説明

印刷可能な染料及び色素を使用して多色共面放射性証印を作成し読み取るための方法とシステム

物品を識別、追跡、及び/又は本物証明するための方法及びシステムであって、意図するユーザーにとっては印加し易く且つ使用し易いが、意図しないユーザーが偽造し又はごまかすには極めて難しい、方法及びシステムである。また複数のインクの印刷パターンの組み合わせで作られている、多色共面証印が開示されている。印刷パターンは、ソフトウェアで作成されたマスクによって、確実に共面となるように修正することができる。証印は、特定の波長の光線を照射し、特定のスペクトルフィルタに通してフィルタを掛け、電子画像リーダーで読み取り、デコードしなければ、解読することはできない。証印は、見える場合もあるし、隠秘の場合もある。証印は物品に関する固有の真情報をエンコードしているが、認証されていない使用に対する更なる抑止として、無意味な、又は意図的に正しくない情報をエンコードしていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、物品又はそのパッケージに印加され、同物品を追跡及び/又は本物証明し、偽造を阻止するための多色共面証印を提供する。本開示は、更に、高いレベルの暗号化を作り出すために化学色素、光エネルギー源、及びスペクトルフィルタを個別に組み合わせる必要のある、追跡及び/又は本物証明するための多色共面証印を使用する方法及びシステムを提供している。多色証印を印刷するのに用いられる印刷プロセスの正確度、精密度、及び速度を高めるのに、ビットマップマスクを使用してもよい。
【背景技術】
【0002】
近年、商標保護は、重要な問題になっている。偽物の生産が急激に増大しており、広範囲な製品に及んでいる。多くの場合、偽物の質は、オリジナルに比べて相当粗悪であり、意図したやり方で安全に使用することはできない。
【0003】
別の問題は、本物が、その意図した販売のポイントから外れていくことであるが、それこそが、同じ製品でも地域的な大量販売価格差があることの証明に他ならない。その様な状況でのサプライチェーンは、遠回りで監視し難いかもしれない。或る商品は、或る特定の国では販売する意図が無くても、迂回転用されると、実際には、その地方に意図していた正規の製品と競合することにもなる。
【0004】
ブランドオーナーは、自分たちの製品の安全性に対して責任を負うことと、エンドユーザーが正規の製品を購入していることを知ることに大きな圧力を感じている。製品を本物証明し、追跡し追尾するための、高度でなお且つ標準的な方法が必要とされている。
【0005】
既存の追跡及び追尾システムは、固有の情報でエンコードされたマークを物品又はそのパッケージに印刷することを伴っているので、個々の物品又はパッケージを、サプライチェーンを通して追跡することができる。マークの例には、Code128、UPC、Aztec、DataMatrix、及びPDFバーコードの様な一次元(1−D)及び二次元(2−D)バーコードが含まれる。これらのバーコードは、著作権使用料を払わずに使用することができ、これらの証印をエンコード、印刷、検出、読み取り、及びデコードすることのできる市販の装置があるので、幅広く使用されている。これらのマークの好都合な属性は、情報密度が高いこと、物理的サイズが小さいこと、及びエラー訂正できることである。
【0006】
マトリクスコードは、情報を表す二次元手段である。マトリクスコードの一例は、二次元(2−D)バーコードである。2−Dバーコードは、雑貨を追跡するのに使用されている馴染みのUPCコードの様な、一次元(1−D又は直線状)バーコードと似ているが、2−Dバーコードは、データ表示密度を1−Dバーコードより高くすることができる。
【0007】
実際には、印刷可能なマークを作成するのに現在市販されているシステムを使用する場合は、幾つか問題がある。難しさの一つは、システムの幾つかの属性が、必ず互いに直接対立することである。例えば、マークは、理想的には、できるだけ小さくなければならない(認証されていないユーザーが位置を突き止めるのが難しくなるように)が、その情報内容は大きくなければならない。別の問題は、特に、マークが印加される生地及び被膜が様々であるとすると、ボックス対ボックスの擦れ、乾燥時間の不足、生地の粘着の問題、及び表面の多孔性のために、その様なマークが不鮮明になるようなこと無く、同マークを、高速包装ライン上で、十分なインチ当たりドット数(DPI)で印刷することの難しさである。
【0008】
現在市販されているシステムの別の問題は、隠秘のマーク又は証印(普通の照明状態の下では見えないか、又は、証印が印刷されている生地の色に混ざって見えない)として印刷されているときには、十分なコントラスト比が無いために、市販の電子画像リーダーで同マークを容易に読み取りデコードすることができないことである。画像をデコードするのと同じルールが、隠秘の場合、並びに、従来型の白生地上の黒色マーク、即ち、十分な解像度、コントラスト比、印刷の明確さ、及び信号の均一性が求められる場合にも当てはまる。
【0009】
多色インクを有する共面証印又はマークを印刷するには、追加の位置合わせ要件が必要であり、「位置合わせ」という用語は、プリンタヘッドの、証印が印刷される生地に対する正確な位置決めと整列を意味している。生地の的確な位置合わせの問題は、多色証印には特に重要であり、何故なら、隣接する色が、場合によっては互いに重なるか又は混ざり合い、正確な読み取りとデコーディングを邪魔する恐れがあるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
証印を探し出し、コピー及び/又は複製する偽造者及び無認証ユーザーの精巧さは、特に、急速に改善されている印刷技術と結び付いて、向上してきているので、認証されたユーザーが使用するときの使い易さ、経済性、又は精度を犠牲にすること無く、目下市販されているものより多くの化学的及びコード的順列を有する高度なシステムを作ることが必要になっている。
【0011】
よって、認証されたユーザーには印加、検出、読取、及びデコードし易く、なお且つ、認証されていないユーザー又は偽造者による複製又はコピーが極めてし難いような高度な暗号化を保有している、多色共面証印を使用して、商品を追跡及び/又は本物証明するための方法及びシステムを開発することが求められている。
【0012】
この目的を実現するために必要な方法及びシステムは、多種多様な供給元からの多くの異なる化学色素及び/又は染料を使用することのできる柔軟性を有している。また、使用されるハードウェア及びそれに伴うソフトウェアが、「市販在庫」(COTS)製品であれば、これらの技術における大幅な進歩、並びにそれらの低いコストを、できるだけ利用することが望まれる。
【0013】
更に、その様なシステムは、化学染料/色素、光源、及びスペクトルフィルタの様々な組み合わせに対応できることが望まれる。その様にすれば、個々の顧客は、色素系及び/又は染料系のインクで構成されている標識剤を組み込んだ複数のインク、光源、及びスペクトルフィルタの個別化された秘密の組み合わせを有する「特注」システムを受け取ることができる。また、本システムは、化学的入力、バーコード型式、光源、及びスペクトルフィルタの将来の発展に対応するために、柔軟性がなければならない。更に、顧客が、スペクトルフィルタのセットを変えるといった様なシステムに対するマイナーな変更を、比較的安価に行えなければならない。更に、システムは、証印に関する高い信号対雑音比を利用する能力を有している。本開示は、これらの所望の目標を達成する方法及びシステムについて述べると共に、ここで使用されている多色共面証印を開示している。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示は、物品を識別、追跡、及び/又は本物証明するため、物品又はそのパッケージの表面に印加される証印を提供している。証印は、多色、共面、放射性であり、2つ又はそれ以上の印刷パターンを備えていて、それぞれが、異なる色のインクで印刷されており、各パターンが情報をエンコードしている。物品に印加されるのは、単一の多色証印でも、複数の証印でもよい。証印は、生地上に見えている場合もあるし、隠秘の場合もある。マスクは、多色証印を正確に印刷し、インクの印刷が重なる区域を最小にする支援策として、インクジェット、レーザー、熱、又は圧電印刷に使用できる高速印刷ライン速度でも、使用することができる。ここに開示されている証印は、認証されていないユーザーには解読不能であり、「解読不能」とは、ヒトの眼又は電子画像リーダーによって、証印を読み取り及び/又は解釈することができないことを意味しているが、証印は、特定の組み合わせの1つ又は複数の光源で照射されると、証印を形成するのに使用されている色素及び/又は染料から光エネルギーが放出され、それが、特定の組み合わせのスペクトルフィルタに通され、電子画像リーダー及びその付帯するソフトウェアによって読み取り及びデコードされるときに、認証されたユーザーが、解読することができる。特定の組み合わせで使用される、本方法の多数の因子は、高度な暗号化をもたらし、それは、認証されたユーザーにとっては容易に使用できるが、認証されていないユーザー又は偽造者には克服し難い。
【0015】
本開示は、物品を識別、追跡、及び/又は本物証明するために、物品又はパッケージに印加又は印刷することのできる、多色共面放射性証印である。証印は、情報を含んでいるか又はエンコードしている構造化された画像又はマークである。本開示の文脈では、「証印」は、その複数形の「証印」と互換可能に使用されており、上記目的のために物品に印加される証印は、1つでも、2つ以上でもよい。証印は、代わりに、マーク、画像、本物証明マーク、又は安全マークと呼ばれる場合もあり、用語は、ここでは互換可能に使用されているが、本開示では、概ね「証印」と称している。証印は、物品又は生地の表面に印刷されている場合は、見えていてもよいし、隠秘であってもよい。
【0016】
本開示の証印は、化学色素又は染料、又はそれらの組み合わせ(以後、「色素」と呼ぶ)で構成されたインクの印刷パターンを含んでいる。これらの色素は、紫外線(UV)、可視光線、及び/又は赤外線(IR)の範囲内の所定の波長の光エネルギーによる照射によってエネルギーを供給されると、1つ又は複数の信号を、吸収されたエネルギーの波長とは異なる光エネルギーの波長で放出する。放出された信号は、或る波長の光を通すがそれ以外を遮るように選択されているスペクトルフィルタを通過するので、フィルタを掛けられた信号を送ることになる。フィルタを掛けられた信号は、電子画像リーダーで読み取り、電子画像リーダーに付帯するコンピューターソフトウェアでデコードすることができる。印刷パターン内に、組み合わされて証印を形成する真及び偽情報をエンコードする様な、更なる暗号化層が、認証されていない使用に対する追加的防御策として、あってもよい。次に、デコードされた1つ又は複数の信号は、物品を追跡するか、又は正規の(偽造ではない)物品としての物品の真偽性を検査するために、本物の物品に固有であるか、又は認証されたユーザーだけに知らされている個々の情報と比較される。
【0017】
更に、物品を識別、追跡、及び/又は認証する方法がここに開示されており、同方法は、多色共面放射性証印を物品又は生地上に印刷又は印加し、証印に1つ又は複数の所定の波長の光エネルギーを照射して1つ又は複数の信号を放出させ、放出された信号を1つ又は複数の事前に選択されたスペクトルフィルタに通してフィルタを掛けられた信号を生成し、次いで、フィルタを掛けられた信号を電子画像リーダー及び付帯するソフトウェアで読み取ってデコードし、その物品に関するデコードされた情報を提供することにより、これを行っている。最終的にデコードされた情報を、その物品又は物品のクラスに固有な、又は、本物の物品と対応することが分かっている個々の情報と比較してもよい。
【0018】
本開示は、更に、物品を本物証明又は追跡するためのシステムを提供しており、同システムは、ここに説明されている様な共面証印と、少なくとも1つの光源と、少なくとも1つのスペクトルフィルタと、電子画像リーダーと、を有している。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本開示の証印を作成する方法の概要を提供している図である。
【図2】認証されたユーザーが、光源、スペクトルフィルタ、及び電子画像リーダーの組み合わせを使用して、図1の証印を読み取り、デコードする方法の概要を提供している図である。
【図3】図1の多色共面証印を作成する支援として使用することのできる相補型マスクの例を提供している。
【図4】図1の証印の或る実施形態を図解している図であり、同証印は、第1の色のインクで「真」情報をエンコードしている印刷パターンと、第2の色のインクで「偽」情報をエンコードしている第2の印刷パターンを組み合わせて、総合信号(証印)を形成することにより作られている。
【図5】或る物品に関する情報を、高解像度又は低解像度の何れかでエンコードしているマトリクスコードを復元するための、図2の方法の或る実施形態を図解している図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本特許又は出願ファイルは、カラー仕上げの少なくとも1つの特許図面を含んでいる。カラーの図面を備えたこの特許又は特許出願のコピーは、請求と必要な料金の支払いがあれば、当局によって提供されるであろう。
【0021】
ここで説明している方法及びシステムは、物品を追跡又は本物証明する上で、当該分野での使い易さという利点を認証されたユーザーに提供し、一方では、認証されていないユーザー又は偽造者が非常に克服又は複製し難い高度な方法及びシステムを呈示している。ここで使用する、「認証されたユーザー」、「意図されるユーザー」、及び「顧客」は、互換可能に使用されており、ここに開示されている方法及びシステムにより本開示の証印を正確に解読するのに必要な材料及び情報が正規に提供されている1人又は複数の人、又はその被指名人を意味している。
【0022】
次に図面を参照すると、図1は、本開示の証印13が作成されるプロセスの概要を提供している図である。図1に図解されている特定の実施形態では、証印13は、市販のソフトウェアを使って作成された2つの別々の2−Dバーコード(又は2−Dデータマトリクスコード)10、20の組み合わせによって形成されている。図1は、本開示の或る実施形態を図解しており、証印13は、バーコードの組み合わせで作られており、1つのバーコードは「真」情報をエンコードしているが、第2のバーコードは「偽」情報をエンコードしている。より具体的には、図1は、追跡及び/又は本物証明のために、市販のソフトウェアによって、物品を識別し、記述し、でなければ「タグを付ける」「真」情報をエンコードするように生成された、「真」と標示された、2−Dバーコード10を図解している。図1は、更に、第2の2−Dバーコード20(「偽」と標示されている)が、市販のソフトウェアによって「偽」情報をエンコードするように生成された、平行するプロセスを示しており、この偽情報は、追跡及び/又は本物証明するために、物品を識別し、記述し、でなければタグを付けることのない、無意味なデータ又は恣意的な紛らわしいデータを示している。図1に示されている様に、2つの2−Dバーコード10、20が組み合わされて、証印13が形成される。
【0023】
図1は、また、コンピュータ処理されたビットマップ「マスク」15(「マスクA」と標示されている)を図解しており、同マスクは、コンピューターソフトウェアによって2−Dバーコード10に論理「アンド」され、画素化した画像11が作成されている。画素化した画像11は、インクジェット印刷ヘッドに指示して、特定の色のインクを、マップ上のその場所に対応する画素のアドレスに噴射させる「マップ」を表している。別のビットマップマスク25(「マスクB」と標示されている)は、ソフトウェアによってデータマトリクス20に論理「アンド」され、画素化した画像21が作成されている。画素化した画像21は、同様に、画素化した画像11を印刷するのに用いられたのとは異なる色のインクである第2の色のインクで印刷されている正確なインクのパターンを示している。図1に図解されている実施形態では、マスクA15とマスクB25は、「相補型」マスクである。ここで言う、マスクB25がマスクA15に対し「相補型」マスクであるという開示は、マスクAのアドレスに在る、「暗い」又は「1」と表される各画素が、マスクB25の同じアドレスでは、「明るい」又は「0」である対応する画素を有しているか、又はその逆であることを意味している。画素化した画像11と21は、物品の同じ区域内に印刷して証印13を作り出すために、組み合わせられ整列させられる。しかしながら、図1に示されている実施形態の画素化した画像11と21の組み合わせの産物である証印13は、「解読できない」画像であり、「解読できない」とは、証印が、ここに説明されている方法に委ねられるまでは、ヒトの眼又は電子画像リーダーによって読み取り又は解明することはできないことを意味している。図1に図解されている相補型マスクを使用すれば、確実に、証印13を構成している個々の画素それぞれが、2つ以上の色のインクを含まないように指定され、即ち、個々の画素それぞれは、第1の色のインクを含んでいるか、第2の色のインクを含んでいるか、又は、インクを全く含んでいないか、であり、インクのブリージング又は生地の不的確な位置合わせのためにインクの色が隣接する画素の縁部に沿って最小限度の量だけ不可避的に重なることを除き、互いの上に重複印刷された第1と第2の色のインクの両方を含むことはできない。
【0024】
図1は、更に、本開示の実施形態の理解を向上させる図解を提供しており、図1の大括弧で括られている部分(「理解し易くするための区画であって、実際に現れるものではない」と標示されている)は、画素化した画像11、21内の化学色素がUV光により「励起」した後の、画素化した画像98、99の細部を示している。図1に示されている実施形態の場合、括弧で括られている区画は、証印13について示されている「細部」の起源を示しており、即ち、或る画素アドレスは、青色インクで印刷するように指定されており、他の画素アドレスは赤色インクで印刷するように指定されており、更に他の画素アドレスはインクを受け入れないように指定されており、青色と赤色の両方のインクで印刷するよう指定されている画素アドレスは、一つも無い。繰り返すが、括弧で括られている区画は、共面証印が形成されるやり方について理解を深める視覚的支援策として含まれているだけであって、画像98、99は、証印13形成の実際的な段階ではなく、開示されている方法又はシステムの一部でもない。
【0025】
図1は、ソフトウェアで作成された2つの印刷パターンが組み合わさって証印13を形成している或る実施形態を図解しているが、本開示は、ソフトウェアで作成された3つ又はそれ以上の印刷パターンが組み合わさって証印13が形成される他の実施形態を含んでいる。証印13は、好都合に、るソフトウェアで作成された2つ、3つ、4つ、又はそれ以上の印刷パターンを備えることもできる。
【0026】
図2は、物品を追跡及び/又は本物証明するために、証印13からの情報を解読するのに使用される方法の全体的な概要を提供している。この実施形態では、証印13は、1つ又は複数の光源から生成された1つ又は複数の所定の波長の光で照射され、その光の波長は、UV、可視光、及び/又はIRの範囲内に在る。組み合わされて証印13を形成している印刷パターンを構成している色素及び/又は染料は、特定の波長の光エネルギーを吸収し、1つ又は複数の波長の光エネルギーを、吸収された光エネルギーの波長とは異なる波長で放出するように、特別に選択されていた。次に、証印13から放出された信号は、証印13と電子画像リーダーの間に置かれている1つ又は複数のスペクトルフィルタ16、26に通してフィルタを掛けられる。スペクトルフィルタは、或る波長(又は波長の範囲)の光エネルギーを通し、他の波長の光エネルギーを遮るよう選択されていた。スペクトルフィルタ16、26を通過した波長の光エネルギーは、次に電子画像リーダーにより、画像12、22として読み出される。これらの画像は、次に、オリジナルの2−Dバーコード(又はデータマトリクスコード)に分解される。図2に図解されている特定の実施形態では、スペクトルフィルタ16は、証印13により放出された青色波長の光を通す(「青色通過」)が、赤色波長を遮り、従って画像12を「通し」、同画像が電子画像リーダーにより読み取られる。電子画像リーダーとその付帯するソフトウェアは、画像12を2−Dバーコード画像14としてデコードし、物品に関する「真」情報を提供する。同様に、スペクトルフィルタ26は、証印13により放出された赤色波長の光を通す(「赤色通過」)が、青色波長を遮り、従って画像22を通し、同画像は、電子画像リーダーにより2−Dバーコード24として読み取られ、付帯するソフトウェアによって「偽」情報としてデコードされる。図2に示してはいないが、データマトリクス画像14、24を、認証されていない使用又は偽造に対する追加保護層として更に暗号化することもできる。認証されているユーザーは、この追加暗号化層をデコードするソフトウェアプログラムを有することになる。
【0027】
図3は、本開示で使用することのできる、5対の異なる相補型マスクを示している。マスクは、コンピューターで作成されており、画素化した画像11、21を生成するため、2−Dバーコード10、11に論理「アンド」される。図3のマスクは「相補型」なので、個々の画素に2つ以上の色のインクが印刷されることはない。このため、マスクをこの目的で使用する場合は、証印を印刷するのに使用されるインクの色毎に、別々のマスクが必要である。多色証印では、使用されるマスクの数は、証印内のインクの総数と同じになる。
【0028】
図4は、3つの別々の2−Dバーコードを組み合わせることにより作られる証印の或る実施形態を図解している。この実施形態で「総合信号」44として標示されている証印は、それぞれが異なる色のインク(赤色、青色、及び緑色)の3つの異なる印刷パターンの組み合わせにより作られたものであり、印刷パターンの内の2つ(それぞれ、赤色41と青色42)は物品に関する「真」情報をエンコードしており、第3の印刷パターン(緑色43)は「偽」情報をエンコードしている。証印を構成しているバーコードを視覚化する支援として、適切な所定の波長の光エネルギー源から照射された後の3つの印刷パターン41、42、及び43が図解されている。
【0029】
図5は、1つ又は複数の所定の波長の光線によりエネルギー供給された証印からの情報を回復するための方法の或る実施形態を示している。「総合+光源」51は、光エネルギーによる照射の後の総合信号44(図4から)である。ノッチフィルタ52は、青色及び赤色光を通過させ、緑色光を遮る。その結果生じるフィルタを掛けられた信号は、電子画像リーダーにより低DPI(53)又は高DPI(54)で読み取ってデコードすることのできる、検出可能な信号である。DPIレベルの差は、電子画像リーダー内のカメラシステムの視界が画像として「見る」ことになるものに関係する。画像を含んでいる視界の画素が非常に少ない(最も細い線1本当たり約4未満)場合、でき上がった画像は、焦点がぼやける傾向にある。逆に、画素数が多い(最も細い線1本当たり約4を上回る)場合、でき上がった画像は、解像度が良くなる傾向にあり、微小な細部にも注目することができる。この解像度の差は、電子画像リーダーに付帯するソフトウェアが、この画像を解析するやり方に影響を与え、処理の際に使用されるマスクの数を制限することにもなる。
証印
本開示の証印は、広く、物品又は物品の入っているパッケージの表面に印加される。代わりに、証印を、接着性ラベルの様な生地上に印刷して、後から、物品又はパッケージの表面に貼り付けることもできる。
【0030】
証印は、第1の所定の色のインクの第1の印刷パターンと、第2の所定の色のインクの第2の印刷パターンを有しており、1つ又は複数の追加の印刷パターンを有していてもよく、その場合、追加のパターンのそれぞれは、これまでのインクの色とは異なる所定の色のインクで印刷される。各印刷パターンは、限定するわけではないが、例えば、DataMatrix、Aztec、PDF417、UltraCode、SuperCode、MiniCode、MaxiCode、及びQRCodeを含め2−Dバーコード又はマトリクスコードの様な、ソフトウェアが作成した証印の形態で、情報をエンコードする。印刷パターンは、一つに組み合わさって証印を形成するが、この証印は、ヒトの眼又は電子画像リーダには解読できないが、認証されたユーザーには、証印に光エネルギーを放射し、証印から放出された信号を1つ又は複数のスペクトルフィルタに通してフィルタを掛け、フィルタを掛けた信号を検出し、読み取りし、デコードすると解読することができる。
【0031】
物品又はパッケージに印加される証印は、視認できる場合もあるし、普通の照明状態では隠秘されている場合もある。証印は、複数の化学色素及び/又は染料を含んでいるインクで作られ、化学色素及び/又は染料は、UV、可視光、又はIRの範囲内の或る波長の光で照射されるとエネルギーを供給され、吸収された光エネルギーの波長とは異なる波長で光エネルギーを放出する。証印に使用される化学色素及び/又は染料の内の少なくとも1つは、吸収と放出の或る関係、即ち、UV対UV、UV対可視光、UV対IR、可視光対UV、可視光対可視光、可視光対IR、IR対UV、IR対可視光、及び/又はIR対IRという関係を有している。安全性の高い本物証明システムを提供するために、インクジェット噴射可能な化学色素の放出及び励起スペクトルは、狭くなるように選択されている。
【0032】
1つの実施形態では、証印を形成する印刷パターンの内の少なくとも1つは、物品に関する固有の真情報をエンコードしている。この開示で言う、或る物品に関する「真」情報とは、その情報を使って、同物品を識別、追跡、及び/又は本物証明することができるという意味である。これは、メッセージの一部を1つの色で印刷し、他の部分を別の色で印刷することのできる不完全なコードを使用することにより、更に強化することができる。フィルタリングシステムには、メッセージ全体を有効振幅範囲内に置くために、1つの信号を別の信号に対して減衰させることが求められる。代わりの方法は、真情報を、追加区画を備えた完全なコードとしてエンコードするもので、その際、メッセージ全体は1つの画像で印刷され、スペクトル的に近く、フィルタを掛けてその波長を取り除かなければ画像が無意味なものになるような追加の特徴が付け加えられている。
【0033】
別の実施形態は、図1に図解されている様な、「偽」情報をエンコードしている1つ又は複数の印刷パターンを含んでおり、この「偽」情報は、無意味な情報又は意図的に正しくない情報を提供し、偽造に対する抑止力として機能し、認証されていないユーザーによる物品の識別、追跡、又は本物証明を防止する。言い換えると、「偽」情報は、証印を、解読できないほど複雑にし、そのことにより、偽造を未然に防ぐことはできなくても、偽造を思いとどまらせるのに使用される。
【0034】
本開示の証印は、共面を成す多数の色のインクで作られている。この開示を通して、「共面」という用語は、凸凹又は湾曲が本開示の実行に必要な印刷画像の明瞭度に関して許容される状態に留まっているのであれば、表面又は構造が真に平坦であるか又は凸凹又は湾曲を含んでいるかに関係無く、領域が分布している表面又は構造に、基本的に重なること無く、沿っている同領域の配置であると定義される「相互共形」という用語も含むものとする。証印内の個々の画素それぞれは、その個々の画素のアドレスに印刷される1つの色を有しているか、又は色を有していなくてもよいが、2つ以上の色を、その画素の同じアドレスに重複印刷するよう指定することはできない。よって、本開示の証印を形成する幾つかの色は、互いに交錯しているが、殆ど又は全く重なっていない。共面証印は、隣接する画素の間で色が重ならないのが理想的であるが、本開示は、隣接する画素の縁部に沿ってインクの色が少し重なっている共面証印も包含している。このような少しの色の重なりは、或る色のインクのブリージングに依るか、又は、特に、本開示の証印で可能な高いライン速度で証印が印刷される生地の不正確な位置合わせに依るものである。本開示では、「共面証印」は、証印内の隣接する画素の縁部に沿ったインクの色の重なりが約10%未満である証印を包含しており、証印内の隣接する画素の縁部に沿ったインクの色の重なりが約5%未満である証印を包含するのが望ましい。ここで言う約10%未満の重なりとは、重なり合うインクの幅が、隣接する画素の全長の約十分の一未満だけ伸びていることを意味している。この結果は、本開示に記載されているマスクを使えば、最も容易に実現することができる。
【0035】
普通に肉眼で見える照明条件下で、証印が物品上に容易に見えないか、又は電子的に読み取れない場合、証印は「隠秘」である。「隠秘証印」は、UV、可視光、又はIRの範囲内の光エネルギーを吸収する化学色素及び/又は染料で作られており、可視光範囲内の光を吸収する化学色素及び/又は染料で作られているが、適した(普通は暗色)生地上に印刷されると隠れるか又は隠秘の状態に留まる証印も含まれる。他の隠秘証印は、405ナノメートル(nm)及び680nmの様な、可視光スペクトルの縁部の波長の光を吸収する化学色素で作られている。
マスク
「マスク」(ここでは互換可能に「ビットマップマスク」とも呼ばれている)は、本開示では、証印を正確且つ高精度に印刷する支援策として使用され、インクジェットプリンタで可能な高い印刷速度でも、印刷インクの共面性の実現を支援するのに使用される。マスクは、印刷される証印に、色が絡み合うが重ならないように、作用を及ぼすソフトウェアツールである。マスクは、異なる印刷ヘッドソースからの多数のインクの印刷を、吸収の様な、インク対インクの相互作用を最小にする方法で、行えるようにする。でき上がった印刷は、インクが印刷されている画像の鮮明度が、均一となっている。印刷される証印の各画素(又は要素)は、2−Dバーコードとして表されるときに、対応する列及び行のアドレスを有している。各ビットマップマスクは、証印と同じ大きさであり、同じマトリクス形で表現することもできる。一例として、2つの異なる色で印刷される2つの印刷パターンを組み合わせて証印とする場合、2つのビットマップマスクが必要になる。第1のマスクは第1印刷パターンに作用し、第2のマスクは第2パターンに作用し、それ以外に、組み合わさって証印を形成する多くの印刷パターンについても同様である。マスクは、事実上相補型になっているので、マスクの所与の行及び列のアドレスには、1つの「1」が存在するだけであり、他の全てのマスクにより同じアドレスに対して提供される対応する値は「0」でなければならない。第1のマスクは、第1証印に、アドレス毎に作用し、その結果は或る印刷ファイルであり、各要素の値は、そのアドレスの証印の値(「1」又は「0」)にマスクの値(「1」又は「0」)を掛けたものである。例えば、行が1で列が1である特定のアドレスの第1の2−Dバーコードの値が「1」であり、同じアドレスのマスクの値も「1」である場合、印刷ファイルは、その画素に対し「1」を含むことになり、プリンタにその色のインクをその画素内に印刷するよう指示する。代わって、そのアドレスのマスク値が「0」である場合、印刷ファイルは「0」を含むことになり、そのアドレスには「印刷無し」と指示する。相補型マスクの使用は、確実に、重複してインクの色が個々の画素に印刷されるよう指定すること無く証印が印刷されるようにする1つの技法である。機械的整列(又は「位置合わせ」)が正しく行われていて、証印内の隣接する画素の縁部に、インクの色のブリージングが実際には無いとすれば、色の重なりを無くすことが、共面証印を作る。先に述べた様に、本開示の共面証印は、隣接する画素の縁部に沿って10%未満のインクの重なりを有していてもよく、証印内の隣接する画素の縁部に沿って5%未満のインクの重なりを有していることが望ましい。
【0036】
代わりに、縁部のインクの「ブリージング」が避けられない状況で、画素レベルの標識剤の混合を回避する1つの方法は、全てのマスクが特定のアドレスで「0」を有するように選択して、隣接して印刷される画素の間に「印刷無し」画素を作る方法である。
【0037】
もう1つの代替案は、多重2−Dバーコードを互いの上に印刷するが、その際、各バーコードが別々の蛍光色で印刷されるようにすることである。フィルタを使用すると、所望の色以外の全ての色を取り除いて、バーコードを読み取ることができる。しかしながら、この技法の難しさは、蛍光インクが相互に作用しあって、それぞれの証印が適切に印刷されていても、何れの証印もデコードされない恐れのあることである。その難しさは、同じ画素数の2つの別々のバーコードを作り、相補型マスクを印刷前にそれぞれのバーコード画像に適用して、全ての奇数画素を一方の画像に供し、全ての偶数画素を他方の画像に供することによって克服することができる。マスクを変え、2x2及び3x3ブロックなどを単位に繰り返しパターンを使用することにより、その比率を50/50から他の比率に変えることもできる。一例として、一方の画像の四分の三を印刷し、他方の画像の四分の一を印刷することもできる。この技法の利点は、一方のインク色が他方の色より相当に強く蛍光を放つ場合に明白であり、何故なら、蛍光が弱いインクほど、大きい印刷割合を割り当てることができるからである。
【0038】
相補型マスクは、全く同じ大きさの複数(2)のアレイを作ることによって機能し、その際、1つのアレイは、そのアレイのアドレスロケーションに壱「1」の値を有し、他のアレイは、その同じアドレスロケーションにゼロ(「0」)を有する。システムの型式は、ランダムオーダーでもよいし、よく定義されたパターンであってもよい。マスクの作用は、論理「アンド」オペレータを使用することにより、アレイマスク1をアレイ1のビットマップ画像と結び付け、アレイマスク2をアレイ2の画像と結び付け、以下同様である。合成画像は、先のマスク/画像セットの全てで論理「オア」であり、各アレイのカラー値が維持される。ブロックシステムは、2x2の様な、対角線要素が一方向では黒色であり他方向では白色であるマスクを作るのに用いられる。左側を黒色に、右側を白色にするか、又はその反対も可能である。上側を黒色に、下側を白色にするか、又はその反対も可能である。従って、2x2マスクでは、グレイスケールの最終結果が同じ50%になる6通りのマスク順列が可能である。異なるグレイスケールでは、グループ毎に3つの黒色要素(「0」)と1つの白色要素(「1」)を有する2x2マスクを有することもできる。一例として、画像が150x150画素で、2つの相補型マスクが作られていれば、各マスクは、「1」を50%と「0」を50%有することになる。2つのマスクの論理「オア」は、各値が「1」である単一の150x150アレイとなる。同じアレイの論理「アンド」は、要素が全て「0」のアレイとなる。アレイの1つの要素の75%が「1」であり、他のアレイの25%が「1」であるアレイを作ることもできる。
【0039】
黒色(「0」)要素の数が1から8の範囲を取り得る、3x3のサブ要素アレイの場合には、マスクがもっと複雑になり、パターンは、更に複雑になる。複雑さの後に隠れている理由は、所望のグレイスケールを作成するが、同時に、カメラシステムに、多数のサブマスク区画を、たまたまグレイに「見える」「連続する」ブロックの一部として認識させるパターンを見つけ出すことである。マスクは、電子画像リーダーが、サブアレイを解像し、サブアレイを、意図したよりも遙かに多くの要素から成る更に複雑なバーコードとしてデコードしようと試みることができるように設定することができる。Hewlett Packard TIJ 2.5システムの代表的な印刷画素は、300DPIの設定で、大きさが約3ミル(0.0033インチ)に過ぎないので、カメラシステムがそのレベルまで解像できない場合は、システムは、実際は鮮明度が劣る画像を見ることになる。2−Dカメラベースのバーコードリーダーは、内部AGC(自動利得制御)を有しているので、露光時間は、確実にシステムが読み取り及び撮像するのに適した鮮明度が収集されるように修正される。
【0040】
この方法及びシステムを使った実験を通して、印刷プロセスで「非ランダム」ビットマップマスクを使用すると、「ランダム」ビットマップマスクを使用するよりも良好な結果の生じることが分かっている。ランダムビットマップマスクの使用は、相当量の計算能力を必要とするだけでなく、電子画像リーダーが2−Dバーコードを認識できず、従って、証印を読み取ってデコードすることができない事例が多くなる。これは、2−Dバーコードリーダーが、バーコード画像の左側に沿い、下側に亘るコラム(「L」字形を形成している)が、ほぼ均質な黒色であることを必要とするためである。ランダムマスクが使用されていれば、プリンタは、「L」字形を形成している2つの区画内に大きな空隙を有するバーコードを作ることもある。「L」字形の中の空隙がかなり大きい場合、電子画像リーダーは、証印又はバーコードを読み取り可能であると認識することができず、従って、物品を追跡又は本物証明することができなくなる。
【0041】
本開示は、ソフトウェアで作成された第1のアドレスのアレイを有する第1マスクと、ソフトウェアで作成された第2のアドレスのアレイを有する第2マスクとを備えた、共面証印を作成するための一式のマスクを提供しており、第1アドレスと第2アドレスの組み合わせは、或るアドレスに関して、2つ以上の論理壱(「1」)を有することは無く、同アドレスは、その共面証印内の画素の場所を識別する。一式のマスクは、更に、ソフトウェアで作成された第3のアドレスのアレイを有する第3マスクを備えていてもよく、その際、第1アドレス、第2アドレス、及び第3アドレスの組み合わせは、或るアドレスに関して、2つ以上の論理壱(「1」)を有することは無い。一式のマスクは、更に、ソフトウェアで作成された第4のアドレスのアレイを有する第4マスクを備えていてもよく、その際、第1アドレス、第2アドレス、第3アドレス、及び第4アドレスの組み合わせは、或るアドレスに関して、2つ以上の論理壱(「1」)を有することは無い。一式のマスクは、更に、追加のマスクを備えていてもよく、その際、アドレスの組み合わせは、或る特定のアドレスに関して、2つ以上の論理壱(「1」)を有することは無い。
【0042】
ビットマップマスクは、通常は規則的なパターンを備えている(図3に図示)が、規則的に構成されたパターンには限定されない。例えば、2次元画像として見たときに、一つのマスクが多角形を示している場合、他のマスクは、その多角形の輪郭と、マスクの有効縁部までの全ての隣接する要素であるが、多角形の何れの要素も含んでいない。
【0043】
「色」は、本開示では、物品により放出され、伝達され、又は反射される光エネルギーに起因する属性を指すのに使用されている。色は、通常、ヒトの眼に見える波長の反射光の属性であるが、色という用語は、UV、可視光、及びIRの範囲内の光エネルギーの波長を含め、放出、伝達、又は反射されるあらゆる波長の光エネルギーを包含している。よって、IRスペクトルのみの光を発する色素及び/又は染料で作られた或る「色」のインクの第1印刷パターンは、その色がヒトの眼に見えなくても、或る「色」を有すると考えられる。また、IRスペクトルのみの光を発する第2の「色」のインクの第2印刷パターンと、先に説明した第1印刷パターンとが、共にヒトの眼には無色に見え(見えなく)ても、「異なる」色のこともある。
【0044】
本出願に使用している、「所定の」と「事前に選択された」は、互換可能に使用されていて、使用前に選択され、且つ、本システム又は方法の認証又は意図されているユーザーに提供され又は知られていたものを指す。例えば、「1つ又は複数の所定の波長の光線」を必要とする方法段階は、認証されたユーザーには、電源が入ると或る特定の波長又は波長の組み合わせの光線を生成する1つ又は複数の光源が提供される、及び/又は、認証されたユーザーは、オンにする光源又はオフのままとする光源の組み合わせを知っているということを意味する。代わりに、認証されたユーザーに、本方法で証印を適切に活性化させるのに必要な正しい光の波長を、知らせてもよい。同様に、「所定の」インクの色には、或る特定の認証されたユーザー又は顧客のために前もって選択された或る特定の色素及び/又は染料、又はそれらの組み合わせが入っていてもよい。
【0045】
本開示で使用している「複数」は、2つ以上を意味している。従って、複数の或る特定の物品は、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上の、その特定の物品のことである。
光源
本開示の方法及びシステムは、証印に照射する1つ又は複数の所定の波長の光線を作るのに、多数の光源を使用する。光源は、UV、可視光、又はIRの範囲内の特定の波長の光エネルギーを放射することができる。本開示で使用する、認証されているユーザーには、それぞれが異なる波長の光エネルギーを作り出す1つ又は複数の光源が提供される。認証されているユーザーには、本方法で使用される光源の特定の組み合わせに関して、何れの光源をオンにし、何れの光源をオフ状態に留めるかを示す指示が提供される。例えば、認証されているユーザーは、或る特定の証印には、光源1、3と4をオンにして、光源2をオフのままにし、それによって、或る所定の波長の光を証印に照射し、証印に適切な信号を放出させ、それをスペクトルフィルタに通してフィルタを掛け、読み取り、デコードするように指示される。しかしながら、この例で、光源1、3、及び4と共に光源2も(例えば、光源の正しい組み合わせを知らされていない認証されていないユーザーにより)オンにされると、偽情報をエンコーディングしている証印の部分が活性化され、証印の正しいデコーディングが防止される。本方法の別の実施形態では、正しくない光源の組み合わせが照射されると、物品を追跡及び/又は本物証明するのに必要な適切な信号の一部分だけが発光し、証印の正確なデコーディングが防止される。
スペクトルフィルタ
開示されている本システム及び方法と共に使用されるスペクトルフィルタ(光学フィルタとも呼ばれる)には、限定するわけではないが、ロングパスフィルタ、ショートパスフィルタ、調整可能フィルタ、色特定フィルタ、及びノッチフィルタが含まれている。「ロングパスフィルタ」は、長い波長の信号を通す。ロングパスフィルタの一例は、Schott Glass OG530の様な有色ガラスフィルタであり、530nmでは、光信号の透過率が50%である。530nmより下では光の透過は少ないが、530nmを上回ると光エネルギーの透過は多くなる。Schott Glassフィルタは、青色の放射を遮るが、赤色の放射は通す。「ショートパスフィルタ」は、フィルタ特性が、ロングパスフィルタと比べて概ね反対であり、規定の波長より短い信号を通し、規定の波長より長い信号を遮る。可視スペクトルでは、有色ガラスを使用しているショートパスフィルタの例は、比較的少ない。大部分のショートパスフィルタは、干渉フィルタであり、ガラス、空隙、及び薄いフィルム被覆の組み合わせで作られている。薄膜被覆技術を使って作られる「ノッチフィルタ」は、透明な生地と共に使用するか、又は、ロングパスフィルタ又はショートパスフィルタと組み合わせて、スペクトル位置とスペクトル幅に特定のスペクトル透過帯域を作り出すことができる。例えば、通常のCCDカメラ画素要素は、0.4から1.1ミクロンに亘るスペクトル感度を有している。フィルタは、カメラで良く使用されているフィルタと同様のねじ込み装着フィルタとして供給することもできる。フィルタは、恐らく、多重薄膜層を備えた幾つかのガラス区画で構成されており、経年、温度、又は入力角度の変化によるスペクトルの変化の影響をあまり受けない。本開示に用いられている1つ又は複数のスペクトルフィルタは、ノッチフィルタ、色特定フィルタ、ロングパスフィルタ、ショートパスフィルタ、及び調整可能フィルタ、又はそれらの組み合わせで構成されているグループから選択される。
【0046】
様々なレベルのノッチフィルタを使用すると、可視光から赤外光のスペクトルの、非常に透明で、遮断された区画を作ることができる。ノッチフィルタは、コストの関係で、通常、商業的に8インチx8インチのガラス区画上に作られ、その後、適当な大きさに切断される。代表的な1/2インチx1/2インチのノッチフィルタは、比較的安価である。所望の光学濃度、非遮断区域内の透過割合、ノッチ幅、及び波長位置の間には、大きなトレードオフ空間がある。ノッチフィルタは、既に定義されている所望の化学色素で作られる。
【0047】
スペクトルフィルタのセットは、透過ウインドウ付きの区画(白色で現れる)だけを通し、遮断された区域(黒色で現れる)を排除する。コントラストレベルは、設計及び予想されるエラー率に依って、スペクトルフィルタ設計と共に選択される。
【0048】
バーコードリーダー用の全てのカメラ画素要素は、非常に小さい光検出器である。画素は、衝突してくる光の強さ、露光時間、及び画素スペクトル感度に応答する。検出器は、電子システムを介して読み取られ、電子システムは、検出器に集積した光の量に比例した信号を出力する。結果のグレイスケールは、総黒色から総白色(飽和状態)までの範囲に及ぶ。色は、スペクトルフィルタリング、及びフィルタリングに関する演繹的知識を使用することによってのみ作られる。この本物証明方法は、実際には、安全設計の一部でもある。ノッチフィルタは、有色ガラスフィルタに直接貼り付けて、少ない損失及び歪みで画像化することのできる極めて鮮明なスペクトル特徴を実現することができる薄膜なので、有色ガラスフィルタとノッチフィルタの組み合わせを使用することが望ましい。
【0049】
2−D電子画像リーダーに代わる方法は、デジタルカメラを使用することである。デジタルカメラは、正しい内部信号処理を有しているのではなく、ある種のフィルタリングを含んでいる。代表的なカメラのフィルタリングは、Bayerモザイク方法によるものであり、カラーフィルタは、パターン内の個々の画素を覆っている。通常、このパターンは、スーパー画素内に配置されている2つの緑色、1つの青色、及び1つの赤色フィルタで構成されている。カメラは、隣接する画素からの入力と数学アルゴリズムに基づいて、この色を再構築する。この方法の利点は、吸収性フィルタが、既に、カメラ内に含まれており、ノッチフィルタが縁部を先鋭にすることである。不利な点は、アルゴリズムが既に装置内に常駐しており、容易にには偏向できないことである。
【0050】
更なる代替策は、「調整可能な」カラーフィルタを使用することである。その様な技術は、CRI社(米国マサチューセッツ州ウォバーン市)の様な供給元から市販されている。この装置は、リオフィルタを使った偏光に基づいている。調整は、遅延が電圧制御されている液晶によって実現される。これらのフィルタを通る光学品質は、顕微鏡、並びにマルチスペクトル画像ためのコントラストエンハンサーに使用されていることによって証明される様に、優れている。代表的なフィルタは、20nmという非常に狭い通過帯域を有している。これは、リオフィルタ段階の数を変更し、良好な設計を行うことによって修正することができる。代表的な構造は、水晶プレート、液晶、及びシート偏光子で構成されている。偏光子は、IRはカバーしていないが、可視光スペクトルをカバーしている(又は、可視光を犠牲にして近IRを実現することもできる)ので、この分野では優勢になりつつある。調整可能なカラーフィルタは、高価になりがちだが、ユーザーが選択できるウインドウを提供する傾向がある。装置は、実際には、波長可変帯域通過フィルタである。スペクトル幅は、可変ではない。ユニットは温度依存性でもあるので、何らかの形の熱補償が求められる。
電子画像リーダー
電子画像リーダーは、本開示の方法及びシステムで、スペクトルフィルタを通過した画像を検出し、「読み取る」のに使用される。この開示で使用されている「電子画像リーダー」は、演算電子機器及びデコーディングソフトウェア及び/又はファームウェアと組み合わされているあらゆる型式の電子「ビジョン」システムを包含している。電子画像リーダーは、普通は、検出された情報を解析するためにデコーディングソフトウェアを伴っている。検出し、読み取ることのできる画像の型式には、1次元(1−D)及び2次元(2−D)バーコード又はデータマトリクスコードが含まれる。電子画像リーダーの周知の例は、2−Dバーコードリーダーであり、Symbol Technology社のDS6607小型スキャナ(米国ニューヨーク州Holtsvill市、Symbol Technology社)として市販されている。他の例には、Cognex及びVidekの様な会社により作られた高速ラインリーダー/検定機が含まれる。電子画像リーダーは、更に、デジタルカメラ及び携帯電話に見られるカメラも包含している。
【0051】
2−Dバーコードリーダーは、一般に、黒色と白色の電荷結合素子(CCD)アレイ、代表的にはサブメガ画素、を組み込んでいる。使い易くするために、各素子は、広い視野と、長い焦点距離と、短い焦点距離を有するように構成されており、画像の方向に関係無く、低いコントラスト比で、垂直な入射からは遠い角度でもバーコードを読み取り、デコードすることができる。これらのユニットは、白色に黒色が載っているか、又は黒色に白色が載っている画像を、より好みすること無く、デコードすることができる。
【0052】
本開示の方法は、電子画像リーダーを使って証印を読み取る場合に普通なら問題になるような、十分なコントラスト比の不足を克服する。1つ又は複数の所定の波長の光エネルギーを有する多数の光源を証印に照射し、次いで、放出された信号にスペクトルフィルタリングを行い、コントラスト比を改良して、電子画像リーダーによる証印の検出、読み取り、及びデコーディングを改良する。
プリンタ
多色印刷に関するインクジェット技術は、上に述べた方法に使用することができる。所望の証印マークは小さく、通常は0.25インチ平方未満である。12x12又は14x14要素のEC200のDataMatrixマークは、妥当な数の英数字を提供する。通常の産業等級の印刷ヘッドは、300DPIで良好に機能するが、600DPIでは噴射するインクが多すぎる。インクは、隣接区域に流入して、印刷される溶解性DPIの数を事実上下げることになりかねない。DataMatrixサイズが1/4インチで300DPIでは、バーコードは、丁度75x75画素で構成される。DataMatrixコードの「L」字形の区画(バーコードの左側と下側に沿った実線バー)は、方向付けのために必要であり、電子画像リーダーにより認識されなければならない。もっと強力な隠秘度を維持するためには、「L」区画内では、バーコード要素の様に、各色が同じ比率を有することが望ましい。そうすれば、その区画を作るのに数個の画素のみを残すことになる。電子画像リーダーは、個々の画素を実線として解釈しなければならない。マスクは、確実に、画像の鮮明度がバーコードを通して均一な状態に保たれるようにし、デコーディングプロセスを支援することになる。バーコード画像が小さいほど、各色の間のより良い位置合わせが必要になる。
【0053】
正確な位置合わせの問題について、本開示では、それぞれが独自の供給インクを有する複数の印刷ヘッドを組み込む方法によって取り組んでおり、但し、インクの中には複数のエミッタを保有しているものがあってもよい。これらの印刷ヘッドは、機械的に位置合わせされ、参照符号を付けられる。コンベヤーシステムは、更に、ベルトのシミー及びベルトの動き対エンコーダーエラーを最小にするための追加の要件を有している。これが、結果的に、重大な位置合わせエラー又はインクによる光の吸収の問題の無い、妥当な品質の印刷を作り出す。
【0054】
本開示の証印を作るためには、主にインクジェット技術が用いられるが、それは、同技術が、単位ボックスレベルで、包装ラインコンベヤー速度で、固有の一連の製品にオンデマンドで印刷することができるからである。
【0055】
ここで用いる「1つのインク」又は「複数のインク」は、画像を表面又は生地に表示するのに用いられる色素及び/又は染料が入っている液体インク又は乾燥粉末を意味している。画像は、ヒトの眼に見える場合もあるし、隠秘の場合もある。本開示で用いるインクは、限定するわけではないが、インクジェットプリンタが使用する液体インク、並びにレーザープリンタが使用するトナーを含んでいる。インクジェットに適合性のあるインクには、限定するわけではないが、水ベース及び溶剤ベースの調合物が含まれる。
【0056】
レーザープリンタも、本開示の方法で用いられている共面証印を印刷するのに使用できる。レーザージェットプリンタは、一般に、インクではなくトナーを使用するが、その様なトナーは、色素及び/又は染料を、本開示のためのインクと同じ様式で含んでいてもよい。トナーは、加熱されるとトナーを表面に結合させることのできる他の材料を含んでいる。トナーは、樹脂、ワックス、又は同様の材料を結合剤として使用し、調合物は、更に、剥離剤、電荷制御剤、及び他の添加材を含んでいてもよい。本開示で用いられる種類のトナーは、概ね、従来のトナー法又は化学処理トナー(CPT)法によって作られている。トナー粒子は、非常に小さい(1ミクロン以下)ので、実際のトナー粒子の量は、1つのドットを印刷する工程中に放出されるインクジェットインクの量よりも遙かに少なくてもよい。レーザー式プリンタでの、最も小さい識別可能なドットサイズは、使用される印刷システム次第で、もっと小さく、又はもっと大きく調節することができる。
【0057】
印刷を生地に付着させるには、印刷される生地の有孔性及び表面エネルギー、並びに、インクの表面エネルギー、表面型式、粘度、及び化学組成を考慮しなければならない。化学又はコロナ前処理を使用してもよいが、それらの前処理は、通常は紙には使用されないが、インクが表面に付着しない場合に使用される、費用の掛かる処理である。
【0058】
以下のリストは、印刷するための各種生地材料の表面エネルギーを記している。
生地材料 表面エネルギー(dynes/cm)
ポリテトラフルオロエチレン 18
ポリプロピレン 31
ポリ塩化ビニル 39
ナイロン6 42
ポリエチレンテレフタレート 44
セルロース 44
ポリカーボネート 46
ガラス 47
ポリエーテルスルホン 50
生地材料の実際の表面エネルギーは、製造方法及び様々な被覆又は表面処理の使用に基づき様々に変動する。インク調合物は、特定の生地材料の表面エネルギーに関する知識に基づいて最適化することもできる。
【0059】
生地への印刷の付着は、幾つかのプロトコルによって測定することができる。その様な1つのプロトコルは、摩擦試験である。標準的なプロトコルは、印刷材料ASTM D5264−98(2004)に関するSutherland摩擦試験である。
【0060】
卓上ジェットインクジェットプリンタは、サーマルインクジェット又は圧電式プリンタであってもよいが、本開示の共面証印を印刷するのに使用することができ、ここに開示している方法及びシステムに使用することができる。卓上ジェットインクジェットプリンタは、非常に高品質の印刷という利点を提供し、数個の証印を必要とする場合、又は、高速印刷が重要ではない場合には有用である。卓上ジェットプリンタは、高額商品に証印を印刷する際に特に有用である。
【0061】
これらの用途に使用されるプリンタは、一般には非接触型であり、証印が付けられる物品又はパッケージがプリンタヘッドの下を(又は隣接して)移動する。これは、通常の消費者の卓上インクジェットプリンタの動作と異なっており、卓上式では、プリンタヘッドが、印刷される品物の表面上を非常に正確に動く。通常のインクジェットプリンタは、インクをプリンタヘッドから射出するのに、熱又は圧電方式の何れかを使用する。装置の型式毎に、満たすべきインク要件が異なっている。
【0062】
本開示に使用される印刷システムの代表的な例は、Hewlett Packard TIJ2.5システム(米国カリフォルニア州サンディエゴ市、Hewlett Packard Specialty印刷システム)で、サーマルインクジェット印刷システムである。この型式の印刷ヘッドは、生産ラインの速度条件次第で、600DPIまで印刷することができる。
【0063】
品物又はパッケージを適位置に動かすため、或る形態のコンベヤシステムが使用され、確実に物品又はパッケージの正しい面がプリンタヘッドに相対するようにするため、或る形態の整列装置が使用されている。生産ラインの速度は、エンコーダーホイールによって測定され、移動距離に直接関係している。光検出器セルの様なものによって主幹起動装置が作られ、物品又はパッケージの位置が分かるようになっている。位置と速度率に基づいて遅延が計算され、証印又はマークが所望の場所に印刷されるようになっている。
【0064】
この型式のシステムのエラーには、コンベヤベルトの横方向の運動、ベルトの厚さの変動、及び/又はエンコーダーホイール及びベルト駆動器ローラーのばらつきが伴う。品物又はパッケージの方向を決めるための整列装置は、どの様なものでも摩擦を生じ得るので、証印を印刷しようと想定していた場所と比べ、証印の相対位置が変わることもある。これは、僅かであっても、深刻な位置合わせエラーになる。この文脈の「位置合わせ」は、証印が、意図した場所に、印刷重複を最小にして印加されるようにする、物品又はパッケージの機械的な整列及び/又は方向決めを意味するのに使用されている。
【0065】
本開示の利点は、インクジェット印刷で可能な速い処理速度で証印を物品又はパッケージに印加するための実用的な方法を提供していることである。本方法によるその様な処理速度又は生産ライン速度は、通常の処理速度又は生産ライン速度が毎分約20フィートかそれ以上なのに対して、毎分1フィートから約240フィートである。その処理速度又は生産ライン速度は、1つ又は複数のインクジェット印刷ヘッドを直列に及び/又は互い違いに配置し、各印刷ヘッドが異なる色のインクで印刷するようにすることにより、実現される。インクジェット印刷ヘッドは、ベルト上の物品の速度を計時して、インクを物品の表面上に印加するように計画されている。証印が物品に関する個別化された、非順次的に連番化されたデータをエンコードしている場合でも、本方法を使えば、証印をこれらの処理速度で正確に印加することができる。1つ又は複数のインクジェット印刷ヘッドは、複数の色を正確に高速で印刷できるように、直列に配置されるのが望ましい。本方法で使用される証印は、約300DPI又はそれ以上で印刷することができる。1つのインクジェット送出ヘッドを使用すると、印刷ヘッド対印刷ヘッドの位置合わせが必要ないので、タスクが大幅に簡単になる。多色インク印刷では、証印は、画素毎をベースに作られる。
【0066】
証印の多色印刷は、多くのより化学的及びコーディング的順列を提供するので、認証されているユーザーには使い易いが認証されていないユーザーがコピー又は偽造するのは極めて難しい、物品を追跡及び/又は本物証明するための高度なシステムを作り出す。証印を作成するのに使用される市販インクの多くは、互いに作用し合うので、様々な化学色素及び/又は染料を一つに組み合わせて単一の組み合わせインクで印刷することが、常に可能とは限らない。或る例では、インク容器同士に互換性がない。相互作用を最小にするには、インクを画素レベルで正確に配置し、個々の印刷された画素がその隣接する画素から大きく分離されているようにする必要がある。これは、位置合わせの精度をサブ画素レベルまで保持するか、又は、隣接する印刷された画素の間に印刷されない画素分を設ける緩衝ゾーンを使用する必要があることを示唆している。
【0067】
本開示の方法は、証印を物品又はそのパッケージに印加し、同証印に光線を照射し、証印から発せられた信号を1つ又は複数のスペクトルフィルタに通し、フィルタを掛けられた信号を電子画像リーダーで検出し、読み取り、及びデコードすることにより物品を追跡及び/又は本物証明するのに、証印を使用している。物品は、デコードされた信号を、同物品のために作られ、証印が印加されたときに記録された物品の「サイン」と比較することによって、追跡又は本物証明することができる。この方法で使用される証印は、第1の所定の色のインクの第1の印刷パターンと、第2の所定の色のインクの第2の印刷パターンとを有しており、或る所定の色のインクの1つ又は複数の追加の印刷パターンを有していてもよく、印刷パターンのそれぞれが情報をエンコードしており、それぞれの所定の色のインクは、それまでに印加された所定の色の何れのインクとも異なる色である。
【0068】
本開示の別の実施形態は、物品を本物証明するための方法を提供しており、同方法は、隠秘の証印を、本物証明すべき物品に印加する段階と;隠秘の証印に1つ又は複数の所定の波長の光線を照射し、隠秘の証印が、1つ又は複数の波長の光エネルギーを、吸収された波長とは異なる波長で放出する段階と;発せられた信号を1つ又は複数のスペクトルフィルタに通してフィルタを掛ける段階と;フィルタを掛けられた信号を、電子画像リーダーを使って読み取り、ソフトウェアによってデコードする段階と、で構成されている。追加の暗号化層が使用されている場合は、デコーディング段階に、追加のソフトウェア解読を組み込んでもよい。その結果のデコードされた情報は、次いで、追跡又は在庫目録のために物品に固有で、及び/又は本物の物品と相関関係にあることが分かっている別の情報と比較される。隠秘の証印の実施形態では、第1の所定の色のインクの第1の印刷パターンと、第2の所定の色のインクの第2の印刷パターンとを有しており、或る所定の色のインクの1つ又は複数の追加の印刷パターンを有していてもよく、印刷パターンのそれぞれが、ソフトウェアで作成された証印の形態で情報をエンコードし、それぞれの所定の色のインクは、隠秘の証印の中にそれまでに印加されている何れの所定の色のインクとも異なる色である。隠秘の証印は、多色インクで作られていて、共面であり、ビットマップマスクを物品に関する情報をエンコードしている各証印と論理「アンド」した後で印刷されたものである。
【0069】
本開示の別の実施形態は、物品を追跡及び/又は本物証明するために、証印を物品又はパッケージの表面に印加するためのプロセスであり、証印を印加する表面上の或る場所を選択する段階と;品物を整列させて証印を正確に印刷するために品物の位置合わせをする段階と、インクジェットプリンタを使用して、複数の化学色素及び/又は染料を物品又はパッケージの表面に第1証印及び第2証印として印加し、それらを組み合わせて証印を形成する段階と、を含んでいる。
【0070】
以上の説明は、本開示を例証しているに過ぎないものと理解頂きたい。当業者であれば、本開示から逸脱すること無く、様々な代替及び修正案を導き出すことができる。従って、本開示は、特許請求の範囲に含まれるその様な代替、修正、及び変更全てを包含するものとする。
【符号の説明】
【0071】
10、20 2−Dバーコード
11、21 画素化した画像
12、22 電子画像リーダーにより読み出された画像
13 証印
14、24 データマトリクス画像
15、25 電子ビットマップマスク
16、26 スペクトルフィルタ
44 総合信号
51 総合+光源
52 ノッチフィルタ
53 低DPI
54 高DPI
98、99 画素化した画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品の表面に印加される証印において、
染料及び/又は色素を備えている第1のインクの第1印刷パターンと、
染料及び/又は色素を備えている第2のインクの第2印刷パターンと、を備えており、
前記第1のインクは、前記第2のインクとは異なり、前記第1印刷パターンと前記第2印刷パターンは組み合わせられて、共面証印を形成する、証印。
【請求項2】
前記第1印刷パターンと前記第2印刷パターンの内の少なくとも一方は、真情報をエンコードしている、請求項1に記載の証印。
【請求項3】
前記第1印刷パターンと前記第2印刷パターンの内の少なくとも一方は、偽情報をエンコードしている、請求項1に記載の証印。
【請求項4】
染料及び/又は色素を備えている少なくとも第3のインクの少なくとも第3の印刷パターンを更に備えており、前記少なくとも第3のインクは、前記第1のインク及び前記第2のインクとは異なっており、前記第1印刷パターン、前記第2印刷パターン、及び前記少なくとも第3印刷パターンは、組み合わせられて共面証印を形成する、請求項1に記載の証印。
【請求項5】
前記第1印刷パターン、前記第2印刷パターン、及び前記少なくとも第3印刷パターンの内の少なくとも1つは、真情報をエンコードしている、請求項4に記載の証印。
【請求項6】
前記第1印刷パターン、前記第2印刷パターン、及び前記少なくとも第3印刷パターンの内の少なくとも2つは、真情報をエンコードしている、請求項5に記載の証印。
【請求項7】
前記第1印刷パターン、前記第2印刷パターン、及び前記少なくとも第3印刷パターンの内の少なくとも1つは、偽情報をエンコードしている、請求項4に記載の証印。
【請求項8】
相補型マスクは、前記共面証印を形成するのに使用される、請求項4に記載の証印。
【請求項9】
相補型マスクの数は、前記証印を構成するインクの総数に等しい、請求項8に記載の証印。
【請求項10】
前記共面証印は隠秘である、請求項1に記載の証印。
【請求項11】
前記共面証印は、1つ又は複数の光源、1つ又は複数のスペクトルフィルタ、及び/又はそれらの組み合わせによって解読可能である、請求項1に記載の証印。
【請求項12】
前記共面証印は、前記証印に光線を照射し、前記証印に放出信号を放出させ、前記放出された信号を、次いで1つ又は複数のスペクトルフィルタに通してフィルタを掛け、フィルタを掛けられた信号を作り、前記フィルタを掛けられた信号を、電子画像リーダーによって読み取り、デコードするまで、解読することができない、請求項11に記載の証印。
【請求項13】
前記光線は、紫外線、可視光線、及び/又は赤外線の範囲の、及びそれらの組み合わせの、1つ又は複数の所定の波長の光を備えている、請求項12に記載の証印。
【請求項14】
前記1つ又は複数のスペクトルフィルタは、ノッチフィルタ、色特定フィルタ、ロングパスフィルタ、ショートパスフィルタ、調整可能なフィルタ、及び/又はそれらの組み合わせの中から選択される、請求項12に記載の証印。
【請求項15】
前記共面証印は、隣接する画素の前記第1インクと前記第2インクの重複が10%を超えない、請求項1に記載の証印。
【請求項16】
相補型マスクは、前記共面証印を形成するのに使用される、請求項1に記載の証印。
【請求項17】
相補型マスクの数は、前記証印を構成するインクの総数に等しい、請求項16に記載の証印。
【請求項18】
前記共面証印は、物品の表面に直接印刷することにより、前記物品の表面に印加される、請求項1に記載の証印。
【請求項19】
前記共面証印は、前記物品の表面に張り付けることのできる生地上に印刷される、請求項1に記載の証印。
【請求項20】
共面証印を作成するための一式のマスクにおいて、
第1のソフトウェアで作成されたアドレスのアレイを有する第1マスクと、第2のソフトウェアで作成されたアドレスのアレイを有する第2マスクとを備えており、前記第1アドレスと前記第2アドレスの組み合わせは、アドレスに対して2つ以上の論理壱(1)を有しておらず、前記アドレスは、前記共面証印内の画素の場所を識別する、一式のマスク。
【請求項21】
第3のソフトウェアで作成されたアドレスのアレイを有する第3マスクを更に備えており、前記第1アドレス、前記第2アドレス、及び前記第3アドレスの組み合わせは、アドレスに対して2つ以上の論理壱(1)を有しておらず、前記アドレスは、前記共面証印内の画素の場所を識別する、請求項20に記載の一式のマスク。
【請求項22】
第4のソフトウェアで作成されたアドレスのアレイを有する第4マスクを更に備えており、前記第1アドレス、前記第2アドレス、前記第3アドレス、及び前記第4アドレスの組み合わせは、アドレスに対して2つ以上の論理壱(1)を有しておらず、前記アドレスは、前記共面証印内の画素の場所を識別する、請求項21に記載の一式のマスク。
【請求項23】
物品を識別、追跡、及び/又は本物証明するための方法において、
(a)共面証印を前記物品に印加する段階と、
(b)前記共面証印に光線を照射し、前記共面証印に信号を放出させる段階と、
(c)前記放出された信号を、1つ又は複数のスペクトルフィルタに通す段階と、
(d)前記フィルターを掛けられた信号を、電子画像リーダーを使って処理する段階と、
(e)前記処理された信号を、識別、追跡、及び/又は本物証明情報と比較する段階と、から成る方法。
【請求項24】
前記共面証印は、
染料及び/又は色素を備えている第1のインクの第1印刷パターンと、
染料及び/又は色素を備えている第2のインクの第2印刷パターンと、を備えており、
前記第1インクは、前記第2インクとは異なり、前記第1印刷パターンと前記第2印刷パターンは組み合わせられて前記共面証印を形成する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記共面証印は、染料及び/又は色素を備えている少なくとも第3のインクの少なくとも第3印刷パターンを更に備えており、前記少なくとも第3インクは、前記第1インク及び前記第2インクとは異なっており、前記第1印刷パターン、前記第2印刷パターン、及び前記少なくとも第3印刷パターンは、組み合わせられて共面証印を形成する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記処理する段階は、前記比較する段階の前にデコードされる、追加の暗号化層を更に備えている、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記共面証印は隠秘である、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記光線は、紫外線、可視光線、及び/又は赤外線の範囲の、及びそれらの組み合わせの、1つ又は複数の所定の波長の光を備えている、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記1つ又は複数の所定の波長の光は、1つ又は複数の光源によって作られる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記1つ又は複数の光源のそれぞれは、認証されているユーザーに知られている所定の組み合わせに従って、オンにされるか、又はオフのままに留まるかの何れかである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記1つ又は複数のスペクトルフィルタは、ノッチフィルタ、色特定フィルタ、ロングパスフィルタ、ショートパスフィルタ、調整可能なフィルタ、及び/又はそれらの組み合わせの中から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
前記1つ又は複数のスペクトルフィルタは、真情報をエンコードしている放出された信号を通す少なくとも1つのスペクトルフィルタと、偽情報をエンコードしている放出された信号を遮る少なくとも1つのスペクトルフィルタと、を備えている、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記第1印刷パターンと前記第2印刷パターンの内の少なくとも1つは、真情報をエンコードしている、請求項24に記載の方法。
【請求項34】
2つ又はそれ以上の印刷パターンのそれぞれが、真情報の一部をエンコードしている、請求項24に記載の方法。
【請求項35】
前記印刷パターンの内の少なくとも1つは、偽情報をエンコードしている、請求項24に記載の方法。
【請求項36】
1つ又は複数のマスクを使用して、前記共面証印を形成する前記第1印刷パターンと前記第2印刷パターンを作る段階であって、前記共面証印は隣接する画素の第1インクと第2インクの重複が10%を超えない、マスクを使用する段階を更に含んでいる、請求項24に記載の方法。
【請求項37】
マスクの数は、インクの総数に等しい、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記共面証印は、インクジェットプリンタ、サーマルプリンタ、圧電式プリンタ、及びレーザープリンタで構成されるグループから選択されるプリンタによって前記物品に印加される、請求項23に記載の方法。
【請求項39】
前記プリンタは、1つ又は複数のインクジェット印刷ヘッドを有するインクジェットプリンタである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記1つ又は複数のインクジェット印刷ヘッドは、直列に配置されている、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記共面証印は、1インチ当たり約300ドット以上で印刷される、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記共面証印は、毎分約20フィート(約609cm)を上回る生産ライン速度で、物品又はパッケージに印刷される、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
物品を本物証明するための方法において、
隠秘証印を、本物証明すべき前記物品に印加する段階と、
前記隠秘証印に1つ又は複数の所定の波長の光線を照射し、前記隠秘証印が1つ又は複数の放出信号を放出するようにする段階と、
前記1つ又は複数の放出信号を、1つ又は複数のスペクトルフィルタに通してフィルタを掛け、1つ又は複数のフィルタを掛けられた信号を通す段階と、
前記スペクトルフィルタを通った前記1つ又は複数のフィルタを掛けられた信号を、電子画像リーダーを使用して検出し、読み取り、及びデコードする段階と、
前記電子画像リーダーによってデコードされた情報を、認証されているユーザーには知らされている別の情報と比較し、本物の物品と相関させる段階と、から成り、
前記隠秘証印は、多色共面の証印である、方法。
【請求項44】
前記隠秘証印は、
染料及び/又は色素を備えている第1のインクの第1印刷パターンと、
染料及び/又は色素を備えている第2のインクの第2印刷パターンと、を備えており、
前記第1インクは、前記第2インクとは異なり、前記第1印刷パターンと前記第2印刷パターンは、組み合わせられて前記共面証印を形成する、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
染料及び/又は色素を備えている少なくとも第3のインクの少なくとも第3印刷パターンを更に備えており、前記少なくとも第3のインクは、前記第1のインク及び前記第2のインクとは異なっており、前記第1印刷パターン、前記第2印刷パターン、及び前記少なくとも第3印刷パターンは、組み合わせられて前記隠秘証印を形成する、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記隠秘証印は、隣接する画素間のインクの重複が10%を超えない、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
証印において、
染料及び/又は色素を備えている第1のインクの第1印刷パターンを印刷することと、
染料及び/又は色素を備えている第2のインクの第2印刷パターンを印刷することと、を備えており、
前記第1インクは前記第2インクとは異なっており、前記第1印刷パターンと前記第2印刷パターンは、組み合わせられて共面証印を形成する、証印。
【請求項48】
染料及び/又は色素を備えている少なくとも第3のインクの少なくとも第3印刷パターンを印刷することを更に備えており、前記少なくとも第3のインクは、前記第1のインク及び前記第の2インクとは異なっており、前記第1印刷パターン、前記第2印刷パターン、及び前記少なくとも第3印刷パターンは、組み合わせられて共面証印を形成する、請求項47に記載の証印。
【請求項49】
物品を本物証明又は追跡するためのシステムにおいて、
第1のインクの第1印刷パターンと、第2のインクの第2印刷パターンとを有する共面証印であって、前記第1のインクは前記第2のインクとは異なり、前記第1印刷パターンと前記第2印刷パターンは、組み合わせられて前記共面証印を形成する、共面証印と、
少なくとも1つの光源と、
少なくとも1つのスペクトルフィルタと、
電子画像リーダーと、を備えているシステム。
【請求項50】
前記共面証印は、少なくとも第3のインクの少なくとも第3印刷パターンを更に備えており、前記少なくとも第3のインクは、前記第1のインク及び前記第2のインクとは異なっており、前記第1印刷パターン、前記第2印刷パターン、及び前記少なくとも第3印刷パターンは、組み合わせられて前記共面証印を形成する、請求項49に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−527053(P2010−527053A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503191(P2010−503191)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/059811
【国際公開番号】WO2008/127950
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】