原稿搬送装置、画像読取装置および画像形成装置
【課題】原稿を搬送ベルトにぴったりと吸着させることができ、かつ、搬送ベルトから原稿が剥離するのを抑制することができる原稿搬送装置、画像読取装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】搬送ベルト94の原稿が吸着して搬送される原稿搬送領域の原稿搬送方向最上流から読取位置近傍まで搬送ベルト94に当接するよう、複数の張架ローラに張架された加圧ベルト95を設けている。これにより、原稿が搬送ベルト94に接触した直後に、原稿が搬送ベルト94と加圧ベルト95との当接部に進入し、加圧ベルト95によって搬送ベルト94側へ押圧される。そして、読取位置近傍まで、加圧ベルト95に搬送ベルト94側へ押圧されながら原稿が搬送される。
【解決手段】搬送ベルト94の原稿が吸着して搬送される原稿搬送領域の原稿搬送方向最上流から読取位置近傍まで搬送ベルト94に当接するよう、複数の張架ローラに張架された加圧ベルト95を設けている。これにより、原稿が搬送ベルト94に接触した直後に、原稿が搬送ベルト94と加圧ベルト95との当接部に進入し、加圧ベルト95によって搬送ベルト94側へ押圧される。そして、読取位置近傍まで、加圧ベルト95に搬送ベルト94側へ押圧されながら原稿が搬送される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿搬送装置、画像読取装置および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、原稿搬送装置たる自動原稿搬送装置(ADF:オートドキュメントフィーダー)を搭載した画像読取装置が知られている。この画像読取装置は、ADFにより原稿を搬送しながら、画像読取部内部の光源からの光を、透光部材を介して原稿の画像面に照射する。そして、原稿画像面からの反射光を、透光部材を介し撮像素子で画像を読み取る。この種の画像読取装置は、原稿画像読取の際、原稿は透光部材に接触しながら通過するので、原稿の画像面側についたゴミなどの透光部材上への付着が避けられない。さらに、ゴミなどの付着物が透光部材の読取位置に付着した場合には、読み取った画像信号にその影響が現れ、副走査方向に繋がる、いわゆる縦すじとなってしまい、著しい画像劣化となってしまう。
【0003】
特許文献1には、透光部材に対して所定距離を有して対向する無端ベルトと、無端ベルトを帯電させる帯電手段とを備えた画像読取装置が記載されている。特許文献1の画像読取装置は、帯電した無端ベルトに原稿を吸着させ、読取位置において透光部材から所定距離離して原稿を搬送し、この透光部材から離れた原稿画像を読み取る。このように構成することによって、原稿が透光部材と摺擦することなく搬送される。その結果、原稿の画像面側についたゴミなどが透光部材との摺擦によって原稿から脱落して透光部材の読取位置に付着するのを抑制することができる。従って、読取画像に縦すじが生じるのを抑制することができ、読取画像の劣化を抑制することができる。
【0004】
特許文献1に記載の画像読取装置においては、原稿にシワや波打ちなどがあった場合、無端ベルト表面に原稿がうまく吸着せずに、浮きが生じるおそれがあった。このように、原稿に浮きが生じた状態で、読取位置へ原稿が搬送されると、ピントボケが発生するおそれがあった。
【0005】
特許文献2には、読取位置よりも原稿搬送方向上流側にブレード状の可撓性部材を設けた画像読取装置が記載されている。この可撓性部材の先端を無端ベルト表面に当接させ、可撓性部材と無端ベルトとのニップ部に原稿を搬送し、この可撓性部材で原稿を無端ベルト表面に押圧する。これにより、原稿を無端ベルト表面に密着させることができ、原稿をぴったりと無端ベルト表面に吸着させることができる。よって、ピントボケを抑制することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ブレード状の可撓性部材の先端と無端ベルトとの線状のニップを原稿が通過してから、読取位置まで原稿が搬送される間に、原稿が無端ベルトから剥離するおそれがある。以下に、その理由について説明する。
帯電した無端ベルトの電界により、原稿の無端ベルト側の面に無端ベルト表面の帯電極性と逆極性の電荷が集まることで、原稿が無端ベルトの表面に静電吸着する。しかしながら、原稿の無端ベルト側の面に無端ベルト表面の帯電極性と逆極性の電荷が十分に集まり、原稿の無端ベルトへの吸着力が高まるまで、ある程度の時間を要することが後述する実験から明らかになった。特許文献2に記載の画像読取装置においては、原稿が搬送ベルトに当接した直後に、ブレード状の可撓性部材の先端と無端ベルトとの線状のニップを抜ける。このため、線状のニップを抜けた直後は、原稿の無端ベルト側の面に、無端ベルト表面の帯電極性と逆極性の電荷が十分に集まっておらず、まだ、原稿の無端ベルトへの吸着力は弱い。その結果、可撓性部材と無端ベルトとのニップ部を通過した原稿の部分に、無端ベルトから剥離させるような力が生じると、原稿のニップ部出口と読取位置との間の部分が無端ベルトから剥離するおそれがあるのである。
【0007】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、原稿を搬送ベルトにぴったりと吸着させることができ、かつ、搬送ベルトから原稿が剥離するのを抑制することができる原稿搬送装置、画像読取装置および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、複数の張架ローラに張架され、画像読取装置の透光部材に対して所定距離を有して対向配置された搬送ベルトと、該搬送ベルトを帯電させる帯電手段とを備え、上記搬送ベルトに上記原稿を静電吸着させて、上記画像読取装置の読取位置へ原稿を搬送する原稿搬送装置において、上記搬送ベルトの原稿が吸着して搬送される原稿搬送領域の原稿搬送方向最上流から読取位置近傍まで上記搬送ベルトに当接するように、複数の張架ローラに張架される加圧ベルトを設けたことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の原稿搬送装置において、上記搬送ベルトと上記加圧ベルトとの当接部出口から上記読取位置までの原稿搬送経路を、上記当接部出口における原稿搬送方向に沿って直線状にしたことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2の原稿搬送装置において、上記搬送ベルトと上記加圧ベルトとの当接部出口から上記搬送ベルトに隣接し、上記搬送ベルトよりも原稿搬送方向下流側に位置する読取出口ローラ対のニップ入口までの原稿搬送経路を、上記当接部出口における原稿搬送方向に沿って直線状にしたことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3いずれかの原稿搬送装置において、上記加圧ベルトを上記搬送ベルトに対して接離させる接離手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項4の原稿搬送装置において、上記接離手段は、上記加圧ベルトを張架する複数の張架ローラを支持し、装置本体に回動可能に取り付けられたハウジングと、該ハウジングを回動させる回動手段と備え、上記ハウジングの回動の支点を上記加圧ベルトの上記搬送ベルト当接部よりも原稿搬送方向上流側に設けたことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項5の原稿搬送装置において、原稿非搬送時は、上記加圧ベルトを上記搬送ベルトから離間させ、原稿の上記搬送ベルトへの進入に同期して、上記加圧ベルトの原稿搬送方向上流側が上記搬送ベルトに当接するよう上記接離手段を制御する制御手段を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項6の原稿搬送装置において、上記加圧ベルトが、上記搬送ベルトの原稿搬送方向上流側から順に当接するよう構成されており、上記制御手段は、上記加圧ベルトの原稿搬送方向上流側から順に上記搬送ベルトに当接する当接速度が、上記原稿の搬送速度と同じとなるように上記接離手段を制御することを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項4乃至7いずれかの原稿搬送装置において、原稿の搬送異常を検知する異常検知手段と、上記異常検知手段が、搬送異常を検知したら、上記加圧ベルトを上記搬送ベルトから離間するよう上記接離手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項8の原稿搬送装置において、上記搬送ベルトの原稿搬送領域を変形させる変形手段を備え、上記制御手段は、上記異常検知手段が、搬送異常を検知したら、上記搬送ベルトの原稿搬送領域を変形させるよう上記変形手段を制御することを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項9の原稿搬送装置において、上記制御手段は、上記加圧ベルトの上記搬送ベルトからの離間と同期して、上記搬送ベルトの原稿搬送領域を変形させるよう上記変形手段を制御することを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、請求項1乃至10いずれかの原稿搬送装置において、上記加圧ベルトが帯電しにくい部材からなることを特徴とするものである。
また、請求項12の発明は、原稿を搬送する原稿搬送手段と、読取位置で透光部材を介して上記原稿搬送手段によって搬送される原稿の原稿画像を読み取る画像読取手段とを備えた画像読取装置において、上記原稿搬送手段として、請求項1乃至11のいずれかの原稿搬送装置を用いたことを特徴とするものである。
また、請求項13の発明は、請求項12の画像読取装置において、上記透光部材を、上記搬送ベルトに対して接離させる透光部材接離手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項14の発明は、画像読取装置と、該画像読取装置で読み取った原稿画像に基づいて画像を形成する画像形成手段とを備える画像形成装置において、該画像読取装置として、請求項12または13の画像読取装置を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、搬送ベルトへ搬送された原稿は、加圧ベルトによって、搬送ベルト側へ押圧されるので、原稿を搬送ベルト表面に密着させることができ、原稿をぴったりと搬送ベルト表面に吸着させることができる。
また、搬送ベルトの原稿が吸着して搬送される原稿搬送領域の原稿搬送方向最上流から読取位置近傍まで加圧ベルトと搬送ベルトとに挟まれた状態で原稿が搬送される。よって、原稿が搬送ベルトに吸着してからある程度吸着力が高まるまで、加圧ベルトにより原稿が搬送ベルト側へ押圧される。そして、原稿の搬送ベルトへの吸着力がある程度高まってから、原稿が搬送ベルトと加圧ベルトとの当接部を抜ける。その結果、原稿の搬送ベルトに吸着している部分に、搬送ベルトから剥離させるような力が生じても、原稿の搬送ベルトに吸着している部分が、搬送ベルトから剥離するのを抑制することができる。その結果、読取位置で、原稿が搬送ベルト表面から剥離するのを抑制することができ、ピントボケの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係る複写機を示す概略構成図。
【図2】同複写機の画像形成ユニットの内部構成の一部を拡大して示す部分拡大構成図。
【図3】同複写機のスキャナとADFの構成を示す斜視図。
【図4】ADFの要部構成をスキャナの上部とともに示す拡大構成図。
【図5】ADF及びスキャナの電気回路の一部を示すブロック図。
【図6】原稿読取時の第一固定読取部の周辺を示す構成図。
【図7】原稿の搬送ベルトへの接触時間と搬送ベルトの原稿搬送力との関係を示したグラフ。
【図8】ガラス接離機構の構成を示す概略構成図。
【図9】(a)は、ガラス接離機構の構成を示す一部拡大正面図、(b)は一部拡大右側面図。
【図10】プラテンガラスが上方へ持ち上げられたときの第一固定読取部の周辺を示す構成図。
【図11】変形例1の第一固定読取部の周辺を示す構成図。
【図12】加圧ベルトの搬送ベルトに対する接離動作を説明する図。
【図13】加圧ベルト接離機構の概略構成図。
【図14】加圧部材を設けた構成例を示す図。
【図15】搬送ベルトと加圧ベルトとの当接部出口から読取出口ローラ対のニップ部まで原稿が直線状に搬送される構成を示す図。
【図16】加圧ベルトが搬送ベルトの原稿搬送方向上流側から順に当接する構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を、電子写真方式の画像形成装置たる複写機(以下、単に複写機という)に適用した実施形態について説明する。まず、本実施形態に係る複写機の基本的な構成について説明する。図1は、本複写機を示す概略構成図である。図1に示すように、この複写機は、原稿MSの画像を読み取るための画像読取装置たる原稿搬送読取ユニット1と、原稿搬送読取ユニット1で取得された画像データを基に画像形成を行う画像形成手段たる画像形成ユニット2と、画像形成ユニット2に記録材たる転写紙を給紙する給紙ユニット30とを備えている。
【0012】
はじめに、上記画像形成ユニット2の構成について説明する。図2は、画像形成ユニットの内部構成の一部を拡大して示す部分拡大構成図である。図1及び図2に示すように、上記画像形成ユニット2は、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各色のトナー像を形成する4つのプロセスユニット3K、Y、M、Cを備えている。以下添字K、Y、M、Cはブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各色をそれぞれ示す。このプロセスユニット3K、Y、M、Cは、それぞれ各色のトナー像を担持する像担持体である感光体4K、Y、M、Cを備えている。これら各感光体4K、Y、M、Cの周囲には、各感光体4表面を一様に帯電する帯電装置5K、Y、M、Cや、各感光体4表面に形成される静電潜像を現像する現像装置6K、Y、M、Cや、トナー像転写後の各感光体4表面をクリーニングする感光体クリーニング装置7K、Y、M、C等を備えている。プロセスユニット3K、Y、M、Cは、それぞれ、感光体4K、Y、M、Cとその周囲に配設される各種装置とを1つのユニットとして共通の支持体に支持するものであり、画像形成ユニット2本体に対して着脱可能になっている。
【0013】
また、画像形成ユニット2は、各感光体4K、Y、M、Cの一様に帯電された表面に画像情報に応じたレーザ光を照射して静電潜像を形成する光書込装置8を備えている。光書込装置8は、レーザ光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラー等を備え、所定の露光位置において画像データに基づき回転駆動されている各感光体4K、Y、M、Cの表面にレーザ光を主走査方向に走査しながら照射する。
【0014】
また、画像形成ユニット2は、感光体4K、Y、M、Cに形成されたトナー画像を中間転写ベルト9を介して転写紙に転写する転写ユニット10、転写紙上のトナー像を定着せしめる定着装置20等備えている。
【0015】
上記転写ユニット10は、複数のローラにより張架されて図中矢印方向に回転駆動する中間転写ベルト9を備え、感光体4K、Y、M、Cと所定の電圧が印加される一次転写ローラ11K、Y、M、Cとの間に中間転写ベルト9を挟み込んで一次転写ニップを形成する。また、中間転写ユニット10は二次転写バックアップローラ12と所定の電圧が印加される二次転写ローラ13の間に中間転写ベルト9を挟み込んで二次転写ニップを形成している。さらに、中間転写ユニット10は、中間転写ベルト9上に残留する転写残トナーを除去するクリーニング装置14等も備えている。上記プロセスユニット3K、Y、M、Cで形成された感光体4K、Y、M、C上のトナー像は、一次転写ニップで中間転写ベルト9に順次重ね合わされて転写される。中間転写ベルト9上に転写された4色重ね合わせトナー像は、二次転写ニップで転写紙に一括転写されることになる。二次転写ニップを通過後に中間転写ベルト9上に残留する転写残トナーは、クリーニング装置14により除去される。
【0016】
上記転写ユニット10の図中下方には、二次転写ローラ31と駆動ローラ15との間に、無端状の紙搬送ベルト16を掛け渡して無端移動させる紙搬送ユニット17、レジストローラ対18、定着装置20等を備えている。レジストローラ対18は、後述する給紙ユニットにより給紙路19を経て供給された転写紙をローラ間に挟み込み、中間転写ベルト9上の4色トナー像に同期させ得るタイミングで二次転写ニップに送り出す。二次転写ニップを通過してフルカラー画像が転写された転写紙は、中間転写ベルト9から離間して、紙搬送ベルト16に保持されながら、その無端移動に伴って定着装置20へと搬送される。定着装置20に搬送された転写紙は、定着装置20内における加圧や加熱によってフルカラー画像が定着させしめられた後、定着装置20から排紙ローラ対21に送られた後、機外へと排出される。
【0017】
上記紙搬送ユニット17の図中下方には、スイッチバック装置22を備えている。スイッチバック装置22は、片面に対する画像定着処理を終えた転写紙を、切換爪で転写紙の進路を転写紙反転装置側に切り換えて反転させ、再び二次転写ニップに進入させる。
【0018】
また、上記複写機の上記給紙ユニット30は、転写紙を複数枚重ねた紙束の状態で収容する給紙カセット31を多段備え、各給紙カセット31内の一番上の転写紙に給紙ローラ32を押し当てている。選択された給紙ローラ32が回転駆動せしめられると、一番上の転写紙が分離ローラ33で分離されて1枚ずつ給紙路34に向けて送り出される。この給紙路34に送り出された転写紙は、複数の搬送ローラ対35を経て画像形成ユニット2内の給紙路19に導かれ、レジストローラ対18のローラ間に挟み込まれる。
【0019】
以上のように構成される画像形成ユニット2において、次のように画像形成が行われる。例えばブラック用のプロセスユニット3Kでは、帯電装置5Kにより一様に帯電された感光体4Kの表面に、光書込装置8で変調及び偏向されたレーザ光Lが走査されながら照射されて静電潜像が形成される。感光体4K上の静電潜像は、現像装置6Kで現像されてブラック色のトナー画像となる。中間転写ベルト9を挟んで一次転写ローラ11Kに対向する一次転写ニップでは、感光体4K上のトナー像が転写紙に転写される。トナー像が転写された後の感光体4Kの表面は、感光体クリーニング装置7Kでクリーニングされ、次の静電潜像の形成に備えられる。
【0020】
他のプロセスユニット3Y、M、Cについても、上述した画像形成行程が中間転写ベルト9の移動に同期して実行される。一方、給紙カセット31から給送された転写紙は、レジストローラ対19により所定のタイミングで送出されて二次転写ニップに搬送される。または、画像形成ユニット2の側面に設置された手差しトレイ23から給紙された転写紙は、給紙ローラ24によって手差し給紙路内に繰り出され、レジストローラ28により所定のタイミングで送出されて二次転写ニップに搬送される。そして、二次転写ニップでフルカラー画像が一括転写された転写紙は、紙搬送ユニット17によって搬送されて定着装置20でトナー像が定着される。転写紙の第一面だけに画像を形成する片面プリントモードの場合には、排紙ローラ対21のローラ間の排紙ニップに挟み込まれた転写紙がそのまま機外に排出されて排紙トレイ25上にスタックされる。転写紙の両面に画像を形成する両面プリントモードの場合には、排紙ローラ対21に挟み込まれた転写紙が逆方向に戻されて、スイッチバック装置22に進入する。そして、スイッチバック装置22内で上下反転せしめられた後、再び二次転写ニップに送られて、もう片面にも画像の二次転写処理と定着処理とが施された後、排出ローラ21により排紙トレイ25上に排出される。トナー像転写後の中間転写ベルト9は、ベルトクリーニング装置14により残留トナーが除去され、プロセスユニット3による再度の画像形成に備える。
【0021】
以上の作像動作は、4色重ね合わせのフルカラーモードが図示しない操作部で選択された時の動作である。例えば、白黒画像形成モードが操作部で選択された場合には、駆動ローラ以外の支持ローラ等を移動させて、感光体4Y、M、Cを中間転写ベルト9から離間させ、中間転写ベルト9にKトナー像の形成のみを行ってもよい。
【0022】
次に、画像読取装置たる上記原稿搬送読取ユニット1について詳細に説明する。図1に示すように、上記原稿搬送読取ユニット1は、上記画像形成ユニット2上に固定された画像読取手段たるスキャナ40と、これに支持される原稿搬送装置たるADF41とを備えている。スキャナ40は、図示しない原稿の画像を読み取るための読取手段として、移動読取部42と、第1固定読取部43とを有している。上記移動読取部42は、原稿MSに接触するようにスキャナ40のケーシング上壁に固定されたコンタクトガラス45の直下に配設され、光源や、反射ミラー等を備え、図中左右方向に移動なキャリッジ、スキャナ40本体に固定された光学レンズ46a、画像読取センサ46bなどを有している。そして、キャリッジを図中左側から右側に移動させていく過程で、光源から発した光をコンタクトガラス45上に載置された図示しない原稿で反射させた後、複数の反射ミラーを経由させて、スキャナ40本体に固定された画像読取センサ46で受光する。
【0023】
上記スキャナ40内に配設される第1固定読取部43は、スキャナ40のケーシング上壁の一端側に固定された透光部材たるプラテンガラス47の直下に配設され、光源、反射ミラー、CCD等の画像読取センサ等を有している。第1固定読取部43は、後述するADF41によって搬送される原稿MSがプラテンガラス47の上方を通過する際に、光源から発した光を原稿面で順次反射させながら、複数の反射ミラーを経由させて画像読取センサで受光する。これにより、光源や反射ミラー等からなる光学系を移動させることなく、原稿MSの第一面を走査する。
【0024】
図3は、スキャナ40とADF41の構成を示す斜視図である。図3に示すように、ADF41は、筐体たる本体カバー48に、読取前の原稿MSを載置するための原稿載置台49、原稿MSを搬送するための搬送ユニット50、読取後の原稿MSをスタックするための原稿スタック台57等を有している。
【0025】
図4は、ADF41の要部構成をスキャナの上部とともに示す拡大構成図である。上記ADF41の搬送ユニット50は、図4に示すように、分離搬送部51、レジスト部52、ターン部53、第一読取搬送部54、第二読取搬送部55、排紙部56とから構成されている。分離搬送部51は、原稿載置台49にセットされた原稿MSの束から原稿MSを一枚ずつ分離して給送するものである。レジスト部52は、給送された原稿MSを一次突当整合するともに、整合後の原稿MSを引き出し搬送するものである。ターン部53は、C字状に湾曲する湾曲搬送部を有しており、この湾曲搬送部内で原稿MSを折り返しながら原稿面を読取部側(下方)に向けて搬送するものである。第一読取搬送部54は、プラテンガラス47の上方で原稿MSを搬送しながら、プラテンガラス47の下方でスキャナ40の内部に配設されている第一固定読取部43に原稿MSの第一面を読み取らせるものである。第二読取搬送部55は、第二固定読取部44の下で原稿MSを搬送しながら、原稿MSの第二面を第二固定読取部44に読み取らせるものである。排紙部56は、両面の画像が読み取られた原稿MSを原稿スタック台57に向けて排出するものである。
【0026】
上記ADF41の本体カバー48は、図3に示すように、スキャナ40に固定された蝶番58によって上下方向に揺動可能に支持されている。そして、その揺動によって開閉扉のような動きをとり、開かれた状態でスキャナ40の上面のプラテンガラス47やコンタクトガラス45を露出させる。原稿束の片隅を綴じた本等の片綴じ原稿の場合には、原稿を1枚ずつ分離することができないため、搬送ユニット50による搬送を行うことができない。そこで、片綴じ原稿の場合には、本体カバー48を図3に示すように開いた後、読み取らせたいページが見開かれた片綴じ原稿を下向きにしてコンタクトガラス45上に載せた後、本体カバー48を閉じる。そして、スキャナ40の図1に示した移動読取部42によってそのページの画像を読み取らせる。
【0027】
一方、互いに独立した複数の原稿MSを単に積み重ねた原稿束の場合には、原稿載置台49にセットされた原稿MSを1枚ずつ自動搬送しながら、スキャナ40内の第一固定読取部43やADF41内の第二固定読取部44に順次読み取らせていくことができる。この場合、ADF41は、原稿載置台49上に載置された原稿束の原稿MSを上から順に搬送ユニット50内に送り、それを反転させながら原稿スタック台51に向けて搬送する。この搬送の過程で、原稿MSを反転させた直後に第一固定読取部43の真上に通す。このとき、原稿MSの第一面の画像がスキャナ40の第一固定読取部43によって読み取られる。また、原稿MSの第二面が第二固定読取部44によって読み取られる。
【0028】
図5は、ADF及びスキャナの電気回路の一部を示すブロック図である。図5に示すように、ADF41は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等からなるコントローラ60を有しており、これによって各種の機器やセンサを制御することができる。このコントローラ60には、レジストセンサ61、原稿セットセンサ62、排紙センサ63、突き当てセンサ64、原稿幅センサ65、読取入口センサ66、給紙適正位置センサ67、底板ホームポジション(HP)センサ68等が接続されている。また、第二固定読取部44、ピックアップモータ71、給紙モータ72、読取モータ73、排紙モータ74、底板上昇モータ75等も接続されている。また、スキャナ40の各機器の制御を司る本体制御部100等も接続されている。スキャナ40は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)等からなる本体制御部100を有しており、これにより、図示しない各種機器やセンサを制御することができる。また、本体制御部100は、I/F77によってADF41のコントローラ60と接続されており、コントローラ60を介して、ADF41内の各種機器やセンサを間接的に制御することもできる。
【0029】
上記構成のADF41において、図4に示すように、原稿MSは、原稿MSの束の厚みに応じて図中矢印a、b方向に揺動可能な可動原稿テーブル59の上に原稿先端部が載せられるとともに、原稿載置台49の上に原稿後端側が載せられた状態でセットされる。このとき、原稿載置台49上において、その幅方向(原稿搬送方向と直交する方向)の両端に対してそれぞれ図示しないサイドガイドが突き当てられることで、幅方向における位置が調整される。このようにしてセットされる原稿MSは、可動原稿テーブル59の上方で揺動可能に配設されたレバー部材78を押し上げる。すると、それに伴って原稿セットセンサ62が原稿MSのセットを検知して、検知信号をコントローラ60に送信する。そして、この検知信号は、コントローラ60からI/F77を介して本体制御部100に送られる。
【0030】
原稿載置台49には、原稿MSの搬送方向の長さを検知する第一原稿長さ検知センサ79、第二原稿長さ検知センサ80が設置され、原稿MSの搬送方向の長さの概略が検知される。本実施形態では、少なくとも同一原稿サイズの縦か横かを判断可能なセンサを配置することが必要である。これら第一原稿長さ検知センサ79、第二原稿長さ検知センサ80には、反射型フォトセンサ又は原稿1枚にても検知可能なアクチュエーター・タイプのセンサ等を用いるとよい。
【0031】
本体制御部100は、可動原稿テーブル59に原稿MSがセットされたことを原稿セットセンサ62により検知すると、底板上昇モータ75を正転させて原稿束の最上面がピックアップローラ81と接触するように可動原稿テーブル59を上昇させる。そして、本体制御部100は、給紙適正位置センサ67がオンしたら底板上昇を停止し、給紙を繰り返すことで原稿束上面が下がり給紙適正位置センサ67がオフしたら、底板を上昇させて給紙適正位置センサ67が再びオンするように制御を繰り返す。これにより、可動原稿テーブル59の高さが調整され、常に原稿束上面位置が給紙に適した高さに維持される。セットされた原稿MSが全て給紙されると、底板上昇モータ75を正転させて次の原稿束をセットできるようにホームポジション位置へと可動原稿テーブル59を下降させる。
【0032】
可動原稿テーブル59の上に載置された原稿束の上方には、カム機構によって上下方向(図中矢印c、d方向)に移動可能に支持されるピックアップローラ81が配設されている。このカム機構は、ピックアップモータ71によって駆動することで、ピックアップローラ81を上下移動させることが可能である。ピックアップローラ81が上昇移動すると、それに伴って可動原稿テーブル59が図中矢印a方向に揺動して、ピックアップローラ81が原稿MSの束における一番上の原稿MSに当接する。更に可動原稿テーブル59が上昇し、ピックアップローラ81が可動原稿テーブル59上の原稿上面により押されてc方向に上がると、やがて給紙適正位置センサ67によって可動原稿テーブル59の上限までの上昇が検知される。これにより、ピックアップモータ71が停止するとともに、可動原稿テーブル59の上昇が停止する。
【0033】
複写機の本体に設けられたテンキーやディスプレイ等からなる操作部101に対しては、操作者によって両面読取モードか、あるいは片面読取モードかを示す読取モード設定のためのキー操作や、コピースタートキー102の押下操作等が行われる。ここで両面読取モードか片面読取モードかを設定する際、原稿載置台49上にセットされた全ての原稿に対して同じように設定しても良いし、(1枚目、2枚目、・・・n枚目の)それぞれの原稿に対して異なる設定をしても良い(例えば、全10枚の原稿中、1枚目と10枚目は両面読取モード、その他は片面読取モード等)。
【0034】
コピースタートキー102が押下されると、本体制御部100からI/F77を介してADF41のコントローラ60に原稿給紙信号が送信される。すると、ピックアップローラ81が給紙モータ72の正転によって回転駆動して、可動原稿テーブル59上の数枚(理想的には1枚)の原稿MSをピックアップする。ピックアップローラ81の回転方向は、最上位の原稿MSを給紙口に搬送する方向である。
【0035】
両面読取モードか、片面読取モードかの設定に際しては、可動原稿テーブル59上に載置された全ての原稿MSについて一括して両面、片面の設定を行うことが可能である。また、1枚目及び10枚目の原稿MSについては両面読取モードに設定する一方で、その他の原稿MSについては片面読取モードに設定する等といった具合に、個々の原稿MSについてそれぞれ個別に読取モードを設定することも可能である。
【0036】
ピックアップローラ81によって送り出された原稿MSは、分離搬送部51に進入して、給紙ベルト82との当接位置に送り込まれる。この給紙ベルト82は、駆動ローラ83と従動ローラ84とによって張架されており、給紙モータ72の正転に伴う駆動ローラ83の回転によって図中時計回り方向に無端移動せしめられる。この給紙ベルト82の下部張架面には、給紙モータ72の正転によって図中時計回りに回転駆動されるリバースローラ85が当接している。当接部においては、給紙ベルト82の表面が給紙方向に移動する。これに対し、リバースローラ85は、給紙ベルト82に所定の圧力で当接しており、給紙ベルト82に直接当接している際、あるいは当接部に原稿MSが1枚だけ挟み込まれている際には、給紙ベルト82又は原稿MSに連れ回る。但し、当接部に複数枚の原稿MSが挟み込まれた際には、連れ回り力がトルクリミッターのトルクよりも低くなることから、連れ回り方向とは逆の本来の駆動方向である図中時計回りに回転駆動する。これにより、最上位よりも下の原稿MSには、リバースローラ85によって給紙とは反対方向の移動力が付与されて、数枚の原稿MSから最上位の原稿MSだけが分離され重送が防止される。
【0037】
給紙ベルト82やリバースローラ85の働きによって1枚に分離された原稿MSは、レジスト部52に進入する。そして、突き当てセンサ64の直下を通過する際にその先端が検知される。このとき、ピックアップモータ71の駆動力を受けているピックアップローラ81がまだ回転駆動しているが、可動原稿テーブル59の下降によって原稿MSから離間するため、原稿MSは給紙ベルト82の無端移動力のみによって搬送される。そして、突き当てセンサ64によって原稿MSの先端が検知されたタイミングから所定時間だけ給紙ベルト82の無端移動が継続して、原稿MSの先端がプルアウトローラ対86のニップ部に突き当たる。原稿MSの先端が両ローラの当接部に突き当たった状態で、原稿MSの後端側が給紙方向に向けて送られることで、原稿MSは所定量だけ撓んだ状態になりながら、先端が当接部に位置決めされる。これにより、原稿MSのスキュー(傾き)が補正されて、原稿MSは給紙方向に沿った姿勢になる。
【0038】
プルアウトローラ対86は、原稿MSのスキューを補正する役割の他に、スキューが補正された原稿MSを原稿搬送方向下流側の中間ローラ対87まで搬送する役割を担っており、給紙モータ72の逆転によって回転駆動される。給紙モータ72が逆転すると、プルアウトローラ対86の一方のローラと、中間ローラ対87の一方のローラとが回転を開始するとともに、給紙ベルト82の無端移動が停止する。また、このとき、ピックアップローラ81の回転も停止される。
【0039】
プルアウトローラ対86から送り出された原稿MSは、原稿幅センサ65の直下を通過する。原稿幅センサ65は、反射型フォトセンサ等からなる紙検知部を複数有しており、これら紙検知部は原稿幅方向(図紙面に直交する方向)に並んでいる。どの紙検知部が原稿MSを検知するのかに基づいて、原稿MSの幅方向のサイズが検知される。また、原稿MSの搬送方向の長さは、原稿MSの先端が突き当てセンサ64によって検知されてから、原稿MSの後端が突き当てセンサ64によって検知されなくなるまでのタイミングに基づいて検知される。
【0040】
原稿幅センサ65によって幅方向のサイズが検知された原稿MSの先端は、ターン部53に進入して、中間ローラ対87のローラ間の当接部に挟み込まれる。この中間ローラ対87による原稿MSの搬送速度は、後述する第一読取搬送部54での原稿MSの搬送速度よりも高速に設定されている。これにより、原稿MSを第一読取搬送部54に送り込むまでの時間の短縮化が図られている。
【0041】
ターン部53内を搬送される原稿MSの先端は、読取入口センサ66との対向位置を通過する。これによって原稿MSの先端が読取入口センサ66によって検知されると、その先端が搬送方向下流側の読取入口ローラ対89の位置まで搬送される間に、中間ローラ対87による原稿搬送速度が減速される。また、読取モータ73の回転駆動の開始に伴って、読取入口ローラ対89における一方のローラ、読取出口ローラ対90における一方のローラ、第二読取出口ローラ対91における一方のローラがそれぞれ回転駆動を開始する。
【0042】
ターン部53内においては、原稿MSが中間ローラ対87と読取入口ローラ対89との間の湾曲搬送路で搬送される間に上下面が逆転されるとともに、搬送方向が折り返される。そして、読取入口ローラ対89のローラ間のニップを通過した原稿MSの先端は、レジストセンサ61の直下を通過する。このとき原稿MSの先端がレジストセンサ61によって検知されると、所定の搬送距離をかけながら原稿搬送速度が減速されていき、第一読取搬送部54の手前で原稿MSの搬送が一時停止される。また、本体制御部100にI/F77を介してレジスト停止信号が送信される。
【0043】
レジスト停止信号を受けた本体制御部100が読取開始信号を送信すると、コントローラ60の制御により、原稿MSの先端が第一読取搬送部54内に到達するまで、読取モータ73の回転が再開されて所定の搬送速度まで原稿MSの搬送速度が増速される。そして、読取モータ73のパルスカウントに基づいて算出された原稿MSの先端が第一固定読取部43による読取位置に到達するタイミングで、コントローラ60から本体制御部100に対して原稿MSの第一面の副走査方向有効画像領域を示すゲート信号が送信される。この送信は、原稿MSの後端が第一固定読取部43による読取位置を抜け出るまで続けられ、原稿MSの第一面が第一固定読取部43によって読み取られる。
【0044】
第一読取搬送部54を通過した原稿MSは、読取出口ローラ対90を経由した後、その先端が排紙センサ63によって検知される。片面読取モードが設定されている場合には、後述する第二固定読取部44による原稿MSの第二面の読取が不要である。そこで、排紙センサ63によって原稿MSの先端が検知されると、排紙モータ74の正転駆動が開始されて、排紙ローラ対92における図中下側の排紙ローラが図中時計回り方向に回転駆動される。また、排紙センサ63によって原稿MSの先端が検知されてからの排紙モータ74のパルスカウントに基づいて、原稿MSの後端が排紙ローラ対92のニップを抜け出るタイミングが演算される。そして、この演算結果に基づいて、原稿MSの後端が排紙ローラ対92のニップから抜け出る直前のタイミングで、排紙モータ74の駆動速度が減速せしめられて、原稿MSが原稿スタック台57から飛び出さないような速度で排紙される。
【0045】
一方、両面読取モードが設定されている場合には、排紙センサ63によって原稿MSの先端が検知された後、第二固定読取部44に到達するまでのタイミングが読取モータ73のパルスカウントに基づいて演算される。そして、そのタイミングでコントローラ60から本体制御部100に対して原稿MSの第二面における副走査方向の有効画像領域を示すゲート信号が送信される。この送信は、原稿MSの後端が第二固定読取部44による読取位置を抜け出るまで続けられ、原稿MSの第二面が第二固定読取部44によって読み取られる。その後に、上述したように原稿MSが原稿スタック台57に排紙される。
【0046】
読取手段としての第二固定読取部44は、原稿MSに付着している糊状の異物が読取面に付着することによる読取縦すじを防止する目的で、読取面にコーティング処理が施されている。第二固定読取部44との対向位置には、原稿MSを非読取面側(第一面側)から支持する原稿支持手段としての第二読取ローラ93が配設されている。この第二読取ローラ93は、第二固定読取部44による読取位置での原稿MSの浮きを防止するとともに、第二固定読取部44におけるシェーディングデータを取得するための基準白部として機能する役割を担っている。本複写機では、第二固定読取部44との対向位置で原稿を支持する原稿支持手段として、第二読取ローラ93を用いたが、ガイド板状のものを用いてもよい。
【0047】
図6は、第一固定読取部の周辺を示す構成図である。
図に示すように、3つの張架ローラに張架された搬送ベルト94が、透光部材たるプラテンガラス47と所定の間隔を開けて対向している。また、搬送ベルト94の外周面に接触して搬送ベルト94を帯電させる帯電手段たる帯電ローラ98が設けられている。
【0048】
また、読取位置よりも原稿搬送方向上流側には、複数の張架ローラに張架され、搬送ベルトに当接する加圧ベルト95が設けられている。加圧ベルト95は、搬送ベルト94の原稿搬送方向上流側から、読取位置近傍まで搬送ベルト94に当接している。加圧ベルト95は、搬送ベルト94によって連れ回る構成でもよいし、加圧ベルトを張架する複数のローラのうちのひとつに、読取モータ73からの駆動力が伝達されるよう構成し、読取モータ73の駆動力で回転駆動するよう構成してもよい。
【0049】
また、加圧ベルト95の搬送ベルト94への静電吸着力が大きくなると、原稿の先端が搬送ベルト94と加圧ベルトの当接部に進入することができず、紙詰まりが発生してしまう。また、シワが生じるなど、原稿にダメージが発生してしまう。そのため、加圧ベルト95は、帯電しにくい部材からなることが好ましい。加圧ベルトを帯電しにくい部材とすることで、加圧ベルト95の搬送ベルト94への静電吸着を抑制することができる。加圧ベルト95としては、例えば、ゴムやプラスチックといった絶縁体からなることが好ましい。加圧ベルト95を絶縁体とすることで、加圧ベルト95を導電体とした場合に比べて、加圧ベルト95の帯電を抑制することができる。また、加圧ベルト95の表面に除電部材を当接させて、加圧ベルト95の表面を除電することで、加圧ベルト95の搬送ベルト94への吸着力を弱めるようにしてもよい。
【0050】
読取入口ローラ対89により搬送ベルト94へ搬送された原稿MSは、帯電した搬送ベルト94と加圧ベルト95とにより挟持され、原稿が搬送ベルト94に静電吸着する。具体的には、帯電ローラ98により搬送ベルト94の表面が帯電する。そして、搬送ベルト94の表面に原稿が接触すると、静電分極により搬送ベルト94上の帯電極性と逆極性の電荷が原稿MSの搬送ベルト94側に発生し、原稿MSが搬送ベルト94上に静電吸着する。搬送ベルト94に静電吸着した原稿MSは、搬送ベルト94によって搬送され第一固定読取部43の読取位置を通過していく。その結果、原稿MSとプラテンガラス47との間に所定距離を有して原稿MSが搬送される。そして、読取位置を通過して、原稿搬送方向最下流の張架ローラの張架部分へ搬送された原稿MSは、曲率分離により搬送ベルト94から離間し、読取出口ローラ対90へ移動する。このように、読取位置において、原稿MSとプラテンガラス47との間に所定距離を有して原稿を搬送することができる。よって、原稿MSがプラテンガラス47と摺擦しないため、原稿MSに付着しているゴミ等の異物がプラテンガラス47との摺擦によってプラテンガラス47の読取位置に付着することがない。これにより、プラテンガラス47の読取位置に異物が付着するのを抑制することができる。
【0051】
図7は、原稿の搬送ベルト94への接触時間と搬送ベルト94の原稿搬送力との関係を示したグラフである。原稿搬送力は、搬送ベルト94に吸着した原稿を引っ張って、原稿が搬送ベルトから剥離したときの力であり、原稿搬送力と吸着力は、イコールの関係である。図からわかるように、原稿が搬送ベルト94に接触した直後においては、原稿の静電吸着力が弱いため、搬送ベルト94の搬送力が弱いことがわかる。原稿の搬送ベルト94への接触時間が長くなると、原稿の静電分極が進行し、原稿のベルトへの静電吸着力が増加して、搬送ベルト94の原稿搬送力が高まる。このように、原稿が搬送ベルト94にある程度の時間接触しなければ、搬送ベルト94の原稿搬送力が十分得られないことがわかる。
【0052】
このため、搬送ベルト94に原稿が十分に吸着してないときに、原稿に搬送ベルトから離間させるような力が生じてしまうと、容易に原稿が搬送ベルト94から剥離してしまう。原稿に搬送ベルト94から離間させるような力は、次のようなことが要因で、発生する。搬送ベルト94を張架する張架ローラの偏心などによる搬送ベルト94の速度変動により、読取出口ローラ対90と搬送ベルト94との間で速度差が生じる場合がある。搬送ベルト94と読取出口ローラ対90とにより原稿が搬送されているとき、読取出口ローラ対90の速度より、搬送ベルト94の速度が速くなると、原稿の搬送ベルト94に吸着している部分に押し込み力が発生する。この押し込み力により原稿の搬送ベルト94に吸着している部分が搬送ベルト94から剥離する方向に折れ曲がろうとする。その結果、原稿の搬送ベルトとの吸着部分に、搬送ベルトから剥離させるような力が生じ、原稿が搬送ベルトから離間してしまう。
【0053】
本実施形態においては、原稿が搬送ベルト94に接触した直後に、原稿が搬送ベルト94と加圧ベルト95との当接部に進入し、加圧ベルト95によって搬送ベルト94側へ押圧される。そして、読取位置近傍まで、加圧ベルト95に搬送ベルト94側へ押圧されながら原稿が搬送される。これにより、原稿の静電分極が十分進んで、原稿の搬送ベルト94への静電吸着力がある程度上がるまで、原稿が加圧ベルト95によって搬送ベルト94側へ押圧されながら搬送される。そして、十分に吸着力が得られてから、加圧ベルト95と搬送ベルト94との当接部を通過する。これにより、原稿に搬送ベルト94から剥離するような力が生じても、原稿が搬送ベルトから剥離するのを抑制することができ、読取画像にピントボケが生じるのを抑制することができる。
【0054】
また、本実施形態においては、十分静電吸着力が得られてから、原稿が搬送ベルト94と加圧ベルト95との当接部を抜けるようにするため、搬送ベルト94の読取位置から原稿搬送方向上流側をある程度長くしている。このとき、搬送ベルト94の読取位置から上流側の部分を、プラテンガラス表面と平行に真直ぐ延ばすと、ADF51が、水平方向に大型化してしまう。しかし、本実施形態においては、搬送ベルト94の読取位置から原稿搬送方向上流側の部分は、加圧ベルト95と当接しているため、図に示すように、搬送ベルト94の読取位置よりも原稿搬送方向上流側の部分が直線状でなくても、原稿が、曲率分離により搬送ベルト94から浮き上がることはない。また、搬送ベルト94の原稿搬送領域の読取位置よりも原稿搬送方向上流側の部分を上方へ湾曲させることによって、ADF51が、水平方向に大型化するのを抑制することができる。
【0055】
また、加圧ベルト95と搬送ベルト94との当接部出口の原稿搬送方向と、当接部出口から読取位置までの搬送ベルト94による原稿搬送方向が平行となっているので、上記当接部出口を抜けた原稿が、搬送ベルト94によって読取位置まで搬送される間に、曲率分離して、搬送ベルト94から剥離することがない。これにより、読取位置で原稿が搬送ベルト表面から剥離するのが抑制され、読取画像にピントボケが生じるのを抑制することができる。
【0056】
また、プラテンガラス47は、搬送ベルト94に対して接離可能に構成されており、非原稿読取動作時において、プラテンガラス47の表面を搬送ベルト94に近接させて、プラテンガラス47表面に付着したゴミなどの付着物を搬送ベルト94に静電吸着させて除去している。
【0057】
図8は、プラテンガラス47を搬送ベルト94に対して接離させる透光部材接離手段たるガラス接離機構の構成を示す概略構成図である。図9(a)は、ガラス接離機構の構成を示す一部拡大正面図、(b)は一部拡大右側面図である。図8に示すように、プラテンガラス47は、樹脂からなる固定部材120の枠に固定された状態で、スキャナ40の前側板121に突設された前支持台122と後側板123に突設された後支持台124上に載置されている。図9に示すように、後支持台124の側壁には、垂直方向に延びる2個の長孔124aが形成され、固定部材120の側面部に設けられた二個のピン125がこの長孔124aを遊嵌している。固定部材120のピン125がこの後支持台124の長孔124aに沿って移動することにより、後述するようにプラテンガラス47が垂直方向に移動可能となる。なお、図9中では後支持台124のみを図示しているが、前支持台122側も同様な構成にしている。
【0058】
また、図8に示すように、前側板121と前支持台122には、第一カム部材126の第一カム軸127が回転自在に支持されている。第一カム軸127の端部には、第一カムプーリ128が固定されている。後側板123と後支持部材124には、第二カム部材129と第二カム軸130が回転自在に支持されている。第二カム軸130の端部には第二カムプーリ131が固定されている。また、カム部材126・129の下方には、前側板121と後側板123とに軸受を介して回転自在に支持された駆動軸132が設けられている。駆動軸132の前側端部には、第一タイミングプーリ133が固定され、後側端部には、第二タイミングプーリ134と従動プーリ135とが固定されている。第一カムプーリ128と第一タイミングプーリ133とには、第一タイミングベルト136が巻き回されている。また、第二カムプーリ131と第二タイミングプーリ134とには、第二タイミングベルト137が巻き回されている。また、駆動軸132の従動プーリ135には、駆動タイミングベルト138が巻き回されており、駆動タイミングベルト138は、ガラス上下動モータ76のモータ軸76aに固定された駆動プーリ139にも巻き回されている。
【0059】
また、前支持台122上には、プラテンガラス47の基準位置を検知するためのガラスHPセンサ69が設けられている。プラテンガラス47の基準位置は、固定部材120が前支持台122と後支持台124に載置されている状態であって、第一カム部材126、第二カム部材129が固定部材120と離間している状態の位置である。
【0060】
原稿載置台49にセットされた原稿画像読取動作中は、第一固定読取部43の上方に配設されたプラテンガラス47は、前支持台122と後支持台124上に載置されている。このときは、画像読取センサ43aの焦点を中心に鮮明な像を結ぶ光軸上の範囲である被写界深度から外れた位置に配置されている。すなわち、図10に示すように、画像読取センサ43aは、距離L離れた原稿搬送面に焦点を合わせているが、プラテンガラス47の表面には焦点を合わせていない。これにより、仮に、プラテンガラス47の読取位置に異物が付着しても、プラテンガラス47上の異物には、焦点が合っていないので、プラテンガラス47の読取位置上の異物は、ぼやけて画像読取センサ43aに読み取られる。その結果、プラテンガラス47の読取位置上の異物は、ぼやけた薄い縦スジとなって読取画像に現れ、縦スジを目立ちにくくすることができる。さらに、読取画像の濃度が、原稿画像よりも薄くなるように設定されている等、読取条件によっては、プラテンガラス47の読取位置上に異物が付着していても、縦スジが発生しないようにできる。
【0061】
原稿載置台49にセットされた原稿画像の読み取りが終了すると、ガラス上下動モータ76が回転する。ガラス上下動モータ76が回転すると、その駆動力が駆動タイミングベルト138、従動プーリ134を介して駆動軸132に伝達される。駆動軸132から第一タイミングプーリ133、第一タイミングベルト136、第一カムプーリ128を介して、第一カム部材126が回転する。同様に、駆動軸132から第二タイミングプーリ134、第二タイミングベルト137、第二カムプーリ131を介して、第二カム部材129が回転する。すると、第一カム部材126、第二カム部材129が、固定部材120と当接し、固定部材120を上方へ持ち上げる。固定部材120が、第一、第二カム部材126、129により、上方へ持ち上げられると、図9(b)に示すように、固定部材120のピン125が長穴124aに沿って移動する。これにより、図8及び図9中点線で示すように、固定部材120に固定されたプラテンガラス47が距離a上昇して搬送ベルト94へ近接する。ここで、第一カム部材126、第二カム部材129の回転角度はガラスHPセンサ69が検知する基準位置からガラス上下動モータ76を駆動させたパルスカウントによって検知され、ガラス上下動モータ76が停止する。
【0062】
プラテンガラス47が距離a上方へ持ち上げられると、図10示すように、プラテンガラス47の表面は、搬送ベルト94の吸着可能範囲H内に位置している。この時、搬送ベルト94の帯電ローラ98による吸着可能範囲をHとし、プラテンガラス47の移動距離をa、プラテンガラスの厚みをtとしたとき、H>L−(t+a)である。これにより、プラテンガラス47の表面が吸着可能範囲Hに入る。プラテンガラス47上の異物は、原稿MSに付着していたゴミや紙粉である。これらは、レジスト部52やターン部53に設けられたガイド部材と摺擦して摩擦帯電する。また、加圧ベルト95と搬送ベルト94との当接部を搬送される間に帯電する。そして、これら帯電した原稿MSに付着したゴミや紙粉は、原稿MSが加圧ベルト95と搬送ベルトとの当接部を抜けたとき等に原稿MSから脱落してプラテンガラス47に付着する。よって、プラテンガラス47上の異物は、通常帯電している。このため、プラテンガラス47上の異物Fは、搬送ベルト94の吸着可能範囲内では静電的に搬送ベルト94へ移動して、搬送ベルト94に付着する。これにより、プラテンガラス47上の異物が除去される。その結果、異物によるぼやけた薄い縦スジも生じなくなる。
搬送ベルト94に吸着したゴミや紙粉は、搬送ベルト表面を清掃するクリーニングブレードなどの不図示の清掃手段により搬送ベルト94の表面から除去される。
【0063】
次に、本実施形態の変形例について、説明する。
【0064】
[変形例1]
図11は、変形例1の画像読取装置における第一固定読取部の周辺を示す構成図である。
この変形例1の画像読取装置は、図12に示すように、加圧ベルト95を搬送ベルト94に対して接離可能に構成したものである。
【0065】
図13は、加圧ベルト95を搬送ベルト94に対して接離させる接離手段たる加圧ベルト接離機構の概略構成図である。
ベルト接離機構は、加圧ベルト95を張架する複数のローラを回転自在に支持し、ADFの筐体に回転自在に支持されているハウジング112、このハウジング112を回動させる回動手段たるベルト接離モータ110などを有している。
ハウジング112には、加圧ベルト95を張架する複数のローラのうち、原稿搬送方向最上流に位置する張架ローラ95aと同軸上に、支持軸112aが設けられている。この支持軸112aが、ADFの筐体に回転自在に支持されている。また、支持軸112aと、ベルト接離モータ110との間にタイミングベルト111が巻き回されている。また、ハウジング112には、不図示のフィラー部材が設けられており、加圧ベルト95が離間位置にあるとき、不図示のセンサが、フィラー部材を検知している。
【0066】
先の図11に示すように、原稿搬送方向最上流に位置する加圧ベルトの張架ローラ95aは、搬送ベルト94よりも原稿搬送方向上流側に位置している。そして、この張架ローラ95aは加圧ベルト95を介して入口ローラ99と当接している。
【0067】
非原稿読取時においては、図12の実線に示すように、加圧ベルト95は、搬送ベルト94から離間している。ハウジング112の回動の支点が、搬送ベルト94よりも原稿搬送方向上流側にあるので、加圧ベルト95が離間位置にあるとき、加圧ベルト95は、搬送ベルト94から完全に離間している。
【0068】
原稿読取が開始され、原稿の先端が搬送ベルト94へ進入するのに同期して、加圧ベルト95の原稿搬送方向上流側を搬送ベルト94に当接させる。具体的には、制御手段たる本体制御部100は、レジストセンサ61が原稿の先端を検知したら、読取モータ73の駆動パルスをカウントし、駆動パルスが所定値となったら、ベルト接離モータ110を駆動させて、ハウジング112を反時計回りに回転させる。これにより、搬送ベルト94の最上流側の張架ローラ94aと中間の張架ローラ94bとの張架領域に加圧ベルト95が当接する。そして、さらにハウジング112を反時計回りに回転していき、原稿の先端が、中間張架ローラ94bの張架部分に到達する前に、原稿搬送方向最下流の加圧ベルト張架ローラ95cが加圧ベルト95を介して搬送ベルト94に当接させる。加圧ベルト張架ローラ95cが加圧ベルト95を介して搬送ベルト94に当接したら、ベルト接離モータ110の駆動を停止する。具体的には、ベルト接離モータ110が駆動して、ハウジング112を反時計回りに回転すると、不図示のセンサが、フィラー部材を検知しなくなる。不図示のセンサが、フィラー部材を検知しなくなったら、ベルト接離モータ110の駆動パルスをカウントし、カウント数が所定値となったら、加圧ベルト95が当接位置に到達したと判定し、ベルト接離モータ110の駆動を停止する。
【0069】
原稿の後端が、搬送ベルト94と加圧ベルト95との当接部を抜けたら、ベルト接離モータ110を逆回転させ、加圧ベルト95を搬送ベルト94から離間させる。具体的には、レジストセンサ61が、原稿の後端を検知したら、読取モータ73の駆動パルスをカウントし、駆動パルスが所定値となったら、ベルト接離モータ110の逆回転駆動を開始する。すると、ハウジング112が時計回りに回動し、不図示のセンサが、不図示のフィラー部材を検知する。不図示のセンサが不図示のフィラー部材を検知したら、加圧ベルト95が離間位置に到達したと判定し、ベルト接離モータ110の駆動を停止する。ベルト接離モータ110の駆動パルスをカウントし、カウント数が所定値となったら、加圧ベルト95が離間位置に到達したと判定してもよい。この場合は、フィラー部材やセンサが不要となり部品点数が削減され、コストを抑えることができるというメリットがある反面、加圧ベルト95の搬送ベルト94に対する吸着力が大きくなったとき、ベルト接離モータ110の脱調がおこり、正しい位置制御が行われないおそれがあるというデメリットがある。よって、ベルト接離モータ110の駆動パルスをカウントし、カウント数が所定値となったら、加圧ベルト95が離間位置に到達したと判定する場合、加圧ベルト95を帯電しにくい部材として、加圧ベルト95の搬送ベルト94に対する吸着力を抑制するよう構成するのが好ましい。
【0070】
このように、原稿の先端が、搬送ベルト94に進入するときに、加圧ベルト95を搬送ベルト94に当接させ、原稿の後端が搬送ベルト94と加圧ベルト95との当接部を抜けたら、加圧ベルト95を搬送ベルト94から離間させるよう制御することによって、必要なときにのみ、加圧ベルト95を搬送ベルト94に当接させることができる。その結果、加圧ベルト95が搬送ベルト94に吸着するのを抑制することができ、原稿の先端が、加圧ベルト95と搬送ベルト94との当接部に容易に進入させることができる。これにより、搬送不良を抑制することができる。
【0071】
また、上述では、最初に原稿搬送方向上流側からある程度の下流まで、加圧ベルト95が搬送ベルト94と当接するが、図16に示すように、加圧ベルト95の原稿搬送方向最上流部分から順に搬送ベルト94に当接するような構成にしてもよい。この場合、加圧ベルト95の原稿搬送方向上流側から順に搬送ベルト94に当接する当接速度が、原稿の搬送速度と同じとなるようにベルト接離モータ110を制御する。これにより、搬送ベルトに吸着して搬送されている原稿の先端を順次加圧ベルトで押さえるようなかたちで搬送される。その結果、原稿の先端が加圧ベルトを押し退けて搬送されるのを抑制し、原稿先端のダメージを抑制することができる。
【0072】
また、原稿の一部が、加圧ベルト95と搬送ベルト94との間に挟まれて搬送されているときに、紙詰まりが発生したら、加圧ベルト95を離間位置へ移動させるよう制御するのが好ましい。具体的には、本体制御部100は、レジストセンサ61が原稿の先端を検知してから、所定のタイミングで原稿の先端が排紙センサ63を通過した否かを監視する。そして、所定タイミングで原稿の先端が通過しなかった場合、本体制御部100は、搬送異常が生じたと検知する。すなわち、レジストセンサ61、排紙センサ63、本体制御部100で異常検知手段を構成している。本体制御部100が、搬送異常を検知したら、原稿の搬送を停止する。また、このとき、加圧ベルト95は、搬送ベルト94に当接しているので、ベルト接離モータ110を逆回転させ、加圧ベルト95を搬送ベルト94から離間させる。次に、本体制御部100は、操作部101の表示部に搬送不良が生じた旨を表示するなどして、ユーザーに報知する。
【0073】
このように、搬送不良が生じたとき、加圧ベルト95を搬送ベルト94から離間させることで、原稿の除去を容易に行うことができる。
【0074】
また、搬送異常が生じたとき、原稿は、搬送ベルト94に吸着しており、原稿が、搬送ベルト94から剥がしにくい場合がある。このため、図14に示すように、搬送ベルト94の原稿搬送領域を変形させるための変形手段たる加圧部材113を設けてもよい。加圧部材113は、搬送ベルト面に対して、垂直方向に移動可能に支持されている。そして、搬送異常が生じたとき、加圧ベルト95の離間動作に同期して、加圧部材113を搬送ベルト94の原稿搬送領域側へ移動させる。すると、加圧部材113が搬送ベルト94の裏面に当接し、搬送ベルトを下方へ移動させる。その結果、プラテンガラス47の表面と平行な搬送ベルト94の原稿搬送領域が、図中実線に示すように変形する。すると、搬送ベルト94に吸着していた原稿の先端が、曲率分離により搬送ベルト94から剥離する。このように、原稿の先端部分が剥離することで、搬送ベルト94に吸着した原稿を除去しやくなり、ジャム処理を容易に行うことができる。なお、原稿の先端部分は、読取出口ローラ対90を通過し、原稿の後端部分が、搬送ベルト94に吸着しているような状態のときは、加圧部材113で搬送ベルト94の原稿搬送領域の形状を変化させたとき、原稿の後端が、搬送ベルト94から剥離する。
【0075】
また、図15に示すように、搬送ベルトと加圧ベルトとの当接部出口から読取出口ローラ対90のニップ部まで原稿が直線状に搬送されるのが好ましい。これにより、読取出口ローラ対90のニップまで原稿が搬送される間に原稿の姿勢が直線から変化することがなく、原稿の剛性によって、原稿が搬送ベルト94から剥離する力が生じない。このため、原稿が搬送ベルト94から剥離するのを抑制することができる。特に、剛性の大きな厚紙の原稿を搬送する場合は、原稿の姿勢が直線から変化したときの原稿が搬送ベルト94から剥離する力が大きくなるので、上述のように、読取位置から読取出口ローラ対のニップ部まで原稿が直線状に搬送するのがこのましい。
【0076】
以上、本実施形態の原稿搬送装置たるADF41は、複数の張架ローラに張架され、透光部材たるプラテンガラス47に対して所定距離を有して対向配置された搬送ベルト94と、搬送ベルト94を帯電させる帯電手段たる帯電ローラ98とを備え、搬送ベルト94に原稿を静電吸着させて、読取位置へ原稿を搬送するものである。そして、本実施形態のADF41は、搬送ベルト94の原稿が吸着して搬送される原稿搬送領域の原稿搬送方向最上流から読取位置近傍まで搬送ベルト94に当接するよう、複数の張架ローラに張架された加圧ベルト95を設けている。これにより、原稿は、搬送ベルト94に対する吸着力が高まってから、加圧ベルト95と搬送ベルト94との当接部を抜ける。これにより、原稿の搬送ベルト94に吸着している部分に搬送ベルト94から剥離させるような力が生じても、原稿の搬送ベルト94に吸着している部分が、搬送ベルト94から剥離するのを抑制することができる。その結果、読取画像にピントボケが生じるのを抑制することができる。
【0077】
また、搬送ベルト94と加圧ベルト95との当接部出口から読取位置までの原稿搬送経路を、当接部出口における原稿搬送方向に沿って直線状にした。これにより、搬送ベルト94と加圧ベルト95との当接部の出口を抜けた原稿は、当接部出口における原稿搬送方向に沿ってまっすぐに読取位置まで搬送されるので、当接部出口から読取位置まで搬送される途中で、曲率分離によって原稿が搬送ベルトから剥離するのを防止することができる。
【0078】
特に、図15に示すように、搬送ベルト94と加圧ベルト95との当接部出口から搬送ベルト94に隣接し、搬送ベルト94よりも原稿搬送方向下流側に位置する読取出口ローラ対90のニップ入口までの原稿搬送経路を、当接部出口における原稿搬送方向に沿って直線状にすることで、曲率分離によって原稿が搬送ベルトから剥離するのを防止することができる。
【0079】
また、変形例1によれば、加圧ベルト95を搬送ベルト94に対して接離させる接離手段たる加圧ベルト接離機構を設けたので、次のように加圧ベルト95を搬送ベルト94に対して接離すれば、加圧ベルト95が搬送ベルト94に吸着するのを抑制することができる。すなわち、原稿非搬送時は、加圧ベルト95を搬送ベルト94から離間させ、原稿が搬送ベルト94への進入に同期して、加圧ベルト95が搬送ベルト94に当接するよう制御するのである。このように制御することで、加圧ベルト95は、必要なときのみ、搬送ベルト94に当接することになるので、常に加圧ベルト95が搬送ベルト94に当接するものに比べて、加圧ベルト95が帯電するのを抑制することができる。その結果、加圧ベルト95が搬送ベルト94に吸着するのを抑制することができる。加圧ベルト95が搬送ベルト94に吸着するのを抑制することで、加圧ベルト95と搬送ベルト94とのニップ部に原稿が進入しやすくなり、紙詰まりが発生するのを抑制することができる。
【0080】
また、加圧ベルト接離機構は、加圧ベルト95を張架する複数の張架ローラを支持し、ADF41に可動可能に取り付けられたハウジング112と、ハウジング112を回動させる回動手段たるベルト接離モータ110と備えている。また、ハウジング112の回動の支点を加圧ベルト95の搬送ベルト94当接部よりも原稿搬送方向上流側に設けた。このように、回動の支点が加圧ベルト95の搬送ベルト94当接部よりも原稿搬送方向上流側にあるので、ハウジング112を回動させるだけで、加圧ベルト95を搬送ベルト94から完全に離間させることができる。
【0081】
また、図16に示すように、加圧ベルト95が、搬送ベルト94の原稿搬送方向上流側から順に当接するよう構成し、加圧ベルト95の原稿搬送方向上流側から順に搬送ベルト94に当接する当接速度が、原稿の搬送速度と同じとなるように加圧ベルト接離機構を制御する。このように制御することによって、搬送ベルト94に吸着した原稿の先端が、搬送ベルト94に当接している加圧ベルト95を押し退けて搬送されるのを抑制することができ、原稿の先端にダメージが生じるのを抑制することができる。
【0082】
また、原稿の搬送異常を検知する異常検知手段(レジストセンサ、排紙センサ、本体制御部などで構成)が、搬送異常を検知したら、加圧ベルト95を搬送ベルト94から離間させる。これにより、ユーザーがジャム処理を行う場合、搬送ベルト94に吸着した原稿を容易に除去することができる。
【0083】
また、図14に示すように、搬送ベルト94の原稿搬送領域を変形させる変形手段たる加圧部材113を備え、異常検知手段が、搬送異常を検知したら、搬送ベルト94の原稿搬送領域を変形させる。加圧部材113により搬送ベルトの原稿搬送領域の形状を変形させることにより、搬送ベルト94に吸着した原稿が、曲率分離により搬送ベルトから剥離する。これにより、ユーザーがジャム処理を行う場合、搬送ベルト94に吸着した原稿を容易に除去することができる。
【0084】
また、加圧ベルト95の搬送ベルト94からの離間と同期して、搬送ベルト94の原稿搬送領域を変形させるのが好ましい。これにより、加圧ベルト95の搬送ベルト94からの離間動作が完了してから、搬送ベルト94の原稿搬送領域を変形させるのに比べて、ジャム処理のためのお待たせ時間を短縮させることができる。
【0085】
また、加圧ベルト95を帯電しにくい部材にすることによって、加圧ベルト95が、搬送ベルトに静電吸着するのを抑制することができる。
【0086】
また、本実施形態に係る画像読取装置たる原稿搬送読取ユニット1は、上述したADF41を備えることで、良好に原稿画像を読取ることができる。
【0087】
また、本実施形態の原稿搬送読取ユニット1は、プラテンガラス47を、搬送ベルト94に対して接離させる透光部材接離手段たるガラス接離機構を設けている。非画像読取時に、プラテンガラス47を搬送ベルトに近接させるようにガラス接離機構を制御すれば、プラテンガラス47表面に付着したゴミや紙粉などの付着物を帯電した搬送ベルトに吸着させて、プラテンガラス47から除去することができる。これにより、読取画像に縦スジが生じるのを抑制することができる。
【0088】
また、本実施形態に係る複写機によれば、上述した画像読取装置を用いることにより、良好な画像を複写することができる。
【符号の説明】
【0089】
1:原稿搬送読取ユニット(画像読取装置)
40:スキャナ(画像読取手段)
41:ADF(原稿搬送装置)
47:プラテンガラス(透光部材)
61:レジストセンサ
63:排紙センサ
89:読取入口ローラ対
90:読取出口ローラ対
94:搬送ベルト
95:加圧ベルト
98:帯電ローラ
100:本体制御部(制御手段)
110:ベルト接離モータ(回動手段)
112:ハウジング
113:加圧部材(変形手段)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0090】
【特許文献1】特開2007−159033号公報
【特許文献2】特開2008−22252号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿搬送装置、画像読取装置および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、原稿搬送装置たる自動原稿搬送装置(ADF:オートドキュメントフィーダー)を搭載した画像読取装置が知られている。この画像読取装置は、ADFにより原稿を搬送しながら、画像読取部内部の光源からの光を、透光部材を介して原稿の画像面に照射する。そして、原稿画像面からの反射光を、透光部材を介し撮像素子で画像を読み取る。この種の画像読取装置は、原稿画像読取の際、原稿は透光部材に接触しながら通過するので、原稿の画像面側についたゴミなどの透光部材上への付着が避けられない。さらに、ゴミなどの付着物が透光部材の読取位置に付着した場合には、読み取った画像信号にその影響が現れ、副走査方向に繋がる、いわゆる縦すじとなってしまい、著しい画像劣化となってしまう。
【0003】
特許文献1には、透光部材に対して所定距離を有して対向する無端ベルトと、無端ベルトを帯電させる帯電手段とを備えた画像読取装置が記載されている。特許文献1の画像読取装置は、帯電した無端ベルトに原稿を吸着させ、読取位置において透光部材から所定距離離して原稿を搬送し、この透光部材から離れた原稿画像を読み取る。このように構成することによって、原稿が透光部材と摺擦することなく搬送される。その結果、原稿の画像面側についたゴミなどが透光部材との摺擦によって原稿から脱落して透光部材の読取位置に付着するのを抑制することができる。従って、読取画像に縦すじが生じるのを抑制することができ、読取画像の劣化を抑制することができる。
【0004】
特許文献1に記載の画像読取装置においては、原稿にシワや波打ちなどがあった場合、無端ベルト表面に原稿がうまく吸着せずに、浮きが生じるおそれがあった。このように、原稿に浮きが生じた状態で、読取位置へ原稿が搬送されると、ピントボケが発生するおそれがあった。
【0005】
特許文献2には、読取位置よりも原稿搬送方向上流側にブレード状の可撓性部材を設けた画像読取装置が記載されている。この可撓性部材の先端を無端ベルト表面に当接させ、可撓性部材と無端ベルトとのニップ部に原稿を搬送し、この可撓性部材で原稿を無端ベルト表面に押圧する。これにより、原稿を無端ベルト表面に密着させることができ、原稿をぴったりと無端ベルト表面に吸着させることができる。よって、ピントボケを抑制することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ブレード状の可撓性部材の先端と無端ベルトとの線状のニップを原稿が通過してから、読取位置まで原稿が搬送される間に、原稿が無端ベルトから剥離するおそれがある。以下に、その理由について説明する。
帯電した無端ベルトの電界により、原稿の無端ベルト側の面に無端ベルト表面の帯電極性と逆極性の電荷が集まることで、原稿が無端ベルトの表面に静電吸着する。しかしながら、原稿の無端ベルト側の面に無端ベルト表面の帯電極性と逆極性の電荷が十分に集まり、原稿の無端ベルトへの吸着力が高まるまで、ある程度の時間を要することが後述する実験から明らかになった。特許文献2に記載の画像読取装置においては、原稿が搬送ベルトに当接した直後に、ブレード状の可撓性部材の先端と無端ベルトとの線状のニップを抜ける。このため、線状のニップを抜けた直後は、原稿の無端ベルト側の面に、無端ベルト表面の帯電極性と逆極性の電荷が十分に集まっておらず、まだ、原稿の無端ベルトへの吸着力は弱い。その結果、可撓性部材と無端ベルトとのニップ部を通過した原稿の部分に、無端ベルトから剥離させるような力が生じると、原稿のニップ部出口と読取位置との間の部分が無端ベルトから剥離するおそれがあるのである。
【0007】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、原稿を搬送ベルトにぴったりと吸着させることができ、かつ、搬送ベルトから原稿が剥離するのを抑制することができる原稿搬送装置、画像読取装置および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、複数の張架ローラに張架され、画像読取装置の透光部材に対して所定距離を有して対向配置された搬送ベルトと、該搬送ベルトを帯電させる帯電手段とを備え、上記搬送ベルトに上記原稿を静電吸着させて、上記画像読取装置の読取位置へ原稿を搬送する原稿搬送装置において、上記搬送ベルトの原稿が吸着して搬送される原稿搬送領域の原稿搬送方向最上流から読取位置近傍まで上記搬送ベルトに当接するように、複数の張架ローラに張架される加圧ベルトを設けたことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の原稿搬送装置において、上記搬送ベルトと上記加圧ベルトとの当接部出口から上記読取位置までの原稿搬送経路を、上記当接部出口における原稿搬送方向に沿って直線状にしたことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2の原稿搬送装置において、上記搬送ベルトと上記加圧ベルトとの当接部出口から上記搬送ベルトに隣接し、上記搬送ベルトよりも原稿搬送方向下流側に位置する読取出口ローラ対のニップ入口までの原稿搬送経路を、上記当接部出口における原稿搬送方向に沿って直線状にしたことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3いずれかの原稿搬送装置において、上記加圧ベルトを上記搬送ベルトに対して接離させる接離手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項4の原稿搬送装置において、上記接離手段は、上記加圧ベルトを張架する複数の張架ローラを支持し、装置本体に回動可能に取り付けられたハウジングと、該ハウジングを回動させる回動手段と備え、上記ハウジングの回動の支点を上記加圧ベルトの上記搬送ベルト当接部よりも原稿搬送方向上流側に設けたことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項5の原稿搬送装置において、原稿非搬送時は、上記加圧ベルトを上記搬送ベルトから離間させ、原稿の上記搬送ベルトへの進入に同期して、上記加圧ベルトの原稿搬送方向上流側が上記搬送ベルトに当接するよう上記接離手段を制御する制御手段を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項6の原稿搬送装置において、上記加圧ベルトが、上記搬送ベルトの原稿搬送方向上流側から順に当接するよう構成されており、上記制御手段は、上記加圧ベルトの原稿搬送方向上流側から順に上記搬送ベルトに当接する当接速度が、上記原稿の搬送速度と同じとなるように上記接離手段を制御することを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項4乃至7いずれかの原稿搬送装置において、原稿の搬送異常を検知する異常検知手段と、上記異常検知手段が、搬送異常を検知したら、上記加圧ベルトを上記搬送ベルトから離間するよう上記接離手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項8の原稿搬送装置において、上記搬送ベルトの原稿搬送領域を変形させる変形手段を備え、上記制御手段は、上記異常検知手段が、搬送異常を検知したら、上記搬送ベルトの原稿搬送領域を変形させるよう上記変形手段を制御することを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項9の原稿搬送装置において、上記制御手段は、上記加圧ベルトの上記搬送ベルトからの離間と同期して、上記搬送ベルトの原稿搬送領域を変形させるよう上記変形手段を制御することを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、請求項1乃至10いずれかの原稿搬送装置において、上記加圧ベルトが帯電しにくい部材からなることを特徴とするものである。
また、請求項12の発明は、原稿を搬送する原稿搬送手段と、読取位置で透光部材を介して上記原稿搬送手段によって搬送される原稿の原稿画像を読み取る画像読取手段とを備えた画像読取装置において、上記原稿搬送手段として、請求項1乃至11のいずれかの原稿搬送装置を用いたことを特徴とするものである。
また、請求項13の発明は、請求項12の画像読取装置において、上記透光部材を、上記搬送ベルトに対して接離させる透光部材接離手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項14の発明は、画像読取装置と、該画像読取装置で読み取った原稿画像に基づいて画像を形成する画像形成手段とを備える画像形成装置において、該画像読取装置として、請求項12または13の画像読取装置を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、搬送ベルトへ搬送された原稿は、加圧ベルトによって、搬送ベルト側へ押圧されるので、原稿を搬送ベルト表面に密着させることができ、原稿をぴったりと搬送ベルト表面に吸着させることができる。
また、搬送ベルトの原稿が吸着して搬送される原稿搬送領域の原稿搬送方向最上流から読取位置近傍まで加圧ベルトと搬送ベルトとに挟まれた状態で原稿が搬送される。よって、原稿が搬送ベルトに吸着してからある程度吸着力が高まるまで、加圧ベルトにより原稿が搬送ベルト側へ押圧される。そして、原稿の搬送ベルトへの吸着力がある程度高まってから、原稿が搬送ベルトと加圧ベルトとの当接部を抜ける。その結果、原稿の搬送ベルトに吸着している部分に、搬送ベルトから剥離させるような力が生じても、原稿の搬送ベルトに吸着している部分が、搬送ベルトから剥離するのを抑制することができる。その結果、読取位置で、原稿が搬送ベルト表面から剥離するのを抑制することができ、ピントボケの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係る複写機を示す概略構成図。
【図2】同複写機の画像形成ユニットの内部構成の一部を拡大して示す部分拡大構成図。
【図3】同複写機のスキャナとADFの構成を示す斜視図。
【図4】ADFの要部構成をスキャナの上部とともに示す拡大構成図。
【図5】ADF及びスキャナの電気回路の一部を示すブロック図。
【図6】原稿読取時の第一固定読取部の周辺を示す構成図。
【図7】原稿の搬送ベルトへの接触時間と搬送ベルトの原稿搬送力との関係を示したグラフ。
【図8】ガラス接離機構の構成を示す概略構成図。
【図9】(a)は、ガラス接離機構の構成を示す一部拡大正面図、(b)は一部拡大右側面図。
【図10】プラテンガラスが上方へ持ち上げられたときの第一固定読取部の周辺を示す構成図。
【図11】変形例1の第一固定読取部の周辺を示す構成図。
【図12】加圧ベルトの搬送ベルトに対する接離動作を説明する図。
【図13】加圧ベルト接離機構の概略構成図。
【図14】加圧部材を設けた構成例を示す図。
【図15】搬送ベルトと加圧ベルトとの当接部出口から読取出口ローラ対のニップ部まで原稿が直線状に搬送される構成を示す図。
【図16】加圧ベルトが搬送ベルトの原稿搬送方向上流側から順に当接する構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を、電子写真方式の画像形成装置たる複写機(以下、単に複写機という)に適用した実施形態について説明する。まず、本実施形態に係る複写機の基本的な構成について説明する。図1は、本複写機を示す概略構成図である。図1に示すように、この複写機は、原稿MSの画像を読み取るための画像読取装置たる原稿搬送読取ユニット1と、原稿搬送読取ユニット1で取得された画像データを基に画像形成を行う画像形成手段たる画像形成ユニット2と、画像形成ユニット2に記録材たる転写紙を給紙する給紙ユニット30とを備えている。
【0012】
はじめに、上記画像形成ユニット2の構成について説明する。図2は、画像形成ユニットの内部構成の一部を拡大して示す部分拡大構成図である。図1及び図2に示すように、上記画像形成ユニット2は、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各色のトナー像を形成する4つのプロセスユニット3K、Y、M、Cを備えている。以下添字K、Y、M、Cはブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各色をそれぞれ示す。このプロセスユニット3K、Y、M、Cは、それぞれ各色のトナー像を担持する像担持体である感光体4K、Y、M、Cを備えている。これら各感光体4K、Y、M、Cの周囲には、各感光体4表面を一様に帯電する帯電装置5K、Y、M、Cや、各感光体4表面に形成される静電潜像を現像する現像装置6K、Y、M、Cや、トナー像転写後の各感光体4表面をクリーニングする感光体クリーニング装置7K、Y、M、C等を備えている。プロセスユニット3K、Y、M、Cは、それぞれ、感光体4K、Y、M、Cとその周囲に配設される各種装置とを1つのユニットとして共通の支持体に支持するものであり、画像形成ユニット2本体に対して着脱可能になっている。
【0013】
また、画像形成ユニット2は、各感光体4K、Y、M、Cの一様に帯電された表面に画像情報に応じたレーザ光を照射して静電潜像を形成する光書込装置8を備えている。光書込装置8は、レーザ光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラー等を備え、所定の露光位置において画像データに基づき回転駆動されている各感光体4K、Y、M、Cの表面にレーザ光を主走査方向に走査しながら照射する。
【0014】
また、画像形成ユニット2は、感光体4K、Y、M、Cに形成されたトナー画像を中間転写ベルト9を介して転写紙に転写する転写ユニット10、転写紙上のトナー像を定着せしめる定着装置20等備えている。
【0015】
上記転写ユニット10は、複数のローラにより張架されて図中矢印方向に回転駆動する中間転写ベルト9を備え、感光体4K、Y、M、Cと所定の電圧が印加される一次転写ローラ11K、Y、M、Cとの間に中間転写ベルト9を挟み込んで一次転写ニップを形成する。また、中間転写ユニット10は二次転写バックアップローラ12と所定の電圧が印加される二次転写ローラ13の間に中間転写ベルト9を挟み込んで二次転写ニップを形成している。さらに、中間転写ユニット10は、中間転写ベルト9上に残留する転写残トナーを除去するクリーニング装置14等も備えている。上記プロセスユニット3K、Y、M、Cで形成された感光体4K、Y、M、C上のトナー像は、一次転写ニップで中間転写ベルト9に順次重ね合わされて転写される。中間転写ベルト9上に転写された4色重ね合わせトナー像は、二次転写ニップで転写紙に一括転写されることになる。二次転写ニップを通過後に中間転写ベルト9上に残留する転写残トナーは、クリーニング装置14により除去される。
【0016】
上記転写ユニット10の図中下方には、二次転写ローラ31と駆動ローラ15との間に、無端状の紙搬送ベルト16を掛け渡して無端移動させる紙搬送ユニット17、レジストローラ対18、定着装置20等を備えている。レジストローラ対18は、後述する給紙ユニットにより給紙路19を経て供給された転写紙をローラ間に挟み込み、中間転写ベルト9上の4色トナー像に同期させ得るタイミングで二次転写ニップに送り出す。二次転写ニップを通過してフルカラー画像が転写された転写紙は、中間転写ベルト9から離間して、紙搬送ベルト16に保持されながら、その無端移動に伴って定着装置20へと搬送される。定着装置20に搬送された転写紙は、定着装置20内における加圧や加熱によってフルカラー画像が定着させしめられた後、定着装置20から排紙ローラ対21に送られた後、機外へと排出される。
【0017】
上記紙搬送ユニット17の図中下方には、スイッチバック装置22を備えている。スイッチバック装置22は、片面に対する画像定着処理を終えた転写紙を、切換爪で転写紙の進路を転写紙反転装置側に切り換えて反転させ、再び二次転写ニップに進入させる。
【0018】
また、上記複写機の上記給紙ユニット30は、転写紙を複数枚重ねた紙束の状態で収容する給紙カセット31を多段備え、各給紙カセット31内の一番上の転写紙に給紙ローラ32を押し当てている。選択された給紙ローラ32が回転駆動せしめられると、一番上の転写紙が分離ローラ33で分離されて1枚ずつ給紙路34に向けて送り出される。この給紙路34に送り出された転写紙は、複数の搬送ローラ対35を経て画像形成ユニット2内の給紙路19に導かれ、レジストローラ対18のローラ間に挟み込まれる。
【0019】
以上のように構成される画像形成ユニット2において、次のように画像形成が行われる。例えばブラック用のプロセスユニット3Kでは、帯電装置5Kにより一様に帯電された感光体4Kの表面に、光書込装置8で変調及び偏向されたレーザ光Lが走査されながら照射されて静電潜像が形成される。感光体4K上の静電潜像は、現像装置6Kで現像されてブラック色のトナー画像となる。中間転写ベルト9を挟んで一次転写ローラ11Kに対向する一次転写ニップでは、感光体4K上のトナー像が転写紙に転写される。トナー像が転写された後の感光体4Kの表面は、感光体クリーニング装置7Kでクリーニングされ、次の静電潜像の形成に備えられる。
【0020】
他のプロセスユニット3Y、M、Cについても、上述した画像形成行程が中間転写ベルト9の移動に同期して実行される。一方、給紙カセット31から給送された転写紙は、レジストローラ対19により所定のタイミングで送出されて二次転写ニップに搬送される。または、画像形成ユニット2の側面に設置された手差しトレイ23から給紙された転写紙は、給紙ローラ24によって手差し給紙路内に繰り出され、レジストローラ28により所定のタイミングで送出されて二次転写ニップに搬送される。そして、二次転写ニップでフルカラー画像が一括転写された転写紙は、紙搬送ユニット17によって搬送されて定着装置20でトナー像が定着される。転写紙の第一面だけに画像を形成する片面プリントモードの場合には、排紙ローラ対21のローラ間の排紙ニップに挟み込まれた転写紙がそのまま機外に排出されて排紙トレイ25上にスタックされる。転写紙の両面に画像を形成する両面プリントモードの場合には、排紙ローラ対21に挟み込まれた転写紙が逆方向に戻されて、スイッチバック装置22に進入する。そして、スイッチバック装置22内で上下反転せしめられた後、再び二次転写ニップに送られて、もう片面にも画像の二次転写処理と定着処理とが施された後、排出ローラ21により排紙トレイ25上に排出される。トナー像転写後の中間転写ベルト9は、ベルトクリーニング装置14により残留トナーが除去され、プロセスユニット3による再度の画像形成に備える。
【0021】
以上の作像動作は、4色重ね合わせのフルカラーモードが図示しない操作部で選択された時の動作である。例えば、白黒画像形成モードが操作部で選択された場合には、駆動ローラ以外の支持ローラ等を移動させて、感光体4Y、M、Cを中間転写ベルト9から離間させ、中間転写ベルト9にKトナー像の形成のみを行ってもよい。
【0022】
次に、画像読取装置たる上記原稿搬送読取ユニット1について詳細に説明する。図1に示すように、上記原稿搬送読取ユニット1は、上記画像形成ユニット2上に固定された画像読取手段たるスキャナ40と、これに支持される原稿搬送装置たるADF41とを備えている。スキャナ40は、図示しない原稿の画像を読み取るための読取手段として、移動読取部42と、第1固定読取部43とを有している。上記移動読取部42は、原稿MSに接触するようにスキャナ40のケーシング上壁に固定されたコンタクトガラス45の直下に配設され、光源や、反射ミラー等を備え、図中左右方向に移動なキャリッジ、スキャナ40本体に固定された光学レンズ46a、画像読取センサ46bなどを有している。そして、キャリッジを図中左側から右側に移動させていく過程で、光源から発した光をコンタクトガラス45上に載置された図示しない原稿で反射させた後、複数の反射ミラーを経由させて、スキャナ40本体に固定された画像読取センサ46で受光する。
【0023】
上記スキャナ40内に配設される第1固定読取部43は、スキャナ40のケーシング上壁の一端側に固定された透光部材たるプラテンガラス47の直下に配設され、光源、反射ミラー、CCD等の画像読取センサ等を有している。第1固定読取部43は、後述するADF41によって搬送される原稿MSがプラテンガラス47の上方を通過する際に、光源から発した光を原稿面で順次反射させながら、複数の反射ミラーを経由させて画像読取センサで受光する。これにより、光源や反射ミラー等からなる光学系を移動させることなく、原稿MSの第一面を走査する。
【0024】
図3は、スキャナ40とADF41の構成を示す斜視図である。図3に示すように、ADF41は、筐体たる本体カバー48に、読取前の原稿MSを載置するための原稿載置台49、原稿MSを搬送するための搬送ユニット50、読取後の原稿MSをスタックするための原稿スタック台57等を有している。
【0025】
図4は、ADF41の要部構成をスキャナの上部とともに示す拡大構成図である。上記ADF41の搬送ユニット50は、図4に示すように、分離搬送部51、レジスト部52、ターン部53、第一読取搬送部54、第二読取搬送部55、排紙部56とから構成されている。分離搬送部51は、原稿載置台49にセットされた原稿MSの束から原稿MSを一枚ずつ分離して給送するものである。レジスト部52は、給送された原稿MSを一次突当整合するともに、整合後の原稿MSを引き出し搬送するものである。ターン部53は、C字状に湾曲する湾曲搬送部を有しており、この湾曲搬送部内で原稿MSを折り返しながら原稿面を読取部側(下方)に向けて搬送するものである。第一読取搬送部54は、プラテンガラス47の上方で原稿MSを搬送しながら、プラテンガラス47の下方でスキャナ40の内部に配設されている第一固定読取部43に原稿MSの第一面を読み取らせるものである。第二読取搬送部55は、第二固定読取部44の下で原稿MSを搬送しながら、原稿MSの第二面を第二固定読取部44に読み取らせるものである。排紙部56は、両面の画像が読み取られた原稿MSを原稿スタック台57に向けて排出するものである。
【0026】
上記ADF41の本体カバー48は、図3に示すように、スキャナ40に固定された蝶番58によって上下方向に揺動可能に支持されている。そして、その揺動によって開閉扉のような動きをとり、開かれた状態でスキャナ40の上面のプラテンガラス47やコンタクトガラス45を露出させる。原稿束の片隅を綴じた本等の片綴じ原稿の場合には、原稿を1枚ずつ分離することができないため、搬送ユニット50による搬送を行うことができない。そこで、片綴じ原稿の場合には、本体カバー48を図3に示すように開いた後、読み取らせたいページが見開かれた片綴じ原稿を下向きにしてコンタクトガラス45上に載せた後、本体カバー48を閉じる。そして、スキャナ40の図1に示した移動読取部42によってそのページの画像を読み取らせる。
【0027】
一方、互いに独立した複数の原稿MSを単に積み重ねた原稿束の場合には、原稿載置台49にセットされた原稿MSを1枚ずつ自動搬送しながら、スキャナ40内の第一固定読取部43やADF41内の第二固定読取部44に順次読み取らせていくことができる。この場合、ADF41は、原稿載置台49上に載置された原稿束の原稿MSを上から順に搬送ユニット50内に送り、それを反転させながら原稿スタック台51に向けて搬送する。この搬送の過程で、原稿MSを反転させた直後に第一固定読取部43の真上に通す。このとき、原稿MSの第一面の画像がスキャナ40の第一固定読取部43によって読み取られる。また、原稿MSの第二面が第二固定読取部44によって読み取られる。
【0028】
図5は、ADF及びスキャナの電気回路の一部を示すブロック図である。図5に示すように、ADF41は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等からなるコントローラ60を有しており、これによって各種の機器やセンサを制御することができる。このコントローラ60には、レジストセンサ61、原稿セットセンサ62、排紙センサ63、突き当てセンサ64、原稿幅センサ65、読取入口センサ66、給紙適正位置センサ67、底板ホームポジション(HP)センサ68等が接続されている。また、第二固定読取部44、ピックアップモータ71、給紙モータ72、読取モータ73、排紙モータ74、底板上昇モータ75等も接続されている。また、スキャナ40の各機器の制御を司る本体制御部100等も接続されている。スキャナ40は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)等からなる本体制御部100を有しており、これにより、図示しない各種機器やセンサを制御することができる。また、本体制御部100は、I/F77によってADF41のコントローラ60と接続されており、コントローラ60を介して、ADF41内の各種機器やセンサを間接的に制御することもできる。
【0029】
上記構成のADF41において、図4に示すように、原稿MSは、原稿MSの束の厚みに応じて図中矢印a、b方向に揺動可能な可動原稿テーブル59の上に原稿先端部が載せられるとともに、原稿載置台49の上に原稿後端側が載せられた状態でセットされる。このとき、原稿載置台49上において、その幅方向(原稿搬送方向と直交する方向)の両端に対してそれぞれ図示しないサイドガイドが突き当てられることで、幅方向における位置が調整される。このようにしてセットされる原稿MSは、可動原稿テーブル59の上方で揺動可能に配設されたレバー部材78を押し上げる。すると、それに伴って原稿セットセンサ62が原稿MSのセットを検知して、検知信号をコントローラ60に送信する。そして、この検知信号は、コントローラ60からI/F77を介して本体制御部100に送られる。
【0030】
原稿載置台49には、原稿MSの搬送方向の長さを検知する第一原稿長さ検知センサ79、第二原稿長さ検知センサ80が設置され、原稿MSの搬送方向の長さの概略が検知される。本実施形態では、少なくとも同一原稿サイズの縦か横かを判断可能なセンサを配置することが必要である。これら第一原稿長さ検知センサ79、第二原稿長さ検知センサ80には、反射型フォトセンサ又は原稿1枚にても検知可能なアクチュエーター・タイプのセンサ等を用いるとよい。
【0031】
本体制御部100は、可動原稿テーブル59に原稿MSがセットされたことを原稿セットセンサ62により検知すると、底板上昇モータ75を正転させて原稿束の最上面がピックアップローラ81と接触するように可動原稿テーブル59を上昇させる。そして、本体制御部100は、給紙適正位置センサ67がオンしたら底板上昇を停止し、給紙を繰り返すことで原稿束上面が下がり給紙適正位置センサ67がオフしたら、底板を上昇させて給紙適正位置センサ67が再びオンするように制御を繰り返す。これにより、可動原稿テーブル59の高さが調整され、常に原稿束上面位置が給紙に適した高さに維持される。セットされた原稿MSが全て給紙されると、底板上昇モータ75を正転させて次の原稿束をセットできるようにホームポジション位置へと可動原稿テーブル59を下降させる。
【0032】
可動原稿テーブル59の上に載置された原稿束の上方には、カム機構によって上下方向(図中矢印c、d方向)に移動可能に支持されるピックアップローラ81が配設されている。このカム機構は、ピックアップモータ71によって駆動することで、ピックアップローラ81を上下移動させることが可能である。ピックアップローラ81が上昇移動すると、それに伴って可動原稿テーブル59が図中矢印a方向に揺動して、ピックアップローラ81が原稿MSの束における一番上の原稿MSに当接する。更に可動原稿テーブル59が上昇し、ピックアップローラ81が可動原稿テーブル59上の原稿上面により押されてc方向に上がると、やがて給紙適正位置センサ67によって可動原稿テーブル59の上限までの上昇が検知される。これにより、ピックアップモータ71が停止するとともに、可動原稿テーブル59の上昇が停止する。
【0033】
複写機の本体に設けられたテンキーやディスプレイ等からなる操作部101に対しては、操作者によって両面読取モードか、あるいは片面読取モードかを示す読取モード設定のためのキー操作や、コピースタートキー102の押下操作等が行われる。ここで両面読取モードか片面読取モードかを設定する際、原稿載置台49上にセットされた全ての原稿に対して同じように設定しても良いし、(1枚目、2枚目、・・・n枚目の)それぞれの原稿に対して異なる設定をしても良い(例えば、全10枚の原稿中、1枚目と10枚目は両面読取モード、その他は片面読取モード等)。
【0034】
コピースタートキー102が押下されると、本体制御部100からI/F77を介してADF41のコントローラ60に原稿給紙信号が送信される。すると、ピックアップローラ81が給紙モータ72の正転によって回転駆動して、可動原稿テーブル59上の数枚(理想的には1枚)の原稿MSをピックアップする。ピックアップローラ81の回転方向は、最上位の原稿MSを給紙口に搬送する方向である。
【0035】
両面読取モードか、片面読取モードかの設定に際しては、可動原稿テーブル59上に載置された全ての原稿MSについて一括して両面、片面の設定を行うことが可能である。また、1枚目及び10枚目の原稿MSについては両面読取モードに設定する一方で、その他の原稿MSについては片面読取モードに設定する等といった具合に、個々の原稿MSについてそれぞれ個別に読取モードを設定することも可能である。
【0036】
ピックアップローラ81によって送り出された原稿MSは、分離搬送部51に進入して、給紙ベルト82との当接位置に送り込まれる。この給紙ベルト82は、駆動ローラ83と従動ローラ84とによって張架されており、給紙モータ72の正転に伴う駆動ローラ83の回転によって図中時計回り方向に無端移動せしめられる。この給紙ベルト82の下部張架面には、給紙モータ72の正転によって図中時計回りに回転駆動されるリバースローラ85が当接している。当接部においては、給紙ベルト82の表面が給紙方向に移動する。これに対し、リバースローラ85は、給紙ベルト82に所定の圧力で当接しており、給紙ベルト82に直接当接している際、あるいは当接部に原稿MSが1枚だけ挟み込まれている際には、給紙ベルト82又は原稿MSに連れ回る。但し、当接部に複数枚の原稿MSが挟み込まれた際には、連れ回り力がトルクリミッターのトルクよりも低くなることから、連れ回り方向とは逆の本来の駆動方向である図中時計回りに回転駆動する。これにより、最上位よりも下の原稿MSには、リバースローラ85によって給紙とは反対方向の移動力が付与されて、数枚の原稿MSから最上位の原稿MSだけが分離され重送が防止される。
【0037】
給紙ベルト82やリバースローラ85の働きによって1枚に分離された原稿MSは、レジスト部52に進入する。そして、突き当てセンサ64の直下を通過する際にその先端が検知される。このとき、ピックアップモータ71の駆動力を受けているピックアップローラ81がまだ回転駆動しているが、可動原稿テーブル59の下降によって原稿MSから離間するため、原稿MSは給紙ベルト82の無端移動力のみによって搬送される。そして、突き当てセンサ64によって原稿MSの先端が検知されたタイミングから所定時間だけ給紙ベルト82の無端移動が継続して、原稿MSの先端がプルアウトローラ対86のニップ部に突き当たる。原稿MSの先端が両ローラの当接部に突き当たった状態で、原稿MSの後端側が給紙方向に向けて送られることで、原稿MSは所定量だけ撓んだ状態になりながら、先端が当接部に位置決めされる。これにより、原稿MSのスキュー(傾き)が補正されて、原稿MSは給紙方向に沿った姿勢になる。
【0038】
プルアウトローラ対86は、原稿MSのスキューを補正する役割の他に、スキューが補正された原稿MSを原稿搬送方向下流側の中間ローラ対87まで搬送する役割を担っており、給紙モータ72の逆転によって回転駆動される。給紙モータ72が逆転すると、プルアウトローラ対86の一方のローラと、中間ローラ対87の一方のローラとが回転を開始するとともに、給紙ベルト82の無端移動が停止する。また、このとき、ピックアップローラ81の回転も停止される。
【0039】
プルアウトローラ対86から送り出された原稿MSは、原稿幅センサ65の直下を通過する。原稿幅センサ65は、反射型フォトセンサ等からなる紙検知部を複数有しており、これら紙検知部は原稿幅方向(図紙面に直交する方向)に並んでいる。どの紙検知部が原稿MSを検知するのかに基づいて、原稿MSの幅方向のサイズが検知される。また、原稿MSの搬送方向の長さは、原稿MSの先端が突き当てセンサ64によって検知されてから、原稿MSの後端が突き当てセンサ64によって検知されなくなるまでのタイミングに基づいて検知される。
【0040】
原稿幅センサ65によって幅方向のサイズが検知された原稿MSの先端は、ターン部53に進入して、中間ローラ対87のローラ間の当接部に挟み込まれる。この中間ローラ対87による原稿MSの搬送速度は、後述する第一読取搬送部54での原稿MSの搬送速度よりも高速に設定されている。これにより、原稿MSを第一読取搬送部54に送り込むまでの時間の短縮化が図られている。
【0041】
ターン部53内を搬送される原稿MSの先端は、読取入口センサ66との対向位置を通過する。これによって原稿MSの先端が読取入口センサ66によって検知されると、その先端が搬送方向下流側の読取入口ローラ対89の位置まで搬送される間に、中間ローラ対87による原稿搬送速度が減速される。また、読取モータ73の回転駆動の開始に伴って、読取入口ローラ対89における一方のローラ、読取出口ローラ対90における一方のローラ、第二読取出口ローラ対91における一方のローラがそれぞれ回転駆動を開始する。
【0042】
ターン部53内においては、原稿MSが中間ローラ対87と読取入口ローラ対89との間の湾曲搬送路で搬送される間に上下面が逆転されるとともに、搬送方向が折り返される。そして、読取入口ローラ対89のローラ間のニップを通過した原稿MSの先端は、レジストセンサ61の直下を通過する。このとき原稿MSの先端がレジストセンサ61によって検知されると、所定の搬送距離をかけながら原稿搬送速度が減速されていき、第一読取搬送部54の手前で原稿MSの搬送が一時停止される。また、本体制御部100にI/F77を介してレジスト停止信号が送信される。
【0043】
レジスト停止信号を受けた本体制御部100が読取開始信号を送信すると、コントローラ60の制御により、原稿MSの先端が第一読取搬送部54内に到達するまで、読取モータ73の回転が再開されて所定の搬送速度まで原稿MSの搬送速度が増速される。そして、読取モータ73のパルスカウントに基づいて算出された原稿MSの先端が第一固定読取部43による読取位置に到達するタイミングで、コントローラ60から本体制御部100に対して原稿MSの第一面の副走査方向有効画像領域を示すゲート信号が送信される。この送信は、原稿MSの後端が第一固定読取部43による読取位置を抜け出るまで続けられ、原稿MSの第一面が第一固定読取部43によって読み取られる。
【0044】
第一読取搬送部54を通過した原稿MSは、読取出口ローラ対90を経由した後、その先端が排紙センサ63によって検知される。片面読取モードが設定されている場合には、後述する第二固定読取部44による原稿MSの第二面の読取が不要である。そこで、排紙センサ63によって原稿MSの先端が検知されると、排紙モータ74の正転駆動が開始されて、排紙ローラ対92における図中下側の排紙ローラが図中時計回り方向に回転駆動される。また、排紙センサ63によって原稿MSの先端が検知されてからの排紙モータ74のパルスカウントに基づいて、原稿MSの後端が排紙ローラ対92のニップを抜け出るタイミングが演算される。そして、この演算結果に基づいて、原稿MSの後端が排紙ローラ対92のニップから抜け出る直前のタイミングで、排紙モータ74の駆動速度が減速せしめられて、原稿MSが原稿スタック台57から飛び出さないような速度で排紙される。
【0045】
一方、両面読取モードが設定されている場合には、排紙センサ63によって原稿MSの先端が検知された後、第二固定読取部44に到達するまでのタイミングが読取モータ73のパルスカウントに基づいて演算される。そして、そのタイミングでコントローラ60から本体制御部100に対して原稿MSの第二面における副走査方向の有効画像領域を示すゲート信号が送信される。この送信は、原稿MSの後端が第二固定読取部44による読取位置を抜け出るまで続けられ、原稿MSの第二面が第二固定読取部44によって読み取られる。その後に、上述したように原稿MSが原稿スタック台57に排紙される。
【0046】
読取手段としての第二固定読取部44は、原稿MSに付着している糊状の異物が読取面に付着することによる読取縦すじを防止する目的で、読取面にコーティング処理が施されている。第二固定読取部44との対向位置には、原稿MSを非読取面側(第一面側)から支持する原稿支持手段としての第二読取ローラ93が配設されている。この第二読取ローラ93は、第二固定読取部44による読取位置での原稿MSの浮きを防止するとともに、第二固定読取部44におけるシェーディングデータを取得するための基準白部として機能する役割を担っている。本複写機では、第二固定読取部44との対向位置で原稿を支持する原稿支持手段として、第二読取ローラ93を用いたが、ガイド板状のものを用いてもよい。
【0047】
図6は、第一固定読取部の周辺を示す構成図である。
図に示すように、3つの張架ローラに張架された搬送ベルト94が、透光部材たるプラテンガラス47と所定の間隔を開けて対向している。また、搬送ベルト94の外周面に接触して搬送ベルト94を帯電させる帯電手段たる帯電ローラ98が設けられている。
【0048】
また、読取位置よりも原稿搬送方向上流側には、複数の張架ローラに張架され、搬送ベルトに当接する加圧ベルト95が設けられている。加圧ベルト95は、搬送ベルト94の原稿搬送方向上流側から、読取位置近傍まで搬送ベルト94に当接している。加圧ベルト95は、搬送ベルト94によって連れ回る構成でもよいし、加圧ベルトを張架する複数のローラのうちのひとつに、読取モータ73からの駆動力が伝達されるよう構成し、読取モータ73の駆動力で回転駆動するよう構成してもよい。
【0049】
また、加圧ベルト95の搬送ベルト94への静電吸着力が大きくなると、原稿の先端が搬送ベルト94と加圧ベルトの当接部に進入することができず、紙詰まりが発生してしまう。また、シワが生じるなど、原稿にダメージが発生してしまう。そのため、加圧ベルト95は、帯電しにくい部材からなることが好ましい。加圧ベルトを帯電しにくい部材とすることで、加圧ベルト95の搬送ベルト94への静電吸着を抑制することができる。加圧ベルト95としては、例えば、ゴムやプラスチックといった絶縁体からなることが好ましい。加圧ベルト95を絶縁体とすることで、加圧ベルト95を導電体とした場合に比べて、加圧ベルト95の帯電を抑制することができる。また、加圧ベルト95の表面に除電部材を当接させて、加圧ベルト95の表面を除電することで、加圧ベルト95の搬送ベルト94への吸着力を弱めるようにしてもよい。
【0050】
読取入口ローラ対89により搬送ベルト94へ搬送された原稿MSは、帯電した搬送ベルト94と加圧ベルト95とにより挟持され、原稿が搬送ベルト94に静電吸着する。具体的には、帯電ローラ98により搬送ベルト94の表面が帯電する。そして、搬送ベルト94の表面に原稿が接触すると、静電分極により搬送ベルト94上の帯電極性と逆極性の電荷が原稿MSの搬送ベルト94側に発生し、原稿MSが搬送ベルト94上に静電吸着する。搬送ベルト94に静電吸着した原稿MSは、搬送ベルト94によって搬送され第一固定読取部43の読取位置を通過していく。その結果、原稿MSとプラテンガラス47との間に所定距離を有して原稿MSが搬送される。そして、読取位置を通過して、原稿搬送方向最下流の張架ローラの張架部分へ搬送された原稿MSは、曲率分離により搬送ベルト94から離間し、読取出口ローラ対90へ移動する。このように、読取位置において、原稿MSとプラテンガラス47との間に所定距離を有して原稿を搬送することができる。よって、原稿MSがプラテンガラス47と摺擦しないため、原稿MSに付着しているゴミ等の異物がプラテンガラス47との摺擦によってプラテンガラス47の読取位置に付着することがない。これにより、プラテンガラス47の読取位置に異物が付着するのを抑制することができる。
【0051】
図7は、原稿の搬送ベルト94への接触時間と搬送ベルト94の原稿搬送力との関係を示したグラフである。原稿搬送力は、搬送ベルト94に吸着した原稿を引っ張って、原稿が搬送ベルトから剥離したときの力であり、原稿搬送力と吸着力は、イコールの関係である。図からわかるように、原稿が搬送ベルト94に接触した直後においては、原稿の静電吸着力が弱いため、搬送ベルト94の搬送力が弱いことがわかる。原稿の搬送ベルト94への接触時間が長くなると、原稿の静電分極が進行し、原稿のベルトへの静電吸着力が増加して、搬送ベルト94の原稿搬送力が高まる。このように、原稿が搬送ベルト94にある程度の時間接触しなければ、搬送ベルト94の原稿搬送力が十分得られないことがわかる。
【0052】
このため、搬送ベルト94に原稿が十分に吸着してないときに、原稿に搬送ベルトから離間させるような力が生じてしまうと、容易に原稿が搬送ベルト94から剥離してしまう。原稿に搬送ベルト94から離間させるような力は、次のようなことが要因で、発生する。搬送ベルト94を張架する張架ローラの偏心などによる搬送ベルト94の速度変動により、読取出口ローラ対90と搬送ベルト94との間で速度差が生じる場合がある。搬送ベルト94と読取出口ローラ対90とにより原稿が搬送されているとき、読取出口ローラ対90の速度より、搬送ベルト94の速度が速くなると、原稿の搬送ベルト94に吸着している部分に押し込み力が発生する。この押し込み力により原稿の搬送ベルト94に吸着している部分が搬送ベルト94から剥離する方向に折れ曲がろうとする。その結果、原稿の搬送ベルトとの吸着部分に、搬送ベルトから剥離させるような力が生じ、原稿が搬送ベルトから離間してしまう。
【0053】
本実施形態においては、原稿が搬送ベルト94に接触した直後に、原稿が搬送ベルト94と加圧ベルト95との当接部に進入し、加圧ベルト95によって搬送ベルト94側へ押圧される。そして、読取位置近傍まで、加圧ベルト95に搬送ベルト94側へ押圧されながら原稿が搬送される。これにより、原稿の静電分極が十分進んで、原稿の搬送ベルト94への静電吸着力がある程度上がるまで、原稿が加圧ベルト95によって搬送ベルト94側へ押圧されながら搬送される。そして、十分に吸着力が得られてから、加圧ベルト95と搬送ベルト94との当接部を通過する。これにより、原稿に搬送ベルト94から剥離するような力が生じても、原稿が搬送ベルトから剥離するのを抑制することができ、読取画像にピントボケが生じるのを抑制することができる。
【0054】
また、本実施形態においては、十分静電吸着力が得られてから、原稿が搬送ベルト94と加圧ベルト95との当接部を抜けるようにするため、搬送ベルト94の読取位置から原稿搬送方向上流側をある程度長くしている。このとき、搬送ベルト94の読取位置から上流側の部分を、プラテンガラス表面と平行に真直ぐ延ばすと、ADF51が、水平方向に大型化してしまう。しかし、本実施形態においては、搬送ベルト94の読取位置から原稿搬送方向上流側の部分は、加圧ベルト95と当接しているため、図に示すように、搬送ベルト94の読取位置よりも原稿搬送方向上流側の部分が直線状でなくても、原稿が、曲率分離により搬送ベルト94から浮き上がることはない。また、搬送ベルト94の原稿搬送領域の読取位置よりも原稿搬送方向上流側の部分を上方へ湾曲させることによって、ADF51が、水平方向に大型化するのを抑制することができる。
【0055】
また、加圧ベルト95と搬送ベルト94との当接部出口の原稿搬送方向と、当接部出口から読取位置までの搬送ベルト94による原稿搬送方向が平行となっているので、上記当接部出口を抜けた原稿が、搬送ベルト94によって読取位置まで搬送される間に、曲率分離して、搬送ベルト94から剥離することがない。これにより、読取位置で原稿が搬送ベルト表面から剥離するのが抑制され、読取画像にピントボケが生じるのを抑制することができる。
【0056】
また、プラテンガラス47は、搬送ベルト94に対して接離可能に構成されており、非原稿読取動作時において、プラテンガラス47の表面を搬送ベルト94に近接させて、プラテンガラス47表面に付着したゴミなどの付着物を搬送ベルト94に静電吸着させて除去している。
【0057】
図8は、プラテンガラス47を搬送ベルト94に対して接離させる透光部材接離手段たるガラス接離機構の構成を示す概略構成図である。図9(a)は、ガラス接離機構の構成を示す一部拡大正面図、(b)は一部拡大右側面図である。図8に示すように、プラテンガラス47は、樹脂からなる固定部材120の枠に固定された状態で、スキャナ40の前側板121に突設された前支持台122と後側板123に突設された後支持台124上に載置されている。図9に示すように、後支持台124の側壁には、垂直方向に延びる2個の長孔124aが形成され、固定部材120の側面部に設けられた二個のピン125がこの長孔124aを遊嵌している。固定部材120のピン125がこの後支持台124の長孔124aに沿って移動することにより、後述するようにプラテンガラス47が垂直方向に移動可能となる。なお、図9中では後支持台124のみを図示しているが、前支持台122側も同様な構成にしている。
【0058】
また、図8に示すように、前側板121と前支持台122には、第一カム部材126の第一カム軸127が回転自在に支持されている。第一カム軸127の端部には、第一カムプーリ128が固定されている。後側板123と後支持部材124には、第二カム部材129と第二カム軸130が回転自在に支持されている。第二カム軸130の端部には第二カムプーリ131が固定されている。また、カム部材126・129の下方には、前側板121と後側板123とに軸受を介して回転自在に支持された駆動軸132が設けられている。駆動軸132の前側端部には、第一タイミングプーリ133が固定され、後側端部には、第二タイミングプーリ134と従動プーリ135とが固定されている。第一カムプーリ128と第一タイミングプーリ133とには、第一タイミングベルト136が巻き回されている。また、第二カムプーリ131と第二タイミングプーリ134とには、第二タイミングベルト137が巻き回されている。また、駆動軸132の従動プーリ135には、駆動タイミングベルト138が巻き回されており、駆動タイミングベルト138は、ガラス上下動モータ76のモータ軸76aに固定された駆動プーリ139にも巻き回されている。
【0059】
また、前支持台122上には、プラテンガラス47の基準位置を検知するためのガラスHPセンサ69が設けられている。プラテンガラス47の基準位置は、固定部材120が前支持台122と後支持台124に載置されている状態であって、第一カム部材126、第二カム部材129が固定部材120と離間している状態の位置である。
【0060】
原稿載置台49にセットされた原稿画像読取動作中は、第一固定読取部43の上方に配設されたプラテンガラス47は、前支持台122と後支持台124上に載置されている。このときは、画像読取センサ43aの焦点を中心に鮮明な像を結ぶ光軸上の範囲である被写界深度から外れた位置に配置されている。すなわち、図10に示すように、画像読取センサ43aは、距離L離れた原稿搬送面に焦点を合わせているが、プラテンガラス47の表面には焦点を合わせていない。これにより、仮に、プラテンガラス47の読取位置に異物が付着しても、プラテンガラス47上の異物には、焦点が合っていないので、プラテンガラス47の読取位置上の異物は、ぼやけて画像読取センサ43aに読み取られる。その結果、プラテンガラス47の読取位置上の異物は、ぼやけた薄い縦スジとなって読取画像に現れ、縦スジを目立ちにくくすることができる。さらに、読取画像の濃度が、原稿画像よりも薄くなるように設定されている等、読取条件によっては、プラテンガラス47の読取位置上に異物が付着していても、縦スジが発生しないようにできる。
【0061】
原稿載置台49にセットされた原稿画像の読み取りが終了すると、ガラス上下動モータ76が回転する。ガラス上下動モータ76が回転すると、その駆動力が駆動タイミングベルト138、従動プーリ134を介して駆動軸132に伝達される。駆動軸132から第一タイミングプーリ133、第一タイミングベルト136、第一カムプーリ128を介して、第一カム部材126が回転する。同様に、駆動軸132から第二タイミングプーリ134、第二タイミングベルト137、第二カムプーリ131を介して、第二カム部材129が回転する。すると、第一カム部材126、第二カム部材129が、固定部材120と当接し、固定部材120を上方へ持ち上げる。固定部材120が、第一、第二カム部材126、129により、上方へ持ち上げられると、図9(b)に示すように、固定部材120のピン125が長穴124aに沿って移動する。これにより、図8及び図9中点線で示すように、固定部材120に固定されたプラテンガラス47が距離a上昇して搬送ベルト94へ近接する。ここで、第一カム部材126、第二カム部材129の回転角度はガラスHPセンサ69が検知する基準位置からガラス上下動モータ76を駆動させたパルスカウントによって検知され、ガラス上下動モータ76が停止する。
【0062】
プラテンガラス47が距離a上方へ持ち上げられると、図10示すように、プラテンガラス47の表面は、搬送ベルト94の吸着可能範囲H内に位置している。この時、搬送ベルト94の帯電ローラ98による吸着可能範囲をHとし、プラテンガラス47の移動距離をa、プラテンガラスの厚みをtとしたとき、H>L−(t+a)である。これにより、プラテンガラス47の表面が吸着可能範囲Hに入る。プラテンガラス47上の異物は、原稿MSに付着していたゴミや紙粉である。これらは、レジスト部52やターン部53に設けられたガイド部材と摺擦して摩擦帯電する。また、加圧ベルト95と搬送ベルト94との当接部を搬送される間に帯電する。そして、これら帯電した原稿MSに付着したゴミや紙粉は、原稿MSが加圧ベルト95と搬送ベルトとの当接部を抜けたとき等に原稿MSから脱落してプラテンガラス47に付着する。よって、プラテンガラス47上の異物は、通常帯電している。このため、プラテンガラス47上の異物Fは、搬送ベルト94の吸着可能範囲内では静電的に搬送ベルト94へ移動して、搬送ベルト94に付着する。これにより、プラテンガラス47上の異物が除去される。その結果、異物によるぼやけた薄い縦スジも生じなくなる。
搬送ベルト94に吸着したゴミや紙粉は、搬送ベルト表面を清掃するクリーニングブレードなどの不図示の清掃手段により搬送ベルト94の表面から除去される。
【0063】
次に、本実施形態の変形例について、説明する。
【0064】
[変形例1]
図11は、変形例1の画像読取装置における第一固定読取部の周辺を示す構成図である。
この変形例1の画像読取装置は、図12に示すように、加圧ベルト95を搬送ベルト94に対して接離可能に構成したものである。
【0065】
図13は、加圧ベルト95を搬送ベルト94に対して接離させる接離手段たる加圧ベルト接離機構の概略構成図である。
ベルト接離機構は、加圧ベルト95を張架する複数のローラを回転自在に支持し、ADFの筐体に回転自在に支持されているハウジング112、このハウジング112を回動させる回動手段たるベルト接離モータ110などを有している。
ハウジング112には、加圧ベルト95を張架する複数のローラのうち、原稿搬送方向最上流に位置する張架ローラ95aと同軸上に、支持軸112aが設けられている。この支持軸112aが、ADFの筐体に回転自在に支持されている。また、支持軸112aと、ベルト接離モータ110との間にタイミングベルト111が巻き回されている。また、ハウジング112には、不図示のフィラー部材が設けられており、加圧ベルト95が離間位置にあるとき、不図示のセンサが、フィラー部材を検知している。
【0066】
先の図11に示すように、原稿搬送方向最上流に位置する加圧ベルトの張架ローラ95aは、搬送ベルト94よりも原稿搬送方向上流側に位置している。そして、この張架ローラ95aは加圧ベルト95を介して入口ローラ99と当接している。
【0067】
非原稿読取時においては、図12の実線に示すように、加圧ベルト95は、搬送ベルト94から離間している。ハウジング112の回動の支点が、搬送ベルト94よりも原稿搬送方向上流側にあるので、加圧ベルト95が離間位置にあるとき、加圧ベルト95は、搬送ベルト94から完全に離間している。
【0068】
原稿読取が開始され、原稿の先端が搬送ベルト94へ進入するのに同期して、加圧ベルト95の原稿搬送方向上流側を搬送ベルト94に当接させる。具体的には、制御手段たる本体制御部100は、レジストセンサ61が原稿の先端を検知したら、読取モータ73の駆動パルスをカウントし、駆動パルスが所定値となったら、ベルト接離モータ110を駆動させて、ハウジング112を反時計回りに回転させる。これにより、搬送ベルト94の最上流側の張架ローラ94aと中間の張架ローラ94bとの張架領域に加圧ベルト95が当接する。そして、さらにハウジング112を反時計回りに回転していき、原稿の先端が、中間張架ローラ94bの張架部分に到達する前に、原稿搬送方向最下流の加圧ベルト張架ローラ95cが加圧ベルト95を介して搬送ベルト94に当接させる。加圧ベルト張架ローラ95cが加圧ベルト95を介して搬送ベルト94に当接したら、ベルト接離モータ110の駆動を停止する。具体的には、ベルト接離モータ110が駆動して、ハウジング112を反時計回りに回転すると、不図示のセンサが、フィラー部材を検知しなくなる。不図示のセンサが、フィラー部材を検知しなくなったら、ベルト接離モータ110の駆動パルスをカウントし、カウント数が所定値となったら、加圧ベルト95が当接位置に到達したと判定し、ベルト接離モータ110の駆動を停止する。
【0069】
原稿の後端が、搬送ベルト94と加圧ベルト95との当接部を抜けたら、ベルト接離モータ110を逆回転させ、加圧ベルト95を搬送ベルト94から離間させる。具体的には、レジストセンサ61が、原稿の後端を検知したら、読取モータ73の駆動パルスをカウントし、駆動パルスが所定値となったら、ベルト接離モータ110の逆回転駆動を開始する。すると、ハウジング112が時計回りに回動し、不図示のセンサが、不図示のフィラー部材を検知する。不図示のセンサが不図示のフィラー部材を検知したら、加圧ベルト95が離間位置に到達したと判定し、ベルト接離モータ110の駆動を停止する。ベルト接離モータ110の駆動パルスをカウントし、カウント数が所定値となったら、加圧ベルト95が離間位置に到達したと判定してもよい。この場合は、フィラー部材やセンサが不要となり部品点数が削減され、コストを抑えることができるというメリットがある反面、加圧ベルト95の搬送ベルト94に対する吸着力が大きくなったとき、ベルト接離モータ110の脱調がおこり、正しい位置制御が行われないおそれがあるというデメリットがある。よって、ベルト接離モータ110の駆動パルスをカウントし、カウント数が所定値となったら、加圧ベルト95が離間位置に到達したと判定する場合、加圧ベルト95を帯電しにくい部材として、加圧ベルト95の搬送ベルト94に対する吸着力を抑制するよう構成するのが好ましい。
【0070】
このように、原稿の先端が、搬送ベルト94に進入するときに、加圧ベルト95を搬送ベルト94に当接させ、原稿の後端が搬送ベルト94と加圧ベルト95との当接部を抜けたら、加圧ベルト95を搬送ベルト94から離間させるよう制御することによって、必要なときにのみ、加圧ベルト95を搬送ベルト94に当接させることができる。その結果、加圧ベルト95が搬送ベルト94に吸着するのを抑制することができ、原稿の先端が、加圧ベルト95と搬送ベルト94との当接部に容易に進入させることができる。これにより、搬送不良を抑制することができる。
【0071】
また、上述では、最初に原稿搬送方向上流側からある程度の下流まで、加圧ベルト95が搬送ベルト94と当接するが、図16に示すように、加圧ベルト95の原稿搬送方向最上流部分から順に搬送ベルト94に当接するような構成にしてもよい。この場合、加圧ベルト95の原稿搬送方向上流側から順に搬送ベルト94に当接する当接速度が、原稿の搬送速度と同じとなるようにベルト接離モータ110を制御する。これにより、搬送ベルトに吸着して搬送されている原稿の先端を順次加圧ベルトで押さえるようなかたちで搬送される。その結果、原稿の先端が加圧ベルトを押し退けて搬送されるのを抑制し、原稿先端のダメージを抑制することができる。
【0072】
また、原稿の一部が、加圧ベルト95と搬送ベルト94との間に挟まれて搬送されているときに、紙詰まりが発生したら、加圧ベルト95を離間位置へ移動させるよう制御するのが好ましい。具体的には、本体制御部100は、レジストセンサ61が原稿の先端を検知してから、所定のタイミングで原稿の先端が排紙センサ63を通過した否かを監視する。そして、所定タイミングで原稿の先端が通過しなかった場合、本体制御部100は、搬送異常が生じたと検知する。すなわち、レジストセンサ61、排紙センサ63、本体制御部100で異常検知手段を構成している。本体制御部100が、搬送異常を検知したら、原稿の搬送を停止する。また、このとき、加圧ベルト95は、搬送ベルト94に当接しているので、ベルト接離モータ110を逆回転させ、加圧ベルト95を搬送ベルト94から離間させる。次に、本体制御部100は、操作部101の表示部に搬送不良が生じた旨を表示するなどして、ユーザーに報知する。
【0073】
このように、搬送不良が生じたとき、加圧ベルト95を搬送ベルト94から離間させることで、原稿の除去を容易に行うことができる。
【0074】
また、搬送異常が生じたとき、原稿は、搬送ベルト94に吸着しており、原稿が、搬送ベルト94から剥がしにくい場合がある。このため、図14に示すように、搬送ベルト94の原稿搬送領域を変形させるための変形手段たる加圧部材113を設けてもよい。加圧部材113は、搬送ベルト面に対して、垂直方向に移動可能に支持されている。そして、搬送異常が生じたとき、加圧ベルト95の離間動作に同期して、加圧部材113を搬送ベルト94の原稿搬送領域側へ移動させる。すると、加圧部材113が搬送ベルト94の裏面に当接し、搬送ベルトを下方へ移動させる。その結果、プラテンガラス47の表面と平行な搬送ベルト94の原稿搬送領域が、図中実線に示すように変形する。すると、搬送ベルト94に吸着していた原稿の先端が、曲率分離により搬送ベルト94から剥離する。このように、原稿の先端部分が剥離することで、搬送ベルト94に吸着した原稿を除去しやくなり、ジャム処理を容易に行うことができる。なお、原稿の先端部分は、読取出口ローラ対90を通過し、原稿の後端部分が、搬送ベルト94に吸着しているような状態のときは、加圧部材113で搬送ベルト94の原稿搬送領域の形状を変化させたとき、原稿の後端が、搬送ベルト94から剥離する。
【0075】
また、図15に示すように、搬送ベルトと加圧ベルトとの当接部出口から読取出口ローラ対90のニップ部まで原稿が直線状に搬送されるのが好ましい。これにより、読取出口ローラ対90のニップまで原稿が搬送される間に原稿の姿勢が直線から変化することがなく、原稿の剛性によって、原稿が搬送ベルト94から剥離する力が生じない。このため、原稿が搬送ベルト94から剥離するのを抑制することができる。特に、剛性の大きな厚紙の原稿を搬送する場合は、原稿の姿勢が直線から変化したときの原稿が搬送ベルト94から剥離する力が大きくなるので、上述のように、読取位置から読取出口ローラ対のニップ部まで原稿が直線状に搬送するのがこのましい。
【0076】
以上、本実施形態の原稿搬送装置たるADF41は、複数の張架ローラに張架され、透光部材たるプラテンガラス47に対して所定距離を有して対向配置された搬送ベルト94と、搬送ベルト94を帯電させる帯電手段たる帯電ローラ98とを備え、搬送ベルト94に原稿を静電吸着させて、読取位置へ原稿を搬送するものである。そして、本実施形態のADF41は、搬送ベルト94の原稿が吸着して搬送される原稿搬送領域の原稿搬送方向最上流から読取位置近傍まで搬送ベルト94に当接するよう、複数の張架ローラに張架された加圧ベルト95を設けている。これにより、原稿は、搬送ベルト94に対する吸着力が高まってから、加圧ベルト95と搬送ベルト94との当接部を抜ける。これにより、原稿の搬送ベルト94に吸着している部分に搬送ベルト94から剥離させるような力が生じても、原稿の搬送ベルト94に吸着している部分が、搬送ベルト94から剥離するのを抑制することができる。その結果、読取画像にピントボケが生じるのを抑制することができる。
【0077】
また、搬送ベルト94と加圧ベルト95との当接部出口から読取位置までの原稿搬送経路を、当接部出口における原稿搬送方向に沿って直線状にした。これにより、搬送ベルト94と加圧ベルト95との当接部の出口を抜けた原稿は、当接部出口における原稿搬送方向に沿ってまっすぐに読取位置まで搬送されるので、当接部出口から読取位置まで搬送される途中で、曲率分離によって原稿が搬送ベルトから剥離するのを防止することができる。
【0078】
特に、図15に示すように、搬送ベルト94と加圧ベルト95との当接部出口から搬送ベルト94に隣接し、搬送ベルト94よりも原稿搬送方向下流側に位置する読取出口ローラ対90のニップ入口までの原稿搬送経路を、当接部出口における原稿搬送方向に沿って直線状にすることで、曲率分離によって原稿が搬送ベルトから剥離するのを防止することができる。
【0079】
また、変形例1によれば、加圧ベルト95を搬送ベルト94に対して接離させる接離手段たる加圧ベルト接離機構を設けたので、次のように加圧ベルト95を搬送ベルト94に対して接離すれば、加圧ベルト95が搬送ベルト94に吸着するのを抑制することができる。すなわち、原稿非搬送時は、加圧ベルト95を搬送ベルト94から離間させ、原稿が搬送ベルト94への進入に同期して、加圧ベルト95が搬送ベルト94に当接するよう制御するのである。このように制御することで、加圧ベルト95は、必要なときのみ、搬送ベルト94に当接することになるので、常に加圧ベルト95が搬送ベルト94に当接するものに比べて、加圧ベルト95が帯電するのを抑制することができる。その結果、加圧ベルト95が搬送ベルト94に吸着するのを抑制することができる。加圧ベルト95が搬送ベルト94に吸着するのを抑制することで、加圧ベルト95と搬送ベルト94とのニップ部に原稿が進入しやすくなり、紙詰まりが発生するのを抑制することができる。
【0080】
また、加圧ベルト接離機構は、加圧ベルト95を張架する複数の張架ローラを支持し、ADF41に可動可能に取り付けられたハウジング112と、ハウジング112を回動させる回動手段たるベルト接離モータ110と備えている。また、ハウジング112の回動の支点を加圧ベルト95の搬送ベルト94当接部よりも原稿搬送方向上流側に設けた。このように、回動の支点が加圧ベルト95の搬送ベルト94当接部よりも原稿搬送方向上流側にあるので、ハウジング112を回動させるだけで、加圧ベルト95を搬送ベルト94から完全に離間させることができる。
【0081】
また、図16に示すように、加圧ベルト95が、搬送ベルト94の原稿搬送方向上流側から順に当接するよう構成し、加圧ベルト95の原稿搬送方向上流側から順に搬送ベルト94に当接する当接速度が、原稿の搬送速度と同じとなるように加圧ベルト接離機構を制御する。このように制御することによって、搬送ベルト94に吸着した原稿の先端が、搬送ベルト94に当接している加圧ベルト95を押し退けて搬送されるのを抑制することができ、原稿の先端にダメージが生じるのを抑制することができる。
【0082】
また、原稿の搬送異常を検知する異常検知手段(レジストセンサ、排紙センサ、本体制御部などで構成)が、搬送異常を検知したら、加圧ベルト95を搬送ベルト94から離間させる。これにより、ユーザーがジャム処理を行う場合、搬送ベルト94に吸着した原稿を容易に除去することができる。
【0083】
また、図14に示すように、搬送ベルト94の原稿搬送領域を変形させる変形手段たる加圧部材113を備え、異常検知手段が、搬送異常を検知したら、搬送ベルト94の原稿搬送領域を変形させる。加圧部材113により搬送ベルトの原稿搬送領域の形状を変形させることにより、搬送ベルト94に吸着した原稿が、曲率分離により搬送ベルトから剥離する。これにより、ユーザーがジャム処理を行う場合、搬送ベルト94に吸着した原稿を容易に除去することができる。
【0084】
また、加圧ベルト95の搬送ベルト94からの離間と同期して、搬送ベルト94の原稿搬送領域を変形させるのが好ましい。これにより、加圧ベルト95の搬送ベルト94からの離間動作が完了してから、搬送ベルト94の原稿搬送領域を変形させるのに比べて、ジャム処理のためのお待たせ時間を短縮させることができる。
【0085】
また、加圧ベルト95を帯電しにくい部材にすることによって、加圧ベルト95が、搬送ベルトに静電吸着するのを抑制することができる。
【0086】
また、本実施形態に係る画像読取装置たる原稿搬送読取ユニット1は、上述したADF41を備えることで、良好に原稿画像を読取ることができる。
【0087】
また、本実施形態の原稿搬送読取ユニット1は、プラテンガラス47を、搬送ベルト94に対して接離させる透光部材接離手段たるガラス接離機構を設けている。非画像読取時に、プラテンガラス47を搬送ベルトに近接させるようにガラス接離機構を制御すれば、プラテンガラス47表面に付着したゴミや紙粉などの付着物を帯電した搬送ベルトに吸着させて、プラテンガラス47から除去することができる。これにより、読取画像に縦スジが生じるのを抑制することができる。
【0088】
また、本実施形態に係る複写機によれば、上述した画像読取装置を用いることにより、良好な画像を複写することができる。
【符号の説明】
【0089】
1:原稿搬送読取ユニット(画像読取装置)
40:スキャナ(画像読取手段)
41:ADF(原稿搬送装置)
47:プラテンガラス(透光部材)
61:レジストセンサ
63:排紙センサ
89:読取入口ローラ対
90:読取出口ローラ対
94:搬送ベルト
95:加圧ベルト
98:帯電ローラ
100:本体制御部(制御手段)
110:ベルト接離モータ(回動手段)
112:ハウジング
113:加圧部材(変形手段)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0090】
【特許文献1】特開2007−159033号公報
【特許文献2】特開2008−22252号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の張架ローラに張架され、画像読取装置の透光部材に対して所定距離を有して対向配置された搬送ベルトと、
該搬送ベルトを帯電させる帯電手段とを備え、
上記搬送ベルトに上記原稿を静電吸着させて、上記画像読取装置の読取位置へ原稿を搬送する原稿搬送装置において、
上記搬送ベルトの原稿が吸着して搬送される原稿搬送領域の原稿搬送方向最上流から読取位置近傍まで上記搬送ベルトに当接するように、複数の張架ローラに張架される加圧ベルトを設けたことを特徴とする原稿搬送装置。
【請求項2】
請求項1の原稿搬送装置において、
上記搬送ベルトと上記加圧ベルトとの当接部出口から上記読取位置までの原稿搬送経路を、上記当接部出口における原稿搬送方向に沿って直線状にしたことを特徴とする原稿搬送装置。
【請求項3】
請求項2の原稿搬送装置において、
上記搬送ベルトと上記加圧ベルトとの当接部出口から上記搬送ベルトに隣接し、上記搬送ベルトよりも原稿搬送方向下流側に位置する読取出口ローラ対のニップ入口までの原稿搬送経路を、上記当接部出口における原稿搬送方向に沿って直線状にしたことを特徴とする原稿搬送装置。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれかの原稿搬送装置において、
上記加圧ベルトを上記搬送ベルトに対して接離させる接離手段を設けたことを特徴とする原稿搬送装置。
【請求項5】
請求項4の原稿搬送装置において、
上記接離手段は、上記加圧ベルトを張架する複数の張架ローラを支持し、装置本体に回動可能に取り付けられたハウジングと、該ハウジングを回動させる回動手段と備え、
上記ハウジングの回動の支点を上記加圧ベルトの上記搬送ベルト当接部よりも原稿搬送方向上流側に設けたことを特徴とする原稿搬送装置。
【請求項6】
請求項5の原稿搬送装置において、
原稿非搬送時は、上記加圧ベルトを上記搬送ベルトから離間させ、原稿の上記搬送ベルトへの進入に同期して、上記加圧ベルトの原稿搬送方向上流側が上記搬送ベルトに当接するよう上記接離手段を制御する制御手段を備えたことを特徴とする原稿搬送装置。
【請求項7】
請求項6の原稿搬送装置において、
上記加圧ベルトが、上記搬送ベルトの原稿搬送方向上流側から順に当接するよう構成されており、
上記制御手段は、上記加圧ベルトの原稿搬送方向上流側から順に上記搬送ベルトに当接する当接速度が、上記原稿の搬送速度と同じとなるように上記接離手段を制御することを特徴とする原稿搬送装置。
【請求項8】
請求項4乃至7いずれかの原稿搬送装置において、
原稿の搬送異常を検知する異常検知手段と、
上記異常検知手段が、搬送異常を検知したら、上記加圧ベルトを上記搬送ベルトから離間するよう上記接離手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする原稿搬送装置。
【請求項9】
請求項8の原稿搬送装置において、
上記搬送ベルトの原稿搬送領域を変形させる変形手段を備え、
上記制御手段は、上記異常検知手段が、搬送異常を検知したら、上記搬送ベルトの原稿搬送領域を変形させるよう上記変形手段を制御することを特徴とする原稿搬送装置。
【請求項10】
請求項9の原稿搬送装置において、
上記制御手段は、上記加圧ベルトの上記搬送ベルトからの離間と同期して、上記搬送ベルトの原稿搬送領域を変形させるよう上記変形手段を制御することを特徴とする原稿搬送装置。
【請求項11】
請求項1乃至10いずれかの原稿搬送装置において、
上記加圧ベルトが帯電しにくい部材からなることを特徴とする原稿搬送装置。
【請求項12】
原稿を搬送する原稿搬送手段と、
読取位置で透光部材を介して上記原稿搬送手段によって搬送される原稿の原稿画像を読み取る画像読取手段とを備えた画像読取装置において、
上記原稿搬送手段として、請求項1乃至11のいずれかの原稿搬送装置を用いたことを特徴とする画像読取装置。
【請求項13】
請求項12の画像読取装置において、
上記透光部材を、上記搬送ベルトに対して接離させる透光部材接離手段を設けたことを特徴とする画像読取装置。
【請求項14】
画像読取装置と、
該画像読取装置で読み取った原稿画像に基づいて画像を形成する画像形成手段とを備える画像形成装置において、
該画像読取装置として、請求項12または13の画像読取装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
複数の張架ローラに張架され、画像読取装置の透光部材に対して所定距離を有して対向配置された搬送ベルトと、
該搬送ベルトを帯電させる帯電手段とを備え、
上記搬送ベルトに上記原稿を静電吸着させて、上記画像読取装置の読取位置へ原稿を搬送する原稿搬送装置において、
上記搬送ベルトの原稿が吸着して搬送される原稿搬送領域の原稿搬送方向最上流から読取位置近傍まで上記搬送ベルトに当接するように、複数の張架ローラに張架される加圧ベルトを設けたことを特徴とする原稿搬送装置。
【請求項2】
請求項1の原稿搬送装置において、
上記搬送ベルトと上記加圧ベルトとの当接部出口から上記読取位置までの原稿搬送経路を、上記当接部出口における原稿搬送方向に沿って直線状にしたことを特徴とする原稿搬送装置。
【請求項3】
請求項2の原稿搬送装置において、
上記搬送ベルトと上記加圧ベルトとの当接部出口から上記搬送ベルトに隣接し、上記搬送ベルトよりも原稿搬送方向下流側に位置する読取出口ローラ対のニップ入口までの原稿搬送経路を、上記当接部出口における原稿搬送方向に沿って直線状にしたことを特徴とする原稿搬送装置。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれかの原稿搬送装置において、
上記加圧ベルトを上記搬送ベルトに対して接離させる接離手段を設けたことを特徴とする原稿搬送装置。
【請求項5】
請求項4の原稿搬送装置において、
上記接離手段は、上記加圧ベルトを張架する複数の張架ローラを支持し、装置本体に回動可能に取り付けられたハウジングと、該ハウジングを回動させる回動手段と備え、
上記ハウジングの回動の支点を上記加圧ベルトの上記搬送ベルト当接部よりも原稿搬送方向上流側に設けたことを特徴とする原稿搬送装置。
【請求項6】
請求項5の原稿搬送装置において、
原稿非搬送時は、上記加圧ベルトを上記搬送ベルトから離間させ、原稿の上記搬送ベルトへの進入に同期して、上記加圧ベルトの原稿搬送方向上流側が上記搬送ベルトに当接するよう上記接離手段を制御する制御手段を備えたことを特徴とする原稿搬送装置。
【請求項7】
請求項6の原稿搬送装置において、
上記加圧ベルトが、上記搬送ベルトの原稿搬送方向上流側から順に当接するよう構成されており、
上記制御手段は、上記加圧ベルトの原稿搬送方向上流側から順に上記搬送ベルトに当接する当接速度が、上記原稿の搬送速度と同じとなるように上記接離手段を制御することを特徴とする原稿搬送装置。
【請求項8】
請求項4乃至7いずれかの原稿搬送装置において、
原稿の搬送異常を検知する異常検知手段と、
上記異常検知手段が、搬送異常を検知したら、上記加圧ベルトを上記搬送ベルトから離間するよう上記接離手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする原稿搬送装置。
【請求項9】
請求項8の原稿搬送装置において、
上記搬送ベルトの原稿搬送領域を変形させる変形手段を備え、
上記制御手段は、上記異常検知手段が、搬送異常を検知したら、上記搬送ベルトの原稿搬送領域を変形させるよう上記変形手段を制御することを特徴とする原稿搬送装置。
【請求項10】
請求項9の原稿搬送装置において、
上記制御手段は、上記加圧ベルトの上記搬送ベルトからの離間と同期して、上記搬送ベルトの原稿搬送領域を変形させるよう上記変形手段を制御することを特徴とする原稿搬送装置。
【請求項11】
請求項1乃至10いずれかの原稿搬送装置において、
上記加圧ベルトが帯電しにくい部材からなることを特徴とする原稿搬送装置。
【請求項12】
原稿を搬送する原稿搬送手段と、
読取位置で透光部材を介して上記原稿搬送手段によって搬送される原稿の原稿画像を読み取る画像読取手段とを備えた画像読取装置において、
上記原稿搬送手段として、請求項1乃至11のいずれかの原稿搬送装置を用いたことを特徴とする画像読取装置。
【請求項13】
請求項12の画像読取装置において、
上記透光部材を、上記搬送ベルトに対して接離させる透光部材接離手段を設けたことを特徴とする画像読取装置。
【請求項14】
画像読取装置と、
該画像読取装置で読み取った原稿画像に基づいて画像を形成する画像形成手段とを備える画像形成装置において、
該画像読取装置として、請求項12または13の画像読取装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−105502(P2011−105502A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264980(P2009−264980)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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