半田鏝、それを用いて電子機器を製造する方法、及び製造装置
【課題】フラックスの飛散を防止するとともに、詰まりの生じにくい半田鏝を提供し、電子機器の半田付け工程において、一回の半田付けに供される半田の量を一定にし、且つ良好に半田付けする。
【解決手段】糸半田が通過可能な内径を有し、両端が開口した筒状の半田鏝であって、
a)窒化アルミニウムまたは炭化ケイ素の単一材料で形成され、
b)前記筒9の先端部で半田を溶融させるための加熱手段8が前記筒9に設置されており、
c)前記筒9が前記加熱手段8よりも下方に突出ている、
ことを特徴とする。
【解決手段】糸半田が通過可能な内径を有し、両端が開口した筒状の半田鏝であって、
a)窒化アルミニウムまたは炭化ケイ素の単一材料で形成され、
b)前記筒9の先端部で半田を溶融させるための加熱手段8が前記筒9に設置されており、
c)前記筒9が前記加熱手段8よりも下方に突出ている、
ことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、糸半田を溶融させて半田付けを行うための半田鏝、それを用いて電子機器を製造する方法、及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
配線基板のランドと金属ピンやワイヤなどの端子同士を半田付けするための鏝として、鏝先が筒状をなすものが知られている(特許文献1)。ランドから突き出たピンを筒の内周面で囲った状態で筒内に糸半田を供給し、筒を加熱することにより、溶融半田をピンの周囲に均等に回り込ませるとともに不要個所への溶融半田及びフラックスの飛散を防止しようとするものである。溶融半田が接する筒の内面は、ハンダメッキ等により半田に対する濡れ性が高められている。
同様の目的を達成するために、鏝が上半部ですり鉢状をなし、下半部で筒状をなすものも知られており(特許文献2)、こちらは内面が半田反発材料で形成されている。そして、前工程で糸半田を所定の長さに切断して半田片とし、これをすり鉢部分で溶融させた後、ピンを包囲する筒状部分に自重で流し込むことにより、ピンとランドが半田付けされる。
【特許文献1】特開平11−245029
【特許文献2】特開2001−203446
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1に記載の半田鏝を用いる場合、筒の内面に付着した半田により筒が詰まりやすく、それを防止するために筒の側面に形成した空気孔より半田が固化しないうちに空気を吹き付ける必要があり、面倒である。また、特許文献1に記載の半田鏝では、半田リールから連続して供給される糸半田の先端が、筒を介して加熱されることにより溶融と同時に未溶融の残部と分離される。従って、一回の半田付けに供される半田の量が一定でなく、製造される電子機器に接合不十分あるいは端子間短絡などの不良が生じることがある。
【0004】
次に、前記特許文献2に記載の半田鏝を用いる場合、すり鉢部分で半田を溶融させている間にフラックスが気化してしまい、ランドやピンにフラックスが供給されなくなる。このためランドやピンの酸化膜や汚れが除去されないまま溶融半田が流し込まれることとなり、半田がランドやピンに付かないことがある。
それ故、この発明の第一の課題は、フラックスの飛散を防止するとともに、詰まりの生じにくい半田鏝を提供することにある。第二の課題は、電子機器の半田付け工程において、一回の半田付けに供される半田の量を一定にし、且つ良好に半田付けすることが可能な電子機器製造装置を提供することにある。第三の課題は、高品質の電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
その課題を解決するために、この発明の半田鏝は、
少なくとも先端部内面が半田に対して濡れにくい材料で形成され、糸半田が通過可能な内径を有し、両端が開口した筒を備えることを特徴とする。
この半田鏝によれば、筒の両端が開口しているので、筒をランドの上に立てて、一回の半田付けに必要な長さに切断した糸半田を筒の後端から投入すれば、先端まで落下してランドやピンに接する。そして、先端部で半田を溶融させることにより、ピンやワイヤなどの相手側端子が一定量の半田で接合される。半田付け部が筒で囲まれているので、溶融半田やフラックスが周囲に飛散することはなく、しかも溶融半田が均等に回り込む。また、筒の先端部内面が半田に対して濡れにくい材料で形成されているので、筒内面に半田が付着することがほとんどなく、筒の詰まりを抑制できる。その結果、供給半田の定量性が維持されるとともに、接合後の外観がきれいに仕上がる。
【0006】
筒には、外周面から内周面まで貫通した通気孔が設けられていても良い。この通気孔より筒内に窒素などの不活性ガスを送り、半田や端子の酸化を防ぐことができるからである。
また、熱融解性被覆マグネットワイヤ(例えばポリウレタン被覆銅線)が金属ピンに巻き付けられたチョークコイルなどの電子部品を基板に接続する場合、この発明の鏝を用いれば、ワイヤ、金属ピン及びランドの三者を同時に半田付けすることができる。半田から溶出したフラックスが放散することなく筒内に止まり、金属の表面を浄化して半田に濡れやすくするからである。従って、ワイヤと金属ピンの二者をあらかじめ半田付けしておく必要が無く、工程を短縮化できる点で優れている。
尚、この明細書においてランドとは、ピン挿入孔を有しないパッドをも含む広義の電子機器上の端子をいう。
半田を溶融させるための加熱手段としては、前記筒の外周面にコイル状に巻かれたシーズヒーターが好ましい。筒を直接加熱するので立ち上がりが早く、高効率で安全だからである。
【0007】
従って、この半田鏝を用いて電子機器を製造する適切な方法は、
少なくとも先端部内面が半田に対して濡れにくい材料で形成され、糸半田が通過可能な
内径を有し、両端が開口した筒を備える半田鏝と、前記先端部で半田を溶融させるための加熱手段とを準備し、
前記筒の先端を電子機器の端子に接近させ、
糸半田を一回の半田付けに必要な長さに切断して得られた半田片を筒の後端から筒内に挿入して落下させ、
前記加熱手段により前記先端部で筒内の半田片を溶融させることを特徴とする。
【0008】
前記筒の内径は、半田片の長さよりも小さいのが好ましい。これにより、落下後に半田片が筒内で起立状態となり、そのため半田片の外周面と筒の内周面との間隔が最短となり、半田片が速やかに均一に溶融すると同時にランドやピンの表面がフラックスで浄化され、半田が付きやすくなるからである。尚、当然ながら、筒の内径は半田片の外径よりも大きく、ピンを挿入する場合はピンの外径よりも大きい。
【0009】
また、この製造方法に適切な装置は、
切り刃及び受け刃からなり、少なくともいずれか一方に所定の長さの糸半田を受け入れ可能な半田保持孔が形成され、互いに擦れ合いながら相対的に変位することにより、半田保持孔に挿入された糸半田を切り取るカッターユニットと、
少なくとも先端部内面が半田に対して濡れにくい材料で形成され、糸半田が通過可能な内径を有し、両端が開口した筒と、
前記先端部で半田を溶融させるための加熱手段と
を備えることを特徴とする。
この装置において、筒及び加熱手段は前記半田鏝に該当する。カッターにて切り取られた糸半田は、一回の半田付けに必要な長さの半田片となる。
【0010】
前記カッターユニットの一つの具体的構成においては、前記切り刃が駆動源の出力に応じて一方向に進退可能で、前記半田保持孔が切り刃の進退方向と直交する方向に貫通して形成される。この場合、前記受け刃が切り刃を進退方向に案内する凹部を有し、一側に切り刃の後退時に前記貫通孔と位置が合う半田供給孔が形成され、同じ側又は反対側に切り刃の前進時に前記貫通孔と位置が合う半田排出孔が形成される。そして、前記筒が、径方向位置が前記半田排出孔と一致するように置かれる。
【0011】
この構成によれば、供給孔より保持孔に糸半田を供給した状態で、受け刃に対して切り刃を前進させると両刃の嵌合部に剪断力が作用して糸半田が切断される。得られた半田片は、排出孔より出て筒内に入り、自重で落下し、筒の下端面と対向するランドに接する。そして、加熱溶融されて前記の通り接合が行われる。一回の半田付けに使用される半田は、保持孔に供給された長さで定まる一定長の半田片である。そして、保持孔に供給される糸半田の長さは、半田送りローラの回転数によって制御することができる。
【0012】
前記受け刃は、好ましくは半田排出孔と対向する位置に気体もしくはプランジャを受け入れる導入孔を有する。切断して得られた半田片にバリや曲げが生じていても導入孔から保持孔内に圧縮気体を吹き付けるかプランジャを挿入することにより、半田片を排出することができるからである。前記半田保持孔及び筒の内径は、半田保持孔の軸方向長さよりも小さいのが好ましい。これにより半田片を軸方向に立てた状態で少ない抵抗で筒の下端に送ることができるからである。
【0013】
前記カッターユニットの別の具体的構成においては、前記切り刃が駆動源の出力に応じて自転可能で、前記半田保持孔が切り刃の自転軸と直交する直径線上に貫通して切り刃に形成される。この場合、前記受け刃が、切り刃を保持する軸受け部を有し、一側に切り刃のある位相時に前記半田保持孔と位置が合う半田供給孔が形成され、他の側に他の位相時に前記半田保持孔と位置が合う半田排出孔が形成される。そして、前記筒が、径方向位置が前記半田排出孔と一致するように置かれる。
【0014】
この構成によれば、保持孔に糸半田を供給した状態で、切り刃を自転させると両刃の嵌合部に剪断力が作用して糸半田が切断される。得られた半田片は、排出孔より出て筒内に入り、自重で落下し、筒の下端面と対向するランドに接する。そして、加熱溶融されて前記の通り接合が行われる。一回の半田付けに使用される半田は、保持孔に供給された長さで定まる一定長の半田片である。前記構成と同じく、受け刃が、半田排出孔と対向する位置に気体もしくはプランジャを受け入れる導入孔を有すると良い。
【0015】
前記カッターユニットの更に別の具体的構成においては、前記切り刃が駆動源の出力に応じて一方向に進退可能で、前記受け刃が、切り刃を進退方向に案内する平面を有する。この場合、前記半田保持孔が切り刃の進退方向と直交する方向に貫通して受け刃に形成される。そして、前記筒が、径方向位置が前記半田保持孔と一致するように置かれる。
この構成によれば、保持孔に糸半田を供給した状態で、受け刃に対して切り刃を前進させると両刃の嵌合部に剪断力が作用して糸半田が切断される。得られた半田片は、保持孔より出て筒内に入り、自重で落下し、筒の下端面と対向するランドに接する。そして、加熱溶融されて前記の通り接合が行われる。一回の半田付けに使用される半田は、保持孔に供給された長さで定まる一定長の半田片である。
【0016】
前記製造装置の基本的構成に更に、前記筒の後端を開閉するシャッターを備えると好ましい。シャッターが無ければ、半田溶融時に蒸発したフラックスが、筒の前工程に位置する半田片の通路に侵入して、通路内に付着し、通路を塞ぐことがある。そこで、筒内の半田片が溶融中はシャッターを閉じることにより、筒の前工程の通路を常に清浄に保つことができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、接合部に供給される半田が一定長の半田片であって、接合後に鏝にほとんど付着せず周囲に飛散もしないので、接合に消費される半田量が一定である。従って、優れた品質の電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1に係る製造装置を示す斜視図である。
【図2】同装置に用いられるカッターユニットを示す鉛直方向断面図であり、(a)は切り刃の後退時、(b)は前進時である。
【図3】同装置に用いられる半田鏝と配線基板を示す斜視図である。
【図4】同半田鏝と配線基板を示す鉛直方向断面図であり、(a)は半田溶融前、(b)は溶融後である。
【図5】実施形態1における加熱ブロックの変形例を示す斜視図である。
【図6】実施形態1における筒と加熱ブロックの種々の組み合わせを示す断面図である。
【図7】実施形態1における加熱手段の別の例を示す斜視図である。
【図8】(a)は筒とクリーナーとの関係を示す断面図、(b)は筒の変形例を示す斜視図である。
【図9】実施形態1の製造装置で接合するもう一つの方法を示す斜視図である。
【図10】実施形態2に係る製造装置を示し、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【図11】実施形態3に係る製造装置を示す要部断面図である。
【図12】実施形態4に係る製造装置を示す要部断面図である。
【図13】実施形態5に係る製造装置を示す要部斜視図である。
【図14】実施形態5に係る製造装置を示す要部断面図である。
【図15】実施形態6に係る製造装置を示す要部斜視図である。
【図16】実施形態6に係る製造装置を示す要部断面図である。
【図17】実施形態7に係る製造装置を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1,11 電子機器製造装置
2 本体
2a 台
2b 壁
2c 連結プレート
2d ブラケット
2e ジグ
2x,2y,2z レール
3 半田リール
4 送りローラ
5 カッターユニット
6 センサ
7 ガイド管
8,18,28 加熱ブロック
9,19,29,39,49 筒
42 定量間欠送り装置
51 受け刃
52 切り刃
51a 凹部
51b 半田供給孔
51c 気体導入孔
51d 半田排出孔
52a 半田保持孔
F,J 半田片
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
−実施形態1−
この発明の製造装置の第一の実施形態を図面とともに説明する。図1は実施形態の電子機器製造装置を示す斜視図、図2は同装置に用いられるカッターユニットを示す鉛直方向断面図((a)は切り刃の後退時、(b)は前進時)、図3は同装置に用いられる半田鏝と配線基板を示す斜視図、図4は同半田鏝と配線基板を示す鉛直方向要部断面図((a)は半田溶融前、(b)は溶融後)である。
【0021】
製造装置1は、電子機器の配線基板S上のランドに金属ピンを挿入した状態でランドとピンを糸半田Wで接合するもので、平坦な台2a及び台2aに垂直に固定された壁2bからなる本体2を備えている。台2a上にはX方向に延びるレール2xが敷かれ、そのレール2x上にY方向に延びるレール2yがレール2xに沿って移動可能に固定されている。レール2y上には配線基板Sを載せるジグ2eがXY方向に移動可能に固定されている。また、壁2bにはZ方向に延びるレール2zが取り付けられている。レール2zには連結プレート2cがレール2zに沿って移動可能に固定されている。各移動は、モータなどの図示しない駆動源によりなされる。
【0022】
連結プレート2cには、平面視コの字のブラケット2dを介して半田リール3、送りローラ4、カッターユニット5、センサ6及びガイド管7が上から順に取り付けられている。
カッターユニット5は、図2(a)に示すように互いに平行な上下面で挟まれる凹部51aを有する受け刃51、凹部51aに摺動可能に嵌合する切り刃52及び切り刃52を駆動する流体圧シリンダ53からなる。シリンダ53は流体圧によりその出力ロッドが前進、後退するものである。
【0023】
受け刃51の上部には上面から凹部51aまで貫通した供給孔51b及び導入孔51cが形成されている。供給孔51bは、送りローラ4の直下に位置し、糸半田Wが抵抗無く通過可能な内径を有する。導入孔51cは、供給孔51bよりもシリンダ53から遠い位置にあって、供給孔51bとほぼ同じ内径を有する。受け刃51の下部には水平方向位置を導入孔51cと同じくし、供給孔51bとほぼ同じ内径の排出孔51dが形成されている。切り刃52は、上下方向に貫通し供給孔51bとほぼ同じ内径の保持孔52aを有する。切り刃52の長さ及びシリンダ53のストロークは、保持孔52aの位置が切り刃52の後退時には供給孔51bと一致し、前進時には導入孔51c及び排出孔51dと一致するように設計されている。ガイド管7は、排出孔51dの直下に位置する。センサ6は、ガイド管7を間にして一方の側に設けられた発光素子6a、及び他方の側に設けられた受光素子6bからなる。ガイド管7は、透明材料からなるか又は少なくともセンサ6の高さに透明窓を有する。
【0024】
また、連結プレート2cには、ブラケット2dよりも下方に銅などの高熱伝導性材料からなる加熱ブロック8が取り付けられている。加熱ブロック8は、図3に示すように固定端側の薄肉部8aとこれに連なる自由端側の厚肉部8bとからなり、薄肉部8aには連結プレート2cと厚肉部8bとの間を断熱するために多数の孔が形成されている。厚肉部8bにはヒータ8c及び筒9が埋め込まれている。筒9は、保持孔52aとほぼ同じ内径を有し、上下に貫通していて加熱ブロック8よりも下方に突出しており、周辺部品との干渉を避けるため下端部外径はテーパになっている。筒9は、600℃程度の温度に耐えることができて少なくとも下端部内周面が半田に対して濡れにくい性質を有するものであればよく、単一材料からなっていても複数部材の組み合わせであってもよい。単一材料からなる場合は、セラミック、またはステンレス、チタンなどの非半田濡れ性金属が望ましい。また、セラミックの場合は窒化アルミニウム、炭化ケイ素などの高熱伝導性セラミックが特に望ましい。
【0025】
糸半田Wの直径、保持孔52a及び筒9の寸法は、一回の半田付けに必要な半田の量に応じて適宜定めればよいが、例えばピンの外径が1mmであるとき、糸半田Wの直径を1.2mm、保持孔52a及び筒9の内径を3mm、糸半田Wの切断片(半田片)の長さを6mm、保持孔52aの長さを7mmに設定することで、半田片が筒9内でピンに隣接しながら起立した状態となり、半田片全体が速やかに均等に加熱される。従って、糸半田Wが共晶半田である場合、筒9の下端温度を350℃とすれば、良好に半田付けをすることができる。
【0026】
製造装置1を用いて半田付けをする手順は次の通りである。
配線基板SのランドPに金属ピンを挿入し、配線基板Sをジグ2eに載せる。そして、ランドが筒9の真下に位置するようにジグ2eを配線基板Sとともに移動させる。連結プレート2cを筒9の下端面がランドの直近に位置するところまで下げる。図2(a)に示すように切り刃52を保持孔52aが供給孔51bと一致するところまで後退させておき、ヒータ8cに通電しておく。ランドPとピンTはこの輻射熱で予熱される。送りローラ4を回転させて半田リール3より糸半田Wを引き出して供給孔51bに通す。糸半田Wが保持孔52aに入り、所定の長さ送られた時点で送りローラ4を停止させる。糸半田Wの送り量は、送りローラ4の回転数によって制御される。この状態でシリンダ53を駆動して切り刃52を前進させる。
【0027】
すると図2(b)に示すように、切り刃52と受け刃51との間に剪断力が働いて糸半田Wが所定の長さに切断され、半田片Fとなって保持孔52aとともに排出孔51d上に移動する。ここで導入孔51cに接続されたホース51eを介して空気を保持孔52aに吹き付ける。半田片Fは、排出孔51dよりガイド管7内に落下し、図4(a)に示すように筒9に入ってランドP上に向かう。途中、センサ6が半田片Fの通過を検知し、その信号に基づいて、保持孔52aが供給孔51bと一致するところまで切り刃52を後退させた所で送りローラ4が再度回転し、後続の糸半田Wを保持孔51bに供給する。ランドPに達した半田片Fは、図4(b)に示すようにヒータ8cの熱により溶融半田F’となってランドPとピンTを接合する。溶融半田F’は筒9で囲まれているので、周囲に飛散することはない。また、筒9の下端部内周面が半田に濡れにくい材料からなっているので、半田片Fの全量が金属ピンTとランドPとの接合に消費され、接合後の外観もきれいに仕上がる。溶融中にフラックスの燃焼により発生する煙は、吸引管8dより吸引される。その後、連結プレート2cが上昇し、筒9が配線基板Sから遠ざかる。そして、ジグ2eが配線基板Sを伴ってX方向又はZY方向に移動し、次のランドと金属ピンとの接合工程を開始する。
【0028】
装置1において、ヒータ8cは前記と異なり、筒9と平行になるように加熱ブロックに埋め込んでも良い。この場合、図5に斜視図として示すように加熱ブロック18におけるヒータ8c周囲の肉厚を一層厚くするとよい。筒と加熱ブロックとの組み合わせ構造は種々のものが適用可能である。例えば、図6(a)に示すように筒19を加熱ブロックと一体成形したものでもよい。図6(b)は筒29を加熱ブロックと一体成形するとともに、筒29の上部内周面を上向きに広がるテーパとしたものである。図6(c)は筒39を加熱ブロックと一体成形するとともに、筒39の内周面に半田に濡れにくい材料からなる被膜39aを形成したものである。被膜39aは下端部内周面にだけ形成してもよい。図6(d)は図4と同様に筒9を加熱ブロック28と別体成形したものであるが、加熱ブロック28を筒9の下端部の周囲に突出させて加熱ブロック28から筒9下端部への熱伝導を良くしたものである。図6(e)は筒の一部を構成する貫通孔を加熱ブロック38と一体成形するとともに、その貫通孔の下端部に筒の残部を構成する短筒状チップ49を嵌合したものである。加熱ブロック38を高熱伝導性材料で成形し、短筒状チップ49を非半田濡れ性耐熱材料で成形することができる。
【0029】
加熱手段としては、筒9と別体のヒータ8cに代えて筒9自体を抵抗体あるいは発熱体を埋め込んだセラミックで成形し、筒9に直接通電してもよい。また、筒9を磁性体で成形し、図7(a)に示すように外周にコイル48cを巻いて高周波電源48dより高周波電力を印加することにより筒9を加熱しても良い。あるいは、図7(b)に示すようにコイル48cに代えてシーズヒータ58cを巻いてもよい。いずれの場合も筒9を直接加熱するので立ち上がりが早く効率が良い。更にまた、ランドPの予熱は、輻射熱を利用して行ったが、ランドP及び糸半田の性質によっては筒9をランドPとピンTに当接し、伝導熱を利用して行っても良い。
【0030】
尚、図1に示すように、ジグ2eの一方の側には筒9の内径よりも小さい外径を有する管状のクリーナー2fが先端を上向きにして取り付けられている。そして、筒9の内面が汚れた場合にクリーナー2fが筒9の直下に位置するようにジグ2eを移動して図8(a)に示すように筒9にクリーナー2fを挿入し、吸引することにより筒9内面を掃除すると好ましい。クリーナー2fの外周面にブラシ2gが植毛されていると好適である。
筒9は、図8(b)に斜視図として示すように下端面が軸方向に少し切り込まれていてもよい。これにより近くにある隣のピンTとの干渉を避けることができる。
【0031】
図9は、棒状の金属端子ではなく被覆導線端末Uを配線基板Sの主面と平行にランドPに接合する方法を示し、(a)は斜視図、(b)〜(d)は鉛直方向断面図である。先端の被覆樹脂が剥がされた端末UがランドP上に置かれると筒9が下降し、半田片Fが落下して溶融半田F’となる。筒9を上昇させることにより、接合が完了する。
【0032】
−実施形態2−
この発明の製造装置の第二の実施形態を図10(a)に斜視図、図10(b)に要部断面図として示す。
製造装置11は、ガルウィング型リードLを有する半導体パッケージQのリードLを配線基板SのランドPに半田付けするものである。パッケージQの側面から複数のリードLが延びており、これらを同時に半田付けする必要がある。そこで、加熱ブロック8内に、リードLの数と同じ本数(図示は4本)の平行した貫通孔を有する筒59を埋め込み、同数の半田片Fを同時に落下させて溶融させるようにしたものである。
【0033】
−実施形態3−
この発明の製造装置の第三の実施形態を図11に要部断面図として示す。この実施形態は、実施形態1における受け刃51及び切り刃52をカッターユニットとしてではなく仲介ユニットとして使用する。そして、受け刃51の上に供給孔51bと同心をなす供給管41が配置され、その側面に定量間欠送り装置42が取り付けられている。定量間欠送り装置42は、上下に遮断ロッド42a、42bを有し、これらが供給管41内に交互に進退する。
【0034】
この実施形態では糸半田Wは、図示しないカッターユニットによって保持孔52aの長さよりも短い所定の長さの半田片Jに予め切断される。そして、多数の半田片Jが図11(a)に示すように、一列縦隊をなして自重で降下してくる。n番目の半田片Jが保持孔52aに入るとき上遮断ロッド42aが前進してn+1番目の半田片Jを押さえつけて待機させる。次に図11(b)に示すように切り刃52が前進してn番目の半田片Jを排出孔51d上に移動させる。その後は、実施形態1と同様にしてガイド管7を通じて半田ランドP上に落下させ、溶融させる。その間に並行して下遮断ロッド42bが前進し、替わって上遮断ロッド42aが後退し、n+1番目の半田片Jを下遮断ロッド42bの上に載せる。切り刃52が後退してきたところで下遮断ロッド42bが後退し、n+1番目の半田片Jを保持孔52aに入れる。
【0035】
−実施形態4−
この発明の製造装置の第四の実施形態を図12に要部断面図として示す。この実施形態では、半田片Fを溶融させている間に、筒9を平面視で前記端子と重なる範囲内で水平に移動させる。即ち、先ず図12(a)に示すように半田片Fを筒9内に落下させ、溶融させる。そして、図12(b)及び図12(c)に示すように筒9を一方向(図面左方向)に移動させ、その後反対方向(同右方向)に移動させる。これにより溶融半田がランドPの両端まで広がる。更に好ましくは前後方向にも移動させる。そして、筒9を上方に退避させると、図12(d)に示すように半田がランドP全体に広がる。いずれもランドPに対して筒9が相対移動すればよいので、筒9が固定された前記装置1の構成ではランドPが水平に移動させられる。また、図示しない旋回機構によりピンTを中心として図12(e)に示すように筒9を公転させてもよい。尚、図中の符号Mは、ワイヤを示す。
【0036】
−実施形態5−
この発明の製造装置の第五の実施形態を図13に要部斜視図、図14に要部断面図として示す。この実施形態ではカッターユニットで切り取られた半田片Fが直接筒内に落下するようにするため、実施形態1におけるガイド管7が省かれてカッターユニットの直下に筒が配置されていることと、カッターユニットの構成と、シャッターが備えられていることが実施形態1と異なる。以下、実施形態1との相違点を詳述する。
【0037】
カッターユニット15は、円柱状をなし、直径線上に貫通した半田保持孔15aを有する切り刃151と、切り刃151を回転可能に保持する軸受け部を有する受け刃152とからなる。受け刃152の側面には糸半田Wを半田保持孔15aに供給するために、切り刃151のある位相時に保持孔15aと一致する供給孔15bが形成されている。また、受け刃152の下部には保持孔15a内の半田片を排出するために、切り刃151の別の位相時に保持孔15aと一致する排出孔15cが形成されている。そして、排出孔15cと対向する上部にプランジャ15dを受け入れるプランジャ導入孔15eが形成されている。プランジャ導入孔15eは上方で分岐しており、分岐路は気体導入孔15fとして機能する。
【0038】
シャッター17は、受け刃152に固定されたシリンダ17a、ロッド17b及びシャッター板17cからなり、ロッド17bの往復に伴ってシャッター17cが排出孔15cと筒9との間を水平方向に進退することにより、筒9の後端を開閉する。
送りローラ4にて送られてきた糸半田Wは、供給孔15bを通って保持孔15aに入る(図14(a))。この状態で、切り刃151を自転させると剪断力が作用して糸半田Wが切断される(図14(b))。そして、シャッター17を開き、保持孔15aが排出孔15cと一致する位相で切り刃151を停止させ、気体を導入する。これにより、半田片Fは、排出孔15cより出て筒9内に入り(図14(c))、自重で落下し、筒9の下端面と対向するランドPに接する。気体導入によっては半田片Fが落下しにくい場合はプランジャ15dを下降させて半田片Fを押し下げる。その後、シャッター17を閉じ、半田片Fを加熱溶融する(図14(d))。
【0039】
シャッター17が閉じられているので、溶融半田から揮発したフラックスは、排出孔15cや保持孔15aに付着することなく、ランドPとピンTの表面を浄化する。従って、ランドPとピンTが良好に接合される。一回の半田付けに使用される半田は、保持孔15aに供給された長さで定まる一定長の半田片である。
【0040】
−実施形態6−
この発明の製造装置の第六の実施形態を図15に要部斜視図、図16に要部断面図として示す。この実施形態でもカッターユニットで切り取られた半田片Fが直接筒内に落下するようにするため、実施形態1におけるガイド管7が省かれてカッターユニットの直下に筒が配置されていることと、カッターユニットの構成と、シャッターが備えられていることが実施形態1と異なる。以下、実施形態1との相違点を詳述する。
【0041】
カッターユニット25は、平坦な上面を有する受け刃252と、受け刃252の上面をシリンダ25cの駆動で滑り動く切り刃251とからなる。受け刃252には垂直方向に貫通した半田保持孔25aが形成されている。切り刃251には垂直方向に貫通した半田供給孔25b及びプランジャ導入孔25eがそれぞれ切り刃251の前進時及び後退時に保持孔25aと一致する位置に形成されている。また、プランジャ導入孔25eは上方で分岐しており、分岐路は気体導入孔25fとして機能する。そして、実施形態5と同じくシャッター17が受け刃252に固定され、筒9の後端を開閉する。
この装置では保持孔25aが排出孔を兼ねている。このため構成が簡単である。しかも実施形態5におけると同じく良好に半田付けが行われる。
【0042】
−実施形態7−
これは実施形態6の変形例であって、図17に要部断面図として示すように、筒9の一側に通気孔9aを設けたものである。通気孔9aより筒9内に窒素などの不活性ガスを送ることにより、半田や端子の酸化が防止され、一層良好に半田付けが行われる。
【実施例】
【0043】
図4で示した形状で、窒化アルミニウム焼結体からなり、内径2.5mmの筒9と、共晶半田からなり直径1.2mm、長さ6mmの半田片Fとを準備した。そして、筒9内に半田片Fを供給し、筒9の下端温度を350℃に保って半田付けを行ったところ、半田片Fの全部がピンとランドに付着した。これを数十回繰り返したが、筒9の先端部の内面に半田が付着することなく、半田の詰まりが起きなかった。
比較のために、筒9と同形同大で銅からなる筒を用いて同様に半田付けを行ったところ、半田片Fの大部分が筒の内面に付着してしまい、ランド及びピンに半田が十分供給されず、ピンとランドが接合されなかった。また、半田付け3回目には半田の詰まりが起きてしまった。
【技術分野】
【0001】
この発明は、糸半田を溶融させて半田付けを行うための半田鏝、それを用いて電子機器を製造する方法、及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
配線基板のランドと金属ピンやワイヤなどの端子同士を半田付けするための鏝として、鏝先が筒状をなすものが知られている(特許文献1)。ランドから突き出たピンを筒の内周面で囲った状態で筒内に糸半田を供給し、筒を加熱することにより、溶融半田をピンの周囲に均等に回り込ませるとともに不要個所への溶融半田及びフラックスの飛散を防止しようとするものである。溶融半田が接する筒の内面は、ハンダメッキ等により半田に対する濡れ性が高められている。
同様の目的を達成するために、鏝が上半部ですり鉢状をなし、下半部で筒状をなすものも知られており(特許文献2)、こちらは内面が半田反発材料で形成されている。そして、前工程で糸半田を所定の長さに切断して半田片とし、これをすり鉢部分で溶融させた後、ピンを包囲する筒状部分に自重で流し込むことにより、ピンとランドが半田付けされる。
【特許文献1】特開平11−245029
【特許文献2】特開2001−203446
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1に記載の半田鏝を用いる場合、筒の内面に付着した半田により筒が詰まりやすく、それを防止するために筒の側面に形成した空気孔より半田が固化しないうちに空気を吹き付ける必要があり、面倒である。また、特許文献1に記載の半田鏝では、半田リールから連続して供給される糸半田の先端が、筒を介して加熱されることにより溶融と同時に未溶融の残部と分離される。従って、一回の半田付けに供される半田の量が一定でなく、製造される電子機器に接合不十分あるいは端子間短絡などの不良が生じることがある。
【0004】
次に、前記特許文献2に記載の半田鏝を用いる場合、すり鉢部分で半田を溶融させている間にフラックスが気化してしまい、ランドやピンにフラックスが供給されなくなる。このためランドやピンの酸化膜や汚れが除去されないまま溶融半田が流し込まれることとなり、半田がランドやピンに付かないことがある。
それ故、この発明の第一の課題は、フラックスの飛散を防止するとともに、詰まりの生じにくい半田鏝を提供することにある。第二の課題は、電子機器の半田付け工程において、一回の半田付けに供される半田の量を一定にし、且つ良好に半田付けすることが可能な電子機器製造装置を提供することにある。第三の課題は、高品質の電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
その課題を解決するために、この発明の半田鏝は、
少なくとも先端部内面が半田に対して濡れにくい材料で形成され、糸半田が通過可能な内径を有し、両端が開口した筒を備えることを特徴とする。
この半田鏝によれば、筒の両端が開口しているので、筒をランドの上に立てて、一回の半田付けに必要な長さに切断した糸半田を筒の後端から投入すれば、先端まで落下してランドやピンに接する。そして、先端部で半田を溶融させることにより、ピンやワイヤなどの相手側端子が一定量の半田で接合される。半田付け部が筒で囲まれているので、溶融半田やフラックスが周囲に飛散することはなく、しかも溶融半田が均等に回り込む。また、筒の先端部内面が半田に対して濡れにくい材料で形成されているので、筒内面に半田が付着することがほとんどなく、筒の詰まりを抑制できる。その結果、供給半田の定量性が維持されるとともに、接合後の外観がきれいに仕上がる。
【0006】
筒には、外周面から内周面まで貫通した通気孔が設けられていても良い。この通気孔より筒内に窒素などの不活性ガスを送り、半田や端子の酸化を防ぐことができるからである。
また、熱融解性被覆マグネットワイヤ(例えばポリウレタン被覆銅線)が金属ピンに巻き付けられたチョークコイルなどの電子部品を基板に接続する場合、この発明の鏝を用いれば、ワイヤ、金属ピン及びランドの三者を同時に半田付けすることができる。半田から溶出したフラックスが放散することなく筒内に止まり、金属の表面を浄化して半田に濡れやすくするからである。従って、ワイヤと金属ピンの二者をあらかじめ半田付けしておく必要が無く、工程を短縮化できる点で優れている。
尚、この明細書においてランドとは、ピン挿入孔を有しないパッドをも含む広義の電子機器上の端子をいう。
半田を溶融させるための加熱手段としては、前記筒の外周面にコイル状に巻かれたシーズヒーターが好ましい。筒を直接加熱するので立ち上がりが早く、高効率で安全だからである。
【0007】
従って、この半田鏝を用いて電子機器を製造する適切な方法は、
少なくとも先端部内面が半田に対して濡れにくい材料で形成され、糸半田が通過可能な
内径を有し、両端が開口した筒を備える半田鏝と、前記先端部で半田を溶融させるための加熱手段とを準備し、
前記筒の先端を電子機器の端子に接近させ、
糸半田を一回の半田付けに必要な長さに切断して得られた半田片を筒の後端から筒内に挿入して落下させ、
前記加熱手段により前記先端部で筒内の半田片を溶融させることを特徴とする。
【0008】
前記筒の内径は、半田片の長さよりも小さいのが好ましい。これにより、落下後に半田片が筒内で起立状態となり、そのため半田片の外周面と筒の内周面との間隔が最短となり、半田片が速やかに均一に溶融すると同時にランドやピンの表面がフラックスで浄化され、半田が付きやすくなるからである。尚、当然ながら、筒の内径は半田片の外径よりも大きく、ピンを挿入する場合はピンの外径よりも大きい。
【0009】
また、この製造方法に適切な装置は、
切り刃及び受け刃からなり、少なくともいずれか一方に所定の長さの糸半田を受け入れ可能な半田保持孔が形成され、互いに擦れ合いながら相対的に変位することにより、半田保持孔に挿入された糸半田を切り取るカッターユニットと、
少なくとも先端部内面が半田に対して濡れにくい材料で形成され、糸半田が通過可能な内径を有し、両端が開口した筒と、
前記先端部で半田を溶融させるための加熱手段と
を備えることを特徴とする。
この装置において、筒及び加熱手段は前記半田鏝に該当する。カッターにて切り取られた糸半田は、一回の半田付けに必要な長さの半田片となる。
【0010】
前記カッターユニットの一つの具体的構成においては、前記切り刃が駆動源の出力に応じて一方向に進退可能で、前記半田保持孔が切り刃の進退方向と直交する方向に貫通して形成される。この場合、前記受け刃が切り刃を進退方向に案内する凹部を有し、一側に切り刃の後退時に前記貫通孔と位置が合う半田供給孔が形成され、同じ側又は反対側に切り刃の前進時に前記貫通孔と位置が合う半田排出孔が形成される。そして、前記筒が、径方向位置が前記半田排出孔と一致するように置かれる。
【0011】
この構成によれば、供給孔より保持孔に糸半田を供給した状態で、受け刃に対して切り刃を前進させると両刃の嵌合部に剪断力が作用して糸半田が切断される。得られた半田片は、排出孔より出て筒内に入り、自重で落下し、筒の下端面と対向するランドに接する。そして、加熱溶融されて前記の通り接合が行われる。一回の半田付けに使用される半田は、保持孔に供給された長さで定まる一定長の半田片である。そして、保持孔に供給される糸半田の長さは、半田送りローラの回転数によって制御することができる。
【0012】
前記受け刃は、好ましくは半田排出孔と対向する位置に気体もしくはプランジャを受け入れる導入孔を有する。切断して得られた半田片にバリや曲げが生じていても導入孔から保持孔内に圧縮気体を吹き付けるかプランジャを挿入することにより、半田片を排出することができるからである。前記半田保持孔及び筒の内径は、半田保持孔の軸方向長さよりも小さいのが好ましい。これにより半田片を軸方向に立てた状態で少ない抵抗で筒の下端に送ることができるからである。
【0013】
前記カッターユニットの別の具体的構成においては、前記切り刃が駆動源の出力に応じて自転可能で、前記半田保持孔が切り刃の自転軸と直交する直径線上に貫通して切り刃に形成される。この場合、前記受け刃が、切り刃を保持する軸受け部を有し、一側に切り刃のある位相時に前記半田保持孔と位置が合う半田供給孔が形成され、他の側に他の位相時に前記半田保持孔と位置が合う半田排出孔が形成される。そして、前記筒が、径方向位置が前記半田排出孔と一致するように置かれる。
【0014】
この構成によれば、保持孔に糸半田を供給した状態で、切り刃を自転させると両刃の嵌合部に剪断力が作用して糸半田が切断される。得られた半田片は、排出孔より出て筒内に入り、自重で落下し、筒の下端面と対向するランドに接する。そして、加熱溶融されて前記の通り接合が行われる。一回の半田付けに使用される半田は、保持孔に供給された長さで定まる一定長の半田片である。前記構成と同じく、受け刃が、半田排出孔と対向する位置に気体もしくはプランジャを受け入れる導入孔を有すると良い。
【0015】
前記カッターユニットの更に別の具体的構成においては、前記切り刃が駆動源の出力に応じて一方向に進退可能で、前記受け刃が、切り刃を進退方向に案内する平面を有する。この場合、前記半田保持孔が切り刃の進退方向と直交する方向に貫通して受け刃に形成される。そして、前記筒が、径方向位置が前記半田保持孔と一致するように置かれる。
この構成によれば、保持孔に糸半田を供給した状態で、受け刃に対して切り刃を前進させると両刃の嵌合部に剪断力が作用して糸半田が切断される。得られた半田片は、保持孔より出て筒内に入り、自重で落下し、筒の下端面と対向するランドに接する。そして、加熱溶融されて前記の通り接合が行われる。一回の半田付けに使用される半田は、保持孔に供給された長さで定まる一定長の半田片である。
【0016】
前記製造装置の基本的構成に更に、前記筒の後端を開閉するシャッターを備えると好ましい。シャッターが無ければ、半田溶融時に蒸発したフラックスが、筒の前工程に位置する半田片の通路に侵入して、通路内に付着し、通路を塞ぐことがある。そこで、筒内の半田片が溶融中はシャッターを閉じることにより、筒の前工程の通路を常に清浄に保つことができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、接合部に供給される半田が一定長の半田片であって、接合後に鏝にほとんど付着せず周囲に飛散もしないので、接合に消費される半田量が一定である。従って、優れた品質の電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1に係る製造装置を示す斜視図である。
【図2】同装置に用いられるカッターユニットを示す鉛直方向断面図であり、(a)は切り刃の後退時、(b)は前進時である。
【図3】同装置に用いられる半田鏝と配線基板を示す斜視図である。
【図4】同半田鏝と配線基板を示す鉛直方向断面図であり、(a)は半田溶融前、(b)は溶融後である。
【図5】実施形態1における加熱ブロックの変形例を示す斜視図である。
【図6】実施形態1における筒と加熱ブロックの種々の組み合わせを示す断面図である。
【図7】実施形態1における加熱手段の別の例を示す斜視図である。
【図8】(a)は筒とクリーナーとの関係を示す断面図、(b)は筒の変形例を示す斜視図である。
【図9】実施形態1の製造装置で接合するもう一つの方法を示す斜視図である。
【図10】実施形態2に係る製造装置を示し、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【図11】実施形態3に係る製造装置を示す要部断面図である。
【図12】実施形態4に係る製造装置を示す要部断面図である。
【図13】実施形態5に係る製造装置を示す要部斜視図である。
【図14】実施形態5に係る製造装置を示す要部断面図である。
【図15】実施形態6に係る製造装置を示す要部斜視図である。
【図16】実施形態6に係る製造装置を示す要部断面図である。
【図17】実施形態7に係る製造装置を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1,11 電子機器製造装置
2 本体
2a 台
2b 壁
2c 連結プレート
2d ブラケット
2e ジグ
2x,2y,2z レール
3 半田リール
4 送りローラ
5 カッターユニット
6 センサ
7 ガイド管
8,18,28 加熱ブロック
9,19,29,39,49 筒
42 定量間欠送り装置
51 受け刃
52 切り刃
51a 凹部
51b 半田供給孔
51c 気体導入孔
51d 半田排出孔
52a 半田保持孔
F,J 半田片
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
−実施形態1−
この発明の製造装置の第一の実施形態を図面とともに説明する。図1は実施形態の電子機器製造装置を示す斜視図、図2は同装置に用いられるカッターユニットを示す鉛直方向断面図((a)は切り刃の後退時、(b)は前進時)、図3は同装置に用いられる半田鏝と配線基板を示す斜視図、図4は同半田鏝と配線基板を示す鉛直方向要部断面図((a)は半田溶融前、(b)は溶融後)である。
【0021】
製造装置1は、電子機器の配線基板S上のランドに金属ピンを挿入した状態でランドとピンを糸半田Wで接合するもので、平坦な台2a及び台2aに垂直に固定された壁2bからなる本体2を備えている。台2a上にはX方向に延びるレール2xが敷かれ、そのレール2x上にY方向に延びるレール2yがレール2xに沿って移動可能に固定されている。レール2y上には配線基板Sを載せるジグ2eがXY方向に移動可能に固定されている。また、壁2bにはZ方向に延びるレール2zが取り付けられている。レール2zには連結プレート2cがレール2zに沿って移動可能に固定されている。各移動は、モータなどの図示しない駆動源によりなされる。
【0022】
連結プレート2cには、平面視コの字のブラケット2dを介して半田リール3、送りローラ4、カッターユニット5、センサ6及びガイド管7が上から順に取り付けられている。
カッターユニット5は、図2(a)に示すように互いに平行な上下面で挟まれる凹部51aを有する受け刃51、凹部51aに摺動可能に嵌合する切り刃52及び切り刃52を駆動する流体圧シリンダ53からなる。シリンダ53は流体圧によりその出力ロッドが前進、後退するものである。
【0023】
受け刃51の上部には上面から凹部51aまで貫通した供給孔51b及び導入孔51cが形成されている。供給孔51bは、送りローラ4の直下に位置し、糸半田Wが抵抗無く通過可能な内径を有する。導入孔51cは、供給孔51bよりもシリンダ53から遠い位置にあって、供給孔51bとほぼ同じ内径を有する。受け刃51の下部には水平方向位置を導入孔51cと同じくし、供給孔51bとほぼ同じ内径の排出孔51dが形成されている。切り刃52は、上下方向に貫通し供給孔51bとほぼ同じ内径の保持孔52aを有する。切り刃52の長さ及びシリンダ53のストロークは、保持孔52aの位置が切り刃52の後退時には供給孔51bと一致し、前進時には導入孔51c及び排出孔51dと一致するように設計されている。ガイド管7は、排出孔51dの直下に位置する。センサ6は、ガイド管7を間にして一方の側に設けられた発光素子6a、及び他方の側に設けられた受光素子6bからなる。ガイド管7は、透明材料からなるか又は少なくともセンサ6の高さに透明窓を有する。
【0024】
また、連結プレート2cには、ブラケット2dよりも下方に銅などの高熱伝導性材料からなる加熱ブロック8が取り付けられている。加熱ブロック8は、図3に示すように固定端側の薄肉部8aとこれに連なる自由端側の厚肉部8bとからなり、薄肉部8aには連結プレート2cと厚肉部8bとの間を断熱するために多数の孔が形成されている。厚肉部8bにはヒータ8c及び筒9が埋め込まれている。筒9は、保持孔52aとほぼ同じ内径を有し、上下に貫通していて加熱ブロック8よりも下方に突出しており、周辺部品との干渉を避けるため下端部外径はテーパになっている。筒9は、600℃程度の温度に耐えることができて少なくとも下端部内周面が半田に対して濡れにくい性質を有するものであればよく、単一材料からなっていても複数部材の組み合わせであってもよい。単一材料からなる場合は、セラミック、またはステンレス、チタンなどの非半田濡れ性金属が望ましい。また、セラミックの場合は窒化アルミニウム、炭化ケイ素などの高熱伝導性セラミックが特に望ましい。
【0025】
糸半田Wの直径、保持孔52a及び筒9の寸法は、一回の半田付けに必要な半田の量に応じて適宜定めればよいが、例えばピンの外径が1mmであるとき、糸半田Wの直径を1.2mm、保持孔52a及び筒9の内径を3mm、糸半田Wの切断片(半田片)の長さを6mm、保持孔52aの長さを7mmに設定することで、半田片が筒9内でピンに隣接しながら起立した状態となり、半田片全体が速やかに均等に加熱される。従って、糸半田Wが共晶半田である場合、筒9の下端温度を350℃とすれば、良好に半田付けをすることができる。
【0026】
製造装置1を用いて半田付けをする手順は次の通りである。
配線基板SのランドPに金属ピンを挿入し、配線基板Sをジグ2eに載せる。そして、ランドが筒9の真下に位置するようにジグ2eを配線基板Sとともに移動させる。連結プレート2cを筒9の下端面がランドの直近に位置するところまで下げる。図2(a)に示すように切り刃52を保持孔52aが供給孔51bと一致するところまで後退させておき、ヒータ8cに通電しておく。ランドPとピンTはこの輻射熱で予熱される。送りローラ4を回転させて半田リール3より糸半田Wを引き出して供給孔51bに通す。糸半田Wが保持孔52aに入り、所定の長さ送られた時点で送りローラ4を停止させる。糸半田Wの送り量は、送りローラ4の回転数によって制御される。この状態でシリンダ53を駆動して切り刃52を前進させる。
【0027】
すると図2(b)に示すように、切り刃52と受け刃51との間に剪断力が働いて糸半田Wが所定の長さに切断され、半田片Fとなって保持孔52aとともに排出孔51d上に移動する。ここで導入孔51cに接続されたホース51eを介して空気を保持孔52aに吹き付ける。半田片Fは、排出孔51dよりガイド管7内に落下し、図4(a)に示すように筒9に入ってランドP上に向かう。途中、センサ6が半田片Fの通過を検知し、その信号に基づいて、保持孔52aが供給孔51bと一致するところまで切り刃52を後退させた所で送りローラ4が再度回転し、後続の糸半田Wを保持孔51bに供給する。ランドPに達した半田片Fは、図4(b)に示すようにヒータ8cの熱により溶融半田F’となってランドPとピンTを接合する。溶融半田F’は筒9で囲まれているので、周囲に飛散することはない。また、筒9の下端部内周面が半田に濡れにくい材料からなっているので、半田片Fの全量が金属ピンTとランドPとの接合に消費され、接合後の外観もきれいに仕上がる。溶融中にフラックスの燃焼により発生する煙は、吸引管8dより吸引される。その後、連結プレート2cが上昇し、筒9が配線基板Sから遠ざかる。そして、ジグ2eが配線基板Sを伴ってX方向又はZY方向に移動し、次のランドと金属ピンとの接合工程を開始する。
【0028】
装置1において、ヒータ8cは前記と異なり、筒9と平行になるように加熱ブロックに埋め込んでも良い。この場合、図5に斜視図として示すように加熱ブロック18におけるヒータ8c周囲の肉厚を一層厚くするとよい。筒と加熱ブロックとの組み合わせ構造は種々のものが適用可能である。例えば、図6(a)に示すように筒19を加熱ブロックと一体成形したものでもよい。図6(b)は筒29を加熱ブロックと一体成形するとともに、筒29の上部内周面を上向きに広がるテーパとしたものである。図6(c)は筒39を加熱ブロックと一体成形するとともに、筒39の内周面に半田に濡れにくい材料からなる被膜39aを形成したものである。被膜39aは下端部内周面にだけ形成してもよい。図6(d)は図4と同様に筒9を加熱ブロック28と別体成形したものであるが、加熱ブロック28を筒9の下端部の周囲に突出させて加熱ブロック28から筒9下端部への熱伝導を良くしたものである。図6(e)は筒の一部を構成する貫通孔を加熱ブロック38と一体成形するとともに、その貫通孔の下端部に筒の残部を構成する短筒状チップ49を嵌合したものである。加熱ブロック38を高熱伝導性材料で成形し、短筒状チップ49を非半田濡れ性耐熱材料で成形することができる。
【0029】
加熱手段としては、筒9と別体のヒータ8cに代えて筒9自体を抵抗体あるいは発熱体を埋め込んだセラミックで成形し、筒9に直接通電してもよい。また、筒9を磁性体で成形し、図7(a)に示すように外周にコイル48cを巻いて高周波電源48dより高周波電力を印加することにより筒9を加熱しても良い。あるいは、図7(b)に示すようにコイル48cに代えてシーズヒータ58cを巻いてもよい。いずれの場合も筒9を直接加熱するので立ち上がりが早く効率が良い。更にまた、ランドPの予熱は、輻射熱を利用して行ったが、ランドP及び糸半田の性質によっては筒9をランドPとピンTに当接し、伝導熱を利用して行っても良い。
【0030】
尚、図1に示すように、ジグ2eの一方の側には筒9の内径よりも小さい外径を有する管状のクリーナー2fが先端を上向きにして取り付けられている。そして、筒9の内面が汚れた場合にクリーナー2fが筒9の直下に位置するようにジグ2eを移動して図8(a)に示すように筒9にクリーナー2fを挿入し、吸引することにより筒9内面を掃除すると好ましい。クリーナー2fの外周面にブラシ2gが植毛されていると好適である。
筒9は、図8(b)に斜視図として示すように下端面が軸方向に少し切り込まれていてもよい。これにより近くにある隣のピンTとの干渉を避けることができる。
【0031】
図9は、棒状の金属端子ではなく被覆導線端末Uを配線基板Sの主面と平行にランドPに接合する方法を示し、(a)は斜視図、(b)〜(d)は鉛直方向断面図である。先端の被覆樹脂が剥がされた端末UがランドP上に置かれると筒9が下降し、半田片Fが落下して溶融半田F’となる。筒9を上昇させることにより、接合が完了する。
【0032】
−実施形態2−
この発明の製造装置の第二の実施形態を図10(a)に斜視図、図10(b)に要部断面図として示す。
製造装置11は、ガルウィング型リードLを有する半導体パッケージQのリードLを配線基板SのランドPに半田付けするものである。パッケージQの側面から複数のリードLが延びており、これらを同時に半田付けする必要がある。そこで、加熱ブロック8内に、リードLの数と同じ本数(図示は4本)の平行した貫通孔を有する筒59を埋め込み、同数の半田片Fを同時に落下させて溶融させるようにしたものである。
【0033】
−実施形態3−
この発明の製造装置の第三の実施形態を図11に要部断面図として示す。この実施形態は、実施形態1における受け刃51及び切り刃52をカッターユニットとしてではなく仲介ユニットとして使用する。そして、受け刃51の上に供給孔51bと同心をなす供給管41が配置され、その側面に定量間欠送り装置42が取り付けられている。定量間欠送り装置42は、上下に遮断ロッド42a、42bを有し、これらが供給管41内に交互に進退する。
【0034】
この実施形態では糸半田Wは、図示しないカッターユニットによって保持孔52aの長さよりも短い所定の長さの半田片Jに予め切断される。そして、多数の半田片Jが図11(a)に示すように、一列縦隊をなして自重で降下してくる。n番目の半田片Jが保持孔52aに入るとき上遮断ロッド42aが前進してn+1番目の半田片Jを押さえつけて待機させる。次に図11(b)に示すように切り刃52が前進してn番目の半田片Jを排出孔51d上に移動させる。その後は、実施形態1と同様にしてガイド管7を通じて半田ランドP上に落下させ、溶融させる。その間に並行して下遮断ロッド42bが前進し、替わって上遮断ロッド42aが後退し、n+1番目の半田片Jを下遮断ロッド42bの上に載せる。切り刃52が後退してきたところで下遮断ロッド42bが後退し、n+1番目の半田片Jを保持孔52aに入れる。
【0035】
−実施形態4−
この発明の製造装置の第四の実施形態を図12に要部断面図として示す。この実施形態では、半田片Fを溶融させている間に、筒9を平面視で前記端子と重なる範囲内で水平に移動させる。即ち、先ず図12(a)に示すように半田片Fを筒9内に落下させ、溶融させる。そして、図12(b)及び図12(c)に示すように筒9を一方向(図面左方向)に移動させ、その後反対方向(同右方向)に移動させる。これにより溶融半田がランドPの両端まで広がる。更に好ましくは前後方向にも移動させる。そして、筒9を上方に退避させると、図12(d)に示すように半田がランドP全体に広がる。いずれもランドPに対して筒9が相対移動すればよいので、筒9が固定された前記装置1の構成ではランドPが水平に移動させられる。また、図示しない旋回機構によりピンTを中心として図12(e)に示すように筒9を公転させてもよい。尚、図中の符号Mは、ワイヤを示す。
【0036】
−実施形態5−
この発明の製造装置の第五の実施形態を図13に要部斜視図、図14に要部断面図として示す。この実施形態ではカッターユニットで切り取られた半田片Fが直接筒内に落下するようにするため、実施形態1におけるガイド管7が省かれてカッターユニットの直下に筒が配置されていることと、カッターユニットの構成と、シャッターが備えられていることが実施形態1と異なる。以下、実施形態1との相違点を詳述する。
【0037】
カッターユニット15は、円柱状をなし、直径線上に貫通した半田保持孔15aを有する切り刃151と、切り刃151を回転可能に保持する軸受け部を有する受け刃152とからなる。受け刃152の側面には糸半田Wを半田保持孔15aに供給するために、切り刃151のある位相時に保持孔15aと一致する供給孔15bが形成されている。また、受け刃152の下部には保持孔15a内の半田片を排出するために、切り刃151の別の位相時に保持孔15aと一致する排出孔15cが形成されている。そして、排出孔15cと対向する上部にプランジャ15dを受け入れるプランジャ導入孔15eが形成されている。プランジャ導入孔15eは上方で分岐しており、分岐路は気体導入孔15fとして機能する。
【0038】
シャッター17は、受け刃152に固定されたシリンダ17a、ロッド17b及びシャッター板17cからなり、ロッド17bの往復に伴ってシャッター17cが排出孔15cと筒9との間を水平方向に進退することにより、筒9の後端を開閉する。
送りローラ4にて送られてきた糸半田Wは、供給孔15bを通って保持孔15aに入る(図14(a))。この状態で、切り刃151を自転させると剪断力が作用して糸半田Wが切断される(図14(b))。そして、シャッター17を開き、保持孔15aが排出孔15cと一致する位相で切り刃151を停止させ、気体を導入する。これにより、半田片Fは、排出孔15cより出て筒9内に入り(図14(c))、自重で落下し、筒9の下端面と対向するランドPに接する。気体導入によっては半田片Fが落下しにくい場合はプランジャ15dを下降させて半田片Fを押し下げる。その後、シャッター17を閉じ、半田片Fを加熱溶融する(図14(d))。
【0039】
シャッター17が閉じられているので、溶融半田から揮発したフラックスは、排出孔15cや保持孔15aに付着することなく、ランドPとピンTの表面を浄化する。従って、ランドPとピンTが良好に接合される。一回の半田付けに使用される半田は、保持孔15aに供給された長さで定まる一定長の半田片である。
【0040】
−実施形態6−
この発明の製造装置の第六の実施形態を図15に要部斜視図、図16に要部断面図として示す。この実施形態でもカッターユニットで切り取られた半田片Fが直接筒内に落下するようにするため、実施形態1におけるガイド管7が省かれてカッターユニットの直下に筒が配置されていることと、カッターユニットの構成と、シャッターが備えられていることが実施形態1と異なる。以下、実施形態1との相違点を詳述する。
【0041】
カッターユニット25は、平坦な上面を有する受け刃252と、受け刃252の上面をシリンダ25cの駆動で滑り動く切り刃251とからなる。受け刃252には垂直方向に貫通した半田保持孔25aが形成されている。切り刃251には垂直方向に貫通した半田供給孔25b及びプランジャ導入孔25eがそれぞれ切り刃251の前進時及び後退時に保持孔25aと一致する位置に形成されている。また、プランジャ導入孔25eは上方で分岐しており、分岐路は気体導入孔25fとして機能する。そして、実施形態5と同じくシャッター17が受け刃252に固定され、筒9の後端を開閉する。
この装置では保持孔25aが排出孔を兼ねている。このため構成が簡単である。しかも実施形態5におけると同じく良好に半田付けが行われる。
【0042】
−実施形態7−
これは実施形態6の変形例であって、図17に要部断面図として示すように、筒9の一側に通気孔9aを設けたものである。通気孔9aより筒9内に窒素などの不活性ガスを送ることにより、半田や端子の酸化が防止され、一層良好に半田付けが行われる。
【実施例】
【0043】
図4で示した形状で、窒化アルミニウム焼結体からなり、内径2.5mmの筒9と、共晶半田からなり直径1.2mm、長さ6mmの半田片Fとを準備した。そして、筒9内に半田片Fを供給し、筒9の下端温度を350℃に保って半田付けを行ったところ、半田片Fの全部がピンとランドに付着した。これを数十回繰り返したが、筒9の先端部の内面に半田が付着することなく、半田の詰まりが起きなかった。
比較のために、筒9と同形同大で銅からなる筒を用いて同様に半田付けを行ったところ、半田片Fの大部分が筒の内面に付着してしまい、ランド及びピンに半田が十分供給されず、ピンとランドが接合されなかった。また、半田付け3回目には半田の詰まりが起きてしまった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸半田が通過可能な内径を有し、両端が開口した筒状の半田鏝であって、
a)窒化アルミニウムまたは炭化ケイ素の単一材料で形成され、
b)前記筒の先端部で半田を溶融させるための加熱手段が前記筒に設置されており、
c)前記筒が前記加熱手段よりも下方に突出ている、
ことを特徴とする、筒状の半田鏝。
【請求項2】
上記筒が円筒形であることを特徴とする、請求項1に記載の半田鏝。
【請求項3】
前記筒が、外周面から内周面まで貫通した通気孔を有することを特徴とする請求項1または2に記載の半田鏝。
【請求項4】
前記筒の材料が窒化アルミニウム焼結体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の半田鏝。
【請求項5】
前記加熱手段が、加熱ブロックであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の半田鏝。
【請求項6】
前記加熱ブロックに、ヒーターと前記筒が埋め込まれていることを特徴とする請求項5に記載の半田鏝。
【請求項7】
前記加熱ブロックと前記筒が別体成形されていることを特徴とする請求項6に記載の半田鏝。
【請求項1】
糸半田が通過可能な内径を有し、両端が開口した筒状の半田鏝であって、
a)窒化アルミニウムまたは炭化ケイ素の単一材料で形成され、
b)前記筒の先端部で半田を溶融させるための加熱手段が前記筒に設置されており、
c)前記筒が前記加熱手段よりも下方に突出ている、
ことを特徴とする、筒状の半田鏝。
【請求項2】
上記筒が円筒形であることを特徴とする、請求項1に記載の半田鏝。
【請求項3】
前記筒が、外周面から内周面まで貫通した通気孔を有することを特徴とする請求項1または2に記載の半田鏝。
【請求項4】
前記筒の材料が窒化アルミニウム焼結体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の半田鏝。
【請求項5】
前記加熱手段が、加熱ブロックであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の半田鏝。
【請求項6】
前記加熱ブロックに、ヒーターと前記筒が埋め込まれていることを特徴とする請求項5に記載の半田鏝。
【請求項7】
前記加熱ブロックと前記筒が別体成形されていることを特徴とする請求項6に記載の半田鏝。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−77840(P2013−77840A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−5104(P2013−5104)
【出願日】平成25年1月16日(2013.1.16)
【分割の表示】特願2008−530806(P2008−530806)の分割
【原出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【出願人】(502366262)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成25年1月16日(2013.1.16)
【分割の表示】特願2008−530806(P2008−530806)の分割
【原出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【出願人】(502366262)
【Fターム(参考)】
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