説明

厚み計

【課題】 ピッチの付着を軽減するとともにセンサの磨耗延命をはかった厚み計を提供する。
【解決手段】 制御手段からの指令によりシートの片面もしくは両面をターゲットで挟んで厚さを測定する厚み計において、
前記制御手段にスキャン監視機能を設け、このスキャン監視機能の出力に基づいて前記ターゲットを間欠的にシートに接触させて測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙やフイルムなどのシート状の物質の厚さをオンラインで測定する両面接触式厚さ計(キャリパ計)に関し、紙を押圧するセンサヘッドの長寿命化をはかった厚み計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりシートの片面もしくは両面を挟んで厚さを測定する装置としては下記のものが知られている。
【0003】
【特許文献1】特開平3−161590
【特許文献2】特開2001−82904
【0004】
上記特許文献1に記載されたものは、複数のフレームを紙の流れ方向に設置したものである。そして、これらフレームの間に乾燥機や塗工機を設置し、これら装置による紙質の変化を検出するものである。
この文献1では、特定のフレームに対して、紙の送り方向を基準にいずれのフレームが上流にあり、いずれのフレームが下流にあるかが割当てられる。そして、特定フレームに上流/下流のフレームが存在しているか否かに応じて報知手段、輸送時間演算手段またはセンサ走査指令手段を設けたものである。
【0005】
上記特許文献2に記載されたものは、用紙の種々の厚さを適正な精度で測定できるようにしたもので、
基板に支持されたステッピングモータと、基板に近づいたり、離れたり往き来自在に備わる押圧基板と、この押圧基板に設けられ、かつ被測定物に押圧接触する接触突起と、前記ステッピングモータのロータシャフトに設けた雄ネジ部と、この雄ネジ部に螺合し、かつ前記押圧基板に設けられる雄ネジ部と、前記押圧基板の回り止めをするとともに往き来する直線方向の動きを案内する回り止め案内部材と、前記基板と前記押圧基板の対向面に設けられ、かつステッピングモータの回転で押圧基板が基板に近づいたり、離れたりする往来により開閉するスイッチを有するギャップ測定センサを備えたものである。
【0006】
図3(a,b)はこのような両面接触式厚み計の要部を示す構成図であり、図3(a)は紙厚を測定していない(ターゲットがオフでシートに接触していない)状態、図3(b)は測定(ターゲットがオンでシートに接触している)状態を示している。
これらの図において、1は測定対象のシート状物質(紙,フィルムなど)であり、上ヘッド2および下ヘッド3の間に配置されている。
【0007】
4は上ヘッド空気室で、この空気室内にはベローズ5が配置されている。6はベローズの中心部を貫通して配置された芯棒で、この芯棒の一端には良導体からなるターゲット7が取り付けられている。
一点差線で囲った8a,8bはシート1の有無を検出する光センサで、上ヘッドおよび下ヘッドに配置された発光素子と受光素子からなる。9は下ヘッドを構成するセンサコイル(図示省略)が収納された変位電圧変換手段である。変換された電気信号は増幅器10により増幅される。11は下部センサアセンブリで、上部にセンサ基準面12を有している。13は光センサの出力に基づいてターゲットのオンオフを指令する制御手段である。
【0008】
図3(b)は制御装置13からターゲット7に対してオン指令が発信されシート1の厚さを測定する状態を示すもので、オン指令の発信により空気源(図示せず)から空気室4内に圧縮空気が導入される。その結果、ベーローズ5が圧縮され芯棒6がセンサ基準面11側に移動しシート1を所定の圧力で押圧する。ここで、センサコイルに高周波電流を流すと、良導体であるターゲット7に渦電流が発生しコイルの中の磁束(インピーダンス)が変化する。インピーダンスの変化量はコイル表面からターゲット7までの距離の自然対数に比例するので、このインピーダンスの変化量を検出することにより紙の厚さを知ることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、このような構成の厚さ計においてはシート状物質を片面または両面で挟んでターゲットと紙を接触させて滑走させながら測定するため、測定物の材質によってはピッチ(紙紛)の付着やターゲット部の磨耗が発生する。そのためターゲット部を定期的に交換しなければならないという問題があった。
【0010】
本発明は、測定を間欠して(間引いて)行うことにより、ピッチの付着を軽減するとともにセンサの磨耗延命をはかったものである。このことによりセンサ部品(ターゲット)の延命化をはかってピッチの発生を少なくし、更に、ターゲットをオンオフするタイミングをコントロールすることによりシート状の製品を間欠測定しながらプロファイル制御が可能なシート状物質の厚み計を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の厚み計の発明は、
制御手段からの指令によりシートの片面もしくは両面をターゲットで挟んで厚さを測定する厚み計において、
前記制御手段にスキャン監視機能を設け、このスキャン監視機能の出力に基づいて前記ターゲットを間欠的にシートに接触させて測定することを特徴とする。
【0012】
請求項2においては、
制御手段からの指令によりシートの片面もしくは両面をターゲットで挟んで厚さを測定する厚み計において、
前記制御手段にイベント監視機能を設け、このイベント監視機能の出力に基づいて前記ターゲットを間欠的にシートに接触させて測定することを特徴とする。
【0013】
請求項3においては、請求項1または2に記載の厚み計において、
イベント監視機能は枠替え、紙切れ、出力安定度のいずれかを含むことを特徴とする。
【0014】
請求項4においては、請求項1乃至3のいずれかに記載の厚み計において、
ターゲットがオフとなる前の測定値を保持しておきプロファイルを連続して表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したことから明らかなように請求項1乃至4の発明によれば次のような効果がある。本発明では、シートの片面もしくは両面をターゲットで挟んで厚さを測定する厚み計において、前記ターゲットは間欠的に前記シートに接触させて測定する。また、イベントに応じてターゲットをオンオフするタイミングをコントロールする。
その結果、センサの磨耗が少なくなりセンサ部品(ターゲット)の延命化をはかることができる。更にピッチの発生をすくなくすることができ、シート状の製品を間欠測定しながら連続的なプロファイル制御が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明の実施形態の一例を示す要部構成図で、図3に示す従来例とは制御手段20の機能にスキャン回数監視機能およびイベント監視機能を設けた点が異なっている。
図2は図1で示す本発明の制御手段20を用いて間欠測定をしている状態を示すターゲットの軌跡を示す説明図である。
【0017】
図2において、上下ヘッド2,3はシートを挟んで設けられたフレーム15に沿って矢印Y方向に往復運動を行う。非測定の状態では上下ヘッド2,3はフレームの端部に退避している(RETIRE位置)。矢印Xはシートの流れ方向を示している。ここで、aで示す線分はヘッドとシートの動きを示すもので、そのうち太線で示すa’の部分はターゲット7(図1参照)がシート1に接触している状態を示し、bで示す細線の部分は非接触の状態を示している。
【0018】
即ち、本発明では上下ヘッド(2,3)がシート幅の一端から他端に移動する(FRONTからBACK)までを1スキャンとして定義しこれを監視する。
この実施例では2回分のスキャンで測定を行った後にスキャン3回分の測定を休止するというタイミングで測定を行っている。この測定・非測定のタイミングは制御手段20で任意に変更可能とされている。
【0019】
なお、非測定状態のH1,H2,H3の部分の値は前回値をホールドしておく。このことにより連続したプロファイルが作成可能となる
制御手段20は枠替え,シート切れのイベント状態ではターゲットをオフとしてリタイア位置に退避させる。枠替え,シート切れのイベント発生後は測定状態に復帰するが数スキャン測定し、プロファイルが安定している(例えば測定値が2σ以内)状態ではターゲットをオフとして測定を中止し、タイマーにより一定時間ごとにオン指令を出力する。
【0020】
上述の構成によれば、ターゲットは設定されたタイミングで間欠的に前記シートに接触させて測定する。また、イベントに応じてターゲットをオンオフするタイミングをコントロールすることによりシート状の製品を間欠測定しながら連続的なプロファイル制御が可能となる
その結果、センサの磨耗が少なくなりセンサ部品(ターゲット)の延命化をはかることができピッチの発生をすくなくすることができる。更に、移動体であるシートを定期的に挟む回数が増加するのでピッチ付着後のセルフクリーニング効果もある。
【0021】
なお、以上の説明は、本発明の説明および例示を目的として特定の好適な実施例を示したに過ぎない。したがって本発明は、上記実施例に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で更に多くの変更、変形を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態の一例を示す厚み計の要部構成図である。
【図2】図1の厚み計のターゲットの軌跡を示す説明図である。
【図3】従来の厚み計を示す要部構成説明図である。
【符号の説明】
【0023】
1 シート状物質
2 上ヘッド
3 下ヘッド
4 空気室
5 ベローズ
6 芯棒
7 ターゲット
8 光センサ
9 変位電圧変換手段
10 増幅器
11 下部センサアセンブリ
12 センサ基準面
13,20 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御手段からの指令によりシートの片面もしくは両面をターゲットで挟んで厚さを測定する厚み計において、
前記制御手段にスキャン監視機能を設け、このスキャン監視機能の出力に基づいて前記ターゲットを間欠的にシートに接触させて測定することを特徴とする厚み計。
【請求項2】
制御手段からの指令によりシートの片面もしくは両面をターゲットで挟んで厚さを測定する厚み計において、
前記制御手段にイベント監視機能を設け、このイベント監視機能の出力に基づいて前記ターゲットを間欠的にシートに接触させて測定することを特徴とする厚み計。
【請求項3】
イベント監視機能は枠替え、紙切れ、出力安定度のいずれかを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の厚み計。
【請求項4】
ターゲットがオフとなる前の測定値を保持しておきプロファイルを連続して表示することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の厚み計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−242918(P2006−242918A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−62976(P2005−62976)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】