説明

半導体集積回路テスト方法

【課題】複数のメモリを備えた半導体集積回路において、IRドロップによる誤動作を回避しつつ、効率の良いメモリテストを実現すること。
【解決手段】半導体集積回路に含まれる複数のメモリのそれぞれを単体でテストした場合に消費される電流を参照し、該複数のメモリから同時にテストすべき複数のメモリを被テストメモリとして選択する工程と、前記複数の被テストメモリを同時にテストした場合に消費される総消費電流をシミュレーションにより生成する工程と、前記総消費電流および前記半導体集積回路のレイアウト情報に基づいて、前記半導体集積回路におけるIRドロップを算出する工程と、算出した電圧降下が所定の許容値以内であるか否かを判定する工程と、前記電圧降下が前記所定の許容値を超えた場合には、前記複数のメモリから同時にテストすべきメモリを再度選択し直す工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路テスト方法に関し、特に、複数のメモリマクロを備えた半導体集積回路において、同時に複数のメモリマクロをテストする半導体集積回路テスト方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1において、複数のメモリを備えた半導体集積回路のテスト方法が記載されている。図5は、特許文献1に記載されたテスト方法を示すフローチャートである。図5を参照すると、まず、単体テストデータを生成するとともに(ステップS01)、シミュレーションを実行することにより(ステップS02)、単体のメモリテスト時の消費電流を算出して、同時にテスト可能か否かを検証する。次に、消費電流の合計値がIRドロップを許容できる上限値を超えるかを判定する。同時にテストできると判断されたメモリに対して、テストシーケンスを生成する(ステップS04)。ここで、メモリ容量の違いによりテスト時間が違う場合には、テスト時間の違いを考慮して、同時にテストするメモリの組み合わせを決定する。また、クロック同期式のメモリの場合には、クロックの動作エッジが重なったときに瞬間的に多量の電流が流れ、IRドロップが大きくなる。そこで、消費電流のピークが重ならないようにクロックの位相を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−250905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以下の分析は、本発明者によってなされたものである。
【0005】
特許文献1には、上述のように、メモリテスト時に同時にテストするメモリの組み合わせを変更するテスト回路およびテスト方法が記載されている。しかし、特許文献1においては、同時にテストするメモリの組み合わせを検討する段階で、半導体集積回路の物理情報(すなわち、実レイアウト)を考慮していない。したがって、テスト時にIRドロップに起因してメモリが誤動作するおそれがある。また、誤動作を回避するために、消費電流の上限値を低くした場合には、同時にテストするメモリの個数が少なくなってしまい、効率良くテストを実施することができなくなる。
【0006】
そこで、複数のメモリ(例えばSRAM)を備えた半導体集積回路において、IRドロップによる誤動作を回避しつつ、効率良いメモリテストを可能とすることが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一視点に係る半導体集積回路のテスト方法は、
半導体集積回路に含まれる複数のメモリのそれぞれを単体でテストした場合に消費される電流を参照し、該複数のメモリから同時にテストすべき複数のメモリを被テストメモリとして選択する工程と、
前記複数の被テストメモリを同時にテストした場合に消費される総消費電流をシミュレーションにより生成する工程と、
前記総消費電流および前記半導体集積回路のレイアウト情報に基づいて、前記半導体集積回路におけるIRドロップを算出する工程と、
算出した電圧降下が所定の許容値以内であるか否かを判定する工程と、
前記電圧降下が前記所定の許容値を超えた場合には、前記複数のメモリから同時にテストすべきメモリを再度選択し直す工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る半導体集積回路およびそのテスト方法によると、複数のメモリを備えた半導体集積回路において、IRドロップによる誤動作を回避しつつ、効率良いメモリテストを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係る半導体集積回路テスト方法を一例として示すフローチャートである。
【図2】実施形態に係る半導体集積回路テスト方法における、単体テスト時の消費電流を一例として示す図である。
【図3】実施形態に係る半導体集積回路テスト方法における、単体テスト時の消費電流情報を一例として示す図である。
【図4】実施形態に係る半導体集積回路テスト方法における、同時テスト時の消費電流情報を一例として示す図である。
【図5】特許文献1に記載された半導体集積回路テスト方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
はじめに、本発明の概要について説明する。なお、この概要に付記する図面参照符号は、専ら理解を助けるための例示であり、本発明を図示の態様に限定することを意図するものではない。
【0011】
図1を参照すると、本発明に係る半導体集積回路テスト方法は、半導体集積回路に含まれる複数のメモリのそれぞれを単体でテストした場合に消費される電流(単体テスト消費電流情報D1)を参照し、複数のメモリから同時にテストすべき複数のメモリを被テストメモリとして選択する工程(ステップS21)と、複数の被テストメモリを同時にテストした場合に消費される総消費電流をシミュレーションにより生成する工程(ステップS24)と、総消費電流(IRドロップ解析用消費電流情報D3)および半導体集積回路のレイアウト情報(レイアウト情報D4)に基づいて、半導体集積回路におけるIRドロップを算出する工程(ステップS31)と、算出した電圧降下が所定の許容値以内であるか否かを判定する工程(ステップS32)と、電圧降下が所定の許容値を超えた場合には(ステップS32のNO)、複数のメモリから同時にテストすべきメモリを再度選択し直す工程と、を含む。
【0012】
図1、図3および図4を参照すると、本発明の半導体集積回路テスト方法は、複数の被テストメモリのそれぞれを単体でテストした場合に消費される電流を複数のテストアドレスのそれぞれについて算出する工程と(図3の単体テスト消費電流情報D1参照)、算出された消費電流をテストアドレスごとに足し合わせることによって、複数の被テストメモリを同時にテストした場合に消費される総消費電流をテストアドレスごとに算出する工程(図4の同時テスト消費電力情報D2参照)と、複数のテストアドレスのそれぞれに対する総消費電流に基づいて、複数のテストアドレスから1つのテストアドレスを選択する工程と、選択したテストアドレスについて、複数の被テストメモリを同時にテストするためのテストデータを生成する工程と、前記テストデータに対するシミュレーションにより、複数の被テストメモリを同時にテストした場合に消費される総消費電流を生成する工程と、をさらに含んでいてもよい。
【0013】
また、図4を参照すると、上記のテストアドレス選択工程において、複数のテストアドレスの中から、総消費電流が最大のテストアドレス(図4のテストアドレス3)を選択するようにしてもよい。
【0014】
以上のように、本発明に係る半導体集積回路テスト方法は、メモリ単体テストでの消費電流を算出するステップと、消費電流の算出結果から同時にテストするメモリの個数を検討するステップと、その組み合わせにて同時にテストしたときのIRドロップを物理情報(実レイアウト)に基づいて確認するステップと、を含む。したがって、本発明に係る半導体集積回路およびそのテスト方法によると、複数のメモリを備えた半導体集積回路において、IRドロップによる誤動作を回避しつつ、効率良くテストを行うことができる。
【0015】
(実施形態)
実施形態に係る半導体集積回路のテスト方法について、図面を参照して説明する。 図1は、本実施形態のテスト方法を示すフローチャートである。
【0016】
図1を参照すると、本実施形態のテスト方法は、大きく分けて、3つのステップS10、S20およびS30を含む。まず、メモリ単体テストにおける消費電流を算出する(ステップS10)。次に、同時にテストするメモリの個数を検討する(ステップS20)。さらに、同時テストした場合における電源のIRドロップを確認する(ステップS30)。以下では、ステップS10、S20およびS30について、さらに詳細に説明する。
【0017】
まず、ステップS10では、メモリの単体テストのテストパタンを生成する(ステップS11)。次に、生成したテストパタンに基づいてシミュレーションを実行して(ステップS12)、テストアドレス毎にメモリの消費電流を算出する(ステップS13)。図2は、テストアドレス毎の消費電流を一例として示す図である。単体テストにおける消費電流は、単体テスト消費電流情報D1に格納する。
【0018】
チップに搭載されているすべてのメモリの種類に対して、同様に消費電流を算出し、単体テスト時の消費電流情報を作成して、単体テスト消費電流情報D1に格納する。図3は、単体テスト消費電流情報D1を一例として示す図である。図3を参照すると、単体テスト消費電流情報D1には、テストアドレス毎に消費電流が格納されている。
【0019】
次に、ステップS20では、単体テスト時の消費電流情報を元に、同時にテストするメモリを仮見積りする(ステップS21)。次に、単体テストでの消費電流を足し合わせることで、同時にメモリをテストしたときの消費電流を算出する(ステップS22)。
【0020】
図4は、同時にメモリをテストしたときの消費電流を示す同時テスト消費電流情報D2を一例として示す図である。図4を参照すると、例えば、テストアドレス1について、単体でテストした場合におけるメモリ1の消費電流は5μA、メモリ2の消費電流は4μA、メモリ3の消費電流は2μAである。一方、メモリ1〜3を同時にテストした場合には、これらの消費電流を合計した11μAの電流が消費される。
【0021】
次に、同時にテストするメモリに対するテストデータを作成する(ステップS23)。図4の同時テスト消費電流情報D2を参照して、消費電流が最大になるテストアドレスを確認し、そのテストアドレスに対するテストデータを生成する。図4に示した同時テスト消費電流情報D2の場合には、例えば、テストアドレス3に対するテストデータを生成する。
【0022】
次に、生成したテストデータに基づいて、シミュレーションを実行することによって(ステップS24)、IRドロップ解析用の消費電流情報を作成し、IRドロップ解析用消費電流情報D3に格納する。
【0023】
次に、IRドロップ解析用消費電流情報D3および半導体集積回路のレイアウト情報D4を参照して、IRドロップ解析を実施する(ステップS31)。レイアウト情報D4は、例えば、ネットリスト、フロアプラン情報、チップ電源情報、PKG情報等を含む。
【0024】
ここで、ネットリストは、チップ内部回路の素子情報であり、どのような素子(例えば、FF(フリップフロップ)、インバータ、NANDのような組み合わせ回路等)が使用されているかに関する情報である。また、チップ電源情報は、チップ電源の配線を含む電源の構造の情報である。さらに、PKG情報は、半導体パッケージのLCR情報である。
【0025】
ネットリストは、チップ内部で消費される消費電流を算出する際に用いられる。また、チップ電源情報は、電源構造と、算出した消費電流と電源構造とから、チップのどの部分でどの程度のIRドロップが発生するかを解析するために用いられる。さらに、PKG情報は、外部から供給される電源電圧が、PKGの外部端子からチップの電極PADまでの間に、どの程度ドロップするかを解析するために用いられる。
【0026】
次に、IRドロップ解析の解析結果が許容値内かを判定する(ステップS32)。IRドロップの解析結果が許容値内でない場合には(ステップS32のNO)、ステップS21へ戻り、同時にテストするメモリの個数を再度検討する。一方、IRドロップの解析結果が許容値内である場合には(ステップS32のYES)、同時にテストするメモリを決定する(ステップS33)。
【0027】
最後に、すべてのメモリについて検討を完了したか否かを判定し(ステップS40)、完了した場合には(ステップS40のYES)、処理を終了する。
【0028】
本実施形態では、図1に示すように、テストフローにおいて、同時にテストするメモリの消費電流を算出する工程(ステップS22)と、レイアウト情報を用いたIRドロップ解析を行う工程(ステップS31)とを取り入れることで、IRドロップに関する精度の高い検証を行う。これにより、メモリテスト時においてIRドロップに起因する誤動作を回避しつつ、同時にテストするメモリの個数を好適化し、効率よくテストを実施することが可能となる。
【0029】
なお、上記の特許文献等の先行技術文献の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素の多様な組み合わせないし選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0030】
D1 単体テスト消費電流情報
D2 同時テスト消費電流情報
D3 IRドロップ解析用消費電流情報
D4 レイアウト情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体集積回路に含まれる複数のメモリのそれぞれを単体でテストした場合に消費される電流を参照し、該複数のメモリから同時にテストすべき複数のメモリを被テストメモリとして選択する工程と、
前記複数の被テストメモリを同時にテストした場合に消費される総消費電流をシミュレーションにより生成する工程と、
前記総消費電流および前記半導体集積回路のレイアウト情報に基づいて、前記半導体集積回路におけるIRドロップを算出する工程と、
算出した電圧降下が所定の許容値以内であるか否かを判定する工程と、を含むことを特徴とする半導体集積回路テスト方法。
【請求項2】
前記複数の被テストメモリのそれぞれを単体でテストした場合に消費される電流を複数のテストアドレスのそれぞれについて算出する工程と、
算出された消費電流をテストアドレスごとに足し合わせることによって、前記複数の被テストメモリを同時にテストした場合に消費される総消費電流をテストアドレスごとに算出する工程と、
前記複数のテストアドレスのそれぞれに対する総消費電流に基づいて、前記複数のテストアドレスから1つのテストアドレスを選択する工程と、
選択したテストアドレスについて、前記複数の被テストメモリを同時にテストするためのテストデータを生成する工程と、をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の半導体集積回路テスト方法。
【請求項3】
前記総消費電流生成工程において、前記テストデータに対するシミュレーションに基づいて、前記複数の被テストメモリを同時にテストした場合に消費される総消費電流を生成することを特徴とする、請求項2に記載の半導体集積回路テスト方法。
【請求項4】
前記テストアドレス選択工程において、前記複数のテストアドレスの中から、総消費電流が最大のテストアドレスを選択する工程を含むことを特徴とする、請求項2または3に記載の半導体集積回路テスト方法。
【請求項5】
前記電圧降下が前記所定の許容値を超えた場合には、前記複数のメモリから同時にテストすべきメモリを再度選択し直す工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の半導体集積回路テスト方法。
【請求項6】
前記レイアウト情報は、前記半導体集積回路のネットリスト、チップ電源情報およびパッケージ(PKG)情報の少なくともいずれかを含むことを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の半導体集積回路テスト方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−4125(P2013−4125A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132070(P2011−132070)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】