説明

厚さ測定装置

【課題】C形フレームの機械的なドリフトによる距離検出器間の距離の変位を瞬時に測定し、厚さ測定誤差を補正する厚さ測定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】C形フレーム3の腕部に設けられる第1の距離検出器1と第2の距離検出器2との出力から厚さを求める厚さ測定装置であって、C形フレーム3の腕部の下部に設けられ、腕部空間内に、レーザビームの光路にハーフミラーを設けて、当該ハーフミラーの反射した第1のレーザビームの位置の変化を検出する第1のビーム位置変位検出器4aと、当該第1のビーム位置検出器の出力から第1のレーザビームの入射角度の変位と記第1の距離検出器と第2の距離検出器間の距離検出器間の距離の変位と、を求める第1のビーム位置変位処理部4bとを備え、厚さ測定値を自動的に補正するようにした厚さ測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送中の鋼板などの厚さを、レーザ光線を用いた距離検出器を使用して測定する厚さ測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼板などの各種素材の形状や製品などの厚さ測定装置として、レーザビームによる距離検出器を使用したものが普及している。この装置は搬送されている測定対象材の厚さを自動的に、且つ、連続して測定できる。
【0003】
しかもγ線等を使用した厚さ計の様な特別の安全管理が不要で、更に、放射線のビーム径に比べて小さいビーム径であるので、厚さ変化を高分解能で測定することが可能である。そのため、測定対象物の端部近傍の急激な形状変化を精度良く計測したいとする分野でも、実用化が進んでいる。
【0004】
この構成例を図7に示す。図において、1、2は、測定対象物7を挟んで、C形フレーム3の互いに対向する上部、下部の夫々に置かれたレーザ発信器1a、2aを用いた三角測量の原理の基づく距離検出器で、距離検出器1と測定対象物7の間の距離La、及び、距離検出器2と測定対象物7との距離Lbを夫々求め、厚さ演算部25に、夫々の距離検出器1、2との間の設定距離Lを予め入力して置き、この設定距離L、及び求めた距離La、Lbから測定対象物7の厚さtを、t=L−La−Lbとして、演算により求める厚さ演算部25とを備える。
【0005】
尚、夫々の距離検出器1、2は、レーザ発振器1a、2a、図示しないCCDカメラ等の位置センサを備える受光器1b、2b、及び図示しない距離演算器で構成されている。
【0006】
このような厚さ測定装置の用途の中に、例えば、厚板等の大きな形状の鋼板の厚さ測定が有る。長い腕部を備えるC形フレームの場合、周囲温度の変化によって、設定距離Lがドリフトする問題が有った。
【0007】
そこで、このドリフトを除くために鋼板の測定インターバル間のアイドルタイムを利用して、校正基準サンプルをC形フレームの空間に高速度で設定して、校正する機械的校正装置が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3880909号公報(図1、第1頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示された方法は、機械的な構造であることから、校正に必要な時間は少なくとも数秒を要するので、アイドルタイムがこれ以下の場合には、校正が出来なくなる問題があった。
【0010】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、機械的な校正装置を使用せず、C形フレームの機械的なドリフトによる距離検出器間の距離の変位を瞬時に測定し、厚さ測定誤差を補正する厚さ測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、実施例の厚さ測定装置は、測定対象物を挟むC形フレームの上下の互いに対向する腕部の上部に配置され、該測定対象物の表面に対して垂直方向から第1のレーザビームを照射して該測定対象物との距離を求める第1の距離検出器と、前記測定対象物を挟む前記C形フレームの上下の互いに対向する腕部の下部に配置され、該測定対象物の裏面に対して垂直方向から第2のレーザビームを照射して該測定対象物との距離を求める第2の距離検出器と、前記第1の距離検出器の出力及び前記第2の距離検出器の出力から厚さを求める厚さ演算部と、を備える厚さ測定装置であって、前記腕部の下部に設けられ、前記C形フレーム腕部空間内に、前記測定対象物が存在しない期間において、前記第1のレーザビームの光路にハーフミラーを設けて、当該ハーフミラーの反射した前記第1のレーザビームの位置の変化を検出する第1のビーム位置変位検出器と、当該第1のビーム位置検出器の出力から前記第1のレーザビームの入射角度の変位と、前記第1の距離検出器と前記第2の距離検出器間の距離検出器間の距離の変位と、を求める第1のビーム位置変位処理部と、を備え、求めた前記入射角度の変位と、前記距離検出器間の距離の変位とに基づいて、前記厚さ測定部で求めた厚さ測定値を自動的に補正する。
【発明の効果】
【0012】
上記構成の厚さ測定装置によれば、機械的な校正装置を使用せず、C形フレームの機械的なドリフトによる距離検出器間の距離の変位を瞬時に測定し、厚さ測定誤差を補正する厚さ測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1の厚さ測定装置の構成図。
【図2】実施例1の厚さ測定装置の測定原理を説明する光学設定図。
【図3】実施例2の厚さ測定装置の構成図。
【図4】実施例2の厚さ測定装置の測定原理を説明する光学設定図。
【図5】実施例3の厚さ測定装置の構成図。
【図6】実施例3の厚さ測定装置の測定原理を説明する光学設定図。
【図7】従来の厚さ測定装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0015】
図1及び図2を参照して、実施例1の厚さ測定装置100について説明する。図1は、実施例1の構成図を示し、図2は図1の構成で設定する光学寸法図を示す。
【0016】
本補正の原理は、C形フレーム3の腕部の上部の第1の距離検出器1のビーム位置の変位が大きいことに着目し、変位の少ない腕部の下部の第2の距離検出器2の光学基盤上に第1のレーザビーム変位を検出する位置センサを備えて微小な変位を検出し、厚さ演算部20で検出した変位を補正するものでる。
【0017】
図1に示す厚さ測定装置100は、検出部10と厚さ演算部20とを備える。検出部10は、測定対象物7を挟むC形フレーム3の上下の互いに対向する腕部の上部に配置され、測定対象物7の表面に対して垂直方向から、レーザ発信器1aから第1のレーザビームを照射して該測定対象物7との距離を求める第1の距離検出器1と、測定対象物7を挟むC形フレーム3の上下の互いに対向する腕部の下部に配置され、該測定対象物7の裏面に対して垂直方向から、レーザ発信器2aから第2のレーザビームを照射して該測定対象物7との距離を求める第2の距離検出器2とを備える。
【0018】
さらに、腕部の下部に設けられ、C形フレーム3の腕部空間内に、測定対象物7が存在しない期間において、第1のレーザビームの光路にハーフミラーを設けて、当該ハーフミラーの反射した一方の第1のレーザビームの位置の変化を検出する第1のビーム位置変位検出器4aと、第1のビーム位置検出器4aの出力から第1のレーザビームの入射角度の変位と、第1の距離検出器1と第2の距離検出器2間の距離検出器間の距離の変位とを求める第1のビーム位置変位処理部4bと、を備える。
【0019】
そして、厚さ演算部20は、第1の距離検出器1の出力及び第2の距離検出器2の出力から厚さを求めるとともに、さらに、求めた入射角度の変位と、距離検出器間の距離の変位とに基づいて、求めた厚さ測定値を補正する。
【0020】
次に、第1のビーム位置変位検出器4aと第1のビーム位置変位処理部4bの詳細について説明する。第1のビーム位置変位検出器4aは、x軸方向に照射される第1のレーザビームの光路に設けられ、当該第1のレーザビームの光路をy軸左の水平方向に偏向する第1のハーフミラーM1と、第1のハーフミラーM1で反射した第1のレーザビームを透過及び反射させ、第1のハーフミラーM1と平行に設ける第2のハーフミラーM2とを備える。
【0021】
さらに、第2のハーフミラーM2を透過した第1のレーザビームの位置を検出する第1の位置センサD1と、第2のハーフミラーM2を反射した第1のレーザビームの位置を検出する第2の位置センサD2とを備える。
【0022】
この時、第1のハーフミラーM1と第1の位置センサD1との間の光路長bと、第1のハーフミラーM1と第2の位置センサとの間の光路長(c+d)を異なる位置に設定する。
【0023】
このように設定された厚さ測定装置100の光学系を図2に示す。図2は、点P0からx軸方向に照射された第1のレーザビームが、x軸方向(光軸方向)に光路長(距離検出器間の距離)の変位mが減少し、y軸方向にnシフトし、点P1を中心にして光軸が微小角∠θ回転した位置にドリフトした場合を図示したものである。
【0024】
この場合第1の位置センサD1は、第2の位置センサD2は夫々Y1、Y2なる変位を測定する。この変位は、
Y1= n+tanθ・(a+b) −m・tanθ (1)
Y2= n+tanθ・(a+c+d)−m・tanθ (2)
なる値を示す。
【0025】
したがって、ビーム位置変位処理部4bは、レーザビームの入射角の変位∠θを、下記式で求める。
∠θ=tan−1(Y2−Y1)/(c+d−b) (3)
厚さ演算部20では、補正前の厚さt0に対して、補正された厚さtを、下記式から求める。
t=t0−L(1/cosθ−1) (4)
mも、上記(1)、(2)式から求めることが出来るが、一般にmは、厚さ測定装置100の構成においては、m≪a、m≪b、m≪cであるので無視できる。
【0026】
即ち、第1のビーム位置変位処理部4aは、第1の位置センサD1及び第2の位置センサD2で検出したビーム位置の変位(Y1、Y2)から、入射角度の変位∠θと、距離検出器間の距離の変位mとを機械的な設定時間を要することなく演算により瞬時に求めることが出来る。
【0027】
本実施例の説明では、ビーム位置の変位は、図1に示すように、紙面に平行なx−y平面での変位として説明したが、紙面に直交する方向の変位がある場合には、位置センサD1、及び位置センサD2を2次元の位置センサとすることで、3次元的な変位の補正も可能であることは言うまでも無い。
【実施例2】
【0028】
図3、図4を参照して、実施例2について説明する。実施例2が実施例1と異なる点は、実施例1においては、距離検出器間の距離の変位mが微小であるので、無視できるとしたが、実施例2は、距離検出器間の距離の変位mは、高分解能でこの値を測定する構成としたことにある。
【0029】
図3に示すように、実施例1に示す構成において、さらに、C形フレーム3の腕部の上部に設けられ、C形フレーム3の腕部空間内に、測定対象物7が存在しない期間において、第1のレーザビームの光路に設けられ、第1のレーザビームを異なる入射角度で設定する一対のハーフミラー(M3、M4)を備えるビーム偏向部4cと、腕部の下部に設けられ、異なる入射角度で照射された前記レーザビームの位置を検出する第3の位置センサD3とを備え、第3の位置センサD3の出力に基づいて、第2のビーム位置変位処理部4bによって距離検出器間の距離mの変位を求める。
【0030】
第3の位置センサは、距離検出器2の基盤とは、異なる基盤に設けることも可能であるが、同一の基盤上に設けるのが好ましい。
【0031】
図4は、図3の構成における第1のレーザビームの光学系を図示したものである。一対の第3、第4のハーフミラーM3、M4によって、第1のレーザビームを入射角∠θ2に偏向する。第3の位置センサの出力D3では、この場合の変位(Y3−Y0)として、変位を高分解能で測定できるように拡大できるので微小な距離検出器間の距離mであっても、高精度で測定可能である。
【0032】
ビーム位置変位処理部4bでは、下記(5)式からmを求めることが出来る。
m=(Y3−Y0)・tanθ (5)
【実施例3】
【0033】
図5、図6を参照して、実施例3について説明する。実施例3が実施例1と異なる点は、実施例1においては、2つの異なる光路長に2つの位置センサを設けて、2つのビーム位置の変位から、入射角度の変位∠θと、距離検出器間の距離の変位mとを演算により求めたが、実施例3においては、第1のレーザビームの光路に一対のハーフミラーM5、M6を備えて、異なる光路長の信号を1つの位置センサで検出するようにし、構成をシンプルにしたことにある。
【0034】
詳細には、前記第1のビーム位置変位検出器D1は、第1のレーザビームの光路に設け、光路を水平方向に偏向する第1のハーフミラーM1と、第1のハーフミラーM1で反射した第1のレーザビームを透過させ、第1のハーフミラーと平行に、さらに、予め設定される距離fで設ける第5、第6のハーフミラー(M5、M6)と、第3、第4のハーフミラー(M5、M6)を透過した第1のレーザビームの位置を検出する第1の位置センサD1を備え、1つの第1の位置センサD1で異なる光路長の位置信号を同時に検出する。
【0035】
第1のビーム位置変位処理部4bは、第1の位置センサで検出した2つのビーム位置の変位から、入射角度の変位を求めるようにしたことにある。
【0036】
このように構成された、光学系を図6に示す。この図に示すように、異なる位置で検出される減少された出力の第1のレーザビームの出力Y2は、下記(6)式で求めることが出来る。
【0037】
Y2=n+tanθ(a+b+2f)−m・tanθ (6)
第1の位置センサD1におけるY2の出力はY1の出力に比べてハーフミラー間で減衰される分その出力は小さくなるが、第1のレーザビームのパワーを適宜調整することで最適な検出とすることが可能である。
【0038】
尚、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明と均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0039】
1、2 距離検出器
1a、2a レーザ発信器
1b、2b 受光器
3 C形フレーム
4a 第1のビーム変位検出器
4b ビーム位置変位処理部
4c ビーム偏向部
4d 第2のビーム変位検出器
7 測定対象物
10、15 検出部
20、25 厚さ演算部
100 厚さ測定装置
M1、M2、M3、M4 ハーフミラー
D1、D2、D3、D4, 位置センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物を挟むC形フレームの上下の互いに対向する腕部の上部に配置され、該測定対象物の表面に対して垂直方向から第1のレーザビームを照射して該測定対象物との距離を求める第1の距離検出器と、
前記測定対象物を挟む前記C形フレームの上下の互いに対向する腕部の下部に配置され、該測定対象物の裏面に対して垂直方向から第2のレーザビームを照射して該測定対象物との距離を求める第2の距離検出器と、
前記第1の距離検出器の出力及び前記第2の距離検出器の出力から厚さを求める厚さ演算部と、
を備える厚さ測定装置であって、
前記腕部の下部に設けられ、前記C形フレーム腕部空間内に、前記測定対象物が存在しない期間において、前記第1のレーザビームの光路にハーフミラーを設けて、当該ハーフミラーの反射した前記第1のレーザビームの位置の変化を検出する第1のビーム位置変位検出器と、
当該第1のビーム位置検出器の出力から前記第1のレーザビームの入射角度の変位と、前記第1の距離検出器と前記第2の距離検出器間の距離検出器間の距離の変位と、を求める第1のビーム位置変位処理部と、
を備え、
求めた前記入射角度の変位と、前記距離検出器間の距離の変位とに基づいて、前記厚さ測定部で求めた厚さ測定値を自動的に補正するようにした厚さ測定装置。
【請求項2】
前記第1のビーム位置変位検出器は、前記レーザビームの光路に設けられ、当該レーザビームの光路を水平方向に偏向する第1のハーフミラーと、
当該第1のハーフミラーで反射した前記レーザビームを透過及び反射させる当該第1のハーフミラーと平行に設ける第2のハーフミラーと、
前記第2のハーフミラーを透過した前記レーザビームの位置を検出する第1の位置センサと、前記第2のハーフミラーを反射した前記レーザビームの位置を検出する第2の位置センサと、
を備え、
前記第1のハーフミラーと前記第1の位置センサとの間の光路長と、前記第1のハーフミラーと前記第2の位置センサとの間の光路長とを異なる値に設定して、
前記第1のビーム位置変位処理部は、前記第1の位置センサ及び前記第2の位置センサで検出した前記第1のレーザビーム位置の変位から、前記入射角度の変位と、前記距離検出器間の距離の変位と、を求めるようにした請求項1記載の厚さ測定装置。
【請求項3】
さらに、前記腕部の上部に設けられ、前記第1のレーザビームの光路に設けられ、当該第1のレーザビームを異なる入射角度で設定する一対の第3、第4のハーフミラーを備えるビーム偏向部と、
前記腕部の下部に設けられ、異なる入射角度で照射された前記第1のレーザビームの位置を検出する第3の位置センサと、
を備え、
前記第3の位置センサの出力に基づいて、前記距離検出器間の距離の変位を求める前記第2のビーム位置変位処理部と、を備えた請求項1記載の厚さ測定装置。
【請求項4】
前記第1のビーム位置変位検出器は、前記レーザビームの光路に設け、当該レーザビームの光路を水平方向に偏向する第1のハーフミラーと、
当該第1のハーフミラーで反射した前記レーザビームを透過させる当該第1のハーフミラーと平行に、予め設定される距離で設ける第5、第6のハーフミラーと、
前記第5、第6のハーフミラーを透過した前記レーザビームの位置を検出する第1の位置センサと、
を備え、
前記第1のビーム位置変位処理部は、前記第1の位置センサで検出した前記ビーム位置の変位から、前記入射角度の変位を求めるようにした請求項1記載の厚さ測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−163419(P2012−163419A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23364(P2011−23364)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】