏面が上方に向くように描かれている点に留意する。
【0050】
図6(A)に示すように、固浸レンズが無い場合には、対物レンズ53から出る光の開き角φを大きくしても、半導体集積回路90へ入射する際、空気と半導体(例えば、Si)の屈折率の違いによってθは小さくなる。一例として、半導体がSiである場合には、空気の屈折率1に対してSiの屈折率は3.5である。対物レンズ53としてNA=0.76であるものを用いた場合には、φが約49度であっても、Si中におけるθは約13度となる。また、回折限界から決まるビーム径は1.0μm(≒0.61x1.3μm/3.5/sin(13度))となる。
【0051】
一方、図6(B)に示すように、固浸レンズ54がある場合には、対物レンズ53から出る光の開き角は、Si中においても広いまま保たれる(図6(B)においては固浸レンズ54に入射する際に、さらに開き角が大きくなるように描かれている。ここでは、計算を簡単にするためにかかる条件の下で計算する。)。また、回折限界から決まるビーム径は0.30μm(≒0.61x1.3μm/3.5/sin(49度))となる。
【0052】
図7は、固浸レンズ54の効果について説明するための図である。上記のようにビーム径(ビーム断面積)及び開き角は、固浸レンズ54の有無によって変化する。図7(A)は、固浸レンズ54を使用しない場合のビーム断面積及び開き角を示す。断面積A1Aはレーザ光の照射目標であるpn接合におけるビーム断面積であり、断面積A2Aは目標以外のpn接合におけるビーム断面積である。開き角θは、レーザ光の開き角(開き半角)である。
【0053】
一方、図7(B)は固浸レンズ54を使用した場合のビーム断面積及び開き角を示す。断面積A1Bはレーザ光の照射目標であるpn接合におけるビーム断面積であり、断面積A2Bは目標以外のpn接合におけるビームの断面積である。開き角θは、レーザ光の開き角である。
【0054】
図8は、これらのパラメータの概算値を一例として示す。図8においては、レーザ光の波長は1.3μm、対物レンズ53のNAは0.76、固浸レンズ54はSi(屈折率3.5)とし、固浸レンズ54とP基板91との間の隙間は無視することができるものと仮定とした。
【0055】
図8を参照すると、固浸レンズ54がある場合と無い場合における調整容易度Xの比、すなわちX/Xは、1480倍となる。したがって、固浸レンズ54を用いることによって、レーザ光の照射目標であるpn接合において2光子励起を選択的に生じさせるための調整がはるかに容易となる。
【0056】
本実施例によれば、以下の効果がもたらされる。レーザSQUID顕微鏡を備えた半導体集積回路解析装置において、目標以外のpn接合に起因する誘導磁場の発生(非特許文献1)を防ぎ、目標とするpn接合に起因する誘導磁場を明瞭に観察することができる。
【0057】
また、半導体集積回路解析装置は、電流を検出して像を取得する(特許文献1)代わりに、光誘起電流によって生じた誘導磁場を検出して磁場像を取得する。したがって、本実施例に係る半導体集積回路解析装置によると、特許文献1に記載された技術と比較して、より上流の製造工程おける半導体集積回路の画像を取得するこができる。
【0058】
以上の記載は実施例に基づいて行ったが、本発明は、上記実施例に限定されるものではない。例えば、上記の実施例におけるレーザSQUID顕微鏡を、非特許文献2に記載されたレーザーテラヘルツエミッション顕微鏡(Laser THz Emission Microscope、LTEM)に置き換えることができる。すなわち、上記の実施例指令において、レーザ誘起によって発生する誘導磁場をテラヘルツ波とし、SQUIDをテラヘルツ波検出器としてもよい。
【符号の説明】
【0059】
10、50 半導体集積回路解析装置
20 レーザ顕微鏡
21、61、161 レーザ
22 場検出器
23 開き角調整部
24 固浸レンズ
25 強度調整部
30 表示部
53 対物レンズ
54 固浸レンズ
62、162 SQUID
63、163 パルス発生器
64、164 光ファイバ
65、165 光学系
66、166 試料台
67、167 ロックインアンプ
68、168 制御部
71、171 変調用信号
72、172 参照信号
73、173 変調光
74、144、174 光誘起電流
75、145、175 誘導磁場
76、176 総誘導磁場
77、177 磁場信号
78、178 強度像
79、179 位相像
80、180 PC(Personal Computer)
90 半導体集積回路
91 P基板
92 Nウェル
93 P+領域
120 レーザSQUID顕微鏡
、A、A1A、A2A、A1B、A2B ビーム断面積
θ、φ、θ、φ、θ 開き角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体集積回路へレーザ光を照射して発生した光誘起電流による場を場検出器によって検出するレーザ顕微鏡を備え、
前記レーザ光の波長は、前記半導体集積回路を構成する半導体を1光子励起するには不十分であって2光子励起するには十分であることを特徴とする半導体集積回路解析装置。
【請求項2】
前記レーザ光の波長は、1.2μm以上であって2.3μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の半導体集積回路解析装置。
【請求項3】
前記レーザ顕微鏡は、前記レーザ光の開き角を調整する開き角調整部を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の半導体集積回路解析装置。
【請求項4】
前記開き角調整部は、前記半導体集積回路のレーザ光が照射される面上に配置された固浸レンズを有することを特徴とする、請求項3に記載の半導体集積回路解析装置。
【請求項5】
前記レーザ顕微鏡は、前記レーザ光の強度を調整する強度調整部を備えることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体集積回路解析装置。
【請求項6】
前記場検出器により検出された場を表示する表示部をさらに備えることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体集積回路解析装置。
【請求項7】
前記場は誘導磁場であって前記場検出器はSQUIDであることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の半導体集積回路解析装置。
【請求項8】
前記場はテラヘルツ波であって前記場検出器はテラヘルツ波検出器であることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の半導体集積回路解析装置。
【請求項9】
半導体集積回路へレーザ光を照射する工程と、
前記半導体集積回路において発生した光誘起電流による場を場検出器によって検出する工程と、を含み、
前記レーザ光の波長は、前記半導体集積回路を構成する半導体を1光子励起するには不十分であって2光子励起するには十分であることを特徴とする半導体集積回路解析方法。
【請求項10】
前記場検出器により検出された場を表示する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項9に記載の半導体集積回路解析方法。
【請求項11】
前記レーザ光の開き角を調整する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項9又は10に記載の半導体集積回路解析方法。
【請求項12】
前記レーザ光の強度を調整する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項9乃至11のいずれか1項に記載の半導体集積回路解析方法。
【請求項13】
前記場は誘導磁場であって前記場検出器はSQUIDであることを特徴とする、請求項9乃至12のいずれか1項に記載の半導体集積回路解析方法。
【請求項14】
前記場はテラヘルツ波であって前記場検出器はテラヘルツ波検出器であることを特徴とする、請求項9乃至12のいずれか1項に記載の半導体集積回路解析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−181288(P2010−181288A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25308(P2009−25308)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度 独立行政法人科学技術振興機構 先端計測分析技術・機器開発事業開発課題名「超LSI故障箇所解析装置」委託研究、産業技術力強化法19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】