説明

単結晶の製造方法および製造装置

【課題】坩堝内の加熱された単結晶原料が溶解している融液に種結晶を接触させ、前記融液から種結晶を引き上げることにより単結晶を成長させる液相エピタキシャル法によりバルク単結晶を効率よく製造する。
【解決手段】常伝導コイル5への交流電流の通電により誘起されるローレンツ力を融液4に作用させて融液の隆起と誘導加熱を行いながら、隆起した融液の頂点付近に種結晶7を接触させ、種結晶上に単結晶15を成長させる。結晶成長開始前後および/または終了前後の非定常過程において結晶5または15の近傍を補助加熱することにより結晶の熱流束量の急激な変化を防止して、亀裂のない良質な結晶を得る。補助加熱は、上昇させたコイル5または別のコイルによる誘導加熱、および/または治具13の融液への浸漬により行われる。治具13が融液に溶解可能であると、ヘテロエピタキシャル成長に必要な融液組成の調整機能も果たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体材料等として用いられる炭化珪素(SiC)その他の単結晶の液相エピタキシャル成長(LPE法)による製造方法および製造装置に関する。本発明の単結晶の製造方法および製造装置は、高品質かつ実用的な大きさの単結晶の成長を可能にするものである。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素は、熱的および化学的に安定な化合物半導体の一種であり、珪素に比べて、約3倍のバンドギャップ、約10倍の絶縁破壊電圧、約2倍の電子飽和速度、約3倍の熱伝導係数などの有利な特性を示す。そのため、炭化珪素は新しい電子デバイスの基板材料としての応用が期待されている。
【0003】
炭化珪素、さらには砒化ガリウム、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、ダイヤモンドといった、シリコンよりバンドギャップの大きいワイドバンドギャップ半導体の基板材料となる単結晶の製造技術は、気相成長法である昇華法や化学気相成長法(CVD法)と、液相エピタキシャル法(LPE法)とに大別される。しかし、工業規模で適用する場合、これらのどの手法にも大きな問題点がある。
【0004】
一般に、昇華法により製造された単結晶には、多数の格子欠陥が存在することが知られている。例えば、SiCの場合、昇華の際にはSiCが一旦分解して、Si、SiC2、Si2Cなどとなって気化すると同時に、黒鉛も昇華するが、温度によって単結晶基板表面に到達するガス種が異なる。これらの分圧を化学量論的に正確に制御することは困難である。このため、結晶内で特定の元素や分子が過剰に析出して欠陥と成りやすい。また、昇華法には、結晶の多形転位を生じやすいという欠点もある。
【0005】
CVD法は、ガスで原料を供給するため、原料の供給量を増加させることが難しく、バルク(大型)単結晶の成長法としては実用的でない。
LPE法では、例えばSiCの場合、その構成元素である炭素を含む坩堝(例えば、黒鉛坩堝)にSi融液を収容し、このSi融液に、Siが坩堝の炭素と反応して生成したSiCを溶解させて、融液をSiC溶液(即ち、液体原料)にすると共に、温度勾配を生じさせ、結晶保持具の先端に付けた単結晶基板を、過冷却(過飽和溶液)状態になっているSiC溶液の低温部に浸漬して、基板上にSiC単結晶を成長させるのが一般的である。通常は、SiC溶液に上部が下部より低温となるような温度勾配を形成して、結晶保持具の先端の単結晶基板をSi融液の液面と接触させ、SiC単結晶の成長につれて結晶保持具を引き上げていく。
【0006】
LPE法で得られるSiC単結晶は、一般に、欠陥が少なく、多形転移を生ずる欠点も少ないという特長を有する。しかし、LPE法でバルク単結晶を得るために長時間の単結晶成長を行うと、坩堝の低温部分、SiC溶液の低温部に浸漬された結晶保持具の周辺、あるいはSiC溶液の表面近傍などが、抜熱によって単結晶成長部より低温になり、そこに多くの多結晶が成長する。多結晶が成長すると単結晶の成長が阻害されるため、バルク単結晶は得られ難い。そのため、LPE法によるSiC単結晶の成長では、現状では、単結晶基板上に薄いSiC単結晶を形成することしかできない。また、LPE法では、SiC単結晶の成長温度がSiの融点より約300℃高温であるため、Siの気化によりSiC溶液中のSiC濃度が増加して過飽和になりやすく、多結晶が生じやすいという問題もある。
【0007】
バルクSiC単結晶を成長させるためのLPE法の改良として、下記の技術が提案されている。
下記特許文献1には、炭素を含む坩堝の周囲を断熱して均温化した状態で坩堝の炭素をSi融液に溶解させ、生成したSiC溶液面に接触させた種結晶にSiC単結晶を成長させる方法が開示されている。SiC溶液の上方に設置された誘導加熱された炭素塊あるいは抵抗加熱ヒータなどの加熱手段を用いて融液面の温度を調整する点に特徴があるが、輻射加熱で融液面の温度を調整することは難しいと思われる。仮にこの手法で断熱化に成功した場合、SiC溶液内には温度勾配が存在しないことになるので、単結晶の成長は期待できないか、成長したとしても成長速度の増加は期待できない。
【0008】
下記特許文献2には、少なくとも一種の遷移金属と珪素と炭素を含む原料を炭素質坩堝内で加熱溶融してSiC溶液を形成し、このSiC溶液を冷却するか、あるいはSiC溶液に温度勾配を形成することによって、種結晶にSiC単結晶を析出成長させる方法が開示されている。適切な遷移金属を選択することによりSiC溶液の蒸気圧を下げることができるので、種結晶以外の場所でのSiC多結晶の成長が抑制できると説明されているが、現実には蒸気圧を顕著に下げることが難しく、SiC濃度の過飽和を抑制して多結晶の成長を抑制することは難しいと考えられる。また、坩堝の低温部分、結晶保持具、SiC溶液の表面近傍などの低温部での多結晶発生に対する特別な技術が開示されていないので、温度管理の面からも多結晶の成長を抑制することは難しい。
【特許文献1】特開平7−172998号公報
【特許文献2】特開2000−264790号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した多結晶の成長や結晶欠陥の増加といった問題を伴わずに、LPE法によってバルク単結晶を効率よく製造することができる単結晶製造方法および製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、常伝導コイルに交流電流を通電することにより誘起されるローレンツ力を利用して融液を隆起させ、隆起した融液の頂点付近に種結晶を接触させて種結晶上に液相エピタキシャル成長によりバルクの単結晶を成長させる単結晶の製造方法を開発した。この方法では、側面から高周波誘導加熱を受けた融液が隆起するため、加熱を受ける融液側面の面積が増え、加熱が促進されると同時に、融液内における不均一なローレンツ力の分布に起因して融液が電磁攪拌される。また、常伝導コイルを隆起した融液の頂点より下側に配置すると共に融液表層に結晶保持具を浸漬することにより、融液に隆起部の頂点が低温となる上下方向の温度勾配が形成される。そのため、多結晶の成長を抑制して、実用的な成長速度で、単結晶を成長させることが可能となる。
【0011】
しかし、融液を側面から誘導加熱し、かつ坩堝の一部が冷却される特殊な炉を使用するため、この炉の構造に起因して、上記特許文献1、2に記載の技術と比較すると、結晶保持具近傍、すなわち、結晶成長部位近傍の雰囲気温度が低くなる。このため、特に、種結晶を融液と接触させて単結晶成長を開始する際や、エピタキシャル成長が完了して単結晶が成長した種結晶を融液から回収する時に、結晶が受ける熱流束量が短時間の間に大きく変化して、結晶に亀裂が発生し易いという欠点があることが判明した。
【0012】
また、種結晶として使用できる単結晶基板が得られていない場合には、目的とする結晶と格子配列が類似した単結晶基板を用いたヘテロエピタキシャル成長が必要となる。その場合、亀裂発生を抑制すると同時に、融液組成を適切に制御して、目的とする結晶のヘテロエピタキシャル成長を促進することが求められる。
【0013】
本発明は、上記のローレンツ力を利用して融液を隆起させる単結晶の製造方法において、単結晶の成長開始時や完了時の結晶内部の亀裂発生を防止し、かつ必要に応じてヘテロエピタキシャル成長を促進することができる、単結晶の製造方法および製造装置を提供するものである。
【0014】
本発明の単結晶の製造方法は、坩堝内で加熱された単結晶原料が溶解している融液に種結晶を接触させ、前記融液から種結晶を引き上げることにより単結晶を成長させる単結晶製造方法において、
常伝導コイルへの交流電流の通電により誘起されるローレンツ力を融液に作用させることにより融液の隆起と誘導加熱を行いながら、隆起した融液の頂点付近に種結晶を接触させて種結晶上に単結晶を成長させ、
さらに、結晶成長の開始前後の非定常過程において種結晶の近傍を補助加熱するか、および/または結晶成長の終了前後の非定常過程において成長結晶の近傍を補助加熱することにより、種結晶および/または成長結晶の熱流束量の急激な変化を防止する、
ことを特徴とする方法である。
【0015】
本発明はまた、単結晶製造装置にも関する。本発明の単結晶製造装置は、単結晶原料の融液を保持する坩堝と、先端に種結晶を保持することができる昇降可能な結晶保持具とを備え、さらに、融液にローレンツ力を発生させて融液を隆起させると同時に誘導加熱することができる常伝導コイルと、結晶成長の開始前後および終了前後の非定常過程において、それぞれ種結晶および成長結晶の近傍を補助加熱することができる手段とを備えることを特徴とする。
【0016】
以下では、補助加熱される結晶成長開始時の種結晶近傍および結晶成長終了時の成長結晶近傍の部位を、結晶成長部位と総称する。
本発明の単結晶製造方法および製造装置において、結晶成長部位近傍の補助加熱は、(1)融液の加熱部位に対して非接触の加熱手段、例えば、電磁誘導加熱により行われるか、もしくは(2)融液を構成する組成の一部を材質とする治具を融液と接触させることにより行われる(この場合は、加熱と同時に、融液と接触した治具の一部が融液中に溶解して融液組成を変化させることを伴う)(以下では、この治具を補助加熱・成分調整治具という)か、または(1)と(2)の組み合わせにより行うことができる。
【0017】
電磁誘導加熱による補助加熱は、前記常伝導コイルを、適当な昇降治具によって結晶成長部位近傍を加熱するように位置を変動させることによって行うか、あるいは結晶成長部位近傍を加熱する位置に設置した、前記常伝導コイルとは別の常伝導コイルにより行うことができる。
【0018】
本発明の単結晶製造装置における坩堝は、融液と接する第一の坩堝部材と、融液の側周面を包囲する導電性材質からなる第2の坩堝部材とから構成されることができる。その場合、第2の坩堝部材の周囲に前記常伝導コイルが配置され、かつ第2の坩堝部材は常伝導コイルの巻き方向と略直交方向に複数のスリットを有し、さらに第2の坩堝部材を冷却する手段を有することができる。第一の坩堝部材の上面は、第2の坩堝部材から距離をおいて凹部を有することができる。
【0019】
以下の説明において、本発明で採用される「ローレンツ力を利用して融液を隆起させ、誘導加熱を促進すると共に、隆起した融液の頂点付近に種結晶を接触させて種結晶上に液相エピタキシャル成長によりバルクの単結晶を成長させる方法」を、坩堝の一部が冷却されることから、「冷却坩堝液相エピタキシャル成長(CC−LPE, Liquid Phase Epitaxy by Cold Crucible)」法と呼ぶ。
【0020】
一方、上記特許文献1、2で採用される液相エピタキシャル成長法を、加熱された坩堝を用いることから「加熱坩堝法液相エピタキシャル成長(HC−LPE, Liquid Phase Epitaxy by Hot Crucible)法」と呼ぶ。
【0021】
CC−LPE法は、HC−LPE法に比べて、種結晶である単結晶基板を保持する結晶保持具が低温になり、したがって、その先端に取り付けられた単結晶基板(種結晶)の周囲や成長結晶の周囲(つまり、結晶成長部位近傍)が低温になる。図1はCC−LPE法の単結晶の製造の様子を示す縦断面図であり、図2はその際の坩堝構造例を示す部分破断斜視図である。
【0022】
CC−LPE法において、結晶保持具1と結晶成長部位近傍が低温になるのは、図2に示すように、種結晶の単結晶基板7を保持する結晶保持具1の周囲を坩堝の側壁部が取り囲み、この側壁部が坩堝を構成する各セグメント8に配置された二重管に冷却水を流すことにより冷却されるからである。このように結晶成長部位近傍が低温であることは、液体原料4に形成される温度勾配(結晶成長の駆動力となる)が大きくなり、大きな結晶成長速度が得られるという利点をもたらす。しかも、液体原料の表層から誘導加熱がなされるので、HC−LPE法に比べて低温条件で結晶成長が可能であり、HC−LPE法では成長できない構造の結晶が得られるという別の利点もある。
【0023】
結晶保持具1は、常伝導コイルを構成する通電コイル5から離れた距離にあるため、通電コイル5による誘導加熱より、むしろ融液状態の液体原料4(これは通電コイル5による誘導加熱で加熱される)からの伝導伝熱により加熱される。このため、結晶保持具1の先端に取り付けられた単結晶基板7を液体原料4に接触させた直後は、単結晶基板7から結晶保持具1に向かう熱流束量が短時間で急激に増加するので、その熱衝撃により結晶に亀裂が発生しやすい。
【0024】
一方、エピタキシャル成長が完了して、結晶を液体原料4から離脱させる場合は、単結晶基板7から結晶保持具1に向かう熱流束量が短時間で急激に減少し、この時も熱衝撃により結晶に亀裂が発生しがちである。特に、成長結晶は液体原料4による濡れ性に富むので、成長結晶を液体原料4から離脱させるために結晶保持具1を上昇させた時、液体原料4の自由表面は界面張力により結晶に付着したまま引き上げられて若干隆起した状態となった後、重力が界面張力より大きくなった時点で結晶は液体原料4から離脱し、自由表面は急降下する。この時に結晶が受ける熱流束の変化量(減少量)は、結晶が液体原料と接触する際の熱流束の変化量(増加量)より一般に大きいので、成長終了時の方が熱衝撃が大きく、結晶(すなわち、成長結晶)の亀裂がより発生し易い状況となる。
【0025】
本発明では、結晶成長の初期と末期に結晶に加わる急激な熱流束量の変化を緩和するため、結晶を液体原料を介した伝導伝熱により加熱するだけでなく、結晶成長の開始および/または終了段階に、制御可能な追加の補助加熱手段を利用して、結晶成長部位近傍を加熱する。
【0026】
この補助加熱手段としては、結晶成長部位に必要な量と時間の制御可能な非接触加熱が可能な、電磁誘導加熱などの加熱手段を採用することができる。しかし、成長結晶と異なる(格子不整合をが生ずる)種結晶を用いるヘテロエピタキシャル成長の場合には、種結晶の溶解を防止する必要があるため、このような加熱手段では十分でなく、結晶成長部位の液体原料の組成を調整できる補助加熱手段が望ましい。そのための加熱手段として、それ自体が液体原料と接触して加熱されるとともに、液体原料に接触した時に溶解して液体原料の組成を調整する機能を持つ、補助加熱・成分調整治具を結晶成長部位の周囲に配置することができる。
【0027】
(1)電磁誘導加熱
エピタキシャル成長の開始あるいは終了段階、すなわち、結晶成長が非定常状態となる段階、で結晶に対する熱流束量の急激な変化を避ける一つの方法は、加熱対象物を汚染せずに熱エネルギーを付与することが可能な非接触の加熱手段である電磁誘導を利用して、結晶あるいは結晶保持具を加熱することである。電磁誘導加熱には、用いる周波数帯によって、高周波加熱、マイクロ波加熱、誘電加熱などがある。
【0028】
定常状態にあるエピタキシャル成長の間は、液体原料に結晶成長の駆動力となる温度勾配(結晶成長面が低温となる)を実現する観点から、結晶成長部位近傍の誘導加熱を促進しない方がよい。しかし、成長開始または終了時の非定常の段階では、結晶成長部位近傍が低温のままであると熱衝撃が大きくなるので、結晶成長部位近傍の誘導加熱を促進して、この部分の温度を上昇させることが、結晶の亀裂発生防止に有利である。
【0029】
これを実現するため、誘導加熱は、熱量のみならす、加熱位置や時間についても制御可能でなければならない。例えば、高周波加熱の場合は、通電コイル(常伝導コイル)を複数に分割し、それぞれの通電コイルに供給する電力を制御(例、結晶成長部位に近い通電コイルは補助加熱が必要な時期だけに電力を印加)したり、あるいは通電コイルを昇降可能にして、必要な時期に結晶成長部位に通電コイルを近づけるようにすればよい。
【0030】
一方、エピタキシャル成長が定常状態にある間は、液体原料は結晶成長部位が低温となる温度勾配を必要とするので、結晶成長部位に近い通電コイルに対する印加電力を低めるか、遮断したり、あるいは結晶成長部位から通電コイルを遠ざければよい。
【0031】
電磁誘導加熱の制御手段として、補助加熱すべき結晶までの距離を可変にするコイル昇降治具の他に、結晶とコイルの間に誘導遮蔽板を配置する等のエネルギーの減衰の制御等の方法も利用できる。
【0032】
(2)補助加熱・成分調整治具
種結晶を用いるLPE法の場合、結晶の種類によっては種結晶が得られておらず、製造する単結晶との間に格子不整合が生ずる種結晶を用いるヘテロエピタキシャル成長が必要になる場合がある。ヘテロエピタキシャル成長の場合は、しばしば、種結晶からのホモエピタキシャル成長が起こって、目的とは異なる結晶が成長することがある。このような場合には、結晶の亀裂を抑制するだけでなく、成長結晶の構造も同時に制御する必要がある。また、種結晶を液体原料に接触させてから目的とする結晶が成長を始めるまでの間に種結晶が溶解するのを防ぐ必要もある。
【0033】
このために、液体原料と接触して溶解する補助加熱・成分調整治具を用いることができる。治具の材料は液体原料を構成する組成に含まれる成分から構成し、治具の一部が溶解して液体原料に入ると、種結晶の溶解量が制御される。このような治具は、液体原料に接触することで加熱され、治具の近傍を加熱すると共に、液体原料の組成の一部を変えて、種結晶のホモエピタキシャル成長を抑制する。
【0034】
ヘテロエピタキシャル成長を行う場合、ヘテロエピタキシャル成長が定常状態にある間は、液体原料に結晶成長部位が低温となる温度勾配を実現すると共に、結晶成長を継続する観点から、補助加熱・成分調整治具を用いない方がよい。逆に、非定常の段階、特に、結晶成長の開始の段階では、補助加熱・成分調整治具を用いて温度勾配を緩和すると共に、液体原料の成分調整を行って、ヘテロエピタキシャル成長を促進(ホモエピタキシャル成長を抑制)すると共に、種結晶の溶解を抑制することが望ましい。
【0035】
補助加熱・成分調整治具は、液体原料と接触させることにより目的とする機能を発揮する。例えば、補助加熱・成分調整治具を結晶を周回する略管状の形状のものとし、これを上下方向に昇降可能にする機構を備える。それにより、この補助加熱・成分調整治具を降下させて液体原料に浸漬すると、この治具の内部に位置する結晶成長部位の雰囲気温度を高めて温度勾配を緩和すると同時に、治具の一部が液体原料に溶解し、ヘテロエピタキシャル成長が必要な時期に液体原料の組成をそれに適した組成に変更することができる。
【0036】
一方、結晶成長が進行し、単結晶基板が目的とするヘテロエピタキシャル成長した結晶で覆われた定常状態にある結晶成長の段階では、補助加熱・成分調整治具を液体原料から離脱するように上昇させる。その結果、結晶成長部位近傍の雰囲気温度が下がって所定の温度勾配が得られると共に、液体原料の組成を元に戻し、目的とする結晶成長に適した液体原料の組成が実現できる。
【0037】
補助加熱・成分調整治具を用いる雰囲気温度の制御手段は、上記のように液体原料に補助加熱・成分調整治具を浸漬する以外に、治具の回転もしくは振動と組み合わせる方法、治具を直接通電加熱する方法、上述した電磁誘導加熱と組み合わせる方法などを併用し、加熱効率を高めると共に液体原料への溶解を促進することもできる。
【発明の効果】
【0038】
本発明に係る単結晶製造方法および装置によれば、多結晶を生じにくいCC−LPE法により、結晶成長の初期や末期の急激な熱流束量の変化を抑制して、内部に亀裂が認められない高品質のバルク単結晶を効率よく製造することができる。その結果、従来は困難であった、LPE法による高品質のバルク単結晶の製造が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下の説明では、炭化珪素または窒化アルミニウム単結晶の製造について本発明を説明するが、本発明により製造できる単結晶はそれらに限られるものではない。従来よりLPE法が適用されてきた各種化合物、例えば、砒化ガリウム、窒化ガリウム、ダイヤモンドの単結晶の製造にも本発明を適用することができる。
【0040】
最初に、基本的な冷却坩堝液相エピタキシャル成長(CC−LPE)法の概要を、図1(装置の縦断面図)、図2(坩堝の一部破断斜視図)を参照しながら、炭化珪素単結晶の製造に関して具体例を説明する。
【0041】
坩堝は、ほぼ側壁部を構成し、液体原料(融液)4とは接触しない第一の坩堝部材2と、ほぼ底面部を構成し、液体原料4と接触する第二の坩堝部材3という2つの部材から成る。第一の坩堝部材2は、内径約100mm、高さ約300mmの略円筒状であり、銅材質から成る。図2に示すように、第一の坩堝部材2の壁は、第一の坩堝部材2の高さよりは短いが、常伝導コイルである通電コイル5の巻き高さよりは長くなる長さで鉛直方向に延びた、絶縁機能を持つスリット6を介して、互いに周方向で絶縁された、複数のセグメント8から組み立てられている。通電コイルから発生した誘導電流はスリットに遮られるため、第1の坩堝部材を周方向に流れることができずに外側から内側に向かって流れ、融液に効率よくローレンツ力を発生させることができる。通電コイル5の巻き高さおよびスリット6の長さはそれぞれ、約100mmおよび約200mmである。
【0042】
複数のセグメント8のそれぞれは、内部に設置された二重管に冷却水を通水して冷却することができるようになっている。運転中、第一の坩堝部材2の温度は、ほぼ冷却水の温度より100℃を越えて高くならない温度に維持される。第一の坩堝部材2の上部は内径約100mmの円形断面の開口部9となっていて、この開口部から結晶保持具1を坩堝内に挿入することができる。
【0043】
第二の坩堝部材3は、第一の坩堝部材2の内壁と一部接触する状態でその中に内装されている。第一の坩堝部材2と第二の坩堝部材3の間隙は広いところで1mm、狭いところでは0mm(両者は接触している)である。第二の坩堝部材3の主な素材は炭素(例、黒鉛)である。
【0044】
第一の坩堝部材2の外周には、常伝導コイルである通電コイル5が、一巻きが略水平面に含まれる態様で4乃至5巻き程度の多重螺旋巻き構造に配置されている。つまり、スリット6と通電コイル5の巻き方向は互いに略直交方向の位置関係にある。通電コイル5と第一の坩堝部材2が接触して導通が可能になる点は存在せず、両者の間隔は接近しているところで約1mm、離れているところで約10mmの距離がある。通電コイル5はブスバー(図示せず)を介して高周波電源(図示せず)に接続されている。高周波電源の最大出力は300kW、周波数は5kHzから30kHzの間で可変である。
【0045】
第二の坩堝部材3の上面は、第一の坩堝部材2に隣接するところで隆起し、第一の坩堝部材2から離れた中心付近では窪んだ、凹部形状を持つことが多いが、融液の種類によっては平坦な形状であっても構わない。第二の坩堝部材3の上面の起伏の変化は約20mmである。第二の坩堝部材3の上面と第一の坩堝部材2の側壁および開口部9で囲まれた空間は自由空間10であり、この空間内に液体原料4、気体12、単結晶基板7、結晶保持具1の一部等を収容することができる。自由空間10の体積は、ほぼ1200cm3である。
【0046】
開口部9から坩堝内に挿入される、昇降可能な結晶保持具1は、長さが約500mmで、直径は高さにより変動するが、先端は30mmで、根元付近は60mmである。結晶保持具1は主に炭素材質から成る。結晶保持具1の先端には約30mm直径の大きさの単結晶基板7が種結晶として取り付けられている。単結晶基板7は、液体原料中に溶解している結晶させる物質と同じもの(エピタキシャル成長)でも、結晶させる物質と異なるもの(ヘテロエピタキシャル成長)でもよい。
【0047】
第一の坩堝部材2、第二の坩堝部材3、結晶保持具1の一部、通電コイル5の一部などは、加減圧、気体12の供給および排気が可能な、一部水冷構造のチャンバー11に収納されており、チャンバー11には気体供給装置(図示せず)、真空ポンプ(図示せず)、排ガス処理装置(図示せず)などが連結されている。チャンバー11は気密性と耐圧性を有しており、内容積は約35000cm3であり、材質はステンレス鋼である。チャンバー11には、運転に必要なバルブ、圧力計P、流量計、熱電対挿入口、輻射温度計窓、観察窓などが適宜装着されている。また、第一の坩堝部材2と第二の坩堝部材3は、略鉛直方向を回転軸として略同じ速度で、互いに同じ方向で回転させてもよい。さらに、結晶保持具1も回転させることができる。
【0048】
上記装置の第二の坩堝部材の上に固体原料(例、SiまたはSiと他の金属)を装入し、適宜チャンバー内を排気した後、通電コイルに高周波電源から交流電流を通電すると、固体原料が誘導加熱されて溶融し、同時に、この通電により誘起されるローレンツ力により、生成した融液が図示のようにドーム状に隆起する。この状態で誘導加熱を続けると、融液と接する第二の坩堝部材3から炭素が融液中に溶解して、融液はSiC溶液、すなわち、液体原料4となる。液体原料4は誘導加熱されると同時に、電磁攪拌されるため、そのSiC濃度は比較的均一である。通電コイル5は、その最上部が隆起した液体原料4の頂部より低くなるように配置することにより、液体原料4の頂点の温度が低くなるような上下方向の温度勾配が液体原料4に形成される。
【0049】
融液中のSiC濃度が飽和濃度またはその近く(以下、略飽和濃度という)に近づいたら、先端に単結晶基板7を取り付けた結晶保持具1を下降させて、隆起した液体原料4の頂点と接触させる。液体原料4の頂部は低温部であり、SiC濃度が過飽和になっているため、単結晶基板7にSiC結晶がエピタキシャル成長する。結晶保持具1をSiCの成長速度に合わせて一定速度で引き上げながら、結晶成長を続ける。所定の長さの結晶が得られた後、基板7が液体原料4から離れるように結晶保持具1を引き上げて、成長結晶が付着した基板7を保持具1から回収する。液体原料4に原料を補給し、再び炭素の溶解からの工程を繰り返すことができる。
【0050】
次に、冷却坩堝液相エピタキシャル成長(CC−LPE)法における成長初期および/または末期の結晶亀裂の発生防止が可能な本発明の実施形態について説明する。
[第一の実施形態]
図3は、本発明の第一の実施形態を示す縦断面図であり、特にCC−LPE法における成長初期の結晶亀裂の発生防止に有効である。図中、A、B、Cは、それぞれ成長開始前、成長開始直後、成長中における結晶保持具1、通電コイル5、液体原料4の間の関係を示している。
【0051】
図1、2に示した基本的な形態と第一の実施形態の相違は、通電コイル昇降治具14の有無にある。本発明の第一の実施形態では、モーター等の適当な駆動機構Mを備えた通電コイル昇降治具14を設置することにより、通電コイル5を上下に移動させることが可能となる。それにより、結晶成長段階に合わせて、通電コイル5の位置を、加熱を必要とする部分に移動させることができる。
【0052】
本発明の第一の実施形態における単結晶の製造の概略を、SiC単結晶の製造について次に説明する。
第一の坩堝部材2と第二の坩堝部材3から構成される坩堝内の自由空間10内の第二の坩堝部材3の上に珪素を含む固体原料(例、珪素のみ、または珪素とMn)を約1kg装入する。単結晶製造装置、高周波電源等の冷却を必要とする部分に冷却水を供給する。チャンバー11内を約0.13Paまで減圧した後、チャンバー11内に主にArガスから成る気体12を供給すると共に、供給分を排気し、チャンバー11内の圧力を約0.11MPaに維持する。
【0053】
高周波電源を用いて、通電コイル5に周波数10kHz、出力100kWの交流電流を供給する。数分で固体原料は昇温して溶融し、融液となる。その際に、融液は、交流電流により誘起されるローレンツ力によってドーム状に隆起するため、その周囲は第一の坩堝部材2の内壁とは接触せずに保持され、同時に電磁攪拌の影響を受けて攪拌される。この時の通電コイル5の位置は、図3Aに示すように、コイル5の最上部は隆起した融液の頂部より下側になり、コイル5の下部は第二の坩堝部材3と同じ高さにくる位置である。それにより、融液の頂点の温度が低くなるように上下方向の温度勾配が融液に形成される。
【0054】
この状態で運転すると、融液に第二の坩堝部材の炭素が溶解して、融液はSiCの溶液、つまり、原料溶液4となる。炭素を第二の坩堝部材の溶解により供給する代わりに、固体原料に炭素も含有させて融液に溶解させることもできる。この場合も、供給した固体の炭素が完全に溶解するように加熱は十分な時間行う。この場合、第二の坩堝部材3は、加熱中に炭素が溶解しないものと、溶解するもののいずれでもよい。
【0055】
上記条件で運転を約5時間続けると、原料溶液4のSiC濃度が略飽和濃度に達するので、LPE法による結晶成長が可能となる。この時点で、6H−SiC単結晶の(11−20)方向が結晶保持具1の移動方向に対して平行になるように単結晶基板7を結晶保持具1の先端に取り付け、チャンバー内に挿入するが、図3Aに示すように、ドーム状に隆起した液体原料4には接触しない位置で止める。この段階では、結晶保持具1と単結晶基板7は、前述したように誘導加熱をほとんど受けないので、周囲のガス雰囲気により加熱されているだけである。
【0056】
続いて、通電コイル昇降治具14を運転して、結晶保持具1の先端に取り付けた単結晶基板7が通電コイル5により効果的に誘導加熱される位置(例、通電コイル5の高さの中央付近が単結晶基板7の位置とほぼ同じ高さにくる位置)まで通電コイル4を上昇させる(図3B参照)。その結果、結晶保持具1の先端の単結晶基板7が集中的に補助加熱されて、昇温する。この部分の温度が所定温度(例えば、液体原料1の頂点と略同じ温度)に到達した後、図3Bに示すように、結晶保持具1の先端の単結晶基板7が隆起した液体原料4の頂点に接触するまで結晶保持具1を下降させる。
【0057】
単結晶基板7が液体原料4に接触してから5分経過した後、通電コイル昇降治具14を運転して、通電コイル5を元の位置まで下降させる(図3C参照)。それにより、液体原料4には、再び頂点が低温となる上下方向の温度勾配が形成され、頂点が過冷却(過飽和濃度)状態になって、液体原料4の頂点(基板7との接触面)での結晶成長の駆動力が発生する。
【0058】
この後、平均約500μm/hの速度で結晶保持具1を引き上げながら、100時間の連続運転を行って、基板7上にSiC結晶を成長させる。引き上げの初期には引き上げ速度を適宜増減する。その結果、長さが約50mm、直径が約50mmの炭化珪素の単結晶(図3Cに示す成長結晶15)が得られた。この間、液体原料4は第二の坩堝部材3および気体12とは常時接触していたが、第一の坩堝部材2と接触することは無かった。
【0059】
結晶成長の開始前に、通電コイル5を上昇させて単結晶基板7が位置する結晶保持具1の先端近傍、つまり結晶成長部位、を予め加熱しておくことにより、液体原料4と結晶成長部位との温度差が小さくなる。その結果、単結晶基板7が液体原料4と接触した時に基板7に加わる熱流束量の変化(すなわち、熱衝撃)が小さくなり、基板7の亀裂発生が防止される。同じ単結晶製造装置を用いた結晶成長停止時の亀裂発生防止については、次の第二の実施形態において説明する。
【0060】
[第二の実施形態]
図4は、CC−LPE法における成長末期の結晶亀裂の発生防止に有効な本発明の第二の実施形態を示す縦断面図である。図中、A、B、Cは、それぞれ成長末期、成長停止直前、成長停止直後における結晶保持具1、通電コイル5、液体原料4の間の位置関係を示す。図4に示した単結晶製造装置は、図3に示したものと同じであり、通電コイル昇降治具14を備える。
【0061】
本発明の第二の実施形態における単結晶の製造の概略を、SiC単結晶の製造について次に説明する。
第一の実施形態に説明したようにして、所定の長さまで結晶15を成長させる。この結晶成長中は、図4Aに示すように、通電コイル5の位置は、隆起した液体原料4の頂点の温度が低くなるように液体原料4に上下方向の温度勾配を生ずるような位置(つまり、下降位置)にある。
【0062】
結晶成長を停止する段階になると、まず、通電コイル昇降治具14を運転して、成長結晶15が通電コイル5により効果的に誘導加熱される位置まで、通電コイル5を上昇させる(図4B参照)。この補助加熱により、液体原料4の温度勾配が小さくなり、結晶成長の駆動力が失われるので、結晶成長は実質的に止まる。この状態で運転を続けて成長結晶15と結晶保持具1の先端付近(約1500℃)を所定の温度(約1800℃)になるまで昇温させる。その後、成長結晶15がドーム状に隆起した液体原料4の頂点から離脱するまで結晶保持具1を上昇させる。この後、通電コイル昇降治具14を運転して、通電コイル5を下降させ、元の位置まで戻す。
【0063】
上記第一および第二の実施形態を適用して得られた炭化珪素の単結晶を研磨して、顕微鏡観察したところ、結晶に亀裂の発生は認めらず、健全であった。また、多形転位や多結晶も含んでいなかった。
【0064】
[第三の実施形態]
図5は、CC−LPE法における成長初期の結晶亀裂の発生防止に有効な本発明の第三の実施形態を示す縦断面図である。図中、A、B、Cは、それぞれ、成長開始前、成長開始直後、成長中の結晶保持具1と液体原料4との位置関係を示し、Dは高周波電源G1、G2の電源出力の時間変化を示す。図1、2に示した基本的な形態との相違は、本発明の第三の実施形態では、それぞれ独立した高周波電源G1、G2に接続された複数の通電コイル5が設けられている点にある。すなわち、通電コイル5が下側コイルと上側コイルに2分割され、それぞれ独立して交流電流を通電できる。
【0065】
本発明の第三の実施形態における単結晶の製造の概略を、SiC単結晶の製造について次に説明する。
第一の坩堝部材2と第二の坩堝部材3から構成される坩堝内の自由空間10に珪素を含む固体原料を約1kg装入する。単結晶製造装置、高周波電源等の冷却を必要とする部分に冷却水を供給する。チャンバー11内を約0.13Paまで減圧した後、チャンバー1内に主にArガスから成る気体12を供給すると共に、供給分を排気し、チャンバー11内の圧力を約0.11MPaに維持する。
【0066】
高周波電源G1から下側の通電コイル5に周波数10kHz、出力100kWの交流電流を供給する。数分で固体原料は昇温し、溶融して融液となる。その際、通電コイル5への交流の通電により誘起されるローレンツ力により、融液の周囲が第一の坩堝部材2の側壁と接触しない状態でドーム状に隆起して保持されると共に、電磁攪拌の影響を受けて攪拌される。
【0067】
この状態で運転を続けると、融液中に第二の坩堝部材から炭素が溶解し、SiCが溶解した液体原料4が生成する。通電されている下側の通電コイルは液体原料4の下側を加熱するため、液体原料4には、上部が下部より低温になる温度勾配が形成される。運転を約5時間続けて、液体原料中のSiC濃度が飽和濃度に近づいた後、6H−SiC単結晶の(11−20)方向が結晶保持具1の移動方向に対して平行になるように単結晶基板7を結晶保持具1の先端に取り付け、液体原料4とは接触しない位置まで坩堝の自由空間内に挿入する(図5A参照)。
【0068】
続いて、図5Dに示すように、高周波電源G2の運転を開始して、上側の通電コイルの電流を供給し、単結晶基板7や液体原料4の頂点(つまり、結晶成長部位)の近傍を誘導加熱する。結晶保持具1の先端付近の温度が、第一の態様で説明したような所定の温度に到達した後、結晶保持具1の先端に取り付けてある単結晶基板7が、ドーム状に隆起した液体原料4の頂点に接触するまで結晶保持具1を下降させる(図5B参照)。基板7が装着されている結晶保持具1の先端付近が予め加熱されているため、液体原料4との接触時に基板7に加わる熱衝撃は小さく、亀裂発生が防止される。
【0069】
単結晶基板7が液体原料4に接触してから5分経過した後、図5Dに示すように、高周波電源G2の運転を停止する。それにより、再び高周波電源G1だけによる運転、つまり、下側の通電コイルのみによる誘導加熱(液体原料4の下側が加熱)になり、液体原料4の隆起した頂点の温度が低くなる温度勾配が形成され、この頂点に接触した基板7上に結晶が成長する駆動力が生じ、結晶成長が起こる。
【0070】
この後、平均約500μm/hの速度で結晶保持具1を引き上げながら、100時間の連続運転を行って、基板7上にSiC結晶を成長させる。引き上げ初期には引き上げ速度を適宜増減する。その結果、長さ約50mm、直径約50mmの成長結晶15が得られた(図5C参照)。この間、液体原料4は第二の坩堝部材3および気体12とは常時接触していたが、第一の坩堝部材2と接触することは無かった。
【0071】
所定の長さまで結晶が成長を完了し、結晶成長を停止する段階になると、図5Dに示すように、高周波電源G2の運転を再開して、結晶成長部位近傍を誘導加熱する。それにより、成長結晶15が昇温される。成長結晶15が所定の温度に到達したら、これがドーム状に隆起した液体原料4の頂点から離脱するまで結晶保持具1を上昇させる。この後、高周波電源G2の運転を停止して、下側の通電コイルのみが作動するようにして、液体原料4を溶融状態に保持する。
【0072】
この第三の実施形態を適用して得られた炭化珪素の単結晶を研磨して、顕微鏡観察したところ、結晶に亀裂の発生は認めらず、健全であった。また、多形転位や多結晶も含んでいなかった。
【0073】
結晶成長開始前後および/または終了前後の補助加熱を非接触加熱手段である電磁誘導加熱により行う上記第一〜第三の実施形態は、成長結晶15との間に格子不整合が生じない単結晶基板7を用いるホモエピタキシャル成長に特に好適である。
【0074】
図6は、CC−LPE法における成長初期の結晶亀裂の発生防止に有効な本発明の第四の実施形態を示す縦断面図である。図中、A、B、Cは、それぞれ成長開始前、成長開始直後、成長中における結晶保持具1、補助加熱・成分調整治具13、液体原料4の間の位置関係を示す。また、D、Eは、図6Aのa−a断面、すなわち、結晶保持具1の外周を取り囲んでいる補助加熱・成分調整治具13の断面の二つの形状例を示す。図6Dに示す形状例は、補助加熱・成分調整治具13が分割構造のため、図6Eに示す形状例に比べて、取り扱いが容易である。
【0075】
図1、2に示した基本的な形態と第四の実施形態との相違は、補助加熱・成分調整治具13の有無にある。本発明の第四の実施形態では、略管状の補助加熱・成分調整治具13が結晶保持具1を包囲するように配置されている(図6A参照)。この補助加熱・成分調整治具13は、昇降(上下移動)が可能であると同時に、その材質が液体原料4の組成の一部を構成する元素を含んでいる。補助加熱・成分調整治具13を下降させて、その先端を液体原料4に浸漬すると(図6B参照)、補助加熱・成分調整治具13の先端が液体原料4からの伝熱により加熱されて昇温する。この時、治具13は、隆起している液体原料4の頂点より外側、従って、頂点が低温の温度勾配において頂点より高温になっている液体原料4と接触する。その結果、補助加熱・成分調整治具13で囲まれている液体原料4の頂点や単結晶基板7近傍の結晶保持具1の先端付近が、治具13からの輻射熱により加熱されて、昇温する。同時に、補助加熱・成分調整治具13の先端が液体原料4に溶解して、液体原料4の一部の組成を調整することが可能である。なお、補助加熱・成分調整治具13の主要な組成は炭素である。
【0076】
本発明の第四の実施形態における単結晶の製造の概略を、窒化アルミニウム(AlN)単結晶の製造について次に説明する。
第一の坩堝部材2と第二の坩堝部材3から構成される坩堝内の自由空間10にアルミニウムを含む固体原料を約1kg装入する。単結晶製造装置、高周波電源等の冷却を必要とする部分に冷却水を供給する。チャンバー11内を約0.13Paまで減圧した後、チャンバー11内に主に窒素ガスから成る気体12を供給すると共に、供給分を排気し、チャンバー11内の圧力を約0.11MPaに維持する。
【0077】
高周波電源を用いて、通電コイル5に周波数5kHz、出力120kWの交流電流を供給する。数分で、固体原料は昇温して溶融し、融液になる。その際、融液は、ローレンツ力により融液の周囲が第一の坩堝部材2の側壁と接触しない状態でドーム状に隆起して保持されると共に、電磁攪拌の影響を受けて攪拌される。
【0078】
この状態で運転を続けると、融液中に第二の坩堝部材から炭素が溶解すると共に、雰囲気ガスから窒素が融液に溶解し、AlNが溶解した液体原料4が生成する。通電コイル5が隆起した液体原料4の頂部より下側に配置されているため、液体原料4には、上部が下部より低温になる温度勾配が形成される。
【0079】
運転を約5時間続けて、液体原料中のAlN濃度が飽和濃度に近づいた後、6H−SiC単結晶の(11−20)方向が結晶保持具1の移動方向に対して平行になるように単結晶基板7を結晶保持具1に配置し、液体原料4とは接触しない位置まで補助加熱・成分調整治具13の中に挿入する(図6A参照)。続いて、液体原料4に先端が約10mm浸漬する程度の位置に補助加熱・成分調整治具13を下降させる。この結果、補助加熱・成分調整治具13の先端が加熱、昇温され、その内部に位置する結晶保持具1の先端と基板7、さらには液体原料4の頂部付近(すなわち、結晶成長部位近傍)の温度が上昇する。同時に、治具13から炭素が液体原料4に溶解する。結晶成長部位近傍の温度(約1400℃)が所定の温度(約1900℃)に到達したら、結晶保持具1の先端に取り付けられた単結晶基板7がドーム状に隆起した液体原料4の頂点に接触するまで結晶保持具1を下降させる(図6B参照)。予め基板付近が加熱されているため、接触により基板に加わる熱衝撃が小さく、基板の亀裂発生は防止される。
【0080】
単結晶基板7が液体原料4に接触してから5分経過した後、補助加熱・成分調整治具13だけを上昇させて、この治具13を液体原料4から離脱させる。基板7の近傍において治具13からアルミニウムを含む液体原料4に適量の炭素が溶解し、この部分の炭素濃度が高まるので、ヘテロエピタキシャル基板である6H−SiC単結晶基板7がAlN溶液でである液体原料4に溶解することはない。
【0081】
補助加熱・成分調整治具13を引き上げて液体原料4から離脱させると、液体原料4による治具13の加熱が停止し、結晶成長部位(液体原料4の頂点に接触した結晶保持具1の先端の基板7近傍の部位)は自由空間に露出される。その結果、この部分の温度が下がって、治具13を液体原料4に浸漬する前と同様に、液体原料4にはその頂点が低温となる上下方向の温度勾配が形成され、基板7へのAlN結晶成長の駆動力が発生する。
【0082】
この後、平均約50μm/hの速度で結晶保持具1を引き上げながら、6時間の連続運転を行って、基板7上にAlN結晶15を成長させる(図6C参照)。引き上げの初期に引き上げ速度を適宜増減する。その結果、15mm角断面の6H−SiC単結晶基板7上に成長厚さ約300μmでヘテロエピタキシャル成長したAlN単結晶が得られた。
【0083】
図示していないが、所定の長さまで結晶が成長を完了し、結晶成長を停止する段階になった場合にも、補助加熱・成分調整治具13を活用して、成長結晶15の亀裂発生を防止することができる。
【0084】
それには、まず、補助加熱・成分調整治具13を、その先端が液体原料4に約10mm浸漬する程度の位置まで下降させる。これにより、結晶保持具1とその先端の成長結晶15は治具13に包囲される。液体原料4に浸漬された補助加熱・成分調整治具13の先端は液体原料4による伝熱で加熱されて昇温し、その内部の成長結晶15の成長部位付近が昇温し、液体原料4の温度勾配が消失して結晶成長が止まる。続いて、成長結晶15が隆起した液体原料4の頂点から離脱するまで結晶保持具1を上昇させる。この後、補助加熱・成分調整治具13を上昇させて、補助加熱・成分調整治具13と液体原料4を離脱させる。こうして、成長結晶を取り出す際にも、結晶への熱衝撃を抑制して、その亀裂発生を防止することができる。
【0085】
この第四の実施形態を適用して得られた窒化アルミニウムの単結晶を研磨して、顕微鏡観察したところ、結晶に亀裂の発生は認めらず、健全であった。また、多形転位や多結晶も含んでいなかった。
【0086】
[第五の実施形態]
図7は、CC−LPE法における成長初期の結晶亀裂の発生防止に有効な本発明の第五の実施形態を示す縦断面図である。図中、A、B、Cはそれぞれ、成長開始前、成長開始直後、成長中における結晶保持具1、通電コイル5、補助加熱・成分調整治具13、液体原料4の間の位置関係を示す。
【0087】
第五の実施形態は、前述した第一および第二の実施形態で採用した電磁誘導加熱と、第四の実施形態で採用した補助加熱・成分調整を組み合わせた実施形態である。本発明の第五の実施形態における通電コイル昇降治具14は、通電コイル5を上下に昇降させ、加熱を必要とする部分にコイル5を配置することができる。この通電昇降治具14を配置する代わりに、前述した第三の態様で採用した、独立した高周波電源に接続された上下二つの通電コイルを配置することにより、第五の実施形態を構成することも可能である。
【0088】
補助加熱・成分調整治具13は、第四の実施形態において説明したように、結晶保持具1の外周を囲んでおり、上下移動が可能で、補助加熱・成分調整治具13の先端を液体原料4に浸漬させると、補助加熱・成分調整治具13の先端が加熱、昇温され、補助加熱・成分調整治具13で囲まれる液体原料4と単結晶基板7の界面近傍を加熱、昇温することができると同時に、補助加熱・成分調整治具13の先端が液体原料4に溶解して、液体原料4の一部の組成を調整することが可能である。
【0089】
本発明の第五の実施形態における単結晶の製造の概略を、AlN単結晶の製造について次に説明する。
まず、第四の実施形態について説明したように、約5時間の原料の溶融運転を行って、融液中にCとNを溶解させて、AlNが略飽和濃度になった原料溶液4を形成する。この原料溶液4は、交流電流の印加に起因するローレンツ力によりドーム状に隆起し、かつ通電コイル5が隆起頂点より下側に位置するため、隆起頂点が低温となる温度勾配を生じている。
【0090】
その後、6H−SiC単結晶の(11−20)方向が結晶保持具1の移動方向に対して平行になるように単結晶基板7を結晶保持具1に配置する(図7A参照)。続いて、通電コイル昇降治具14を運転して、単結晶基板7が効果的にコイル5からの高周波誘導により加熱される位置(例、図7Bに示すように、コイル高さの中央付近が液体原料の隆起頂点と同じ高さになる位置)まで通電コイル5を上昇させる。これと前後して、補助加熱・成分調整治具13を、図7Bに示すように、その先端が液体原料4に約10mm浸漬する程度まで下降させる。この結果、補助加熱・成分調整治具13の先端が加熱されて昇温する。
【0091】
本実施形態では、上昇させた通電コイル5からの誘導加熱と、加熱された補助加熱・成分調整治具13からの輻射熱との両方により単結晶基板7近傍(すなわち、結晶成長部位近傍)が加熱されるため、この部分の所定温度への昇温(約1400℃から約1900℃へ)が、上述した実施形態より短い時間で達成される。また、第四の実施形態について述べたように、液体原料に浸漬された補助加熱・成分調整治具13の先端部分の一部が液体原料4に溶解し、基板7近傍の液体原料4の炭素濃度が高まる。結晶成長部位近傍の温度が所定温度に達したら、結晶保持具1の先端に取り付けた単結晶基板7が隆起した液体原料4の頂点に接触するまで結晶保持具1を下降させる(図7B参照)。
【0092】
単結晶基板7が液体原料4に接触してから5分経過した後、通電コイル昇降治具14を運転して通電コイル5を元の位置まで下降させると共に、補助加熱・成分調整治具13を上昇させて、補助加熱・成分調整治具13を液体原料4から離脱させる。この時、アルミニウムを含む液体原料4には適量の炭素が溶解していたので、6H−SiC単結晶基板7が液体原料4に溶解することはない。
【0093】
この後、平均約50μm/hの速度で結晶保持具1を引き上げながら、100時間の連続運転を行って、基板上にAlN結晶を成長させる。引き上げの初期には引き上げ速度を適宜増減する。その結果、長さ約5mm、直径約50mmの窒化アルミニウム結晶が得られた。得られた窒化アルミニウムの単結晶を研磨して、顕微鏡観察したところ、結晶に亀裂の発生は認めらず、健全であった。また、多形転位や多結晶も含んでいなかった。
【0094】
結晶成長開始前後および/または終了前後の補助加熱を、補助加熱・成分調整治具13により行う上記第四および第五の実施形態は、単結晶基板7が成長結晶15と異なる物質であって、製造する単結晶(成長結晶15)との間に格子不整合が生ずるヘテロエピタキシャル成長に特に好適であるが、成長結晶15との間に格子不整合が生じない単結晶基板7を用いるホモエピタキシャル成長の場合にも適用可能である。
【0095】
以上に説明したように、本発明は、ローレンツ力を利用して融液を隆起させ誘導加熱を促進すると共に、隆起した融液の頂点付近に種結晶を接触させて種結晶上に液相エピタキシャル成長によりバルク単結晶を成長させる方法において、成長初期および/または末期における結晶(種結晶および/または成長結晶)の熱衝撃を低減して、成長結晶に亀裂が発生するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】基本的な冷却坩堝法液相エピタキシャル成長(CC−LPE)法に用いる単結晶製造装置を模式的に示す縦断面図。
【図2】図1の坩堝構造例を示す一部破断斜視図。
【図3】本発明のCC−LPE法による単結晶成長初期の結晶亀裂発生防止例の様子を模式的に示す単結晶製造装置の縦断面図。A:成長開始前、B:成長開始直後、C:成長中。
【図4】本発明のCC−LPE法による単結晶成長末期の結晶亀裂発生防止例の様子を模式的に示す単結晶製造装置の縦断面図。A:成長末期、B:成長停止直前、C:成長停止直後。
【図5】冷却坩堝法液相エピタキシャル成長(CC−LPE)における本発明による成長初期の結晶亀裂発生防止例3を模式的に示す縦断面図、A:成長開始前、B:成長開始直後、C:成長中、D:二つの高周波電源G1,G2の出力の時間変化。
【図6】冷却坩堝法液相エピタキシャル成長(CC−LPE)における本発明による成長初期の結晶亀裂発生防止例4を模式的に示す図、A:成長開始前、B:成長開始直後、C:成長中、D:a−a断面の1例、E:a−a断面の他の例。
【図7】冷却坩堝法液相エピタキシャル成長(CC−LPE)における本発明による成長初期の結晶亀裂発生防止例5を模式的に示す縦断面図、A:成長開始前、B:成長開始直後、C:成長中。
【符号の説明】
【0097】
1:結晶保持具、2:第一の坩堝部材(略側壁部)、3:第二の坩堝部材(略底面部)、4:液体原料(融液)、5:通電コイル(常伝導コイル)、6:スリット、7:単結晶基板(種結晶)、8:セグメント、9:開口部、10:自由空間、11:チャンバー、12:気体、13:補助加熱・成分調整治具、14:通電コイル昇降治具、15:成長結晶、G1,G2:高周波電源、M:駆動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
坩堝内で加熱された単結晶原料が溶解している融液に種結晶を接触させ、前記融液から種結晶を引き上げることにより単結晶を成長させる単結晶製造方法であって、
常伝導コイルへの交流電流の通電により誘起されるローレンツ力を融液に作用させることにより融液の隆起と誘導加熱を行いながら、隆起した融液の頂点付近に種結晶を接触させて種結晶上に単結晶を成長させ、
さらに、結晶成長の開始前後の非定常過程において種結晶の近傍を補助加熱するか、および/または結晶成長の終了前後の非定常過程において成長結晶の近傍を補助加熱することにより、種結晶および/または成長結晶の熱流束量の急激な変化を防止する、
ことを特徴とする単結晶製造方法。
【請求項2】
前記補助加熱が加熱部位に対して非接触の加熱手段により行われる、請求項1記載の単結晶製造方法。
【請求項3】
前記補助加熱が、融液を構成する組成の一部を材質とする治具を融液と接触させることにより行われ、その際に融液と接触した治具の一部が融液中に溶解して融液組成が変化する、請求項1記載の単結晶製造方法。
【請求項4】
前記補助加熱が、加熱部位に対して非接触の加熱手段に加えて、融液を構成する組成の一部を材質とする治具を融液と接触させることによっても行われ、その際に融液と接触した治具の一部が融液中に溶解して融液組成が変化する、請求項1記載の単結晶製造方法。
【請求項5】
前記非接触の加熱手段が電磁誘導加熱である請求項2または4記載の単結晶製造方法。
【請求項6】
前記電磁誘導加熱が、種結晶および/または成長結晶の近傍を加熱するように位置を変動させた前記常伝導コイルにより行われる、請求項5記載の単結晶製造方法。
【請求項7】
前記電磁誘導加熱が、種結晶および/または成長結晶の近傍を加熱する位置に設置された、前記常伝導コイルとは別の第二の常伝導コイルにより行われる、請求項5記載の単結晶製造方法。
【請求項8】
製造する単結晶との間に格子不整合が生じない種結晶を用いる、請求項2および5〜7のいずれかに記載の単結晶製造方法。
【請求項9】
製造する単結晶との間に格子不整合が生ずる種結晶を用いる、請求項3〜7のいずれかに記載の単結晶製造方法。
【請求項10】
単結晶原料の融液を保持する坩堝と、先端に種結晶を保持することができる昇降可能な結晶保持具とを備える単結晶製造装置であって、さらに、融液にローレンツ力を発生させて融液を隆起させると同時に誘導加熱することができる常伝導コイルと、結晶成長の開始前後および終了前後の非定常過程において、それぞれ種結晶および成長結晶の近傍を補助加熱することができる手段とを備えることを特徴とする、単結晶製造装置。
【請求項11】
前記補助加熱することができる手段が、加熱部位に対して非接触の加熱を行う手段から成る、請求項10記載の単結晶製造装置。
【請求項12】
前記補助加熱することができる手段が、融液を構成する組成の一部を材質とする治具から成る、請求項10記載の単結晶製造装置。
【請求項13】
前記補助加熱することができる手段が、加熱部位に対して非接触の加熱を行う手段と、融液を構成する組成の一部を材質とする治具とから成る、請求項10記載の単結晶製造装置。
【請求項14】
前記非接触の加熱手段が電磁誘導加熱である、請求項12または13記載の単結晶製造装置。
【請求項15】
前記非接触の加熱を行う手段が、前記常伝導コイルとこれを上下方向に移動させる通電コイル昇降治具とから成る、請求項11または13記載の単結晶製造装置。
【請求項16】
前記非接触の加熱を行う手段が、前記常伝導コイルの上方に配置された別の常伝導コイルである、請求項11または13記載の単結晶製造装置。
【請求項17】
前記坩堝が、融液と接する第一の坩堝部材と、融液の側周面を包囲する導電性材質からなる第2の坩堝部材とから構成され、第2の坩堝部材の周囲に前記常伝導コイルが配置され、かつ第2の坩堝部材は前記常伝導コイルの巻き方向と略直交方向に複数のスリットを有し、さらに第2の坩堝部材を冷却する手段を有する、請求項10〜16のいずれかに記載の単結晶製造装置。
【請求項18】
前記第一の坩堝部材の上面が、前記第2の坩堝部材から距離をおいて凹部を有する、請求項17記載の単結晶製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−232605(P2006−232605A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−48853(P2005−48853)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】