説明

半田付け方法

【課題】ボンディングワイヤーやリード線などの線状導電部材の両側に確実にフィレットを形成することができる半田付け方法を提供する。
【解決手段】導電性を有する面5上に線状導電部材2を半田付けするにあたり、線状導電部材2の両側のそれぞれに、少なくとも一本の糸半田12,13を供給し、加熱部材14により加熱し、半田付けする、半田付け方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板や電子部品の電極などの導電性を有する面にリード線などの線状導電部材を半田付けする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リード線などの線状導電部材を電極等に電気的に接続するのに半田付けが広く用いられている。
【0003】
図11(a)は、従来の半田付け方法の一例を示す模式的平面図である。ここでは、電子部品101の上面に電極102が形成されている。電極102にリード線103が半田付けされる。半田付けに際しては、糸半田104をリード線103の片側に配置し、半田ごて105を降下し、半田ごて105により糸半田104を溶融する。しかる後、半田ごて105を取り除く。その結果、溶融した半田が硬化し、リード線103が電極102に半田付けされる。
【0004】
他方、下記の特許文献1には、図12に示す半田付け方法が開示されている。ここでは、プリント基板111上の電極112,113に電子部品114の電極115,116が半田付けされる。半田付けに際しては、先端に軸方向に延びる溝が形成されている半田ごて117,118を用いる。半田ごて117,118の溝に、それぞれ、半田119,120の先端を挿入し、溶融半田を溝に沿って流下させ、電極112,113上に供給する。半田ごて117,118が電子部品114から遠ざけられるため、電子部品114の損傷を引き起こすことなく、効率良く半田付けを行うことができるとされている。
【特許文献1】特開平7−154064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図11(a)に示した従来の糸半田104を用いた半田付け方法では、リード線103の片側にのみ糸半田104が供給される。そのためリード線103の片側において糸半田104が溶融するため、図11(b)に示すように、半田付け後に形成されるフィレット104aが、リード線103の片側にのみ形成されがちであった。従って、リード線103の電極102に対する接合強度が十分でないことがあった。また、フィレット104aを、リード線103の反対側に至るように形成するには、より多くの糸半田104を供給し、より長い時間半田ごて105により加熱しなければならなかった。従って、余分な半田を必要としたり、半田付け作業に長い時間を必要としたりすることがあった。
【0006】
他方、特許文献1に記載の半田付け方法では、電子部品114の両側において、半田付けを一度に行うことができる。しかしながら、先端に溝が設けられた複雑な形状の半田ごて117,118を用意しなければならなかった。また、このような細い溝に半田119,120の先端を挿入しなければならず、高価な位置決め機構を有する半田付け装置を用いねばならなかった。
【0007】
また、特許文献1に記載の半田付け方法においては、電子部品114の両側に半田119,120が供給されるが、1つの電極112または電極113に対しては、一方の半田が供給されるにすぎない。
【0008】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、線状導電部材を電極等の導電性を有する面に半田付けするに際し、線状導電部材の両側に確実にフィレットを形成して、導電性を有する面に線状導電部材を確実に接合することができる半田付け方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、導電性を有する面に線状導電部材を半田付けする半田付け方法であって、前記導電性を有する面上において、前記線状導電部材の両側に、それぞれ、少なくとも一本の糸半田を供給する工程と、前記線状導電部材の両側にそれぞれ供給された少なくとも一本の糸半田を加熱して溶融する工程とを備える、半田付け方法が提供される。
【0010】
本発明に係る半田付け方法のある特定の局面によれば、前記線状導電部材の両側のそれぞれに、少なくとも一本の前記糸半田を供給するにあたり、前記導電性を有する面から前記線状導電部材が引き出されている側と同じ側から前記糸半田が供給される。従って、導電性を有する面の一方側にのみ半田付け作業のためのスペースを設ければよいため、半田付け作業に必要なスペースを小さくすることができる。
【0011】
本発明に係る半田付け方法の他の特定の局面では、前記糸半田が、第1の端部と、前記導電性を有する面に接合される側の端部である第2の端部とを有し、前記糸半田を加熱するに際し、加熱部材を用い、該加熱部材が前記糸半田に接触している部分の前記糸半田の長さ方向に沿う一方の端部が前記導電性を有する面上に位置し、かつ他方の端部が前記導電性を有する面よりも前記糸半田の前記第1の端部側に位置するようにして、加熱部材が糸半田に接触される。この場合には、加熱部材が糸半田に接触している部分の前記他方側の端部が導電性を有する面からはずれている。しかしながら、溶融した糸半田は表面張力により、導電性を有する面上に位置している側に引っ張られる。従って、半田付け部分の端部が常に導電性を有する面の端部になるため、半田付け部分の端部を一定とすることができる。
【0012】
なお、糸半田を加熱するには、加熱部材として、それ自体が加熱され、かつ前記糸半田で接触される半田ごてを用いることができる。その場合には、安価な半田ごてを用いて半田付けを行うことができる。
【0013】
また、上記加熱は、レーザー光の照射により行われてもよい。その場合には、非接触で糸半田を速やかに溶融させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る半田付け方法によれば、線状導電部材の両側において、それぞれ、少なくとも一本の半田を供給して半田付けを行うため、線状導電部材の両側に半田フィレットが確実に形成される。従って、余分な半田を供給せずとも、比較的少量の半田で、線状導電部材を導電性を有する面に確実に半田付けすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0016】
図1(a),(b)は、本発明の第1の実施形態に係る半田付け方法を説明するための平面図及び図1の(a)中のA−A線に沿う断面図である。
【0017】
本実施形態の半田付け方法では、積層型圧電素子1に線状導電部材としての樹脂被覆リード線2が半田付けされる。積層型圧電素子1は、図4(a)及び(b)に示すように、積層型の圧電体3を有する。圧電体3の一方の側面に、複数の内部電極4が引き出されている。複数の第1の内部電極4に電気的に接続されるように、外部電極5が形成されている。外部電極5の高さ方向両端近傍には、樹脂被覆層6,7が形成されている。樹脂被覆層6,7間で挟まれた領域が樹脂被覆リード線2が半田付けされる部分であり、外部電極5が露出している。
【0018】
積層型圧電体3内には、複数の第1の内部電極4と圧電体層を介して重なり合うように、複数の第2の内部電極が形成されており、該複数の第2の内部電極は、外部電極5が形成されている側とは反対側の側面に引き出されている。反対側の側面にも、同様に、外部電極8及び樹脂被覆層9,10が形成されている。
【0019】
樹脂被覆リード線2は、図3(a)〜(c)に示す形状を有する。すなわち、樹脂被覆リード線2は、Cuなどの金属からなる芯線2aと、芯線2aの周囲を被覆するように設けられた樹脂被覆層2bとを有する。また、樹脂被覆リード線2では、先端近傍部分では、樹脂被覆層2bは設けられておらず、半田付けを容易とするための半田被覆層2cが外周面に設けられている。
【0020】
本実施形態の半田付け方法では、図1(a)に示すように、積層型圧電素子1が、ステージ11上に載置される。この場合、半田付けを行うべき部分が上面に位置するように、すなわち外部電極5の半田付け部分が上面側において露出するように積層型圧電素子1がステージ11上に載置される。
【0021】
次に、上記半田付け部分に、樹脂被覆リード線2と、糸半田12,13とを供給する。樹脂被覆リード線2は、図1(a)に示すように、先端側の半田被覆層2cが設けられている部分が半田付け部分上に位置するように、外部電極5の半田付け領域上に配置される。この場合、樹脂被覆リード線2は、外部電極5に接触されていてもよく、接触されずに外部電極5の直上に位置していてもよい。
【0022】
他方、上記半田付け領域において、樹脂被覆リード線2の一方側において、糸半田12が、他方側において糸半田13が供給される。すなわち、樹脂被覆リード線2の両側のそれぞれにおいて、糸半田12または糸半田13が供給される。図2に斜視図で示すように、糸半田12は、糸状すなわち線状の形状を有し、中心にフラックス12bが充填されている。
【0023】
樹脂被覆リード線2の両側に糸半田12,13を配置した状態で、加熱部材14を降下し、図1(b)に示すように、加熱部材14を、糸半田12,13に接触させる。その結果、糸半田12,13が加熱部材14からの熱により溶融する。しかる後、加熱部材14を上方に移動させ、溶融した半田を硬化させる。このようにして、樹脂被覆リード線2の先端部近傍が、外部電極5に半田付けされる。図5に示すように、樹脂被覆リード線2の両側に、それぞれ、半田フィレット12a,13aが形成されることになる。これは、樹脂被覆リード線2の両側に、それぞれ、糸半田12,13が配置されて半田付けが行われることによる。
【0024】
これに対して、前述した従来の半田付け方法を採用した場合には、樹脂被覆リード線の一方側にのみ糸半田が供給されて半田付けが行われるため、例えば図6に示すように、樹脂被覆リード線2の一方側においてのみ半田フィレットDが形成されがちであった。
【0025】
図5と図6とを比較すれば明らかなように、本実施形態によれば、樹脂被覆リード線2の両側に確実にフィレット12a,13aが形成される。従って、半田付けの信頼性を高めることが可能となる。
【0026】
第1の実施形態では、積層型圧電素子1の半田付け領域の一方側から樹脂被覆リード線2が供給され、反対側から糸半田12,13が供給されていた。これに対して、図7(a),(b)に示す変形例では、糸半田12,13もまた、樹脂被覆リード線2と同じ側から半田付け領域に供給される。このように、外部電極5の半田付け領域に対して、同じ側から半田付け領域に至るように樹脂被覆リード線2及び糸半田12,13を延ばして供給してもよい。この場合には、積層型圧電素子1の一方側においてのみ半田付けに必要な材料及び装置を配置すればよいため、半田付け作業に必要なスペースを小さくすることができる。
【0027】
図8(a),(b)は、本発明の第2の実施形態に係る半田付け方法を説明するための模式的側面図及び平面図である。第1の実施形態では、加熱部材14を用いて糸半田12,13を溶融していたが、本発明における加熱部材については、それ自体が加熱される半田ごてのような加熱部材14に限定されるものではない。第2の実施形態では、加熱部材14に代えて、レーザー光照射装置16が加熱部材として用いられる。レーザー光照射装置16により、糸半田12,13にレーザー光を図8(b)の破線Eで示す部分に照射する。それによって、糸半田12,13が溶融し、第1の実施形態の場合と同様に、糸半田12,13が樹脂被覆リード線2の両側に配置されているため、非接触式の加熱方法により、樹脂被覆リード線2の両側に確実にフィレットを形成することができる。このように、本発明における加熱部材は、糸半田12,13を溶融し得る限り適宜の加熱源により形成することができる。
【0028】
図9(a)〜(c)及び図10は、本発明の第3の実施形態の半田付け方法を説明するための各模式的正面図である。
【0029】
本実施形態では、電子部品21の上面に電極22が形成されている。この電極22の上面が導電性を有する面であり、該導電性を有する面に樹脂被覆リード線2が半田付けされる。樹脂被覆リード線2の先端の半田被覆層2cが形成されている部分が、電極22の上面に配置される。この場合、樹脂被覆リード線2は、電極22の一方の端部22aから他方の端部22bに向かって延びるように、ただし端部22bには至らないよう配置されている。すなわち、端部22bより内側に、樹脂被覆リード線2の先端が位置している。
【0030】
他方、第1の実施形態と同様に、樹脂被覆リード線2が供給される側とは反対側には、糸半田12が延ばされている。図9(a)では明瞭ではないが、糸半田12とは反対側、すなわち糸半田12と樹脂被覆リード線2を挟んで反対側にも、糸半田が供給される。すなわち、本実施形態においても、樹脂被覆リード線2の両側に、それぞれ糸半田が供給される。糸半田12は、電極22の端部22b側から端部22a側に向かって延ばされている。もっとも、先端は、端部22aよりも内側に位置している。
【0031】
半田付けに際しては、それ自体が加熱される半田ごてである加熱部材14を下方に降下する。この加熱部材14の糸半田12の延びる方向に沿う一方端部14aは、端部22aよりも内側に位置しており、他方端部14bは、電極22よりも外側に位置している。すなわち、図9(b)に示すように、加熱部材14の端部14bは、電極22の端部22bよりも距離xだけ外側に位置している。言い換えれば、糸半田12の基端側を第1の端部、電極22上に延ばされている先端側を第2の端部としたときに、加熱部材14が糸半田12に接触している部分の第1の端部側の端部14bは、電極22の端部22bよりも第1の端部側に向かって距離xだけずらされている。
【0032】
従って、加熱部材14により糸半田12が溶融されると、図9(c)に示すように、糸半田12の第1の端部側の部分が分離される。他方、距離xに相当する飛び出し部分の糸半田は溶融し、表面張力により、電極22上の溶融半田に引っ張られる。
【0033】
従って、加熱部材14を上方に移動させ、半田付けを終了した段階では、図10に示すように、溶融後硬化した半田によるフィレット12aの端部の位置は、確実に電極22の端部22bに一致することとなる。従って、本実施形態によれば、半田付け部分の一方の端部の位置を、電極22の端部22bと一致させ、一定とすることができる。よって、多数の電子部品21に半田付けを行うにあたり、半田付けのばらつきを低減することが可能となる。
【0034】
上述した実施形態では、樹脂被覆リード線の一方側及び他方側に、それぞれ一本の糸半田を供給したが、それぞれ複数本の糸半田を供給して半田付けを行ってもよい。また、線状導電部材としては、樹脂被覆リード線に限らず、樹脂被覆層を有していないボンディングワイヤーなどの様々な線状の導電性部材を用いることができる。また、導電性を有する面については、積層型圧電素子1の外部電極5や電子部品21の電極22に限らず、基板上の電極ランド、あるいは電子部品の様々な端子などを挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】(a),(b)は、本発明の第1の実施形態に係る半田付け方法を説明するための模式的平面図及びA−A線に沿う断面図である。
【図2】第1の実施形態の半田付け方法で用いられる糸半田を示す斜視図である。
【図3】(a)は、第1の実施形態で用いられる樹脂被覆リード線を示す斜視図であり、(b)は、(a)のB−B線に沿う部分の断面図であり、(c)は、C−C線に沿う部分の断面図である。
【図4】(a)及び(b)は、第1の実施形態で半田付けが行われる積層型圧電素子の斜視図及び外部電極露出部分の高さ位置における積層型圧電素子の平面断面図である。
【図5】第1の実施形態で形成される半田フィレットの状態を説明するための部分拡大断面図である。
【図6】従来法により形成される半田フィレットの形状を説明するための部分拡大断面図である。
【図7】(a),(b)は、本発明の第1の実施形態の変形例に係る半田付け方法を説明するための平面図及び側面図である。
【図8】(a),(b)は、本発明の第2の実施形態に係る半田付け方法を説明するための側面図及び平面図である。
【図9】(a)〜(c)は、本発明の第3の実施形態に係る半田付け方法を説明するための各模式的正面図である。
【図10】本発明の第3の実施形態の半田付け方法を説明するための模式的正面図である。
【図11】(a)は、従来の半田付け方法の一例を説明するための平面図であり、(b)は、形成されるフィレットを説明するための断面図である。
【図12】従来の半田付け方法の他の例を説明するための正面図である。
【符号の説明】
【0036】
1…積層型圧電素子
2…樹脂被覆リード線
2a…芯線
2b…樹脂被覆層
2c…半田被覆層
3…積層型圧電体
4…内部電極
5…外部電極
6,7…樹脂被覆層
8…外部電極
9,10…樹脂被覆層
11…ステージ
12…糸半田
12a…フィレット
12b…フラックス
13…糸半田
13a…フィレット
14…加熱部材
14a…一方端部
14b…他方端部
15a…端部
15b…端部
16…レーザー光照射装置
21…電子部品
22…電極
22a…端部
22b…端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する面に線状導電部材を半田付けする半田付け方法であって、
前記導電性を有する面上において、前記線状導電部材の両側に、それぞれ、少なくとも一本の糸半田を供給する工程と、
前記線状導電部材の両側にそれぞれ供給された少なくとも一本の糸半田を加熱して溶融する工程とを備える、半田付け方法。
【請求項2】
前記線状導電部材の両側のそれぞれにおいて、少なくとも一本の前記糸半田を供給するにあたり、前記導電性を有する面から前記線状導電部材が引き出されている側と同じ側から前記糸半田を供給する、請求項1に記載の半田付け方法。
【請求項3】
前記糸半田が、第1の端部と、前記導電性を有する面に接合される側の端部である第2の端部とを有し、前記糸半田を加熱するに際し、加熱部材を用い、該加熱部材が前記糸半田に接触している部分の前記糸半田の長さ方向に沿う一方の端部が前記導電性を有する面上に位置し、かつ他方の端部が前記導電性を有する面よりも前記糸半田の前記第1の端部側に位置するようにして、加熱部材を前記糸半田に接触させる、請求項1または2に記載の半田付け方法。
【請求項4】
前記加熱部材として、それ自体が加熱され、かつ前記糸半田に接触される半田ごてを用いる、請求項3に記載の半田付け方法。
【請求項5】
前記加熱がレーザー光の照射により行われる、請求項1または2に記載の半田付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−23067(P2010−23067A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186251(P2008−186251)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】