説明

単一ドメインTDF関連化合物およびその類似体

本発明は広く、組織分化因子(TDF)類似体に関する。さらに具体的には、本発明は、TDF様受容体の機能モジュレータとして働く分子の同定、設計および産生に有用な、構造に基づく方法および組成物に関する。さらに本発明は、TDFに関連した疾患を検出、予防、および治療する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は広く、組織分化因子(TDF)類似体に関する。さらに具体的には、本発明は、TDF様受容体の機能モジュレータとして働く分子の同定、設計および産生に有用な、構造に基づく方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
細胞分化は、胚形成の最中に始まり、成人組織の修復および再生機構において、生命体の一生を通して様々な度合いで継続する、組織形態形成の中心的な特性である。成人組織における形態形成の度合いは組織の種類によって多様であり、特に特定の組織内における細胞のターンオーバーの度合いに関連する。
【0003】
細胞の分化への刺激を規制する細胞事象および分子事象は、徹底的に研究されている領域である。医学および獣医学の分野で、細胞の分化および組織形態形成を規制する因子の発見により、損傷のある、または罹患した哺乳動物の組織を修復および再生する能力が、著しく向上されることが期待されている。ヒトおよび獣医学的治療における特に有用な領域として、再建外科、ならびに、例えば関節炎、気腫、骨粗しょう症、心筋症、肝硬変、退化性神経疾患、炎症性疾患、および癌を含む組織変性疾患の治療、ならびに組織、臓器、および肢の再生などが含まれる。「形態発生の」および「形態形成の」という単語は、しばしば同じ意味で使用される。
【0004】
細胞の分化に関与すると思われる多くの因子が、近年になり単離された。近年、当技術分野で「ポリペプチドのトランスフォーミング成長因子β(TGF-β)スーパーファミリー」と呼ばれる、構造上関連のあるポリペプチドの「スーパーファミリー」の明確なサブファミリーが、真の組織モルフォゲン(morphogen)として同定された。
【0005】
真の組織形態形成ポリペプチドの明確な「サブファミリー」のメンバーは、6または7つの保存されたシステイン骨格を含む形態形成的に活性なC末端ドメイン内の、多量のアミノ酸配列の相同性を共有し、様々な臓器および組織における、組織特異的な形態形成を誘導するインビボ活性を共有する。ポリペプチドは、例えば適切な細胞表面の分子を結合し、形態形成的に寛容な状況で、細胞が増殖および分化するように傾向付ける、さもなければ刺激することにより、明らかに前駆細胞と接触し、相互作用する。TGFβポリペプチドスーパーファミリーの様々なメンバーを結合する細胞表面の受容体に関する近年の研究により、ペプチドは、I型およびII型受容体と呼ばれる二つの異なった受容体と相互作用することにより、その活性が仲介されることが示唆されている。I型またはII型受容体は、両方ともセリン/トレオニンキナーゼであり、本質的にキナーゼと、一回膜を貫通するのに十分なだけ短く延長した疎水性の配列とから成る細胞内ドメイン、および高濃度の保存されたシステインを特徴とする細胞外ドメインといった同様の構造を共有している。
【0006】
これらの形態形成ポリペプチドには、すべての血管形成、結合組織の形成、および自然に発生する組織により必要とされる交感神経支配を含む、新たな臓器特異的な組織の形成をもたらす、細胞および分子事象の発達のカスケードを誘導する能力がある。ポリペプチドは、歯周組織、歯質、肝臓、および網膜組織を含む神経組織と同様、軟骨および骨の両方の形態形成を誘導することが示されている。
【0007】
真の組織形態形成ポリペプチドは、C末端ドメインにおいて高度な配列の相同性を共有し、また単に線維性の(瘢痕)組織の形成を誘導するだけではなく、機能組織の形成の原因となる一連の完全な事象を、他の力を借りずに誘導することができるという点で、TGFβスーパーファミリーの他のメンバーとは異なる、ポリペプチドの明確なサブファミリーとして当技術分野で認められている。具体的には、形態形成ポリペプチドファミリーのメンバーは、形態形成的に寛容な状況において、細胞の増殖および細胞の分化を刺激する、また分化された細胞の成長および維持を補助することができる。形態形成ポリペプチドはまた、明らかに内分泌因子、傍分泌因子、または自己分泌因子としての機能を果たすことがある。
【0008】
これらの生物学的活性の結果、例えば、骨折などの骨の損傷の再生治療を誘導するための治療用組成物、ならびに骨減少症の骨組織など、罹病組織における健全な代謝特性を維持または修復するための治療用組成物を含む、損傷したまたは罹患した哺乳動物組織を治療するための、モルフォゲンに基づく治療法の開発に向けて、多大な努力が払われてきた。
【発明の開示】
【0009】
発明の概要
本発明は、TGFβスーパーファミリーポリペプチドに類似した特性を有する組成物、およびTGFβ様ポリペプチドのレベル異常を特徴とする症状を有する対象の、予防的治療および治療上の処置方法に関連している。特に、組成物および方法は、骨の形態形成タンパク質様の特性を有し、これに関連した疾患の治療または予防に有用である。
【0010】
一つの局面において、本発明は配列番号:1〜208、そしてさらに配列番号:1〜208のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む群より選択されるアミノ酸配列を有する、TDFRP化合物を含む。さらに、変異体、類似体、相同体、またはポリペプチドの断片およびポリヌクレオチド配列、そしてこれらを組み入れた小分子なども含まれる。一つの態様において、TDFRP化合物は、これに限定されないがTGFβスーパーファミリー受容体などの、組織分化因子受容体(TDFR)を発現する細胞の細胞膜全体のシグナル伝達を調節する。別の態様において、本発明はTDFRP化合物をコードする単離された核酸分子を含む。さらに別の態様において、単離された核酸はベクターであり、このベクターは、核酸に動作可能な状態で結合することのできるプロモーター配列を随意に含んでいてもよく、プロモーターによって核酸分子が発現される。一つの態様において、プロモーターは誘導性である。また別の態様において、ベクターは、原核細胞または真核細胞、好ましくは哺乳動物の細胞、またはより好ましくはヒトの細胞に形質転換される。またさらに別の態様において、ベクターは、哺乳動物細胞に感染し、ウィルスに感染した動物において配列番号:1〜208のポリペプチドを発現させる、ウィルスベクターである。
【0011】
別の局面において、本発明は、TDFRP化合物および薬学的に許容される担体を有する薬学的組成物を含む。
【0012】
さらに別の局面において、本発明は、TDFRP化合物に対する抗体、またはTDFRP化合物に免疫特異的に結合する、それらの抗体の断片を含む。一つの態様において、抗体は、これらに限定されないがFab、(Fab)2、Fv、またはFc断片などの、抗体断片である。別の態様において、別の態様において、抗体またはその断片は、モノクローナル抗体である。さらに別の態様において、抗体またはその断片は、ヒト化抗体である。またさらに別の態様において、本発明は、配列番号:1〜208、または配列番号:1〜208の少なくとも6つの隣接したアミノ酸残基に免疫特異的な抗体または抗体断片と、薬学的に許容される担体とを含む。また別の態様では、本発明は、配列番号:1〜208のポリペプチドまたは核酸配列を有する薬学的組成物と、抗体または抗体断片と、薬学的に許容される担体とを含む。
【0013】
また別の局面において、本発明は、TDFRP化合物の生成方法であり、TDFRP化合物の発現をもたらす条件下で、配列番号:1〜208をコードする核酸を含む細胞を培養する段階、および発現したTDFRP化合物を回収する段階を備えた方法を含む。
【0014】
またさらに別の局面において、本発明は、試料中のTDFRP化合物の存在または量を測定する方法であり、試料を提供する段階、その試料を、TDFRP化合物に免疫特異的に結合する配列番号:1〜208に対する抗体または抗体断片に接触させる段階、およびTDFRP化合物に結合した抗体の存在または量を測定することにより、試料中のTDFRP化合物の存在または量を測定する段階を備えた方法を含む。
【0015】
また別の局面において、本発明は、試料中の配列番号:1〜208をコードする核酸分子の存在または量を測定する方法であり、試料を提供する段階、その試料を、核酸分子にハイブリダイズする核酸プローブに接触させる段階、および核酸分子にハイブリダイズしたプローブの存在または量を測定することにより、試料中の核酸分子の存在または量を測定する段階を備えた方法を含む。
【0016】
別の局面において、本発明は、配列番号:1〜208に結合する候補化合物を同定する方法であり、化合物をTDFRP化合物に接触させる段階、候補化合物がTDFRP化合物に結合するかどうかを決定する段階を備えた方法を含む。
【0017】
一つの局面において、本発明は、組織分化因子に関連した疾患を治療または予防する方法であり、そのような治療または予防を必要としている対象に、対象の組織分化因子に関連した疾患を治療または予防するのに十分な量のTDFRP化合物を投与することを含む方法を含む。一つの態様において、組織分化因子に関連した疾患は、組織変性疾患および組織再生からなる群より選択される。別の態様において、組織変性疾患は、腎臓病、外傷性脳損傷、脳梗塞、アテローム性動脈硬化症、関節炎、気腫、骨粗しょう症、心筋症、肝硬変、退化性神経疾患、ホルトオーラム(Holt-Oram)病、眼疾患、糖尿病性腎症、変性骨疾患、腎臓病、歯周病、糖尿病性腎症、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、心血管疾患、炎症性疾患、免疫疾患、骨疾患、生殖器の疾患、造血疾患、または癌である。別の態様において、組織再生は、筋肉、樹枝状組織、神経、腎臓、脳、骨、皮膚、肺、筋肉、卵巣、精巣、心臓、脾臓、軟骨、神経、歯周、歯質、肝臓、脈管、結合、リンパ管、造血、または腎臓組織の再生を含む。さらに別の態様において、本発明は、対象の組織分化因子に関連した疾患を治療または予防するのに十分な量の請求項5記載の核酸を、治療または予防が望まれる対象に投与することによって、組織分化因子に関連した疾患を治療または予防する方法を含む。一つの態様において、対象はヒトである。別の態様において、対象は動物である。
【0018】
一つの局面において、本発明は、薬学的TDFRP組成物およびその内容物の使用説明書の入っている、一つ以上の容器を備えたキットを含む。
【0019】
また別の局面において、本発明は、第1の哺乳動物対象において、組織分化因子受容体のレベル変化に関連する疾患の存在、またはその疾患にかかる傾向を決定する方法であり、第1の哺乳動物対象から得た試験試料を提供する段階、第1の哺乳動物対象から得た試験試料を、TDFRP化合物に接触させる段階、化合物と組織分化因子受容体との複合体のレベルを検出する段階、第1の哺乳動物対象から得た試験試料中の組織分化因子受容体の発現レベルを定量化する段階、段階(a)の試料中の組織分化因子受容体の量と、疾患に罹患していないまたは罹患する傾向がないことがわかっている第2の哺乳動物対象から得た対照試料中に存在する組織分化因子受容体の量とを比較する段階を備えた方法を含む。このとき、対照試料と比較した第1の哺乳動物対象における組織分化因子受容体の発現レベルの変化により、疾患の存在または素因が示される。
【0020】
また別の局面において、本発明は、哺乳動物における病理的状態を治療する方法であり、病理的状態を緩和するのに十分な量の化合物を投与することを含む方法を含む。このとき化合物は、配列番号:1〜208を含むアミノ酸配列を含む化合物と、少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有する化合物である。
【0021】
別の局面において、本発明は、哺乳動物における病理的状態を治療する方法であり、哺乳動物に対し、配列番号:1〜208またはその少なくとも6つの隣接したアミノ酸に免疫特異的な抗体または抗体断片を、病理的状態を緩和するのに十分な量投与することを含む方法を含む。一つの態様において、本発明は、哺乳動物における、組織分化因子に関連した疾患を治療する方法であり、哺乳動物に、TDFRP化合物の発現または活性を調節する少なくとも一つの化合物を投与することを含む方法を含む。また別の態様において、組織分化因子に関連した疾患は、腎臓病、外傷性脳損傷、脳梗塞、アテローム性動脈硬化症、関節炎、気腫、骨粗しょう症、心筋症、肝硬変、退化性神経疾患、ホルトオーラム病、眼疾患、糖尿病性腎症、変性骨疾患、腎臓病、歯周病、糖尿病性腎症、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、心血管疾患、炎症性疾患、免疫疾患、骨疾患、生殖器の疾患、造血疾患、または癌からなる群より選択される。さらに別の態様において、本発明は、組織分化因子に関連した疾患の治療に使用される化合物を含む。このとき、化合物は配列番号:1〜208である。また別の態様において、本発明は、組織分化因子に関連した疾患の、治療用薬剤製造のための化合物の使用を含む。このとき、化合物は配列番号:1〜208である。
【0022】
別の局面において、本発明は、TDFRP化合物に結合する候補化合物を同定する方法であり、候補化合物を提供する段階、試験化合物とTDFRP化合物との間に複合体が形成された状態で候補化合物をTDFRP化合物に接触させる段階、複合体の共結晶が形成される状況下で複合体をインキュベートする段階、x線回折により複合体の構造原子座標を決定する段階、および複合体のモデルを作って候補化合物のTDFRP化合物に対する結合を測定する段階を備えた方法を含む。一つの態様において、本発明は、候補化合物とTDFRP化合物との結晶調合液を含む。別の態様において、複合体は結晶化されず、複合体の結合を測定するために、複合体を核磁気分光法または質量分析法に供する。
【0023】
別の局面において、本発明は、調節領域である第1の配列セグメントとTDFRP化合物をコードするポリヌクレオチド配列である第2の配列セグメントとを有する、配列番号:1〜208をコードする核酸を、非ヒト哺乳動物細胞のゲノムに組み込んだ、例えばこれに限定されないがマウスなどの、非ヒトトランスジェニック哺乳動物を提供する。このとき、第1の配列セグメントは、動作可能な状態で第2の配列セグメントに結合している。一つの態様において、第1のセグメントは、調節可能な発現エレメントであるか、または細胞特異的もしくは組織特異的な調節にさらされたエレメントである。一つの態様において、本発明は、非ヒトトランスジェニック哺乳動物に由来する、または非ヒトトランスジェニック哺乳動物から培養された組織または細胞を含む。
【0024】
発明の詳細な説明
定義
本明細書において使用される「ポリペプチドのトランスフォーミング成長因子β(TGF-β)スーパーファミリー」とは、これらに限定されないが、TGF-β、アクチビン、インヒビン、抗ミュラーホルモン(AMH)、ミュラー管抑制物質(MIS)、骨形態形成ポリペプチド(BMP)およびミオスタチンなどの、多くの多機能サイトカインから成る、多面的機能を備えたポリペプチド因子のスーパーファミリーのことをいう。きわめて類似性の高いTGF-βのアイソフォーム、TGF-β1、TGF-β2、およびTGF-β3は、上皮起源のものを含む、多くの細胞種の細胞増殖を強力に阻害する。しかしながら、ほとんどの間葉細胞は、成長の過程でTGF-βによって刺激される。加えて、TGF-βは、細胞外マトリックスの合成およびインテグリンの発現を強力に誘導し、免疫反応を調節する。骨形成タンパク質(OP)としても知られるBMPは、骨および軟骨形成の強力な誘導因子であり、腹部中胚葉の誘導、神経組織の分化、および器官形成において、発達上の重要な役割を果たす。当初、脳下垂体からの卵胞刺激ホルモン(FSH)分泌の活性剤として同定されたことに因んで命名されたアクチビンは、赤血球生成を促進し、背部中胚葉の誘導を仲介し、また神経細胞の生存に効果をもたらすことでも知られている。TGF-βスーパーファミリーに属するいくつかの成長因子は、胚パターン形成および組織の恒常性において重要な役割を果たす。これらの不適切な機能が、線維症、関節リウマチ、および発癌などの病理学的に関連している。本明細書において使用される組織分化因子(TDF)という用語は、これに限定されないが、ポリペプチドのTGF-βスーパーファミリーのすべてのメンバーを含む。TGF-βスーパーファミリーポリペプチドは、TGF-βスーパーファミリー受容体の拮抗物質または作用物質であり得る。
【0025】
本明細書において使用される「トランスフォーミング成長因子β(TGF-β)スーパーファミリー受容体」とは、トランスフォーミング成長因子β(TGF-β)スーパーファミリーポリペプチド、ならびにその断片、類似体、および相同体の多面発現効果を仲介する、ポリペプチド受容体のことをいう。このような受容体には、これらに限定されないが、I型およびII型セリン/トレオニンキナーゼ受容体の、特徴的な組み合わせが含まれる。また本明細書において使用される組織分化因子受容体(TDF)という用語は、これに限定されないが、受容体のTGF-βスーパーファミリーのすべてのメンバーを含む。
【0026】
本明細書において使用される「芳香族アミノ酸」とは、共役電子系(芳香族基)を有する少なくとも一つの環を含んだ側鎖を有する疎水性のアミノ酸のことを指す。芳香族基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシル基、スルファニル基、ニトロ基、およびアミノ基、その他の置換基により、さらに置換されていることもある。遺伝的にコードされる芳香族アミノ酸の例には、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンが含まれる。通常みられる遺伝的にコードされない芳香族アミノ酸には、フェニルグリシン、2-ナフチルアラニン、β-2-チエニルアラニン、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、4-クロロフェニルアラニン、2-フルオロフェニルアラニン、3-フルオロフェニルアラニン、および4-フルオロフェニルアラニンが含まれる。
【0027】
本明細書において使用される「脂肪族アミノ酸」とは、飽和もしくは不飽和の直鎖、分岐鎖、または環状炭化水素側鎖を有する非極性アミノ酸のことを指す。遺伝的にコードされる脂肪族アミノ酸の例には、アラニン、ロイシン、バリン、およびイソロイシンが含まれる。またコードされない脂肪族アミノ酸の例には、ノルロイシン(Nle)が含まれる。
【0028】
本明細書において使用される「酸性アミノ酸」とは、pK値が7未満の側鎖を有する親水性アミノ酸のことをいう。酸性アミノ酸は一般に、水素イオンの喪失により、生理的pHで、マイナスに帯電した側鎖を有する。遺伝的にコードされる酸性アミノ酸の例には、アスパラギン酸(aspartic acid, aspartate)およびグルタミン酸(glutamic acid, glutamate)が含まれる。
【0029】
本明細書において使用される「塩基性アミノ酸」とは、pK値が7を超える側鎖を有する親水性アミノ酸のことをいう。塩基性アミノ酸は一般に、ヒドロニウムイオンとの関連により、生理的pHで、プラスに帯電した側鎖を有する。遺伝的にコードされる塩基性アミノ酸の例には、アルギニン、リジン、およびヒスチジンが含まれる。また、遺伝的にコードされない塩基性アミノ酸の例には、非環状アミノ酸オルニチン、2,3-ジアミノプロピオン酸、2,4-ジアミノ酪酸、およびホモアルギニンが含まれる。
【0030】
本明細書において使用される「極性アミノ酸」とは、生理的pHで非荷電ではあるが、二つの原子により共有される電子対が、一方の原子側により近接した結合を有する側鎖のある、親水性アミノ酸のことをいう。遺伝的にコードされる極性アミノ酸の例には、アスパラギンおよびグルタミンが含まれる。また、遺伝的にコードされない極性アミノ酸の例には、N-アセチルリジンおよびメチオニンスルホキシドが含まれる。
【0031】
当業者によって認められているように、上記の分類は絶対的なものではない。アミノ酸によっては、ひとつ以上の固有性を示し、そのためにひとつ以上のカテゴリーに含まれるものもある。例えば、チロシンは芳香環と極性ヒドロキシル基の両方を有している。したがって、チロシンは二つの特性を有し、芳香族と極性のカテゴリー両方に含まれる。
【0032】
本明細書において使用される「対象」とは、好ましくはヒトなどの哺乳動物であるが、例えば家畜(例えばイヌ、ネコなど)、農業用の家畜(例えばウシ、ヒツジ、ブタ、ウマなど)、および実験用の動物(例えばラット、マウス、モルモットなど)であってもよい。
【0033】
本明細書において使用される、化合物の「有効量」とは、目的とする治療および/または予防効果を得るのに十分な量、例えば、例えば上述のTGF-βスーパーファミリーポリペプチドに関連した疾患などの、治療される疾患にまつわる症状の予防または減少をもたらす量のことをいう。対象に投与される化合物の量は、疾患の種類および重症度、ならびに一般的健康状態、年齢、性別、体重、および薬剤に対する耐性などの個々の特性によって決まる。さらに、疾患の度合い、重症度、および種類にもよる。当業者は、これらの、またその他の要因に基づいて適切な用量を測定することができる。一般に、治療または予防的効果を得るために十分な、本発明の化合物の有効量は、体重1 kgにつき1日約0.0001 mgから約10,000 mgの範囲である。好ましくは、用量の範囲は、体重1 kgにつき1日約1 mgから約100 mg である。また、本発明の化合物同士を組み合わせて、または本発明の化合物とひとつ以上のその他の治療用化合物とを組み合わせて投与することもできる。
【0034】
「単離された」または「精製された」ポリペプチド、またはポリペプチド、またはその生物活性部分は、組織分化因子に関連したポリペプチドの発生源である細胞または組織からの細胞物質、またはその他の含有ポリペプチドを実質的に含んでいないか、または科学的に合成された場合においては、前駆的化学物質またはその他の化学物質を実質的に含んでいない。
【0035】
本明細書において使用される「実質的に細胞物質を含まない」という表現は、組織分化因子に関連したポリペプチドの調合液を含み、細胞から単離または組換えにより生成されたポリペプチドは、その細胞の細胞成分からは単離される。一つの態様において、「実質的に細胞物質を含まない」という用語は、(乾燥重量で)組織分化因子に関連していないポリペプチド(本明細書において「混入ポリペプチド」とも呼ばれる)の約30%未満、より好ましくは組織分化因子に関連していないポリペプチドの約20%未満、さらに好ましくは組織分化因子に関連していないポリペプチドの約10%未満、そしてもっとも好ましくは組織分化因子に関連していないポリペプチドの約5%未満である、組織分化因子に関連したポリペプチドの調合液を含む。組織分化因子に関連したポリペプチドまたはその生物活性部分が組換えにより生成された場合、これはまた好ましくは、実質的に培養の培地を含まない。すなわち、培地は、組織分化因子に関連したポリペプチドの調合液の容積の、約20%未満、より好ましくは10%未満、もっとも好ましくは5%未満に相当する。
【0036】
本明細書において使用される「実質的に前駆的化学物質またはその他の化学物質を含まない」という表現は、組織分化因子に関連したポリペプチドの調合液を含み、このときポリペプチドは、ポリペプチドの合成に関与した、前駆的化学物質またはその他の化学物質からは単離される。一つの態様において、「実質的に、前駆的化学物質またはその他の化学物質を含まない」という表現は、(乾燥重量で)前駆的化学物質または組織分化因子に関連していない化学物質の約30%未満、好ましくは前駆的化学物質または組織分化因子に関連していない化学物質の約20%未満、さらに好ましくは前駆的化学物質または組織分化因子に関連していない化学物質の約10%未満、そして最も好ましくは前駆的化学物質または組織分化因子に関連していない化学物質の約50%未満である、組織分化因子に関連したポリペプチドの調合液を含む。
【0037】
本明細書において使用される「変異体」という用語は、本発明の化合物とは異なるが、それらの本質的な特性を保持した化合物のことをいう。変異体の非制限的な例に、通常変性型変異体として知られる参照化合物に関して、保存的置換を有するポリヌクレオチドまたはポリペプチド化合物がある。変異体のヒト以外の別の例として、本発明の化合物と構造的には異なるが、同じ活性ドメインを保持している化合物がある。変異体は、N末端もしくはC末端の延長、キャップされたアミノ酸、活性アミノ酸側鎖官能基の修飾(例えば、リジン残基からの分岐)、ペグ化、および/またはポリペプチド化合物の切断を含む。通常変異体は、全体に極めて類似しており、多くの領域で本発明の化合物と同一である。したがって、変異体は、コーディング領域、非コーディング領域、またはその両方の変化を含むことがある。
【0038】
本明細書において使用される「小分子」とは、分子量が約5 kDa未満、より好ましくは約2 kDa未満である組成物のことをいう。小分子は、例えば、核酸、ペプチド、ポリペプチド、グリコペプチド、ペプチド模倣体、炭水化物、脂質、リポ多糖類、これらの組み合わせ、または他の有機もしくは無機分子であり得る。
【0039】
詳細
I. 本発明の組成物
A. TDFRPポリペプチド
本発明は、組織分化因子の機能的類似体である化合物、すなわち、例えばTGFβスーパーファミリー受容体作用物質として作用することにより、TGFβスーパーファミリータンパク質を機能的に模倣している化合物を提供する。これらの化合物は、腎細胞、間葉細胞などの対象の細胞および組織の成長または分化、細胞外マトリックスの合成、インテグリンの発現、骨および軟骨の形成、腹部中胚葉の誘導を促進し、神経組織の分化を促進し、器官形成を促進し、赤血球の生成を促進し、背部中胚葉および神経細胞の成長を誘導し、組織の恒常性を促進し、免疫反応を誘導することが望まれている対象への投与に適している。これに対して、線維症、関節リウマチ、また中でも発癌などの病理学的状況は、組織分化因子様活性の過度な結果であると考えられる。従って、TGFβスーパーファミリー受容体の機能的拮抗物質である化合物を提供することが、本発明の更なる目的である。TGFβスーパーファミリー受容体の部分拮抗物質および部分作用物質である化合物を提供することもまた、本発明の目的である。本発明のこれらの化合物は、脳梗塞および外傷性脳損傷と同様に、急性および慢性療法の腎臓病の治療に使用することができる。
【0040】
本発明はさらに、TGFβスーパーファミリー受容体の機能モジュレータとして作用する化合物を同定、設計、および生成するのに有用な、構造に基づく方法に関連する。
【0041】
本化合物は、小分子、より詳しくは、本明細書において配列番号:1〜208として同定されている一般構造を有するポリペプチド、すなわち下記に詳細を記す、TDF関連ペプチド(以下「TDFRP」)を含む。変異体、類似体、相同体、または種の相同体などのこれらの化合物の断片もまた、これらの変性形態と同様、本発明に含まれる。本発明のTDFRPポリペプチドは、例えば配列番号:17のようにN末端に、または配列番号:18のようにC末端に、またまたは配列番号:19のようにN末端とC末端の両方がキャップされうる。本発明のTDFRPポリペプチドは、PEG化されたり、または、例えばリジン残基のような活性側鎖を含む任意のアミノ酸残基において分岐等の修飾が行われてもよい。本発明のTDFRPポリペプチドは、直線であることも環状であることもある。TDFRPの末端配列の長さは多様でありうる。
【0042】
TDFRP化合物は、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、d-アミノ酸およびl-アミノ酸、またそれらの組み合わせを含む。特定の態様において、本発明の化合物は、通常みられる遺伝的にコードされないアミノ酸を含む。これらの遺伝的にコードされないアミノ酸は、β-アラニン(β-ALA)、および、3-アミノプロピオン酸(Dap)、2,3-ジアミノプロピオン酸(Dpr)、4-アミノ酪酸など、その他のω-アミノ酸;α-アミノイソ酪酸(Aib);ε-アミノヘキサン酸(Aha);δ-アミノバレリアン酸(Ava);N-メチルグリシンまたはサルコシン(MeGly);オルニチン(Orn);シトルリン(Cit);t-ブチルアラニン(t-BuA);t-ブチルグリシン(t-BuG);N-メチルイソロイシン(Melle);フェニルグリシン(Phg);シクロヘキシルアラニン(Cha);ノルロイシン(NLE);2-ナフチルアラニン(2-Nal);4-クロロフェニルアラニン(Phe(4-CI));2-フルオロフェニルアラニン(Phe(2-F));3-フルオロフェニルアラニン(Phe(3-F));4-フルオロフェニルアラニン(Phe(4-F));ペニシラミン(Pen);1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸(Tic);β-2-チエニルアラニン(Thi);メチオニンスルホキシド(MSO);ホモアルギニン(hArg);N-アセチルリジン(AcLys);2,3-ジアミノ酪酸(Dab);2,3-ジアミノ酪酸(Dbu);P-アミノフェニルアラニン(Phe(pNH2));N-メチルバリン(MeVal);ホモシステイン(Cys)およびホモセリン(hSer)を含み、またこれらに限られない。化合物の、非天然の変異体は、突然変異誘発技術または直接合成により生成される。本発明の一つの局面において、本発明のTDFRP化合物はプロドラッグである。すなわち、例えばインビボまたはインビトロにおいて生体系と接触して増加するなどのように、TDFRP化合物の生物活性は変化する。
【0043】
一つの態様において、TDFRPは配列番号:1に示される一般構造のポリペプチドである。
【0044】
X1X2X3X4X5X6X7X8X9X10X11X12X13X14X15X16X17X18X19X20(配列番号:1)、このときX1〜X20はそれぞれに独立して変化し、またこのときXは任意の天然のアミノ酸、または非天然のアミノ酸であり、このとき最高17までのアミノ酸が欠如していることがある。この態様のある局面において、欠如しているアミノ酸は、連続した、または離れたものである。別の態様において、TDFRPは、配列番号:1に示された一般構造を有するポリペプチドであり、このときX1〜X20はそれぞれに独立して変化し、またこのときXは任意の天然のアミノ酸、または非天然のアミノ酸であり;さらにこのとき、ポリペプチドは少なくとも二つのCys残基を含み、またこのとき、最高17までのアミノ酸が欠如していることがある。この態様の局面において、欠如しているアミノ酸は、連続した、または離れたものである。
【0045】
別の態様において、TDFRPは配列番号:2に示される一般構造のポリペプチドである。
【0046】
CX1X2X3X4X5X6X7X8X9X10X11X12X13X14(配列番号:2)、このときX1〜X14はそれぞれに独立して変化し、またこのとき、X1はTyr、Ile、および芳香族アミノ酸、任意の脂肪族アミノ酸、または任意の極性アミノ酸であり;X2はPhe、Val、任意の芳香族アミノ酸、または任意の脂肪族アミノ酸であり;X3はAspまたは任意の酸性アミノ酸であり;X4はAsp、Gluまたは任意の酸性アミノ酸であり;X5はSer、Asnまたは任意の極性アミノ酸であり;X6はSerまたは任意の極性アミノ酸であり;X7はAsn、Glnまたは任意の極性アミノ酸であり;X8はValまたは任意の脂肪族アミノ酸であり;X9はIle、Val、Leuまたは任意の脂肪族アミノ酸であり;X10はLysまたは任意の塩基性アミノ酸であり;X11はLysまたは任意の塩基性アミノ酸であり;X12はTyrまたは任意の極性アミノ酸であり;X13はArgまたは任意の塩基性アミノ酸であり;かつX14はSerまたは任意の極性アミノ酸である。
【0047】
例えば、配列番号:2の順列のような、しかしこれらに限定されない順列に基づいた典型的なTDFRP配列は、本明細書においては配列番号:3〜208として同定され、下記の表1-4で説明する。
【0048】
これらの化合物は、小分子、より詳しくは、本明細書において配列番号:3〜38として同定され、表1に説明されるペプチドを含む。これらの化合物の変異体、類似体、相同体、または種の相同体などの断片もまた、これらの変性形態と同様、本発明に含まれる。
【0049】
化合物は、配列番号:3〜38として開示する配列内の任意のアミノ酸において、単一、二基、三基、または多数のアミノ酸置換を含む。
置換には、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、d-アミノ酸およびl-アミノ酸、およびそれらの任意の組み合わせが含まれる。化合物は、配列番号:3〜38の、例えば、長さにして少なくとも約3つのアミノ酸からの断片であり得る。
【0050】
【表1】

【0051】
単一、二基、または三基のアミノ酸置換を有する、配列番号:38と同じ長さの典型的な化合物は、これらに限定されないが、表2に示した以下のアミノ酸配列を含む。配列番号:1〜37は細かく説明されてはいないが、記述されているように、同様に修正することができる。
【0052】
【表2】


【0053】
配列番号:38の典型的な断片(これも説明を目的として選択される)を表3に示す。表3に表された配列断片は、皆明らかに11のアミノ酸を有しているが、例えば3つ以上のアミノ酸から始まる、より小さい、またはより大きい断片も本発明の範囲内に含まれる。
【0054】
【表3】

【0055】
本化合物はまた、小分子、より詳しくは、本明細書において配列番号:160〜208として同定され、表4に示されたペプチド(これも説明を目的として選択される)を含む。これらの化合物の変異体、類似体、相同体、または種の相同体などの断片もまた、これらの変性形態と同様、本発明に含まれる。
【0056】
【表4】


【0057】
一つの態様において、化合物は、配列番号:1〜208の類似体または相同体を含んでいる。本発明の化合物は、例えば、好ましくは50%以上のアミノ酸の一致度、より好ましくは75%以上のアミノ酸の一致度、またさらに好ましくは90%以上のアミノ酸の一致度で、配列番号:1〜208に対する相同性を有する類似体または相同体を含む。
【0058】
配列の相同性は、規定パラメータ付きの配列分析用のソフトウェア(ウィスコンシン大学バイオテクノロジーセンター、遺伝コンピュータグループの配列分析ソフトウェアパッケージ[Sequence Analysis Software Package of the Genetics Computer Group, University of Wisconsin Biotechnology Center]、1710 University Avenue, Madison, Wis. 53705)を使用して測定することができる。
【0059】
参照配列に対する相同性が100%未満であるポリペプチド配列の場合、非相同的位置は、参照配列の保存的置換であることが好ましいが、必ずしもそうでなくてもよい。保存的置換は一般的に、以下の群内での置換を含む:グリシンおよびアラニン;バリン、イソロイシン、およびロイシン;アスパラギン酸およびグルタミン酸;アスパラギンおよびグルタミン;セリンおよび トレオニン;リジンおよびアルギニン;ならびに、フェニルアラニンおよびチロシン。このように、本発明には、例えば、配列、構造、機能、および抗原特性やその他の機能における、対応する親配列を有するポリペプチドとの相同性を維持するように変化した配列を有するペプチドが含まれる。これらの変化は、例えば、分子特性が広範に類似しているアミノ酸間での変化など、アミノ酸の同類変化を含むものである。例えば、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンなどの脂肪族基内での置き換えは、同類間の置き換えと考えることができる。また時として、グリシンとこれらのうちの一つとの置換を同類間の置き換えとみなすこともある。その他の同類間での置き換えには、脂肪族基については、アスパラギン酸およびグルタミン酸間;アミド基については、アスパラギンおよびグルタミン間;ヒドロキシル基については、セリンおよびトレオニン間;芳香族基については、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファン間;塩基性基については、リジン、アルギニンおよびヒスチジン間;また、硫黄含有基については、メチオニンおよびシステイン間での置き換えが含まれる。時としてメチオニンおよびロイシンの群間の置換を、保存的置換とみなすこともできる。保存的置換グループとして、アスパラギン酸-グルタミン酸;アスパラギン-グルタミン;バリン-ロイシン-イソロイシン;アラニン-バリン;フェニルアラニン-チロシン;およびリジン-アルギニンが好ましい。
【0060】
本発明はまた、全体のアミノ酸配列の伸張などの挿入を含む、改変された配列を有しつつ、TDF作用物質または拮抗物質の適切な特性を維持する化合物を提供する。加えて、配列の改変には、化合物の全体のアミノ酸配列からの切り取りである、任意のまたは計画された内部切除が含まれる。しかしながら、化合物は、そのTDF様の機能特性を維持している。特定の態様において、配列番号:1〜208内の一つ以上のアミノ酸残基が、置き換える残基と似た、物理的および/または化学的特性を有する、他のアミノ酸残基と置き換えられる。好ましくは、アミノ酸の保存的置換は、以下で詳しく説明されるように、アミノ酸が、指定された種類と同じ種類に含まれる別のアミノ酸と置き換えられる。挿入、欠失、および置換は、それらによって化合物の機能特性が失われない場合において適切である。改変された化合物の機能性は、改変された化合物のTDF様特性の分析用に設計された、以下に説明されるインビトロおよびインビボ分析に基づいて分析することができる。
【0061】
配列番号:1〜208のアミノ酸残基、配列番号:1〜208の類似体または相同体は、遺伝的にコードされるl-アミノ酸、天然の遺伝的にコードされないl-アミノ酸、合成d-アミノ酸、または上述のすべてのd-光学異性体を含む。
【0062】
B. TDFRP核酸配列
本発明の化合物は、その変性型変異体を含む、配列番号:1〜208をコードする、一つ以上のポリヌクレオチドを含む。従って、配列番号:1〜208をコードする任意の核酸配列と、低い親和性でハイブリダイズすることのできる核酸配列は、本発明の範囲内にあるとみなされる。例えば、約20〜40塩基の核酸配列に対し、一般的なプレハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーション、および洗浄の手順は以下のとおりである:(1)プレハイブリダイゼーション:5×デンハート溶液、6×SSC(175 gのNaCl、10 NのNaOHでpHを7.0に調節した800 mlのH20中の88.2 gのクエン酸ナトリウムからなる20×SSC)、0.1%のSDS、および100 μg/mlの変性したサケ精子DNA中で、標的とする変性DNAを含んだニトロセルロースフィルターを、55℃で3〜4時間インキュベートする、(2)ハイブリダイゼーション:プレハイブリダイゼーション溶液とプローブ中で、フィルターを42℃で14〜48時間インキュベートする、(3)洗浄:6×SSCおよび0.1%のSDS中、室温で15分間の洗浄を3回行い、続いて6×SSCおよび0.1%のSDS中、55℃で最終洗浄を1〜1.5分行う。その他の同様な手順、例えばホルムアミドなどの有機溶媒の使用も、当技術分野においてよく知られている。
【0063】
本発明はまた、ポリヌクレオチドの対立遺伝子の変異体、言い換えると、ポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドと同一、相同、または関連のあるポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチドの天然の代替形態を含む。または、非天然の変異体が、当技術分野で周知の突然変異誘発技術または直接合成技術により生成されることもある。
【0064】
C. TDFRP組換え発現ベクター
本発明の別の局面には、TDFRPをコードする一つ以上の核酸配列を含んだベクターが含まれる。一つ以上の本発明のポリペプチドの組換え発現について、核酸ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列のすべて、または一部分を含む核酸が、以下に説明される、当技術分野では周知の組換えDNA技術により、適切なクローニングベクター、または発現ベクター(すなわち、挿入されたポリペプチドをコードする配列の転写および翻訳に必要な因子を含んだベクター)に挿入される。
【0065】
一般に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、しばしばプラスミドの形態である。本明細書において、プラスミドがベクターの最も一般的に使用される形態であることから、「プラスミド」および「ベクター」はほとんど同じ意味で使用される。しかしながら、本発明は、同等の機能を有する、ウィルスベクター(例えば、複製の欠損したレトロウィルス、アデノウィルスおよびアデノ随伴ウィルス)などの、厳密に言うとプラスミドではない発現ベクターの他の形態を含むことを目的としている。この様なウィルスベクターは、対象への感染と、その対象における化合物の発現を可能にする。
【0066】
本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞内での核酸の発現に適した形態で、TDF様の特性を有する化合物をコードする核酸を含む。つまりこれは、組換え発現ベクターが、発現されるべき核酸配列に動作可能な状態で結合している、発現に使われる宿主細胞に基づいて選択された、一つ以上の調節配列を含むことを意味している。組換え発現ベクター内における「動作可能な状態で結合」とは、ヌクレオチド配列の発現を可能にするような形での(例えば、インビトロ転写/翻訳システム、またはベクターが宿主細胞内に取り込まれた場合の宿主細胞において)、該当するヌクレオチド配列と調節配列との結合を意味する。
【0067】
「調節配列」という用語は、プロモーター、エンハンサーおよびその他の発現調節因子(例えばポリアデニル化シグナル)を含む。この様な調節配列については、例えば、Goeddel、「GENE EXPRESSION TECHNOLOGY: METHODS IN ENZYMOLOGY 185」、Academic Press, San Diego, Calif. (1990)などに記載されている。調節配列には、多様な宿主細胞におけるヌクレオチド配列の構成的な発現を導くものと、特定の宿主細胞のみのヌクレオチド配列の発現を導くもの(例えば組織特異的な調節配列)とが含まれる。発現ベクターの設計が、形質転換されるべき宿主細胞の選択や、目的とするポリペプチドの発現のレベルなどの要因に基づくことが、当業者らにより認められている。本発明の発現ベクターを、宿主細胞に取り入れ、それによって、本明細書に記されている要領で核酸によりコードされる融合ポリペプチド(例えば、TDFRPおよびTDFRP由来の融合ポリペプチドなど)を含む、ポリペプチドまたはペプチドを生成することが可能である。
【0068】
D. TDFRP発現性の宿主細胞
本発明の別の局面は、一つ以上のTDFRPをコードする核酸を含んだ、TDFRP発現性の宿主細胞に関連する。本発明の組み換え発現ベクターを、原核または真核細胞において、TDFRPを発現するように設計することができる。例えば、TDFRPは、大腸菌などの細菌性細胞、昆虫細胞(バキュロウィルス発現ベクターを使用)、例えば酵母や酵母細胞などの真菌細胞、または哺乳動物の細胞において発現される。適切な宿主細胞については、Goeddel、「GENE EXPRESSION TECHNOLOGY: METHODS IN ENZYMOLOGY 185」、Academic Press, San Diego, Calif. (1990)に、より詳しく説明されている。一方、組換え発現ベクターを、例えば、T7プロモーター調節配列およびT7ポリメラーゼを使用して、インビトロで転写および翻訳することができる。
【0069】
原核生物におけるポリペプチドの発現は、融合または非融合ポリペプチドのいずれかの発現を導く、構成性または誘導性のプロモーターを含むベクターにより、ほとんどの場合大腸菌において起こる。融合ベクターは、コードされるポリペプチド、通常は組換えポリペプチドのアミノ末端に多数のアミノ酸を追加する。この様な融合ベクターは一般的に次の三つの目的を果たす:(i)組換えポリペプチドの発現を増加する;(ii)組換えポリペプチドの溶解度を増加する;および(iii)アフィニティー精製においてリガンドとして働くことによって、組換えポリペプチドの精製を助ける。しばしば、融合発現ベクターにおいて、タンパク質分解切断部位が融合部分と組換えポリペプチドとの接合部に導入され、融合ポリペプチドの精製後は、融合部分から組換えポリペプチドを単離することが可能になる。このような酵素、およびその同起源の認識配列は、Xa因子、トロンビンおよびエンテロキナーゼを含む。代表的な融合発現ベクターに、それぞれグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合ポリペプチド、またはポリペプチドAを、標的となる組換えポリペプチドに融合させる、pGEX(Pharmacia Biotech Inc、SmithおよびJohnson、1988. Gene 67:31-40)、pMAL(New England Biolabs、Beverly、Mass)およびpRIT5(Pharmacia、Piscataway、N. J.)を含む。
【0070】
適切な誘導性の非融合大腸菌発現ベクターの例として、pTrc(Amrannら、(1988)Gene 69:301-315)およびpET 11d(Studierら、「GENE EXPRESSION TECHNOLOGY:METHODS IN ENZYMOLOGY 185」、Academic Press、San Diego, Calif.(1990)60-89)が含まれる。
【0071】
大腸菌における組換えポリペプチドの発現を最大にする一つの方法は、組換えポリペプチドをタンパク質分解性に切断する能力の損なわれた宿主細菌において、ポリペプチドを発現させることである。例えば、Gottesman、「GENE EXPRESSION TECHNOLOGY:METHODS IN ENZYMOLOGY 185」、Academic Press、San Diego, Calif.(1990)119-128参照。もう一つの方法は、各アミノ酸のそれぞれのコドンが、例えば、大腸菌(例えば、Wadaら、1992. Nucl. Acids Res. 20:2111-2118参照)などの発現宿主において選択的に使用されるものとなるように、核酸の核酸配列を発現ベクター中に挿入するために改変することである。本発明の核酸配列のこの様な改変は、標準的なDNA合成技術により遂行することができる。
【0072】
別の態様において、TDFRP発現ベクターは、酵母発現ベクターである。酵母サッカロマイセス・セルヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)における発現のベクターの例には、pYepSec1(Baldariら、1987. EMBO J. 6: 229-234)、pMFa(KurjanおよびHerskowitz, 1982. Cell 30:933-943)、pJRY88(Schultzら、1987. Gene 54:113-123)、pYES2(Invitrogen Corporation, San Diego, Calif.)、およびpicZ(InVitrogen Corp, San Diego, Calif.)が含まれる。または、バキュロウィルス発現ベクターを使用して、TDFRPを昆虫細胞に発現させることもできる。培養昆虫細胞(例えば、SF9細胞)中のポリペプチド発現に使用されるバキュロウィルスベクターは、pAcシリーズ(Smithら、1983. Mol. Cell. Biol. 3:2156-2165)およびpVLシリーズ(LucklowおよびSummers, 1989. Virology 170:31-39)を含む。
【0073】
また別の態様において、本発明の核酸は、哺乳動物発現ベクターを使用して、哺乳動物の細胞中に発現される。哺乳動物発現ベクターの例には、pCDM8(Seed, 1987. Nature 329:840)およびpMT2PC(Kaufmanら、1987. EMBO J. 6:187-195)が含まれる。哺乳動物の細胞中に使用される場合、発現ベクターの制御機能は、しばしばウィルス調節エレメントにより提供される。例えば、通常使用されるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウィルス2、サイトメガロウィルス、およびシミアンウィルス40から生じる。原核および真核細胞の両方に適したその他の発現系については、例えば、Sambrookら、「MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL」第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor, N. Y.、1989、16および17章を参照のこと。
【0074】
別の態様において、組換え哺乳動物発現ベクターは、特定の種類の細胞において(例えば、組織特異的調節エレメントは、核酸の発現に使用される)、核酸の発現を選択的に導くことができる。組織特異的調節エレメントは、当技術分野では周知である。適切な組織特異的プロモーターの非制限的例には、アルブミンプロモーター(肝臓特異的;Pinkertら、1987. Genes Dev. 1:268-277)、リンパ特異的プロモーター(CalameおよびEaton、1988. Adv. Immunol. 43:235-275)、特にT細胞受容体のプロモーター(WinotoおよびBaltimore、1989. EMBO J. 8:729-733)および免疫グロブリン(Banerjiら、1983. Cell 33:729-740;QueenおよびBaltimore、1983. Cell 33:741-748)、ニューロン特異的プロモーター(例えばニューロフィラメントプロモーター;ByrneおよびRuddle、1989. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:5473-5477)、膵臓特異的プロモーター(Edlundら、1985. Science 230:912-916)、および乳腺特異的プロモーター(例えば乳清プロモーター;米国特許第4,873, 316号、および欧州特許公開公報第264,166号)が含まれる。発達の調節プロモーターはまた、例えば、マウスホックスプロモーター(KesselおよびGruss、1990. Science 249:374-379)およびα-フェトプロテインプロモーター(CampesおよびTilghman、1989. Genes Dev. 3:537-546)をも含む。
【0075】
本発明はさらに、アンチセンス方向で発現ベクターにクローン化した、本発明のDNA分子を含む組換え発現ベクターを提供する。すなわち、DNA分子は、TDRFP mRNAに対しアンチセンスなRNA分子の発現(DNA分子の転写による)を可能にするような方法で、調節配列に動作可能な状態で結合している。アンチセンス方向でクローン化した核酸に動作可能な状態で結合した、様々な細胞の種類でのアンチセンスRNA分子の持続的な発現を管理する調節配列を選ぶことができる。例えば、構成性の、組織特異的または細胞型特異的なアンチセンスRNAの発現を管理するウィルスプロモーターおよび/またはエンハンサー、または調節配列を選ぶことができる。アンチセンス発現ベクターは、組み換えプラスミド、ファージミド、または内部で、高性能の調節領域の制御下でアンチセンス核酸が生成される弱毒化ウィルスの形態で存在し、その活性は、ベクターが取り込まれる細胞型により決定される。アンチセンス遺伝子を使用した遺伝子発現調節の論議については、例えば、Weintraubら、「Antisense RNA as a molecular tool for genetic analysis」、Reviews-Trends in Genetics, Vol. 1 (1) 1986を参照のこと。
【0076】
本発明の別の局面は、本発明の組換え発現ベクターが取り込まれた宿主細胞に関連する。「宿主細胞」および「組み換え宿主細胞」という用語は、本明細書においてはほとんど同じ意味で使用される。これらの用語が、特定の対象細胞のみではなく、その子孫または潜在的な子孫の細胞をも意味することがわかっている。突然変異または周囲条件の影響により、特定の変化が後に続く世代に発生することがあるため、これらの子孫は事実上は親細胞と同一ではないが、本明細書において使用される用語の範囲内に含まれる。
【0077】
宿主細胞は、任意の原核または真核細胞である。例えば、TDFRPは、大腸菌などの細菌性細胞、昆虫細胞、酵母、または哺乳動物の細胞(チャイニーズハムスターの卵巣細胞(CHO)またはCOS細胞など)に発現する。他の適切な宿主細胞も、当業者に周知である。
【0078】
通常の形質転換、またはトランスフェクション技術により、ベクターDNAを原核または真核細胞内に取り込むことができる。本明細書において使用される「形質転換」および「トランスフェクション」という用語は、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウムの共沈殿、DEAEデキストラン仲介の移入、リポフェクション、またはエレクトロポレーションなどを含む、外来の核酸(例えばDNA)を宿主細胞中に取り込む、当技術分野で認められている様々な技術を指すことを意図している。宿主細胞の適切な転換または移入法は、Sambrookら、(「MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL」第2版、Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N. Y., 1989)、およびその他の実験マニュアルに記載されている。
【0079】
哺乳動物細胞の確実なトランスフェクションについて、使用される発現ベクターおよびトランスフェクション技術によっては、ごく少量の細胞のみが、外来のDNAをゲノム中に組み込みうることが知られている。これらの要素を同定および選択するため、選択マーカー(例えば、抗生物質耐性)をコードする遺伝子が、通常、標的となる遺伝子とともに宿主細胞中に取り込まれる。様々な選択マーカーとして、G418、ハイグロマイシンおよびメトトレキセートなどの薬物に対する耐性を与えるマーカーが含まれる。TDFRPをコードするマーカーと同じベクター、または別のベクターにて、宿主細胞に、選択マーカーをコードする核酸を取り入れることができる。取り込まれた核酸が確実にトランスフェクトされた細胞は、薬物選択法(例えば、選択マーカー遺伝子を組み込んだ細胞は生き延びるが、その他の細胞は死亡する)によって同定される。
【0080】
培養物における原核または真核宿主細胞など、本発明の化合物を含んだ宿主細胞を、組み換えTDFRPの生成(すなわち発現)に使用することができる。一つの態様において、方法は、本発明の(TDFRPをコードする組換え発現ベクターが取り込まれている)宿主細胞を、TDFRPの生成に適した培地において培養することを含む。別の態様において、方法はさらに、培地または宿主細胞からTDFRPを単離する段階を含む。組換えポリペプチドの精製は、当技術分野においてよく知られており、イオン交換精製技術、または、例えば化合物に対する抗体によるアフィニティー精製技術を含む。本発明の化合物に対する抗体の生成法を以下に説明する。
【0081】
E. TDFRP由来のキメラポリペプチドおよび融合ポリペプチド
本発明はまた、TDFRP由来のキメラまたは融合ポリペプチドである化合物を提供する。本明細書において使用されるTDFRP由来の「キメラポリペプチド」または「融合ポリペプチド」は、例えば、TDFRPとは異なった、同一もしくは別の生命体(非TDFRP)から派生したポリペプチドのような、実質的にTDFRPと相同ではないポリペプチドに対応するアミノ酸配列を有するポリペプチドに、動作可能な状態で結合したTDFRPを含む。TDFRP由来の融合ポリペプチド内で、TDFRPは、TDFRP全体またはその一部に相当する。一つの態様において、TDFRP由来の融合ポリペプチドは、例えば配列番号:1〜208の断片のような、少なくとも一つのTDFRPの生物学的に活性な部分を含む。別の態様において、TDFRP由来の融合ポリペプチドは、少なくとも二つのTDFRPの生物学的に活性な部分を含む。また別の態様において、TDFRP由来の融合ポリペプチドは、少なくとも三つのTDFRPポリペプチドの生物学的に活性な部分を含む。融合ポリペプチド内で、「動作可能な状態で結合した」という用語は、TDFRPポリペプチドおよび非TDFRPポリペプチドがフレーム単位で互いに融合している状態を意味する。非TDFRPポリペプチドは、TDFRPのN末端またはC末端に融合される。
【0082】
一つの態様において、融合ポリペプチドは、TDFRP配列がGST(グルタチオンS-トランスフェラーゼ)配列のN末端またはC末端に融合した、GST-TDFRP融合ポリペプチドである。このような融合ポリペプチドは、組み換えTDFRPの精製を、アフィニティー法によって容易にすることができる。
【0083】
別の態様において、融合ポリペプチドは、そのN末端に非相同シグナル配列を含むTDFRPポリペプチドである。特定の宿主細胞(例えば、哺乳動物の宿主細胞)において、TDFRPの発現および/または分泌を、非相同シグナル配列の使用により増加することができる。
【0084】
また別の態様において、融合ポリペプチドは、TDFRP配列が、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーから派生した配列に融合している、TDFRP-免疫グロブリン融合ポリペプチドである。本発明のTDFRP-免疫グロブリン融合ポリペプチドを、薬学的組成物に組み込んで対象に投与し、細胞表面でのTDFとTDF受容体ポリペプチド間の相互作用を抑制し、それによりTDF-仲介シグナル伝達をインビボで抑圧することができる。またTDFRP-免疫グロブリン融合ポリペプチドは、例えば必要な抗原を有する特定の細胞または組織を化合物の標的にするなど、TDFRPの生物学的利用能に影響を与えるために使用される。TDF/TDF受容体相互作用の阻害は、細胞生存の調節(例えば、促進または阻害)に加え、増殖性および分化性の疾患の両方の治療において有用である。さらに、本発明のTDFRP-免疫グロブリン融合ポリペプチドを、免疫原として使用し、対象において抗TDFRP抗体を精製し、TDFRPリガンドを精製し、かつスクリーニング分析において、TDFとTDFリガンドとの相互作用を阻害する分子を同定することができる。
【0085】
II. TDRPの調製
A. TDFRPのペプチド合成
一つの態様において、例えば固相または液相ペプチド合成などの、標準的ペプチド合成技術を使用して、TDFRPを化学的に合成することができる。すなわち、配列番号:1〜208として開示する化合物は、例えば当技術分野において周知の組成物および方法を使用して、固体または液体支持相上で、化学的に合成されたものである。Fields, G. B.(1997)「Solid-Phase Peptide Synthesis. Academic Press」、San Diegoを参照のこと。
【0086】
TDFRPは、Fmoc(塩基に不安定な保護基)またはBoc(酸に不安定なα-アミノ保護基)ペプチド合成のいずれかにより生成される。合成の後TDFRPは、例えばイオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、例えばC-18、C-8、およびC-4カラムを使用した逆相HPLC、サイズ排除クロマトグラフィー、疎水性相互反応に基づいたクロマトグラフィー、またはその他のポリペプチド精製法などの標準ポリペプチド精製技術を使用した適切な精製手順により、実質的に、前駆的化学物質またはその他の化学物質を含まない状態になる。
【0087】
B. 組換えDNA技術を使用したTDFRPの生成
別の態様において、TDFRPは、組換えDNA技術により生成される。例えば、細菌、酵母、バキュロウィルスまたは真核細胞における化合物の過剰発現により、十分な量の化合物が生成される。化合物の、例えば、反応混合物、細胞溶解物、または他の未精製物質などの、異質成分からなる混合物からの精製は、例えばイオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーまたはその他のポリペプチド精製法など、当技術分野で周知の方法によって遂行される。これらは、切断可能な、またはさもなければ不活性なエピトープまたは配列に融合するのに伴い、配列番号:1〜208によって示された化合物の発現により、容易となる。精製法に加えて、発現系の選択は、当業者には周知のものである。
【0088】
本発明により提供されたポリヌクレオチドを使用して、分析、特性付け、または治療のために、対応する化合物が(構成的に、または組織の分化もしくは発達の特定の段階において、または病状において)選択的に発現している組織に対するマーカーとして、組換え化合物を発現することができる。
【0089】
本発明の一つ以上の化合物の組換え発現のため、ペプチドをコードするヌクレオチド配列のすべて、または一部を含む核酸を、適切な発現ベクター(挿入されたペプチドのコード化配列の転写および翻訳に必要なエレメントを含んだベクター)に挿入する。態様によっては、調節エレメントは非相同性である(すなわち天然遺伝子プロモーターではない)。一方、転写および翻訳の必要シグナルは、遺伝子の天然プロモーターおよび/またはその隣接領域によっても提供される。
【0090】
様々な宿主ベクター系が、ペプチドコード化配列の発現のために使用される。これらは、以下に制限されないが、以下を含む:(i)ワクシニアウィルス、アデノウィルスなどに感染した哺乳動物の細胞系;(ii)バキュロウィルスなどに感染した昆虫細胞系;(iii)酵母ベクターを含んだ酵母;または(iv)バクテリオファージ、DNA、プラスミドDNA、もしくはコスミドDNAにより形質転換した細菌。使用する宿主ベクター系に基づいて、多数の適切な転写および翻訳エレメントのうち、いずれか一つが使用される。
【0091】
発現ベクター内のプロモーター/エンハンサー配列は、本発明により提供されているように、植物、動物、昆虫、または菌類の調節配列を使用する。例えば、酵母およびその他の菌類のプロモーター/エンハンサーエレメント(GAL4プロモーター、アルコールデヒドロゲナーゼプロモーター、ホスフォグリセロールキナーゼプロモーター、アルカリホスファターゼプロモーターなど)を使用することができる。一方、または加えて、これらは、例えば(i)膵臓細胞内で活性であるインスリン遺伝子制御領域(Hanahanら、1985. Nature 315:115-122参照);(ii)リンパ細胞内で活性である免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedlら、1984. Cell 38:647-658);(iii)肝臓内で活性であるアルブミン遺伝子制御領域(Pinckertら、1987. Genes and Dev 1:268-276);(iv)脳の乏突起膠細胞内で活性であるミエリン塩基性ポリペプチド遺伝子制御領域(Readheadら、1987. Cell 48:703-712);および(v)視床下部内で活性であるゴナドトロピン放出ホルモン遺伝子制御領域(Masonら、1986. Science 234:1372-1378)などの、動物の転写制御領域を含むこともある。
【0092】
発現ベクターまたはそれらの誘導体には、例えば、ヒトまたは動物のウィルス(ワクシニアウィルスまたはアデノウィルスなど);昆虫のウィルス(バキュロウィルスなど);酵母ベクター;バクテリオファージベクター(λファージ);プラスミドベクターおよびコスミドベクターなどが含まれる。
【0093】
挿入された、標的となる配列の発現を調節する、または特定の目的に合うような配列によりコード化された発現ペプチドを修飾またはプロセシングする宿主細胞種が選択される。加えて、特定のプロモーターからの発現が、選ばれた宿主種内での特定の誘導因子の存在下で増強され、それにより、遺伝子操作をされた化合物の発現の制御が促進される。さらに、発現ペプチドの翻訳および翻訳後のプロセシングおよび修飾(グリコシル化、リン酸化など)について、様々な宿主細胞に、特性および特有の機構がある。適切な細胞系または宿主系は、目的とされる、異種のペプチドの修飾およびプロセシングが確実に遂行されるように選択される。例えば、細菌系内でのペプチド発現は、非グリコシル化されたコアペプチドの生成に使用されるが、哺乳動物の細胞内での発現は、非相同ペプチドの「天然」グリコシル化を確実にする。
【0094】
C. TDFRP由来のキメラポリペプチド化合物または融合ポリペプチド化合物の調製
本発明のTDFRP由来のキメラまたは融合ポリペプチド化合物は、当技術分野で周知の、標準組換えDNA技術により生成される。例えば、異なったポリペプチド配列のDNA断片コードは、例えば、連結のための平滑末端または粘着末端の使用、適切な末端を提供する制限酵素消化、必要に応じた付着末端の穴埋め、不適切な接合を避けるためのアルカリホスファターゼ処理、および酵素の連結などの、従来の技術に基づいて連結される。別の態様において、融合遺伝子は、自動DNA合成装置を含む従来の技術によって合成される。一方、遺伝子断片のPCR増幅は、後にアニールおよび再増幅によりキメラ遺伝子配列を生成する、二つの連続した遺伝子断片の間に相補的な突出部を生み出す、アンカープライマーを使用して行われる(Ausubelら(編)「CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY」、John WILEY & Sons, 1992参照)。さらに、融合部分がすでにコードされた多くの発現ベクター(例えば、GSTポリペプチド)が市販されている。TDFRPをコードする核酸は、融合部分がTDFRPコード核酸配列に結合されるように、この様な発現ベクターにクローン化することができる。
【0095】
D. TDFRPポリペプチドライブラリの調製
加えて、TDFRPをコードする核酸配列の断片のライブラリを使用して、TDFRP化合物の変異体のスクリーニングとそれに続く選択のための、TDFRP断片の集団を生成することができる。一つの態様において、コード配列の断片のライブラリは、一つの分子につき、約1回のみの切断が起こるような状況の下で、TDFRPをコードする核酸配列の二本鎖PCR断片をヌクレアーゼによって処理し、二本鎖のDNAを変性し、DNAを復元して、切断された別々の部分のセンスとアンチセンスのペアを含む二本鎖のDNAを形成し、S1ヌクレアーゼでの処理によって、再形成された二本鎖から単鎖部分を除去して、その結果得られる断片ライブラリを連結して発現ベクターにすることにより生成できる。この方法により、N末端、C末端、および様々なサイズのTDFRPポリペプチドの内部断片をコードする発現ライブラリが派生される。
【0096】
点突然変異または切断によってできたコンビナトリアルライブラリの遺伝子産物、および特定の特性を持つ遺伝子産物のcDNAライブラリのスクリーニングの様々な技術が、当技術分野において知られている。これらの技術は、TDFRPのコンビナトリアル突然変異誘発によって生成されたDNAライブラリを、迅速にスクリーニングするのに適している。大きな遺伝子ライブラリのスクリーニングに最も広く使用されている技術は、ハイスループット分析の影響を受けやすく、通常遺伝子ライブラリの複製可能な発現ベクターへのクローン化、その結果として生じるベクターのライブラリを有する適切な細胞の形質転換、および標的となる活性の検出により、その生産物が検出された遺伝子をコードしているベクターの単離が促進されるような状況下での、コンビナトリアル遺伝子の発現を含む。ライブラリ中の機能的突然変異体の頻度を高める新しい技術である再帰的集合突然変異誘発(recursive ensemble mutagenesis, REM)を、スクリーニング分析とあわせて使用して、TDFRP変異体を同定することができる。ArkinおよびYourvan, 1992. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:7811-7815;Delgraveら、1993. Polypeptide Engineering 6:327-331を参照のこと。
【0097】
TDFRP変異体化合物のライブラリはまた、潜在的TDFRP配列の変性集合が、個々のポリペプチドとして、またはTDFRP配列のセットを含む、より大きな融合ポリペプチド(例えば、ファージ提示法)のセットとして発現可能となるように、合成ヌクレオチドの混合物を遺伝子配列と酵素連結することによって生成される。変性オリゴヌクレオチド配列から潜在的TDFRP変異体化合物のライブラリを生成するため、多種の方法が存在する。変性遺伝子配列の化学的合成が、自動DNA合成装置を使用して行われ、合成遺伝子が適切な発現ベクターに連結される。一つの化合物中において、遺伝子の変性セットを使用することにより、標的となる潜在的TDFRP配列のセットをコードするすべての配列の提供が可能となる。変性オリゴヌクレオチドの合成法は、当技術分野では周知のものである。Narang, 1983. Tetrahedron 39:3;Itakuraら、1984. Annu. Rev. Biochem. 53:323;Itakuraら、1984. Science 198:1056;Ikeら、1983. Nucl. Acids Res. 11:477参照。
【0098】
E. 抗TDFRP抗体
本発明は、抗TDFRP抗体をもたらす免疫原としての使用に適した、ポリペプチドおよびポリペプチド断片を含んだ化合物を提供する。化合物を使用して、Fv、Fabまたは(Fab)2など、本発明の任意のTDFRPに免疫特異的に結合する、二重特異性抗体、またはその他の多価抗体を含む、全抗体および抗体断片を産生することができる。
【0099】
単離されたTDFRPポリペプチド化合物、またはその一部分または断片を免疫原として使用して、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体を生成する標準的な技術により、TDFRPまたはTDFポリペプチドに結合する抗体を生成することができる。TFDポリペプチドの全長を使用することもできるが、本発明ではTDFRPまたはTDFRP断片を含んだ化合物の、免疫原としての使用を提供している。TDFRPペプチドは、配列番号:1〜208に示されるアミノ酸配列の少なくとも4つのアミノ酸残基を含み、また、ペプチドに対して生成された抗体がTDFポリペプチドまたはTDFRPにより特定の免疫複合体を形成するよう、TDFRPエピトープを含んでいる。好ましくは抗原ペプチドは、少なくとも5、8、10、15、20、または30のアミノ酸残基を含む。使用により、また当技術分野でよく知られている方法によっては、短いよりも長い抗原ペプチドの方が好ましい場合もある。
【0100】
本発明の特定の態様において、抗原ペプチドに含まれた少なくとも一つのエピトープは、ポリペプチドの表面に位置するTDFポリペプチドの一部(例えば、親水性の領域)である。抗体の生成を標的とした手段として、親水性および疎水性の領域を示すハイドロパシープロットを、フーリエ変換の有無に関わらず、Kyte Doolittle法またはHopp Woods法などを含む、当技術分野で周知の方法によって生成することができる(HoppおよびWoods, 1981. Proc. Nat. Acad. Sci. USA 78:3824-3828;KyteおよびDoolittle, 1982. J. Mol. Biol. 157:105-142参照。これらはいずれも全体が参照として本明細書に組み込まれている)。
【0101】
本明細書に開示されるように、それらのTDFRPまたはその誘導体を、これらのポリペプチド組成物に免疫特異的に結合した抗体の生成において、免疫原として使用することができる。特定の態様において、ヒトのTDFRPポリペプチドの抗体が開示される。当技術分野で周知の様々な手順を、配列番号:1〜208のTDFRPポリペプチド配列に対するポリクローナルまたはモノクローナル抗体、またはその誘導体、断片、類似体、または相同体の生成に使用することができる。これらのいくつかのポリペプチドについて以下に説明する。
【0102】
ポリクローナル抗体の生成のため、様々な適切な宿主動物(例えば、ウサギ、ヤギ、マウス、またはその他の哺乳動物)に、天然ポリペプチド、またはその合成変異体、または前述の誘導体を接種する。適切な免疫原性の調合液は、組み換え技術によって発現されたTDFRPまたは化学的に合成されたTDFRPなどを含む。調合液はさらにアジュバントを含む。免疫反応を増加するために使用される多様なアジュバントには、フロイントアジュバント(完全および不完全)、ミネラルゲル(例えば水酸化アルミニウムなど)、界面活性物質(例えば、リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、原油エマルジョン、ジニトロフェノールなど)、カルメット・ゲラン桿菌(BCG)およびコリネバクテリウム・パルヴム(Corynebacterium parvum)、または同類の免疫活性化合物などのようなヒトアジュバントなどが含まれるが、これらに限定されない。必要に応じて、TDFまたはTDFRPに向けられた抗体分子を哺乳動物から(例えば、血液などから)単離し、ポリペプチドAクロマトグラフィーなどの良く知られた技術によってさらに精製て、IgG画分を得ることができる。
【0103】
特定のTDFRP、またはその誘導体、断片、類似体、または相同体に対するモノクローナル抗体の生成には、細胞系の継続的な培養によって抗体分子の生成を提供する、任意の技術を使用することができる。これらの技術には、ハイブリドーマ法(Kohler & Milstein, 1975. Nature 256:495-497参照);トリオーマ法;ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kozborら、1983. Immunol. Today 4:72参照)、およびヒトモノクローナル抗体を産生するEBVハイブリドーマ法(Coleら、1985.「MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY」、Alan R. Liss, INC., pp. 77-96参照)などが含まれるが、これらに限定されない。ヒトモノクローナル抗体は、本発明の実施に使用され、ヒトハイブリドーマの使用により(Coteら、1983. Proc Natl Acad Sci USA 80:2026-2030参照)、またはEBウィルスによりヒトB細胞をインビトロで形質転換することにより(Coleら、1985.「MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY」、Alan R. Liss, INC., pp. 77-96参照)生成される。上述の引用はいずれも全体が参照として本明細書に組み込まれている。リジンなどの活性アミノ酸の側鎖が合成樹状細胞(dendromeric trees)に加えられ、TDFRP化合物の免疫原性の特性が増進される。さらに、CPGジヌクレオチド法を使用して、TDFRP化合物の免疫原性の特性を高めることもできる。本発明によると、これらの技術を、TDFRP化合物(米国特許第4,946,778号参照)に特異的な単鎖抗体の生成に適応させることができる。加えて、これらの方法を、Fab発現ライブラリの構成に適応させることにより(Huseら、1989. Science 246:1275-1281参照)、TDFRP化合物、例えばポリペプチド、またはその誘導体、断片、類似体、または相同体への標的となる特異性を備えた、モノクローナルFab断片の、迅速活効果的な同定が可能になる。当技術分野で周知の技術により、非ヒト抗体を「ヒト化」することができる。米国特許第5,225,539号参照。これらに限定されないが、以下の断片を含む、TDFRP化合物に対するイディオタイプを含んだ抗体断片は、当技術分野で周知の方法によって生成される:(i)抗体分子のペプシン消化によって生成されたF(ab')2断片;(ii)F(ab')2断片のジスルフィド架橋の還元により生成されたFab断片;(iii)パパインおよび還元化合物を含んだ抗体分子の処理により生成されたFab断片;ならびに(iv)Fv断片。
【0104】
加えて、標準組換えDNA技術を用いて作られる、ヒトの部分と非ヒトの部分の両方を含んだキメラ抗体、およびヒト化されたモノクローナル抗体などの、組み換え抗TDFRP抗体は、本発明の範囲内にある。この様なキメラ抗体およびヒト化されたモノクローナル抗体は、当技術分野において周知の、例えば以下に説明されている、組換えDNA技術によって生成される:国際出願第PCT/US86/02269号;欧州特許出願第184,187号;欧州特許出願第171,496号;欧州特許出願第173,494号;PCT国際公開公報第86/01533号;米国特許第4,816,567号;米国特許第5,225,539号;欧州特許出願第125,023号;Betterら、1988. Science 240:1041-1043;Liuら、1987. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:3439-3443;Liuら、1987. J. Immunol. 139:3521-3526;Sunら、1987. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:214-218;Nishimuraら、1987. Cancer Res. 47:999-1005;Woodら、1985. Nature 314:446-449;Shawら、1988. J. Natl. Cancer Inst. 80:1553-1559);MORRISON (1985) Science 229:1202-1207;Oiら、(1986) BioTechniques 4:214;Jonesら、1986. Nature 321:552-525;Verhoeyanら、1988. Science 239:1534;およびBeidlerら、1988. J. Immunol. 141:4053-4060。上述の引用は、いずれも全体が参照として本明細書に組み込まれている。
【0105】
一つの態様において、TDFRP化合物に対して、標的となる特異性を有する抗体のスクリーニング法は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)およびその他の、当技術分野で周知の免疫を介した技術を含むが、これらに限定されない。特定の態様において、TDFRPポリペプチドの特定のドメインに特異的な抗体の選択は、この様なドメインを有するTDFRPポリペプチドの断片に結合した、大量のハイブリドーマにより促進される。従って、TDFRP、またはその誘導体、断片、類似体、または相同体内の、目的ドメインに特異的な抗体もまた、本明細書に提供される。
【0106】
抗TDFRP抗体は、当技術分野において周知の(例えば、適切な生理学的試料内のTDFポリペプチドまたはTDFRP化合物のレベルの測定、診断、ポリペプチドの画像化における使用など)、TDFポリペプチドまたはTDFRP化合物の局在化および/または定量に関連した方法に使用される。規定の態様において、抗体由来の結合ドメインを含んだ、TDFRP、またはその誘導体、断片、類似体、または相同体は、薬理活性の化合物(以下「治療薬」と称す)として使用される。
【0107】
抗TDFRP抗体(例えば、モノクローナル抗体)を使用して、アフィニティークロマトグラフィーまたは免疫沈降などの標準的技術により、TDFRP化合物またはTDFポリペプチドを単離することができる。抗TDFRP抗体は、細胞の天然TDFポリペプチド、および宿主細胞中に発現された、組み換えにより生成されたTDFRPの生成を促進する。さらに、抗TDFRP抗体を使用して、TDFポリペプチドまたはTDFRPの量、および発現パターンを評価するために、TDF ポリペプチド、または(例えば、細胞溶解液または細胞上清中の)TDFRP化合物を検出することができる。抗TDFRP抗体を使用し、例えば治療法の効能を測定するために、臨床試験の手順の一部として組織中のポリペプチドレベルを監視して、診断用に使用することができる。抗体を検出可能な物質と結合させる(物理的に連結させる)ことにより、検出を容易にすることができる。検出可能な物質の例には、種々の酵素、補欠分子族、蛍光体、発光体、生物発光体、および放射性物質などが含まれる。適切な酵素の例として、ホースラディシュ・ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンステラーゼなどが含まれる;適切な補欠分子族の複合体の例にはストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチン複合体が含まれる;適切な蛍光体の例にはウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミン・フルオレセイン、塩化ダンシルまたはフィコエリトリンが含まれる;発光体の例としてはルミノールが含まれる;生物発光体の例にはルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンが含まれる;また、適切な放射性物質の例には32P、125I、131I、35S、33P、14C、13C、または3Hが含まれる。
【0108】
III. TDFRPの結合または生物活性の測定
A. TDF作用物質および拮抗物質
TDFRP化合物は、TDFそのものとしての機能に加え、TDF受容体作用物質(すなわち模倣体)またはTDF受容体拮抗物質のいずれかとして機能する。TDFR(またはTDF)の作用物質は、天然の形態のTDFポリペプチドと実質的に同一な生物活性、またはそのサブセットを保有することができる。TDFR(またはTDF)の拮抗物質は、例えば、TDF受容体ポリペプチドを含む、細胞のシグナル伝達系の下流または上流部分に競争的に結合することにより、天然の形態のTDFポリペプチドの一つ以上の活性を阻害することができる。従って、機能が限定された変異体での治療により、特定の生物活性を誘導することができる。一つの態様において、天然の形態のポリペプチドの生物活性のサブセットを有する変異体で対象を治療した場合、天然の形態のTDFポリペプチドでの治療に比べ、対象に起こる副作用が少ない。
【0109】
従って、配列番号:1〜208として開示する化合物は、TDFポリペプチドまたはTDF受容体の作用物質または拮抗物質として、例えばTDF I型またはTDF II型受容体を発現する細胞の細胞膜の全域で、シグナル伝達を調節するために使用される。この様な細胞内でのシグナル伝達の調節は、配列番号:1〜208として開示する化合物と、細胞表面にある一つ以上の受容体との特定な結合による相互作用の結果起こるものと思われる。特定な結合とは、平衡解離定数106 M-1を超えるペプチドとTDF受容体との結合を意味する。細胞表面境界の膜構造はまた、結合による相互作用の特異性を高める。TDF作用物質または拮抗物質活性に対するTDFRPの突然変異体のライブラリ(例えば切断による変異体)をスクリーニングすることにより、TDF作用物質(すなわち模倣体)またはTDFRP拮抗物質として機能するTDFRPポリペプチドの変異体が同定できる。
【0110】
B. TDFRP結合の測定
一つの態様において、TDFRP結合の分析とは、TDF受容体とリガンドとの間での結合に適しており、TDF受容体とそのリガンドとの結合量を分析するような条件下でTDF受容体、その高分子リガンドおよびTDFRPが混ぜ合わされる、競合アッセイ方式の事を指す。TDFRPが存在しない場合の結合量、既知の阻害剤が存在する場合の結合量、またはその両方のような、適切な対照群と、結合量を比較する。結合量は、任意の適切な方法によって分析することができる。結合の分析法には、例えばELISA、放射性受容体結合測定、シンチレーション近接アッセイ、細胞表面受容体結合分析、蛍光エネルギー移動分析、液体クロマトグラフィー、膜ろ過分析、その他が含まれる。
【0111】
本発明の実施に有用な、典型的なリガンドと受容体の結合の分析において、事前に選択された受容体に対する既知の定量可能な親和性を有する生成されたペプチド(例は、Ten Dijkeら、(1994) Science 264:101-103を参照。この開示は参照として本明細書に組み込まれている)は、検出可能な成分、例えば放射性同位体による標識、色原体標識、または 蛍光発生標識などにより標識化される。精製された受容体、受容体結合ドメインの断片、または標的となる受容体をその表面に発現する細胞の一定分量を、様々な濃度の非標識ペプチドの存在下で、標識ペプチドとインキュベートする。ペプチドの相対的結合親和性は、候補物(非標識ペプチド)の、標識ペプチドと受容体との結合を阻害する能力を定量することにより、測定される。この分析を行う際、一定濃度の受容体とペプチドが、非標識ペプチドの存在下および不在下でインキュベートされる。標識ペプチドを加える前に、受容体をTDFRP類似体とあらかじめインキュベートしておくことにより、感受性が増加される。標識化された競合体を加えた後、十分な時間をおくことにより競合体を十分に結合させ、遊離した標識ペプチドと結合した標識ペプチドを単離し、どちらか一方を測定する。スクリーニング法の実施において有用な標識には、放射線標識(125I、131I、111Inまたは77Brなど)、色原体標識、分光学的標識(Molecular Probes, INC., Eugene, Oreg.によって、Haughland (1994)「Handbook of Fluorescent and Research Chemicals」 第5版に開示されたものなど)または、化学発光または蛍光発光物質とあわせて使用される、例えば、ホースラディシュ・ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、またはβ-ガラクトシダーゼなど、ターンオーバーの率の高い複合酵素が含まれる。最大の結合シグナルとは、分析用の混合物中に、天然リガンドは存在するがTDFRPは存在しない状態で測定されたシグナルのことである。またバックグラウンドシグナルとは、天然リガンドなしで測定された結合シグナルのことである。
【0112】
本発明の実施に有用な、典型的なリガンドと受容体結合分析において、事前に選択された受容体に対する既知の定量可能な親和性を有する生成されたペプチド(例は、Ten Dijkeら、(1994) Science 264:101-103を参照。この開示は参照として本明細書に組み込まれている)は、検出可能な成分、例えば放射性同位体による標識、色原体標識、または 蛍光発生標識などにより標識化されている。精製された受容体、受容体結合ドメインの断片、または標的となる受容体をその表面に発現する細胞の一定分量を、様々な濃度の非標識化合物の存在下で、標識化合物とインキュベートする。ペプチドの相対的結合親和性は、候補物(非標識ペプチド)の、標識ペプチドと受容体との結合を阻害する能力を定量することにより、測定される。この分析を行う際、一定濃度の受容体とペプチドが、非標識ペプチドの存在下および不在下でインキュベートされる。標識ペプチドを加える前に、受容体をTDFRP化合物とあらかじめインキュベートしておくことにより、感受性が増加される。標識化された競合体を加えた後、十分な時間をおくことにより競合体を十分に結合させ、遊離した標識ペプチドと結合した標識ペプチドを単離し、どちらか一方を測定する。スクリーニング法の実施において有用な標識には、放射線標識(125I、131I、51Cr、111Inまたは77Brなど)、色原体標識、分光学的標識(Molecular Probes, INC., Eugene, Oreg.によって、Haughland (1994)「Handbook of Fluorescent and Research Chemicals」第5版に開示されたものなど)または、化学発光または蛍光発光物質とあわせて使用される、例えば、ホースラディシュ・ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、またはβ-ガラクトシダーゼなどの、ターンオーバーの率の高い複合酵素が含まれる。
【0113】
別の態様において、TDFRP結合分析とは、TDFRP結合リガンドとTDFRP化合物の結合に適した条件下で、TDFRP結合リガンドとTDFRP化合物を混ぜ合わせ、例えば、スキャッチャードまたは非線形回帰分析による解離定数の測定および平衡結合定数の導出など、TDFRP結合リガンドとTDFRP化合物の結合度を分析することを指す。結合の量は、適切な対照群、既知の阻害剤の存在下での結合量、またはその両方と比較される。結合量は、任意の適切な方法により算定される。結合分析法には、例えば、ELISA、放射性受容体結合測定、シンチレーション近接アッセイ、細胞表面受容体結合分析、蛍光エネルギー移動分析、液体クロマトグラフィー、膜ろ過分析などが含まれる。
【0114】
TDFRPのTDFRP結合リガンドとの結合を直接測定する、生物物理学的分析とは、核磁気共鳴、蛍光発光、蛍光偏光、表面プラズモン共鳴(BIACORチップ)などである。TDFRP結合リガンドは、TDF受容体、抗TDFRP抗体、脂質、小分子、ならびにDNAおよびRNAなどの核酸を含むが、これらに限定されない。特定な結合は、例えば、放射性リガンド結合分析、ELISA、FRET、免疫沈降、SPR、NMR(2D-NMR)、質量分析法など、当技術分野において周知の、標準的分析方法によって決定される。例えばこれらに限定されないが、TDF受容体、抗TDFRP抗体、脂質、小分子、ならびにDNAおよびRNAなどの核酸を含む、TDFRPペプチドおよびTDFRP結合リガンドの共結晶もまた、分子の相互作用を測定する手段として、本発明により提供される。TDFRPリガンドおよびTDFRP化合物の結合に適した条件は、化合物およびそのリガンドに基づいており、当技術分野の通常の技術により容易に決定される。
【0115】
C. TDFRPの生物活性の測定
生物活性、すなわちTDFポリペプチドまたはTDFRP化合物の、作用物質または拮抗物質としての特性は、TDFRP化合物またはTDFポリペプチドの生物活性の測定のために開発された、従来型の任意の、インビボおよびインビトロ分析を使用することにより明らかにされる。損傷を受けた骨、肝臓、腎臓、または神経組織、セメント質および/または歯周靭帯を含む歯周組織、胃腸および腎組織、また、免疫細胞を介して損傷を受けた組織などを、修復または再生するために使用される、TDFRPなどのペプチドまたは類似体の効用を調べるための特定のインビボ分析法が、EP 0575,555号;国際公開公報第93/04692号;国際公開公報第93/05751号;国際公開公報第/06399号;国際公開公報第94/03200号;国際公開公報第94/06449号;および国際公開公報第94/06420号などを含む、公開された文書に開示されている。各文書は、全体が参照として本明細書に組み込まれている。実施例2は、TDFのインビトロ機能分析を例示している。実施例3は、TDFのインビボ機能分析を例示している。
【0116】
IV. TDFRPトランスジェニック動物
さらに別の態様において、例えばTDFRP化合物をコードする核酸を有する哺乳動物のような、トランスジェニック動物が提供される。本発明の宿主細胞を使用して、非ヒトトランスジェニック動物を産生することも可能である。例えば、一つの態様において、本発明の宿主細胞は、受精卵、またはTDFRPポリペプチドコード配列が取り入れられた、胚幹細胞である。この様な宿主細胞を使用して、ゲノム中において外因性TDFRP配列が取り入れられた、非ヒトトランスジェニック動物、または内因性TDFRP配列が改変された、相同組み換え動物を生み出すことができる。この様な動物は、TDFRPポリペプチドの機能および/または活性の研究、そしてまたTDFRPポリペプチド活性のモジュレーターの同定および/または評価に有用である。
【0117】
本発明のトランスジェニック動物は、TDFRPをコードする核酸を、(例えば、微量注入法、レトロウィルス感染により)受精卵母細胞の雄性前核に取り入れ、卵母細胞を偽妊娠した雌の代理母動物内で発育させることによりよって創出される。TDFRP cDNA配列は、非ヒト動物のゲノム中に導入遺伝子として取り込まれる。イントロン配列およびポリアデニル化シグナルもまた導入遺伝子中に取り込まれ、導入遺伝子発現の効率を上げる。組織特異的な調節配列は、TDFRP導入遺伝子と動作可能な状態で結合し、TDFRPポリペプチドの特定な細胞への発現を誘導する。胚操作および微量注入法によってトランスジェニック動物、特にマウスなどの動物を発生させる方法は、当技術分野において慣用となっており、例えば米国特許第4,736,866号;米国特許第4,870,009号;および米国特許第4,873,191号;また、Hogan, 1986. 「MANIPULATING THE MOUSE EMBRYO」、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N. Y.などに説明されている。他のトランスジェニック動物の産生にも、同様の方法が使用される。トランスジェニック創始動物は、ゲノム中のTDFRP導入遺伝子の存在および/または動物の組織または細胞中におけるTDFRP mRNAの発現に基づいて同定される。トランスジェニック創始動物は、導入遺伝子を保有する動物をさらに繁殖させるために使用される。また、導入遺伝子をコードするTDFRPポリペプチドを保有するトランスジェニック動物をさらに交配させ、他の導入遺伝子を保有する他のトランスジェニック動物が生み出される。
【0118】
相同組み換えベクターにおいて、TDFRP遺伝子が、付加的な核酸により5'末端および3'末端に隣接され、ベクターに保有されている外因性TDFRP遺伝子と胚幹細胞中の内因性遺伝子との間に相同組み換えが起こる原因となる。付加的な隣接核酸は、内因性の遺伝子との相同組み換えを成功させるのに十分な長さを有している。通常、ベクター内には、(5'末端および3'末端の両方に)数千塩基の隣接DNAが含まれている。相同組み換えベクターについての説明は、Thomasら、1987. Cell 51:503参照。ベクターは次に(例えば、エレクトロポレーションなどにより)胚幹細胞系中に取り入れられ、組み込まれたTDFRP遺伝子が内因性遺伝子と相同的に組換えられている細胞が選択される。Liら、1992. Cell 69:915参照。
【0119】
選択された細胞は次に、(マウスなどの)動物の胚盤胞に注入され、集合キメラを形成する。Bradley, 1987.「TERATOCARCINOMAS AND EMBRYONIC STEM CELLS:A PRACTICAL APPROACH」、Robertson編、IRL, Oxford, pp. 113-152参照。次にキメラ胚を、偽妊娠した適切な雌の代理母動物中に注入し、出産までもたせる。相同的に組換えられたDNAをその生殖細胞中に含んだ子孫は、そのすべての細胞が、導入遺伝子の形質転換(germline transmission)により相同的に組換えられたDNAを含むような動物を繁殖させるために使用される。相同組み換えベクターおよび相同組み換え動物を作る方法は、Bradley, 1991. Curr. Opin. Biotechnol. 2:823-829;PCT国際公開公報第90/11354号;国際公開公報第91/01140号;国際公開公報第92/0968号;および国際公開公報第93/04169号にさらに説明されている。
【0120】
別の態様において、TRFRP導入遺伝子の調節された発現を可能にするような、選択されたシステムを含む、非ヒトトランスジェニック動物を産生することができる。この様なシステムの一例に、バクテリオファージP1のcre/loxPリコンビナーゼシステムがある。cre/loxPリコンビナーゼシステムについての説明は、Laksoら、1992. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:6232-6236を参照。リコンビナーゼシステムの別の例には、サッカロマイシス・セルビシエのFLPリコンビナーゼシステムがある。O'Gormanら、1991. Science 251:1351-2085参照。導入遺伝子の発現の調節にcre/loxPリコンビナーゼシステムが使用される場合、Creリコンビナーゼおよび選択されたポリペプチドの両方をコードする導入遺伝子を含んだ動物が必要となる。この様な動物は、例えば選択されたポリペプチドをコードする導入遺伝子を含んだ動物と、リコンビナーゼをコードする導入遺伝子を含んだ動物の、二種類のトランスジェニック動物を交配させて、「二重」トランスジェニック動物を発生させることによって提供される。
【0121】
本明細書に説明されている、非ヒトトランスジェニック動物のクローンを、Wilmutら、1997. Nature 385:810-813に記載されている方法に基づいて作り出すこともできる。要するに、トランスジェニック動物の細胞(例えば体細胞など)を単離して、成長周期の終了とG0期の開始を誘導する。この休止細胞を次に、例えば電気パルスなどを使用して、休止細胞が単離されたのと同種の動物の除核された卵母細胞に融合させる。次に、再生された卵母細胞を、桑実胚または未分化胚芽細胞となるように培養し、偽妊娠した雌の代理母動物に転移する。この雌の代理母動物から生まれた子供が、細胞(例えば体細胞など)が単離された動物のクローンとなる。
【0122】
V. 薬学的組成物
本発明の、TDFRPをコードする核酸分子、TDFRPポリペプチド、および抗TDFRP抗体(本明細書において「活性化合物」とも呼ばれている)、およびその誘導体、断片、類似体および相同体が、投与に適した薬学的組成物に組み込まれる。このような組成物は一般的に、核酸分子、ポリペプチド、または抗体および薬学的に許容される担体を含む。本明細書において使用される「薬学的に許容される担体」とは、ありとあらゆる溶剤、分散媒体、コーティング、抗菌性および抗真菌性の化合物、等張性および吸収遅延性の化合物など、薬剤投与と互換性のあるものを含むことを意図する。適切な担体については、当分野の標準的参考書であるRemington's Pharmaceutical Sciencesの最新版で説明されており、参照として本明細書に組み込まれている。このような担体または希釈剤の好適な例には、水、生理食塩水、リンガー溶液、デキストロース溶液、および5%のヒト血清アルブミンが含まれるが、これらに限定されない。リポソームおよび揮発性の油などの非水溶性賦形剤などもまた使用される。薬学的に活性な物質に対してこのような媒体および化合物を使用することは、当技術分野では周知のことである。任意の従来型の媒体または化合物が活性化合物と不適合である場合を除いて、組成物内でのそれらの使用が検討される。補助的に活性な化合物を組成物に組み込むこともできる。
【0123】
本発明の薬学的組成物は、目的とする投与経路に適合するように考案される。投与経路の例として、例えば、静脈内、皮内、皮下などの非経口、(吸入などの)経口、(局所の)経皮、経粘膜的、および直腸経由の投与などが含まれる。非経口、皮内、または皮下に使用される溶液または懸濁液には、以下の組成物が含まれる:注射用の、水などの滅菌された希釈剤、生理食塩水、不揮発性の油、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリピレングリコールまたはその他の合成溶媒;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌性化合物;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの酸化防止剤;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート化合物;酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩などの緩衝剤;および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの強直性の調節のための化合物。またpHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基により調節できる。アンプル、使い捨て注射器、ガラスまたはプラスチック製の複数回投与用のビンに注射用の調合液を入れることができる。
【0124】
注入用に適した薬学的組成物は、滅菌水溶液(水溶性)または懸濁液と、滅菌注射溶液または懸濁液の即時調合用の滅菌粉末とを含む。静脈内投与に適した担体には、生理食塩水、静菌性水、Cremophor EL(商標)(BASF, Parsippany, N. J.)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が含まれる。すべての場合において、組成物は滅菌されており、容易に注射針を通過することができる程度の流動性がなくてはならない。また、製造、保存状態において安定したものなくてはならず、細菌および真菌などの微生物による混入から保護されていなくてはならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(グルセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物などを含む溶媒または分散溶媒である。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、また、分散の場合は所定の粒径の維持、および界面活性剤の使用などにより維持される。微生物の作用は、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなど、様々な抗菌性および抗真菌性の化合物により阻止される。多くの場合、等張性の化合物、例えば砂糖、組成物内のマニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムなどの多価アルコールなどを含むことが好ましい。例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなど、吸収を遅らせる化合物を組成物中に含むことにより、注射用の組成物の吸収が延長される。
【0125】
滅菌された注射溶液は、上記に挙げられた成分の組み合わせの一つを含む適切な溶媒中に、必要な量の活性化合物(例えば、TDFRPポリペプチドまたは抗TDFRP抗体)を組み入れ、その後必要に応じてフィルター処理で滅菌をすることによって生成される。通常分散液は、活性化合物を塩基性分散媒体、および上記に挙げられたその他の必要な成分を含む、滅菌された賦形剤中に組み込むことによって生成される。滅菌された注射用溶液の生成のための、滅菌粉末の生成法は、活性成分と、先に滅菌・ろ過された溶液の任意の付加的な目的成分とを有する粉末を生成する、真空乾燥および凍結乾燥法である。
【0126】
経口用の組成物は通常、不活性な希釈剤または食用の担体を含む。これらの組成物はゼラチンカプセルに入れたり、または固めて錠剤にすることができる。治療目的の経口投与のため、活性化合物を賦形剤に組み込み、錠剤、トローチ、またはカプセルなどの形態で使用することができる。また、うがい薬(マウスウォッシュ)として使用される液体担体を使用して経口用の組成物を生成することもできる。このとき液体担体中の化合物は経口で使用され、口内をうがいして吐き出すか、または飲み込まれる。薬学的に許容される結合化合物および/または佐材が、組成物の一部として含まれる。錠剤、丸薬、カプセル、トローチなどは、以下の任意の成分、または性質の似た化合物を含む:微結晶性セルロースゴムトラガカントまたはゼラチンなどの結合剤;デンプンまたは乳糖などの賦形剤、アルギン酸、プリモゲル(Primogel)、またはコーンスターチなどの崩壊化合物;ステアリン酸マグネシウムまたはステロテス(Sterotes)などの潤滑剤;コロイド状酸化ケイ素などの流動促進剤;蔗糖またはサッカリンなどの甘味化合物;またはペパーミント、メチルサリチル酸、またはオレンジ香料などの香料添加化合物。
【0127】
吸入による投与においては、化合物は、例えば二酸化炭素など、適切なスプレー用高圧ガスを含んだ圧力容器またはディスペンサー、または噴霧器からのエアゾールスプレーの形態で提供される。
【0128】
全身投与はまた、経粘膜または経皮的にも行われる。経粘膜または経皮投与において、バリアを透過するのに適した浸透剤が組成物中に使用される。経粘膜投与用のこのような浸透剤は、当技術分野において一般的に知られており、例えば、界面活性剤、胆汁塩、およびフシジン酸誘導体などを含む。経粘膜投与は、鼻腔用スプレーまた座薬などの使用により行われる。経皮投与については、活性化合物は、当技術分野で周知のとおり、軟膏、膏薬、ゲル、クリームとしてつくられる。
【0129】
化合物はまた、(例えば、カカオ脂およびその他のグリセリドなど、従来からの座剤の基材を使用した)座薬、または直腸から使用する停留浣腸の形態での薬学的組成物としても生成される。
【0130】
一つの態様において、活性化合物は、移植片およびマイクロカプセル投与システムを含む放出制御形態で、体内から急速に除去されないように化合物を保護する担体を備えて生成される。エチレン酢酸ビニル、酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの生体分解性、生体適合性のポリマーを使用することができる。これらの形態の生成法は、当技術分野において周知のものである。材料はAlza CorporationおよびNova Pharmaceuticals, Inc.から購入することができる。リポソーム懸濁液(ウィルス抗原にモノクローナル抗体で感染した細胞を標的としたリポソームを含む)もまた、薬学的に許容される担体として使用することができる。これらは、例えば米国特許第4,522,811号に説明されているように、当技術分野で周知の方法に基づいて生成することができる。
【0131】
経口または非経口用の組成物を投与量ユニットの形態で形成することは、投与の簡易化および投与量を均一にするために、特に有用である。本明細書において使用される投与量ユニット形態とは、治療を受ける対象に対する投与単位として適した、物理的に別々のユニットを意味し、各ユニットは目的の薬学的担体と関連した、目的の治療効果を生み出すように算出された、規定量の活性化合物を含んでいる。本発明の投与ユニット形態の詳細は、活性化合物の独特の特性、目的とされる特定の治療効果、およびこのような個々の治療のための活性化合物を調合する技術に内在する限界によって決定され、またそれらに直接依存している。
【0132】
本発明の核酸分子をベクター中に挿入し、遺伝子治療ベクターとして使用することができる。遺伝子治療ベクターは、例えば静脈注射、局所投与(米国特許第5,328,470号参照)、または定位注射(Chenら、1994. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3054-3057参照)などにより対象に与えられる。遺伝子治療ベクターの薬学的製剤には、適切な希釈剤中の遺伝子治療ベクター、または遺伝子を提供する賦形剤が組み込まれた、持続放出基質が含まれる。一方、完全な遺伝子送達ベクターが、例えばレトロウィルスベクターのような組み換え細胞から無傷で生成できる場合、薬学的製剤には、遺伝子提供システムを作る一つ以上の細胞が含まれる。薬学的組成物は、投与説明書とともに、容器、包み、またはディスペンサーに内包される。薬学的組成物は、管理のための指示と共に、容器、パック、またはディスペンサーに含むことができる。
【0133】
VI. スクリーニング法および検出法
本発明の化合物は、以下により詳しく説明される通り、TDFRPポリペプチドの発現(例えば遺伝子治療の使用における宿主細胞中の組み換え発現ベクターを介して)に使用され、TDFRP mRNA(例えば、生体試料中における)、またはTDFRP遺伝子の遺伝子損傷を検出し、TDFRPの活性を調節する。加えて、TDFRPポリペプチドを使用して、TDFポリペプチドの不十分なまたは過度の生成、またはTDF野生型ポリペプチドと比較して活性が低下した、または異常となったTDFポリペプチドの形態の生成を特徴とする疾患の治療に加え、TDFポリペプチド、またはTDFRP活性または発現を調節する薬剤または化合物をスクリーニングすることができる。さらに、本発明の抗TDFRP抗体を使用して、TDF、またはTDFRPポリペプチドを検出、単離し、それらの活性を調節することができる。従って、本発明はさらに、本明細書に説明されたスクリーニング分析により同定された新しい化合物および、上記に説明されたそれらの治療における用途を含む。
【0134】
VII. スクリーニング分析
本発明は、モジュレータの同定方法、すなわち、TDFRPまたはTDFポリペプチドに結合する、または、TDFRPまたはTDFポリペプチドの発現または活性を、刺激または阻害する効果のある(本明細書において「スクリーニング分析」とも呼ばれる)候補薬または試験化合物、すなわち(ペプチド、ペプチド模倣体、小分子その他の薬剤などの)化合物を提供する。本発明はまた、ここに説明されるスクリーニング分析により同定された化合物を含む。
【0135】
一つの態様において、本発明は、TDFRPまたはTDFポリペプチド、またはそれらの生物活性部分と結合する、またはその活性を調節する候補薬または試験化合物をスクリーニングする分析法を含む。本発明の化合物は、以下を含む、当技術分野で周知のライブラリの組み合わせにおける、多数の方法のいずれかを使用することによって得られる:生物学的ライブラリ;空間的にアドレス可能な平行固体相、または液相ライブラリ;形状解析(デコンボルーション)を要する合成ライブラリ法;「1ビーズ、1化合物」ライブラリ法;およびアフィニティークロマトグラフィーによる選択を使用した合成ライブラリ法。生物学的ライブラリ法は、ペプチド・ライブラリに限定されるが、他の4つの方法は、ペプチド、非ペプチドオリゴマーまたは化合物の小分子ライブラリに適用できる。Lam, 1997. Anticancer Drug Design 12:145参照。
【0136】
真菌性、細菌性、または藻類の抽出物などの、化学的および/または生物学的混合物のライブラリは、当技術分野において知られたものであり、当業者に周知の分析法と同様に、説明されている任意の分析法によりスクリーニングすることができる。分子ライブラリの合成方法の例は、以下の科学文献に見ることができる:DeWittら、1993. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 90: 6909;Erbら、1994. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 91:11422;Zuckermannら、1994. J. Med. Chem. 37:2678;Choら、1993. Science 261:1303;Carrellら、1994. Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2059;Carellら、1994. Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33: 2061;およびGallopら、1994. J. Med. Chem. 37:1233。
【0137】
化合物のライブラリは、溶液中(Houghten, 1992. Biotechniques 13:412-421参照)、またはビーズ上(Lam, 1991. Nature 354:82-84)、またはチップ上(Fodor, 1993. Nature 364:555-556)、バクテリア(Ladner、米国特許第5,223,409)、胞子(Ladner、米国特許第5,233,409)、プラスミド(Cullら、1992. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:1865-1869)、またはファージ上(ScottおよびSmith, 1990. Science 249:386-390;Devlin, 1990. Science 249:404-406;Cwirlaら、1990. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 87:6378-6382;Felici, 1991. J. Mol. Biol. 222:301-310;Ladner、米国特許第5,233,409)に表される。
【0138】
化合物がTDFRPポリペプチドの活性を調節する能力は、例えば、TDFRPポリペプチドがTDFRP標的分子と結合、または相互作用する能力を測定することによって決定される。標的分子とは、TDFRPポリペプチドが結合、または相互作用する分子、例えば、TDFRPと相互作用するポリペプチドを発現する細胞の表面上の分子、第2の細胞の表面上の分子、細胞外の環境中にある分子、細胞膜の内壁面に関連した分子、または細胞質の分子などである。TDFRP標的分子は、非TDFRP分子、またはTDFRPポリペプチドまたは本発明のポリペプチドである。一つの態様において、TDFRP標的分子は、細胞外シグナル(例えば、化合物の、膜に結合したTDF受容体分子への結合により発生したシグナル)の、細胞膜を通って、細胞中への伝達を促進する、シグナル伝達経路の成分である。標的は、例えば、触媒作用、または下流シグナル分子とTDF受容体ポリペプチドとの関連を促進するポリペプチドを有する、第2の細胞内ポリペプチドである。本発明の化合物は、このような相互作用、およびその結果起こる、説明された分析によって測定された生物学的反応を作動させる、または拮抗する。
【0139】
TDFRPポリペプチドがTDFRP標的分子と結合、または相互作用する能力は、上述の、直接結合の測定法の一つによって決定される。一つの態様において、TDFRPポリペプチドがTDFRP標的分子と結合、または相互作用する能力は、標的分子の活性を測定することによって決定される。例えば、標的分子の活性は、標的の第2の細胞メッセンジャー(細胞内Ca2+、ジアシルグリセロール、IP3など)の誘導の検出、標的および適切な基質の触媒・酵素活性の検出、レポーター遺伝子(ルシフェラーゼなどの検出可能なマーカーをコードする核酸に、動作可能な状態で結合したTDFRP反応性の調節エレメントを含む)の誘導の検出、または、例えば細胞生存、細胞分化または細胞の増殖などの細胞応答の検出により決定される。
【0140】
また別の態様において、本発明の分析法は、TDFRPポリペプチド、またはその生物活性部分に試験化合物を接触させ、試験化合物がTDFRPポリペプチド、またはその生物活性部分に結合する能力を測定することを含んだ無細胞分析である。試験化合物とTDFRPポリペプチドとの結合は、上述の要領で、直接または間接的に測定される。このような態様の一つにおいて、分析法は、TDFRPポリペプチド、またはその生物活性部分に、TDFRPと結合する既知の化合物を接触させて分析用混合物をつくり、分析用混合物に試験化合物を接触させること、また、試験化合物がTDFRPポリペプチドと相互作用する能力を測定することを含む。このとき、試験化合物がTDFRPポリペプチドと相互作用する能力の測定は、既知の化合物と比較した、試験化合物がTDFRP、またはその生物活性部分と選択的に結合する能力を測定することを含んでいる。
【0141】
またさらに別の態様において、分析法は、TDFRPポリペプチド、またはその生物活性部分に試験化合物を接触させ、試験化合物がTDFRPポリペプチド、またはその生物活性部分の活性(例えば刺激、または阻害)を調節する能力を測定することを含んだ無細胞分析である。試験化合物がTDFRPの活性を調節する能力は、例えば、TDFRPポリペプチドがTDFRP標的分子と結合する能力を、直接結合を測定する上述の方法の一つで測定することによって決定される。代替的な態様において、試験化合物がTDFRPの活性を調節する能力は、TDFRPポリペプチドがTDFRP標的分子をさらに調節する能力を測定することによって決定される。例えば、適切な基質上の標的分子の触媒・酵素活性は、上述の要領で測定される。
【0142】
また別の態様において、無細胞分析は、TDFRPポリペプチド、またはその生物活性部分にTDFRPポリペプチドと結合する既知の化合物を接触させて分析用の混合物を作り、分析用混合物に試験化合物を接触させて、試験化合物がTDFRPポリペプチドと相互作用する能力を測定することを含む。このとき、試験化合物がTDFRPポリペプチドと相互作用する能力の測定は、TDFRPポリペプチドがTDFRP標的分子の活性と選択的に結合、またはそれを調節する能力を測定することを含む。
【0143】
本発明の上述の分析法の一つ以上の態様において、TDFRPポリペプチドまたはその標的分子のいずれかを固定し、分析法を自動化すると同時に、一つまたは両方のポリペプチドの、錯体を形成していない形態からの、錯体を形成している形態の単離を促進することが望まれる。試験化合物とTDFRPポリペプチドとの結合、または候補化合物の存在下、および不在下におけるTDFRPポリペプチドと標的分子との相互作用は、反応物質を入れるのに適した任意の容器中で起こる。このような容器の例には、マイクロタイタープレート、試験管、およびマイクロ遠心分離管が含まれる。一つの態様において、融合ポリペプチドが生成され、それにより一つまたは両方のポリペプチドが基質に結合することを可能にする領域が加わる。例えば、GST-TDFRP融合ポリペプチド、またはGST標的融合ポリペプチドは、グルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical, St. Louis, Mo.)、またはグルタチオン誘導体化マイクロタイタープレート上に吸着され、次に試験化合物、または試験化合物および非吸着標的ポリペプチドまたはTDFRPポリペプチドのいずれかと混ぜ合わされ、この混合物は、複合体形成をもたらす条件下(例えば、塩およびpHの生理学的条件)でインキュベートされる。インキュベート後、ビーズまたはマイクロタイタープレートウェルを洗浄し、結合していない成分、ビーズの場合は固定化された基質、上述の直接または間接的に測定された複合体を除去する。一方、複合体は基質から解離され、TDFRPポリペプチドの結合または活性レベルが、標準的な方法で測定される。
【0144】
さらに、基質上にポリペプチドを固定化する別の方法を、本発明のスクリーニング分析に使用することができる。例えば、ビオチンおよびストレプトアビジンの接合を使用して、TDFRPポリペプチドまたはその標的分子のいずれかを固定化するすることができる。ビオチン化されたTDFRPポリペプチドまたは標的分子は、当技術分野でよく知られている方法(例えば、ビオチン化キット、Pierce Chemicals, Rockford, Ill.)を使用して、ビオチン-NHS(N-ヒドロキシコハク酸イミド)から生成され、ストレプトアビジンに覆われた96ウェルプレート(Pierce Chemical)のウェル中で固定化される。一方、TDFRPポリペプチドまたは標的分子とよく反応はするが、TDFRPポリペプチドまたはその標的分子の結合を妨げることのない抗体は、プレートのウェル中に被覆され、結合していない標的分子またはTDFRPポリペプチドは、抗体の接合によりウェル中に閉じ込められる。このような複合体の検出法には、GST-固体複合体について上述されたものに加え、TDFRPポリペプチドまたは標的分子と関連した酵素活性の検出に基づく酵素結合分析法とともに、TDFRPポリペプチドまたは標的分子とよく反応する抗体を使用した、複合体の免疫検出法が含まれる。
【0145】
別の態様において、細胞に候補化合物を接触させ、細胞中のTDFRP mRNAまたはポリペプチドの発現を測定する方法において、TDFRPポリペプチド発現のモジュレータが同定される。候補化合物の存在下でのTDFRP mRNAまたはポリペプチドの発現レベルを、候補化合物の不在下でのTDFRP mRNAまたはポリペプチドの発現レベルと比較する。次に、この比較に基づいて、候補化合物がTDFRP mRNAまたはポリペプチド発現のモジュレータとして同定される。例えば、候補化合物の存在下でのTDFRP mRNAまたはポリペプチドの発現が、不在下での発現よりも多い(統計的に著しく多い)場合、候補化合物は、TDFRP mRNAまたはポリペプチド発現の刺激剤として同定される。一方、候補化合物の存在下でのTDFRP mRNAまたはポリペプチドの発現が、不在下での発現よりも少ない(統計的に著しく少ない)場合、候補化合物は、TDFRP mRNAまたはポリペプチド発現の阻害剤として同定される。細胞内でのTDFRP mRNAまたはポリペプチドの発現レベルは、TDFRP mRNAまたはポリペプチドの検出について本明細書において説明された方法により測定される。
【0146】
本発明のさらに別の局面において、TDFRPポリペプチドは、2-ハイブリッド(two-hybrid)分析または3-ハイブリッド(three hybrid)分析(米国特許第5,283,317号;Zervosら、1993. Cell 72:223-232;Maduraら、1993. J. Biol. Chem. 268:12046-12054;Bartelら、1993. Biotechniques 14:920-924;Iwabuchiら、1993. Oncogene 8:1693-1696;およびBrent WO 94/10300)において「ベイト(bait)ポリペプチド」として使用され、TDFRP(「TDFRP結合ポリペプチド」または「TDFRP-bp」)と結合または相互作用する他のポリペプチドを同定し、またTDFRP活性を調節する。このようなTDFRP結合ポリペプチドはまた、例えば、TDFRP経路の上流または下流因子として、TDFRPポリペプチドによるシグナル伝達に関わる可能性が高い。
【0147】
2-ハイブリッド(two-hybrid)システムは、単離可能なDNA結合および活性ドメインを含む、ほとんどの転写因子のモジュラーとしての特質に基づいている。簡潔にいうと、分析は二つの異なったDNA構成を使用する。一つの構成において、TDFRPをコードする遺伝子は、既知の転写因子(例えばGAL-4)のDNA結合ドメインをコードする遺伝子と融合する。別の構成において、未確認のポリペプチド(「プレイ(pray)」または「試料」)をコードする、DNA配列のライブラリからのDNA配列が、既知の転写因子の活性ドメインをコードする遺伝子と融合する。「ベイト」および「プレイ」ポリペプチドが相互作用し、インビボでTDFRP依存的複合体を形成することができる場合、転写因子のDNA結合ドメインと活性ドメインが近接する。これらが近接することにより、転写因子に反応する転写調節部分と、動作可能な状態で結合したレポーター遺伝子(例えばLacZ)の転写が可能になる。レポーター遺伝子の発現が検出され、機能的転写因子を含む細胞群体が単離されて、TDFRPと相互作用するポリペプチドをコードする、クローン化された遺伝子を得るために使用される。
【0148】
またさらに別の態様において、TDFRP原子座標に関わる構造情報を含んだシステムが、例えば、x線回折のような生物物理学的技術によって得られる。TDFRPペプチドと化合物の間の結合をx線回折によって分析し、例えば標的ポリペプチドと薬剤複合体のような、TDFRP複合体のx線結晶構造が決定される。また、NMRを使用して、化合物がTDFRPポリペプチドと結合した後に見られる、化学シフトの変化が分析される。このような方法を使い、TDFRPポリペプチドとの結合相互作用に基づいて化合物がスクリーニングされる。
【0149】
本発明はさらに、前述のスクリーニング分析によって同定されたTDFRP化合物、および本明細書に説明されている各種治療におけるそれらの化合物の用法に関連する。
【0150】
VIII. 検出の方法
A. TDFRP発現の検出
生体試料中のTDFRPの存在または不在を検出するための例示的方法は、対象から生体試料を採取し、生体試料に化合物、すなわち、生体試料中でTDFRPの存在が検出できるようにTDFRPポリペプチドをコードする、TDFRPポリペプチドまたは核酸(例えばmRNA、ゲノムDNA)を検出することのできる化合物と接触させることを含む。TDFRP mRNAまたはゲノムDNAを検出する化合物は、TDFRP mRNAまたはゲノムDNAをハイブリダイズすることのできる、標識化された核酸プローブである。核酸プローブは、例えば、少なくとも5、15、30、50、100、250または500ヌクレオチド分の長さのオリゴヌクレオチドのような、TDFRP核酸の全長分、またはその一部分であり、TDFRP mRNAまたはゲノムDNAを、厳しい条件下で特異的にハイブリダイズするのに適したものである。本発明の、診断分析において使用される、他の適切なプローブについて本明細書において説明する。
【0151】
TDFRPポリペプチドを検出するための化合物の例としては、配列番号:1〜208に対抗する、TDFRPポリペプチドと結合することができ、好ましくは検出可能な標識を備えた抗体がある。抗体はポリクローナルであっても良いが、より好ましくはモノクローナルである。また、それらの無傷な抗体、または断片(例えば、FabまたはF(ab')2)を使用することができる。「標識化された」という用語は、プローブまたは抗体に関しては、直接標識化された別の化合物との反応性による、プローブまたは抗体の間接的な標識化とともに、検出可能な物質とプローブまたは抗体との結合(物理的連結)による、プローブまたは抗体の直接的な標識化を含むことを意図する。間接的な標識化の例には、蛍光標識された二次抗体、および蛍光標識されたストレプトアビジンによって検出できるように、ビオチンによって端末標識されたDNAプローブを使用した、一次抗体の検出が含まれる。「生体試料」という用語は、対象の体内に存在する組織、細胞および体液と同時に、対象から単離された組織、細胞および生体液を含むことを意図している。すなわち、本発明の検出法を使用して、生体試料の、インビトロおよびインビボにおけるTDFRP mRNA、ポリペプチド、またはゲノムDNAが検出される。例えば、TDFRP mRNAのインビトロの検出法には、ノーザンハイブリダイゼーションおよびインサイチュー(in situ)ハイブリダイゼーションが含まれる。TDFRPポリペプチドのインビトロの検出法には、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ウェスタンブロット法、免疫沈降、および免疫蛍光発光法が含まれる。また、TDFRPゲノムDNAのインビトロの検出法には、サザンハイブリダイゼーションが含まれる。さらに、TDFRPポリペプチドのインビボ検出法には、対象への標識化された抗TDFRP抗体の取り込みが含まれる。例えば、抗体は、標準的なイメージング技術により、対象の体内における、その存在および位置を検出することのできる放射性マーカーで標識化される。一つの態様において、生体試料は、対象から得られたポリペプチド分子を含む。一方、生体試料は、対象から得られたmRNA分子、または対象から得られたゲノムDNA分子を含む。好適な生体試料は、従来の方法により対象から単離された末梢血白血球試料である。
【0152】
別の態様において、方法はさらに、対照対象から対照生体試料を採取する段階、対照試料と化合物、すなわち、生体試料中でTDFRPポリペプチド、mRNAまたはゲノムDNAの存在が検出できるように、TDFRPポリペプチド、mRNA、またはゲノムDNAを検出することのできる化合物と接触させる段階、対照試料中のTDFRPポリペプチド、mRNA、またはゲノムDNAの存在と、試験試料中のTDFRPポリペプチド、mRNA、またはゲノムDNAの存在とを比較する段階を含む。
【0153】
本発明はまた、生体試料中のTDFRPの存在を検出するキットを含む。例えば、キットは以下を含む:標識化された化合物、すなわち、生体試料中のTDFRPポリペプチドまたはmRNAを検出することのできる化合物;試料中のTDFRPの量を測定する手段;および、試料中のTDFRPの量を標準値と比較する手段。化合物または化合物は、適切な容器内に入れられる。キットはさらに、TDFRPポリペプチドまたは核酸を検出するキットの使用説明書を含んでいる。
【0154】
B. 予測医学
本発明はまた、診断分析、予測分析、薬理ゲノム学、および臨床試験の監視を予測(予想)を目的として使用し、対象を予防的に治療する、予測医学の分野に関連する。従って、本発明の一つの局面は、TDFRP標的分子の活性と同様、TDFRP標的分子の発現を測定する、生体試料(例えば血液、結成、細胞、組織)との関連における診断分析に関連し、その結果、異常のあるTDFRP標的分子の発現または活性に関連した疾患または疾患に個体が罹患しているか、または疾患を発現する危険があるかどうかを決定する。
【0155】
本発明はまた、個体が、TDFRP標的分子の発現または活性に関連した疾患または疾患を発現する危険にあるかどうかを決定する、予測(または予想)分析法を提供する。このような分析法を予測または予想目的で使用することにより、TDFRP標的ポリペプチドによって特徴付けられる、またはそれに関連する疾患が発現する前に、個体を予防的に治療することができる。さらに、本発明の方法を使用して、本発明のTDFRPがその多型よりもTDFRP標的分子に対してより強い親和性を有する場合(または逆の場合)に、個体が、TDFRP標的分子または標的ポリペプチド多型を発現しているかどうかを分析することができる。
【0156】
対象の、特定の組織(または血液)中の、特定のポリペプチドのレベルは、既定の薬剤が対象に投与された場合の、毒性、効能、クリアランス率、代謝率を表す。本明細書に説明されている方法を使用して、さらに、対象におけるこのようなポリペプチドのレベルを測定し、対象のこれらの薬剤に対する反応の予想を補助することができる。本発明の別の局面は、個体におけるTDFRPポリペプチド活性を測定し、それにより個体に適した治療的または予防的な化合物を選択する方法(本明細書において「薬理ゲノム学」と呼ばれる)を提供する。薬理ゲノム学は、個体の遺伝子型(例えば、特定の化合物に反応する個体の能力を測定するために検査された、個体の遺伝子型)に基づいた、個体の治療または予防的治療用の化合物(例えば薬剤)の選択を可能にする。
【0157】
C. 予測分析
TDFRP化合物と、例えばTDF受容体のようなTDFRP化合物の標的分子との結合を使用して、TDFRP化合物の標的分子の発現または活性(上述)と関連した疾患を有する、またはその発現の危険のある対象が同定される。一方、予測分析を使用して、疾患または疾患を有する、またはその発現の危険のある対象が同定される。このように本発明は、異常のあるTDFRP化合物の標的となる発現または活性に関連した疾患または疾患の同定法を提供し、このとき試験試料は対象から採取されている。また、TDFRP化合物の結合または活性が検出され、このとき、TDFRP化合物の結合または活性の変化の存在が、異常のあるTDFRP化合物の標的となる発現または活性に関連した疾患または疾患を有する、またはその発現の危険のある対象の診断に役立つ。本明細書において使用される「試験試料」とは、標的となる対象から採取された生体試料のことをさす。例えば試験試料とは、(例えば血清のような)生体液、細胞試料または組織のことである。
【0158】
さらに、本明細書に説明された予測分析を使用して、異常のあるTDFRP化合物の標的となる発現または活性に関連した、TDF関連の疾患または疾患を治療するために、対象に化合物(例えば作用物質、拮抗物質、ペプチド模倣体、ポリペプチド、ペプチド、核酸、小分子またはその他の薬剤候補)を投与することができるかどうかを決定することができる。例えば、このような方法を使用して、対象のTDF関連疾患を、化合物で効果的に治療できるかどうかを決定することができる。このように本発明は、対象の、異常のあるTDFRP化合物の標的となる発現または活性に関連した疾患を、化合物で効果的に治療できるかどうかの決定方法であり、試験試料を採取し、TDFRP化合物を使用して(例えば、TDFRP化合物の標的分子の存在が、異常のあるTDFRP化合物の標的となる発現または活性に関連した疾患を化合物の投与により治療することのできる対象の診断に役立つ場合)、TDFRP化合物の標的を検出する方法を提供する。
【0159】
対象から採取された、血液または組織試料中のTDFRP化合物の標的分子レベルが測定され、疾患を持たない個体から採取された血液試料または同一組織タイプからの試料において見られるレベルと比較される。健常な対象から採取した試料と比較して、TDF関連の疾患を有すると思われる対象から採取された試料中の、TDFRP化合物の標的分子が過多(または過少)であることは、検査を受けた対象にTDF関連の疾患があることを表す。明確な診断を下すためには、さらに進んだ検査が必要とされる。
【0160】
本明細書において「予測ポリペプチド」と称されている、特定のTDFRP化合物の標的分子の過剰発現(または過少発現)の度合いが、疾患を有する対象の、特定のタイプの治療または処理に対する反応度を表すことが知られている、数多くの疾患が存在する。このように、試料中のTDFRP化合物の標的分子の検出方法を、例えば、対象の治療または処理に反応する可能性を評価するための予防法として使用することができる。対象から採取された適切な組織または血液試料中の、該当する予測ポリペプチドのレベルが測定され、適切な対照群、例えば同じ疾患を持ち、治療に対して好適に反応した対象におけるレベルと比較される。対照群と比較した、試料中での予測ポリペプチドの過剰発現(または過少発現)の度合いは、対象が治療または処理に対して好適に反応しない可能性を予測する。対照群と比較して、過剰発現(または過少発現)の度合いが高いほど、対象が治療に反応する可能性は低くなる。本明細書において「予測ポリペプチド」と称されている、特定の標的ポリペプチドの過剰発現(または過少発現)の度合いにより、対象が疾患を発現するかどうかが表される、数多くの疾患が存在する。
【0161】
このように、試料中のTDFRP標的分子の検出法を、対象が疾患を発現するかどうかの予想法として使用することができる。疾患を発現する危険のある対象から採取した、適切な組織または血液試料中の、該当する予想ポリペプチドのレベルが測定され、適切な対照群、例えば、疾患を発現する危険のない対象におけるレベルと比較される。対照群と比較した、試料中での予測ポリペプチドの過剰発現(または過少発現)の度合いは、対象が疾患を発現する可能性を予測する。対照群と比較して、過剰発現(または過少発現)の度合いが高いほど、対象が疾患を発現する可能性が高くなる。
【0162】
本明細書に説明されている方法は、例えば臨床設定において、TDFRP化合物の標的分子に関連する疾患または疾患の症状を表している、または家族歴をもつ患者の診断のために活用される、本明細書に説明されているTDFRP化合物のような、少なくとも一つのプローブ試薬を含んだ、あらかじめ同梱された診断キットを使用して行われる。さらに、TDFRP化合物の標的が発現している任意の細胞タイプまたは組織を、本明細書に説明されている予測分析に使用することができる。
【0163】
IX. 治療法
本発明は、異常のあるTDFポリペプチドまたはTDFRP標的分子の発現または活性に関連した疾患の発現の危険がある(または発現しやすい)、または疾患を持っている対象を治療する、予防法および治療法の両方を提供する。TDF受容体などのTDFおよびTDFRP標的分子は、細胞の分化に関与している。細胞の分化は、組織形態形成の重要な特性である。組織形態形成とは、成体の組織の修復および再生機構に関わる工程である。成体組織における形態形成の度合いは、それぞれの組織によって多様であり、特に既定の組織における細胞のターンオーバーの度合いに関連している。
【0164】
骨の形態形成タンパク質は、トランスフォーミング成長因子βのスーパーファミリーの一員である。Ozkaynakら(EMBOJ. 9:2085-2093,1990)は、新種のウシの骨形成タンパク質の相同体を精製し、「骨形成タンパク質-1」(OP-1)と名付けた。著者は、ペプチド配列を使用してヒトゲノムおよびOP-1のクローンであるcDNAをクローン化し、後にBMP-7と命名した。BMP-7 cDNAは、分泌シグナル配列を含む431アミノ酸のポリペプチドを予測した。本明細書に説明されているTDFRPは、骨の形態形成タンパク質の生物活性領域の構成ミームであり、例えば、これらに限定されないが、BMP-7(OP-1)および関連ペプチドを含む。生物活性領域は、例えばBMP-7のフィンガー1およびフィンガー2領域を含む。Groppeら(Nature 420:636-642,2002)は、BMP-7に結合した拮抗物質Noggin(602991)の結晶構造を報告した。
【0165】
このように、TDFRP化合物は、BMPポリペプチドによる治療に反応しやすい疾患および疾患の治療に有用である。以下に挙げる参照文献(全体が本明細書に組み込まれている)は、様々な病状の予防および治療における、BMP-7の効能を決定するインビトロおよびインビボ分析について説明しており、このような分析は、本明細書に開示されたTDFRP化合物の生物活性を決定するのに適している。このように、TDF関連の疾患を治療する能力、そしてまた疾患にかかったまたは損傷を受けた組織および臓器を修復および再生する能力を、例えば阻害または促進するなど変更するときに、本発明のTDFRPは有用である。特に、再建外科や、腎臓病、脳損傷、脳梗塞、アテローム性動脈硬化症、関節炎、気腫、骨粗しょう症、心筋症、肝硬変、退化性神経疾患、炎症性疾患、および癌を含む組織変性疾患の治療、ならびに組織、臓器、および四肢の再生を含む分野において、TDFRPに基づいたヒトおよび獣医科的治療が有用である。さらに、本発明のTDFRPを使用して、筋肉、骨、皮膚、上皮、心臓、神経、内分泌腺、血管、軟骨、歯周、肝臓、腎組織および結合組織、または機能的TDRFP標的ポリペプチドが発現される任意の組織の、成長および分化を促進または阻害することができる。このように、異常のあるTDFポリペプチドまたはTDFRP標的分子の発現に関連する疾患には、ウィルス感染、癌、回復中の、神経変性疾患、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、免疫疾患、および骨の疾患が含まれる。例えば、TDFRPに基づく治療用の組成物は、例えば骨減少症の骨組織のような罹患組織における健全な代謝特性の保存、または修復、ならびに、骨折のような骨の損傷の再生治療の誘導に有用である。
【0166】
Markerら(Genomics 28:576-580,1995)は、ホルトオーラム症候群(142900)突然変異により障害をきたした様々な解剖学的位置における、BMP-7転写物の分布を研究した。ホルトオーラムの患者における、心臓、前肢の近位および遠位、鎖骨および肩甲骨を含む変化した構造、およびその他の影響を受けていない組織でBMP-7が発現していることがわかった。
【0167】
Solurshら(Biochem Biophys. Res. Commun. 218:438-443,1996)は、原条期から前肢芽期を含む3日間のラットの組織切片のハイブリダイゼーションにより、OP-1の発生的な発現、および一時的な発現を調査した。OP-1発現E11.5日目に、眼胞の神経上皮で検出され、発現は推定網膜神経および発達中の水晶体板に限定された。E12.5からE13.5日目には、網膜神経、レンズ、および発達中の角膜における発現が認められた。
【0168】
YouおよびKruse(Invest. Ophthal. Vis. Sci. 43:72-81, 2002)は、TGFBファミリーの一員であるアクチビンAおよびBMP-7によって誘導される、角膜筋線維芽細胞の分化およびシグナル伝達の研究をした。アクチビンA誘導のSMAD2のリン酸化、およびBMP-7誘導のSMAD1の両方が、フォリスタチンによって阻害されることがわかった。TGFBタンパク質は、角膜において異なった機能を有している。
【0169】
TDFRP化合物は、冠状動脈アテローム性動脈硬化症の予防または治療に使用される。BMPの誘導およびそれに続く脈管、平滑筋細胞の成長の阻害、および/または脈管、骨形成の誘導は、スタチンにより冠状動脈 アテローム性動脈硬化症の患者の血小板の安定性を増加する機構の一因となる(Emmanueleら、Biochem Biophys Res Commun. 2003 Feb 28;302 (1):67-72)。さらに、Daviesら(J Am Soc Nephrol. 2003 Jun;14 (6):1559-67)による研究は、慢性腎不全の病態生理的要因としてのBMP-7欠乏に対比し、脈管硬化の有力な治療法としての効能を示している。
【0170】
TDFRP化合物は、例えば乳癌および前立腺癌などの癌の治療に使用される。Schwalbeら(Int J Oncol. 2003 Ju1;23 (1):89-95)は、正常な胸組織、および胸部の170例の侵襲性腺管癌から採取した腫瘍組織の試料を、免疫組織化学によって分析した。BMP-7の発現は、正常な胸組織の終末小体においては認められたが、乳管では認められなかった。BMP-7タンパク質は、170例の腫瘍試料のすべてにおいて検出された。BMP-7の発現は、乳癌の予後診断および治療の重要なマーカーである、エストロゲン受容体のレベル(p</=0.01)およびプロゲストロン受容体のレベル(p</=0.01)と大いに関連している。さらに、Masudaら(Prostate. 2003 Mar 1;54 (4):268-74)は、骨転移性前立腺癌における、骨の形態形成タンパク質7の発現の増加を実証した。
【0171】
TDFRP化合物を使用して、腎機能障害および尿管閉塞、急性および慢性腎不全、腎線維症、および糖尿病性腎症などの疾患を治療することができる。Klahr J(Nephrol. 2003 Mar-Apr;16 (2):179-85)は、治療が損傷を受けた時点で開始された場合、BMP-7治療により、尿管閉塞症(UUO)のラットモデルにおける腎損傷が著しく低下したことを実証した。またそれに続く研究により、腎線維症が起こった後に投与された場合にも、BMP-7治療が腎線維症を軽減させたことが示された。賦形剤により治療されたグループで測定されたレベルに比べ、この治療プロトコルが腎機能を著しく増加させることもわかっている。BMP-7はまた、ラットについて、ストレプトゾトシンの単回投与により誘導された糖尿病性腎症を、部分的に改善する。これはまた、糸球体ろ過率(GFR)を回復させ、タンパク質の排泄を減少させ、また、組織学を正常に向けて修復した。TDFRPを、慢性腎不全などの腎臓病の予防または治療に使用することができる。Klahrら(Kidney Int Suppl. 2002 May;(80):23-6)の研究は、BMP-7の投与によって、尿管閉塞および糖尿病性腎症の動物における腎機能および構造が維持され、また回復されることを示している。
【0172】
TDFRP化合物は、糖尿病性腎症の予防または治療に使用される。Wangら(Kidney Int. 2003 Jun;63 (6):2037-49)は、BMP-7が、GFR、尿アルブミンの排泄、および糸球体の組織学を正常に向けて回復させながら、糖尿病性腎臓肥大を部分的に改善することを示した。BMP-7発現の回復は、修復反応の成功と、不運な損傷反応の改善に関連する。
【0173】
TDFRPは、腎線維症の予防または治療に使用される。近頃、ヒトの組み換え骨形態形成タンパク質(BMP)7の外因性の投与が、実験的腎臓病を有するげっ歯類において、腎糸球体および間質の線維症を改善することが明らかにされた(WangおよびHirschberg, Am J Physiol Renal Physiol. 2003 May;284 (5):F1006-13)。
【0174】
TDFRP化合物は、組織の修復を促進するために使用される。Grandeら(J Bone Joint Surg Am. 2003;85-A Suppl 2:111-6)は、BMP-7またはShh遺伝子のいずれかを加えることで、修復組織の質が著しく高められ、その結果、より滑らかな表面およびよりガラス質の軟骨が得られることを実証した。しかしながら、Shh遺伝子が与えられたグループとBMP-7遺伝子が与えられたグループとの間には、軟骨期の存続に顕著な違いがあった。すなわち、後者のグループの軟骨下区画の方がだいぶ速く骨に変換するようである。
【0175】
TDFRP化合物を使用して、生物活性分子の直接キャッピングに影響を及ぼす、または修復性歯質の形成および歯冠または根部歯髄の鉱化を誘導することにより、口腔の疾患を予防または治療することができる(Goldbergら、Am J Dent. 2003 Feb;16 (1):66-76)さらに、TDFRPを、歯周病の予防または治療に使用することもできる。Ad-BMP-7遺伝子の供給によって治療された骨病変は、迅速な軟骨形成およびそれに続く骨形成、セメント質形成および歯周の骨の損傷の予測可能なブリッジを表す。これらの結果はBMPのインビトロ遺伝子転写を使用した歯周の組織工学の成功例を実証し、歯周の欠陥を修復する新しい方法を提供する(Jinら、J Periodontol. 2003 Feb;74 (2):202-13)。
【0176】
TDFRPは、脳梗塞などの外傷性脳損傷の予防または治療に使用される(CairnsおよびFinkelstein, Phys Med Rehabil Clin N Am. 2003 Feb;14 (1 SUPPL):S135-42参照)。虚血後のBMP-7の静脈内投与は、脳梗塞のラットの運動機能を改善する(Changら、Stroke. 2003 Feb;34 (2):558-64)。さらに、Changら(Neuropharmacology. 2002 Sep;43 (3):418-26)は、骨の形態形成タンパク質が、脳梗塞のラットにおける胎児の腎臓組織の移植に誘導された神経防護作用に関連することを実証した。
【0177】
細胞基盤の軟骨修復後のリハビリテーションは長期にわたる可能性があり、その結果、TDFRP化合物での対象の治療による、患者の生産性および生活の質の低下がもたらされる。BMP-7を発現する遺伝子組み換えの行われた軟骨細胞の移植により、実験的軟骨の損傷における、修復組織のガラス様の外観が増した(Hidakaら、J Orthop Res. 2003 Ju1;21 (4):573-83)。
【0178】
TDFRP化合物を、骨の組織工学に使用することができる。Luら(Biochem Biophys Res Commun. 2003 Jun 13;305 (4):882-90)は、筋肉由来細胞による骨芽細胞の表現型の発現の誘導におけるBMPポリマー基質の効能を示し、骨の組織工学の新しい枠組みを提示した。TDFRP化合物は、骨移植に使用される(ReesおよびHaddad, Hosp Med. 2003 Apr;64 (4):205-9)。TDFRPはまた、骨の治癒を促進するのにも使用される。Maniscalcoら(Acta Biomed Ateneo Parmense. 2002;73 (1-2):27-33)は、単側性創外固定器を用いる骨接合術に関連したBMP-7を使用することにより、新しい脛骨の皮下骨折におけるBMP-7タンパク質の治療の可能性を立証した。さらに、TDFRP化合物は、腰の再建外科のような、骨組織の再生に使用される。Cookら(J Arthroplasty. 2001 Dec;16 (8 Suppl 1):88-94)は、臨床前モデルにおいて、細切された海綿骨および同種骨移植と併せてBMP-7を使用することにより、移植片の生物活性が顕著に向上され、その結果、新しい骨形成と移植片の結合が増加し、また早くなることを実証した。股関節再置換術におけるBMP-7の臨床的使用はまた、同種骨のみの移植の場合と比較してより困難な生物学的環境において、より多く、より早い新しい骨の形成をもたらす。
【0179】
TDFRP化合物を使用して、癌の切除手術に加え、外傷から生じる後天的および先天的な骨格異常、および発達異常などの骨格異常を治療することができる。Rutherfordら(Drug News Perspect. 2003 Jan-Feb;16 (1):5-10)は、局部的骨再生がこれらの制限を提示しているため、骨の形態形成タンパク質7の体外遺伝子治療の近年の進歩について論じている。
【0180】
TDFRPは、血液生成に関する疾患の予防または治療に使用される。DetmerおよびWalker(Cytokine. 2002 Jan 7;17 (1):36-42)による研究は、個々のBMPが造血の前駆体の発達を規制するサイトカインの補体の一部を形成することを示し、また特に、胎児の、および最終的な赤血球生成の規制における、BMP-4の役割を指摘している。
【0181】
TDFRPは、不妊などの繁殖障害の治療に使用される。Zhaoら(Dev Biol. 2001 Dec 1;240 (1):212-22)は、BMP-7の突然変異が、精子形成および副睾丸におけるBMP-8a突然変異体の表現型に悪影響を及ぼすことを実証した。これらは、BMP-8aと同様に、BMP-7が精子形成および副睾丸の機能維持の両方に関与していることを表しており、またさらに、BMP-8およびBMP-7が、これらの二つのシステムにおいて、同一または類似した受容体を通してシグナルを送ることを示唆している。
【0182】
X. 疾患および疾患
TDFポリペプチドまたはTDFRP標的分子の生物活性レベルが(疾患または疾患に罹患していない対象と比べて)増加していることを特徴とする疾患および疾患は、活性を拮抗(低減または阻害)し、治療的または予防的に投与することのできるTDFRPに基づく治療化合物によって治療できる。使用される治療化合物は、限定されないが、以下を含む:(i)前述のTDFRPペプチド、またはその類似体、誘導体、断片、または相同体;(ii)前述のペプチドに対する抗TDFRP抗体;(iii)TDFRPペプチドをコードする核酸;(iv)TDFRPペプチドのコード化配列内への非相同挿入のため)「正常に機能しない」アンチセンス核酸および核酸の投与。これらは、TDFRPペプチドの内在性の機能を相同組み換えにより「ノックアウト」するために使用される。(Capecchi, 1989. Science 244:1288-1292参照);または(v)前述のペプチドとその結合パートナーとの間の相互作用を変えるモジュレータ(本発明の追加的ペプチド類似体、または本発明のペプチドに特異的な抗体を含む阻害剤、作用物質および拮抗物質)。
【0183】
TDFまたはTDFRP標的分子の生物活性レベルが(疾患または疾患に罹患していない対象と比べて)減少していることを特徴とする疾患および疾患は、TDF活性を増加する(作用物質となる)TDFRPに基づく治療化合物によって治療できる。活性を上方制御する治療剤は、治療的または予防的に投与することができる。使用される治療剤にはTDFRPペプチド、またはその類似体、誘導体、断片または相同体、または生体利用率を増加させる作用物質などが含まれ、またこれらに限定されない。
【0184】
レベルの増加または減少は、患者の組織試料を(例えば生検組織などから)採取し、インビトロでそれらのRNAまたはペプチドのレベル、構造および/または発現されたペプチド(または前述のペプチドのmRNA)の活性を分析することによって、TDF誘起ペプチドおよび/またはRNAを定量化することにより容易に検出することができる。当技術分野で周知の方法には、(例えばウェスタンブロット法、免疫沈降とそれに続くドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動法、免疫細胞化学などによる)免疫測定、および/またはmRNAの発現を検出するハイブリダイゼーション分析(例えば、ノーザン分析、ドットブロット、インサイチューハイブリダイゼーションなど)を含み、またこれらに限定されない。
【0185】
A. 予防的方法
一つの局面において本発明は、TDFポリペプチドまたはTDFRP標的分子の発現、または少なくとも一つのTDFポリペプチドまたはTDFRP標的分子の活性を調節するTDFRPまたはTDFRP類似体を対象に投与することによって、対象における、異常のあるTDFポリペプチドまたはTDFRP標的分子の発現または活性に関連する疾患または状態を予防する方法を提供する。
【0186】
異常のあるTDFポリペプチドまたはTDFRP標的分子の発現または活性が原因となる、またはそれらによりもたらされる疾患の危機にある対象は、本明細書に説明される任意の診断または予測分析、またはそれらの組み合わせにより同定される。疾患または疾患を予防する、またはその進行を遅らせるよう、予防的化合物を、異常に特徴的な症状が発現する前に投与することができる。異常の種類により、例えばTDFRP、TDFRP類似体、またはTDF作用物質またはTDF拮抗化合物として作用する抗TDFRP抗体を、対象の治療に使用することができる。適切な化合物は、本明細書に説明されるスクリーニング分析に基づいて決定される。
【0187】
B. 治療法
本発明の別の局面は、対象におけるTDFポリペプチドまたはTDFRP標的分子の発現または活性を、治療目的で調節する方法を含む。本発明の調節方法は、細胞を、細胞に関連する、TDFポリペプチドまたはTDFRP標的分子の活性のうち一つ以上を調節する、本発明の化合物と接触させることを含む。核酸またはポリペプチド、TDFRPポリペプチドの天然の同種のリガンド、TDFRPペプチド、抗TDFRP抗体、TDFRP類似体、または小分子などの、TDFポリペプチドまたはTDFRP標的分子の活性を調節する化合物については、本明細書に説明する。一つの態様において、化合物は、一つ以上のTDFポリペプチドまたはTDFRP標的分子の活性を促進させる。このような刺激性化合物には、TDFRPポリペプチド、および細胞中に組み込まれたTDFRPをコードする核酸分子が含まれる。別の態様において、例えば抗TDFRP抗体のような、化合物は、一つ以上のTDFポリペプチドまたはTDFRP標的分子の活性を阻害する。これらの調節方法は、(例えば、化合物で細胞を培養することにより)インビトロで、または、(例えば、化合物を対象に投与することにより)インビボで、実行される。このように、本発明は、TDFポリペプチド、またはTDFRP標的分子、またはそれらをコードする核酸分子の、異常な発現または活性を特徴とする、TDF関連の疾患または疾患に苦しんでいる個体を治療する方法を提供する。一つの態様において、方法は、化合物(例えば本明細書に説明されているスクリーニング分析により同定された化合物)、またはTDF ポリペプチドまたはTDFRP標的分子の発現または活性を調節する(上方制御または下方制御する)化合物の組み合わせの投与を含む。別の態様において、方法は、低減した、または異常なTDFポリペプチドまたはTDFRP標的分子の発現または活性を補う治療として、TDFRPポリペプチド、またはTDFRPをコードする核酸分子を投与することを含む。
【0188】
TDFポリペプチドまたはTDFRP標的分子の活性の促進は、TDFポリペプチドまたはTDFRP標的分子が異常に下方制御されているような状態、および/またはTDF活性の増加が有益な効果を有すると思われるような状態において好ましい。このような状態の一例として、対象が、異常な細胞増殖、および/または分化を特徴とする疾患(例えば線維症など)を有している場合が挙げられる。
【0189】
C. TDFRPに基づく治療薬の生物学的作用の決定
本発明の多様な態様において、適切なインビトロまたはインビボ分析が行われ、特定のTDFRPに基づく治療薬の硬化、およびその投与が、対象の病気に冒された組織の治療に適応されるかどうかが決定される。
【0190】
各種の特定な態様において、患者の疾患に含まれる典型的な細胞型にインビトロ分析が実施され、既定のTDFRPに基づく治療薬が、細胞型に好ましい効果を与えるかどうかが決定される。治療に使用される化合物は、ヒト対象での検査に先立ち、これらに限定されないが、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ウサギなどを含む適切な動物モデルにおいて検査される。同様に、インビボ検査においても、ヒト対象への投与に先立ち、当技術分野で知られている、任意の動物モデルシステムが使用される。
【0191】
D. 本発明の組成物の、予防的および治療的使用
本発明のTDFRP化合物は、これらに限定されないが、以下を含む疾患に関わる、有力な予防的および治療的使用に有用である:発達、分化、および骨細胞の活性化に関わる、対象の様々な疾患;赤血球および血小板のような、血液循環系の細胞の疾患または病変;自己免疫疾患および炎症性疾患;心血管疾患;代謝異常;生殖器の疾患、腎臓病、糖尿病、脳損傷、癌増殖および転移;ウィルス感染、癌治療、歯周病;組織再生;球性リンパ芽球性白血病;神経膠腫;神経疾患;神経変性疾患;アルツハイマー病;パーキンソン病;および、血液生成疾患。後記、「治療法」を参照のこと。
【0192】
一例として、TDFRPポリペプチド化合物をコードするcDNAは遺伝子治療において有用であり、ポリペプチドはそれを必要としている対象に投与された場合に有用である。非限定的な例として、本発明の組成物は、上述の疾患に苦しんでいる患者の治療に、効能を有する。
【0193】
TDFRPポリペプチドをコードする新しい核酸、およびTDFRPポリペプチド化合物、またはその断片は両方とも、診断用の使用においても有用である。さらに、抗菌性の分子(ペプチドの中には抗菌特性を有するものがあることがわかっている)としての用法もある。これらの物質はさらに、TGF-βスーパーファミリーポリペプチドが、対象において過剰発現または過少発現している場合の、治療または診断法における使用のため、免疫特異的に本発明の新規の物質と結合する抗体の発生において有用である。
【0194】
実施例
以下の実施例は、本発明の特定の態様を非限定的に例示することを意図したものである。ここに引用されている文献はすべて、全体が参照として本明細書に組み込まれている。
【0195】
実施例1 構造に基づく、理論的医薬品設計システムおよび方法
上述のTDFRP化合物は、例えばBMP-7(OP-1)およびBMP-2など、そしてこれらに限定されない骨の形態形成タンパク質の構造上の模倣体、特にこれらのタンパク質の生物活性領域(例えばフィンガー1、フィンガー2など)の構造上の模倣体である。結晶化の状態、結晶構造を得る、または得られた結晶構造を理解する方法、および構造モデルに基づいた、これらのタンパク質の生物活性領域についての論議などに関する説明は、Griffithら、Proc Natl Acad Sci U S A. 1996 Jan 23;93 (2):878-83、およびScheuflerら、J Mol Biol. 1999 Mar 19;287 (1):103-15を参照のこと。それぞれ参照として本明細書に組み込まれている。
【0196】
このTDFRP化合物は、部分的に、x線結晶法および核磁気共鳴などのような構造モデルに基づいて設計および精製されており、また以下の参考文献(すべて全体が本明細書に組み込まれている)は、本明細書に開示されたTDFRP化合物の結晶化、生成、および構造分析に適したモデルである。結晶性ポリペプチドを使用した、構造に基づいた医薬品の設計方法は、少なくとも米国特許第6,329,184号および米国特許第6,403,330号で、ともにUppenbergにより説明されている。タンパク質の結晶成長を改良するために、x線トポグラフィーおよび回折法を使用する方法は、米国特許第6,468,346号でArnowitzらにより説明されている。ブラッグ反射を自動的に選択する方法および器具、および結晶の方向性を自動的に測定するシステムは、米国特許第6,198,796号で、Yokoyamaらにより説明されている。構造の決定のための、13C、15N、および2HによるNMR用のタンパク質の生成および標識化の方法は、米国特許第6,376,253号で、Andersonらにより説明されている。巨大タンパク質または複合タンパク質のNMR分光法については、米国特許第6,198,281号で、Wandらにより説明されている。また、生体分子を標的とするリガンドの設計における核磁気共鳴の使用については、米国特許第5,989,827号で、Fesikらにより説明されている。
【0197】
核磁気共鳴による、骨形態形成タンパク質模倣体の理論的な医薬品設計の工程は、(TDF受容体などの)標的分子に対する潜在的リガンドである候補TDFRP化合物の、二次元的15N/1H NMR相関分光法を使用した同定、b)候補TDFRP化合物を標的分子に結合させることによる、二元複合体の形成、および、c)二元複合体の三次元的構造の決定と、それによる標的分子上の候補TDFRP化合物の空間的方向性の測定などの段階を含む。x線結晶法による骨形態形成タンパク質模倣体の理論的医薬品設計の工程も、同様の方法で行われるが、構造データはまず、標的分子(または複合体の共結晶)に対する潜在的リガンドである、候補TDFRP化合物の結晶を形成し、x線照射後の原子反射のデータセットを収集することによって得られる。これらの技法は、ここに提供されている内容と照らし合わせ、当業者には周知のものである。
【0198】
次に候補TDFRP化合物を精製して、標的分子への候補TDFRP化合物の親和性を増加する。精製とは、TDFRP化合物の抑制および環化、または立体配座の制約を誘起する非古典型アミノ酸を組み込むこと含む。抑制、環化または堅化されたTDFRP化合物は、TDFRP化合物の配列の少なくとも二つの位置に、アミノ酸またはアミノ酸類似体が挿入され、それにより、架橋を形成する処置の後、抑制、環化、または堅化されたTDFRP化合物と架橋することのできる化学官能基が提供される条件の下で、合成される。環化は、回転誘起のアミノ酸が取り込まれた場合に支持される。TDFRP化合物を架橋することのできるアミノ酸の例には、ジスルフィドを形成するシステイン、ラクトンまたはラクタムを形成するアスパラギン酸、および遷移金属をキレートして架橋を形成するγ-カルボキシグルタミン酸(Gla)(Bachem)などのキレート剤がある。保護γ-カルボキシグルタミン酸は、Zee-ChengおよびOlson(Biophys. Biochem. Res. Commun., 94:1128-1132 (1980))によって説明された合成法を修正することによって生成される。ペプチド配列が、架橋することのできる少なくとも二つのアミノ酸を含んでいる場合、TDFRP化合物は、ペプチドを架橋し、抑制、環化、または堅化されたTDFRP化合物を形成するために、例えばジスルフィドを形成するシステイン残基の酸化、またキレートを形成する金属イオンの追加などにより、処理される。
【0199】
本発明は、体系的に架橋を生成する方法を提供する。例えば、四つのシステイン残基がペプチド中に組み込まれた場合、異なった保護基が使用される(Hiskey、「The Peptides:Analysis, Synthesis, Biology」、Vol. 3, GrossおよびMeienhofer編、Academic Press:New York, pp. 137-167 (1981);Ponsantiら、Tetrahedron, 46: 8255-8266 (1990)参照)。まずシステインの第1のペアが脱保護されて酸化され、次に第2のセットが脱保護されて酸化される。このようにして、既定のセットのジスルフィド架橋が形成される。また一方、架橋が異なった化学的性質となるように、システインのペアおよびキレートアミノ酸類似体のペアが組み込まれる。
【0200】
例えば1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸塩(Kazmierskiら、J. Am. Chem. Soc., 113:2275-2283 (1991));(2S,3S)-メチル-フェニルアラニン、(2S,3R)-メチル-フェニルアラニン、(2R,3S)-メチル-フェニルアラニンおよび(2R,3R)-メチル-フェニルアラニン(KazmierskiおよびHruby, Tetrahedron Lett. (1991));2-アミノテトラヒドロナフタレン-2-カルボン酸(Landis, Ph. D. Thesis, University of Arizona (1989));ヒドロキシ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸塩(Miyakeら、J. Takeda Res. Labs, 43:53-76 (1989));β-カルボリン(DおよびL)(Kazmierski, Ph. D. Thesis, University of Arizona (1988));HIC(ヒスチジンイソキノリンカルボン酸)(Zechelら、Int. J. Pep. Protein Res., 43 (1991));およびHIC(ヒスチジン環状尿素)などを含み、またこれらに限定されない、特定な立体構造のモチーフを取り入れるため、TDFRP化合物に非古典的アミノ酸が組み込まれる。またこれらに限定されないが、以下を含む特定の二次構造を誘導または支持するため、アミノ酸類似体およびペプチド模倣体がペプチドに取り込まれる:LL-Acp-(LL-3-アミノ-2-プロペンイドン-6-カルボン酸)、β回転誘導ジペプチド類似体(Kempら、J. Org. Chem. 50:5834-5838 (1985));βシート誘導類似体(Kempら、Tetrahedron Lett. 29:5081-5082 (1988));β回転誘導類似体(Kempら、Tetrahedron Lett., 29:5057-5060 (1988));へリックス誘導類似体(Kempら、Tetrahedron Lett., 29:4935-4938 (1988));γ回転誘導類似体(Kempら、J. Org. Chem. 54:109:115 (1989));および以下の参考文献に提供された類似体:NagaiおよびSato, Tetrahedron Lett., 26:647;14 650 (1985);DiMaioら、J. Chem. Soc. Perkin Trans. p. 1687 (1989);さらに、Gly-Ala回転類似体(Kahnら、Tetrahedron Lett., 30:2317 (1989));アミド結合イソエーテル(Jonesら、Tetrahedron Lett., 29:3853-3856 (1988))テトラゾル(Zabrockiら、J. Am. Chem. Soc. 110:5875-5880 (1988));DTC(Samanenら、Int. J. Protein Pep. Res., 35:501:509 (1990));およびOlsonら、J. Am. Chem. Sci., 112:323-333 (1990)およびGarveyら、J. Org. Chem., 56:436 (1990)に記載の類似体。構造的に制限された模倣体のβ回転およびβバルジ、そしてそれらを含んだペプチドについては、1995年8月8日発行の米国特許第5,440,013号で、Kahnにより説明されている。
【0201】
一旦TDFRP化合物の三次元構造(またはその改良型)が決定されると、その治療能力(拮抗物質または作用物質としての)が、GRAM、DOCK、またはAUTODOCKなどのドッキングプログラムを使用したコンピュータモデルによって検査される。TDFRP化合物の三次元構造、およびその複合体の結合の解明を助けるために使用されるコンピュータプログラムには、QUANTA、CHARMM、INSIGHT、SYBYL、MACROMODE、およびICM、MOLMOL、RASMOL、およびGRASP(Kraulis, J. Appl. Crystallogr. 24:946-950 (1991))が含まれる。これらのプログラムおよびその他のすべて、またはほとんどが、インターネットのウェブサイト(World Wide Web)から入手できる。TDFRP化合物の理論的な設計は、修飾されたTDFRP化合物の形状および化学構造が、TDFRP化合物とそのリガンドとの相互作用にどれほど良く合う、または干渉するかを解明するための、潜在的因子とTDFRP化合物とのコンピュータによる組み合わせを含む。さらにコンピュータプログラムを使用して、治療効果の高いTDFRP化合物の、例えばTDFR結合部位との引き合い、反発、および立体障害が推定される。これらの特性はより強い結合の制約と一致しているため、通常結合が強いほど(例えば立体障害が少ないほど、および/または引力が大きいほど)、TDFRP化合物は、強力な、有力な治療薬となる。さらに、TDFRP化合物の設計が特異的であるほど、関連したTDFR(例えばALK3受容体に特異的でALK6受容体に特異的でない、またはその反対)の干渉を受けにくい。これにより、他の標的物との不要な相互作用による潜在的副作用が最小限に抑えられる。例えば、ALK3受容体は腎組織でより一般的に見られるが、ALK6受容体は骨組織により一般的に見られる;天然BMP-7タンパク質はALK6とより高い親和性で結合し、腎臓病におけるBMP-7療法の潜在的副作用は骨形成である。TDFRP化合物は、ALK3への特異性が高く、またALK6受容体への親和性が低くなるように選択、設計されており、そのため腎臓病の治療を受けている対象における、望ましくない骨形成が低減される。
【0202】
初めに、治療効果の高いTDFRP化合物は、組み換えバクテリオファージによって作られた任意のペプチドライブラリ、例えば、(ScottおよびSmith, Science, 249:386-390 (1990);Cwirlaら、Proc. Natl. Acad. Sci., 87:6378-6382 (1990);Devlinら、Science, 249:404-406 (1990))または化学ライブラリをスクリーニングすることによって得られる。この方法で選択された治療薬候補のTDFRP化合物は次に、一つ以上の有望な、治療効果の高いTDFRP化合物が同定されるまで、コンピュータモデリングプログラムにより、体系的に修飾される。このような分析は、HIVプロテアーゼ阻害剤の開発において効果的であることがわかっている(Lamら、Science 263:380-384 (1994);Wlodawerら、Ann. Rev. Biochem. 62:543-585 (1993);Appelt, Perspectives in Drug Discovery and Design 1:23-48 (1993);Erickson, Perspectives in Drug Discovery and Design 1:109-128 (1993))。TDF-1の類似体を分類および生成する、コンピュータに基づく方法は、PCT国際公開公報第02/37313号で、Keckにより示されており、本明細書に説明されているようなTDFRP化合物の選択と直接関連している。
【0203】
このようなコンピュータモデリングは、無数の本質的に任意の化学的修飾とは対照的な、有限数の理論的化学的修飾の選択を可能にするが、どちらの一つであれ有用な薬剤となる。それぞれの化学的修飾には、追加的な化学処置が必要となる。これらは有限数の化合物の合成のためには妥当なことではあるが、すべての可能な修飾が合成を必要とする場合、急速に負担となる。従って、本明細書に開示された三次元構造の分析法と、コンピュータモデリングを使用することにより、これらの候補TDFRP化合物の多くを迅速にスクリーニングすることができ、無数のTDFRP化合物の面倒な合成をすることなく、いくつかの候補治療薬として有望なTDFRP化合物を決定することができる。
【0204】
さらに、候補治療TDFRP化合物の、TDFRPまたはその断片に結合する能力が、任意の標準的結合分析(ハイスループット結合分析を含む)により検査される。一方、潜在的薬剤による、TDFRPの生物活性を調節(阻害または促進)する能力が検査される。適切な潜在的薬剤が同定されると、リガンドと候補治療TDFRP化合物の間に形成された結合複合体上で、第2の構造分析が任意的に行われる。ここに記述されたすべてのスクリーニング分析について、候補TDFRP治療化合物の構造のさらなる改良が通常必要とされ、例えばx線結晶法またはNMRによるさらなる構造分析を含む、特定の薬剤スクリーニング分析により提供される、任意のおよび/またはすべての段階(処理)の連続的な繰り返しによってそれが行われる。
【0205】
実施例2 生物活性のインビトロ分析
A. ALK-3、ALK-6およびBMPR-2の放射性リガンド受容体結合分析:
一般的手順:これらの分析は、125Iで標識化されたTDF-1(BMP-7またはOP-1)と候補TDFRP化合物、または標識のついていないTDF-1との間の、それぞれの受容体(ALK-3、ALK-6またはBMPR-2)との結合に関する競合に基づいている。要するに、手順は、PBS中の3%のBSAでウェルをブロックし、続いてウェルを洗浄することにより、96ウェルのRemovawellプレート上の受容体を固定することを含む。結合緩衝液中で生成された、濃度が増加した、標識化されていないTDF-1またはTDFRP化合物、または対照群(標識化されていないTDF-1)を次に加える。プレートを室温で1時間インキュベートし、次に一定量の125Iで標識化されたTDF-1(250,000から350,000 cpm)をウェルに加え、さらに冷所(4℃))で20時間インキュベートする。ウェルの内容物を吸引し、洗浄用の緩衝液で4回ウェルを洗浄し、自動γ線測定器で、125Iで標識化されたTDF-1に結合した受容体の数を計数する。
【0206】
B. HK-2細胞の培養およびサイトカイン生成の測定
固定化されたPTEC由来のHK-2(ヒト腎臓-2)細胞(ATCC番号CRL-2190)を、上皮成長因子(EGF:5 ng/mL)およびウシの下垂体エキス(40 ug/mL)により補完された、無血清ケラチノサイト培地(GIBCO番号17005-042)中で、前述の要領で(Ryan et al (1994) Kidney International 45:48-57)48時間培養する。各ウェル中3×105細胞の密度で、細胞を24ウェルのプレートに移す。24時間後、細胞をTNF-α(5 ng/mL)を含んだ新鮮な培地で20時間培養する。対照群には培地のみを使用する。次に細胞を新鮮な培地で2回洗浄し、培地のみ(培地対照群およびTNF対照群のウェル)または3つの異なった濃度のTDF-1(40、200または1000 ng/mL)または3つの異なった濃度のTDFRP化合物(4、20または100 uM)でさらに6時間培養する。培養中、細胞を5%C02中、37℃の湿気のある環境に維持する。培養の最後に、培地を除去し、分析まで冷凍保存する。IL-6およびsICAM培養上清の濃度を、特定のELISAにより測定する。
【0207】
C. IL-6のELISA
捕獲抗体を、担体タンパク質なしで、pH 7.4のPBS中、使用濃度まで希釈する。61 uLのストック抗体(360 ug/mL)を、10.939 mLのPBSに加え、緩やかに撹拌する。その後速やかに、各ウェルにつき100 uLずつの希釈された捕獲抗体で、96ウェルのマイクロプレート(Immulon 4 HBX)を覆う。プレートを密封し、冷所(4℃)で一晩インキュベートする。(PBS:8.1 mM Na2HPO4、1.5 mM KH2PO4、137 mM NaCl、2.7 mM KCl、pH 7.4、0.2 umろ過。)翌日ウェルを空にし、ウェルを、各ウェルにつき340 uLの洗浄用緩衝液(洗浄用緩衝液:0.05%のTween-20を含むpH 7.4のPBS)で3回洗浄する。
【0208】
各プレートにつき35 mLのブロッキング緩衝液を調製する。ブロッキング緩衝液の調製には、0.35グラムのBSAおよび1.75グラムの蔗糖を35 mL、pH 7.4のPBSに加え、緩やかに混ぜ合わせる。300 uLのブロッキング緩衝液を各ウェルに加え、プレートを室温で最低1時間インキュベートする。ウェルを空にし、各ウェルにつき340 uLの洗浄用緩衝液で、3回洗浄する。
【0209】
試薬用希釈剤中で、2倍の段階希釈法により、8ポイントの標準曲線を作成する。ストックスタンダードである、組み換えIL-6の70 ng/mLを、試薬用希釈剤中、初期濃度2400 ng/mLまで希釈する。さらにスタンダードを、試薬用希釈剤を使用して、使用領域、1200、600、300、150、75、37.5、18.75および9.375 ng/mLまで希釈する。(試薬用希釈剤の調製には、0.4グラムのBSAを、40 mLのpH 7.4のPBSに加え、緩やかに撹拌する。)さらに、24 uLの各試料培地(HK-2細胞培養物からの)を376 uLの試薬用希釈剤で希釈する。各ウェルに100 uLのスタンダード、または試料を加え、プレートを密封して、冷所(4℃)で一晩インキュベートする。
【0210】
翌日ウェルを空にし、各ウェルにつき340 uLの洗浄用緩衝液で、3回洗浄する。試薬用希釈剤中で、各プレートにつき11 mLの検出抗体の使用希釈液を調製する。61 uLのストック検出抗体(0.1〜10 ug/mL)を10.939 mLの試薬用希釈剤に加え、緩やかに撹拌する。100 uLの検出抗体の使用希釈液を各ウェルに加える。プレートを密封して、室温で2時間インキュベートする。ウェルを空にし、各ウェルにつき340 uLの洗浄用緩衝液で、3回洗浄する。
【0211】
試薬用希釈剤中で、各プレートにつき11 mLのストレプトアビジン-HRPの使用希釈液を調製する。55 uLのストック溶液(# 890803、R&D Systems)を10.945 mLの試薬用希釈剤に加え、緩やかに撹拌する。100 uLのストレプトアビジン-HRPの使用希釈液を各ウェルに加える。プレートを密封して、室温で20分インキュベートする。プレートを直射日光の当たる場所におかないようにする。ウェルを空にし、各ウェルにつき340 uLの洗浄用緩衝液で、3回洗浄する。各プレートにつき11 mLの、新鮮な基質溶液を調製する。5.5 mLの呈色試薬A(H2O2)と5.5 mLの呈色試薬B(テトラメチルベンジジン)(#DY999、R&D Systems)を混ぜる。100 uLの基質溶液を各ウェルに加える。プレートをカバーして、室温で20分インキュベートする。プレートを直射日光の当たる場所におかないようにする。50 uLの停止液(2NのH2SO4)を各ウェルに加える。各プレートに6 mLのストック溶液を加え、プレートを軽く叩いて、完全に混ぜ合わせる。450 nm、波長補正550 nmにセットしたマイクロプレートリーダー(Dynex Revelation 4.22)を使用して、直ちに各ウェルの光学濃度を測定する。
【0212】
D. ICAM-1のELISA
捕獲抗体を、担体タンパク質なしで、pH 7.4のPBS中、使用濃度まで希釈する。61 uLのストック抗体(720 ug/mL)を、10.939 mLのPBSに加え、緩やかに撹拌する。その後速やかに、各ウェルにつき100 uLずつの希釈された捕獲抗体で、96ウェルのマイクロプレート(Immulon 4 HBX)を覆う。プレートを密封し、冷所(4℃)で一晩インキュベートする。(PBS:8.1 mM Na2HPO4、1.5 mM KH2PO4、137 mM NaCl、2.7 mM KCl、pH 7.4、0.2 umろ過。)
【0213】
翌日ウェルを空にし、ウェルを、各ウェルにつき340 uLの洗浄用緩衝液(洗浄用緩衝液:0.05%のTween-20を含むpH 7.4のPBS)で3回洗浄する。各プレートにつき35 mLのブロッキング緩衝液を調製する。ブロッキング緩衝液の調製には、0.35グラムのBSAおよび1.75グラムの蔗糖を35 mL、pH 7.4のPBSに加え、緩やかに混ぜ合わせる。300 uLのブロッキング緩衝液を各ウェルに加え、プレートを室温で最低1時間インキュベートする。ウェルを空にし、各ウェルにつき340 uLの洗浄用緩衝液で、3回洗浄する。
【0214】
試薬用希釈剤中で、2倍の段階希釈法により、8ポイントの標準曲線を作成する。ストックスタンダードである、組み換えsICAM-1の55 ng/mLを、試薬用希釈剤中、初期濃度2000 ng/mLまで希釈する。さらにスタンダードを、試薬用希釈剤を使用して、使用領域、1000、500、250、125、62.5、31.25、15.625および7.813 ng/mLまで希釈する。(試薬用希釈剤の調製には、0.4グラムのBSAを、40 mLのpH 7.4のPBSに加え、緩やかに撹拌する。) さらに、160 uLの各試料培地(HK-2細胞培養物からの)を240 uLの試薬用希釈剤で希釈する。各ウェルに100 uLのスタンダード、または試料を加え、プレートを密封して、冷所(4℃)で一晩インキュベートする。翌日ウェルを空にし、各ウェルにつき340 uLの洗浄用緩衝液で、3回洗浄する。
【0215】
試薬用希釈剤中で、各プレートにつき11 mLの検出抗体の使用希釈液を調製する。61 uLのストック検出抗体(18 ug/mL)を10.939 mLの試薬用希釈剤に加え、緩やかに撹拌する。100 uLの検出抗体の使用希釈液を各ウェルに加える。プレートを密封して、室温で2時間インキュベートする。
【0216】
ウェルを空にし、各ウェルにつき340 uLの洗浄用緩衝液で、3回洗浄する。試薬用希釈剤中で、各プレートにつき11 mLのストレプトアビジン-HRPの使用希釈液を調製する。55 uLのストック溶液(# 890803、R&D Systems)を10.945 mLの試薬用希釈剤に加え、緩やかに撹拌する。100 uLのストレプトアビジン-HRPの使用希釈液を各ウェルに加える。プレートを密封して、室温で20分インキュベートする。プレートを直射日光の当たる場所におかないようにする。ウェルを空にし、各ウェルにつき340 uLの洗浄用緩衝液で、3回洗浄する。各プレートにつき11 mLの、新鮮な基質溶液を調製する。5.5 mLの呈色試薬A(H2O2)と5.5 mLの呈色試薬B(テトラメチルベンジジン)(#DY999、R&D Systems)を混ぜる。100 uLの基質溶液を各ウェルに加える。プレートをカバーして、室温で20分インキュベートする。プレートを直射日光の当たる場所におかないようにする。50 uLの停止液(2NのH2SO4)を各ウェルに加える。各プレートに6 mLの停止液を加え、プレートを軽く叩いて、完全に混ぜ合わせる。450 nm、波長修正550 nmにセットしたマイクロプレートリーダー(Dynex Revelation 4.22)を使用して、直ちに各ウェルの光学濃度を測定する。
【0217】
E. 結果
本明細書に開示される典型的なTDFRP化合物とみなされる、配列番号:45についての効能データを以下に表す。まず、上述の競争的結合分析により、特異的にSer-Thr I型受容体1A(BMPR-1A、別名はALK3)に結合する、配列番号:21のTFDRP候補化合物を示す。
【0218】
図1は、ED50 6.5 nMで、固定化されたBMPR-1A受容体の細胞外ドメイン(ECD)から得られた、TDF-1と入れ替わる、標識化されたTDF-1を示す(結合は下降する「応答」により表される)。
【0219】
図2は、配列番号:45および配列番号:16(CIVNSSDDFLCKKYRS)、陰性コントロールのペプチドを示す。陰性コントロールは、標識化されたTDF-1とALK3受容体との特定な結合を阻害しないが、配列番号:45はED50 〜240 uMで阻害する。配列番号:45は、競争結合データに関しては、Ser-Thr 2型受容体(BMPR-2)と特異的に結合する。
【0220】
図3は、ED50 6.3 nMで、固定化されたBMPR-2受容体の細胞外ドメイン(ECD)から得られた、TDF-1と入れ替わる、標識化されたTDF-1を示す(結合は下降する「応答」により表される)。
【0221】
図4は、対照群ペプチドTP2.009(配列番号:16)は、標識化されたTDF-1とBMPR-2受容体との特定な結合を阻害しないが、配列番号:45は阻害することを示す。配列番号:45はTDF-1と同様、TNF-α(腫瘍壊死因子α)による炎症性の刺激の後、HK2ヒト形質転換腎臓の近位尿細管細胞における、細胞の炎症マーカーIL-6のレベルを低下させる。
【0222】
図5は、IL-6の、HK2細胞培養物中のTNF-αに対する用量依存的反応を示す。これらのデータに基づき、5 ng/mlのTNF-αが炎症性の刺激剤として選択された。
【0223】
図6は、炎症性の刺激の後の、HK2細胞倍地中のIL-6レベルへの、配列番号:45(TP2.003)の有効な効果を示す。白抜きのカラムは、IL-6の非炎症性バックグラウンドレベルであり、黒いカラムは、TNF-αによる炎症性の刺激後のIL-6レベルである。TDF-1(緑のカラム)と同様、配列番号:45(TP2.003)(青のカラム)は、IL-6レベルを用量依存的に減少させ、従って、ED50 〜10 uMでHK2細胞に対する抗炎症性の効果を有する。TDF-1と同様、配列番号:45は、TNF-α(腫瘍壊死因子α)による炎症性の刺激の後の、HK2ヒト形質転換腎臓の近位尿細管細胞における、細胞の炎症マーカーICAM-1のレベルを減少させる。
【0224】
図7は、炎症性の刺激の後の、HK2細胞倍地中のICAM-1レベルへの、配列番号:45の有効な効果を示す。白抜きのカラムは、ICAM-1の非炎症性バックグラウンドレベルであり、黒いカラムは、TNF-αによる炎症性の刺激後のICAM-1レベルである。TDF-1(中央の薄い灰色のカラム)と同様、配列番号:45(一番右側の濃い灰色のカラム)は、ICAM-1レベルを用量依存的に減少させ、従って、ED50 < 4 uMでHK2細胞に対する抗炎症性の効果を有する。TDF-1と同様、配列番号:45は、HK2細胞におけるSer-Thrシグナル伝達を誘導する。Ser-Thrシグナル経路において、リガンド(TDF-1またはTP2.003)1型受容体(ALK3)および2型受容体(BMPR2)の両方と結合し、受容体のオリゴマー化を誘導する。2型受容体は、自らがリン酸化した後、1型受容体をリン酸化させ、これによりSmad 1、5、または8のうちの一つ(以下Smad1と呼ぶ)がリン酸化される。リン酸化されたSmad1は次にSmad4によって確保され、核に運ばれる。従って、核内のSmad1の濃度の検出が、シグナル伝達の誘導の診断となる。
【0225】
図8は、核内のSmad1蓄積の、TDF-1用量依存的な反応を表す。右側のカラム内で、HK2細胞の位相差画像が細胞の密集に近接して現れており、左側の画像は核内のSmad1の蛍光標識を表していることに注意されたい。
【0226】
図9は、核内のSmad1蓄積の、配列番号:45用量依存的な反応を表す。
【0227】
図10は、配列番号:43(TP2.007)がTDF-1と同様、IL-6レベルを基礎レベル以下に下げることを表す。
【0228】
図11は、TP3.004およびTP3.005(配列番号:20および配列番号:21)が抗炎症活性を示さないことを表す。
【0229】
図12は、TP2.005およびTP2.006(配列番号:42および配列番号:45)が抗炎症活性を示さないことを表す。
【0230】
図13は、TP2.008(配列番号:15)が非常に弱い抗炎症活性を示すことを表す。
【0231】
実施例3 生物活性のインビボ分析
ラットモデルにおける全長BMP-7の生物活性のインビボ分析について、本明細書に参照として組み込まれている、「Bone Morphogenetic Proteins」Sampath, K.編中のBoroveckiら、「The Role of Bone Morphogenetic Proteins in Kidney Development and Repair」pp 263-288 (Birkhauser Verlag, Basel Switzerland (2002) に説明されている。ラットに全身的に投与されたBMP-7は、残遺腎臓(腎臓の5/6を摘出)における末期腎不全の進行を中断させる。そこに引用されている第2の分析法は、BMP-7が片側性尿管閉塞(UUO)のラットに全身的に投与された場合の短期的予防を開示している。これらのげっ歯類モデルは、本発明のTDFRP化合物により予防的および治療的な処置が可能な腎臓病の、哺乳動物モデルとなる。
【0232】
等価物
発明の特定な態様の前述の詳細な記述により、他とは異なる生物活性ペプチドについて説明されていることが明らかである。特定の態様が、本明細書に詳細に開示されているが、これは例示のみを目的としたものであり、添付の特許請求の範囲を限定することを意図したものではない。特に、本発明者は、特許請求の範囲によって定義される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な置き換え、変更、および修正が、本発明に加えられることを考慮に入れている。
【図面の簡単な説明】
【0233】
【図1】ED50 6.5 nMで、固定化されたBMPR-1A受容体の細胞外ドメイン(ECD)から得られた、TDF-1と入れ替わる、標識化されたTDF-1を示す(結合は下降する「応答」により表される)。
【図2】配列番号:45および配列番号:16(CIVNSSDDFLCKKYRS)、陰性コントロールのペプチドを示す。陰性コントロールは、標識化されたTDF-1とALK3受容体との特定な結合を阻害しないが、配列番号:45はED50 〜240 uMで阻害する。配列番号:45は、競争結合データに関しては、Ser-Thr 2型受容体(BMPR-2)と特異的に結合する。
【図3】ED50 6.3 nMで、固定化されたBMPR-2受容体の細胞外ドメイン(ECD)から得られた、TDF-1と入れ替わる、標識化されたTDF-1を示す(結合は下降する「応答」により表される)。
【図4】対照群ペプチドTP2.009(配列番号:16)は、標識化されたTDF-1とBMPR-2受容体との特定な結合を阻害しないが、配列番号:45は阻害することを示す。配列番号:45はTDF-1と同様、TNF-α(腫瘍壊死因子α)による炎症性の刺激の後、HK2ヒト形質転換腎臓の近位尿細管細胞における、細胞の炎症マーカーIL-6のレベルを低下させる。
【図5】IL-6の、HK2細胞培養物中のTNF-αに対する用量依存的反応を示す。これらのデータに基づき、5 ng/mlのTNF-αが炎症性の刺激剤として選択された。
【図6】炎症性の刺激の後の、HK2細胞倍地中のIL-6レベルへの、配列番号:45(TP2.003)の有効な効果を示す。白抜きのカラムは、IL-6の非炎症性バックグラウンドレベルであり、黒いカラムは、TNF-αによる炎症性の刺激後のIL-6レベルである。TDF-1(緑のカラム)と同様、配列番号:45(TP2.003)(青のカラム)は、IL-6レベルを用量依存的に減少させ、従って、ED50 〜10 uMでHK2細胞に対する抗炎症性の効果を有する。TDF-1と同様、配列番号:45は、TNF-α(腫瘍壊死因子α)による炎症性の刺激の後の、HK2ヒト形質転換腎臓の近位尿細管細胞における、細胞の炎症マーカーICAM-1のレベルを減少させる。
【図7】炎症性の刺激の後の、HK2細胞倍地中のICAM-1レベルへの、配列番号:45の有効な効果を示す。白抜きのカラムは、ICAM-1の非炎症性バックグラウンドレベルであり、黒いカラムは、TNF-αによる炎症性の刺激後のICAM-1レベルである。TDF-1(中央の薄い灰色のカラム)と同様、配列番号:45(一番右側の濃い灰色のカラム)は、ICAM-1レベルを用量依存的に減少させ、従って、ED50 < 4 uMでHK2細胞に対する抗炎症性の効果を有する。TDF-1と同様、配列番号:45は、HK2細胞におけるSer-Thrシグナル伝達を誘導する。Ser-Thrシグナル経路において、リガンド(TDF-1またはTP2.003)1型受容体(ALK3)および2型受容体(BMPR2)の両方と結合し、受容体のオリゴマー化を誘導する。2型受容体は、自らがリン酸化した後、1型受容体をリン酸化させ、これによりSmad 1、5、または8のうちの一つ(以下Smad1と呼ぶ)がリン酸化される。リン酸化されたSmad1は次にSmad4によって確保され、核に運ばれる。従って、核内のSmad1の濃度の検出が、シグナル伝達の誘導の診断となる。
【図8】核内のSmad1蓄積の、TDF-1用量依存的な反応を表す。右側のカラム内で、HK2細胞の位相差画像が細胞の密集に近接して現れており、左側の画像は核内のSmad1の蛍光標識を表していることに注意されたい。
【図9】核内のSmad1蓄積の、配列番号:45用量依存的な反応を表す。
【図10】配列番号:43(TP2.007)は、TDF-1と同様、IL-6レベルを基礎レベル以下に下げる。
【図11】TP3.004およびTP3.005(配列番号:20および配列番号:21)は、抗炎症活性を示さない。
【図12】TP2.005およびTP2.006(配列番号:42および配列番号:45)は、抗炎症活性を示さない。
【図13】TP2.008(配列番号:15)は、非常に弱い抗炎症活性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:1〜208、配列番号:1〜208をコードするポリヌクレオチド、およびその変異体、類似体、相同体、または断片からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む化合物。
【請求項2】
組織分化因子受容体を発現する細胞の膜全域でシグナル伝達を調節する、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
請求項1記載の化合物をコードする、単離された核酸。
【請求項4】
請求項3記載の核酸を含むベクター。
【請求項5】
核酸分子に動作可能な状態で結合したプロモーターをさらに含む、請求項4記載のベクター。
【請求項6】
請求項5記載のベクターを含む細胞。
【請求項7】
請求項1記載の化合物と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項8】
請求項1記載の化合物に免疫特異的に結合する、抗体またはその断片。
【請求項9】
モノクローナル抗体である、請求項8記載の抗体。
【請求項10】
ヒト化抗体である、請求項9記載の抗体。
【請求項11】
請求項8記載の抗体と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項12】
請求項5記載の核酸分子と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項13】
(a)化合物の発現を提供する条件下で、請求項5記載の核酸を含む細胞を培養する段階;および
(b)発現された化合物を回収する段階
を含む、化合物を生成する方法。
【請求項14】
(a)試料を提供する段階;
(b)該試料を、化合物に免疫特異的に結合する抗体に接触させる段階;および
(c)該化合物に結合した抗体の存在または量を測定し、これにより試料中の化合物の存在または量を測定する段階
を含む、試料における請求項1記載の化合物の存在または量を測定する方法。
【請求項15】
(a)試料を提供する段階;
(b)該試料を、核酸分子に結合するプローブに接触させる段階;および
(c)該核酸分子に結合したプローブの存在または量を測定し、これにより試料中の核酸分子の存在または量を測定する段階
を含む、試料における請求項3記載の核酸分子の存在または量を測定する方法。
【請求項16】
(a)化合物を、請求項1記載の化合物に接触させる段階;および
(b)該化合物が請求項1記載の化合物に結合しているかどうかを決定する段階
を含む、請求項1記載の化合物に結合する化合物を同定する方法。
【請求項17】
そのような治療または予防を必要としている対象に、該対象の組織分化因子に関連した疾患を治療または予防するのに十分な量の請求項1記載の化合物を投与することを含む、組織分化因子に関連した疾患を治療または予防する方法。
【請求項18】
組織分化因子に関連した疾患が、組織変性疾患および組織再生からなる群より選択される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
組織変性疾患が、腎臓病、外傷性脳損傷、脳梗塞、アテローム性動脈硬化症、関節炎、気腫、骨粗しょう症、心筋症、肝硬変、退化性神経疾患、ホルトオーラム病、眼疾患、糖尿病性腎症、変性骨疾患、腎臓病、歯周病、糖尿病性腎症、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、心血管疾患、炎症性疾患、免疫疾患、骨疾患、生殖器の疾患、造血器疾患、および癌からなる群より選択される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
組織再生が、筋肉、樹枝状組織、神経、腎臓、脳、骨、皮膚、肺、筋肉、卵巣、精巣、心臓、脾臓、軟骨、神経、歯周、歯質、肝臓、脈管組織、結合組織、リンパ組織、造血組織、および腎組織からなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
対象がヒトである、請求項17記載の方法。
【請求項22】
そのような治療または予防を必要としている対象に、該対象の組織分化因子に関連した疾患を治療または予防するのに十分な量の請求項5記載の核酸を投与することを含む、組織分化因子に関連した疾患を治療または予防する方法。
【請求項23】
対象がヒトである、請求項22記載の方法
【請求項24】
一つ以上の容器内に、請求項7記載の薬学的組成物およびその内容物の使用説明書を含むキット。
【請求項25】
一つ以上の容器内に、請求項11に記載の薬学的組成物およびその内容物の使用説明書を含むキット。
【請求項26】
一つ以上の容器内に、請求項12に記載の薬学的組成物およびその内容物の使用説明書を含んだキット。
【請求項27】
(a)第1の哺乳動物対象からの試験試料を提供する段階;
(b)第1の哺乳動物対象からの試験試料を、請求項1記載の化合物に接触させる段階;
(c)化合物/組織分化因子受容体の複合体のレベルを検出する段階;
(d)第1の哺乳動物対象からの試料における組織分化因子受容体の発現レベルを定量化する段階;および
(e)対照試料と比較した、第1の対象における組織分化因子受容体の発現レベルの変化が、疾患の存在または疾患に対する素因を示す場合において、段階(a)の試料中の組織分化因子受容体の量と、該疾患に罹患していないまたは罹患する傾向がないことがわかっている第2の哺乳動物対象からの対照試料中の組織分化因子受容体の量とを比較する段階
を含む、第1の哺乳動物対象における、組織分化因子受容体のレベル変化に関連する疾患の存在またはその疾患に対する素因を測定する方法。
【請求項28】
化合物が、配列番号:1〜208からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む化合物と少なくとも90%同一なアミノ酸配列を有する化合物であり、病理的状態を緩和するのに十分な量の該化合物を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物における病理的状態を治療する方法。
【請求項29】
病理的状態を緩和するのに十分な量の請求項8記載の抗体を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物における病理的状態を治療する方法。
【請求項30】
配列番号:1〜208、またはその断片、変異体、または相同体からなる群より選択される化合物の発現または活性を調節する、少なくとも一つの化合物を、哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物における組織分化因子に関連した疾患を治療する方法。
【請求項31】
組織分化因子に関連した疾患が、腎臓病、外傷性脳損傷、脳梗塞、アテローム性動脈硬化症、関節炎、気腫、骨粗しょう症、心筋症、肝硬変、退化性神経疾患、ホルトオーラム病、眼疾患、糖尿病性腎症、変性骨疾患、腎臓病、歯周病、糖尿病性腎症、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、心血管疾患、炎症性疾患、免疫疾患、骨疾患、生殖器の疾患、造血器疾患、および癌からなる群より選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
配列番号:1〜208からなる群より選択される、組織分化因子に関連した疾患の治療に使用される化合物。
【請求項33】
組織分化因子に関連した疾患を治療する薬剤の製造における、配列番号:1〜208からなる群より選択される化合物の使用。
【請求項34】
a)候補化合物を提供する段階;
b)候補化合物とTDFRP化合物との間に複合体が形成されるような条件下で、該候補化合物を、請求項1記載のTDFRP化合物に接触させる段階;
c)複合体の共結晶が形成されるような条件下で該複合体をインキュベートする段階;
d)x線回折により該複合体の構造原子座標を測定する段階;および
e)該複合体の構造のモデルを作り、該TDFRP化合物に対する候補複合体の結合を測定する段階
を含む、請求項1記載のTDFRP化合物に結合する化合物を同定する方法。
【請求項35】
化合物の結晶生成、および、請求項34記載の方法により生成された試験化合物。
【請求項36】
a)候補化合物を提供する段階;
b)候補化合物とTDFRP化合物との間に複合体が形成されるような条件下で、該候補化合物を、請求項1記載のTDFRP化合物に接触させる段階;
c)核磁気共鳴分析または質量分析法により、該複合体の結合または構造を決定する段階;および、随意に
e)該複合体の構造モデルを作る段階
を含む、請求項1記載のTDFRP化合物に結合する化合物を同定する方法。
【請求項37】
非ヒト哺乳動物細胞のゲノムに組み込みが行われた非ヒトトランスジェニック哺乳動物であり、調節領域である第1のセグメントと、配列番号:1〜208からなる群より選択される化合物をコードするポリヌクレオチド配列である第2のセグメントとを有し、かつ該第1のセグメントが動作可能な状態で第2のセグメントに結合している核酸化合物を含む、非ヒトトランスジェニック哺乳動物。
【請求項38】
トランスジェニックマウスである、請求項37記載の非ヒトトランスジェニック哺乳動物。
【請求項39】
第1のセグメントが、調節可能な発現エレメントであるか、細胞または組織特異的調節にさらされているエレメントである、請求項37記載の非ヒトトランスジェニック哺乳動物。
【請求項40】
請求項37記載の非ヒトトランスジェニック哺乳動物に由来する、または請求項37記載の非ヒトトランスジェニック哺乳動物から培養された、組織または細胞。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2006−507804(P2006−507804A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−513469(P2004−513469)
【出願日】平成15年6月17日(2003.6.17)
【国際出願番号】PCT/US2003/019203
【国際公開番号】WO2003/106656
【国際公開日】平成15年12月24日(2003.12.24)
【出願人】(504463936)トラソス インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】