説明

参照電圧発生回路、およびそれを用いた表示パネル駆動装置

【課題】ラッチアップ耐量試験でのラダー抵抗値の変化およびラダー抵抗の断線を防ぐことで、ラッチアップ耐量試験の耐量値が高い参照電圧発生回路、およびそれを用いた表示パネル駆動装置を提供する
【解決手段】他の回路の動作に用いられる参照電圧を生成して当該他の回路に出力する参照電圧発生回路であって、参照電圧を生成するための複数のラダー抵抗を備え、ラダー抵抗は、ラダー抵抗に電圧を印加する、複数の基準電圧端子に接続されており、基準電圧端子は、外部電源に接続される第1基準電圧端子と、外部電源に接続されない第2基準電圧端子とを含み、ラダー抵抗は、第2基準電圧端子に接続されているラダー抵抗の幅が、第1基準電圧端子に接続されているラダー抵抗の幅よりも広い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、D/A変換器等に使用される参照電圧発生回路に関するもので、特に表示パネル駆動用ドライバLSIで用いられる参照電圧発生回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラダー抵抗により形成した参照電圧発生回路を用いたD/A変換器は従来からよく使用されており、変換精度を向上する工夫が種々発明されている。例えば、特許文献1には、ラダー抵抗を蛇行させて配置することによって、抵抗列の折り返し点を含めて抵抗値が全て等しく、基準電圧を高精度に分割可能な技術が開示されている。
【0003】
図4は、ラダー抵抗により形成した参照電圧発生回路を用いたD/A変換器40の構成図である。ここでは、説明を容易にするため、3ビットのD/A変換器について図示している。
【0004】
図4に示すD/A変換器40は、高電圧側基準電圧を与えるV7端子と低電圧側基準電圧を与えるV0端子との間にラダー抵抗R1〜R7が直列に接続され、R1とGND電位の間にラダー抵抗R0が直列に接続されている。各ラダー抵抗R0〜R7は、スイッチング動作をするMOSトランジスタQ0〜Q7が接続されている。そのMOSトランジスタQ0〜Q7の一端は、共通接続されてオペアンプU1の非反転入力端子に接続されている。オペアンプU1は、ユニティゲインアンプとして動作する。図4には示していないが、MOSトランジスタQ0〜Q7のゲート電極はデコーダを通じてデジタル入力信号に接続されている。また、外部からの静電気の流入に対してD/A変換器40を保護するために、V0端子およびV7端子は、ダイオードDP0、DN0、DP7、DN7が接続されている。
【0005】
ラダー抵抗を用いたD/A変換器40は、以下のような動作を行う。D/A変換器40は、デジタル入力信号に応じて、デコーダがMOSトランジスタQi(i=0〜7)を選択し、選択したMOSトランジスタQiを導通させる。ここで、V0端子とV7端子とに印加する電圧をV0、V7とすると、オペアンプU1の非反転入力端子には、ラダー抵抗で電圧分割された電圧 V={(R0+R1+R2+・・・+Ri)/(R1+R2+・・・+R7)}*(V7−V0) が入力される。オペアンプU1はユニティゲインアンプとして動作させており、出力電圧Vrefは非反転入力端子電圧と同じ電圧になる。
【0006】
表示パネル駆動用ドライバLSIでは、一般に、表示パネルの濃淡を調整するためにD/A変換器が用いられる。表示パネル駆動用ドライバLSIは、入力された表示パネルの濃淡階調を指示するデジタル信号を表示パネルが濃淡諧調を制御できるアナログ信号に変換し、その変換したアナログ信号を表示パネルに出力する。例えば、8ビット駆動の表示パネル駆動用ドライバLSIは、256階調の濃淡表示ができ、10ビット駆動の表示パネル駆動用ドライバLSIは、1024階調の濃淡表示ができる。濃淡階調を指示するデジタル信号(入力信号)と出力すべきアナログ信号電圧との関係は「ガンマ特性」とよばれており、表示パネル駆動用ドライバLSIは、表示パネルの特性に応じてガンマ特性を調整する。
【0007】
一般的なD/A変換器では、図4に示すように、外部から基準電圧を与える端子は2端子である。そのため、D/A変換器が出力するアナログ信号電圧は、ラダー抵抗の抵抗値比によって決定される。しかし、表示パネル駆動用ドライバLSIではガンマ特性を詳細に調整するため、所定のラダー抵抗に外部から電圧を与えている。
【0008】
図5は表示パネル駆動用ドライバLSIで用いられるD/A変換器50の構成図である。図5に示すように、D/A変換器50は、高電圧側基準電圧を与えるV7端子と低電圧側基準電圧を与えるV0端子との間に、中間の基準電圧を与えるV5端子を備える。ここで、V5端子に与える電圧をV5とすると、オペアンプU1の非反転入力端子の電圧は、0≦i≦5の場合、 V={(R0+R1+R2+・・・+Ri)/(R1+R2+・・・+R5)}*(V5−V0) となり、i=6の場合、 V={R6/(R6+R7)}*(V7−V5) となり、i=7の場合、 V=V7 となる。
【0009】
このように、D/A変換器50は、高電圧側基準電圧V7および低電圧側基準電圧V0以外の中間の基準電圧(図5では、V5)を外部から印加することによって、出力電圧Vrefを調整することが可能となる。その結果、図5に示すようなD/A変換器50を有する表示パネル駆動用ドライバLSIは、図4に示すようなD/A変換器40を有する表示パネル駆動用ドライバLSIより、詳細なガンマ特性の調整が可能となる。図5に示す例では、3ビットのD/A変換器について中間の基準電圧を1端子追加しているが、追加する中間の基準電圧の端子数は多いほど、より詳細なガンマ特性の調整が可能となる。
【0010】
最近の表示パネル駆動用ドライバLSIの階調数は8〜10ビットを超えるものが多く、中間の基準電圧の端子数も8〜20に及んでいる。複数の中間の基準電圧の端子を有するD/A変換器を用いる表示パネル駆動用ドライバLSIは、特性がそれぞれ異なる複数の表示パネルに対しても、中間の基準電圧を外部から表示パネル駆動用ドライバLSIに印加することによって、複数の表示パネルが所望するそれぞれ異なるガンマ特性を得ることができる。
【0011】
D/A変換器のラダー抵抗はポリシリコン抵抗で形成することが多く、レイアウト占有面積の増大を防ぐために、ポリシリコン抵抗の幅は1〜10um程度の細い幅でレイアウトすることが多い。また、ラダー抵抗で消費される電流値は小さいほうが望ましいので、ラダー抵抗値を高くするためにも、ポリシリコン抵抗の幅は細いほうが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平4−273401号公報(1992年9月29日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、細いポリシリコン抵抗の幅でラダー抵抗のレイアウトを行うと、LSIの品質確認試験のひとつであるラッチアップ耐量試験において不都合が生じる場合がある。
【0014】
ラッチアップ耐量試験方法のひとつにパルス電流注入法があり、電子情報技術産業協会規格(JEITA)ではEIAJ ED−4701/300として規定されている。パルス電流注入法は、LSIに電源電圧を印加した状態で、LSIの端子に外部からパルス電流を注入し、LSIがラッチアップ状態になったかどうかを判定するものである。注入されるパルス電流が大きいほどLSIはラッチアップ状態になりやすいことから、ラッチアップ状態に至るのに必要なパルス電流値の大小で、LSIがラッチアップしやすいかどうか(すなわち、ラッチアップ耐量)を示している。
【0015】
一般に、ラッチアップ耐量の強弱を判断するパルス電流の基準値の一例として100mAという値がよく用いられている。すなわち、100mAのパルス電流を注入した際にLSIがラッチアップ状態になるかどうかで、LSIのラッチアップ耐量を示しているものである。
【0016】
表示パネル駆動用ドライバLSIでは、D/A変換器に使用している基準電圧端子もラッチアップ耐量試験の被評価端子となる場合がある。基準電圧端子は、外部電源に接続される端子であるので、通常はラッチアップ耐量試験の被評価端子にはならない。しかし、適合する表示パネルの仕様を広範囲にして、汎用性をもたせた表示パネル駆動用ドライバLSIでは、外部電源に接続しない基準電圧端子が存在する場合がある。このような外部電源に接続しない基準電圧端子は、ラッチアップ耐量試験の被評価端子となる。
【0017】
ここで、図6に、外部電源に接続しない基準電圧端子を含む表示パネル駆動用ドライバLSIのD/A変換器60の構成図の一例を示す。D/A変換器60は、図5に示すD/A変換器50の構成に加えて、外部電源に接続しない基準電圧端子であるV6端子を備える。V6端子は、V7端子とV5端子の間に接続されている、つまりラダー抵抗R6およびR7と接続されている。また、V6端子は、V0、V5、V7端子と同様に、ダイオードDP6、DN6が接続されている。
【0018】
表示パネル駆動用ドライバLSIに外部電源に接続しない基準電圧端子を設ける理由は、表示パネルの製造コストを下げるため、部品の共通化を図るためなどがある。同じ表示パネル駆動用ドライバLSIを複数種類の表示パネルで使用することで、表示パネル駆動用ドライバLSIは量産効果によるコスト削減が期待でき、ひいては、表示パネルの製造コストが削減できるためである。
【0019】
このように外部電源に接続しない基準電圧端子には中間の基準電圧端子がある。これらはラッチアップ耐量試験の被評価端子となり、ラッチアップ耐量試験で以下のような不具合が発生する場合がある。
【0020】
中間の基準電圧端子に対するラッチアップ耐量試験での不具合の事例について、図7で説明する。
【0021】
図7には、外部電源に接続するV0端子、V5端子およびV7端子と、外部電源に接続しないV6端子とを示している。V0端子、V5端子およびV7端子は、各々V0、V5、V7という電圧が外部から印加されるので、ラッチアップ耐量試験の被評価端子にはならない。一方、V6端子は、外部から電圧を印加していないので被評価端子となる。
【0022】
ここで、V6端子に対して、GND電位基準のマイナスパルス電流注入試験を行う場合を考える。V6端子から引き抜かれる電流値I6は、D/A変換器60のラダー抵抗R7に流れる電流IR7と、ラダー抵抗R6に流れる電流IR6と、V6端子に設けているESD(Electrostatic Discharge)保護ダイオードDN6に流れる電流IDN6との和になる。
【0023】
また、V6端子から電流値I6を引き抜く際の端子電圧をV6とする。端子電圧V6の値が−0.6V以下になると、V6端子に設けているESD保護ダイオードDN6は、順バイアス状態となるので電流が流れる。一方、ESD保護ダイオードDP6は、順バイアス状態になることはないのでDP6には電流は流れない。従って、V6端子から引き抜かれる電流値は、 I6=IR7+IR6+IDN6 となる。
【0024】
しかし、パルス電流注入試験時にV6端子の端子電圧がいきなり−0.6V以下の電圧となることはない。そのため、過渡状態においてはESD保護ダイオードDN6も順バイアス状態にはならない。したがって、過渡状態では、ESD保護ダイオードDN6に電流は流れないので、V6端子から引き抜かれる電流値は、 I6=IR7+IR6 となる。さらに、ラダー抵抗の電流IR7、IR6は、IR7=(V7−V6)/R7、IR6=(V6−V5)/R6 となる。
【0025】
パルス電流注入試験の過渡状態では基準電圧端子V6の端子電圧が0Vになるので、V6=0を代入すると、ラダー抵抗の電流値IR7、IR6は、 IR7=V7/R7、IR6=−V5/R6 となる。このように、パルス電流注入試験の過渡状態では被評価端子となる基準電圧端子から、ラダー抵抗R7に流れる電流IR7(=V7/R7)とラダー抵抗R6に流れる電流IR6(=−V5/R6)の和の電流が引き抜かれる。
【0026】
表示パネル駆動用ドライバLSIでは、V7=10〜18V、V5=9〜17V、R7=R6=100〜1000Ωの値が用いられていることから、ラダー抵抗に流れる電流は、IR7=10〜180mA、IR6=−9〜−170mAの値になる。
【0027】
ポリシリコン抵抗に電流を印加し、抵抗値が10%変化するときの印加電流とポリシリコン抵抗の幅との関係を図8に示す。図8は、膜厚200nmのポリシリコン膜と膜厚50nmの高融点金属シリサイド膜との複合膜での測定値を示すものである。この図面に基づき計算すると、ラダー抵抗に用いられるポリシリコン抵抗は、単位幅当り35mA程度の電流が流れると抵抗値に変化が現れ、単位幅当り70mA程度の電流が流れると断線に至る。
【0028】
前記のように、ラダー抵抗は、幅が1〜10um程度のポリシリコン抵抗で形成されているので、35〜350mA程度の電流が流れるとラダー抵抗の抵抗値が変わり、70〜700mA程度の電流が流れるとラダー抵抗が断線する。D/A変換器は、ラダー抵抗の抵抗値が変化するだけで所望の機能で動作しない。つまり、外部から印加する基準電圧が高く、ラダー抵抗値が低い場合には、ラダー抵抗に大きな電流が流れるので、パルス電流注入試験を行うことでラダー抵抗値に変化が生じ、所望の機能で動作しなくなる。その結果、ラッチアップ耐量試験結果が低い耐量値になってしまうという問題がある。
【0029】
本発明では、以上の点を鑑み、ラッチアップ耐量試験でのラダー抵抗値の変化およびラダー抵抗の断線を防ぐことで、ラッチアップ耐量試験の耐量値が高い参照電圧発生回路、およびそれを用いた表示パネル駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明に係る参照電圧発生回路は、上記課題を解決するために、他の回路の動作に用いられる参照電圧を生成して当該他の回路に出力する参照電圧発生回路であって、上記参照電圧を生成するための複数のラダー抵抗を備え、上記ラダー抵抗は、上記ラダー抵抗に電圧を印加する、複数の基準電圧端子に接続されており、上記基準電圧端子は、外部電源に接続される第1基準電圧端子と、外部電源に接続されない第2基準電圧端子とを含み、上記ラダー抵抗は、上記第2基準電圧端子に接続されている上記ラダー抵抗の幅が、上記第1基準電圧端子に接続されている上記ラダー抵抗の幅よりも広いことを特徴としている。
【0031】
また、本発明に係る表示パネル駆動装置は、上記課題を解決するために、表示パネルを駆動して表示を行う表示パネル駆動装置であって、上記もしくは下記の参照電圧発生回路を備えていることを特徴としている。
【0032】
上記の構成によれば、本発明に係る参照電圧発生回路では、参照電圧を生成するための複数のラダー抵抗のうち、ラッチアップ耐量試験の対象となる、外部電源と接続されない第2基準電圧端子に接続されているラダー抵抗の幅が、外部電源と接続される第1基準電圧端子に接続されているラダー抵抗の幅よりも広い。そのため、ラッチアップ耐量試験時においてラダー抵抗値の変化およびラダー抵抗の断線を防ぐことができ、ラッチアップ耐量試験の耐量値が高い参照電圧発生回路を形成することができる。また、上記第2基準電圧端子に接続されているラダー抵抗の幅のみを広くするため、レイアウト占有面積の増大を最小に抑えながら、以上のようなラッチアップ耐量試験の耐量値が高い参照電圧発生回路を形成することができる。
【0033】
また、上記の構成によれば、本発明に係る表示パネル駆動装置では、以上のような、レイアウト占有面積の増大を最小に抑えつつも、ラッチアップ耐量試験の耐量値が高い参照電圧発生回路を備えているため、装置の小型を維持しつつも、その動作に高い信頼性を確保できる。
【0034】
以上により、本発明は、ラッチアップ耐量試験でのラダー抵抗値の変化およびラダー抵抗の断線を防ぐことで、ラッチアップ耐量試験の耐量値が高い参照電圧発生回路、およびそれを用いた表示パネル駆動装置を提供することができるという効果を奏する。
【0035】
本発明に係る参照電圧発生回路は、上記第2基準電圧端子に接続されているラダー抵抗の幅は、下記の式(1)を満たすことが好ましい。
【0036】
W>((Vs+0.6)/(Rp*Ic)) (1)
W :上記外部電源と接続されない第2基準電圧端子に接続するラダー抵抗の幅
Vs:上記外部電源と接続されている第1基準電圧端子に印加する電圧
Rp:上記外部電源と接続されない第2基準電圧端子に接続するラダー抵抗の抵抗値
Ic:抵抗値変化を生じる単位幅当りの印加電流値
上記の構成によれば、本発明に係る参照電圧発生回路では、第2基準電圧端子に接続されているラダー抵抗の幅Wが W>((Vs+0.6)/(Rp*Ic)) を満たしている。そのため、ラッチアップ耐量試験時においてラダー抵抗値の変化およびラダー抵抗の断線を防ぐことができる最適なラダー抵抗の幅を決定することができる。従って、レイアウト占有面積の増大を最小に抑えながら、以上のようなラッチアップ耐量試験の耐量値が高い参照電圧発生回路を形成することができるという効果を奏する。
【0037】
本発明に係る参照電圧発生回路は、上記他の回路としてのD/A変換器回路とともに使用されることが好ましい。
【0038】
上記の構成によれば、本発明に係る参照電圧発生回路では、上記他の回路としてのD/A変換器回路とともに使用されるので、D/A変換器回路の動作に高い信頼性を確保できるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0039】
以上のように、本発明に係る参照電圧発生回路は、他の回路の動作に用いられる参照電圧を生成して当該他の回路に出力する参照電圧発生回路であって、上記参照電圧を生成するための複数のラダー抵抗を備え、上記ラダー抵抗は、上記ラダー抵抗に電圧を印加する、複数の基準電圧端子に接続されており、上記基準電圧端子は、外部電源に接続される第1基準電圧端子と、外部電源に接続されない第2基準電圧端子とを含み、上記ラダー抵抗は、上記第2基準電圧端子に接続されている上記ラダー抵抗の幅が、上記第1基準電圧端子に接続されている上記ラダー抵抗の幅よりも広いことを特徴としている。
【0040】
したがって、ラッチアップ耐量試験でのラダー抵抗値の変化およびラダー抵抗の断線を防ぐことで、ラッチアップ耐量試験の耐量値が高い参照電圧発生回路、およびそれを用いた表示パネル駆動装置を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態を示すものであり、ポリシリコン抵抗のレイアウト例を示す図である。
【図2】ポリシリコン抵抗のレイアウト例を示す図である。
【図3】従来方法によるラダー抵抗のレイアウト例を示す図である。
【図4】ラダー抵抗を用いたD/A変換器の構成図である。
【図5】表示パネル駆動用ドライバLSIのD/A変換器の構成図である。
【図6】外部電源に接続しない基準電圧端子を含む表示パネル駆動用ドライバLSIのD/A変換器の構成図である。
【図7】ラッチアップ耐量試験での不具合の事例を示す図である。
【図8】ポリシリコン抵抗の抵抗値が10%変化する際の印加電流とポリシリコン抵抗の幅との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明の一実施形態について図1〜図3、図6および図8に基づいて説明すると以下の通りである。
【0043】
本実施形態に係る参照電圧発生回路は、後述する本発明の特徴点の構成以外構成については、基本的に図6を用いて示した従来の構成と同様であるので、ここではその説明を省略する。また、本実施形態に係る表示パネル駆動用ドライバLSI(表示パネル駆動装置)は、D/A変換器を備え、入力された表示パネルの濃淡階調を指示するデジタル信号を表示パネルが濃淡諧調を制御できるアナログ信号に変換し、その変換したアナログ信号を表示パネルに出力することで、表示パネルを駆動して表示を行わせる、いわゆるソースドライバである。その構成等については、一般的なものと同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0044】
ラダー抵抗に用いられるポリシリコン抵抗のレイアウトは、図2に示すように、ポリシリコン層11、接続穴12、および、ポリシリコン層11と他の素子又は端子との接続を行う接続配線13から構成される。ポリシリコン層11の幅をW(um)、接続穴12間の距離をL(um)とすると、ポリシリコン抵抗の抵抗値R(Ω)は、ポリシリコン層11のシート抵抗ρs(Ω/sq)を用いて、R=ρs*(L/W)と計算できる。ラダー抵抗は、図2のようにレイアウトした複数のポリシリコン抵抗を直列接続することで構成されている。
【0045】
図6に示すD/A変換器60のラダー抵抗を従来方法で実施した場合のレイアウトの一例を図3に示す。図3に示すポリシリコン抵抗は、外部電源と接続する基準電圧端子V7、V5との接続を行う接続配線14、接続配線16、および、外部電源とは接続しない基準電圧端子V6との接続を行う接続配線15を備える。図7のポリシリコン抵抗R7、R6、R5に相当するのが図3のポリシリコン抵抗17、18、19に相当する。
【0046】
従来方法では、ポリシリコン抵抗の幅Wは、同一の寸法でレイアウトされている。また、レイアウト占有面積の増大を防ぐため、ポリシリコン抵抗の幅は1〜10um程度の細い幅が用いられている。このため、前記のように、外部から印加する基準電圧が高く、ラダー抵抗値が低い場合には、パルス電流注入試験を行うことでラダー抵抗値に変化が生じたり、ラダー抵抗が断線を生じたりして、所望の機能で動作しなくなる。
【0047】
図6に示すD/A変換器60のラダー抵抗を、本発明を用いた方法で実施した場合のレイアウトの一例を図1に示す。図1に示すポリシリコン抵抗は、外部電源と接続する基準電圧端子(第1基準電圧端子)V7、V5との接続を行う接続配線1、接続配線3、および、外部電源とは接続しない基準電圧端子(第2基準電圧端子)V6との接続を行う接続配線2を備える。図6のポリシリコン抵抗R7、R6、R5に相当するのが図1のポリシリコン抵抗4、5、6に相当する。
【0048】
本発明の実施例では、外部電源とは接続しない基準電圧端子に接続されるポリシリコン抵抗R7、R6(図1ではポリシリコン抵抗4、5)のポリシリコン層の幅であるWa(um)、Wb(um)が、外部電源と接続する基準電圧端子に接続されるポリシリコン抵抗R5(図1ではポリシリコン抵抗6)のポリシリコン層の幅であるWc(um)よりも太く(広く)レイアウトしている。ポリシリコン抵抗R7、R6(図1ではポリシリコン抵抗4、5)の接続穴間の距離La(um)、Lb(um)は、拡大したポリシリコン抵抗の幅の比に従って距離を拡大しており、ポリシリコン抵抗値は従来方法と同じ値を維持している。
【0049】
Wa、Wbの幅は、パルス電流注入試験を行うことでラダー抵抗値に変化およびラダー抵抗の断線が生じない所定の幅を用いる。その幅は、外部電源と接続する基準電圧端子に印加する電圧およびポリシリコン抵抗の値から決めることができる。
【0050】
外部電源と接続する基準電圧端子に印加する電圧をVs(V)、ポリシリコン抵抗の値をRp(Ω)とすると、パルス電流注入試験時にラダー抵抗に流れる電流値の最大値Ip(A)は、被測定端子の電圧が−0.6Vとなるときの電流値であるので、 Ip=(Vs+0.6)/Rp となる。これは、基準電圧端子に設けているESD保護ダイオードが順バイアスになる直前の状態であり、パルス電流注入試験時に引き抜く電流は全て、ラダー抵抗を介して供給される状態である。Ipは、ポリシリコン抵抗の抵抗値が変化しはじめる電流値(単位幅当り35mA)未満にするために、 Ip<35×10−3(A/um)*W(um) となる。したがって、 (Vs+0.6)/Rp<35×10−3*W から、パルス電流注入試験時に不具合を生じさせないポリシリコン抵抗の幅W(um)は、W>((Vs+0.6)/(Rp*35×10−3))となる。
【0051】
すなわち、本発明を用いた実施例では、外部電源とは接続しない基準電圧端子に接続されるポリシリコン抵抗R7、R6(図1ではポリシリコン抵抗4、5)のポリシリコン層の幅Wa(um)、Wb(um)を、外部電源と接続する基準電圧端子に接続されるポリシリコン抵抗R5(図1ではポリシリコン抵抗6)のポリシリコン層の幅Wc(um)よりも太くすれば良く、その幅Wa、Wbは、((Vs+0.6)/(Rp*35×10−3))で求められる値よりも大きくすれば良い。
【0052】
本発明の実施例で用いたポリシリコン抵抗は、膜厚200nmのポリシリコン膜と膜厚50nmの高融点金属シリサイド膜との複合膜で形成されている。この複合膜が抵抗値変化を生じる電流値は、図8に示されるように単位幅当り35mAである。この電流値は、ポリシリコン膜および高融点金属シリサイド膜の膜厚に依存し、膜厚が厚い場合は35mAよりも大きな値になり、膜厚が薄い場合は35mAよりも小さな値になる。したがって、膜厚が変わった場合には、抵抗値変化を生じる単位幅当りの電流値Ic(A)を測定することによって、必要なポリシリコン抵抗の幅W(um)は、 W>((Vs+0.6)/(Rp*Ic)) で求めることができる。
【0053】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、D/A変換器等に使用される参照電圧発生回路に、特に表示パネル駆動用ドライバLSIで用いられる参照電圧発生回路に利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 外部電源に接続される基準電圧端子V7との接続配線
2 外部電源に接続されない基準電圧端子V6との接続配線
3 外部電源に接続される基準電圧端子V5との接続配線
4 外部電源に接続されない基準電圧端子に接続されるポリシリコン抵抗R7
5 外部電源に接続されない基準電圧端子に接続されるポリシリコン抵抗R6
6 外部電源に接続される基準電圧端子に接続されるポリシリコン抵抗R5
11 ポリシリコン層
12 接続穴
13 接続配線
14 外部電源に接続される基準電圧端子V7との接続配線
15 外部電源に接続されない基準電圧端子V6との接続配線
16 外部電源に接続される基準電圧端子V5との接続配線
17 外部電源に接続されない基準電圧端子に接続されるポリシリコン抵抗R7
18 外部電源に接続されない基準電圧端子に接続されるポリシリコン抵抗R6
19 外部電源に接続される基準電圧端子に接続されるポリシリコン抵抗R5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の回路の動作に用いられる参照電圧を生成して当該他の回路に出力する参照電圧発生回路であって、
上記参照電圧を生成するための複数のラダー抵抗を備え、
上記ラダー抵抗は、上記ラダー抵抗に電圧を印加する、複数の基準電圧端子に接続されており、
上記基準電圧端子は、外部電源に接続される第1基準電圧端子と、外部電源に接続されない第2基準電圧端子とを含み、
上記ラダー抵抗は、上記第2基準電圧端子に接続されている上記ラダー抵抗の幅が、上記第1基準電圧端子に接続されている上記ラダー抵抗の幅よりも広いことを特徴とする参照電圧発生回路。
【請求項2】
上記第2基準電圧端子に接続されているラダー抵抗の幅は、下記の式(1)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の参照電圧発生回路。
W>((Vs+0.6)/(Rp*Ic)) (1)
W :上記外部電源と接続されない第2基準電圧端子に接続するラダー抵抗の幅
Vs:上記外部電源と接続されている第1基準電圧端子に印加する電圧
Rp:上記外部電源と接続されない第2基準電圧端子に接続するラダー抵抗の抵抗値
Ic:抵抗値変化を生じる単位幅当りの印加電流値
【請求項3】
上記参照電圧発生回路は、上記他の回路としてのD/A変換器回路とともに使用されることを特徴とする請求項1または2に記載の参照電圧発生回路。
【請求項4】
表示パネルを駆動して表示を行う表示パネル駆動装置であって、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の参照電圧発生回路を備えていることを特徴とする表示パネル駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−181823(P2010−181823A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27621(P2009−27621)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】