説明

印刷版

【課題】フォトリソグラフィー法によるレジストパターン形成を利用した印刷版において、プリンタブルエレクトロニクスの特殊なインクによる高品質印刷に対応でき、さらに印刷後の版の洗浄にも耐えうる印刷版を提供すること。
【解決手段】少なくとも、支持体上に1.0μm以上50.0μm以下の厚みの紫外線吸収層を有し、フォトマスクと該紫外線吸収層との間に、10μm以上300μm以下の厚みでネガ型感光性レジスト(A)層を有する積層体を、フォトマスクを介して、平行光の紫外線で露光する工程と、該ネガ型感光性レジスト(A)を現像液により現像する工程と、を経て作成される印刷版であって、該紫外線吸収層が樹脂レリーフのパターン下部にだけ残されていることを特徴とする印刷版。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高解像で高品質な印刷が可能な印刷版に関するものである。さらに詳しくは、プリンタブルエレクトロニクスに対応するための凸版印刷版に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高価な設備や複雑な工程が少なく、プロセス廃棄物が少なく材料の利用効率が高い低コストで環境に優しい印刷法、プリンタブルエレクトロニクスが注目されている。印刷法の中で特にインクジェット法はマスクレスで材料利用効率も高く、カラーフィルターなどで実用化が進みつつあるが、高精細になると描画時間の増大、微細ノズルの詰りなどの問題がある。
これに対して、凸版印刷法はインクジェット法に比べて装置が比較的簡略で一括印刷による印刷時間の短縮、低コストが期待される製造方法である。しかしながら、高精細化への要求や、版の耐溶剤性、インクへの不純物の汚染等解決すべき課題も多い。液晶パネルの配向膜印刷においては、印刷版凸部表面に複数の微小突起や格子状パターンを設けることにより所定量のインクを凸部に保持することができ、均一な膜形成用の印刷版技術が開発されている(特許文献1、特許文献2参照)。ただし、これらに記載の方法によると、印刷版の支持体は光(紫外線)を透過するものしか使用することができない。さらに、本発明者らが鋭意検討した結果、図1に示すような樹脂レリーフ部(3a)の構成となり、印刷版レリーフを薄くすることや、パターンの微細化が難しく、高精細なパターン印刷に適応される印刷版を製造することには対応できない。
【0003】
従来から凸版印刷用樹脂版の解像性を上げる手法として、反射防止層(ハレーション防止層)を設ける技術が提案されている(特許文献3、特許文献4、特許文献5参照)。しかしながら、反射防止層を設けるだけでは、図2に示すように支持体上の凸パターン部以外の部分に反射防止層が露出した形になり、印刷後に版に付着したインクを洗浄する工程で反射防止層が溶出し、版の汚れや破損の原因となる。また、プリンタブルエレクトロニクス用に使用するための高精細なパターンで、かつそれに伴うレリーフ深度の薄膜化に対応する場合、版へのインキング時や印刷時にインクが反射防止層に付着し、版の汚れや破損の他、インクへの汚染まで惹き起こしてしまう。
加えて、高精細パターン用印刷版の樹脂モールドを使用する製造技術が公開されている(特許文献6参照)。この手法では、まず、紫外線を透過する基板上に紫外線に対して不透明な材料をパターニング後、ネガ型の感光性樹脂を積層し基材側から露光、現像を行うことにより樹脂モールドを作成する。次にこの樹脂モールドに硬化性シリコンゴムを充填、硬化し、剥離することにより印刷版を作成する。しかしながら、このような方法においては複数の工程が必要であり、高精細で任意の形状を簡便かつ安定に付与するにはまだ課題が残されている。
【0004】
【特許文献1】特許第3376908号公報
【特許文献2】特開2008−000928号公報
【特許文献3】特開平08−087106号公報
【特許文献4】特公平01−045050号公報
【特許文献5】特許第3778494号公報
【特許文献6】特許第3705340号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明では、フォトリソグラフィー法によるレジストパターン形成を利用した印刷版において、高精細で安価に製造される印刷版であり、印刷において、高解像性、高安定性を有する印刷版を提供することを目的とする。さらに具体的には、プリンタブルエレクトロニクスの特殊なインクによる高品質印刷に対応でき、さらに印刷後の版の洗浄にも耐えうる印刷版を見出したものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明は、以下の通りのものである。
1. 支持体上に、1.0μm以上50.0μm以下の厚みの紫外線吸収層と、該紫外線吸収層の上に、10μm以上300μm以下の厚みのレジストからなる凸パターンが配置され、且つ、当該レジストの少なくとも一部は、当該紫外線吸収層に混入しており、さらに該凸パターン間の凹部には支持体の表面が露出していることを特徴とする積層構造を有する印刷版。
2. 該凸パターンの上面に、開口部が25μm以上1600μm以下の面積を有する凹状の窪みを有することを特徴とする1.に記載の印刷版。
【0007】
3.
(1)支持体上に、
1.0μm以上50.0μm以下の厚みの紫外線吸収層と、
10μm以上300μm以下の厚みのネガ型感光性レジスト(A)層と、
フォトマスク、を
上記記載の順に積層する積層工程、
(2)該積層体のフォトマスク側から、平行光の紫外線で露光する露光工程
(3)引き続き、該フォトマスクを取り去った後、該ネガ型感光性レジスト層(A)
と該紫外線吸収層を同時に現像する現像工程と、
を上記(1)、(2)、(3)の順を経て製造されることを特徴とする印刷版の製造方法。
【0008】
4. 該ネガ型感光性レジスト(A)が少なくとも、ラジカル重合性のモノマー、プレポリマー、及び光重合開始剤を含有する液状物であることを特徴とする3.に記載の印刷版の製造方法。
5. 露光工程前の該紫外線吸収層がラジカル重合性物質を含有することを特徴とする3.又は4.に記載の印刷版の製造方法。
6. 該支持体が金属シートであることを特徴とする3.乃至5.のいずれか1項に記載の印刷版の製造方法。
7. 1.又は2.に記載の印刷版を、該印刷版の凸パターンが外側に向いた状態で複数個配置された円筒状とした後、該凸パターン上面にインクを供給し、引き続き、円筒の円筒軸を中心に転動させることによって被印刷物に対して前記インクを転写する印刷方法であって、前記インクが0.2Pa・s以下の粘度を有し、且つ、大気中に放置することで固形分が変化するものであることを特徴とする印刷方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の印刷版は、高精細なパターンにおいても、プリンタブルエレクトロニクスの高品質印刷に対応でき、印刷後の版の洗浄にも耐えうるものである。また、本発明によれば、このような印刷版を従来のフォトリソグラフィー工程により簡潔に作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に本発明を実施できる実施形態について詳細に説明する。
本発明の最も特徴的な点は、図3のように、版の支持体(3c)上に形成する紫外線吸収層(ハレーション防止層)(3b)が樹脂レリーフ(3a)のパターン下部にだけ残されていることである。つまり、樹脂レリーフ(3a)部以外においては、支持体(3c)の表面が露出した版となる。このような構成をとることで、ハレーション防止効果を活かしつつ、レリーフ深度の浅い印刷版であっても、インクや印刷後の版に付着したインクを洗浄するための溶剤に対して、紫外線吸収層の溶出、汚染、破損等を大幅に軽減できることが分かった。そのためには、紫外線吸収層は、ネガ型感光性レジストと同時に現像される素材を選択するのが良い。
さらに、紫外線吸収層のレジスト層側に、レジスト層の成分が混入していることも特徴とする。このような構造を取ることにより、紫外線吸収層は、一般的な反射防止層として、ネガ型感光性レジスト(A)層との界面での接着強度が高くなり、界面の反射防止効果も向上する。加えて、紫外線吸収層中に混入した感光性レジストは、露光部においては紫外線吸収層自体の強度や耐溶剤性を向上させる効果があり、遮光部においては紫外線吸収層を現像されやすくする効果を発揮する。
【0011】
以下、本発明の印刷版を構成する各構成部分について説明する。
紫外線吸収層とは、100nm乃至450nmの紫外線波長領域に吸収特性を有するものであるが、当然のことながらネガ型感光性レジストの感光波長領域内に吸収特性を有している必要がある。この吸収特性を利用し、支持体表面における反射を抑えることにより、ハレーション防止効果を発揮する。本発明の紫外線吸収層においては、厚みの制御も重要となる。紫外線吸収層が薄すぎる場合には、紫外線吸収特性が十分得られない上に、支持体表面の粗さを反映してしまい、拡散反射の影響が大きくなる。逆に厚すぎる場合には、レリーフ下部に紫外線吸収層の露出部分が大きくなり、本発明の効果が発揮できない。さらに、現像工程において、洗浄、除去の条件が厳しくなり、すそ引きや強度低下を招く。このような理由から、本発明の効果を発揮するためには、紫外線吸収層としては、1.0μm以上50.0μm以下の厚みであることが必要となる。より好ましくは、3.0μm以上30.0μm以下である。
【0012】
本発明の紫外線吸収層として吸収特性を持たせるための最も好ましい形態は、ネガ型感光性レジスト(A)の現像液に対して、洗浄、除去可能な樹脂等のバインダー中に、紫外線吸収剤を含有させることである。紫外線吸収剤の含有量は特に限定されるものではないが、使用する紫外線吸収剤の吸収特性と紫外線吸収層の厚さに加え、パターン形成するネガ型感光性レジスト(A)の感光特性(露光量)、さらにネガ型感光性レジスト(A)の現像液に対する溶解、分散性とから決められるものであり、0.1乃至20.0質量%とすることが好ましい。
【0013】
さらに、バインダーとの相溶性もしくはその溶媒に対する溶解性等を考慮すれば、0.5乃至10.0質量%とすることがより好ましい。また、紫外線吸収剤の種類も特に限定されるものではないが、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤から選ばれるものが、吸収特性及び溶解性の観点から好ましい。具体的には、2−[4−[(2−Hydroxy−3−dodecyloxypropyl)oxy]−2−hydroxyphenyl]−4,6−bis(2,4−dimethylphenyl)−1,3,5−triazine、2−[4−[(2−Hydroxy−3−tridecyloxypropyl)oxy]−2−hydroxyphenyl]−4,6−bis(2,4−dimethylphenyl)−1,3,5−triazine、2−[4−[(2−Hydroxy−3−(2’−ethyl)hexyl)oxy]−2−hydroxyphenyl]−4,6−bis(2,4−dimethylphenyl)−1,3,5−triazine、2,4−Bis(2−Hydroxy−4−butyloxyphenyl)−6−(2,4−bis−butyloxyphenyl)−1,3,5−triazine、2−(2−Hydroxy−4−[1−octyloxycarbonylethoxy]phenyl)−4,6−bis(4−phenylphenyl)−1,3,5−triazine、2−(2H−benzotriazol−2−yl)−4,6−bis(1−methyl−1−phenylethyl)phenol、2−(2H−Benzotriazol−2−yl)−6−(1−methyl−1−phenylethyl)−4−(1,1,3,3−tetramethylbutyl)phenol、β−[3−(2−H−Benzotriazole−2−yl)−4−hydroxy−5−tert−buthlphenyl]−propionic acid poly(ethyleneglycol)300−ester、Bis{β−[3−(2−H−Benzotriazole−2−yl)−4−hydroxy−5−tert−buthlphenyl]−propionic acid}−poly(ethyleneglycol)300−ester、2−(2−Hydroxy−5−tert−butylphenyl)−2H−benzotriazole、Benzenepropanoic acid,3−(2H−benzotriazol−2−yl)−5−(1,1−dimethylethyl)−4−hydroxy−C7,9−branched and linear alkyl esters、Octyl−3−[3−tert−butyl−4−hydroxy−5−(5−chloro−2H−benzotriazol−2yl)phenyl]propionate、2−Ethylhexyl−3−[3−tert−butyl−4−hydroxy−5−(5−chloro−2H−benzotriazol−2yl)phenyl]propionate、2−Hydroxy−4−n−octoxybenzophenone、2,4−Dihydroxybenzophenone、2−Hydroxy−4−methoxy−benzophenone、2,4−Di−tert−butylphenyl−3,5−di−tert−butyl−4−hydroxybenzoate等を挙げることができる。
【0014】
紫外線吸収層として使用できるバインダーとしては、ネガ型感光性レジスト(A)の現像液によって溶解、分散するものが好ましく、公知のものから利用できる。例えば、現像液がアルカリ水溶性のものである場合、水溶性樹脂やアルカリ水溶液によりエマルジョン化する樹脂等が挙げられる。このような樹脂としては、水酸基、スルホン酸基、アミノ基、アミド基等の親水性基を有するものやポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド等の極性の高いもの、分子量の低いものが使用できる。さらに、紫外線吸収層として使用できるバインダーとしては、支持体及びネガ型感光性レジスト(A)との接着性の観点から好適なものが選ばれる。前記したように、本発明の特徴をさらに発揮するためには、ネガ型感光性レジスト(A)に対して溶解、相溶することが必要となる。そのようなものとして、ネガ型感光性レジスト(A)中のモノマー成分に対して親和性の高いものが選択される。さらに、好ましくは、紫外線吸収層として使用できるバインダーとしては、ラジカル重合可能なバインダーを使用することが望まれる。ラジカル重合可能なものとしては、不飽和結合を分子中に一つ以上有するものであり、主鎖中に不飽和結合を有する不飽和ポリエステル、不飽和ポリウレタン、不飽和ポリアミド、不飽和ポリアクリレート樹脂、不飽和メタクリレート樹脂や重合性二重結合を有する化合物(例えばアクリレート、メタクリレート等)により変性したものが利用できる。例えば、水酸基とイソシアネートとの反応、カルボキシル基とエポキシとの反応等を利用したものである。このようなものの中から、最も単純なバインダーの選択としては、ネガ型感光性レジスト(A)に含有されるプレポリマー(もしくはプレポリマーに組成が近いもの)の使用である。さらに、紫外線吸収層にネガ型感光性特性を付与するためには、上記のようなバインダーに加え、光重合開始剤を含有させることで可能となる。
尚、本発明の紫外線吸収層においては、上記に挙げた紫外線吸収剤以外にも、市販の染料、顔料、カーボンブラック、無機微粒子等を含有させることも可能である。
【0015】
次にネガ型レジスト層について説明する。
本発明の印刷版は樹脂レリーフを有する印刷版であるが、このような構成の版で印刷を行う場合、レリーフ深度も適正な範囲にしなければならない。レリーフ深度が深すぎると印刷時にレリーフ形状の変形や、ロール状に巻きつけた際の変形が大きくなり、パターンの再現性が悪くなる。さらに、高精細なパターンにおいては、レリーフ断面のアスペクト比が大きくなり、版の耐久性が悪くなる。逆にレリーフ深度が浅すぎると、版へのインキングの制御や印刷時の印圧の制御が困難となり、レリーフパターン以外にインクが付着し、それが印刷時に転写されてしまう。さらに、樹脂レリーフの弾性の効果が薄れ、重ね塗りが困難となる。このような理由から、ネガ型感光性レジスト(A)層の厚みは10μm以上300μm以下の範囲にしなければならない。より好ましくは、30μm以上200μm以下の範囲である。
【0016】
本発明に利用できるネガ型感光性レジスト(A)としては、液体、固体どちらでもよく、公知のものが使用できる。例えば、ラジカル重合系、光カチオン重合系、光アニオン重合系、光二量化反応系などの重合性樹脂組成物が適用可能である。以下、汎用的なラジカル重合系で説明する。
ラジカル重合性樹脂組成物の多くが本発明に適用し得るが、その中で代表的なものとしてラジカル重合性のプレポリマー、モノマー、開始剤、熱重合禁止剤を配合した組成物が使用可能である。
プレポリマーは重合性二重結合を分子中少なくとも1個以上有し、例えば不飽和ポリエステル、不飽和ポリウレタン、不飽和ポリアミド、不飽和ポリアクリレート樹脂、不飽和メタクリレート樹脂およびこれらの各種変性物などを少なくとも1種類用いたものを挙げることができる。
【0017】
モノマーは重合性二重結合を有するエチレン性不飽和単量体であり、例えば、スチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルシアヌレート、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、メタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシメタクリルアミド、α−アセトアミド、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、α−クロロアクリル酸、パラカルボキシスチレン、2,5−ジヒドロキシスチレン、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート等やフォトポリマー懇話会著、「フォトポリマーハンドブック」、(株)工業調査会刊、1989年6月26日、p.31−36記載の材料を用いることができる。
【0018】
開始剤は、公知の光重合開始剤又は熱重合開始剤を用いることができる。例えば、ベンゾイン、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、キサントン、チオキサントン、クロロキサントン、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンジル、2,2−ジメチル−2−ヒドロキシアセトフェノン、(2−アクリロイルオキシエチル)(4−ベンゾイルベンジル)ジメチル臭化アンモニウム、(4−ベンゾイルベンジル)塩化トリメチルアンモニウム、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシプロポキシ)−3−,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オン−メソクロライド,1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(Oベンゾイル)オキシム、チオフェノール、2−ベンゾチアゾールチオール、2−ベンゾオキサゾールチオール、2−ベンズイミダゾールチオール、ジフェニルスルフィド、デシルフェニルスルフィド、ジ−n−ブチルジスルフィド、ジベンジルスルフィド、ジベンゾイルジスルフィド、ジアセチルジスルフィド、ジボルニルジスルフィドジメトキシキサントゲンジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムテトラスルフィド、ベンジルジメチルジチオカーバメイトキノキサリン、1,3−ジオキソラン、N−ラウリルピリジニウム等が例示できる。
また少なくとも未加硫ゴムと重合性二重結合を有する単量体、重合開始剤からなる光重合性ゴム組成物、いわゆる感光性エラストマーといわれているもの(例えば特開昭51−106501号、特開昭47−37521号)や、ジアルキルシリコン系樹脂の使用も可能である。
【0019】
熱重合禁止剤は、ハイドロキノン、モノ第三ブチルハイドロキノン、ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、ピクリン酸、ジ−p−フルオロフェニルアミン、p−メトキシフェノール、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾールなどを挙げることができる。
上記したような本発明に使用されるネガ型感光性レジストの具体例としては、APR(旭化成(株)社製)、AFP(旭化成(株)社製)、サンフォート(旭化成(株)社製)、サイレル(デュポン(株)社製)、テビスタ(帝人(株)社製)等がある。
【0020】
本発明の印刷版に使用できる支持体としては、インクや版に付着したインクを洗浄するための溶剤に対して不溶なものであれば特に限定されない。具体的には、金属シート、プラスティックフィルム、ガラス板などが挙げられる。特に、支持体として金属シートを用いることが好ましい。金属シート上にレリーフ深度の浅い樹脂レリーフパターンが形成されていることによって、印刷機への取り付け精度が向上し、樹脂レリーフパターンの変形も抑えられる。特に延伸性や弾性の観点から、好ましい支持体としてはステンレスシートが挙げられる。このような金属シートを支持体に使用できる点も本発明の特徴である。
尚、本発明の印刷版において、印刷性能を向上する目的で凸パターン上面に、開口部が25μm以上1600μm以下の面積を有する凹部(例えば図6の6b参照)を設けることが好ましい。その理由としては、凸版のレリーフ先端に設けられた窪み(即ち上記凹部、以下同じ)と窪みの間の壁や窪み自身が印刷時のインクの流れ出しを阻止するように働くためマージナルや線太りが抑制され、パターン形成においてパターン同士が繋がることを防ぐことができる。さらに膜内均一性、耐刷性及びエッジの直線性を向上できる。その結果、印刷法による電子デバイス(配線の形成、電極の形成、絶縁材料や機能材料を用いた機能素子や回路の形成)への応用が可能となる。
【0021】
さらに、インクの膜厚の制御と面内均一性の両立が可能であることを見出した。すなわち、上記凹部面積が1600μmを超えると窪み部にインクが過剰にたまり、転写したインクの面内の均一性やレリーフ端部に相当する解像性が損なわれる。また、インクの種類によってはレリーフ上の窪みは、印刷時においてインクの逃げ場としての機能があり、この場合は1600μmをこえると、パターンの欠損の原因にもなる。一方、上記凹部面積が25μm未満であるとインクの出入りが困難になり、インクのアニロックスロールからの転写性やインクの基板への転写効率が悪くなり、窪み部に対応する欠損によってパターンの再現性が損なわれてしまう上に、マージナル抑制効果さえも低下してしまう。また、インクの種類によってはレリーフ上の窪みは、印刷時においてインクの逃げ場としての機能があり、この場合は25μm未満であると、インクの逃げ場としての効果が減少し、マージナルや線太りの原因となる。上記凹部面積がさらに好ましくは50μm以上、1000μm以下にすることが良い。
【0022】
次に、本発明の印刷版の製造方法について説明する。
先ず、支持体上へ、紫外線吸収層と、ネガ型感光性レジスト層と、フォトマスクを積層した積層体の製造方法について説明する。
支持体上へ紫外線吸収層を積層する方法は以下の条件で行なう。
紫外線吸収層の形成方法は、支持体及び紫外線吸収層の材質に応じて最適な方法を選択すればよく、限定されるものではない。例えば、液状のものを塗布し、その後乾燥又は硬化させる場合、一般的なコーターを用いて塗布することで均一な厚さの膜とすることができる。コーターの種類としては、均一な厚さの膜とすることができる限りにおいて特に限定されるものではなく、ナイフコーター、スピンコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、ロールコーター、バーコーター、ダイコーター等を用いることが可能である。尚、膜の厚みは、液粘度、コーターの塗布条件等によって自由に制御することが可能である。一方、フィルム状のものであれば、所望の厚さを持つものを保護フィルムごとラミネートすることでも樹脂層を形成することが可能である。
【0023】
本発明者らが鋭意検討した結果、紫外線吸収層として、フォトリソグラフィー工程における現像工程によって、洗浄、除去可能なものを使用すればよいことが分かった。
ネガ型感光性レジスト層の積層方法は以下の条件で行なう。
ネガ型感光性レジスト(A)層は、例えば、液状の感光性樹脂を塗布する場合、一般的なコーターを用いて塗布することで均一な厚さの膜とすることができる。コーターの種類には均一な厚さの膜とすることができる限りにおいて特に限定されるものではなく、ナイフコーター、スピンコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等を用いることが可能である。尚、膜の厚みは、その液状感光性樹脂の粘度、コーターの塗布条件等によって自由に制御することが可能である。一方、フィルム状のレジストの場合、所望の厚さを持つものを保護フィルムごとラミネートすることで容易にネガ型感光性レジスト(A)層を形成することが可能である。
【0024】
最後にフォトマスクの配置について説明する。
フォトマスクは通常の方法に従って配置すればよく、また、使用するフォトマスクについては特に限定はなく、市販のフィルムマスク、エマルジョンマスク、クロムマスク、メタルマスクなどが使用できる。これらの中でも、クロムマスクは高精細なパターンを描画することが可能であり、平行光の紫外線の透過性能も優れている。合成石英やライムソーダガラス等のガラス板表面にクロムを蒸着して作成されるクロムマスクは、所望のパターンに応じて遮光部の形状とその配置を決定することが可能である。特に、描画精度、熱膨張性の観点から、合成石英のクロムマスクが最適である。尚、本発明では、必要に応じてフォトマスク表面に離型層を導入し、硬化後のネガ型感光性レジスト(A)との剥離を容易にし、パターンの欠損を低減することも可能である。離型層としては市販のシリコン系、テフロン系に代表される市販の離型剤のコーティング層や、シランカップリング剤等によるフォトマスク上の表面処理が適応されるが、屈折率が低く、薄膜で効果の出るものが好ましい。また、ネガ型感光性レジスト(A)との離型性を有する各種フィルムも適応可能である。さらに、ネガ型感光性レジスト(A)層をクロムマスク上に形成する場合、クロム蒸着面とその裏面のどちらの面でも良い。高精細の場合には、クロム蒸着面に形成した方が、解像度の観点からより好ましい。
以上、積層体の製造方法について説明した。
【0025】
上記の積層体の製造方法の一例を図面を用いて説明する。
図4は、本発明における印刷版の作製工程の例を示している。まず、紫外線吸収層(4c)を有する支持体(4b)と所望のパターンが描画されたフォトマスク(4a)を用意する。次の工程では、フォトマスクの表面と支持体上の紫外線吸収層との間に、ネガ型感光性レジスト(A)層(4d)を形成する工程である。ネガ型感光性レジスト(A)層を形成する方法としては、特に限定されないが、支持体及びレジスト材料に応じて最適な方法を選択すればよい。
具体的には、フォトマスク表面にネガ型感光性レジスト(A)層を形成した後に、紫外線吸収層(4c)を有する支持体(4b)を圧着(又はラミネート)する方法や該支持体の表面にネガ型感光性レジスト(A)層を形成しておき、それをフォトマスク表面に圧着(又はラミネート)する方法、さらには、ネガ型感光性レジスト(A)層の形成とフォトマスクの圧着(又はラミネート)をほぼ同時に行う方法等が挙げられる。
【0026】
次に本発明における露光工程について上記の図面を用いて説明する。
露光は、該フォトマスク(4a)の下側から平行光の紫外線で露光し、所望のパターンに応じてネガ型感光性レジスト(A)を硬化させるものである。この際、紫外線の照度は特に限定されないが、レジストの感光特性や紫外線吸収層の吸収強度等から決められるものである。一般的には、1mW/cm以上20mW/cm以下で行われるが、より好ましくは2mW/cm以上10mW/cm以下の範囲である。レジストのパターンの解像性を向上するために、該紫外線吸収層の吸収波長に応じて、露光波長の制御を行ってもよい。波長の制御は、使用するランプによってもできるし、波長カットフィルターやバンドパスフィルターを用いることでも容易に可能である。
以上のようにして露光は行なわれる。
【0027】
引き続き、現像工程について説明する。
現像工程は、フォトマスク(4a)を該ネガ型感光性レジスト(A)層(4d)から引き剥がし、現像処理することにより、ネガ型感光性レジスト(A)の凸パターン(4e)を形成すると共に、パターン部以外の紫外線吸収層を洗浄、除去するものである。
これにより紫外線吸収層は凸パターン部下部にだけ残される(4f)。本工程に採用される現像方法は、ネガ型感光性レジスト(A)に応じて選択すればよく、特に限定されるものではないが、ディップ現像、シャワー現像、超音波現像などが使用できる。現像液に関してもネガ型感光性レジスト(A)に応じて選択すればよく、アルカリ性水溶液の他、各種有機溶媒を使用することができる。
【0028】
本発明では、紫外線の照射を受けない非パターン部においても、現像液に対する溶解、分散性が向上するので、現像工程での、紫外線吸収層の洗浄、除去が促進される。これによって、前記したインクやインクの洗浄工程に対する課題が一層軽減される。さらに、この効果は紫外線吸収層中にラジカル重合可能な物質を含有させることにより増大する。この理由は、前記したネガ型感光性レジスト(A)のラジカル重合に伴って紫外線吸収層自体の硬化も促進されることによる。特にネガ型感光性レジスト(A)と紫外線吸収層が相溶する場合、具体的にはネガ型レジストを構成するポリマーが主として、紫外線吸収層中に侵入し、紫外線吸収層中に存在する重合開始剤と共存することで露光により硬化するのである。その結果、紫外線吸収層とネガ型感光性レジスト(A)層との界面が識別しにくくなり、ネガ型感光性レジスト(A)層と紫外線吸収層がもはや一体化して見える場合もある。この硬化特性及び現像特性を付与する点では、該紫外線吸収層にネガ型感光特性を示すものを用いることが好ましい。そうすることにより、紫外線吸収層自体の硬化及び現像特性が向上する。言い換えれば紫外線に対する硬化によるコントラストが向上し、現像工程における剥離等の課題も解決される。さらに、支持体との界面まで硬化させることにより、紫外線吸収層が比較的厚い場合(例えば30μm以上)でも版の強度が保たれる。
以上、本発明の印刷版の製造方法について説明した。
【0029】
ところで本発明では、凸パターン上面に、開口部が25μm以上1600μm以下の面積を有する凹部を有することが好ましいが、このような凹部を設ける手段としては以下のような方法が利用できる。
最も簡易的な方法としては、図5に示すように、フォトマスクの表面に形成されている光透過部(5a)のパターン中に、4μm以上1600μm以下の面積を有する微細な遮光部(5b)を不連続に複数設けることによって、図6に示すように、凸部パターン(6a)上に微細な凹部(6b)を形成することが可能である。微細な凹部6bは、微細な遮光部の外周より散乱する光と制御された反射光により遮光部直下の硬化を制御することにより形成される。一方、凸部パターン(6a)自体は散乱光及び制御された反射光が1方向からしか影響しないため硬化反応のコントラストは高く、結果としてエッジ部のショルダー角は小さく、裾引きも押さえられる。微細凹部(6b)の深さは、フォトマスクの微細な遮光部(5b)の面積に応じて、変動するものであるが、紫外線吸収層(6c)の紫外線吸収能を制御すること、言い換えると反射光の強さを制御することにより設計可能である。
【0030】
また、フォトマスク上に予め型を作製しておき、窪みの深さ及び内部形状をより正確に制御する方法もとれる。例えば、前記した光透過部のパターン中に、4μm以上1600μm以下の面積を有する微細な遮光部を不連続に複数設けたフォトマスク上に微小窪みの深さに相当する膜厚でポジタイプの感光性樹脂を被着し、フォトマスクを通して紫外線を照射し、露光部分を現像処理したものである。これにより、フォトマスクの遮光部上に微小窪みに対応した微小突起が形成される。この型付きフォトマスクを用いて、フォトリソグラフィーとインプリントによる微細凹部の形成とを同時に行うことが可能である。
更に、本発明では、必要に応じて現像処理および/またはリンスを行った後、乾燥やエアブローを行ってもよい。また、架橋反応を完了し樹脂硬度を高めるために後露光や加熱処理を行うことも可能である。この場合必要に応じて酸素遮断下(窒素雰囲気下や水中)で行うことができる。
【0031】
本発明の印刷版は、前記したように、プリンタブルエレクトロニクスに対応できる、高精細でかつ印刷特性に優れた印刷版であることを特徴とする。具体的には、インク耐性のある繰り返し使用可能な、安価で工業生産性に優れた印刷版である。勿論、ネガ型感光性レジスト(A)の材質についても版として使用する形態における物性、具体的には硬度、ヤング率、反発弾性、引張強伸度の他、プリンタブルエレクトロニクスに対応するためには表面張力、耐溶剤性などが所望する印刷に適するように選択、設計しなければならない。以下、本発明の印刷版のプリンタブルエレクトロニクス用途について説明する。
【0032】
例としてトランジスタについて説明する。まず基板の上にゲート電極及び配線に相当する導電性のパターンの作成に使用できる。インクとしては金属微粒子を分散したものや導電性のポリマー等を用いることができる。次に形成したパターン上の所定の位置に合わせ、トランジスタのゲート絶縁膜に相当するパターンを印刷する。印刷版は絶縁膜のパターンに相当するものに交換しておく。以後パターンを変更するたびに版は変更する。インクとしては有機系の材料を溶剤に溶解したものや無機系の塗布材料、例えばポリシラザン系の材料等が使用可能である。次に所定の位置にソース電極、ドレイン電極、とこれらに接続される配線を形成する。次にソース、ドレイン電極を跨るように半導体のパターンを形成する。インクとしては溶剤に可溶なポリチオフェン系誘導体やポリアセン系などの有機半導体が使用可能である。次いで素子を保護するため、これらのパターンを覆うように保護膜パターンを形成する。材料としては高分子の樹脂材料などを溶剤に溶解したものが使用可能である。
【0033】
また、有機EL素子について説明する。有機EL素子はディスプレイや照明用途にて用いられる。有機EL素子は有機物を陽極と陰極で挟みこんだ構造をとっている。その中で本発明の印刷版を用いる工程としては、電極形成時ならびに電極に挟み込まれた有機物、具体的にはホール注入材料や発光材料を塗布する工程に適している。電極形成方法としては、ガラス基板もしくはプラスチック基板に酸化インジウム・スズ(ITO)などの透明電極を所望のパターンにて印刷する。この透明電極を作製するときにも本発明の印刷版を用いてパターンを作製することができる。また、ITO電極の上のホール注入材料および/もしくはホール輸送材料、さらにその上に発光材料を形成する場合においても本発明の印刷版を使用することができる。
【0034】
上記の印刷に用いられるインクとしては、上記の各種材料(例えば、ホール注入材料、ホール輸送材料、発光材料、有機半導体材料など)を各種溶媒に分散もしくは溶解させて使用する。その時の溶媒としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノールなどのアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド類、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、デカヒドロナフタレン(デカリン)、テトラリンなどの炭化水素類などが挙げられる。
つまり、印刷版には、上記のような使用するインク溶剤の種類により耐溶剤性を持たせておくことが不可欠となる。同時に、版に付着したインクを洗浄することにより、繰り返し使用しても欠陥やインクの純度、濃度の変動による影響を低減し、印刷物の性能を保持することが可能である。このため、印刷版には、インクを洗浄するための洗浄液に対しても耐溶剤性を持たせておくことが必要となる。このため、当然のことながら、本発明の効果を発揮するためには、ネガ型感光性レジスト(A)自体の設計、選択が重要である。
【0035】
本実施形態に係る印刷用凸版を用いて、前記印刷物を印刷する方法を具体的に説明する。本実施形態に係る印刷方法は、本実施形態に係る印刷用凸版を被印刷物(基板)に押し当てて印刷を行う工程を含む凸版印刷方法であり、前記印刷版を円筒形の版胴の外周面に配置し、前記版胴を転動させることによって、被印刷物に対してインクの転写を行う転写工程にて印刷する。本発明の印刷用凸版の特徴が顕著に発揮されるのは、特にインクの粘度が低い場合である。粘度の低いインクを用いて印刷を行う場合、レリーフ上面にインキングされたインクがレリーフ側壁を伝って凸部外に流れやすく、凸部パターン以外を汚染する問題が発生するからである。また、インクに含まれる溶剤が揮発する場合には、印刷後の版に付着したインクを洗浄しておかなければならない。以上の理由により、インクが0.2Pa・s以下の粘度を有し、且つ、大気中に放置することで固形分が変化する場合において、特に本発明の印刷版の効果、即ち紫外線吸収層が凸パターン(6a)下部にだけ残される(4f)、或いは紫外線吸収層がラジカル重合性物質を含有することの効果、凸パターン(6a)上面に凹部(6b)を有することの効果が顕著となる。
【実施例】
【0036】
以下に本発明を実施例により詳細に説明する。なお、本発明は実施例により制限されるものではない。
<印刷版の作成例>
[実施例1]
フォトマスクとして、ライン(線幅)/スペース(間隔)(L/S 50μm/100μm)形状の光透過部を有する石英クロムマスクを用意した。このクロムマスクの表面に離型層を形成した。形成方法としては、離型剤として旭硝子社製サイトップ(CTX−809AP2)の4wt%液をスピンコーターにより、乾燥後厚みが0.5μmになるように塗布し、110℃で10分乾燥させた。
次に、支持体として厚み150μmのステンレスシート(SUS304)の表面に、10.0μmの厚みの紫外線吸収層を形成した。紫外線吸収層は、280nmから360nmにかけて強い吸収ピークを有する紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製 TINUVIN1113)を以下の組成にて混合溶解させたものをバーコーターにより塗布し、110℃20分乾燥させた。
・メチルメタクリレート47質量%、2−ヒドロキシエチルメタクリレート20質量%、アクリル酸23質量%、アクリル酸ブチル10質量%の4元共重合体
(Mw25000、Mn11000) 100.0質量部
・TINUVIN1113 4.0質量部
・メチルエチルケトン 100.0質量部
【0037】
次に、クロムマスクの表面の離型層上に、真空脱泡処理をした旭化成ケミカルズ社製ネガ型液状感光性樹脂APR−G31を60μmの厚みになるようにナイフコーターにより塗布した後、塗布上面に支持体のステンレスシートを紫外線吸収層を下にしてラミネートした。さらにその上に2mm厚のガラス板を置き、30g重/cmの荷重をかけて10分静置した。次に、クロムマスクの下側からオーク社製平行光露光装置を用いて、露光処理を行った。露光は、g線、h線、i線の混合光により4mW/cmで500mj/cmで行った。
クロムマスク表面の離型層とステンレスシート上の感光性樹脂層とを剥離し、0.5wt%炭酸ナトリウム水溶液に界面活性剤として炭素数12から14の第二級アルコールのエチレンオキシド5モル付加物であるレオコールSC−80(ライオン製)を1.0wt%添加した現像液によりシャワー現像、水洗を行った。乾燥後、後露光を行い印刷版1を得た。
得られた印刷版1には、65μmの高さのライン(線幅)/スペース(間隔)(L/S 50μm/100μm)形状で樹脂レリーフ部が形成されており、樹脂レリーフ部以外には、紫外線吸収層はなくステンレスシート表面が露出していることが確認された。
尚、樹脂レリーフ部先端の顕微鏡写真を図7に示す。
【0038】
[比較例1]
実施例1において、紫外線吸収層の組成を以下のように非アルカリ現像性の組成に変更した以外は同様にして、印刷版2を得た。
・メチルメタクリレート90質量%、アクリル酸ブチル10質量%の2元共重合体
(Mw28000、Mn13000) 100.0質量部
・TINUVIN1113 4.0質量部
・メチルエチルケトン 100.0質量部
得られた印刷版2には、55μmの高さのライン(線幅)/スペース(間隔)(L/S 50μm/100μm)形状で樹脂レリーフ部が紫外線吸収層上に形成されており、樹脂レリーフ部以外も、一様に紫外線吸収層で覆われていることが確認された。
【0039】
<印刷実験1>
実施例1の印刷版1及び比較例1の印刷版2を用いて、印刷実験を行った。印刷方法としては、得られた印刷版を日本電子精機社製精密印刷機にテープで取り付け、印刷時の押し込み量を30μmの印圧にて印刷を行なった。印刷に用いたインクはアルバックマテリアル(株)社製Agナノメタルインク(L−Ag1TeH/粘度12mPa・S)を使用した。また、印刷基板としては、無アルカリガラスを使用し、銀インクを印刷後、150度にて30分間熱養生し、薄膜を作製した。得られた薄膜を光学顕微鏡(デジタルマイクロスコープVHX−900/株式会社キーエンス)を用いて観察した。
30分間隔で10枚印刷を行った結果、実施例の印刷版1においては、10枚を通して良好なラインが形成されていることが確認された。一方、比較例の印刷版2においては、6枚目よりラインエッジの直線性が悪くなり始め、10枚目ではライン間にインクの付着が確認された。印刷後の版を観察したところ、樹脂レリーフ部以外の部分に付着したインクにより、紫外線吸収層が溶け、盛り上がっている箇所が見受けられた。
【0040】
[実施例2]
フォトマスクとして、図8のようにライン(線幅)/スペース(間隔)(L/S 100μm/200μm及び200μm/400μm)形状において、光透過部の中に微小窪みに対応する四角形の遮光部を等間隔に有する石英クロムマスクを用意した。このクロムマスクの表面に離型層を形成した。形成方法としては、離型剤として旭硝子社製サイトップ(CTX−809AP2)の4wt%液をスピンコーターにより、乾燥後厚みが0.5μmになるように塗布し、110℃で10分乾燥させた。
次に、支持体として厚み150μmのステンレスシート(SUS304)の表面に、6.0μmの厚みの紫外線吸収層を形成した。
紫外線吸収層は、280nmから360nmにかけて強い吸収ピークを有する紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製 TINUVIN384−2)を以下の組成にて混合溶解させたものをバーコーターにより塗布し、110℃20分乾燥させた。
以下の成分の重縮合により得られる不飽和ポリエステル
(ジエチレングリコール335質量部、プロピレングリコール80質量部、アジピン酸250質量部、フマル酸150質量部、イソフタル酸175質量部)
(酸価30mgKOH/g、Mn1700) 100.0質量部
・TINUVIN384−2 4.0質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 100.0質量部
【0041】
次に、クロムマスクの表面の離型層上に、真空脱泡処理をした旭化成ケミカルズ社製ネガ型液状感光性樹脂APR−G31を100μmの厚みになるようにナイフコーターにより塗布した後、塗布上面に支持体のステンレスシートを紫外線吸収層を下にしてラミネートした。さらにその上に2mm厚のガラス板を置き、30g重/cmの荷重をかけて30分静置した。次に、クロムマスクの下側からオーク社製平行光露光装置を用いて、露光処理を行った。露光は、g線、h線、i線の混合光により4mW/cmで900mj/cmで行った。
クロムマスク表面の離型層とステンレスシート上の感光性樹脂層を剥離し、0.5wt%炭酸ナトリウム水溶液に界面活性剤として炭素数12から14の第二級アルコールのエチレンオキシド5モル付加物であるレオコールSC−80(ライオン製)を1.0wt%添加した現像液によりシャワー現像、水洗を行った。乾燥後、後露光を行い印刷版3を得た。
【0042】
得られた印刷版3には、100μmの高さのライン(線幅)/スペース(間隔)(L/S 100μm/200μm及び200μm/400μm)形状で樹脂レリーフ部が形成されており、樹脂レリーフ部以外には、紫外線吸収層はなくステンレスシート表面が露出していることが確認された。さらに樹脂レリーフ部先端には、以下のような四角形状の凹部が複数等間隔に形成されていた。
・100μm幅ライン 開口部面積256μm、最深部3.8μm
・200μm幅ライン 開口部面積784μm、最深部8.3μm
尚、樹脂レリーフ部先端の顕微鏡写真を図9に示す。
【0043】
[実施例3]
実施例2において、紫外線吸収層の組成を以下のように変更し、厚みを6.0μmから30.0μmに変更した以外は同様にして、印刷版4を得た。
以下の成分の重縮合により得られる不飽和ポリエステル
(ジエチレングリコール335質量部、プロピレングリコール80質量部、アジピン酸250質量部、フマル酸150質量部、イソフタル酸175質量部)
(酸価30mgKOH/g、Mn1700) 100.0質量部
TINUVIN384−2 1.0質量部
・2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン 1.0質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 100.0質量部
得られた印刷版4には、125μmの高さのライン(線幅)/スペース(間隔)(L/S 100μm/200μm及び200μm/400μm)形状で樹脂レリーフ部が紫外線吸収層上に形成されており、樹脂レリーフ部以外には、紫外線吸収層はなくステンレスシート表面が露出していることが確認された。さらに樹脂レリーフ部先端には、以下のような四角形状の凹部が複数等間隔に形成されていた。
・100μm幅ライン 開口部面積256μm、最深部5.1μm
・200μm幅ライン 開口部面積784μm、最深部11.7μm
【0044】
[比較例2]
実施例2において、紫外線吸収層の厚みを6μmから60μmに変更した以外は同様にして、印刷版5を得た。印刷版5では、現像時に一部樹脂レリーフ部の剥がれが発生してしまい、印刷に適するものが得られなかった。
【0045】
[比較例3]
実施例2において、紫外線吸収層の組成を以下のように非アルカリ現像性の組成に変更した以外は同様にして、印刷版6を得た。
・東洋モートン社製ウレタン系接着剤 100.0質量部
・TINUVIN384−2 4.0質量部
・メチルエチルケトン 100.0質量部
得られた印刷版6には、100μmの高さのライン(線幅)/スペース(間隔)(L/S 100μm/200μm及び200μm/400μm)形状で樹脂レリーフ部が紫外線吸収層上に形成されており、樹脂レリーフ部以外も、一様に紫外線吸収層で覆われていることが確認された。
【0046】
<印刷実験2>
実施例2及び3の印刷版3及び4、比較例3の印刷版6を用いて、印刷実験を行った。印刷方法としては、得られた印刷版を日本電子精機社製精密印刷機にテープで取り付け、印刷時の押し込み量を30μmの印圧にて印刷を行なった。印刷に用いたインクはアルバックマテリアル(株)社製Agナノメタルインク(L−Ag1TeH/粘度12mPa・S)を使用した。また、印刷基板としては、無アルカリガラスを使用し、銀インクを印刷後、150度にて30分間熱養生し、薄膜を作製した。得られた薄膜を光学顕微鏡(デジタルマイクロスコープVHX−900/株式会社キーエンス)を用いて観察した結果、全ての印刷版も良好な銀薄膜によるラインが形成されていることが確認された。
次に、印刷後の版をトルエンにより拭きあげ洗浄を行ったところ、比較例3の印刷版6においては、紫外線吸収層が溶け、レリーフ部が汚れてしまった上に、一部樹脂レリーフ部が剥離してしまった。
一方、実施例の印刷版3及び4においては、版の洗浄に問題はなく、乾燥後に再度同じ条件にて印刷を行ったところ、一度目の印刷結果と同様の銀薄膜によるラインが形成されていることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】従来の印刷版の断面図を示す模式図。
【図2】従来の紫外線吸収層を用いた印刷版の断面図を示す模式図。
【図3】本発明における印刷版の断面図を示す模式図。
【図4】本発明の印刷版の作製工程を示す模式図。
【図5】本発明における微細凹部を形成するためのフォトマスクのパターンの一例。
【図6】本発明における微細凹部を設けた印刷版を示す模式図。
【図7】印刷版1の樹脂レリーフパターン(線幅50μm)の顕微鏡写真。
【図8】実施例2に使用したフォトマスクパターン。
【図9】印刷版3の樹脂レリーフパターン(線幅100μm)の顕微鏡写真。
【符号の説明】
【0048】
3a 樹脂レリーフ部
3b 紫外線吸収層
3c 支持体
4a フォトマスク
4b 支持体
4c 紫外線吸収層
4d ネガ型感光性レジスト(A)層
4e ネガ型感光性レジストの凸部パターン
4f 凸部パターン下部に残された紫外線吸収層
5a 凸部パターンに相当する光透過部
5b 微小凹部に相当する遮光部
6a ネガ型感光性レジストの凸部パターン
6b 微小凹部
6c 紫外線吸収層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、1.0μm以上50.0μm以下の厚みの紫外線吸収層と、該紫外線吸収層の上に、10μm以上300μm以下の厚みのレジストからなる凸パターンが配置され、且つ、当該レジストの少なくとも一部は、当該紫外線吸収層に混入しており、さらに該凸パターン間の凹部には支持体の表面が露出していることを特徴とする積層構造を有する印刷版。
【請求項2】
該凸パターンの上面に、開口部が25μm以上1600μm以下の面積を有する凹状の窪みを有することを特徴とする請求項1に記載の印刷版。
【請求項3】
(1)支持体上に、
1.0μm以上50.0μm以下の厚みの紫外線吸収層と、
10μm以上300μm以下の厚みのネガ型感光性レジスト(A)層と、
フォトマスク、を
上記記載の順に積層する積層工程、
(2)該積層体のフォトマスク側から、平行光の紫外線で露光する露光工程
(3)引き続き、該フォトマスクを取り去った後、該ネガ型感光性レジスト層(A)
と該紫外線吸収層を同時に現像する現像工程と、
を上記(1)、(2)、(3)の順を経て製造されることを特徴とする印刷版の製造方法。
【請求項4】
該ネガ型感光性レジスト(A)が少なくとも、ラジカル重合性のモノマー、プレポリマー、及び光重合開始剤を含有する液状物であることを特徴とする請求項3に記載の印刷版の製造方法。
【請求項5】
露光工程前の該紫外線吸収層がラジカル重合性物質を含有することを特徴とする請求項3又は4に記載の印刷版の製造方法。
【請求項6】
該支持体が金属シートであることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の印刷版の製造方法。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の印刷版を、該印刷版の凸パターンが外側に向いた状態で複数個配置された円筒状とした後、該凸パターン上面にインクを供給し、引き続き、円筒の円筒軸を中心に転動させることによって被印刷物に対して前記インクを転写する印刷方法であって、前記インクが0.2Pa・s以下の粘度を有し、且つ、大気中に放置することで固形分が変化するものであることを特徴とする印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−19940(P2010−19940A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−178570(P2008−178570)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】