説明

原料融液供給装置、多結晶体または単結晶体の製造装置および製造方法

【課題】原料融液から各種の単結晶体または多結晶体を製造する場合、原料融液を耐熱性容器中に供給する際に原料融液の液面に揺れが生じることを防止できる原料融液供給装置を提供する。
【解決手段】原料融液403を貯留する第1の耐熱性容器3と、第2の耐熱性容器2と、該第2の耐熱性容器2中の原料融液401を前記第1の耐熱性容器3中に供給するための供給管6とを備え、前記供給管6の排出口601が前記第1の耐熱性容器3中の原料融液403に接しており、前記第2の耐熱性容器2中の原料融液401が前記供給管6の内壁に沿って流れて前記第1の耐熱性容器3中に供給される。このとき、供給管中の原料融液402は供給管6の内壁に沿って流れることで緩やかな速度で移動し、緩やかな速度のまま第1の耐熱性容器中の原料融液403へ流入するため、原料融液403の液面に生じる揺れの程度を減少させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性容器中に貯留された半導体などの原料融液から単結晶体または多結晶体を製造する方法において、原料融液を耐熱性容器中に供給するための機構(以下、原料融液供給装置と略すことがある。)に関し、さらに詳しくは、得られる単結晶体または多結晶体の品質や製造効率を高めることのできる原料融液供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シリコン、GaAsといった半導体の単結晶体は、IC、LSIなどの集積回路の基板材料として広く用いられている。また、半導体の多結晶体は、太陽電池などの基板材料として広く用いられている。そして、そのような単結晶体および多結晶体の製造方法、製造装置については種々のものが提案されている。
【0003】
太陽電池の作製などに用いられるシリコン多結晶体は、例えば、特開平11−21120号公報(特許文献1)、特開平11−92284号公報(特許文献2)に開示されているようなキャスト法により製造されている。キャスト法は、坩堝内で溶融したシリコンを坩堝底面から徐々に冷却することによってシリコン融液を固化させ、坩堝底面から上方に向けて成長した長い柱状結晶構造を主体とするインゴット(凝固塊)を製造する方法である。
【0004】
また、ウエブ(web)法やEFG(edge-defined film-fed growth)法によるシリコン多結晶体からなるシリコンリボンの成長方法も研究されている。また、近年ではより速い成長を目指して、シリコン融液から直接的にシリコン多結晶体からなる薄板状のシリコンリボンを作製するRGS(ribbon growth on substrate)法が注目されるようになっている(26thPVSC,1997,pp.91−93)。RGS法の原理は、凝固成長面に近い面からの高速熱移動(抜熱)によってシリコンリボンの高速成長を行うものである。具体的には、溶融シリコンの側部周囲を支える側部支持枠に対してその開放下面を支える下面支持平板を冷却しながら相対的に横方向に移動させることにより、その下面支持平板上にシリコンリボンを高速成長させる方法である。
【0005】
さらに別のシリコン多結晶体からなる基板を製造する方法としては、シリコン融液に下地板を接触させて液相からの凝固によって直接的にシート状のシリコン基板を得る方法(シート形成法)が知られており、例えば、特開2001−223172号公報(特許文献3)、特開2001−247396号公報(特許文献4)等に開示されている。
【0006】
また、単結晶シリコンの製造方法の一つとしては、チョクラルスキー法(CZ法)が知られている。CZ法では、例えば、半導体単結晶製造装置のチャンバ内に設置したるつぼ軸の上端にるつぼ受けを介して黒鉛るつぼを載置し、前記黒鉛るつぼ内に収容した石英るつぼに多結晶シリコンを充填した上、前記黒鉛るつぼの周囲に設けたヒータによって多結晶シリコンを加熱溶融して融液とする。そして、シードチャックに取り付けた種子結晶を前記融液に浸漬し、シードチャックおよび黒鉛るつぼを同方向または逆方向に回転しつつシードチャックを引き上げることによって、単結晶シリコンを成長させることができる。
【0007】
上述のような半導体などの原料融液から単結晶体および多結晶体を製造する方法において、特に、連続的に結晶体を製造する場合(連続追装方法)においては、結晶体の製造により消費された原料融液を随時容器外から供給する必要がある。一般に、これらのシリコン融液の供給を行うためには、ヒータにより固体原料(例えば、棒状の多結晶シリコン)を溶融して、原料融液とし、その液滴を上方から耐熱性容器に滴下するタイプの原料融液供給装置が、耐熱性容器の上方に備えられていることが多い。しかし、かかる従来の原料融液供給装置においては、原料融液の液滴が落下するときに耐熱性容器中の原料融液の液面に揺れが生じることによって、育成中のシリコン結晶に悪影響を及ぼし、単結晶体および多結晶体の製造が困難となったり、結晶特性が劣化するといった問題があった。また、シート形成法のように融液中から直接にシリコン板が形成される方法においては、製造されるシリコン板の表面形状等に悪影響を及ぼす恐れもある。
【0008】
特開平7−277872号公報(特許文献5)には、連続チャージ法を用いて均質な半導体単結晶を連続的に製造する半導体単結晶製造装置において、原料融液の液滴が落下する部分の融液を非円形の曲線によって囲まれた形状の供給管で覆うことにより、液滴の落下による融液液面の揺れが周囲に伝播しないようにした原料融液供給装置が開示されている。しかしながら、かかる機構では、根本的に原料融液の液滴が落下することによって融液液面の揺れが生じることに変わりはなく、周囲の融液液面の揺れを完全に防止することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−21120号公報
【特許文献2】特開平11−92284号公報
【特許文献3】特開2001−223172号公報
【特許文献4】特開2001−247396号公報
【特許文献5】特開平7−277872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、各種の単結晶体または多結晶体を耐熱性容器中の原料融液から製造する方法に用いられる原料融液供給装置において、特に複雑な機構を必要とせずに、原料融液を耐熱性容器中に供給する際に原料融液の液面に揺れが生じることを防止できる原料融液供給装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、原料融液を貯留する第1の耐熱性容器と、第2の耐熱性容器と、該第2の耐熱性容器中の原料融液を前記第1の耐熱性容器中に供給するための供給管とを備え、前記供給管の排出口が前記第1の耐熱性容器中の原料融液に接しており、前記第2の耐熱性容器中の原料融液が前記供給管の内壁に沿って流れて前記第1の耐熱性容器中に供給されることを特徴とする原料融液供給装置である。
【0012】
本発明においては、前記原料融液が前記供給管内を流れている状態において、前記第2の耐熱性容器中の原料融液の液面が前記第1の耐熱性容器中の原料融液の液面よりも高い位置にあることが好ましい。
【0013】
また、前記第2の耐熱性容器に前記供給管の取込口が接続され、該取込口が前記第2の耐熱性容器に貯留された原料融液の液面と同じ高さに位置することが好ましい。
【0014】
また、前記供給管の少なくとも一部が水平方向に対して下向きに傾斜していることが好ましい。また、前記供給管内を加熱するための加熱機構をさらに備えることが好ましい。
【0015】
前記原料融液を前記第1の耐熱性容器に供給する際に、前記原料融液を沿わせる側の供給管の内壁と対する壁面との距離を長くすることが好ましい。
【0016】
また、前記第1の耐熱性容器中に貯留された原料融液液面と、第2の耐熱性容器中に貯留された原料融液液面との液面差を小さくすることが好ましい。
【0017】
さらに、本発明は上記の原料融液供給装置を備えた多結晶体または単結晶体の製造装置にも関する。
【0018】
さらに、本発明は、上記の原料融液供給装置を用いた多結晶体または単結晶体の製造方法にも関し、かかる製法としては、前記第1の耐熱性容器中の原料融液に下地板を接触させて液相状態にある原料融液からの凝固によって直接的に多結晶体からなるシート状の基板を得る方法が挙げられる。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、原料融液を第1の耐熱性容器中に供給する際に原料融液の液面に生じる揺れの程度を減少することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の原料融液供給装置を説明するための模式的な断面図である。
【図2】シート形成法を用いた基板製造装置の一例を示す側断面図である。
【図3】図2に示される基板製造装置の動作状態を示す側断面図である。
【図4】(a1)は第二の実施形態を説明するための供給管9と原料融液42、43を示す縦断面図、図4(a2)は(a1)のA−A面における横断面図、(b)および(c)は第二の実施形態の例を説明するための供給管の断面図である。
【図5】第三の実施形態を説明するための縦断面図である。
【図6】第五の実施形態を説明するための縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第一の実施形態>
本発明は、多結晶体または単結晶体を第1の耐熱性容器に貯留された原料融液から製造する方法において、該第1の耐熱性容器に原料融液を供給する原料融液供給装置である。
【0022】
図1を用いて本実施形態の原料融液供給装置を説明する。図1において、第2の耐熱性容器2には供給管6が接続されており、供給管6の取込口602は第2の耐熱性容器2に貯留された原料融液401の液面と同じ高さに接続され、供給管6の排出口601は第1の耐熱性容器中の原料融液403に接している。このような構造とすることで、固体原料5を第2の耐熱性容器中の原料融液401に補充することにより溢れ出した原料融液4が供給管6の内壁の下側部分に沿って流れ、第1の耐熱性容器中の原料融液403へと供給される。このとき、供給管中の原料融液402は供給管6の内壁に沿って流れることで緩やかな速度で移動し、緩やかな速度のまま第1の耐熱性容器中の原料融液403へ流入するため、原料融液403の液面に生じる揺れの程度を減少させることができる。また第2の耐熱性容器中の原料融液401を液滴して供給しないので、通常シリコンが供給管端部にツララ状に固化するといった問題が発生しない。
【0023】
ここで、供給管傾斜部603はその中心軸が水平方向に対して下向きに傾斜しており、原料融液402が供給管6の内壁の下側部分に沿って流れることによって融液が緩やかに移動することができるように設計されていてもよい。このとき供給管の中心軸と水平方向とのなす角度は、原料融液が供給管の内壁に沿って流れるようなものであれば特に限定されないが、例えば、図1のように供給管傾斜部603が直線的に水平方向との角度を有する構造であってもよく、供給管が少なくとも一部または全部が曲線的に構成されていてもよい。
【0024】
さらに、本発明は、上記の原料融液供給装置を用いた多結晶体または単結晶体の製造方法にも関するものである。多結晶体または単結晶体の製造方法は、耐熱性容器中に貯留された原料融液を用いて該融液を液相から凝固させる等の方法により多結晶体または単結晶体を得る方法であれば、特に限定されるものではないが、例えば、原料融液から単結晶体を製造するチョクラルスキー法(CZ法)や、原料融液から多結晶体を製造するキャスト法、ウエブ法、EFG(edge-defined film-fed growth)法、原料融液に下地板を接触させて液相状態にある原料融液からの凝固によって直接的に多結晶体からなるシート状のシリコン基板を得る方法(シート形成法)が挙げられる。
【0025】
(シート形成法)
シート形成法の一例について基本的な手順を図2、3を用いて以下に説明する。
【0026】
図2を参照して、基板製造装置7は、主室10内に、坩堝3および坩堝を加熱して原料となるシリコンを溶融するための加熱機構(図示せず)を有する。坩堝3には、加熱機構によって溶融した原料融液403が貯留され、その原料融液403に下地板1の表層部を浸漬させる浸漬機構9が配置されている。主室10にはアルゴン等の不活性ガスが導入され、不活性な雰囲気に保たれる。
【0027】
主室10の外壁に取り付けられた昇降機構901には懸垂支柱902が接続されている。昇降機構901内のモータによって、懸垂支柱902は昇降動作を行なうことが可能である。懸垂支柱902は、主室10内へと貫通している。貫通部は、パッキンや磁性流体シールなどによって、主室内外を隔離し、主室内に外気が混入することを防いでいる。懸垂支柱902の先には、回転モータ軸907を有する回転機構903が接続されている。回転機構903の下には、主軸支柱904が2本接続されており、主軸支柱904の下端には主軸905が水平方向に貫通している。この主軸905と、回転機構内のモータ軸とは、動力伝達機構906によって接続されているため、主軸905は回転機構903によって回転動作を行なうことが可能である。動力伝達機構906は、チェーンや、ベルト、ギアなどを使用することができる。主軸905には台座支持部908が接続しており、その先に台座11が接続されている。台座11は、下地板1を保持する部材である。
【0028】
次に、図2および3を用いて、下地板1を原料融液403に浸漬し、下地板表面にシリコン基板を製造する方法を説明する。浸漬機構9が下地板1を把握した後、昇降機構901によって浸漬機構全体を下降しつつ、回転機構903によって台座11を回転させることで、下地板1を矢印802のように動作させ、下地板交換位置801から融液に浸す位置へ移動させる。そのまま、昇降機構901の昇降動作と回転機構903の回転動作を用いて、矢印803のように下地板1を原料融液403へ浸し、下地板の表面にシリコン基板を形成する。この後、シリコン基板を付着させた下地板1は矢印804のように原料融液403から取出される。この後、シリコン基板を付着させた下地板1は、矢印805のように昇降動作および回転動作によって、下地板交換位置801に戻る。一連の動作のうち、昇降動作は矢印806によって示される。シリコン基板と一体の下地板1が高温から冷却される段階で、それらの熱膨張係数差に起因して下地板1とシリコン基板は自然に分離し、または小さい衝撃を下地板1に加えることにより分離され、原料融液の液相からの凝固によって直接的に形成されたシート状のシリコン基板が得られる。
【0029】
このようなシート形成法によって得られるシリコンシートの平均厚さは、100μmから1mmの範囲内に設定されることが好ましい。シリコンシートの厚さを100μm以上にすることにより、そのシートを利用した太陽電池の作製プロセスにおいて高いハンドリング性を得ることができる。また、シート厚を1mm以下にすることにより、シートの製造時間を短縮でき、低コストのシリコン板の提供が可能になる。シート製造の容易さの観点からは、シートの平均厚さが200〜600μmの範囲内にあることがより好ましい。
【0030】
かかるシリコン板を直接製造する際に、本発明の原料融液供給装置を用いることにより、表面形状や結晶構造等の良好なシリコン板を得ることができる。なお、シート形成法においては、シリコン板をシリコン融液から直接製造することにより、キャスト法の場合のようなシリコンインゴットのスライス工程等が不要である。
【0031】
シート形成法においては、シリコン多結晶体を形成させる下地板の初期温度をシリコン融点(1415℃)よりも低い温度範囲にすること、適当な厚さのグラファイト材料を用いることによって下地板の熱容量を適切にすること、シリコン融液への下地板の浸漬時間を最適厚さのシリコンシートが得られるよう制御すること、さらには、下地板の表面の微細凹凸形状によりシリコン溶液の固化を促進させる等の基本的条件を設定することが好ましく、これらの条件を設定することにより、下地板の表面上に多結晶シリコンシートを高速かつ安定に形成でき、良好な形状、特性のシリコンシートを得ることができる。
【0032】
シート形成法に用いられる下地板の材質としては、例えば、グラファイトや、その表面に炭化珪素を熱CVD法で形成した下地板を用いることができ、このほかにも、窒化珪素のようなセラミックスや高温に耐える耐熱性金属や、セラミックスを部分的もしくは全面的にコートしたカーボン、セラミックス、または耐熱金属も使用することができ、このような下地板を用いることによって下地板とシリコンシートの剥離が容易に行え、良好な形状、特性のシリコンシートを得ることができる。
【0033】
下地板の表面には、下地板の回転方向に沿った溝、または規則的もしくは不規則に配置した微細凹凸面などが形成されていてもよい。下地板の表面に形成された溝や微細凹凸面は、シリコンシートの成長を高速化する機能を有する。
【0034】
シリコンシート製造時におけるシリコン融液の温度は、シートの成長条件との兼ね合い等に応じて、通常、過冷却温度の1380℃以上からより高温の1600℃までの範囲内(例えば、1450℃)に設定され得る。シリコン融液面が規定の高さになった後に、下地板を浸漬し、表面にシリコンシートを成長させる。
【0035】
本発明において用いられる原料融液は、通常、半導体や金属などの融液であり、半導体の融液としてはシリコン、GaAsなどの融液が挙げられ、中でもシリコン融液であることが好ましい。
【0036】
<第二の実施形態>
本実施形態は、第2の耐熱性容器、第1の耐熱性容器および供給管を備え、融液が供給管内壁に沿って第2の耐熱性容器から第1の耐熱性容器に供給される点で一致するが、第一の実施形態とは供給管の形状が異なる。
【0037】
本実施形態において供給管6の形状を変更することによる、液面の揺れの程度を減ずる効果を説明する。本実施形態における供給管6の水平方向の断面形状は、円形に限らず楕円形でもよく、四角形、六角形などの多角形であっても良いが、原料融液を第1の耐熱性容器3に供給する際に融液を沿わせる内壁と対する壁面との距離を長くしたものである。ここで、例えば供給管の断面が楕円形である場合は、図4(a1)、(a2)、(b)に示すように、原料融液を第1の耐熱性容器に供給する際に融液を沿わせる側の供給管内壁と対する壁面を結ぶ線を楕円の長辺とすることによって、液面に生じた波をある程度管内で広げ、波が弱まったところで供給管内壁によって遮断するため、より液面の揺れの程度を減ずることができる。なお、図4(a1)は供給管6と原料融液402、403を示す縦断面図であり、図4(a2)は(a1)のA−A面における横断面図である。この効果は断面が円形の供給管であれば、円の半径を20mmより大きくすることによって(本実施例のように楕円形であれば長辺が40mmより大きくすることによって)、また断面が多角形の供給管であれば図4(c)のように一辺を長くすることによって同様の効果を生じさせることができる。
【0038】
さらに、チョクラルスキー法(CZ法)のように第1の耐熱性容器が回転するような場合には、供給管の形状を流線形にすることによって、さらに液面の揺れの程度を減ずることができる。
【0039】
<第三の実施形態>
本実施形態は供給管の第2の耐熱性容器に対する取付位置を変更した実施形態である。
【0040】
本実施形態は、第2の耐熱性容器、第1の耐熱性容器および供給管を備え、融液が供給管内壁に沿って第2の耐熱性容器から第1の耐熱性容器に供給される点で一致するが、第一の実施形態とは供給管の取付位置が異なる。本実施形態では供給管が第2の耐熱性容器の底部に取付けられる。
【0041】
ここで、図5に基づき本実施形態に係る原料融液供給装置について説明する。本実施形態にかかわる原料融液供給装置は供給管6が第2の耐熱性容器2の底部に取付けられており、原料融液401が落下する量を制御する仕切り弁605と、原料融液401を供給管内壁面に誘導する融液誘導機構606を備えている。
【0042】
これにより、第2の耐熱性容器から落下した原料融液は融液誘導機構606によって供給管内壁面に誘導され、原料融液402は供給管内壁に沿って第1の耐熱性容器3に供給されることとなる。供給管の取付位置をこのようにすることによって、仕切り弁605等によって融液の流量の調節が容易に行えるようになる。
【0043】
<第四の実施形態>
本実施形態は、第2の耐熱性容器、第1の耐熱性容器および供給管を備え、融液が供給管内壁に沿って第2の耐熱性容器から第1の耐熱性容器に供給される点で一致するが、第一の実施形態とは供給管が第一の耐熱性容器中の原料融液液面に没入している深さが異なる。
【0044】
本発明は原料融液を液滴にして滴下して原料融液を供給する方法に比し、一度に大量の原料融液を供給することも可能であることから、原料融液を供給する際に大きな衝撃を液面に与えることとなる。また、大質量の原料融液が一度に供給される場合には、原料融液の落下によって第一の耐熱性容器中の原料融液液面に与えられる衝撃は、表面的なものだけではなく、供給管6の下から回り込んで液面に揺れを生じさせることとなる。
【0045】
よって、供給管6を第一の耐熱性容器中の原料融液403に深く没入させることにより、供給管6の下から回り込んで伝わる衝撃を遮断し、液面の揺れの程度を減ずることができる。ここで、供給管6を没入させる深さとしては、60mm程度であれば良く、またこれ以上深く没入させても良い。
【0046】
以上説明したように、本実施形態では、供給管6を融液に深く没入させることにより融液の供給に際し、融液が液面に与える衝撃を吸収し、生じる衝撃を緩和することによって液面の揺れの程度を減ずることができる。
【0047】
<第五の実施形態>
本実施形態では第二の耐熱性容器中の原料融液の液面と第一の耐熱性容器中の原料融液の液面との差を小さくする、または供給管の鉛直下向きになっている部分を短くすることによって原料融液の供給に際し、生じる衝撃を小さくすることができる。
【0048】
本実施形態は、第2の耐熱性容器、第1の耐熱性容器および供給管を備え、融液が供給管内壁に沿って第2の耐熱性容器から第1の耐熱性容器に供給される点で一致するが、第一の実施形態とは第2の耐熱性容器と第1の耐熱性容器の液面差の大きさまたは供給管の構成が異なる。
【0049】
図6を用いて本実施形態に係る原料融液供給装置を説明する。本実施形態に係る原料融液供給装置は第2耐熱性容器中の原料融液401の液面と第1の耐熱性容器中の原料融液403の液面との液面差(a)が第一の実施形態に比して小さくなっている。また供給管傾斜部603の傾斜角度が緩やかになっており、さらに供給管鉛直方向形成部604が短く構成されている。供給管傾斜部603の傾斜角度が緩やかになっていることにより、供給管中の原料融液402が受ける進行方向の加速度は小さくなるため、供給管中の原料融液402の速度は小さいものとなる。
【0050】
また、供給管中の原料融液402は供給管鉛直方向形成部604にあるときに最も大きい加速度を受けるため、この長さを短くすることによって供給管中の原料融液402の速度を小さくすることができる。このことより、第2の耐熱性容器2から供給される原料融液が供給管内壁面に沿って移動する速度は第一の実施形態に比して遅くすることができる。
【0051】
よって融液が第1の耐熱性容器に供給される際に、液面に与える衝撃は小さくなり、液面の揺れを減じることができる。ここで、第2の耐熱性容器の液面と第1の耐熱性容器の液面との差は200mm程度であることが望ましい。
【0052】
また、通常は第1の耐熱性容器および第2の耐熱性容器の周囲に該容器内の原料融液を加熱するための加熱装置が設けられているが、本実施形態においては、供給管内にて原料融液が凝固を抑制するために供給管を断熱材で覆うことが好ましい。さらに、前記供給管内を加熱するための供給管加熱機構12をさらに備えていることが好ましい。
【0053】
ここで供給管加熱機構12は抵抗加熱方式でも良く、また同等の能力を有する高周波加熱方式の加熱機構であってもよい。また特に高周波加熱方式を用いる場合、第1の耐熱性容器の融液面上に熱遮蔽板301を備えていることが好ましい。これは融液表面からの輻射熱を遮蔽し、供給管加熱機構12を保護するためである。
【0054】
供給管加熱機構12を供給管6の周囲に設けることにより本実施形態のように供給管の角度を緩やかにし、融液が流れる速度を緩やかにするときに供給管内で原料融液の凝固等が生じることを防止できる。
【0055】
以上今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0056】
1 下地板、2 第2の耐熱性容器、3 第1の耐熱性容器(坩堝)、301 熱遮蔽板、4 原料融液、401 第2の耐熱性容器中の原料融液、402 供給管中の原料融液、403 第1の耐熱性容器中の原料融液、5 固体原料、6 供給管、601 排出口、602 取込口、603 供給管傾斜部、604 供給管鉛直方向形成部、605 仕切り弁、606 融液誘導機構、7 基板製造装置、801 下地板交換位置、9 浸漬機構、901 昇降機構、902 懸垂支柱、903 回転機構、904 主軸支柱、905 主軸、906 動力伝達機構、907 回転モータ軸、908 台座支持部、10 主室、11 台座、12 供給管加熱機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料融液を貯留する第1の耐熱性容器と、第2の耐熱性容器と、該第2の耐熱性容器中の原料融液を前記第1の耐熱性容器中に供給するための供給管とを備え、
前記供給管の排出口が前記第1の耐熱性容器中の原料融液に接しており、
前記第2の耐熱性容器中の原料融液が前記供給管の内壁に沿って流れて前記第1の耐熱性容器中に供給されることを特徴とする原料融液供給装置。
【請求項2】
前記原料融液が前記供給管内を流れている状態において、前記第2の耐熱性容器中の原料融液の液面が前記第1の耐熱性容器中の原料融液の液面よりも高い位置にあることを特徴とする請求項1に記載の原料融液供給装置。
【請求項3】
前記第2の耐熱性容器に前記供給管の取込口が接続され、該取込口が前記第2の耐熱性容器に貯留された原料融液の液面と同じ高さに位置することを特徴とする請求項1または2に記載の原料融液供給装置。
【請求項4】
前記供給管の少なくとも一部が水平方向に対して下向きに傾斜していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の原料融液供給装置。
【請求項5】
前記供給管内を加熱するための加熱機構をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の原料融液供給装置。
【請求項6】
前記原料融液を前記第1の耐熱性容器に供給する際に、前記原料融液を沿わせる側の供給管の内壁と対する壁面との距離を長くしたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の原料融液供給装置。
【請求項7】
前記第1の耐熱性容器中に貯留された原料融液液面と、第2の耐熱性容器中に貯留された原料融液液面との液面差を小さくしたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の原料融液供給装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の原料融液供給装置を備えた、多結晶体または単結晶体の製造装置。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の原料融液供給装置を用いた多結晶体または単結晶体の製造方法。
【請求項10】
前記第1の耐熱性容器中の原料融液に下地板を接触させて液相状態にある原料融液からの凝固によって直接的に多結晶体からなるシート状の基板を得る、請求項9に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−168228(P2010−168228A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10131(P2009−10131)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】