説明

原稿読取装置および画像形成装置

【課題】ADFカバーとFBカバーとの双方を有しそれらの開閉センサが共通化されていても,両カバーの開放状況に応じた適切なストッパ待避制御が行われるようにした原稿読取装置および画像形成装置を提供すること。
【解決手段】 カバー開閉検出センサの出力信号が開となると,ストッパを待避させる必要が生じる。するとまず,給紙搬送路における原稿の有無を確認する((503),(504))。そしてその結果により,待避処理の内容を変更する。給紙搬送路に原稿がある場合には,FBカバーが開いているものと考えられるので,状況が変化するまで待避処理を反復する(505)。給紙搬送路に原稿がない場合には,FBカバーは開いてないものと考えられるので,待避処理を1回だけ行う((506)および(507))。これにより,簡易なカバー開閉検出センサであっても,開いているカバーがどれであるか適切な判定をし,必要な待避処理が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,原稿の画像を読み取る原稿読取装置に関する。さらに詳細には,フラットベットでの個別の原稿の読み取りと,多数枚の原稿の自動搬送読み取りとの双方が可能であり,かつ,自動搬送読み取りに供する原稿束の先端位置を規制する先端規制部材を有する原稿読取装置およびそれを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,コピー機やファクス機,スキャナ機等,原稿の画像を読み取る機能を有する装置には,読み取りに供する多数枚の原稿を載置して1枚ずつ順に送り出す自動原稿搬送装置(以下,「ADF」という)を備えているものがある。この種の装置では,自動原稿搬送に供する原稿の束の先端位置を規制する必要がある。
【0003】
このため例えば特許文献1では,原稿トレイに原稿がセットされる際に,その原稿の先端を検出するセンサを備えている。新たにセットされる原稿の先端を当該センサが検出すると,ストッパを突出させて原稿の先端位置を規制するのである。または,ストッパの代わりに給紙ローラを下降させることで負荷を掛け,原稿の先端が正しい位置に到達したことをユーザに知らしめる。また,ストッパをあらかじめ突出させておく装置もある。
【0004】
このようなストッパは,搬送開始時には待避させる必要がある。また,ADFのジャム処理等のため,ADFの部位を開放するADFカバーが設けられているのが普通であり,ADFカバー開放時にもストッパを待避させる必要がある。ADFカバー開放時にストッパが突出したままになっていると,ADFカバーを閉めるときに,原稿トレイに既にセットされている原稿をストッパが傷つけてしまうおそれがあるからである。ADFの途中で停止したままの原稿を取り除かずにADFカバーを閉めてしまう場合にも,同様に原稿が傷つけられてしまうおそれがある。
【0005】
さらに,原稿の自動搬送とは別に,個別の原稿をフラットベッドに載置させて画像を読み取るいわゆる置き撮りも一般的であり,1台の装置で両方の読取ができるようになっているものも多い。このような装置では,ADFカバーと別に,フラットベッドを開放するFBカバーがある。このため,それぞれのカバーの開閉を独立に検出できるセンサを備えているものもある。ADFカバーが開かれたときにはストッパを待避させる必要があるが,FBカバーが開かれたときにはその必要がないからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−263290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら,前記した従来の原稿読取装置には,次のような問題点があった。まず,原稿トレイにセットされる原稿を検知してストッパを突出させる装置の場合には,装置の小型化が困難であった。ストッパの突出にある程度の時間が掛かるため,センサの検出位置からストッパの突出位置までの距離を長くとる必要があるからである。一方,ストッパをあらかじめ突出させておく装置であればある程度の小型化は可能である。しかしその場合でも,ストッパを自動的に待避および突出させる機構がメカ構成であれば,複雑なメカ機構が必要で部品点数が多く,結果的には大した小型化にはなっていなかった。
【0008】
電磁ソレノイドを用いれば待避突出機構の小型化は可能である。しかし前述のように,ストッパを待避させる必要があるのは搬送開始時の他にADFカバー開放時がある一方,FBカバー開放時にはその必要がない。そのためのカバー検出センサが2台必要で,コストアップ要因になっていた。両カバーの検出センサを共通化することはできるが,その場合には,開放されたカバーがADFカバーとFBカバーとのどちらであるかの判別ができない。そのため,FBカバーが開けられただけでもストッパを待避させようとする制御が働くことになる。
【0009】
しかし,FBカバーが開けられただけでADFカバーは閉まっている場合には,電磁ソレノイドを引くだけではストッパを待避させることはできない。なぜならストッパは,搬送開始と連動しても待避する必要があるため,搬送のための駆動系とも連結しているからである。ADFカバーが閉まっているということは自動搬送が可能な状態であり,この連結が解除されていないのである。このため,FBカバーが開けられたことでストッパを待避させようとして電磁ソレノイドを引いても,ストッパは待避できないのである。これにより,電磁ソレノイドを無駄に引き続けてしまう問題があった。一方で上記のようにADFカバーが開けられた場合には必ずストッパを待避させる必要がある。
【0010】
本発明は,前記した従来のが有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,ADFカバーとFBカバーとの双方を有しそれらの開閉センサが共通化されていても,両カバーの開放状況に応じた適切なストッパ待避制御が行われるようにした原稿読取装置,およびそれを搭載した画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の原稿読取装置は,自動搬送読取用の読取位置と個別読取用の読取位置とを備える画像読取部と,画像読取部の両方の読取位置を開閉可能に覆う第1カバーと,第1カバーに搭載された原稿トレイと,第1カバーに搭載され第1カバーが閉じられている状態では原稿トレイから画像読取部の自動搬送読取用の読取位置へ原稿を搬送する自動原稿搬送装置とを有する原稿読取装置であって,自動原稿搬送装置は,原稿トレイから画像読取部の自動搬送読取用の読取位置への搬送経路と,搬送経路の途中に位置し原稿を搬送する搬送ローラと,搬送経路における原稿の存在を検知する原稿センサと,搬送ローラへの回転駆動源と,回転駆動源に繋がっている第1駆動伝達部材と,搬送経路を開閉可能に覆う第2カバーとを有し,第2カバーには,第2カバーが閉じられている状態では第1駆動伝達部材に連結され,第2カバーが開いている状態では第1駆動伝達部材から外れる第2駆動伝達部材と,第2カバーが閉じられている状態で原稿トレイ上の原稿の先端位置を規制する突出状態と,その突出状態から待避した待避状態との2通りの状態をとるストッパと,第2駆動伝達部材から回転駆動を受けて移動し,ストッパを突出状態とする第1位置と,ストッパを待避状態とする第2位置とをとるピックアップ部材と,第2駆動伝達部材とピックアップ部材との間に配置され,第2駆動伝達部材からピックアップ部材への回転駆動のうち,第2位置から第1位置へ移動する向きの回転駆動を伝達するとともにその逆向きの回転駆動を伝達しないワンウェイクラッチと,ピックアップ部材に設けられ,ピックアップ部材の移動とともに移動する第1係合部と,ピックアップ部材が第1位置にあるときに限り第1係合部と係合することができ,係合状態ではピックアップ部材を第1位置に固定する第2係合部と,オンされることにより第2係合部を第1係合部から引き抜くソレノイドと,第1カバーと第2カバーとのいずれもが閉じている状態と,第1カバーと第2カバーとの少なくとも一方が開いている状態とを判別する開閉センサとが設けられており,開閉センサが開を検出したときに,ピックアップ部材を第2位置にさせることでストッパを待避状態とさせる待避制御部を有し,待避制御部は,原稿センサが原稿を検出している場合には,原稿センサが原稿を検出しなくなるか,開閉センサが閉を検出するまでソレノイドにより第2係合部を第1係合部から引き抜き続け,原稿センサが原稿を検出していない場合には,あらかじめ定めた回数の範囲内に限り,ソレノイドにより第2係合部を第1係合部から引き抜くものである。
【0012】
この原稿読取装置では,開閉センサが開を検出すると,待避制御部が,ストッパを待避状態とさせる。カバーが閉じられるときに原稿をストッパで傷つけないためである。具体的には,ピックアップ部材を第2位置にさせることでストッパを待避させる。ここで,その制御の内容は,原稿センサの検知状況により異なる。原稿センサが原稿を検出しているか否かにより異なる。原稿センサが原稿を検出している場合には,第2カバーが開かれている可能性が高い。ユーザが当該原稿を搬送経路から取り除こうとする筈だからである。そのため,当該原稿をストッパで傷つけないためにも,ストッパを待避状態にし続ける必要がある。そこで待避制御部は,原稿センサが原稿を検出しなくなるか,開閉センサが閉を検出するまでソレノイドにより第2係合部を第1係合部から引き抜き続ける。これにより第2係合部と第1係合部との係合によるピックアップ部材の固定が解除される。また,第2カバーが開かれているはずなので,第1駆動伝達部材と第2駆動伝達部材との連結は解除されているはずである。このためピックアップ部材は第2位置へ移動し,ストッパは解除状態となる。
【0013】
一方,原稿センサが原稿を検出していない場合には,第2カバーが開かれている可能性は低い。ということは逆に第1カバーが開かれている可能性が高い。そのため,搬送経路上の原稿を考慮する必要はないが,原稿トレイに載置されている原稿を保護するため,最低1回ストッパを待避させて置く必要がある。そこで待避制御部は,あらかじめ定めた回数の範囲内に限り,ソレノイドにより第2係合部を第1係合部から引き抜く。これにより,開閉センサが上記のようなものであっても,第1カバーおよび第2カバーの開閉状態に応じたストッパ待避制御がなされるようになっている。
【0014】
本発明の原稿読取装置では,第2カバーに,第2駆動伝達部材とワンウェイクラッチとの間に位置し,回転駆動を伝達する状態と伝達しない状態とを切り替えるクラッチが備えられており,待避制御部は,ストッパを待避状態とさせるに先立ち,クラッチを非伝達状態とするものであればなおよい。クラッチを切ることにより,開いているカバーがたとえ第1カバーであったとしても,つまり第2カバーが閉まっていたとしても,ピックアップ部材を第2駆動伝達部材からフリーにできる。このため待避制御部の制御処理により,ストッパを待避させることができる。
【0015】
本発明の原稿読取装置では,自動原稿搬送装置におけるジャムの発生を示すジャムフラグ指示部を有し,待避制御部は,原稿センサが原稿を検出しているかあるいはジャムフラグ指示部がジャムの発生を示している場合に,原稿センサが原稿を検出しなくなるか,開閉センサが閉を検出するまでソレノイドにより第2係合部を第1係合部から引き抜き続け,原稿センサが原稿を検出しておらず,かつジャムフラグ指示部がジャムの発生を示していない場合に,あらかじめ定めた回数の範囲内に限り,ソレノイドにより第2係合部を第1係合部から引き抜くようにしてもよい。これにより,より確実に,ジャム発生の判断がなされる。
【0016】
本発明の画像形成装置は,上記のいずれの原稿読取装置と,原稿読取装置で読み取った画像を記録媒体上に形成する画像形成部とを有するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば,ADFカバーとFBカバーとの双方を有しそれらの開閉センサが共通化されていても,両カバーの開放状況に応じた適切なストッパ待避制御が行われるようにした原稿読取装置,およびそれを搭載した画像形成装置が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態に係る画像形成装置の外観図である。
【図2】実施の形態に係る画像形成装置における原稿読み取り部の断面図である。
【図3】実施の形態に係る画像形成装置においてFBカバーを閉じたままADFカバーを開いた状態を示す外観図である。
【図4】実施の形態に係る画像形成装置においてADFカバーを閉じたままFBカバーを開いた状態を示す外観図である。
【図5】実施の形態に係る画像形成装置のカバー開閉検出センサを示す図である。
【図6】FBカバーおよびADFカバーがともに閉じている状態でのカバー開閉検出センサの状況を示す図である。
【図7】FBカバーが閉じADFカバーが開いている状態でのカバー開閉検出センサの状況を示す図である。
【図8】FBカバーが開きADFカバーが閉じている状態でのカバー開閉検出センサの状況を示す図である。
【図9】ADFに内蔵される駆動機構の説明図である。
【図10】ピックアップユニットの動きを説明する図である。
【図11】実施の形態に係る画像形成装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図12】実施の形態に係る画像形成装置のADFの制御フローを示すフローチャート(その1)である。
【図13】実施の形態に係る画像形成装置のADFの制御フローを示すフローチャート(その2)である。
【図14】実施の形態に係る画像形成装置のADFの制御フローを示すフローチャート(その3)である。
【図15】実施の形態に係る画像形成装置のADFの制御フローを示すフローチャート(その4)である。
【図16】実施の形態に係る画像形成装置のADFの制御フローを示すフローチャート(その5)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,図1に外観を示す画像形成装置における原稿読み取り部分に本発明を適用したものである。
【0020】
図1の画像形成装置1では,装置中の上部に原稿読取装置2が配置されている。原稿読取装置2の下方に画像形成部3が配置されている。画像形成部3には,感光体ドラムその他の,トナーにより画像を形成するための公知の構成が内蔵されている。画像形成部3と原稿読取装置2との間には隙間があり,画像形成部3の上面が排紙トレイ4となっている。画像形成部3のさらに下方には給紙部5が配置されている。画像形成装置1は全体として,給紙部5から供給された用紙に対し,原稿読取装置2で原稿から取得した画像データに基づいて,画像形成部3で画像形成して排紙トレイ4上に排出するように構成されている。
【0021】
画像形成装置1における原稿読取装置2の断面図を図2に示す。図2に示されるように原稿読取装置2は,ADF(Automatic Document Feeder)10と,画像読取部11とにより構成されている。ADF10は,複数枚載置された原稿群から,画像読取部11での読み取りのために原稿を1枚ずつ搬送する装置である。画像読取部11は,原稿から画像データを取得する部分である。
【0022】
ADF10は,原稿群PSを載置するための原稿載置台100を備えている。原稿載置台100は,用紙の搬送の前方側(図2中左側)が少し低くなるように傾斜して配置されている。そしてその図中左端部には,ストッパ122が設けられている。ストッパ122は,原稿載置台100に載置された原稿群PSの先端位置を規制するための部材である。ストッパ122は後述するように可動であり,突出した状態と待避した状態との2通りの状態を取ることができるようになっている。図2中のストッパ122は突出した状態であり,原稿載置台100に載置された原稿群PSの先端位置を規制する状態である。原稿載置台100から用紙が実際に搬送されるときにはストッパ122の突出は解除されることとなる。
【0023】
ADF10にはまた,分離搬送ローラ101,102が設けられている。分離搬送ローラ101,102は,原稿載置台100に載置された原稿群PSから原稿を1枚ずつ取り出すためのローラである。ADF10にはさらに,原稿載置台100から取り出された原稿を読み取り箇所に導く給紙搬送路104が設けられている。給紙搬送路104の途中には,分離センサ103,傾き補正センサ121,傾き補正搬送ローラ105が配置されている。
【0024】
分離センサ103および傾き補正センサ121は,給紙搬送路104の当該位置における用紙の有無を検知するセンサである。具体的には,原稿載置台100から取り出された原稿の先端あるいは後端が当該位置を通過したことを検知するものである。分離センサ103は,原稿の先端の検出により,原稿の搬送が開始されたことを制御系に認識させる役割と,原稿の後端の検出により,次の原稿の取り出しを開始させる役割を有する。傾き補正センサ121は,原稿の先端の検出により,傾き補正搬送ローラ105による傾き補正を実施させる役割と,原稿の後端の検出により,原稿のサイズを制御系に認識させる役割とを有する。傾き補正搬送ローラ105は,搬送されてきた用紙の先端を一旦止め,傾きを補正した上で搬送を再開するためのローラである。
【0025】
給紙搬送路104の先には,ガイド板106が設けられている。ガイド板106は,原稿を画像読取部11へ向けて押し付ける部材である。ガイド板106が原稿を押し付ける位置が,ADF10を用いて原稿読み取りを行う場合の読み取り位置である。ADF10にはさらに,読み取りが済んで排出された原稿を載置するための原稿排紙台110が設けられている。そのためADF10には,ガイド板106の箇所から原稿排紙台110へ原稿を導く原稿搬送路108が設けられている。原稿搬送路108の途中には,搬送ローラ107,排紙ローラ109が設けられている。
【0026】
ADF10にはまた,両面読み取りのための原稿返送路120が設けられている。原稿返送路120は,原稿搬送路108における搬送ローラ107と排紙ローラ109との間の位置と,給紙搬送路104における分離センサ103と傾き補正センサ121との間の位置とを結んでいる。さらにADF10には,後述するADFカバー123の支持軸131が設けられている。
【0027】
画像読取部11は,読取ガラス112,露光ランプ113,ミラー114〜116,レンズ117,撮像素子118,画像処理部119を有している。読取ガラス112は,ADF10のガイド板106により原稿が押し付けられる位置に配置されている。ADF10を用いて原稿読み取りを行う際には,読取ガラス112の真下にミラー114が位置する。また,ガイド板106により読取ガラス112に押し付けられている原稿に対し光を照射できるように露光ランプ113が位置する。これにより,原稿による反射光の像がミラー114〜116およびレンズ117を介して撮像素子118で撮像されるようになっている。それにより撮像素子118が出力する画像データを画像処理部119が取得するようになっている。
【0028】
画像読取部11にはさらに,フラットベッド111が備えられている。フラットベッド111は,ブック状原稿などADF10での読み取りに不向きな原稿を載置するための大面積のガラス板である。
【0029】
図1に戻って,原稿読取装置2には,ADFカバー123と,FB(フラットベッド)カバー124とが設けられている。ADFカバー123はFBカバー124に載っている。また,図2で説明した原稿読取装置2の構成のうちADF10に属するものはすべて,FBカバー124またはADFカバー123に搭載されている。ADFカバー123およびFBカバー124はいずれも開閉可能なものであり,図1中ではいずれも閉状態である。ADFカバー123は,原稿の幅方向と平行な支持軸131を中心とする回転移動により開閉するカバーである。FBカバー124は,原稿の幅方向と直交する軸回りの回転移動により開閉するカバーである。
【0030】
図3に,FBカバー124を閉じたままADFカバー123を開いた状態の外観を示す。この状態では,FBカバー124の姿勢は図1に示される状態と変わらないが,ADFカバー123は,図1中の姿勢に比して反時計回りに少し回転し,傾斜した状態となっている。この状態とすることにより,図2で説明したADF10の構成のうち,給紙搬送路104や傾き補正搬送ローラ105などが露出する。この状態で,ADF10にて原稿のジャムが生じた場合のジャム紙除去作業をすることができる。
【0031】
図4に,ADFカバー123を閉じたままFBカバー124を開いた状態の外観を示す。この状態ではFBカバー124およびADFカバー123が一体的に,図1中の姿勢に比して図中奥側の軸回りに回転して上方に開いている。この状態とすることにより,図2で説明した画像読取部11の構成のうち,読取ガラス112やフラットベッド111が露出する。この状態で,フラットベッド111上に原稿を置くことができる。ADF10を用いずその代わりにフラットベッド111を用いて原稿の読み取り(いわゆる置き撮り)を行うためである。なお,ADFカバー123とFBカバー124とを両方とも開くこともできる。
【0032】
図2に示したADF10の構成のうち,分離搬送ローラ101,102,ストッパ122は,ADFカバー123に取り付けられている。このためこれらのものは,ADFカバー123を開くと,ADFカバー123とともに,図2中の位置から移動する。図2に示したADF10の構成のうち上記以外のものは,ADFカバー123ではなくADF10の本体に取り付けられている。したがってこれらのものは,ADFカバー123を開いた状態でも図2中に示されている箇所に位置する。
【0033】
ADFカバー123にはこの他,図5に示すカバー開閉検出センサ125が搭載されている。カバー開閉検出センサ125は,回転部材126と,光センサ127とにより構成されている。回転部材126は,回転軸128に遮光部129と重り部130とを一体に形成した部材である。かかるカバー開閉検出センサ125は,図6〜図8に示すように,ADFカバー123における,開状態で上端付近となり前後方向奥側寄りの位置に設けられている。
【0034】
カバー開閉検出センサ125では,遮光部129と重り部130との重量バランスにより,ADFカバー123およびFBカバー124がいずれも閉状態である場合,つまり図1の状態の場合に限り,遮光部129が光センサ127の受光を遮るようになっている。そして,ADFカバー123とFBカバー124とのいずれが開かれた場合でも,遮光部129と重り部130との重量バランスが崩れて遮光部129が光センサ127から外れるようになっている。ADFカバー123とFBカバー124との双方が開かれた場合も同様である。つまり,光センサ127の受光如何により,ADFカバー123およびFBカバー124が図1の状態にあるか,図1以外のいずれかの状態にあるかが分かるようになっているのである。例えば,回転軸128を,FBカバー124の開閉軸とADFカバー123の回転軸とのいずれに対しても斜めに配置することにより,このようにできる。
【0035】
ADF10には,ここまでに説明したものの他にさらに,ローラ類の駆動機構を内蔵している。図9にこの駆動機構を上方から見た状態を示す。図9に示されるように,ADF10には,モータMが備えられている。モータMは,図2に示したもののうち,分離搬送ローラ101,102,傾き補正搬送ローラ105の駆動源である。モータMによる回転駆動は,ギア列132を介して,ギヤ133へ伝達されるようになっている。また,電磁クラッチCL5へも伝達されるようになっている。電磁クラッチCL5は,ギア列132と前出の傾き補正搬送ローラ105との間に位置している。これにより,モータMの駆動力の傾き補正搬送ローラ105への伝達を断続できるようになっている。
【0036】
図9に示したもののうちここまでに説明したもの(モータM,ギア列132,ギヤ133,電磁クラッチCL5は,傾き補正搬送ローラ105)は,ADF10の本体に取り付けられている。すなわち,ADFカバー123の開閉によっては移動しないものである。図9に示したもののうちこれから説明するもの(ギヤ134,135,136,137,138,139,電磁クラッチCL4,分離搬送ローラ101,102,ローラ軸141,142,ワンウェイクラッチCL1,CL2,CL3,ストッパ爪140,ストッパ122,ピックアップユニット部材143,ピックアップユニット保持解除ソレノイドSL1,ピックアップユニット保持アーム144)は,ADFカバー123に取り付けられている。すなわち,ADFカバー123の開閉によって移動するものである。
【0037】
ADFカバー123には,ギヤ134,135が同軸に設けられている。ギヤ134とギヤ135との間には電磁クラッチCL4が備えられている。ギヤ134は,図9中では前出のギヤ133と噛み合っているがこれは,ADFカバー123が閉じている場合に限られる。ADFカバー123を開くと,ギヤ134がADFカバー123とともに移動することにより,ギヤ133とギヤ134との噛み合いが外れるようになっている。
【0038】
ADFカバー123にはさらに,ギヤ136が設けられている。ギヤ136はギヤ135と噛み合っている。ギヤ135とギヤ136との噛み合いは,ADFカバー123の開閉によって外れることのない常時噛み合いである。ギヤ136は,分離搬送ローラ102とともに,ローラ軸142に取り付けられている。ギヤ136と分離搬送ローラ102との間には,ギヤ137が配置されている。ギヤ137と分離搬送ローラ102との間にはさらに,ワンウェイクラッチCL2が配置されている。
【0039】
ADFカバー123にはまた,ギヤ137と噛み合うギヤ138,ギヤ138と噛み合うギヤ139が設けられている。ギヤ139は,分離搬送ローラ101とともにローラ軸141に取り付けられている。ギヤ139と分離搬送ローラ101との間には,ワンウェイクラッチCL3が配置されている。ローラ軸141の両端にはさらに,ストッパ爪140が取り付けられている。ストッパ爪140は,ローラ軸141に対してある程度の摩擦力で回転可能に設けられている。ストッパ爪140は,ストッパ122の動きを規制するものである。
【0040】
ADFカバー123にはまた,ピックアップユニット部材143が設けられている。ピックアップユニット部材143は,ローラ軸142の位置を中心に分離搬送ローラ101の位置を揺動させるための部材である。このためピックアップユニット部材143は,ローラ軸142の位置を中心に回転可能に設けられており,ローラ軸141はこのピックアップユニット部材143に設けられている。すなわちピックアップユニット部材143およびローラ軸141は,ADFカバー123から見てさらに可動部材なのである。ピックアップユニット部材143とギヤ138との間には,ワンウェイクラッチCL1が設けられている。
【0041】
ADFカバー123にはさらに,ピックアップユニット保持解除ソレノイドSL1と,ピックアップユニット保持アーム144とが設けられている。ピックアップユニット保持アーム144は,支点145を中心に揺動可能に設けられている。ピックアップユニット保持アーム144の一端には保持爪146が設けられており,他端はピックアップユニット保持解除ソレノイドSL1に接続されている。ピックアップユニット保持解除ソレノイドSL1のオンオフによりピックアップユニット保持アーム144を揺動させることができる。この揺動により,保持爪146がピックアップユニット部材143に突入する状態とそうでない状態とを切り替えられるようになっている。
【0042】
ピックアップユニット部材143の動きおよび役割について,図10を用いてさらに説明する。図10は,図9中のピックアップユニット部材143,ローラ軸141,142,分離搬送ローラ101,102,ストッパ爪140,ストッパ122を,図9中の下方から見た図である。図10には,「上昇位置」と「下降位置」との2通りの状態が示されている。「上昇位置」は,分離搬送ローラ101が上昇している状態である。「下降位置」は,分離搬送ローラ101が下降している状態である。この動きは,ピックアップユニット部材143が,ローラ軸142の位置を中心に回転することによる。よって,「上昇位置」と「下降位置」とでローラ軸142の位置は同じである。
【0043】
図10から分かるようにストッパ122は,支点147を中心に回転可能とされている。また,ストッパ122は,突出部148と被保持部149とを有している。図2中のストッパ122は,図10中の突出部148に相当する。支点147は,ピックアップユニット部材143に設けられているのではなく,ADFカバー123に固定されている。よって,「上昇位置」と「下降位置」とで支点147の位置は同じである。なおストッパ122は,他から力を受けない限り,「下降位置」のように横向きになるように軽く付勢されている。
【0044】
また,ADFカバー123には,ストッパ爪140の動きを規制する規制部材150が設けられている。規制部材150の位置も,「上昇位置」と「下降位置」とで同じである。さらに,ピックアップユニット部材143が「上昇位置」にあるかそうでないかを検知するピックアップ位置センサ152が設けられている。
【0045】
また,「下降位置」の図から明らかなように,ピックアップユニット部材143の側面には,凹部151が設けられている。凹部151は,前述のピックアップユニット保持アーム144の保持爪146が突入するための部位である。保持爪146が凹部151に突入することができるのは,ピックアップユニット部材143が「上昇位置」にあるときである。「上昇位置」のときにピックアップユニット保持解除ソレノイドSL1をオフにすると,保持爪146が凹部151に突入する。ピックアップユニット保持解除ソレノイドSL1をオンにすると,保持爪146が凹部151から引き抜かれる。
【0046】
一方,ピックアップユニット部材143が「下降位置」にあるときには,ピックアップユニット保持解除ソレノイドSL1をオフにしても,保持爪146は凹部151に突入できない。ピックアップユニット部材143の側面のうち凹部151以外の位置に保持爪146が当たってしまうからである。しかしこの状態でピックアップユニット部材143が「上昇位置」になると,保持爪146が凹部151に突入する。
【0047】
保持爪146が凹部151から引き抜かれている状態では,ピックアップユニット部材143は,基本的には自重により「下降位置」になろうとする。このことは,ADFカバー123やFBカバー124の開閉状態を問わない。ただし,モータMからの駆動力の伝達があると,「上昇位置」になることができる。一方,保持爪146が凹部151に突入している状態では,ピックアップユニット部材143は「上昇位置」に保持される。
【0048】
「上昇位置」においては,ストッパ爪140が,規制部材150に当接している。「下降位置」から「上昇位置」になるまでの過程でローラ軸141が図10中で反時計回りに回転するので,その回転に引きずられてストッパ爪140も,規制部材150に当接するまで反時計回りに回転するからである。このためストッパ爪140がストッパ122の被保持部149を押しのけており,このためにストッパ122の突出部148が図10中下向きになっている。これが,ストッパ122が突出している状態である。ただし原稿搬送の実行時には,ローラ軸141が図10中で時計回りに回転するため,それに引きずられてストッパ爪140が被保持部149から外れ,ストッパ122は一時的に待避することになる。
【0049】
一方,「下降位置」では,ストッパ爪140が被保持部149から外れている。ローラ軸141が低い位置にある一方で規制部材150の位置は不変だからである。このためストッパ122は自由状態となっており,前述の付勢により突出部148が図10中横向きとなっている。これが,ストッパ122が待避している状態である。つまり,ピックアップユニット部材143の上昇および下降の動きは,ストッパ122を突出させあるいは下降させる動きである。
【0050】
続いて,画像形成装置1の全体の制御系について,図11のブロック図により簡単に説明する。図11のブロック図に見るように,この制御系は制御装置311を中心に構成されている。制御装置311はデータ書き込み部やCPUやRAMを有している。制御装置311には,不揮発メモリ312,操作部310,データ通信制御部309,データ入出力部308,表示部314,画像メモリ313が接続されている。このうちのデータ入出力部308を介して,ネットワーク315や,USBポート316,その他の外部メモリポート317,318へ繋がっている。操作部310や表示部314は,図1から分かるように原稿読取装置2の手前側の斜め上向きの面上に位置している。
【0051】
図11中の制御装置311は,原稿読取装置2や画像形成部3,給紙部5の制御をも行うものである。また,画像形成装置1がフィニッシャ部6を有する場合にはフィニッシャ部6の制御をも行う。制御装置311はまた,ファクシミリ部302や通信制御部303を介して外部の電話回線との交信も可能となっている。
【0052】
続いて,図12から図16のフローチャートを用いて,ADF10におけるピックアップユニット部材143の上昇および下降の制御を説明する。この制御も図11中の制御装置311により実行される。図12はこの制御全体の基本フローである。
【0053】
(501)
図12のフローではまず,カバー開閉検出センサ125の出力信号をチェックする。これにより前述のように,ADFカバー123とFBカバー124とがいずれも閉じられているか,それとも,いずれか少なくとも一方のカバーが開いているのか,のどちらであるかを判断する。開であった場合は(502)へ進み,閉であった場合は(509)へ進む。
【0054】
(502)
カバー開閉検出センサ125の出力信号が開であった場合(ADFカバー123とFBカバー124とのどちらが開であるかは分からない)には,ピックアップ位置センサ152の出力信号をチェックする。これにより,ピックアップユニット部材143が現在,「上昇位置」と「下降位置」とのどちらにあるかを判断する。「上昇位置」にある場合には(503)へ進み,「下降位置」にある場合には(508)へ進む。
【0055】
(503)
カバー開閉検出センサ125の出力信号が開であり,かつ,ピックアップユニット部材143が「上昇位置」にある場合には,制御装置311のメモリ内のジャム発生フラグをチェックする。ジャム発生フラグは,ADF10にジャムが発生しているか否かを示すフラグである。このフラグがジャムの発生を示していない場合には(504)へ進み,ジャムの発生が示されていない場合には(505)へ進む。
【0056】
(504)
フラグによりジャムの発生が示されていない場合には,給紙搬送路104上の用紙センサの状態をチェックする。ここでチェックされるセンサは,分離センサ103および傾き補正センサ121である。この時点ではADFカバー123とFBカバー124とのうち少なくとも一方が開いているため(501の判断による),原稿の搬送は行われていないはずである。よって,もしこれらのセンサのいずれか一方でもが紙の存在を検知していれば,原稿が途中で停止していることになる。その場合には,たとえフラグがジャムを示していなくても,ジャムが発生しているものとして取り扱う必要がある。このため,原稿ありの場合には,フラグによりジャムが示されている場合と同様に(505)へ進む。原稿なしの場合には,ジャムがないかあるいは解消済みであると判断できるので(506)へ進む。
【0057】
(505)
フラグもしくはセンサによりジャム発生と判断できる場合には,図13の「下降制御(1)」を行う。
【0058】
(506)
フラグとセンサとのいずれによってもジャムなしと判断できる場合には,(507)の「下降制御(2)」の最近の実施履歴をチェックする。ここでチェックするのは,カバー開閉検出センサ125の状態が最後に閉から開に変わってから現在までの間に「下降制御(2)」が1回も実施されていないか,またはそうではないか,である。「下降制御(2)」が1回も実施されていない場合には(507)へ進み,1回でも実施済みである場合には(508)へ進む。つまり「下降制御(2)」は,カバー開閉検出センサ125の状態が開になってから閉に戻るまでの間に1回しか実施されない。
【0059】
(507)
「下降制御(2)」が未実施である場合には,図14に示す「下降制御(2)」を行う。
【0060】
(508)
フラグもセンサもジャムを示していない場合であっても,「下降制御(2)」が実施済みである場合には,図15に示す「停止」を行う。また,前述の(502)でピックアップユニット部材143が「下降位置」にある場合にも「停止」を行う。
【0061】
(509)
前述の(501)でカバー開閉検出センサ125の出力信号が閉であった場合には,(502)の場合と同様に,ピックアップ位置センサ152の出力信号をチェックする。これにより,ピックアップユニット部材143が現在,「上昇位置」と「下降位置」とのどちらにあるかを判断する。「上昇位置」にある場合には(510)へ進み,「下降位置」にある場合には(511)へ進む。
【0062】
(510)
カバー開閉検出センサ125の出力信号が閉であり,かつ,ピックアップユニット部材143が「上昇位置」にある場合には,前述の(508)の場合と同じく,図15の「停止」を行う。
【0063】
(511)
カバー開閉検出センサ125の出力信号が閉であり,かつ,ピックアップユニット部材143が「下降位置」にある場合には,図16の「上昇制御」を行う。
【0064】
次に,図13の「下降制御(1)」を説明する。前述のようにこの制御は,カバー開閉検出センサ125の出力信号が開であり,ピックアップユニット部材143が「上昇位置」にあり,かつ,フラグもしくはセンサによりジャム発生と判断できる場合に行われる。この制御は基本的に,ストッパ122を待避させる処理である。ADF10でジャムが発生していることから,開いているカバーはADFカバー123である可能性が高い。ここでストッパ122が突出したままであると,ジャム解消後にADFカバー123を閉じる際に,原稿載置台100に載置されている原稿群PSの先頭をストッパ122が攻撃してしまうからである。
【0065】
(601)
「下降制御(1)」ではまず,電磁クラッチCL4(フロー中ではPickUpローラCL)をオフする。これにより,図9中のギヤ135以下の部分がモータMから切り離された状態となる。開いているカバーがADFカバー123であれば,そもそもギヤ133とギヤ134との噛み合いが外れることにより,当該部分はモータMから切り離されている。開いているカバーがADFカバー123でなくFBカバー124だけであったとしても,電磁クラッチCL4により当該部分がモータMから切り離されるのである。
【0066】
(602〜605)
そして,ピックアップユニット保持解除ソレノイドSL1(フロー中ではPickUpユニット下降SL)をオンする。これにより,保持爪146を凹部151から引き抜く。すると,ピックアップユニット部材143は自由状態となるので,自重により「下降位置」となる。それとともにストッパ122が待避する。図10で説明したようにストッパ爪140が被保持部149から外れるからである。
【0067】
ここで,ピックアップユニット保持解除ソレノイドSL1のオンについては,最初の1秒間のみ100%デューティとしてその後はデューティを下げ(604),合計11秒間オンさせ続けている。11秒間もオンさせるのは,ピックアップユニット部材143が「上昇位置」から「下降位置」へ下がるのにある程度の時間が掛かるからである。各部のクラッチ類等の摺動抵抗のためである。ピックアップユニット部材143が「下降位置」になったことを確認できたならば,11秒を待たずにピックアップユニット保持解除ソレノイドSL1のオンを終了してもよい。オンの途中でデューティを下げるのは,ピックアップユニット保持解除ソレノイドSL1の過熱対策である。ピックアップユニット保持解除ソレノイドSL1自体が過熱対策機構を備えたものであれば100%デューティのままでもかまわない。
【0068】
(606,607)
ピックアップユニット部材143が「下降位置」になったら,ピックアップユニット保持解除ソレノイドSL1をオフする。これにより,保持爪146が凹部151に突入しようとする状態となるが,この状態では突入できない。この状態で1秒間保持してから,図12のメインフローへ戻る。メインフローへ戻ると,装置の状況が変わらない限り再び(505)に達して「下降制御(1)」が反復されることとなる。カバー開閉検出センサ125の出力信号が閉に変わるか,フラグとセンサとのいずれもがジャム発生なしに変わるまで,「下降制御(1)」が続くことになる。フラグとセンサとのいずれかでジャム発生と判断されている以上,開いているカバーはADFカバー123である可能性が高く,ストッパ122を確実に待避させる必要があるからである。
【0069】
続いて,図14の「下降制御(2)」を説明する。前述のようにこの制御は,カバー開閉検出センサ125の出力信号が開であり,ピックアップユニット部材143が「上昇位置」にあり,かつ,フラグとセンサとのいずれもジャム発生なしを示している場合に1回だけ行われる。この状況では,開いているカバーはFBカバー124である可能性が高い。給紙搬送路104に原稿が取り残されていることはないが,原稿載置台100には原稿群PSがセットされている可能性がある。このためストッパ122を少なくとも1回は待避させておく必要がある。そのための制御が「下降制御(2)」である。
【0070】
(701)
「下降制御(2)」でもまず,電磁クラッチCL4(フロー中ではPickUpローラCL)をオフする。これにより,図9中のギヤ135以下の部分をモータMから切り離す。この点は「下降制御(1)」の(601)と同様である。
【0071】
(702,703)
そして,ピックアップユニット保持解除ソレノイドSL1(フロー中ではPickUpユニット下降SL)を1秒間オンする。これにより,ピックアップユニット部材143を「下降位置」とし,それとともにストッパ122が待避する。
【0072】
(704)
そして,ピックアップユニット保持解除ソレノイドSL1をオフする。これにより,保持爪146が凹部151に突入しようとする状態となるが,この状態では突入できない。そして図12のメインフローへ戻る。なお,この「下降制御(2)」が実施されたことは,履歴として,カバー開閉検出センサ125の出力信号が閉となるまで記録が保存される。このため,次回のメインフローで再び(506)に至っても,今度は実施済みと判断されて実行されない。代わりに(508)の「停止」が行われる。
【0073】
つまり,「下降制御(2)」は1回しか実施されない。このため,ADFカバー123が閉じたままであるのにピックアップユニット保持解除ソレノイドSL1をオンし続けるようなことはない。なお,この「下降制御(2)」の実行回数を,1回ではなく複数回(ただしあらかじめ定めた回数)としてもよい。また,「下降制御(1)」および「下降制御(2)」の内容は同じであってもよい。
【0074】
次に,図15の「停止」を説明する。「停止」が実行されるのは,次の3通りの場合である。
・カバー開閉検出センサ125の出力信号が開であり,かつピックアップユニット部材143が「下降位置」にある場合
・フラグもセンサもジャムを示しておらず,「下降制御(2)」が実施済みである場合 ・カバー開閉検出センサ125の出力信号が閉であり,かつ,ピックアップユニット部材143が「上昇位置」にある場合
これら3通りのうち前の2つは,ピックアップユニット部材143が「下降位置」にある状態での停止である(508)。一方,最後の1つは,ピックアップユニット部材143が「上昇位置」にある状態での停止である(510)。この点で少し違いがあるが,図15の内容自体は同一である。まずはピックアップユニット部材143が「下降位置」にある状態での「停止」(508)について説明する。
【0075】
(801)
「停止」ではまず,ピックアップユニット保持解除ソレノイドSL1(フロー中ではPickUpユニット下降SL)をオフする。これにより,保持爪146が凹部151に突入しうる状態とする。しかし実際には突入できない。ピックアップユニット部材143が「下降位置」にあるからである。
【0076】
(802,803)
そして,電磁クラッチCL4(フロー中ではPickUpローラCL)をオフする。これにより,図9中のギヤ135以下の部分をモータMから切り離す。そしてモータM(フロー中ではADFモータ)を停止させる。そして図12のメインフローへ戻る。これによりピックアップユニット部材143は,モータMからの駆動を受けないので,「下降位置」で停止したままとされる。
【0077】
続いてピックアップユニット部材143が「上昇位置」にある状態での「停止」(510)について説明する。前述のように図15のフロー自体は「下降位置」の場合と同じである。しかし「上昇位置」の場合には,(801)でピックアップユニット保持解除ソレノイドSL1がオフされると,保持爪146が凹部151に実際に突入する。このためピックアップユニット部材143は,ピックアップユニット保持アーム144によって「上昇位置」に保持される。この点が「下降位置」の場合との違いである。(802),(803)については「下降位置」の場合と同じである。
【0078】
次に,図16の「上昇制御」を説明する。前述のようにこの制御は,カバー開閉検出センサ125の出力信号が閉であり,ピックアップユニット部材143が「下降位置」にある場合に行われる。つまりこの制御の開始時点では,ストッパ122は待避状態にある。この制御は基本的に,ストッパ122を突出させる処理である。カバーがすべて閉じられていることから,ジャム等の不都合はない状態であると考えられる。したがって,原稿載置台100に載置される原稿群PSの先端位置を規制する必要があるからである。
【0079】
(901)
「上昇制御」ではまず,ピックアップユニット保持解除ソレノイドSL1(フロー中ではPickUpユニット下降SL)をオフする。これにより,保持爪146が凹部151に突入しようとする状態となるが,この時点では突入できない。まだピックアップユニット部材143が「下降位置」にあるからである。
【0080】
(902)
そして電磁クラッチCL4(フロー中ではPickUpローラCL)をオンする。これにより,図9中のギヤ135以下の部分にモータMの回転駆動が伝達される状態とする。なお,この時点ではADFカバー123が閉じられているので,ギヤ133とギヤ134とは噛み合っている。このため当該部分への駆動力の伝達に問題はない。
【0081】
(903)
そしてモータM(フロー中ではADFモータ)を駆動させる。すると,モータMの駆動力は,ギヤ列132→ギヤ133→ギヤ134→電磁クラッチCL4→ギヤ135→ギヤ136→ローラ軸142→ギヤ137と伝達される。このときの各ギヤの回転方向は図9中に矢印で示す通りである。このためワンウェイクラッチCL1がロックして,ピックアップユニット部材143は図10中でローラ軸142を中心に反時計回りに回転する。すなわち「下降位置」から「上昇位置」へ向かって移動するのである。それとともにストッパ爪140が被保持部149を押しのけて突出部148を下向きにさせる。これによりストッパ122が突出する。この移動によりピックアップユニット部材143の凹部151が保持爪146の正面に来ると,そこで保持爪146が凹部151に突入する。この状態が「上昇位置」である。
【0082】
(904,905)
ここで,(903)のためにモータMを駆動させるパルス数には最大値が設定されている。この最大値は,モータMからピックアップユニット部材143までの駆動伝達経路上の種々のクラッチ類等による損失を考慮してある程度の余裕を持って設定されている。このため,保持爪146が凹部151に突入してもまだある程度のパルス数が残っている。しかしその残余数のパルスが出力されると,モータMを停止させる。
【0083】
(906)
一応,この時点でピックアップユニット部材143は「上昇位置」になっている筈である。しかしながら,前述の各部の損失により,未だ「上昇位置」になりきっていないこともあり得る。このため,リトライを実施することにしている。リトライとは,(901)から(905)までの処理を再度行うことである。ただしリトライの回数は1回だけに限定されている。そこでまずは,リトライが未実施であるか否かを判断する。未実施(Y)であれば(907)へ進み,実施済み(N)であれば(908)へ進む。
【0084】
(907)
リトライが未実施であれば,1秒間待機して制御を図12のメインフローへ戻す。すると(501)で再び「閉」と判断されて(509)に至る。ここで「上昇位置」になりきっていれば(510)の「停止」となる。これで,「上昇制御」が正常に終了したことになる。したがってリトライが無駄に実施されることはない。この状態でADF10としては原稿の自動搬送が可能な状態となっている。「上昇位置」になりきっていなければ,再び図16の「上昇制御」が実施される(511)。これがリトライである。
【0085】
(908)
リトライ後の(906)では,実施済み(N)と判定されるため,(908)へ進むことになる。そこでピックアップ位置センサ152の出力信号をチェックする。これにより,「上昇位置」になりきっているか否かが分かる。「上昇位置」になりきっていれば(907)へ進み正常終了となる。「上昇位置」になりきっていなければ(909)へ進む。
【0086】
(909)
リトライをしてもなお「上昇位置」になりきらないので,何らかの異常がある可能性もある。そこで,電磁クラッチCL4をオフして終了する。この場合には制御装置311が異常終了と認識し,表示部314にその旨の表示をする。原稿の自動搬送はできない状態である。ユーザとしては,ADFカバー123とFBカバー124とのいずれかを一旦開いて閉じ直すことにより,「上昇制御」を再び実施させることができる。カバー開閉検出センサ125の出力を一旦「開」とすることにより,リトライの実施履歴がクリアされるようになっているからである。なお,リトライの許容回数は1回に限らず,あらかじめ定めた複数回でもよい。
【0087】
以上詳細に説明したように本実施の形態に係る画像形成装置では,カバー開閉検出センサ125の出力信号が開となり,ストッパ122を待避させる必要が生じると,まず,給紙搬送路104における原稿の有無を確認する(図12の(503),(504))。そしてその結果により,待避処理の内容を変更するようにしている(図12の(505)と(507))。これにより,簡易なカバー開閉検出センサ125であっても,開いているカバーがどれであるか適切な判定をし,必要な待避処理が行われるようになっている。
【0088】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,本発明は,図1のような画像形成装置に限らず,ファクス機やスキャナ機にも適用可能である。また,画像形成装置の場合でも,画像形成部は,トナーの代わりにインクを用いるものであってもよい。また,図9中の電磁クラッチCL4は,絶対に必要なものではない。仮にこれがなくギヤ134とギヤ135が直結状態にあったとしても,図12中の(507)は1回(またはあらかじめ定められた複数回)しか行われないので,ピックアップユニット保持解除ソレノイドSL1が無駄に引き続けられることはないからである。
【符号の説明】
【0089】
1 画像形成装置
2 原稿読取装置
3 画像形成部
10 ADF
11 画像読取部
100 原稿載置台
103 分離センサ(原稿センサ)
104 給紙搬送路
105 傾き補正搬送ローラ(搬送ローラ)
111 フラットベッド(個別読取用の読取位置)
112 読取ガラス(自動搬送読取用の読取位置)
121 傾き補正センサ(原稿センサ)
122 ストッパ
123 ADFカバー(第2カバー)
124 FBカバー(第1カバー)
125 カバー開閉検出センサ
133 ギヤ(第1駆動伝達部材)
134 ギヤ(第2駆動伝達部材)
143 ピックアップユニット部材
146 ピックアップユニット保持アームの保持爪(第2係合部)
151 凹部(第1係合部)
311 制御装置(待避制御部,ジャムフラグ指示部)
CL1 ワンウェイクラッチ
CL4 電磁クラッチ
M モータ
SL1 ピックアップユニット保持解除ソレノイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動搬送読取用の読取位置と個別読取用の読取位置とを備える画像読取部と,前記画像読取部の両方の読取位置を開閉可能に覆う第1カバーと,前記第1カバーに搭載された原稿トレイと,前記第1カバーに搭載され前記第1カバーが閉じられている状態では前記原稿トレイから前記画像読取部の自動搬送読取用の読取位置へ原稿を搬送する自動原稿搬送装置とを有する原稿読取装置において,
前記自動原稿搬送装置は,
前記原稿トレイから前記画像読取部の自動搬送読取用の読取位置への搬送経路と,
前記搬送経路の途中に位置し原稿を搬送する搬送ローラと,
前記搬送経路における原稿の存在を検知する原稿センサと,
前記搬送ローラへの回転駆動源と,
前駆回転駆動源に繋がっている第1駆動伝達部材と,
前記搬送経路を開閉可能に覆う第2カバーとを有し,
前記第2カバーには,
前記第2カバーが閉じられている状態では前記第1駆動伝達部材に連結され,前記第2カバーが開いている状態では前記第1駆動伝達部材から外れる第2駆動伝達部材と,
前記第2カバーが閉じられている状態で前記原稿トレイ上の原稿の先端位置を規制する突出状態と,その突出状態から待避した待避状態との2通りの状態をとるストッパと, 前記第2駆動伝達部材から回転駆動を受けて移動し,前記ストッパを突出状態とする第1位置と,前記ストッパを待避状態とする第2位置とをとるピックアップ部材と,
前記第2駆動伝達部材と前記ピックアップ部材との間に配置され,前記第2駆動伝達部材から前記ピックアップ部材への回転駆動のうち,第2位置から第1位置へ移動する向きの回転駆動を伝達するとともにその逆向きの回転駆動を伝達しないワンウェイクラッチと,
前記ピックアップ部材に設けられ,前記ピックアップ部材の移動とともに移動する第1係合部と,
前記ピックアップ部材が第1位置にあるときに限り前記第1係合部と係合することができ,係合状態では前記ピックアップ部材を第1位置に固定する第2係合部と,
オンされることにより前記第2係合部を前記第1係合部から引き抜くソレノイドと, 前記第1カバーと前記第2カバーとのいずれもが閉じている状態と,前記第1カバーと前記第2カバーとの少なくとも一方が開いている状態とを判別する開閉センサとが設けられており,
前記開閉センサが開を検出したときに,前記ピックアップ部材を第2位置にさせることで前記ストッパを待避状態とさせる待避制御部を有し,
前記待避制御部は,
前記原稿センサが原稿を検出している場合には,前記原稿センサが原稿を検出しなくなるか,前記開閉センサが閉を検出するまで前記ソレノイドにより前記第2係合部を前記第1係合部から引き抜き続け,
前記原稿センサが原稿を検出していない場合には,あらかじめ定めた回数の範囲内に限り,前記ソレノイドにより前記第2係合部を前記第1係合部から引き抜くことを特徴とする原稿読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の原稿読取装置において,前記第2カバーには,
前記第2駆動伝達部材と前記ワンウェイクラッチとの間に位置し,回転駆動を伝達する状態と伝達しない状態とを切り替えるクラッチが備えられており,
前記待避制御部は,前記ストッパを待避状態とさせるに先立ち,前記クラッチを非伝達状態とすることを特徴とする原稿読取装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の原稿読取装置において,
前記自動原稿搬送装置におけるジャムの発生を示すジャムフラグ指示部を有し,
前記待避制御部は,
前記原稿センサが原稿を検出しているかあるいは前記ジャムフラグ指示部がジャムの発生を示している場合に,前記原稿センサが原稿を検出しなくなるか,前記開閉センサが閉を検出するまで前記ソレノイドにより前記第2係合部を前記第1係合部から引き抜き続け,
前記原稿センサが原稿を検出しておらず,かつ前記ジャムフラグ指示部がジャムの発生を示していない場合に,あらかじめ定めた回数の範囲内に限り,前記ソレノイドにより前記第2係合部を前記第1係合部から引き抜くことを特徴とする原稿読取装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1つに記載の原稿読取装置と,
前記原稿読取装置で読み取った画像を記録媒体上に形成する画像形成部とを有する画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−153007(P2011−153007A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16908(P2010−16908)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】